活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物
エマルジョン前濃縮製剤中の活性型ビタミンD化合物、ならびにこれから生成されるエマルジョンおよびサブミクロン液滴エマルジョンを含む、薬学的組成物について開示する。この組成物は、親油相成分、1種または複数種の界面活性物質、および活性型ビタミンD化合物を含む。この組成物は、任意で親水相成分をさらに含む場合がある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、活性型ビタミンD化合物を含む新規の薬学的組成物であって、エマルジョン前濃縮物(emulsion pre-concentrates)である薬学的組成物に関する。本発明は、エマルジョン、およびエマルジョン前濃縮物を水溶液で希釈することで得られるサブミクロン液滴エマルジョンにも関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
ビタミンDは、カルシウム恒常性の正の調節因子として不可欠な脂溶性ビタミンである(Harrison's Principles of Internal Medicine:Part Eleven、「Disorders of Bone and Mineral Metabolism」、Chapter 335、pp.1860〜1865、E. Braunwaldら(編)、McGraw-Hill、New York(1987)を参照)。ビタミンDの活性型は、カルシトリオールとしても知られる1α,25-ジヒドロキシビタミンD3である。活性型ビタミンD化合物に対する特異的な核受容体は、カルシウム恒常性に関与しない多様な臓器の細胞で発見されている(Millerら、Cencer Res. 52:515-520(1992))。カルシウム恒常性に影響を及ぼすことに加えて、活性型ビタミンD化合物は、骨形成、免疫応答の調節、脾臓B細胞によるインスリン分泌過程の調節、筋肉細胞の機能、ならびに上皮組織および造血組織の分化および成長と関連づけられている。
【0003】
また、癌の治療における活性型ビタミンD化合物の有用性を示す、いくつかの報告がある。例えば、一部のビタミンD化合物および類似体が、悪性細胞(具体的には白血病細胞)の非悪性マクロファージ(単球)への分化を誘導することによる強力な抗白血病活性を有し、かつ白血病の治療に有用であることが報告されている(Sudaら、米国特許第4,391,802号;Partridgeら、米国特許第4,594,340号)。カルシトリオールおよび他のビタミンD3類似体の抗増殖作用および分化作用は前立腺癌の治療についても報告されている(Bishopら、米国特許第5,795,882号)。活性型ビタミンD化合物は、皮膚癌(Chidaら、Cancer Research 45:5426-5430(1985))、大腸癌(Dismanら、Cancer Research 47:21-25(1987))、および肺癌(Satoら、Tohoku J.Exp.Med. 138:445-446(1982))の治療にも関連づけられている。活性型ビタミンD化合物の治療用途が重要な役割を果たすことを示唆する他の報告は、Rodriguezら、米国特許第6,034,079号にまとめられている。
【0004】
活性型ビタミンD化合物の投与は実質的な治療上の利益をもたらす可能性があるが、このような化合物を使用した癌および他の疾患の治療は、これらの化合物がカルシウム代謝に影響を及ぼすために制限されている。抗増殖剤としての効果的な使用のためにインビボで必要とされるレベルでは、活性型ビタミンD化合物は、固有のカルシウム血症作用によって、著しく高値で危険性を秘めた血中カルシウム濃度を招く場合がある。すなわち、抗増殖剤としてのカルシトリオールおよび他の活性型ビタミンD化合物の臨床使用は、高カルシウム血症のリスクをふまえて除外されているか、または極めて限られている。
【0005】
全身性の高カルシウム血症の問題が、重度の高カルシウム血症の発症を避けつつ抗増殖作用が認められるような、十分な用量の活性型ビタミンD化合物の「パルス投与」によって克服可能であることが報告されている(米国特許第6,521,608号)。第6,521,608号によれば、活性型ビタミンD化合物は、3日に1回以下、例えば週に1回の少なくとも0.12 μg/kg/日(体重70 kgの場合、8.4 μg)の用量で投与可能である。第6,521,608号に記載されたパルス投与法に使用される薬学的組成物は、5〜100 μgの活性型ビタミンD化合物を含み、経口、静脈内、筋肉内、局所、経皮、舌下、経鼻、腫瘍内投与の剤形、または他の調製物の状態で投与可能である。
【0006】
ROCALTROLは、Roche Laboratories社から販売されているカルシトリオール製剤の商品名である。ROCALTROLは、0.25 μgおよび0.5 μgのカルシトリオールを含むカプセル、また1 μg/mLのカルシトリオールを含む経口用溶液の状態で入手することができる。いずれの剤形とも、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびブチルヒドロキシトルエン(BHT)を抗酸化剤としてを含む。カプセルは、ココナッツ油の分画した(fractionated)トリグリセリドも含み、また経口用溶液は、パーム油の分画したトリグリセリドを含む(Physician's Desk Reference、第54版、pp 2649-2651、Medical Economics Company社、Montvale、NJ(2000))。
【0007】
カルシトリオールは光感受性であり、また特に酸化されやすいことが知られている。また、カルシトリオールおよび他の活性型ビタミンD化合物は親油性である。この事実は、これらの化合物が、脂質および一部の有機溶媒に可溶性であるが、水には実質的に不溶性であるか、またはほんのわずかしか溶解しないことを意味する。活性型ビタミンD化合物の親油性のため、胃液などの水溶液中における同化合物の分散はかなり制限される。したがって、当技術分野でこれまで記載された活性型ビタミンD化合物製剤の薬物動態パラメータは、高用量のパルス投与法による使用には最適ではない。また、現在入手可能な活性型ビタミンD化合物製剤は、小腸における実質的な吸収可変性を示す傾向がある。また経口投与の場合、大部分の活性型ビタミンD化合物製剤について観察される用量と血中濃度の関係は直線的ではない。つまり、血流中に吸収される化合物の量は、任意の用量(特に高用量レベル)で投与された化合物の量と相関しない。
【0008】
したがって、活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物を特に、高カルシウム血症の発症を避けながら抗増殖(例えば抗癌)の利益をもたらすように設計されたパルス投与法の面から改善することが求められている。特に、長期間・高温でも安定性を保つ一方で、患者に投与時に、活性型ビタミンD化合物に関して改善された薬物動態パラメータと、吸収可変性の低下を同時に示す、活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物が当技術分野では求められている。
【発明の開示】
【0009】
発明の簡単な概要
本発明は、当技術分野でこれまで遭遇していた欠点を、エマルジョン前濃縮製剤中に活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物を提供することによって克服する。本発明の薬学的組成物は、カルシトリオールなどの活性型ビタミンD化合物の剤形を、エマルジョン前濃縮製剤中に、簡便な使用、安定性、および溶液中での迅速な分散を可能とするように十分高い濃度で提供するという点で従来技術より優れており、また薬物動態パラメータに関して、特にパルス投与法に関して要求される基準にさらに合致する。具体的には、好ましい態様では、本発明の薬学的組成物は、ROCALTROLのCmaxより少なくとも1.5〜2倍大きいCmaxを示し、ROCALTROLのTmaxより短いTmaxを示す。
【0010】
本発明のエマルジョン前濃縮物は、水または他の水溶液と接触時に、薬学的に許容されるエマルジョンを提供可能な、活性型ビタミンD化合物の非水性製剤である。
【0011】
本発明の1つの局面により、(a)親油相成分、(b)1種または複数種の界面活性物質、および(c)活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物を提供する。この場合、同組成物はエマルジョン前濃縮物であり、組成物に対する水の比が約1:1またはそれ以上となるの水で希釈された時に、400 nmにおける吸光度が0.3を上回るエマルジョンを生成する。本発明の、この局面により、薬学的組成物は、親水相成分をさらに含む場合がある。
【0012】
本発明の別の局面により、水とエマルジョン前濃縮物を含む薬学的エマルジョン組成物を提供する(エマルジョン前濃縮物は、(a)親油相成分、(b)1種または複数種の界面活性物質、および(c)活性型ビタミンD化合物、ならびに任意で疎水相成分を含む)。
【0013】
本発明のエマルジョン前濃縮物から(水による希釈で)生成したエマルジョンは、当業者に従来通りに理解されるエマルジョン(有機相が水中に分散したもの)、ならびに「サブミクロン液滴エマルジョン」(有機相が水中に分散し、分散粒子の平均径が1000 nm未満のもの)の両方を含む。
【0014】
本発明の別の局面により、活性型ビタミンD化合物を含むエマルジョン前濃縮物の調製法を提供する。本発明のこの局面に含まれる方法は、活性型ビタミンD化合物(例えばカルシトリオール)を、親油相成分を用いて、また1種または複数種の界面活性物質を用いて、また任意選択で親水相成分を用いて、高親和性の混合物とする段階を含む。
【0015】
本発明のさらに別の局面では、エマルジョン前濃縮製剤中の活性型ビタミンD化合物を、処置を必要とする患者に投与する段階を含む、癌や乾癬などの過増殖性疾患の治療法および予防法を提供する。あるいは、活性型ビタミンD化合物を、本発明のエマルジョン前濃縮物を適量の水で希釈時に生成するエマルジョン製剤の状態で投与することができる。本発明の、この局面の好ましい態様では、活性型ビタミンD化合物の患者への投与は、例えばパルス投与法で達成される。例えば、本発明のこの局面では、エマルジョン前濃縮製剤中の活性型ビタミンD化合物を、3日に1回以下、少なくとも0.12 μg/kg/日の用量で患者に投与する。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、エマルジョン前濃縮製剤中に活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物に関する。本発明の組成物は、当技術分野で従来遭遇していた、特に患者への投与時における化合物の望ましくない薬物動態パラメータを含む、活性型ビタミンD化合物を用いた療法に関連する問題に対処するか、または実質的に軽減する。
【0017】
本発明の組成物が、活性型ビタミンD化合物を、例えば活性型ビタミンD化合物の薬物動態パラメータの改善を同時に達成しつつ、簡便な経口投与を可能とするために十分高濃度で含む半固体組成物および液体状組成物の調製を可能とすることが発見されている。例えば、ROCALTROLと比較して本発明の組成物は、ROCALTROLのCmaxより少なくとも1.5〜2倍大きいCmaxを示し、ROCALTROLのTmaxより短いTmaxを示す。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、少なくとも約900 pg/mL血漿、より好ましくは約900〜約3000 pg/mL血漿、より好ましくは約1500〜約3000 pg/mL血漿のCmaxを提供する。また本発明の組成物は好ましくは、約6.0時間未満、より好ましくは約1.0〜約3.0時間、より好ましくは約1.5〜約2.0時間のTmaxを提供する。また本発明の組成物は好ましくは、約25時間未満、より好ましくは約2〜約10時間、より好ましくは約5〜約9時間のT1/2を提供する。
【0018】
Cmaxという表現は、薬剤投与後に血清中で達成される活性型ビタミンD化合物の最高濃度であると定義される。Tmaxという表現は、Cmaxが達成される時間と定義される。T1/2という表現は、血清中の活性型ビタミンD化合物の濃度が半減するのに必要な時間と定義される。薬物動態データの開示された値を、全体として活性型ビタミンD化合物を含む組成物のレシピエント集団に(各レシピエントにではなく)適用する。したがって、本発明の組成物が投与される任意の個体は、好ましい薬物動態パラメータを必ずしも達成する可能性はない。しかし、本発明の組成物を、十分大きな被験者集団に投与する場合は、薬物動態パラメータは、本明細書に記載された値にほぼマッチする。
【0019】
本発明の1つの局面により、(a)親油相成分、(b)1種または複数種の界面活性物質、(c)活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物を提供する(組成物はエマルジョン前濃縮物であり、組成物に対する比が約1:1またはそれ以上の水で希釈時に、400 nmにおける吸光度が0.3を上回るエマルジョンを生成する)。本発明の薬学的組成物は、親水相成分をさらに含む場合がある。
【0020】
本発明の別の局面では、水(または他の水溶液)、およびエマルジョン前濃縮物を含む薬学的エマルジョン組成物を提供する。
【0021】
本明細書で用いる「エマルジョン前濃縮物」という用語は、例えば水と接触時にエマルジョンを提供可能な系を意味することを意図する。本明細書で用いる「エマルジョン」という用語は、水と、疎水性(親油性)有機成分を含む有機成分を含むコロイド分散体を意味することを意図する。「エマルジョン」という用語は、当業者によって理解される従来のエマルジョン、ならびに以下に定義する「サブミクロン液滴エマルジョン」の両方を含むことを意図する。
【0022】
本明細書で用いる「サブミクロン液滴エマルジョン」という用語は、水と、疎水性(親油性)有機成分を含む有機成分を含む分散体を意味することを意図する(有機成分から生成する液滴または粒子の平均最大径は約1000 nm未満である)。
【0023】
サブミクロン液滴エマルジョンは、以下の1種または複数種の特性を有するものとして同定可能である。これらは、その成分が接触する際に自然に、または実質的に自然に生成する、すなわち、実質的なエネルギー供給なしに、例えば加熱せずに、高剪断装置(high shear equipment)を使用せずに、または他の実質的な攪拌を行わずに、生成する。
【0024】
サブミクロン液滴エマルジョンの粒子は球状の場合があるが、層状、六方晶系、または等方対称の液晶などの他の構造もとりうる。一般に、サブミクロン液滴エマルジョンは、最大径(例えば平均径)が約50 nm〜約1000 nm、また好ましくは約200 nm〜約300 nmの液滴または粒子を含む。
【0025】
本明細書で用いる「薬学的組成物」という用語は、個々の成分または内容物そのものが、薬学的に許容される特定の組成物であると理解される(例えば、経口投与が推定される場合は経口使用が許容され、また局所使用が推定される場合は局所使用が許容される)。
【0026】
本発明の薬学的組成物は一般に、水で希釈されるとエマルジョンを生成する。このエマルジョンは、エマルジョン前濃縮物を、組成物に対する比が約1:1またはそれ以上の水で希釈時に、本発明にしたがって生成する。本発明にしたがって、水と組成物の比は例えば1:1〜5000:1の間とすることができる。例えば、水と組成物の比は約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、200:1、300:1、500:1、1000:1、または5000:1とすることができる。当業者は、任意の状況または環境に適した、水と組成物の特定の比を容易に確認することができる。
【0027】
本発明によれば、エマルジョン前濃縮物を水で希釈時に、400 nmにおける吸光度が0.3を上回るエマルジョンを生成する。本発明のエマルジョン前濃縮物を1:100で希釈時に生成するエマルジョンの、400 nmにおける吸光度は例えば0.3〜4.0の間でありうる。例えば、400 nmにおける吸光度は、例えば約0.4、0.5、0.6、1.0、1.2、1.6、2.0、2.2、2.4、2.5、3.0、または4.0の場合がある。溶液の吸光度を決定する方法は当業者に周知である。当業者であれば、水で希釈時に、本発明の範囲に含まれる任意の特定の吸光度を有するエマルジョンを得るために、本発明のエマルジョン前濃縮物の内容物の相対的な割合を確認して調整することができる。
【0028】
本発明の薬学的組成物は、例えば半固体状製剤、または液体状製剤の場合がある。本発明の半固体状製剤は、例えばゲル、ペースト、クリーム、および軟膏を含む、当技術分野で周知の任意の半固体状製剤の場合がある。
【0029】
本発明の薬学的組成物は親油相成分を含む。親油相成分としての使用に適した成分は、水と非混和性の任意の薬学的に許容される溶媒を含む。このような溶媒は、適切には界面活性物質の機能を含まないか、または実質的に含まない。
【0030】
親油相成分は、モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリドを含む場合がある。本発明の範囲内で使用可能なモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドは、C6、C8、C10、C12、C14、C16、C18、C20、およびC22の脂肪酸に由来する化合物を含む。例示的なジグリセリドは、特にジオレイン、ジパルミトレイン(dipalmitolein)、およびカプリリン-カプリン(caprylin-caprin)混合型ジグリセリドを含む。好ましいトリグリセリドは、植物油、魚油、動物性脂肪、水素添加植物油、部分的水素添加植物油、合成トリグリセリド、改変トリグリセリド、分画したトリグリセリド、中鎖および長鎖のトリグリセリド、構造トリグリセリド、およびこれらの混合物を含む。
【0031】
上述のトリグリセリドのなかで、好ましいトリグリセリドは以下を含む:アーモンド油;ババス油;ルリヂサ油;ブラックカラント種子油;キャノラ油;ヒマシ油;ココナッツ油;コーン油;綿実油;メマツヨイグサ油;グレープシード油;ラッカセイ油;カラシ種子油;オリーブ油;パーム油;パーム核油;ピーナッツ油;ナタネ油;ベニバナ油;ゴマ油;鮫肝油;ダイズ油;ヒマワリ油;水素添加ヒマシ油;水素添加ココナッツ油;水素添加パーム油;水素添加ダイズ油;水素添加植物油;水素添加綿実油およびヒマシ油;部分的水素添加ダイズ油;部分的ダイズ油および綿実油;トリカプロン酸グリセリル;トリカプリル酸グリセリル;トリカプリン酸グリセリル;トリウンデカン酸グリセリル;トリラウリン酸グリセリル;トリオレイン酸グリセリル;トリリノール酸グリセリル;トリリノレン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸/リノール酸グリセリル;ならびにトリカプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸グリセリル。
【0032】
好ましいトリグリセリドは、商品名LABRAFAC CCとして入手可能な中鎖トリグリセリドである。他の好ましいトリグリセリドは、中性油、例えば中性植物油、特に製品:MIGLYOL 810;MIGLYOL 812;MIGLYOL 818;およびCAPTEX 355を含む、商品名MIGLYOLとして既知の、かつ市販されているような、分画したココナッツ油を含む。
【0033】
製品MYRITOL 813を含む、商品名MYRITOLとして既知の、かつ市販のカプリル酸-カプリン酸トリグリセリドなども適している。このクラスのさらに適切な製品は、CAPMUL MCT、CAPTEX 200、CAPTEX 300、CAPTEX 800、NEOBEE M5、およびMAZOL 1400である。
【0034】
親油相成分として、特に製品MIGLYOL 812(米国特許第5,342,625号を参照)が好ましい。
【0035】
本発明の薬学的組成物は、親水相成分をさらに含む場合がある。親水相成分は、例えば薬学的に許容される、低分子量のモノ-もしくはポリ-オキシ-アルカンジオールの、C1-5アルキルもしくはテトラヒドロフルフリルジエーテル、または部分エーテルを含む場合がある。適切な親水相成分は、例えばモノ-もしくはポリ-オキシ-アルカンジオール、特にモノ-もしくはジ-オキシ-アルカンジオール(2〜12個(特に4個)の炭素原子を含む)の、ジエーテルまたは部分エーテル(特に部分エーテル)を含む。好ましくは、モノ-もしくはポリ-オキシ-アルカンジオール部分は直鎖状である。本発明に関連して使用される例示的な親水相成分は、TRANSCUTOLおよびCOLYCOFUROL(米国特許第5,342,625号を参照)の商品名で知られており、かつ市販されている。
【0036】
特に好ましい態様では、親水相成分は、1,2-プロピレングリコールを含む。
【0037】
本発明の親水相成分は、1種または複数種の追加内容物を追加的に含む場合も当然ある。しかし好ましくは、任意の追加内容物は、活性型ビタミンD化合物担体溶媒としての親水性相の効力が物質的に損なわれないように、活性型ビタミンD化合物が十分可溶性である材料を含む。可能な追加的な親水相成分の例には、低級(例えばC1-5)アルカノール(特にエタノール)などがある。
【0038】
本発明の薬学的組成物は、1種または複数種の界面活性物質も含む。本発明と併せて使用可能な界面活性物質は、親水性または親油性の界面活性物質、またはこれらの混合物を含む。特に、非イオン性の親水性界面活性物質、および非イオン性の親油性界面活性物質が好ましい。
【0039】
適切な親水性界面活性物質には、天然植物油または水素添加植物油とエチレングリコールとの反応産物(例えば、ポリオキシエチレングリコール化された天然植物油または水素添加植物油(例えばポリオキシエチレングリコール化された天然ヒマシ油または水素添加ヒマシ油)などがある。このような産物は、既知の手順で、例えば天然ヒマシ油または水素添加ヒマシ油、またはこの分画をエチレンオキシドと、例えば約1:35〜約1:60のモル比で反応させ、この産物から遊離のポリエチレングリコール成分を、例えばGerman Auslegeschriften 第1,182,388号および第1,518,819号に記載された方法で任意選択で除去することで、得られる場合がある。
