説明

津波検知装置

【課題】遠距離における沖合で発生した津波を略リアルタイムで検出できると共に、メンテナンスが殆ど不要でコストダウンが可能な津波検知装置の提供を課題とする。
【解決手段】津波発生を検出すると共に、津波発生に関する情報を送信する津波発生情報通信部と14と、津波発生情報通信部14を海底に保持する海底保持部15と、津波発生情報通信部14と海底保持部15とを着脱自在に連結すると共に、津波発生を検出した際に連結解除される連結部16とを備えている。津波発生情報通信部14は、津波の発生を検出する津波発生検出手段11と、津波発生検出手段11によって検出された津波の発生に関する情報を記憶する記憶手段12と、海面に浮上した際に記憶手段12に記憶されている津波の発生に関する情報を送信する送信手段13とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、津波検知装置は、自己浮上式、アンカードブイ式、ケーブル式が知られている。自己浮上式の津波検知装置は、地震計やデータ記録計をカプセルに入れて海底に沈め、一定期間に亘って津波を観測した後浮上させて回収し、観測データを取得する。
【0003】
この自己浮上式の津波検知装置は、設置が簡単で、繰り返し使用できる。また、特定の地域に集中して設置することができ、小回りがきくので、研究用としてよく利用されている。
【0004】
アンカードブイ式の津波検知装置は、海底に設置した地震計と、海面のブイとが連結されている。そして、地震計の観測データをブイに設けた送信機から電波で送信し、通信衛星を介して地上局に伝送する。このアンカードブイ式の津波検知装置は、リアルタイムで観測データを取得できる。
【0005】
ケーブル式の津波検知装置は、複数の地震計を光ケーブルで接続し、海岸部に設けられた地上局から、岩盤のプレートの境目に向けて100km〜200km沖合まで敷設する。このケーブル式の津波検知装置は、プレートの動きを長期間に亘って、24時間リアルタイムで監視できる。
【0006】
更に、上記以外に、沖合の洋上ブイの変位をGPS(Global Positioning System)で
計測する津波検出システムが知られている。
【特許文献1】特開2006−170920号公報
【特許文献2】特開2001−264056号公報
【特許文献3】特開平11−281759号公報
【特許文献4】特開平11−281758号公報
【特許文献5】特開平10−122860号公報
【特許文献6】特開平11−63984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の自己浮上式の津波検知装置は、津波の発生に関する観測データをリアルタイムで取得できないので、防災用としては不向きであるという問題があった。
【0008】
また、アンカードブイ式の津波検知装置は、津波の発生に関する観測データを常時送信しているので、消費電力が大きくなる。このため、バッテリーの交換など頻繁な維持管理が必要になるという問題があった。
【0009】
また、ケーブル式の津波検知装置は、光ケーブルを長距離に亘って敷設しなければならず、工事が大がかりになり、コストアップになるという問題があった。
【0010】
更に、沖合洋上ブイの変位をGPSで計測する津波検出システムでは、観測アルゴリズムとしてRTK(Real Time Kinematic)方式を採用しているため、陸上基地局による誤
差補正の限界距離が10km程度であり、それ以上の距離における沖合の津波観測ができないという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、遠距離における沖合で発生した津波を略リアルタイムで検出できると共に、メンテナンスが殆ど不要でコストダウンが可能な津波検知装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
すなわち、本発明は、
津波発生を検出すると共に、津波発生に関する情報を送信する津波発生情報通信部と、
前記津波発生情報通信部を海底に保持する海底保持部と、
前記津波発生情報通信部と前記海底保持部とを着脱自在に連結すると共に、津波発生を検出した際に連結解除される連結部とを備え、
