説明

活性エネルギー線硬化性組成物及び積層体

【課題】 耐擦傷性、基材との密着性及び耐クラック性に優れたシリコン系の透明硬化被膜を短時間に形成できる活性エネルギー線硬化性組成物並びにこの活性エネルギー線硬化性組成物の硬化被膜が基材の表面に積層された積層体を提供する。
【解決手段】 特定のアルキルアルコキシシラン(a1)と特定のフェニルアルコキシシラン(a2)との加水分解・縮合物(A1)又は特定のアルキルアルコキシシラン(a1)の加水分解・縮合物(A2)と特定のフェニルアルコキシシラン(a2)と、(メタ)アクリレート系重合体(B)及び活性エネルギー線感応性酸発生剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物並びにその硬化被膜が基材の表面に積層された積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活性エネルギー線硬化性組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、透明ガラスの代替として、耐破砕性や軽量性に優れるアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の透明プラスチック材料が広く使用されるようになってきた。しかし、透明プラスチック材料はガラスに比較して表面硬度が低いので、表面に傷を受け易いという欠点を有している。
【0003】
この欠点を改良するために、プラスチック材料の表面にハードコートを施すことが広く行われている。例えば、特許文献1にはコロイド状シリカとアルコキシシラン縮合体とからなる組成物を用いてプラスチック表面に良好な耐擦傷性を発現するシリコン系の保護被膜を形成する方法が提案されている。しかしながら、この方法では保護被膜を形成する為に数十分から数時間の加熱時間が必要であるという生産性の欠点があった。
【0004】
この欠点を解決するために、活性エネルギー線の照射によりシリコン系の硬化性組成物を硬化させてシリコン系の保護被膜を短時間で形成させることが試みられている。例えば、特許文献2には、シロキサン骨格を有する直鎖型無機系オリゴマーとカチオン重合開始剤を必須成分とする組成物を活性エネルギー線照射により硬化させて無機系の保護被膜を形成する方法が提案されている。この方法により短時間に架橋構造が形成された保護被膜が得られるものの、縮合による収縮の為に応力が集中し易く、硬化条件によってはクラックが発生したり、基材への密着性が低下するといった問題があった。
【0005】
この問題に対して、シリコン系被膜に有機ポリマーを複合化することによる基材への密着性の向上と耐クラック性の向上が試みられている。シリコン系被膜に複合化可能な有機ポリマーとしては、一般的にポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールのような親水性ポリマーが知られているが、これらポリマーを複合化した被膜は耐水性に乏しい傾向があり、吸水や吸湿によりクラックや白化が発生し易く、その結果、耐候性の低いものとなる問題があった。
【0006】
一方、耐候性に優れるアクリル系ポリマーをシリコン系被膜と複合化することにより密着性及び耐クラック性に優れる被膜が期待できるが、一般的にアクリル系ポリマーはシリコン系被膜との相溶性が悪く、透明被膜が得られないという問題があった。特許文献2には、シロキサン系オリゴマーと1分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基含有物を含む組成物を硬化させることによりシロキサン系被膜とアクリル系ポリマーを複合化させることが示されているが、硬化条件によっては被膜中に(メタ)アクリロイル基含有物の未反応物が残存し、被膜物性を低下させる場合があった。
【0007】
また、特許文献3には、エポキシ基を含有するシランカップリング剤を共存させることによりアクリル系ポリマーを複合化したシリコン系被膜を形成できることが示されている。しかしながら、エポキシ基を含有するシランカップリング剤はエポキシ基が開環反応を起こして被膜の親水性が増すことが考えられ、シランカップリング剤の配合量によっては得られる被膜の耐水性が低下し、その結果、基材との密着性や耐クラック性が低下することが懸念される。
【特許文献1】特開昭55−94971号公報
【特許文献2】特開2001−348515号公報