【0040】
本発明の薬学的化合物に使用される適切な親水性界面活性物質は、例えば以下の製品を含む、既知の、かつ商品名TWEENで市販されているタイプのポリオキシエチレン-ソルビタン-脂肪酸エステル、例えばモノ-およびトリラウリルエステル、パルミチルエステル、ステアリルエステル、およびオレイルエステルも含む:
TWEEN 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、
TWEEN 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、
TWEEN 60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、
TWEEN 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、
TWEEN 65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート)、
TWEEN 85(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート)、
TWEEN 21(ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート)、
TWEEN 61(ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート)、および
TWEEN 81(ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート)。
【0041】
本発明の組成物に使用される、このクラスの特に好ましい産物は、上記の製品TWEEN 40およびTWEEN 80(Hauerら、米国特許第5,342,625号を参照)である。
【0042】
本発明の薬学的化合物に使用される親水性界面活性物質としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン水素添加植物油;ポリオールと、例えば脂肪酸、グリセリド、植物油、水素添加植物油、およびステロールとの反応混合物;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;コハク酸ジオクチル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ジ-[2-エチルヘキシル]-コハク酸、またはラウリル硫酸ナトリウム;リン脂質(特に、例えばダイズレシチンなどのレシチン);プロピレングリコールのモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステル(例えば、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ヒドロキシステアリン酸プロピレングリコール、イソステアリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコール、リシノレイン酸プロピレングリコール、ステアリン酸プロピレングリコール、および特に好ましくはカプリル酸-カプリン酸プロピレングリコールジエステル、ならびに胆汁酸塩(例えばタウロコール酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩)も適している。
【0043】
適切な親油性界面活性物質には、アルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;脂肪酸;胆汁酸;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;モノ/ジグリセリドの乳酸エステル;プロピレングリコールジグリセリド;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;トランスエステル化植物油;ステロール;糖エステル;糖エーテル;スクログリセリド;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン水素添加植物油;ポリオールと、脂肪酸、グリセリド、植物油、水素添加植物油、およびステロールからなる群の少なくとも1つの要素(member)との反応混合物;ならびにこれらの混合物などがある。
【0044】
本発明の薬学的化合物に使用される、適切な親油性界面活性物質は、天然の植物油トリグリセリドとポリアルキレンポリオールのトランスエステル化産物も含む。このようなトランスエステル化産物は当技術分野で周知であり、例えば米国特許3,288,824号に記載された一般的な手順で得られる。これには、さまざまな天然(例えば非水素添加)の植物油(例えば、トウモロコシ油、核油、アーモンド油、すり潰したナッツ油、オリーブ油、およびパーム油、およびこれらの混合物)と、ポリエチレングリコール(特に、平均分子量が200〜800のポリエチレングリコール)のトランスエステル化産物が含まれる。2モルの天然の植物油トリグリセリドと、1モルのポリエチレングリコール(例えば平均分子量が200〜800)のトランスエステル化によって得られる産物が好ましい。特定のクラスのさまざまな状態のトランスエステル化産物は既知であり、商品名LABRAFILとして市販されている。
【0045】
本発明の薬学的組成物との併用に適した他の親油性界面活性物質には、脂溶性ビタミン誘導体、例えばコハク酸トコフェロールPEG-1000(「ビタミンE TPGS」)などがある。
【0046】
本発明の薬学的化合物中に使用する親油性界面活性物質として、モノグリセリド、ジグリセリド、およびモノ/ジグリセリド、特にカプリル酸またはカプリン酸とグリセロールのエステル化産物;ソルビタン脂肪酸エステル;ペンタエリトリトール脂肪酸エステル、およびポリアルキレングリコールエーテル、例えばペンタエリトリット-ジオレエート、-ジステアレート、-モノラウレート、-ポリグリコールエーテル、および-モノステアレート、ならびにペンタエリトリット脂肪酸エステル;モノグリセリド(例えば、モノオレイン酸グリセロール、モノパルミチン酸グリセロール、およびモノステアリン酸グリセロール;トリ酢酸グリセロール、または(1,2,3)-トリアセチン;ならびにステロールおよびそれらの誘導体(例えば、コレステロール、およびこの誘導体、特にフィトステロール(例えば、シトステロール、カンペステロール、またはスチグマステロール))、およびこのエチレンオキサイド付加物(例えばダイズステロール、およびこの誘導体)を含む産物も適している。
【0047】
複数の市販の界面活性物質組成物が、典型的には、例えばトランスエステル化反応におけるトリグリセリド出発材料の不完全な反応の結果として、少量〜中程度の量のトリグリセリドを含むことが当業者に理解される。したがって、本発明の薬学的組成物における使用に適した界面活性物質には、トリグリセリドを含むこのような界面活性物質などがある。トリグリセリドを含む市販の界面活性物質組成物の例には、界面活性物質ファミリーGELUCIRES、MAISINES、およびIMWITORSの一部の物質などがある。このような化合物の具体例は、GELUCIRE 44/14(飽和ポリグリコール化グリセリド);GELUCIRE 50/13(飽和ポリグリコール化グリセリド);GELUCIRE 53/10(飽和ポリグリコール化グリセリド);GELUCIRE 33/01(C8〜C18飽和脂肪酸の半合成トリグリセリド);GELUCIRE 39/01(半合成グリセリド);他のGELUCIRE(37/06、43/01、35/10、37/02、46/07、48/09、50/02、62/05など);MAISINE 35-I(リノール酸グリセリド);ならびにIMWITOR 742(カプリル酸/カプリン酸グリセリド)(米国特許第6,267,985号を参照)である。
【0048】
有意なトリグリセリド量を有する、さらに他の市販の界面活性物質組成物は当技術分野で周知である。トリグリセリドならびに界面活性物質を含む、このような組成物が、本発明の親油相成分の全体または一部、ならびに界面活性物質の全体または一部を提供するために適していることが理解されるはずである。
【0049】
本発明の薬学的組成物は、活性型ビタミンD化合物も含む。本明細書で用いる「活性型ビタミンD化合物」という用語は、少なくともA環の1位炭素がヒドロキシル化されているビタミンD(例えば1α-ヒドロキシビタミンD3)を意味することを意図する。本発明の組成物に関連して、好ましい活性型ビタミンD化合物は、カルシトリオールとしても知られる1α,25-ヒドロキシビタミンD3である。他の多数の活性型ビタミンD化合物が知られており、本発明を実施するために使用することができる。例には、側鎖がコレステロールまたはエルゴステロールの側鎖より17残基長い1α-ヒドロキシ誘導体(米国特許第4,717,721号を参照);シクロペンタノ-ビタミンD類似体(米国特許第4,851,401号を参照);アルキニル側鎖、アルケニル側鎖、およびアルカニル側鎖を有するビタミンD3類似体(米国特許第4,866,048号および第5,145,846号を参照);トリヒドロキシカルシフェロール(米国特許第5,120,722号を参照);フルオロ-コレカルシフェロール化合物(米国特許第5,547,947号を参照);メチル置換ビタミンD(米国特許第5,446,035号を参照);23-オキサ誘導体(米国特許第5,411,949号を参照);19-ノル-ビタミンD化合物(米国特許第5,237,110号を参照);ならびにヒドロキシル化24-ホモ-ビタミンD誘導体(米国特許第4,857,518号を参照)などがある。具体例には、ROCALTROL(Roche Laboratories社);CALCIJEX注射用カルシトリオール;EB 1089(24a,26a,27a-トリホモ-22,24-ジエン-1αa,25-(OH)2-D3、KH 1060(20-エピ-22-オキサ-24a,26a,27a-トリホモ-1α,25-(OH)2-D3)、セオカルシトール(Seocalcitol)、MC 1288(1,25-(OH)2-20-エピ-D3)、およびMC 903(カルシポトリオール、1α24s-(OH)2-22-エン-26,27-デヒドロ-D3)を含むLeo Pharmaceuticals社の治験薬;1,25-(OH)2-16-エン-D3、1,25-(OH)2-16-エン-23-イン-D3、および25-(OH)2-16-エン-23-イン-D3を含むRoche Pharmaceuticals社の薬剤;中外製薬の22-オキサカルシトリオール(22-oxa-1α,25-(OH)2-D3);イリノイ大学の1α-(OH)-D5;ならびにZK 161422(20-メチル-1,25-(OH)2-D3)、およびZK 157202(20-メチル-23-エン-1,25-(OH)2-D3)を含むInstitute of Medical Chemistry-Schering AG社の薬剤;1α-(OH)-D2;1α-(OH)-D3および1α-(OH)-D4が含まれる。他の例には、
などがある。他の例については米国特許第6,521,608号に記載されている。例えば
も参照されたい。
【0050】
本発明の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物は、ビタミンDと比較して高カルシウム血作用が低いので、高用量の化合物を、高カルシウム血症を引き起こすことなく動物に投与することができる。低い高カルシウム血作用は、等量の1α,25-ヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)の投与によって誘導される高カルシウム血作用に満たない作用であると定義される。一例としてEB 1089は、カルシトリオールの高カルシウム血作用の50%の高カルシウム血作用を有する。低い高カルシウム血作用を有する他の活性ビタミンD化合物には、Hoffman La Roche社から入手可能なRo23-7553やRo24-5531などがある。高カルシウム血作用が低い活性ビタミンD化合物の他の例は、米国特許第4,717,721号に記載されている。活性ビタミンD化合物の高カルシウム血作用を決定することは、当技術分野でごく一般に行われており、またHansen et al., Curr. Pharm. Des. 6: 803-828 (2000)に記載された手順で実施することができる。
【0051】
本発明の薬学的組成物は、1種または複数種の添加物をさらに含む場合がある。当技術分野で周知の添加物は、例えば減粘剤(detackifier)、消泡剤(antifoaming agent)、緩衝剤、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、マレイン酸、フマル酸、メタ重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびトコフェロール(例えばα-トコフェロール(ビタミンE))、保存剤、キレート剤、粘性調整剤(viscomodulator)、等張剤(tonicifier)、香味剤(flavorant)、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁剤、結合剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、およびこれらの混合物を含む。これら添加物の量は、当業者であれば、所望の特定の特性にしたがって容易に決定することができる。例えば、抗酸化剤は組成物の総重量に基づいて約0.01重量%〜約0.5重量%の量で存在してもよく、好ましくは約0.05重量%〜約0.35重量%である。
【0052】
添加物には濃化剤(thickening agent)を含めることもできる。適切な濃化剤は、例えば薬学的に許容されるポリマー材料、および無機濃化剤を含む、当技術分野で公知であり、かつ使用されている化合物の場合がある。本発明の薬学的組成物に使用される例示的な濃化剤には、ポリアクリレート、およびポリアクリレートコポリマー樹脂(例えばポリアクリル酸、およびポリアクリル酸/メタクリル酸樹脂);アルキルセルロース(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、およびプロピルセルロース)を含むセルロースおよびセルロース誘導体;ヒドロキシアルキルセルロース(例えばヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシプロピルアルキルセルロース);アシル化セルロース(例えば酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、およびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース);ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの、これらの塩;ポリビニルピロリドン(例えばポリ-N-ビニルピロリドンを含む)、およびビニルピロリドンコポリマー(ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーなど);例えば、ポリビニル樹脂(例えばポリ酢酸ビニルおよびアルコールを含む)、ならびに他のポリマー材料(トラガカントガム、アラビアゴム、アルギン酸塩(例えばアルギン酸、および例えばアルギン酸ナトリウムなどの、この塩)を含む);ならびにアタパルジャイト(atapulgite)、ベントナイト(bentonite)、およびケイ酸塩(親水性二酸化ケイ素産物、例えばアルキル化(例えばメチル化)シリカゲル、特にコロイド状二酸化ケイ素産物を含む)などの無機濃化剤が含まれる。
【0053】
上記の濃化剤は、例えば徐放性効果をもたらすことを目的として含めることができる。しかし、経口投与が意図される場合は、上述の濃化剤の使用は通常必要とされず、一般にはそれほど好まれない。濃化剤の使用は一方で、例えば局所塗布が推定される場合に指示される。
【0054】
本発明による組成物は、任意の適切な手段で投与に使用することができる。例えば経口投与の場合は、例えば単位投与剤形(例えば溶液中、ゼラチンに包まれた状態を含む硬カプセルもしくは軟カプセル状)で行う。ゼラチンカプセルはバンド固定または液体マイクロスプレー封着により密封してもよい。組成物はまた、非経口的投与または局所投与により投与してもよく、例えば皮膚への投与の場合は、例えばクリーム、ペースト、ローション、ゲル、軟膏、湿布剤、パップ剤、膏薬、経皮パッチなどの状態で行う。または眼科的使用の場合は、例えば点眼剤(液体、ローション、またはゲル)の状態で行う。容易に流動可能な形状(例えば溶液およびエマルジョン)を、例えば病巣内への注入に使用することもできるほか、例えば浣腸として直腸から投与することができる。本組成物はさらに、活性ビタミンD化合物の送達を促進させる薬剤、例えばリポソーム、ポリマー、またはコポリマー(例えば側鎖ポリマー)を含んでもよい。
【0055】
本発明の組成物を、単位投与剤形に製剤化する場合は、活性型ビタミンD化合物の量は、好ましくは単位用量あたり1〜400μgとする。より好ましくは、単位用量あたりの活性型ビタミンD化合物の量は約1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg、260μg、265μg、270μg、275μg、280μg、285μg、290μg、295μg、300μg、305μg、310μg、315μg、320μg、325μg、330μg、335μg、340μg、345μg、350μg、355μg、360μg、365μg、370μg、375μg、380μg、385μg、390μg、395μg、または400μg、またはこれらの中間の任意の量である。好ましい態様では、単位剤形当たりの活性ビタミンD化合物の量は、約5μg〜約180μg、より好ましくは約10μg〜約135μg、より好ましくは約45μgである。ある態様では、単位剤形は45μg、90μg、135μg、または180μgのカルシトリオールを含む。
【0056】
組成物の単位剤形がカプセルの場合、カプセル中に存在する内容物の総量は、好ましくは約10〜1000μLである。より好ましくは、カプセル中に存在する内容物の総量は約100〜300μLである。別の態様では、カプセル中に存在する内容物の総量は、好ましくは約10〜1500 mgであり、好ましくは約100〜1000 mgである。ある態様では、総量は約225 mg、約450 mg、約675 mg、または約900 mgである。ある態様では、単位剤形は45μg、90μg、135μg、または180μgのカルシトリオールを含むカプセルである。
【0057】
本発明の組成物中の内容物の相対的な割合が、対象となる特定の種類の組成物に依存して相当変動することは言うまでもない。相対的な割合は、組成物中の内容物の特定の機能に依存しても変動する。相対的な割合はまた、使用される特定の内容物、および産物組成物の所望の物理的特性に依存しても変動する(例えば、局所使用に用いる組成物の場合であれば、これが流動性の液体か、またはペーストであるかによって変動する)。任意の特定の状況における実行可能な割合の決定は通常、当業者の能力の範囲内にある。したがって、後述する指定の割合および相対重量範囲はいずれも、好ましい発明の教示を示すか、または個別に発明の教示を示すに過ぎず、最も広い局面において本発明を制限しないと理解される。
【0058】
本発明の親油相成分は、適切には、組成物の総重量に対して約10重量%〜約90重量%の量で存在する。好ましくは、親油相成分は、適切には、組成物の総重量に対して約15重量%〜約65重量%の量で存在する。
【0059】
本発明の界面活性物質(1種類または複数)は、適切には、組成物の総重量に対して約1重量%〜90重量%の量で存在する。好ましくは、界面活性物質(1種類または複数)は、組成物の総重量に対して約5重量%〜約85重量%の量で存在する。
【0060】
本発明の組成物中の活性型ビタミンD化合物の量が、例えば意図された投与経路、および他の成分が存在する規模に依存して変動することは言うまでもない。しかし一般に、本発明の活性型ビタミンD化合物は、適切には、組成物の総重量に対して約0.005重量%〜20重量%の量で存在する。好ましくは、活性型ビタミンD化合物は、組成物の総重量に対して約0.01重量%〜15重量%の量で存在する。
【0061】
本発明の親水相成分は、適切には、組成物の総重量に対して約2重量%〜約20重量%の量で存在する。好ましくは、親水相成分は、組成物の総重量に対して約5重量%〜15重量%の量で存在する。
【0062】
本発明の薬学的組成物は半固体状製剤の場合がある。本発明の範囲に含まれる半固体状製剤は、例えば、組成物の総重量に対して約50重量%〜約80重量%の量で存在する親油相成分、組成物の総重量に対して約5重量%〜約50重量%の量で存在する界面活性物質、および組成物の総重量に対して約0.01重量%〜約15重量%の量で存在する活性型ビタミンD化合物を含む場合がある。
【0063】
本発明の薬学的組成物は液体状製剤の場合がある。本発明の範囲内の液体状製剤は例えば、組成物の総重量に対して約50重量%〜約60重量%の量で存在する親油相成分、組成物の総重量に対して約4重量%〜約25重量%の量で存在する界面活性物質、組成物の総重量に対して約0.01重量%〜約15重量%の量で存在する活性型ビタミンD化合物、ならびに組成物の総重量に対して約5重量%〜約10重量%の量で存在する親水相成分を含む場合がある。
【0064】
使用可能な他の組成物には、以下のようなものがある(各成分のパーセンテージは、活性ビタミンD化合物を除く組成物の総重量に基づく重量パーセント):
a. Gelucire 44/14 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
b. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約40%;
c. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約30%;
d. Gelucire 44/14 約40%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約30%;