前記津波発生情報通信部は、前記津波の発生を検出する津波発生検出手段と、前記津波発生検出手段によって検出された前記津波の発生に関する情報を記憶する記憶手段と、海面に浮上した際に、前記記憶手段に記憶されている前記津波の発生に関する情報を送信する送信手段と、前記津波発生検出手段、前記記憶手段及び前記送信手段に電源を供給する電源供給手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の津波検知装置は、海底に設置される。津波が発生すると、津波発生情報通信部が海面に浮上し、記憶手段に記憶されている津波の発生に関する情報が、送信手段によって送信される。
【0014】
本発明では、津波の発生を検出し、略リアルタイムで送信できる。従って、防災用に有効活用できる。
【0015】
また、津波検知装置と陸上の基地局などをケーブルで接続する必要がないので、海岸から遠距離の沖合にも簡単に、且つ低コストで設置できる。
【0016】
更に、津波発生情報通信部が津波の発生に関する情報を送信するのは、津波が発生したことを検出したときだけであり、津波が発生していないときには、消費電力が非常に少ない。従って、電源供給手段の容量を小さくできると共に、電源供給手段の交換などのメンテナンスが殆ど不要になる。
【0017】
ここで、海底地盤の振動を検出する振動検出手段を備える構成にできる。この構成により、津波の発生を地震発生に関連付けて検出できるので、台風などにより海面変位が高くなった場合でも、津波との相違を区別できる。
【0018】
また、前記送信手段は、GPS送信機を用いることができる。
【0019】
また、前記連結部は、前記津波発生情報通信部又は前記海底保持部の一方に設けられた永久磁石と、他方に設けられた電磁石とを有する構成にできる。
【0020】
また、前記連結部は、前記津波発生情報通信部又は前記海底保持部の一方に設けられた係止部と、他方に設けられ前記係止部に係止される係止片と、前記係止片を駆動し前記係止部に係止させ又は係止を解除するアクチュエータと、を有する構成にできる。
【0021】
また、前記津波発生情報通信部は、超音波送受信手段を備える構成にできる。
【0022】
また、前記超音波送受信手段によって、外部から送信された超音波基準信号を受信し、
そのフィードバック信号を送信することにより、前記津波発生情報通信部の各手段が正常に作動しているか否かを診断することができる。
【0023】
また、前記津波発生情報通信部を複数有し、
前記津波の発生が検出される毎に、前記津波発生情報通信部が一個ずつ浮上する構成にできる。
【0024】
この構成により、複数回の津波発生を検出できる。また、余震によって発生した津波を検出できる。
【0025】
また、前記電源供給手段は、前記津波発生情報通信部に設けられた第1の電源供給手段と、前記海底保持部に設けられた第2の電源供給手段とを有し、
前記第1の電源供給手段と前記第2の電源供給手段とが防水コネクタによって接続されている構成にできる。
【0026】
この構成により、津波が発生していないときには、第2の電源供給手段を用いて電源を供給し、津波が発生したときには、第1の電源供給手段を用いることができる。これにより、第1の電源供給手段を有する津波発生情報通信部を小型化できる。
【0027】
また、前記防水コネクタは、前記津波発生情報通信部又は前記海底保持部の一方に設けられた突起状の固定端子と、他方に設けられ前記固定端子側にスライド自在、且つ前記固定端子側に弾性的に付勢された可動端子と、前記津波発生情報通信部と前記海底保持部との間に挟まれ、前記固定端子及び前記可動端子の周囲を包囲する封止部材とを有する構成にできる。
【0028】
また、前記津波発生検出手段は、海面変位を検出する海面変位検出手段を有する構成にできる。
【0029】
また、前記海面変位検出手段は、水圧計を有する構成にできる。この構成により、海面変位検出手段の構成を簡略化できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、津波検知装置全体が海底に設置されるので、船舶の運航などに支承を与えることがない。
【0031】
また、津波の発生を検出した際に津波発生情報通信部が海面に浮上して津波発生情報を送信するので、津波の発生を略リアルタイムで取得できる。
【0032】
また、海底に待機しているときには、殆ど情報を送信しないので、消費電力が非常に少ない。従って、電源供給手段の交換など、メンテナンスが殆ど不要であり、コストダウンが可能である。
【0033】
