説明

活性のある治療用タンパク質を生成するための細胞系の使用

本発明は、ウイルスにより不死化させた肝細胞の細胞系、及び他の真核細胞による治療用血漿タンパク質を含めたタンパク質の生成、並びにスクリーニング及び治療用のこのようなタンパク質の使用、並びにタンパク質の遺伝情報を保有する核酸、ベクター、及び形質転換又はトランスフェクトされた細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、2003年10月10日に出願された米国仮出願第60/510,509号の特典を主張するものである。
【0002】
政府の助成金
本発明は、米国特許商標庁の先端技術プログラムによって授与された助成金番号70−NANB7H3070で米国政府の支援によって、及びNIH中小企業経営革新支援機関の助成金からの支援(助成金番号:R143GM66480−01)によって部分的になされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、肝細胞によって活性形で発現され得る、タンパク質、特に治療用血漿タンパク質(TPP)を含めた治療用タンパク質を生成するための細胞系、特にウイルスにより不死化させた正常なヒト細胞系の使用、並びに肝臓及び他の臓器に影響を与える疾患及び状態を治療するための、肝細胞によって生成されるタンパク質、治療用タンパク質、及び特に血漿タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
新規な治療用タンパク質の安全且つ有効な生産は、ヒトゲノムプロジェクトが近年完了したこと、及びプロテオミクスの分野における急速な技術の進展によって刺激される、生物薬剤産業の拡大する市場を表す。Paulaus、A.、「ゲノミクス及びプロテオミクス時代の薬剤開発の再設計(The reengineering of drug development in the genomics and proteomics era)」Am Clinical lab、2001.5:p.55〜57。
【0005】
これらの治療用タンパク質の多くは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及び他の非ヒト細胞型において組換え技術によって大量生産されるが、治療上有効なタンパク質の本来の形を使用することによって、複合異種タンパク質の商業化がうまく行われる場合が存在する。このようなタンパク質が多数の遺伝子の産物であり、生成するタンパク質が翻訳後十分にプロセシングされるとき、これは特に当てはまる。ヒト生産者細胞中で発現及びプロセシングされる本来の形のタンパク質又は組換え形のタンパク質を単離することによって、これを行うことができることになる。
【0006】
さらに、細胞系システムによる治療用血漿タンパク質(TPP)の生成によって、その最も顕著なものはウイルス汚染である、血液由来製剤の危険が回避されると思われる。正しく処理すると、血液由来製剤はウイルス感染の伝播はほとんどないが、感知される危険は製造者、ユーザー、及び患者に存在する。実際、新たな系統のヒト免疫不全ウイルス及び狂牛病など伝達性海綿状脳症の原因である物質の近年の発見は、血液由来製剤に関する果てしない関心を示す。Collinge、Jら、「プリオン系統変異及び新たな変異体CJDの病因の分子学的分析。ネイチャー(Molecular analysis ofprion strain variation and the aetiology of’new variant’CJD.Nature)」、1996.383(6602):p.685〜90。
【0007】
治療用薬剤としての組換えタンパク質の制約。
現在、臨床及び治療用途に関して承認されている多くのタンパク質は、モノクローナル抗体以外、組換えタンパク質技術によって大量生産されている。これらの製品は安全且つ有効であることが証明されてきているが、それらの全てがその本来の相当物と同一に働くわけではない。例えば、組換え型因子血液凝固因子(rF)VIII及びIXは、輸液後にそれらの血漿由来の相当物より迅速にクリアランスされる。Shapiro、A.、E.Berntorp、及びM.Morfini、「増大分回収評価、並びに組換え型第IX因子で治療した以前は未処理であった患者における体重及び年齢の影響。(Incremental recovery assessment and effects of weight and age in previously untreated patients treated with recombinant factor IX.)」、Blood、2000.96(補遺1):p.265a。
【0008】
近年の発見は、これが不完全又は不適切な翻訳後修飾の結果であることを示唆する。米国で使用されている第VIII因子のβ−ドメイン欠失型の迅速なクリアランスは、リン脂質結合の違いによるものである。対照的に、チロシン155における硫酸化及び第IX因子のセリン158のリン酸化の違いは、血液凝固因子のより迅速なクリアランスをもたらす。White、C.G.I.、A.Beebe、及びB.Nielsen、「組換え型第IX因子。血栓止血因子(Recombinant factor IX.Thromb Haemost)」、1997.78:p.261〜265。
【0009】
臨床上、これらの凝固因子のより迅速なクリアランスは、患者群に応じておそらくさらに頻繁で高用量の投薬を意味する。これらの欠点を回避するための1つの戦略は、血漿由来のタンパク質を使用することであるが、この手法と関係がある前述のような感知される危険も存在する。
【0010】
治療用タンパク質に関する重要な未対処の必要性
血友病A(第VIII因子欠乏症)及び血友病B(第IX因子欠乏症)は、X連鎖劣性形質として遺伝する出血障害である。したがって、両方共にほぼ全ての男性に影響を与える。血友病Aと血友病Bは、さまざまな程度の臨床的発現がある異種状態である。血友病Aはより一層一般的であり、米国では5000〜10,000人の男性中1人に発生する。Soucie、J.M.、B.Evatt、及びD.Jackson、「米国における血友病の発生。米国血液学専門誌(Hemophilia Occurrence in the United States.American Journal of Hematology)」、1998.59:p.288〜294。
【0011】
対照的に、血友病Bの発生率は10,000人の男性中0.25人である。現在、血漿由来で組換え型の第VIII因子及び第IX因子濃縮物が、血友病の生涯にわたる治療用に使用されている。世界中の血友病群の4分の3は、このTPPが不足しているために治療をほとんど或いは全く受けていないと推測される。したがって、伝統的な組換え法及び/又は血液由来TPPの限られた利用性の欠点を克服するための、完全に機能的であり、自然に処理される血液凝固因子に関する明らかな必要性が存在する。
【0012】
α−1−抗トリプシン(AAT)は、その主な生理的標的が好中球エラスターゼであるヒト血液タンパク質である。重度のAAT欠乏症(遺伝性肺気腫)は、欧州及び米国において約150,000〜200,000の個人に影響を与えていると考えられる。Donohue、T.M.ら、「肝臓学における、肝臓による血漿タンパク質の合成及び分泌(Synthesis and secretion of plasma proteins by the liver、in Hepatology)」:「肝臓疾患の教本(A Textbook of Liver Disease)」、D.Zakim及びT.D.Boyer、Editors.1990、W.B.Sounders Company:フィラデルフィア.p.124〜137。AAT先天性欠乏症、のう胞性線維症、及び慢性閉塞性肺疾患を含めた多くの呼吸器疾患は、肺中のAATとエラスターゼの不均衡によって特徴付けられる。エラスターゼは、他のタンパク質中の細胞外マトリクスタンパク質分子エラスチンを加水分解するセリンプロテアーゼである。多量のエラスターゼは、肺上皮の損傷に貢献すると考えられる。
【0013】
したがって追加のAATを投与することによって、これらの疾患において肺中のエラスターゼの有害な影響を緩和すると、予想される。
【0014】
2000人の子供中約1人が、西半球ではCF遺伝的欠陥を有して生まれている。現在、非常に限られて供給されている、米国で認可されている唯一の血漿由来AATが存在する。診断を受ける患者の多くは、したがってAAT治療を受けていない。一般的な炎症状態を治療するためのAATの臨床的有効性の多大な証拠にもかかわらず、製品の限られた有用性のために、その使用は制限されてきている。したがって、組換え型又は血液由来TPPの欠点を克服するための、完全に機能的であり、自然に処理されるAATに関する明らかな必要性が存在する。
【0015】
敗血症は、感染に対する過剰な全身性応答によって特徴付けられる疾患であり、臓器不全を早急にもたらし、最終的には死をもたらす可能性がある。敗血症は誰でも襲う可能性があり、肺炎、外傷、外科手術及び火傷などの事象によって、或いは癌又はAIDSなどの状態によって誘導される可能性がある。ひとたび誘導されると、凝固、欠陥的フィブリン溶解現象(血塊分解)、及び炎症の制御不能なカスケードは、敗血症の進行を助長する。米国では、敗血症は心臓性以外での集中治療部での主な死因であり、全体では11番目の主な死因である。
【0016】
毎年、700,000を超える敗血症の新たな症例が診断されており、毎日1400人の人々が重度の敗血のため世界中で亡くなっている。現在、敗血症に関する治療は、根本的な感染を管理するための試み、及び感染が臓器不全をもたらす場合は支持療法に限られている。集中医療にもかかわらず、患者の50%までが依然この病気で死んでいる。Rangel−Frausto、M.S.ら、「全身性炎症反応症候群(SIRS)の自然な病歴:前向き研究。(The natural history of the systemic inflammatory response syndrome(SIRS):a prospective study.)」JAMA、1995.273:p.117〜123。
【0017】
敗血症を有する患者を治療するために必要な集中的な長期のケアを考慮すると、経済的負担は大きい。数十年間、重度の敗血病を有する患者を治療する内科医は、この疾患と関係がある高い死亡率を低下させることができると思われる、彼らの利用可能な治療用在庫(主に抗生物質)への有効な追加を探してきている。ヒト敗血病において試みられた治療介入の多くは、循環するエンドトキシンが重要な臨床症状発現及び敗血症の罹患率を担うという、前提に基づくものとなっている。実際、何人かの研究者は、ひとたび重度の敗血症の臨床徴候が現れると、不可逆的な臓器の損傷が既に起こっているので、いずれの補助療法も失敗することになると結論付けている。近年、抗凝血活性を有する天然の血漿タンパク質を主成分とする有望な新しいクラスの治療剤が、臨床範囲に出現してきている。重度の敗血症では、凝血システムが活性化される;血管及び組織中の血管内トロンビンの存在、並びに播種性血管内凝固の発生によって明らかな事象。敗血症の活性タンパク質C(APC)及び抗トロンビンIII(AT−III)の大規模な多施設第III相治験は、2001年初期に実施された。2001年後期には、Eli Lillyが、遺伝子工学処理した型のヒト活性タンパク質C分子であるXigrisを市場に出し始めた;しかしながらこの薬剤は、死の絶対的な危険を6パーセント低下させるだけである。この重度の敗血症のさらに有効な治療に関する明らかな必要性が存在する。
【0018】
インターα阻害剤タンパク質(IαIp)、血漿中で比較的高い濃度で見られる天然セリンプロテアーゼ阻害剤は、炎症、傷の治癒及び癌転移において役割を果たすことが示されてきており、これはBostら、Bost、F、M.Diarra−Mehrpour、及びJ.P.Martin、「インターαトリプシン阻害剤プロテオグリカンファミリー−細胞外マトリクスと結合しそれを安定化させるタンパク質群。(Inter alpha−trypsin inhibitor proteoglycan family−a group of proteins binding and stabilizing the extracellular matrix.)」Eur J Biochem、1998.252:p.339〜346によって総説されている。IαIpの主な形は、インターα阻害剤(IαI、ビクニンと呼ばれる1つの軽鎖ペプチド及び2つの重鎖を含む)、及び1つの軽鎖及び1つの重鎖)を含むプレ−α−阻害剤PαIである。IαIでは、2つの重鎖はH1及びH2と表される。これらは、H1P及びH2Pと表される前駆体から切断される。これらの前駆体は、ITH1及びITH2と表される遺伝子によってコードされている。ビクニンサブユニットは、二重頭部のKunitz型プロテアーゼ阻害剤である。ビクニンサブユニットは、AMBPとして知られAMBPと表される遺伝子によってコードされているα1m/ビクニン前駆体からの切断によって生成される。AMBP融合タンパク質前駆体の性質及び切断プロセスは、以下でさらに論じる。PαIでは、軽鎖はビクニンであり、重鎖はH3であり、H3Pと表される前駆体から切断され、ITIH3と表される遺伝子によってコードされている。IαIとPαIの両方が示されるIαIpタンパク質複合体であり、この語は本明細書で使用してIαIとPαIのいずれか、或いはIαIとPαIの両方を概略的に指す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
近年、ヒトIαIpの軽鎖を認識するモノクローナル抗体(モノクローナル抗体69.31)が、Prothera Biologics(Providence、Rhode Island)の科学者によって開発された。競合ELISAにおいてモノクローナル抗体69.31を使用して、これらの研究者は、血漿IαIpレベルは健康な対照と比較して重度の敗血症患者において有意に低下したことを実証した。この低下は死亡率と相関関係にあり、IαIpが敗血症患者において予想可能な値を有する可能性があることが示唆された。Lim、Y.Pら、「インタートリプシン阻害剤:敗血症患者における低い血漿レベル、及び実験敗血症モデルにおけるその有益な影響。(Inter−trypsin inhibitor:decreased plasma levels in septic patients and its beneficial effects in an experimental sepsis model.)」Shock、2000.13(補遺):p.161。盲腸結さつ及び穿刺した多発性微生物性敗血症ラットモデルを使用するin−vivo動物試験は、IαIpを投与することによって生理食塩水対照と比較して生存率の劇的な改善が生じたことを示した。Yang S、ら、「ヒトインターα阻害剤を投与することによって血行動態の安定性が保たれ、敗血症の生存率が改善される。(Administration of human inter−alpha−inhibitors maintains hemadynamic stability and improves survival during sepsis.)」Crit Care Med.2002 Mar;30(3):617〜22。一緒に考えると、これらの結果は、重度の敗血症の管理におけるIαIpの治療可能性を強く支持する。ヒト血清又は血漿からIαIpを精製することができるが、有効であることが分かった場合でも、敗血症を治療するためのこのタンパク質の世界的な不足が依然として存在するであろう。十分機能的であり、自然に処理される形のこのIαIp(例えば、天然に存在するか或いは組換えによって生成する)を生成又は発現させるための手段は現在存在しない。さらに、このタンパク質の複雑さによって、それを活性のあるプロセシングされた形で発現させること、及びそれを活性状態で単離することの困難が増す。
【0020】
不死化細胞系を記載する幾つかの特許及び公開が存在する:米国特許第6,107,043号(Jauregui);米国特許第5,665,589号(Harris);米国特許出願第2002/0045262A1号(Prachumsri);及び国際公開第WO99/55853号(Namba)。しかしながら今日まで、特に従来技術の細胞系は、機能的な治療用血漿タンパク質の生成において重要なグリコシル化などのタンパク質の翻訳後修飾を安全に、効果的に、且つコスト効率よく実施するため;多数の治療用血漿タンパク質、特に第VIII因子タンパク質又は第IX因子、及びIαIpを同時に生成するため;並びに無血清培地における活性レベルのシトクロムP450酵素の連続的発現を維持するための手段を提供していない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一態様は、不死化ヒト肝細胞を使用してタンパク質を生成する方法であって、
(1)タンパク質をコードし発現することができるDNAを含む不死化ヒト肝細胞を用意するステップ、
(2)タンパク質をコードする1つ又は複数の遺伝子が、タンパク質が不死化肝細胞中で生成されプロセシングされるように発現されるような条件下で、不死化肝細胞を培養するステップ、及び
(3)不死化肝細胞からプロセシングされたタンパク質を単離するステップを含み、必要な場合プロセシングされグリコシル化されるようにタンパク質を発現させ、したがってそのin vivo機能がその単離後実質的に保たれる方法である。
【0022】
タンパク質はヒト肝細胞によって自然に生成されるタンパク質であってよく、或いはヒト肝細胞によって自然に生成されないタンパク質であってよい。タンパク質は治療用タンパク質であることが好ましい。治療用タンパク質は血漿由来の治療用タンパク質であることがより好ましい。
【0023】
タンパク質は、ヒト肝細胞によって通常生成されるタンパク質のムテインであってもよい。
【0024】
タンパク質は、第VIII因子、第IX因子、ヒト成長ホルモン(hGH)、α−1−抗トリプシン、トランスフェリン、及び増殖因子からなる群から選択される血漿タンパク質などの治療用タンパク質、又はこれらのタンパク質の1つのムテインなどであってよい。
【0025】
或いはタンパク質は、アルブミン、トランスコバラミンII、C−反応性タンパク質、フィブロネクチン、セルロプラスミン、及び構造活性、酵素活性、又は輸送活性を有する他のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質、或いはこれらのタンパク質の1つのムテインであってよい。
【0026】
タンパク質は、肝細胞中に本来存在する遺伝子によって発現されるタンパク質であってよく、この場合タンパク質をコードする本来存在する遺伝子の発現が高レベルのプロモーターを肝細胞中に導入することによって増強される。
【0027】
或いは、(1)発現させるタンパク質、発現させるタンパク質のサブユニット、又は発現させるタンパク質の前駆体をコードする遺伝子、及び(2)遺伝子の転写に影響を与える少なくとも1つの制御要素であって、遺伝子と動作可能に連結した制御要素を含む1つ又は複数の組換えベクターを使用することによって、発現させるタンパク質、発現させるタンパク質のサブユニット、又は発現させるタンパク質の前駆体をコードする遺伝子の多数のコピーを導入することによって発現を増強させる。
【0028】
一代替では、発現するタンパク質は細胞から周囲の培養培地に分泌される。
【0029】
タンパク質はグリコシル化されているか、或いは翻訳後にプロセシングされてよい。
【0030】
タンパク質は切断可能なタグと融合した形で発現されてよい。
【0031】
タンパク質は少なくとも2つの異なるサブユニットを含む。この場合、不死化肝細胞を少なくとも2つのベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトすることができ、それぞれのベクターは(1)タンパク質の少なくとも1つのサブユニットをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むDNA;及びタンパク質のサブユニットをコードする少なくとも1つの遺伝子をコードするDNAと動作可能に連結した少なくとも1つの制御要素を含む。
【0032】
本発明の他の態様は、疾患又は状態を治療する方法であって、
(a)前に記載した方法に従って生成される活性タンパク質を用意するステップ、及び
(b)疾患又は状態に罹患している患者にその疾患又は状態を治療するために治療上有効量、活性タンパク質を投与するステップを含む方法である。
【0033】
本発明の方法によって生成されるタンパク質は、疾患又は状態に罹患している患者への送達用に医薬組成物中に配合することが好ましい。
【0034】
本発明の他の態様は、ヒト肝細胞以外の真核細胞を使用してIαIpタンパク質複合体を生成する方法であって、
(1)IαIpタンパク質複合体を形成するタンパク質をコードし発現することができるDNAを含むヒト肝細胞以外の真核細胞を用意するステップであって、(a)IαIpタンパク質複合体の一部であるタンパク質前駆体の少なくとも1つの遺伝子を含むDNA及び(b)少なくとも1つの前駆体遺伝子をコードするDNAと動作可能に連結して前駆体遺伝子の発現を増強させる、少なくとも1つの制御要素を含む少なくとも1つのベクターを用いて、真核細胞が形質転換又はトランスフェクトされているステップ、
(2)IαIp複合体を形成するタンパク質をコードする遺伝子が、IαIp複合体が生成されるように発現されるような条件下で、形質転換又はトランスフェクトされた真核細胞を培養するステップ、及び
(3)形質転換又はトランスフェクトされた真核細胞から発現されたIαIpタンパク質複合体を単離するステップを含む方法である。
【0035】
本発明の他の態様は、タンパク質をコードし発現することができるDNAを含む不死化ヒト肝細胞であって、(1)タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むDNA及び(2)タンパク質をコードするDNAと動作可能に連結してタンパク質の発現を増強させる少なくとも1つの制御要素を含む、少なくとも1つのベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトされている不死化ヒト肝細胞である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
略語及び用語
本発明に従い本明細書で使用する、以下の用語及び略語は、他に明確に述べない限り以下の意味で定義する。これらの説明は例示のみを目的とする。これらの説明は、本明細書を通じて記載し言及する用語を制限することは目的としない。そうではなくて、これらの説明は、本明細書で記載し特許請求する用語の任意の追加的態様及び/又は実施例を含むことを意味する。
【0037】
以下の略語を本明細書では使用する:
MCT=多細胞技術
MFE=多機能性増強培地
TPP=治療用血漿タンパク質
IαIp=インターα阻害剤タンパク質
SV40=シミアンウイルス40T抗原及びt抗原
AAT=α−1−抗トリプシン
【0038】
用語「細胞系」は、in vitroでの数回の継代後に共通の起源で共に増殖する、細胞の個体群又は混合物を指す。同じ培地及び培養条件中で共に増殖させることによって、細胞系の細胞は概して類似した増殖率、温度、気体相、栄養及び表面要件という特性を共有する。幾つかの物質、例えばアルブミンを発現する細胞系中の細胞の存在は、全てではない場合でも十分な比率の細胞系中の細胞が、測定可能な量のその物質を生成するという条件で確認することができる。富化細胞系は、幾つかの形質、例えばアルブミンを発現する形質を有する細胞が、1回又は複数回の二次培養ステップ後に本来の細胞系より高い比率で存在する細胞系である。
【0039】
用語「クローン細胞」は、単細胞に由来する細胞である。実際問題として、哺乳動物細胞の純粋なクローン細胞培養物を得ることは困難である。細胞富化の連続的な繰り返しによって、高度の細胞純度を得ることができる。本明細書で使用するように、少なくとも80%の細胞が明確な一組の形質を有する細胞培養物を、クローン細胞培養物と呼ぶ。少なくとも90%の細胞が明確な一組の形質を有する細胞培養物を、クローン細胞培養物と呼ぶことが好ましい。少なくとも98%の細胞が明確な一組の形質を有する細胞培養物を、クローン細胞培養物と呼ぶことがより好ましい。本発明で特許請求するFa2N−4及びEa1C−35細胞系は、クローン細胞系である。
【0040】
用語「不死化」は、無限の寿命の獲得として定義する。SV40のテロメラーゼ、癌遺伝子、又はラージT抗原を用いたトランスフェクションによって、或いはSV40を用いた感染によって、有限の細胞系において不死化を誘導することができる。不死化は必ずしも悪性形質転換ではないが、それが悪性形質転換の一部である可能性はある。
【0041】
用語「不死化細胞系」は、in vitroで、適切な増殖培地で培養すると、老化せずに連続的に増殖する細胞系を指す。
【0042】
用語「ウイルスにより不死化した肝細胞」は、野生型又は突然変異ウイルスのウイルスゲノムの全体又は一部分でトランスフェクト或いは感染させた肝細胞を指す。ウイルスはDNAウイルスであることが好ましい。ウイルスは、p53及びRb腫瘍抑制タンパク質と結合し、それらの腫瘍抑制経路の不活性化をもたらすSV40であることがより好ましい。
【0043】
用語「実質的に純粋なDNA」は、本来存在する状態でその側面に位置する配列から精製したDNA、即ち断片と通常隣接する配列、例えばそれが本来存在するゲノム中の断片であり、例えば細胞中にそれを本来伴うタンパク質から精製したDNAを本来伴う他の要素から実質的に精製した断片と隣接する配列から除去したDNA断片を指す。
【0044】
用語「肝細胞」は、(例えば肝臓毒性プロセス、疾患、又は外科手術中の)肝臓質量の損失に応じて多量に再生することができ、肝臓の細胞群の約80%を構成する肝臓の細胞を指す。肝細胞は、20〜30μmの間で測定される大きな多角形細胞である。肝細胞は、細胞当たり200〜300もの多くのペルオキシソームを有しており、これは一般的な細胞質の代謝活動の多くにおいて生成される過酸化水素の分解と関係がある。さらにペルオキシソームは、プリン、アルコール及び脂質の糖新生、代謝において特異的な酸化機能を有する。肝細胞中の滑面小胞体(sER)は、毒素及び薬剤の分解及び結合と関係がある酵素を含む。薬剤、毒素又は代謝刺激物質により肝細胞が攻撃される条件下では、sERが細胞中の主なオルガネラとなる可能性がある。肝細胞は、恒常性にとって重要な多数の微調整された機能を果たす。哺乳動物身体中のさまざまな細胞型の中では、肝細胞のみが、炭水化物、脂質、アミノ酸、タンパク質、核酸及び補酵素の合成及び分解に関する経路を同時に組み合わせて、独特の生物学的作業を実施する。
【0045】
用語「単離肝細胞」は、その本来の環境でそれが付着している他の細胞から物理的に分離した肝細胞を指す。
【0046】
用語「初代肝細胞」は、完全な肝臓組織から新たに単離した肝細胞を指す。
【0047】
用語「正常な初代ヒト肝細胞」は、非疾患状態のヒト肝臓に由来し適切な培地中で培養すると有限期間in vitroで保たれる肝細胞を指す。
【0048】
用語「低温保存したヒト肝細胞」は、適切な培地中で培養する前に低温保存した、正常な初代ヒト肝細胞を指す。
【0049】
用語「代謝活動」は、異化作用(分解)及び同化作用(増大)を含めた、細胞中で進行する化学反応全体を指す。肝細胞における代謝活動には、おそらく毒性である化合物を処理する、例えば薬剤又は内因性代謝産物を毒性の低い化合物又は非毒性化合物にする能力があるが、これだけには限られない。
【0050】
用語「シトクロムP450酵素」又は「CYP」は、肝臓中で主に見られるヘム系酸化酵素のファミリーを指す。これらの酵素は毒素に対する防御の第一線を形成し、それらは疎水性薬剤、発癌物質、及び他のおそらく毒性である化合物、並びに血液中を循環する代謝産物の代謝と関係がある。これらは小胞体の表面に結合することが分かっており、そこでそれらは炭素が豊富な毒素上の化学的ハンドルに結合する。次いで他の酵素が大きな可溶性の基をこれらのハンドルと結合させ、その分子全体をさらに水溶性にする。これによって、泌尿系及び消化系による毒素の除去が可能となる。CYPファミリーは幾つかのサブファミリーに分けられ、それらはCYP1A、CYP2A、CYP2C、CYP2D、CYP2E、及びCYP3Aを含むが、これらだけには限られない。これらのサブファミリー中には、「イソ酵素」又は「イソ型」と呼ばれることが多い、多数のヒトCYP酵素が存在する。ヒトCYP3A、CYP2D6、CYP2C、及びCYP1Aイソ型は、薬剤代謝において重要であることが知られている。例えば、Murray、M.、23 Clin.「薬物動態(Pharmacokinetics)」132〜46(1992)を参照のこと。これまでCYP3A4は、これらの組織中の合計CYP450タンパク質のそれぞれ30%及び70%を構成する、ヒト肝臓及び小腸中の主なイソ型である。主にin vitro試験に基づいて、ヒト中で使用される全薬剤の40%〜50%の代謝が、CYP3A4触媒の酸化と関係があると推測されてきている。Thummel、K.E.&Wilkinson、G.R.、「ヒトCYP3Aに関するin vitro及びin vivoの薬剤相互作用(In Vitro and In Vivo Drug Interactions Involving Human CYP3A)」、38 Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.、389〜430(1998)を参照のこと。
【0051】
用語「肝機能」は、(1)糖新生;(2)グリコーゲン合成、貯蔵、及び分解(3)アルブミン、ヘモペキシン、セルロプラスミン、血液凝固因子(第V、VII、VIII、IX、X因子、プロトロンビン、及びフィブリノゲンを含むが、これらだけには限られない)、α−1−抗トリプシン、トランスフェリン、及び抗トロンビンIIIだけには限られないが、これらを含めた血清タンパク質の合成;(4)胆汁酸の結合;(5)ヘムの胆汁色素への転換;(6)リポタンパク質の合成;(7)ビタミンの貯蔵及び代謝;(8)コレステロールの合成;(9)尿素合成及びグルタミン合成を含めたアンモニア代謝;(10)芳香族アミノ酸の代謝転換及び再利用を含めたアミノ酸代謝;並びに(11)解毒及び薬剤代謝だけには限られないが、これらを含めた肝臓に特異的な生物学的機能を指す。
【0052】
肝細胞由来のタンパク質は、治療用途のための本来の血漿タンパク質を生成するための、安全でより再現性のある手法をもたらす。これらの血漿タンパク質は第VIII因子、第IX因子、ヒト成長ホルモン(hGH)、及びα−1−抗トリプシンを含むが、増殖因子などの他の血漿タンパク質を含むこともできる。この発見は、不死化ヒト肝細胞の細胞系がインターα阻害剤タンパク質、4つの異なる遺伝子から生成される4つの異なるポリペプチドによって作製される血漿タンパク質の複合体ファミリーを生成し続けることを、その所有権で実証するMCTのデータに基づくものである。Salier、J.−P.ら、「インターa阻害剤ファミリー:構造から制御まで。(The inter−a−inhibitor family:from structure to regulation.)」Biochem J、1996.351:p.1〜9。
【0053】
タンパク質を生成するための不死化細胞の使用法
本発明の一態様は、タンパク質、好ましくは治療用タンパク質、及びより好ましくは治療用血漿タンパク質を生成するための不死化ヒト肝細胞の使用法である。
【0054】
一般にこのような方法は、
(1)タンパク質をコードし発現することができるDNAを含む不死化ヒト肝細胞を用意するステップ、
(2)タンパク質をコードする1つ又は複数の遺伝子が、タンパク質が不死化肝細胞中で生成されプロセシングされるように発現されるような条件下で、不死化肝細胞を培養するステップ、及び
(3)不死化肝細胞からプロセシングされたタンパク質を単離するステップを含み、
必要な場合プロセシングされグリコシル化されるようにタンパク質を発現させ、したがってそのin vivo機能がその単離後実質的に保たれる方法である。
【0055】
生成されるタンパク質は、治療用血漿タンパク質などの血漿タンパク質であってよい。治療用血漿タンパク質の例には、第VIII因子、第IX因子、ヒト成長ホルモン(hGH)、α−1−抗トリプシン、又は増殖因子などのタンパク質があるが、これらだけには限られない。或いは生成されるタンパク質は、IαI又はPαIのいずれか、或いはこれらのタンパク質複合体の両方などの、IαIpタンパク質複合体であってよい。さらに他の代替では、タンパク質は、アルブミン、トランスコバラミンII、C−反応性タンパク質、フィブロネクチン、又はセルロプラスミン、及び構造活性、酵素活性、又は輸送活性を有する他のタンパク質などの、診断用途又は他の用途に有用なタンパク質であってよい。さらに他の代替では、生成されるタンパク質は、増殖因子、第VIII因子又は第IX因子などの血液凝固因子、ヒト成長ホルモン、α−1−抗トリプシンなどの抗トリプシン、又は他のタンパク質などのタンパク質のムテインであってよく、その一次構造は、指定部位突然変異誘発などの遺伝子工学の標準的技法によって改変される。同様にタンパク質は、アルブミン、トランスコバラミンII、C−反応性タンパク質、フィブロネクチン、又はセルロプラスミン、及び構造活性、酵素活性、又は輸送活性を有する他のタンパク質などの、診断用途又は他の用途に有用なタンパク質のムテインであってよい。
【0056】
生成されるタンパク質は、構造的に或いはホルモンシグナルなどの1つ又は複数の外部刺激に応じて、肝細胞によって自然に生成されるタンパク質であってよい。或いは生成されるタンパク質は、肝細胞によって自然に生成されないタンパク質であってよい。後者の場合タンパク質は、正常な肝細胞によって自然に生成されるタンパク質のムテインであってよい。
【0057】
多くの生物学的活性があるタンパク質は、少なくとも2つの異なるサブユニットを含む。このようなタンパク質を発現させるとき、不死化肝細胞を少なくとも2つのベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトすることができ、それぞれのベクターは(1)タンパク質の少なくとも1つのサブユニットをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むDNA;及びタンパク質のサブユニットをコードする少なくとも1つの遺伝子をコードするDNAと動作可能に連結した少なくとも1つの制御要素を含む。
【0058】
不死化肝細胞は、この参照によって本明細書に組み込まれる2003年10月10日に出願されたLiuらによる仮特許出願第10/510,509号中に開示された不死化肝細胞であってよい。チャイニーズハムスター卵巣細胞などの哺乳動物細胞において遺伝的組換えによって生成される異種タンパク質とは対照的に、本発明の方法で使用するのと同様の不死化肝細胞由来のタンパク質はより正常に働く、何故なら、完全な機能に必要とされる二次的な翻訳後修飾が、直接肝細胞によって行われるからである。タンパク質、好ましくは治療用タンパク質、及びより好ましくは治療用血漿タンパク質を生成するために不死化肝細胞を使用することの有意な利点は、生産者細胞系がヒト起源であり、したがってより自然なタンパク質を生成することである。したがって、幾つかの治療用血漿タンパク質(TPP)はヒト肝細胞によって合成されるので、本発明の細胞系のヒト肝細胞系の発現系を使用して、その「本来の」形のTPPを生成する。1つには、非ヒトタンパク質がヒト対象に与えられる場合、これによって考えられる免疫応答が排除され、非自己として認識されるタンパク質が投与される場合、体液性又は細胞性抗体応答が発生すると思われる。
【0059】
多数の専有の不死化ヒト肝細胞の細胞系が、この参照によって本明細書に組み込まれる2003年10月10日に出願されたLiuらによる仮特許出願第60/510,509号中に記載されている。大部分のこれらの細胞系は、不死化遺伝子としてシミアンウイルス40(SV40)T抗原を使用して作製された。T抗原を用いたヒト細胞のトランスフェクションは細胞寿命の延長、細胞がウイルス感染に対して半許容的であるために非腫瘍性の不死化をしばしばもたらすため、この戦略が選択された。T抗原は90,000ダルトンの核タンパク質である。Cascio、S.、「ヒト肝細胞を不死化させるための新規な戦略。(Novel strategies for immortalization of human hepatocytes.)」Artificial Orgs、2001.25:p.529〜538。
【0060】
T抗原作用の多数の機構は依然として調査中であるが、多くの研究は、このウイルスタンパク質が、宿主細胞の2つの重要な腫瘍抑制遺伝子であるRb及びp53と結合し、それを不活性化させることを実証している。Ludlow、J、「SV40巨大−腫瘍抗原と成長抑制タンパク質pRB及びp53の間の相互作用。(Interactions between SV40 large−tumor antigen and the growth suppressor proteins pRB and p53.)」FASEB J、1993.7:p.866〜871。
【0061】
Rb及びp53の不活性化は細胞の寿命を延長させるが、細胞に老化を回避させ無限に増殖させるために、不死化は二次的な遺伝事象を必要とする。この事象の性質はあまり理解されていないが、細胞が危険状態を経るときに生じる。大部分のSV40T抗原不死化細胞系は、初代細胞型と関係があるさまざまなレベルの分化特性を有しており、in vitroでの多数回の継代前に発癌性は示さない。Kuroki、T.及びN.Huh、「何故ヒト細胞はin vitroでの悪性細胞形質転換に耐性があるのだろうか?(Why are human cells resistant to malignant cell transformation in vitro?)」Jpn J Cancer Res、1993.84:p.1091〜1100。
【0062】
SV40ウイルスのT抗原遺伝子を用いて細胞をトランスフェクトすることによって、正常なヒト肝臓初代細胞を作製して連続的に増殖させることができる。トランスフェクション又は感染は、SV40ウイルスのT抗原遺伝子を含むウイルス又はプラスミドを使用することによって実施することができる。トランスフェクション又は感染のいずれかが、細胞系の形質転換をもたらす可能性がある。パピローマウイルス又はエプスタインバーウイルスなどの、他の形質転換ベクターも有用である可能性がある。連続的なヒト細胞系を作製するための技法は、以下の参照文献中に記載されている:Grahm.F.L.、Smiley J.、Russell、W.C.及びNairn、R.「ヒトアデノウイルス5型由来のDNAによって形質転換したヒト細胞系の特性。(Characteristics of a human cell line transformed by DNA from human adenovirus type 5.)」J.Gen.Virol.、36:59〜72(1977);Zur Hausen、H.「発癌性ヘルペスウイルス(Oncogenic herpes viruses)」In:J.Tooze(編)、「DNA腫瘍ウイルス(DNA tumor viruses)」、Rev.第2版、pp747〜798.Cold Spring Harbor、ニューヨーク、Cold Spring Harbor Press(1981);Popovic、M.、Lange−Wantein、G.、Sarin、P.S.、Mann、D.及びGallo、R.C.「ヒトT細胞白血病/リンパ腫ウイルス(HTLV)によるヒト臍帯血T細胞の形質転換(Transformation of a human umbilical cord blood T−cells by human T−cell leukemia/lymphoma virus(HTLV)」、Prot.Natl.Acad.Sci.USA、80:5402〜5406(1983);DiPaolo、J.A.Pirisi、I.、Popeseu、N.C.、Yasumoto、S.、Poniger、J.「ヒトパピローマウイルス16型DNA、癌細胞によってヒト及びマウス細胞において誘導される進行的変化(Progressive changes induced in human and mouse cells by human Papillomavirus Type−16 DNA、Cancer Cells)」5:253〜257(1987)。
【0063】
本発明の方法において有用な不死化ヒト肝細胞は、低温保存した初代ヒト肝細胞に由来することが好ましい。本発明の方法において有用な不死化ヒト肝細胞は、実質的に純粋なSV40のDNAを導入することによって不死化させることが好ましい。実質的に純粋なSV40のDNAは、野生型SV40のラージT抗原及びスモールt抗原(タグ)を含むことが好ましい。典型的には肝細胞は、そこから腫瘍抑制遺伝子をコードする実質的に純粋なDNAを単離することができるDNAを含む。DNAによってコードされる腫瘍抑制遺伝子は、ヒトRbであることが好ましい。好ましくは肝細胞は、そこからヒトp53をコードする実質的に純粋なDNAを単離することができるDNAも含む。
【0064】
典型的には、ウイルスにより不死化させたヒト肝細胞は、無血清培地中で保たれ増殖する能力を有する。無血清培地は、MCT無血清培地であることが好ましい。
【0065】
適切な肝細胞の細胞系には、ウイルスにより不死化させたヒト初代肝細胞の細胞系Fa2N−4、及びウイルスにより不死化させたヒト肝細胞の細胞系Ea1C−35がある。他のヒト肝細胞の細胞系も使用することができる。
【0066】
不死化ヒト肝細胞の細胞系の作製
初代細胞の単離
ドナーであるヒト肝臓の消化は、37℃において酸素飽和状態のカルシウムを含まないバッファーの前灌流によってin vitroで行った。前灌流は肝臓が平衡状態になるまで続け、次に肝臓が完全に消化されるまで(約45分)酸素飽和状態のコラゲナーゼバッファーによって灌流を続けた。
【0067】
細胞を採取するために、肝臓を1cm片に切り刻み、生成した懸濁液は#10ワイヤースクリーンを介して濾過し、次いで253umのナイロンメッシュを介して再度濾過した。懸濁液は20×gで5分間4℃において遠心分離にかけて、完全な実質細胞を沈殿させた。ペレットは4℃において再懸濁させ、洗浄バッファーで洗浄して(3回)、全コラゲナーゼを除去した。細胞ペレットは150mlの組織培養培地中に再懸濁させて、3〜4×10細胞/mlの密度を有する400〜500mlの最終体積にした。トリパンブルー及び乳酸デヒドロゲナーゼによる生存能力の評価を、この懸濁液の等分試料に行った。
【0068】
初代ヒト肝細胞の低温保存
前に記載したようにドナー肝臓から単離した、新たに単離したヒト肝細胞を、5分間50×gでの遠心分離によって3回洗浄バッファーで洗浄した。細胞ペレットは冷蔵凍結培地(無血清MFE培地:FBS:DMSO(8:1:1))に、5×10/mLの最終細胞密度で再懸濁させた。細胞懸濁液の等分試料は、Nuncクリオバイアルに移した(1.0mL/1.5mlクリオバイアル、4.5mL/5mlクリオバイアル)。クリオバイアル中の細胞は15〜30分間4℃において平衡状態にし、次いでバイアルは少なくとも3時間−80℃のスタイロフォーム(商標)容器中に置いた。次いでバイアルはLN中に沈めた。
【0069】
細胞系の作製
低温保存したヒト肝細胞を摂氏42度の水浴中で急速に解凍し、洗浄し、MFE培養培地に平板培養した。2日後、リポフェクション介在トランスフェクションによって不死化遺伝子を導入した。Ea1C−35細胞系は、SV40ゲノムの2.5kbの初期領域を含む不死化ベクターを用いたトランスフェクションから誘導したものであり、SV40ゲノムはラージT抗原とスモールt抗原の両方を含み、その発現はSV40初期プロモーターによって誘導される。この初期領域はStratagene pBluescript SKベクター骨格中に挿入し、pBlueTagと名付けた。neoプラスミドのコトランスフェクションによって選択可能なマーカーとして、ネオマイシン耐性をトランスフェクト細胞に与えた。G418含有培地中で増殖するそれらの能力に基づいて、クローンを最初に選択した。Ea1C−35細胞系を確立し、CSM培地中に保った。
【0070】
1つの不死化ベクターを用いたリポフェクション介在トランスフェクションによって、Fa2N−4細胞系を不死化させた。pBlueTagベクター中に含まれるSV40ゲノムの初期領域は、InvivoGen pGT60mcsプラスミドに基づく骨格中に挿入し、pTag−1と名付けた。T−抗原コード領域は、ハイブリッドhEF1−HTLVプロモーターの影響下に存在する。このベクターは、薬剤選択可能なマーカーとしてヒグロマイシン耐性遺伝子もコードしている。ヒグロマイシン含有培地中で増殖するそれらの能力に基づいて、クローンを選択した。Fa2N−4細胞系を確立し、MFE中に保った。
【0071】
Fa2N−4細胞系は、ブダペスト条約の合意の下で2003年10月6日にAmerican Type Culture Collection、12301 Parklawn Dr.、Rockville、Mdに寄託された。Ea1C−35細胞系は、ブダペスト条約の合意の下で2003年10月6日にAmerican Type Culture Collection(12301 Parklawn Dr.,Rockville,Md)に寄託された。
【0072】
前に記載した細胞系などの適切な不死化肝細胞の細胞系は、前に記載したのと同様にタンパク質を生成するために使用することができる。タンパク質は第VIII因子、第IX因子、α−1−抗トリプシン、ヒト成長ホルモン、増殖因子、又は他のタンパク質などの治療用血漿タンパク質であってよい。タンパク質は増殖因子、血液凝固因子、α−1−抗トリプシンなどの抗トリプシン、及び他のタンパク質などのタンパク質のムテインであってもよく、その一次構造は、指定部位突然変異誘発などの遺伝子工学の標準的技法によって改変される。タンパク質は、アルブミン、トランスコバラミンII、C−反応性タンパク質、フィブロネクチン、又はセルロプラスミン、及び構造活性、酵素活性、又は輸送活性を有する他のタンパク質を含めた治療又は診断対象の他のタンパク質をさらに含むこともできる。
【0073】
第VIII因子、第IX因子、ヒト成長ホルモン(hGH)、又はα−1−抗トリプシンだけには限られないが、これらなどの天然に存在する血漿タンパク質を生成するために肝細胞の細胞系を使用するとき、幾つかの戦略を使用して血漿タンパク質の発現を最大にすることができる。
【0074】
1つの戦略では、タンパク質をコードする天然に存在する遺伝子の発現は、高レベルのプロモーターを導入することによって増強させる。このようなプロモーターは当分野では知られており、例えばこの参照によって本明細書に組み込まれる、S.B.Primroseら、「遺伝子操作の原則(Principles of Gene Manipulation)」(第6版、2001、Blackwell、オクスフォード、イングランド)、p.199中に記載されている。このようなプロモーターは、エンハンサーなどの他の調節要素を伴う可能性もある。このようなプロモーター、又はプロモーターとエンハンサーの組合せには、SV40初期プロモーターとエンハンサー、ラウス肉腫ウイルス長末端反復プロモーターとエンハンサー、及びヒトサイトメガロウイルス即時型プロモーターがある。
【0075】
しかしながら、(1)発現させるタンパク質、発現させるタンパク質のサブユニット、又は発現させるタンパク質の前駆体をコードする遺伝子、及び(2)遺伝子の転写に影響を与える少なくとも1つの制御要素であって、遺伝子と動作可能に連結した制御要素を含む1つ又は複数の組換えベクターを使用することによって、発現させるタンパク質、発現させるタンパク質のサブユニット、又は発現させるタンパク質の前駆体をコードする遺伝子の多数のコピーを導入することによって発現を増強させることが一般に好ましい。制御要素は典型的にはプロモーター、プロモーターとエンハンサーの組合せである。適切なベクターの特性は:(1)複製開始点;(2)所望の遺伝子をコードするDNAの挿入を可能にする制限エンドヌクレアーゼ切断部位;及び(3)選択マーカー、典型的には抗生物質耐性を与える選択マーカーも含む。1つの特に好ましい実施形態では、制御要素は少なくとも1つのプロモーター及び少なくとも1つのエンハンサーを含む。
【0076】
適切な組換えベクターには、SV40由来ベクター、ネズミポリオーマ由来ベクター、BKウイルス由来ベクター、エプスタインバーウイルス由来ベクター、アデノウイルス由来ベクター、アデノ関連ウイルス由来ベクター、バキュロウイルス由来ベクター、ヘルペスウイルス由来ベクター、レンチウイルス由来ベクター、レトロウイルス由来ベクター、アルファウイルス由来ベクター、ワクシニアウイルス由来ベクター、及び他のベクターがあるが、これらだけには限られない。このようなベクターは典型的には、強力で構成的なプロモーター、発現されるDNA中に少なくとも1つのイントロン、及び転写される配列の3’末端にポリアデニル化シグナルを含む。グリコシル化などの適切な翻訳後修飾を確実にするためにシグナルペプチドを加えることが、望ましい可能性がある。これらのベクター及びベクターの特性は、S.B.Primroseら、「遺伝子操作の原則(Principles of Gene Manipulation)」(第6版、2001、Blackwell、オクスフォード、イングランド)、pp.174〜201中、及びT.A.Brown、「遺伝子クローニング及びDNA分析:導入章(Gene Cloning and DNA Analysis:An Introduction)」(第4版、2001、Blackwell、オクスフォード、イングランド)中に記載されており、両方共にこの参照によって本明細書に組み込まれる。