e. Gelucire 44/14 約40%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約40%;
f. Gelucire 44/14 約30%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約40%;
g. Gelucire 44/14 約20%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約50%;
h. ビタミンE TPGS 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
i. Gelucire 44/14 約60%
ビタミンE TPGS 約25%
MIGLYOL 812 約15%;
j. Gelucire 50/13 約30%
ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約65%;
k. Gelucire 50/13 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
l. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約40%;
m. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約30%;
n. Gelucire 50/13 約40%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約30%;
o. Gelucire 50/13 約40%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約40%;
p. Gelucire 50/13 約30%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約40%;
q. Gelucire 50/13 約20%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約50%;
r. Gelucire 50/13 約60%
ビタミンE TPGS 約25%
MIGLYOL 812 約15%;
s. Gelucire 44/14 約50%
PEG 4000 約50%;
t. Gelucire 50/13 約50%
PEG 4000 約50%;
u. ビタミンE TPGS 約50%
PEG 4000 約40%;
v. Gelucire 44/14 約33.3%
ビタミンE TPGS 約33.3%
PEG 4000 約33.3%;
w. Gelucire 50/13 約33.3%
ビタミンE TPGS 約33.3%
PEG 4000 約33.3%;
x. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約50%;
y. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約50%;
z. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約95%;
aa. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約65%
PEG 4000 約30%;
ab. ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約90%;
ac. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約85%
PEG 4000 約10%;および
ad. ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約80%
PEG 4000 約10%。
【0065】
本発明のある態様では、薬学的組成物は、活性ビタミンD化合物、親油性成分、および界面活性物質を含む。親油性成分は、約1%〜約100%の任意のパーセンテージで存在する場合がある。親油性成分は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%で存在する場合がある。界面活性物質は、約1%〜約100%の任意のパーセンテージで存在する場合がある。界面活性物質は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%で存在する場合がある。ある態様では、親油性成分はMIGLYOL 812であり、また界面活性物質はビタミンE TPGSである。好ましい態様では、薬学的組成物は、約50%のMIGLYOL 812と約50%のビタミンE TPGS、約90%のMIGLYOL 812、および約10%のビタミンE TPGS、または約95%のMIGLYOL 812および約5%のビタミンE TPGSを含む。
【0066】
本発明の別の態様では、薬学的組成物は、活性ビタミンD化合物および親油性成分(例えば約100%のMIGLYOL 812)を含む。
【0067】
好ましい態様では、薬学的組成物は、約50%のMIGLYOL 812、約50%のビタミンE TPGS、ならびに少量のBHAおよびBHTを含む。この剤形は、化学的かつ物理的に意外なほど安定なことがわかっている(実施例16参照)。特に好ましい態様では、薬学的組成物は、約50%のMIGLYOL 812、約50%のビタミンE TPGS、ならびにそれぞれ約0.35%のBHAおよびBHTを含む。安定性が高くなることで、組成物の有効期間はより長くなる。重要な点として、安定性は、組成物の室温保存も可能とすることで、冷蔵保存時の煩雑さの回避および費用の節約につながる。加えて同組成物は経口投与に適しており、また高用量の活性ビタミンD化合物を可溶化可能なために、過増殖疾患および他の障害の治療のための、活性ビタミンD化合物の高用量パルス投与が可能なことがわかっている。
【0068】
前述に加えて、本発明は、本発明の個々の成分を、均質な混合物とする段階、また必要に応じて、得られた組成物を、単位投与剤形に配合する段階、例えば、組成物をゼラチン(例えば硬ゼラチンまたは軟ゼラチン)カプセル、または非ゼラチンカプセルの内部に充填する段階を含む、既に定義した薬学的組成物を作製する過程も提供する。
【0069】
より特定の態様では、本発明は、活性型ビタミンD化合物(例えばカルシトリオール)を、既に定義した親油相成分および界面活性物質を用いて均質な混合物とする段階を含む、薬学的組成物を調製する過程を提供する(親油相成分と界面活性物質の相対的な割合は、エマルジョン前濃縮物が得られるように、使用する活性型ビタミンD化合物の量に対して選択する)。
【0070】
本発明は、エマルジョン前濃縮製剤中の活性型ビタミンD化合物を、処置を必要とする患者に投与する段階を含む、癌や乾癬などの過増殖性疾患の治療法および予防法も提供する。あるいは、活性型ビタミンD化合物は、本発明のエマルジョン前濃縮物を適量の水で希釈時に生成するエマルジョン製剤の状態で投与されうる。あるいは、活性ビタミンD化合物は本明細書に開示される任意の製剤で投与できる。
【0071】
本明細書で用いる「癌」という用語は既知の任意の癌を意味し、また以下の疾患を含む場合があるが、これらに限らない:急性白血病、急性リンパ性白血病などの白血病、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性などの急性骨髄性白血病、および赤白血病、ならびに骨髄異形成症候群;慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、および有毛細胞白血病などの慢性白血病;真性多血症;ホジキン病や非ホジキン病などのリンパ腫;くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌型骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞腫、および骨髄外形質細胞腫などの多発性骨髄腫;ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症;意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症;良性単クローン性免疫グロブリン血症;H鎖病;骨の肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨の線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、ならびに滑膜肉腫などの骨および結合組織の肉腫;神経膠腫、星細胞腫、脳幹神経膠腫、脳室上衣腫、希突起グリオーマ、非グリア性腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽細胞腫、および原発性脳リンパ腫などの脳腫瘍;腺癌、小葉(小細胞)癌、乳管内癌、髄様乳癌、粘液性乳癌、管状乳癌、乳頭状乳癌、乳房のパジェット病、ならびに炎症性乳癌などの乳癌;褐色細胞腫や副腎皮質癌などの副腎癌;乳頭癌または濾胞癌の甲状腺癌、甲状腺髄様癌、および未分化甲状腺癌などの甲状腺癌;膵島細胞腺腫、ガストリン産生腫瘍、グルカゴノーマ、ヴィポーマ、ソマトスタチン放出腫瘍、およびカルチノイド、または膵島細胞腫瘍などの膵臓癌;プロラクチン産生腫瘍や末端肥大症などの下垂体癌;眼の黒色腫、虹彩の黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体の黒色腫、および網膜芽腫などの眼の癌;扁平上皮癌、腺癌、および黒色腫などの膣癌;扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、および性器のパジェット病などの外陰癌;扁平上皮癌や腺癌などの子宮頚部癌;子宮内膜癌や子宮肉腫などの子宮癌;卵巣上皮癌、卵巣上皮の境界型腫瘍、生殖細胞腫瘍、および間質腫瘍などの卵巣癌;扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘膜表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣贅癌、および燕麦細胞(小細胞)癌などの食道癌;腺癌、きのこ状(倍数体)、潰瘍性、表在性拡大型、びまん性の悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫などの胃癌;結腸癌;直腸癌;肝細胞癌や肝芽腫などの肝臓癌;腺癌などの胆嚢癌;乳頭状、管状、およびびまん型などの胆管癌;非小細胞性肺癌、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌、および小細胞性肺癌などの肺癌;胚の腫瘍、精上皮腫、未分化型、従来型(定型)の精母細胞の非精上皮腫、胚性癌、および奇形腫癌、および絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)などの精巣癌;腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫などの前立腺癌;陰茎癌;扁平細胞癌などの口腔癌;基底癌;腺癌、粘膜表皮癌、および腺様嚢胞癌などの唾液腺癌;扁平細胞癌や疣贅癌などの咽頭癌;基底細胞癌、扁平上皮癌、および黒色腫、表在性拡大型黒色腫、結節性黒色腫、黒子性悪性黒色腫、末端性黒子性黒色腫などの皮膚癌;頭頸部癌;腎細胞癌、腺癌、副腎癌、線維肉腫、移行上皮癌(腎盂および/または輸尿管)などの腎臓癌;ウィルムス腫瘍;ならびに、移行上皮癌、扁平上皮癌、腺癌、および癌肉腫などの膀胱癌。また、本発明の方法および組成物によって治療可能な癌には、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管血管内皮肉腫、中皮腫、骨膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、および乳頭腺癌などがある。これらの障害の総説については、Fishman et al., 1985, Medicine, 2d Ed., J.B. Lippincott Co., Philadelphia, PA and Murphy et al., 1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, New York, NYを参照されたい。
【0072】
活性ビタミンD化合物は好ましくは、約1μg〜約400μg、より好ましくは約15μg〜約300μgの用量で投与される。特定の態様では、有効量の活性ビタミンD化合物は、3μg、4μg、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg、260μg、265μg、270μg、275μg、280μg、285μg、290μg、295μg、300μg、305μg、310μg、315μg、320μg、325μg、330μg、335μg、340μg、345μg、350μg、355μg、360μg、365μg、370μg、375μg、380μg、385μg、390μg、395μg、もしくは400μg、またはこれ以上である。ある態様では、有効量の活性ビタミンD化合物は、約1μg〜約270μgであり、より好ましくは約15μg〜約225μgであり、より好ましくは約15μg〜約180μgであり、より好ましくは約15μg〜約135μgであり、より好ましくは約20μg〜約90μgであり、より好ましくは約30μg〜約60μgであり、またさらにより好ましくは約45μgである。ある態様では、本発明の方法は、活性ビタミンD化合物を、約0.12 μg/kg体重〜約3 μg/kg体重の用量で投与する段階を含む。このような化合物は、経口、筋肉内、静脈内、腸管外、直腸内、鼻内、局所的、または経皮的な経路を含む任意の経路で投与することができる。
【0073】
仮に化合物が毎日投与される場合は、高カルシウム血症の誘導を避けるか、または抑えるために、用量は低く(例えば約0.5μg〜約5μgに)維持することができる。仮に、活性ビタミンD化合物が、低い高カルシウム血作用を有する場合は、高カルシウム血症を発症させることなく、高い1日量(例えば約10μg〜約20μgまたはこれ以上;最大約50μg〜約100μg)を投与することができる。
【0074】
本発明の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物はパルス投与法で投与されることで、高用量の活性ビタミンD化合物を、高カルシウム血症を誘導することなく投与することができる。パルス投与とは、活性ビタミンD化合物を、連続的な間欠的投与スケジュールか、または非連続的な間欠的投与スケジュールのいずれかによって間欠的に投与することを意味する。高用量の活性ビタミンD化合物は、上記セクションで述べたように、約3μgを上回る用量を含む。したがって、本発明のある態様では、癌の治療または改善の方法は、高用量の活性ビタミンD化合物を間欠的に投与する段階を含む。パルス投与による投与の頻度は、化合物または剤形の薬物動態学的パラメータ、および動物に対する活性ビタミンD化合物の薬力学的作用を含むがこれらに限定されない諸因子によって制限される場合がある。例えば、腎機能が損なわれた癌を有する動物はカルシウム排出能力が低いために、それほど高頻度ではない活性ビタミンD化合物の投与が必要となる場合がある。
【0075】
以下の記述は例示的に示すだけであり、「パルス投与」という用語が、当業者によって指定される任意の不連続投与法を含む場合があることを説明するに過ぎない。
【0076】
1つの例では、活性ビタミンD化合物は、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日間、2週間毎、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、またはこれ以上の期間に1回まで投与することができる。投与は、1週間、2週間、3週間、もしくは4週間、または1か月間、2か月間、もしくは3か月間、もしくはこれ以上の期間、継続することができる。任意選択で、安静期間を設けた後に、活性ビタミンD化合物を、同じか、または異なるスケジュールで投与することができる。安静期間は、動物における活性ビタミンD化合物の薬力学的作用に従って、1週間、2週間、3週間、または4週間、またはこれ以上の期間とすることができる。
【0077】
別の例では、活性ビタミンD化合物を週に1回、3か月間にわたって投与することができる。
【0078】
好ましい態様では、活性ビタミンD化合物を週に1回、4週間のサイクルの3週間にわたって投与することができる。1週間の安静期間後に、活性ビタミンD化合物を、同じか、または異なるスケジュールで投与することができる。
【0079】
別の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物を3週間に1回投与することができる。
【0080】
本発明の方法に使用可能な投与スケジュールの他の例は、全体が参照により組み入れられる米国特許第6,521,608号に記載されている。
【0081】
上記の投与スケジュールは、説明目的でのみ提供されるものであり、制限する意図はないと解釈されるべきである。当業者であれば、あらゆる活性ビタミンD化合物が本発明の範囲内にあること、また活性ビタミンD化合物の正確な用量および投与スケジュールが多くの因子によって変動する場合があることを容易に理解すると思われる。
【0082】
疾患または障害の急性疾患または慢性疾患としての管理における治療的有効量の薬物量は、治療対象の疾患または障害、薬剤の種類、および投与経路を含むがこれらに限定されない諸因子に依存して異なる場合がある。本発明の方法では、有効量の活性ビタミンD化合物は、癌または他の過増殖疾患の治療もしくは改善に有効な任意の用量の化合物である。高用量の活性ビタミンD化合物の用量は、約3μg〜約400μgである場合があるほか、上述した範囲内の任意の用量の場合がある。用量、投与頻度、期間、またはこれらの任意の組み合わせも、動物の年齢、体重、反応、および病歴、ならびに薬剤の投与経路、薬物動態、および薬力学的作用によって変化する場合がある。これらの因子は、当業者によってルーチンに考慮される。
【0083】
ビタミンD化合物の吸収およびクリアランスの速度は、当業者に既知のさまざまな因子の影響を受ける。上述したように、活性ビタミンD化合物の薬物動態学的特性は、高カルシウム血症の発症を誘導することなく、血液中に取り込まれうるビタミンD化合物のピーク濃度を制限する。活性ビタミンD化合物の組織における吸収、分布、結合、または局在の速度および規模、生物学的変換、ならびに排出はいずれも、薬剤を投与可能な頻度に影響する可能性がある。ある態様では、活性ビタミンD化合物は、癌を治療したり改善したりする方法として、上述の投与スケジュールに従ってパルス投与法によって高用量が投与される。
【0084】
本発明のある態様では、活性ビタミンD化合物は、約0.1 nM〜約20 nMの活性ビタミンD化合物の最高血漿濃度を十分達成する用量で投与される。ある態様では、本発明の方法は、活性ビタミンD化合物を0.1 nM、0.2 nM、0.3 nM、0.4 nM、0.5 nM、0.6 nM、0.7 nM、0.8 nM、0.9 nM、1 nM、2 nM、3 nM、4 nM、5 nM、6 nM、7 nM、8 nM、9 nM、10 nM、12 .5nM、15 nM、17.5 nM、もしくは20 nM、またはこれらの任意の範囲の濃度の最高血漿濃度を達成する用量で投与する段階を含む。他の態様では、活性ビタミンD化合物は、約0.5 nMを超える、好ましくは約0.5 nM〜約20 nM、より好ましくは約1 nM〜約10 nM、より好ましくは約1 nM〜約7 nM、またさらにより好ましくは約3 nM〜約5 nMの活性ビタミンD化合物の最高血漿濃度を達成する用量で投与される。
【0085】
別の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物は、少なくとも約0.12μg/kg体重の用量で、より好ましくは少なくとも約0.5μg/kg体重の用量で投与される。
【0086】
当業者であれば、このような標準的な用量が、約70 kgの平均サイズの成体に対するものであること、また上述のようにルーチンに考慮される因子に鑑みて調節可能なことを理解すると思われる。
【0087】
ある態様では、本発明の方法は、最高血漿濃度に速やかに(例えば4時間以内に)達する用量の活性ビタミンD化合物を投与する段階をさらに含む。別の態様では、本発明の方法は、迅速に除去される用量(例えば、除去半減期が12時間未満)の活性ビタミンD化合物を投与する段階を含む。
【0088】
高濃度の活性ビタミンD化合物が得られることが有益な一方で、臨床上の安全性(例えば高カルシウム血症)とのバランスをとらなければならない。したがって、本発明の1つの局面では、本発明の方法は、高用量の活性ビタミンD化合物を、癌または他の過増殖疾患を有する被験対象に間欠的に投与する段階、および高カルシウム血症関連症状に関して被験対象をモニタリングする段階を含む。このような症状には、軟部組織(例えば心臓組織)の石灰化、骨密度の上昇、および高カルシウム血漿性腎症などがある。さらに別の態様では、本発明の方法は、高用量の活性ビタミンD化合物を、癌または他の過増殖疾患を有する被験対象に間欠的に投与する段階、および血漿カルシウム濃度を約10.2 mg/dL未満に確実に抑えるために、被験対象の血漿カルシウム濃度をモニタリングする段階を含む。
【0089】
ある態様では、高血中レベルのビタミンD化合物を、血液へのカルシウム輸送を減じながら安全に得ることができる。ある態様では、高濃度の活性ビタミンD化合物を、低カルシウム食とともに投与時に、高カルシウム血症を発症させることなく安全に得ることができる。1つの例では、カルシウムは、小腸を介して血液中に輸送されない吸着剤、吸収剤、リガンド、キレート、または他の結合部分に捕捉される場合がある。別の例では、溶骨細胞の活性化の速度は、ビスホスホネート(例えばゾレドロン酸、パミドロン酸、もしくはアレンドロン酸など)、またはグルココルチコイド(例えば、プレドニゾンもしくはデキサメタゾンなど)を活性ビタミンD化合物と併用投与することで抑えられる場合がある。
【0090】
ある態様では、高血中レベルの活性ビタミンD化合物は、カルシウムのクリアランス速度を最大化するとともに安全に得られる。1つの例では、カルシウムの排出は、適切な水分補給および塩分摂取を確実に行うことで高めることができる。別の例では、利尿療法でカルシウムの排出を高めることができる。