【特許文献3】再表2005−85373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、耐擦傷性、基材との密着性及び耐クラック性に優れたシリコン系の透明硬化被膜を短時間に形成できる活性エネルギー線硬化性組成物並びにこの活性エネルギー線硬化性組成物の硬化被膜が基材の表面に積層された積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の要旨とするところは、下記式(1)で示されるアルキルアルコキシシラン(a1)と下記式(2)で示されるフェニルアルコキシシラン(a2)との加水分解・縮合物(A1)(以下、「縮合物(A1)」という)、(メタ)アクリレート系重合体(B)(以下、「重合体(B)」という)及び活性エネルギー線感応性酸発生剤(C)(以下、「酸発生剤(C)」という)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物(以下、「本発明の組成物(イ)」という)を第1の発明とする。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、下記式(3)で示されるアルキルアルコキシシラン(a1)の加水分解・縮合物(A2)(以下、「縮合物(A2)」という)、下記式(4)で示されるフェニルアルコキシシラン(a2)、重合体(B)及び酸発生剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物(以下、「本発明の組成物(ロ)」という)を第2の発明とする。
【0011】
更に、本発明の要旨とするところは、本発明の組成物(イ)の硬化被膜が基材の表面に積層された積層体を第3の発明とする。
【0012】
また、本発明の要旨とするところは、本発明の組成物(ロ)の硬化被膜が基材の表面に積層された積層体を第4の発明とする。
【化1】

【0013】
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有するアルキル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表し、aは0〜3の整数を表す。)
【化2】

【0014】
(式中、Rはフェニル基又は置換基を有するフェニル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表し、bは1〜3の整数、cは0〜2の整数を表し、b+cは3以下である。)
【化3】

【0015】
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有するアルキル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表し、aは0〜3の整数を表す。)
【化4】

【0016】
(式中、Rはフェニル基又は置換基を有するフェニル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表し、bは1〜3の整数、cは0〜2の整数を表し、b+cは3以下である。)
【発明の効果】
【0017】
本発明の組成物(イ)又は(ロ)(以下、「本発明の組成物」という)は耐擦傷性、基材との密着性及び耐クラック性に優れたシリコン系の透明な硬化被膜を短時間に形成できることから、その硬化被膜が積層された積層体は、フラットパネルディスプレイ用フィルム、前面板、高速道路等の透明遮音板、ヘッドランプレンズ等の自動車部品、車両用プラスチック窓材等の各種用途に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<縮合物(A1)>
縮合物(A1)は式(1)で示されるアルキルアルコキシシラン(a1)と式(2)で示されるフェニルアルコキシシラン(a2)とを加水分解・縮合したものである。縮合物(A1)は本発明の組成物(イ)に成膜性を付与し、得られる硬化被膜に耐擦傷性を付与するための成分である。
【0019】
<アルキルアルコキシシラン(a1)>
アルキルアルコキシシラン(a1)は式(1)で表される化合物である。
【0020】
アルキルアルコキシシラン(a1)の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシシラン、エチルトリプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン及び3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0021】
アルキルアルコキシシラン(a1)としては、硬化被膜に良好な耐擦傷性を付与できる点で、式(1)中のRはメチル基及びエチル基が好ましい。
【0022】
また式(1)中のRは、縮合物(A1)を得る際の加水分解・縮合が容易である点で、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0023】
更に、式(1)中のaは、得られる硬化被膜の耐擦傷性と耐クラック性をバランスよく発現させる点で、1が好ましい。また、アルキルアルコキシシラン(a1)は、硬化被膜の耐擦傷性を更に良好とするために、式(1)中のaが0の化合物を併用することができる。その場合、aが0の化合物をaが1の化合物に対してモル比として50%以下とすることが好ましい。また、硬化被膜の耐クラック性を更に良好とするために、式(1)中のaが2又は3の化合物を少量併用することができる。その場合、aが2又は3の化合物をaが1の化合物に対してモル比として20%以下とすることが好ましい。
【0024】
