説明

活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる偏光板の製造方法

【課題】偏光フィルムの両面に活性エネルギー線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムが貼合された偏光板が、接着性を非破壊で検査しながら製造できる方法を提供する。
【解決手段】硬化後に、紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を残存させる接着剤を用い、(A)偏光フィルム1の両面にこの接着剤を介して第一及び第二の透明樹脂フィルム2,3をそれぞれ重ねて積層体4を得る積層工程、(B)積層体4の第一のフィルム2側から活性エネルギー線照射して接着剤を硬化させ、偏光板5を得る硬化工程、及び(C)偏光板5の蛍光を発しない第二のフィルム3側からクロスニコル配置された偏光フィルター45を介して紫外線47を照射し、接着剤硬化物からの蛍光強度を計測する蛍光強度計測工程をこの順で行い、工程(C)において十分な強度で接着していると判断できる蛍光強度が得られるように、工程(B)の照射量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置を構成する光学部品の一つとして有用な偏光板を製造する方法に関するものである。詳しくは、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面に、それぞれ活性エネルギー線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムが貼合された偏光板を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、消費電力が小さく、低電圧で動作し、軽量でかつ薄型の液晶表示装置が、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ用のモニター、及びテレビ等の情報用表示デバイスとして急速に普及してきている。
【0003】
液晶表示装置を構成する光学部品の一つとして用いられる偏光板は、二色性色素が吸着配向しているポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの少なくとも片面、通常は両面に透明樹脂フィルムが貼合された構成を有し、粘着剤層を介して液晶セルに貼着され、液晶パネルとして使用される。偏光フィルムの一方の面に貼合される透明樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムを保護する、いわゆる保護フィルムとしての機能を有するものであるが、偏光フィルムの両面に透明樹脂フィルムを貼合する場合、もう一方の透明樹脂フィルムは、単なる保護フィルムとしての機能のほか、液晶セルの位相差補償や液晶表示装置の視野角改良を目的とした、いわゆる光学補償機能を有するものとすることも多い。
【0004】
偏光フィルムと透明樹脂フィルムの貼合には、従来からポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶液が接着剤として用いられてきたが、かかる水溶液系の接着剤は、適用できる樹脂フィルムに限りがあり、また乾燥・硬化のために相応の時間を要する。そして近年では、多種多様な透明樹脂フィルムが、保護フィルムとして、また光学補償フィルムとして、偏光フィルムに貼合されることが求められている。そこで、各種の透明樹脂フィルムに適用でき、硬化時間が短く、有害物質を大気中に放散しないなどの利点を有することから、紫外線などの活性エネルギー線の照射を受けて硬化する接着剤を用いる提案がなされている。例えば、特開 2004-245925号公報(特許文献1)には、芳香環を含まないエポキシ化合物を主成分とする組成物からなる接着剤を用いて偏光フィルムに透明樹脂フィルム(同文献では「保護膜」と呼称されている)を重ね合わせ、そこに活性エネルギー線を照射して接着剤を硬化させ、偏光板とする技術が開示されている。
【0005】
活性エネルギー線硬化型接着剤には、硬化前は液体であるが、活性エネルギー線の照射による硬化後は固体になって接着力を発現するものが多く用いられる。このような活性エネルギー線硬化型接着剤は、硬化反応によって高分子量化するモノマー又はオリゴマーからなる硬化性成分を主剤とし、さらに光重合開始剤を含むことが多い。光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射を受けて活性ラジカル又は活性イオン種を発生し、発生した活性ラジカル又は活性イオン種が硬化性成分に作用し、硬化反応を開始させるものである。この硬化反応に伴って硬化性成分は高分子量化し、その結果、活性エネルギー線硬化型接着剤は液体から固体に変化する。したがって、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化度は、重合度に応じて定まることになる。また、その硬化度が十分でないと、偏光フィルムと透明樹脂フィルムとの間で十分な接着力が発現されないことになる。
【0006】
活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化度を目視によって判断することは、一般に困難である。そこで、特開 2007-248244号公報(特許文献2)には、活性エネルギー線硬化型接着剤の一つである紫外線硬化型樹脂につき、そこに配合されている光重合開始剤自体が、それを含む紫外線硬化型樹脂の状態(例えば、硬化度)と相関のある観測可能な蛍光を発するという知見に基づいて、紫外線硬化型樹脂の硬化状態を推定する方法が提案されている。具体的には、そのような光重合開始剤は、紫外線により励起されて蛍光を発し、その光重合開始剤が配合された紫外線硬化型樹脂から発せられる蛍光強度は、硬化反応の進行に伴って増加するが、光重合開始剤が消費された段階では、蛍光強度の増加速度が低下するか、増加が停止するか、又は減少することから、かかる蛍光強度の増加速度低下、増加停止又は減少の時点をもって、その光重合開始剤が実質的に消費されたとみなすことが、一つの実施形態とされている。
【0007】
上記特許文献2に開示される方法は、光重合開始剤が配合された硬化型樹脂の硬化状態を非破壊で推定ないし検査するのに有効であり、近年ではこの原理に基づいて、励起のための紫外線を出射するLED光源と、その紫外線により励起された被測定物から生じる蛍光を検知するための検出器とを備えた、「蛍光強度測定装置」又は「UV硬化センサー」と呼ばれる測定器も上市されている。しかしながら、紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を含む硬化型樹脂の硬化物が、紫外線の照射を受けて蛍光を発する別の材料とともに存在する場合に、上記の測定器を用いただけでは、当該別の材料から発せられる蛍光も検出器が検知してしまうため、硬化型樹脂の硬化状態を検査することの妨げとなる。
【0008】
一方、偏光板の分野において、偏光フィルムとその少なくとも一方の面に貼合された透明樹脂フィルムとの間の接着性の評価には、両者が剥離できるかどうかで判断する、いわゆる破壊検査が一般に採用されている。例えば、特開 2008-299175号公報(特許文献3)の段落[0101]には、偏光フィルムに水系接着剤を介して保護フィルムが貼合された偏光板についてであるが、カッターナイフを用いて偏光板の保護フィルムのみを切り、その切った箇所から保護フィルムが剥離できるか否かで、偏光フィルムと保護フィルムとの接着性を評価する形態が示されている。
【0009】
そこで、偏光板の分野においても、製造される偏光板の破壊を伴うことなく、偏光フィルムとその少なくとも一方の面に貼合された透明樹脂フィルムとの間の接着性を評価しながら、偏光フィルムとその保護機能を有する透明樹脂フィルムとが良好に接着した状態の偏光板を製造する方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−245925号公報
【特許文献2】特開2007−248244号公報(請求項1及び3)
【特許文献3】特開2008−299175号公報(段落0101)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面に、それぞれ活性エネルギー線硬化型接着剤を介して透明樹脂フィルムが貼合された偏光板を製造する方法において、偏光フィルムと透明樹脂フィルムとの間の接着性を非破壊で検査しながら、両者が良好に接着している偏光板が製造できる方法を提供することにある。本発明のもう一つの課題は、上記特許文献2に開示される技術を応用し、光重合開始剤を含有する硬化型接着剤の硬化物に紫外線を照射してその硬化物から発生する蛍光の強度を計測する方法を採用しながら、偏光板を構成する一方の透明樹脂フィルムが紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を含有する場合であっても、その透明樹脂フィルムからの蛍光に影響されることなく、その硬化型接着剤の硬化状態を評価して偏光板が製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面にそれぞれ、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、第一の透明樹脂フィルム及び第二の透明樹脂フィルムが貼合された偏光板を製造する際、活性エネルギー線硬化型接着剤に配合されている光重合開始剤は、それ自身も紫外線の照射を受けて蛍光を発するが、活性エネルギー線の照射を受けた硬化反応により、その後の紫外線の照射を受けてより強い蛍光を発する物質に変化するということを前提に、上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、上記の偏光板構成に対して、以下の構成を適用すれば、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層から発せられる蛍光だけを検知することができ、もってその蛍光強度測定により接着剤の硬化状態が精度良く評価できるようになることを見出した。
【0013】
・硬化型接着剤を硬化させるための活性エネルギー線の照射は、第一の透明樹脂フィルム側から行うこと、
・第二の透明樹脂フィルムは、紫外線の照射を受けても蛍光を発しないものから選択すること、及び
・蛍光を発生させるための紫外線照射は、第二の透明樹脂フィルム側から行い、かつ、蛍光を発生させるための紫外線光源及び蛍光を検知する検出器を備える蛍光強度測定装置と偏光板との間に、偏光フィルターを、その面は偏光板の面と平行に、かつその吸収軸は偏光板を構成する偏光フィルムの吸収軸と直交するように介在させ、その蛍光強度測定装置から紫外線を照射して蛍光強度を計測すること。
【0014】
そこで本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面にそれぞれ、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、第一の透明樹脂フィルム及び第二の透明樹脂フィルムが貼合された偏光板を製造する方法であって、上記活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線の照射による硬化反応が起こった後に、紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を残存させる成分を含有し、上記第二の透明樹脂フィルムは、紫外線の照射を受けても蛍光を発しないものであり、そしてこの方法は以下の(A)〜(C)の各工程を備え、蛍光強度計測工程(C)において、上記偏光フィルムと上記第二の透明樹脂フィルムとが十分な強度で接着していると判断できる蛍光強度が得られるように、硬化工程(B)における活性エネルギー線の照射量を決定する、偏光板の製造方法が提供される。
【0015】
(A)偏光フィルムの一方の面に活性エネルギー線硬化型接着剤を介して第一の透明樹脂フィルムを、他方の面に活性エネルギー線硬化型接着剤を介して第二の透明樹脂フィルムをそれぞれ重ね合わせて積層体を得る積層工程、
(B)上記積層工程(A)で得られる積層体の第一の透明樹脂フィルム側から活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させ、偏光板を得る硬化工程、及び
(C)上記硬化工程(B)で得られる偏光板の第二の透明樹脂フィルム側から、その面は偏光板の面と平行に、かつその吸収軸は偏光フィルムの吸収軸と直交するように配置された偏光フィルターを介して、蛍光強度計測用の紫外線を照射し、上記活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物から発せられる蛍光の強度を計測する蛍光強度計測工程。
【0016】
