説明

活性化された酸化ジルコニウム触媒支持体

高い破砕強度、表面積、及び細孔容積を有するポリ酸活性ジルコニア触媒又触媒支持体が記載されている。ポリ酸活性ジルコニア触媒又触媒支持体は、ジルコニウム化合物を、グループ6金属(例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W))を含むポリ酸−プロモータ材料を結合させることで、製造することができる。ジルコニル−プロモータ前駆体は、いかなるバインダー又は押出補助剤も存在させないで押し出すことができる。ポリ酸活性ジルコニア触媒又触媒支持体は、水相水素化又は水素化分解反応において熱水的に安定である。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2009年3月2日に出願された米国仮出願第61/156,859号の利益を請求し、その内容は参照によりここに取り込まれる。この出願は、2010年3月2日に出願された国際特許出願PCT/US2010/XXXXXに関連している。
【技術分野】
【0002】
本出願は、触媒及び/又は触媒支持体/担体に関する実施形態及び特許請求の範囲を含む。本発明の一実施形態は、酸化ジルコニウムがポリ酸又は他のプロモータ材料を用いて活性化された酸化ジルコニウム触媒又は触媒支持体/担体に関する。他の実施形態は、触媒又は触媒支持体を製造する方法、及び糖、糖アルコール、又はグリセロールを商業的に価値のある化学物質及び中間体に変換する触媒の使用を対象としている。
【背景技術】
【0003】
ジルコニアとも呼ばれる酸化ジルコニウムは、広範囲な工業用途を有する周知の高温耐熱性材料である。それはまた、その高い物理的及び化学的安定性、並びに適度な酸性表面特性から、周知の触媒支持体材料でもある。それにもかかわらず、不均一触媒の支持体材料としてのジルコニアの使用では、その比較的高いコスト及びこの材料から特定の形状を形成することの難しさのため、用途が制限されてしまっている。さらにまた、ジルコニアでは、しばしば表面積及び細孔容積の低下を引き起こす相変化が起きる。これは、ジルコニアの強度及び耐久性を低下させる。相変化効果を弱めるために、安定剤を用いて、好ましい正方相からより望ましくない単斜相への相変化を抑制する。
【0004】
ジルコニア触媒支持体を製造することを目的とする技術の1つの限定的な具体例が、国際公開第2007/092367号(Saint−Gobainにより出願された)に記載されている。そこには、主要相として正方相ジルコニアを含み、75m/gを超える表面積と、0.30mL/gを超える細孔容積を有するセラミック成形体が開示されている。この発明の一実施態様において、ジルコニア担体を製造する方法が記載されており、さらにそれは無機又は有機のバインダー及び/又は安定剤の使用によることが明示されている。安定剤は、酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化タングステン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化セリウムの中から選択することができる。
【0005】
他の限定的な具体例は、米国特許第5,391,362号(Reinaldaらに発行され、Shell Oil Companyに譲渡されている)に記載されている。そこには、高い表面積のジルコニアを製造する方法について記載され、特許請求されている。その開示によれば、125m/g、150m/g、及び200m/gを上回る表面積の選択がそれぞれ明示されており、特に200m/gを上回る表面積を有しているジルコニアを得る方法が特許請求されている。特許請求されているように、その方法では、ジルコニウム化合物の溶液から、その溶液とアルカリ化合物(例えば、アンモニア、尿素、ヘキサメチレンテトラミン、エタノールアミン、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウム)との混合により、水中で水酸化ジルコニウムを沈殿させる。その後、水酸化ジルコニウム沈殿物を水で洗浄してアルカリ化合物を除去し、次いで、種々な形態のリン酸の存在下で熟成し、250℃〜550℃の温度で焼成する。Reinaldaは、グループ5又は6の原子の酸素酸の存在下で水酸化ジルコニウム沈殿物を熟成することを教示しているが、十分に記載されているのはリン酸の使用のみである。さらに、Reinaldaは、水酸化ジルコニウムをグループ5又は6の酸素酸と共沈殿させることを教示してしない。
【0006】
さらに別の限定的な具体例は、米国特許出願第2007/0036710(Fenouilら及びShell Oil Companyの利益になるように出願された)に記載されている。そこには、焼成されたジルコニア押出品を調製する方法が開示されている。この出願では、特に、水素と一酸化炭素とを、触媒活性金属としてコバルトを含むジルコニア押出品の存在下、フィッシャー・トロプシュ反応条件で接触させる高級オレフィンの製造方法について記載されている。ジルコニア押出品は、約15重量%超えない、単斜相ジルコニア以外のジルコニアを有する粒子状のジルコニアを混合することで調製される。言い換えると、Fenouilは、実質的に単斜相からなる(約85wt%に相当する)ジルコニアが、正方相ジルコニア、又は単斜相及び正方相ジルコニアの混合(単斜相でない相が15wt%を超えて含まれる)の混合よりも好ましいことを教示している。Fenouilでは、コバルト触媒は、ジルコニア押出品への含浸により沈殿させることができ、又は粒子状のジルコニアと溶媒を共に挽いて、その後に押し出すことができる。ジルコニア押出品は特定の測定可能な特性を発現し、約0.3mL/g以上の細孔容積、約100N/cm(〜2.5lb/mm)の破砕強度、及び50m/g以上の表面積をそれぞれ有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
