説明

活性エネルギー線硬化型樹脂組成物

【課題】諸性能に優れた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の提供。
【解決手段】本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びアクリル系ポリオールよりなる群から選択される1種又は2種以上のポリオール(a)、1種又は2種以上の多官能イソシアネート(b)及び1種又は2種以上の活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)を反応させて得られる化合物(A1)を含む。更に低分子量グリコール(d)を含んで反応させてもよい。好ましくは、上記多官能イソシアネート(b)は、ジイソシアネート(b1)と、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(b2)とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。更に本発明は、この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた光拡散フィルム用樹脂組成物や光拡散フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ用の光拡散板や光学レンズ等には、透明性を有する樹脂硬化物が用いられている。この樹脂硬化物として、熱硬化性樹脂の他、活性エネルギー線硬化型樹脂も用いられている。例えば、特開2002−69139公報は、分子中に(メタ)アクリロイル基を3個有する所定構造のウレタン(メタ)アクリレート(A)と、分子中に(メタ)アクリロイル基を3個有する所定構造の(メタ)アクリレート(B)とを含んでなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を開示する。また、特許第3373106号は、透明な支持体と光拡散層とを備え、光拡散層のバインダーが電離放射線硬化型樹脂である光学フィルムを開示する。
【特許文献1】特開2002−69139公報
【特許文献2】特許3373106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明に係る樹脂組成物には、耐久性向上、塗工性向上、傷つき性の低減等が要求される。またシート状の基材に塗工される場合、反り(カール性)の低減も重要である。本発明者が鋭意検討した結果、上記従来技術には更なる改善の余地があることが判明した。特に特開2002−69139公報に記載の樹脂組成物は、弾性付与に係る分子設計の自由度が狭く、且つ、低粘度のため塗工適性に乏しいことが判明した。本発明者らは、耐カール性及び塗工性をはじめとする諸性能に優れるとともに、弾性を有し他の部材を傷つけにくい活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を見出すに至った。
【0004】
本発明の目的は、諸性能に優れた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の提供にある。本発明の他の目的は、この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いた光拡散フィルム用樹脂組成物及び光拡散フィルムの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、化合物(A1)を含む。この化合物(A1)は、ウレタンアクリレート化合物である。この化合物(A1)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びアクリル系ポリオールよりなる群から選択される1種又は2種以上のポリオール(a)、1種又は2種以上の多官能イソシアネート(b)及び1種又は2種以上の活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)を反応させて得られる。
【0006】
本発明に係る他の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、化合物(A2)を含む。この化合物(A2)は、ウレタンアクリレート化合物である。この化合物(A2)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びアクリル系ポリオールよりなる群から選択される1種又は2種以上のポリオール(a)、1種又は2種以上の多官能イソシアネート(b)、1種又は2種以上の活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)及び1種又は2種以上の低分子量グリコール(d)を反応させて得られる。
【0007】
好ましくは、上記多官能イソシアネート(b)は、ジイソシアネート(b1)と、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(b2)とを含む。
【0008】
好ましくは、上記ジイソシアネート(b1)は、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートとされる。
【0009】
好ましくは、上記ラジカル重合性ビニル単量体(c)は、水酸基含有アクリルモノマーとされる。
【0010】
本発明に係る光拡散フィルム用樹脂組成物は、上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含む。好ましくは、この光拡散フィルム用樹脂組成物は、バインダーと光拡散材とを含む。好ましくは、このバインダーが、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含む。
【0011】
本発明に係る光拡散フィルムは、上記光拡散フィルム用樹脂組成物を含む層と透明基材とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、含まれるウレタンアクリレートの分子設計自由度が高いため、優れた物性を達成しうる。この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、塗工性、耐カール性、耐久性、外観等の諸性能に優れうる。更にこの活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、自己が傷つきにくく且つ他の部材をも傷つけにくい特性を有しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る光拡散フィルム2の断面図である。光拡散フィルム2は、基材4と、光拡散層6と、背面層8とを有する。基材4は、透明である。基材4は、シート状である。光拡散層6は、基材4の一方の面に設けられている。背面層8は、基材4の他方の面に設けられている。背面層8は、光拡散層6とは反対側の面に設けられている。この光拡散フィルム2は、液晶ディスプレイのバックライトユニットに用いられる。バックライトユニット等に使用される場合、光源からの光は、背面層8側(図1における下側)から光拡散層6側(図1における上側)に向かって透過する。この透過の際に、光が拡散される。
【0015】
