説明

活性エネルギー線硬化性組成物、及び塗装物品

【課題】得られる硬化塗膜が付着性、耐擦傷性、耐候性及び透明性に優れる活性エネルギー線硬化性組成物を提供する。
【解決手段】ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該ケイ素原子に直接に結合した有機基のうち、一部又は全部が、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物(A)及び(A)成分以外の重合性不飽和化合物(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物、及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
シルセスキオキサンは、基本構成単位がT単位であり、梯子型、籠型及び三次元網目型(ランダム型)の構造をとる一連のネットワーク状ポリシロキサンの総称である。このシルセスキオキサンは、一般式SiOで示される完全な無機物質であるシリカとは異なり一般的な有機溶媒に可溶であることから、取り扱いが容易であり、成膜等の加工性や成形性に優れるという特徴を有する。
【0003】
一方、ラジカル重合性を有する不飽和化合物として、多官能アクリレート及び不飽和ポリエステル等が広く検討され、また工業的に利用されている。これらラジカル重合性の不飽和化合物は、その硬化物に耐擦傷性、耐汚染性等の特性を付与する目的で、種々の検討が加えられている。しかし、従来多用されているラジカル重合性の不飽和化合物にシルセスキオキサン等のオルガノポリシロキサン化合物を混合した組成物は、相溶性が悪いために均一な組成物になりにくいこと、得られた硬化物からオルガノポリシロキサン化合物が遊離すること等の問題点を有している。
【0004】
特許文献1〜5には、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基等のラジカル重合性の官能基を有するシルセスキオキサン化合物及び該シルセスキオキサンを含有する紫外線硬化性組成物に関する発明が開示されている。これらシルセスキオキサン化合物を用いた組成物は、耐擦傷性に優れるものの、シルセスキオキサン化合物が、他の重合性不飽和化合物や他の飽和樹脂等との相溶性が十分ではなく、また得られる塗膜の付着性が十分ではない点で課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−281616号公報
【特許文献2】特開平4−28722号公報
【特許文献3】特開2002−167552号公報
【特許文献4】特開2002−363414号公報
【特許文献5】国際公開WO04/85501
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、得られる硬化塗膜が付着性、耐擦傷性、耐候性及び透明性に優れる活性エネルギー線硬化性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ケイ素原子に直接に結合した有機基として特定の有機基をシルセスキオキサン化合物に導入することにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
1.ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該ケイ素原子に直接に結合した有機基のうち、一部又は全部が、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物(A)及び(A)成分以外の重合性不飽和化合物(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物、
2.前記少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基が、下記一般式(I)
【0009】
【化1】

【0010】
[式(I)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって2価の有機基を示す。Rは2価の有機基を示す。]で表される有機基である1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
3.前記重合性不飽和化合物(B)が、下記一般式(II)及び/又は一般式(III)
【0011】
【化2】

[式(II)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。mは同一又は異なって0〜5の整数を示す。式(III)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。]で表される重合性不飽和化合物である1又は2項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
4.さらに光重合開始剤(C)を含有する1〜3項のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物、
5.1〜4項のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を被塗物上に塗装して得られる塗装物品、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に用いるケイ素原子に直接に結合した有機基として特定の有機基を有するシルセスキオキサン化合物はさまざまな重合性不飽和化合物との相溶性に優れることから、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は透明性に優れる硬化塗膜を得ることができる。さらに本発明の活性エネルギー線硬化性組成物によれば、付着性、耐擦傷性及び耐候性に優れる硬化塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該ケイ素原子に直接に結合した有機基のうち、一部又は全部が、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物(A)[以下、「(A)成分」又は「(A)成分であるシルセスキオキサン化合物」と略すことがある。]及び(A)成分以外の重合性不飽和化合物(B)を含有する。
【0014】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物
本明細書において「シルセスキオキサン化合物」は、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物のみを意味するのではなく、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造、ランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物をも含むことができる。
【0015】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物中に80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%であることが液安定性の点から好ましい。
【0016】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有する。そして、該ケイ素原子に直接に結合した有機基のうち1〜100モル%は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基である。該有機基を有することにより、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、さまざまな重合性不飽和化合物との相溶性に優れ、かつ光重合開始剤の存在下での活性エネルギー線照射により硬化する。そのため、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物により得られる硬化塗膜は透明性に優れる。
【0017】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が有する、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基は、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が有するケイ素原子に直接に結合した有機基の一部又は全部であり、好適にはそのうちの1〜70モル%であることが好ましく、2〜50モル%であることがより好ましい。これら範囲の下限値は得られる硬化塗膜の透明性の点で意義がある。これら範囲の上限値は得られる硬化塗膜の耐擦傷性の点で意義がある。
【0018】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が有する、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基としては、例えば、下記一般式(I)
【0019】
【化2】

【0020】
[式(I)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって2価の有機基を示す。Rは2価の有機基を示す。]で表される有機基が挙げられる。なお一般式(I)中のRは、シルセスキオキサン化合物を構成するケイ素原子と結合している。
【0021】
前記一般式(I)中のRは、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜100の2価の有機基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜30の2価の有機基である。2価の有機基は、炭化水素基に限定されるものではなく、例えば、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合等を有していてもよい。
【0022】
前記一般式(I)中のRは、2価の有機基であれば特に限定されるものではない。2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜100の2価の有機基が挙げられる。好ましくは炭素数1〜30の2価の有機基である。2価の有機基は、炭化水素基に限定されるものではなく、例えば、ウレタン結合、エステル結合、エーテル結合等を有していてもよい。
【0023】
前記一般式(I)で表される有機基のより具体的な例としては、例えば、下記一般式(IV)及び下記一般式(V)
【0024】
【化3】

