説明

活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びインクジェット記録方法

【課題】高い光硬化感度を有し、長期に保存しても、光硬化感度の変動が少なく、高い出射安定性が得られる活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びインクジェット記録方法を提供すること。
【解決手段】それぞれ重合性不飽和結合を有する少なくとも2種の重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいて、該少なくとも2種の重合性化合物が有するそれぞれの重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の差の最大値が、0.24以上、0.40以下であり、さらに該インクが、0.2mgKOH/g以上の酸価、および0.2mgKOH/g以上のアミン価を有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びインクジェット記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は、簡便でかつ安価に画像を作成できる観点から、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に利用されてきている。
【0003】
この様なインクジェット記録方式で用いられるインクジェットインク(以下インクともいう)としては、水を主溶媒とする水性インクジェットインク、室温では揮発しない不揮発性溶媒を主とし、実質的に水を含まない油性インクジェットインク、室温で揮発する溶媒を主とし、実質的に水を含まない非水系インクジェットインク、室温では固体のインクを加熱溶融して印字するホットメルトインク、印字後、紫外線等の活性光線により硬化する活性エネルギー線硬化型インクジェットインク等、各種のインクジェットインクがあり、用途に応じて使い分けられてきているが、その中でも、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクは、速硬化性があり、多種多様な記録媒体上にも印字ができるとの特徴から、乾燥負荷が大きく記録媒体が限定される水性インクジェットインクや、油性インクジェットインク、非水系インクジェットインクに代替する次世代インクジェットインクとして注目されており、その用途拡大の期待が大きい。
【0004】
従来、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクとしては、主には、ラジカル重合型とカチオン重合型のインクジェットインクに分類される。ラジカル重合型のインクジェットインクは、その素材選択幅が広く、インク設計の自由度が高いことから、広く研究開発され、実用化されている。しかしながら、酸素による重合阻害の影響を受けやすいことや、重合性化合物(モノマー)の臭気があることや皮膚感作性を有することなどから、取扱いに注意を有する問題があった。一方、カチオン重合型のインクジェットインクは、酸素による重合阻害の影響を受けないものの、湿度の影響により重合が阻害されることや、素材のバリエーションが少なく価格も高いことが課題であった。
【0005】
重合性化合物(以下モノマーともいう)、重合開始剤、増感剤などの使用素材の安全性、実用的な硬化感度の両立を目的として、ビニルエーテル等の電子過多なモノマー(ドナーモノマー)とマレイミド等の電子不足モノマー(アクセプターモノマー)との組み合わせで行う電荷移動錯体重合系(CT重合系(例えば非特許文献1))を紫外線などの活性エネルギー線硬化型組成物に適用することが試みられている(特許文献1,2参照)。
【0006】
しかしながら、これらを活性エネルギー線硬化型のインクジェットインクとして使用する場合には、深刻な問題を有していた。インクジェットインクは、通常、ピエゾ型、サーマル型、静電方式等を問わず、印刷インクやコーティング用途の組成物に比べて、極めて低粘度の液体でなければ、吐出することができない。また、インクの粘度が、長期間の経時や保存条件の影響により少しでも変動してしまうと、液滴量や、液滴の飛翔速度に影響を及ぼし、印字の精度が劣化して画像に乱れを生じてしまう。
【0007】
しかしながら、従来のCT重合系を用いた組成物では、このようなインクジェットインクとして要求されるインクの保存安定性のレベルには、はなはだ不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3353020号公報
【特許文献2】特開平11−124403号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Sonny Jonsson,et.al,Polymer Materials Sci.&Enginer.1995,72,470−472
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高い光硬化感度を有し、長期に保存しても、光硬化感度の変動が少なく、高い出射安定性が得られる活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びインクジェット記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.それぞれ重合性不飽和結合を有する少なくとも2種の重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいて、該少なくとも2種の重合性化合物が有するそれぞれの重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の差の最大値が、0.24以上、0.40以下であり、さらに該インクが、0.2mgKOH/g以上の酸価、および0.2mgKOH/g以上のアミン価を有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0013】
2.前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの酸価が0.2mgKOH/g〜10mgKOH/gで、かつアミン価が0.2mgKOH/g〜10mgKOH/gであることを特徴とする前記1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0014】
3.前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの酸価とアミン価の比が、20:80〜80:20であることを特徴とする前記1または2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0015】
4.前記それぞれ重合性不飽和結合を有する少なくとも2種の重合性化合物のうち、前記重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の最大の重合性不飽和結合を有する重合性化合物が、下記一般式(1)または一般式(2)で示される不飽和二重結合部分を少なくとも1つ以上有する重合性化合物であって、前記重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の最小の重合性不飽和結合を有する重合性化合物が、下記一般式(3)で示される不飽和二重結合部分を少なくとも1つ以上含有する重合性化合物であることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0016】
【化1】

【0017】
【化2】

【0018】
(式中、EWG、EWGは、それぞれ電子吸引性基を表し、EWGとEWGの一部が結合して環状構造を有していてもよい。また、EWG及び、またはEWGの一部が連結基を介し、2つ以上の不飽和二重結合部分を有する多官能重合性化合物を形成してもよい。Xは、−O−、−NR−、−S−、−SO−のいずれかを表し、Yは脂肪族基または芳香族基を示す、R、R、Rは、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基を表す。又Rの一部とXが結合して環状構造を形成してもよい。Yは脂肪族基または芳香族基を示し、Yが連結基構造部分を有し、2つ以上の不飽和二重結合部分を有する多官能重合性化合物を形成してもよい。)
5.前記一般式(1)または一般式(2)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、下記一般式(A−1)〜(A−14)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であり、かつ一般式(3)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、下記一般式(D−1)〜(D−9)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であることを特徴とする前記4に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0019】
【化3】

【0020】
【化4】

【0021】
(式中、R〜Rは、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基を表し、2つ以上の不飽和二重結合部分を有する多官能重合性化合物を形成するために連結基とすることができる。Xはハロゲン基、Zは、酸素、窒素、硫黄を示す。Qは環を形成する炭素数が2〜6のアルキレン基を表す。)
6.前記一般式(1)または一般式(2)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、前記一般式(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−6)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であり、かつ一般式(3)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、前記一般式(D−1)、(D−2)、(D−3)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であることを特徴とする前記5に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【0022】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、高い光硬化感度を有し、長期に保存しても、光硬化感度の変動が少なく、高い出射安定性が得られる活性エネルギー線硬化型インクジェットインク及びインクジェット記録方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の要部の構成の一例を示す正面図である。
【図2】本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0026】
CTインクでは、高い光硬化感度を有していることが特徴であるが、長期保存により、光硬化感度が低下してしまうとともに、出射安定性が損なわれる欠点があった。原因を調べたところ、求核剤に弱いアクセプターモノマーの二重結合が減っているケース、ドナーモノマーの二重結合が一部減っているケースなどがあり、使用しているモノマーが一部変質していることが分かった。
【0027】
もともと、電子密度が低い重合性不飽和結合を有するモノマーは、求核剤によるマイケル付加反応を起こすために、塩基性物質と反応して、変質してしまうことが知られている。一方、電子密度が高い重合性不飽和結合を有するモノマーは、親電子試薬と容易に反応するために、酸性物質との共存下では、変質してしまうことが知られていた。この相反する性質を有するモノマーを共存させて、長期間安定に保つためには、求核性または親電子性を一定に範囲に制御する必要がある。
【0028】
本発明者らが、鋭意検討を行った結果、少なくとも2種の重合性化合物が有するそれぞれの重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の差の最大値が、0.24以上、0.40以下であり、さらにインク中に適度な酸価およびアミン価を持たせ、緩衝作用させることで、高い光硬化感度を維持したまま、インクジェットインクとして要求される出射安定性と、インクの経時劣化による光硬化感度の低下を防止できることを見出し、本発明の完成に至った次第である。
【0029】
〈光硬化感度の低下を防止できる理由〉
本発明のインクジェットインクは、少なくとも2種の重合性化合物が有するそれぞれの重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の差の最大値が、0.24以上、0.40以下であり、さらに該インクが、0.2mgKOH/g以上の酸価、および0.2mgKOH/g以上のアミン価を有することが必要である。その理由を以下に述べる。
【0030】
2種の重合性化合物が有するそれぞれの重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の差の最大値が、0.24以上、0.40以下であることにより、高い光硬化感度で硬化させることが出来る、炭素原子の電荷の差の最大値が0.24未満になると、電荷移動錯体が生じにくくなり、その結果、光硬化感度は低下する。一方、炭素原子の電荷の差の最大値が0.40より大きくなると生じた電荷移動錯体が安定になり、これ以上の反応が進まなくなるため、やはり、光硬化感度が低下する。2つの重合性化合物のそれぞれの重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の差の最大値が、0.24以上、0.40以下にすることで、高い光硬化感度を維持することが出来る。
【0031】
本発明のインクでは、長期保存により、光硬化感度が低下してしまうとともに、出射安定性が損なわれる事を防止するために、酸価が0.2mgKOH/g以上でアミン価が0.2mgKOH/g以上が必要である。
【0032】
通常、インクは経時保存により、空気中の水、および二酸化炭素を吸収するために、炭酸が生じて、酸濃度が経時で増加し、ドナーモノマーが反応変質してしまう。炭酸の増加を防止するために、アミンを予め加えておくと、保存初期に、アミンが、または空気中の水とアミンとの反応で生じた水酸陰イオンが、アクセプターモノマーと反応してしまう。重合性化合物が変質することは、光硬化感度が低下するとともに、粘度が変化するために、出射安定性が損なわれることになる。
【0033】
これを防止するために、本発明のインクでは、0.2mgKOH/g以上の酸価、およびが0.2mgKOH/g以上のアミン価にして、インクに緩衝作用と持たせることで、重合性化合物が変質して塩基性、または酸性になることを防止する。酸価が0.2mgKOH/g、またはアミン価いずれかが、0.2mgKOH/gより少ない場合は、インク調製時と長期保存時で光硬化感度の差が大きくなるとともに、出射安定性が損なわれてしまう。好ましくは、酸価が0.2mgKOH/g〜10mgKOH/gで、かつアミン価が0.2mgKOH/g〜10mgKOH/gである。酸価が10mgKOH/g以内、及びアミン価が10mgKOH/g以内の場合、酸およびアミンの塩が析出することがなく、ヘッドでの目詰まりによる出射不良を起こす懸念が生じない。
【0034】
〔不飽和結合の炭素原子の電荷〕
本発明に係る不飽和結合を構成する炭素原子の電荷とは、分子軌道法理論に基づいて計算によって得られる基底状態における原子上の電荷(atomic charge)であり、本発明では、モノマーの基底状態における不飽和結合の炭素原子上の電荷を、コンピュータを用いて計算によって求めた。本発明では、分子軌道計算ソフトに、SPARTAN‘08 for Windows(登録商標)を使用し、計算手法として、Equilibrium Geometry at Ground state with Hartree−Fock 3−21G in Vacuumにて行い、電荷の値として、Natural atomic chargeを用いた。
【0035】
本発明に係る重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷は、電荷の高い(電子密度の低い)重合性不飽和結合を有するモノマー(アクセプターモノマー)の場合には、電子吸引性基が結合した不飽和結合上の二つの炭素原子のうち電荷の値の高い方の炭素原子の電荷を示し、電荷の低い(電子密度が高い)重合性不飽和結合を有するモノマー(ドナーモノマー)の場合には、電子供与性基が結合した不飽和結合上の二つの炭素原子のうち電荷の値の低い方の炭素原子の電荷を示すものとする。尚、モノマー一分子中に当該の不飽和結合が複数存在する場合には、電荷の高い重合性不飽和結合を有するモノマーの場合は、各不飽和結合の炭素原子のうち電荷の高いほうの原子の電荷を使用し、電荷の低い重合性不飽和結合を有するモノマーの場合は、各不飽和結合の炭素原子の電荷の低いほうの原子の電荷を使用し、その差を本発明における炭素原子の電荷の差の最大値とする。
【0036】
また、ドナーモノマー、アクセプターモノマー共に複数用いる事もできる。その場合モル比で重みをつけて、前記同様各重合性不飽和結合の炭素原子の電荷の加重平均値を使用し、炭素原子の電荷の差の最大値を算出することができる。
【0037】
本発明のインク組成物においては、少なくとも2種のモノマーが有する重合性不飽和結合炭素の電荷の差の最大値が、0.24以上、0.40以下である。電荷の差の最大値が、0.24以上であれば、CT重合が起こりやすくなる。又、電荷の差の最大値が、0.40以下であれば、電荷移動錯体が過度に安定化することなく、十分な重合速度を得ることができる。
【0038】
(電子密度の低い重合性不飽和結合を有する重合性化合物)
本発明における電子密度の低い重合性不飽和結合を有する重合性化合物(アクセプターモノマー)は、重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷が高い方のモノマーであり、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物が含有する電子密度が高い重合性不飽和結合を有するモノマーの重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷と比較して、相対的に高い電荷の炭素原子を有するモノマーである。
【0039】
本発明における電子密度の低い重合性不飽和結合を有するモノマーの重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷としては、−0.30以上、好ましくは−0.28以上である。上限は化合物の入手のしやすさ等から−0.20以下が好ましい。
【0040】
本発明の重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷が高いモノマーの構造は、好ましくは一般式(1)または一般式(2)のように示される。
【0041】
【化5】

