説明

活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物

【課題】 硬化時の低収縮性に優れ、得られる硬化物(ハードコート膜)が、耐擦傷性および透明性に優れる活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 3〜10個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマー(A)、1個の(メタ)アクリロイル基と1〜2個のベンゼン環を有し、かつホモポリマーが15〜180℃のガラス転移点を有する単官能(メタ)アクリレート(B)および光重合開始剤(C)を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物に関する。さらに詳しくは耐擦傷性と硬化低収縮率に優れるハードコート膜を与える活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多官能(メタ)アクリレートは、塗料材料、光学材料、電子材料、各種高分子の架橋剤等、種々の高分子材料の原料として幅広く用いられている。
このうち、多官能(メタ)アクリレートを原料の一つとして用いるハードコート用樹脂組成物は、プラスチックフィルム等の基材に耐擦傷性を付与することを主目的とするものである。該性能を向上させる検討は現在でも数多く行われており、主な方策としてはハードコート膜の架橋密度の増大が挙げられる(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
【特許文献1】特公昭49− 22951号公報
【特許文献2】特開昭56−135526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プラスチックフィルム等の基材の厚みに制限がある中で、架橋密度を増大させると、活性エネルギー線による硬化時にハードコート膜の体積収縮が起こり、その結果、基材フィルムがカールしたり、ハードコート膜にクラックが生じる等の問題が起こることから、架橋密度の増大だけでは限界があった。
本発明の目的は、硬化時の低収縮性に優れ、得られる硬化物(ハードコート膜)が、耐擦傷性および透明性に優れる活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、3〜10個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマー(A)、1個の(メタ)アクリロイル基と1〜2個のベンゼン環を有し、かつホモポリマーが15〜180℃のガラス転移点を有する単官能(メタ)アクリレート(B)および光重合開始剤(C)を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物は、下記の効果を奏する。
(1)硬化低収縮性に優れる。
(2)該組成物を硬化させてなる硬化物(ハードコート膜)は、耐擦傷性および透明性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明における(A)は、3〜10(好ましくは3〜6)個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマーであり、該(メタ)アクリロイル基が3個未満ではハードコート膜の硬度が低く、10個を超えると硬化収縮性が悪化する。
(A)には、ウレタン基含有多官能(メタ)アクリレート(A1)および(A1)を除くMn1,000以下の多官能(メタ)アクリレート(A2)が含まれる。
【0008】
(A1)には、ウレタン化の反応性およびハードコート膜の硬度の観点から好ましくは1〜3(さらに好ましくは1〜2)個の水酸基と2個以上(ハードコート膜の硬度および硬化収縮性の観点から好ましくは2〜5、さらに好ましくは2〜3)個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(a1)およびポリイソシアネート(a2)から形成されるものが含まれる。
【0009】
(a1)には、炭素数(以下Cと略記)9以上かつ数平均分子量[以下Mnと略記、測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]1,000以下のもの、例えばグリセリン(以下GRと略記)ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(以下TMPと略記)ジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(以下DTMPと略記)ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(以下PEと略記)ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトール(以下DPEと略記)トリ−、テトラ−およびペンタ(メタ)アクリレート、GRのアルキレンオキシド[C2〜10、以下AOと略記。例えばエチレンオキシド(以下EOと略記)、1,2−プロピレンオキシド(以下POと略記)]付加物のジ(メタ)アクリレート、PEのAO付加物のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのうち硬化物の表面硬度の観点から好ましいのは、PEトリ(メタ)アクリレートおよびDPEペンタ(メタ)アクリレートである。
【0010】
ポリイソシアネート(以下、PIと略記することがある。)(a2)としては、例えば下記のもの、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
(1)C(NCO基中のCを除く、以下同じ)6〜20の芳香族PI