ここで、液晶ディスプレイのバックライトユニットについて簡単に説明しておく。以下、液晶セル側を前方とし、その反対側を後方として説明がなされる。バックライトユニットは、通常、直下型とエッジライト型とに大別される。典型的な直下型バックライトユニットは、光源、反射フィルム、光拡散板、光拡散フィルム、プリズムシート及び輝度向上フィルムを有する。直下型バックライトユニットの場合、光源は、光拡散板の後方に配置される。反射フィルムは、光源の後方に配置され、光源の光を前方に反射する。光拡散フィルム、プリズムシート及び輝度向上フィルムは、光拡散板と液晶セルとの間に配置される。直下型バックライトユニットは、液晶テレビなど、高輝度が求められる用途において好適に用いられうる。一方、典型的なエッジライト型バックライトユニットは、光源、反射フィルム、導光板、光拡散フィルム、プリズムシート及び輝度向上フィルムを有する。エッジライト型バックライトユニットの場合、光源は、導光板の側方に配置される。光源からの光は導光板により伝達され、この導光板により面状の光が得られる。反射フィルムは、導光板の後方に配置され、後方への光漏れを抑制する。光拡散フィルム、プリズムシート及び輝度向上フィルムは、導光板と液晶セルとの間に配置される。エッジライト型バックライトユニットは、光源が導光板の側方に配置されるので、薄くされやすい。エッジライト型バックライトユニットは、薄型の液晶ディスプレイ装置において好適に用いられる。
【0016】
バックライトユニットにおいて、光拡散フィルムは、1枚又は2枚以上用いられる。通常、バックライトユニットは、2〜3枚の光拡散フィルムを有する。典型的には、光拡散フィルムとして、上光拡散フィルムと下光拡散フィルムとが用いられる。典型的には、上光拡散フィルムと下光拡散フィルムとの間に、プリズムシートが配置される。一般的な積層順序は、液晶セル側(前側)から順に、上光拡散フィルム、プリズムシート、下光拡散フィルムの順である。図1で示される光拡散フィルム2は、特に上光拡散フィルムとして好適に用いられる。
【0017】
典型的な基材4は、透明フィルムである。基材4として、一般に光学材とされうるものが好適に用いられる。基材4の材質として、ガラス;PETやPEN(ポリエチレンナフタレート)等のポリエステル;トリアセチルセルロース;シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂系ポリマー;ポリスチレン;ポリカーボネート;ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール;ポリアリールエーテル系樹脂等が例示される。特に好ましい基材4として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム及びラクトン環構造を有する(メタ)アクリレートフィルムが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムは、表面の平滑性や機械的強度に優れる。なお本願において、アクリル系樹脂とは、アクリル樹脂とメタクリル樹脂とを含む概念である。
【0018】
熱収縮に起因するカール等を抑制するとともに、取り扱い性及び強度を高める観点から、基材4の厚さは10μm以上が好ましい。可視光透過率を高めてバックライトユニットの正面輝度を向上させる観点から、基材4の厚さは300μm以下が好ましい。
【0019】
透明なシート状基材の表面のうち少なくとも一方の面には、光拡散層との密着性を向上させるための易接着処理が施されているのが好ましい。易接着処理としては、易接着処理層を塗布する処理、コロナ処理等が挙げられる。易接着処理が施された面に光拡散層が設けられるのが好ましい。
【0020】
背面層8は、光拡散フィルム2同士の付着を抑制するために設けられている。即ち背面層8は、スティッキングを抑制するための層である。背面層8は、主部10と粒子12とを有する。粒子12として、例えばアクリル系樹脂、シリカ粒子等が用いられる。粒子12は無くてもよい。主部10は、滑剤、光拡散フィルムへの静電気帯電を抑制するための帯電防止剤、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤、光拡散材などを含んでいてもよい。主部10としては、例えばアクリル系樹脂等が好ましく、更に好ましくは、本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物がよい。本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が用いられた背面層8は、自己が傷つきにくく、且つ他の部材を傷つけにくい。なお、光拡散フィルム2において、背面層8は無くてもよい。
【0021】
光拡散層6は、少なくとも、光拡散材14とバインダー16とを有する。本実施形態の光拡散層6は、光拡散材14とバインダー16とからなる。光拡散層6は、光拡散フィルム用樹脂組成物よりなる。光拡散層6は、光拡散フィルム用樹脂組成物を含む層である。
【0022】
光拡散材14は、粒子18である。この粒子18は、光を透過しうる。粒子18は、光を拡散しうる。粒子18の形状は、球状であることが好ましい。
【0023】
粒子18が球状であることにより、光拡散層6の表面に凹凸が生ずる。この凸部分が、レンズの役割を果たす。このレンズ効果により、液晶表示装置の輝度が向上しうる。レンズ効果を高める観点から、個々の粒子18の粒子径は、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。光の均一性を高めるとともに粒子の脱落を抑制する観点から、個々の粒子18の粒子径は、50μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。
【0024】
レンズ効果を高める観点から、粒子18の体積平均粒子径は、1μm以上が好ましい。光の均一性を高めるとともに粒子の脱落を抑制する観点から、粒子18の体積平均粒子径は、30μm以下がより好ましい。
【0025】
光を透過しうる限りにおいて、粒子18の材質は限定されない。粒子18の材質として、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、ケイ素原子を含む樹脂、ポリエステル系樹脂等が例示される。
【0026】
粒子18に用いられうるアクリル系樹脂は特に限定されない。アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを含むモノマーを重合させてなる。典型的な重合方法は、ラジカル重合である。アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸の誘導体、メタクリル酸、メタクリル酸の誘導体等が例示される。
【0027】
(メタ)アクリル酸の誘導体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ブトキシトリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が例示される。
【0028】
バインダー16は、基材4の表面において光拡散材14を固定する役割を果たす。バインダー16は、光を透過しうる。バインダー16は、透明である。バインダー16は、光拡散材14間に存在する。このバインダー16が、活性エネルギー線硬化型樹脂を含んでいる。このバインダー16が、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物よりなる。
【0029】
バインダー16に含まれる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、化合物(A1)及び/又は化合物(A2)を含む。化合物(A1)は、ポリオール(a)、多官能イソシアネート(b)及び活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)を反応させて得られる化合物である。化合物(A2)は、ポリオール(a)、多官能イソシアネート(b)、活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)及び低分子量グリコール(d)を反応させて得られる化合物である。
【0030】
[ポリオール(a)]