【0077】
発現されるタンパク質をコードするDNAを単離するための方法、及びそのようなDNAをこれらのベクター中に挿入するための方法も、当分野ではよく知られている。これらの方法は、例えばこの参照によって本明細書に組み込まれる、S.B.Primrose、「遺伝子操作の原則(Principles of Gene Manipulation)」(第6版、Blackwell、オクスフォード、2001)中に記載されている。一般に、クローニングに適したDNAは、特異的mRNAの逆転写から得ることができ、これにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の施用を続けてDNAを増幅させることができ;このようなDNAはcDNAとして一般に知られている。特異的な制限エンドヌクレアーゼを用いたベクターの切断、及び切断部位へのDNAの挿入を一般に含む技法によって、DNAをベクター中に挿入することができる。
【0078】
ウイルスにより不死化させたヒト肝細胞を形質転換又はトランスフェクトするための方法は当分野でよく知られており、ここではさらに詳細に記載する必要はない。一般にこのような方法には、リポフェクション、リン酸カルシウム仲介トランスフェクション、DEAE−デキストランによって仲介されるトランスフェクション、エレクトロポレーションによるトランスフェクション、バイオリスティック法によるトランスフェクション、及びポリブレンを使用するトランスフェクションがあるが、これらだけには限られない。これらのトランスフェクション法は、この参照によって本明細書に組み込まれる、J.Sambrook&D.W.Russell、「分子クローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」(第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、2001)、vol.3、ch.16中に記載されている。
【0079】
多くの場合、1つ又は複数のレポーター遺伝子をベクター中に組み込んで、トランスフェクションの効率を評価することが望ましい。選択する遺伝子は、強力な偏在するプロモーターとエンハンサーの組合せの制御下にある。これらはヒトサイトメガロウイルスの即時型遺伝子、ラウス肉腫ウイルス長末端反復、又はヒトβ−アクチン遺伝子由来のものを含む。適切なレポーター遺伝子の一例は、大腸菌トランスポゾン中に見られるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子である。レポーター遺伝子の発現の検出は、蛍光の検出又は放射性生成物の検出などの、さまざまな技法によって行うことができる。レポーター遺伝子及びそれらのアッセイは、この参照によって本明細書に組み込まれる、M.A.Aitkenら、「高等真核生物の組織培養細胞中の遺伝子の移動及び発現(Gene Transfer and Expression in Tissue Culture Cells of Higher Eukaryotes)」、「分子生物学法教本(Molecular Biomethods Handbook)」(R.Rapley&J.M.Walker編、Humana Press、Totowa、New Jersey、1998)、pp.235〜250中にさらに記載されている。
【0080】
タンパク質をひとたび発現させた後、次いで発現したタンパク質を単離することが必要である。これは典型的には、タンパク質を精製するための標準的な方法によって行う。これらの方法には、プロテアーゼ活性などの任意の容易に確認可能な性質を使用してタンパク質を検出する、硫酸アンモニウムなどの塩との沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相高圧液体クロマトグラフィー、等電点電気泳動法、クロマトフォーカシング、及び/又は免疫親和性クロマトグラフィーがあるが、これらだけには限られない。他の精製法も当分野で知られている。タンパク質精製法は、例えばこの参照によって本明細書に組み込まれる、R.K.Scopes、「タンパク質精製:原則及び実践(Protein Purification:Principles and Practice)」(第3版、Springer−Verlag、ニューヨーク、1994)中に記載されている。
【0081】
幾つかの場合、発現するタンパク質が細胞から周囲の培養培地に分泌される可能性がある。このプロセスの効率は、タンパク質が経るグリコシル化などの転写後修飾の型に依存する。この型は粗面小胞体及びゴルジ装置内でのタンパク質のプロセシング、並びにその後の分泌に影響を与える。このことは、この参照によって本明細書に組み込まれる、A.J.Dorner&R.J.Kaufman、「哺乳動物細胞中で発現されるタンパク質の合成、プロセシング、及び分泌の分析(Analysis of Synthesis、Processing、and Secretion of Proteins Expressed in Mammalian Cells)」、「遺伝子発現の技術(Gene Expression Technology)」(D.V.Goeddel、ed.、Academic Press、サンディエゴ、1991)、pp.577〜598中に記載されている。発現されるタンパク質がタグと呼ばれる他のタンパク質と融合して、それを使用してタンパク質精製を容易にすることができるように、クローニングベクターを選択することもできる。タグの例にはグルタチオンS−トランスフェラーゼ、Ma1Eマルトース結合タンパク質、及びポリヒスチジン配列がある。生成する融合タンパク質は次いで特異的なタンパク質分解によって切断して、タグを除去し精製血漿タンパク質を生成することができる。この技法は、血漿タンパク質を含めた治療用タンパク質と非治療用タンパク質の両方に施すことができる。
【0082】
タンパク質を生成するための本発明の適用例の一例では、このようなウイルスにより不死化させた初代ヒト肝細胞は、IαI及びPαIなどのIαIpタンパク質のさまざまな前駆体の遺伝子を含む、ベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトすることができる。これを行ってIαIpタンパク質の発現を増大させる。この例の1つの型では、2つのベクター:(1)遺伝子ITH3及びAMBPを含む第一のベクター;及び(2)遺伝子ITH2及びITH1を含む第二のベクターを使用する。
【0083】
治療用血漿タンパク質の生成の一例では、ITH1及びITH2遺伝子をコードするDNAを含むベクターは、InvivoGenによって販売されている市販のベクターの変形である。InvivoGenによって販売されているこのベクターはpVITRO2と表され、ヒグロマイシン耐性遺伝子を含む。変形ベクターはpVITRO2−Blastiと表される。ヒグロマイシン耐性遺伝子とブラスチシジン耐性遺伝子を交換することによって、ベクターを改変する。ベクターは2つのヒトフェリチン複合プロモーターを使用する。FerH及びFerLの5’−UTRは、マウス及びチンパンジーのEF1a遺伝子の5’−UTRによって置換される。両方のプロモーターの活性は、SV40及びCMVエンハンサーを加えてCMVプロモーターの活性と同等の活性を生み出すことによって増大する。組み込んだ2つのcDNAに関する同等なレベルの発現をそれぞれのベクターから誘導するために、このプロモーター骨格を選択した。これらのcDNAによってコードされるポリペプチドを使用するとIαIpタンパク質は1:1:1:1の比率で構成されるので、これは非常に望ましい。プラスミドpVITRO2−Blastiでは、ITH1はMCS1にクローニングされ、ITH2はMCS2にクローニングされる。これらのcDNAは、可能な下流のサブクローニングを容易にするためにそれらの両端に加えられた、特有の制限部位を有する。ITH1をコードするcDNAに関する線状構造は、5’−BamHI−AgeI−EcoRV−cDNA−MIuI−AvrII−BamHI−3’である。ITH2をコードするcDNAに関する線状構造は、5’−FspI−SgrA1−cDNA−XhoI−FspI−3’である。
【0084】
同様に、治療用血漿タンパク質の生成の一例では、AMBP及びITH3遺伝子をコードするDNAを含むベクターは、市販のpVITRO2ベクターの他の変形である。この変形はpVITRO2−Neoと表され、ヒグロマイシン耐性遺伝子の代わりにネオマイシン耐性遺伝子を含む。このベクターはpVITRO2−Blastiと同じプロモーター骨格及び5’−UTRを使用する。このベクターはMCS1中にAMBPをコードするDNA、及びMCS2中にITH3をコードするDNAを含む。AMBPをコードするcDNAに関する線状構造は、5’−BamHI−AgeI−EcoRV−cDNA−MIuI−AvrII−BamHI−3’である。ITH3をコードするcDNAに関する線状構造は、5’−XhoI−NheI−cDNA−Bg1II−XhoI−3’である。他のベクターを使用することができるが、タンパク質複合体中に存在するタンパク質サブユニット間の1:1の比率のため、ベクターはほぼ等しい比率でコードされているタンパク質のそれぞれを発現することが一般に好ましい。
【0085】
したがって、血漿タンパク質の生成における本発明の適用の他の例は、適切な宿主細胞と適合性がある少なくとも1つの制御配列と動作可能に連結した、遺伝子ITH3及びAMBPをコードするDNAを含むベクターである。制御配列はプロモーター、エンハンサー、又は他の制御配列であってよい。
【0086】
本発明の血漿タンパク質の生成における本発明の適用のさらに他の例は、適切な宿主細胞と適合性がある少なくとも1つの制御配列と動作可能に連結した、遺伝子ITH2及びITH1をコードするDNAを含むベクターである。制御配列はプロモーター、エンハンサー、又は他の制御配列であってよい。
【0087】
治療用血漿タンパク質の生成における本発明の適用のさらに他の例は、適切な宿主細胞と適合性がある少なくとも1つの制御配列と動作可能に連結した、遺伝子ITH3及びAMBPをコードする核酸を含む単離及び精製された核酸配列である。制御配列はプロモーター、エンハンサー、又は他の制御配列であってよい。核酸配列は典型的にはDNAであるが、RNA又はRNA−DNAハイブリッドであってよい。
【0088】
同様に、治療用血漿タンパク質の生成における本発明の適用のさらに他の例は、適切な宿主細胞と適合性がある少なくとも1つの制御配列と動作可能に連結した、遺伝子ITH2及びITH1をコードする核酸を含む単離及び精製された核酸配列である。制御配列はプロモーター、エンハンサー、又は他の制御配列であってよい。核酸配列は典型的にはDNAであるが、RNA又はRNA−DNAハイブリッドであってよい。
【0089】
したがって、これらのベクターが存在する結果として、本発明の他の態様は、ウイルスにより不死化させたヒト肝細胞であって、(1)血漿タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むDNA及び(2)血漿タンパク質をコードするDNAと動作可能に連結して血漿タンパク質の発現を増強させる少なくとも1つの制御要素を含む、少なくとも1つのベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトされている不死化ヒト肝細胞である。したがって、このウイルスにより不死化させたヒト肝細胞は、血漿タンパク質をコードし発現することができるDNAをコードしている。この一例は、ウイルスにより不死化させたヒト肝細胞であって、(1)IαIpタンパク質複合体の一部であるタンパク質前駆体の少なくとも1つの遺伝子を含むDNA及び(2)少なくとも1つの前駆体遺伝子をコードするDNAと動作可能に連結して前駆体遺伝子の発現を増強させる少なくとも1つの制御要素を含む、少なくとも1つのベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトされている不死化ヒト肝細胞である。
【0090】
本発明のさらに他の態様は、活性IαIp、IαI又はPαIのいずれかを生成する、形質転換又はトランスフェクトされたヒト肝細胞以外の真核細胞である。一般にこれらの細胞は、(1)IαIpタンパク質複合体の一部であるタンパク質前駆体の少なくとも1つの遺伝子を含むDNA及び(2)少なくとも1つの前駆体遺伝子をコードするDNAと動作可能に連結して前駆体遺伝子の発現を増強させる少なくとも1つの制御要素を含む、少なくとも1つのベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトされている。これらの細胞は、好ましくは前に記載したベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトすることができるCHO細胞、COS細胞、酵母菌細胞、又は他の真核細胞であってよい。これらの細胞はIαI又はPαIのいずれか、或いは両方を生成し;これらは他のタンパク質も生成することができる。したがってこれらの細胞は、(1)遺伝子ITH3及びAMBPをコードするDNA;(2)遺伝子ITH2及びITH1をコードするDNA;又は(3)遺伝子ITH3及びAMBPをコードするDNAと、遺伝子ITH2及びITH1をコードするDNAの両方のいずれかを用いて形質転換又はトランスフェクトする。
【0091】
本発明の治療用血漿タンパク質の生成のさらに他の例は、これらの形質転換又はトランスフェクトされたヒト肝細胞以外の真核細胞を使用してIαIpを生成する方法である。
【0092】
一般にこのような方法は、
(1)IαIpタンパク質複合体を形成するタンパク質をコードし発現することができるDNAを含む、形質転換又はトランスフェクトされたヒト肝細胞以外の真核細胞を用意するステップ、
(2)IαIpタンパク質複合体を形成するタンパク質をコードする遺伝子が、IαIp複合体が生成されるように発現されるような条件下で、不死化真核細胞を培養するステップ、及び
(3)発現されたIαIpタンパク質複合体を不死化真核細胞から単離するステップを含む。
【0093】
生成されるタンパク質はIαI又はPαIのいずれか、或いはこれらのタンパク質複合体の両方であってよい。
【0094】
このようなタンパク質複合体を、それらを発現する細胞、ウイルスにより不死化させたヒト肝細胞又はヒト肝細胞以外の細胞から単離することは、前に記載したのと同様のタンパク質を精製するための標準的な方法によって行われる。
【0095】
したがって本発明の他の態様は、疾患又は状態を治療するための不死化肝細胞によって生成されるタンパク質の使用である。疾患又は状態は、敗血症、肝臓癌、肝炎、又は肝不全などの肝臓に影響を与える疾患又は状態であってよく、或いは肝臓以外の部位の癌、関節炎症、又は関節炎などの肝臓以外の臓器に影響を与える疾患又は状態であってよい。このようなタンパク質の一例はIαIpタンパク質複合体であるが、本発明の方法は一般にタンパク質に適用可能である。
【0096】
本発明の治療用血漿タンパク質の使用の一例は、IαIpタンパク質複合体の使用である。
【0097】
一般にこのような方法は、
(1)活性IαIpタンパク質複合体を用意するステップ、及び
(2)疾患又は状態に罹患している患者にその疾患又は状態を治療する治療活性量の活性IαIpタンパク質複合体を投与するステップを含む。
【0098】
前に述べたように、敗血症、癌、肝炎、又は肝不全などの疾患又は状態は、肝臓に影響を与える可能性がある。或いは肝臓以外の部位の癌、関節炎症、又は関節炎などの疾患又は状態は、肝臓以外の臓器に影響を与える可能性がある。正確な配合、投与経路及び用量は、患者の状態を鑑みて個々の医師によって選択することができる。(例えば、A.S.Nies&S.P.Spielberg、「治療の原則(Principles of Therapeutics)」、J.G.Hardman&L.E.Limbird、eds.、「Goodman及びGilmanの治療の薬理学的基礎(Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics)」(第9版、McGraw−Hill、ニューヨーク、1996)、ch.3.、pp.43〜62中を参照)担当医はどのようにして何時に毒性又は臓器不全により投与を停止、中断、又は調節するかを理解していると思われることを記さなければならない。逆に担当医は、臨床応答が(毒性を排除するのに)十分ではない場合、治療を高レベルに調節することも理解していると思われる。肝臓疾患又は状態の管理におけるIαIpタンパク質複合体の投与用量の重要性は、疾患又は状態の重度及び投与経路と共に変わる。さらに、用量及びおそらく投与頻度も、個々の患者の年齢、体重、及び応答性、並びに肝機能及び腎機能など薬理学的パラメータに影響を与える他の条件に従って変わると思われる。しかしながら一般に、治療用タンパク質組成物に関しては、消化管のタンパク質分解活動を回避するために、経口以外の経路が典型的には好ましい。これらの経路は静脈内、筋肉内、腹膜内、リンパ管内、皮下、又は他の経路であってよい。
【0099】
前に記載したように、活性IαIpタンパク質複合体は不死化肝細胞中で生成することができ、或いは他の真核細胞中で生成することができる。
【0100】
本発明のさらに他の態様は、疾患を治療するのに治療上有効である量の、真核細胞、ウイルスにより不死化させたヒト細胞又は他の真核細胞によって生成される活性タンパク質、並びに薬剤として許容される担体を含む、疾患又は状態を治療するための医薬組成物である。活性タンパク質を含む本発明の医薬組成物は、固体、半固体及び液体剤形、例えば錠剤、ピル、粉末、液体溶液又は懸濁液、座薬、ポリマーマイクロカプセル又は微小胞、リポソーム、及び注射用又は不溶解性溶液などだけには限られないが、これらを含めたさまざまな剤形であってよい。好ましい形は、投与形式及び個々の治療用途に依存する。
【0101】
組成物用の従来の薬剤として許容される担体は、ヒト血清アルブミンを含めた血清タンパク質、リン酸塩、水又は塩又は電解質などのバッファー物質などの、当分野で知られている担体を含むことができる。
【0102】
本発明のさらに他の態様は、本発明の方法に従い生成したタンパク質と特異的に結合する抗体である。タンパク質を使用して、精製タンパク質又はそのタンパク質から単離したペプチドと結合するポリクローナル抗体を含めた、抗体を調製することができる。これらの抗体を使用して、多量にタンパク質を精製することができる。例えば、抗体を固形担体に固定し、固形担体に固定した抗体とタンパク質を含むサンプルを反応させてタンパク質と抗体を結合させることによって、タンパク質を精製することができる。或いは抗体を検出可能な標識で標識し、検出可能な標識で標識した抗体とタンパク質を含むサンプルを反応させてタンパク質と抗体を結合させ、それによって抗原−抗体複合体を形成し、サンプル中に存在する他のタンパク質から抗原−抗体複合体を分離することができる。いずれかの場合、高塩、pHの変更、又は低濃度のカオトロピック剤などの標準的技法によって、抗体からタンパク質を次いで解離させることができる。
【0103】
精製したタンパク質複合体は、治療又はスクリーニング用途に次いで使用することができる。
【0104】
小胞膜輸送タンパク質と反応性があるモノクローナル抗体は、Kohler及びMilstein(Kohler及びMilstein、「ネイチャー(Nature)」、256:495〜97(1975)を参照)によって導入された手順及びその変形などの、知られている手順を使用して調製したハイブリドーマによって生成して、細胞の相互作用を調節することができる。
【0105】
これらの技法は、特定の抗体を生成するために初回抗原刺激した動物の使用を含む。免疫原(例えば、IαIpタンパク質複合体)を注射することによって動物を初回抗原刺激して、望ましい免疫応答、即ち初回抗原刺激した動物からの抗体の生成を誘導することができる。初回抗原刺激した(免疫処置した)動物のリンパ節、脾臓又は末梢血由来のリンパ球を使用して、特定の抗体を探すことができる。望ましい免疫グロブリンをコードするリンパ球の染色体は、一般にポリエチレングリコール(PEG)などの融合剤の存在下で、リンパ球とミエローマ細胞を融合させることによって不死化させる。数種のミエローマ細胞系、例えばP3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653、Sp2/0−Ag14、又はHL1−653ミエローマ系のいずれかを、標準的技法に従い融合パートナーとして使用することができる。これらのミエローマ系はATCC(Rockville、Md)から入手可能である。他のミエローマ系を使用することができる。
【0106】
望ましいハイブリドーマを含む生成した細胞は、HAT培地などの選択培地中で次いで増殖させ、その中で非融合状態の親ミエローマ又はリンパ球細胞は最終的に死滅する。ハイブリドーマ細胞のみが生存し、限界希釈条件下で増殖させて単離クローンを得ることができる。ハイブリドーマの上清は、例えば免疫処置用に使用されているタンパク質を使用するイムノアッセイ技法によって、望ましい特異性の存在に関してスクリーニングする。陽性クローンは限界希釈条件下で次いでサブクローニングすることができ、生成されるモノクローナル抗体を単離することができる。
【0107】
当該のタンパク質に特異的である、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を得ることができる。
【0108】
モノクローナル抗体を単離及び精製するための、さまざまな従来の方法を使用して、他のタンパク質及び汚染物質を含まない抗体を得ることができる。モノクローナル抗体を精製するために一般的に使用されている方法には、硫酸アンモニウム沈殿法、イオン交換クロマトグラフィー、及び親和性クロマトグラフィーがある(Zolaら、「モノクローナルハイブリドーマ抗体:技法及び適用例(Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications)」、Hurell(編)pp.51〜52(CRC Press、1982)中を参照)。これらの方法に従い生成されるハイブリドーマは、当分野で知られている技法を使用して、in vitro又はin vivo(腹水中)で増殖させることができる(Finkら、Prog.Clin.Pathol.、9:121〜33(1984)、図6−1、123ページを概ね参照のこと)。
【0109】
一般に個々の細胞系はin vitro、例えば研究室の培養容器中で増殖させることができ、高濃度の一種の特異的モノクローナル抗体を含む培養培地はデカンテーション、濾過、又は遠心分離によって採取することができる。
【0110】
さらに、Fab、F(ab’)及びF断片などの、タンパク質と反応性がある活性結合領域を含むこれらの抗体の断片を生成することができる。当分野で十分に確立されている技法を使用して、このような断片を生成することができる(例えば、Rousseauxら、「酵素学的方法(Methods Enzymol)」、121:663〜69、Academic Press(1986)中を参照)。
【0111】
本発明のさらに他の態様は、疾患を検出するためにタンパク質を検出するためのスクリーニング法である。疾患が発症すると、活性タンパク質の発現の低下がある。一般に、本発明のスクリーニング法の一実施形態は、
(1)患者由来の血漿サンプルを用意すること、
(2)血漿サンプル中の活性タンパク質の濃度を測定すること、及び
(3)血漿サンプル中の活性タンパク質の濃度と患者の疾患の存在又は不在を関連付けて、患者の疾患の存在又は不在を決定することを含む。
【0112】
典型的には、血漿サンプル中の活性タンパク質の濃度は、前に記載した抗体を使用するイムノアッセイによって測定する。ELISA、ラジオイムノアッセイなどの幾つかのイムノアッセイ形式、及び当分野でよく知られている他の形式を使用することができる。競合又は非競合イムノアッセイのいずれかを使用することができる。典型的には抗体を標識するが、競合イムノアッセイ用などに抗原を標識することもできる。放射活性標識、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識、及び酵素標識を含めた、さまざまな型の標識を使用することができる。イムノアッセイは、この参照によって本明細書に組み込まれる、E.Harlow&D.Lane、「抗体:研究室マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、1988)、第14章、pp.553〜612中に記載されている。
【0113】
他のスクリーニング法では、タンパク質をコードするmRNAの量を検出する、何故ならこれが発現と直接関係があるからである。この他の一実施形態では、スクリーニング法は、
(1)患者由来の細胞のサンプルを採取すること、
(2)そのサンプルからmRNAを単離すること、
(3)タンパク質をコードするサンプル中のmRNAの量又は濃度を測定すること、及び
(4)タンパク質をコードするサンプル中のmRNAの量又は濃度と患者の疾患の存在又は不在を関連付けて、患者の疾患の存在又は不在を決定することを含む。
【0114】
細胞及び組織からmRNAを単離するための方法は当分野でよく知られており、ここでさらに詳細に記載する必要はない。このような方法は、この参照によって本明細書に組み込まれる、J.Sambrook&D.W.Russell、「分子クローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」(第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク、2001)、第1巻、第7章中に詳細に記載されている。IαIpタンパク質複合体をコードするサンプル中のmRNAの、量又は濃度を測定するステップを行うための1つの方法は、オリゴ−dTプライマー、及び逆転写酵素を使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行って、サンプル中のポリアデニル化mRNAのDNAコピーを作製することである。このDNAコピーは、次いでIαIpタンパク質複合体遺伝子に特異的なプライマーを使用する第二のPCR反応において増幅させる。この手法は、この参照によって本明細書に組み込まれる、C.R.Cantor&C.L.Smith、「ゲノミクス:ヒトゲノムプロジェクトの背景にある科学及び技術(Genomics:The Science and Technology Behind the Human Genome Project)」(John Wiley&Sons、1999)、pp.119〜120中に記載されている。IαIpタンパク質複合体をコードするサンプル中のmRNAの、量又は濃度を測定するステップを行うための他の方法は、ノーザンブロッティングを使用して、ハイブリダイゼーションによって特異的なmRNAを検出することである。これは適切なDNA標識プローブが利用可能であることを必要とし;典型的には、標識プローブを放射標識する。この方法は当分野でよく知られており、この参照によって本明細書に組み込まれる、例えばP.A.Sabelli、「ノーザンブロッティング(Northern Blotting)」中、「分子生物学的方法の教本(Molecular Biomethods Handbook)」(R.Rapley&J.M.Walker、eds.、Humana Press、ニュージャージー州トトワ、1998)、第9章、pp.89〜94中に記載されている。
【0115】
治療用タンパク質の翻訳後修飾は、in vivoの生物活性、クリアランス率、免疫原性及び/又は安定性に影響を与える可能性がある。本発明の我々の肝細胞系発現系によって分泌されるタンパク質は、組換え相当物より自然に働く。例えば本発明者は、その不死化ヒト肝細胞の細胞系は生物学的活性があるIαIpを生成し、したがって、組換え技術によって生成することができないこのタンパク質の有力な市販用供給源であることを実証している。したがって、本発明者がその「本来の」形のIαIpを生成することによって、敗血症などの生命を脅かす疾患を治療するための、より有効で、安全で、且つコスト効率の良い解決策がもたらされる。
【0116】
タンパク質を生成するのに適した細胞系を使用することによって、ウイルス汚染の再発的危険無しで血漿由来のタンパク質と類似した多数の生成物を生成する、一連のタンパク質精製スキームを使用することも可能になる。これらの肝細胞由来の血漿タンパク質は、従来技術の欠点を克服する、本来の血漿タンパク質を商業的に生産するための安全で、有効で、且つコスト効率の良い戦略をもたらす。
【0117】
有用性
血漿タンパク質複合体を生成する、ウイルスにより不死化肝臓細胞系の使用の例
以下は、血漿タンパク質、より詳細にはIαIpタンパク質複合体を生成するウイルスにより不死化させた肝臓細胞系の使用である。これらの使用は、IαIpタンパク質複合体のその生成、及び他のタンパク質のその考えられる生成と関係がある。
【0118】
(1)考えられる化学療法剤の同定:これらの細胞は、試験する化学物質を含むin vitroの培地中で細胞を増殖させ、次いで適切な露出期間の後に、どの程度の細胞毒性が存在したかどうかを、例えばいずれも当分野でよく知られている標準的技法である、トリパンブルー排除アッセイ又は関連アッセイ(Paterson、「酵素学的方法(Methods Enzymol)」、58:141(1979))によって、或いはコロニー形成効率アッセイ(MacDonaldら、Exp.Cell.Res.、50:417(1968))などの増殖アッセイによって測定することによって、癌及び関連疾患を治療するのに適した化学物質をスクリーニングするのに有用である。
【0119】
(2)遺伝子発現を誘導又は阻害する生物学的物質による遺伝子発現の制御の調査。化学物質及び生物学的物質は、それらをこれらの肝細胞の増殖培地に加え、次いで適切な期間の後に、DNA合成の中止、(RT−PCR分析によって測定される)遺伝子発現の誘導又は阻害、及び(免疫化学的技法によって測定される)肝臓特異的タンパク質の生成を含めた変化の複合が生じるかどうかを判定することによって、遺伝子発現又は代謝経路を誘導又は阻害する、それらの能力に関してスクリーニングする。遺伝子発現及び代謝経路の誘導又は阻害に対する化学物質及び生物学的物質の影響を確認することは、癌などの疾患を治療するための新たな薬剤標的を同定するための1つの方法である。
【0120】
(3)発癌性物質及び他の生体異物の代謝の試験:発癌性物質及び他の生体異物はこれらの細胞の増殖培地に加えることができ、これらの化合物の代謝産物の出現は、薄層クロマトグラフィー又は高性能液体クロマトグラフィーなどの技法によって調べることができ、化合物及び/又はそれらの代謝産物とDNAの相互作用を決定する。
【0121】
(4)DNAの突然変異誘発の試験:突然変異誘発物質であることが知られているか或いはその疑いがある物質は、細胞の増殖培地に加えることができ、次いで突然変異を、例えば薬剤耐性突然変異細胞コロニーの出現を検出することによってアッセイすることができる(Thompson、「酵素学的方法(Methods Enzymol)」、58:308、1979)。
【0122】
(5)無胸腺ヌードマウスにおける足場非依存性増殖又は腫瘍形成などの標準的アッセイを使用する、化学的、物理的及びウイルス因子、並びに腫瘍由来の癌遺伝子及び高分子量ゲノムDNAを含めた転移遺伝子による悪性形質転換の試験。例えば、クローニングしたウイルス癌遺伝子N−ras(多くの肝細胞癌中に存在する癌遺伝子)は、リン酸ストロンチウム法によるトランスフェクションを使用して肝細胞中に導入することができる。マウス中で腫瘍を形成し、且つ足場非依存式に増殖する新たにトランスフェクトされた細胞の二次的な能力を評価することができる。
【0123】
(6)(前のパラグラフ(1)に記載した技法によって)考えられる化学療法剤、特に特定の癌遺伝子又は癌遺伝子の組合せの活性化によって形質転換した細胞に特異的である可能性がある化学療法剤をスクリーニングするための、前のパラグラフ(5)中と同様の癌遺伝子の移動によって改変した細胞の使用。
【0124】
(7)前のパラグラフ(1)〜(6)に記載したものだけには限られないが、これらを含めた細胞増殖及び外因性因子の作用と関連付けた、細胞内pH及びカルシウムレベルの変化を含めた細胞生化学の試験。細胞内pH及びカルシウムレベルを試験するために、適切な培養容器中の細胞を蛍光指示薬色素に曝し、次いで蛍光発光を蛍光分光光度計を用いて検出する(Grynkiewiczら、J.Biol.Chem.、260:3440〜3450(1985))。
【0125】
(8)増殖因子に対する細胞応答、及び増殖因子の生成の試験:ヒト肝臓の肝細胞の増殖及び分化にとって重要な増殖因子の同定及び精製。これらの細胞はこのような適用例に非常に有用である、何故ならそれらは、無血清培地中で増殖するからである。したがって、増殖因子に対する応答は正確に定義された増殖培地において試験することができ、細胞によって生成される任意の因子を、血清が存在する複雑な状況無しで同定及び精製することができる。
【0126】
(9)当該のタンパク質を生成するための組換えDNA発現ベクターの使用。これはIαIpタンパク質複合体に関して前に記載し;同様の技法を他のタンパク質に使用することができる。例えば、治療的価値があるタンパク質をコードする遺伝子は、制御用DNAセグメント(即ち、エンハンサー配列を含むか或いは含まないプロモーターを含む)を用いて組換え、細胞中に移すことができ(例えばリン酸ストロンチウム法によるトランスフェクションによって)、次いで生成されたタンパク質を、当分野でよく知られている通常の手順によって、培養物上清又は細胞抽出物から採取することができる。
【0127】
(10)in vitroで増殖する細胞がギャップ接合部を介して伝達する能力を有するかどうかを判定するための、例えばdye scrape loadingアッセイによる細胞内伝達の試験。増殖培地中で蛍光色素の存在下において、例えばメスを用いて培養物をかき取ることができる。創傷の端部の細胞を機械的に破壊し、したがって色素を採取し;細胞内伝達が起こったかどうかは、創傷から離れた細胞も色素を含むかどうかを測定することによって確認することができる。
【0128】
(11)細胞表面抗原の特徴付け:当該の細胞表面抗原に対する抗体と共に細胞をインキュベートし、次いで蛍光色素と結合した二次抗体と反応させる。次いで蛍光活性化細胞選別器を使用して細胞を評価して、それらが蛍光性であるかどうか、したがって細胞表面抗原を有するかどうかを判定する。
【0129】
(12)腫瘍抑制活性を同定するための細胞−細胞ハイブリッドの試験(Stranbridgeら、「サイエンス(Science)」、215:252〜259(1982))。これらの細胞系が腫瘍抑制遺伝子を含むかどうかを判定するために、それらを悪性腫瘍細胞と融合させる。腫瘍抑制遺伝子の存在は、例えば無胸腺ヌードマウス中、ハイブリッド細胞中で腫瘍を形成する能力の消失によって検出されるように、悪性明腫瘍の消失によって示される。
【0130】
(13)標準的な分子生物学的技法(Davisら、「分子生物学における方法(Methods in Molecular Biology)」、ニューヨーク:Elsevier(1986))、及びcDNAサブトラクションクローニングなどの技法、並びに類似の方法を使用する、前のパラグラフ(5)に記載した自然に存在する癌中の形質転換遺伝子、前のパラグラフ(8)に記載したのと同様の増殖因子の遺伝子、前のパラグラフ(12)に記載したのと同様の腫瘍抑制遺伝子を含めた、新規な遺伝子の同定。
【0131】
(14)複製肝炎ウイルスの増殖(例えばHBV、非A非B、HAV及び他の肝臓向性ウイルス、例えばCMVなど)。ヒト肝臓癌細胞系用に確立されたトランスフェクションの方法(Sells、M.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.、84:444〜448)を使用する、複製肝炎ウイルスを含むヒト肝臓の肝細胞のクローン細胞系の確立。HBV、HBVの能力を含むヒト肝臓の肝細胞系を単独で、及びアフラトキシンBなどの化学的な肝臓の発癌性物質と共に使用することによって、足場非依存性増殖アッセイ及び無胸腺ヌードマウスにおける増殖を使用して悪性形質転換を評価することができる。パラグラフ(13)中の技法と同様の細胞−細胞ハイブリッド技法を使用して、HBVトランスフェクション前後の悪性細胞との融合によって、腫瘍抑制遺伝子の考えられる不活性化を評価することができる。
【0132】
スクリーニングキットは、細胞系及び他の従来要素、並びに試験を行うためのラベル使用説明書を含む他のスクリーニングキットと同様に容易に組み立てられる。
【0133】
(15)肝臓移植、並びに埋め込み型及び体外用の肝機能支援デバイス用に細胞を増殖させる方法として、不死化細胞を使用することができる。さらに、これらの細胞は、臓器移植用、遺伝性代謝障害、特に肝機能低下と関係がある疾患(即ち、幾つかの疾患は特定の遺伝子の欠失又は異常によるものである)の治療用に、細胞にトランスフェクトした/移した他の遺伝子を有することができる。したがってこの遺伝子は、IαIpタンパク質複合体を生成するのに有用な細胞にトランスフェクトすることができ、細胞は次いで臓器移植用に増殖させることができると思われる。
【0134】
(16)薬剤、発癌性物質、生体異物の細胞毒性の試験:薬剤、発癌性物質、生体異物は細胞の増殖培地に加えることができ、露出時間の関数としての細胞の生存能力は、遺伝子発現概略、色素除外、酵素漏出、コロニー形成効率などのアッセイを使用して確認することができる。
【0135】
(17)遺伝子発現の試験:薬剤、化学物質、新たな化学的物質などは、細胞の培養培地に加えることができ、露出の関数としての遺伝子発現の変化は、生物学的終点でのRNA及びタンパク質の発現を使用して調べることができる。変化は特定の遺伝子の誘導又は阻害のいずれかを反映する可能性がある。例えば、細胞を薬剤、化学物質、新たな化学的物質などと共に培養して、CYP3A4又はCYP1A2と表されるシトクロムP450だけには限られないがこれらを含めた薬剤代謝酵素、多剤耐性遺伝子、胆管輸送体、グルクロニルトランスフェラーゼ、グルタチオントランスフェラーゼ、サルファターゼなどの発現を調節する物質を同定することができる。
【0136】
(18)肝臓寄生虫の試験:培養細胞は、肝細胞を侵襲する寄生虫のライフサイクルを試験するのに、有効であることが明らかになると思われる。
【0137】
(19)肝細胞由来のタンパク質の生成。このことは、これらの細胞による血漿タンパク質、特に治療用血漿タンパク質の発現及び生成に関して前に広く記載している。適切な培地中に維持された細胞は、血液凝固因子(例えば、第VIII因子及び第IX因子)、α−1−抗トリプシン、ヒト成長ホルモン、増殖因子などのタンパク質を自然に発現すると思われ、これらを精製し使用することができる。これらのタンパク質は、分化したヒト肝細胞によって発現され得る任意のタンパク質であってよい。この範疇のタンパク質は、これらの細胞によって本来コードされており、これらの細胞によって構成上、或いは1つ又は複数のホルモンシグナルなどの外部刺激に応答して発現されるタンパク質を含む。この範疇のタンパク質は、これらのタンパク質の遺伝子がこれらの細胞中に導入されるとき、タンパク質がプロセシングされグリコシル化されて、そのin vivo機能が実質的に保たれるように、これらの細胞によって発現され得るタンパク質も含む。これは、増殖因子、血液凝固因子、α−1−抗トリプシンなどの抗トリプシン、及びその一次構造が部位特異的突然変異誘発などの遺伝子工学の標準的技法によって改変されるその他のタンパク質などのタンパク質のムテインを含むことができる。この範疇のタンパク質は、アルブミン、トランスコバラミンII、C−反応性タンパク質、フィブロネクチン、又はセルロプラスミン、及び構造活性、酵素活性、又は輸送活性を有する他のタンパク質を含めた治療又は診断対象の他のタンパク質も含むことができる。
【0138】
本発明の方法によって生成されるタンパク質を使用して、非常にさまざまな状態、肝臓に影響を与える状態と肝臓以外の臓器に影響を与える状態の両方を治療することができる。後者は肝臓以外の部位の癌、関節炎症、及び関節炎を含むことができる。これらのタンパク質はIαIp複合体、及び前に記載したこれらの方法によって生成される他のタンパク質を含むことができる。
【0139】
細胞系のこれらの性質は、有用性のある他のスクリーニングアッセイを行う能力を与える。
【0140】
例えば本発明は、化学療法活性に関して化合物をスクリーニングする方法であって、
(1)Fa2N−4及びEa1C−35からなる群から選択される肝細胞の細胞系を用意するステップ、
(2)スクリーニングする化合物に細胞系を曝すステップ、及び
(3)細胞系においてスクリーニングする化合物によって誘導される細胞毒性の程度を測定して、その化合物が化学療法活性を有するかどうか判定するステップを含む方法を含む。
【0141】
本発明は、突然変異誘発活性に関して化合物をスクリーニングする方法であって、
(1)Fa2N−4及びEa1C−35からなる群から選択される肝細胞の細胞系を用意するステップ、
(2)スクリーニングする化合物に細胞系を曝すステップ、及び
(3)細胞系においてスクリーニングする化合物によって誘導される突然変異誘発の程度を測定して、その化合物が突然変異誘発活性を有するかどうか判定するステップを含む方法も含む。
【0142】
さらに本発明は、遺伝子発現を誘導又は抑制する活性に関して化合物をスクリーニングする方法であって、
(1)Fa2N−4及びEa1C−35からなる群から選択される肝細胞の細胞系を用意するステップ、
(2)スクリーニングする化合物に細胞系を曝すステップ、及び
(3)細胞系においてスクリーニングする化合物による抑制又は誘導効果を測定して、その化合物が遺伝子発現を誘導又は抑制する活性を有するかどうか判定するステップを含む方法も含む。
【0143】
同様に本発明は、細胞毒性に関して化合物をスクリーニングする方法であって、
(1)Fa2N−4及びEa1C−35からなる群から選択される肝細胞の細胞系を用意するステップ、
(2)スクリーニングする化合物に細胞系を曝すステップ、及び
(3)濃度及び露出時間の片方或いは両方の関数として細胞系の生存能力を測定することによって、細胞系においてスクリーニングする化合物によって誘導される細胞毒性の程度を測定して、その化合物が細胞毒性活性を有するかどうか判定するステップを含む方法も含む。
【0144】
本発明の最も重要なスクリーニング法の1つは、薬剤−薬剤相互作用に関するスクリーニング法である。これらはシトクロムP450(CYP)酵素又はMDR1などの多種薬剤輸送体(MDR)タンパク質のいずれかによって仲介することができる。これらの薬剤−薬剤相互作用は、1薬剤の投与が第二の薬剤の代謝に干渉する場合、非常に臨床上重要である。これらは処方薬又は市販薬によって生じる可能性がある。
【0145】
本発明の薬剤−薬剤相互作用の存在に関してスクリーニングするための1つの方法は、
(1)Fa2N−4及びEa1C−35からなる群から選択される肝細胞の細胞系を用意するステップ、
(2)第一の薬剤に細胞系を曝すステップ、
(3)第一の薬剤によって誘導されるシトクロムP450酵素の生成を測定することによって、第二の薬剤を代謝することができるシトクロムP450酵素の生成を第一の薬剤が誘導するかどうか判定して、第一の薬剤と第二の薬剤の間の相互作用の存在に関してスクリーニングするステップを含む。
【0146】
薬剤−薬剤相互作用の存在に関してスクリーニングするための他の方法は、
(1)Fa2N−4及びEa1C−35からなる群から選択される肝細胞の細胞系を用意するステップ、
(2)第一の薬剤に細胞系を曝すステップ、
(3)第一の薬剤によって誘導されるMDRタンパク質の生成を測定することによって、MDRタンパク質の生成を第一の薬剤が誘導するかどうか判定して、第一の薬剤と第二の薬剤の間の相互作用の存在に関してスクリーニングするステップを含む。
【0147】
本明細書に記載する実施例及び実施形態は単なる例示目的であり、それらを鑑みたさまざまな変更形態又は変形は当業者の念頭に浮かび、それらの変更形態又は変形は本出願の精神及び範囲内、並びに添付の特許請求の範囲に含まれることは理解されよう。
【実施例】
【0148】
以下の実施例は、決して本発明の範囲を制限することは目的とせずに、本発明の具体的な実施形態を記載する目的で示す。
【0149】
(実施例1)
不死化ヒト肝細胞の特徴付け
100を超えるヒト肝細胞のクローン細胞系を、SV40初期プロモーターの制御下でシミアンウイルス40のラージT抗原とスモールt抗原遺伝子を用いて、ヒト肝細胞をトランスフェクトすることによって確立した。Ea1C−35及びFa2N−4と表した2つの細胞系を記載する。
【0150】
2つの細胞系は、SV40のラージT抗原とスモールt抗原を含むベクターを用いた、低温保存した初代ヒト肝細胞のリポフェクション介在トランスフェクションによって作製した。Ea1C−35細胞系は、不死化ベクターpBlueTag、野生型SV40の初期領域を含む組換えプラスミドを用いた、低温保存したヒト肝細胞のトランスフェクションから誘導した。pBlueTagベクターを以下のように構築した:pBR/SV(ATCC)を制限酵素KpnI及びBamHIを用いて消化して、スモールt抗原及びラージT抗原由来のSV40初期プロモーター及びコード領域を含む2995bpの断片を切り離した(239〜2468bp、Fiers、Wら、「サイエンス(Science)」、273:113〜120に従い番号処理)。このKpnI/BamHI断片をpBluescript SKベクター(Strategene)中に挿入してpBlueTag;SV40プロモーターを使用してT抗原の発現を誘導するBluescript系ベクターを生成した。neoプラスミドのコトランスフェクションによって選択可能なマーカーとして、ネオマイシン耐性をトランスフェクト細胞に与えた。G418含有培地中で増殖するそれらの能力に基づいて、クローンを最初に選択した。Ea1C−35細胞系を確立し、MCTの占有血清含有培地、CSM中に保った。
【0151】
1つの不死化ベクターを用いたリポフェクション介在トランスフェクションによって、Fa2N−4細胞系を不死化させた。pBlueTagベクター中に含まれるSV40ゲノムの初期領域は、InvivoGen pGT60mcsプラスミドに基づく骨格中に挿入し、pTag−1と名付けた。T−抗原コード領域は、ハイブリッドhEF1−HTLVプロモーターの影響下に存在する。このベクターは、薬剤選択可能なマーカーとしてヒグロマイシン耐性遺伝子もコードしている。ヒグロマイシン含有培地中で増殖するそれらの能力に基づいて、クローンを選択した。Fa2N−4細胞系を確立し、MFE中に保った。
【0152】
(実施例2)
肝臓特異的転写因子の発現
肝臓特異的転写因子の保持は肝機能の発現に関する前提条件なので、クローン細胞系を、ヒトHNF1、HNF3、HNF4α、HNF4γ及びC/EBP及びアルブミン用のプライマーを使用するRT−PCRによって最初にスクリーニングした。簡潔には、Brennerら(55)のマイクロ単離法を使用して、それぞれのクローン細胞系の10個の細胞から全RNAを調製した。前の参照に関する情報はどこに存在するのだろうか?50μgの大腸菌rRNA(Sigma)を担体として使用して、少数の細胞からのRNAの単離を容易にした。Perkin Elmer Cetus、遺伝子増幅RNA PCRキットを使用して、RT−PCR反応を行った。供給者の使用説明書に従いランダムヘキサマー及びM−MLV逆転写酵素を使用して、1μgの全RNAを逆転写した。PCR反応はオリゴヌクレオチドプライマーを使用して行い、それによってそれぞれの転写因子に特有のヌクレオチド断片を明らかにした。これらのプライマーは、Cruachem(Fisher Scientific)によって商業的に合成及び精製された。1分間58℃のアニーリング温度を使用して、30サイクルPCR反応を行った。臭化エチジウムを用いた染色後1%アガロースゲル中において、PCR産物を眼に見える状態にした。陽性対照サンプルは、新たに単離したヒト肝細胞の全RNAのRT−PCR分析物を含んでいた(示さず)。表1に以下に示したように、両方の細胞系が全部で5個の肝細胞関連転写因子を発現した。肝臓特異的な遺伝子発現の指標として、アルブミン生成を測定した。表1に以下に示したように、ヒトアルブミンを認識する抗体を使用してELISAアッセイによって検出すると、両方の細胞系が無血清調整培地にアルブミンを分泌する。
【表1】