【0042】
式中、EWG、EWGは、電子吸引性基を表し、EWGとEWGの一部が結合して環状構造を有していてもよい。また、EWG及び、またはEWGの一部が連結基を介し、2つ以上の不飽和二重結合部分を有する多官能重合性化合物を形成してもよい。
【0043】
電子吸引性基とは、ハメット則によるσp値が0.2以上の置換基を指し、具体的には、この値を満足するカルボニル基、カルボキシル基、アルキルオキシカルボニル基、ニトリル基、ハロゲン基(クロル基、ブロム基等)、スルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、ヘテロ環基(例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基)などを表す。
【0044】
一般式(1)または一般式(2)の重合性不飽和二重結合部分の具体例としては、たとえば、ビニレンジカルボン酸無水物、ビニレンイミド化合物、ビニレンジカルボン酸、ビニレンジカルボン酸エステル、ビニレンモノカルボン酸アミドモノカルボン酸、ビニレンモノカルボン酸アミドモノカルボン酸エステル、ビニレンジカルボン酸アミド、ビニレン骨格両端にニトリル基が置換したビニレンニトリル化合物、ビニレン骨格両端にハロゲン基が置換したハロゲン化ビニル化合物、ビニレン骨格両端にカルボニルが置換したビニレンジケトン化合物、ビニレンジチオカルボン酸無水物、ビニレンチオイミド化合物、ビニレンジチオカルボン酸、ビニレンジチオカルボン酸エステル、ビニレンモノチオカルボン酸アミドモノチオカルボン酸、ビニレンモノチオカルボン酸アミドモノチオカルボン酸エステル、ビニレンジチオカルボン酸アミド、ビニレン骨格両端にピリジル基が置換した化合物、ビニレン骨格両端にピリミジル基が置換した化合物などがあげられるがこれらに限定されない。
【0045】
前記一般式(1)または一般式(2)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、下記一般式(A−1)〜(A−14)より選択される少なくとも1つの重合性不飽和二重結合を有する重合性化合物であることが好ましい。
【0046】
【化6】

【0047】
式中、R〜Rは、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基を表し、2つ以上の不飽和二重結合部分を有する多官能重合性化合物を形成するために連結基とすることができる。Xはハロゲン基、Zは、酸素、窒素、硫黄を示す。
【0048】
これらの中で好ましい重合性化合物としては、ビニレンジカルボン酸無水物(A−1)(例えば無水マレイン酸など)、マレイミド、シトラコンイミドなどのビニレンイミド(A−2,A−14)(例えばマレイミド、シトラコンイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−2−エチルヘキシルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−オクタデシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−(p−カルボメトキシフェニル)マレイミド、4,4′−ジマレイミドビスフェノールF、N−ブチルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−(4−クロロフェニル)マレイミド、2,3−ジメチル−1−N−(2−メタクリルオキシエチル)マレイミド等)、ビニレンジカルボン酸(例えばマレイン酸、フマル酸等)、ビニレンジカルボン酸エステル(A−3,A−6)、マレイン酸エステル(例えばマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−tert−ブチル、マレイン酸ジ(2−エチルヘキシル))、フマル酸エステル(例えばフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−tert−ブチル、フマル酸ジ(2−エチルヘキシル等))などが挙げられる。
【0049】
前記、好ましい不飽和二重結合部分を有する多官能の重合性化合物を得るには、従来公知の様々な連結基骨格を用いて得ることができる。例えば、US6034150、特開平11−124403に記載されているような多官能マレイミド化合物が挙げられる。
【0050】
さらに、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物のために用いる好ましいマレイミド化合物としては、特願2010−136977号公報、および特願2010−136978号公報に記載キラル基を有するマレイミド化合物が挙げられる。具体的には、以下の化合物である。なお、これらの化合物は前記文献または公知の方法を用いて合成することができる。
【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
(電子密度の高い重合性不飽和結合を有する重合性化合物)
本発明に係る電子密度の高い重合性不飽和結合を有する重合性化合物(ドナーモノマー)は、重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷が低いモノマーであり、電子密度の低い重合性不飽和結合を有する重合性化合物(アクセプターモノマー)の重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷に対し、相対的に低い電荷の炭素原子を有するモノマーである。
【0057】
本発明に係る電子密度の高い重合性不飽和結合を有するモノマーが含有する重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷値としては、−0.45以下であることが好ましく、より好ましくは−0.50以下である。下限は化合物の入手のしやすさ等から−0.60以上が好ましい。
【0058】
本発明に係る電子密度の高い重合性不飽和結合を有する重合性化合物は、下記一般式(3)に記載した不飽和結合を有する不飽和二重結合を1つ以上有する重合性化合物であることが好ましい。
【0059】
【化12】

【0060】
式中、Xは、−O−、−NR−、−S−、−SO−のいずれかを表し、Yは脂肪族基または芳香族基を示す、R、R、Rは、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基を表す。又R4の一部とXが結合して環状構造を形成してもよい。Yは脂肪族基または芳香族基を示し、Yが連結基構造部分を有し、2つ以上の不飽和二重結合部分を有する多官能重合性化合物を形成してもよい。
【0061】
一般式(3)の不飽和二重結合部分の具体例としては、たとえば、ビニルエーテル、プロペニルエーテル等のアルケニルエーテル類、ビニルチオエーテル、プロペニルチオエーテル等のアルケニルチオエーテル、ビニルスルフォキシド、プロペニルスルフォキシド等のアルケニルスルフォキシド類、カルボン酸エステルの酸素原子にビニル基が結合したビニルエステル類、アミノ基の窒素原子にビニル基が結合したビニルアミン類、アミド基の窒素原子にビニル基が結合したビニルアミド類、イミダゾール環の窒素原子にビニル基が結合したビニルイミダゾール、カルバゾール環の窒素原子にビニル基が結合したビニルカルバゾール、ビニレン骨格と酸素原子を環内に含む環状5員環、環状6員環化合物、等が挙げられる。
【0062】
好ましくは一般式(3)で示される重合性不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、下記一般式(D−1)〜(D−9)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であることである。
【0063】
【化13】

【0064】
式中、R、R、Rは、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基を表す。Zは、酸素、窒素、硫黄を示す。Qは環を形成する炭素数が2〜6のアルキレン基を表す。
【0065】
前記、好ましい重合性不飽和二重結合部分を有する重合性化合物として、以下の例が挙げられる。
【0066】
ビニルエーテルを有する重合性化合物として、以下に示すものがある。
【0067】
〔2官能ビニルエーテル化合物〕
2官能ビニルエーテル化合物としては、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、デカンジオールビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGDVE)、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、オキセタンジメタノールジビニルエーテル、オキサペンタンジオールジビニルエーテル、オキサノルボルナンジオールジビニルエーテル、オキサノルボルナンジメタノールジビニルエーテル、オキサトリシクロデカンジオールジビニルエーテル、オキサアダマンタンジオールジビニルエーテル、ジオキソランメンタノールジビニルエーテル、シクロペンタンジオールジビニルエーテル、シクロペンタンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジオールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、アダマンタンジオールジビニルエーテル、ノルボルニルジメタノールジビニルエーテル、イソボルニルジビニルエーテルなどを挙げることも出来る。
【0068】
この他にも特許第4037856号公報に開示されている少なくとも酸素原子を含む脂環骨格を持つビニルエーテル化合物、特開2005−015396号公報に開示されている脂環式骨格を有するビニルエーテル、特開2008−137974号公報に開示されている1−インダニルビニルエーテル、特開2008−150341号公報に開示されている4−アセトキシシクロヘキシルビニルエーテル等を挙げることができる。
【0069】
また、上記に挙げたジビニルエーテルのビニルエーテル基をプロペニルエーテル基、イソプロペニルエーテル基、ブテニルエーテル基、イソブテニルエーテル基に置換するなど、ビニルエーテル基のα位またはβに置換基を導入することもできる。
【0070】
これらの2官能ビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジエチレングリコールジビニルエーテルおよびトリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、が硬化性、種々の素材との相溶性、臭気、安全性の点で優れており好ましい。
【0071】
〔3官能以上の多官能ビニルエーテル化合物〕
本発明に好適な3官能以上の多官能ビニルエーテル化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどが挙げられる。
【0072】
3官能のビニルエーテル化合物としては、下記一般式(4)で表される化合物のような分子内にオキシアルキレン基を有する化合物が、その他の化合物との相溶性や溶解性、基材との密着性を得る上で好ましい。また、オキシアルキレン基の総数は10以下であることが好ましい。10より大きいと、硬化膜の耐水性が低下する。なお、下記一般式(4)ではオキシエチレン基を例示しているが、炭素数の異なるオキシアルキレン基とすることも可能である。オキシアルキレン基の炭素数としては1〜4とすることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
【0073】
【化14】