ジイソシアネート(以下、DIと略記)、例えば1,3−および/または1,4−フェ ニレンDI、2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、4, 4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニ ル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンDI、およびm−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)および4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート;
【0011】
(2)C2〜18の脂肪族PI
DI、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ヘプタメチレンDI、オクタメチレンDI、ノナメチレンDI、デカメチレンDI、ドデカメチレンDI、2,2,4−および/または2,4,4 −トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネートおよびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI);および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートおよびリジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンの反応生成物のホスゲン化物、例えば2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート);
【0012】
(3)C4〜45の脂環含有PI
DI、例えばイソホロンDI(IPDI)、2,4−および/または2,6−メチルシクロヘキサンDI(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−および/または2,6−ノルボルナンDI、ダイマー酸DI(DDI);および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート
(4)C8〜15の芳香脂肪族PI
m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、ジエチルベンゼンDIおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI)
(5)上記(1)〜(4)のヌレート化物
これらのPIのうち耐光性の観点から好ましいのは(2)、(3)、および(5)のうち脂肪族PIおよび脂環含有PIのヌレート化物である。
【0013】
ウレタン基含有多官能(メタ)アクリレート(A1)は、上記(a1)と(a2)とのウレタン化反応で得られる。
該反応におけるNCO基とOH基の当量比(NCO/OH)は、特に限定されないが、後述する成形品の靭性および(A1)の経時安定性の観点から好ましくは0.8/1〜1.2/1、さらに好ましくは0.9/1〜1.1/1である。
【0014】
上記ウレタン化反応においては、ウレタン化触媒を用いてもよい。該触媒には、金属化合物(有機ビスマス化合物、有機スズ化合物、有機チタン化合物等)、3級アミンおよび4級アンモニウム塩が含まれる。
【0015】
金属化合物のうち、有機ビスマス化合物には、有機ビスマスカルボキシレート、有機ビスマスアルコキシドおよびジカルボニル基を有する化合物とビスマスとのキレート化合物が含まれる。
有機ビスマスカルボキシレートは、一般式Bi(OCOR)3 で表され、Rは1価の炭化水素基を表し、例えば脂肪族炭化水素基[C1〜20、例えばアルキル(メチル、エチル、n−およびi−プロピル、n−、i−、sec−およびt−ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシルおよびドデシル)基およびアルケニル(1−、2−およびi−プロペニル、1−、2−および3−ブテニル)基]、芳香(脂肪)族炭化水素基(C6〜20、例えばフェニル、トルイル、キシレニル、ベンジル、フェネチルおよびヘキシルフェニル基)および脂環含有炭化水素基(C3〜10、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチル基)が挙げられる。
これらのRのうち耐加水分解性の観点から好ましいのはC2〜12の脂肪族炭化水素基、およびC5〜10の脂環含有炭化水素基である。
有機ビスマスカルボキシレートの具体例としては、ビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)、ビスマストリ(デカノエート)等が挙げられる。
【0016】
有機ビスマスアルコキシドは、一般式Bi(OR)3 で表され、Rは上記と同じで、耐加水分解性の観点から好ましいものも上記と同じである。
有機ビスマスアルコキシドの具体例としては、トリ−2−エチルへキシロキシビスマス等が挙げられる。
【0017】
ジカルボニル基を有する化合物とビスマスとのキレート化合物を構成するジカルボニル基を有する化合物には、C4〜15、例えばアセチルアセトン、アセチル酢酸、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートが含まれ、該キレート化合物にはこれらとBiとのキレート化合物が含まれる。該キレート化合物の具体例としては、ビス(アセチルアセトン)ビスマス等が挙げられる。
【0018】
有機スズ化合物には、2価のスズ化合物(スタナスオクトエート等)および4価のスズ化合物(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキシド、ジメチルチンジラウレート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート等)が含まれる。
