説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、その硬化物、プラスチック基材用コーティング剤、およびオーバープリントワニス

【課題】各種プラスチック基材、特にポリオレフィン樹脂基材に対する密着性に優れる新規な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ロジン類(a1)および(メタ)アクリロイル基含有モノビニルエーテル化合物(a2)をヘミアセタールエステル化反応させて得られる(メタ)アクリロイル基含有ロジン類(A)、ならびに、多官能(メタ)アクリレート類(B)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリロイル基含有ロジン類を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、およびその硬化物、ならびに該樹脂組成物を用いたプラスチック基材用コーティング剤、およびオーバープリントワニスに関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する樹脂組成物は、通常、活性エネルギー線硬化性樹脂、反応性希釈剤、光開始剤、その他添加剤(増感剤、着色剤等)などから構成されており、低公害性、少エネルギー型の工業材料として、例えば各種プラスチック基材用のコーティング剤や、印刷インキ用バインダー等の用途に供されている。
【0003】
ところで、活性エネルギー線樹脂組成物の硬化皮膜は、一般に、ポリ塩化ビニル樹脂やポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等のプラスチック基材に対してよく密着するが、アクリル樹脂やポリエステル樹脂、特に、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂基材に対しての密着性(以下、PO密着性ということがある。)が不十分である。
【0004】
かかるPO密着性に関し、本出願人は既に、ロジングリシジルエステルと(メタ)アクリル酸とからなるロジンエポキシアクリレート、および一般的な反応性希釈剤(トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等)、ならびに炭素−炭素不飽和基を有するポリウレタン樹脂からなる組成物を提案している(特許文献1を参照)。ただ、当該組成物は炭素−炭素不飽和基を有するポリウレタン樹脂という高分子量成分を必須としているため、例えば、ジアリルフタレートなどのイナート樹脂を併用しようとした場合において、イナート樹脂に対する相溶性が低下する等の問題が予想される。
【特許文献1】特開平8−143635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、各種プラスチック基材、特にポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂基材に対する密着性に優れる新規な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討した結果、特定の(メタ)アクリロイル基含有ロジン類、および反応性希釈剤としての多官能(メタ)アクリレート類を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物であれば、前記課題を解決できることを見出した。また、当該樹脂組成物は、各種プラスチック基材に対するコーティング剤としてだけではなく、オフセット印刷物やグラビア印刷物の印刷面に塗布するワニス(オーバープリントワニス)としても有用であることを見出した。
【0007】
即ち本発明は、ロジン類(a1)および(メタ)アクリロイル基含有モノビニルエーテル化合物(a2)をヘミアセタールエステル化反応させで得られる(メタ)アクリロイル基含有ロジン類(A)、ならびに、多官能(メタ)アクリレート類(B)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物;該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を活性エネルギー線にて硬化させてなる硬化物;該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてなる、プラスチック基材用コーティング剤;該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてなる、オーバープリントワニス、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物によれば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等のプラスチック基材、特に、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂基材との密着性に優れる硬化皮膜が得られる。そのため、該樹脂組成物はプラスチック基材用のコーティング剤、特にポリオレフィン基材用のコーティング剤として好適である。また、当該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、該硬化皮膜がオフセット印刷やグラビア印刷等の印刷インキ面(油性インキ塗膜)に対する密着性(以下、インキ密着性ということがある。)にも優れるため、オーバープリントワニスとしても好適である。
【0009】
また、後述するように、(メタ)アクリロイル基含有ロジン類(A)は、特定の環式炭化水素残基を有し且つ水酸基を有さないため、顔料分散性や塗膜光沢、耐水性、耐乳化性等の機能を発揮すると考えられる。よって、当該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はオフセット印刷インキ等の印刷インキ用バインダー等として有用であることが期待される。その他、該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、塗料用バインダー、接着剤、粘着剤等としても好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、前記したように、ロジン類(a1)(以下、(a1)成分という)および(メタ)アクリロイル基含有モノビニルエーテル化合物(a2)(以下、(a2)成分という)をヘミアセタールエステル化反応させで得られる(メタ)アクリロイル基含有ロジン類(A)(以下、(A)成分という)、ならびに、多官能(メタ)アクリレート類(B)(以下、(B)成分という)を含有するものである。
【0011】