【0091】
本発明のある態様では、癌や乾癬などの過増殖疾患の治療法および予防法は、化学療法剤もしくは放射線治療薬、または活性ビタミンD化合物を用いた治療をさらに含む。
【0092】
本明細書で用いる「化学療法剤」という用語は、癌の治療または改善に有効なことが当業者に既知の任意の化学療法剤を意味する。化学療法剤は、小分子;合成薬剤;ペプチド;ポリペプチド;タンパク質;核酸(例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、3重らせん、および生物学的活性のあるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むがこれらに限定されないDNAおよびRNAのポリヌクレオチド);抗体;合成または天然の無機分子;模倣剤;ならびに合成または天然の有機分子を含むがこれらに限定されない。有用なことが知られている任意の薬剤、または癌の治療または改善のために使用されてきた任意の薬剤、または現在使用されている任意の薬剤を、本明細書に記載された本発明の活性ビタミンD化合物と併用して使用することができる。癌の治療または改善のために使用されてきた治療用薬剤、または現在使用されている治療用薬剤に関する情報については例えば、Hardman et al., eds., 1996, Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis Of Therapeutics 9th Ed, Mc-Graw-Hill, New York, NYを参照されたい。
【0093】
本発明の方法および組成物に有用な化学療法剤には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤、エピポドフィロトキシン、抗生物質、ホルモンおよびホルモン拮抗剤、酵素、白金配位錯体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、イミダゾテトラジン誘導体、細胞保護剤、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、生物学的反応修飾物質、レチノイド、治療用抗体、分化剤、免疫調節剤、ならびに血管形成阻害剤などがある。
【0094】
使用可能な他の化学療法剤には、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG live、ベバセイズマブ(bevaceizumab)、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン(calusterone)、カンプトセシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロランブシル、シネカルセット、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシン、デニロイキン・ジフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エリオットB溶液、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロキシウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブ・オゾガミシン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イブリツマブ・ティウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン(meclorethamine)、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ(nofetumomab)、オブリメルセン、オプレレベキン(oprelvekin)、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペガデマーゼ(pegademase)、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン(polifeprosan)、ポルフィルマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ(rasburicase)、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、タルセバ、テモゾロマイド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシル・マスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ならびにゾレドロン酸などがある。
【0095】
化学療法剤は、当業者によって膵臓癌治療に有効であると認識される用量で投与することができる。ある態様では、化学療法剤は、活性ビタミンD化合物の相加的または相乗的な効果のために、当技術分野で使用される用量より低い用量で投与することができる。
【0096】
本明細書で用いる、「放射線療法用薬剤」という用語は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意の放射線療法用薬剤を意味するがこれらに限定されない。例えば放射線療法用薬剤は、近接照射療法または放射線核種療法で使用される薬剤などの薬剤の場合がある。
【0097】
近接照射療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。一般に近接照射療法は、好ましくは健常組織の被曝を最小限に抑えながら、腫瘍が放射線源に最大限曝露されるように、癌の治療対象となる被験対象の身体への、好ましくは腫瘍そのものの内部への放射線源の挿入を含む。近接照射療法に使用可能な代表的な放射性同位元素には、リン32、コバルト60、パラジウム103、ルテニウム106、ヨウ素125、セシウム137、イリジウム192、キセノン133、ラジウム226、カリホルニウム252、または金198などがあるがこれらに限定されない。近接照射療法に有用な投与法ならびに装置および組成物は、Mazeron et al., Sem. Rad. Onc. 12: 95-108 (2002)、および米国特許第6,319,189号、第6,179,766号、第6,168,777号、第6,149,889号、および第5,611,767号に記載されている。
【0098】
放射線核種療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。一般に放射線核種療法は、癌細胞内に選択的に蓄積するか、または癌細胞の表面に結合する放射性同位元素の全身投与を含む。放射線核種の選択的な蓄積には、増殖速度の速い細胞中への放射線核種の取り込み、特別の標的化のない癌組織による放射線核種の蓄積の種類、または新生物に特異的な生体分子と放射線核種の結合を含むがこれらに限定されない、いくつかの機構が介在する。
【0099】
放射線核種療法に使用可能な代表的な放射性同位元素には、リン32、イットリウム90、ジスプロシウム165、インジウム111、ストロンチウム89、サマリウム153、レニウム186、ヨウ素131、ヨウ素125、ルテチウム177、ならびにビスマス213などがあるがこれらに限定されない。これらの放射性同位元素はいずれも、生体分子と結合して標的化の特異性をもたらす一方で、このような結合なしに、ヨウ素131、インジウム111、リン32、サマリウム153、およびレニウム186を全身投与することができる。当業者であれば、対象となる新生物表面に存在する細胞表面分子を元に、放射線核種療法における特定の新生物への標的化に使用可能な特定の生体分子を選択することができる。特定の細胞に対する特異性をもたらす生体分子の例は、参照により全体が本明細書に組み入れられる、Thomas, Cancer Biother. Radiopharm. 17: 71-82 (2002)の総説に記載されている。また、放射線核種療法に有用な投与法および組成物は、米国特許第6,426,400号、第6,358,194号、第5,766,571号に記載されている。
【0100】
本明細書で用いる「放射線療法」という用語は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意の放射線療法を意味するがこれらに限定されない。例えば放射線療法は、体外照射による放射線療法、温度療法、放射線手術、荷電粒子放射線療法、中性子放射線療法、または光力学療法の場合がある。
【0101】
体外照射による放射線療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。一般に外部照射による放射線療法は、被験対象の体内の一定体積に高エネルギービームを照射することで、対象体積内において細胞死を引き起こす段階を含む。照射体積は好ましくは、治療対象となる癌全体を含み、また好ましくは可能な限りわずかな健康な組織を含む。体外照射による放射線療法に有用な投与法ならびに装置および組成物は、米国特許第6,449,336号、第6,398,710号、第6,393,096号、第6,335,961号、第6,307,914号、第6,256,591号、第6,245,005号、第6,038,283号、第6,001,054号、第5,802,136号、第5,596,619号、ならびに第5,528,652号に記載されている。
【0102】
温度療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、用量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。ある態様では、温度療法は、凍結切除術(cryoablation)の場合がある。他の態様では、温度療法は温熱療法の場合がある。さらに他の態様では、温度療法は、腫瘍の温度を、温熱療法の場合より高く上昇させる療法の場合がある。
【0103】
凍結切除術は、新生物腫瘤を凍結して、細胞内および細胞外における氷晶の蓄積;細胞膜、タンパク質、および細胞小器官の破壊;ならびに高浸透圧環境の誘導に至らせることで細胞死を引き起こす段階を含む。凍結切除術に有用な方法および装置は、Murphy et al., Sem. Urol. Oncol. 19: 133-140 (2001)、ならびに米国特許第6,383,181号、第6,383,180号、第5,993,444号、第5,654,279号、第5,437,673号、および第5,147,355号に記載されている。
【0104】
温熱療法は典型的に、新生物腫瘤の温度を約42℃〜約44℃の範囲に上昇させる段階を含む。癌の温度は、この範囲以上にさらに上昇させることができるが、このような温度は、治療対象となる腫瘍内の細胞死の増加を引き起こさない一方で、周囲の健常組織の損傷度を高める恐れがある。腫瘍は、当業者に既知の任意の手段で温熱療法で加熱することができるが、これらに限定されない。例えば腫瘍は、マイクロ波、高強度集束超音波、強磁性熱源、局所電場、赤外線照射、ウェット型またはドライ型のラジオ波焼灼療法、レーザー光凝固術、レーザー組織内温度療法、および電気焼灼器によって加熱することができるが、これらの方法に限定されない。マイクロ波および電波は、導波管形アプリケータ、ホーン、スパイラル、カレントシート(current sheet)、およびコンパクトアプリケータによって発生させることができる。
【0105】
腫瘍の温度を上げるための他の方法、ならびに装置および組成物は、Wust et al., Lancet Oncol. 3: 487-97 (2002)の総説に記載されており、また米国特許第6,470,217号、第6,379,347号、第6,165,440号、第6,163,726号、第6,099,554号、第6,009,351号、第5,776,175号、第5,707,401号、第5,658,234号、第5,620,479号、第5,549,639号、ならびに第5,523,058号に記載されている。
【0106】
放射線手術は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。一般に放射線手術は、被験対象の体内の一定体積を、マニュアルで位置決めした放射線源に曝露させることで、対象体積内において細胞死を引き起こす段階を含む。照射体積は好ましくは、治療対象となる癌全体を含み、また好ましくは可能な限りわずかな健常組織を含む。典型的には、治療対象となる組織は最初に、従来の外科的手法で露出され、次に放射線源が対象体積に、外科医によってマニュアルで位置決めされる。あるいは放射線源は、例えば腹腔鏡を使用して照射対象組織の近傍に配置することができる。放射線手術に有用な方法および装置は、Valentini et al., Eur. J. Surg. Oncol. 28: 180-185 (2002)、ならびに米国特許第6,421,416号、第6,248,056号、および第5,547,454号に詳しく記載されている。
【0107】
荷電粒子放射線療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。ある態様では、荷電粒子放射線療法は、陽子ビーム放射線療法の場合がある。他の態様では、荷電粒子放射線療法は、ヘリウムイオン放射線療法の場合がある。一般に荷電粒子放射線療法は、被験対象の体内の一定体積に荷電粒子ビームを照射することで、対象体積内において細胞死を引き起こす段階を含む。照射体積は好ましくは、治療対象となる癌全体を含み、また好ましくは可能な限りわずかな健常組織を含む。荷電粒子放射線療法は、米国特許第5,668,371号に記載されている。
【0108】
中性子放射線療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。ある態様では、中性子放射線療法は、中性子捕捉療法の場合がある。このような態様では、中性子照射時に放射線を発し、また新生物腫瘤に選択的に蓄積する化合物が被験対象に投与される。次に、低エネルギーの中性子ビームを腫瘍に照射して化合物を活性化し、癌細胞を死滅させる崩壊生成物を放出させる。活性化される化合物の標的組織への選択的な蓄積は、上述した放射性核種の標的化に有用な任意の方法で、またはLaramore, Semin. Oncol. 24: 672-685 (1997)、および米国特許第6,400,796号、第5,877,165号、第5,872,107号、ならびに第5,653,957号に記載された方法で引き起こすことができる。
【0109】
他の態様では、中性子放射線療法は、高速中性子放射線療法の場合がある。一般に高速中性子放射線療法は、被験対象の体内の一定体積に中性子ビームを照射することで、対象体積内における細胞死を引き起こす段階を含む。
【0110】
光力学療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施することができるがこれらに限定されない。一般に光力学療法は、新生物腫瘤に選択的に蓄積して、新生物を光に対して感作させ、次に腫瘍を適切な波長の光に曝露させる光感受性物質を投与する段階を含む。このような曝露によって、光感受性物質は、例えば癌細胞を死滅させる、一重項酸素などの細胞毒性物質の産生を触媒する。光力学療法に有用な投与法ならびに装置および組成物は、Hopper, Cancel Oncol. 1: 212-219 (2000)、および米国特許第6,283,957号、第6,071,908号、第6,011,563号、第5,855,595号、第5,716,595号、ならびに第5,707,401号に記載されている。
【0111】
作用の任意の特定の理論に束縛することを意図しないが、活性ビタミンD化合物は、放射線療法に対する癌細胞の感受性を高めることが可能であり、また、このような感受性の亢進は、アポトーシスおよび/または細胞周期を調節する細胞機構の変化に起因すると考えられている。活性ビタミンD化合物の投与は、現行の放射線療法には反応しないであろう癌の治療または改善における放射線療法の応用性を高めるだけでなく、同応用性を拡大する可能性もある。さらに、細胞を治療に感受性とすることで、放射線療法に関連する副作用を抑える、低線量の放射線療法の使用が可能となる。
【0112】
腫瘍細胞を破壊する放射線療法は、外科手術の前または後、化学療法の前または後に、また時には化学療法中に行うことができる。放射線療法は、癌の症状を緩和するために、例えば疼痛を和らげるために、予防的な理由でも実施することができる。放射線療法で治療可能な腫瘍のなかには、完全には切除不可能な局所的な腫瘍や転移巣、および完全な切除が、受け入れられない機能上または美容上の損傷を引き起こすか、または受け入れられない外科的リスクに関連する腫瘍がある。
【0113】
癌の治療に使用される特定の放射線量、および投与法はいずれも、さまざまな因子に依存することを理解されたい。したがって、本発明の方法で使用可能な放射線量は、各状況の特定の要件によって決定される。線量は、腫瘍の大きさ、腫瘍の部位、患者の年齢および性別、照射頻度、他の腫瘍の存在、転移の有無などの因子に依存する。放射線療法の当業者であれば、Hall, E. J., Radiobiology for the Radiobiologist, 5th edition, Lippincott Williams & Wilkins Publishers, Philadelphia, PA, 2000; Gunderson, L. L. and Tepper J. E., eds., Clinical Radiation Oncology, Churchill Livingstone, London, England, 2000;およびGrosch, D. S., Biological Effects of Radiation, 2nd edition, Academic Press, San Francisco, CA, 1980を参照することで、任意の特定の腫瘍に対する線量および実施方法を容易に確認することができる。ある態様では、活性ビタミンD化合物の相加的または相乗的な効果のために、放射線治療薬および放射線療法を、当技術分野で周知の用量・線量より低い用量・線量で投与および実施することができる。
【0114】
本明細書に記載される他の治療用薬剤の投与量および投与頻度は、「治療的に有効である」という用語に含まれる。こうした薬剤の投与量および頻度はさらに典型的には、使用される治療用薬剤の種類、膵臓癌の重症度および種類、投与経路、ならびに患者の年齢、体重、反応、および病歴に依存して、各患者に特異的な因子に従って変動する。当業者であれば、このような因子を考慮することにより、また例えば、文献に報告されている投与量、またPhysician's Desk Reference (第56版、2002)に推奨されている投与量に従うことにより、適切な実施法を選択することができる。
【0115】
切除可能な癌を有する動物の場合、活性ビタミンD化合物を、手術前および/または手術後に投与することができる。同様に、化学療法剤および放射線治療薬または放射線治療法を、手術前および/または手術後に投与または実施することができる。
【0116】
化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療の投与または実施前、投与・実施中、投与・実施後における、活性ビタミンD化合物を用いる任意の治療期間を本発明では使用することができる。活性ビタミンD化合物を用いる際の正確な治療期間は、使用される活性ビタミンD化合物、膵臓癌の型、患者、および他の関連因子に応じて変動する。活性ビタミンD化合物は、化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療の投与または実施の前後に、12時間の短期、また3か月間の長期にわたって投与することができる。活性ビタミンDは、化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療の投与または実施の少なくとも1日前または後に、3か月間の長期にわたって、化学療法剤または放射線治療薬もしくは放射線治療の投与もしくは実施の前または後に投与することができる。ある態様では、本発明の方法は、活性ビタミンD化合物を、化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療の投与または実施の前または後に、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、または10日毎に1回、3日〜60日の期間にわたって投与する段階を含む。
【0117】
活性ビタミンD化合物の投与は、化学療法剤もしくは放射線治療薬の投与または放射線治療と同時に継続することができる。加えて、活性ビタミンD化合物の投与は、化学療法剤もしくは放射線治療薬の投与または放射線治療後にも継続することができる。
【0118】
本発明のある態様では、活性ビタミンD化合物を単独で、または化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療と併用して投与または実施する方法を少なくとも1回繰返して実施することができる。この方法は、治療の反応を達成または維持するために、必要に応じて数回(例えば1回〜約10回)繰返すことができる。方法の各反復に関して、活性ビタミンD化合物および化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療は、過去の回で使用された場合と同じか、または異なる場合がある。また投与される活性ビタミンD化合物の投与期間および投与様式は、反復毎に変動する場合がある。
【0119】
好ましい態様では、癌は、米国特許第6,087,350号および第6,559,139号に記載されている手順で併用化学療法によって治療される。この態様では、活性ビタミンD化合物は、過増殖疾患の治療用の他の薬剤(特に細胞毒性薬)と併用して投与される。好ましくは、活性ビタミンD化合物による過増殖細胞の前投与の後に細胞毒性薬による治療を行うことで、細胞毒性薬の有効性が高められる。例えば、活性ビタミンD化合物は、化学療法薬の1日前に投与することができる。
【0120】