更に、津波検知装置と地上の基地局との間をケーブルで接続する必要がないので、設置が容易であり、コストダウンが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を添付した図1から図11に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0035】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の津波検知装置1の機能ブロック図を示す。この津波検知装置1は、津波発生を検出すると共に、津波発生に関する情報を送信する津波発生情報通信部14と、この津波発生情報通信部14を海底40に保持する海底保持部15と、津波発生情報通信部14と海底保持部15とを着脱自在に連結すると共に、津波の発生又は海底地盤の振動を検出した際に連結解除される連結部16とを備えている。
【0036】
津波発生情報通信部14は、津波の発生を検出する津波発生検出手段11、海底地盤の振動を検出する振動検出手段20、津波発生検出手段11、及び振動検出手段20と津波発生検出手段11の少なくともどちらかの検出結果に関する情報を記憶する記憶手段12、及び記憶手段12に記憶されている情報を送信する送信手段13を有している。
【0037】
また、この津波発生情報通信部14は、連結部16の連結が解除された際に、津波発生情報通信部14を海面41に浮上させる浮上手段17、津波発生情報通信部14が海面41に浮上した際に、送信手段13に記憶手段12に記憶されている情報を送信させる制御手段18、上記各手段に電源を供給する電源供給手段19、記憶手段12に情報を記憶させると共に、振動検出手段20或いは津波発生検出手段11からの情報により連結部16を解除する制御手段22を備えている。
【0038】
図2は、この津波検知装置1の具体的な構成例を示す。本実施形態では、津波発生情報通信部14における津波発生検出手段11が、水圧計21及び制御手段としての第1CPU22を有している。
【0039】
水圧計21によって、津波検知装置1の設置点(基準点)における水圧を計測する。これにより、基準点と海面41間の距離を算出して、海面41の変位を計測する。そして、海面変位が第1閾値(所定値)を超えた場合は、後述の振動検出手段20の検出結果を参照して、津波が発生したか否かを判断する。
【0040】
記憶手段12は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)を使用できる。また、記憶手段12には、これ以外の各種のメモリを使用できる。
【0041】
送信手段13は、GPS(Global Positioning System)送信機を使用できる。このG
PS送信機によって、津波検知装置1の位置情報、及び各種の情報を送信する。なお、送信手段13には、GPS送信機以外の各種の送信機を使用できる。
【0042】
制御手段18は、第2のCPUを使用できる。海底保持部15は、錘23を有している。この錘23は、津波検知装置1全体を海底に沈めることが可能な重量を有している。
【0043】
連結部16は、図3にも示すように、海底保持部15側に設けられた永久磁石24と、津波発生情報通信部14側に設けられた電磁石25とを有している。
【0044】
この連結部16は、電磁石25がOFFのときに、電磁石25と永久磁石24とが密着する。これにより、津波発生情報通信部14と海底保持部15とが連結される。
【0045】
また、電磁石25がONのときに、電磁石25に永久磁石24の極性と逆極性の磁力が発生し、電磁石25と永久磁石24とが反発する。これにより、津波発生情報通信部14と海底保持部15との連結が解除される。
【0046】
電磁石25は、津波発生検出手段11の検出結果、及び後述の振動検出手段20の検出結果に基づいてON、OFFの制御が行われる。
【0047】
本実施形態では、津波発生検出手段11における水圧計21の検出結果が第1閾値以上となり、振動検出手段20の検出結果が第2閾値以上となったとき、すなわち、津波が発生したと判断されたときに電磁石25がONになり、連結部16の連結が解除される。これにより、津波発生情報通信部14が浮上する。これ以外のときには、電磁石25がOFFになり、津波発生情報通信部14が海底に保持される。
【0048】
なお、連結部16は、永久磁石24を津波発生情報通信部14側に設け、電磁石25を海底保持部15側に設けることもできる。
【0049】
図2の浮上手段17は、密閉された空気室を使用できる。この空気室には、津波発生情報通信部14の全体を海面41に浮上させることが可能な量の空気が密封されている。
【0050】
制御手段18は、上記の如く第2のCPUを使用できる。記憶手段12に記憶されている情報は、制御手段18の制御によって所定のタイミングで送信手段13から送信される。
【0051】
