説明

活性エネルギー線硬化型インキおよび該インキを印刷してなる印刷物

【課題】従来多く普及している4色印刷機を用いて、RGBの色再現領域を限りなく表現することができる、黄、紅、藍、墨のプロセス4色からなる1色ずつオフセット印刷し、一色ずつ活性エネルギー線により硬化させるオフセットインキおよびその印刷方法の提供。
【解決手段】黄、紅、藍、墨のプロセス4色からなる1色ずつオフセット印刷し、1色ずつ活性エネルギー線により硬化させて印刷するオフセットインキ印刷方法であって、4色で高彩度の色再現性に優れた印刷物を得る印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄、紅、藍、墨のプロセス4色からなる1色ずつオフセット印刷し、1色ずつ活性エネルギー線により硬化させて印刷するオフセットインキ印刷方法であって、4色で高彩度の色再現性に優れたインキシステムを用いた印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
90年代より始まったIT革命は、印刷現場を取り巻く環境を著しくデジタル化の方向へと導いてきており、このデジタル化によって、従来の印刷方式のワークフロー(撮影・ポジ・スキャン・データ・デザイン・EPS・面付け・フィルム・刷版・印刷)が多段階式過程であったのに対し、デジタルカメラによる撮影・DTP・CTP・印刷とその過程を飛躍的に短縮することに成功した。それによって、入稿データの「RGB」化が標準化しつつあり、取り扱われるデータがより色再現領域の広いものへとシフトしつつあるのが現状である。
【0003】
しかし、現在主流となっている黄、紅、藍、墨のプロセス4色(CMYK)からなるオフセット印刷では、減色混合による色相となるため、必然的に色再現領域がRGBのそれよりも狭いものとなり、デジタルデータと印刷物との間の色再現性の差異が問題となっていった。
【0004】
特にフォーム輪転機での印刷においては、印刷機の仕様により、1色ずつオフセット印刷し、1色ずつ活性エネルギー線により硬化させて印刷することが多く、硬化させずに4色オフセット印刷後に活性エネルギー線により硬化させて重ねにて印刷するよりもさらに色再現領域が狭くなり、デジタルデータからの見本印刷物との色再現性の差異が非常に問題となってしまう。
【0005】
また、フォーム輪転機を用いる印刷においては、近年多様化していることもあり、従来のビジネスフォーム印刷以外の広告印刷が増えていることから印刷品質の向上や高品質化による差別化が強く望まれている。
【0006】
これを解決する手段として、特許文献1では高彩度の印刷システムとして5〜7色のインキセットを使用する印刷方法が確立され、それぞれの特定した色相を持つインキセットを用いる印刷方法として、プロセス4色に橙、緑を加えた6色(ヘキサクロム印刷)やプロセス4色に橙、緑、紫を加えた7色(ハイファイ印刷)等が確立されている。また、ヘキサクロムインキに代表されるように、色再現領域を広げる手段として一部の色に蛍光顔料を含有させる等の手法もとられるが、印刷適性の劣化(転移不良、光沢低下等)や耐光性不足による印刷物の褪色等のデメリットもある。さらに、使用するインキの色数が6色、7色となり、印刷機の胴数が6胴以上の高価な多色印刷機を必要とする事に加え、それと同数の多色分解した版数が必須条件となり、新たに始めるには巨額な設備投資と、色調管理の複雑化などで本システムを用いるには限られた範囲に止まっている。
【0007】
また、近年、色再現領域を拡大する方法として、ローダミン系染料の金属レーキ化合物を紅顔料として使用することで、紅や青(藍×紅の重ね)や赤(紅×黄の重ね)の色再現領域が広がるという報告がある。本発明は、藍顔料を従来の銅フタロシアニン顔料からバリウムレーキのフタロシアニン顔料を使用することで、藍や青の色再現領域を拡大し、これまでの手法では達成しえなかった緑(藍×黄の重ね)領域の拡大をも成し遂げる。同時に、紅インキとしてローダミン系染料の金属レーキ化合物を併用することで、更なる色再現域の拡大を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−260516号公報
【特許文献2】特開2007−231221号公報
【特許文献3】特開2007−231222号公報
【特許文献4】特開2007−231239号公報
【特許文献5】特開2007−231315号公報