本発明による治療対象となる可能性のある動物には、本発明の製剤の投与によって利益を得る可能性のある、あらゆる動物が含まれる。このような動物は、ヒト、ペット(イヌやネコなど)、ならびに家畜(ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)が含まれる。
【0121】
以下の実施例は説明目的であり、当業者に周知の本発明の方法および組成物を制限しない。通常、臨床療法の過程で遭遇する、当業者に明らかなさまざまな条件およびパラメータの他の適切な修正および変更は、本発明の趣旨および範囲内にある。
【0122】
実施例1
選択された成分に対するカルシトリオールの相対的な化学的適合性
この実施例では、いくつかの親油性成分、親水性成分、および界面活性物質成分に対するカルシトリオールの相対的な化学的適合性を、40℃および60℃の保存後における完全な状態で維持されたカルシトリオールの回収率(%)を測定することで評価した。カルシトリオール回収率は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による解析を元に決定した。得られた結果を表1に示す。
【0123】
(表1)特定の成分で製剤化されたカルシトリオールの回収率(%)
【0124】
この回収率のデータから、極めて適合性の高い成分は、親油性成分グループではMiglyol 812(BHTおよびBHAを含む場合または含まない場合)、Labrafac CC、およびCaptex 200であり、親水性グループではプロピレングリコールであり、界面活性物質グループでは、ビタミンE TPGSおよびGELUCIRE 44/14であることがわかる。
【0125】
実施例2
液体状および半固体状のカルシトリオール製剤の安定性
I.序論
この実施例では、活性型ビタミンD化合物カルシトリオールの安定性を、9種類の異なる製剤(4種類の液体状製剤、および5種類の半固体状製剤)を対象に測定した。
【0126】
II.カルシトリオール製剤の調製
A.液体状製剤
表2に記載された内容物を含む4種類の液体状カルシトリオール製剤(L1〜L4)を調製した。最終製剤は、液体状製剤1 gあたり0.208 mgのカルシトリオールを含む。
【0127】
(表2)液体状カルシトリオール製剤の組成
量はグラムで表記。
【0128】
B.半固体状製剤
表3に記載された内容物を含む5種類の半固体状カルシトリオール製剤(SS1〜SS5)を調製した。最終製剤は、半固体状製剤1 gあたり0.208 mgのカルシトリオールを含む。
【0129】
(表3)半固体状カルシトリオール製剤の組成
量はグラムで表記。
【0130】
C.液体状および半固体状のカルシトリオール製剤の作製法
1.溶媒の調製
表2と表3にそれぞれ記載された、100グラムの4種類の液体状カルシトリオール製剤(L1〜L4)、および5種類の半固体状カルシトリオール製剤(SS1〜SS5)量を以下の手順で調製した。
【0131】
記載された内容物(カルシトリオールを除く)を、適切なガラス容器内で混合し、均一になるまで混ぜた。ビタミンE TPGSおよびGELUCIRE 44/14を60℃で加熱してホモジナイズした後に、秤量して製剤に添加した。
【0132】
2.活性製剤の調製
半固体状溶媒を60℃以下で加熱してホモジナイズした。弱い光の下で、12±1 mgのカルシトリオールの重量を、スクリューキャップ付きの別のガラスボトル内で、各製剤について1本のボトルに入れて測定した(カルシトリオールは光感受性なので、カルシトリオール/カルシトリオール製剤を扱う際は、弱い光/赤色光を使用すべきである。正確な重量を0.1 mg単位まで測定した。カルシトリオールがボトル内に収まったら、直ちにボトルのキャップを締めた。次に、0.208 mg/gの濃度にするために必要な各溶媒の量を以下の公式から算出した:
Cw/0.208=溶媒の必要重量
上式で、Cw=カルシトリオールの重量(mg)、ならびに
0.208=カルシトリオールの最終濃度(mg/g)。
【0133】
最後に適量の各溶媒を、カルシトリオールを含む各ボトルに添加した。この製剤を、カルシトリオールを溶解させるために混合しながら加熱した(≦60℃)。
【0134】
III.カルシトリオール製剤の安定性
9種類のカルシトリオール製剤(L1〜L4およびSS1〜SS5)を、カルシトリオール成分の安定性に関して3通りの温度で解析した。この9種類の製剤の試料をそれぞれ25℃、40℃、および60℃の温度においた。全9種類の製剤について全3通りの温度に対応させた試料を、1週間後、2週間後、および3週間後にHPLCで解析した。また、60℃で行った実験に由来する試料を、9週後にHPLCで解析した。各時点で残存した当初カルシトリオール濃度のパーセントを、各試料について決定した。得られた結果を、表4(液体状製剤)および表5(半固体状製剤)に各試料について示す。
【0135】
(表4)液体状製剤の安定性
*時間ゼロにおける濃度に対する割合(%)
【0136】
(表5)半固体状製剤の安定性
*時間ゼロにおける濃度に対する割合(%)
【0137】
表4および表5に示すように、カルシトリオールは、解析した全製剤(液体および半固体)について分解がほとんどない、比較的安定な状態を維持していた。
【0138】
実施例3
カルシトリオール製剤の外観試験および紫外光/可視光吸収試験
カルシトリオール製剤L1およびSS3を調製後に試験を行い、室温で遮光保存した。表6に、製剤の調製に使用した内容物の量を示す。
【0139】
(表6)吸光度解析に使用したカルシトリオール製剤の組成
量はグラムで表記。
【0140】
これらの製剤は55℃に加温してから使用した。両製剤(液体#1と半固体状製剤#3)をボルテックスミキサーで十分混合時には、外観は透明な液体であった。各カルシトリオール製剤(約250 μL)を25 mL容のメスフラスコに添加した。正確な添加量は、液体#1が249.8 mgで、半固体状製剤#3が252.6 mgであった。ガラスと接触すると、半固体状製剤#3製剤は固化した。次に脱イオン水を、25 mLの印まで添加し、この溶液を均一になるまでボルテックスミキサーで混合した。この時点で外観を観察し、結果として得られた混合物の400 nmにおける吸光度を紫外/可視光分光法で決定した。脱イオン水をブランクとして用いて、400 nmにおける測定値を得た。各試料の測定を10分間かけて10回行った。得られた結果を表7にまとめる。いずれの製剤とも白色で不透明であった。
【0141】
(表7)各製剤の吸収値(400 nm)の読み値
【0142】
実施例4
液体状製剤および半固体状製剤の溶媒(カルシトリオールを含まない)から生成したエマルジョン液滴の径
この実施例では、エマルジョン液滴の平均径を、液体状(L1〜L4)および半固体状(SS1〜SS5)のエマルジョン前濃縮溶媒(カルシトリオールを含まない)を、酵素を含まない模擬胃液(SGF)で希釈した後に測定した。液滴の平均径は光散乱測定で決定した。前濃縮物および結果として得られたエマルジョンの外観を目視検査で判定して併せて記録した。得られた結果を表8にまとめる。
【0143】
(表8)エマルジョン前濃縮溶媒(カルシトリオールを含まない)から生成したエマルジョン液滴の径
*(Z平均をナノメートルで示す)
【0144】
以上の結果から、エマルジョン前濃縮製剤から生成した液滴(粒子)が、外観が不透明にもかかわらず、サブミクロンサイズの液滴であると結論される。
【0145】
実施例5
液体状および半固体状のカルシトリオール製剤から生成したエマルジョン液滴の径
この実施例では、液体#1(L1)および半固体状製剤#3(SS3)のエマルジョン前濃縮物を、酵素を含まない模擬胃液(SGF)で希釈した後に、エマルジョン液滴の平均径を測定した。この実施例は、カルシトリオールを、製剤1 gあたり0.2 mgのカルシトリオールを含む製剤を使用した。液滴の径は、光散乱測定で決定した。結果として得られたエマルジョンの外観を目視検査で判定して併せて記録した。得られた結果を表9にまとめる。
【0146】
(表9)カルシトリオールを含むエマルジョン前濃縮製剤から生成したエマルジョン液滴の径
*(Z平均をナノメートルで示す)
【0147】
実施例6
エマルジョン前濃縮物に由来するカルシトリオールのインビトロにおける分散
この実施例では、ゼラチンカプセル中のさまざまな製剤におけるカルシトリオールの分散の程度を決定した。サイズ2のゼラチンカプセル(各カプセルは0.2 mg カルシトリオール/g製剤を含む)中に250 mgのカルシトリオール製剤を含む1個のカプセルを、200 mLの、酵素を含まない模擬胃液(SGF)に37℃で添加し、パドルを用いて200 RPMで混合した。次に試料を5 μmのフィルターで濾過し、カルシトリオール濃度をHPLCで30分、60分、90分、および120分の時点で解析した。得られた結果を表10に示す。
【0148】
(表10)SGF中への分散と、5 μmのフィルターによる濾過後に濾液中に得られたカルシトリオールのパーセント
#比較用製剤は、Miglyol 812中に溶解した0.2 mg/gのカルシトリオールを、0.05% BHAおよび0.05% BHTとともに含むものとした。この製剤は、Roche Laboratories社から入手可能なROCALTROL製剤と同等である。
【0149】
この実施例からわかるように、模擬胃液中における、L1製剤またはSS3製剤のいずれかを含むカプセルからのカルシトリオールの分散は、比較用製剤(Roche Laboratories社から入手可能なROCALTROL製剤の同等品)を含むカプセルについて観察される結果と比較して、かなり規模が大きかった。
【0150】
実施例7
イヌにおけるカルシトリオールの血漿濃度および薬物動態
イヌを対象とした薬物動態試験で、ROCALTROL、液体状製剤(液体#1)、および半固体状製剤(半固体状製剤#3)の3種類の異なる製剤を用いた1.0 μg/kgの投与後の血漿カルシトリオール濃度を比較した。4頭のイヌに1.0 μg/kgのROCALTROL、半固体状製剤、または液体状製剤を経口投与した。複数種の製剤をイヌに使用する場合は、各製剤の投与間に最短7日間のウォッシュアウト期間を設けた。
【0151】
カルシトリオール濃度の解析を目的として、血液試料を、投与前と、投与の0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、24時間後、36時間後、および48時間に採取した。臨床化学試験用の血液試料を、ROCALTROL群に関して、投与前と、投与の24時間後と48時間後に得た。また試料を、半固体状製剤および液体状製剤に関して、投与前と、投与の4時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、および120時間後に得た。カルシトリオールに関して、試料をラジオイムノアッセイ法で解析し、薬物動態解析を行った。
【0152】
3種類の製剤について、血漿カルシトリオール濃度の経時的変化を図1に図示した。
【0153】
1.0 μg/kgの共通用量における、3種類の異なる製剤の1種類としてのカルシトリオールの薬物動態を表11〜14にまとめた。
【0154】
(表11)イヌにおけるカルシトリオール関連パラメータの要約
aメジアンおよび範囲で表記。
bジャックナイフ分散に基づく調和平均および擬似SDで表記。
【0155】
(表12)ROCALTROL(1 μg/kg)の単回投与後のイヌにおけるカルシトリオールの血漿濃度(pg/mL)および薬物動態パラメータ
aメジアンおよび範囲で表記。
bジャックナイフ分散に基づく調和平均および擬似SDで表記。
太字は、λの計算に使用。
【0156】
(表13)半固体状製剤#3(1 μg/kg)の単回投与後のイヌにおけるカルシトリオールの血漿濃度(pg/mL)および薬物動態パラメータ
aメジアンおよび範囲で表記。
bジャックナイフ分散に基づく調和平均および擬似SDで表記。
太字は、λの計算に使用。
【0157】
(表14)液体#1製剤(1 μg/kg)の単回投与後のイヌにおけるカルシトリオールの血漿濃度(pg/mL)および薬物動態パラメータ
aメジアンおよび範囲で表記。
bジャックナイフ分散に基づく調和平均および擬似SDで表記。
太字は、λの計算に使用。
【0158】
この試験の結果から、これらの本発明の特定の製剤とROCALTROLとの間の薬物動態に、以下に示すように、ある程度の差および類似性があることがわかる:
・Cmaxは、ROCALTROL製剤の場合と比較して、液体状および半固体状の製剤で約3倍高かった。
・Cmaxには、ROCALTROL製剤の場合(2〜4時間)と比較して、液体状および半固体状の製剤では、短時間(1〜2時間)で達した。
・全体的な全身曝露(AUC0-4)は3種類の製剤で同等であったが、最初の24〜48時間における全身曝露は、ROCALTROLの場合と比較して、液体状および半固体状の製剤では大きかった。
【0159】
前述の結果から、液体状製剤#1が最高のCmaxと最大のAUCカルシトリオール値を示し、すぐ次に半固体状製剤#3が続くことがわかる。ROCALTROL製剤はCmaxおよびAUC値が最も低かった。液体状製剤#1および半固体状製剤#3は、最初の12時間では、かなり速く吸収され、高い血漿濃度がより高く、またより速やかな消失速度を示すようである。
【0160】
実施例8
用量増加時における半固体状製剤#3の薬物動態
この試験では、経口投与量を増加した時の半固体状製剤の薬物動態をイヌを対象に調べた。3頭の雄と3頭の雌のビーグル犬に、0.5 g/kg(全6頭)、0.1 μg/kg(雄1頭と雌1頭)、5.0 μg/kg(雄2頭と雌2頭)、ならびに10.0 μg/kg(全てのイヌ)を単回経口投与した。10.0 μg/kgの投与後に、雄と雌の各2頭を安楽死させた。残りの雄と雌の個体については試験を継続し、30.0 μg/kgおよび100.0 μg/kgを投与した。各投与後に、対象個体には6日間の回復期間を設けた。
【0161】
血液試料(約1 mL)を各個体から、投与前と、投与の0時間後、2時間後(0.5 μg/kgの投与を除くすべて)、4時間後、8時間後、24時間後、48時間後、および96時間後に採取した。試料を対象に、カルシトリオールの解析をラジオイムノアッセイ法で行い、また薬物動態解析を行った。カルシトリオールの血漿濃度を、雄と雌について図2Aと図2Bに図示する。
【0162】
半固体状製剤#3の投与時には、最高血漿濃度は通常、2時間後の採取時で認められた。0.1 μg/kg以上の投与時の血漿濃度は、24〜96時間の期間と比較して、最初の8時間に、より速やかに低下する傾向が認められた。
【0163】
0.1 μg/kgの最低用量において、カルシトリオールの血漿濃度は、24時間後に定量限界未満に低下した。0.5 μg/kg、またはそれ以上の場合、測定可能な濃度のカルシトリオールが、96時間後の採取時に維持されていた。雄および雌の個体間に何ら顕著な差はみられないようであった。
【0164】
0.1〜100.0 μg/kgの投与時における半固体状製剤#3の薬物動態パラメータを表15にまとめる。
【0165】
(表15)カルシトリオール(半固体状製剤#3)の用量増量時におけるカルシトリオールの薬物動態
【0166】
以上の薬物動態の結果から以下の事項が明らかとなった:
・カルシトリオールの全身曝露は、0.1〜100.0 μg/kgの試験用量の全体を通して、かなりの直線性を示すようであった。吸収の飽和は認められなかった
・カルシトリオールの半減期は用量依存性を示すようであった。半減期が24時間を超える製剤は、高用量のパルス投与にはそれほど適していない。
・半固体状製剤#3の週1回の投与(5.0 μg/kg以上)では、血漿中にある程度の蓄積が認められた。蓄積は、0.1 μg/kgおよび0.5 μg/kgの低用量では一貫していなかった。
【0167】
実施例9
イヌを対象とした半固体状製剤#3の28日間にわたる経口毒性試験
この試験では、半固体状製剤#3の28日間にわたる反復投与毒性試験をイヌを対象に実施し、週に1回の経口カプセル投与後におけるカルシトリオールの薬物動態の評価を行った。半固体状製剤#3、または対照製カプセル剤を、試験日0日目、7日目、14日目、21日目、および28日目に投与した。12頭のイヌ(雄6頭、雌6頭)に溶媒対照(第1群)を投与し、8頭のイヌ(雄4頭、雌4頭)に0.1 μg/kgの半固体状製剤#3(第2群)を投与し、また8頭のイヌ(雄4頭、雌4頭)に1.0 μg/kgの半固体状製剤#3(第3群)を投与した。12頭のイヌ(雄6頭、雌6頭)に30.0 μg/kgの半固体状製剤#3を0日目に投与した(第4群)。0日目における最初の30 μg/kgの投与後に観察された臨床反応が重度であったため、この群における用量レベルを10 μg/kg(雄を対象に7日目、14日目、21日目、および28日目)、または5 μg/kg(雌を対象に7日目、14日目、21日目、および28日目)に減じた。血液試料を各個体から、投与前と、試験日0日目(最初の投与)および21日目(週1回の投与の4回目)の投与の1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、24時間後、および48時間後に採取した。全個体を、試験開始から29日目に屠殺した。
【0168】
第2〜第4群における血漿中のカルシトリオールの薬物動態の結果を表16にまとめる。
【0169】
(表16)イヌを対象とした半固体状製剤#3の週1回の投与後におけるカルシトリオールの平均毒物動態パラメータ
aTmaxの値はこのパラメータについてはメジアン値である。他のすべてのパラメータは平均値を示す。
b半固体状製剤#3の用量を、試験開始後の7日目から減少させた。
溶媒対照を投与したイヌ(第1群)で得られたデータについては、薬物動態解析を行わなかった。
【0170】
図3Aおよび図3Bは、雄(図3A)および雌(図3B)のビーグル犬を対象とした、半固体状製剤#3の経口カプセル投与後の試験日0日目および21日目における、カルシトリオールに関する、補正後の血漿濃度・時間曲線を示す。0日目の0時間の時点におけるカルシトリオール値を、すべての時点の値から差し引くことで、内因性(ベースライン)の血漿カルシトリオールを補正した。
【0171】
試験の結果から、以下の事項が明らかとなった:
・半固体状製剤#3の経口カプセル投与後に、カルシトリオールの血漿濃度は、かなり迅速に上昇し、2時間以内に最高血漿濃度に達した。
・カルシトリオールの血漿濃度は、後半(24〜48時間)と比較して、投与直後の8時間で、より速やかな速度で低下した。これは、カルシトリオールが血管外空間に再分布後に、カルシトリオールが緩やかに血管内空間へ再放出したことを示していると考えられる。この結果は、低用量レベルより高用量レベルで明瞭であった。
・投与の24時間後の時点で、カルシトリオールの血漿濃度は、0.1 μg/kgの低用量においてベースライン近くの値に低下していた。しかし、高用量のカルシトリオールでは、用量関連性のカルシトリオール残存濃度が、最終採取時点(48時間)では依然として明らかであったが、すべての値は、投与前(ベースライン)の値に、投与から1週間以内に戻った。
・CmaxおよびAUCの値は、検討用量(0.1〜30.0 μg/kg)の全体を通して、用量に対してかなり比例した。
・有害作用が認められなかった濃度である低用量(0.1 μg/kg)におけるAUC0-24の値は1840.6〜3283.0 pg・hr/mLであった。
・最大耐量であった中用量(1.0 μg/kg)におけるAUC0〜24の値は12,947.3〜23,259.7 pg・hr/mLであった。
・体重減少と中程度の毒性徴候に関連した用量におけるAUC0-24の値は46,878.1 pg・hr/mL(5.0 μg/kg;雌)〜173,597.2 pg・hr/mL(10.0 μg/kg;雄)であった。
・死亡例に関連した用量(30.0 μg/kg)におけるAUC0-24の値は323,573.1〜496,044.6 pg・hr/mLであった。
・どの薬物動態パラメータでも、一貫した性差は認められなかった。
【0172】
全体的に個体は、CmaxおよびAUCの値が1.0 μg/kgの雌への投与(雄では明らかでない)において21日目より0日目が高値であるなどの数例の例外を除いて、最初の投与と週1回の反復投与後にカルシトリオールを同様に処理するようであった。
【0173】
実施例10
3種類の異なる製剤の急性毒性試験
実施例7に記載された試験では、臨床化学パラメータを含む複数の生存中パラメータを追跡して、カルシトリオール製剤の毒性の評価が行われた。血液試料の解析を、カルシウム、リン、血液尿素窒素(BUN)、グルコース、アルブミン、ビリルビン(総)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(AP)、およびクレアチニンに関して行った。
【0174】
臨床毒性は、3種類の製剤のいずれかを投与したどの個体でも認められなかった。
【0175】
高カルシウム血症が、全3種類の製剤の1.0 μg/kgの投与後に認められた。3種類の異なる製剤による血清カルシウム値の群の平均および個々の範囲を表17に示す。
【0176】
(表17)血清カルシウム濃度の群平均(mg/dL)
a既存範囲(historical range)
b既存平均(historical mean)
*既存範囲から外れた平均
NA=データなし(血清試料を非採取)
【0177】
カルシウム値の上昇に加えて、ALT、AST、BUN、およびクレアチニン値の上昇がすべての群で認められた。
【0178】
要約すると、この試験の結果から、以下の事項が明らかとなった:
・投与に関連した臨床徴候は、投与された薬剤の種類(ROCALTROL、液体状または半固体状)を問わず、どの個体でも明らかではなかった。
・1.0 μg/kg PO投与時の高カルシウム血症は、3種類すべての製剤投与時に認められた。
・高カルシウム血症の経時的変化は、全3種類の製剤について48時間後まで同等であり、ROCALTROL群の採取は48時間以降は延長しなかった。
・高カルシウム血症の重症度は、3種類の製剤で同等であり、最も高い血清カルシウム(17.0 mg/dL)は、液体状製剤を投与した個体で24時間後の時点で認められた。
・ALT、AST、BUN、およびクレアチニンの平均値が、全投与群において1つまたは複数の時点において既存範囲(historical range)外で認められた。
・BUNおよびクレアチニンの上昇は、液体状製剤投与群または半固体状製剤投与群で大きかった。対応する対照群が存在しないため、この結果の有意性は不明である。
【0179】
実施例11
急性最大耐量試験