有機チタン化合物には、テトラアルキル(C2〜12)チタネート、アルキレン(C2〜12)ジカルボン酸チタンが含まれる。
【0019】
3級アミンには、トリエチレンジアミン、テトラアルキル(C1〜3)アルキレン(C2〜6)ジアミン(テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン等)およびジアザビシクロアルケン化合物{例えば1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7〔DBU[登録商標、サンアプロ(株)製]〕}等が含まれる。
4級アンモニウム塩には、テトラアルキル(C1〜4)アンモニウムブロマイド、テトラアルキル(C1〜4)アンモニウムパークロレート等が含まれる。
【0020】
ウレタン化触媒の使用量は、(a1)および(a2)の合計重量に基づいて通常1%以下、反応性および透明性の観点から好ましくは0.001〜0.5%、さらに好ましくは0.05〜0.2%である。
【0021】
該ウレタン化反応の条件は、特に限定されず、例えば、(a1)、(a2)および必要によりウレタン化触媒を混合し、反応温度は通常40〜100℃(反応性および生成物の安定性の観点から好ましくは60〜95℃)で、2〜20時間反応させて(A1)を製造することができる。
また、必要により溶剤(酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン等)の存在下で該混合物を反応させてもよい。溶剤の使用量は、(a1)および(a2)の合計重量に基づいて通常5,000%以下、混合物の取り扱い性および反応速度の観点から好ましくは10〜1,000%である。
【0022】
ウレタン化反応は、常圧、減圧または加圧のいずれでも行うことができる。ウレタン化反応の進行状況は、例えば反応系のNCO%を測定することにより判断することができる。
【0023】
(A1)のMnは、硬化物の耐擦傷性および取り扱いやすさの観点から好ましくは500〜2,000、さらに好ましくは700〜1,800、とくに好ましくは800〜1,500である。
【0024】
(A)のうち、上記(A1)を除く多官能(メタ)アクリレート(A2)には、ハードコート膜の硬度および硬化低収縮性の観点から好ましくは3〜6官能で、ハードコート膜の硬度および硬化低収縮性の観点から好ましくはC12以上かつMn1,000以下のもの、例えばGRトリ(メタ)アクリレート、MPトリ(メタ)アクリレート、PEトリ−およびテトラ(メタ)アクリレート、DPEヘキサ(メタ)アクリレート、GRのAO付加物のトリ(メタ)アクリレート、PEのAO付加物のトリ−およびテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのうち硬化物の表面硬度の観点から好ましいのは、PEトリ(メタ)アクリレートおよびDPEヘキサ(メタ)アクリレートである。
【0025】
本発明における(B)は、1個の(メタ)アクリロイル基と1〜2個のベンゼン環を有し、かつホモポリマーが15〜180℃のガラス転移点を有する単官能(メタ)アクリレートである。
(B)中の(メタ)アクリロイル基が1個を超えると硬化収縮が大となり、ベンゼン環が2個を超えると靭性が悪くなる。また、(B)のホモポリマーのガラス転移点(以下Tgと略記)が15℃未満ではハードコート膜の硬度が低下し、180℃を超えると靭性が悪くなる。
【0026】
(B)には、C11以上かつMn1,000以下、例えば下記のものが含まれる。
(1)ビスフェノール化合物のAO1〜5モル付加物のモノ(メタ)アクリレート
ビスフェノールA、−Fおよび−Sの、EO2モルおよびPO1モル付加物の各モノ(メタ)アクリレート等;
(2)パラクミルフェノール化合物のAO1〜5モル付加物のモノ(メタ)アクリレート
パラクミルフェノールEO1モルアクリレート等;
(3)ベンゼン環含有多価(2〜4)カルボン酸(無水物)[C8〜30、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸(無水物)およびトリメリット酸(無水物)]と水酸基含有モノ(メタ)アクリレートとのエステル化物
イソフタル酸1モルとヒドロキシエチルアクリレート1モルとから形成されるモノ(メタ)アクリレート等;
(4)フェノールおよびフェニルフェノールのグリシジルエーテルと水酸基含有モノ(メタ)アクリレートとの反応物
2-ヒドロキシ−3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等。
これらの(B)のうち硬化物の強靱性の観点から好ましいのは(2)、(3)および(4)である。
【0027】
前記(A)と(B)の重量比は、ハードコート膜の硬度および硬化低収縮性の観点から好ましくは75/25〜90/10、さらに好ましくは80/20
〜85/15である。
【0028】
光重合開始剤(C)としては、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
これらのうち硬化物の着色防止の観点から好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0029】
(C)の使用量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて硬化性および耐光性の観点から好ましくは0.1〜20%、さらに好ましくは0.2〜10%である。
【0030】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに塗料に使用される種々の添加剤(D)を含有させてもよい。該(D)には、無機または有機充填剤(D1)、有機顔料(D2)、分散剤(D3)、消泡剤(D4)、レベリング剤(D5)、シランカップリング剤(D6)、チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(D7)、スリップ剤(D8)、酸化防止剤(D9)および紫外線吸収剤(D10)が含まれる。