この方法において、上記第一の透明樹脂フィルムは、紫外線の照射を受けて蛍光を発するものであってもよいし、紫外線の照射を受けても蛍光を発しないものであってもよい。特に本発明の方法は、第一の透明樹脂フィルムが、紫外線の照射を受けて蛍光を発する場合であっても、精度良く活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化状態を評価できる。
【0017】
これらの方法において、第二の透明樹脂フィルムは、蛍光強度計測工程(C)で照射される紫外線の波長域における透過率が60%以上であることが好ましい。また、第二の透明樹脂フィルムは、光学補償機能を有するものとすることができる。
【0018】
本発明の方法は、異なる局面から、偏光板における接着剤の硬化状態評価方法と捉えることもできる。その評価方法は、以下のように表現することができる。
【0019】
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面にそれぞれ、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して第一の透明樹脂フィルム及び第二の透明樹脂フィルムを貼合し、そこに活性エネルギー線を照射し、上記接着剤を硬化させて偏光板を製造し、上記活性エネルギー線硬化型接着剤から得られる硬化物層の硬化状態を評価する方法であって、
上記活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線の照射による硬化反応が起こった後に、紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を残存させる成分を含有し、
上記第二の透明樹脂フィルムは、紫外線の照射を受けても蛍光を発しないものであり、
上記硬化のための活性エネルギー線は、上記第一の透明樹脂フィルム側から照射し、
そしてこの方法は、
(C)得られる偏光板の上記第二の透明樹脂フィルム側から、その面は偏光板の面と平行に、かつその吸収軸は上記偏光フィルムの吸収軸と直交するように配置された偏光フィルターを介して、蛍光強度計測用の紫外線を照射し、上記活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物から発せられる蛍光の強度を計測する蛍光強度計測工程、及び
(D)上記蛍光強度計測工程(C)で得られる蛍光強度に基づき、上記偏光板における活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化状態を評価する評価工程
を備える、偏光板における接着剤の硬化状態評価方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法によれば、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化状態を非破壊で精度良く評価できるので、不良品の発生を最小限に抑えて、偏光フィルムと透明樹脂フィルムとが良好に接着している偏光板を製造することができる。特に、上記蛍光強度計測工程(C)をインラインに組み込み、その結果に基づく硬化工程(B)における活性エネルギー線の照射量の制御もインラインに組み込むことができるので、このようなインライン制御を採用すれば、安定した偏光板の生産に一層寄与するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の方法を実施するのに適した偏光板の製造装置の配置例を示す概略側面図である。
【図2】一つの観点から活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化性成分として好ましく用いられる脂環式エポキシ化合物の例を示す化学式である。
【図3】光重合開始剤がトリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートである場合を例に、その光重合開始剤から、硬化性成分の重合を開始させる物質を生じるとともに、紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を生じる機構を説明するスキーム図である。
【図4】蛍光強度計測工程において偏光板に紫外線を照射するときの紫外線の流れ及びその紫外線を受けて生じる蛍光の流れを説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して、本発明では、偏光フィルム1の一方の面に、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して第一の透明樹脂フィルム2を貼合し、偏光フィルム1の他方の面には、同じく活性エネルギー線硬化型接着剤を介して第二の透明樹脂フィルム3を貼合して積層体4とし、その積層体4に活性エネルギー線照射装置41から活性エネルギー線を照射して上記の接着剤を硬化させ、偏光板5を製造する。図示の例では、第一の透明樹脂フィルム2の片面に、第一の塗工機10が備えるグラビアロール11から活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布し、第二の透明樹脂フィルム3の片面にも、第二の塗工機15が備えるグラビアロール16から活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布し、それぞれの接着剤塗布面を偏光フィルム1の両面に重ね合わせて、積層体4とするようになっている。
【0023】
偏光フィルム1と第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3との貼合には、貼合用ニップロール21,22が用いられる。図示の例では、貼合後の積層体4は、その搬送方向に沿って凸曲面を有する接触ロール23に密着され、積層体4を挟んでその反対側に配置された活性エネルギー線照射装置41から第一の透明樹脂フィルム2側に活性エネルギー線が照射されるようになっている。製造された偏光板5は、搬送用ガイドロール24及び巻取り前ニップロール25,26を経て、製品ロール30に巻き取られる。偏光フィルム1の一方の面や、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3のそれぞれ接着剤が塗布されない面には、搬送用のガイドロール28,28が適宜設けられる。図中の直線矢印はフィルムの流れ方向を意味し、曲線矢印はロールの回転方向を意味する。
【0024】
また本発明では、活性エネルギー線の照射により接着剤を硬化させた後、得られる偏光板5の活性エネルギー線を照射した面と反対側、すなわち第二の透明樹脂フィルム3側から、蛍光強度計測用の紫外線を照射し、それを受けて発生する蛍光の強度を計測し、接着剤の硬化状態を評価する。その際、蛍光強度計測用紫外線の照射は、偏光フィルターを介して行う。図示の例では、接着剤が硬化された後の偏光板5の第二の透明樹脂フィルム3側に、偏光フィルター45及び蛍光強度測定装置43がこの順に配置され、蛍光強度測定装置43から出射される紫外線47が偏光板5に入射し、そこから生じる蛍光48,49のうち、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物から生じる蛍光48だけが、蛍光強度測定装置43に到達するようになっている。偏光フィルター45の配置状態及びそれと蛍光48,49との関係は、後で詳しく説明する。
【0025】
本発明の製造方法はもちろん、枚葉に裁断された偏光フィルム及び透明樹脂フィルムを用い、活性エネルギー線硬化型接着剤を介してそれらを貼合し、そこに活性エネルギー線を照射して接着剤を硬化させ、偏光板を製造する枚葉形式で適用することもできるが、特に工業的生産においては、図1に示すように、連続的に生産する方式に適用される。そして、蛍光強度測定装置43を用いた蛍光強度計測工程(C)も、インラインに組み込むことが好ましい。一方で、活性エネルギー線の照射方式は、図示のような、接触ロール23に密着させた状態で照射する形態に限られるものでなく、例えば、積層体4の活性エネルギー線照射装置41とは反対側に特別な支持体ないし接触体を配置しないで活性エネルギー線を照射する形態も、もちろん本発明に包含される。
【0026】
以下、偏光板5を構成する偏光フィルム1、透明樹脂フィルム2,3、及び接着剤についてまず説明し、その後、偏光板の製造方法に関する説明へと進んでいく。
【0027】
[偏光フィルム]
偏光フィルム1は、ポリビニルアルコール系樹脂からなり、このポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、不飽和スルホン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂はさらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルアセタールなども用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の平均重合度は、通常1,000〜10,000程度であり、好ましくは 1,500〜5,000の範囲である。
【0028】
ポリビニルアルコール系樹脂をフィルム状に製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されず、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムは、例えば、10〜150μm 程度の膜厚とすることができる。
【0029】
偏光フィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びこのホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。
【0030】
延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、染色と同時に行ってもよいし、染色の後で行ってもよい。延伸を染色の後で行う場合、この延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。もちろん、これらの複数の段階で延伸を行うことも可能である。延伸にあたっては、周速の異なるニップロール間で延伸してもよいし、熱ロールを用いて延伸してもよい。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤にて膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。その延伸倍率は、通常3〜8倍程度である。
【0031】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色するには、例えば、二色性色素を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法が採用される。二色性色素として、具体的には、ヨウ素又は二色性の有機染料が用いられる。なお、二色性色素による染色処理の前に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、水への浸漬処理を施して、十分に膨潤させておくことが好ましい。
【0032】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素及びヨウ化カリウムの含有量は、水100重量部あたり、ヨウ素が通常0.01〜1重量部であり、ヨウ化カリウムが通常0.5〜20重量部である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20〜40℃であり、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20〜1,800秒である。
【0033】
一方、二色性色素として二色性の有機染料を用いる場合は、通常、水溶性の二色性有機染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、水100重量部あたり、通常1×10-4〜10重量部であり、好ましくは1×10-3〜1重量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を染色助剤として含有してもよい。染色に用いる染料水溶液の温度は、通常20〜80℃であり、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10〜1,800秒である。
【0034】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法によって行われる。ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、水100重量部あたり、通常2〜15重量部であり、好ましくは5〜12重量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸含有水溶液はさらにヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、水100重量部あたり、通常 0.1〜15重量部であり、好ましくは5〜12重量部である。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常 60〜1,200秒であり、好ましくは150〜600秒、さらに好ましくは200〜400秒である。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50〜85℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