ポリオール(a)は、本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物ともいう)に弾性を付与するために必須の成分である。ポリオール(a)は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びアクリル系ポリオールよりなる群から選択される1種又は2種以上である。ポリオール(a)は、弾性付与成分として機能する。ポリオール(a)により、本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物自身の傷つき性が改善する。更に、ポリオール(a)により、本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、他の部材を傷つけにくい。
【0031】
ポリオール(a)の分子量は、好ましくは400より大きく20,000以下である。分子量が400以下であると、他の部材の傷つきを抑えることができない可能性があり、分子量が20,000より大きいと樹脂組成物自身の傷つき性が悪化する傾向がある。この観点から、より好ましくは、ポリオール(a)の分子量は1,000以上5,000以下である。
【0032】
ポリオール(a)としてのポリエステルポリオールは、特に限定されない。このポリエステルポリオールとしては、例えば、直鎖状又は分岐状のポリエステルポリオールや、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等のラクトンの開環縮合反応によって得られるポリエステルポリオール等を挙げることができる。この直鎖状又は分岐状のポリエステルポリオールは、例えば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、テトラハイドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリアルコールとを縮合反応させることにより得られうる。このポリカルボン酸とポリアルコールとの縮合反応は、必要に応じて、変性用成分としてのモノカルボン酸やモノアルコールの存在下においてなされうる。
【0033】
ポリオール(a)としてのポリエーテルポリオールは、特に限定されない。このポリエーテルポリオールとして、例えば、オキシエチレンのくり返し度が9以上であるポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリ(オキシプロピレン)ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のグリコール類;ポリオキシプロピレントリオール、ポリ(オキシプロピレン)ポリ(オキシエチレン)トリオール等のトリオール類;ペンタエリスリトール等にアルキレンオキサイドを付加反応させて得られる生成物の如きポリオール類、等が挙げられる。
【0034】
ポリオール(a)としてのポリカーボネートポリオールは、特に限定されない。このポリカーボネートポリオールとして、1,6−ヘキサンジオール等のグリコールと、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等のカーボネートとを、エステル交換して得られた各種ポリカーボネートポリオール等が例示される。
【0035】
ポリオール(a)としてのアクリル系ポリオールは、特に限定されない。アクリル系ポリオールは、水酸基を2個以上有するアクリル系化合物である。このアクリル系ポリオールは、アクリルポリオールとメタクリルポリオールとを含む。好ましいアクリル系ポリオールは、例えば、(メタ)アクリル系単量体と水酸基を有する単量体とが共重合されてなる。水酸基を有する不飽和単量体として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製、商品名「プラクセルFM」)等が挙げられる。好ましいアクリル系ポリオールは、Tg(ガラス転移点)が80℃以下のアクリル系ポリオールである。80℃より大きいと他の部材への傷つき性が悪化する傾向にある。
【0036】
[多官能イソシアネート(b)]
多官能イソシアネート(b)は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。多官能イソシアネート(b)は、樹脂組成物にウレタン結合を導入する。多官能イソシアネート(b)により凝集力が高まり、樹脂組成物のカール性が低減されるととともにその硬度が高くなる。また、多官能イソシアネート(b)に起因するウレタン結合により、酸やアルカリ等の薬品や有機溶剤に対する耐久性も向上する。黄変を抑制し耐候性を向上させる観点から、多官能イソシアネート(b)は、芳香環を有しないのが好ましい。
【0037】
多官能イソシアネート(b)の分子中に含まれるイソシアネート基は2個以上である。また、多官能イソシアネート(b)の分子中に含まれるイソシアネート基の数が4個を超えるものは通常市販品として入手するのが困難である。これらの観点から、多官能イソシアネート(b)は、イソシアネート基を分子中に2〜4個有するものが好ましい。
【0038】
多官能イソシアネート(b)は、後述される活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)と上記ポリオール(a)とを、多官能イソシアネート(b)を介して連結させる役割を果たす。多官能イソシアネート(b)により、分子末端にラジカル重合性不飽和基が導入されうる。多官能イソシアネート(b)は、樹脂組成物にラジカル重合性不飽和基を導入し、活性エネルギー線による硬化を可能とする役割も果たす。
【0039】
多官能イソシアネート(b)としては、従来から公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が用いられうる。
【0040】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、
2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0041】
また多官能イソシアネート(b)は、上記ポリイソシアネートの変性体であってもよい。このポリイソシアネートの変性体として、下記式(1)で表されるビュウレット型変性体、下記式(2)で表されるイソシアヌレート型変性体及び下記式(3)で表されるトリメチロールプロパンアダクト型変性体が挙げられる。 ただし、下記式(1)、(2)及び(3)において、R,R、R、R、R、R、R、R及びRは、同一もしくは異なる二価の有機基を表す。
【0042】
【化1】

【0043】
【化2】

【0044】
【化3】

【0045】
好ましい多官能イソシアネート(b)は、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びそれらの変性体よりなる群から選択される1種以上である。黄変を抑制し耐候性を向上させる観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート及びそれらの変性体よりなる群から選択される1種以上が特に好ましい。
【0046】
多官能イソシアネート(b)は、1種でもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましくは、多官能イソシアネート(b)は、ジイソシアネート(b1)と3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(b2)とを含む。ジイソシアネート(b1)とイソシアネート(b2)とが併用されることにより、次の効果が生じうる。即ち、ジイソシアネート(b1)により、合成時の反応の制御が容易となり、ゲル化することなく高分子量のウレタンアクリレートを得ることが可能となる。これにより、架橋間距離が長くなり、樹脂組成物の弾性が高まる。更に、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(b2)により、分子内に分枝が導入され、より多くのビニル単量体(c)を分子内に導入することが可能となり、樹脂組成物の光硬化速度が速くなる。