(D)の合計の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常90%以下、添加効果および透明性の観点から好ましくは0.5〜50%である。
【0031】
充填剤(D1)のうち、無機充填剤としては、アルミナ[酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナホワイト(アルミナ水和物)、シリカアルミナ(アルミナとシリカの融着物、アルミナの表面にシリカをコーティングしたもの等)]、ジルコニア、炭化タングステン、炭化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ダイヤモンド、カーボンブラック(チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等)、シリカ(微粉ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ藻、コロイダルシリカ等)、ケイ酸塩(微粉ケイ酸マグネシウム、タルク、ソープストーン、ステアライト、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸ソーダ等)、炭酸塩[沈降性(活性、乾式、重質または軽質)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等]、クレー(カオリン質クレー、セリサイト質クレー、バイロフィライト質クレー、モンモリロナイト質クレー、ベントナイト、酸性白土等)、硫酸塩[硫酸アルミニウム(硫酸バンド、サチンホワイト等)、硫酸バリウム(バライト粉、沈降性硫酸バリウム、リトポン等)、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム(石コウ)(無水石コウ、半水石コウ等)等]、鉛白、雲母粉、亜鉛華、酸化チタン、活性フッ化カルシウム、セメント、石灰、亜硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、アスベスト、ガラスファイバー、ロックファイバーおよびマイクロバルーン等が挙げられる。
【0032】
これらのうち硬化膜の耐擦傷性および組成物、硬化物の着色抑制の観点から好ましいのはアルミナ、シリカ、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩および酸化チタン、さらに好ましいのはシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウムおよび酸化チタンである。
無機充填剤は、2種以上併用してもよく、また2種以上が複合化(例えばシリカに酸化チタンが融着)されたものでもよい。無機充填剤の形状は、特に限定されず、例えば不定形状、球状、中空状、多孔質状、花弁状、凝集状および粒状のいずれでもよい。
無機充填剤の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常50%以下、添加効果および硬化物の可撓性の観点から好ましくは1〜30%、さらに好ましくは3〜25%である。
【0033】
(D1)のうち、有機充填剤としては、アクリル、スチレン、シリコーン、ポリウレタン、アクリルウレタン、ベンゾグアナミン、ポリエチレンの各樹脂のビーズが挙げられる。これらのうち耐熱性の観点から、シリコーン樹脂のビーズが好ましい。また、有機充填剤の数平均粒径(μm)は、硬化物の光透過性および塗工性の観点から、好ましくは1〜30、さらに好ましくは3〜20である。
有機充填剤の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常50%以下、硬化物の耐熱性および塗工性の観点から好ましくは5〜40%、さらに好ましくは10〜35%である。
【0034】
有機顔料(D2)としては、下記のものが挙げられる。
(1)アゾ系顔料
不溶性モノアゾ顔料(トルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ファストエローG等)、不溶性ジスアゾ顔料(ジスアゾイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP等)、アゾレーキ(溶性アゾ顔料)(レーキレッドC、ブリリアントカーミン6B等)、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等
(2)多環式顔料
フタロシアニンブルー、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等
(3)染つけレーキ
塩基性染料(ビクトリアピュアブルーBOレーキ等)、酸性染料(アルカリブルートーナー等)等
(4)その他
アジン系顔料(アニリンブラック等)、昼光蛍光顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料等
(D2)の使用量は、組成物の全重量に基づいて、通常50%以下、添加効果および硬化物の可撓性の観点から好ましくは0.5〜40%、さらに好ましく1〜30%以下である。
【0035】
分散剤(D3)としては、有機分散剤[高分子分散剤(Mn2,000〜500,000)および低分子分散剤(分子量100以上かつMn2,000未満)]および無機分散剤が挙げられる。
【0036】
高分子分散剤としては、ナフタレンスルホン酸塩[アルカリ金属(NaおよびK等)塩、アンモニウム塩等]のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩(上記に同じ)、ポリアクリル酸塩(上記に同じ)、ポリ(2〜4)カルボン酸(マレイン酸/グリセリン/モノアリルエーテル共重合体等)塩(上記に同じ)、カルボキシメチルセルロース(Mn2,000〜10,000)およびポリビニルアルコール(Mn2,000〜100,000)等が挙げられる。