実施例8に記載された試験では、半固体状製剤#3による急性毒性および高カルシウム血症の作用の評価も行い、最大耐量を推定し、また将来の試験のための用量選択用のデータを得た。
【0180】
カルシウム値は、雄(図4A)および雌(図4B)の全用量レベルにおいて用量相関的に上昇した。0.001 μg/kgおよび1.0 μg/kgの用量の血清カルシウムのデータを、実施例10に記載された試験で雄の個体で得て、データを完全なものとするために、ここで組み入れた。
【0181】
要約すると、0.1 μg/kg、0.5 μg/kg、5.0 μg/kg、10.0 μg/kg、30.0 μg/kg、および100.0 μg/kgの量の半固体状製剤#3を、カプセル剤として雄および雌のビーグル犬に経口投与した結果、以下の事項が明らかとなった:
・用量依存性の高カルシウム血症が、最も一般的な臨床検査異常であった。
・クレアチニン、尿素窒素、コレステロール、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、および好中球の増加、ならびにリンパ球の減少が、5.0 μg/kg、またはそれ以上の用量で認められた。
・体重および摂食量は、30.0 μg/kgおよび100.0 μg/kgの用量の投与後に顕著に減少した。100.0 μg/kgの投与後には、顕著に痩せた外見と、活動度の明らかな低下が個体に認められた。
【0182】
以上の結果に基づき、イヌにおける半固体状製剤#3の最大耐量は5.0 μg/kgと推定された。
【0183】
実施例12
28日間の反復投与毒性試験
実施例9に記載された試験では、イヌへの7日毎の28日間にわたる経口(カプセル)投与時における半固体状製剤#3製剤による潜在的な毒性に関する個体の評価も行った。試験には、全個体を対象とした、臨床徴候、体重、摂食、薬物動態、臨床病理(生化学、血液病学的検査、凝固、および尿検査を含む)の評価、眼、心臓、全体的な死体解剖、臓器重量、および全項目の病理組織像の評価を含めた。試験デザインを表18にまとめる。
【0184】
(表18)イヌを対象とした28日間にわたる反復投与試験の試験デザイン
*試験薬剤(カルシトリオール、半固体状製剤#3)は、1 gあたり0.1 mgのカルシトリオールを含む製剤である。
**第2週に用量を雄では10 μg/kgに、雌では5 μg/kgに減じた。生存している全個体を29日目に安楽死させた。
【0185】
第4群の4頭(雄1頭と雌3頭)は、試験開始から3日以内に死亡したか、または安楽死させた。7日目における用量レベルの減少後に死亡例はなかった。また第1群、第2群、または第3群に死亡例はなかった。
【0186】
死亡した第4群の個体のうち、死亡に先立つ最も注目に値する臨床的異常には主に、赤色の吐瀉物(red vomitus)、排便の減少/喪失、血色の軟便、赤色の鼻汁、浅く速い呼吸、活動低下、および横臥位などがあった。
【0187】
用量関連性の体重減少、体重増加の減少、および摂食量の減少が、第3群と第4群の個体で認められた。具体的には、第3群の個体は対照群より約11〜12%低く、第4群の個体は対照群より17〜24%低かった。体重増加または摂食に対する作用は、第2群の個体では明瞭には認められなかった。
【0188】
第4群の個体で29日目に複数のRBCおよびWBCのパラメータが上昇する傾向が認められた。また、毒物学的に有意な血液学的異常は、第2群および第3群の個体では明瞭には認められなかった。
【0189】
用量依存性の高カルシウム血症が第3群と第4群の個体に認められた。カルシウム値は、投与後6時間まで上昇し、投与後24時間までに最大となり、投与後の48時間および96時間の時点で次第に低下した。第3群と第4群の個体に認められた他の臨床化学的異常には、血清タンパク質やコレステロール量の増加、および腎機能パラメータの上昇、また電解質および尿比重の低下などがあった。毒物学的に有意な臨床化学的異常、または血清カルシウムの顕著な増加は、第2群の個体では認められなかった。
【0190】
投与に関連した変化は、眼組織で試験日22/23には認められず、また投与に関連した変化は、この試験で得られたECGおよび血圧のデータで認められなかった。
【0191】
死亡した、または安楽死させた第4群の個体、ならびに消化器系および関連臓器に病変のある同群の個体でみられた、全体的な死体解剖時の最も著明な異常は以下の通りであった:暗赤色の網、赤色〜暗赤色の粘膜、小腸および胃における赤色の体液、食道および大腸における赤色〜暗赤色の粘膜、胆嚢の着色および肥厚化、心臓の血栓、肺における暗赤色およびまだらの領域、赤色〜暗赤色の膵臓、暗赤色の甲状腺、膀胱の肥厚化、および青白色の脾臓。全体的な異常は第3群の個体で、それほど重度ではなかった。第2群の個体では、顕著な全体的な異常は認められなかった。
【0192】
主な組織病理学的異常は、用量関連性の慢性間質性腎炎であった。これは、第3群の個体では軽度〜中等度であり、第4群の個体では中等度〜重度であった。これらの個体に認められた他の顕微鏡的所見は、慢性間質性腎炎に起因するものと考えられ、さまざまな臓器/組織の石灰化などが含まれた。第2群の個体では、顕微鏡的病変は認められなかった。
【0193】
血清カルシウムの最高値は通常、投与後の24時間以内に認められ、次回の投与前採取までの間にベースライン値に戻った。血漿カルシトリオールと比較した、血清カルシウムに関するデータの一部(21日目の雄)を図5A〜5Cに示す。これらのデータから、カルシトリオールの最高血漿濃度が通常、カルシウムが最大血清濃度に達する十分前にみられることがわかる。
【0194】
要約すると、半固体状製剤#3をイヌに、雄および雌のビーグル犬に、30.0 μg/kgの最初の投与後、7日毎に0 μg/kg、1.0 μg/kg、および5.0 μg/kg(雌)、または10.0 μg/kg(雄)の用量で経口投与したこの試験では、以下の事項が明らかとなった:
・有害作用が観察されなかったレベルは0.1 μg/kgであった。最大耐量は1.0 μg/kgであった。30 μg/kgで死亡例が認められた。
・消化器系および関連臓器における用量関連病変、体重増加の減少、および摂食量の減少が、第3群および第4群で認められた。
・用量関連性の慢性間質性腎炎が、第3群および第4群で認められた。
【0195】
実施例13
ヒトを対象とした薬物動態試験
ヒトを対象とした半固体状製剤#3の薬物動態を臨床試験で評価した。この試験では、最大90 μgのカルシトリオールの用量で、半固体状製剤#3を患者に投与した。薬物動態試験の中間結果を以下に述べる。
【0196】
血液試料を、投与前と、半固体状製剤#3の最初の投与後の0.5時間、1.0時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、および72時間の時点で採取した。カルシトリオール値は、市販のラジオイムノアッセイ法で解析した(希釈の完全性については検証は限定的)。
【0197】
平均血漿濃度・時間曲線を各群についてプロットした(図6)。非区画(non-compartmental)薬物動態パラメータを各被験者について計算した後に平均化した(表19)。ベースラインのカルシトリオール値を投与後の値から差し引き、内因性カルシトリオールについて補正を行った。
【0198】
(表19)用量群別の半固体状製剤#3の薬物動態パラメータ
*ジャックナイフ分散に基づく調和平均;**n=1;***n=2
【0199】
以上のデータから、半固体状製剤#3の薬物動態が直線的で推定可能なことがわかる。吸収が飽和することを示す証拠は得られなかった。
【0200】
実施例14
半固体状製剤#3の安全性試験の結果
ヒトにおける半固体状製剤#3の安全性を臨床試験で評価した。2002年5月8日の時点で12人の患者が、この試験で半固体状製剤#3の投与を受けた。内訳は、第1群(15 μg)が3人、第2群(30 μg)が3人、また第3群(60 μg)が6人であった。最初の9人の患者で得られた薬物動態の中間結果について以下に説明する。
【0201】
死亡例はなかった。34件の有害事象が9人中8人の患者で認められた。34件の有害事象のうち20件が、半固体状製剤#3との関連性がある可能性があると考えられた。1件の重篤な有害事象が第3群で認められ、これは無関係であると治験担当医によって考えられた。この患者は、一過性のグレード1の発熱を1日目に示し、入院期間が延長された。試験薬に関連すると考えられたグレード2またはグレード3の有害事象を表20に挙げる。
【0202】
(表20)試験薬に関連すると考えられたグレード2またはグレード3の有害事象
【0203】
半固体状製剤#3を用いた第1相試験の中間結果から、以下の事項が明らかとなった:
・半固体状製剤#3の最大耐量は第1相試験では決定されなかった。第3群(60 μg)の別の患者の評価が進行中である。
・半固体状製剤#3の薬物動態は、当初の3つの用量群全体で直線的で推定可能であるようであった。
【0204】
実施例15
追加的な組成物
経口投与用の硬ゼラチンカプセル中への半固体#3の調製時に、カプセルから内容物の漏れが認められた。さまざまな親油相成分および界面活性物質、ならびにさまざまなパーセンテージの各成分を含む新しい組成物を検討して、この問題の解決につながると思われる組成物を同定した。このような組成物を表21に挙げる。
【0205】
(表21)追加的な検討対象組成物
【0206】
親油相成分以外の複数の界面活性物質を含む他の組成物も検討した。組成物は、ビタミンE TPGSと、Gelucire 44/14またはGelucire 50/13のいずれかを1:1の組み合わせとした。
【0207】
漏れに耐性を示す組成物が同定された。
【0208】
実施例16
安定な単位剤形
カルシトリオールの剤形を調製して得られた組成物を表22に示す。ビタミンE TPGSを約50℃に加熱し、MIGLYOL 812と適切な比で混合した。BHAおよびBHTを各剤形に添加し、最終調製物中における割合をそれぞれ0.35%(w/w)とした。
【0209】
(表22)カルシトリオールの剤形
【0210】
製剤の調製後に、製剤2〜4を約50℃に加熱し、カルシトリオールと混合して、0.1μgカルシトリオール/mg全製剤を得た。次に、カルシトリオールを含む製剤を25 mL容のメスフラスコに添加し(約250μL)、脱イオン水を25 mLの目盛りまで加えた。次に同溶液をボルテックスミキサーで攪拌し、混合直後と、混合後の最長10分間まで、400 nmにおける各剤形の吸光度(初期)を測定した。表23に示すように、全3種類の剤形について、水の混合時に乳白色の溶液が得られた。剤形4については、10分後の時点において400 nmにおける吸光度に観察可能な変化が見られず、安定な懸濁物を生成したように見受けられた。
【0211】
(表23)水に懸濁した製剤の吸光度
【0212】
カルシトリオールの製剤をさらに評価するために、溶解性試験を実施して、各製剤に溶解するカルシトリオールの量を評価した。0.1〜0.6μgカルシトリオール/mg製剤のカルシトリオール濃度を、製剤を50℃に加熱後に適切な重量のカルシトリオールを添加することで調製した。次に同製剤を室温まで冷却し、不溶性のカルシトリオールの存在を光学顕微鏡で確認した(必要に応じて偏光を使用)。各製剤について、カルシトリオールは、検討した最高濃度(0.6μgカルシトリオール/mg製剤)において可溶性であった。
【0213】
進行中の第2相ヒト臨床試験では、45μgのカルシトリオール用量が使用されている。この投与量のカプセルを作製するために、0.2μgカルシトリオール/mg製剤と、各0.35%(w/w)のBHAおよびBHTの各製剤を調製した。バルクの製剤混合物をサイズ3の硬ゼラチンカプセルに225 mgの重量(カルシトリオールとして45μg)となるように充填した。次に同カプセルの5℃、25℃/60%相対湿度(RH)、30℃/65% RH、および40℃/75% RHにおける安定性を解析した。適切な時点で、安定性試料を対象に、完全なカルシトリオールの含量およびカプセルの溶解を解析した。カプセルのカルシトリオール含量を、3個の開いたカプセルを5 mLのメタノールに溶解し、解析まで5℃で維持することで決定した。次に、溶解した試料を逆相HPLCで解析した。Phemonex Hypersil BDS C18カラム(30℃)を、アセトニトリル勾配(55%アセトニトリル〜95%アセトニトリル;溶媒は水)で使用した(溶出時の流速は1.0 mL/分)。ピークが265 nmで検出され、25μLの試料を各実験用に注入した。試料のピーク面積を標準と比較することで、カルシトリオール量を算出した(表24)。1個のカプセルを、0.5%ドデシル硫酸ナトリウムを含む50 mLの脱イオン水を入れた6つの低容量溶解試験用容器のそれぞれに収容して溶解試験を行った。試料を75 rpmで37℃で混合した30分後、60分後、および90分後に採取した。100μLの試料を、30℃で1 mL/分で操作したBetasil C18カラム(移動相は50:40:10のアセトニトリル:水:テトラヒドロフラン)に注入することで、試料のカルシトリオール含量を決定した(ピーク検出波長265 nm)。6個のカプセルを対象とした90分の溶解試験の結果の平均値を得た(表25)。
【0214】
(表24)硬ゼラチンカプセル中におけるカルシトリオール製剤の化学的安定性(1カプセル当たりの総重量225 mg、カルシトリオールは45μg)
a.アッセイ法の結果は、1カプセル当たり45μgの含量に基づく期待値に対するカルシトリオールの割合(%)を示す。値は、カルシトリオールの活性異性体であるプレカルシトリオールを含む。
【0215】
(表25)硬ゼラチンカプセル中におけるカルシトリオール製剤の物理的安定性(1カプセル当たりの総重量225 mg、カルシトリオールは45μg)
a.記載の手順でカプセルの溶解を行い、カルシトリオールの割合(%)を、1カプセル当たり45μgのカルシトリオールの標準量および予想含量を元に算出する。活性異性体であるプレカルシトリオールは、溶解したカルシトリオールの割合(%)の計算に含まれない。報告値は90分時点の試料についての値。
【0216】
化学的安定性試験の結果から、表24に示すように、MIGLYOL 812含量の減少と、これに伴うビタミンE TPGS含量の増加が、完全なカルシトリオールの回収率の促進につながることがわかった。剤形4(50:50 MIGLYOL 812/ビタミンE TPGS)が、化学的に最も安定な剤形であり、25℃/60% RHで3か月後の時点における完全なカルシトリオールの回収率は、わずかに低下しただけであり、室温での保存が可能となる。
【0217】
剤形の物理的安定性は、各安定性条件での保存後におけるカプセルの溶解性によって評価した。化学的安定性に関しては、MIGLYOL 812含量の減少とビタミンE TPGS含量の増加は、製剤の溶解性を改善した(表25)。剤形4(50:50 MIGLYOL 812/ビタミンE TPGS)が、室温保存で適切な安定性を示し、最良の溶解性を示した。
【0218】
実施例17
剤形4の薬物動態
実施例16における剤形4(#4)の薬物動態学的特性を、半固体#3(SS3)と比較する実験を行った。カルシトリオールを#4剤形およびSS3剤形中に調製し、1カプセル当たり4.5μgのカルシトリオールを含むカプセルとして製剤化した。1個のカプセルを20頭の雄のビーグル犬に経口投与した(用量は約0.5μg/kg体重)。イヌの半数には1日目に#4カプセルを、7日目にSS3カプセルを与えた。残る10頭には、1日目にSS3カプセルを、7日目に#4カプセルを与えた。各投与の60分前、40分前、および20分前に、また各投与の0.5時間後、1時間後、1.5時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、および96時間後に血液を採取した。血液試料中のカルシトリオールレベルの薬物動態学的解析を行った。結果を表26に示す。
【0219】
(表26)SS3剤形および#4剤形中のカルシトリオールの薬物動態の比較
【0220】
データからわかるように、#4剤形およびSS3剤形は極めて似た薬物動態を示すので、生物学的に同等である。
【0221】
本発明について十分説明したが、本発明が、広範囲かつ等価な条件、製剤、および他のパラメータの範囲で、本発明の範囲または本発明の任意の態様に影響することなく実施可能なことが当業者には理解される。本明細書に引用された、すべての特許、特許出願、および刊行物は、全体が参照として本明細書に完全に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】イヌにおける、カルシトリオール(1 μg/kg)の3種類の異なる製剤の投与後の時間に対するカルシトリオールの平均血漿濃度を示すグラフ図である。
【図2】図2Aおよび2Bは、雄(図2A)および雌(図2B)のイヌへの半固体状製剤#3の用量増加時におけるカルシトリオールの平均血漿濃度・時間曲線を示すグラフ図である。
【図3】図3Aおよび3Bは、半固体状製剤#3投与後における、雄(図3A)および雌(図3B)のイヌにおけるカルシトリオールの血漿濃度・時間曲線を示すグラフ図である。
【図4】図4Aおよび4Bは、雄(図4A)および雄(図4B)のイヌへの半固体状製剤#3の用量増加時における平均血清カルシウムを示すグラフ図である。
【図5】図5A〜5Cは、雄イヌへの半固体状製剤#3の投与後における血漿カルシトリオールおよび血清カルシウムのデータを示すグラフ図である。
【図6】半固体状製剤#3の投与後におけるヒト用量群別のカルシトリオールの平均血漿濃度を示すグラフ図である。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、活性型ビタミンD化合物を含む新規の薬学的組成物であって、エマルジョン前濃縮物(emulsion pre-concentrates)である薬学的組成物に関する。本発明は、エマルジョン、およびエマルジョン前濃縮物を水溶液で希釈することで得られるサブミクロン液滴エマルジョンにも関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
ビタミンDは、カルシウム恒常性の正の調節因子として不可欠な脂溶性ビタミンである(Harrison's Principles of Internal Medicine:Part Eleven、「Disorders of Bone and Mineral Metabolism」、Chapter 335、pp.1860〜1865、E. Braunwaldら(編)、McGraw-Hill、New York(1987)を参照)。ビタミンDの活性型は、カルシトリオールとしても知られる1α,25-ジヒドロキシビタミンD3である。活性型ビタミンD化合物に対する特異的な核受容体は、カルシウム恒常性に関与しない多様な臓器の細胞で発見されている(Millerら、Cencer Res. 52:515-520(1992))。カルシウム恒常性に影響を及ぼすことに加えて、活性型ビタミンD化合物は、骨形成、免疫応答の調節、脾臓B細胞によるインスリン分泌過程の調節、筋肉細胞の機能、ならびに上皮組織および造血組織の分化および成長と関連づけられている。
【0003】
また、癌の治療における活性型ビタミンD化合物の有用性を示す、いくつかの報告がある。例えば、一部のビタミンD化合物および類似体が、悪性細胞(具体的には白血病細胞)の非悪性マクロファージ(単球)への分化を誘導することによる強力な抗白血病活性を有し、かつ白血病の治療に有用であることが報告されている(Sudaら、米国特許第4,391,802号;Partridgeら、米国特許第4,594,340号)。カルシトリオールおよび他のビタミンD3類似体の抗増殖作用および分化作用は前立腺癌の治療についても報告されている(Bishopら、米国特許第5,795,882号)。活性型ビタミンD化合物は、皮膚癌(Chidaら、Cancer Research 45:5426-5430(1985))、大腸癌(Dismanら、Cancer Research 47:21-25(1987))、および肺癌(Satoら、Tohoku J.Exp.Med. 138:445-446(1982))の治療にも関連づけられている。活性型ビタミンD化合物の治療用途が重要な役割を果たすことを示唆する他の報告は、Rodriguezら、米国特許第6,034,079号にまとめられている。
【0004】
活性型ビタミンD化合物の投与は実質的な治療上の利益をもたらす可能性があるが、このような化合物を使用した癌および他の疾患の治療は、これらの化合物がカルシウム代謝に影響を及ぼすために制限されている。抗増殖剤としての効果的な使用のためにインビボで必要とされるレベルでは、活性型ビタミンD化合物は、固有のカルシウム血症作用によって、著しく高値で危険性を秘めた血中カルシウム濃度を招く場合がある。すなわち、抗増殖剤としてのカルシトリオールおよび他の活性型ビタミンD化合物の臨床使用は、高カルシウム血症のリスクをふまえて除外されているか、または極めて限られている。
【0005】
全身性の高カルシウム血症の問題が、重度の高カルシウム血症の発症を避けつつ抗増殖作用が認められるような、十分な用量の活性型ビタミンD化合物の「パルス投与」によって克服可能であることが報告されている(米国特許第6,521,608号)。第6,521,608号によれば、活性型ビタミンD化合物は、3日に1回以下、例えば週に1回の少なくとも0.12 μg/kg/日(体重70 kgの場合、8.4 μg)の用量で投与可能である。第6,521,608号に記載されたパルス投与法に使用される薬学的組成物は、5〜100 μgの活性型ビタミンD化合物を含み、経口、静脈内、筋肉内、局所、経皮、舌下、経鼻、腫瘍内投与の剤形、または他の調製物の状態で投与可能である。
【0006】
ROCALTROLは、Roche Laboratories社から販売されているカルシトリオール製剤の商品名である。ROCALTROLは、0.25 μgおよび0.5 μgのカルシトリオールを含むカプセル、また1 μg/mLのカルシトリオールを含む経口用溶液の状態で入手することができる。いずれの剤形とも、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびブチルヒドロキシトルエン(BHT)を抗酸化剤としてを含む。カプセルは、ココナッツ油の分画した(fractionated)トリグリセリドも含み、また経口用溶液は、パーム油の分画したトリグリセリドを含む(Physician's Desk Reference、第54版、pp 2649-2651、Medical Economics Company社、Montvale、NJ(2000))。