【0153】
(実施例3)
SV40介在の増殖活性
初代ヒト肝細胞は、培養時に限られた増殖活性を有する。この特性を克服するために、SV40のラージT抗原とスモールt抗原をゲノムに導入した。生成したクローン細胞系、Fa2N−4及びEa1C−35は、その後18ヶ月までの間、培養中維持した。両方の不死化細胞系が、MFE培地中に維持すると増殖及び機能し、これらは低温保存し積み重ねることができる。ラージT抗原及びアルブミンに対する多価抗体を使用する間接的免疫蛍光染色は、細胞系は核局在不死化遺伝子を発現し続け(図1a)、且つ分化機能が特徴的な肝細胞特異的遺伝子を発現し続けることを実証した(図1b)。Ea1C−35細胞系の形態は以下に示す(図1c)。
【0154】
(実施例4)
薬剤代謝データ
両方の細胞系が、モデル基質の代謝に基づいて単層培養物中の、第I相(シトクロムP450)及び第II相共役反応を触媒し続ける。最も重要な第I相酵素の1つはCYP3A4であり、これは全薬剤の約50%の代謝を担う。CYP3A4の発現は、このP450の全体的発現を誘導又は阻害する可能性がある多剤摂取を含めた、多くの要因によって調節される可能性がある。したがって、薬剤の有効な治療用量は、CYP3A4の発現によって部分的には決定される。
【0155】
遺伝子の転写応答性を調べることによって、及びモデル基質(即ちテストステロン)に対する酵素活性を測定することによって、CYP3A4調節物質を同定することができる。例えば、原型の薬理学的CYP3A4誘導物質(即ちリファンピン)に対する転写応答性を、特異的プライマーを使用する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)によってアッセイして、CYP3A4のmRNAを検出することができる。リファンピンに誘導されるCYP3A4酵素活性も、細胞をテストステロンと共にインキュベートするときは、6β−OH−テストステロン代謝産物の生成によって測定することができる。表2に以下に示したように、Fa2N−4細胞系は、Ea1C−35細胞系よりもCYP誘導物質に対して感受性が強い。
【0156】
細胞系が第II相共役酵素を発現し続けることを実証するために、細胞を24時間アセトアミノフェンに曝し、調整培養培地を回収し、アセトアミノフェングルクロン酸又はアセトアミノフェン硫酸の共役体の生成に関して分析した。アセトアミノフェングルクロン酸とアセトアミノフェン硫酸の共役体の生成は、HPLC分析によって測定した。これらの結果は表2中に示す。継代数の影響を決定するために、アセトアミノフェングルクロン酸及びアセトアミノフェン硫酸の生成を、11、14、27、32、40、及び41継代後のFa2N−4細胞に関して測定した。第41継代に関して、アンモニアのクリアランスも、窒素代謝の指標として測定した。これらの結果は表3中に示す。これらの結果は、両方の経路が完全無欠であることを示す。
【表2】