【0035】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、例えば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法によって行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常2〜40℃であり、浸漬時間は、通常2〜120秒である。水洗後は、乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターなどを用いて行うことができる。この乾燥処理は、40〜100℃、好ましくは50〜100℃に保たれた乾燥炉の中で、30〜600秒程度かけて行われる。乾燥炉は複数あってもよく、乾燥炉を複数設ける場合は、各々の温度が同一でも異なっていてもよい。複数の乾燥炉を設けて乾燥を行う場合は特に、乾燥炉前段から乾燥炉後段に向かって温度が高くなるように温度勾配をつけるのが好ましい。
【0036】
こうして得られる偏光フィルムの厚みは、例えば5〜40μm 程度とすることができ、好ましくは10〜35μm である。
【0037】
[透明樹脂フィルム]
本発明では、上記のようにして製造されるポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルム1の両面にそれぞれ、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3を貼合し、偏光板5を製造する。このとき、偏光フィルム1の一方の面に貼合される第一の透明樹脂フィルム2は、紫外線の照射を受けて蛍光を発するものであってもよいし、紫外線の照射を受けても蛍光を発しないものであってもよい。ここで、「紫外線の照射を受けて蛍光を発する樹脂」とは、紫外線の照射を受けてその樹脂自体が蛍光を発する構造を有するもののほか、その樹脂自体は紫外線の照射を受けて蛍光を発する構造を有しないが、紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質(「蛍光発生物質」とする)が添加されたものをも含む意味である。また、「紫外線の照射を受けても蛍光を発しない樹脂」とは、その樹脂自体が紫外線の照射を受けても蛍光を発する構造を有さず、かつ蛍光発生物質も添加されていないものを意味する。一方、偏光フィルム1の他方の面に貼合される第二の透明樹脂フィルム3は、紫外線の照射を受けても蛍光を発しないもので構成する。
【0038】
〈第一の透明樹脂フィルム〉
偏光フィルム1の一方の面に貼合され、接着剤硬化のための活性エネルギー線が照射される側となる第一の透明樹脂フィルム2は、上述のとおり、紫外線の照射を受けて蛍光を発するものであっても、蛍光を発生しないものであってもよい。紫外線の照射により蛍光を発する樹脂には、樹脂の構成単位にベンゼン環を有する、ポリエチレンテレフタレート系樹脂やポリカーボネート系樹脂などがある。一方、紫外線の照射を受けても蛍光を発しない樹脂は、後で説明する第二の透明樹脂フィルムとなりうるものである。
【0039】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂は通常、繰返し単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで構成される樹脂であり、他の共重合成分に由来する構造単位を含んでいてもよい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなるフィルムとして、適宜の市販品を用いることができる。市販されているポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの例を挙げると、いずれも商品名で、三菱樹脂株式会社から販売されている“ダイアホイル”、帝人デュポンフィルム株式会社から販売されている“テイジンテトロンフィルム”、東洋紡績株式会社から販売されている“東洋紡エステルフィルム”及び“コスモシャイン”、東レ株式会社から販売されている“ルミラー”、ユニチカ株式会社から販売されている“エンブレット”などがある。
【0040】
また、ポリカーボネート系樹脂は、主鎖にカーボネート結合−O−CO−O−を有する樹脂であり、例えば、ビスフェノールAを原料とするポリカーボネートが代表的である。ポリカーボネート系樹脂からなるフィルムも、適宜の市販品を用いることができる。市販されているポリカーボネート系樹脂フィルムの例を挙げると、いずれも商品名で、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社から販売されている“ユーピロンシート”、帝人化成株式会社から販売されている“パンライトシート”などがある。
【0041】
第一の透明樹脂フィルム2には、偏光フィルム1への貼合に先立って、その貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマ処理、又はアンカーコーティング処理のような易接着処理が施されてもよい。また、第一の透明樹脂フィルム2の偏光フィルム1への貼合面と反対側の表面は、ハードコート層、反射防止層、又は防眩層のような各種処理層を有してもよい。第一の透明樹脂フィルム2の厚さは、通常5〜200μm 程度の範囲であり、好ましくは10〜120μm、さらに好ましくは10〜85μmである。
【0042】
〈第二の透明樹脂フィルム〉
偏光フィルム1の他方の面に貼合され、接着剤を硬化させた後、蛍光強度計測のための紫外線が照射される側となる第二の透明樹脂フィルム3は、先述のとおり、紫外線の照射を受けても蛍光を発しないものとする。第二の透明樹脂フィルム3は、後述の蛍光強度計測工程(C)において、蛍光強度計測のための紫外線が照射される側となることから、そこで照射される紫外線の波長域における透過率が60%以上を示すものであることが好ましい。
【0043】
また、第二の透明樹脂フィルム3は、得られる偏光板5を液晶セルに貼合するとき、液晶セル側に配置されることがある。その場合は、この第二の透明樹脂フィルム3に、液晶セルの位相差補償や液晶表示装置の視野角改良を目的とした光学保障機能を付与することが好ましい。光学補償機能は、例えば、樹脂フィルムに一軸又は二軸の延伸を施して面内及び/又は厚み方向の位相差を発現させる方法、フィルムを構成する樹脂に位相差調整機能を有する化合物を含有させてフィルム化する方法、樹脂フィルムの表面に位相差調整機能を有する化合物を塗布して配向させる方法などによって、付与することができる。
【0044】
蛍光発生物質を含有せず、第二の透明樹脂フィルム3として用いられる樹脂には、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースを代表例とするセルロースエステル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂とも呼ばれる非晶性ポリオレフィン樹脂、ポリプロピレン系樹脂を代表例とする結晶性ポリオレフィン樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂を代表例とするアクリル樹脂などがある。
【0045】
セルロースエステル系樹脂は、セルロースの部分又は完全エステル化物であって、例えば、セルロースの酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、それらの混合エステルなどを挙げることができる。より具体的には、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどがある。セルロースエステル系樹脂からなるフィルムは、適宜の市販品を用いることができる。市販されているセルロースエステル系樹脂フィルムの例を挙げると、いずれも商品名で、富士フイルム株式会社から販売されている “フジタック TD80”、“フジタック TD80UF”及び“フジタック TD80UZ”、コニカミノルタオプト株式会社から販売されている“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”などがある。
【0046】
また、セルロースエステル系樹脂フィルムに上述した光学補償機能を付与する場合は、例えば、セルロースエステル系樹脂に位相差調整機能を有する化合物を含有させたフィルム、セルロースエステル系樹脂フィルムの表面に位相差調整機能を有する化合物を塗布したフィルム、セルロースエステル系樹脂フィルムを一軸又は二軸に延伸したフィルムなどが用いられる。市販されているセルロースエステル系光学補償フィルムの例を挙げると、富士フイルム株式会社から販売されているWV(Wide View)フィルム“WV-BZ 438”及びWV(Wide View)フィルム“WV-EA”、コニカミノルタオプト株式会社から販売されている“KC4FR-1”、“KC4HR-1”及び“KC4UEW”などがある。
【0047】
非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムは、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマーのような環状オレフィンに由来する構造単位を有する樹脂であり、環状オレフィンと他の重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物との共重合体であってもよい。具体的には、ノルボルネン又はその誘導体を開環メタセシス重合し、得られる重合体に水素添加して不飽和結合をなくした熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂と呼ばれるもの、ノルボルネン又はその誘導体に鎖状オレフィン及び/又は芳香族ビニル化合物を付加重合させた共重合体などが挙げられる。非晶性ポリオレフィン樹脂からなるフィルムも、適宜の市販品を用いることができる。市販されている非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムの例を挙げると、いずれも商品名で、JSR株式会社から販売されている“アートンフィルム”、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノアフィルム”、積水化学工業株式会社から販売されている“エスシーナ位相差フィルム”などがある。“エスシーナ位相差フィルム”は、位相差が付与された光学機能性フィルムであるが、“アートンフィルム”と“ゼオノアフィルム”にも、延伸して位相差を発現させ、光学機能性が付与されているグレードがある。
【0048】
結晶性ポリオレフィン樹脂は、エチレンやプロピレンのような鎖状オレフィンを主要な構造単位とする結晶性の樹脂であり、特にポリプロピレン系樹脂が代表的である。ポリプロピレン系樹脂には、プロピレンの単独重合体のほか、プロピレンとこれに共重合可能な他のモノマー、例えばエチレンやα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体も包含される。ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムも、適宜の市販品を用いることができる。市販されているポリプロピレン系樹脂フィルムの例を挙げると、やはりいずれも商品名で、三井化学東セロ株式会社から販売されている“トーセロ”、東洋紡績株式会社から販売されている“パイレンフィルム”、東レ株式会社から販売されている“トレファン”、サン・トックス株式会社から販売されている“サントックス”、 FILMAX 社から販売されている“FILMAX CPP フィルム”などがある。
【0049】
アクリル樹脂は、メタクリル酸アルキルを主要な構造単位とする樹脂であり、なかでもメタクリル酸メチルを主要な構造単位とするメタクリル酸メチル系樹脂が代表的である。アクリル樹脂からなるフィルムも、適宜の市販品を用いることができる。市販されているアクリル樹脂フィルムの例を挙げると、やはりいずれも商品名で、住友化学株式会社から販売されている“テクノロイ”、三菱レイヨン株式会社から販売されている“アクリプレン”などがある。
【0050】
第二の透明樹脂フィルム3には、紫外線の照射を受けて蛍光を発することがなければ、偏光フィルム1への貼合に先立って、その貼合面に、ケン化処理、コロナ処理、プライマ処理、又はアンカーコーティング処理のような易接着処理が施されてもよい。また、第二の透明樹脂フィルム3の偏光フィルム1への貼合面と反対側の表面は、ハードコート層、反射防止層、又は防眩層のような各種処理層を有してもよい。第二の透明樹脂フィルム3の厚さは、通常5〜200μm 程度の範囲であり、好ましくは10〜120μm 、さらに好ましくは10〜85μm である。