【0007】
カルシトリオールは光感受性であり、また特に酸化されやすいことが知られている。また、カルシトリオールおよび他の活性型ビタミンD化合物は親油性である。この事実は、これらの化合物が、脂質および一部の有機溶媒に可溶性であるが、水には実質的に不溶性であるか、またはほんのわずかしか溶解しないことを意味する。活性型ビタミンD化合物の親油性のため、胃液などの水溶液中における同化合物の分散はかなり制限される。したがって、当技術分野でこれまで記載された活性型ビタミンD化合物製剤の薬物動態パラメータは、高用量のパルス投与法による使用には最適ではない。また、現在入手可能な活性型ビタミンD化合物製剤は、小腸における実質的な吸収可変性を示す傾向がある。また経口投与の場合、大部分の活性型ビタミンD化合物製剤について観察される用量と血中濃度の関係は直線的ではない。つまり、血流中に吸収される化合物の量は、任意の用量(特に高用量レベル)で投与された化合物の量と相関しない。
【0008】
したがって、活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物を特に、高カルシウム血症の発症を避けながら抗増殖(例えば抗癌)の利益をもたらすように設計されたパルス投与法の面から改善することが求められている。特に、長期間・高温でも安定性を保つ一方で、患者に投与時に、活性型ビタミンD化合物に関して改善された薬物動態パラメータと、吸収可変性の低下を同時に示す、活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物が当技術分野では求められている。
【発明の開示】
【0009】
発明の簡単な概要
本発明は、当技術分野でこれまで遭遇していた欠点を、エマルジョン前濃縮製剤中に活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物を提供することによって克服する。本発明の薬学的組成物は、カルシトリオールなどの活性型ビタミンD化合物の剤形を、エマルジョン前濃縮製剤中に、簡便な使用、安定性、および溶液中での迅速な分散を可能とするように十分高い濃度で提供するという点で従来技術より優れており、また薬物動態パラメータに関して、特にパルス投与法に関して要求される基準にさらに合致する。具体的には、好ましい態様では、本発明の薬学的組成物は、ROCALTROLのCmaxより少なくとも1.5〜2倍大きいCmaxを示し、ROCALTROLのTmaxより短いTmaxを示す。
【0010】
本発明のエマルジョン前濃縮物は、水または他の水溶液と接触時に、薬学的に許容されるエマルジョンを提供可能な、活性型ビタミンD化合物の非水性製剤である。
【0011】
本発明の1つの局面により、(a)親油相成分、(b)1種または複数種の界面活性物質、および(c)活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物を提供する。この場合、同組成物はエマルジョン前濃縮物であり、組成物に対する水の比が約1:1またはそれ以上となるの水で希釈された時に、400 nmにおける吸光度が0.3を上回るエマルジョンを生成する。本発明の、この局面により、薬学的組成物は、親水相成分をさらに含む場合がある。
【0012】
本発明の別の局面により、水とエマルジョン前濃縮物を含む薬学的エマルジョン組成物を提供する(エマルジョン前濃縮物は、(a)親油相成分、(b)1種または複数種の界面活性物質、および(c)活性型ビタミンD化合物、ならびに任意で疎水相成分を含む)。
【0013】
本発明のエマルジョン前濃縮物から(水による希釈で)生成したエマルジョンは、当業者に従来通りに理解されるエマルジョン(有機相が水中に分散したもの)、ならびに「サブミクロン液滴エマルジョン」(有機相が水中に分散し、分散粒子の平均径が1000 nm未満のもの)の両方を含む。
【0014】
本発明の別の局面により、活性型ビタミンD化合物を含むエマルジョン前濃縮物の調製法を提供する。本発明のこの局面に含まれる方法は、活性型ビタミンD化合物(例えばカルシトリオール)を、親油相成分を用いて、また1種または複数種の界面活性物質を用いて、また任意選択で親水相成分を用いて、高親和性の混合物とする段階を含む。
【0015】
本発明のさらに別の局面では、エマルジョン前濃縮製剤中の活性型ビタミンD化合物を、処置を必要とする患者に投与する段階を含む、癌や乾癬などの過増殖性疾患の治療法および予防法を提供する。あるいは、活性型ビタミンD化合物を、本発明のエマルジョン前濃縮物を適量の水で希釈時に生成するエマルジョン製剤の状態で投与することができる。本発明の、この局面の好ましい態様では、活性型ビタミンD化合物の患者への投与は、例えばパルス投与法で達成される。例えば、本発明のこの局面では、エマルジョン前濃縮製剤中の活性型ビタミンD化合物を、3日に1回以下、少なくとも0.12 μg/kg/日の用量で患者に投与する。
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、エマルジョン前濃縮製剤中に活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物に関する。本発明の組成物は、当技術分野で従来遭遇していた、特に患者への投与時における化合物の望ましくない薬物動態パラメータを含む、活性型ビタミンD化合物を用いた療法に関連する問題に対処するか、または実質的に軽減する。
【0017】
本発明の組成物が、活性型ビタミンD化合物を、例えば活性型ビタミンD化合物の薬物動態パラメータの改善を同時に達成しつつ、簡便な経口投与を可能とするために十分高濃度で含む半固体組成物および液体状組成物の調製を可能とすることが発見されている。例えば、ROCALTROLと比較して本発明の組成物は、ROCALTROLのCmaxより少なくとも1.5〜2倍大きいCmaxを示し、ROCALTROLのTmaxより短いTmaxを示す。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、少なくとも約900 pg/mL血漿、より好ましくは約900〜約3000 pg/mL血漿、より好ましくは約1500〜約3000 pg/mL血漿のCmaxを提供する。また本発明の組成物は好ましくは、約6.0時間未満、より好ましくは約1.0〜約3.0時間、より好ましくは約1.5〜約2.0時間のTmaxを提供する。また本発明の組成物は好ましくは、約25時間未満、より好ましくは約2〜約10時間、より好ましくは約5〜約9時間のT1/2を提供する。
【0018】
Cmaxという表現は、薬剤投与後に血清中で達成される活性型ビタミンD化合物の最高濃度であると定義される。Tmaxという表現は、Cmaxが達成される時間と定義される。T1/2という表現は、血清中の活性型ビタミンD化合物の濃度が半減するのに必要な時間と定義される。薬物動態データの開示された値を、全体として活性型ビタミンD化合物を含む組成物のレシピエント集団に(各レシピエントにではなく)適用する。したがって、本発明の組成物が投与される任意の個体は、好ましい薬物動態パラメータを必ずしも達成する可能性はない。しかし、本発明の組成物を、十分大きな被験者集団に投与する場合は、薬物動態パラメータは、本明細書に記載された値にほぼマッチする。
【0019】
本発明の1つの局面により、(a)親油相成分、(b)1種または複数種の界面活性物質、(c)活性型ビタミンD化合物を含む薬学的組成物を提供する(組成物はエマルジョン前濃縮物であり、組成物に対する比が約1:1またはそれ以上の水で希釈時に、400 nmにおける吸光度が0.3を上回るエマルジョンを生成する)。本発明の薬学的組成物は、親水相成分をさらに含む場合がある。
【0020】
本発明の別の局面では、水(または他の水溶液)、およびエマルジョン前濃縮物を含む薬学的エマルジョン組成物を提供する。
【0021】
本明細書で用いる「エマルジョン前濃縮物」という用語は、例えば水と接触時にエマルジョンを提供可能な系を意味することを意図する。本明細書で用いる「エマルジョン」という用語は、水と、疎水性(親油性)有機成分を含む有機成分を含むコロイド分散体を意味することを意図する。「エマルジョン」という用語は、当業者によって理解される従来のエマルジョン、ならびに以下に定義する「サブミクロン液滴エマルジョン」の両方を含むことを意図する。
【0022】
本明細書で用いる「サブミクロン液滴エマルジョン」という用語は、水と、疎水性(親油性)有機成分を含む有機成分を含む分散体を意味することを意図する(有機成分から生成する液滴または粒子の平均最大径は約1000 nm未満である)。
【0023】
サブミクロン液滴エマルジョンは、以下の1種または複数種の特性を有するものとして同定可能である。これらは、その成分が接触する際に自然に、または実質的に自然に生成する、すなわち、実質的なエネルギー供給なしに、例えば加熱せずに、高剪断装置(high shear equipment)を使用せずに、または他の実質的な攪拌を行わずに、生成する。
【0024】
サブミクロン液滴エマルジョンの粒子は球状の場合があるが、層状、六方晶系、または等方対称の液晶などの他の構造もとりうる。一般に、サブミクロン液滴エマルジョンは、最大径(例えば平均径)が約50 nm〜約1000 nm、また好ましくは約200 nm〜約300 nmの液滴または粒子を含む。
【0025】
本明細書で用いる「薬学的組成物」という用語は、個々の成分または内容物そのものが、薬学的に許容される特定の組成物であると理解される(例えば、経口投与が推定される場合は経口使用が許容され、また局所使用が推定される場合は局所使用が許容される)。
【0026】
本発明の薬学的組成物は一般に、水で希釈されるとエマルジョンを生成する。このエマルジョンは、エマルジョン前濃縮物を、組成物に対する比が約1:1またはそれ以上の水で希釈時に、本発明にしたがって生成する。本発明にしたがって、水と組成物の比は例えば1:1〜5000:1の間とすることができる。例えば、水と組成物の比は約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、200:1、300:1、500:1、1000:1、または5000:1とすることができる。当業者は、任意の状況または環境に適した、水と組成物の特定の比を容易に確認することができる。
【0027】
本発明によれば、エマルジョン前濃縮物を水で希釈時に、400 nmにおける吸光度が0.3を上回るエマルジョンを生成する。本発明のエマルジョン前濃縮物を1:100で希釈時に生成するエマルジョンの、400 nmにおける吸光度は例えば0.3〜4.0の間でありうる。例えば、400 nmにおける吸光度は、例えば約0.4、0.5、0.6、1.0、1.2、1.6、2.0、2.2、2.4、2.5、3.0、または4.0の場合がある。溶液の吸光度を決定する方法は当業者に周知である。当業者であれば、水で希釈時に、本発明の範囲に含まれる任意の特定の吸光度を有するエマルジョンを得るために、本発明のエマルジョン前濃縮物の内容物の相対的な割合を確認して調整することができる。
【0028】
本発明の薬学的組成物は、例えば半固体状製剤、または液体状製剤の場合がある。本発明の半固体状製剤は、例えばゲル、ペースト、クリーム、および軟膏を含む、当技術分野で周知の任意の半固体状製剤の場合がある。
【0029】
本発明の薬学的組成物は親油相成分を含む。親油相成分としての使用に適した成分は、水と非混和性の任意の薬学的に許容される溶媒を含む。このような溶媒は、適切には界面活性物質の機能を含まないか、または実質的に含まない。
【0030】
親油相成分は、モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリドを含む場合がある。本発明の範囲内で使用可能なモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドは、C6、C8、C10、C12、C14、C16、C18、C20、およびC22の脂肪酸に由来する化合物を含む。例示的なジグリセリドは、特にジオレイン、ジパルミトレイン(dipalmitolein)、およびカプリリン-カプリン(caprylin-caprin)混合型ジグリセリドを含む。好ましいトリグリセリドは、植物油、魚油、動物性脂肪、水素添加植物油、部分的水素添加植物油、合成トリグリセリド、改変トリグリセリド、分画したトリグリセリド、中鎖および長鎖のトリグリセリド、構造トリグリセリド、およびこれらの混合物を含む。
【0031】
上述のトリグリセリドのなかで、好ましいトリグリセリドは以下を含む:アーモンド油;ババス油;ルリヂサ油;ブラックカラント種子油;キャノラ油;ヒマシ油;ココナッツ油;コーン油;綿実油;メマツヨイグサ油;グレープシード油;ラッカセイ油;カラシ種子油;オリーブ油;パーム油;パーム核油;ピーナッツ油;ナタネ油;ベニバナ油;ゴマ油;鮫肝油;ダイズ油;ヒマワリ油;水素添加ヒマシ油;水素添加ココナッツ油;水素添加パーム油;水素添加ダイズ油;水素添加植物油;水素添加綿実油およびヒマシ油;部分的水素添加ダイズ油;部分的ダイズ油および綿実油;トリカプロン酸グリセリル;トリカプリル酸グリセリル;トリカプリン酸グリセリル;トリウンデカン酸グリセリル;トリラウリン酸グリセリル;トリオレイン酸グリセリル;トリリノール酸グリセリル;トリリノレン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸/ラウリン酸グリセリル;トリカプリル酸/カプリン酸/リノール酸グリセリル;ならびにトリカプリル酸/カプリン酸/ステアリン酸グリセリル。
【0032】
好ましいトリグリセリドは、商品名LABRAFAC CCとして入手可能な中鎖トリグリセリドである。他の好ましいトリグリセリドは、中性油、例えば中性植物油、特に製品:MIGLYOL 810;MIGLYOL 812;MIGLYOL 818;およびCAPTEX 355を含む、商品名MIGLYOLとして既知の、かつ市販されているような、分画したココナッツ油を含む。
【0033】
製品MYRITOL 813を含む、商品名MYRITOLとして既知の、かつ市販のカプリル酸-カプリン酸トリグリセリドなども適している。このクラスのさらに適切な製品は、CAPMUL MCT、CAPTEX 200、CAPTEX 300、CAPTEX 800、NEOBEE M5、およびMAZOL 1400である。
【0034】
親油相成分として、特に製品MIGLYOL 812(米国特許第5,342,625号を参照)が好ましい。
【0035】
本発明の薬学的組成物は、親水相成分をさらに含む場合がある。親水相成分は、例えば薬学的に許容される、低分子量のモノ-もしくはポリ-オキシ-アルカンジオールの、C1-5アルキルもしくはテトラヒドロフルフリルジエーテル、または部分エーテルを含む場合がある。適切な親水相成分は、例えばモノ-もしくはポリ-オキシ-アルカンジオール、特にモノ-もしくはジ-オキシ-アルカンジオール(2〜12個(特に4個)の炭素原子を含む)の、ジエーテルまたは部分エーテル(特に部分エーテル)を含む。好ましくは、モノ-もしくはポリ-オキシ-アルカンジオール部分は直鎖状である。本発明に関連して使用される例示的な親水相成分は、TRANSCUTOLおよびCOLYCOFUROL(米国特許第5,342,625号を参照)の商品名で知られており、かつ市販されている。
【0036】
特に好ましい態様では、親水相成分は、1,2-プロピレングリコールを含む。
【0037】
本発明の親水相成分は、1種または複数種の追加内容物を追加的に含む場合も当然ある。しかし好ましくは、任意の追加内容物は、活性型ビタミンD化合物担体溶媒としての親水性相の効力が物質的に損なわれないように、活性型ビタミンD化合物が十分可溶性である材料を含む。可能な追加的な親水相成分の例には、低級(例えばC1-5)アルカノール(特にエタノール)などがある。
【0038】
本発明の薬学的組成物は、1種または複数種の界面活性物質も含む。本発明と併せて使用可能な界面活性物質は、親水性または親油性の界面活性物質、またはこれらの混合物を含む。特に、非イオン性の親水性界面活性物質、および非イオン性の親油性界面活性物質が好ましい。
【0039】
適切な親水性界面活性物質には、天然植物油または水素添加植物油とエチレングリコールとの反応産物(例えば、ポリオキシエチレングリコール化された天然植物油または水素添加植物油(例えばポリオキシエチレングリコール化された天然ヒマシ油または水素添加ヒマシ油)などがある。このような産物は、既知の手順で、例えば天然ヒマシ油または水素添加ヒマシ油、またはこの分画をエチレンオキシドと、例えば約1:35〜約1:60のモル比で反応させ、この産物から遊離のポリエチレングリコール成分を、例えばGerman Auslegeschriften 第1,182,388号および第1,518,819号に記載された方法で任意選択で除去することで、得られる場合がある。
【0040】
本発明の薬学的化合物に使用される適切な親水性界面活性物質は、例えば以下の製品を含む、既知の、かつ商品名TWEENで市販されているタイプのポリオキシエチレン-ソルビタン-脂肪酸エステル、例えばモノ-およびトリラウリルエステル、パルミチルエステル、ステアリルエステル、およびオレイルエステルも含む:
TWEEN 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、
TWEEN 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、
TWEEN 60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、
TWEEN 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、
TWEEN 65(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート)、
TWEEN 85(ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート)、
TWEEN 21(ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート)、
TWEEN 61(ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート)、および
TWEEN 81(ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート)。
【0041】
本発明の組成物に使用される、このクラスの特に好ましい産物は、上記の製品TWEEN 40およびTWEEN 80(Hauerら、米国特許第5,342,625号を参照)である。
【0042】
本発明の薬学的化合物に使用される親水性界面活性物質としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンステアリン酸エステル;ポリグリセロール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン水素添加植物油;ポリオールと、例えば脂肪酸、グリセリド、植物油、水素添加植物油、およびステロールとの反応混合物;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;コハク酸ジオクチル、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ジ-[2-エチルヘキシル]-コハク酸、またはラウリル硫酸ナトリウム;リン脂質(特に、例えばダイズレシチンなどのレシチン);プロピレングリコールのモノ脂肪酸エステルまたはジ脂肪酸エステル(例えば、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ヒドロキシステアリン酸プロピレングリコール、イソステアリン酸プロピレングリコール、ラウリン酸プロピレングリコール、リシノレイン酸プロピレングリコール、ステアリン酸プロピレングリコール、および特に好ましくはカプリル酸-カプリン酸プロピレングリコールジエステル、ならびに胆汁酸塩(例えばタウロコール酸ナトリウムなどのアルカリ金属塩)も適している。
【0043】
適切な親油性界面活性物質には、アルコール;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;脂肪酸;胆汁酸;グリセロール脂肪酸エステル;アセチル化グリセロール脂肪酸エステル;低級アルコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル;ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリド;モノ/ジグリセリドの乳酸エステル;プロピレングリコールジグリセリド;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー;トランスエステル化植物油;ステロール;糖エステル;糖エーテル;スクログリセリド;ポリオキシエチレン植物油;ポリオキシエチレン水素添加植物油;ポリオールと、脂肪酸、グリセリド、植物油、水素添加植物油、およびステロールからなる群の少なくとも1つの要素(member)との反応混合物;ならびにこれらの混合物などがある。
【0044】
本発明の薬学的化合物に使用される、適切な親油性界面活性物質は、天然の植物油トリグリセリドとポリアルキレンポリオールのトランスエステル化産物も含む。このようなトランスエステル化産物は当技術分野で周知であり、例えば米国特許3,288,824号に記載された一般的な手順で得られる。これには、さまざまな天然(例えば非水素添加)の植物油(例えば、トウモロコシ油、核油、アーモンド油、すり潰したナッツ油、オリーブ油、およびパーム油、およびこれらの混合物)と、ポリエチレングリコール(特に、平均分子量が200〜800のポリエチレングリコール)のトランスエステル化産物が含まれる。2モルの天然の植物油トリグリセリドと、1モルのポリエチレングリコール(例えば平均分子量が200〜800)のトランスエステル化によって得られる産物が好ましい。特定のクラスのさまざまな状態のトランスエステル化産物は既知であり、商品名LABRAFILとして市販されている。
【0045】
本発明の薬学的組成物との併用に適した他の親油性界面活性物質には、脂溶性ビタミン誘導体、例えばコハク酸トコフェロールPEG-1000(「ビタミンE TPGS」)などがある。