【表3】

【0157】
(実施例5)
CYP誘導物質を同定し順位付けするための不死化肝細胞の使用
2つの系の証拠は、不死化ヒト肝細胞を使用して、「誘導能力」に基づいてCYP3A4誘導物質を同定し順位付けすることができることを示す。第一に、表4に以下に示したように、Fa2N−4細胞をリファンピン(10μM)に曝すことによって、デキサメタソン(50μM)又はフェノバルビタール(1mM)などの弱性CYP3A4誘導物質で細胞を処理するより、多量の6β−OH−テストステロン代謝産物の生成がもたらされる。第二にイムノブロット分析は、それぞれの細胞系をリファンピン又はフェノバルビタールに48〜72時間曝すことによって、媒体処理した対照と比較してCYP3A4タンパク質の発現が増大したが;しかしながらリファンピンへの露出が、CYP3A4タンパク質のより増大した発現をもたらしたことを実証した。このデータは図2中に示す。
【表4】

【0158】
(実施例6)
Fa2N−4及びEa1C−35細胞系による血漿タンパク質の発現
タンパク質バイオファクトリーと同様の不死化ヒト肝細胞の使用は、大量培養中に維持すると、細胞系が増殖し血漿タンパク質を分泌し続けることを必要とする。この問題に取り組むために、これらの細胞系による血漿タンパク質の発現を分析した。これらの細胞系の高分化性は、成体肝細胞の機能特異的血漿タンパク質のその連続的な分泌によってさらに支持される(図3)。培養培地は、60mmプレート又は回転容器に接種したFa2N−4及びEa1C−35細胞から採取し、ウエスタンブロット分析によって分析した。培地は限外濾過によって50倍に濃縮し、40μgの合計タンパク質をアルブミン以外レーン毎に充填した(10μgの合計タンパク質/レーン)。アルブミン、α−1−抗トリプシン、第VIII因子及び第IX因子に対するモノクローナル抗体又は親和性精製ポリクローナル抗体と共にブロットをインキュベートし、ホースラディッシュペルオキシダーゼと結合した二次抗体を使用して眼に見える状態にし、次にDAB基質と共にインキュベートした。図3に以下に示したように、両方の細胞系がアルブミン、α−1−抗トリプシン、及び第IX因子を発現し続ける。第VIII因子の発現はさまざまであり、細胞系及び培養条件に大きく依存した。第IX因子のプロセシングにおいて不均一性が存在し、ヒト血漿由来のタンパク質においても観察された。
【0159】
確認事項として、Fa2N−4細胞はT−150フラスコ中、無血清培地中で集合状態まで増殖させ、アルブミン生成はELISAアッセイによって測定した。これらの結果は表4中に示す。これらの結果は、アルブミンの生成が少なくとも41代の細胞の継代中続くことを示す。
【表5】