【特許文献6】特開2007−231316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来の技術における問題点を解決する為になされたものであり、その課題とするところは、従来多く普及している4色印刷機を用いて、RGBの色再現領域を限りなく表現することができる、黄、紅、藍、墨のプロセス4色からなる1色ずつオフセット印刷し、一色ずつ活性エネルギー線により硬化させるオフセットインキとその印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、鋭意検討を行った結果、黄、紅、藍、墨のプロセス4色からなる1色ずつオフセット印刷し、1色ずつ活性エネルギー線により硬化させて印刷するオフセットインキ印刷方法であって、4色で高彩度の色再現性に優れた印刷物を得る印刷方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキを、1色ずつオフセット印刷し、一色ずつ活性エネルギー線により硬化させる、(a)黄インキ、(b)紅インキ、(c)藍インキおよび(d)墨インキを用いる印刷物の製造方法であって、
(a)黄インキ、(b)紅インキ、(c)藍インキの3色が、下記顔料成分の組み合わせからなり、(a)黄インキ、(b)紅インキおよび(c)藍インキのうちいずれか2つまたは3つならびに(d)墨インキを、フォーム輪転機により、色を重ねて、オフセット印刷してなる印刷物の製造方法に関するものである。
(a)ジスアゾイエロー系金属化合物として、C.I.ピグメントイエロー13、およびC.I.ピ グメントイエロー17を1〜20%含有する活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用黄インキ。
(b)アゾ系金属化合物としてC.I.ピグメントレッド57:1を15〜25%含有する活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用紅インキ。
(c)フタロシアニン系染料の金属レーキ化合物であるC.I.ピグメントブルー15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6およびC.I.Pigment Green 7を15〜25%含有する活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用藍インキ。
【0012】
また、本発明は、上記の製造方法であって、
ISO規格のジャパンカラー2007準拠のマットコート用紙にオフセット印刷した黄、紅、藍の各濃度値を、
黄が0.85〜1.15、
紅が1.15〜1.35、
藍が1.30〜1.45、
の範囲内で各色インキを単独または重ね合わせにより印刷した時、
L*a*b*表色系による色度(JIS Z 8729)が、
黄インキで、L*:85〜95、 a*:−10〜0、b*:87〜97
紅インキで、L*:46〜56、 a*:67〜77、b*:−7〜3
藍インキで、L*:50〜62、 a*:−32〜−42、b*:−43〜−53
の範囲内にあり、上記インキの2色の刷り重ねの色度が、
紅インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:45〜55、a*:64〜74、
b*:41〜51
藍インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:46〜56、a*:−63〜−73、
b*:20〜30
藍インキ×紅インキの刷り重ねで、L*:20〜30、a*:15〜25、
b*:−39〜−49
の範囲内になることを特徴とする高彩度の色再現に優れたオフセット印刷してなる印刷物の製造方法であって、
上記3色の組み合わせ、
および、
上記2色と墨インキとの組み合わせ、
さらには、
上記3色と墨インキとの組み合わせ
で印刷することにより、L*a*b*表色系の色空間を広げることが可能なオフセット印刷してなる印刷物の製造方法に関するものである。
【0013】
さらに、本発明は、上記の製造方法であって、
黄、紅が下記顔料である活性エネルギー線硬化型オフセット用印刷インキ組成物を使用してオフセット印刷してなる印刷物の製造方法に関するものである。
(a)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたとき に、
400nm〜480nmが5〜15%、
480nm〜520nmが15〜60%
および
520nm〜700nmが60〜100%
の反射スペクトルを有することを特徴とする黄色相化合物を1〜20%含有する上記の活性エネルギー線オフセット用印刷黄インキ。
(b)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたとき に、
400nm〜580nmが1〜30%、
580nm〜620nmが30〜60%、
および
620nm〜700nmが60〜100%
の反射スペクトルを有することを特徴とする紅色相化合物を15〜25%含有する上記の活性エネルギー線オフセット用印刷紅インキ。