【0074】
上記一般式(4)において、R11は水素または有機基を表す。R11で表される有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリール基、フリル基またはチエニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基または3−ブテニル基等の炭素数1〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基またはフェノキシエチル基等のアリール基、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基またはペンチルカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基またはブトキシカルボニル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルボニル基、エトキシカルバモイル基、プロピルカルバモイル基またはブチルペンチルカルバモイル基等の炭素数1〜6個のアルコキシカルバモイル基等の基が挙げられるがこれらに限定されない。この中でも有機基としては、ヘテロ原子を含まない炭化水素基が硬化性の観点で好ましい。また、p,q,rは0または1以上の整数であり、p+q+rは3〜10の整数である。
【0075】
また、ビニルエーテル基を4つ以上有する多官能ビニルエーテル化合物としては、下記一般式(5)、(6)に表される化合物を挙げることができる。
【0076】
【化15】

【0077】
上記一般式(5)において、R12は、メチレン基、炭素数1〜6のアルキレン基、オキシアルキレン基、エステル基の何れかを含む連結基であり、p、q、l、mはそれぞれ0または1以上の整数であり、p+q+l+mの総数は3〜10の整数である。
【0078】
【化16】

【0079】
上記一般式(6)において、R13は、メチレン基、炭素数1〜6個のアルキレン基、オキシアルキレン基、エステル基の何れかを含む連結基を表し、p1、q1、r1、l1、m1、s1はそれぞれ0または1以上の整数であり、p1+q1+r1+l1+m1+s1の総数は3〜10の整数である。
【0080】
上記一般式(5)、(6)においてはオキシエチレン基を例示しているが、炭素数の異なるオキシアルキレン基とすることも可能である。オキシアルキレン基の炭素数としては1〜4であることが好ましく、1または2であることがより好ましい。
【0081】
本発明において、3官能以上の多官能ビニルエーテルとしては4官能以上であることが、硬化の湿度依存性、硬化膜の耐溶媒性や耐候性など優れた硬化特性を得る上で更に好ましい。
【0082】
また、上述の3官能以上の多官能ビニルエーテルは、ビニルエーテル基として下記一般式(7)で表される官能基とすることも、硬化感度の向上や湿度依存性の改善、臭気の低減を図る上で好ましい。
【0083】
【化17】