【0037】
低分子分散剤としては、下記のものが挙げられる。
(1)ポリオキシアルキレン型
脂肪族アルコール(C4〜30)、[アルキル(C1〜30)]フェノール、脂肪族(C4〜30)アミンおよび脂肪族(C4〜30)アミドのAO(C2〜4)1〜30モル付加物
脂肪族アルコールとしては、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、オクタノール、ドデカノール等;(アルキル)フェノールとしては、フェノール、メチルフェノールおよびノニルフェノール等;脂肪族アミンとしては、ラウリルアミンおよびメチルステアリルアミン等;および脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド等が挙げられる。
(2)多価アルコール型
C4〜30の脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸等)と多価(2〜6またはそれ以上)アルコール(例えばGR、PE、ソルビトールおよびソルビタン)のモノエステル化合物
(3)カルボン酸塩型
C4〜30の脂肪酸(前記に同じ)のアルカリ金属(上記に同じ)塩
(4)硫酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(前記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属(前記に同じ)塩等
【0038】
(5)スルホン酸塩型
[アルキル(C1〜30)]フェノール(前記に同じ)のスルホン酸アルカリ金属(前記に同じ)塩
(6)リン酸エステル型
C4〜30の脂肪族アルコール(前記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2〜4)1〜30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩[アルカリ金属(前記に同じ)塩、4級アンモニウム塩等]
(7)1〜3級アミン塩型
C4〜30の脂肪族アミン[1級(ラウリルアミン等)、2級(ジブチルアミン等)および3級アミン(ジメチルステアリルアミン等)]塩酸塩、トリエタノールアミンとC4〜30の脂肪酸(前記に同じ)のモノエステルの無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩
(8)4級アンモニウム塩型
C4〜30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸(上記に同じ)塩等。
【0039】
無機分散剤としては、ポリリン酸のアルカリ金属(前記に同じ)塩およびリン酸系分散剤(リン酸、モノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル等)等が挙げられる。
(D3)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、添加効果および塗工安定性の観点から好ましくは0.05〜5%である。
【0040】
消泡剤(D4)としては、低級アルコール(C1〜6)(メタノール、ブタノール等)、高級アルコール(C8〜18)(オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール等)、高級脂肪酸(C10〜20)(オレイン酸、ステアリン酸等)、高級脂肪酸エステル(C11〜30)(グリセリンモノラウリレート等)、リン酸エステル(トリブチルホスフェート等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム等)、ポリエーテル[ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)(Mn200〜10,000)、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)(Mn200〜10,000)等]、シリコーン(ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル等)および鉱物油系(シリカ粉末を鉱物油に分散させたもの)等が挙げられる。
(D4)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および塗工安定性の観点から好ましくは0.01〜2%である。
【0041】
レベリング剤(D5)としては、PEG型非イオン界面活性剤(ノニルフェノールEO1〜40モル付加物、ステアリン酸EO1〜40モル付加物等)、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素系界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1〜50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、変性シリコーンオイル[(D4)以外のもの、例えばポリエーテル変性シリコーンオイルおよび(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル]等が挙げられる。
(D5)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および透明性の観点から好ましくは0.1〜2%である。
【0042】