物理的及び化学的安定性は、水相反応への不均一触媒の適用において、主要な関心事である。従来のSiO又はAlをベースとする触媒支持体は、水溶液中で用いられるとき崩壊又は腐食の傾向があり、結果として、通常、長期にわたる工業用途を目標とする触媒体の機械的強度の低下を引き起こす。実験室及び工業用途では、不均一触媒の機械的強度は、一般的に破砕強度により評価され、破砕強度値の増加は、一般的に支持体又は担体の機械的強度が改良されたことを表す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ポリ酸又は同様の機能を有するプロモータ材料により活性化されたジルコニアが、押出のための改良された物理的特性を有するジルコニアベースの支持体又は触媒を与え、及び/又は水系環境で行われる工業用途の触媒へ担体又は支持体として使用されることを、ここで見出した。ポリ酸活性ジルコニア支持体又は触媒の使用が、金属の水溶液への浸出を阻害し、支持体/担体又は触媒の機械的強度及び安定性が改善されることを、ここで見出した。
【0009】
本発明の特定の実施形態は、触媒において利用される支持体又は担体の改良、及び/又は触媒の改良を表す。本発明の特定の別の実施形態は、改良された支持体/担体及び/又は触媒が利用される触媒反応の改良を表す。
【0010】
ジルコニウム化合物とポリ酸/プロモータ材料とを含む熱水安定な押出触媒又は触媒支持体であって、ジルコニウム化合物とポリ酸/プロモータ材料は結合して、2:1〜20:1のモル比を有するジルコニル−プロモータ前駆体を形成している押出触媒又は触媒支持体が記載されている。ポリ酸/プロモータ材料は、リン酸、硫酸、又はポリ有機酸などのポリ酸でもよい。あるいは、ポリ酸/プロモータ材料は、クロム、モリブデン、又はタングステンを含むグループ6(グループVIA)金属の酸化物又は酸の形態でもよい。ジルコニウムプロモータ前駆体は、いかなるバインダー、押出補助剤、又は安定剤も存在させないで押し出されたものでもよい。
【0011】
他の実施形態において、熱水安定な押出触媒又は触媒支持体は、実質的に、ジルコニウム化合物とポリ酸/プロモータ材料とからなる。ポリ酸/プロモータ材料は、クロムの酸化物又は酸の形態を含んでもよく、ポリ酸/プロモータ材料に対するジルコニウム化合物は、4:1〜16:1のモル比でもよい。同様に、ジルコニウムプロモータ前駆体は、いかなるバインダー、押出補助剤、又は安定剤も存在させないで押し出されたものでもよい。
【0012】
さらなる実施形態において、実質的に、酸化ジルコニウムとポリ酸/プロモータ材料とからなる触媒又は触媒支持体を調製する方法が記載されている。この方法は、ポリ酸、クロム、モリブデン又はタングステンの酸化物又は酸の形態を含むポリ酸、リン酸、硫酸、酢酸、クエン酸、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリ酸/プロモータ材料を準備する工程を有する。ジルコニウム化合物をポリ酸/プロモータ材料と混合することで、ポリ酸/プロモータ材料に対するジルコニウムのモル比が2:1〜20:1となる溶液を得ることができる。塩基性水溶液をジルコニウム−プロモータ溶液と混合してジルコニウム−プロモータ前駆体を沈殿させることができる。あるいは、ジルコニウム化合物を沈殿させ、洗浄し、ポリ酸/プロモータ材料と混合して、ジルコニウム−プロモータ前駆体を形成することができる。ジルコニウム−プロモータ前駆体は、乾燥して、触媒又は触媒支持体として適切な形状に成形することができる。好ましくは、触媒又は触媒支持体は、いかなるバインダー、押出補助剤、又は安定剤も存在させないで押し出すことで形成する。最後に、押し出されたジルコニウム−プロモータ前駆体を焼成して、水相水素化又は水素化分解反応など様々な工業プロセスに利用可能な完成した触媒又は触媒担体を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の特定の実施形態としては、ポリ酸又は機能的に同等のプロモータ材料(一般的に「ポリ酸/プロモータ材料」と呼ばれる。)により活性化された酸化ジルコニウム(ZrO)を含む触媒又は触媒の支持体/担体を製造する製品及び方法が挙げられる。ポリ酸/プロモータ材料は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、及びタングステン(W)、さらにはリンを含む酸、硫酸、酢酸、クエン酸、及び他のポリ有機酸を含むグループ6(グループVIA)金属からの材料を含むことができる。本明細書で使用しているように、特段の条件がない限り、ポリ酸の用語は、酸の形態で1を超えるマルチドナープロトンを有する化合物又は組成物を指す。完成した触媒又は触媒支持体/担体は、プロモータに対するジルコニウムのモル比(Zr:プロモータ)が2:1〜20:1とすることができる。
【0014】
別の実施形態では、ジルコニウム化合物とプロモータとを含む、あるいは実質的にジルコニウム化合物とプロモータとからなる触媒又は触媒支持体を調製する方法は、ポリ酸、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、又はタングステン(W)の酸化物又は酸の形態を含むポリ酸、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリ酸/プロモータ材料を、ジルコニウム化合物と混合する工程を有する。ジルコニウム化合物及びポリ酸/プロモータ材料は、塩基性水溶液と混合して共沈殿させることで、ジルコニウム−プロモータ前駆体を形成することができる。あるいは、ジルコニウム化合物を最初に沈殿させ、その後、沈殿したジルコニウム化合物とジルコニウム−プロモータ材料を混合して、ジルコニウム−プロモータ前駆体を形成することもできる。次いで、周知の方法に従って、ジルコニウム−プロモータ前駆体を乾燥し、成形し、焼成することで、完成した触媒又は触媒支持体を形成することができる。完成した触媒又は触媒支持体は、2:1〜20:1のZr:プロモータのモル比を有することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態は、糖、糖アルコール、又はグリセロールから商業的に価値のある化学物質及び中間体(例えば、限定されないが、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、エチレングリコール(1,2−エタンジオール)、グリセリン、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタンジオールのようなポリオール又はより短い炭素鎖主鎖を有するアルコール)を形成するための、触媒支持体と少なくとも1つの触媒活性金属の使用を対象とする。本明細書で使用しているように、特段の条件がない限り、ポリオールの用語は、1を超えるヒドロキシル基を有する多価アルコールを指す。広義には、ポリオールは、上記の反応物及び/又は製品の両方を包含することができる。