【0160】
インターα阻害剤タンパク質(IαIp)、血漿中で比較的高い濃度で見られる天然セリンプロテアーゼ阻害剤は、炎症、傷の治癒及び癌転移において役割を果たすことが示されてきており、これはBostら、[19]によって総説されている。IαIpは、肝細胞によって作製され分泌される血漿タンパク質のファミリーである。IαIpの主な形は、インターα阻害剤(IαI、ビクニンと呼ばれる1つの軽鎖ペプチド及び2つの重鎖を含む)、及びプレ−a−阻害剤(PαI、1つの軽鎖及び1つの重鎖を含む)である。近年、ヒトIαIpの軽鎖を認識するモノクローナル抗体(モノクローナル抗体69.31)が、Prothera Biologicsの科学者によって開発された。競合ELISAにおいてモノクローナル抗体69.31を使用して、これらの研究者は、血漿IαIpレベルは健康な対照と比較して重度の敗血症患者において有意に低下したことを実証した(Lim YP、Bendelja K、Opal SM、Siryaporn E、Hixson DC、Palardy JE.「重度の敗血症患者の死亡率と血漿中のインターα阻害剤のレベルの間の相関関係。(Correlation Between Mortality and the Levels of Inter−alpha Inhibitors in Plasma of Severely Septic Patients.)」「感染疾患ジャーナル(Journal of Infectious Disease)」、188:919〜926、2003)。
【0161】
モノクローナル抗体69.31を使用するウエスタンブロット分析によって、Fa2N−4細胞系とEa1C−35細胞系の両方が、免疫反応性IαIpを合成し続けることが明らかになった(データ示さず)。その後、調整培地に分泌されたIαIpの量を、ELISAアッセイを使用して定量化した(以下の実施例を参照)。
【0162】
(実施例7)
定量ELISA及びトリプシン阻害アッセイ
調整培地の全体的なトリプシン阻害活性は、主要なセリンプロテアーゼ阻害剤、α−1−抗トリプシン及びIαIp由来の活性を含む。1)トリプシンなどのプロテアーゼの阻害を測定するin vitroアッセイ、及び2)モノクローナル抗体69.31、ヒトIαIp)を特異的に認識するProthera Biologics(providence、Rhode Island)からのモノクローナル抗体を使用する競合ELISAをそれぞれ使用して、IαIpを機能的且つ定量的に測定することができる。トリプシン阻害アッセイを使用して、発色性トリプシン基質L−BAPA(N(α)−ベンゾイル−L−アルギニン−4−ニトロアニリド塩酸塩、Fluka Chemicals)を使用することによって、セリンプロテアーゼ阻害剤の生物学的活性を調べる。このアッセイは、L−BAPAの加水分解を阻害するセリンプロテアーゼ阻害剤の能力に基づく。410nmにおけるΔ吸光度/分の比の低下によって、阻害を調べることができる。タンパク質1ug当たりの生物学的活性に基づき、比活性を計算した。肝細胞の細胞系Fa2N4及びEa1C35の調整培地を回収し、30kD断片を有するAmicon Ultra限外濾過装置(Millipore)を使用することによって50倍に濃縮した。調整培地の全体的なトリプシン阻害活性は、主要なセリンプロテアーゼ阻害剤、α−1−抗トリプシン及びIαIp由来の活性を含み、これらはウエスタンブロット(前を参照)及びELISAアッセイ(以下参照)によって検出されたように肝細胞の調整培地中に存在した。培地中のIαIpの量も競合ELISAにおいて測定した。ELISAは以下のように行った:96ウェルImmunolon−4プレート(Dynex、USA)は、精製IαIp(300ng)を50mMの炭酸塩バッファーpH9.6に溶かしたものでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。精製したヒト血漿由来のIαIpを1%ラット血清を含むPBSに希釈した一連の希釈液を使用して、標準曲線を確立した。培養培地中のIαIpレベルの定量分析用に、50μLの培地又は連続的に希釈したIαIpを、96ウェルプレートの個々のウェルに加えた。50μLのモノクローナル抗体69.31をそれぞれのウェルに加えた後、プレートは37℃で1時間インキュベートし、次に自動プレート洗浄装置(Labsystem)を使用して洗浄した。HRP結合ヤギ抗マウスIgG(ヒト吸収性)(Biosource、Camarillo、CA、USA)を37℃で1時間加えることによって、結合したモノクローナル抗体69.31を検出した。洗浄後、100μLの1−Step ABTS(Pierce、Rockford、IL、USA)をウェルに加え、405nmにおける吸光度をELISAプレートリーダー(BioTek)で測定した。それぞれのサンプルは三連で試験した。非調整培養培地は、基本対照として使用した。これらの結果は表5中に示す:
【表6】

【0163】
(実施例8)
Fa2N−4及びEa1C−35細胞系における酵素誘導
シトクロムP450(CYP)及び関連薬剤代謝酵素(輸送体含む)の誘導は、臨床上有意な薬剤相互作用の十分に認められている原因、及び薬物動態学的耐性又は自己誘導(それによって薬剤がその独自の肝臓代謝を誘導するプロセス)の原因である(1,2)。近年の証拠は、幾つかの型の薬剤誘導型肝臓毒性の重要な決定因子としての酵素誘導を示す(3)。in vitroでの酵素誘導を評価するための指針は、Tuckerら(4)及びBjorssonら(5)によって略述されている。この2つの「一致した報告」は、新たな化学物質(NCE)及び薬剤候補の酵素誘導能力を評価するための選択−価値基準−の方法としての、ヒト肝細胞の初代培養を認めている。ヒト由来の試験系に基づくこのin vitro手法は、実験動物における試験に基づくin vivo手法より優れている、何故なら薬剤は、種特異的な形式で酵素誘導を引き起こすことが知られているからである(1)。実際、この実施例中に後で記載する試験で使用した2つの原型誘導物質、即ちオメプラゾール及びリファンピンはヒトCYP1A2及びCYP3A4の有効な誘導物質であるが、それらはラット又はマウスにおいて対応する酵素は誘導しない。ヒト肝細胞の初代培養物及びFa2N−4細胞において酵素誘導の試験を行うための基本手順は、図4のフローチャートに示す。
【0164】
コラーゲンとそれらが接着した後、一致した報告(4,5)の推奨に従い、肝細胞を2日間培養する。このいわゆる適応期中に、肝細胞はその正常な肝細胞形態及び機能を取り戻す。この再分化の前に、肝細胞は酵素誘導型の薬剤の影響を受けない。肝細胞は、3日間連続で1日1回、試験品並びに陰性及び陽性対照(即ち、溶媒対照及びヒトCYP酵素の原型誘導物質)で処理する。酵素誘導は、肝細胞自体、或いは好ましくは肝細胞から調製したミクロソームにおける、mRNA分析、ウエスタンイムノブロッティング及び/又は酵素活性の測定を含めたさまざまな技法によって最後の処理後24時間で評価する。後者の手法は、肝細胞から単離したミクロソーム(in vitro)とヒト肝臓から直接単離したミクロソーム(ex vivo)の間の、in vitro−ex vivoの比較を可能にする。酵素活性の測定は、2つの一致した報告(4,5)では終点において奨励されている。
【0165】
Fa2N−4細胞における酵素誘導を評価するための手順は、図4中に示すヒト肝細胞に関して記載した手順と著しく似ている。Fa2N−4細胞は、MCTによって開発された専有培地中のコラーゲン基質上で増殖させる。MFE支持培地Fと呼ばれる(以前は多機能性増強(MFE)培地として知られていた)この培地は、XenoTechから入手可能である。細胞はトリプシン処理によって脱着させ、遠心分離によって単離し、所望の形式(例えば6−、12−、24−又は96−ウェルプレート)でコラーゲンと再度接着させる。2日間の適応期の後、3日間連続で1日1回、試験品並びに適当な陰性及び陽性対照(即ち、溶媒対照及びヒトCYP酵素の原型誘導物質)で細胞を処理する。酵素誘導は、最後の処理後24時間で評価する。
【0166】
図5に示すように、形態学的に、Fa2N−4細胞はヒト肝細胞と非常に似ている。このことは、正常な肝細胞の形状は正常な肝細胞の機能と非常に関係があるので重要であり;この両方が、高分化性の肝細胞の発現を表す(7〜9)。
【0167】
一致した報告(4,5)は、mRNA又は免疫反応性タンパク質のレベルの測定ではなく、酵素活性の測定を使用する酵素誘導の評価を推奨したが、これらの後者の終点は、誘導の機構に関する貴重な情報を与えることが多い。例えば一致した報告(4,5)は、CYP3A4の阻害剤と誘導物質の両方であるリトナビルに関して近年報告されたのと同様に(13)、CYP活性を非常に強く阻害し、したがってそれらの阻害効果がそれらの誘導効果を封じる化合物による誘導を明らかにすることもできる。この問題は、Fa2N−4細胞における酵素誘導の化学的特異性に関する項で後に論じる。
【0168】
ヒト肝細胞において酵素誘導の試験を行うとき、XenoTechはミクロソーム中の酵素活性を測定する。培養した肝細胞から調製したミクロソーム中で測定したCYP活性(in vitro活性)は、ヒト肝臓から直接調製したミクロソーム中で測定したCYP活性(ex vivo活性)と比較することができる。このような比較によって、ヒト肝細胞を培養するためのXenoTechの技法は、in vivoで肝細胞中に存在する活性に匹敵するCYP酵素活性を維持するという、説得力のある証拠が得られる。
【0169】
このような分析用にミクロソームを調製するために、XenoTechは、大きな(60mm)皿中でヒト肝細胞を培養し、このことは一般にこのような試験を、薬剤開発プロセスにおいて非常に十分な進展性がある薬剤候補の分析に限定する。Fa2N−4細胞は、多数の新たな化学物質(NCE)の酵素誘導性を分析する能力を与え、前臨床薬剤の開発又は発見における酵素誘導能力の評価を可能にする。この目的を念頭において、XenoTechは、6−、12−、24−及び96−ウェルプレートを含めたさまざまな高スループット形式で、Fa2N−4細胞における酵素誘導を測定することに焦点を当てている。細胞をこのような条件下で培養するとき、ミクロソームを調製することは実際的ではなく、したがって酵素活性の測定に基づく誘導の評価は、マーカー基質をFa2N−4細胞に加えることを含まなければならない。
【0170】
XenoTechは、フェナセチン(CYP1A2測定用)、ブプロピオン(CYP2B6測定用)、ジクロフェナク(CYP2C9測定用)又はミダゾラム(CYP3A4測定用)と共に細胞をインキュベートすることによって、Fa2N−4細胞における酵素誘導を評価している。それぞれの場合、基質の最終濃度は100μMである。代謝産物の形成は、LC/MS/MSによってさまざまな時間地点(8時間まで)において、細胞培養培地の等分試料をアッセイすることによって測定する。さまざまな条件下において異なるCYP活性の比較を容易にするために、これらの結果は、8時間の時間地点で測定した対照の活性に対して表す。
【0171】
Fa2N−4細胞は、酵素誘導物質に適切に応答する。ヒト肝細胞の場合と同様に、CYP1A2はAh受容体を活性化させる物質によって十分に誘導可能であるが、一方PXR及び/又はCARを活性化させる物質はCYP3A4の誘導を引き起こし、より低い程度でCYP2B6及びCYP2C9の誘導を引き起こす。図6中に示すように、Fa2N−4細胞を100μMのオメプラゾールで処理することによってCYP1A2活性の顕著な誘導が引き起こされるが、一方20μMのリファンピンを用いた処理はCYP3A4を誘導し、より低い程度でCYP2B6及びCYP2C9の活性を誘導する。図6中に示した実験用に、Fa2N−4細胞は6−ウェルプレート中で培養した。
【0172】
Fa2N−4細胞における酵素誘導は1つの実験から次の実験に、及び異なる大きさのマルチ−ウェルプレート中で再現可能である。図7は3つの異なるプレート形式中の、リファンピンによるCYP2B6の誘導(ブプロピオンヒドロキシラーゼ)活性の再現性の比較結果を示す。さらに、多数回の細胞継代中のCYP1A2及びCYP3A4誘導の再現性を評価し、これらの結果は図8中に示す。第32〜47継代中の誘導の程度の再現性は両方のCYP酵素に関しては良く、ヒト肝細胞の個々の調製物を用いて典型的に見られる誘導の再現性より優れている。異なる個体由来のヒト肝細胞の調製によって、同一条件下での誘導の程度の非常に大きな変化を実証することができる。したがって、多数回の継代したFa2N−4細胞の誘導の再現性は、同じ、又は異なる、新たなヒト肝細胞調製物を用いた再現性より著しく優れている。
【0173】
広くは知られていないが、ヒト肝細胞における酵素誘導は細胞培養系の形式によって影響を受け、したがって誘導の程度は、ウェルの大きさが小さくなると低下し再現性が低くなる傾向がある。この特徴(及びヒト肝臓の限られた不規則な供給)が、96−ウェル形式での高スループットスクリーニング用のヒト肝細胞の使用を複雑にする。この複雑性はFa2N−4細胞に関しては存在しない。
【0174】
Fa2N−4細胞における酵素誘導を、6−、12−及び24−ウェルプレートにおいて評価した。図9に示すように、リファンピンによるCYP2B6の誘導は6−、12−及び24−ウェルプレートにおいて同一である(96−ウェルプレートにおける試験は進行中である)。同一の結果をCYP2C9に関して得た(結果は示さず)。図10は、オメプラゾールによるCYP1A2の誘導及びリファンピンによるCYP3A4の誘導に対する、細胞培養形式の影響を示す。細胞培養形式は、誘導の程度が12−、24−又は96−ウェル形式より6−ウェル中で大きかった点で、CYP1A2の誘導に影響を与えるようである。しかしながら、いずれの場合もオメプラゾールは、対照の少なくとも9倍CYPIA2活性を誘導した(注:96−ウェルプレートにおけるCYP1A2の誘導はおそらく9.3倍より大きかった、何故ならこの場合、フェナセチンO−の脱アルキル化を1時間後に観察し、図6に示すように、これはCYP1A2活性を測定するのに最適ではないからである)。CYP3A4の場合、リファンピンによる誘導は6−、12−、24−及び96−ウェル形式で同等である(図10)。
【0175】
全体的に、図9及び10中の結果は、Fa2N−4細胞における酵素誘導は96−ウェルプレートを含めたさまざまな細胞培養形式で評価することができることを示し、酵素誘導物質の高スループットスクリーニングの良い前兆となる。
【0176】
Fa2N−4におけるCYP酵素活性の誘導は、適切で予想される時間行程に従う。CYP酵素の最大の誘導を得るために、一致した報告(4,5)において推奨されたのと同様に、ヒト肝細胞は試験品及び原型誘導物質(陽性対照)を用いて3〜5日間連続で処理する。Fa2N−4細胞におけるCYP1A2及びCYP3A4誘導の時間行程を図11に示す。これらの結果は、ヒト肝細胞の初代培養物において観察した結果と同様である(12)。
【0177】
Fa2N−4細胞における酵素誘導は、適切な範囲の誘導物質濃度で起こる。Fa2N−4におけるオメプラゾールによるCYP1A2の誘導、及びリファンピンによるCYP3A4の誘導に関する濃度応答曲線を示すグラフを、図12に示す。同様の結果が、ヒト肝細胞において観察される(12,13)。ヒト肝細胞に関する試験用に、100μMのオメプラゾール及び20μMのリファンピンを通常通り使用して、それぞれCYP1A2及びCY3A4の最大誘導を得ることができる。これらの同じ濃度は、Fa2N−4細胞における誘導試験に勧められる。リファンピンの場合、20μMを超える濃度は、Fa2N−4細胞において最大未満の誘導を引き起こした。同様の現象が幾つかのヒト肝細胞の調製物(13)において観察されたが、他の調製物(12)では観察されなかった。
【0178】
Fa2N−4細胞は、ヒト肝細胞においてCYP酵素を誘導する化合物、及びCYP酵素を誘導しない化合物に適切に応答する。例えば、図13中に示すような、ヒト肝細胞(13)においてPXRを活性化させCYP3A4を誘導することを以前に示した化合物は、Fa2N−4細胞においてCYP3A4活性を誘導するが、一方Ah受容体アゴニストは誘導しない。1つの例外はクロトリマゾールであり、これはCYP3A4の酵素生合成の誘導物質及び酵素活性の阻害剤である。この場合、CYP3A4の誘導は、クロトリマゾールの阻害効果によって封じられた(これは臨床観察結果と一致する)。Fa2N−4細胞においてクロトリマゾールを用いて得た結果は、CYP3A4の阻害剤及び誘導物質でもあるリトナビアーで処理した、ヒト肝細胞において観察される結果を暗示する(13)。化合物が阻害剤及び誘導物質の両方として働くとき、酵素活性及びmRNA又は免疫反応性タンパク質レベルを測定することによって、酵素誘導を評価することが役立つ。この教訓は、ヒト肝細胞及びFa2N−4細胞に当てはまる。
【0179】
Pfizer(Millsら、[14])及びHoffmann−La Roche(Morrisら、[15])の研究者達は、Invader(登録商標)切断アッセイ(14)又はTaqMan RT−PCR(15)によって測定した、mRNAレベルの測定値に主に基づいてFa2N−4細胞における酵素誘導を調べた。両方の試験において、CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4及びP−糖タンパク質(MDR−1)をコードするmRNAの誘導は、6−及び24−ウェルプレート(14)中、或いは6−及び96−ウェルプレート(15)中で、さまざまな誘導物質(Millsらの場合リファンピン、フェノバルビタール、デキサメタソン、クロトリマゾール、β−ナフトフラボン及びクリシン、並びにMorrisらの場合リファンピン、フェノバルビタール及びオメプラゾール)で処理したFa2N−4細胞において測定した。Millsら(14)は、β−ナフトフラボン(10μM)はCYP1A2のmRNAを6倍まで誘導し;リファンピン(20μM)はCYP3A4及びCYP2C9のmRNAをそれぞれ15倍及び3倍まで誘導し、且つフェノバルビタール(1mM)は3A4及びCYP2C9のmRNAをそれぞれ12倍及び2.5倍まで誘導することを報告した。6−ウェルプレートと比較してわずかに低い誘導を、24−ウェルプレートにおいて観察した。例えばリファンピンは、24−ウェルプレート中での9倍に対して、6−ウェルプレート中でCYP3A4のmRNAを15倍誘導した。一般に、この報告中に記載された結果はMillsら(14)によって報告された結果と似ているが、この2つの試験を比較することによって、CYP3A4の場合、mRNAレベルでの誘導は酵素活性レベルでの誘導より大きく、一方でCYP1A2の場合は逆が真実であるらしいことが示唆される。しかしながら、特に異なる終点を測定するとき、異なる研究室で行われる試験の結果を比較することは簡単ではない。Morrisら(15)による試験では、CYP2C9及びCYP3A4の誘導は、96−ウェル形式で活性レベルとmRNAレベルの両方において測定した。CYP3A4の場合、mRNAレベルは活性より増大し(例えば10μMのリファンピンは、CYP活性の7.7倍の増大に対してmRNAレベルを11倍増大させた)、一方CYP2C9の場合は逆のことを観察した(CYP2C9活性の2.6倍の増大に対してmRNAは1.4倍増大した)。Morrisら(15)は、CYP3Aの誘導は、CYP3A5(主に腎臓形)又はCYP3A7(主に胎児形)ではなくCYP3A4の誘導によるものであったことも実証し、これはFa2N−4細胞が高分化成体肝細胞と同様に働くという主張を支持する。Millsら(14)と同様に、Morrisら(15)は、リファンピン(又は高濃度のフェノバルビタール)を用いてFa2N−4細胞を処理することによって、輸送体P−糖タンパク質(MDR−1)及びMRP2をコードするmRNAの2倍までの増大が引き起こされたことを実証した。全体として、XenoTechで行われた試験と、PfizerでMillsら(14)及びHoffmann−La RocheでMorrisら(15)によって行われた試験の間には十分な一致がある。
【0180】
表6は、Fa2N−4細胞及びヒト肝細胞の初代培養物における、CYP1A2、CYP2B6、CYP2C9及びCYP3A4の誘導の程度を要約するものである。後者のデータは、XenoTechの最近の刊行物(Madanら、2003)からのものである。CYP1A2の場合、Fa2N−4細胞における誘導の程度は、ヒト肝細胞における平均誘導倍数より大きかった。CYP2B6、CYP2C9及びCYP3A4の場合、Fa2N−4細胞における誘導の程度は、ヒト肝細胞における中央誘導倍数に匹敵したが、平均誘導倍数未満であった。ヒト肝細胞において中央誘導倍数は平均誘導倍数と相当異なる、何故なら後者は、非常に高い誘導倍数値を有する偶発的サンプルによって著しく影響を受けるからである。このことは、ゼロ(1.5倍未満)〜145倍の範囲であるCYP3A4誘導に関して図14に示す。
【表7】

【0181】
図15は、Fa2N−4細胞中のCYP1A2及びCYP3A4活性に対する酵素誘導物質の影響も示す。左図は、フェナセチンのO−脱アルキル化を触媒するCYP1A2に関する誘導倍数を示す。試験した化合物は、オミプラゾール、3−メチルコラントレン、ラノプラゾール、1,2−ベンズアントラセン、β−ナフトフラボン、レスベラトール、プロベネシド、ベンゾ[a]ピレン、オルティプラツ、フェニトイン、及びベンゾ[e]ピレンであった。右図は、ミダゾラム1’−ヒドロキシル化を触媒するCYP3A4に関する誘導倍数を示す。試験した化合物は、リファンピン、デキサメタソン、ハイパーフォリン、フェノバルビタール、サルフィンピラゾン、シグリタゾン、フェニトイン、エファビレンツ、トロレアンドマイシン、シムバスチン、ビタミンD3、プロベネシド、トログリタゾン、カルベマゼピン、タモキシフェン、オメプラゾール、フェキソフェナジン、3−メチルコラントレン、及びクロトリマゾールであった。
【0182】
ヒト肝細胞中のCYP3A4の平均誘導倍数は10倍であるが、より有意な比較基準である中央誘導倍数は約4倍である。
【0183】
培養中のFa2N−4細胞は、ヒト肝細胞の初代培養物と形態的及び機能的に類似している。酵素誘導物質に対するこの細胞系の応答は、ヒト肝細胞において観察される応答と非常に似ており、これは薬剤候補の酵素誘導能力を評価するための、選択−価値基準−のin vitro系であると考えられる。Fa2N−4細胞はヒト肝細胞に優る幾つかの利点を与え;その内の幾つかによってFa2N−4細胞は、新たな化学物質の高スループットスクリーニング用の有望なin vitro試験系となる。その供給が制限的で不安定であるヒト肝臓とは対照的に、Fa2N−4細胞は非制限的供給で利用可能である。Fa2N−4細胞におけるCYP酵素活性の誘導は、ヒト肝細胞における誘導より再現性がある。さらに、Fa2N−4細胞におけるCYP誘導は、96−ウェルプレートを含めたさまざまな細胞培養形式で測定することができるが、これはヒト肝細胞に関しては常に可能であるわけではない。ヒト肝細胞の初代培養物は、薬剤候補の酵素誘導能力を評価するためのin vitro試験系に適しているとして、統制機関によって現在認められている。ただし試験は、一致した報告(4,5)中に概略された推奨に従い行うものとする。Fa2N−4細胞系は、独特の性質を有する新たな細胞系である。このように、それは統制機関によって認められていないが、Fa2N−4細胞とヒト肝細胞の初代培養物の間の類似性は、このような承認は将来考えられることを示唆する。
【0184】
この報告は、Fa2N−4細胞系における酵素誘導に焦点を当てている。Millsら(14)によるPfizerでの試験は、Ea1C−35細胞系を酵素誘導試験用に使用することもできるが、Ea1C−35は高い基本CYP酵素活性を有しており、誘導の程度を下げる可能性があることを示唆する。Hoffmann−La RocheでのMorrisらによる近年の試験によって、この観察結果が支持される(15)。両方の細胞系を使用して、細胞毒性を引き起こすそれらの能力に関して化合物を調べることができる。実際、細胞毒性の1つ又は2つの試験(例えば、膜の完全性を評価するための酵素漏出、及びミトコンドリアの呼吸を評価するためのアラマーブルーによる還元)を含み、したがって酵素誘導の真の欠如を、細胞毒性のために起こる酵素誘導の失敗と区別することができることが望ましい。
【0185】
薬剤誘導型の肝臓毒性は重大な臨床上の問題であり、稀ではあるが重度の(さらには致死的な)肝臓毒性の症例を引き起こすそれらの能力のために、幾つかの薬剤は市場から撤退している。XenoTechの科学者達は、細胞内タンパク質(αGST又はLDH)の放出及びミトコンドリアの呼吸の乱れによって決定される、最終段階の損なわれた膜の完全性を使用する、異なる濃度の知られている毒物及び非毒物に対するFa2N−4細胞の応答の予備分析を終えている。
【0186】
毒性試験における不死化肝細胞の使用に関する結果は、図16に示す。毒性濃度(100μMまで)の幾つかの物質、即ち3−メチルコランスレン、メトトレキセート、メナジオン、ロテノン、及びトログリタゾンで細胞を処理することによって、膜の完全性の消失が起こり、細胞内酵素、即ちα−グルタチオンS−トランスフェラーゼ(α−GST)の培地への放出がもたらされ、これはBiotrin High Sensitivity Alpha GST EIA(Biotrin International、ダブリン、アイルランド)によって測定した。対照的に、非毒性濃度のオメプラゾール、アセトアミノフェン、プロベネシド、フェバメート、又はリファンピンで処理したFa2N−4細胞からは、α−GSTはほとんど或いは全く放出されなかった。これらの物質の幾つか、アセトアミノフェンなどは、臨床上有意な肝臓毒性を引き起こす可能性があるが、高用量(したがって、図16に示すこの試験で使用した濃度よりはるかに高い濃度)においてのみであることを記さなければならない。毒性データは表7にも要約する。
【表8】