シランカップリング剤(D6)としては、アミノ基含有シランカップリング剤(γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−フェニルアミノフロピルトリメトキシシラン等)、ウレイド基含有シランカップリング剤(ウレイドプロピルトリエトキシシラン等)、ビニル基含有シランカップリング剤[ビニルエトキシシラン、ビニルメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等]、メタクリレート基含有シランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等)、エポキシ基含有シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、イソシアネート基含有シランカップリング剤(γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)、ポリマー型シランカップリング剤(ポリエトキシジメチルシロキサン、ポリエトキシジメチルシロキサン等)、カチオン型シランカップリング剤[N−(N−ベンジル−β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等]等が挙げられる。
(D6)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常10%以下、添加効果および透明性の観点から好ましくは0.5〜7%である。
【0043】
チクソトロピー性付与剤(増粘剤)(D7)としては、無機チクソトロピー性付与剤[ベントナイト、有機処理ベントナイト(表面ワックスコーティング処理ベントナイト等)および極微細表面処理炭酸カルシウム(コロイダル炭酸カルシウム等)等]および有機チクソトロピー性付与剤(水添ヒマシ油ワックス、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム、重合アマニ油等)が挙げられる。
(D7)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常20%以下、添加効果および塗工安定性の観点から好ましくは0.5〜10%である。
【0044】
スリップ剤(D8)としては、高級脂肪酸エステル(ステアリン酸ブチル等)、高級脂肪酸アミド(エチレンビスステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等)、金属石けん(ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アルミニウム等)、ワックス[パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルボキシル基含有ポリエチレンワックス等)等]およびシリコーン(例えばジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイルおよびフルオロシリコーンオイル)等が挙げられる。
(D8)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常5%以下、添加効果および透明性の観点から好ましくは0.01〜2%である。
【0045】
酸化防止剤(D9)としては、ヒンダードフェノール化合物〔トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル〕およびアミン化合物(n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミノメチルメタクリレート等)が挙げられる。
(D9)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および着色防止の観点から好ましくは0.005〜2%である。
【0046】
紫外線吸収剤(D10)としては、ベンゾトリアゾール化合物[2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等]、トリアジン化合物〔2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール〕、ベンゾフェノン(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等)、シュウ酸アニリド化合物(2−エトキシ−2’−エチルオキサリック酸ビスアニリド等)が挙げられる。
(D10)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常3%以下、添加効果および硬化性の観点から好ましくは0.005〜2%である。
【0047】
上記(D1)〜(D10)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量を他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0048】
本発明の組成物は、上記(A)、(B)、(C)、および必要により(D)を配合してなり、後述のように該組成物を基材に塗工し、形成された塗膜に後述の活性エネルギー線を照射し硬化させて本発明の硬化物(ハードコート膜)を得ることができる。
【0049】
本発明の組成物は、塗工の際に、塗工に適した粘度に調整するために、必要に応じて溶剤で希釈した塗料とすることができる。
溶剤の使用量は、該組成物の全重量に基づいて通常2,000%以下、好ましくは10〜500%である。また、塗料の粘度は、使用時の温度(通常5〜60℃)で、通常5〜500,000mPa・s、安定塗工の観点から好ましくは50〜10,000mPa・sである。
【0050】