アルキルアルコキシシラン(a1)は単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0025】
<フェニルアルコキシシラン(a2)>
フェニルアルコキシシラン(a2)は式(2)で表される化合物である。
【0026】
フェニルアルコキシシラン(a2)は、得られる硬化被膜中にフェニル基を導入し、後述する重合体(B)との相溶性を高めるためのものである。
【0027】
フェニルアルコキシシラン(a2)の具体例としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルエチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン及びフェニルエチルジエトキシシランが挙げられる。
【0028】
フェニルアルコキシシラン(a2)としては、得られる硬化被膜に良好な耐擦傷性を付与できる点で、フェニルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランが好ましい。
【0029】
本発明においては、フェニルアルコキシシラン(a2)を使用して硬化被膜中にフェニル基を導入する方法として、予めアルキルアルコキシシラン(a1)と加水分解・縮合して得られる縮合物(A1)を使用して本発明の組成物(イ)として導入する方法、及び、後述するアルキルアルコキシシラン(a1)を加水分解・縮合して得た縮合物(A2)とフェニルアルコキシシラン(a2)を配合して本発明の組成物(ロ)として導入する方法が挙げられる。
【0030】
<縮合物(A1)の製造方法>
縮合物(A1)はアルキルアルコキシシラン(a1)とフェニルアルコキシシラン(a2)との公知の加水分解・縮合方法により得られる。
【0031】
アルキルアルコキシシラン(a1)とフェニルアルコキシシラン(a2)の加水分解の方法としては、例えば、アルキルアルコキシシラン(a1)及びフェニルアルコキシシラン(a2)をアルコール類中に混合し、更に、アルキルアルコキシシラン(a1)とフェニルアルコキシシラン(a2)の合計1モルに対して1〜100モル程度の水を加えて攪拌する方法が挙げられる。その際、塩酸や酢酸等の酸を加えて溶液のpHを2〜5となるように調整することができる。また、溶液の温度を0〜100℃に制御することができる。更に、加水分解に際して発生するアルコールは反応系外に留去することができる。
【0032】
上記加水分解に続くアルキルアルコキシシラン(a1)とフェニルアルコキシシラン(a2)の縮合の方法としては、加水分解されたアルキルアルコキシシラン(a1)とフェニルアルコキシシラン(a2)を常温又は加温状態で放置又は攪拌する方法が挙げられる。その際、例えば、系のpHを6〜7に制御することにより、縮合の進行を速めることもできる。縮合に際して発生する水は反応系外に留去することができる。
【0033】
アルキルアルコキシシラン(a1)とフェニルアルコキシシラン(a2)の加水分解・縮合に使用する溶媒としては、水と任意に混合可能な溶媒、例えば、アルコール類が好ましい。
【0034】
縮合物(A1)を製造する際のアルキルアルコキシシラン(a1)に対するフェニルアルコキシシラン(a2)の含有比としては、アルキルアルコキシシラン(a1)1モルに対してフェニルアルコキシシラン(a2)0.01〜0.2モルが好ましい。フェニルアルコキシシラン(a2)の含有モル比が0.01以上で縮合物(A1)と重合体(B)の相溶性が良好となり、得られる硬化被膜の透明性が良好となる傾向にある。また、フェニルアルコキシシラン(a2)の含有モル比が0.2以下で得られる硬化被膜の硬度と耐擦傷性が良好となる傾向にある。
【0035】
<縮合物(A2)>
縮合物(A2)は式(3)で示されるアルキルアルコキシシラン(a1)を加水分解・縮合したものである。縮合物(A2)は本発明の組成物(ロ)に成膜性を付与し、得られる硬化被膜に耐擦傷性を付与するための成分である。
【0036】
式(3)で示されるアルキルアルコキシシラン(a1)の具体例としては、前述の式(1)で示されるアルキルアルコキシシラン(a1)と同様のものが挙げられる。
【0037】
アルキルアルコキシシラン(a1)としては、硬化被膜に良好な耐擦傷性を付与できる点で、式(3)中のRはメチル基及びエチル基が好ましい。
【0038】
また式(3)中のRは、縮合物(A2)を得る際の加水分解・縮合が容易である点で、メチル基及びエチル基が好ましい。
【0039】
更に、式(3)中のaは、得られる硬化被膜の耐擦傷性と耐クラック性をバランスよく発現させる点で1が好ましい。また、硬化被膜の耐擦傷性を更に良好とするために、式(3)中のaが0の化合物を併用することができる。その場合、aが0の化合物をaが1の化合物に対してモル比として50%以下とすることが好ましい。また、硬化被膜の耐クラック性を更に良好とするために、式(3)中のaが2又は3の化合物を少量併用することができる。その場合、aが2又は3の化合物をaが1の化合物に対してモル比として20%以下とすることが好ましい。
【0040】