【0051】
[接着剤]
偏光フィルム1と第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3とを接着するための接着剤として、本発明では活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる。この活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線の照射を受けて硬化する成分(「硬化性成分」とする)を含有するものであるが、本発明では、後述する蛍光強度計測工程(C)において、その接着剤の硬化物に紫外線を照射し、そこから発せられる蛍光の強度を計測するので、この接着剤は、活性エネルギー線の照射による硬化反応が起こった後に、蛍光発生物質を残存させる成分を含有する。
【0052】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、硬化前は液状であるが、活性エネルギー線の照射により硬化し、固体となって、それを挟む二つの物質の間で接着力を発現するものである。硬化のために照射される活性エネルギー線として、典型的には紫外線又は電子線が用いられる。紫外線の照射により硬化し、接着力を発現するタイプの接着剤は、紫外線硬化型接着剤と呼ばれ、電子線の照射により硬化し、接着力を発現するタイプの接着剤は、電子線硬化型接着剤と呼ばれる。
【0053】
いずれのタイプの接着剤であっても、活性エネルギー線の照射を受けて重合硬化する硬化性成分を含有する。この硬化性成分は、一般に、モノマー又はオリゴマーの形で存在する。紫外線硬化型接着剤は、かかる硬化性成分に加え、活性エネルギー線(紫外線)の照射を受けて活性ラジカル又は活性イオン種を発生し、硬化性成分の重合を開始させる光重合開始剤を含有する。この光重合開始剤が同時に、本発明で規定するところの、活性エネルギー線の照射による硬化反応が起こった後に、蛍光発生物質を残存させる成分となる。一方、電子線硬化型接着剤は通常、光重合開始剤を含有せず、照射される電子線が直接、硬化性成分の活性点に作用し、重合を進めるものである。しかし本発明において、接着剤を硬化させるために照射する活性エネルギー線として電子線を採用する場合は、活性エネルギー線(電子線)の照射による硬化反応が起こった後に、蛍光発生物質を残存させる成分が必要であることから、かかる蛍光発生物質を残存させる成分として、紫外線硬化型接着剤と同様、光重合開始剤を含有することが好ましい。そこで以下、これらの硬化性成分及び、蛍光発生物質を残存させる成分としての光重合開始剤について説明する。
【0054】
〈硬化性成分〉
硬化性成分は、重合反応によって硬化するモノマー又はオリゴマーであり、代表的なものとして、アクリル系化合物やエポキシ化合物を挙げることができる。アクリル系化合物は、ラジカル重合によって硬化し、その代表例に、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート、エポキシアクリレートなどがある。一方、エポキシ化合物は、カチオン重合によって硬化する。特に本発明においては、偏光フィルム1と透明樹脂フィルム2,3との接着性の観点から、エポキシ化合物が硬化性成分として好ましく用いられる。
【0055】
活性エネルギー線硬化型接着剤における硬化性成分となるエポキシ化合物は、1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物であり、典型的なものとして、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、ビスフェノールAやビスフェノールFのようなビスフェノール類(芳香族ジヒドロキシ化合物)とエピクロロヒドリンから合成されるものであって、ビスフェノール類のジグリシジルエーテルとしてほぼモノマーの形で存在するものもあるし、低次の重合体であるオリゴマーとして存在するものもある。接着性を高める観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂を混合して用いるのも有効である。
【0056】
また、先の特許文献1(特開 2004-245925号公報)に示されるような、分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物を硬化性成分の一つとすることも、得られる偏光板の耐候性、硬化後の接着剤層の屈折率、接着剤自体のカチオン重合性などの観点から好ましい。分子内に芳香環を含まないエポキシ化合物として、水素化エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などが例示できる。このようなエポキシ化合物は、上記特許文献1で詳細に説明されているが、ここでも概略を説明することとする。
【0057】
水素化エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物の原料である芳香族ポリヒドロキシ化合物に触媒の存在下及び加圧下で選択的に核水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物を、グリシジルエーテル化したものであることができる。芳香族エポキシ化合物の原料である芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェールF及びビスフェノールSのようなビスフェノール類;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂のようなノボラック型の樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン及びポリビニルフェノールのような多官能型の化合物などが挙げられる。このような芳香族ポリヒドロキシ化合物に核水素化反応を行い、得られる核水添ポリヒドロキシ化合物にエピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテル化することができる。好適な水素化エポキシ化合物として、水素化されたビスフェノールAのグリシジルエーテルが挙げられる。
【0058】
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルであることができる。より具体的には、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0059】
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に少なくとも1個有する化合物である。ここで「脂環式環に結合したエポキシ基」とは、次式に示される構造における橋かけの酸素原子−O−を意味し、この式中、mは2〜5の整数である。
【0060】
【化1】

【0061】
この式における (CH2)m 中の水素原子を1個又は複数個取り除いた形の基が他の化学構造に結合している化合物が、脂環式エポキシ化合物となりうる。また、脂環式環を形成する (CH2)m 中の1個又は複数個の水素原子は、メチルやエチルのような直鎖状アルキル基で適宜置換されていてもよい。脂環式エポキシ化合物のなかでも、オキサビシクロヘキサン環(上式においてm=3のもの)や、オキサビシクロヘプタン環(上式においてm=4のもの)を有するエポキシ化合物は、優れた接着性を示すことから、好ましく用いられる。以下に、脂環式エポキシ化合物の具体的な例を掲げる。ここには化合物名で掲げ、それぞれに対応する化学式は図2に示す。以下に示す化合物名と図2に示す化学式において、同じ化合物には同じ符号を付している。
【0062】
A:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、
B:3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、
C:エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、
D:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル) アジペート、
E:ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル) アジペート、
F:ジエチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
G:エチレングリコールビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルエーテル)、
H:2,3,14,15−ジエポキシ−7,11,18,21−テトラオキサトリスピロ[5.2.2.5.2.2]ヘンイコサン、
I:3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−8,9−エポキシ−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン、
J:4−ビニルシクロヘキセンジオキサイド、
K:1,2;8,9−ジエポキシリモネン、
L:ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、
M:ジシクロペンタジエンジオキサイドなど。
【0063】
エポキシ化合物を硬化性成分とする場合、そのエポキシ当量は、通常 30〜3,000g/当量、好ましくは50〜1,500g/当量である。
【0064】
以上説明したアクリル系化合物やエポキシ化合物は、硬化性成分としてそれぞれ単独で用いることもできるし、所望により複数の化合物を混合して用いることもできる。硬化性成分として複数の化合物を併用する場合、アクリル系化合物を2種以上用いることもできるし、エポキシ化合物を2種以上用いることもできるし、もちろんアクリル系化合物とエポキシ化合物を併用することもできる。
【0065】
〈蛍光発生物質となる光重合開始剤〉
本発明においては、活性エネルギー線硬化性接着剤中に、活性エネルギー線の照射による硬化反応が起こった後、紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質(蛍光発生物質)を残存させる成分を含有させる。典型的には、先の特許文献2(特開 2007-248244号公報)にも記載されるとおり、光重合開始剤が、かかる蛍光発生物質を残存させる成分となる。特許文献2の表1及びそれを参照した説明によれば、そこでは、市場から入手した22種類の紫外線硬化型樹脂のすべてにおいて、紫外線の照射により、それより波長の長い、すなわち400〜500nm程度の波長を有する蛍光を発することが確認されており、その蛍光は光重合開始剤に由来すると結論付けられている。そして、同文献の図5〜図9を参照すると、硬化反応の進行に伴って発せられる蛍光の強度が増加するので、光重合開始剤が紫外線の照射に伴う分解により、蛍光発生物質を増殖させていることも容易に理解される。そこで以下、活性エネルギー線の照射による硬化反応後に、かかる蛍光発生物質を残存させる成分となる光重合開始剤について説明する。
【0066】
本発明で用いる光重合開始剤は、それが硬化性成分とともに混合された接着剤に活性エネルギー線を照射して硬化反応が起こった後に、蛍光発生物質を残存させるものである。光重合開始剤自体も、通常は紫外線の照射を受けて蛍光を発するが、光重合反応に寄与して変化することで、上述の特許文献2にも示されるとおり、より一層強い蛍光を発する物質に変化することが多い。
【0067】
紫外線をはじめとする活性エネルギー線の照射を受けて、硬化性成分の重合反応を開始させるとともに、本発明においては蛍光発生物質を残存させる成分ともなる光重合開始剤は、(1)活性エネルギー線の照射を受けて活性ラジカルを発生し、硬化性成分のラジカル重合を開始させる光ラジカル重合開始剤、及び(2)活性エネルギー線の照射を受けて活性イオン種を発生し、硬化性成分のカチオン重合を開始させる光カチオン重合開始剤に大別される。先にも述べたとおり、アクリル系化合物はラジカル重合によって重合硬化するので、アクリル系化合物を硬化性成分とする場合には、光ラジカル重合開始剤が配合される。また、エポキシ化合物はカチオン重合によって硬化するので、エポキシ化合物を硬化性成分とする場合には、光カチオン重合開始剤が配合される。その他、熱によって重合反応を開始させる熱重合開始剤も知られているが、本発明においては、常温で硬化性成分を硬化させることが可能であり、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3の耐熱性や膨張による歪みを考慮する必要が減少し、また良好にフィルムを接着することができるという観点から、光重合開始剤を採用し、かつ活性エネルギー線の照射により接着剤を硬化させる。
【0068】
(1)光ラジカル重合開始剤