【0016】
ジルコニウムは、ジルコニウム、又はハロゲン化ジルコニル、硝酸ジルコニウム若しくはジルコニル、又は有機酸ジルコニル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択することができる。ジルコニウム化合物としては、ジルコニウム及びジルコニル塩(例えばZrCl、ZrOClのようなハロゲン化物;Zr(NO・5HO、ZrO(NOのような硝酸塩、及びZrO(CHCOO)のような有機酸)など、種々の材料が挙げられる。他のジルコニウム化合物も想定され、本明細書に特別に示されたものに限られない。溶液において、ジルコニウムは、ジルコニル(ZrO2+)又はジルコニウムイオン(Zr4+又はZr2+)の状態で存在することができ、それらは対応する塩を水に溶かすことによって得られる。
【0017】
ポリ酸/プロモータ材料は、クロム(Cr)、タングステン(W)、及びモリブデン(Mo)を含むグループ6金属の酸化物又は酸の形態とすることができ、それらは水溶液に溶解させた後にポリ酸を形成する。一実施形態では、ポリ酸は、CrO、Cr、及びこれらの組み合わせからなる群より選択することができる。別の好ましい実施形態では、ポリ酸/プロモータ材料は、CrO中で見られるCr6+又はCr(VI)である。さらに別の実施形態では、ポリ酸/プロモータ材料は、リン酸、硫酸、酢酸、クエン酸、及びこれら組み合わせからなる群より選択することができる。
【0018】
酸化ジルコニウム(ZrO)ベースを有する触媒又は触媒支持体/担体を調製する一実施形態では、ジルコニウム化合物とポリ酸/プロモータ材料を準備し、次いで、これらの化合物を約0.01〜約4のpHとなる酸性条件下で混合する。所望の沈殿物を得る沈殿を促進するため、塩基性溶液を投入することができる。塩基性溶液としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、又はジルコニウム塩沈殿物が得られるようにpH条件を調製するための他の塩基性水溶液が挙げられる。別の実施形態では、まずアンモニア水酸化物のような塩基性溶液にポリ酸/プロモータ材料を溶解させ、次いでジルコニウム化合物と混合する。
【0019】
様々な実施形態では、ポリ酸/プロモータ材料に対するジルコニウムの当初モル比(Zr:Promoter)は、2:1〜20:1の範囲に収めることができ、その代わりに4:1〜16:1又は8:1〜16:1の範囲に収めることもでき、あるいは約12:1又は約8:1とすることもできる。ジルコニウムとプロモータの最終的なモル比は、2:1〜20:1の範囲に収めることができ、その代わりに4:1〜16:1、又は8:1〜16:1、又は約10:1〜14:1の範囲に収めることもでき、あるいは約13:1、又は約12:1、又は約8:1とすることもできる。一実施形態では、クロムに対するジルコニウムのモル比(Zr:Cr)は、4:1〜16:1の範囲に収めることができ、その代わりに8:1〜16:1又は10:1〜14:1の範囲に収めることができ、あるいは、約13:1、又は約12:1、又は約8:1とすることもできる。
【0020】
様々な実施形態では、硝酸ジルコニル(ZrO(NO)と酸化クロム(CrO(Cr VI)又はCr(Cr III))(ポリ酸/プロモータ材料)が、触媒又は触媒支持体/担体の準備のための各出発材料としての役目を果たす。ジルコニウム卑金属とポリ酸/プロモータ材料のクロムとの当初モル比(Zr:Cr)は、2:1〜20:1の範囲とすることができ、その代わりに4:1〜12:1、又は8:1〜12:1、又は6:1〜10:1の範囲とすることができる。出発材料は、触媒の加水分解を抑制するために酸性の条件下(例えば、pH値が約0.01〜1)で混合し、次いで、容器又は反応器にポンプ注入して、アンモニア水(15%NH)と混合して撹拌することができる。アンモニア水は、約12.5のpH値を有している。Zr/Cr溶液をアンモニア水と混合した後は、pH値は7.5〜9.5の範囲にある。pH値が7.5〜9.5の範囲外である場合、任意的に、適切な酸性又は塩基性の物質又は溶液を添加して、pH値が範囲内になるように調整を行うことができる。
【0021】
出発物質を混合した後、ジルコニウム−プロモータ沈殿物は、濾過して液体から分離することで、濾過ケーキを得ることができる。濾過する際には様々な方法及び/又は装置を利用することができ、例えば、濾紙及び真空ポンプを利用することができ、遠心分離を利用することもでき、他の真空装置機構及び/又は正圧装置を利用することもできる。一実施形態では、周囲条件で空気乾燥するのを容易にするため、濾過ケーキを小さく分割(例えば破壊)することで、濾過ケーキの乾燥を行うことができる。濾過ケーキの分割(例えば破壊)は、手動又は自動で行うことができる。この方法で使用する原材料のいずれかが、望ましくない原子又は化合物(例えば、塩化物又はナトリウム)を含む場合、任意的に濾過ケーキを洗浄することができる。望ましくない原子又は他の汚染物質が原材料中に存在する場合、典型的には、1〜10回の、又はさらに多くの洗浄が必要とされる。
【0022】
沈殿したジルコニウム−プロモータ前駆体(濾過ケーキの形)は、周囲条件(例えば、室温及び周囲圧力)又は約120℃までの適度な温度で乾燥することができる。一実施形態では、ジルコニウム−プロモータ前駆体は、使用する乾燥装置に応じて、40℃〜90℃の温度範囲で約20分〜20時間乾燥する。別の実施形態では、加熱ミキサーを用いて、ジルコニウム沈殿物をジルコニウム−プロモータ前駆体と混合することができ、このとき乾燥時間を1時間未満に短くすることができる。一実施形態では、ジルコニウム−プロモータ前駆体又は単なる沈殿したジルコニウムを、加熱減量(「LOI」)が約60wt%〜約70wt%の範囲に達するまで、乾燥することができる。本明細書で使用しているように、LOIは、約480℃で約2時間の燃焼による材料の重量減少パーセントとして理解することができる。別の実施形態では、ジルコニウム−プロモータ前駆体又は沈殿したジルコニウムは、約64wt%〜68wt%、より好ましくは約65wt%〜68wt%のLOIが達成されるまで、乾燥する。
【0023】