(a1)成分としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、天然ロジン〔ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等〕、該天然ロジンを原料とする不均化ロジン、該天然ロジンを原料とする水添ロジン、該天然ロジンにα,β不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸等)をディールス・アルダー反応させてなるα,β不飽和カルボン酸変性ロジン、該天然ロジンを原料とする重合ロジン等を挙げることができる。これらの中でも、前記PO密着性やインキ密着性の観点より、水添ロジン、α,β不飽和カルボン酸変性ロジン、および重合ロジンからなる群より選ばれる1種が好ましい。なお、該(a1)成分は、ガードナー比色法(JISK0071−2)で色数3以下のものが好ましい。
【0012】
なお、前記天然ロジンや不均化ロジンには、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマル酸、イソピマル酸、およびサンダラコピマル酸等が、また、前記水添ロジンにはテトラヒドロアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、およびジヒドロアビエチン酸等が、また、前記α,β不飽和カルボン酸変性ロジンにはアクリロピマル酸、マレオピマール酸、およびフマロピマール酸等が、また、前記重合ロジンには、アビエチン酸等が二量化してなる樹脂酸等が、それぞれ含まれる。
【0013】
(a2)成分としては、具体的には、一般式(1):CH=CH−O−(R)−Xで表される、分子内に(メタ)アクリロイル基とビニル基とを一つずつ含有する化合物を用いることができる。式(1)中、Rはアルキレンオキシ基(炭素数1〜6程度が好ましい)、アルキレン基(炭素数1〜6程度が好ましい)、シクロアルキレン基(炭素数6〜11程度が好ましい)、およびメチル基が結合していてもよいフェニレン基(炭素数6〜11程度が好ましい)からなる群より選ばれる1種を表す。また、mは1〜5の整数を表す。また、Xは、Rの種類に応じてアクリロイル基(−OC−HC=CH)、メタクリロイル基(−OC−(HC)C=CH)、アクリロイルオキシ基(−O−OC−HC=CH)、およびメタクリロイルオキシ基(−O−OC−(HC)C=CH)からなる群より選ばれる1種を表す。
【0014】
(a2)成分の具体例としては、例えば、アルキレンオキシ基含有モノビニルエーテル化合物〔(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(1−メチル−2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(2−ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(1−メチル−2−ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−(1−メチル−2−ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−〔2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ〕エチル、(メタ)アクリル酸2−〔3−(2−ビニロキシエトキシ)プロポキシ〕エチル、(メタ)アクリル酸2−〔2−(3−ビニロキシプロポキシ)エトキシ〕エチル、(メタ)アクリル酸2−〔3−(2−ビニロキシプロポキシ)プロポキシ〕エチル、(メタ)アクリル酸2−〔2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ〕プロピル、(メタ)アクリル酸2−〔1−メチル−2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−〔2−(1−メチル−2−ビニロキシエトキシ)エトキシ〕プロピル、(メタ)アクリル酸2−〔1−メチル−2−(1−メチルエトキシ−2−ビニロキシ)エトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−〔2−(2−ビニロキシエトキシ)エトキシ〕エチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−〔2−(1−メチル−2−ビニロキシエトキシ)エトキシ)〕エチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−〔2−(1−メチル−2−ビニロキシエトキシ)エトキシ〕エチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−〔1−メチル−2−(1−メチル−2−ビニロキシエトキシ)エトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(8−ビニロキシ−3,6−ジオクチルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(11−ビニロキシ−3,6,9−トリウンデシルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル等〕、アルキレン基含有モノビニルエーテル化合物〔(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル〕、シクロアルキレン基含有モノビニルエーテル化合物〔(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル等〕、フェニレン基芳香族基含有モノビニルエーテル化合物〔(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル等〕、が挙げられる。なお、(a2)成分としては、前記オキシアルキレン基含有モノビニルエーテル化合物、特にアクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルまたはメタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0015】