光ラジカル重合開始剤は、どのように活性ラジカルを生成するかによってさらに、水素引抜型と分子内開裂型に分類される。水素引抜型ラジカル重合開始剤としては、ベンゾフェノンやo−ベンゾイル安息香酸メチルをはじめとするベンゾフェノン系光重合開始剤などがある。分子内開裂型ラジカル重合開始剤としては、ベンゾインメチルエーテルをはじめとするベンゾイン系光重合開始剤、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンをはじめとするベンジルケタール系光重合開始剤、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンをはじめとするα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンをはじめとするα−アミノアセトフェノン系光重合開始剤などがある。
【0069】
光ラジカル重合開始剤は、例えばBASF社から“IRGACURE 651”や“DAROCUR 1173”など、各種のものが販売されている。
【0070】
(2)光カチオン重合開始剤
光カチオン重合開始剤には、トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートやトリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロアンチモネート、4,4′−ビス(ジフェニルスルホニオ)ジフェニルスルフィド ビスヘキサフルオロホスフェートをはじめとするスルホニウム塩系の光カチオン重合開始剤、(4−メチルフェニル)〔4−(2−メチルプロピル)フェニル〕ヨードニウム ヘキサフルオロフォスフェートをはじめとするヨードニウム塩系の光カチオン重合開始剤などがある。
【0071】
光カチオン重合開始剤も、例えば、ダウケミカル社から “CYRACURE UVI-6692”、BASF社から“IRGACURE 250”など、各種のものが販売されている。
【0072】
以上説明した光重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。重合開始剤の配合量は、活性エネルギー線硬化型接着剤を構成する硬化性成分100重量部に対して、通常 0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜15重量部である。
【0073】
ここで、図3を参照して、光重合開始剤がトリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェートである場合を例に、その光重合開始剤が活性エネルギー線(紫外線)の照射を受けて、硬化性成分の重合を開始させる物質を生じるとともに、蛍光発生物質を生じる機構を説明する。図3は、この場合の反応スキーム図である。
【0074】
図3を参照して、光重合開始剤であるトリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート(1)は、活性エネルギー線(紫外線)の照射を受けて、ジフェニルスルホニウミルラジカル(2)、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(3)及びフェニルラジカル(4)に分解する。フェニルラジカル(4)はその後、二つのラジカルが結合してビフェニル分子になったり、周囲の水分と反応してフェノール分子になったりして安定化すると考えられるが、ここではフェニルラジカル(4)のその後の挙動は省略する。一方、ジフェニルスルホニウミルラジカル(2)は、周囲から水素を引き抜いて、ジフェニルスルホニウムカチオン(2a)となり、そこからプロトンH+ がヘキサフルオロホスフェートアニオン(3)に移動して、ジフェニルスルホン(2b)とヘキサフルオロリン酸(3b)を生じる。そして、ヘキサフルオロリン酸(3b)は、エポキシ化合物などの硬化性成分の重合に関与する一方で、ジフェニルスルホン(2b)は、蛍光発生物質となる。他の多くの光重合開始剤も、前記特許文献2(特開 2007-248244号公報)に記載されるとおり、類似の反応で蛍光発生物質を生じる。
【0075】
〈活性エネルギー線硬化型接着剤の任意成分〉
活性エネルギー線硬化型接着剤は、さらにオキセタン化合物やポリオール化合物など、重合を促進する化合物を含有していてもよい。オキセタン化合物は、分子内に4員環エーテルを有する化合物であり、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、ビス〔(3−エチル−3−オキセタニル)メチル〕エーテル、3−エチル−3−(2−エチルヘキシルオキシメチル)オキセタンなどを挙げることができる。かかるオキセタン化合物は、市販品を容易に入手することが可能である。市販品の例を挙げると、いずれも東亞合成株式会社から販売されている商品名で、“アロンオキセタン OXT-101”、“アロンオキセタン OXT-221”、“アロンオキセタン OXT-212”などがある。オキセタン化合物を配合する場合、その量は、活性エネルギー線硬化型接着剤中で、通常5〜95重量%、好ましくは30〜70重量%である。
【0076】
一方、ポリオール化合物は、フェノール性水酸基以外の酸性基を有しないものが好ましく、例えば、水酸基以外の官能基を有しないポリオール化合物、ポリエステルポリオール化合物、ポリカプロラクトンポリオール化合物、フェノール性水酸基を有するポリオール化合物、ポリカーボネートポリオールなどを挙げることができる。ポリオール化合物の分子量は、好ましくは62以上、また好ましくは 1,000以下である。ポリオール化合物を配合する場合、その量は、活性エネルギー線硬化型接着剤中で、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
【0077】
〈活性エネルギー線硬化型接着剤に関するその他の説明〉
偏光フィルム1と第一の透明樹脂フィルム2との接着、及び偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3との接着には、同じ接着剤を用いることが多く、かつ生産性の面からもそのほうが好ましい。しかし、第一の透明樹脂フィルム2と第二の透明樹脂フィルム3とが異なる種類であり、偏光フィルムへの接着性の面から、異なる種類の接着剤を用いることも可能である。その場合であっても、二つの接着剤がいずれも活性エネルギー線硬化型であり、活性エネルギー線の照射による硬化反応が起こった後に、紫外線の照射を受けて蛍光発生物質を残存させる成分を含有するという要件を満たす限りにおいて、本発明の方法を適用することができる。
【0078】
[偏光板の製造方法]
次に図1を参照しながら、本発明に係る偏光板の製造方法について説明する。図1の装置について改めて説明すると、この例では、一定方向に搬送される偏光フィルム1の一方の面に、第一の透明樹脂フィルム2が供給され、偏光フィルム1の他方の面には、第二の透明樹脂フィルム3が供給され、これら3枚のフィルムが貼合用ニップロール21,22で貼合されて積層体4となり、積層体4の第一の透明樹脂フィルム2側に配置された活性エネルギー線照射装置41から活性エネルギー線の照射を受けた後、搬送用ガイドロール24及び巻取り前ニップロール25,26を経て、得られる偏光板5が製品ロール30に巻き取られるように、装置が構成されている。
【0079】
偏光フィルム1は、図示しない偏光フィルム製造工程において、先述した方法により、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、及び染色後のホウ酸処理を経て製造された状態でそのまま供給されることが多いが、もちろん、偏光フィルム製造工程において製造されたものを一旦ロールに巻き取った後、繰出し機により繰り出すようにしてもよい。一方、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3は、例えば、それぞれ図示しないロールに巻回された状態から、繰出し機により繰り出される。それぞれのフィルムは、同じ搬送速度で、流れ方向が同じになるように搬送される。
【0080】
第一の透明樹脂フィルム2は、その偏光フィルム1へ貼合される面に、予め第一の塗工機10から接着剤が塗布された後、その接着剤塗布面が偏光フィルム1の片面に重ね合わされる。一方、第二の透明樹脂フィルム3は、その偏光フィルム1へ貼合される面に、予め第二の塗工機15から接着剤が塗布された後、その接着剤塗布面が偏光フィルム1の他面に重ね合わされる。貼合用ニップロール21,22により貼合された積層体4は、その第二の透明樹脂フィルム3側が接触ロール23に巻き付けられ、そこに密着した状態で、活性エネルギー線照射装置41からの活性エネルギー線照射を受ける。
【0081】
そして本発明では、活性エネルギー線照射装置41から活性エネルギー線の照射を受けて接着剤を硬化させた後の偏光板5に対し、その第二の透明樹脂フィルム3側に配置された蛍光強度測定装置43から、偏光フィルター45を介して紫外線47を照射し、その紫外線47を受けて発する蛍光48,49のうち、主に活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層に起因する蛍光48を蛍光強度測定装置43で検知し、その強度を計測して、接着剤の硬化状態を判定する。
【0082】
すなわち、本発明に係る偏光板の製造方法は、先にも述べたとおり、以下に示す(A)〜(C)の各工程を備える。
【0083】
(A)偏光フィルム1の一方の面に活性エネルギー線硬化型接着剤を介して第一の透明樹脂フィルム2を、他方の面に活性エネルギー線硬化型接着剤を介して第二の透明樹脂フィルム3をそれぞれ重ね合わせて積層体4を得る積層工程、
(B)上記積層工程(A)で得られる積層体4の第一の透明樹脂フィルム2側から活性エネルギー線を照射して活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させ、偏光板5を得る硬化工程、及び
(C)上記硬化工程(B)で得られる偏光板5の第二の透明樹脂フィルム3側から、その面は偏光板5の面と平行に、かつその吸収軸は偏光フィルム1の吸収軸と直交するように配置された偏光フィルター45を介して、蛍光強度計測用の紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物から発せられる蛍光の強度を計測する蛍光強度計測工程。
【0084】
また、これらの工程を経たうえで、上記の蛍光強度計測工程(C)において、偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3とが十分な強度で接着していると判断できる蛍光強度が得られるように、上記の硬化工程(B)における活性エネルギー線の照射量を決定する操作を行う。以下、これらの工程ないし操作につき、順を追って説明する。
【0085】
〈(A)積層工程〉
積層工程(A)は、例えば、ロール状に巻回された状態から連続的に繰り出される透明樹脂フィルム2,3のそれぞれ偏光フィルム1に重ね合わされる面に、塗工機10,15から活性エネルギー線硬化型接着剤を塗布し、両者の間に搬送される偏光フィルム1の両面にそれぞれの接着剤塗布面を重ね合わせ、貼合用ニップロール21,22により挟んで厚み方向に加圧することにより、行われる。
【0086】
図示の例では、第一の透明樹脂フィルム2の偏光フィルム1へ貼合される面に、予め第一の塗工機10から接着剤が塗布された後、その接着剤塗布面が偏光フィルム1の片面に重ね合わされるようになっている。また、第二の透明樹脂フィルム3の偏光フィルム1へ貼合される面にも、予め第二の塗工機15から接着剤が塗布された後、その接着剤塗布面が偏光フィルム1の他面に重ね合わされるようになっている。
【0087】
第一の塗工機10及び第二の塗工機15では、それぞれが備えるグラビアロール11,16から、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3にそれぞれ接着剤を塗布するようになっている。ここでグラビアロールとは、凹溝を有するロールであって、その凹溝に予め接着剤が充填され、その状態で透明樹脂フィルム2,3上を回転することにより、透明樹脂フィルム2,3上に接着剤を転写するものである。ここに示す例では、グラビアロール11,16が、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3のそれぞれ搬送方向に対し、それぞれの接触部で逆向きに回転するようになっている。塗工機10,15にはその他、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーターなど、別の塗工方式を適用することもできるが、薄膜塗工、パスラインの自由度、幅広化への対応などを考慮すると、図示のようなグラビアロール11,16を備えるグラビアコーターが好ましい。
【0088】
第一の塗工機10及び第二の塗工機15として、グラビアロール11,16を備えるグラビアコーターを用いて接着剤の塗布を行う場合、透明樹脂フィルム2,3の進行速度に相当するライン速度と、グラビアロール11,16の回転周速度との比を調整することによって、接着剤層の厚さを適宜調節することができる。接着剤層の塗布厚さは、例えば、約1〜10μm とすることが好ましい。