【0084】
上記一般式(7)において、RとRはそれぞれ水素原子または有機基を表し、RとRの有機基の炭素原子数の総和が1以上の整数である。
【0085】
〔単官能ビニルエーテル化合物〕
単官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、アリルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、フルフリルビニルエーテル等が挙げられる。
【0086】
上記以外にも、これまでに開示されている種々のビニルエーテル化合物を適用することが可能である。例えば、特許第3461501号公報に開示されている分子内に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を含む化合物、特許第4037856号公報に開示されている少なくとも酸素原子を含む脂環骨格を持つビニルエーテル化合物、特開2005−015396号公報に開示されている脂環式骨格を有するビニルエーテル、特開2008−137974号公報に開示されている1−インダニルビニルエーテル、特開2008−150341号公報に開示されている4−アセトキシシクロヘキシルビニルエーテル等を挙げることができる。
【0087】
その他のアルケニルエーテルを有する重合性化合物として、Crevello,Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry, Vol.31,1473−1482(1993)、Crevello,Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.33,1381−1389(1995)、Oskar Nuyken,et,al,Macromol.Chem.Phys.199,191−196(1998)記載の化合物等が挙げられる。
【0088】
ビニルチオエーテル、ビニルスルフォキシドを含有する重合性化合物として、ビニルメチルスルフォキシド、ビニル−tert−ブチルスルフィド、ビニルメチルスルフィド、ビニルエチルスルフィド等が挙げられる。
【0089】
ビニレン骨格と酸素原子を環内に含む環状5員環、環状6員環化合物を有する重合性化合物として、イミダゾール、ピロール、フラン、ジヒドロフラン、ピラン、ジヒドロピラン等が挙げられる。
【0090】
窒素原子上にビニル基が置換した構造を有するN−ビニル化合物の具体例としては、たとえば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−N−エチルウレア、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルエチルカルバメートおよびそれらの誘導体が挙げられ、これらの化合物の中でも特にN−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアミドが好ましい。N−ビニルホルムアミドは、たとえば、荒川化学工業株式会社から入手することができる。
【0091】
<好ましい組み合わせ>
電子密度の高い重合性不飽和結合をもつモノマーのうち、ビニルエーテル類、N−ビニル化合物、と電子密度の低い重合性不飽和結合をもつモノマーのうち、無水マレイン酸、マレイミド類、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類を、好ましく用いることが出来る。
【0092】
前記一般式(1)または一般式(2)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、前記一般式(A−1)〜(A−14)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であり、かつ一般式(2)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、前記一般式(D−1)〜(D−9)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であることが好ましい。
【0093】
前記一般式(1)または一般式(2)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、前記一般式(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−6)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であり、かつ一般式(3)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、前記一般式(D−1)、(D−2)、(D−3)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であることがより好ましい。
【0094】
電子密度の高いモノマーと電子密度の低いモノマーの比は、ビニル基を基準とする当量比で、80:20〜20:80、好ましくは75:25〜30:70で使用することが出来る。
【0095】
<酸価>
酸価とは、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で定義される値であり、本発明ではインク1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmgと定義されており、JIS K2501−2003に記載された方法で測定出来る。
【0096】
<アミン価>
アミン価とは、試料1g中に含まれるアミン成分を中和するのに必要な酸と等モルの水酸化カリウムのmgと定義される。本発明では、インク1g中含まれるアミン成分を中和するのに必要な酸と等モルの水酸化カリウムのmgと定義される。具体的な測定方法は、ASTM D2074の全アミン価の測定に基づく。
【0097】
インク中に酸価、アミン価を持たせる方法としては、酸価を有する化合物とアミン価を有する化合物を、所定の酸価、アミン価になるようにインクに溶解させることで、出来る。
【0098】
ここで、酸価を有する化合物とは有機酸および、それらの塩である。有機カルボン酸:酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、二重結合のある酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホスホン酸:メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、また、アクリル酸、メタクリル酸を共重合させた高分子、末端にカルボン酸を有したポリエステルなどが挙げられる。
【0099】
好ましくは、有機カルボン酸、もしくは、高分子化合物である。
【0100】
アミン価を有する化合物とは有機アミン:エチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、αジケトン類:アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ビニルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどを有する重合性化合物を共重合した高分子も含まれる。
【0101】
好ましくは、2級、3級の有機アミン、またはそれを含有する高分子である。
【0102】
<一分子中に、酸価、アミン価を併せ持つ化合物>
また、一分子中に酸基、アミン基を有しているベタイン系化合物も用いることが出来る。
【0103】
具体的にはベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸塩などのベタイン系界面活性剤、アミノ安息香酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、アスパラギン酸などのアミノ酸類などが挙げられる。
【0104】
また、高分子中に、アクリル酸、またはメタクリル酸などの酸性成分と、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどの塩基成分を有する化合物も幸便に用いることが出来る。
【0105】
本発明で、ある値以上の酸価、アミン価を有することが目的であるから、酸価、アミン価を有する化合物を1種、または2種以上用いることは、特に制限されない。
【0106】
また、インクジェットインクの酸価とアミン価の比は、20:80〜80:20であることが好ましい。この範囲ならば、所望の緩衝作用があり、本発明の効果を享受することが出来る。
【0107】
<その他のモノマー>
本発明では、その他の重合性化合物として、重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷が、−0.40を超え、−0.30未満の重合性化合物であっても、本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加することができる。以下にそのような重合性化合物について説明する。
【0108】
加えてもよいモノマーは、(メタ)アクリレート類、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0109】
具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、トリデシルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、オリゴエステルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等のアクリル酸誘導体;メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル誘導体;その他、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体、2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートトリレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可撓性アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラクトン変性アクリレートなど、公知のモノマー、オリゴマーが挙げられる。
【0110】
〈光ラジカル重合開始剤〉
本発明では、高感度を得るために、光ラジカル重合開始剤、増感剤を含有することが好ましい。本発明に適用可能な光ラジカル重合開始剤としては、分子開裂型または水素引き抜き型のものが好適である。
【0111】
具体例としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、さらにこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良いし、さらに水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用できる。
【0112】
また、上記光ラジカル重合開始剤に対し、増感剤として、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、ラジカル重合性化合物と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光ラジカル重合開始剤や増感剤は、ラジカル重合性化合物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
【0113】
光ラジカル重合開始剤と増感剤は、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物全質量に対して0.1〜20質量%、好ましくは、4〜12質量%の範囲である。
【0114】
その他に、EP1674499A記載のデンドリマーコアに開始剤構造、アミン系開始助剤を結合させたタイプ、EP2161264A、EP2189477A記載の重合性基を有する開始剤、アミン系開始助剤、EP1927632B1記載の複数のアミン系開始助剤を1分子内に有するタイプ、WO2009/060235記載の分子内に複数のチオキサントンを含有するタイプ、Lamberti社より市販されているESACURE ONE、ESACUR KIP150に代表されるαヒドロキシプロピオフェノンが側鎖に結合したオリゴマータイプの重合開始剤なども好ましく用いられる。
【0115】
また、本発明において、マレイミド含有の重合性化合物を用いる場合には、マレイミド含有重合性化合物自身が開始剤として機能することができる。
【0116】
〔着色剤〕
本発明のインクジェットインクを着色する場合は、顔料を着色剤として用いることが好ましい。顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無色無機顔料又は有色有機顔料を使用することができる。有機顔料としては、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料;アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系有機顔料;キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系有機顔料;ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系有機顔料;イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系有機顔料;ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系有機顔料;チオインジゴ系有機顔料、縮合アゾ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロンイエロー等のキノフタロン系有機顔料;イソインドリンイエローなどのイソインドリン系有機顔料;その他の顔料として、フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0117】
有機顔料をカラーインデックス(C.I.)番号で以下に例示する。
【0118】
C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、
C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、
C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、177、180、192、202、206、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、
C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、
C.I.ピグメントグリーン7、36、
C.I.ピグメントブラウン23、25、26、
上記顔料の中でも、キナクリドン系、フタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、キノフタロン系、イソインドリン系有機顔料等は耐光性が優れているため好ましい。
【0119】
有機顔料は、レーザ散乱による測定値でインク中の平均粒径が10〜150nmの微細粒子であることが好ましい。顔料の平均粒径が10nm未満の場合は、粒径が小さくなることによる耐光性の低下が生じ、150nmを超える場合は分散の安定維持が困難になり、顔料の沈澱が生じ易くなるとともに、吐出安定性が低下し、サテライトと言われる微小のミストが発生する問題が起こる。ただし、酸化チタンの場合は白色度と隠蔽性を持たせるために平均粒径は150〜300nmであることが好ましい。より好ましくは180〜250nmである。
【0120】
またインク中の顔料の最大粒径は、1.0μmを越えないよう、十分に分散あるいは、ろ過により粗大粒子を除くことが好ましい。粗大粒子が存在すると、やはり吐出安定性が低下する傾向にある。
【0121】
有機顔料の微細化は、以下の方法で行うことができる。即ち、有機顔料、有機顔料の3質量倍以上の水溶性無機塩及び水溶性溶剤の少なくとも3成分から成る混合物を粘土状とし、ニーダー等で強く練り込んで微細化した後、水中に投入し、ハイスピードミキサー等で攪拌してスラリー状とする。次いで、スラリーの濾過と水洗を繰り返して、水溶性の無機塩及び水溶性の溶剤を、水性処理により除去する。微細化工程において、樹脂、顔料分散剤等を添加してもよい。
【0122】
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等が挙げられる。これらの無機塩は有機顔料の3〜20質量倍の範囲で用いるが、分散処理を行った後は、本発明で規定するハロゲンイオン含有量を達成するため、塩素イオン(ハロゲンイオン)を水洗処理により取り除く操作を行う。無機塩の量が3質量倍よりも少ないと、所望の大きさの処理顔料が得られず、又、20質量倍よりも多いと、後の工程における洗浄処理が多大であり、有機顔料の実質的な処理量が少なくなる。
【0123】
水溶性溶剤は、有機顔料と破砕助剤として用いられる水溶性無機塩との適度な粘土状態を作り、充分な破砕を効率よく行うために用いられ、水に溶解する溶剤であれば特に限定されないが、混練時に温度が上昇して溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から沸点120〜250℃の高沸点の溶剤が好ましい。水溶性溶剤として、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(i−ペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0124】
また顔料はその表面に顔料分散剤との吸着を促進するために、酸性処理または塩基性処理、シナージスト、各種カップリング剤など、公知の技術により表面処理を行うことが分散安定性を確保するために好ましい。
【0125】
顔料は、十分な濃度及び十分な耐光性を得るため、インクジェットインク中に白色を除く色の場合1.5〜8質量%、酸化チタンを用いた白色インクの場合、10〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0126】
〔顔料分散剤〕
顔料分散剤としては、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート、顔料誘導体等を挙げることができる。
【0127】
具体例としては、BYK Chemie社製の「Anti−Terra−U(ポリアミノアマイド燐酸塩)」、「Anti−Terra−203/204(高分子量ポリカルボン酸塩)」、「Disperbyk−101(ポリアミノアマイド燐酸塩と酸エステル)、107(水酸基含有カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアマイド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「400」、「Bykumen」(高分子量不飽和酸エステル)、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸)」、「P104S、240S(高分子量不飽和酸ポリカルボン酸とシリコーン系)」、「Lactimon(長鎖アミンと不飽和酸ポリカルボン酸とシリコーン)」が挙げられる。
【0128】
又、Efka CHEMICALS社製の「エフカ44、46、47、48、49、54、63、64、65、66、71、701、764、766」、「エフカポリマー100(変性ポリアクリレート)、150(脂肪族系変性ポリマー)、400、401、402、403、450、451、452、453(変性ポリアクリレート)、745(銅フタロシアニン系)」;共栄化学社製の「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「フローノンSH−290、SP−1000」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合物)」;楠本化成社製の「ディスパロンKS−860、873SN、874(高分子分散剤)、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル型)」等が挙げられる。
【0129】
更には、花王社製の「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩)、EP」、「ホモゲノールL−18(ポリカルボン酸型高分子)」、「エマルゲン920、930、931、935、950、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン24(ココナッツアミンアセテート)、86(ステアリルアミンアセテート)」;ゼネカ社製の「ソルスパーズ5000(フタロシアニンアンモニウム塩系)、13240、13940(ポリエステルアミン系)、17000(脂肪酸アミン系)、24000、32000、7000」;日光ケミカル社製の「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)、Hexagline4−0(ヘキサグリセリルテトラオレート)」、味の素ファインテクノ製のアジスパー821、822、824等が挙げられる。
【0130】
これらの顔料分散剤は、顔料100に対し5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%の範囲で含有させることが好ましい。5%より少ないと分散安定性が得られにくい場合があり、70%より多いと吐出安定性が劣化する場合がある。
【0131】
更に、これらの顔料分散剤は、0℃におけるカチオン重合性化合物全体へ5質量%以上の溶解性があることが好ましい。溶解性が5質量%未満であると、インクを0℃〜10℃程度の間で低温保存をしたときに、好ましくないポリマーゲルまたは顔料の軟凝集体が発生する場合があり、インクの保存安定性と吐出安定性とが劣化する場合がある。
【0132】
〔ラジカル重合禁止剤〕
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクでは、保存安定性の観点から、ラジカル重合禁止剤を添加するのが好ましい。本発明のインクジェットインクは、保存中に、熱や光の影響で発生したラジカルによりラジカル重合がおこる場合が考えられる。ラジカル重合禁止剤を、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物あるいはインクジェットインクに使用することは、保存中に起きるラジカル重合を防ぐ効果がある反面、光カチオン重合の硬化は阻害しないことから、本発明のようなビニルエーテルを主とし硬化性に極めて優れたインクの光硬化を阻害せずに、インクの経時保存安定性だけを高めてくれる作用があることから非常に好ましい実施形態である。
【0133】
ラジカル重合禁止剤としては、フェノール系水酸基含有化合物、メトキノン(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、ハイドロキノン、4−メトキシ−1−ナフトール、ヒンダードアミン系酸化防止剤、1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジルフリーラジカル、N−オキシド化合物類、ピペリジン1−オキシルフリーラジカル化合物類、ピロリジン1−オキシルフリーラジカル化合物類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン類、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、各種糖類、リン酸系酸化防止剤、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体、ジシアンジアミドとポリアルキレンポリアミンの重縮合物、フェノチアジン、などが挙げられる。
【0134】
ラジカル重合禁止剤としては、具体的には以下の化合物を挙げることができる。
【0135】
フェノール性化合物としては、例えば、次の化合物である:フェノール、アルキルフェノール、例えば、o−、m−又はp−クレゾール(メチルフェノール)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、6−t−ブチル−2,4−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−メチル−4−t−ブチルフェノール、4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェノール、又は2,2′−メチレン−ビス−(6−t−ブチル−メチルフェノール)、4,4′−オキシジフェニル、3,4−メチレンジオキシジフェノール(ゴマ油)、3,4−ジメチルフェノール、ベンズカテキン(1,2−ジヒドロキシベンゾール)、2−(1′−メチルシクロヘキシ−1′−イル)−4,6−ジメチルフェノール、2−又は4−(1′−フェニルエチ−1′−イル)フェノール、2−t−ブチル−6−メチルフェノール、2,4,6−トリス−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、ノニルフェノール[CAS−Nr.11066−49−2]、オクチルフェノール[CAS−Nr.140−66−9]、2,6−ジメチルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールF、ビスフェノールS、3,3′,5,5′−テトラブロモビスフェノールA、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、BASF Aktiengesellschaft のコレシン(Koresin)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−t−ブチルベンズカテキン、2−ヒドロキシベンジルアルコール、2−メトキシ−4−メチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,5−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、4−イソプロピルフェノール、6−イソプロピル−m−クレゾール、n−オクタデシル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゾール、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル−イソシアヌレート、1,3,5−トリス−(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−t−ブチルベンジル)イソシアヌレート又はペンタエリスリット−テトラキス−[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−t−ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール、6−s−ブチル−2,4−ジニトロフェノール、Firma Ciba Spezialitaetenchemie のイルガノックス(Irganox)565、1010、1076、1141、1192、1222及び1425、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシルエステル。3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヘキサデシルエステル、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクチルエステル、3−チア−1,5−ペンタンジオール−ビス−[3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカンジオール−ビス−[3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,8−ジオキサ−1,11−ウンデカンジオール−ビス−[(3′−t−ブチル−4′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)プロピオネート]、1,9−ノナンジオール−ビス−[(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,7−ヘプタンジアミン−ビス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、1,1−メタンジアミン−ビス[3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド]、3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、3−(3′,5′−ジメチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ヒドラジド、ビス−(3−t−ブチル−5−エチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)メタン、ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニ−1−イル)メタン、ビス−[3−(1′−メチルシクロヘキ−1′−イル)−5−メチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル]メタン、ビス−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニ−1−イル)メタン、1,1−ビス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニ−1−イル)エタン、ビス−(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニ−1−イル)スルフィド、ビス−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニ−1−イル)スルフィド、1,1−ビス−(3,4−ジメチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス−(5−t−ブチル−3−メチル−2−ヒドロキシフェニ−1−イル)ブタン、1,3,5−トリス−[1′−(3″,5″−ジ−t−ブチル−4″−ヒドロキシフェニ−1″−イル)メチ−1′−イル]−2,4,6−トリメチルベンゾール、1,1,4−トリス−(5′−t−ブチル−4′−ヒドロキシ−2′−メチルフェニ−1′−イル)ブタン及びt−ブチルカテコール、及びアミノフェノール、例えば、p−アミノフェノール、ニトロソフェノール、例えば、p−ニトロソフェノール、p−ニトロソ−o−クレゾール、アルコキシフェノール、例えば、2−メトキシフェノール(グアヤコール、ベンズカテキンモノメチルエーテル)、2−エトキシフェノール、2−イソプロポキシフェノール、4−メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、モノ−又はジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンジルアルコール、2,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシベンジルアルコール(シリンガアルコール)、4−ヒドロキシ−3−メトキシベンズアルデヒド(バニリン)、4−ヒドロキシ−3−エトキシベンズアルデヒド(エチルバニリン)、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド(イソバニリン)、1−((4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)エタノン(アセトバニリン)、オイゲノール、ジヒドロオイゲノール、イソオイゲノール、トコフェロール、例えば、α−、β−、γ−、δ−及びε−トコフェロール、トコール、α−トコフェロールヒドロキノン、及び2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ヒドロキシベンゾフラン(2,2−ジメチル−7−ヒドロキシクマラン)。
【0136】
また、キノン及びヒドロキノンとして、例えば、ヒドロキノン又はヒドロキノンモノメチルエーテル(4−メトキシフェノール)、メチルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン4−メチルベンズカテキン、t−ブチルヒドロキノン、3−メチルベンズカテキン、ベンゾキノン、2−メチル−p−ヒドロキノン、2,3−ジメチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、t−ブチルヒドロキノン、4−エトキシフェノール、4−ブトキシフェノール、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、p−フェノキシフェノール、2−メチルヒドロキノン、テトラメチル−p−ベンゾキノン、ジエチル−1,4−シクロヘキサンジオン−2,5−ジカルボキシレート、フェニル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−3−ベンジル−p−ベンゾキノン、2−イソプロピル−5−メチル−p−ベンゾキノン(チモキノン)、2,6−ジイソプロピル−p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−3−ヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノン、エンベリン、テトラヒドロキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、2−アミノ−5−メチル−p−ベンゾキノン、2,5−ビスフェニルアミノ−1,4−ベンゾキノン、5,8−ジヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2−アニリノ−1,4−ナフトキノン、アントラキノン、N,N−ジメチルインドアニリン、N,N−ジフェニル−p−ベンゾキノンジイミン、1,4−ベンゾキノンジオキシム、セルリグノン、3,3′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチルジフェノキノン、p−ロゾール酸(オーリン)、2,6−ジ−t−ブチル−4−ベンジリデン−ベンゾキノン、2,5−ジ−t−ブチル−アミルヒドロキノンが好適である。
【0137】
また、N−オキシル(ニトロキシル−又はN−オキシル−基、少なくとも1個の>N−O・−基を有する化合物)としては、例えば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル、BASF Aktiengesellschaft のウビヌル(Uvinul)4040P、4,4′,4″−トリス−(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジン−N−オキシル)ホスフィット、3−オキソ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジン−N−オキシル、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−メトキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−トリメチルシリルオキシピペリジン、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−2−エチルヘキサノエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−セバケート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ステアレート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−ベンゾエート、1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル−(4−t−ブチル)ベンゾエート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)スクシネート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジペート、1,10−デカンジ酸−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)エステル、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルマロネート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)フタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)イソフタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)テレフタレート、ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ヘキサヒドロテレフタレート、N,N′−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジピンアミド、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カプロラクタム、N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ドデシルスクシンイミド、2,4,6−トリス−[N−ブチル−N−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル]トリアジン、N,N′−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)−N,N′−ビス−ホルミル−1,6−ジアミノヘキサン、4,4′−エチレン−ビス−(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペラジン−3−オン)が好適である。
【0138】
芳香族アミン又はフェニレンジアミンとして、例えば、N,N−ジフェニルアミン、N−ニトロソ−ジフェニルアミン、ニトロソジエチルアニリン、p−フェニレンジアミン、N,N′−ジアルキル−p−フェニレンジアミン(この際、アルキル基は同じ又は異なっていてよく、各々相互に無関係で、1〜4個の炭素原子を含み、直鎖又は分子鎖であってよい)、例えば、N,N′−ジ−イソ−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−イソ−プロピル−p−フェニレンジアミン、Firma Ciba Spezialitaetenchemieのイルガノックス5057、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N′−ジ−s−ブチル−p−フェニレンジアミン(BASF Aktiengesellschaftのケロビット(Kerobit)BPD)、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(Bayer AGのブルカノックス(Vulkanox)4010)、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、イミノジベンジル、N,N′−ジフェニルベンジジン、N−フェニルテトラアニリン、アクリドン、3−ヒドロキシジフェニルアミン、4−ヒドロキシジフェニルアミンが好適である。
【0139】
イミンとしては、例えば、メチルエチルイミン、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾキノンイミン、(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾフェノンイミン、N,N−ジメチルインドアニリン、チオニン(7−アミノ−3−イミノ−3H−フェノチアジン)、メチレンバイオレット(7−ジメチルアミノ−3−フェニチアジノン)である。
【0140】
ラジカル重合禁止剤として有効なスルホンアミドは、例えば、N−メチル−4−トルオールスルホンアミド、N−t−ブチル−4−トルオールスルホンアミド、N−t−ブチル−N−オキシル−4−トルオールスルホンアミド、N,N′−ビス(4−スルファニルアミド)ピペリジン、3−{[5−(4−アミノベンゾイル)−2,4−ジメチルベンゾールスルホニル]エチルアミノ}−4−メチルベンゾールスルホン酸である。
【0141】
ラジカル重合禁止剤として有効なオキシムとしては、例えば、アルドキシム、ケトキシム又はアミドキシム、有利にジエチルケトキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、シクロヘキサノンオキシム、ベンズアルデヒドキシム、ベンジルジオキシム、ジメチルグリオキシム、2−ピリジンアルドキシム、サリチルアルドキシム、フェニル−2−ピリジルケトキシム、1,4−ベンゾキノンジオキシム、2,3−ブタンジオンジオキシム、2,3−ブタンジオンモノオキシム、9−フルオレノンオキシム、4−t−ブチル−シクロヘキサノンオキシム、N−エトキシ−アセチミド酸エチルエステル、2,4−ジメチル−3−ペンタノンオキシム、シクロドデカノンオキシム、4−ヘプタノンオキシム及びジ−2−フラニルエタンジオンジオイキシム又は他の脂肪族又は芳香族オキシム又はアルキル転移剤、例えば、アルキルハロゲニド、−トリフレート、−スルホネート、−トシレート、−カルボネート、−スルフェート、−ホスフェート等とのその反応生成物であってよい。
【0142】
ヒドロキシルアミンは、例えば、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン及びPCT/EP/03/03139の国際特許出願に記載されている化合物を挙げることができる。
【0143】
尿素誘導体として、例えば、尿素又はチオ尿素が好適である。
【0144】
燐含有化合物は、例えば、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィット、次亜燐酸、トリノニルホスフィット、トリエチルホスフィット又はジフェニルイソプロピルホスフィンである。
【0145】
硫黄含有化合物として、例えば、ジフェニルスルフィド、フェノチアジン及び硫黄含有天然物質、例えば、システインが好適である。
【0146】
テトラアザアンヌレン(TAA)をベースとする錯化剤は、例えば、Chem.Soc.Rev.1998,27,105−115に挙げられている、例えば、ジベンゾテトラアザ[14]環及びポルフィリンである。
【0147】
その他にも、炭酸、塩化、ジチオカルバミン酸、硫酸、サリチル酸、酢酸、ステアリン酸、エチルヘキサン酸等の各金属塩(銅、マンガン、セリウム、ニッケル、クロム等)を挙げることができる。
【0148】
この中でも好ましい重合禁止剤としては、画像に影響を与えず、光硬化感度とインク保存安定性の両立を図る観点から、フェノール性化合物、N−オキシル化合物を好ましく用いられる。
【0149】
ラジカル重合禁止剤の添加量は、1.0〜5000μg/gインクであることが好ましく、10〜2000μg/gインクがより好ましい。1.0μg/gインク以上であれば、所望の保存安定性が得られ、インクの増粘やインクジェットノズルに対する撥液性を得ることができ、吐出安定性の観点で好ましい。また、5000μg/gインク以下であれば、重合開始剤の酸発生効率を損なうことがなく、高い硬化感度を維持することができる。
【0150】
《その他の添加剤》
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物あるいはインクジェットインクでは、上記説明した以外に、必要に応じて、出射安定性、プリントヘッドやインク包装容器適合性、保存安定性、画像保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、界面活性剤、滑剤、充填剤、消泡剤、ゲル化剤、増粘剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防ばい剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができる。
【0151】
更に、必要に応じてエステル系溶剤、エーテル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、含窒素系有機溶剤など少量の溶剤を添加することもできる。
【0152】
具体例としては、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、テトラエチレンスルホキシド、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、メチル−イソプロピルスルホン、メチル−ヒドロキシエチルスルホン、スルホラン、或いは、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、β−ラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、イソホロン、シクロヘキサノン、炭酸プロピレン、アニソール、メチルエチルケトン、アセトン、乳酸エチル、乳酸ブチル、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、二塩基酸エステル、メトキシブチルアセテート、等、が挙げられる。これらをインク中に1.5〜30%、好ましくは、1.5〜15%添加するとポリ塩化ビニル等の樹脂記録媒体に対する密着性が向上する。
【0153】
別の具体例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等が挙げられる。
【0154】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物あるいはインクジェットインクに使用することができる界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤、シリコーン系やフッ素系の界面活性剤が挙げられ、特にシリコーン系もしくはフッ素系の界面活性剤が好ましい。
【0155】
シリコーン系もしくはフッ素系の界面活性剤を添加することで、塩化ビニルシートをはじめ種々の疎水性樹脂からなる記録媒体や、印刷本紙などの吸収が遅い記録媒体に対して、インク混じりをより抑えることができ、高画質な印字画像を得られる。該界面活性剤は、前記低表面張力の水溶性有機溶剤と併用することが特に好ましい。
【0156】
シリコーン系の界面活性剤としては、好ましくはポリエーテル変性ポリシロキサン化合物があり、例えば、信越化学工業製のKF−351A、KF−642、X−22−4272やビッグケミー製のBYK−307、BYK345、BYK347、BYK348、東芝シリコーン製のTSF4452などが挙げられる。
【0157】
フッ素系の界面活性剤は、通常の界面活性剤の疎水性基の炭素に結合した水素の代わりに、その一部または全部をフッ素で置換したものを意味する。この内、分子内にパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
【0158】
フッ素系の界面活性剤の内、ある種のものはDIC社からメガファック(Megafac)Fなる商品名で、旭硝子社からサーフロン(Surflon)なる商品名で、ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング・カンパニー社からフルオラッド(Fluorad)FCなる商品名で、インペリアル・ケミカル・インダストリー社からモンフロール(Monflor)なる商品名で、イー・アイ・デュポン・ネメラス・アンド・カンパニー社からゾニルス(Zonyls)なる商品名で、またファルベベルケ・ヘキスト社からリコベット(Licowet)VPFなる商品名で、またネオス社からフタージェントなる商品名それぞれ市販されている。
【0159】
界面活性剤の添加量としては、インク全質量に対して、0.1質量%以上、2.0質量%未満が好ましい。
【0160】
インクの表面張力としては、15mN/m以上であれば、インクジェットヘッドのノズル周りが濡れて吐出能力が低下することがなく、また35mN/m未満であれば表面エネルギーが通常の紙よりも低いコート紙や樹脂製の記録媒体によく濡れて白ぬけが発生することがないため好ましい。
【0161】
《インク物性》
本発明のインクジェットインクの物性は、通常の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクと同様の物性値を有することが好ましい。即ち、粘度は25℃において2〜50mPa・sで、シェアレート依存性ができるだけ小さく、表面張力は25℃において前述のように15〜35mN/mの範囲にあること、着色剤として顔料を用いる場合には、顔料粒子以外には平均粒径が1.0μmを超えるようなゲル状物質が無いこと、電導度は10μS/cm以下の電導度とし、ヘッド内部での電気的な腐食のないインクとすることが好ましい。コンティニュアスタイプにおいては、電解質による電導度の調整が必要であり、この場合には0.5mS/cm以上の電導度に調整する必要がある。
【0162】
加えて、本発明のインクジェットインクの物性として、更に好ましい形態は、毎分5℃の降下速度で25℃から−25℃の範囲でインクのDSC測定を行ったとき、単位質量あたりの発熱量が10mJ/mg以上の発熱ピークを示さないことである。本発明の構成に従って素材の選定を行うことにより、DSC測定において一定量以上の発熱を抑えることができる。このような構成とすることにより、インクを低温で保存した場合においてもゲルの発生や、析出物の発生を抑えることができる。
【0163】
《インクジェットインクの調製方法》
本発明のインクジェットインクは、活性エネルギー線硬化型化合物である重合性化合物、光重合開始剤、着色剤である顔料分散剤と、着色剤として顔料を用いる場合には、顔料と共にサンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することにより製造される。予め顔料高濃度の濃縮液を調製しておき、重合性化合物で希釈することが好ましい。通常の分散機による分散においても充分な分散が可能であり、このため、過剰な分散エネルギーが掛からず、多大な分散時間を必要としないので、インク成分の分散時の変質を招き難く、安定性に優れたインクが調製できる。調製されたインクは、孔径3μm以下、更には1μm以下のフィルターで濾過することが好ましい。
【0164】
《記録媒体》
本発明のインクジェット記録方法に用いる記録媒体としては、従来、各種の用途で使用されている広汎な合成樹脂が全て対象となり、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等が挙げられ、これらの合成樹脂基材の厚みや形状は何ら限定されない。この他にも金属類、ガラス、印刷用紙なども使用できる。
【0165】
本発明のインクジェット記録方法で用いる記録媒体の一つであるポリ塩化ビニルの具体例としては、SOL−371G、SOL−373M、SOL−4701(以上、ビッグテクノス株式会社製)、光沢塩ビ(株式会社システムグラフィ社製)、KSM−VS、KSM−VST、KSM−VT(以上、株式会社きもと製)、J−CAL−HGX、J−CAL−YHG、J−CAL−WWWG(以上、株式会社共ショウ大阪製)、BUS MARK V400 F vinyl、LITEcal V−600F vinyl(以上、Flexcon社製)、FR2(Hanwha社製)LLBAU13713、LLSP20133(以上、桜井株式会社製)、P−370B、P−400M(以上、カンボウプラス株式会社製)、S02P、S12P、S13P、S14P、S22P、S24P、S34P、S27P(以上、Grafityp社製)、P−223RW、P−224RW、P−249ZW、P−284ZC(以上、リンテック株式会社製)、LKG−19、LPA−70、LPE−248、LPM−45、LTG−11、LTG−21(以上、株式会社新星社製)、MPI3023(株式会社トーヨーコーポレーション社製)、ナポレオングロス 光沢塩ビ(株式会社二樹エレクトロニクス社製)、JV−610、Y−114(以上、アイケーシー株式会社製)、NIJ−CAPVC、NIJ−SPVCGT(以上、ニチエ株式会社製)、3101/H12/P4、3104/H12/P4、3104/H12/P4S、9800/H12/P4、3100/H12/R2、3101/H12/R2、3104/H12/R2、1445/H14/P3、1438/One Way Vision(以上、Inetrcoat社製)、JT5129PM、JT5728P、JT5822P、JT5829P、JT5829R、JT5829PM、JT5829RM、JT5929PM(以上、Mactac社製)、MPI1005、MPI1900、MPI2000、MPI2001、MPI2002、MPI3000、MPI3021、MPI3500、MPI3501(以上、Avery社製)、AM−101G、AM−501G(以上、銀一株式会社製)、FR2(ハンファ・ジャパン株式会社製)、AY−15P、AY−60P、AY−80P、DBSP137GGH、DBSP137GGL(以上、株式会社インサイト社製)、SJT−V200F、SJT−V400F−1(以上、平岡織染株式会社製)、SPS−98、SPSM−98、SPSH−98、SVGL−137、SVGS−137、MD3−200、MD3−301M、MD5−100、MD5−101M、MD5−105(以上、Metamark社製)、640M、641G、641M、3105M、3105SG、3162G、3164G、3164M、3164XG、3164XM、3165G、3165SG、3165M、3169M、3451SG、3551G、3551M、3631、3641M、3651G、3651M、3651SG、3951G、3641M(以上、Orafol社製)、SVTL−HQ130(株式会社ラミーコーポレーション製)、SP300 GWF、SPCLEARAD vinyl(以上、Catalina社製)、RM−SJR(菱洋商事株式会社製)、Hi Lucky、New Lucky PVC(以上、LG社製)、SIY−110、SIY−310、SIY−320(以上、積水化学工業株式会社製)、PRINT MI Frontlit、PRINT XL Light weight banner(以上、Endutex社製)、RIJET 100、RIJET 145、RIJET165(以上、Ritrama社製)、NM−SG、NM−SM(日栄化工株式会社製)、LTO3GS(株式会社ルキオ社製)、イージープリント80、パフォーマンスプリント80(以上、ジェットグラフ株式会社製)、DSE 550、DSB 550、DSE 800G、DSE 802/137、V250WG、V300WG、V350WG(以上、Hexis社製)、Digital White 6005PE、6010PE(以上、Multifix社製)等が挙げられる。
【0166】
また、可塑剤を含有しない樹脂基材又は非吸収性の無機基材を構成要素とする記録媒体としては、下記の各種基材を構成要素として、1種類の基材単独で、又は複数の種類の基材を組み合わせて、使用をすることができる。本発明に用いられる可塑剤を含有しない樹脂基材としては、例えば、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、可塑剤を含有しない硬質ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂等が挙げられる。
【0167】
これらの樹脂は可塑剤を含有していないことが特徴であるが、その他の厚み、形状、色、軟化温度、硬さ等の諸特性について特に制限はない。
【0168】
本発明に用いられる記録媒体として好ましくは、ABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、POM樹脂、PA樹脂、PI樹脂、可塑剤を含有しない硬質PVC樹脂、アクリル樹脂、PE樹脂、PP樹脂である。さらに好ましくはABS樹脂、PET樹脂、PC樹脂、PA樹脂、可塑剤を含有しない硬質PVC樹脂、アクリル樹脂である。
【0169】
また、本発明に用いられる非吸収性の無機基材としては、例えば、ガラス板、鉄やアルミニウムなどの金属板、セラミック板等が挙げられる。これらの無機基材は表面にインク吸収性の層を有していないことが特徴である。これらの非吸収性の無機基材はその他の厚み、形状、色、軟化温度、硬さ等の諸特性について特に制限はない。
【0170】
本発明のインクジェットインクは、表面エネルギーが25mN/m以上、50mN/m未満の記録媒体において、特に本発明の効果を良好に発揮することができる。記録媒体の表面エネルギーの例としては、例えば、IJ180CV2(3M社製、ポリ塩化ビニル、表面エネルギー=38.0mN/m)、MD5(Metamark社製、ポリ塩化ビニル、表面エネルギー=36.6mN/m)、ORAJET(ORACAL社製、ポリ塩化ビニル、表面エネルギー=33.1mN/m)、OPAQUE MATT FILM(Oce社製、ポリエチレンテレフタレート、表面エネルギー=35.4mN/m)、特菱アート(三菱製紙社製、アート紙、表面エネルギー=37.6mN/m)、HANITA(ハニタコーティング社製、ポリエチレンテレフタレート、表面エネルギー=35.4mN/m)、ルミラー38−T60(東レ社製、未処理ポリエチレンテレフタレート、表面エネルギー=36.9mN/m)、サンロイドユニ G400(住友ベークライト社製、ポリ塩化ビニル、表面エネルギー=34.5mN/m)、スミペックス 068(住友化学社製、アクリルキャスト、表面エネルギー=39.5mN/m)、サンロイドペットエース EPG400(住友ベークライト社製、非結晶性ポリエチレンテレフタレート、表面エネルギー=35.7mN/m)、リンテック社グロス(キャストコート紙、表面エネルギー27mN/m)、マルウ接着社製白PET#50溶剤強粘PGS(ポリエチレンテレフタレート、表面エネルギー50mN/m)等を挙げることができる。
【0171】
なお、本発明に係る記録媒体の表面エネルギーは、表面張力が既知の2種類以上の液体を用いて接触角を測定することにより算出できる。
【0172】
《インジェット記録方法》
本発明のインクジェットインクを吐出して画像形成を行う際に使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
【0173】
本発明のインクジェット記録方法は、上記本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクをインクジェットノズルより記録媒体上に吐出して、次いで紫外線などの活性エネルギー線を照射してインクを硬化させる記録方法である。
【0174】
(インク着弾後の活性エネルギー線照射条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性エネルギー線の照射条件として、インク着弾後0.001秒〜1.0秒の間に活性エネルギー線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001秒〜0.5秒である。
【0175】
高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いこと好ましい。
【0176】
活性エネルギー線の照射方法は、特に限定されず、例えば、下記の方法で行うことができる。
【0177】
特開昭60−132767号に記載のヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査し、照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われ、さらに、駆動を伴わない別光源によって硬化が完了する方法、あるいは米国特許第6,145,979号に記載の光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外線を照射する方法を挙げることができる。
【0178】
本発明のインクジェット記録方法においては、これらの何れの照射方法も用いることができる。
【0179】
また、活性エネルギー線の照射を2段階に分け、まずインク着弾後0.001〜2.0秒の間に前述の方法で活性エネルギー線を照射し、かつ、全印字終了後、さらに活性エネルギー線を照射する方法も好ましい態様の1つである。
【0180】
活性エネルギー線の照射を2段階に分けることで、よりインク硬化の際に起こる記録材料の収縮を抑えることが可能となる。
【0181】
(インク着弾後の総インク膜厚)
本発明のインクジェット記録方法では、記録媒体上にインクが着弾し、活性エネルギー線を照射して硬化した後の総インク膜厚が2〜20μmであることが、記録媒体のカール、皺、記録媒体の質感変化、などの面から好ましい。
【0182】
尚、ここでいう「総インク膜厚」とは、記録媒体に描画されたインクの膜厚の最大値を意味し、単色でも、それ以外の2色重ね(2次色)、3色重ね、4色重ね(白インクベース)のインクジェット記録方式で記録を行った場合でも総インク膜厚の意味するところは同様である。
【0183】
(インクの加熱および吐出条件)
本発明のインクジェット記録方法においては、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを加熱した状態で、活性エネルギー線を照射することが、吐出安定性の面から、好ましい。
【0184】
加熱する温度としては、35〜100℃が好ましく、35〜80℃に保った状態で、活性エネルギー線を照射すること、吐出安定性の点でさらに好ましい。
【0185】
インクジェットインクを所定の温度に加熱、保温する方法として特に制限はないが、例えば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプ、ヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系や、フィルター付き配管、ピエゾヘッド等を断熱して、パネルヒーター、リボンヒーター、保温水等により所定の温度に加熱する方法がある。
【0186】
インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃が好ましく、さらに設定温度±2℃が好ましく、特に設定温度±1℃が、吐出安定性の面から好ましい。
【0187】
各ノズルより吐出する液滴量としては、記録速度、画質の面から2〜20plであることが好ましい。
【0188】
次いで、本発明のインクジェット記録方法に用いることができるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置という)について説明する。
【0189】
以下、記録装置について、図面を適宜参照しながら説明する。
【0190】
図1は記録装置の要部の構成を示す正面図である。
【0191】
記録装置1は、ヘッドキャリッジ2、記録ヘッド3、照射手段4、プラテン部5等を備えて構成される。
【0192】
この記録装置1は、記録媒体Pの下にプラテン部5が設置されている。
【0193】
プラテン部5は、紫外線を吸収する機能を有しており、記録媒体Pを通過してきた余分な紫外線を吸収する。
【0194】
その結果、高精細な画像を非常に安定に再現できる。
【0195】
記録媒体Pは、ガイド部材6に案内され、搬送手段(図示せず)の作動により、図1における手前から奥の方向に移動する。ヘッド走査手段(図示せず)は、ヘッドキャリッジ2を図1におけるY方向に往復移動させることにより、ヘッドキャリッジ2に保持された記録ヘッド3の走査を行う。
【0196】
ヘッドキャリッジ2は記録媒体Pの上側に設置され、記録媒体P上の画像印刷に用いる色の数に応じて後述する記録ヘッド3を複数個、吐出口を下側に配置して収納する。
【0197】
ヘッドキャリッジ2は、図1におけるY方向に往復自在な形態で記録装置1本体に対して設置されており、ヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に往復移動する。
【0198】
尚、図1ではヘッドキャリッジ2がホワイト(W)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、ライトイエロー(Ly)、ライトマゼンタ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ライトブラック(Lk)、ホワイト(W)の記録ヘッド3を収納するものとして描図を行っているが、実施の際にはヘッドキャリッジ2に収納される記録ヘッド3の色数は適宜決められるものである。
【0199】
記録ヘッド3は、インク供給手段(図示せず)により供給された活性エネルギー線硬化型インクジェットインク(例えばUV硬化インク)を、内部に複数個備えられた吐出手段(図示せず)の作動により、吐出口から記録媒体Pに向けて吐出する。
【0200】
記録ヘッド3は記録媒体Pの一端からヘッド走査手段の駆動により、図1におけるY方向に記録媒体Pの他端まで移動するという走査の間に、記録媒体Pにおける一定の領域(着弾可能領域)に対してUVインクをインク滴として吐出し、該着弾可能領域にインク滴を着弾させる。
【0201】
上記走査を適宜回数行い、1領域の着弾可能領域に向けて活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの吐出を行った後、搬送手段で記録媒体Pを図1における手前から奥方向に適宜移動させ、再びヘッド走査手段による走査を行いながら、記録ヘッド3により上記着弾可能領域に対し、図1における奥方向に隣接した次の着弾可能領域に対してUVインクの吐出を行う。
【0202】
上述の操作を繰り返し、ヘッド走査手段および搬送手段と連動して記録ヘッド3か活性エネルギー線硬化型インクジェットインクらを吐出することにより、記録媒体P上に活性エネルギー線硬化型インクジェットインク滴の集合体からなる画像が形成される。
【0203】
照射手段4は、例えば特定の波長領域の紫外線を安定した露光エネルギーで発光する紫外線ランプおよび特定の波長の紫外線を透過するフィルターを備えて構成される。
【0204】
ここで、紫外線ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、エキシマーレーザー、紫外線レーザ、冷陰極管、熱陰極管、ブラックライト、LED(light emitting diode)等が適用可能であり、帯状のメタルハライドランプ、冷陰極管、熱陰極管、水銀ランプもしくはブラックライトが好ましい。
【0205】
特に波長254nmの紫外線を発光する低圧水銀ランプ、熱陰極管、冷陰極管および殺菌灯が滲み防止、ドット径制御を効率よく行うことができ好ましい。
【0206】
ブラックライトを照射手段4の放射線源に用いることで、UVインクを硬化するための照射手段4を安価に作製することができる。
【0207】
照射手段4は、記録ヘッド3がヘッド走査手段の駆動による1回の走査によってUVインクを吐出する着弾可能領域のうち、記録装置(UVインクジェットプリンタ)1で設定できる最大のものとほぼ同じ形状か、着弾可能領域よりも大きな形状を有する。
【0208】
照射手段4はヘッドキャリッジ2の両脇に、記録媒体Pに対してほぼ平行に、固定して設置される。
【0209】
前述したようにインク吐出部の照度を調整する手段としては、記録ヘッド3全体を遮光することはもちろんであるが、加えて照射手段4と記録媒体Pの距離h1より、記録ヘッド3のインク吐出部31と記録媒体Pとの距離h2を大きくしたり(h1<h2)、記録ヘッド3と照射手段4との距離dを離したり(dを大きく)することが有効である。
【0210】
又、記録ヘッド3と照射手段4の間を蛇腹構造7にするとさらに好ましい。
【0211】
ここで、照射手段4で照射される紫外線の波長は、照射手段4に備えられた紫外線ランプまたはフィルターを交換することで適宜変更することができる。
【0212】
図2は、インクジェット記録装置の要部の構成の他の一例を示す上面図である。
【0213】
図2で示したインクジェット記録装置は、ラインヘッド方式と呼ばれており、ヘッドキャリッジ2に、各色のインクジェット記録ヘッド3を、記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、複数個、固定配置されている。
【0214】
一方、ヘッドキャリッジ2の下流側、すなわち、記録媒体Pが搬送される方向のヘッドキャリッジ2の後部には、同じく記録媒体Pの全幅をカバーするようにして、インク印字面全域をカバーするように配置されている照射手段4が設けられている。
【0215】
照明手段4に用いられる紫外線ランプは、図1に記載したのと同様のものを用いることができる。
【0216】
このラインヘッド方式では、ヘッドキャリッジ2および照射手段4は固定され、記録媒体Pのみが、搬送されて、インク出射および硬化を行って画像形成を行う。
【実施例】
【0217】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0218】
(実施例1)(酸価/アミン価の影響)
〈顔料分散体、活性エネルギー線硬化型インクジェットインク4の調製〉
シアン顔料ピグメントブルー15.3(表面処理、精製品)2.5g、顔料分散剤1.0g(1.0質量部のアジスパーPB822、味の素ファインテック株式会社製 酸価18.5mgKOH/g、アミン価15.9mgKOH/g)及びトリエチレングリコールジビニルエーテル26.8g(0.132mol、2価なので、0.264当量)を共にポリプロピレンの密閉容器に入れて、ペイントシェーカーで分散を6時間行い、顔料分散体を得た後、マレイミド化合物とトリエチレングリコールジビニルエーテルの官能基モル比が5対5になるようにマレイミド化合物(M−8)を63.2g(0.132mol 2価なので、0.264当量)加えた。
【0219】
なお実施例に用いたマレイミドは特願2010−136977号公報および特願2010−136978号公報を参考にして合成した。
【0220】
さらに光重合開始剤として、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤LucirinTPO(BASF製)4g、イソプロピルチオキサントン2.5g、重合禁止剤としてIRGASTAB UV−10(BASF製)0.15gを加え溶解させた後に、酸価、アミン価を所定の値になるようにラウリル酸0.5gとN,N−ジメチルパルミチルアミン0.5gを加え、本発明のインクジェットインク4を作成した。
【0221】
このインクでは、酸価1.59mgKOH/g、アミン価1.20mgKOH/gである。
【0222】
〈インクジェットインク1〜3、5〜13の調製〉
以下、同様に本発明のインク1〜3、5〜13を調製した。
【0223】
インクジェットインク4の調製において、弱酸、弱塩基のみを表1のように変えて、本発明のインクジェットインク3、5〜13、及び比較のインクジェットインク1、2を調製した。
【0224】
酸価とアミン価は、それぞれJIS K2501−2003に記載された方法と、ASTM D2074の全アミン価の測定に基づき測定した。
【0225】
〔評価〕
上記の様に作成したインクジェットインク1〜13のそれぞれに対して、下記のように、光硬化感度、光硬化感度変動、出射安定性を評価した。
【0226】
(光硬化感度)
ピエゾヘッドKM512SHを搭載したシリアル方式のUV硬化型プリンターを気温25℃湿度50%の部屋に置き、画像解像度720×720dpiで、塩ビフィルム上にベタ画像を作製後、UV−LED「LIGHTINGCURE LC−L2」(浜松ホトニクス社製 UV波長385nm)の出力を調整し、15、30、60、120mJ/cmの光量になるように調整し、UV照射した。UV照射されたベタ画像から、触診により硬化の有無を調べ、下記5段階評価を行った。基準で評価した。
【0227】
◎:光量15mJ/cmで硬化していた
○:光量15mJ/cmで硬化しなかったが、30mJ/cmで硬化した
△:光量30mJ/cmで硬化しなかったが、60mJ/cmで硬化した
×:光量60mJ/cmで硬化しなかった。
【0228】
〈光硬化感度変動〉
各インクジェットインク1000gを2000mlビーカーに入れ、光遮断かつ密閉しない状態で50℃ 30日保存した.保存前後のインクを用いて、上記光硬化感度の測定方法と同じ方法で測定を行った。ただし、光量120mJ/cmで硬化しない試料に関しては、硬化するまで(最大光量1000mJ/cm)照射光量を増加させた。保存の有無による変動を、下記の基準に従って評価行い、光硬化感度変動を評価した。
【0229】
◎:保存前後での、硬化に必要な光量の差が、保存前のインクの硬化に必要な光量は、認められなかった
○:保存前後での、硬化に必要な光量の差が、保存前のインクの硬化に必要な光量に対し2倍の差
△:保存前後での、硬化に必要な光量の差が、保存前のインクの硬化に必要な光量に対し4倍差
×:保存前後での、硬化に必要な光量の差が、保存前のインクの硬化に必要な光量に対し8倍以上の差。
【0230】
〈出射安定性〉
前記の保存性評価の保存前、保存後の各インクをコニカミノルタIJ社製のピエゾヘッドKM512MHを用いて、1ドットあたりの液滴量14plで、720dpi×720dpiのベタ画像をポリエチレンテレフタレートフィルム上に印字し、出力2W/cmの385nmのLEDにより320mJ/cmの光量を照射して、硬化膜を形成した。このときの、保存前、保存後のインクは、インクジェットの駆動電圧を同じ条件にて出射を行い、印字画像の状態の変化を観察して射出安定性を評価した。
【0231】
○:保存前のインクに、保存後のインクの画像の色抜け、非印字部分との境界部分(エッジ部分)の画像の乱れは、殆ど見られない
△:保存前のインクに比べ、保存後のインクの画像の色抜け、非印字部分との境界部分(エッジ部分)の画像の乱れがやや悪化するが許容できるレベル
×:保存前のインクに比べ、保存後のインクの画像の色抜け、非印字部分との境界部分(エッジ部分)の画像の乱れが悪化し、許容できない。
【0232】
得られた結果を、主なインクジェットインクの構成と特性と共に表1に示す。
【0233】
モノマーの電荷は前述した計算方法で求めた。電子密度の低いモノマーの場合には、電子吸引性基が結合した重合性不飽和結合上の二つの炭素のうち電荷の値の高い方の炭素を示し、電子密度が高いモノマーの場合には、電子供与性基が結合した重合性不飽和結合上の二つの炭素のうち電荷の値の低い方の炭素を示した。以下の表中に示した電荷の差はドナーモノマーとアクセプターモノマーの2種の重合性化合物が有するそれぞれの不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の差の最大値を示している。
【0234】
また表中ドナー/アセプター比はドナーモノマーとアクセプターモノマーの当量比を表している。
【0235】
なお以降の実施例で用いた略号は以下の通りである。
【0236】
TEGDVE:トリエチレングリコールジビニルエーテル(電荷:−0.54)
CHDMDVE:シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル(電荷:−0.53)
HBVE:ヒドロキシブチルビニルエーテル(電荷:−0.53)
NVC:N−ビニル−ε−カプロラクタム(電荷:−0.50)
HDMA:1,6−ヘキサンジメタクリレート(電荷:−0.31)
HDA:1,6−ヘキサンジアクリレート(電荷:−0.33)
M−2:例示化合物M−2(電荷:−0.27)
M−3:例示化合物M−3(電荷:−0.27)
M−8:例示化合物M−8(電荷:−0.27)
M−35:例示化合物M−35(電荷:−0.27)
FDB:フマル酸ジブチル(電荷:−0.27)
DEGBFM:ジエチレングリコールビス(フマル酸メチル)(電荷:−0.31)
DMPA:N,N−ジメチルパルミチルアミン
PDMAAB:パルミチルジメチルアミノ酢酸ベタイン
【0237】
【表1】