ラジカル重合禁止剤としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、キノン系重合禁止剤〔メトキノン、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール等〕、アミン系重合禁止剤〔フェノチアジン、アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等〕、アルキルフェノール系重合禁止剤〔2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール等〕、ジチオカルバミン酸銅系重合禁止剤〔ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等〕、N−オキシル系重合禁止剤〔2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシルのエステル等〕などが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、ラジカル重合禁止剤の添加量は、(A)成分の収率の点、(a2)成分や(A)成分自体の重合抑制の点、経済性の点等より、前記(a1)成分と(a2)成分の合計重量に対して、通常0.0005〜0.5重量%程度(好ましくは0.001〜0.1重量%)の範囲とするのがよい。また、当該反応時には、エアバブリング等の重合禁止手段を採りうる。
【0016】
触媒としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、リン酸エステル系酸触媒、例えば、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸ジ−n−ブチル、リン酸モノオクチル等が挙げられる。なお、触媒の使用量は、前記(a1)成分と前記(a2)成分の合計100重量部に対して、通常0.01〜3重量部程度(好ましくは0.1〜1.5重量部)である。
【0017】
有機溶剤としては、各種公知のものを特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、芳香族炭化水素類〔ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン(登録商標)、ソルベッソ#100(登録商標)、ソルベッソ#150(登録商標)等〕、エーテル類〔ジオキサン、テトラヒドロフラン等〕、エステル類〔酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル等〕、ケトン類〔アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メシチルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチルブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソプロピルケトン等〕などが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。有機溶剤の使用量は、反応系の固形分濃度が通常20〜95重量%程度(好ましくは30〜90重量%)となる範囲とするのがよい。
【0018】
こうして得られた(A)成分は、必要に応じて、ろ過、蒸留、溶剤抽出、カラム分離、再沈殿等の方法で精製処理してもよい。
【0019】
(B)成分は、(A)成分以外の(メタ)アクリレート化合物をいい、例えば、2官能(メタ)アクリレート化合物〔ヘキサメチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4ーブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレングリコールジアクリレート等〕、3官能(メタ)アクリレート化合物〔トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、εカプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート等〕、4官能(メタ)アクリレート化合物〔ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等〕、5官能以上の(メタ)アクリレート化合物〔ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等〕などが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、前記PO密着性やインキ密着性の観点より、3官能〜6官能の(メタ)アクリレート化合物が、特に、3官能(メタ)アクリレート化合物、4官能(メタ)アクリレート化合物、および6官能(メタ)アクリレート化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、(A)成分と(B)成分を各種公知の方法で混合することにより得ることができる。なお、(A)成分と(B)成分の含有量は特に限定されないが、前記PO密着性やインキ密着性の観点より、通常、固形分重量比として5/95〜95/5程度、好ましくは10/80〜50/50であるのがよい。
【0021】
なお、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、さらに、光重合開始剤(C)(以下、(C)成分という)を含有させることができる。例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノンなどが挙げられ、これらは1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これを用いる場合、(A)成分および(B)成分と(C)成分との固形分重量比は、通常99/1〜90/10程度である。
【0022】
また、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、その他、各種顔料、着色剤、光増感剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤等の添加剤を含有させることもできる。
【0023】
本発明の硬化皮膜は、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、紫外線や電子線等の活性エネルギー線を用いて硬化させることにより得ることができる。紫外線の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプを有する紫外線照射装置が挙げられる。なお、光量や光源配置、搬送速度などは必要に応じて調整でき、例えば高圧水銀灯を使用する場合には、通常80〜160W/cmの光量を有するランプ1灯に対して搬送速度5〜50m/分で硬化させるのが好ましい。また、電子線を用いる場合には、通常10〜300kVの加速電圧を有する電子線加速装置にて、搬送速度5〜50m/分で硬化させるのが好ましい。
【0024】
該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工する基材としては、例えば、各種プラスチック基材(ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)や、油性インキで印刷されていてもよい紙基材(アート紙、キャストコート紙、フォーム用紙、PPC用紙、上質コート紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙等)が挙げられる。これらの中でも、密着性の観点よりポリオレフィン基材が、またインキ密着性の観点より油性印刷インキで印刷されたアート紙が好ましい。なお、油性インキとしては、オフセットインキ、グラビアインキ、スクリーンインキ、フレキソインキ等が挙げられる。