(c)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたとき に、
400nm〜540nmが20〜100%、
および
540nm〜700nmが1〜20%
の反射スペクトルを有することを特徴とする紅色相化合物を15〜25%含有する藍インキである、上記の活性エネルギー線オフセット用印刷藍インキ。
【0014】
また、本発明は、上記のいずれか記載の印刷物の製造方法により製造されてなる印刷物に関するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明が提供する1色ずつオフセット印刷し、一色ずつ活性エネルギー線により硬化させるオフセットインキ印刷インキを用いることにより、従来の黄、紅、藍、墨プロセス4色印刷で1色ずつオフセット印刷し、一色ずつ活性エネルギー線により硬化させないで、表現していたRGBの色再現領域よりもより広い色領域を再現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のファームインキのガモット図
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
【0018】
本発明は、顔料と、合成樹脂、光重合開始剤、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー、エチレン性不飽和二重結合を有するオリゴマーとを必要に応じて、アルミキレート等の顔料分散剤、耐摩擦剤等の補助剤を加え混合することで得られる黄、紅、藍、墨の4色からなる活性エネルギー線硬化型インキであって、ISO規格のジャパンカラー標準用紙、例えば三菱製紙(株)製「特菱アート両面四六版/110kg」に印刷し、黄、紅、藍の各色をグレタグマクベスD196濃度計にて測定した際の濃度値が、黄が0.85〜1.15、紅が1.15〜1.35、藍が1.30〜1.45、であるときに単色および各単色の刷り重ねのL*a*b*表色系による色度、が、
黄インキで、L*:85〜95、a*:−10〜0、b*:87〜97、
紅インキで、L*:46〜55、a*:67〜77、b*:−7〜3、
藍インキで、L*:50〜62、a*:−32〜−42、b*:−43〜−53、
さらには、
紅インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:45〜55、a*:64〜74、
b*:41〜51、
藍インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:46〜56、a*:−63〜−73、
b*:20〜30
藍インキ×紅インキの刷り重ねで、L*:20〜30、a*:15〜25、
b*:−39〜−49、
の範囲になることを特徴とする。
【0019】
さらに、これら(a)黄、(b)紅、(c)藍のそれぞれで単色100%ベタ刷り部分の分光反射曲線の反射スペクトルが、下記範囲条件をみたすインキである。
(a)黄が、400nm〜700nmの波長領域において、全反射を100%としたときの相対反射強度が、400nm〜480nmの波長領域で5〜15%、480nm〜520nmの波長領域で15〜60%、520nm〜700nmの波長領域で60〜100%の反射スペクトルを有することを特徴とする黄インキ。
(b)紅が、400nm〜700nmの波長領域において、全反射を100%としたときに、400nm〜580nmの波長領域での最大反射率が1%〜30%、580nm〜620nmの波長領域での反射率が30〜60%、620nm〜700nmの反射率が60%〜100%の反射スペクトルを有することを特徴とする紅インキ。
(c)藍が、400nm〜700nmの波長領域において、全反射を100%としたときに、400nm〜540nmの波長領域の最大反射率が20〜100%、540nm〜700nmの反射率が1〜20%の反射スペクトルを有することを特徴とする藍インキ。
【0020】
色再現領域の表現方法としては、XYZ表色系(CIE1931表色系)、X10Y10Z10表色系(CIE1964表色系)、L*a*b*表色系(CIE1976)、ハンターLab表色系、マンセル表色系、L*u*v*表色系(CIE1976)等挙げられる。
【0021】
L*a*b*表色系では、色相に関係なく比較できる明るさの度合いとして「明度」をL*で表現し、L*が大きくなるほど色が明るく、小さくなるほど暗くなることを示している。
【0022】
また、各色によって異なる「色相」をa*、b*の値で示し、a*は赤(+)から緑(−)方向、そしてb*は黄(+)から青(−)方向を示し、各方向とも絶対値が大きくなるに従って色鮮やかになり、0に近づくに従ってくすんだ色になることを示している。これによって一つの色を、L*、a*、b*を用いて数値化することが可能となる。