【0238】
表1より、本発明試料のインクジェットインク3〜13は比較のインクジェットインク1、2に比べて光硬化感度が高く、長期に保存しても光硬化感度の変動が少なく、かつ射出安定性も良好であることが分かる。
【0239】
(実施例2)<酸価/アミン価を有する高分子分散剤を用いた例>
〈合成例:樹脂A〉酸価を有する高分子の合成
フェノキシアクリレート30g、ブチルメタクリレート40g、メチルアクリレート24g、メタクリル酸6gの混合物に酢酸エチル300gを加え、アゾイソブチロニトリル0.5gを加え、75℃で6時間反応させた。反応後、濃縮し、酸価40mgKOH/gの樹脂Aを得た。
【0240】
〈合成例:樹脂C〉酸価を有する高分子の合成
フェノキシアクリレート 30g、ブチルメタクリレート 40g、メチルアクリレート18g、メタクリル酸 12gの混合物に酢酸エチル 300gを加え、アゾイソブチロニトリル 0.5gを加え、75℃で6時間反応させた。反応後、濃縮し、酸価80mgKOH/gの樹脂Cを得た。
【0241】
〈合成例:樹脂B〉アミン価を有する高分子の合成
フェノキシアクリレート 30g、ブチルメタクリレート30g、メチルアクリレート30g、ジメチルアミノエチルアクリレート10gの混合物に酢酸エチル300gを加え、アゾイソブチロニトリル0.5gを加え、75℃で6時間反応させた。反応後、濃縮し、アミン価40mgKOH/gの樹脂Bを得た。
【0242】
〈合成例:樹脂D〉アミン価を有する高分子の合成
フェノキシアクリレート 30g、ブチルメタクリレート 20g、メチルアクリレート30g、ジメチルアミノエチルアクリレート 20gの混合物に酢酸エチル 300gを加え、アゾイソブチロニトリル 0.5gを加え、75℃で6時間反応させた。反応後、濃縮し、アミン価80mgKOH/gの樹脂Dを得た。
【0243】
〈インクジェットインク24の調製〉
実施例1のインクジェットインク4の調製例で、ドナーモノマーの量及びアクセプターモノマーをM−8からM−2 60.8gに変え、更にラウリル酸とN,N−ジメチルパルミチルアミンの代わりに、樹脂Aを0.4g、樹脂Bを1.2gを加えたほかは同様に行い、酸価0.35mgKOH/g、アミン価0.64mgKOH/gのインクジェットインク24を調製した。
【0244】
〈インクジェットインク21、22、23、25〜27の調製〉
実施例1のインクジェットインク4の調製において、ドナーモノマーとアクセプターモノマー、弱酸と弱塩基のみを以下の表2に記載のように変化させて、インクジェットインク4と同様にして、比較のインクジェットインク21、22及び本発明のインクジェットインク23、25〜27を調製した。
【0245】
実施例1と同様に実施例2で調製したインクジェットインク21〜27を実施例1と同様にして光硬化感度、光硬化感度変動、出射安定性を評価した結果を表2に示す。
【0246】
【表2】