【0025】
塗工方法としては、例えばバーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、リバースグラビア塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷法等が挙げられる。なお、塗工量は特に限定されないが、通常は、乾燥後の重量が0.1〜30g/m程度、好ましくは1〜20g/m程度となる程度である。
【実施例】
【0026】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
合成例1
分水管を備えた300mlのフラスコに、荒川化学工業(株)製の水添ロジン(樹脂酸として、主にデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸を含む)150g、メトキノン0.23g、フェノチアジン0.23gを仕込み、攪拌下に反応系を120℃に昇温して、これらを溶融させた。次いで、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)82.9gを滴下ロートから15分を要して反応系に滴下し、次いでリン酸2−エチルヘキシル(商品名「AP−8」、大八化学工業(株)製)0.15gを仕込み、100℃で1時間保温し、アクリロイル基含有ロジン類(A−1)を得た。なお、該VEEAの構造式は、CH=CH−O−CHCH−O−CHCH−O−OC−HC=CHとして表される。
【0028】
合成例2
分水管を備えた300mlのフラスコに、荒川化学工業(株)製の水添アクリル酸変性ロジン(樹脂酸として主にアクリロピマル酸、アクリロピマル酸の水素化物、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸を含む)130g、メトキノン0.23g、フェノチアジン0.23gを仕込み、攪拌下反応系しながら、140℃に昇温して溶融させた。次いで、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)102.4gを滴下ロートから15分を要して反応系に滴下した後、前記「AP−8」0.15gを仕込み、100℃で1時間保温し、アクリロイル基含有ロジン類(A−2)を得た。
【0029】
合成例3
分水管を備えた300mlのフラスコに、荒川化学工業(株)製の重合ロジン(樹脂酸として主に一塩基樹脂酸の二量体を含む)120g、メトキノン0.19g、フェノチアジン0.19gを仕込み、攪拌下反応系しながら、160℃に昇温して溶融させた。次いで、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA)55.8gを滴下ロートから15分を要して反応系に滴下した後、前記リン酸2−エチルヘキシル0.12gを仕込み、100℃で1時間保温し、(メタ)アクリロイル基含有ロジン類(A−3)を得た。
【0030】
合成例4
分水管を備えた300mlのフラスコに、荒川化学工業(株)製の水添ロジン(樹脂酸として、主にデヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸を含む)150g、メトキノン0.23g、フェノチアジン0.23gを仕込み、攪拌下に反応系を120℃に昇温して、これらを溶融させた。次いで、メタクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEM)82.9gを滴下ロートから15分を要して反応系に滴下し、次いでリン酸2−エチルヘキシル(商品名「AP−8」、大八化学工業(株)製)0.15gを仕込み、100℃で1時間保温し、メタアクリロイル基含有ロジン類(A−4)を得た。なお、該VEEMの構造式は、CH=CH−O−CHCH−O−CHCH−O−OC−(HC)C=CHとして表される。
【0031】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
実施例1
撹拌装置、冷却管、空気導入管を備えた反応容器に、前記(A−1)成分30部およびトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)70部を仕込み、90℃まで昇温して30分間保持した。次いで、光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」(以下、Ir184と略す)、チバ・ジャパン(株)製)5部を加えて10分保持することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物1を得た。
【0032】
実施例2
実施例1と同様の反応容器に、前記(A−2)成分30部およびトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)70部を仕込み、90℃まで昇温して30分間保持した。次いで、前記Ir184を5部加えて10分保持することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物2を得た。
【0033】
実施例3
実施例1と同様の反応容器に、前記(A−3)成分30部およびトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)70部を仕込み、90℃まで昇温して30分間保持した。次いで、前記Ir184を5部加えて10分保持することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物3を得た。
【0034】
実施例4
実施例1と同様の反応容器に、前記(A−4)成分30部およびトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)70部を仕込み、90℃まで昇温して30分間保持した。次いで、前記Ir184を5部加えて10分保持することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物4を得た。
【0035】
実施例5
実施例1において、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)に変更した以外は同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物5を得た。
【0036】
実施例6