様々な実施形態では、ジルコニウム−プロモータ前駆体は、いかなるバインダー、押出補助剤、又は安定剤も用いない押出に適している混合物を実現するように、乾燥する。換言すれば、ジルコニウム−プロモータ前駆体は、いかなる安定剤、バインダー、又は押出補助剤も存在しない、完成した触媒又は触媒支持体/担体を適した形状に成形することができるように、乾燥する。次の化合物は、安定剤、バインダー、又は押出補助剤として先行技術に記載されており、この出願に記載された1以上の実施形態では、これらの全てが存在しない:酸化ケイ素、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化タングステン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化セリウム、他のケイ素化合物、シリカ−アルミナ複合物、黒鉛、鉱油、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸塩、澱粉、又は他の周知の安定剤、バインダー若しくは押出補助剤。
【0024】
乾燥されたジルコニウム−プロモータ前駆体の完成した触媒又は触媒支持体/担体を適した形状への成形は、よく知られた技術である形成工程のいずれかで行うことができる。好ましい実施形態では、乾燥されたジルコニウム−プロモータ前駆体は押し出される。スクリュー押出装置、プレス押出装置、又は他の押出装置及び/又は方法を用いることができる。あるいは、乾燥されたジルコニウム−プロモータ前駆体は、錠剤化、ペレット化、粒状化どのためにプレスすることもでき、さらには噴霧乾燥することもでき、この場合、よく知られているように、乾燥されたジルコニウム−プロモータ前駆体の湿り度は、噴霧乾燥している材料に応じて調整される。押し出されたジルコニウム−プロモータ前駆体は、成形した後、任意的に、適度な温度(例えば約120℃まで)で適度な時間(例えば典型的には約1〜5時間)乾燥することができる。
【0025】
押し出された、又は他の成形された触媒又は触媒支持体/担体は、約300℃〜1000℃の範囲の温度で約2〜12時間、好ましくは約400℃〜700℃で約3〜5時間焼成することができる。一実施形態では、押し出されたクロム活性酸化ジルコニウム前駆体は、約600℃で約3時間焼成される。あるいは、押し出されたクロム活性酸化ジルコニウム前駆体は、1分あたり1度(「deg/m」又は「℃/m」又は「°/min」と略される。)の速度で600℃まで昇温し、約3時間滞留させることで焼成する。別の実施形態では、押し出されたポリ酸活性ジルコニウム前駆体は、約300℃〜1000℃で、又は約400℃〜700℃で、又は約500℃〜600℃で約2〜12時間焼成する。
【0026】
上記の様々な方法の実施形態を用いることで、完成した製品は、ポリ酸活性酸化ジルコニウム触媒又は触媒支持体/担体であり、それは、よく知られた粉末X線回折(XRD)技術及び装置により決定される、1以上の単斜相、正方相、立方相、及び/又は非晶相の結晶構造を有する。例えば、”粉末X線回折の導入(Introduction to X−ray Powder Diffraction)”R.Jenkins and R.L Snyder,Chemical Analysis,Vol.138,John Wiley & Sons,New York,1996を参照。典型的には、酸化ジルコニウム正方相は、d間隔が2.97オングストローム(Å)でサンプルの強度を測定することで決定することができ、一方単斜相は、d間隔が3.13オングストローム(Å)での測定である。別の実施形態では、完成した触媒又は触媒支持体/担体は、さらに、その結晶構造として約50wt%〜100wt%の酸化ジルコニウム正方相を含むものであると特徴づけることができる。別の実施形態では、完成した触媒又は触媒支持体/担体は、さらに、0wt%〜50wt%の酸化ジルコニウム単斜相を含むものであると特徴づけることができる。あるいは、結晶構造は、80wt%を超える酸化ジルコニウム正方相、又は約85wt%の酸化ジルコニウム正方相を含むことができる。
【0027】
Zr/Cr複合物を含む触媒又は触媒支持体/担体において、製造過程でより多くのクロムを用いることで、製品としてはより多くの正方相結晶構造が達成される。例えば、4:1のモル比により、ほぼ100%の酸化ジルコニウム正方相が得られる。8:1のモル比により、ほぼ100%の酸化ジルコニウム正方相が得られる。12:1のモル比により、結晶構造は、約85wt%〜90wt%の酸化ジルコニウム正方相及び約15wt%〜10wt%の酸化ジルコニウム単斜相となる。
【0028】
上記のようなポリ酸活性酸化ジルコニウム触媒又は触媒支持体/担体は、67N/cm(1.5lb/mm)〜178N/cm(4.0lb/mm)の範囲の破砕強度を有することができる。あるいは、触媒又は触媒支持体は、その使用に応じて、少なくとも45N/cm(1lb/mm)又は少なくとも90N/cm(2lb/mm)の最小破砕強度を有する。触媒又は触媒支持体/担体の破砕強度は、ASTM D6175−03(2008) 押し出された触媒及び触媒担体粒子の放射方向破砕強度の標準試験方法(Standard Test Method for Radial Crush Strength of Extruded Catalyst and Catalyst Carrier Particles)を用いて測定することができる。
【0029】
別の実施形態では、完成したポリ酸活性酸化ジルコニウム触媒又は触媒支持体/担体は、20m/g〜150m/gの範囲の、BET法で測定される表面積を有することができる。あるいは、完成した酸化ジルコニウム触媒又は触媒支持体/担体は、80m/g〜150m/g、好ましくは約120m/g及び150m/gの範囲の表面積を有することができる。
【0030】
ポリ酸活性酸化ジルコニウム触媒又は触媒支持体/担体は、0.10cc/g〜0.40cc/gの範囲の細孔容積を有することもできる。通常、4:1〜16:1の当初モル比であれば、細孔容積は常に0.15cc/g〜0.35cc/gの範囲の値となる。約8:1の当初モル比であれば、細孔容積は常に0.18cc/g〜0.35cc/gの範囲の値となる。
【0031】