アルキルアルコキシシラン(a1)は単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0041】
<縮合物(A2)の製造方法>
縮合物(A2)はアルキルアルコキシシラン(a1)を公知の方法で加水分解、縮合することにより得られる。
【0042】
アルキルアルコキシシラン(a1)の加水分解の方法としては、例えば、アルキルアルコキシシラン(a1)をアルコール類に混合し、更に、アルキルアルコキシシラン(a1)1モルに対して1〜100モル程度の水を加えて攪拌する方法が挙げられる。その際、塩酸や酢酸等の酸を加えて溶液のpHを2〜5となるように調整することができる。また、溶液の温度を0〜100℃に制御することができる。更に、加水分解に際して発生するアルコールは反応系外に留去することができる。
【0043】
上記加水分解に続くアルキルアルコキシシラン(a1)の縮合の方法としては、加水分解されたアルキルアルコキシシラン(a1)を常温又は加温状態で放置又は攪拌する方法が挙げられる。その際、例えば、系のpHを6〜7に制御することにより、縮合の進行を速めることもできる。縮合に際して発生する水は反応系外に留去することができる。
【0044】
アルキルアルコキシシラン(a1)の加水分解・縮合に使用する溶媒としては、水と任意に混合可能な溶媒、例えばアルコール類が好ましい。
【0045】
本発明の組成物(ロ)においては加水分解・縮合物(A2)と式(4)で示されるフェニルアルコキシシラン(a2)とを併用する。
【0046】
フェニルアルコキシシラン(a2)としては前記の式(2)で示されるフェニルアルコキシシラン(a2)と同様のものが挙げられる。
【0047】
本発明の組成物(ロ)中のフェニルアルコキシシラン(a2)の配合比率としては、縮合物(A2)を得るのに要したアルキルアルコキシシラン(a1)1モルに対してフェニルアルコキシシラン(a2)0.01〜0.2モルが好ましい。
【0048】
<重合体(B)>
重合体(B)は(メタ)アクリレート単位を必須成分とする重合体である。重合体(B)中の(メタ)アクリレート単位の含有量としては80質量%以上が好ましい。
【0049】
重合体(B)の分子量としては質量平均分子量0.5万〜100万が好ましい。また、重合体(B)の質量平均分子量は硬化被膜に耐クラック性を付与する点で1万以上がより好ましい。また、重合体(B)の質量平均分子量は、縮合物(A1)又は縮合物(A2)とフェニルアルコキシシラン(a2)の混合物との相溶性及び硬化被膜の透明性が良好となる点で、50万以下がより好ましい。
【0050】
重合体(B)中の(メタ)アクリレート単位を構成するための原料である(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;及びエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0051】
上記の多官能(メタ)アクリレートを使用する場合は、本発明の組成物中での重合体(B)の相溶性の点で、前記の単官能(メタ)アクリレート1モルに対して多官能(メタ)アクリレート0.1モル以下が好ましい。
【0052】
(メタ)アクリレート化合物は単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0053】
重合体(B)中には(メタ)アクリレート単位以外に他の単量体単位を含有することができる。
【0054】
重合体(B)中の他の単量体単位を構成するための原料としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル、ブタジエン、アクリロニトリル及びアクリルアミドが挙げられる。
【0055】
重合体(B)を得るための重合方法としては、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合等の公知の重合方法が挙げられる。
【0056】
本発明の組成物中の重合体(B)の配合量は、縮合物(A1)又は縮合物(A2)とフェニルアルコキシシラン(a2)の混合物の固形分の合計100質量部に対して0.5〜50質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。重合体(B)が0.5質量部以上で、得られる硬化被膜の耐クラック性が良好となる傾向にある。また、重合体(B)が50質量部以下で、硬化被膜の耐擦傷性が良好となる傾向にある。
【0057】
<酸発生剤(C)>
酸発生剤(C)は可視光線、紫外線、熱線、電子線等の活性エネルギー線の照射により酸を発生し、縮合物(A1)又は縮合物(A2)とフェニルアルコキシシラン(a2)の混合物を重縮合反応させて硬化被膜を形成させるための化合物である。
【0058】
酸発生剤(C)としては、可視光線、紫外線照射により酸を発生する光感応性酸発生剤及び熱線により酸を発生する熱感応性酸発生剤が好ましい。また、酸発生剤(C)としては、活性が高い点とプラスチック基材に熱劣化を与えにくい点で、光感応性酸発生剤がより好ましい。