【0247】
表2より、本発明インクジェットインク23〜27は比較のインクジェットインク21,22に比べて、酸価/アミン価を有する高分子分散剤を用いた場合でも、光硬化感度が高く、長期に保存しても光硬化感度の変動が少なく、かつ射出安定性も良好であることが分かる。
【0248】
(実施例3)〈モノマーを変化した例、電荷の差〉
〈インクジェットインク31の調製〉
インクジェットインク4の調製で用いたトリエチレングリコールジビニルエーテルを37.06g(0.173mol 2価なので0.346当量)、ビニルエーテルとマレイミド化合物との官能基モル比が60対40になるようにマレイミド化合物(M−3)を52.94g(0.116mol 2価なので、0.232当量)、及び弱酸と弱塩基を表3に示すように樹脂Cを0.4g、樹脂Dを0.5gに変えたほかはインクジェットインク4と同様に行い、インクジェットインク31を得た。
【0249】
〈インクジェットインク32〜36の調製〉
上記インクジェットインク31の調製において、ドナーモノマー、アクセプターモノマー、弱酸、弱塩基を表3に示すように変えて、本発明のインクジェットインク32、33及び比較のインクジェットインク34〜36を調製した。
【0250】
インクジェットインク31〜36を用い、実施例1と同様にして光硬化感度、光硬化感度変動、出射安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0251】
【表3】