【0187】
Fa2N−4細胞は、臨床上有意な肝臓毒性を引き起こす高い可能性を有する化合物を同定するための、他の系に対する優れた代替を提供し得る。
【0188】
この記載に関して、XenoTechはFa2N−4細胞中でCYP1A2、2B6、2C9及び3A4活性を検出しており、さらに高い活性がEa1C−35細胞中に存在する。これらの細胞系は、アセトアミノフェンとグルクロン酸を結合させることがMCTによって示されてきている。これらの発見は、片方又は両方の細胞系が、薬剤候補の代謝安定性を評価する際に有用である可能性があることを示唆する。しかしながら、両方の系の基本代謝率は非常に低いので、代謝安定性の試験において現在推奨されているそれらの使用を我々は実現することができない。代謝安定性試験を適切に支持することができる不死化肝細胞の有用性をもたらす可能性がある、Fa2N−4又はEa1C−35細胞による異なる手法を、我々は検索中である。
実施例8に関する参照文献
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2.R.Levy、K.Thummel、W.Trager、P.Hansten及びM.Eichelbaum.「代謝薬剤相互作用。(Metabolic Drug Interactions.)」、Lippincott、William&Wilkins、ペンシルベニア州フィラデルフィア、2000。
3.J.Zhang、W.Huang、S.Chua、P.Wei及びD.D.Moore.「生体異物受容体CARによるアセトアミノフェン誘導型肝臓毒性の調節。(Modulation of acetaminophen−induced hepatotoxicity by the xenobiotic receptor CAR.)」、サイエンス298、422〜424、2002
4.G.T Tucker、J.B.Houston及びS−M.Huang.「薬剤開発の最適化:同意に向けた薬剤代謝/輸送体相互作用の可能性を評価するための戦略(Optimizing drug development:Strategies to assess drug metabolism/transporter interaction potential−toward a consensus)」、Pharmaceutic.Res.18:1071〜1080、2001
5.T.D.Bjornmsson、J.T.Callaghan、H.J.Einolf、V.Fischer、L.Gan、S.Grimm、J.Kao、S.P.King、G.Miwa、L.Ni、G.Kumar、J.McLeod、S.R.Obach、S.Roberts、A.Roe、A.Shah、F.Snikeris、J.T.Sullivan、D.Tweedie、J.M.Vega、J.Walsh、S.A.Wrighton.「in vitro及びin vivoでの薬剤−薬剤相互作用試験の実施:PhRMAの展望(The conduct of in vitro and in vivo drug−drug interaction studies:A PhRMA perspective.)」、J.Clin.Pharmacol.43:443〜469、2003
6.A.Madan、R.A.Graham、K.M.Carroll、D.R.Mudra、L.A.Burton、L.A.Krueger、A.D.Downey、M.Czerwinski、J.Forster、M.D.Ribadeneira、L−S.Gan、E.L.LeCluyse、K.Zech、P.Robertson、P.Koch、L.Antonian、G.Wagner、L.Yu及びA.Parkinson.「培養ヒト肝細胞における、原型ミクロソーム酵素誘導物質のシトクロムP450の発現に対する影響(Effects of prototypical microsomal enzyme inducers on cytochrome P450 expression in cultured human hepatocytes.)」Drug Metab.Dispos.31:421〜431、2003.
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12.E.LeCluyse、A.Madan、G.Hamilton、K.Carroll、R.DeHaan及びA.Parkinson.「ヒト肝細胞の初代培養物における、シトクロムP450酵素の発現及び制御。(Expression and regulation of cytochrome P450 enzymes in primary cultures of human hepatocytes.)」、J.Biochem.Mol.Toxicol.14:177〜188、2000
13.G.Luo、M.Cunningham、S.Kim、T.Burn、J.Lin、M.Sinz、G.Hamilton、C.Rizzo、S.Jolley、D.Gilbert、A.Downey、D.Mudra、R.Graham、K.Carroll、J.Xie、A.Madan、A.Parkinson、D.Christ、B.Selling、E.LeCluyse及びL−S.Gan.「薬剤によるCYP3A4誘導:プレグナンX受容体のレポーター遺伝子アッセイとヒト肝細胞中のCYP3A4発現の間の相関関係。(CYP3A4 induction by drugs:Correlation between a pregnane X receptor reporter gene assay and CYP3A4 expression in human hepatocytes.)」、Drug Metab.Dispos.30:795〜804、2002
14.J.B.Mills、R.Faris、J.Liu、S.Cascio及びS.M.de Morais SM.「ヒト肝細胞クローン系及びRNA検出を使用する、酵素及び輸送体の誘導に関するHTSアッセイ。(An HTS assay for induction of enzymes and transporters using a human hepatocyte clonal line and RNA detection.)」、Drug.Metab.Rev.34:124、2002.アブストラクト248.(2002年10月に年次ISSX会合、フロリダ州オーランドにおいて発表された)。
15.A.L.Morris、E.Awwal及びK.B.Frank.「Fa2N−4不死化ヒト肝細胞系を使用する、シトクロムP450及び薬剤輸送体のin vitroでの誘導。(In vitro induction of cytochrome P450s and drug transporters using the Fa2N−4 immortalized human hepatocyte line.)」、Drug.Metab.Rev.35:125、2003.アブストラクト249.(2003年10月に年次ISSX会合、ロードアイランド州プロビデンスにおいて発表された)。
【0189】
(実施例9)
細胞系Fa2N−4を使用する薬剤代謝酵素及びMDR1の誘導
シトクロムP450(CYP)を含めた薬剤代謝酵素、及び輸送体は、薬剤のクリアランスと関係がある。CYPは、酸化及びヒドロキシル化を含めた、さまざまな薬剤代謝反応を行う。薬剤代謝酵素及び輸送体と関係がある薬剤−薬剤相互作用は、有害反応及び有効性の消失の報告(Baciewiczら、1987;Spinaら、1996)によって関心が高まっている。薬剤開発中に、in vitroアッセイを使用して誘導物質を回避し、肝臓によって増大した薬剤のクリアランスによる薬剤−薬剤相互作用能力を特徴付けることができる。CYPは主に肝臓中の薬剤の代謝と関係がある。CYP3A遺伝子発現の誘導はリファンピン、フェノバルビタール、クロトリマゾール、及びデキサメタソンを含めたさまざまな市販の薬剤によって引き起こされ(Meunierら、2000;Sahiら、2000、Luoら、2002;Madanら、2003)、幾つかの一般的な薬剤−薬剤相互作用の根底を表す。CYP1A2は3−メチルコランスレン、β−ナフトフラボン、及びテトラクロロジベンゾジオキシンによって誘導可能である(Liら、1998;Breinholtら、1999;Meunierら、2000;Madanら、2003)。CYP2C9はリファンピン及びフェノバルビタールによって誘導することができるが、しかしながら、その誘導の程度はCYP3A4に関する誘導の程度より低い(Liら、1997;Madanら、2003)。UGT1Aファミリーの誘導物質には、リファンピン、クリシン、及びβ−ナフトフラボンがある(Liら、1997、Abidら、1997;Breinholtら、1999)。MDR1遺伝子産物P−糖タンパク質(P−gp)は、重要な薬剤の流出輸送体である。P−gpの誘導物質にはリファンピン、フェノバルビタール、クロトリマゾール、及びデキサメタソンがある(Schuetzら、1996;Geickら、2001;Sahiら、2003)。
【0190】
プレグナンX受容体(PXR)は、薬剤及び他の生体異物によるCYP3A遺伝子制御の主な決定要素である(Lehmannら、1998;Bertilssonら、1998、Pascussiら、2003)。さらに、PXRはCYP2B6、2C8/9、及び3A7、並びに薬剤輸送体MDR1、OATP−C、BSEP及びMRP2の誘導を仲介する(Pascussiら、2003、Tironaら、2003)。ADMET終点の誘導と関係がある他の核内ホルモン受容体には、糖質コルチコイド受容体(GR)(CYP2B6、CYP2C8/9、CYP3A4/5)、構成的アンドロスタン受容体(CAR)(UGT1A、CYP2B6、CYP3A4、及びCYP2C9)、及びペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)(CYP4A)がある(Fergusonら、2002;Pascussiら、2003)。サイトゾル受容体、アリール炭化水素(Ah)受容体は、CYP1Aサブファミリーの誘導と関係がある(Whitlockら、1996)。
【0191】
ヒト肝細胞におけるCYP誘導を評価する能力は非常に望ましい、何故なら幾つかの薬剤は、ラット中ではなくヒト中でCYP酵素を誘導し、その逆は言えないことが知られているからである(Bertilssonら、1998;Moore及びKliewer、2000)。例えば、プレグネノロン16−α−カルボニトリルはヒト中ではなくラット中でCYP3Aを誘導し、一方リファンピンは、ラット中ではなくヒト中での知られているCYP3Aの誘導物質である。ヒト肝細胞の初代培養物は、CYPイソ型の種特異的な誘導を示すという独特の利点を有するが、新たな細胞の入手可能性及びドナー毎の変動性に依存する。HepG2、LS180、及びLS174Tなどの細胞系は、CYP及び薬剤輸送体の限られた亜群の誘導を試験する際に有用であるが(Schuetzら、1996;Liら、1998;Geickら、2001)、他の誘導性標的に関する適切な応答性を欠く(Silva及びNicoll−Griffith、2002)。
【0192】
薬剤代謝酵素及び薬剤輸送体の誘導は、mRNAレベルで検出することができる(Schuetzら、1996;Abidら、1997;Liら、1998;Fergusonら、2002)。Invader(登録商標)アッセイ(Kwiatkowskiら、1999;Eisら、2001)は、培養細胞から抽出した全RNAからの転写物の発現を定量化する。それは等温でのRNAの検出であり、PCR増幅ステップを必要としない。上流の侵襲性デオキソリゴヌクレオチド及び下流のデオキシヌクレオチドプローブからなるオリゴヌクレオチド間の重複部分を、いずれもRNA標的とアニーリングし、次に下流プローブの5’ヌクレアーゼによって切断する。第二の切断反応は、シグナルをさらに増幅させる蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)オリゴヌクレオチドを利用する。このアッセイは、CYP亜科中などで密接に関連するRNA転写物を区別することができる(Eisら、2001)。最新の試験用に、我々は不死化ヒト肝細胞の細胞系Fa2N−4を使用している。我々はこれらの細胞を、転写物レベルと酵素活性レベルの両方で、それらの薬剤代謝酵素を試験することによって特徴付けている。主要な薬剤代謝酵素の数種の原型誘導物質で細胞を処理し、mRNA及び酵素活性の変化を調べることによって、我々はFa2N−4細胞の誘導能力も試験してきている。この実施例は、薬剤代謝酵素又は輸送体をコードする遺伝子の転写の増大による臨床的薬剤−薬剤相互作用を予想するための考えられる方法として、mRNA検出Invaderアッセイと組み合わせた、不死化ヒト肝細胞Fa2N−4の利用を記載する。
【0193】
方法
化学物質
フェノバルビタール(5−エチル−5−フェニル−2,4,6−トリオキソヘキサヒドロピリミジン)、デキサメタソン(9−α−フルオロ−16−α−メチルプレドニソロン)、β−ナフトフラボン(5,6−ベンゾフラボン)、リファンピン(3−[4−メチルピペラジニルイミノメチル]リファマイシンSV)、クロトリマゾール(1−[o−クロロ−α,α−ジフェニルベンジル]−イミダゾール)、及び1−シクロヘキシル−3−(モルフォリノエチル)カルボジイミドメト−p−トルエンスルホン酸塩、テストステロン、6−ヒドロキシテストステロン、7−エトキシレゾルフィン、レゾルフィン、ヒドロコルチゾン、及びジクロフェナクはSigma(St.Louis、MO)から購入した。4’−ヒドロキシジクロフェナクはGentest(Bedford、MA)から購入した。[13]−4’−OH−ジクロフェナクは、Pfizerにおいて内部で製造された。
【0194】
Fa2N−4細胞の誘導
この細胞系は、12才のメスのドナーから単離し、前に記載したシミアンウイルス40のラージT抗原を用いたトランスフェクションによって不死化させた、ヒト肝細胞由来のものであった。Fa2N−4細胞(図17)はMultiCell Technologies(Warwick、RI)から得て、以下のように培養した。RNA分析用に、マルチウェルプレートは、2.75mMの1−シクロヘキシル−3−(モルフォリノエチル)カルボジイミドメト−p−トルエンスルホン酸塩及び4%(v/v)Vitrogen 100精製コラーゲン(Cohesion、Palo Alto、CA)を滅菌生理食塩水(0.9%のNaCl)に溶かしたものから構成される硬質コラーゲン複合体で事前にコーティングした。過剰なコラーゲンは、細胞を平板培養する前に除去した。酵素活性の分析用に、BiocoatのI型コラーゲンプレート(Becton−Dickinson、Bedford、MA)を使用した。100単位/mLのペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン及び10%ウシ胎児血清(GIBCO BRL、Grand Island、NY)を補ったMFE培地(MultiCell Technologies、Warwick、RI)中に、Fa2N−4細胞を集合状態で平板培養した。細胞接着(約3時間)後に、100単位/mLのペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを補った無血清MFE培地と、培地を交換した。37℃、二酸化炭素5%、及び相対湿度95%に設定したインキュベーター中に、細胞を保った。24時間毎に、100単位/mLのペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンを補った新たな無血清MFE培地と、培地を交換した。平板培養後48時間で、薬剤を用いた細胞の処理を開始した。RNAの定量化用に、細胞を薬剤に48時間曝した。酵素活性の試験用に、細胞を薬剤に72時間曝した。Fa2N4細胞は図17に示す。MFE培地(MultiCell Technologies、Warwick、RI)中、96ウェルのBiocoatのI型コラーゲンプレート(Becton Dickinson、Bedford、MA)中に平板培養した、集合状態のFa2N−4細胞の位相差顕微鏡画像を、倍率200倍で図17に示す。
【0195】
RNA分析
製造者(Qiagen、Valencia、CA)によって提供された使用説明書に従いミニRNeasyキットを使用して、細胞から全RNAを抽出した。RNA(100ng)は、製造者(Third Wave Technologies、Madison、WI)によって提供された使用説明書に従い、Invader(登録商標)RNAアッセイ試薬キットを使用して分析した。媒体処理と比較したサンプル中の高レベルのRNAに関する統計分析は、p<0.05が有意な差を示す、2−サンプルの不対のスチューデントのt検定を使用して行った。多数の処理(>2サンプル)と比較した高レベルのRNAに関する統計分析は、多数の誘導物質を順位序列付ける目的で、p<0.05が有意な差を示すANOVA分析を使用して行った。
【0196】
酵素活性
CYP3A4。活性は、以下の変更を加えWoodら(1983)及びSonderfanら(1987;1988)によって記載されたのとほぼ同様に質量分析法によって、テストステロンからの6β−ヒドロキシテストステロン形成の程度を測定することによって決定した。試験薬剤は添加培地を除去することによって細胞から洗浄し、新たな培地と交換し、細胞は1時間インキュベートした。洗浄培地を除去した後、200μMのテストステロンを含む250μLのMFE培地を組織培養ウェルに加えることによって、反応を開始させた。30分で、等分試料をHPLC又はLC/MS/MSによって分析用に除去した。LC/MS/MS分析用に、等分試料は250ng/mlのヒドロコルチゾンで汚染した1体積のアセトニトリルと混合させた。質量分析法は、Perkin Elmer 200 HPLC系及びMicromass Quattro II検出器を用いて行った。サンプルを注入し、70:30メタノール:トリフルオロ酢酸0.02%(v/v)、0.20ml/分(isocratic)の移動相、及びKeystone Aquasil C18、100・2.1mm、5μm粒径カラム中で、エレクトロスプレー正イオンモードを使用してイオン化した。幾つかの試験は、以下のようにテストステロン代謝に関するHPLC−UVアッセイを使用した:200μlの培地を5μlの内標準(IS)溶液(20μg/mlプレドニソロン、アセトニトリル中)と混合させ、約50μlまで蒸発させた。次いでサンプル(20μl)を、Agilent Zorbax Eclipse XDB−C8カラム(4.6×150mm)及び254nmにおいてUV検出器を使用して、Agilent 1100 HPLC系に注入した。移動相Aは10mMリン酸アンモニウム、水中からなり、移動相Bは100%アセトニトリルからなっていた。最初の状態は35%Bで3分間、65%Bに2分間増大し、次いで10分間、35%Bに戻し、合計作業時間は15分であった。保持時間はそれぞれ6−β−ヒドロキシ−テストステロン、プレドニソロン、及びテストステロンに関して2.8分、3.0分、及び7.0分であった。6−β−ヒドロキシテストステロンに関する標準曲線は、25ng/mlから少なくとも1000ng/mlまで直線的であった。6−β−ヒドロキシ−テストステロンに関するピーク領域はISに標準化し、DMSO処理細胞からの倍数の変化として報告した。
【0197】
CYP2C9。活性は、以下のように変更したLeemannら(1993)の方法を使用することによって、4’−ヒドロキシジクロフェナク形成の程度を測定することによって決定した。試験薬剤は添加培地を除去することによって細胞から洗浄し、新たな培地と交換し、細胞は15分間インキュベートした。洗浄培地を除去した後、7.5μMのジクロフェナクを含む250μlのMFE培地をそれぞれのウェルに加えることによって、反応を開始させた。LC/MS/MS分析用に60分で等分試料を除去した。質量分析法は、Perkin Elmer 200 HPLC系及びMicromass Quattro II検出器を用いて行った。サンプルを注入し、50:50アセトニトリル:0.1%ギ酸、水中(v/v)、0.27ml/分(isocratic)の移動相、及びPhenomenex、Synergi Max RP、50・2.0mm、4μm粒径カラム中で、エレクトロスプレー正イオンモードを使用してイオン化した。
【0198】
CYP1A2。活性は、わずかな変更を加えたBurkeら(1985)の蛍光測定法(Rodrigues及びPrough、1991)を使用することによって、7−エトキシレゾルフィンのO−脱アルキル化の程度を測定することによって決定した。試験薬剤は添加培地を除去することによって細胞から洗浄し、新たな培地と交換し、細胞は15分間インキュベートした。洗浄培地を除去した後、7−エトキシレゾルフィン(20μM)を含む250μLのMFE培地をそれぞれのウェルに加えることによって、反応を開始させた。蛍光測定法による分析用に15分で等分試料を除去した。測定値と標準曲線を比較することによって、代謝産物を定量化した。それぞれの細胞処理用のタンパク質の濃度は、標準としてウシ血清アルブミンを使用して、製造者によって提供された使用説明書に従いBiorad DC試薬(Hercules、CA)を用いて測定した。値を使用して、代謝産物のピコモル/タンパク質1mg/インキュベーション1分間として酵素活性を計算した。
【0199】
結果
薬剤代謝酵素及び薬剤輸送体の知られている誘導物質に対するFa2N−4細胞の誘導応答
図18中に例示するように、知られている誘導物質であるリファンピン(CYP2C9、CYP3A4、UGT1A、及びMDR1を誘導する)、フェノバルビタール(CYP2C9、CYP3A4、及びMDR1を誘導する)、デキサメタソン(CYP3A4及びMDR1を誘導する)、並びにβ−ナフトフラボン(CYP1A2及びUGT1Aを誘導する)を使用して、CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4、UGT1A、及びMDR1を含めた幾つかの終点を調べるのにFa2N−4細胞は有用である。図18中には、Fa2N−4細胞におけるCYP1A2、CYP2C9、CYP3A4、UGT1A、及びMDR1転写物の誘導を示す。Fa2N−4細胞は24−ウェルプレートに平板培養し、0.1%のDMSO媒体(白棒)、10μMのリファンピン(赤棒)、1000μMのフェノバルビタール(青棒)、50μMのデキサメタソン(緑棒)、及び10μMのβ−ナフトフラボン(黒棒)に48時間曝した。転写物のレベルは、処理した細胞から単離した全RNAから定量化した。プロットは、4連サンプルのデータからの平均±SDを表す。星印は、媒体対照処理に対する転写物の統計上有意な増大を示す(スチューデントのt検定、p<0.05)。CYP3A4誘導物質は、ANOVA分析を使用すると(p<0.05)互いに有意に異なっていた。転写物の増大は、全ての陽性対照に関して観察することができる。媒体対照と比較すると、10μMのβ−ナフトフラボンで処理した後にCYP1A2転写物は15倍増大したが、他の誘導物質では有意に増大することはなかった。CYP2C9転写物は10μMのリファンピンでは3.8倍増大し、1mMのフェノバルビタールでは2.6倍増大し、50μMのデキサメタソン、10μMのβ−ナフトフラボンを用いた処理によっては誘導されなかった。CYP3A4転写物は10μMのリファンピンでは17倍増大し、1mMのフェノバルビタールでは9.2倍増大し、50μMのデキサメタソンでは1.3倍増大した。UGT1A転写物は10μMのβ−ナフトフラボンでは2.1倍増大し、1mMのフェノバルビタール、50μMのデキサメタソンを用いた処理によっては誘導されなかった。UGT1Aのリファンピン誘導は、統計上有意ではなかった(p=0.08)。MDR1転写物は10μMのリファンピンでは3.1倍増大し、1mMのフェノバルビタールでは2.3倍増大し、50μMのデキサメタソンでは1.3倍増大し、10μMのβ−ナフトフラボンによるMDR1誘導はなかった。表8は、初代肝細胞の公開データと比較してmRNAの誘導倍数の増大として表した、3つのCYPに関するFa2N−4細胞における誘導データを要約する。
【表9】