該溶剤としては、本発明の組成物中の樹脂分を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、芳香族炭化水素(C7〜10、例えばトルエン、キシレンおよびエチルベンゼン)、エステルまたはエーテルエステル(C4〜10、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルおよびメトキシブチルアセテート)、エーテル(C4〜10、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、EGのモノエチルエーテル、EGのモノブチルエーテル、プロピレングリコール(以下PGと略記)のモノメチルエーテルおよびジエチレングリコール(以下DEGと略記)のモノエチルエーテル)、ケトン(C3〜10、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトンおよびシクロヘキサノン)、アルコール(C1〜10、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロパノール、n−、i−、sec−およびt−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコールおよびベンジルアルコール)、アミド(C3〜6、例えばジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド(C2〜4、例えばジメチルスルホキシド)、水、およびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
これらの溶剤のうちハードコート膜の平滑性および溶剤除去の効率の観点から好ましいのは沸点が70〜100℃のエステル、ケトンおよびアルコール、さらに好ましいのは酢酸エチル、メチルエチルケトン、i−プロパノールおよびこれらの混合物である。
【0051】
本発明の組成物は、必要により溶剤で希釈して、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線、赤外線、可視光線等)を照射して硬化させることにより基材の表面および/または裏面の少なくとも一部に硬化物(ハードコート膜)を有するハードコート被覆物を得ることができる。
該塗工に際しては、通常用いられる装置、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター等]が使用できる。塗工膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、通常0.5〜300μm、乾燥性、硬化性の観点から好ましい上限は250μm、耐摩耗性、耐溶剤性、耐汚染性の観点から好ましい下限は1μmである。
【0052】
本発明の組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗工後に乾燥するのが好ましい。乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。乾燥温度は、通常10〜200℃、塗膜の平滑性および外観の観点から好ましい上限は150℃、乾燥速度の観点から好ましい下限は30℃である。
【0053】
活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線および可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化抑制の観点から好ましいのは紫外線と電子線である。
本発明の組成物を紫外線照射で硬化させるに際しては、公知の紫外線照射装置[例えばフュージョンUVシステムズ(株)製、以下同じ。]を使用することができる。紫外線の照射量(mJ/cm2)は、通常10〜10,000、組成物の硬化性および硬化物の可撓性の観点から好ましくは100〜5,000である。
【0054】
本発明の組成物を電子線照射で硬化させるに際しては、公知の電子線照射装置[例えばエレクトロンビーム、岩崎電気(株)製]を使用することができる。 電子線の照射量(Mrad)は、通常0.5〜20、組成物の硬化性、および硬化物の可撓性、硬化物(コーティング膜)および基材の損傷を避けるとの観点から好ましくは1〜15である。
【0055】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。以下において「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を表す。
【0056】
製造例1
冷却管、撹拌装置、温度計を取り付けた反応容器にPEトリアクリレート[商品名「ライトアクリレートPE−3A」、共栄社化学(株)製]48.6部、メチルエチルケトン30.0部を入れ、50℃で加熱撹拌し均一に溶解させた。 この溶液に水添MDI 21.4部、およびビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)溶液(2−エチルヘキサン酸50%溶液、以下同じ。)0.1部を配合し、80℃で6時間加熱撹拌し還流させた。放冷してウレタンアクリレート(A−1)の固形分70%の樹脂溶液100部を得た。
【0057】
製造例2
製造例1と同様の反応容器にDPEペンタアクリレート[商品名「アロニックスM−403」、東亞合成(株)製]55.7部、メチルエチルケトン30.0部を入れ、50℃で加熱撹拌し均一に溶解させた。 この溶液に水添MDI 14.3部、およびビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)溶液0.1部を配合し、80℃で6時間加熱撹拌し還流させた。放冷してウレタンアクリレート(A−2)の固形分70%の樹脂溶液100部を得た。
【0058】
実施例1〜5、比較例1〜3
表1に示す割合で配合し、樹脂組成物(実施例1〜5、比較例1〜3)を得た。表1中の配合成分は下記のとおりである。
多官能アクリレート(A−3):TMPトリメタアクリレート[商品名「TMPT」、新中村化学工業(株)製]
ベンゼン環含有モノアクリレート(B−1):2-ヒドロキシ−3-フェノキシ
プロピルアクリレート(Tg:15℃)
ベンゼン環含有モノメタアクリレート(B−2):2−メタアクリロイロキシ