【0047】
[活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)]
活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)は、活性エネルギー線硬化性の官能基を導入する役割を果たす。この観点から、好ましい活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)は、水酸基含有アクリルモノマーである。例えば水酸基含有メタクリルモノマーが用いられた場合と比較して、水酸基含有アクリルモノマーが用いられた場合、樹脂組成物の光硬化速度が速くなりやすい。この観点からも、単量体(c)は、水酸基含有アクリルモノマーが好ましい。
【0048】
この単量体(c)としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート(例えばダイセル化学工業(株)製商品名“プラクセル”)、フタル酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、コハク酸とプロピレングリコールとから得られるポリエステルジオールのモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、各種エポキシエステルの(メタ)アクリル酸付加物、等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、などのカルボキシル基含有ビニル単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有ビニル単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロ−プロピルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルりん酸などの酸性りん酸エステル系ビニル単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基を有するビニル単量体等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。多官能イソシアネート(b)のイソシアネート基との反応性を考慮すると、単量体(c)としては、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。
【0049】
本発明の特徴を損なわない範囲でモノイソシアネート化合物と多官能イソシアネート(b)とを混合して用いてもよい。従って、モノイソシアネートを不純物として包含する多官能イソシアネート(b)は特に精製することなくそのまま多官能イソシアネート(b)として用いることができる。尚、ポリオール(a)と多官能イソシアネート(b)とを反応させる際に、反応促進のために有機スズ化合物や第3級アミン等の公知の触媒を用いることは自由である。
【0050】
[低分子量グリコール(d)]
本願において、低分子量グリコール(d)とは、分子量が400以下のグリコールを意味する。低分子量グリコール(d)は、本発明の樹脂組成物に凝集力を付与しうる成分である。低分子量グリコール(d)は、カール性の低減及び硬度の向上に寄与する。ポリオール(a)と低分子量グリコール(d)とが併用されることにより、分子設計の自由度が顕著に向上しうる。低分子量グリコール(d)が用いられることにより、本発明の樹脂組成物においてウレタン結合間の間隔が短くされうる。これにより、カール性の低減や硬度の向上が達成されうる。
【0051】
低分子量グリコール(d)として、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オタンジオール,ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量400以下のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量400以下のポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、分子量400以下のポリブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ヒマシ油、4,4'−ジオキシジフェニルプロパン、ジオキシメチルヒロドキノン等が例示される。
【0052】
本発明に係る樹脂組成物は、ポリオール(a)、多官能イソシアネート(b)及びビニル単量体(c)を反応して得られる化合物(A1)を含む。又は、本発明に係る樹脂組成物は、ポリオール(a)、多官能イソシアネート(b)、ビニル単量体(c)及び低分子量グリコール(d)を反応させて得られる化合物(A2)を含む。ポリオール(a)、多官能イソシアネート(b)及びビニル単量体(c)の使用割合は特に制限されない。好ましくは、ポリオール(a)、多官能イソシアネート(b)及びビニル単量体(c)の合計100質量部に対して、ポリオール(a)が15〜93質量部であるのが好ましく、多官能イソシアネート(b)が5〜65質量部であるのが好ましく及び単量体(c)が2〜80質量部であるのが好ましい。より好ましくは、ポリオール(a)、多官能イソシアネート(b)及びビニル単量体(c)の合計100質量部に対して、ポリオール(a)が25〜60質量部、多官能イソシアネート(b)が15〜35質量部及び単量体(c)が5〜50質量部である。
【0053】
ポリオール(a)は、前述の如く樹脂組成物に弾性を付与するための成分であるが、その使用割合が15重量%未満ではこの特徴が充分発現しなくなる場合があり、93重量%を超える場合は、多官能イソシアネート(b)や単量体(c)の使用割合が少なくなり、これら多官能イソシアネート(b)や単量体(c)に起因する効果が得られにくくなる。上記好ましい数値範囲により、ポリオール(a)、多官能イソシアネート(b)及び単量体(c)の配合割合を上記の通りとすることにより、各成分に起因する効果が効果的に発現しうる。
【0054】
前述したように、好ましくは、多官能イソシアネート(b)として、ジイソシアネート(b1)と、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(b2)とが併用される。弾性付与と反応時の安定性の観点から、多官能イソシアネート(b)中におけるジイソシアネート(b1)の配合割合は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。光硬化速度の観点から、多官能イソシアネート(b)中におけるジイソシアネート(b1)の配合割合は、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
【0055】
化合物(A1)は、複数の化合物であっても良い。通常、化合物(A1)は、副生成物を含んでいる。化合物(A1)は、次の化合物(A1−1)の他、例えば化合物(A1−2)を含んでいてもよい。
(A1−1):上記ポリオール(a)に由来する構成単位、上記多官能イソシアネート(b)に由来する構成単位及び上記活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)に由来する構成単位を含む化合物。
(A1−2):上記多官能イソシアネート(b)に由来する構成単位及び上記活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)に由来する構成単位のみからなる化合物。