【0025】
[式(IV)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示す。mは同一又は異なって0〜5の整数を示す。式(V)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。Rは炭素数1〜4の2価の炭化水素基を示す。]で表される有機基が挙げられる。
【0026】
前記一般式(IV)中のRは、炭素数1〜6の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数2〜4の2価の炭化水素基であることが、得られる硬化塗膜の透明性の点から好ましい。
【0027】
前記一般式(IV)中のRは、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0028】
前記一般式(IV)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、Rがエチレン基であり、Rが1、3−プロピレン基であり、mが0である有機基が好ましい。
【0029】
前記一般式(V)中のRは、炭素数1〜6の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。なかでも、炭素数2〜4の2価の炭化水素基、特にエチレン基であることが好ましい。
【0030】
前記一般式(V)中のRは、炭素数1〜4の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基等が挙げられる。
【0031】
前記一般式(V)で表される有機基としては、耐擦傷性、極性の高い重合性不飽和化合物との相溶性及び光重合開始剤存在下での活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、Rが水素原子であり、Rがエチレン基であり、Rが1、3−プロピレン基である有機基が好ましい。
【0032】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、前記少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基をケイ素原子に直接に結合した有機基のうち特定の割合で有するが、ケイ素原子に直接に結合したその他の有機基は特に限定されるものではない。その他の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基等の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基(但し、イソシアヌレート環構造を有する有機基を除く)、ビニル基を有する有機基などが挙げられる。なかでも、活性エネルギー線硬化性がより優れる点から、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基(但し、イソシアヌレート環構造を有する有機基を除く)、特に3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル基が好ましい。
【0033】
前記(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、単一の組成の化合物であってもよく、又は組成の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0034】
前記(A)成分のシルセスキオキサン化合物の重量平均分子量は、特に限定されるものではない。好ましくは重量平均分子量が1,000〜100,000、より好ましくは重量平均分子量が1,000〜10,000である。これら範囲は、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物を含む活性エネルギー線硬化性組成物の粘度及び塗装性の点で意義がある。
【0035】
本明細書において、重量平均分子量は、光散乱法により測定した重量平均分子量である。光散乱法による重量平均分子量の測定には、Zetasizer Nano Nano−ZS(Malvern Instruments Ltd社製)を用いた。測定に用いた試料は、プロピレングリコールモノメチルエーテルに(A)成分であるシルセスキオキサン化合物を溶解させ、濃度を0.5〜5.0質量%に調整した濃度の異なる10種の試料である。この10種の試料の光散乱強度を測定することにより、重量平均分子量を求めた。
【0036】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の製造方法
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、一般的なシルセスキオキサンの製造に用いられている製造方法と従来公知の化学反応とを組み合わせることにより得ることができる。また、例えば、以下の製造方法a、又は製造方法b等を用いて製造することもできる。
【0037】
製造方法a
製造方法aとしては、ケイ素原子に直接に結合した有機基であり、かつ少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基を有する加水分解性シランを出発物質として用いた製造方法が挙げられる。
【0038】
具体的には例えば、出発物質に下記一般式(VI)で表される加水分解性シラン及び必要に応じて下記一般式(VI)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランを用いて、触媒の存在下で加水分解縮合を行って(A)成分であるシルセスキオキサン化合物を製造する方法が挙げられる。
【0039】
10SiX (VI)
前記一般式(VI)中のR10は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基を示す。Xは塩素又は炭素数1〜6のアルコキシ基であり、Xは同一でも又は異なっていてもよい。Xとしては、具体的には、塩素、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0040】
前記一般式(VI)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランとしては、前記一般式(VI)で表される加水分解性シランとともに加水分解縮合することによりシルセスキオキサン化合物を製造できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0041】
(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が有する、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基の、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が有するケイ素原子に直接に結合した有機基に占める割合の調整は、出発物質として用いる前記一般式(VI)で表される加水分解性シランと必要に応じて用いられる前記一般式(VI)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランとの割合を任意に換えることにより行うことができる。
【0042】
前記一般式(VI)で表される加水分解性シランとしては、例えば、下記一般式(VII)で表される加水分解性シランが挙げられる。
【0043】
【化4】

【0044】
前記一般式(VII)中のR、R、R及びXは前記と同じである。Xは同一でも又は異なっていてもよい。
【0045】
前記一般式(VII)で表される加水分解性シランとしては、さらに具体的には例えば、下記一般式(VIII)で表される加水分解性シラン及び下記一般式(IX)で表される加水分解性シランが挙げられる。
【0046】
【化5】

【0047】
前記一般式(VIII)中のR、R、R、m及びXは前記と同じである。Xは同一でも又は異なっていてもよい。
【0048】
前記一般式(IX)中のR、R、R及びXは前記と同じである。Xは同一でも又は異なっていてもよい。
【0049】
前記一般式(VIII)で表される加水分解性シランを製造する方法を例示する。前記一般式(VIII)で表される加水分解性シランは、例えば、下記一般式(X)で表される加水分解性シランと下記一般式(XI)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0050】
【化6】

【0051】
前記一般式(X)中のR及びXは前記と同じである。Xは同一でも又は異なっていてもよい。
【0052】
前記一般式(XI)中のR、R及びmは前記と同じである。
【0053】
前記一般式(X)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
前記一般式(X)で表される加水分解性シランと前記一般式(XI)で表される化合物とを反応させる際の両者の配合割合は特に限定されるものではないが、通常、前記一般式(X)で表される加水分解性シランのアミノ基のモル数に対して、前記一般式(XI)で表される化合物のイソシアネート基を等モル用いて反応が行われる。
【0055】
この反応は、アミノ基とイソシアネート基とを反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、−78℃〜200℃、好ましくは−78℃〜100℃、更に好ましくは、−10℃〜40℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。
【0056】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0057】
前記一般式(XI)で表される化合物は、例えば、下記一般式(XII)で表される化合物と下記一般式(XIII)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0058】
【化7】

【0059】
前記一般式(XII)で表される化合物は、いわゆる1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物であり、商品名としては、スミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)、デュラネートTPA100(旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
【0060】
前記一般式(XIII)中のR、R及びmは前記と同じである。前記一般式(XIII)で表される化合物は、例えば、mが0の場合の化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。mが1〜5の場合の化合物としては、カプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、商品名として、「プラクセルFA−1」、「プラクセルFA−2」、「プラクセルFA−2D」、「プラクセルFA−3」、「プラクセルFA−4」、「プラクセルFA−5」、「プラクセルFM−1」、「プラクセルFM−2」、「プラクセルFM−2D」、「プラクセルFM−3」、「プラクセルFM−4」、「プラクセルFM−5」(いずれもダイセル化学社製)等が挙げられる。
【0061】
前記一般式(XII)で表される化合物と前記一般式(XIII)で表される化合物とを反応させる際の両者の配合割合は特に限定されるものではないが、前記一般式(XII)で表される化合物のイソシアネート基と前記一般式(XIII)で表される化合物の水酸基とがモル比で、通常、NCO/OH=1.05〜2.00、好ましくは1.10〜1.50となる配合割合である。
【0062】
この反応は、イソシアネート基と水酸基とを反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20℃〜120℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。
【0063】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0064】
なお、前記一般式(XII)で表される化合物と前記一般式(XIII)で表される化合物とを反応させることにより得られる生成物には、前記一般式(XI)で表される化合物のほかに、下記一般式(XIV)
【0065】
【化8】

【0066】
[式(XIV)中のR、R及びmは前記と同じである。]で表される化合物等が含まれる場合がある。
【0067】
そして、前記一般式(VIII)で表される加水分解性シランを製造する際、及び前記一般式(VIII)で表される加水分解性シランを用いて(A)成分であるシルセスキオキサン化合物を製造する際に、その製造の原料中に前記一般式(XIV)で表される化合物等が含まれていても特段問題はない。
【0068】
続いて、前記一般式(IX)で表される加水分解性シランを製造する方法を例示する。前記一般式(IX)で表される加水分解性シランは、例えば、下記一般式(XV)で表される加水分解性シランと下記一般式(XVI)で表される化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0069】
【化9】