エチルフタル酸(Tg:180℃)
ベンゼン環含有モノアクリレート(B−3):パラクミルフェノールEO1モ
ル付加物のアクリレート[商品名「アロニックスM−110」、東
亞合成(株)製](Tg:35℃)
ベンゼン環含有モノアクリレート(比B−1):フェノキシエチルアクリレー
ト(Tg:−5℃)
ベンゼン環非含有モノアクリレート(比B−2):イソボルニルアクリレート
(Tg:80℃)
ベンゼン環含有ジアクリレート(比B−3):ビスフェノールAのEO4モル
ジアクリレート[商品名「ネオマーBA−641」、三洋化成工業
(株)製](Tg:80℃)
光重合開始剤(C−1):[商品名「イルガキュアー184」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン]
【0059】
<ハードコート被覆物の作成>
上記樹脂組成物の各50部に希釈有機溶剤としてトルエン100部を加え、ディスパーザーで均一になるまで撹拌したものを、タテ30cm、ヨコ30cm、厚さ80μm、の酢酸セルロースフィルム[商品名「フジタック」、富士写真フィルム(株)製]の片面にバーコーターを用い、乾燥硬化後の厚みが5μmとなるように塗布した。60℃で3分間乾燥した後、該塗膜に紫外線照射装置[フュージョンUVシステムズ(株)製]により、紫外線照射量200mJ/cm2で硬化させて、ハードコート被覆物を作成した。該被覆物について下記の項目(1)〜(3)について性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
<評価項目>
(1)耐擦傷性
スチールウール#0000を用い、250g/cm2荷重にてハードコート被覆物表面を10往復擦傷後、表面外観を目視により下記の基準で評価した。

○ 全く擦り傷が付かない。
△ 擦り傷が数本程度認められる。
× 多数の擦り傷が認められ、表面が白化する。
【0061】
(2)硬化収縮性
ハードコート被覆物を10cm×10cmにカットして、80℃の乾燥機中に1時間静置した後、室温で1時間静置した。水平なガラス板上に該被覆物をハードコート面を上にして置き、浮き上がった四隅それぞれの高さを測定し、4つの測定値の合計(単位:mm)を硬化収縮性とした。

○ 120mm未満
△ 120mm以上150mm未満
× 150mm以上
【0062】
(3)透明性
JIS−K7105(1981年制定)に準じ、ヘーズメータ[haze−gard dual、BYK Gardner(株)製]を用いて測定し、下記の基準で評価した。

○ ヘーズが0.5未満
△ ヘーズが0.5以上1.5未満
× ヘーズが1.5以上
【0063】
<硬化物(ハードコート膜)の作成>
表面を離型剤処理したガラス板(厚さ3mm、縦150mm、横150mm)上に厚さ500μmのスペーサー枠を設けて100mm×100mmの正方形に仕切る。その正方形内に表1に示す組成物を注型した後、同様の別のガラス板を載せる。紫外線照射装置により、紫外線を1,000mJ/cm2照射した後、ガラス板から離型し硬化物(ハードコート膜)を得た。該硬化物について下記項目(4)〜(5)の性能評価を行った。結果を表1に示す。
【0064】
<評価項目>
(4)圧縮弾性率
硬化物を25℃、60%RHで24時間静置後、ビッカース硬度計[フィシャー硬度計、フィシャー(株)製。以下同じ。]にて、1,000mN荷重で、圧縮弾性率を測定する。単位はMPa。
(5)クリープ変形率
ビッカース硬度計にて、1,000mN荷重で、クリープ変形率を測定する。単位は%。
【0065】
【表1】

【0066】
表1の結果から、本発明の樹脂組成物は、比較のものに比べ硬化低収縮性に優れ、得られた硬化物(ハードコート膜)は耐擦傷性、透明性、圧縮弾性率、クリープ変形率に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物は、硬化時の硬化低収縮性に優れ、得られる硬化物(ハードコート膜)は耐擦傷性、透明性等に優れるため、特に液晶表示装置をはじめとするディスプレイに用いられる光学フィルムにおいて、その高い透明性を阻害することなく、該フィルムの表面に耐擦傷性を付与するハードコート膜として使用することができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3〜10個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能モノマー(A)、1個の(メタ)アクリロイル基と1〜2個のベンゼン環を有し、かつホモポリマーが15〜180℃のガラス転移点を有する単官能(メタ)アクリレート(B)および光重合開始剤(C)を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型ハードコート用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)と(B)の重量比が、75/25〜90/10である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項4】
請求項3記載の硬化物を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に有するハードコート被覆物。
【請求項5】
請求項1または2記載の組成物を基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させることを特徴とするハードコート被覆物の製造方法。

【公開番号】特開2009−179674(P2009−179674A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18531(P2008−18531)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】