【0056】
化合物(A2)は、複数の化合物であっても良い。通常、化合物(A2)は、副生成物を含んでいる。化合物(A2)は、次の化合物(A2−1)の他、例えば化合物(A2−2)を含んでいてもよい。
(A2−1):上記ポリオール(a)に由来する構成単位、上記多官能イソシアネート(b)に由来する構成単位、上記活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)に由来する構成単位及び低分子量グリコール(d)に由来する構成単位を含む化合物。
(A2−2):上記多官能イソシアネート(b)に由来する構成単位及び上記活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)に由来する構成単位のみからなる化合物。
【0057】
化合物(A1)及び化合物(A2)の重量平均分子量M1は、5,000〜100,000の範囲内が好ましい。重量平均分子量M1が5,000未満の場合、耐久性、弾性、耐溶剤性、耐候性等が低下することがある。重量平均分子量M1が100,000を越える場合は、塗工時の作業性及び活性エネルギー線による硬化反応の際の作業性が低下する場合がある。よって、特に好ましくは、重量平均分子量M1は、15,000〜40,000である。重量平均分子量の測定方法は、実施例において説明される。
【0058】
化合物(A1)又は(A2)の製造方法には特に制限はない。例えば、化合物(A1)の製造方法として、下記の製法(I)から(III)が採用されうる。
【0059】
製法(I):ポリオール(a)、多官能イソシアネート(b)及び単量体(c)を同時に反応させる方法。
製法(II):ポリオール(a)と多官能イソシアネート(b)を反応させてイソシアネート基を末端に有する中間生成物を得た後、この中間生成物と単量体(c)とを反応させる方法。
製法(III):多官能イソシアネート(b)と単量体(c)を反応させイソシアネート基を末端に有する中間生成物を得た後、この中間生成物とポリオール(a)とを反応させる方法。
【0060】
上記製法(I)及び製法(III)においては、ポリオール(a)と多官能イソシアネート(b)の反応生成物及び/又は多官能イソシアネート(b)と単量体(c)の反応生成物が不純物として混在したものが得られ易い。一方、製法(II)を採用した場合、分子末端にアクリル基を有する活性エネルギー線硬化型樹脂が得られやすい。よって、上記製法(II)が好ましい。尚、製法(II)の中には、ポリオール(a)の全量と多官能イソシアネート(b)の一部とを反応させて水酸基を末端に有する中間生成物(1)を作り、その後この中間生成物(1)と残りの多官能イソシアネート(b)とを反応させてイソシアネート基を末端に有する中間生成物(2)を得て、更に、この中間生成物(2)に単量体(c)を反応させる方法も含まれる。
【0061】
本発明に係る化合物(A1)のより好ましい製造方法は、次の工程(s1)と工程(s2)とを含む。
工程(s1):ポリオール(a)とジイソシアネート(b1)とを反応させて反応生成物(1)を得る工程。
工程(s2):イソシアネート(b2)及びビニル単量体(c)と反応生成物(1)とを反応させる工程。
【0062】
工程(s1)により、ポリオール(a)とジイソシアネート(b1)とが交互共重合した共重合体が効率的に得られうる。更に、工程(s1)と工程(s2)とを含む製造方法により、分子末端に単量体(c)が結合されてなる化合物が効率的に得られうる。
【0063】
例えばポリオール(a)がポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール又はポリカーボネートポリオールの場合、反応生成物(1)は、ポリオール(a)とジイソシアネート(b1)とが交互共重合したウレタン化合物である。また例えばポリオール(a)がアクリル系ポリオールの場合、反応生成物(1)は、ポリオールの水酸基とジイソシアネート(b1)のイソシアネート基とがウレタン結合した化合物である。
【0064】
工程(s2)により、分子末端にビニル基が導入されうる。この末端のビニル基は、化合物(A1)に活性エネルギー線硬化性を付与する。また、反応生成物(1)により形成される分子構造は、化合物(A1)に適度な弾性と凝集力とを付与しうる。
【0065】
本発明に係る化合物(A2)の好ましい製造方法は、次の工程(s3)及び工程(s4)を含む。
工程(s3):ポリオール(a)及び低分子量グリコール(d)とジイソシアネート(b1)とを反応させて反応生成物(2)を得る工程。
工程(s4):イソシアネート(b2)及びビニル単量体(c)と反応生成物(2)とを反応させる工程。
【0066】
この製造方法工程(s3)と工程(s4)とを含む製造方法により、ポリオール(a)とジイソシアネート(b1)及び低分子量グリコール(d)とが反応した反応生成物(2)の末端にビニル単量体(c)が結合した化合物が効率的に得られる。この末端のビニル単量体(c)が活性エネルギー線硬化性を付与する。また、反応生成物(2)により形成される分子構造は、化合物(A2)に適度な弾性と凝集力とを付与しうる。
【0067】
例えばポリオール(a)がポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール又はポリカーボネートポリオールの場合、反応生成物(2)は、低分子量グリコール(d)又はポリオール(a)とジイソシアネート(b1)とが交互共重合したウレタン化合物である。また例えばポリオール(a)がアクリル系ポリオールの場合、反応生成物(2)は、ポリオール(a)の水酸基とジイソシアネート(b1)のイソシアネート基とがウレタン結合した化合物(α)、又はこの化合物(α)の末端のジイソシアネート(b1)部分に更にポリオール(a)又は低分子量グリコール(d)がウレタン結合した化合物である。
【0068】
工程(s4)により、分子末端にビニル基が効率的に導入されうる。この末端のビニル基は、化合物(A2)に活性エネルギー線硬化性を付与する。また、反応生成物(2)により形成される分子構造は、化合物(A2)に適度な弾性と凝集力とを付与しうる。
【0069】
上記特開2002−69139に記載された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物では、弾性付与成分の導入箇所が分子の末端であるため、弾性の設計自由度が狭い。これに対して本発明では、弾性成分の導入箇所が分子末端ではなく、主鎖部分等であるため、弾性の設計自由度が高い。即ち、本発明に係る活性エネルギー線硬化型樹脂組成物では、弾性の設計自由度が高い。この自由度の高さにより、自己傷つき性低減と他部材に対する傷つけにくさとの両立とが可能となる。なお、自己傷つき性とは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物自身が傷つく性質を意味する。また、分子の設計自由度が高くされることにより、硬度、粘度、塗工性、カール性等のあらゆる物性に関して自由度が高くなる。これにより、より優れた物性の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が達成されうる。
【0070】
[他の化合物]
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に配合される他の化合物は、限定されない。塗工性の調整等の為に有機溶剤が配合されてもよい。
【0071】
好ましくは、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤により、活性エネルギー線による硬化が促進されうる。光重合開始剤は限定されない。
【0072】