一つの印刷物(印刷物以外のカラースペースも含む)で表現できる全ての色再現領域を演色領域(ガモット)と呼ぶが、ガモットを表す最も簡便な方法として、a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、単色ベタ部(黄、紅、藍)、および、単色ベタ刷り重ね部(黄×紅、紅×藍、藍×黄)計6色のa*対b*の値を、プロットした六角形の面積で表現することが可能である。ガモットの面積が広い程、色再現領域が広いことを示している。
【0023】
本発明で使用される黄顔料としては、ジスアゾイエロー系金属化合物として、C.I.ピグメントイエロー13、およびC.I.ピ グメントイエロー17が挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、これらジスアゾイエロー系金属化合物として、1〜20%より好ましくは10〜18%加えて使用する。
【0024】
本発明で使用される紅顔料としては、アゾ系化合物として、カーミン6Bが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、上記紅顔料の1〜25%、好ましくは18〜23%加えて使用することも可能である。
【0025】
本発明で使用する藍顔料である銅フタロシアニン系化合物は、結晶多型(同質異晶)を示す物質であり、その結晶構造の違いによってα、β、γ、ε、π、τ、ρ、χ、R型などに分類されるが、結晶安定性、分散性が優れているβ型を使用することが好ましい。
【0026】
本発明においては、上記銅フタロシアニン化合物に対し、フタロシアニン分子のベンゼン環上の水素原子をハロゲン化合物で置換したハロゲン化銅フタロシアニン化合物を15〜25%より好ましくは18〜23%加えて使用することにより、藍インキ単色の色再現領域を損なうことなく、黄および紅インキと刷り重ねた際の緑および紫の色再現領域を広げることが可能になる。また、補色として緑顔料としては、ハロゲン化されたフタロシアニン系化合物が挙げられる。最も多く使われているものは塩素化銅フタロシアニンであり、他に、塩素の代わりに臭素化したものや塩素と臭素を含むもの、また、銅を含まないものなどがある。具体的にはC.I.ピグメントグリーン7またはC.I.ピグメントグリーン36をインキの全重量に対して0.1〜3%好ましくは0.5〜1.5%加えて使用することも可能である。
【0027】
墨顔料としては、カーボンブラック、例えばC.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエンーアクリルニトリル共重合体のような合成ゴム等が挙げられる。これらの樹脂は、その中の1種または2種以上を用いることができる。何れもエチレン性不飽和ニ重結合を有するモノマー可溶である樹脂が用いられる。
【0029】
本発明において、モノマーとは単官能または多官能の(メタ)アクリレート類をいい、これらを適宜用いることでインキ組成物の粘度を調節することが出来る
本発明において使用されている オリゴマーとしてはアルキッドアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン変性アクリレート等が使用されている
【0030】
活性エネルギー線硬化型インキにはその硬化作用を促す成分として1種もしくは2種以上の光重合開始剤を適宜添加することができる。
【0031】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ビス−2,6−ジメトキシベンゾイル−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメチル−2−ヒドロキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,4,6−トリメチルベンジル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン等が挙げられる。光重合開始剤と併用して、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、ペンチル4−ジメチルアミノベンゾエート等の光促進剤を使用してもよい。
【0032】
補助剤としては、例えば、耐摩擦剤、ブロッキング防止剤、スベリ剤、スリキズ防止剤としては、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然ワックス、フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックスなどの合成ワックス、シリコーン添加剤、レベリング剤、体質等を適宜使用することができる。
【0033】