実施例2において、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)に変更した以外は同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物6を得た。
【0037】
実施例7
実施例3において、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)に変更した以外は同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物7を得た。
【0038】
実施例8
実施例4において、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)に変更した以外は同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物8を得た。
【0039】
実施例9
実施例1において、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPEHA)に変更した以外は同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物9を得た。
【0040】
実施例10
実施例2において、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPEHA)に変更した以外は同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物10を得た。
【0041】
実施例11
実施例3において、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPEHA)に変更した以外は同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物11を得た。
【0042】
実施例12
実施例4において、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPEHA)に変更した以外は同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物12を得た。
【0043】
比較例1
実施例1と同様の反応容器に、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)100部を仕込み、90℃まで昇温して、前Ir184を5部加えて10分保持することにより、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物13を得た。
【0044】
比較例2
比較例1において、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)に変更した以外は同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物14を得た。
【0045】
比較例3
比較例1において、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)をジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPEHA)に変更した以外は同様にして、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物15を得た。
【0046】
<硬化皮膜の作成>
バーコーター(#2)を用い、膜厚が約3〜6μmとなるように、各樹脂組成物をポリプロピレンフィルム(商品名「パイレンフィルム−OT P2161」厚さ20μm、東洋紡績(株)製)に塗工し、紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製 型式UB−022−5B−60、条件:高圧水銀灯120W/cm、照射距離10cm、コンベア速度10m/min)を用いて硬化皮膜を作成した。
【0047】
<硬化皮膜の作成>
市販アート紙(製品名「特菱アート両面N」、三菱製紙(株)製)に、市販油性墨インキを、バーコーター(#2)を用いて、膜厚が約3〜6μmとなるように展色し、乾燥させることによりインキ塗膜を得た。ついで、インキ塗膜上に、各樹脂組成物を、バーコーター(#2)を用いて膜厚が約3〜6μmとなるように塗工し、前記同様の条件で硬化皮膜を作成した。
【0048】
<密着性評価>
前記ポリプロピレンおよび油性インキ塗膜のそれぞれについて、硬化皮膜に粘着テープを貼り付けて指で10往復擦り、一気に引き剥がした際の樹脂の剥離程度を、以下の評価基準に基づき評価した。
○:硬化皮膜が70%〜100%残存する。
×:硬化皮膜が完全に剥離する。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン類(a1)および(メタ)アクリロイル基含有モノビニルエーテル化合物(a2)をヘミアセタールエステル化反応させて得られる(メタ)アクリロイル基含有ロジン類(A)、ならびに、多官能(メタ)アクリレート類(B)を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記ロジン類(a1)が、水添ロジン、α,β不飽和カルボン酸変性ロジン、および重合ロジンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
多官能(メタ)アクリレート類(B)が、3官能〜6官能の(メタ)アクリレート化合物である、請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリロイル基含有ロジン類(A)と多官能(メタ)アクリレート類(B)の含有量が固形分重量比として5/95〜95/5である、請求項1〜3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
さらに、光重合開始剤(C)を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を活性エネルギー線にて硬化させてなる硬化物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてなる、プラスチック基材用コーティング剤。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてなる、オーバープリントワニス。

【公開番号】特開2010−106191(P2010−106191A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281535(P2008−281535)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000168414)荒川化学工業株式会社 (301)
【Fターム(参考)】