【0070】
前記一般式(XV)中のR及びXは前記と同じである。Xは同一でも又は異なっていてもよい。
【0071】
前記一般式(XVI)中のR及びRは前記と同じである。
【0072】
前記一般式(XV)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0073】
前記一般式(XVI)で表される化合物としては、例えば、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ビス(2−アクリロイルオキシプロピル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等が挙げられる。商品名としては、アロニックスM−215、アロニックスM−313(いずれも東亞合成社製)等が挙げられる。
【0074】
前記一般式(XV)で表される加水分解性シランと前記一般式(XVI)で表される化合物とを反応させる際の両者の配合割合は特に限定されるものではないが、通常、前記一般式(XV)で表される加水分解性シランのイソシアネート基のモル数に対して、前記一般式(XVI)で表される化合物の水酸基を等モル用いて反応が行われる。
【0075】
この反応は、イソシアネート基と水酸基とを反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20℃〜120℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。
【0076】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0077】
なお、前記一般式(XVI)で表される化合物は、例えば、アロニックスM−215、アロニックスM−313(いずれも東亞合成社製)等に代表されるように、通常、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート等の下記一般式(XVII)
【0078】
【化10】

【0079】
[式(XVII)中、R及びRは前記と同じである。]で表される化合物との混合物として販売されている。
【0080】
そして、前記一般式(IX)で表される加水分解性シランを製造する際、及び前記一般式(IX)で表される加水分解性シランを用いて(A)成分であるシルセスキオキサン化合物を製造する際に、その製造の原料中に前記一般式(XVII)で表される化合物等が含まれていても特段問題はない。
【0081】
出発物質に前記一般式(VI)で表される加水分解性シラン及び必要に応じて前記一般式(VI)で表される加水分解性シラン以外の加水分解性シランを用いて、加水分解縮合を行って(A)成分であるシルセスキオキサン化合物を製造する際には、通常、触媒を使用する。
【0082】
前記触媒としては、塩基性触媒が好適に用いられる。塩基性触媒としては、具体的には例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の水酸化アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化アンモニウム塩等が挙げられる。
【0083】
前記触媒の使用量は特に限定されるものではないが、多すぎるとコスト高、除去が困難等の問題があり、一方、少なすぎると反応が遅くなってしまう。そのため、触媒の使用量は、好ましくは加水分解性シラン1モルに対して0.0001〜1.0モル、より好ましくは0.0005〜0.1モルの範囲である。
【0084】
加水分解性シランを加水分解縮合する場合は、通常、水を使用する。加水分解性シランと水との量比は、特に限定されるものでない。水の使用量は、加水分解性シラン1モルに対し、好ましくは水0.1〜100モル、さらに好ましくは0.5〜3モルの割合である。水の量が少なすぎると、反応が遅くなり、目的とするシルセスキオキサン化合物の収率が低くなるおそれがあり、水の量が多すぎると高分子量化し、所望とする構造の生成物が減少するおそれがある。また、使用する水は塩基性触媒を水溶液として用いる場合はその水で代用してもよいし、別途水を加えてもよい。
【0085】
前記加水分解縮合において、有機溶媒は使用してもよく、又は使用しなくてもよい。有機溶媒を用いることは、ゲル化を防止する点及び製造時の粘度を調節できる点から好ましい。有機溶媒としては、極性有機溶媒、非極性有機溶媒を単独又は混合物として用いることができる。
【0086】
極性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類が用いられるが、特にアセトン、テトラヒドロフランは沸点が低く系が均一になり反応性が向上することから好ましい。非極性有機溶媒としては、炭化水素系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン等の水よりも沸点が高い有機溶媒が好ましく、特にトルエン等の水と共沸する有機溶媒は系内から水を効率よく除去できるため好ましい。特に、極性有機溶媒と非極性有機溶媒とを混合することで、前述したそれぞれの利点が得られるため混合溶媒として用いることが好ましい。
【0087】
加水分解縮合時の反応温度としては、通常0〜200℃、好ましくは10〜200℃、更に好ましくは10〜120℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02〜0.2MPaの圧力範囲が好ましく、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、1〜12時間程度で終了する。
【0088】
加水分解縮合反応では、加水分解と共に縮合反応が進行し、加水分解性シランの加水分解性基[具体的には例えば、前記一般式(VI)中のX]の大部分、好ましくは100%がヒドロキシル基(OH基)に加水分解され、更にそのOH基の大部分、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは100%を縮合させることが液安定性の点から好ましい。
【0089】
加水分解縮合後の混合液からは、反応で生成したアルコール、溶媒及び触媒を公知の手法で除去してもよい。なお、得られた生成物は、その目的に応じて、触媒を洗浄、カラム分離、固体吸着剤等の各種の精製法によって除去し、更に精製してもよい。好ましくは、効率の点から水洗により触媒を除去することである。
【0090】
ここで、前記加水分解縮合において100%縮合しない場合には、本製造方法により得られる生成物には、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物以外に、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物が含まれる場合があるが、本製造方法により得られる(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、それらラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体を含んでいてもよい。なお、本製造方法により得られる(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが液安定性の点から好ましい。
【0091】
製造方法b
製造方法bとしては、アミノ基を有する加水分解性シランを用いて、アミノ基を有するシルセスキオキサン化合物を製造する第b−1工程、該第b−1工程により得られたシルセスキオキサン化合物のアミノ基に、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基、少なくとも1つのイソシアヌレート環構造、及び1つのイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基を反応させる第b−2工程を有する製造方法が挙げられる。
【0092】
製造方法bは、例えば、前記一般式(IV)で表される有機基を有する(A)成分であるシルセスキオキサン化合物を製造する際に用いることができる。以下に、製造方法bによる前記一般式(IV)で表される有機基を有する(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の製造方法を示す。
【0093】
第b−1工程
前記第b−1工程に用いるアミノ基を有する加水分解性シランとしては、具体的には例えば、下記一般式(XVIII)で表される加水分解性シランが挙げられる。
【0094】
【化11】