ポリ酸活性酸化ジルコニウム触媒支持体/担体は、1以上の触媒活性金属と結合して、高い温度及び圧力条件下での水相反応などの多くの工業処理用の触媒を形成する。一実施形態では、押し出されたクロム活性酸化ジルコニウム支持体は、高い熱水安定性を呈し、グリセロール又はソルビトールの変換のような水相水素化又は水素化分解反応に用いる耐久性のある支持体/担体を提供する。他の実施形態では、ポリ酸活性ジルコニア支持体は、水相、炭化水素相、及び混合相などの他の工業処理において触媒又は触媒支持体/担体として用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下の実施例は、本発明の複数の実施形態を例示する目的で開示しているものであり、本明細書に示される実施形態及び/又は特許請求の範囲を限定するものではない。特に別段の指定がなければ、パーセントで指定された化合物又は材料は、その化合物又は材料の重量パーセント(wt%)を指す。本明細書では、「選択性」又は「モル選択性」は、供給口で消費された全炭素に対する特定の製品における炭素のパーセントと定義する。
【0033】
実施例1(クロム(VI)プロモータ)
10mLの脱イオン水(以下「DI−HO」と称する。)に溶解した10gのCrOを用いて、第1の溶液(溶液1)を調製した。次いで、溶液1を500gの硝酸ジルコニウム溶液(20%ZrO)と混合した。400mLのDI−HOと250mLのアンモニア水酸化物溶液(30%)を用いて、第2の溶液(溶液2)を調製した。溶液2に溶液1を撹拌しつつ滴下することで移した。混合溶液(溶液1及び溶液2)のpHは、約12から約8.5に低下した。
【0034】
pH値が低下した結果、沈殿が生じた。沈殿物は母液に放置して、約1時間熟成した。後述する実施例2及び3と同様に、沈殿物は、比較的同じ方法で処理される。生成した沈殿物は、洗浄せずに濾過した。濾過ケーキは手で小さく分割し、約4日間周囲温度で乾燥するために放置することで、LOIが約65wt%〜68wt%の範囲に達した。次いで、乾燥された濾過ケーキを挽いて1/8”ダイを用いて押し出して、1/8”押出品材料を得た。押出品を約120℃で約3時間追加乾燥した。その後、押出品を1deg/mで600℃まで昇温して約3時間焼成した。
【0035】
得られた押出品は、約63m/gの表面積、約0.22cc/gの細孔容積、及び約134N/cm(3.02lb/mm)の破砕強度を有していた。焼成された押出品材料は、XRDデータにより解釈され示されるように、通常、ZrOの正方相と単斜相の混合物を含んでいた。
【0036】
実施例2(クロム(VI)プロモータ−NHOH(塩基性水溶液))
300mLの濃NHOH(28〜30%)を、500mLのDI−HOで希釈して、2000mLのタンク反応器に投入した。次いで、反応器を35℃まで予熱した。500gの硝酸ジルコニウム溶液(20wt%ZrO)の溶液を35℃に予熱して、勢いよく撹拌しながら、1時間かけて反応器タンクにポンプ注入した。溶液のpHは、約12.5から約8.5まで値が減少した。ゆっくり撹拌しながら1時間熟成した後、沈殿物を濾過した。次いで、得られた濾過ケーキを10gのCrOと、約1時間の機械的撹拌により混合した。得られた混合物は、LOIが約65wt%〜70wt%の範囲に達するまで、真空下35℃〜40℃で乾燥した。次いで、乾燥粉を押し出し、5℃/minで110℃まで昇温、12時間保持(滞留)、5℃/minで600℃まで昇温、6時間保持の温度プログラム下で焼成した。得られた押出品の典型的な特性は、137N/cm(3.08lb/mm)の破砕強度、0.21cc/gの細孔容積、及び46m/gの表面積であった。XRD分析では、ZrOの正方相(d=2.97Å)及び単斜相(d=3.13Å)の混合物であることが示された。
【0037】
実施例3(クロム(VI)プロモータ−NaOH(塩基性水溶液))
この調製には、NHOHの代わりにNaOHを用いた。500mLの25wt%のNaOH溶液の全量を35℃まで予熱した。200mLのNaOH溶液と1200mLのDI−HOを、2000mLのタンク反応器に投入した。500gの硝酸ジルコニル溶液(20wt%ZrO)の溶液を35℃まで予熱して、勢いよく撹拌しながら、1時間かけてタンク反応器にポンプ注入した。pHが8.5を下回るまで低下したとき、25%NaOH溶液を必要に応じて加えた。ゆっくり撹拌しながら1時間熟成した後、沈殿物を濾過した。濾過ケーキはDI−HOと1:1の容量比で再スラリー化し、濾過前に15分間撹拌した。濾過水の導電率が200μSを下回るまで、同様の手順が繰り返した。それには、通常約4〜8回の濾過ケーキの洗浄が必要であった。次いで、洗浄された濾過ケーキを10gのCrOと混合し、64wt%〜70wt%のLOIが達成されるまで70℃で乾燥した。実施例2にて説明したのと同様の手順で、濾過ケーキの押出及び焼成を行った。得られた押出品の典型的な特性は、94N/cm(2.12lb/mm)の破砕強度、0.23cc/gの細孔容積、及び94m/gの表面積であった。XRD分析では、ZrOの正方相(d=2.97Å)及び単斜相(d=3.13Å)の混合物であることが示された。
【0038】
実施例4(硝酸クロム(III)プロモータ)
55gの硝酸クロム(III)溶液(9.6wt%のCr)を、500gの硝酸ジルコニル溶液(20wt%のZrO)と混合した。実施例2と同様の沈殿及び洗浄手順を適用した。洗浄後、実施例3にて説明したのと同様の、乾燥、押出、及び焼成手順を適用した。得られた押出品の典型的な特性は、111N/cm(2.49lb/mm)の破砕強度、0.33cc/gの細孔容積、及び136m/gの表面積であった。XRD分析では、ZrOの正方相(d=2.97Å)及び単斜相(d=3.13Å)の混合物であることが示された。
【0039】
実施例5(リンプロモータ)
125gの硝酸ジルコニル溶液(ZrOとして約20%のZrを有する)にDI−HOを追加して、総質量が400gになるまで希釈した。その後、希釈された硝酸ジルコニル溶液を撹拌しながら12gの85%HPOを滴下して加え、Zr/Pの初期モル比を2:1に等しくした。ゲルの生成が観察された。混合溶液は、周囲温度でさらに30分間連続的に撹拌した。その後、6.5〜7.5の範囲の値となるpHで全てのゲルが生成するまで、NHOを滴下して加えた。
【0040】
さらなる量(約100mL)のDI−HOを、周囲温度で約12時間かけて連続的に撹拌しながら加え、ゲルの生成を分散させた。生成された沈殿物は、洗浄せずに濾過した。濾過ケーキは手で小さく分割し、約4日間周囲温度で空気中にて乾燥するために放置した。次いで、乾燥された濾過ケーキを挽いて押出した。押出品を約120℃で約3時間追加乾燥した。その後、押出品を1deg/mで600℃まで昇温して約3時間焼成した。