【0200】
Fa2N−4細胞におけるCYP酵素活性
それぞれ10μMのリファンピン及び50μMのデキサメタソンによる6−β−ヒドロキシテストステロンの形成の増大によって評価すると、媒体処理対照と比較して(図19A)、CYP3A4活性は8.9倍及び2.1倍増大した。図19には、シトクロム−450酵素活性による誘導の測定を示す。0.1%のDMSO媒体(VEH)又は誘導物質に72時間曝した後の、Fa2N−4細胞におけるCYP3A4、CYP2C9、及びCYP1A2酵素活性の誘導を示す。12−ウェルプレート形式を使用して試験を行った。データは、形成された代謝産物/合計Fa2N−4タンパク質のミリグラム/親化合物とのインキュベーション1分当たりの酵素活性を表す。データは、白棒及び黒棒によって示す二連のアッセイからのものである。(A)媒体、10μMのリファンピン(RIF)、及び50μMのデキサメタソン(DEX)を用いて誘導した、細胞中のテストステロン代謝産物6−β−ヒドロキシテストステロンの形成によるCYP3A4活性の測定。(B)媒体、10μMのリファンピン(RIF)、及び1000μMのフェノバルビタール(PB)を用いて誘導した、細胞中のジクロフェナク代謝産物4’−ヒドロキシジクロフェナクの形成によるCYP2C9活性の測定。(C)媒体又は50μMのβ−ナフトフラボン(BNF)を用いて誘導した、細胞中の7−エトキシレゾルフィンのO−脱アルキル化によるCYP1A2活性の測定。CYP2C9活性の評価に関する4’−ヒドロキシジクロフェナクの形成は、10μMのリファンピン及び1mMのフェノバルビタールを用いた処理に関して約2倍増大した(図19B)。CYP1A2に関するERODアッセイ中の倍数の変化は、10μMのβ−ナフトフラボンを用いると27倍であった(図19C)。
【0201】
1つの濃度の薬剤の誘導効果を調べること以外に、Fa2N−4細胞を使用して、用量−応答関係を見ることもできる。例えば、100nM〜50μMの範囲の複数の濃度のリファンピンを投与したFa2N−4細胞の応答に基づいて、EC50値を計算した。図20は、高いCYP3A4転写物値(図20A)、及び高いCYP3A4酵素活性(図20B)を使用する、Fa2N−4細胞に関するEC50プロットを含む。図20中には、Fa2N−4細胞におけるリファンピンによるCYP3A4誘導の用量応答依存性を示す。CYP3A4の誘導の測定は、100nM〜50μMのリファンピンで処理したFa2N−4細胞において行った。3−パラメータS字曲線を使用するSigmaPlot(バージョン8)を使用して、データを適合させた。(A)全RNAを分析してCYP3A4転写物のレベルを測定し、次いで媒体対照と比較して誘導倍数を測定した。データは、3連サンプルのデータからの平均±SDを表す。(B)CYP3A4活性をテストステロン代謝産物6−β−ヒドロキシテストステロンの形成によって測定して、次いで媒体対照と比較して誘導倍数を測定した。データは、3連サンプルのデータからの平均±SDを表す。計算したEC50は、それぞれ転写物及び酵素活性に関して0.43μM(r=92)及び0.77μM(r=94)であった。さらに、計算した最大誘導(Imax)値は、転写物の終点に関しては13倍、酵素活性の終点に関しては9.7倍であった。
【0202】
多数回の継代中のFa2N−4の誘導応答
多数回継代したFa2N−4細胞を、CYP3A4誘導に関して試験した。図21は、弱い応答性を有するCYP3A4誘導物質(50μMのデキサメタソン)、及び強い応答性を示すCYP3A4誘導物質(10μMのリファンピン)に対する、多数回継代したFa2N−4細胞の応答性を示す。図21では、さまざまな継代のFa2N−4細胞は24−ウェルプレートに平板培養し、0.1%のDMSO媒体(白棒)、50μMのデキサメタソン(縞模様棒)、及び10μMのリファンピン(黒棒)に曝した。(A)CYP3A4転写物のレベルは、単離した全RNAから定量化した。プロットは、4連サンプルのデータからの平均±SDを表す。(B)CYP3A4活性は、テストステロン代謝産物6−β−ヒドロキシテストステロンの形成によって測定した。プロットは、2連サンプルの平均を表す。全ての化合物が、媒体対照処理に対する転写物の統計上有意な増大を示した(スチューデントのt検定、p<0.05)。デキサメタソンを用いた処理によって、第21代及び第36代でそれぞれ1.6倍及び1.5倍、CYP3A4転写物が増大した。10μMのリファンピンを用いた処理によって、第21代及び第36代でそれぞれ17倍及び16倍、CYP3A4転写物が増大した(図21A)。CYP3A4酵素活性は、第28代及び第36代でそれぞれ、デキサメタソンに関して2.1倍及び2.0倍、10μMのリファンピンに関して8.9倍及び4.9倍増大した(図21B)。
【0203】
Fa2N−4細胞を用いるHTS及びInvader(登録商標)アッセイの能力
図22は、さまざまなマルチウェルプレート形式を比較する。図22中には、10μMのリファンピン(黒棒)に48時間曝した後のFa2N−4細胞におけるCYP3A4転写物の誘導を、媒体(白棒)と比較して示す。データは、示したそれぞれのマルチウェルプレート形式で行った試験からのものである。プロットは、4連サンプルのデータからの平均±SDを表す。全ての化合物が、媒体対照処理に対する転写物の統計上有意な増大を示した(スチューデントのt検定、p<0.05)。プレート形式とは無関係に、Fa2N−4細胞はリファンピンに対して相当なCYP3A4誘導応答を示す。CYP3A4転写物の誘導倍数の変化は、24−ウェルプレートを使用すると17.1倍であり、24−ウェルプレートを使用すると6.6倍であり、96−ウェルプレートを使用すると5.7倍であった。
【0204】
考察
Fa2N−4細胞は、知られている誘導物質に応答して、CYP1A2、CYP2C9、CYP3A4、UGT1A、及びMDR1のmRNAを誘導する能力を有している。終点としてCYP3A4転写物を使用することによって、我々は有効性に従い誘導物質を順位付けるアッセイの能力を実証しており、初代ヒト肝細胞において以前に観察されたのと同様の(Liら、1997;Sahiら、2000)、リファンピンに関する用量応答性を実証している。誘導物質と非誘導物質を区別することに加えて、このアッセイはCYP3A4及びCYP1A2などの幾つかの終点に関して広い動的範囲を有し、誘導能力に関する順位序列付けを可能にする。CYP3A4誘導物質に関する同一の低い能力(リファンピン>フェノバルビタール>デキサメタソン)が、mRNA及び酵素活性の終点を使用する、初代ヒト肝細胞における試験に関する文献中に以前に報告されている(Luoら、2002)。Fa2N−4細胞におけるmRNA誘導を使用する我々の結果は、Madanら(2003)による発表と十分一致し、彼らは処理済み細胞由来のミクロソーム調製物中の酵素活性を測定することによって、培養した初代ヒト肝細胞におけるCYP1A2、CYP2C9、及びCYP3A4に関する原型誘導物質の影響を報告した。不死化細胞系Fa2N−4及びmRNA測定を使用する我々の誘導結果は、初代ヒト肝細胞を使用するMadanら(2003)による発表と十分一致する。Madanらは幾つかの異なるドナー由来の肝臓を使用し、我々の試験中と同じ原型誘導物質で処理した後の、幾つかのCYPに対する酵素活性を測定した。媒体対照に対する誘導倍数として表したリファンピン及びフェノバルビタールの、CYP3A4誘導能力に関する順位序列付けは、両方の試験で同じであった。CYP3A4より低い程度であったがCYP2C9も誘導され、CYP1A2は両方の系で最も高い応答性を有していた。初代ヒト肝細胞を使用する他の試験(Sahiら、2000)は、活性アッセイを使用して、CYP3A4誘導におけるリファンピンに関するEC50を報告した。これらの結果も、Fa2N−4細胞及びmRNA測定を使用する、我々の独自のEC50結果と十分一致する。
【0205】
この不死化肝細胞クローンは、幾つかのクローンのスクリーニングで同定し、この場合CYP3A4のリファンピン誘導に対する最良の応答性が選択基準であった。したがって、このアッセイの最も適切な使用はCYP3A4誘導に関する使用である。このクローンの他の特徴付けによって、それがCYP1A2誘導物質に対する高い応答性を有していたことが示され、スクリーニング形式中のこの終点を検出することもできた。CYP2C9及びMDR1に対する応答性の動的範囲は狭かったが、それらは新しい肝細胞で見られる誘導応答性と同じ比率であった(Liら、1997;Madanら、2003;Sahiら、2003)。
【0206】
平均UGT1A転写物は、媒体処理した細胞中よりリファンピン処理したFa2N−4細胞中に多量に存在したが、誘導のレベルは統計上有意ではなかった。初代ヒト肝細胞における以前の誘導試験は、終点として1−ナフトールグルクロン酸化を使用して、リファンピンの影響の個体間の変化を引用している。Abidら(1997)は、この変化性は2つのUGT1Aイソ形の分化誘導に原因がある可能性があることを報告した。ここで使用するInvader(登録商標)UGT1Aオリゴヌクレオチドは、全てのイソ型でRNA中の共通の領域に広がり、mRNAの測定値は全UGT1Aイソ型の合計である。したがって、リファンピンに対する誘導影響は、非誘導型UGT1Aイソ型によって最小にすることができたと思われる。個々のUGT1Aイソ型用に設計したプローブによって、それらのmRNAの有意な増大を検出することができる可能性がある。
【0207】
Fa2N−4細胞における誘導はmRNAに限られず、酵素活性レベルで評価することもできる。Invader(登録商標)で定量化したmRNAを使用する誘導の程度は、幾つかの原型誘導物質に関する同様の順位序列付けによって示された、酵素活性データと非常に関連があった。CYP酵素活性を誘導する能力は、Fa2N−4細胞中での広範囲のアレイのCYPの発現に関する他の証拠を提供する。さらにそれは、CYP阻害又は代謝産物生成などの他の適用例に関する、これらの細胞の可能性を示す。
【0208】
Invader(登録商標)アッセイは、mRNAレベルの増大に基づき誘導を適切に定量化することができる。mRNA終点の利点には、高スループット及び標的特異性がある。酵素活性に関しては、それぞれの酵素活性終点用に、マルチウェルプレート中の別個のウェルを使用しなければならないが、一方で1つのウェルを使用して多数のmRNA標的を評価することができる。それぞれのサンプル(24−ウェルプレート)からRNAを回収することは、50までの別個のmRNA終点を得るのに非常に十分である。Invaderアッセイは非常に関連があるCYPを区別することができ、一方で酵素活性アッセイは常に特異的であるわけではない。例えば、7−エトキシレゾルフィンのO−脱アルキル化はCYP1A1とCYP1A2の組合せを特徴付け、6−β−ヒドロキシテストステロンをCYP3A4及びCYP3A5によって形成することもできる(Williamsら、2002)。
【0209】
新しいヒト肝細胞とは対照的に、Fa2N−4細胞は容易に入手可能である。新しいヒト肝細胞の入手しやすさは、適切な肝臓組織ドナーの入手可能性に依存するので、3つの異なる肝臓から単離した肝細胞を使用する実験を行って、ある1つの化合物が誘導物質であることを確認するためには、長時間を要する可能性がある。さらに、新しい肝細胞の平板培養効率は予測不能であるので、適切なドナーを有することが一般的であるが、良くない平板培養効率又は標準未満の細胞の健康状態のために、これらの細胞は使用することができないことが分かっている。Fa2N−4細胞は継代することができ、主な薬剤代謝酵素の活性を保持しながら、数代にわたり使用することができる。新しいヒト肝細胞に関しては、細胞は一回のみ使用することができ、試験間のデータを比較することは難しくなる。平板培養可能な低温保存した初代ヒト肝細胞は、1個のドナーから異なる回数の多数の実験を理論上可能にすること、或いはおそらく多数のドナーを一度に使用することによる改良品である。しかしながら、平板培養可能な低温保存した初代ヒト肝細胞は制限的に供給される。新しい初代ヒト肝細胞と平板培養可能な低温保存した初代ヒト肝細胞の両方が、遺伝、環境、及び同時薬物処理の影響に基づいてドナー毎の多様性を有する。ドナーの薬剤代謝酵素の概略において見られる広範囲の差異が存在し、化学物質の誘導能力に関する結論に達する前に3ドナーからデータを得るという最新の奨励につながる。さらに、何人かの著者は、ドナー間のデータを比較するための能力指標の必要性を挙げている(Silva及びNicoll−Griffith、2002)。試験化合物の誘導応答(即ち誘導倍数)と原型誘導物質の誘導応答の比を報告することによって、能力指標はドナー間のデータを標準化する。
【0210】
したがって、数種の原型誘導物質を使用する我々の予備データは、Fa2N−4細胞は誘導試験において新しいヒト肝細胞の適切な代替であり、高スループット試験に適した他の属性を与える可能性があることを実証する。Fa2N−4細胞は以前に発表された不死化細胞系より優れている、何故ならFa2N−4細胞は、さまざまな数の遺伝子の誘導を示すからである。初代ヒト肝細胞において増大した酵素活性を観察したことと一致する発見と共に、これらの細胞を使用して薬剤の誘導能力を決定することができる。高スループットの細胞培養及びmRNA終点による分析によって、さらに多くの化合物を試験することができ、化合物当たりのコストを低下させる;薬剤発見アッセイの2つの好ましい特性。この誘導アッセイは、薬剤−薬剤相互作用能力を有する化合物を排除し、開発中の化合物に関するDDIの可能性及び程度を理解するための、製薬会社にとって有用なツールとなる可能性を有する。
実施例9に関する参照文献
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4.Breinholt V、Lauridsen ST及びDragsted LO(1999)「メスラットにおける、薬剤代謝及び抗酸化酵素に対する食用フラボノイドの特異的影響。(Differential effects of dietary flavonoids on drug metabolizing and antioxidant enzymes in female rat.)」Xenobiotica 29(12)、1227〜1240。
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6.Eis PS、Olson MC、Takova T、Curtis ML、Olson SM、Vener TI、Ip HS、Vedvik KL、Bartholomay CT、Allawi HT、Ma W、Hall JG、Morin MD、Rushmore TH、Lyamichev VI及びKwiatkowski RW(2001)「特異的RNAを直接定量化するための侵襲性切断アッセイ。(An invasive cleavage assay for direct quantitation of specific RNAs.)」Nat Biotechnol 19(7)、673〜676。
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11.Lehmann JM、McKee DD、Watson MA、Willson TM、Moore JT及びKliewer SA(1998)「ヒトオーファン核内受容体PXRは、CYP3A4遺伝子発現を制御し薬剤相互作用を引き起こす化合物によって活性化される。(The human orphan nuclear receptor PXR is activated by compounds that regulate CYP3A4 gene expression and cause drug interactions.)」J Clin Investig 102、1016〜1023。
12.Li AP、Reith MK、Rasmussen A、Gorski JC、Hall SD、Xu L、Kaminski DL及びCheng LK(1997)「生体異物のシトクロムP450誘導能力の構造−活性の関係を評価するためのツールとしての初代ヒト肝細胞:リファンピン、リファペリチン及びリファブチンの評価。(Primary human hepatocytes as a tool for the evaluation of structure−activity relationship in cytochrome P450 induction potential of xenobiotics:evaluation of rifampin、rifapentine and rifabutin.)」Chem Biol Interact 107、17〜30。
13.Li W、Harper PA、Tang BK及びOkey AB(1998)「ヒト細胞中のアリール炭化水素受容体によるシトクロムP450酵素の制御。(Regulation of cytochrome P450 enzymes by aryl hydrocarbon receptor in human cells.)」Biochem Phamacol56(5)、599〜612。
14.Luo G、Cunningham M、Kim S、Burn T、Lin J、Sinz M.、Hamilton G、Rizzo C、Jolley S、Gilbert D、Downey A、Mudra D、Graham R、Carrol K、Xie J、Madan A、Parkinson A、Christ D、Selling B、LeCluyse E及びGan LS(2002)「薬剤によるCYP3A4誘導:プレグナンX受容体の受容体遺伝子アッセイとヒト肝細胞におけるCYP3A4発現の間の相関関係。(CYP3A4 induction by drugs:correlation between a pregnane X receptor reporter gene assay and CYP3A4 expression in human hepatocytes.)」Drug Metab Dispos30(7)、795〜804。
15.Madan A、Grahm RA、Carroll KM、Mudra DR、Burton LA、Krueger LA、Downey AD、Czerwinski M、Forster J、Ribadeneira MD、Gan L、LeCIuyse EL、Zech K、Robertson P、Koch P、Antonian L、Wagner G、Yu L、及びParkinson A(2003)「培養ヒト肝細胞における、原型ミクロソーム酵素誘導物質のシトクロムP450発現に対する影響。(Effects of prototypical mirosomal enzyme inducers on cytochrome P450 expression in cultured human hepatocytes.)」Drug Metab Dispos 31(4)、421〜431。
16.Meunier V、Bourrie M、Julian B、Marti E、Guillou F、Berger Y及びFabre G(2000)「ヒト肝細胞の初代培養物における、CYP1A1/1A2、CYP2A6及びCYP3A4の発現及び誘導:10年のフォローアップ。(Expression and induction of CYP1A1/1A2、CYP2A6 and CYP3A4 in primary cultures of human hepatocytes:a 10−year follow−up.)」Xenobiotica 30(6)、589〜607。
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25.Sonderfan AJ及びParkinson A(1988)「ラット肝臓のミクロソームシトクロムP−450による、ステロイド5α−リダクターゼの阻害、及びテストステロンヒドロキシル化に対するその影響。(Inhibition of steroid 5 alpha−reductase and its effects on testosterone hydroxylation by rat liver microsomal cytochrome P−450.)」Arch Biochem Biophys265、208〜218。
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29.Williams AJ、Ring BJ、Cantrell VE、Jones DR、Eckstein J、Ruterbories K、Hamman MA、Hall SD及びWrighton SA(2002)「CYP3A4、CYP3A5、及びCYP3A7の相対的代謝能力。(Comparative metabolic capabilities of CYP3A4、CYP3A5、and CYP3A7.)」Drug Metab Dispos30(8)、883〜891。
30.Wood AW、Ryan DE、Thomas PE及びLevin W(1983)Regio−及び5つの十分に精製及び還元されたラット肝臓のシトクロムP−450イソ酵素による、2つのC19ステロイドの立体選択的代謝。(stereoselective metabolism of two C19 steroids by five highly purified and reconstituted rat hepatic cytochrome P−450 isozymes.)」J Biol Chem 258、8839〜8847。
【0211】
(実施例10)
不死化肝細胞の細胞系をシトクロムP450の誘導物質に曝した後の、mRNA転写物の発現に関する逆転写ポリメラーゼ連鎖反応の分析
Ea1C−35及びFa2N−4と表す、2つの不死化ヒト肝細胞の細胞系にRT−PCR分析を行った。細胞はI型コラーゲンをコーティングした皿上で平板培養し、MultiCellの専有培地中に保った。培養細胞はリファンピン(10μM)で3日間、或いは等体積のDMSO(例えば対照)で処理した。
【0212】
肝細胞特異的転写因子(例えば、HNF−1α、HNF−3、HNF−4α、HNF4γ、cEBP)、肝臓特異的遺伝子(例えば、アルブミン及びアシアロ糖タンパク質受容体)、薬剤代謝遺伝子を制御する転写因子(例えば、SXR、RXRα、RXRβ、CAR)、並びに第I相及び第II相薬剤代謝酵素(例えば、それぞれCYP1A2、CYP2A6、CYP2C9、CYP3A4、CYP2D6、CYP2E1、及びUGT1A1、UGT2B4)の発現をスクリーニングするために、これを行った。
【0213】
CYP3A4発現の知られている薬理学的誘導物質、リファンピンへの露出有り及び無しで分析を行った。RT−PCR分析によって、さまざまなレベルではあったが、調べた全ての転写物が両方の細胞系によって発現されたことが明らかになった。リファンピン誘導は、CYP3A4転写物の発現を増大させた。
【0214】
以下のプライマーをRT−PCR分析用に使用した:アルブミン、アシアロ糖タンパク質II受容体、HNF−1α、HNF−3、HNF−4α、HNF4γ、c/EBP、UGT1A1、UGT2B4、SXR、RXRα、RXRβ、CAR、CYP1A2、CYP2A6、CYP2C9、CYP3A4、CYP2D6、CYP2E1、シトクロムc、及びNADPH。ゲル1〜4に関する図(図23〜26)の凡例は、表9に示す。ゲル5〜8に関する図(図27〜30)の凡例は、表10に示す。
【表10】


【表11】

【0215】
(実施例11)
Fa2N4及びEa1C35細胞系による血漿タンパク質の発現に関する条件
二次元ゲル電気泳動分析を使用して、Fa2N4及びEa1C35細胞系の分泌したタンパク質を分離した。InvitrogenのZOOM IPGRunnerシステムを使用して、タンパク質の最初のIEF分離は固定pH勾配ストリップ(3〜10のpH範囲)を使用して行い、次に4〜12%のトリス−グリシンSDS−PAGEを使用して二次元分離を行った。両方の細胞系において、タンパク質の多数のスポットを、治療用タンパク質の考えられる候補として同定することができた(図31A.Fa2N4;31B、Ea1C35)。2次元ゲルの分離の後、Ea1C35細胞系の分泌したタンパク質はニトロセルロース上に移し、抗第IX因子抗体を使用するウエスタンブロット分析を行った。70kDの分子量及びpI6.5〜7.0を有する反応性タンパク質を検出した(図31C)。
【0216】
アルブミン発現に関するFa2N−4細胞の免疫染色も行った。細胞はI型コラーゲン上に平板培養し、無血清培地中で72時間培養した。二次抗体と結合したフルオレセインを用いた間接的な免疫蛍光性によって、アルブミンを目に見える状態にした。図1b中に示したように、ほぼ全ての細胞がアルブミンを発現する(例えば緑色)。
【0217】
さまざまな継代由来のEa1C−35及びFa2N−4細胞が、トランスフェリンを作製し分泌したかどうかを判定するために、細胞は無血清培地中において移動無しで7日間培養した。調整培養培地を7日後に回収し、市販のトランスフェリンに対する抗体を使用してイムノブロット分析を行った。ヒト血漿を陽性対照として使用した。イムノブロットによって、全継代由来の細胞がこの血漿タンパク質を発現し続けることが明らかになった。これらの結果は図32中に示す。図32のレーンは表11中に示す。
【表12】

【0218】
生産者細胞として培養した不死化ヒト肝細胞を使用する、治療用血漿タンパク質の経済的な生産は、大量培養において増殖させると、細胞がこれらの血漿タンパク質を作製及び分泌し続ける場合のみ行うことができる。この問題を最初に評価するために、Fa2N−4細胞をT25、T75及びT150培養フラスコ中で集合状態まで増殖させ、選択した血漿タンパク質を、アルブミン、AAT又はIαIpを認識する捕捉抗体と組み合わせたELISAアッセイを使用して定量化した。等しい数の細胞、それぞれ1平方cm当たり500万、1500万及び3000万個の細胞を最初に平板培養した。調整培地は3日間回収し、集め、限外濾過によって10倍に濃縮し、アッセイした。表12〜14に示すように、それぞれの血漿タンパク質の全体的な発現は、細胞数にほぼ正比例した。値は3連サンプルの平均±SDを表す。3日間にわたり、T150フラスコ中で培養した細胞は約200ugのアルブミン、500ngのIαIp及び150ngのAATを生成した。
【表13】


【表14】


【表15】

【0219】
治療用タンパク質の工業生産用のバイオファクトリーとして、不死化ヒト肝細胞を使用することを我々は計画している。したがって、血漿タンパク質分泌が長期の培養中に著しく低下してはならないことは必要不可欠である。我々はこの問題を評価するための試験を近年開始した、Fa2N−4細胞は前に記載したのと同様にT25、T75及びT150培養フラスコ中で増殖させ、アルブミン生成は全体的なタンパク質分泌の指標として測定した。第3日に調整培地を回収し、第6日に細胞に再度栄養を与え再度サンプル処理した。アルブミン分泌はELISAアッセイによって分析した。これらの結果は、平板培養形式とは無関係に6日間の回収期間中、アルブミン分泌が増大し続けることを示す(表15参照)。非常に注目すべきことに、T75及びT150フラスコ中で細胞を培養すると、アルブミンの劇的な増大がある。全体的な細胞タンパク質は培養中経時的に著しく増大するわけではないので(データ示さず)、おそらくこれらの結果は、フラスコ当たりの細胞数の劇的な増大の結果としてではなく、培養条件への適応の結果として増大した生成によるものであるであると考えられる。
【表16】