電源供給手段19は、補助バッテリー26、及び補助バッテリー26の電力を必要とする各構成要素に電力を供給するための電源回路27を有している。
【0052】
また、海底保持部15側には、主バッテリー28が設けられている。この主バッテリー28と補助バッテリー26とは、津波発生情報通信部14と海底保持部15との境界部分に設けられた防水コネクタ29を介して接続されている。
【0053】
防水コネクタ29は、図4に示すように、海底保持部15側に設けられた一対の固定端子51と、津波発生情報通信部14側に設けられた一対の可動端子52とを有している。なお、図4は、津波発生情報通信部14と海底保持部15とが分離されている状態を示す。
【0054】
固定端子51と可動端子52は、それぞれ主バッテリー28と補助バッテリー26に接続されている。
【0055】
固定端子51は、海底保持部15における津波発生情報通信部14との対向面15aから外側に突出している。可動端子52は、柱状の端子本体52aと、この端子本体52aの一端に設けられた頭部52bとを有している。この可動端子52は、筒状のケース55内に上下移動自在に配置されている。
【0056】
また、可動端子52は、その頭部52bとケース55間に配置されたスプリング53によって、津波発生情報通信部14の外側に向けて突出する方向に付勢されている。
【0057】
一対の可動端子52の周囲には、津波発生情報通信部14における海底保持部15との対向面14aに設けられた封止部材54が、一対の可動端子52を囲むように配置されている。封止部材54としては、Oリングなどを使用できる。
【0058】
なお、防水コネクタ29は、固定端子51を津波発生情報通信部14側に設け、可動端子52を海底保持部15側に設けることもできる。
【0059】
津波発生情報通信部14と海底保持部15とが連結されたときには、図5に示すように、津波発生情報通信部14の可動端子52が、海底保持部15の固定端子51に当接する。また、可動端子52はスプリング53の付勢力によって固定端子51に押圧される。これにより、可動端子52と固定端子51とが確実に接続される。
【0060】
また、津波発生情報通信部14と海底保持部15とが連結されたときには、可動端子52の周囲を囲んでいる封止部材54が、津波発生情報通信部14と海底保持部15間に挟まれて、所定の力で押し潰される。
【0061】
これにより、防水コネクタ29の周囲における津波発生情報通信部14と海底保持部15との間の隙間55が封止され、防水コネクタ29、津波発生情報通信部14及び海底保持部15内に海水が侵入するのを防止できる。
【0062】
津波発生情報通信部14には、更に、振動検出手段20、海底の水温を測定する温度計30、超音波送受信手段31が設けられている。
【0063】
振動検出手段20及び温度計30は、第1のCPU22に接続されている。超音波送受信手段31は、制御手段18に接続されている。
【0064】
また、振動検出手段20は、加速度センサーを使用できる。この加速度センサーは、互いに直交するX方向、Y方向及びZ方向の加速度を検出する。これらの加速度に基づいて、第1のCPU22によって海底地盤の振動を検出する。
【0065】
次に、この津波検知装置1の作用を説明する。この津波検知装置1は、図6に示すように、海岸58(図7参照)から所定の距離だけ離れた沖合の海底40に沈めて設置される。
【0066】
津波検知装置1を海底に沈める際には、図6中に破線で示すように、各部の重量の関係から海底保持部15が下側、津波発生情報通信部14が上側になった状態で沈降する。従って、海底40に凹凸があっても、津波検知装置1を正常な姿勢で設置できる。
【0067】
津波検知装置1が海底40に設置された状態で、津波発生情報通信部14の津波発生検出手段11によって海面41の海面変位が常時又は定期的に検出される。また、振動検出手段20によって海底40の振動が津波発生検出手段11と連動して検出される。
【0068】
そして、津波発生検出手段11によって検出された海面変位が第1閾値未満で、振動検出手段20によって検出された海底地盤の振動が第2閾値未満の場合は、津波が発生していないと判断される。この場合は、津波発生情報通信部14が海底保持部15に連結された状態で保持される。
【0069】
また、海面変位検出手段11によって検出された海面変位が第1閾値以上で、振動検出手段20によって検出された海底地盤の振動が第2閾値以上の場合は、津波が発生したものと判断される。津波発生検出手段11及び振動検出手段20の検出結果は、記憶手段12に記憶される。