【0041】
得られた押出品は、約19m/gの表面積、約0.19cc/gの細孔容積、及び約85N/cm(1.9lb/mm)の破砕強度を有していた。焼成された押出品材料は、XRDデータにより解釈され示されるように、通常、ZrOの非晶相を含んでいた。
【0042】
実施例6(リンプロモータ)
250gの硝酸ジルコニル溶液を用いて、約4:1のZr/Pの初期モル比を得たことを除いて、上記の実施例5において提供されている手順を活用した。得られた押出品は、約20.9m/gの表面積、約0.19cc/gの細孔容積、及び約76N/cm(1.7lb/mm)の破砕強度を有していた。焼成された押出品材料は、XRDデータにより示されるように、通常、ZrOの非晶相を含んでいた。
【0043】
実施例7(タングステンプロモータ)
25gのHWO(タングステン酸)を、200mLの30%アンモニア水酸化物と200mLのDI−HOの混合溶液に溶解させることで、第1の溶液(溶液1)を調製した。250gの硝酸ジルコニル溶液(20%ZrO)を調製した(溶液2)。溶液1と溶液2の両方とも約30℃に予熱した。そして、溶液2を溶液1に滴下して加え、ジルコニル塩の沈殿を促進させた。沈殿物は、約30℃で約1時間、母液中で熟成させた。その後、上記の実施例5において述べられた処理手順と同じ方法で、沈殿物を処理した。
【0044】
得られた押出品は、約40.6m/gの表面積、約0.168cc/gの細孔容積、及び約125N/cm(2.81lb/mm)の破砕強度を有していた。焼成された押出品材料は、XRDデータにより示されるように、通常、ZrOの非晶相を含んでいた。
【0045】
実施例8(モリブデンプロモータ)
実施例4において提供されている調製及び手順と実質的に同じ方法で、ジルコニウム/モリブデン(Zr/Mo)の押出材料を調製することができる。Mo源を与える出発材料は、(NHMoOxHOとすることができる。
【0046】
実施例9(ポリ酸/プロモータ材料選択の効果)
上述した実施例に加えて、上で提供されている実施例と同じように更なる実験を行った。そこでは、ポリ酸/プロモータ材料に対するジルコニウム塩基の当初モル比(目標)が約4:1である1以上の支持体を調製した。表1は、このような実験及び実施例からのデータを提供している。調製された押出品は、それぞれ、ジルコニウム/リン支持体、ジルコニウム/タングステン支持体、及びジルコニウム/クロム支持体を含む。ジルコニウム/クロム支持体及びジルコニウム/タングステン支持体のデータは、比較的高い破砕強度と表面積値により有用な支持体が得られていることを示している。
【0047】
【表1】

【0048】
実施例10(クロム(VI)プロモータ−8:1初期モル比)
以下の調製及び手順は、Zr/Cr押出品材料の代表的かつ限定的な1つのモデルとして提供される。ここでは、最初のモル比は約8:1である。6.4LのDI−HOと4Lの水酸化アンモニウム(28〜30%NH)を、加熱ジャケット及び連続混合器を備えた20Lの沈殿タンク中で混合した。結果として生じる溶液を35℃まで加熱した。160gの酸化クロム(VI)(CrO)を80mLのDI−HOに溶解させた。次いで、クロム溶液を8000gの硝酸ジルコニル溶液(20%ZrO)と混合した。次いで、クロム/ジルコニル溶液を35℃まで加熱して、毎分50mL〜60mLの速度でタンクにポンプ注入した。ジルコニル塩が沈殿する間、水酸化アンモニウムを加えることでpHの最小値を8.5に制御した。ポンプ注入が終了した後、沈殿物を約1時間母液中で熟成させた。
【0049】
その後沈殿物を濾過し、次いで小さく分割して、周囲温度で乾燥するために放置した。材料は、LOIが60%〜68%の範囲になるまで乾燥しておいた。その後、沈殿物を混合し、実験用スクリュー押出機を用いて、(1/8”押出品が得られる1/8”ダイを通して)押し出した。その後、押出品は、110℃で終夜(12時間)乾燥し、次いで、周囲温度から1分あたり5℃で110℃まで昇温、2時間滞留、1分あたり5℃で600℃まで昇温、3時間滞留の温度プログラム下で焼成した。
【0050】
実施例11(モル比の変更)
上記実施例8において提供されている調製及び手順と同じ方法で、当初モル比(目標)の変更を実現することができる。表2は、実施例9で得られたデータとともに、当初モル比がそれぞれ4:1、12:1、及び16:1と異なる他の実施例もデータを示している。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例12(比較例−ポリ酸/プロモータ材料なし)
硝酸ジルコニル(20%ZrO)の溶液100gを調製し、希NHO(15%)溶液200mLに滴下して加えた。これらの溶液を混合することで、pHが約12の値から約10に変化した。このpH値の変化によりジルコニウムの沈殿が促進された。沈殿物は、周囲温度で約12時間、母液中で熟成した。最終的なpH値は、約8.4であった。上記の実施例5において述べられた処理手順と同じ方法で、沈殿物を処理した。得られた押出品は、約22N/cm(0.5lb/mm)の破砕強度を有していた。
【0053】
上記で提供された実施例に基づいて、このような支持体/担体は、グリセロール又は糖アルコールをポリオール又はより少ない炭素若しくは酸素原子を持つアルコール(限定されないが、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、エチレングリコール(1,2−エタンジオール)、グリセリン、トリメチレングリコール(1,3−プロパンジオール)、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタンジオール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。)へ変換するために、1以上の触媒活性金属とともに用いることができることを想定する。グリセロール又は糖アルコールの変換に用いる典型的な触媒活性原子としては、限定されないが、グループ4(グループIVA)、グループ10(グループVIII)、及びグループ11(グループIB)の金属(例えば、銅、ニッケル、スズ、ルテニウム、レニウム、白金、パラジウム、コバルト、鉄、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0054】