【0220】
幾つかの血漿タンパク質の生成はin vivoではTNFαなどの急性段階タンパク質によって調節され得るので、我々はこのサイトカインが、不死化ヒト肝細胞による血漿タンパク質の分泌を増大させる可能性があると推論した。本発明中の試験において我々は、AATの分泌に対するTNFαの影響を調べた。Fa2N−4細胞は、3日間TNFα(0、1、5、又は10ng/ml)を含む無血清の占有MFE培地中に保った。これらの結果は表16中に示す。値は二連サンプルの平均である。表16中に示すように、無血清培養培地中に5ng/mlのTNFαを含ませることによって、AATの分泌は最も顕著に増大した。したがって、このサイトカインを使用してAAT生成を増大させることが可能であると思われる。
【表17】

【0221】
アルブミン発現は、デキサメタソン誘導プロモーターによって部分的に制御される。不死化ヒト肝細胞によるアルブミンの生成及び分泌に対するデキサメタソンの影響を調べるために、Fa2N−4細胞(32回継代)を、培養培地中において48時間デキサメタソン有り又は無しで、I型コラーゲン皿上で培養し、アルブミン発現はELISAアッセイによって測定した。値は二連サンプルの平均である。以下の表(表17)中に要約したように、アルブミンの分泌はデキサメタソンの不在下で著しく低下した。
【表18】

【0222】
(実施例12)
治療用血漿タンパク質を生成及び発現する能力
免疫反応性のある治療用血漿タンパク質を正確に生成する我々のFa2N−4細胞系の能力を、免疫反応性のあるヒト成長ホルモン(hGH)の生成と共に例示した。一過性トランスフェクションの前の日に、10%のNBCS−MFE培地を使用して6ウェルNuncプレート中に、ウェル当たり0.5〜0.8×10個の細胞の密度でFa2N−4細胞を平板培養した。トランスフェクションの日に、細胞を1回洗浄して血清を除去し、hGHの完全cDNAを含むCMV系プラスミドは、Invitrogen Lipofectamine Plus又はQiagen Effecteneトランスフェクション試薬キットを使用してFa2N−4細胞に一過的にトランスフェクトした。製造者のプロトコルに従い、トランスフェクションを行った。
【0223】
調整培地を24及び/又は48時間後にそれぞれのウェルから回収し、ELISA系免疫検出アッセイ用にその後使用した。ELISAアッセイは、サンドウィッチELISA原理を利用して分泌されたhGHを定量測定するための、比色定量酵素イムノアッセイである。マイクロタイタープレートに予め結合したhGHに対する抗体は、調整培地中に含まれていた分泌されたhGHと結合する。その後、ジゴキシゲニン標識hGH抗体が、調整培地中に含まれていたhGHペプチドの第二のエピトープと結合し、マイクロタイタープレート上に保持される。ペルオキシダーゼと結合するジゴキシゲニンに対する抗体、次にペルオキシダーゼ基質ABTSを次いで加える。基質のペルオキシダーゼ触媒型切断によって、マイクロタイタープレートリーダーを使用して容易に検出することができる着色反応生成物が生じる。
【0224】
我々の結果によって、トランスフェクションキットを使用し、トランスフェクション後24又は48時間で調整培地を採取することによって、Fa2N−4細胞は非常に多量の二重に免疫検出されるhGHを生成するが、一方LacZを用いるトランスフェクション、又はプラスミド陰性対照を用いないトランスフェクションは、検出可能なレベルのhGHは生成しなかったことが確認される。ELISAプレート1及び2の写真は、それぞれ図33及び34中に示す。図33及び34に関する重要事項は表18中に示す。
【表19】

【0225】
(実施例13)
EA1C−35及びFa2N−4細胞系の免疫学的表現型の特徴付け
Ea1C−35(継代26回)とFa2N−4(継代30回)細胞系の両方を、異なる肝細胞又は胆管マーカー及びSV40不死化遺伝子に対する一群の抗体を使用する、間接的な免疫蛍光分析によって表現型を決定した。この分析からの結果は、以下の表19中に要約する。
【表20】

【0226】
コネクシン32の発現は密度依存性であった。低い平板培養密度では、この2つのタンパク質の発現は検出不能であった。しかしながら、細胞を集合状態の単層まで増殖させると、Ea1C−35及びfa2N−4細胞の亜群は、成体肝臓組織中で肝細胞によってのみ発現される、このギャップ接合タンパク質を発現する。
【0227】
全ての細胞がSV40T−抗原、それらの核中で不死化遺伝子を発現した。不死化肝細胞の高分化性は、成体肝細胞特異的系統マーカー、アルブミン及びコネクシン32の強力な発現、並びに胎児肝細胞マーカー、αフェトプロテインの欠如によって示される。これらの細胞は、CD49f、胆管マーカーは発現しない。これらの細胞はCD81、C型肝炎ウイルス糖タンパク質仲介ウイルス感染に関する推定受容体を発現する。CD81に関して免疫染色したFa2N−4細胞の顕微鏡写真を図35中に示す。CD81の発現は原形質膜に局在することに留意されたい。
【0228】
合わせて考えると、全ての前述の例が、2つの不死化ヒト肝細胞の細胞系はin vivoの肝細胞に特徴的な多くの機能的属性を維持しており、治療用血漿タンパク質を含めた血漿タンパク質を生成するための非常に重要なin vitro系であることを強く示す。
【0229】
本明細書に例示的に記載した本発明は、本明細書で詳細に開示しなかった、任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の制約の不在下で適切に実施することができる。したがって例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などは、広く非制限的に読み取られるであろう。さらに、本明細書で使用する用語及び表現は、制限ではなく記載する用語として使用されてきており、さらに示し記載する特徴の任意の均等物又はそれらの任意の一部分の排除で、このような用語及び表現を使用する意図はなく、さまざまな変更形態が特許請求する本発明の範囲内で考えられることは理解される。したがって、本発明を好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって詳細に開示してきたが、本明細書で開示する本発明の変更形態及び変形は当業者によって再分類することができ、このような変更形態及び変形は、本明細書で開示する本発明の範囲内にあると考えられることは理解されるはずである。本発明は、本明細書に広く一般的に記載してきた。一般的開示の範囲の範疇の狭い範囲の種及び亜族群のそれぞれも、これらの本発明の一部分を形成する。これは、取り出した題材がその中に明確に存在するかどうかに関係なく、その属由来の任意の主題を除去する条件付き又は否定的制約を有する、それぞれの本発明の一般的記載を含む。
【0230】
さらに、本発明の幾つかの特徴又は態様はマーカッシュ群の形式で記載するが、本発明はマーカッシュ群の任意の個々の要素又は要素の亜群の形式によってもしたがって記載されることを、当業者は理解しているであろう。前述の記載事項は制限的ではなく例示的であることを目的とすることも理解されよう。多くの実施形態が、前述の記載事項を再考することによって当業者に明らかであろう。したがって本発明の範囲は、前述の記載事項を参照して決定されるべきではなく、その代わりに添付の特許請求の範囲、及びその特許請求の範囲が権利を有する全範囲の均等物を参照して決定されるべきである。全ての物品、及び特許公開を含めた参照文献の開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0231】
【図1a】不死化細胞のゲノムDNA中へのSV40DNAの組み込みを確認する、ラージT抗原のEa1C−35不死化肝細胞の細胞系の免疫染色を示す図である。
【図1b】増殖細胞がアルブミンを発現し続けることを実証する、培養したFa2N−4細胞の免疫染色を示す図である。
【図1c】正常な初代肝細胞の独特の特徴である非常に明確な核小体及び顆粒状細胞質を示す、不死化細胞の形態を示す図である。
【図2】リファンピン(RIF)、β−ナフトフラボン(BNF)及びフェノバルビタール(PB)を用いたFa2N−4及びEA1C−35の処理のCYP3A4誘導の結果を示す、イムノブロットを示す図である。Cは未処理対照である。上側バンドは非特異的であり、BNF、CYP1A誘導物質はCYP3A4タンパク質発現を誘導しないことを記さなければならない。
【図3】以下のレーン:1)ヒト血漿;2)空;3)培養培地(対照);4)初代ヒト肝細胞(72時間培養);5)EA1C−35単層、72時間培養;6)EA1C−35、回転容器、7日培養;7)EA1C−35回転容器/14日培養;8)Fa2N−4単層/72時間培養;9)Fa2N−4回転容器/7日培養;10)Fa2N−4、回転容器/14日培養を示す図である。
【図4】ヒト肝細胞の初代培養物及びFa2N−4細胞における酵素誘導の試験を行うための、基本的手順を示すフローチャートである。
【図5】光学顕微鏡レベルでのヒト肝細胞(左図)及びFa2N−4細胞(右図)の形態を示す、顕微鏡写真の図である。
【図6】Fa2N−4細胞におけるオメプラゾール及びリファンピンによる、CYP酵素の誘導を示す一組のグラフである(CYP1A2、CYP3A4、CYP2B6、及びCYP2C9;DMSO対照)。
【図7】6−、12−及び24−ウェルプレート中のリファンピン処理したFa2N−4細胞における、CYP2B6誘導の再現性を示すグラフである。
【図8】多数回の細胞継代中のCYP1A2及びCYP3A4誘導の再現性を示すグラフである。
【図9】リファンピンによるCYP2B6の誘導が6−、12−及び24−ウェルプレート中において同一であることを示す、簡単なグラフである。
【図10】オメプラゾールによるCYP1A2の誘導、及びリファンピンによるCYP3A4の誘導に対する細胞培養形式の影響を示すグラフである。
【図11】Fa2N−4細胞におけるCYP1A2及びCYP3A4誘導の時間行程を示すグラフである。
【図12】Fa2N−4におけるオメプラゾールによるCYP1A2の誘導、及びリファンピンによるCYP3A4の誘導に関する濃度応答曲線を示すグラフである。
【図13】ヒト肝細胞においてPXRを活性化させCYP3A4を誘導することが以前に示された化合物は、Fa2N−4細胞においてCYP3A4活性を誘導するが、一方Ah受容体アゴニストは誘導しないことを示すグラフである。
【図14】ヒト肝細胞の初代培養物におけるCYP3A4誘導の範囲を示すグラフである。
【図15】Fa2N−4細胞におけるCYP1A2及びCYP3A4活性に対する酵素誘導物質の影響を示すグラフである(左図、CYP1A2;右図、CYP3A4)。
【図16】毒性試験における不死化肝細胞の使用の結果を示すグラフである。
【図17】200倍の倍率での、MPE培地中96ウェルBiocoatI型コラーゲンプレート中に平板培養した集合状態のFa2N−4細胞の、位相差顕微鏡画像の図である。
【図18】Fa2N−4細胞におけるCYP1A2、CYP2C9、CYP3A4、UGT1A、及びMDR1転写物の誘導を示すグラフである。
【図19】Fa2N−4細胞におけるシトクロム−450酵素活性による誘導の測定を示すグラフである((A):CYP3A4活性の測定;(B):CYP2C9活性の測定;(C):CYP1A2活性の測定)。
【図20】高いCYP3A4転写物値(図(A))及び高いCYP3A4酵素活性(図(B))を使用する、Fa2N−4細胞に関するEC50プロットを示すグラフである。
【図21】弱い応答性を有するCYP3A4誘導物質(50μMのデキサメタソン)、及び強い応答性を示すCYP3A4誘導物質(10μMのリファンピン)に対する多数回継代したFa2N−4細胞の応答性を示すグラフである。
【図22】10μMのリファンピン(黒棒)に48時間曝した後のFa2N−4細胞におけるCYP3A4転写物の誘導が、媒体(白棒)と比較して示されることを示すグラフである。
【図23】そのレーンを実施例10の表9中に示す、ゲル(ゲル1)のオートラジオグラフである。
【図24】そのレーンを実施例10の表9中に示す、ゲル(ゲル2)のオートラジオグラフである。
【図25】そのレーンを実施例10の表9中に示す、ゲル(ゲル3)のオートラジオグラフである。
【図26】そのレーンを実施例10の表9中に示す、ゲル(ゲル4)のオートラジオグラフである。
【図27】そのレーンを実施例10の表10中に示す、ゲル(ゲル5)のオートラジオグラフである。
【図28】そのレーンを実施例10の表10中に示す、ゲル(ゲル6)のオートラジオグラフである。
【図29】そのレーンを実施例10の表10中に示す、ゲル(ゲル7)のオートラジオグラフである。
【図30】そのレーンを実施例10の表10中に示す、ゲル(ゲル8)のオートラジオグラフである。
【図31】Fa2N−4及びEa1C−35細胞系の分泌したタンパク質の、二次元電気泳動分析後のゲルの写真図である((A):Fa2N−4;(B):Ea1C−35;(C):Ea1C−35用の抗第IX因子抗体を使用して分泌された第IX因子を検出するウエスタンブロット)。
【図32】そのレーンを実施例11の表11中に示す、ゲル(ゲル8)のオートラジオグラフである。
【図33】サンドウィッチELISA原理を使用して分泌されたhGHを定量測定するための比色定量酵素イムノアッセイを含む、ELISA(プレート1)の写真を示す図である;このプレートに関する重要事項は表18に示す。
【図34】サンドウィッチELISA原理を使用して分泌されたhGHを定量測定するための比色定量酵素イムノアッセイを含む、ELISA(プレート2)の写真を示す図である;このプレートに関する重要事項は表18に示す。
【図35】CD81発現に関して染色された免疫染色Fa2N−4細胞の写真の図である。二次抗体と結合したフルオレセインを用いた間接的な免疫蛍光性によって、CD81を目に見える状態にした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不死化ヒト肝細胞を使用してタンパク質を生成する方法であって、
(a)タンパク質をコードし発現することができるDNAを含む不死化ヒト肝細胞を用意するステップ、
(b)前記タンパク質をコードする1つ又は複数の遺伝子が、前記タンパク質が前記不死化肝細胞中で生成されプロセシングされるように発現されるような条件下で、前記不死化肝細胞を培養するステップ、及び
(c)前記不死化肝細胞から前記プロセシングされたタンパク質を単離するステップ
を含み、必要な場合プロセシングされグリコシル化されるように前記タンパク質を発現させ、そのin vivo機能がその単離後実質的に保たれる方法。
【請求項2】
前記タンパク質がヒト肝細胞によって自然に生成される血漿タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タンパク質がヒト肝細胞によって自然に生成されないタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質がヒト肝細胞によって通常生成されるタンパク質のムテインである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記タンパク質が治療用タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記治療用タンパク質が治療用血漿タンパク質である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記タンパク質が第VIII因子、第IX因子、ヒト成長ホルモン(hGH)、α−1−抗トリプシン、及び増殖因子からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質が第VIII因子のムテイン、第IX因子のムテイン、ヒト成長ホルモンのムテイン、α−1−抗トリプシンのムテイン、及び増殖因子のムテインからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質がIαIpタンパク質複合体である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質がアルブミン、トランスコバラミンII、C−反応性タンパク質、フィブロネクチン、セルロプラスミン、及び構造活性、酵素活性、又は輸送活性を有する他のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質がアルブミン、トランスコバラミンII、C−反応性タンパク質、フィブロネクチン、セルロプラスミン、及び構造活性、酵素活性、又は輸送活性を有する他のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質のムテインである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
肝細胞中に本来存在する遺伝子によってタンパク質を発現させ、前記タンパク質をコードする本来存在する遺伝子の発現が高レベルのプロモーターを前記肝細胞中に導入することによって増強される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(1)発現させるタンパク質、発現させるタンパク質のサブユニット、又は発現させるタンパク質の前駆体をコードする遺伝子、及び(2)前記遺伝子の転写に影響を与える少なくとも1つの制御要素であって、前記遺伝子と動作可能に連結した制御要素を含む1つ又は複数の組換えベクターを使用することによって、前記発現させるタンパク質、前記発現させるタンパク質のサブユニット、又は前記発現させるタンパク質の前駆体をコードする遺伝子の多数のコピーを導入することによって発現を増強させる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記組換えベクターがSV40由来ベクター、ネズミポリオーマ由来ベクター、BKウイルス由来ベクター、エプスタインバーウイルス由来ベクター、アデノウイルス由来ベクター、アデノ関連ウイルス由来ベクター、バキュロウイルス由来ベクター、ヘルペスウイルス由来ベクター、レンチウイルス由来ベクター、レトロウイルス由来ベクター、アルファウイルス由来ベクター、及びワクシニアウイルス由来ベクターからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ベクターが1つ又は複数のレポーター遺伝子を取り込む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記発現したタンパク質が細胞から周囲の培養培地に分泌される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質がグリコシル化される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記タンパク質が翻訳後にプロセシングされる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記タンパク質が切断可能なタグと融合した形で発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記切断可能なタグがグルタチオンS−トランスフェラーゼ、MalEマルトース結合タンパク質、及びポリヒスチジン配列からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記タンパク質が少なくとも2つの異なるサブユニットを含み、前記不死化肝細胞を少なくとも2つのベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトし、それぞれのベクターが(1)前記タンパク質の少なくとも1つのサブユニットをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むDNA;及び前記タンパク質のサブユニットをコードする少なくとも1つの遺伝子をコードする前記DNAと動作可能に連結した少なくとも1つの制御要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記不死化ヒト肝細胞をウイルスにより不死化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
実質的に純粋なシミアンウイルス(SV40)のDNAを用いた形質転換又はトランスフェクションによって前記肝細胞を不死化させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記実質的に純粋なSV40のDNAがラージT抗原及びスモールt抗原(タグ)をコードする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記不死化ヒト肝細胞が低温保存した初代ヒト肝細胞に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記肝細胞が、腫瘍抑制遺伝子をコードする実質的に純粋なDNAを前記肝細胞から単離し精製することができるようにDNAをコードする腫瘍抑制遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記肝細胞が、Rbをコードする実質的に純粋なDNAを前記肝細胞から単離し精製することができるようにRbをコードするDNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記肝細胞が、p53をコードする実質的に純粋なDNAを前記肝細胞から単離し精製することができるようにp53をコードするDNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記肝細胞が非腫瘍形成性であり、無血清培地中に保たれる能力を有し、血漿タンパク質を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記肝細胞がFa2N−4細胞系の肝細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記肝細胞がEa1C−35細胞系の肝細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
ヒト肝細胞以外の真核細胞を使用してIαIpタンパク質複合体を生成する方法であって、
(a)IαIpタンパク質複合体を形成するタンパク質をコードし発現することができるDNAを含むヒト肝細胞以外の真核細胞を用意するステップであって、(1)IαIpタンパク質複合体の一部であるタンパク質前駆体の少なくとも1つの遺伝子を含むDNA及び(2)少なくとも1つの前駆体遺伝子をコードする前記DNAと動作可能に連結して前記前駆体遺伝子の発現を増強させる、少なくとも1つの制御要素を含む少なくとも1つのベクターを用いて、前記真核細胞が形質転換又はトランスフェクトされているステップ、
(b)IαIp複合体を形成するタンパク質をコードする遺伝子が、IαIp複合体が生成されるように発現されるような条件下で、前記形質転換又はトランスフェクトされた真核細胞を培養するステップ、及び
(c)前記形質転換又はトランスフェクトされた真核細胞から前記発現されたIαIpタンパク質複合体を単離するステップ
を含む方法。
【請求項33】
前記真核細胞がCHO細胞、COS細胞、及び酵母菌細胞からなる群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
2つのベクター:(1)遺伝子H3及びAMBPを含む第一のベクター;及び(2)遺伝子H2及びH1を含む第二のベクターを用いて、前記肝細胞を形質転換又はトランスフェクトする、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
タンパク質をコードし発現することができるDNAを含む不死化ヒト肝細胞であって、(1)タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むDNA及び(2)前記タンパク質をコードするDNAと動作可能に連結して前記タンパク質の発現を増強させる少なくとも1つの制御要素を含む少なくとも1つのベクターを用いて、形質転換又はトランスフェクトされている不死化ヒト肝細胞。
【請求項36】
前記タンパク質がヒト肝細胞によって自然に生成されるタンパク質である、請求項35に記載の細胞。
【請求項37】
前記タンパク質がヒト肝細胞によって自然に生成されないタンパク質である、請求項35に記載の細胞。
【請求項38】
前記タンパク質がヒト肝細胞によって通常生成されるタンパク質のムテインである、請求項37に記載の細胞。
【請求項39】
前記タンパク質が治療用タンパク質である、請求項35に記載の細胞。
【請求項40】
前記治療用タンパク質が治療用血漿タンパク質である、請求項39に記載の細胞。
【請求項41】
前記タンパク質が第VIII因子、第IX因子、ヒト成長ホルモン(hGH)、α−1−抗トリプシン、及び増殖因子からなる群から選択される治療用血漿タンパク質である、請求項40に記載の細胞。
【請求項42】
前記タンパク質が第VIII因子のムテイン、第IX因子のムテイン、ヒト成長ホルモンのムテイン、α−1−抗トリプシンのムテイン、及び増殖因子のムテインからなる群から選択される血漿タンパク質である、請求項40に記載の細胞。
【請求項43】
前記血漿タンパク質がIαIpタンパク質複合体である、請求項35に記載の細胞。
【請求項44】
前記タンパク質がアルブミン、トランスコバラミンII、C−反応性タンパク質、フィブロネクチン、セルロプラスミン、及び構造活性、酵素活性、又は輸送活性を有する他のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質である、請求項35に記載の細胞。
【請求項45】
前記タンパク質がアルブミン、トランスコバラミンII、C−反応性タンパク質、フィブロネクチン、セルロプラスミン、及び構造活性、酵素活性、又は輸送活性を有する他のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質のムテインである、請求項45に記載の細胞。
【請求項46】
疾患又は状態を治療する方法であって、
(a)請求項1に記載の方法に従って生成される活性タンパク質を用意するステップ、及び
(b)前記疾患又は状態に罹患している患者に前記疾患又は状態を治療する治療活性量の前記活性タンパク質を投与するステップ
を含む方法。
【請求項47】
前記疾患又は状態が肝臓に影響を与える疾患又は状態である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記肝臓に影響を与える疾患又は状態が敗血症、癌、肝炎、及び肝不全からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記疾患又は状態が肝臓以外の臓器に影響を与える疾患又は状態である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記疾患又は状態が癌、関節炎症、及び関節炎からなる群から選択される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
疾患又は状態を治療するための医薬組成物であって、
(a)疾患又は状態を治療するのに治療上有効な量の真核細胞によって生成されたIαIpタンパク質複合体、及び
(b)薬剤として許容される担体
を含む医薬組成物。
【請求項52】
前記疾患又は状態が肝臓に影響を与える疾患又は状態である、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記肝臓に影響を与える疾患又は状態が敗血症、癌、肝炎、及び肝不全からなる群から選択される、請求項52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
前記疾患又は状態が肝臓以外の臓器に影響を与える疾患又は状態である、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記疾患又は状態が癌、関節炎症、及び関節炎からなる群から選択される、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
疾患又は状態を治療する方法であって、
(a)請求項1に記載の方法によって生成される活性のある血漿タンパク質を用意するステップ、及び
(b)前記疾患又は状態に罹患している患者に前記疾患又は状態を治療するための治療上有効な量の前記活性のある血漿タンパク質を投与するステップ
を含む方法。
【請求項57】
前記疾患又は状態が肝臓に影響を与える疾患又は状態である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記肝臓に影響を与える疾患又は状態が敗血症、癌、肝炎、及び肝不全からなる群から選択される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記疾患又は状態が肝臓以外の臓器に影響を与える疾患又は状態である、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記疾患又は状態が癌、関節炎症、及び関節炎からなる群から選択される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記活性のある血漿タンパク質が第VIII因子、第IX因子、ヒト成長ホルモン(hGH)、α−1−抗トリプシン、及び増殖因子からなる群から選択される、請求項56に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2007−508019(P2007−508019A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534388(P2006−534388)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/033260
【国際公開番号】WO2005/034876
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506118777)マルチセル テクノロジーズ、インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】