【0089】
〈(B)硬化工程〉
硬化工程(B)は、先の積層工程(A)で得られる積層体4に活性エネルギー線を照射し、積層体4中の活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させて、偏光板5を得る工程である。活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化により、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3がそれぞれ、偏光フィルム1に強固に接着する。
【0090】
図示の例では、積層体4を接触ロール23に巻きつけてそこに密着させながら、積層体4を挟んで接触ロール23とは反対側に位置する活性エネルギー線照射装置41から活性エネルギー線を照射するようになっている。特に、活性エネルギー線の照射を受けた硬化反応により接着剤が熱を発生する場合は、このように接触ロール23を設けてそこに積層体4を密着させながら活性エネルギー線を照射することが、熱の影響を軽減するうえで好ましい。とりわけ、接触ロール23に温度調節機能を付与し、冷却ロールとして作用させることが好ましい。温度調節機能は、例えば、接触ロール23を金属で構成し、その内部に流体通路を設け、そこに水などの冷却用流体を流す方式により付与することができる。この場合、接触ロール23の表面温度は20〜25℃程度に設定することが好ましい。
【0091】
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、紫外線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどを用いることができる。この場合の紫外線の照射強度は、用いる接着剤の組成などに応じて決定されるが、開始剤の活性化に有効な波長領域における照射強度を0.1〜1,000mW/cm2 程度の範囲から適宜選択すればよい。
【0092】
積層体4への紫外線の照射時間も、やはり接着剤の組成などに応じて決定される。本発明では、後述する蛍光強度計測工程(C)において、偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3とが十分な強度で接着していると判断できる蛍光強度が得られるように、硬化工程(B)における活性エネルギー線の照射量を決定する。活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、その照射量は、照射強度と照射時間の積として表される積算光量となる。この積算光量が、通常は10〜2,000mJ/cm2の範囲から、上の要件を満たすように選択される。図示のように積層体4を接触ロール23に密着させた状態で紫外線を照射する形態を採用する場合には、積層体4が接触ロール23に密着している間に、この積算光量が達成できるようにすることが、接着剤を十分に重合硬化させるうえで特に好ましい。このときの積算光量があまり少ないと、開始剤由来の活性種の発生が十分でなく、接着剤の硬化が不十分となる可能性がある。一方で、その積算光量があまり大きいと、照射される紫外線によって、透明樹脂フィルム、偏光フィルム及び/又は接着剤に劣化を生じることがある。
【0093】
積層体4のライン速度は特に限定されないが、長手方向(搬送方向)に100〜800Nの張力をかけながら、積算光量が上の値となるように、ライン速度は10〜50m/分程度の範囲内で設定することが好ましい。
【0094】
紫外線の照射により接着剤を硬化させる場合、その紫外線が照射される側となる第一の透明樹脂フィルム2は、照射される紫外線を透過して接着剤を十分に硬化させるうえで、接着剤を構成する光重合開始剤の活性化に有効な波長領域の一部又は全領域における透過率が60%以上となるものであることが好ましい。
【0095】
〈(C)蛍光強度計測工程〉
上の硬化工程(B)を経て、偏光板5が製造されるのであるが、生産の連続による活性エネルギー線源の劣化、その他各種製造条件の変動などに伴って、偏光フィルム1と透明樹脂フィルム2,3との間の接着力にバラツキを生じ、場合によっては接着力が十分でなく、得られる偏光板5が不良品となることもある。そこで本発明では、活性エネルギー線照射装置41から活性エネルギー線の照射を受けて接着剤を硬化させた後の偏光板5に対し、その第二の透明樹脂フィルム3側に配置された蛍光強度測定装置43から、偏光フィルター45を介して紫外線47を照射し、その紫外線47を受けて発せられる蛍光48,49のうち、主に活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層に起因する蛍光48を蛍光強度測定装置43で検知し、その強度を計測して、接着剤の硬化状態を判定する。
【0096】
すなわち、蛍光強度計測工程(C)は、先の硬化工程(B)で得られる偏光板5に蛍光強度計測用の紫外線を照射し、その紫外線を受けて接着剤の硬化物層から発せられる蛍光の強度を計測する工程である。
【0097】
この工程を、図4に基づいて説明する。先の硬化工程(B)で得られる偏光板5は、偏光フィルム1の一方の面に第一の透明樹脂フィルム2が、偏光フィルム1の他方の面に第二の透明樹脂フィルム3が、それぞれ活性エネルギー線硬化型接着剤を介して貼合され、それぞれの接着剤が硬化した状態となっている。図4では、偏光フィルム1と第一の透明樹脂フィルム2の間にある接着剤の硬化物層を第一の硬化物層7、また偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3の間にある接着剤の硬化物層を第二の硬化物層8として表示している。
【0098】
そして先の硬化工程(B)では、偏光板5(積層体4)の第一の透明樹脂フィルム2側から活性エネルギー線Rを照射している。これにより、第一の透明樹脂フィルム2側にある第一の硬化物層7と第二の透明樹脂フィルム3側にある第二の硬化物層8とでは、照射される活性エネルギー線R側に近い第一の硬化物層7のほうが、硬化度はより高い状態となる。
【0099】
次の蛍光強度計測工程(C)において、引き続き第一の透明樹脂フィルム2側から蛍光強度計測用の紫外線を照射することも考えられるものの、特に第一の透明樹脂フィルム2が紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を含有する場合には、当該第一の透明樹脂フィルム2がその紫外線を受けて蛍光を発するため、検知される蛍光の強度と接着剤の硬化物層7,8の硬化状態とが直接相関することにはならない。一方、第二の透明樹脂フィルム3側から蛍光強度計測用の紫外線を照射すれば、その紫外線が第二の硬化物層8及び第一の硬化物層7に順次到達して、それぞれを励起し、蛍光を発するものの、やはり第一の透明樹脂フィルム2が紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を含有する場合には、当該第一の透明樹脂フィルム2にもその紫外線が到達して蛍光を発するので、検知される蛍光の強度と接着剤の硬化物層7,8の硬化状態とが、やはり直接相関することにはならない。
【0100】
そこで本発明では、蛍光強度計測用の紫外線を出射し、その紫外線を受けた物質から発生する蛍光を検知し、その強度を計測するようになっている蛍光強度測定装置43を第二の透明樹脂フィルム3側に配置し、当該第二の透明樹脂フィルム3は紫外線の照射を受けても蛍光を発しないものとするとともに、蛍光強度測定装置43と偏光板5の第二の透明樹脂フィルム3との間に偏光フィルター45を配置する。そして、偏光フィルター45の面は偏光板5の面と平行にし、かつその吸収軸45aは偏光板5を構成する偏光フィルム1の吸収軸1aと直交させ、クロスニコルとする。図4において、偏光フィルム1の吸収軸1aは紙面と平行な横方向に描かれている。一方、偏光フィルター45の吸収軸45aは○の中に×を入れた状態で描かれているが、これは紙面と直交する方向に軸があることを意味する。このように、偏光フィルター45を偏光フィルム1に対してクロスニコルで配置することで、蛍光強度測定装置43から出射される蛍光強度計測用の紫外線47は、以下のように作用する。
【0101】
すなわち、蛍光強度測定装置43からの出射光は紫外線であり、偏光フィルター45及び偏光フィルム1はいずれも、主に可視光線に対して偏光能を示すので、蛍光強度測定装置43から出射される紫外線47は相応の透過率で偏光フィルター45を通過し、以降、第二の透明樹脂フィルム3、第二の硬化物層8、偏光フィルム1及び第一の硬化物層7を順次通過して、第一の透明樹脂フィルム2に達する。この間にこの紫外線47は、第二の硬化物層8、及び第一の硬化物層7にそれぞれ存在する蛍光発生物質を励起させ、蛍光を発する。また、第一の透明樹脂フィルム2が蛍光発生物質を含む場合は、その蛍光発生物質も励起させ、蛍光を発する。これらの蛍光はいずれも、400〜500nm程度の波長を有する可視光となる。
【0102】
そして、第二の硬化物層8から生じた蛍光のうち、蛍光強度測定装置43側へ向かう成分は、第二の透明樹脂フィルム3を経て偏光フィルター45に到達するので、その吸収軸45aに平行な振動面を有する直線偏光はそこで吸収され、それと直交する、すなわち偏光フィルター45の透過軸に平行な振動面を有する直線偏光である蛍光48となって、蛍光強度測定装置43に到達する。一方、第一の透明樹脂フィルム2にまで達する紫外線によって励起され、第一の透明樹脂フィルム2から生じた蛍光、及び第一の硬化物層7から生じた蛍光のうち、蛍光強度測定装置43側へ向かう成分は、まず偏光フィルム1を通るので、偏光フィルム1の吸収軸1aに平行な振動面を有する直線偏光はそこで吸収され、それと直交する、すなわち偏光フィルム1の透過軸に平行な振動面を有する直線偏光である蛍光49となり、第二の透明樹脂フィルム3を経て偏光フィルター45に到達する。偏光フィルター45の吸収軸45aは偏光フィルム1の透過軸方向となっているので、偏光フィルム1を通過して偏光フィルター45側へ向かう蛍光49は偏光フィルター45で吸収されて遮られ、蛍光強度測定装置43には到達しない。
【0103】
こうして、蛍光強度測定装置43には、事実上第二の硬化物層8が発する蛍光48のみが到達するので、その強度を計測することにより、第二の硬化物層8の硬化状態が推定できる。先にも述べたように、第一の硬化物層7と第二の硬化物層8とでは、第二の硬化物層8のほうが、硬化のために照射される活性エネルギー線Rから遠い位置にあるので、硬化度はより低い状態となっている。そのため、こちら側、すなわち第二の硬化物層8が十分に硬化し、偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3とが十分に接着していると判断できる蛍光強度が得られれば、偏光フィルム1と第一の透明樹脂フィルム2も十分に接着しているとみなすことができる。
【0104】
また以上の説明からわかるとおり、第一の透明樹脂フィルム2が紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を含有する場合であっても、そこからの蛍光49に影響を受けることなく、事実上第二の硬化物層8が発する蛍光48に起因する強度を計測することができる。したがって、第一の透明樹脂フィルム2が紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を含有しない場合でももちろん、事実上第二の硬化物層8が発する蛍光48のみに起因する強度を計測することができる。
【0105】
蛍光強度測定装置43としては、「背景技術」の項で特許文献2(特開 2007-248244号公報)を引用して説明したような、同文献の発明に基づいて開発された装置を用いることができる。例えば、株式会社センテックから“UV硬化センサー OL シリーズ”という名で販売されている装置がある。この装置は、同社のホームページ中、<URL : http://www.sentech.jp/seihin/seihin02.html>で紹介されており、そのページで関連付けられている <URL : http://www.sentech.jp/images/uvkoukasennsa-katarogu2.pdf> には、カタログも掲載されている(インターネット、いずれも平成23年4月13日検索)。
【0106】
このシリーズには、検出器の感度や光源からの投光量、光源の波長などによって、いくつかのバージョンがあるが、いずれも、内部に励起用のLED光源を有し、そこから発せられる所定波長の紫外線47を被測定物(ここでは偏光板5)に照射し、被測定物(偏光板5中の、特に第二の硬化物層8)がその紫外線の照射を受けて発する蛍光48を、やはり内部に設けられた検出器が検知するようになっている。検知された蛍光の強度は、ボルト(V)の単位で出力される。株式会社三ツワフロンテックのホームページ中、 <URL : http://www.mitsuwa.co.jp/goods/goods/keikoukyoudo/keikoukyoudo.html>にも、同様の装置が「蛍光強度測定装置」という名で紹介されている(インターネット、平成23年4月13日検索)。