光重合開始剤として、具体的には、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アントラキノン系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、ケタール系化合物等が挙げられる。
【0073】
より具体的には、光重合開始剤として、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、キサントン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール等が挙げられる。
【0074】
市販品の光重合開始剤として、例えば、Irgacure184、Irgacure127、Irgacure149、Irgacure261、IIrgacure369、IIrgacure379、Irgacure500、Irgacure651、Irgacure784、Irgacure819、IIrgacure907、Irgacure1116、Irgacure1664、Irgacure1700、Irgacure1800、Irgacure1850、Irgacure2959、Irgacure4043、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Darocur1173、DarocurTPO(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製);ルシリンTPO(BASF社製);KAYACURE−DETX、KAYACURE−MBP、KAYACURE−DMBI、KAYACURE−EPA、KAYACURE−OA(日本化薬(株)製);VICURE−10、VICURE−55(STAUFFER Co.LTD製);TRIGONALP1(AKZO Co.LTD製);SANDORY 1000(SANDOZ Co.LTD製);DEAP(APJOHN Co.LTD製);QUANTACURE−PDO、QUANTACURE−ITX、QUANTACURE−EPD(WARD BLEKINSOP Co.LTD製)、等が挙げられる。
【0075】
光重合開始剤と各種の光増感剤とが併用されてもよい。この光増感剤として、アミン類、尿素類、含硫黄化合物、含燐化合物、含塩素化合物またはニトリル類もしくはその他の含窒素化合物などが例示される。
【0076】
光重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。その使用割合は特に制限はない。感度を良好に保ち、結晶の析出を抑え、更には塗膜物性を良好に保つ観点から、樹脂組成物における光重合開始剤の比率は、光重合性単量体の全質量に対して0.01〜20重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%含である。
【0077】
特に好ましい光重合開始剤として、硬化性の観点からは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。臭気の観点からは、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体からなる群から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0078】
[帯電防止剤]
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、帯電防止剤を含んでいてもよい。帯電防止剤が配合されることにより、硬化後の塗膜の表面抵抗率が低くなり、埃や塵等の塗膜表面への付着が防止されるのでより一層好ましい。帯電防止剤としては、例えば、アルキルホスフェートなどのアニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩などのカチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン系帯電防止剤、リチウム・ナトリウム・カリウム等のアルカリ金属塩を使用した帯電防止剤などが挙げられる。これらのうち、リチウム塩を使用した帯電防止剤は、帯電防止性及び耐湿熱性に優れ好ましい。特にアニオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであるリチウム塩は、帯電防止性に優れるのでより一層好ましい。
【0079】
[活性エネルギー線硬化性化合物]
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、目的に応じて任意の適切な活性エネルギー線硬化性化合物をさらに含有してもよい。この活性エネルギー線硬化性化合物としては、多官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及び単官能活性エネルギー線硬化性化合物が挙げられる。この多官能(メタ)アクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルジ(メタ)アクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリイソプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類;、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類等が挙げられる。上記単官能活性エネルギー線硬化性化合物としては、具体的には、アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、テトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート及びメチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレートで表される化合物が挙げられる。
【0080】
このような活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、基材4等に塗工されうる。例えば、バインダー16と光拡散材14とが混合された後、この混合物が基材4に塗工される。塗工方法としては、従来から知られている方法が用いられうる。塗工方法として、例えば、エアスプレーやエアレススプレーによる塗装、静電塗装及びコーターによるコーティングが挙げられる。コーターとしては、バーコーター、ロールコーター、フローコーターなどが挙げられる。例えば、図1の実施形態では、この塗工により光拡散層6が形成される。塗工された光拡散層6に、活性エネルギー線が照射される。この照射により、バインダー16が硬化する。
【0081】
活性エネルギー線の照射装置は限定されず、公知の装置が用いられうる。例えば紫外線の光源として、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等が用いられうる。紫外線波長は、通常1900〜3800オングストロームの波長域が主として用いられる。紫外線を照射する場合の照射条件としては、例えば硬化エネルギー(積算光量)が100〜1000mJ/cmであるのが好ましい。電子線の場合、照射装置として、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器等の照射源を備えた装置が用いられうる。電子線を照射する場合の照射条件としては、加速電圧が150〜250keVとされ、照射量が1〜5Mradとされるのが好ましい。
【実施例】
【0082】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0083】
なお、以下において特に説明がない限り、「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