【0252】
表3より、本発明インクジェットインク31〜33は比較のインクジェットインク34〜36に比べて、光硬化感度が高く、長期に保存しても光硬化感度の変動が少なく、射出安定性も良好であることが分かる。なお、比較のインクジェットインク34〜36は光硬化しなかったので、変動は評価できなかった。
【0253】
(実施例4)<ドナーモノマーとアセプターモノマー比を変えた例>
〈インクジェットインク43の調製〉
トリエチレングリコールジビニルエーテルを44.8g(0.222mol 2価なので0.444当量)、およびマレイミド化合物(M−8)45.2g(0.095mol 2価なので、0.19当量)、ドナーモノマーとアセプターモノマーの当量比70/30とし、弱酸、弱塩基を表4に記載のように、樹脂C、樹脂Bに代えた他は、インクジェットインク4と同様にして、インクジェットインク43を作製した。
【0254】
〈インクジェットインク41、42、44〜48の調製〉
インクジェットインク43の調製において、ドナーモノマー、アクセプターモノマー、弱酸、弱塩基、ベタインを表4に示すように代えて、本発明のインクジェットインク44〜48及び比較のインクジェットインク41、42を調製した。
【0255】
インクジェットインク41〜48を用い、実施例1と同様にして光硬化感度、光硬化感度変動、出射安定性を評価した。結果を表4に示す。
【0256】
【表4】