【0070】
なお、振動検出手段20を省略することもできる。この場合は、津波発生検出手段11の検出結果が第1閾値以上となったときに、津波が発生したものと判断する。
【0071】
また、津波検知装置1の津波発生情報通信部14が、海底保持部15に連結されて海底40に設置されているときには、記憶手段12に記憶されている情報(海面変位、海底地盤振動、海水温度など)が、超音波送受信手段31から送信される。この情報は、津波検知装置1の周辺に配置された船舶56によって受信される。
【0072】
これにより、津波検知装置1の津波発生情報通信部14が海底40に沈んでいるときで
も、海面変位や海底地盤の振動などを含む各種の情報を取得できる。
【0073】
また、船舶56から津波検知装置1に向けて、定期的に基準信号(CAL信号:caliblation signal)S1が超音波で送信され、この基準信号S1を超音波送受信手段31によって受信する。
【0074】
そして、超音波送受信手段31から船舶56に向けて、基準信号S1のフィードバック信号S2を送信し、このフィードバック信号S2を船舶56で受信することにより、津波検知装置1の各構成要素が正常に作動しているか否かを診断することができる。
【0075】
また、津波発生検出手段11によって検出された海面変位が第1閾値以上で、振動検出手段20によって検出された振動が第2閾値以上の場合は、津波が発生したと判断される。
【0076】
この場合は、図7に示すように、津波発生情報通信部14と海底保持部15とを連結する連結部16の連結が解除され、津波発生情報通信部14が海底保持部15から切り離される。
【0077】
これにより、津波発生情報通信部14が浮上する。津波発生情報通信部14が海面41に達すると、記憶手段12に記憶されている位置情報、海面変位、海底地盤の振動、海水温度など、津波の発生に関する情報が送信手段13によって送信される。これらの情報は、GPS衛星52を介して送信され、地上の基地局57で受信される。
【0078】
このように、本発明の津波検知装置1は、津波の発生を検出した後、短時間で津波発生に関する情報を送信するので、地上の基地局57などで略リアルタイムに津波発生に関する情報を取得できる。従って、防災用として活用できる。
【0079】
また、津波検知装置1と地上の基地局57などとの間をケーブルで接続する必要がないので、設置が容易であると共に、コストダウンが可能になる。また、海中生物や船舶などによってケーブルが切断されるなどのトラブルの発生を回避できる。
【0080】
更に、津波発生情報通信部14が海底40に沈んでいる場合は、超音波送受信手段31によって津波の発生に関する情報を送信するので、津波の発生に関する各種の情報を常時取得できる。
【0081】
また、船舶56から超音波基準信号S1を送信し、これ超音波送受信手段31によって受信し、そのフィードバック信号S2を送信することにより、各部が正常に作動しているか否かを判断する診断機能を実現できる。
【0082】
また、津波が発生した際には、津波発生情報通信部14が自動的に浮上して、海面変位、海底地盤の振動など津波の発生に関する情報が送信されるので、従来のように津波検知装置を定期的に回収して情報を取り出した後、再設置するような手間を省くことができる。
【0083】
なお、津波発生情報通信部14の浮上手段17である空気室の容量を大きくすることにより、津波発生情報通信部14が海面41に浮上する時間を短くできる。これによって、津波発生からより短時間で津波発生に関する情報を送信できる。
【0084】
また、この津波検知装置1を海岸から離れる方向に所定の間隔をあけて複数配置することにより、津波の進行速度を検出できる。
【0085】
<第2の実施の形態>
図8は、本発明に係る第2実施形態の連結部60を示す。なお、以下の説明では、第1実施形態と同一の部分には、同一の符号を付けて詳細な説明を省略する。
【0086】
この連結部60は、海底保持部15側に設けられた断面コ字状の係止部61と、津波発生情報通信部14側に設けられ、係止部61に係止される係止片62と、この係止片62を駆動して係止部61に係止させ、又は係止を解除するアクチュエータ63とを有している。
【0087】
係止片62は、略L字状に形成された長辺62a及び短辺62bとを有している。長辺62aは、津波発生情報通信部14に中心軸64で回動自在に支持されている。また、短辺62bは、係止部61内に挿入可能に配置されている。
【0088】