【0107】
偏光フィルター45には、適宜の市販品を用いることができる。先に図4を参照して説明したとおり、偏光フィルター45は、蛍光強度測定装置43から出射される紫外線を透過して、少なくとも第二の硬化物層8にまで至らせる必要があるので、波長400nm以下の紫外域においてもある程度の単体透過率、例えば10%以上の単体透過率を示すものが好ましい。市販されている偏光フィルターの例を挙げると、株式会社ルケオから販売されている可視光線域直線偏光板“POLAX-32N”及び“POLAX-38N”などがある。また、一般の偏光板、すなわち、ポリビニルアルコール系樹脂にヨウ素が吸着配向している偏光フィルムの両面に保護フィルムが貼合された偏光板も、可視域において良好な偏光能を示し、紫外域においてある程度の単体透過率を示すものであれば、簡易的にこれを偏光フィルター45として用いることが可能である。
【0108】
〈計測された蛍光強度に基づく活性エネルギー線照射量の決定〉
本発明に係る偏光板の製造方法は、以上説明した積層工程(A)、硬化工程(B)及び蛍光強度計測工程(C)を備えるとともに、この蛍光強度計測工程(C)での計測結果に基づき、この蛍光強度計測工程(C)において、偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3とが十分に接着していると判断できる蛍光強度が得られるように、硬化工程(B)における活性エネルギー線の照射量を決定する。この硬化工程(B)における活性エネルギー線の照射量を決定する操作は、先に述べた偏光板における接着剤の硬化状態評価方法という観点からは、蛍光強度計測工程(C)で得られる蛍光強度に基づき、偏光板における活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化状態を評価する評価工程(D)を含むものとなる。
【0109】
すなわち、先にも述べたとおり、蛍光強度計測工程(C)において、蛍光強度測定装置43から出射される紫外線の照射を受けて第二の硬化物層8から発せられる蛍光48の強度(蛍光強度)は、第二の硬化物層8における光重合開始剤の化学的状態に応じて変化する。そのため、この蛍光強度を計測することにより、第二の硬化物層8においてどの程度の量の光重合開始剤が消費されたか、換言すれば、第二の硬化物層8がどの程度硬化し、偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3とが、どの程度接着しているかという接着性の状態を評価することができる。
【0110】
そして、計測された蛍光強度を予め設定された基準値と対比することにより、偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3との接着性を評価し、偏光板5の品質の良否を判断することができる。蛍光強度の基準値は、例えば次項で述べる方法によって設定することができる。この基準値は、第二の硬化物層8において光重合開始剤が実質的に消費された時点、すなわち、偏光フィルム1と第二の透明樹脂層3との接着性が十分となった時点での蛍光強度とみなすことができる。活性エネルギー線硬化型接着剤には、反応率や温度変動などを考慮して理論的な必要量を超える量の光重合開始剤が配合されることが多いため、光重合開始剤が「実質的に消費された時点」とは、十分な硬化反応を起こすのに必要な活性種(活性ラジカル又は活性イオン種)が光重合開始剤から生じた状態を意味する。
【0111】
蛍光強度計測工程(C)において計測される蛍光強度に基づき、硬化工程(B)における活性エネルギー線の照射量を決定する操作は、具体的には、上で延べた基準値を設定することと、その基準値を閾値として、蛍光強度計測工程(C)において計測される蛍光強度をその基準値と対比することと、その対比結果を硬化工程(B)にフィードバックすることとを含む方法によって行うことができる。これらのうち、「蛍光強度計測工程(C)において計測される蛍光強度をその基準値と対比する」ことは、先に述べた偏光板における接着剤の硬化状態評価方法という観点からは、蛍光強度計測工程(C)で得られる蛍光強度に基づき、偏光板における活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化状態を評価する評価工程(D)に相当する。
【0112】
〈基準値(閾値)の設定:予備実験〉
蛍光強度計測工程(C)において計測される蛍光強度と対比するための基準値(閾値)は、例えば、以下の(1)〜(5)の手順を有する予備実験により、設定することができる。
【0113】
(1)実操業に供されるのと同じ偏光フィルム1、第一の透明樹脂フィルム2、第二の透明樹脂フィルム3、及び接着剤を用い、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3のそれぞれ偏光フィルム1に貼合される面に、接着剤を実操業時とほぼ同じ厚さで塗布し、その接着剤塗布面を偏光フィルム1の両面それぞれに重ね合わせて、モデル試料を作製する。
【0114】
(2)上記(1)で作製されたモデル試料の第一の透明樹脂フィルム2側から、照射量を段階的に変えて活性エネルギー線を照射し、接着剤の硬化状態が異なるモデル試料、例えば、硬化が十分でない状態から十分に硬化した状態までの複数の硬化段階にあるモデル試料を作製する。硬化が十分でないモデル試料は、少なくとも一つあればよい。一方、十分に硬化したモデル試料は、硬化が十分でない上記モデル試料にできるだけ近い照射量で硬化させたものを含む少なくとも二つ用意するのが望ましい。
【0115】
(3)上記(2)で作製された複数のモデル試料について、第二の透明樹脂フィルム3側から、先に説明したような蛍光強度測定装置43及び偏光フィルター45を用いて紫外線を照射し、それを受けて放射される蛍光の強度を計測することにより、硬化時の活性エネルギー線照射量と蛍光強度との関係を取得する。
【0116】
(4)上記(2)で作製された複数のモデル試料について、物理的な接着性評価方法により、その接着性を評価し、硬化時の活性エネルギー線照射量と接着性との関係を取得して、十分に接着していると判断できる硬化時の活性エネルギー線照射量を決定する。物理的な接着性評価は、例えば、次のような方法によって行うことができる。すなわち、一つは、カッターナイフで一方の透明樹脂フィルム(本発明では第二の透明樹脂フィルム3)表面から偏光フィルム1が露出するような溝を設け、その偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3との界面にカッターナイフの刃先を押し当てて、刃の進み具合で評価する方法(後述する実施例で用いた方法)である。もう一つは、一方の透明樹脂フィルム(本発明では第二の透明樹脂フィルム3)だけをつかみ、偏光フィルム1から90度方向(フィルム面と直交する方向)に剥がす90度剥離試験、又は180度方向(折り返してフィルム面に沿う方向)に剥がす180度剥離試験を行い、そのときの剥離強度を求める方法である。
【0117】
(5)上記(3)で取得した硬化時の活性エネルギー線照射量と蛍光強度との関係を、上記(4)で決定された十分に接着していると判断できる硬化時の活性エネルギー線照射量と対比し、十分に接着していると判断できる硬化時の活性エネルギー線照射量の最低値を、基準値(閾値)とする。
【0118】
〈計測される蛍光強度と基準値との対比:(D)評価工程〉
蛍光強度計測工程(C)で計測された蛍光強度は、上記のようにして設定される基準値(閾値)と対比される。これにより、偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3との接着性が評価される。すなわち、ここでの対比は、評価工程(D)に相当する。
【0119】
この対比、すなわち評価工程(D)において、蛍光強度計測工程(C)で計測される蛍光強度が基準値(閾値)よりも高ければ、得られた偏光板5は、偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3が十分に接着していると評価することができ、延いては偏光フィルム1と第一の透明樹脂フィルム2も十分に接着していると評価することができる。一方、蛍光強度計測工程(C)で計測される蛍光強度が基準値(閾値)よりも低ければ、得られた偏光板5は、偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3が十分に接着していないと評価することができる。こうして、偏光板5における接着性が、剥離試験などによる偏光板5の破壊を伴うことなく、評価できる。また、蛍光強度計測工程(C)で計測される蛍光強度が基準値(閾値)に近づいて漸減傾向にあれば、活性エネルギー線照射装置41の線源が劣化しつつあると評価することができる。
【0120】
〈対比結果の硬化工程(B)へのフィードバック〉
蛍光強度計測工程(C)で計測される蛍光強度が、基準値(閾値)に比べて高い場合には、硬化工程(B)におけるそれまでの操業条件を維持すればよい。一方、その蛍光強度が基準値(閾値)に比べて低い場合、あるいは基準値(閾値)に近づいて漸減傾向にある場合には、硬化工程(B)における照射量が不足して十分な接着力が得られなくなっているか、又はその状態に近づきつつあると判定して、この結果を硬化工程(B)にフィードバックし、硬化工程(B)における活性エネルギー線照射装置41の出力を上げるなどして、そこからの照射量を増加させる。場合によっては、活性エネルギー線照射装置41の線源を取り換える操作が必要になることもある。
【0121】
活性エネルギー線が紫外線である場合、その照射量は、照射強度と照射時間の積である積算光量(単位は、例えば mJ/cm2)で表される。その場合に必要とされる積算光量は、10〜2,000mJ/cm2の範囲に入ることが多く、接着剤の組成や用いる透明樹脂フィルム2,3の種類などに応じて、先述した予備実験により決定することができる。一方、活性エネルギー線が電子線である場合、その照射量は、照射線量(単位は、例えばグレイ:Gy)で表される。
【0122】
〈連続生産ラインへの適用〉
偏光板の工業的な生産ラインにおいては、図1に示されるように、偏光フィルム1、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3が、それぞれ連続的に搬送されながら、それらが貼合される。そして、本発明において規定する積層工程(A)、硬化工程(B)及び蛍光強度計測工程(C)は、上の説明からわかるように、いずれもこの生産ラインに組み込むことができる。
【0123】
偏光フィルム1、第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3の組合せが決まれば、偏光フィルム1と第一の透明樹脂フィルム2との接着に用いる接着剤、及び偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3との接着に用いる接着剤が決まり、ほぼ同一の照射条件で操業される。この際一般には、偏光フィルム1と第一の透明樹脂フィルム2との接着、及び偏光フィルム1と第二の透明樹脂フィルム3との接着に、同一の種類の接着剤を用いることが多い。そして、接着剤の組成毎に蛍光強度の閾値を予め設定しておき、その閾値を基準として、蛍光強度計測工程(D)において計測される蛍光強度の値をその閾値と対比することにより、偏光板5における接着剤の硬化状態を推定し、接着性の評価を行うことが実用的であり、かつ有効である。
【0124】
基準となる閾値との対比によるため、接着剤の相対的な硬化状態、すなわち、偏光フィルム1と、それを挟んで活性エネルギー線照射装置41から遠い側にある第二の透明樹脂フィルム3との接着性を容易に評価することができる。また、基準となる閾値からの乖離状態を継続的に監視することで、活性エネルギー線源(紫外線光源又は電子線源)の劣化傾向を早期に発見することができる。例えば、計測される蛍光強度が基準となる閾値に向かって漸減するようであれば、活性エネルギー線源の劣化を疑うことができる。これにより、不良品の大量発生等を抑制して、生産歩留りの向上が実現できる。
【0125】
そして、蛍光強度計測工程(C)で計測される蛍光強度に基づいて、硬化工程(C)における活性エネルギー線の照射量を決定する操作もインラインに組み込んでおけば、偏光板の生産ラインにおける効率を一層高めることができる。蛍光強度計測工程(C)において計測される蛍光強度を基準値(閾値)と対比する操作は、一旦基準値(閾値)が設定されれば、それをコンピュータに入力し、計測された蛍光強度が基準値(閾値)を下回ったり、基準値に向かって漸減傾向を示したりした場合に、警告が発せられるようにしておけばよい。また、その対比結果を硬化工程(B)にフィードバックする操作は、上の警告に基づいて、硬化工程(B)のために使用する活性エネルギー線照射装置41の出力を上げることにより行われる。この操作は、手動で行うこともできるし、コンピュータにその旨のプログラムを組んでおくこともできる。計測された蛍光強度が基準値に向かって漸減傾向を示すか、あるいは、漸減傾向を示した後に基準値(閾値)を下回った場合には、活性エネルギー線照射装置41における活性エネルギー線源(紫外線光源又は電子線源)の取り換えが行われる。