本発明における活性エネルギー線硬化型インキは、フォーム輪転機用インキであるが通常の印刷インキと同様に公知の印刷方法、例えばオフセット印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷にて印刷することができる。
【0034】
本発明で使用する活性エネルギー線としては、紫外線、電子線が挙げられる。しかし、これに限定される必要はない。
【実施例】
【0035】
次に具体例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら記載実施例に限定されるものではない。なお、本発明において、特に断らない限り、部は重量部、%は重量%を表す。
【0036】
(ワニス製造例)
ダップトートDT170(東都化成(株)製)30部を90℃〜100℃に加熱したDPHA(日本化薬(株)製)70部に投入し90℃〜100℃で1時間加熱溶解させ、ワニスを得た。
【0037】
(黄インキ実施例)
顔料としてC.I.ピグメントイエロー13(ZAY−452 大日精化工業(株)製)およびC.I.ピグメントイエロ17(LIONOL YELLOW 1703 東洋インキ製)を用い、表1の配合比率で分散粒子系測定機(グラインドメーター)で7.5ミクロン以下になるまで3本ロールを用いて練肉し、黄インキ1を得た。
【0038】
(紅インキ実施例)
顔料として、C.I.ピグメントレッド81/C.I.ベーシックレッド12(Pink MP−617 有本化学工業(株)製)、C.I.ピグメントレッド57:1(スミカプリントカーミン6BC−457 住化カラー(株))を用い、表1の配合比率で分散粒子系測定機(グラインドメーター)で7.5ミクロン以下になるまで3本ロールを用いて練肉し、紅インキ1を得た。
【0039】
(藍インキ実施例)
顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3(LIONOL BLUE FG7351 東洋インキ製造(株)製)、C.I.ピグメントグリーン7(LIONOL GREEN YS−2A 東洋インキ製造(株)製)を用い、表1の配合比率で分散粒子系測定機(グラインドメーター)で7.5ミクロン以下になるまで3本ロールを用いて練肉し、藍インキ1を得た。
【0040】
(比較例)
比較インキとしてここでは最も一般的な当社紫外線硬化型インキであるFDフォームX各色を用いた。
【0041】
【表1】

【0042】
(印刷評価試験)
上記実施例および比較例のインキについて、下記印刷条件の下、黄、紅、藍、緑の各ベタ濃度値を、黄:0.85〜1.15、紅:1.15〜1.35、藍:1.30〜1.45、の範囲内で印刷し、印刷物の評価を実施した。なお、墨インキは、高濃度タイプの紫外線硬化型印刷インキを使用し、濃度値1.45〜2.15の範囲内で印刷した。
【0043】
<印刷条件>
印刷機 :オフセットフォーム輪転機((株)ミヤコシ)
用紙 :しらおいマット紙(日本製紙)
湿し水 :MT−80((株)マコト科学)2.0%水道水溶液
印刷速度:300フィート/時
濃度 :X−rite社製 Eye Oneにて印刷物の単色(黄、紅、藍、墨、)ベタ 部の濃度値を測定。
実施例については、1色ずつオフセット印刷し、一色ずつ活性エネルギー線により硬化させる。
比較例については、1色ずつオフセット印刷し、一色ずつ活性エネルギー線により硬化させないで最後に4色硬化させる。
【0044】
印刷物評価結果を図1に表す。また、単色ベタ部および重ね刷り部のL*a*b*測定値を表2に表す。
【0045】
【表2】

【0046】
この結果より、ISO規格のジャパンカラー標準用紙、例えば三菱製紙(株)製「特菱アート両面四六半/110kg」に、黄、紅、藍、緑の各濃度値を、黄が0.85〜1.15、紅が1.15〜1.35、藍が1.30〜1.45、の範囲内で印刷した場合に、本発明のインキを用いて得られた印刷物の演色領域(ガモット)は、一般的なISO規格のジャパンカラー準拠インキならびに一般的な紫外線硬化型インキを用いて得られた演色領域(ガモット)を包含するかたちで、より広い面積を有することから、より広い色再現領域を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
したがって、本発明により、ジャパンカラーの色域を包含すると共に、従来の紫外線硬化型インキの1色ずつオフセット印刷し、1色ずつ活性エネルギー線により硬化させる印刷では再現できなかった色再現領域を再現することを可能にし、より広範囲の演色領域を表現することが可能な活性エネルギー線硬化型インキを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用インキを、1色ずつオフセット印刷し、一色ずつ活性エネルギー線により硬化させる、(a)黄インキ、(b)紅インキ、(c)藍インキおよび(d)墨インキを用いる印刷物の製造方法であって、