【0095】
前記一般式(XVIII)中のR及びXは前記と同じである。Xは同一でも又は異なっていてもよい。
【0096】
前記一般式(XVIII)で表される加水分解性シランとしては、具体的には例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0097】
前記第b−1工程においてアミノ基を有するシルセスキオキサン化合物を得るためには、具体的には、
前記一般式(XVIII)で表される加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、又は、
前記一般式(XVIII)で表される加水分解性シラン、及びアミノ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランを出発物質に用いて触媒の存在下で加水分解縮合する、
ことが挙げられる。
【0098】
アミノ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランとしては、前記一般式(XVIII)で表される加水分解性シランとともに加水分解縮合することによりシルセスキオキサン化合物を製造できるものであれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等の3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0099】
ここで、本製造方法において、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が有する、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基の、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が有するケイ素原子に直接に結合した有機基に占める割合の調整は、出発物質として用いる前記一般式(XVIII)で表される加水分解性シランと必要に応じて用いられる前記アミノ基を有する加水分解性シラン以外の加水分解性シランとの割合を任意に換えることにより行うことができる。
【0100】
前記触媒としては、塩基性触媒が好適に用いられる。塩基性触媒としては、具体的には例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド等の水酸化アンモニウム塩、テトラブチルアンモニウムフルオリド等のフッ化アンモニウム塩等が挙げられる。
【0101】
前記触媒の使用量は特に限定されるものではないが、多すぎるとコスト高、除去が困難等の問題があり、一方、少なすぎると反応が遅くなってしまう。そのため、触媒の使用量は、好ましくは加水分解性シラン1モルに対して0.0001〜1.0モル、より好ましくは0.0005〜0.1モルの範囲である。
【0102】
加水分解性シランを加水分解縮合する場合は、通常、水を使用する。加水分解性シランと水との量比は、特に限定されるものでない。水の使用量は、加水分解性シラン1モルに対し、好ましくは水0.1〜100モル、さらに好ましくは0.5〜3モルの割合である。水の量が少なすぎると、反応が遅くなり、目的とするシルセスキオキサン化合物の収率が低くなるおそれがあり、水の量が多すぎると高分子量化し、所望とする構造の生成物が減少するおそれがある。また、使用する水は塩基性触媒を水溶液として用いる場合はその水で代用してもよいし、別途水を加えてもよい。
【0103】
前記加水分解縮合において、有機溶媒は使用してもよく、又は使用しなくてもよい。有機溶媒を用いることは、ゲル化を防止する点及び製造時の粘度を調節できる点から好ましい。有機溶媒としては、極性有機溶媒、非極性有機溶媒を単独又は混合物として用いることができる。
【0104】
極性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類が用いられるが、特にアセトン、テトラヒドロフランは沸点が低く系が均一になり反応性が向上することから好ましい。非極性有機溶媒としては、炭化水素系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン等の水よりも沸点が高い有機溶媒が好ましく、特にトルエン等の水と共沸する有機溶媒は系内から水を効率よく除去できるため好ましい。特に、極性有機溶媒と非極性有機溶媒とを混合することで、前述したそれぞれの利点が得られるため混合溶媒として用いることが好ましい。
【0105】
加水分解縮合時の反応温度としては、通常0〜200℃、好ましくは10〜200℃、更に好ましくは10〜120℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02〜0.2MPaの圧力範囲が好ましく、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。当該反応は、通常、1〜12時間程度で終了する。
【0106】
加水分解縮合反応では、加水分解と共に縮合反応が進行し、加水分解性シランの加水分解性基[具体的には例えば、前記一般式(XVIII)中のX]の大部分、好ましくは100%がヒドロキシル基(OH基)に加水分解され、更にそのOH基の大部分、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは100%を縮合させることが液安定性の点から好ましい。
【0107】
加水分解縮合後の混合液からは、反応で生成したアルコール、溶媒及び触媒を公知の手法で除去してもよい。なお、得られた生成物は、その目的に応じて、触媒を洗浄、カラム分離、固体吸着剤等の各種の精製法によって除去し、更に精製してもよい。好ましくは、効率の点から水洗により触媒を除去することである。
【0108】
第b−2工程
前記第b−2工程では、前記第b−1工程により得られるシルセスキオキサン化合物のアミノ基に、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基、少なくとも1つのイソシアヌレート環構造、及び1つのイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基を反応させる。
【0109】
少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基、少なくとも1つのイソシアヌレート環構造、及び1つのイソシアネート基を有する化合物としては、例えば、下記一般式(XIX)で表される化合物が挙げられる。
【0110】
【化12】

【0111】
前記一般式(XIX)中のR、R及びmは前記と同じである。
【0112】
前記第b−1工程により得られるシルセスキオキサン化合物のアミノ基に、前記一般式(XIX)で表される化合物のイソシアネート基を反応させる際の両者の配合割合は特に限定されるものではないが、通常、前記第b−1工程により得られるシルセスキオキサン化合物のアミノ基のモル数に対して、前記一般式(XIX)で表される化合物のイソシアネート基を等モル用いて反応が行われる。
【0113】
この反応は、アミノ基とイソシアネート基とを反応させる常法に従って行うことができる。反応温度は、例えば、−78℃〜200℃、好ましくは−78℃〜100℃、更に好ましくは、−10℃〜40℃である。また、この反応は圧力によらず実施できるが、0.02〜0.2MPa、特に0.08〜0.15MPaの圧力範囲が好ましい。
【0114】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0115】
なお、前記一般式(XIX)で表される化合物は、前記一般式(XI)で表される化合物と同じ化合物である。そのため、前記一般式(XIX)で表される化合物は、前述した製造方法aにおいて説明した前記一般式(XI)で表される化合物と同じ製造方法により得ることができる。そして、前述した製造方法aにおいて説明した前記一般式(XI)で表される化合物の製造方法により得られる生成物には、前記一般式(XIX)で表される化合物のほかに、前記一般式(XIV)で表される化合物等が含まれる場合がある。
【0116】
しかし、第b−2工程においてその製造の原料中に前記一般式(XIV)で表される化合物等が含まれていても特段問題はない。
【0117】
以上の製造方法により(A)成分であるシルセスキオキサン化合物が製造される。
【0118】
ここで、前記第b−1工程の加水分解縮合において100%縮合しない場合には、製造方法bにより得られる生成物には、Si−OH基(ヒドロキシシリル基)の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物以外に、Si−OH基が残存したラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体のシルセスキオキサン化合物が含まれる場合があるが、本製造方法により得られる(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、それらラダー構造、不完全籠型構造及び/又はランダム縮合体を含んでいてもよい。なお、本製造方法により得られる(A)成分であるシルセスキオキサン化合物は、Si−OH基の全てが加水分解縮合した構造のシルセスキオキサン化合物の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であることが液安定性の点から好ましい。
【0119】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の配合割合は特に限定されるものではない。得られる硬化塗膜の耐擦傷性、被塗物への付着性、及び耐侯性の点から、好ましくは、活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜95質量部であり、より好ましくは10〜80質量部であり、特に好ましくは20〜50質量部である。
【0120】
重合性不飽和化合物(B)
重合性不飽和化合物(B)としては、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物以外の化合物であって、その化学構造中に重合性不飽和二重結合を少なくとも1つ有する化合物であれば特に限定されない。
【0121】
前記重合性不飽和化合物(B)としては、単官能重合性不飽和化合物、多官能重合性不飽和化合物が挙げられる。
【0122】
単官能重合性不飽和化合物としては、例えば、一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。また、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性不飽和化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロルスチレン等のビニル芳香族化合物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素アルキル(メタ)アクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等の重合性アミド類等が挙げられる。
【0123】
多官能重合性不飽和化合物としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート化合物;その他、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらに、重合性不飽和基含有アクリル樹脂、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエステル(メタ)アクリレート樹脂等が挙げられる。重合性不飽和基含有アクリル樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有アクリル樹脂にグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有重合性不飽和化合物を付加して得られる重合性不飽和基含有アクリル樹脂、ヒドロキシル基含有アクリル樹脂に2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等のイソシアネート基と重合性不飽和基とを有する化合物を付加して得られる重合性不飽和基含有アクリル樹脂等が挙げられる。これら重合性不飽和化合物は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0124】
さらに多官能重合性不飽和化合物としては、下記一般式(II)で表される重合性不飽和化合物及び下記一般式(III)で表される重合性不飽和化合物が挙げられる。
【0125】
【化13】