【0059】
光感応性酸発生剤としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩、オキソニウム塩、アンモニウム塩等の塩化合物が挙げられる。
【0060】
光感応性酸発生剤の具体例としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア250、旭電化工業(株)製のアデカオプトマーSP−150及びSP−170(いずれも商品名)、ダウケミカル社製のサイラキュアUVI−6970、サイラキュアUVI−6974、サイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6992及びサイラキュアUVI−6950(いずれも商品名)、ダイセル・サイテック(株)製のUvacure1590(商品名)並びに日本曹達(株)製のCI−2734、CI−2855、CI−2823及びCI−2758(いずれも商品名)、三新化学工業(株)製のサンエイドSI−60L、80L、100L(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0061】
本発明の組成物中の酸発生剤(C)の配合量は、縮合物(A1)又は縮合物(A2)とフェニルアルコキシシラン(a2)の混合物の固形分の合計100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.05〜5質量部がより好ましい。酸発生剤(C)の配合量が0.01質量部以上で、活性エネルギー線の照射により良好な硬化性が得られる傾向にある。また、酸発生剤(C)の配合量が10質量部以下で、低着色で被膜物性の低下の少ない硬化被膜が得られる傾向にある。
【0062】
<本発明の組成物>
本発明の組成物は、縮合物(A1)、重合体(B)及び酸発生剤(C)を含有する本発明の組成物(イ)又は縮合物(A2)、フェニルアルコキシシラン(a2)、重合体(B)及び酸発生剤(C)を含有する本発明の組成物(ロ)である。
【0063】
本発明においては、本発明の組成物の固形分濃度調整、安定性向上及び塗付性向上、基材への硬化被膜の密着性向上等を目的として、本発明の組成物中に有機溶媒を含有することができる。
【0064】
有機溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、セロソルブ類及び芳香族化合物類が挙げられる。
【0065】
有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール、2−メトキシエチルアルコール、2−エトキシエチルアルコール、2−(メトキシメトキシ)エチルアルコール、2−ブトキシエチルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロピルアルコール、1−エトキシ−2−プロピルアルコール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アニソール、フェネトール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、グリセリンエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、γ−ブチロラクトン、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ベンゼン、トルエン及びキシレンが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で、又は2種以上を併用して使用できる。
【0066】
有機溶剤の含有量としては、縮合物(A1)、又は縮合物(A2)とフェニルアルコキシシラン(a2)との混合物、(B)及び(C)成分の固形分の合計100質量部に対して50〜2,000質量部が好ましい。
【0067】
本発明においては、本発明の組成物には、有機溶剤以外に、必要に応じて無機微粒子、染料、顔料、顔料分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0068】
<硬化被膜>
本発明の組成物は活性エネルギー線の照射により硬化して硬化被膜が得られる。
【0069】
硬化被膜は、本発明の組成物を基材の表面に塗付し、次いで活性エネルギー線の照射により本発明の組成物を硬化させることにより、基材の表面に積層することができる。
【0070】
基材の表面に形成される硬化被膜の膜厚としては0.1〜50μm程度が一般的であり、1〜10μmが好ましい。硬化被膜の膜厚が1μm以上で、基材表面の耐擦傷性を良好とすることができる傾向にある。また、硬化被膜の膜厚が10μm以下で、得られる積層体の透明性が良好で、クラックの少ない硬化被膜を得ることができる傾向にある。
【0071】
<基材>