実施例13(グリセリンをプロピレングリコールへ−Cr活性支持体/Cu触媒)
上記の方法と同一の方法で調製されたZr/Cr支持体又は担体は、特に、グリセリンのプロピレングリコールへの選択的な変換に有用であることを見出した。一実施形態では、Zr/Crの支持体/担体を浸漬又は含浸して、約5%〜30%の範囲の銅(Cu)の導入を実現する。Cu−Zr/Cr触媒は、グリセリンの炭素−酸素結合を開裂させて、グリセリンのプロピレングリコールへの変換を可能にする。下記の表3にまとめられているように、1つのサンプルでは、約15%の銅を導入することで、72%の変換率及び85モル%のプロピレングリコール(PG)選択性を達成する。もう1つのサンプルでは、約10%の銅を導入することで、約42%のグリセリンの変換率及び約82モル%のプロピレングリコール選択性を示す。
【0055】
【表3】

【0056】
実施例14(ソルビトールをプロレングリコールへ−Cr活性支持体/Ni−Sn触媒)
上記の方法と同一の方法で調製されたZr/Cr支持体又は担体は、特に、ソルビトールの、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びグリセリンへの選択的な変換に有用であることを見出した。一実施形態では、Zr/Cr支持体又は担体を共浸漬又は共含浸して、10%〜30%の範囲のニッケル(Ni)と、100万分の300〜5000部(ppm)の範囲のスズ(Sn)プロモータの導入を実現する。Zr/Cr支持体上のニッケル触媒/スズプロモータは、ソルビトールの炭素−炭素及び炭素−酸素結合の両方を開裂させて、ソルビトールの、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びグリセリン、さらにはメタノール、エタノール、プロパノール、及びブタンジオールのような他の微量化合物への変換を可能にする。下記の表4にまとめられているように、1つのサンプルでは、10%のニッケル及び300ppmのスズを目標導入値としている。試験は、固定床反応器にて実施した。導入後は、触媒を、GSHV1000/hr、100%H、500℃、及び周囲圧力の条件下で8時間還元した。還元後、ソルビトール/NaOHのモル比10:1からなる25wt%のソルビトール供給物を、120bar、210℃、LSHV=1/hr、及びH/ソルビトールモル比が10:1の条件下、反応器を通してポンプ注入した。この導入の組合せにより、プロピレングリコール36.6モル%、エチレングリコール14.7モル%、及びグリセリン20.9モル%の選択性を有する70.6%の変換率を実現する。もう1つのサンプルでは、10%のニッケル及び700ppmのスズを目標導入値により、75.8%の変換率、並びにプロピレングリコール27.5モル%、エチレングリコール12.4モル%、及びグリセリン20.7モル%の選択性を実現する。
【0057】
【表4】

【0058】
実施例15(ソルビトールをプロレングリコールへ−Cr活性支持体/Ni−Cu触媒)
Zr及びCr(VI)(上記の実施例10を参照)の共沈殿により調製された押出品を、含浸法によって10%のNi及び1%のCuに導入した。焼成後、触媒を管状反応器に投入して、ガス空間速度(Gaseous Space Hourly Velocity)(GSHV)1000/hr、100%H、180℃、及び周囲圧力の条件下で15時間還元した。還元後、ソルビトール/NaOHのモル比10:1からなる25wt%のソルビトール供給物を、120bar、210℃、液空間速度(Liquid Space Hourly Velocity)(LSHV)=2/hrの条件下、反応器を通してポンプ注入した。試験は、これらの条件の下、350時間実施した。平均71%のソルビトール変換率が達成された。3つの主要な製品(エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン)の選択性は、それぞれ、13モル%、27.8モル%、及び37.8モル%であった。
【0059】
実施形態及び特許請求の範囲は、ここで説明された構成要素の構造及び変形の詳細への適用において制限するものではないことを理解すべきである。それどころか、ここでの説明は、想定される実施形態の実施例を提供しているものの、特許請求の範囲は、本明細書に開示及び/又は指摘されている特定の実施形態や好ましい実施形態に限定されることはない。本明細書において開示される実施形態及び特許請求の範囲は、さらに、他の実施形態とすることができ、上記の特徴の様々な結合又は副結合を含む様々な方法で実践され、実行されるが、特定の結合又は副結合の状態で明確には開示されていないかもしれない。したがって、当業者は、実施形態及び特許請求の範囲が基礎となる概念が、他の組成、構造、方法、及びシステムを設計する基礎として容易に利用できると認めるであろう。加えて、本明細書において使用される語法及び用語は説明のためであって、特許請求の範囲を限定することと考えてはならないことを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム化合物とポリ酸/プロモータ材料とを含む熱水安定な押出触媒又は触媒支持体であって、
前記ジルコニウム化合物と前記ポリ酸/プロモータ材料は結合して、2:1〜20:1のモル比を有するジルコニル−プロモータ前駆体を形成しており、
前記ポリ酸/プロモータ材料は、ポリ酸、クロム、モリブデン、又はタングステンの酸化物又は酸の形態を含むポリ酸、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、
前記ジルコニル−プロモータ前駆体は、いかなるバインダー、押出補助剤、又は安定剤も存在させないで押し出された熱水安定な押出触媒又は触媒支持体。
【請求項2】
実質的に、ジルコニウム化合物とポリ酸/プロモータ材料とからなる熱水安定な押出触媒又は触媒支持体であって、
前記ジルコニウム化合物と前記ポリ酸/プロモータ材料は結合して、4:1〜16:1のモル比を有するジルコニル−プロモータ前駆体を形成しており、
前記ポリ酸/プロモータ材料は、クロムの酸化物又は酸の形態から成り、
前記ジルコニル−プロモータ前駆体は、いかなるバインダー、押出補助剤、又は安定剤も存在させないで押し出された熱水安定な押出触媒又は触媒支持体。