【0126】
[式(II)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。mは同一又は異なって0〜5の整数を示す。式(III)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。]
前記一般式(II)中のRは、炭素数1〜6の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0127】
前記一般式(III)中のRは、炭素数1〜6の2価の炭化水素基であれば特に限定されるものではない。具体的には例えば、メチレン基、エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,4−ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0128】
前記一般式(II)で表される重合性不飽和化合物は、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートをジラウリン酸ジn−ブチル錫等の錫系触媒の存在下、イソシアネート基とヒドロキシル基がほぼ等量になるように用いて、60〜70℃で数時間加熱することにより得ることができる。
【0129】
前記一般式(III)で表される重合性不飽和化合物としては、例えば、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0130】
ここで、前記一般式(II)で表される重合性不飽和化合物は、前述した(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の製造方法において説明した前記一般式(XIV)で表される化合物と同じ化合物である。また、前記一般式(III)で表される重合性不飽和化合物は、前述した(A)成分であるシルセスキオキサン化合物の製造方法において説明した前記一般式(XVII)で表される化合物と同じ化合物である。そのため、(A)成分であるシルセスキオキサン化合物を製造する際に、前記一般式(II)で表される重合性不飽和化合物、又は前記一般式(III)で表される重合性不飽和化合物が含まれることがあるが、それら前記一般式(II)で表される重合性不飽和化合物及び前記一般式(III)で表される重合性不飽和化合物は、本発明においては、重合性不飽和化合物(B)に含まれるものとする。
【0131】
さらに多官能重合性不飽和化合物としては、例えばイミノオキサジアジンジオン基を有するヘキサメチレンジシソシアネートトリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを触媒の存在下、イソシアネート基とヒドロキシル基がほぼ等量になるように用いて反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレートも使用することができる。イミノオキサジアジンジオン基を有するヘキサメチレンジシソシアネートトリマーの市販品としては、例えば、デスモジュールXP2410(バイエルマテリアルサイエンス社製)等が挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0132】
上記ヘキサメチレンジシソシアネートトリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの反応は、例えば、0〜200℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは、20℃〜120℃の温度で行なうことができる。当該反応は、通常、2〜10時間程度で終了する。反応では適宜触媒を使用しても良い。触媒としては、トリエチルアミン等の第三級アミン、ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。
【0133】
前記反応では適宜溶媒を使用しても良い。溶媒としては、具体的には例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0134】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、得られる硬化塗膜の耐候性及び被塗物への付着性の点から、前記一般式(II)で表される重合性不飽和化合物及び/又は前記一般式(III)で表される重合性不飽和化合物を含有することが好ましい。
【0135】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物における重合性不飽和化合物(B)の配合割合は特に限定されるものではない。得られる硬化塗膜の耐候性及び被塗物への付着性の点から、好ましくは、活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して、1〜95質量部であり、より好ましくは10〜80質量部であり、特に好ましくは30〜70質量部である。
【0136】
光重合開始剤(C)
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物はさらに光重合開始剤(C)を含有していてもよい。光重合開始剤(C)としては、活性エネルギー線を吸収してラジカルを発生する開始剤であれば特に限定されることなく使用できる。
【0137】
前記光重合開始剤(C)としては、例えばベンジル、ジアセチル等のα−ジケトン類;ベンゾイン等のアシロイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル類;チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、チオキサントン−4−スルホン酸等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;ミヒラーケトン類;アセトフェノン、2−(4−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、α,α′−ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2′−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、2−メチル〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、α−イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α′−ジクロル−4−フェノキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等のアセトフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類;アントラキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)−s−トリアジン等のハロゲン化合物;ジ−t−ブチルパーオキサイド等の過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0138】
前記光重合開始剤(C)の市販品としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)−184、イルガキュア−261、イルガキュア−500、イルガキュア−651、イルガキュア−819、イルガキュア−907、イルガキュア−CGI−1700(チバ スペシャルティ ケミカルズ社製、商品名、英語表記 IRGACURE)、ダロキュア(Darocur)−1173、ダロキュア−1116、ダロキュア−2959、ダロキュア−1664、ダロキュア−4043(メルクジャパン社製、商品名、英語表記Darocur)、カヤキュア(KAYACURE)−MBP、カヤキュア−DETX−S、カヤキュア−DMBI、カヤキュア−EPA、カヤキュア−OA(日本化薬社製、商品名英語表記KAYACURE)、ビキュア(VICURE)−10、ビキュア−55〔ストウファー社(STAUFFER Co., LTD.)製、商品名〕、トリゴナル(TRIGONAL)P1〔アクゾ社(AKZO Co., LTD.)製、商品名〕、サンドレイ(SANDORAY)1000〔サンドズ社(SANDOZ Co., LTD.)製、商品名〕、ディープ(DEAP)〔アプジョン社(APJOHN Co., LTD.)製、商品名〕、カンタキュア(QUANTACURE)−PDO、カンタキュア−ITX、カンタキュア−EPD〔ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co., LTD.)製、商品名〕等を挙げることができる。
【0139】
前記光重合開始剤(C)としては、光硬化性の点からチオキサントン類、アセトフェノン類及びアシルフォスフィンオキシド類の1種又は2種以上の混合物であることが好ましく、なかでもアセトフェノン類とアシルフォスフィンオキシド類との混合物であることが特に好適である。
【0140】
光重合開始剤(C)の使用量は、特に限定されるものではないが、活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは1〜5質量部の範囲である。この範囲の下限値は、活性エネルギー線硬化性向上の点で意義があり、上限値はコスト及び深部硬化性の点で意義がある。
【0141】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、必要に応じて各種添加剤、飽和樹脂等を配合してもよく、所望により溶剤で希釈しても良い。添加剤としては、例えば、増感剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、可塑剤、着色剤等が挙げられる。飽和樹脂としては、例えば、飽和アクリル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、飽和ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0142】
希釈に用いる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらは、粘度の調整、塗布性の調整等の目的に応じて適宜組み合わせて使用することができる。
【0143】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の不揮発分は特に限定されるものではない。例えば、好ましくは20〜100質量%であり、さらに好ましくは25〜70質量%である。これら範囲は、塗膜の平滑性及び乾燥時間の短縮化の点で意義がある。
【0144】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を被塗物表面へ塗布する方法は特に限定されるものではなく、例えば、ローラー塗装、ロールコーター塗装、スピンコーター塗装、カーテンロールコーター塗装、スリットコーター塗装、スプレー塗装、静電塗装、浸漬塗装、シルク印刷、スピン塗装等が挙げられる。
【0145】
被塗物としては、特に限定されるものではない。具体的には例えば、金属、セラミックス、ガラス、プラスチック、木材等が挙げられる。また、被塗物には、例えば、プライマー塗料、カチオン電着塗料、中塗り塗料、上塗り塗料等を塗装することにより、予めプライマー層、電着塗膜層、中塗り層、上塗り層等が形成されていてもよい。
【0146】
前記活性エネルギー線硬化性組成物から塗膜を形成する際、必要に応じて乾燥を行うことができる。乾燥は、添加している溶剤を除去できる条件であれば特に限定されるものではない。例えば、20〜100℃の乾燥温度において3〜20分間の乾燥時間で行うことができる。
【0147】
塗膜の膜厚は目的に応じて適宜設定される。例えば膜厚は1〜100μmが好ましく、1〜20μmがさらに好ましい。膜厚がこれら範囲の下限値以上の場合には、塗膜の平滑性及び外観に優れる。またこれら範囲の上限値以下の場合には塗膜の硬化性、耐割れ性に優れる。
【0148】
活性エネルギー線硬化性組成物を被塗物表面に塗布し、必要に応じて乾燥させた後に、活性エネルギー線照射を行い硬化塗膜を形成する。活性エネルギー線照射の照射源及び照射量は特に限定されるものではない。例えば活性エネルギー線の照射源としては、超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等が挙げられる。照射量は、例えば好ましくは5〜20,000J/m、さらに好ましくは100〜10,000J/mの範囲が挙げられる。
【0149】
活性エネルギー線照射は、大気雰囲気下で行なってもよく、また不活性ガス雰囲気下で行なっても良い。不活性ガスとしては、窒素、二酸化炭素等が挙げられる。不活性ガス雰囲気下での活性エネルギー線照射が、硬化性の点から好ましい。
【0150】
また、活性エネルギー線照射後、必要に応じて塗膜を加熱してもよい。加熱をすることによって、活性エネルギー線照射による塗膜の硬化により発生した塗膜の歪みを緩和することができる。さらにこの加熱によって塗膜の硬度、又は付着性の向上を行なうことができる場合がある。加熱は、通常、150〜250℃の雰囲気温度で1〜30分間の条件で行なうことができる。
【実施例】
【0151】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、「部」及び「%」は、別記しない限り「質量部」及び「質量%」を示す。なお、本実施例における構造解析及び測定は、本明細書に記載の前記分析装置に加え、以下の分析装置及び測定方法により行った。
【0152】
29Si−NMR、H−NMR分析)
装置:JEOL社製 FT−NMR EX−400
溶媒:CDCl
内部標準物質:テトラメチルシラン。
【0153】
(製造例1)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)179部、2−ヒドロキシエチルアクリレート87部、酢酸イソブチル205部及びp−メトキシフェノール 1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、5℃まで冷却し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン41部を1時間かけて滴下した。この際、フラスコ内の温度が20℃を超えないように制御した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル205部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(P1)の不揮発分60%溶液を得た。
【0154】
得られた生成物(P1)はNCO価=0mgNCO/g、アミン価=0mgKOH/gであった。また、生成物(P1)についてH−NMR分析を行った結果、生成物(P1)のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は4.0であった。また、生成物(P1)について29Si−NMR分析を行った結果、生成物(P1)中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。
【0155】
上記の結果から、生成物(P1)は、下記式(P−I)で表される化合物と下記式(P−II)で表される化合物との混合物であり、
【0156】
【化14】