【0084】
[評価方法]
(1)鉛筆硬度
JIS−K5600−5−4に準拠して鉛筆引っかき試験を行い、すり傷による評価を行った。この評価結果が下記の表で示される。
【0085】
(2)耐スチールウール性
スガ試験機(株)製学振型耐摩耗試験機を用いて、#0000スチールウールを200gの荷重で10回往復させた後の傷を目視により確認した。評価は、4段階とした。傷がない場合を◎とし、傷が1〜5本の場合を○とし、傷が6〜10本の場合を△とし、傷が11本以上の場合を×とした。この評価結果が下記の表で示される。
【0086】
(3)ヘイズ
JIS−K7105に準拠して、ヘイズメーターによりヘイズ(%)を測定した。ヘイズメーターは、日本電色(株)製のNDH2000を用いた。この測定結果が下記の表で示される。
【0087】
(4)全光線透過率
JIS−K7361に準拠して、ヘイズメーターにより全光線透過率(%)を測定した。ヘイズメーターは、日本電色(株)製のNDH2000を用いた。この測定結果が下記の表で示される。
【0088】
(5)外観
塗膜表面の外観を目視で観察し、塗膜の塗りむら及び白化を評価した。評価は3段階とされた。塗りむら及び白化が観察されないものが○とされ、塗りむら及び/又は白化が観察されるものが△とされ、塗りむら及び/又は白化が著しいものが×とされた。この評価結果が下記の表で示される。
【0089】
(6)表面抵抗率
JIS−C2151−1990に準拠して、超絶縁計により表面抵抗率(Ω/□)を測定した。超絶縁計として、東亞DDK(株)製のSME−8311が用いられた。この測定結果が下記の表で示される。
【0090】
(7)臭気
10cm離れたところで塗膜の臭いを嗅ぐことにより評価した。評価は3段階でなされた。臭気が感じられない場合が○とされ、臭気が感じられる場合が△とされ、著しく臭気が感じられる場合が×とされた。この評価結果が下記の表で示される。
【0091】
(8)カール性
各例の樹脂組成物が塗工されたフィルムを縦7cmで且つ横7cmの正方形にカットしてカットサンプルを得た。このカットサンプルを25℃、50%RHの条件下で24時間放置し、放置後のカール具合を目視により評価した。評価は3段階でなされた。カールが見られない場合が○とされ、カールが見られる場合が△とされ、著しくカールが見られる場合が×とされた。
【0092】
(9)数平均分子量、重量平均分子量
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8020型)により、カラムを用いて、ポリスチレン換算で測定した。カラムは、TKgelG−5000HXL[東ソー(株)製]及びTSKgelGMHXL−L[東ソー(株)製]を直列に連結して用いた。
【0093】
[合成例1](ウレタンアクリレートの製造)
ポリオール(a)成分として、(株)クラレ製のポリエステルポリオール(商品名「クラポールP−2010」、OH価53.0〜59.0)を用いた。ジイソシアネート(b1)成分として、トリレンジイソシアネート(TDI)を用いた。攪拌機、乾燥空気導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコを用意し、このフラスコに、113部のポリエステルポリオール(「クラポールP−2010」)、42部のトリレンジイソシアネート(TDI)及び169部のトルエンを仕込んだ。更にフラスコの空間を乾燥空気により充填した。この乾燥空気中においてフラスコの内容物を撹拌しながら昇温した。60℃で1時間反応させた後、0.02部のジブチル錫ジラウレートを添加し、80℃に昇温した。80℃で1時間反応させた後、18部の3−メチル−1,5−ペンタンジオール[(株)クラレ製]を10分間かけて滴下し、つついて138部のトルエンを2時間かけて滴下した。3−メチル−1,5−ペンタンジオール及びトルエンが滴下される間、反応温度は80℃に保たれた。次に、一旦反応系の温度を50℃以下に冷却した後、96部のデスモジュールN3200[住化バイエルウレタン(株)製]を加えてよく混合し、80℃に昇温した。80℃で2時間反応させた後、175部のカプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート[ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルFA−2D」]を10分間かけて滴下し、その後80℃で2時間反応させた。反応後、272部のトルエンを加え、ウレタンアクリレート化合物(V−1)の50%トルエン溶液を得た。このウレタンアクリレート化合物(V−1)は、数平均分子量が約9,000であり、重量平均分子量が約30,900であった。
【0094】
[合成例2](ウレタンアクリレートの製造)
ポリオール(a)成分として、(株)クラレ製のポリエステルポリオール(商品名「クラポールP−2010」、OH価53.0〜59.0)を用いた。ジイソシアネート(b1)成分として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を用いた。攪拌機、乾燥空気導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコを用意し、このフラスコに、113部のポリエステルポリオール(「クラポールP−2010」)、40部のヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)及び169部のトルエンを仕込んだ。更にフラスコの空間を乾燥空気により充填した。この乾燥空気中においてフラスコの内容物を撹拌しながら昇温した。60℃で1時間反応させた後、0.02部のジブチル錫ジラウレートを添加し、80℃に昇温した。80℃で1時間反応させた後、18部の3−メチル−1,5−ペンタンジオール[(株)クラレ製]を10分間かけて滴下し、つついて138部のトルエンを2時間かけて滴下した。3−メチル−1,5−ペンタンジオール及びトルエンが滴下される間、反応温度は80℃に保たれた。次に、一旦反応系の温度を50℃以下に冷却した後、96部のデスモジュールN3300[住化バイエルウレタン(株)製]を加えてよく混合し、80℃に昇温した。80℃で2時間反応させた後、175部のカプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート[ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルFA−2D」]を10分間かけて滴下し、その後80℃で2時間反応させた。反応後、272部のトルエンを加え、ウレタンアクリレート化合物(V−2)の50%トルエン溶液を得た。このウレタンアクリレート化合物(V−2)は、数平均分子量が約5,400であり、重量平均分子量が約33,600であった。
【0095】
[合成例3](ウレタンアクリレートの製造)
攪拌機、乾燥空気導入管、温度計及び還流冷却器を備えたフラスコを用意し、このフラスコに、66部のカプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート[ダイセル化学工業(株)製、商品名「プラクセルFA−2D」]を仕込んだ。更にフラスコの空間を乾燥空気により充填した。この乾燥空気中においてフラスコの内容物を撹拌しながら60℃まで昇温した。次に91部のデスモジュールN3200[住化バイエルウレタン(株)製]を1時間かけて滴下した。滴下終了後、0.02部のジブチル錫ジラウレートを添加し、60℃で4時間反応させた。反応後、157部のトルエンを加え、ウレタンアクリレート化合物(V−3)の50%トルエン溶液を得た。このウレタンアクリレート化合物(V−3)の数平均分子量は3,000であり、重量平均分子量は4,800であった。
【0096】
[実施例1]