本発明に使用される基材としては、例えば、プラスチック、金属、紙、木質材、無機質材、及びこれらの基材にプライマー層を形成したものが挙げられる。これらの中で、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、メタクリル酸メチルとスチレンとの共重合、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック基材が好適である。
【0072】
本発明の組成物を基材の表面に塗付する方法としては、例えば、ディップ法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、スピンコート法、フローコート法及び静電塗装法が挙げられる。
【0073】
基材の表面に塗付された本発明の組成物を硬化するために使用される活性エネルギー線としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ及びエキシマーレーザーを光源とする光線や、電子線、β線及びγ線が挙げられる。活性エネルギー線は単独で、又は2種以上を併用して使用できる。複数種の活性エネルギー線を使用する場合は、同時照射又は順次照射のいずれの方法を採用してもよい。
【0074】
また、本発明においては、活性エネルギー線の照射だけでなく、必要に応じて、加熱炉等を用いた加熱処理を併用することができる。加熱処理は活性エネルギー線照射と同時又は活性エネルギー線照射の前後に実施できる。
【0075】
<積層体>
本発明の積層体は本発明の組成物を硬化して得られる硬化被膜が基材の表面に積層されたものであることから、本発明の積層体は透明性及び耐擦傷性に優れ、硬化被膜が基材との密着性に優れている。従って、本発明の積層体はフラットパネルディスプレイ用フィルム、前面板、高速道路等の透明遮音板、ヘッドランプレンズ等の自動車部品、車両用プラスチック窓材等の各種用途の材料や部品として使用することができる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により説明する。また、以下において、「%」は「質量%」を意味する。尚、実施例中の縮合物(A1)又は縮合物(A2)の固形分は、アルキルアルコキシシラン(a1)とフェニルアルコキシシラン(a2)との加水分解・縮合反応、又はアルキルアルコキシシラン(a1)の加水分解・縮合反応が完結した場合の理論値に基づくものである。
【0077】
[合成例1] 縮合物(A1−1)の合成
撹拌子及びコンデンサーを備えた500mlナス型フラスコに、アルキルアルコキシシラン(a1)としてメチルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−13)35.4g(0.26モル)、フェニルアルコキシシラン(a2)としてフェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−103)3.97g(0.02モル)、純水30.2g(1.68モル)及びイソプロピルアルコール10.9gを仕込み、ウォーターバスを用いてフラスコ内温90℃で6時間、攪拌しながら加水分解・縮合を行った。この後、フラスコにプロピレングリコールモノエチルエーテル10.0g及びγ−ブチロラクトン10.0gを加え、混合して、縮合物(A1−1)の20%溶液を得た。
【0078】
[合成例2〜4] 縮合物(A1−2)、(A1−3)及び(A2−1)の合成
アルキルアルコキシシラン(a1)、フェニルアルコキシシラン(a2)、純水、アルコール類及び有機溶媒として表1に示す化合物の種類及び量を使用する以外は合成例1と同様にして縮合物(A1−2)、縮合物(A1−3)及び縮合物(A2−1)の各20%溶液を得た。
【表1】

【0079】
KBM−13:信越化学工業(株)製メチルトリメトキシシラン
KBM−04:信越化学工業(株)テトラメトキシシシラン
KBM−103:信越化学工業(株)製フェニルトリメトキシシラン
KBE−103:信越化学工業(株)製フェニルトリエトキシシラン
【0080】
[合成例5] 重合体(B−1)の合成
攪拌機、コンデンサーを備えた1Lフラスコに、純水190gとメチルメタクリレート100g(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)を入れ、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製)0.2g、分散助剤として硫酸ナトリウム0.5g及び連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン1.0gを加えて十分に撹拌して溶解させた。その後、一度撹拌を止め、分散剤としてポリビニルアルコール(ケン化度80%、重合度1,700)0.3gを10gの純水に溶解させた分散剤溶液を添加し、撹拌を再開させ、昇温した。75〜85℃の反応温度を保持して2時間反応させ、重合発熱の最大値を確認した後、95℃に昇温して1時間保持して反応を終了させた。
【0081】