【0157】
その比率は、前記式(P−I)で表される化合物/前記式(P−II)で表される化合物=60/40(モル比)であった。
【0158】
(製造例2)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコに製造例1で得られた生成物(P1)の不揮発分60%溶液207部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン75部及びテトラヒドロフラン700部を配合した後、フラスコを激しく攪拌しながら0℃まで冷却し、テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物 2部及び脱イオン水 20部を投入した。続いて、反応温度が10℃を超えないように制御しながら24時間反応させた後、減圧蒸留を行い、テトラヒドロフラン及び脱イオン水を除去した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル88部を配合して生成物(P2)の不揮発分50%溶液340部を得た。
【0159】
生成物(P2)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークのみが確認され、ヒドロキシシリル基の存在を示すT1構造及びT2構造は確認されなかった。
【0160】
上記の結果から、生成物(P2)は、シルセスキオキサン化合物と前記式(P−II)で表される化合物との混合物であり、その比率は、シルセスキオキサン化合物/前記式(P−II)で表される化合物=73/27(質量比)であった。そしてこのシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該有機基のうち、下記式(P−III)で表される有機基を20モル%、及び下記式(P−IV)で表される有機基を80モル%有するシルセスキオキサン化合物であった。
【0161】
【化15】

【0162】
(製造例3)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコに製造例1で得られた生成物(P1)の不揮発分60%溶液86部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン148部及びテトラヒドロフラン700部を配合した後、フラスコを激しく攪拌しながら0℃まで冷却し、テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物 2部及び脱イオン水 35部を投入した。続いて、反応温度が10℃を超えないように制御しながら24時間反応させた後、減圧蒸留を行い、テトラヒドロフラン及び脱イオン水を除去した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル121部を配合して生成物(P3)の不揮発分50%溶液310部を得た。
【0163】
生成物(P3)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークのみが確認され、ヒドロキシシリル基の存在を示すT1構造及びT2構造は確認されなかった。
【0164】
上記の結果から、生成物(P3)は、シルセスキオキサン化合物と前記式(P−II)で表される化合物との混合物であり、その比率は、シルセスキオキサン化合物/前記式(P−II)で表される化合物=88/12(質量比)であった。そしてこのシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該有機基のうち、前記式(P−III)で表される有機基を5モル%、及び前記式(P−IV)で表される有機基を95モル%有するシルセスキオキサン化合物であった。
【0165】
(製造例4)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコに製造例1で得られた生成物(P1)の不揮発分60%溶液272部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン37部及びテトラヒドロフラン700部を配合した後、フラスコを激しく攪拌しながら0℃まで冷却し、テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物 2部及び脱イオン水 20部を投入した。続いて、反応温度が10℃を超えないように制御しながら24時間反応させた後、減圧蒸留を行い、テトラヒドロフラン及び脱イオン水を除去した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル70部を配合して生成物(P4)の不揮発分50%溶液357部を得た。
【0166】
生成物(P4)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークのみが確認され、ヒドロキシシリル基の存在を示すT1構造及びT2構造は確認されなかった。
【0167】
上記の結果から、生成物(P4)は、シルセスキオキサン化合物と前記式(P−II)で表される化合物との混合物であり、その比率は、シルセスキオキサン化合物/前記式(P−II)で表される化合物=34/66(質量比)であった。そしてこのシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該有機基のうち、前記式(P−III)で表される有機基を40モル%、及び前記式(P−IV)で表される有機基を60モル%有するシルセスキオキサン化合物であった。
【0168】
(製造例5)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)179部、4−ヒドロキシブチルアクリレート108部、酢酸イソブチル205部及びp−メトキシフェノール 1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、5℃まで冷却し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン41部を1時間かけて滴下した。この際、フラスコ内の反応物の温度が20℃を超えないように制御した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル219部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(P5)の不揮発分60%溶液を得た。
【0169】
得られた生成物(P5)はNCO価=0mgNCO/g、アミン価=0mgKOH/gであった。また、生成物(P5)についてH−NMR分析を行った結果、生成物(P5)のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は4.0であった。また、生成物(P5)について29Si−NMR分析を行った結果、生成物(P5)中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。
【0170】
上記の結果から、生成物(P5)は、下記式(P−V)で表される化合物と下記式(P−VI)で表される化合物との混合物であり、
【0171】
【化16】