【0257】
表4より、本発明インクジェットインク43〜48は比較のインクジェットインク41、42に比べて、光硬化感度が高く、長期に保存しても光硬化感度の変動が少なく、射出安定性も良好であることが分かる。なお、比較のインクジェットインク41,42は光硬化しなかったので、変動は評価できなかった。
【符号の説明】
【0258】
1 記録装置
2 ヘッドキャリッジ
3 記録ヘッド
31 インク吐出口
4 照射手段
5 プラテン部
6 ガイド部材
7 蛇腹構造
8 照射光源
9 記録材料搬送方向
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ重合性不飽和結合を有する少なくとも2種の重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインクにおいて、該少なくとも2種の重合性化合物が有するそれぞれの重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の差の最大値が、0.24以上、0.40以下であり、さらに該インクが、0.2mgKOH/g以上の酸価、および0.2mgKOH/g以上のアミン価を有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの酸価が0.2mgKOH/g〜10mgKOH/gで、かつアミン価が0.2mgKOH/g〜10mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化型インクジェットインクの酸価とアミン価の比が、20:80〜80:20であることを特徴とする請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【請求項4】
前記それぞれ重合性不飽和結合を有する少なくとも2種の重合性化合物のうち、前記重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の最大の重合性不飽和結合を有する重合性化合物が、下記一般式(1)または一般式(2)で示される不飽和二重結合部分を少なくとも1つ以上有する重合性化合物であって、前記重合性不飽和結合を構成する炭素原子の電荷の最小の重合性不飽和結合を有する重合性化合物が、下記一般式(3)で示される不飽和二重結合部分を少なくとも1つ以上含有する重合性化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【化1】

【化2】

(式中、EWG、EWGは、それぞれ電子吸引性基を表し、EWGとEWGの一部が結合して環状構造を有していてもよい。また、EWG及び、またはEWGの一部が連結基を介し、2つ以上の不飽和二重結合部分を有する多官能重合性化合物を形成してもよい。Xは、−O−、−NR−、−S−、−SO−のいずれかを表し、Yは脂肪族基または芳香族基を示す、R、R、Rは、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基を表す。又Rの一部とXが結合して環状構造を形成してもよい。Yは脂肪族基または芳香族基を示し、Yが連結基構造部分を有し、2つ以上の不飽和二重結合部分を有する多官能重合性化合物を形成してもよい。)
【請求項5】
前記一般式(1)または一般式(2)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、下記一般式(A−1)〜(A−14)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であり、かつ一般式(3)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、下記一般式(D−1)〜(D−9)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であることを特徴とする請求項4に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【化3】

【化4】

(式中、R〜Rは、各々独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基を表し、2つ以上の不飽和二重結合部分を有する多官能重合性化合物を形成するために連結基とすることができる。Xはハロゲン基、Zは、酸素、窒素、硫黄を示す。Qは環を形成する炭素数が2〜6のアルキレン基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(1)または一般式(2)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、前記一般式(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−6)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であり、かつ一般式(3)で示される不飽和二重結合部分を有する重合性化合物が、前記一般式(D−1)、(D−2)、(D−3)より選択される少なくとも1つの不飽和二重結合を有する重合性化合物であることを特徴とする請求項5に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインク。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェットインクを用いることを特徴とするインクジェット記録方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−224699(P2012−224699A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91819(P2011−91819)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】