得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布により濾過し、純水で十分洗浄した後に脱水機にて脱水し、更に、40℃で16時間乾燥してメチルメタクリレートの微粒状重合体である重合体(B−1)を得た。GPC測定にて分子量を測定したとところ、質量平均分子量はポリスチレン換算で約40,000であった。更に、重合体(B−1)をメチルエチルケトンに溶解し、重合体(B−1)の10%溶液を得た。
【0082】
なお、GPC測定は、カラムとして東ソー株式会社製TSKgelG1000HXL、TSKgelGMXL2本を直列として用い、溶離液としてTHFを用いた。流速は1.0mL/分、カラム温度は40℃とした。
【0083】
[合成例6] 重合体(B−2)の合成
重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.2g及び連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.2gを使用する以外は合成例5と同様の方法により、メチルメタクリレートの微粒状重合体である重合体(B−2)を得た。GPC測定にて分子量を測定したとところ、質量平均分子量はポリスチレン換算で約95,000であった。更に、重合体(B−2)をメチルエチルケトンに溶解し、重合体(B−2)の5.0%溶液を得た。
【0084】
[合成例7] 重合体(B−3)の合成
連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.1gを使用する以外は合成例5と同様の方法により、メチルメタクリレートの微粒状重合体である重合体(B−3)を得た。GPC測定にて分子量を測定したとところ、質量平均分子量はポリスチレン換算で約250,000であった。更に、重合体(B−3)をメチルエチルケトンに溶解し、重合体(B−3)の5.0%溶液を得た。
【0085】
[実施例1]
<活性エネルギー線硬化性組成物の調製>
縮合物(A1)として合成例1で得られた縮合物(A1−1)の20%溶液25.0g(固形分換算で5.0g)、重合体(B)として合成例5で得た質量平均分子量が約40,000の重合体(B−1)のメチルエチルケトンの10%溶液0.5g、酸発生剤(C)として芳香族スルホニウム塩型酸発生剤(C−1)(三新化学工業(株)、商品名:サンエイドSI−100L、固形分50質量%)0.20g、及びレベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)0.01gを配合した後、均一混合して本発明の組成物(イ−1)を得た。
【0086】
<硬化被膜の形成>
上記で得られた組成物を、基材である長さ15cm、幅10cm及び厚み3mmのアクリル樹脂板(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリライトEX)上に適量を滴下し、バーコート法にて3〜4μm厚の硬化被膜が得られるように塗付し、乾燥機にて90℃で10分間乾燥した。更に、コンベアを備えた120W/cmの高圧水銀ランプ((株)オーク製作所製紫外線照射装置、商品名:ハンディーUV−1200、QRU-2161型)を用いて、積算光量1,000mJ/cmの紫外線を照射し、アクリル板上に硬化被膜が積層された積層体を得た。
【0087】
尚、紫外線照射量は紫外線光量計((株)オーク製作所製、商品名:UV−351型、ピーク感度波長360nm)で測定した。
【0088】
得られた積層体の上の硬化被膜について、以下の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0089】
<硬化被膜の評価>
(1)膜厚
硬化被膜が積層された積層体の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、硬化被膜の膜厚を測定した。
【0090】
(2)外観
硬化被膜の透明性並びにクラック及び白化の有無を目視にて観察し、以下の基準で外観を評価した。
「○」:透明で、クラック及び白化の欠陥の無いもの。
「×」:不透明な部分があるもの又はクラック若しくは白化の欠陥があるもの。
【0091】
(3)耐擦傷性
積層体の硬化被膜の面を、#0000スチールウールで9.8×10Paの圧力を加えて10往復擦り、幅1cm×長さ3cmの範囲の中に発生した傷の程度を観察し、以下の基準で耐擦傷性を評価した。
「A」:ほとんど傷が付かない。
「B」:1〜9本のキズが付く。光沢面あり。
「C」:10〜99本のキズが付く。光沢面あり。
「D」:100本以上のキズが付く。光沢面あり。
「E」:光沢面なし。
【0092】
(4)耐熱水性(耐クラック性)
得られた積層体を沸騰水中で2時間保管し、目視にて硬化被膜のクラック及び白化の有無を観察し、以下の基準で外観を評価した。
「○」:クラックの発生及び白化の欠陥の無いもの。
「×」:不透明な部分があるもの又はクラック若しくは白化の欠陥があるもの。
【0093】
(5)密着性