【0172】
その比率は、前記式(P−V)で表される化合物/前記式(P−VI)で表される化合物=60/40(モル比)であった。
【0173】
(製造例6)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコに製造例5で得られた生成物(P5)の不揮発分60%溶液213部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン72部及びテトラヒドロフラン700部を配合した後、フラスコを激しく攪拌しながら0℃まで冷却し、テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物 2部及び脱イオン水 20部を投入した。続いて、反応温度が10℃を超えないように制御しながら24時間反応させた後、減圧蒸留を行い、テトラヒドロフラン及び脱イオン水を除去した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル87部を配合して生成物(P6)の不揮発分50%溶液357部を得た。
【0174】
生成物(P6)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークのみが確認され、ヒドロキシシリル基の存在を示すT1構造及びT2構造は確認されなかった。
【0175】
上記の結果から、生成物(P6)は、シルセスキオキサン化合物と前記式(P−VI)で表される化合物との混合物であり、その比率は、シルセスキオキサン化合物/前記式(P−VI)で表される化合物=72/28(質量比)であった。そしてこのシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該有機基のうち、下記式(P−VII)で表される有機基を20モル%、及び下記式(P−VIII)で表される有機基を80モル%有するシルセスキオキサン化合物であった。
【0176】
【化17】

【0177】
(製造例7)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)179部、プラクセルFA−2D(商品名、ε−カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、ダイセル化学工業社製)258部、酢酸イソブチル319部及びp−メトキシフェノール 1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、5℃まで冷却し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン41部を1時間かけて滴下した。この際、フラスコ内の反応物の温度が20℃を超えないように制御した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル319部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(P7)の不揮発分60%溶液を得た。
【0178】
得られた生成物(P7)はNCO価=0mgNCO/g、アミン価=0mgKOH/gであった。また、生成物(P7)についてH−NMR分析を行った結果、生成物(P7)のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は4.0であった。また、生成物(P7)について29Si−NMR分析を行った結果、生成物(P7)中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。
【0179】
上記の結果から、生成物(P7)は、下記式(P−IX)で表される化合物と下記式(P−X)で表される化合物との混合物であり、
【0180】
【化18】

【0181】
その比率は、前記式(P−IX)で表される化合物/前記式(P−X)で表される化合物=60/40(モル比)であった。
【0182】
(製造例8)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコに製造例7で得られた生成物(P7)の不揮発分60%溶液240部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン56部及びテトラヒドロフラン700部を配合した後、フラスコを激しく攪拌しながら0℃まで冷却し、テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物 2部及び脱イオン水 20部を投入した。続いて、反応温度が10℃を超えないように制御しながら24時間反応させた後、減圧蒸留を行い、テトラヒドロフラン及び脱イオン水を除去した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル82部を配合して生成物(P8)の不揮発分50%溶液356部を得た。
【0183】
生成物(P8)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークのみが確認され、ヒドロキシシリル基の存在を示すT1構造及びT2構造は確認されなかった。
【0184】
上記の結果から、生成物(P8)は、シルセスキオキサン化合物と前記式(P−X)で表される化合物との混合物であり、その比率は、シルセスキオキサン化合物/前記式(P−X)で表される化合物=66/34(質量比)であった。そしてこのシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該有機基のうち、下記式(P−XI)で表される有機基を20モル%、及び下記式(P−XII)で表される有機基を80モル%有するシルセスキオキサン化合物であった。
【0185】
【化19】

【0186】
(製造例9)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにアロニックスM−313(東亜合成社製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート)179部、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン38部、酢酸イソブチル145部及びp−メトキシフェノール 1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、エチレングリコールモノブチルエーテル145部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(P9)の不揮発分60%溶液を得た。
【0187】
得られた生成物(P9)はNCO価=0mgNCO/gであった。また、生成物(P9)についてH−NMR分析を行った結果、生成物(P9)のSiに結合したメチレン基に対するアクリロイルオキシ基の炭素−炭素不飽和結合のモル比率は7.7であった。また、生成物(P9)について29Si−NMR分析を行った結果、生成物(P9)中のエトキシシリル基の加水分解は確認されなかった。
【0188】
上記の結果から、生成物(P9)は、下記式(P−XIII)で表される化合物と下記式(P−XIV)で表される化合物との混合物であり、
【0189】
【化20】

【0190】
その比率は、前記式(P−XIII)で表される化合物/前記式(P−XIV)で表される化合物=35/65(モル比)であった。
【0191】
(製造例10)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコに製造例9で得られた生成物(P9)の不揮発分60%溶液196部、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン82部及びテトラヒドロフラン700部を配合した後、フラスコを激しく攪拌しながら0℃まで冷却し、テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物 2部及び脱イオン水 20部を投入した。続いて、反応温度が10℃を超えないように制御しながら24時間反応させた後、減圧蒸留を行い、テトラヒドロフラン及び脱イオン水を除去した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル90部を配合して生成物(P10)の不揮発分50%溶液336部を得た。
【0192】
生成物(P10)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークのみが確認され、ヒドロキシシリル基の存在を示すT1構造及びT2構造は確認されなかった。
【0193】
上記の結果から、生成物(P10)は、シルセスキオキサン化合物と前記式(P−XIV)で表される化合物との混合物であり、その比率は、シルセスキオキサン化合物/前記式(P−XIV)で表される化合物=60/40(質量比)であった。そしてこのシルセスキオキサン化合物は、ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該有機基のうち、下記式(P−XV)で表される有機基を20モル%、及び下記式(P−XVI)で表される有機基を80モル%有するシルセスキオキサン化合物であった。
【0194】
【化21】