アクチュエータ63は、津波発生情報通信部14側に設けられている。このアクチュエータ63の伸縮ロッド63aの先端は、係止片62の長辺部62aにおける端部に、中心軸65で取り付けられている。伸縮ロッド63aが伸縮することにより、係止片62が中心軸64を中心として両方向に所定の角度だけ回転する。
【0089】
アクチュエータ63の伸縮ロッド63aが伸張した場合は、係止片62の短辺部62bが係止部61内に挿入されて係止される。これにより、津波発生情報通信部14と海底保持部15とが連結される。
【0090】
また、図9に示すように、アクチュエータ63の伸縮ロッド63が縮小した場合は、係止片62の短辺部62bが係止部61から抜き出されて、係止が解除される。これにより、津波発生情報通信部14と海底保持部15との連結が解除される。
【0091】
<第3の実施の形態>
図10は、本発明に係る第3実施形態の津波検知装置70を示す。この津波検知装置70は、複数個、本実施形態では2個の津波発生情報通信部14を有している。
【0092】
各津波発生情報通信部14は、それぞれ連結部16によって海底保持部15に連結されている。これらの連結部16は、津波発生検出手段11の検出結果に基づいて、一個ずつ順番に連結解除される。
【0093】
すなわち、一回目に津波発生検出手段11の検出結果が第1閾値以上となり、振動検出手段20の検出結果が第2閾値以上になった場合は、例えば図10中の左側の津波発生情報通信部14における連結部16の連結が解除され、右側の津波発生情報通信部14における連結部16の連結が維持される。
【0094】
これにより、図11に示すように、一方の津波発生情報通信部14のみ浮上し、その記憶手段12に記憶されている情報が送信される。
【0095】
次に、二回目に津波発生検出手段11の検出結果が第1閾値以上となり、振動検出手段20の検出結果が第2閾値以上となった場合は、残りの津波発生情報通信部14が浮上し、その記憶手段12に記憶されている情報が送信される。
【0096】
この津波検知装置70によれば、津波が2回発生した場合でも全ての津波を検出できる。また、余震によって津波が発生した場合でも、この津波を検出できる。
【0097】
なお、津波発生情報通信部14の連結部16の連結を解除する順番、すなわち、津波発生情報通信部14を浮上させる順番は、第1のCPU22によって決定することができる。この場合、各津波発生情報通信部14の第1のCPU22同士を接続しておくことにより、浮上する順番を決定する処理が容易になる。また、津波発生情報通信部14は3個以上設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る第1実施形態の津波検知装置を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の津波検知装置の具体例を示す図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の連結部を示す図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の防水コネクタの接続前の状態を示す図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態の防水コネクタの接続状態を示す図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態の津波検知装置が海底に沈んでいる場合の作用を説明する図である。
【図7】本発明に係る第1実施形態の津波検知装置における津波発生情報通信部が海面に浮上した場合の作用を説明する図である。
【図8】本発明に係る第2実施形態の連結部における連結状態を示す図である。
【図9】本発明に係る第2実施形態の連結部における連結解除状態を示す図である。
【図10】本発明に係る第3実施形態の津波検知装置を示す図である。
【図11】本発明に係る第3実施形態の津波検知装置の作用を説明する図である。
【符号の説明】
【0099】
1 津波検知装置
11 津波発生検出手段
12 記憶手段
13 送信手段
14 津波発生情報通信部
14a 対向面
15 海底保持部
15a 対向面
16 連結部
17 浮上手段
18 制御手段
19 電源供給手段
20 振動検出手段
21 水圧計
23 錘
24 永久磁石
25 電磁石
26 補助バッテリー
27 電源回路
28 主バッテリー
29 防水コネクタ
30 温度計
31 超音波送受信手段
40 海底
41 海面
51 固定端子
52 可動端子
52 GPS衛星
52a 端子本体
52b 頭部