合成例1で得られたウレタンアクリレート化合物(V−1)の50%トルエン溶液49.1部、トリメチロールプロパントリアクリレート10.5部、Irgacure127[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]1.1部及び酢酸n−ブチル39.3部を混合して、樹脂組成物(1)を得た。バーコーターを用いて、この樹脂組成物(1)を、乾燥後の塗工量が10g/cmとなるように、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した。このPETフィルムとして、膜厚が100μmである東洋紡績(株)製の商品名「コスモシャインA4300」が用いられた。塗布層を80℃で5分間乾燥させた後、高圧水銀灯で250mJ/cmの紫外線を照射することにより硬化させ、評価サンプルを得た。この評価サンプルについて、塗膜の鉛筆硬度、塗膜の耐スチールウール性、ヘイズ(%)、全光線透過率(%)、塗膜の表面抵抗率(Ω/□)、臭気、カール性及び外観が評価された。これらの評価結果及び実施例1の配合が下記の表1で示される。配合の単位は、質量部である。
【0097】
[実施例2から6及び比較例1]
樹脂組成物の配合が表1のようにされた他は実施例1と同様にして、実施例2から6に係る評価サンプルを得た。これらの評価サンプルのそれぞれについて、塗膜の鉛筆硬度、塗膜の耐スチールウール性、ヘイズ(%)、全光線透過率(%)、塗膜の表面抵抗率(Ω/□)、臭気、カール性及び外観が評価された。これらの評価結果及び各例の配合が下記の表1で示される。配合の単位は、質量部である。
【0098】
[実施例7]
実施例1において得られた樹脂組成物(1)に、樹脂組成物(1)の固形分に対しビーズ量が20%となるように、7.2部のアクリル樹脂ビーズを添加し、樹脂組成物(7)を得た。このアクリル樹脂ビーズとして、(株)日本触媒製の商品名「エポスターMA1006」が用いられた。この樹脂組成物(7)をPETフィルムに塗布した。樹脂組成物(1)が樹脂組成物(7)に変更された他は実施例1と同様にして、実施例7に係る評価サンプルを得た。この評価サンプルについて、塗膜の鉛筆硬度、塗膜の耐スチールウール性、ヘイズ(%)、全光線透過率(%)、塗膜の表面抵抗率(Ω/□)、臭気、カール性及び外観が評価された。これらの評価結果及び実施例7の配合が下記の表2で示される。配合の単位は、質量部である。
【0099】
[実施例8から13及び比較例2、3]
樹脂組成物の配合が表2、3のようにされた他は実施例7と同様にして、実施例8から13及び比較例2、3に係る評価サンプルを得た。これらの評価サンプルのそれぞれについて、塗膜の鉛筆硬度、塗膜の耐スチールウール性、ヘイズ(%)、全光線透過率(%)、塗膜の表面抵抗率(Ω/□)、臭気、カール性及び外観が評価された。これらの評価結果及び各例の配合が下記の表2及び表3で示される。配合の単位は、質量部である。
【0100】
なお、表1から表3において、「TMPTA」はトリメチロールプロパントリアクリレートを意味し、「PETA」はペンタエリスリロールトリアクリレートを意味し、「Irgacure184」及び「Irgacure127」はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の光重合開始剤の製品名であり、「MA1006」は、(株)日本触媒製の商品名「エポスターMA1006」であり、「TFSILi」はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを意味し、「ノプコスタットSN A−2」は、サンノプコ社製の商品名である。また、表1から表3の配合において、ウレタンアクリレート化合物(V−1)、ウレタンアクリレート化合物(V−2)及びウレタンアクリレート化合物(V−3)の配合割合は、いずれも50%トルエン溶液の質量部である。
【0101】
【表1】

【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
表1から表3に示されるように、実施例は、比較例に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、あらゆる用途に適用されうる。この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、あらゆる塗料、コーティング剤、バインダー等に用いられうる。この活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、光拡散フィルムのバインダー樹脂をはじめとする光学用途において特に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る光拡散フィルムの断面図である。
【符号の説明】
【0107】
2・・・光拡散フィルム
4・・・基材
6・・・光拡散層
8・・・背面層
10・・・バインダー
12・・・粒子
14・・・光拡散材
16・・・バインダー
18・・・粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びアクリル系ポリオールよりなる群から選択される1種又は2種以上のポリオール(a)、
1種又は2種以上の多官能イソシアネート(b)
及び
1種又は2種以上の活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)
を反応させて得られる化合物(A1)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール及びアクリル系ポリオールよりなる群から選択される1種又は2種以上のポリオール(a)、
1種又は2種以上の多官能イソシアネート(b)、
1種又は2種以上の活性水素含有ラジカル重合性ビニル単量体(c)
及び
1種又は2種以上の低分子量グリコール(d)
を反応させて得られる化合物(A2)を含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
上記多官能イソシアネート(b)が、ジイソシアネート(b1)と、3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(b2)とを含む請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
上記ジイソシアネート(b1)が、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートである請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
上記ラジカル重合性ビニル単量体(c)が、水酸基含有アクリルモノマーである請求項1から4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含む光拡散フィルム用樹脂組成物。
【請求項7】
バインダーと光拡散材とを含み、
上記バインダーが、請求項1から5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含む光拡散フィルム用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の光拡散フィルム用樹脂組成物を含む層と透明基材とを備えた光拡散フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2008−222985(P2008−222985A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67723(P2007−67723)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】