【0195】
(製造例11)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコに3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン200部及びテトラヒドロフラン700部を配合した後、フラスコを激しく攪拌しながら0℃まで冷却し、テトラブチルアンモニウムフルオリド3水和物 3部及び脱イオン水 40部を投入した。続いて、反応温度が10℃を超えないように制御しながら24時間反応させた後、減圧蒸留を行い、テトラヒドロフラン及び脱イオン水を除去した。続いて、エチレングリコールモノブチルエーテル144部を配合して生成物(P11)の不揮発分50%溶液289部を得た。
【0196】
生成物(P2)について29Si−NMR分析を行った結果、Siに結合した3つの酸素原子が全て他のSiと結合したT3構造に由来する−70ppm付近のピークのみが確認され、ヒドロキシシリル基の存在を示すT1構造及びT2構造は確認されなかった。
【0197】
上記の結果から、生成物(P11)はケイ素原子に直接に結合した有機基が下記式(P−XVII)で表されるシルセスキオキサン化合物であった。
【0198】
【化22】

【0199】
(製造例12)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)179部、2−ヒドロキシエチルアクリレート109部、酢酸イソブチル192部及びp−メトキシフェノール 1部を配合し、攪拌した。空気を吹き込みながら100℃まで昇温し、100℃で8時間反応させた。反応後、エチレングリコールモノブチルエーテル192部を配合して80℃まで昇温し、80℃で1時間攪拌した後、減圧蒸留にて酢酸イソブチルを除去し、生成物(P12)の不揮発分60%溶液を得た。
【0200】
得られた生成物(P12)はNCO価=0mgNCO/gであった。上記の結果から、生成物(P12)は、下記式(P−XVIII)で表される化合物であった。
【0201】
【化23】

【0202】
(製造例13)
還流冷却器、温度計、空気導入管及び攪拌機を備えた4つ口フラスコにデスモジュールXP2410(バイエルマテリアルサイエンス社製)50部、ジブチルスズジラウレート0.02部、及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.1部の混合物を仕込んだ。該混合物を攪拌しながら、80℃まで加熱した。続いて、混合物の温度が90℃を超えないようにしながら、2−ヒドロキシエチルアクリレート32.9部を2時間かけて滴下し、混合物を80℃で更に4時間撹拌し、1−メトキシ−2−プロパノール20.7部を加えて生成物(P13)の不揮発分80%溶液を得た。得られた生成物(P13)はNCO価=0mgNCO/gであった。
【0203】
(実施例1)
製造例2で得られた生成物(P2)の不揮発分50%溶液100部、EBECRYL1290(商品名、ダイセルサイテック製、6官能ウレタンアクリレート)50部、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(光重合開始剤)3.0部、及び2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(光重合開始剤)0.5部を配合し、酢酸エチルで不揮発分30%に希釈した後に攪拌し、活性エネルギー線硬化性組成物No.1を製造した。表1に活性エネルギー線硬化性組成物No.1中の不揮発分100質量部に対する(A)成分及び(B)成分の質量部を示した。なお、表1に記載の配合量は不揮発分の質量部を示す。
【0204】
次いでイソプロパノールにて脱脂したABS基板(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン3元共重合樹脂基板)上に、前記活性エネルギー線硬化性組成物をアプリケーターで乾燥膜厚が10μmとなる条件で塗装し、80℃で10分間乾燥して溶剤を除去した後、高圧水銀灯(80W/cm)で、紫外線(ピークトップ波長365nm)を窒素雰囲気下、照射量20,000J/mで照射して、硬化塗膜を形成し、試験板を得た。得られた試験板について、下記評価試験に供した。評価結果を表1に示す。
【0205】
(実施例2〜13、比較例1〜3)
実施例1において、各成分及び配合量を表1に記載した各成分及び配合量に代えた以外は、実施例1と同様にして実施例2〜13及び比較例1〜3の活性エネルギー線硬化性組成物No.2〜16を製造した。
【0206】
次いで、実施例1に記載の方法と同様の方法にて硬化塗膜を形成し、試験板を得た。得られた試験板について、下記評価試験に供した。評価結果を表1に示す。
【0207】
【表1】

【0208】
(注1)アロニックスM−315:東亞合成社製、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート。
(注2)比較例1〜3の「−]は、生成物P11と重合性不飽和化合物との相溶性が悪く、塗膜がかなり濁っており、評価ができなかったことを示す。
【0209】
<付着性>
被塗物に達するようにカッターで切り込み線を入れ、大きさ2mm×2mmのマス目を100個作り、その表面に粘着セロハンテープ(登録商標)を貼着し、20℃においてそれを急激に剥離した後のマス目の残存塗膜数を調べ、下記基準にて評価した。
◎:100個(ハガレなし)
○:90〜99個
△:89〜50個
×:49個以下。
【0210】
<耐擦傷性>
各塗膜に市販のスチールウール(#0000)をこすりつけ、塗膜を目視で観察し下記の基準に従って評価した。
○:傷、ワレ、剥がれがない、若しくは傷が僅かにあるが実用上問題が無い。
△:傷が認められる。
×:ワレ、剥がれ、著しい傷等が認められる。
【0211】
<耐候性>
得られた各試験板ついてサンシャインウェザーオメーターを用いて、1000時間試験を行った後に、塗膜を目視で観察し下記の基準に従って評価した。
○:異常無し、若しくはフクレ、変色、ツヤ変化、剥がれ等が僅かに認められるが実用上問題が無い。
△:フクレ、変色、ツヤ変化、剥がれ等が認められる。
×:フクレ、変色、ツヤ変化、剥がれ等が著しく認められる。
【0212】
<透明性>
被塗物をABS基板からガラス板に変えた以外は上記の試験板作製方法と同様にして試験板を作成した。作成した試験板の外観を目視で観察し、下記基準で評価した。
○:透明であり、良好。
△:わずかに濁りがある。
×:かなりに濁っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素原子に直接に結合した有機基を有し、該ケイ素原子に直接に結合した有機基のうち、一部又は全部が、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基であるシルセスキオキサン化合物(A)及び
(A)成分以外の重合性不飽和化合物(B)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と少なくとも1つのイソシアヌレート環構造との両者を有する有機基が、下記一般式(I)
【化1】

[式(I)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって2価の有機基を示す。Rは2価の有機基を示す。]で表される有機基である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記重合性不飽和化合物(B)が、下記一般式(II)及び/又は一般式(III)
【化2】

[式(II)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。mは同一又は異なって0〜5の整数を示す。式(III)中、Rは同一又は異なって水素原子又はメチル基を示す。Rは同一又は異なって炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示す。]で表される重合性不飽和化合物である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
さらに光重合開始剤(C)を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物を被塗物上に塗装して得られる塗装物品。

【公開番号】特開2011−144233(P2011−144233A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4633(P2010−4633)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】