53 スプリング
54 封止部材
55 ケース
55 隙間
56 船舶
57 基地局
58 海岸
60 連結部
61 係止部
62 係止片
62a 長辺
62a 長辺部
62b 短辺
62b 短辺部
63 アクチュエータ
63a 伸縮ロッド
64、65 中心軸
70 津波検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
津波発生を検出すると共に、津波発生に関する情報を送信する津波発生情報通信部と、
前記津波発生情報通信部を海底に保持する海底保持部と、
前記津波発生情報通信部と前記海底保持部とを着脱自在に連結すると共に、津波発生を検出した際に連結解除される連結部とを備え、
前記津波発生情報通信部は、前記津波の発生を検出する津波発生検出手段と、前記津波発生検出手段によって検出された前記津波の発生に関する情報を記憶する記憶手段と、海面に浮上した際に、前記記憶手段に記憶されている前記津波の発生に関する情報を送信する送信手段と、前記津波発生検出手段、前記記憶手段及び前記送信手段に電源を供給する電源供給手段と、
を備えることを特徴とする津波検知装置。
【請求項2】
海底地盤の振動を検出する振動検出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の津波検知装置。
【請求項3】
前記送信手段は、GPS送信機を有することを特徴とする請求項1または2に記載の津波検知装置。
【請求項4】
前記連結部は、前記津波発生情報通信部又は前記海底保持部の一方に設けられた永久磁石と、他方に設けられた電磁石とを有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の津波検知装置。
【請求項5】
前記連結部は、前記津波発生情報通信部又は前記海底保持部の一方に設けられた係止部と、他方に設けられ前記係止部に係止される係止片と、前記係止片を駆動し前記係止部に係止させ又は係止を解除するアクチュエータと、を有することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の津波検知装置。
【請求項6】
前記津波発生情報通信部は、超音波送受信手段を有することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の津波検知装置。
【請求項7】
前記超音波送受信手段によって、外部から送信された超音波基準信号を受信し、そのフィードバック信号を送信することにより、前記津波発生情報通信部の各手段が正常に作動しているか否かを診断することを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の津波検知装置。
【請求項8】
前記津波発生情報通信部を複数有し、前記津波の発生が検出される毎に、前記津波発生情報通信部における前記連結部が一個ずつ連結解除されることを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の津波検知装置。
【請求項9】
前記電源供給手段は、前記津波発生情報通信部に設けられた第1の電源供給手段と、前記海底保持部に設けられた第2の電源供給手段とを有し、
前記第1の電源供給手段と前記第2の電源供給手段とが防水コネクタによって接続されていることを特徴とする請求項1から8の何れかに記載の津波検知装置。
【請求項10】
前記防水コネクタは、前記津波発生情報通信部又は前記海底保持部の一方に設けられた突起状の固定端子と、他方に設けられ前記固定端子側にスライド自在、且つ前記固定端子側に弾性的に付勢された可動端子と、前記津波発生情報通信部と前記海底保持部との間に挟まれ、前記固定端子及び前記可動端子の周囲を包囲する封止部材とを有することを特徴とする請求項9に記載の津波検知装置。
【請求項11】
前記津波発生検出手段は、海面変位を検出する海面変位検出手段を有することを特徴とする請求項1から10の何れかに記載の津波検知装置。
【請求項12】
前記海面変位検出手段は、水圧計を有することを特徴とする請求項11に記載の津波検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−107225(P2008−107225A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290996(P2006−290996)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】