(a)黄インキ、(b)紅インキ、(c)藍インキの3色が、下記顔料成分の組み合わせからなり、(a)黄インキ、(b)紅インキおよび(c)藍インキのうちいずれか2つまたは3つならびに(d)墨インキを、フォーム輪転機により、色を重ねて、オフセット印刷してなる印刷物の製造方法。
(a)ジスアゾイエロー系金属化合物として、C.I.ピグメントイエロー13、およびC.I.ピ グメントイエロー17を1〜20%含有する活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用黄インキ。
(b)アゾ系金属化合物としてC.I.ピグメントレッド57:1を15〜25%含有する活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用紅インキ。
(c)フタロシアニン系染料の金属レーキ化合物であるC.I.ピグメントブルー15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6およびC.I.Pigment Green 7を15〜25%含有する活性エネルギー線硬化型オフセット印刷用藍インキ。
【請求項2】
請求項1記載の製造方法であって、
ISO規格のジャパンカラー2007準拠のマットコート用紙にオフセット印刷した 黄、紅、藍の各濃度値を、
黄が0.85〜1.15、
紅が1.15〜1.35、
藍が1.30〜1.45、
の範囲内で各色インキを単独または重ね合わせにより印刷した時、
L*a*b*表色系による色度(JIS Z 8729)が、
黄インキで、L*:85〜95、 a*:−10〜0、b*:87〜97
紅インキで、L*:46〜56、 a*:67〜77、b*:−7〜3
藍インキで、L*:50〜62、 a*:−32〜−42、b*:−43〜−53
の範囲内にあり、上記インキの2色の刷り重ねの色度が、
紅インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:45〜55、a*:64〜74、
b*:41〜51
藍インキ×黄インキの刷り重ねで、L*:46〜56、a*:−63〜−73、
b*:20〜30
藍インキ×紅インキの刷り重ねで、L*:20〜30、a*:15〜25、
b*:−39〜−49
の範囲内になることを特徴とする高彩度の色再現に優れたオフセット印刷してなる印刷物の製造方法であって、
上記3色の組み合わせ、
および、
上記2色と墨インキとの組み合わせ、
さらには、
上記3色と墨インキとの組み合わせ
で印刷することにより、L*a*b*表色系の色空間を広げることが可能なオフセット印刷してなる印刷物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の製造方法であって、
黄、紅が下記顔料である活性エネルギー線硬化型オフセット用印刷インキ組成物を使用してオフセット印刷してなる印刷物の製造方法。
(a)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたとき に、
400nm〜480nmが5〜15%、
480nm〜520nmが15〜60%
および
520nm〜700nmが60〜100%
の反射スペクトルを有することを特徴とする黄色相化合物を1〜20%含有する請求項1記載の活性エネルギー線オフセット用印刷黄インキ。
(b)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたとき に、
400nm〜580nmが1〜30%、
580nm〜620nmが30〜60%、
および
620nm〜700nmが60〜100%
の反射スペクトルを有することを特徴とする紅色相化合物を15〜25%含有する請求項1記載の活性エネルギー線オフセット用印刷紅インキ。
(c)400nm〜700nmの波長領域において、最大反射率を100%としたとき に、
400nm〜540nmが20〜100%、
および
540nm〜700nmが1〜20%
の反射スペクトルを有することを特徴とする紅色相化合物を15〜25%含有する藍インキである、請求項1記載の活性エネルギー線オフセット用印刷藍インキ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか記載の印刷物の製造方法により製造されてなる印刷物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−206483(P2012−206483A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75890(P2011−75890)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】