【請求項3】
ポリ酸/プロモータ材料に対する前記ジルコニウム化合物のモル比が、約8:1である請求項1又は請求項2の触媒又は触媒支持体。
【請求項4】
前記ジルコニウム化合物が、ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化ジルコニル、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、有機酸ジルコニル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1〜3のいずれかに記載の触媒又は触媒支持体。
【請求項5】
前記ポリ酸/プロモータ材料が、CrO、Cr、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1〜4のいずれかの触媒又は触媒支持体。
【請求項6】
前記押出触媒又は触媒支持体が、50wt%〜100wt%の酸化ジルコニウム正方相を含む結晶構造を有している請求項1〜5のいずれかの触媒又は触媒支持体。
【請求項7】
前記押出触媒又は触媒支持体が、85wt%を超える酸化ジルコニウム正方相を含む結晶構造を有している請求項1〜5のいずれかの触媒又は触媒支持体。
【請求項8】
67N/cm〜178N/cmの範囲の破砕強度を有する請求項1〜7のいずれかの触媒又は触媒支持体。
【請求項9】
1以上の触媒活性金属と、任意的に1以上のプロモータとをさらに含む請求項1〜8のいずれかの触媒又は触媒支持体。
【請求項10】
20m/g〜150m/gの範囲の表面積を有する請求項1〜9のいずれかの触媒又は触媒支持体。
【請求項11】
実質的に、酸化ジルコニウムとポリ酸/プロモータ材料とからなる触媒又は触媒支持体を調製する方法であって、
a)ポリ酸、クロム、モリブデン、又はタングステンの酸化物又は酸の形態を含むポリ酸、リン酸、硫酸、酢酸、クエン酸、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリ酸/プロモータ材料を準備する工程;
b)ジルコニウム化合物を準備する工程;
c)前記ポリ酸/プロモータ材料を前記ジルコニウム化合物と混合して、ポリ酸/プロモータ材料に対するジルコニウムのモル比が2:1〜20:1となる溶液を得る工程;
d)塩基性水溶液を前記ジルコニウム−プロモータ溶液と混合してジルコニウム−プロモータ前駆体を沈殿させる工程;
e)前記ジルコニウム−プロモータ前駆体を濾過及び乾燥させる工程;
f)前記ジルコニウム−プロモータ前駆体を触媒又は触媒支持体として適切な形状に成形する工程;及び
g)形成されたジルコニウム−プロモータ前駆体を焼成して、完成した触媒又は触媒支持体を形成する工程
を有する方法。
【請求項12】
実質的に、酸化ジルコニウムとポリ酸/プロモータ材料とからなる触媒又は触媒支持体を調製する方法であって、
a)ポリ酸、クロム、モリブデン、又はタングステンの酸化物又は酸の形態を含むポリ酸、リン酸、硫酸、酢酸、クエン酸、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリ酸/プロモータ材料を準備する工程;
b)ジルコニウム化合物を準備する工程;
c)塩基性水溶液を用いて前記ジルコニウム化合物を沈殿させて、前記ジルコニウム沈殿物を洗浄する工程;
d)前記ジルコニウム沈殿物を前記ポリ酸/プロモータ材料と混合して、ポリ酸/プロモータ材料に対するジルコニウムのモル比が2:1〜20:1となる溶液を得る工程;
e)前記ジルコニウム−プロモータ前駆体を濾過及び乾燥させる工程;
f)前記ジルコニウム−プロモータ前駆体を触媒又は触媒支持体として適切な形状に成形する工程;及び
g)形成されたジルコニウム−プロモータ前駆体を焼成して、完成した触媒又は触媒支持体を形成する工程
を有する方法。
【請求項13】
ポリ酸/プロモータ材料に対する前記ジルコニウムのモル比が、約8:1である請求項11又は請求項12の方法。
【請求項14】
ポリ酸/プロモータ材料に対するジルコニウムのモル比が、約13:1である請求項11又は請求項12の方法。
【請求項15】
前記ジルコニウム化合物が、ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化ジルコニル、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、有機酸ジルコニル、及びこれらの組み合わせからなる群より選択され、前記ポリ酸/プロモータ材料が、CrO、Cr、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される請求項11〜14のいずれか1項の方法。
【請求項16】
前記ジルコニウム化合物がZrO(NOであり、前記ポリ酸/プロモータ材料がCrOである請求項11〜15のいずれか1項の方法。
【請求項17】
前記形成工程f)が、前記ジルコニル−プロモータ前駆体を押し出す工程を有する請求項11〜16のいずれか1項の方法。
【請求項18】
前記形成工程f)が、いかなるバインダー、押出補助剤、又は安定剤も存在させないで、前記ジルコニル−プロモータ前駆体を押し出す工程を有する請求項11〜16のいずれか1項の方法。
【請求項19】
前記乾燥工程e)が、前記前駆体を乾燥させて、前記前駆体の加熱減量を60wt%〜70wt%とする工程を有する請求項11〜18のいずれか1項の方法。
【請求項20】
前記乾燥工程e)が、前記前駆体を乾燥させて、前記前駆体の加熱減量を65wt%〜67wt%とする工程を有する請求項11〜18のいずれか1項の方法。

【公表番号】特表2013−521104(P2013−521104A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552940(P2011−552940)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/000650
【国際公開番号】WO2010/101636
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(505241038)ズードケミー インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】