【実施例】
【0126】
以下に具体的な実験例を示して、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、使用量を表す部は、特記ない限り重量基準である。またここでは、適当な大きさに裁断されたフィルムを用いて、小スケールの実験を行った例を示すが、フィルムや機械などについては、図1及び図4に付した符号を適宜参照しながら説明を進める。
【0127】
[製造例1]:紫外線硬化型接着剤の調製
次の各成分を混合し、脱泡して、液状の紫外線硬化型接着剤を調製した。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂 80部
ビスフェノールF型エポキシ樹脂 20部
トリフェニルスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート(開始剤) 4部
【0128】
[実験例1]
第一の透明樹脂フィルム2として、三菱樹脂株式会社から入手した厚さ38μm の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである“ダイアホイル”(商品名)を用いた。このフィルムは、波長280〜400nmにおける平均透過率が61%であった。また、第二の透明樹脂フィルム3として、日本ゼオン株式会社から入手した厚さ60μm の非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムである“ゼオノアフィルム”(商品名)を用いた。このフィルムは、波長280〜400nmにおける平均透過率が88%であり、波長365nmにおける透過率が90%であった。
【0129】
(積層工程)
第一の透明樹脂フィルム2である二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面には、上の製造例1に示した紫外線硬化型接着剤を、厚さが約2μm となるように塗工した。また、第二の透明樹脂フィルム3である非晶性ポリオレフィン樹脂フィルムの片面にも、やはり上の製造例1に示した紫外線硬化型接着剤を、厚さが約2μm となるように塗工した。そして、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している厚さ約30μm の偏光フィルム1の片面に、上記第一の透明樹脂フィルム2の接着剤塗布面を、偏光フィルム1の他面には、上記第二の透明樹脂フィルム3の接着剤塗布面をそれぞれ重ね合わせて、積層体4とした。
【0130】
(硬化工程)
その後、積層体4の第一の透明樹脂フィルム2側に紫外線照射装置41(株式会社GSユアサ製)を配置し、そこに備えられたメタルハライドランプから出力を3水準で変化させて紫外線を照射し、上記接着剤を硬化させて、偏光板5を作製した。この際、3水準で変化させた紫外線照射装置の出力は、280〜400nmの波長域における積算光量でそれぞれ、1,400mJ/cm2、700mJ/cm2及び400mJ/cm2に相当していた。
【0131】
(蛍光強度計測工程)
得られた偏光板5の第二の透明樹脂フィルム3側(非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム側)に、偏光フィルター45及び蛍光強度測定装置43をこの順で配置した。ここで用いた偏光フィルター45は、波長280〜400nmにおける平均単体透過率が31%、波長365nmにおける単体透過率が31%であった。この偏光フィルター45を、その面が偏光板5の面と平行になるように、そしてその吸収軸45aが偏光板5を構成する偏光フィルム1の吸収軸1aと直交するように、すなわち、偏光板5に対してクロスニコルで配置した。また、ここで用いた蛍光強度測定装置43は、株式会社センテック製の“UV硬化センサー OL201”(商品名)であって、内部に励起用LED光源を有し、そこから出射される波長365nmの紫外線47を被測定物(ここでは偏光板5)に照射し、被測定物(偏光板5中の、特に紫外線硬化型接着剤の硬化物層)がその紫外線の照射を受けて発する蛍光48を、やはり内部に設けられた検出器が検知するようになっている。検知された蛍光は、ボルト(V)の単位で出力される。
【0132】
蛍光強度測定装置43と偏光板5の距離は約35mm、蛍光強度測定装置43のLED光源からの投光量は最大出力の40%、検出器の感度つまみは 9.0に設定した。また、被測定物としてステンレス鋼板のみを置いて測定したときに装置の表示値がゼロとなるように、オフセットを設定した。
【0133】
上記のように蛍光強度測定装置43と偏光板5の間に偏光フィルター45を、偏光フィルム1に対してクロスニコルで介在させることにより、先に図4を参照して説明したとおり、蛍光強度測定装置43から出射される紫外線47は、第二の硬化物層8、第一の硬化物層7及び第一の透明樹脂フィルム2にそれぞれ存在する蛍光発生物質を励起して、蛍光48,49を発するが、それらのうち、事実上第二の硬化物層8から発せられる蛍光48のみが蛍光強度測定装置43に到達することになる。こうして蛍光強度測定装置43に到達した蛍光の強度を計測した。なおこの計測は、1枚の偏光板5上で場所を変えて3点について行い、その平均値を蛍光強度とした。その結果を表1に示した。
【0134】
[実験例2]:比較用
実験例1において紫外線の照射量(積算光量)を3水準で変化させて作製された偏光板5に対し、偏光フィルター45を介在させずに、蛍光強度測定装置43から出射される紫外線をそのまま、第二の透明樹脂フィルム3側(非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム側)から照射し、蛍光強度を計測した。その結果を表1に示した。
【0135】
[接着性評価試験]
実験例1において紫外線の照射量(積算光量)を3水準で変化させて作製された偏光板5につき、接着剤硬化のための紫外線照射から約1時間後と約1日(24時間)後に、第二の透明樹脂フィルム3(非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム)と偏光フィルム1との間の接着性を以下の方法で評価した。すなわち、偏光板5を構成する第二の透明樹脂フィルム3(非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム)側に、まずカッターナイフで表面から偏光フィルム1にまで達する切込みを約1cm間隔で2本入れ、その間の透明樹脂フィルム3を剥がして約1cm幅の溝を設ける。次にその溝の中央部に、カッターナイフの刃を寝かせた状態で置き、その刃先を第二の透明樹脂フィルム3(非晶性ポリオレフィン樹脂フィルム)と偏光フィルム1との間に押し当て、そのままカッターナイフを前方(奥側)に押し進める。そして、このときの刃の進み具合を以下の3段階で評価し、結果を表1に示した。
【0136】
○:かなり力を入れても刃がうまく入らず、フィルムがすぐに切れてしまい、接着性は非常に良好;
△:少し力を入れると刃が5mm程度まで入るが、それ以上進まず、接着性は概ね良好;
×:あまり力を入れなくても刃が進み、接着性は不良。
【0137】
【表1】

【0138】
表1の結果から、偏光フィルターを通して蛍光強度測定用の紫外線を照射した実験例1では、蛍光強度測定装置43で計測される蛍光強度が 0.27V以上であれば、接着性が良好であることがわかる。したがって、実験例1と同じ構成で、同じ蛍光強度測定装置を用い、同じ条件で蛍光強度測定用の紫外線を照射し、偏光板を製造する場合には、蛍光強度計測工程(C)における蛍光強度 0.27Vを閾値として、蛍光強度がそれ以上であれば、偏光フィルムと2枚の透明樹脂フィルムとが良好に接着している偏光板を製造することができる。
【0139】
一方、偏光フィルターを介在させない実験例2では、接着性と蛍光強度との間に明確な相関がみられなかった。これは、蛍光強度測定装置43によって検知された蛍光の大部分が、第一の透明樹脂フィルム2であるポリエチレンテレフタレートフィルムから発生したものであるためと考えられる。つまり、第一の透明樹脂フィルム2が蛍光発生物質を含有する場合には、偏光フィルターを適用しないと、蛍光強度測定法によっては接着性を推定することができない。
【0140】
偏光板5を構成する第一の透明樹脂フィルム2及び第二の透明樹脂フィルム3の組合せが決定し、用いる接着剤の組成が決定すれば、実験例1に準じた予備実験を行うことにより、蛍光強度測定装置43で計測される蛍光強度の閾値を決定することができる。そしてその閾値が決定すれば、図1に示すように配置された装置を用い、蛍光強度測定装置43で計測される蛍光強度がその閾値を下回らないように、活性エネルギー線照射装置41からの照射量を調整することにより、偏光フィルム1と2枚の透明樹脂フィルム2,3とが良好に接着している偏光板が、連続的にロール状で製造できる。
【符号の説明】
【0141】
1……偏光フィルム、
1a…偏光フィルムの吸収軸、
2……第一の透明樹脂フィルム、
3……第二の透明樹脂フィルム、
4……硬化前の積層体、
5……偏光板、
7,8……活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物層、
10……第一の塗工機、
11……第一の塗工機が備えるグラビアロール、
15……第二の塗工機、
16……第二の塗工機が備えるグラビアロール、
21、22……貼合用ニップロール、
23……接触ロール、
24……搬送用ガイドロール、
25,26……巻取り前ニップロール、
28……ガイドロール、
30……製品ロール、
41……活性エネルギー線照射装置、
43……蛍光強度測定装置、
45……偏光フィルター、
45a…偏光フィルターの吸収軸、
47……蛍光強度測定装置から出射される紫外線、
48,49……蛍光、
R……硬化用の活性エネルギー線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムの両面にそれぞれ、活性エネルギー線硬化型接着剤を介して、第一の透明樹脂フィルム及び第二の透明樹脂フィルムが貼合された偏光板を製造する方法であって、
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線の照射による硬化反応が起こった後に、紫外線の照射を受けて蛍光を発する物質を残存させる成分を含有し、
前記第二の透明樹脂フィルムは、紫外線の照射を受けても蛍光を発しないものであり、
そして前記方法は、
前記偏光フィルムの一方の面に前記活性エネルギー線硬化型接着剤を介して前記第一の透明樹脂フィルムを、他方の面に前記活性エネルギー線硬化型接着剤を介して前記第二の透明樹脂フィルムをそれぞれ重ね合わせて積層体を得る積層工程、
前記積層工程で得られる積層体の前記第一の透明樹脂フィルム側から活性エネルギー線を照射して前記活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させ、偏光板を得る硬化工程、及び
前記硬化工程で得られる偏光板の前記第二の透明樹脂フィルム側から、その面は該偏光板の面と平行に、かつその吸収軸は前記偏光フィルムの吸収軸と直交するように配置された偏光フィルターを介して、蛍光強度計測用の紫外線を照射し、前記活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化物から発せられる蛍光の強度を計測する蛍光強度計測工程を備え、
前記蛍光強度計測工程において、前記偏光フィルムと前記第二の透明樹脂フィルムとが十分な強度で接着していると判断できる蛍光強度が得られるように、前記硬化工程における活性エネルギー線の照射量を決定することを特徴とする、偏光板の製造方法。
【請求項2】
前記第一の透明樹脂フィルムは、紫外線の照射を受けて蛍光を発するものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第一の透明樹脂フィルムは、紫外線の照射を受けても蛍光を発しないものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第二の透明樹脂フィルムは、前記蛍光強度計測工程で照射される紫外線の波長域における光の透過率が60%以上である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記第二の透明樹脂フィルムは、光学補償機能を有する請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−234112(P2012−234112A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104102(P2011−104102)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】