積層体の硬化被膜の面に、カミソリの刃で1mm間隔に縦横6本ずつの切れ目を入れて計25個のマス目を作った。次いで、25個のマス目の上にセロハンテープを良く密着させた後、45度手前方向に急激に剥がし、硬化被膜が剥離せずに積層体の上に残存したマス目数を計測して、以下の基準で硬化被膜と基材との密着性を評価した。
「○」:剥離したマス目がない。(密着性良好)
「△」:剥離したマス目が1〜5個あり。(密着性中程度)
「×」:剥離したマス目が6個以上あり。(密着性不良)
【0094】
[実施例2〜7]
活性エネルギー線硬化性組成物の組成を表2に記載のものを使用した。それ以外は実施例1と同様にして硬化被膜の評価を実施した。結果を表2に示す。
【表2】

【0095】
KBM−103:信越化学工業(株)製フェニルトリメトキシシラン
(C−1):芳香族スルホニウム塩型酸発生剤(三新化学工業(株)、商品名:サンエイドSI−100L、固形分50%)
L−7001:東レ・ダウコーニング(株)製レベリング剤
【0096】
[実施例8]
縮合物(A2)として合成例4で得られた縮合物(A2−1)の20%溶液25.0g(固形分換算で5.0g)、フェニルアルコキシシラン(a2)としてフェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名:KBM−103)1.5g、重合体(B)として合成例5で得られた質量平均分子量約40,000の重合体(B−1)のメチルエチルケトンの10%溶液2.5g、酸発生剤(C)として芳香族スルホニウム塩型酸発生剤(三新化学工業(株)、サンエイドSI−100L、固形分50質量%)0.20g及びレベリング剤(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名:L−7001)0.01gを配合した後、均一混合して本発明の組成物(ロー1)を得た。
【0097】
本発明の組成物(ロー1)を使用する以外は実施例1と同様にして硬化被膜の評価を実施した。結果を表2に示す。
【0098】
[比較例1〜3]
活性エネルギー線硬化性組成物の組成を表3に記載のものを使用した。それ以外は実施例1と同様にして硬化被膜の評価を実施した。結果を表3に示す。
【表3】

【0099】
(C−1):芳香族スルホニウム塩型酸発生剤(三新化学工業(株)、商品名:サンエイドSI−100L、固形分50%)
L−7001:東レ・ダウコーニング(株)製レベリング剤
【0100】
[比較例4]
活性エネルギー線硬化性組成物の組成を表3に記載のものを使用した。それ以外は実施例8と同様にして硬化被膜の評価を実施した。結果を表3に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるアルキルアルコキシシラン(a1)と下記式(2)で示されるフェニルアルコキシシラン(a2)との加水分解・縮合物(A1)、(メタ)アクリレート系重合体(B)及び活性エネルギー線感応性酸発生剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有するアルキル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表し、aは0〜3の整数を表す。)
【化2】

(式中、Rはフェニル基又は置換基を有するフェニル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表し、bは1〜3の整数、cは0〜2の整数を表し、b+cは3以下である。)
【請求項2】
下記式(3)で示されるアルキルアルコキシシラン(a1)の加水分解・縮合物(A2)、下記式(4)で示されるフェニルアルコキシシラン(a2)、(メタ)アクリレート系重合体(B)及び活性エネルギー線感応性酸発生剤(C)を含有する活性エネルギー線硬化性組成物。
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は置換基を有するアルキル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表し、aは0〜3の整数を表す。)
【化4】

(式中、Rはフェニル基又は置換基を有するフェニル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜4のアシル基を表し、bは1〜3の整数、cは0〜2の整数を表し、b+cは3以下である。)
【請求項3】
請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化被膜が基材の表面に積層された積層体。
【請求項4】
請求項2に記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化被膜が基材の表面に積層された積層体。

【公開番号】特開2009−275129(P2009−275129A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128258(P2008−128258)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】