【0046】
本発明の薬学的化合物中に使用する親油性界面活性物質として、モノグリセリド、ジグリセリド、およびモノ/ジグリセリド、特にカプリル酸またはカプリン酸とグリセロールのエステル化産物;ソルビタン脂肪酸エステル;ペンタエリトリトール脂肪酸エステル、およびポリアルキレングリコールエーテル、例えばペンタエリトリット-ジオレエート、-ジステアレート、-モノラウレート、-ポリグリコールエーテル、および-モノステアレート、ならびにペンタエリトリット脂肪酸エステル;モノグリセリド(例えば、モノオレイン酸グリセロール、モノパルミチン酸グリセロール、およびモノステアリン酸グリセロール;トリ酢酸グリセロール、または(1,2,3)-トリアセチン;ならびにステロールおよびそれらの誘導体(例えば、コレステロール、およびこの誘導体、特にフィトステロール(例えば、シトステロール、カンペステロール、またはスチグマステロール))、およびこのエチレンオキサイド付加物(例えばダイズステロール、およびこの誘導体)を含む産物も適している。
【0047】
複数の市販の界面活性物質組成物が、典型的には、例えばトランスエステル化反応におけるトリグリセリド出発材料の不完全な反応の結果として、少量〜中程度の量のトリグリセリドを含むことが当業者に理解される。したがって、本発明の薬学的組成物における使用に適した界面活性物質には、トリグリセリドを含むこのような界面活性物質などがある。トリグリセリドを含む市販の界面活性物質組成物の例には、界面活性物質ファミリーGELUCIRES、MAISINES、およびIMWITORSの一部の物質などがある。このような化合物の具体例は、GELUCIRE 44/14(飽和ポリグリコール化グリセリド);GELUCIRE 50/13(飽和ポリグリコール化グリセリド);GELUCIRE 53/10(飽和ポリグリコール化グリセリド);GELUCIRE 33/01(C8〜C18飽和脂肪酸の半合成トリグリセリド);GELUCIRE 39/01(半合成グリセリド);他のGELUCIRE(37/06、43/01、35/10、37/02、46/07、48/09、50/02、62/05など);MAISINE 35-I(リノール酸グリセリド);ならびにIMWITOR 742(カプリル酸/カプリン酸グリセリド)(米国特許第6,267,985号を参照)である。
【0048】
有意なトリグリセリド量を有する、さらに他の市販の界面活性物質組成物は当技術分野で周知である。トリグリセリドならびに界面活性物質を含む、このような組成物が、本発明の親油相成分の全体または一部、ならびに界面活性物質の全体または一部を提供するために適していることが理解されるはずである。
【0049】
本発明の薬学的組成物は、活性型ビタミンD化合物も含む。本明細書で用いる「活性型ビタミンD化合物」という用語は、少なくともA環の1位炭素がヒドロキシル化されているビタミンD(例えば1α-ヒドロキシビタミンD3)を意味することを意図する。本発明の組成物に関連して、好ましい活性型ビタミンD化合物は、カルシトリオールとしても知られる1α,25-ヒドロキシビタミンD3である。他の多数の活性型ビタミンD化合物が知られており、本発明を実施するために使用することができる。例には、側鎖がコレステロールまたはエルゴステロールの側鎖より17残基長い1α-ヒドロキシ誘導体(米国特許第4,717,721号を参照);シクロペンタノ-ビタミンD類似体(米国特許第4,851,401号を参照);アルキニル側鎖、アルケニル側鎖、およびアルカニル側鎖を有するビタミンD3類似体(米国特許第4,866,048号および第5,145,846号を参照);トリヒドロキシカルシフェロール(米国特許第5,120,722号を参照);フルオロ-コレカルシフェロール化合物(米国特許第5,547,947号を参照);メチル置換ビタミンD(米国特許第5,446,035号を参照);23-オキサ誘導体(米国特許第5,411,949号を参照);19-ノル-ビタミンD化合物(米国特許第5,237,110号を参照);ならびにヒドロキシル化24-ホモ-ビタミンD誘導体(米国特許第4,857,518号を参照)などがある。具体例には、ROCALTROL(Roche Laboratories社);CALCIJEX注射用カルシトリオール;EB 1089(24a,26a,27a-トリホモ-22,24-ジエン-1αa,25-(OH)2-D3、KH 1060(20-エピ-22-オキサ-24a,26a,27a-トリホモ-1α,25-(OH)2-D3)、セオカルシトール(Seocalcitol)、MC 1288(1,25-(OH)2-20-エピ-D3)、およびMC 903(カルシポトリオール、1α24s-(OH)2-22-エン-26,27-デヒドロ-D3)を含むLeo Pharmaceuticals社の治験薬;1,25-(OH)2-16-エン-D3、1,25-(OH)2-16-エン-23-イン-D3、および25-(OH)2-16-エン-23-イン-D3を含むRoche Pharmaceuticals社の薬剤;中外製薬の22-オキサカルシトリオール(22-oxa-1α,25-(OH)2-D3);イリノイ大学の1α-(OH)-D5;ならびにZK 161422(20-メチル-1,25-(OH)2-D3)、およびZK 157202(20-メチル-23-エン-1,25-(OH)2-D3)を含むInstitute of Medical Chemistry-Schering AG社の薬剤;1α-(OH)-D2;1α-(OH)-D3および1α-(OH)-D4が含まれる。他の例には、
などがある。他の例については米国特許第6,521,608号に記載されている。例えば
も参照されたい。
【0050】
本発明の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物は、ビタミンDと比較して高カルシウム血作用が低いので、高用量の化合物を、高カルシウム血症を引き起こすことなく動物に投与することができる。低い高カルシウム血作用は、等量の1α,25-ヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)の投与によって誘導される高カルシウム血作用に満たない作用であると定義される。一例としてEB 1089は、カルシトリオールの高カルシウム血作用の50%の高カルシウム血作用を有する。低い高カルシウム血作用を有する他の活性ビタミンD化合物には、Hoffman La Roche社から入手可能なRo23-7553やRo24-5531などがある。高カルシウム血作用が低い活性ビタミンD化合物の他の例は、米国特許第4,717,721号に記載されている。活性ビタミンD化合物の高カルシウム血作用を決定することは、当技術分野でごく一般に行われており、またHansen et al., Curr. Pharm. Des. 6: 803-828 (2000)に記載された手順で実施することができる。
【0051】
本発明の薬学的組成物は、1種または複数種の添加物をさらに含む場合がある。当技術分野で周知の添加物は、例えば減粘剤(detackifier)、消泡剤(antifoaming agent)、緩衝剤、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、マレイン酸、フマル酸、メタ重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびトコフェロール(例えばα-トコフェロール(ビタミンE))、保存剤、キレート剤、粘性調整剤(viscomodulator)、等張剤(tonicifier)、香味剤(flavorant)、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁剤、結合剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、およびこれらの混合物を含む。これら添加物の量は、当業者であれば、所望の特定の特性にしたがって容易に決定することができる。例えば、抗酸化剤は組成物の総重量に基づいて約0.01重量%〜約0.5重量%の量で存在してもよく、好ましくは約0.05重量%〜約0.35重量%である。
【0052】
添加物には濃化剤(thickening agent)を含めることもできる。適切な濃化剤は、例えば薬学的に許容されるポリマー材料、および無機濃化剤を含む、当技術分野で公知であり、かつ使用されている化合物の場合がある。本発明の薬学的組成物に使用される例示的な濃化剤には、ポリアクリレート、およびポリアクリレートコポリマー樹脂(例えばポリアクリル酸、およびポリアクリル酸/メタクリル酸樹脂);アルキルセルロース(例えばメチルセルロース、エチルセルロース、およびプロピルセルロース)を含むセルロースおよびセルロース誘導体;ヒドロキシアルキルセルロース(例えばヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシプロピルアルキルセルロース);アシル化セルロース(例えば酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、およびフタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース);ならびにカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの、これらの塩;ポリビニルピロリドン(例えばポリ-N-ビニルピロリドンを含む)、およびビニルピロリドンコポリマー(ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーなど);例えば、ポリビニル樹脂(例えばポリ酢酸ビニルおよびアルコールを含む)、ならびに他のポリマー材料(トラガカントガム、アラビアゴム、アルギン酸塩(例えばアルギン酸、および例えばアルギン酸ナトリウムなどの、この塩)を含む);ならびにアタパルジャイト(atapulgite)、ベントナイト(bentonite)、およびケイ酸塩(親水性二酸化ケイ素産物、例えばアルキル化(例えばメチル化)シリカゲル、特にコロイド状二酸化ケイ素産物を含む)などの無機濃化剤が含まれる。
【0053】
上記の濃化剤は、例えば徐放性効果をもたらすことを目的として含めることができる。しかし、経口投与が意図される場合は、上述の濃化剤の使用は通常必要とされず、一般にはそれほど好まれない。濃化剤の使用は一方で、例えば局所塗布が推定される場合に指示される。
【0054】
本発明による組成物は、任意の適切な手段で投与に使用することができる。例えば経口投与の場合は、例えば単位投与剤形(例えば溶液中、ゼラチンに包まれた状態を含む硬カプセルもしくは軟カプセル状)で行う。ゼラチンカプセルはバンド固定または液体マイクロスプレー封着により密封してもよい。組成物はまた、非経口的投与または局所投与により投与してもよく、例えば皮膚への投与の場合は、例えばクリーム、ペースト、ローション、ゲル、軟膏、湿布剤、パップ剤、膏薬、経皮パッチなどの状態で行う。または眼科的使用の場合は、例えば点眼剤(液体、ローション、またはゲル)の状態で行う。容易に流動可能な形状(例えば溶液およびエマルジョン)を、例えば病巣内への注入に使用することもできるほか、例えば浣腸として直腸から投与することができる。本組成物はさらに、活性ビタミンD化合物の送達を促進させる薬剤、例えばリポソーム、ポリマー、またはコポリマー(例えば側鎖ポリマー)を含んでもよい。
【0055】
本発明の組成物を、単位投与剤形に製剤化する場合は、活性型ビタミンD化合物の量は、好ましくは単位用量あたり1〜400μgとする。より好ましくは、単位用量あたりの活性型ビタミンD化合物の量は約1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg、260μg、265μg、270μg、275μg、280μg、285μg、290μg、295μg、300μg、305μg、310μg、315μg、320μg、325μg、330μg、335μg、340μg、345μg、350μg、355μg、360μg、365μg、370μg、375μg、380μg、385μg、390μg、395μg、または400μg、またはこれらの中間の任意の量である。好ましい態様では、単位剤形当たりの活性ビタミンD化合物の量は、約5μg〜約180μg、より好ましくは約10μg〜約135μg、より好ましくは約45μgである。ある態様では、単位剤形は45μg、90μg、135μg、または180μgのカルシトリオールを含む。
【0056】
組成物の単位剤形がカプセルの場合、カプセル中に存在する内容物の総量は、好ましくは約10〜1000μLである。より好ましくは、カプセル中に存在する内容物の総量は約100〜300μLである。別の態様では、カプセル中に存在する内容物の総量は、好ましくは約10〜1500 mgであり、好ましくは約100〜1000 mgである。ある態様では、総量は約225 mg、約450 mg、約675 mg、または約900 mgである。ある態様では、単位剤形は45μg、90μg、135μg、または180μgのカルシトリオールを含むカプセルである。
【0057】
本発明の組成物中の内容物の相対的な割合が、対象となる特定の種類の組成物に依存して相当変動することは言うまでもない。相対的な割合は、組成物中の内容物の特定の機能に依存しても変動する。相対的な割合はまた、使用される特定の内容物、および産物組成物の所望の物理的特性に依存しても変動する(例えば、局所使用に用いる組成物の場合であれば、これが流動性の液体か、またはペーストであるかによって変動する)。任意の特定の状況における実行可能な割合の決定は通常、当業者の能力の範囲内にある。したがって、後述する指定の割合および相対重量範囲はいずれも、好ましい発明の教示を示すか、または個別に発明の教示を示すに過ぎず、最も広い局面において本発明を制限しないと理解される。
【0058】
本発明の親油相成分は、適切には、組成物の総重量に対して約10重量%〜約90重量%の量で存在する。好ましくは、親油相成分は、適切には、組成物の総重量に対して約15重量%〜約65重量%の量で存在する。
【0059】
本発明の界面活性物質(1種類または複数)は、適切には、組成物の総重量に対して約1重量%〜90重量%の量で存在する。好ましくは、界面活性物質(1種類または複数)は、組成物の総重量に対して約5重量%〜約85重量%の量で存在する。
【0060】
本発明の組成物中の活性型ビタミンD化合物の量が、例えば意図された投与経路、および他の成分が存在する規模に依存して変動することは言うまでもない。しかし一般に、本発明の活性型ビタミンD化合物は、適切には、組成物の総重量に対して約0.005重量%〜20重量%の量で存在する。好ましくは、活性型ビタミンD化合物は、組成物の総重量に対して約0.01重量%〜15重量%の量で存在する。
【0061】
本発明の親水相成分は、適切には、組成物の総重量に対して約2重量%〜約20重量%の量で存在する。好ましくは、親水相成分は、組成物の総重量に対して約5重量%〜15重量%の量で存在する。
【0062】
本発明の薬学的組成物は半固体状製剤の場合がある。本発明の範囲に含まれる半固体状製剤は、例えば、組成物の総重量に対して約50重量%〜約80重量%の量で存在する親油相成分、組成物の総重量に対して約5重量%〜約50重量%の量で存在する界面活性物質、および組成物の総重量に対して約0.01重量%〜約15重量%の量で存在する活性型ビタミンD化合物を含む場合がある。
【0063】
本発明の薬学的組成物は液体状製剤の場合がある。本発明の範囲内の液体状製剤は例えば、組成物の総重量に対して約50重量%〜約60重量%の量で存在する親油相成分、組成物の総重量に対して約4重量%〜約25重量%の量で存在する界面活性物質、組成物の総重量に対して約0.01重量%〜約15重量%の量で存在する活性型ビタミンD化合物、ならびに組成物の総重量に対して約5重量%〜約10重量%の量で存在する親水相成分を含む場合がある。
【0064】
使用可能な他の組成物には、以下のようなものがある(各成分のパーセンテージは、活性ビタミンD化合物を除く組成物の総重量に基づく重量パーセント):
a. Gelucire 44/14 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
b. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約40%;
c. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約30%;
d. Gelucire 44/14 約40%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約30%;
e. Gelucire 44/14 約40%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約40%;
f. Gelucire 44/14 約30%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約40%;
g. Gelucire 44/14 約20%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約50%;
h. ビタミンE TPGS 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
i. Gelucire 44/14 約60%
ビタミンE TPGS 約25%
MIGLYOL 812 約15%;
j. Gelucire 50/13 約30%
ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約65%;
k. Gelucire 50/13 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
l. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約40%;
m. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約30%;
n. Gelucire 50/13 約40%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約30%;
o. Gelucire 50/13 約40%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約40%;
p. Gelucire 50/13 約30%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約40%;
q. Gelucire 50/13 約20%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約50%;
r. Gelucire 50/13 約60%
ビタミンE TPGS 約25%
MIGLYOL 812 約15%;
s. Gelucire 44/14 約50%
PEG 4000 約50%;
t. Gelucire 50/13 約50%
PEG 4000 約50%;
u. ビタミンE TPGS 約50%
PEG 4000 約40%;
v. Gelucire 44/14 約33.3%
ビタミンE TPGS 約33.3%
PEG 4000 約33.3%;
w. Gelucire 50/13 約33.3%
ビタミンE TPGS 約33.3%
PEG 4000 約33.3%;
x. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約50%;
y. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約50%;
z. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約95%;
aa. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約65%
PEG 4000 約30%;
ab. ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約90%;
ac. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約85%
PEG 4000 約10%;および
ad. ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約80%
PEG 4000 約10%。
【0065】
本発明のある態様では、薬学的組成物は、活性ビタミンD化合物、親油性成分、および界面活性物質を含む。親油性成分は、約1%〜約100%の任意のパーセンテージで存在する場合がある。親油性成分は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%で存在する場合がある。界面活性物質は、約1%〜約100%の任意のパーセンテージで存在する場合がある。界面活性物質は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%で存在する場合がある。ある態様では、親油性成分はMIGLYOL 812であり、また界面活性物質はビタミンE TPGSである。好ましい態様では、薬学的組成物は、約50%のMIGLYOL 812と約50%のビタミンE TPGS、約90%のMIGLYOL 812、および約10%のビタミンE TPGS、または約95%のMIGLYOL 812および約5%のビタミンE TPGSを含む。
【0066】
本発明の別の態様では、薬学的組成物は、活性ビタミンD化合物および親油性成分(例えば約100%のMIGLYOL 812)を含む。
【0067】
好ましい態様では、薬学的組成物は、約50%のMIGLYOL 812、約50%のビタミンE TPGS、ならびに少量のBHAおよびBHTを含む。この剤形は、化学的かつ物理的に意外なほど安定なことがわかっている(実施例16参照)。特に好ましい態様では、薬学的組成物は、約50%のMIGLYOL 812、約50%のビタミンE TPGS、ならびにそれぞれ約0.35%のBHAおよびBHTを含む。安定性が高くなることで、組成物の有効期間はより長くなる。重要な点として、安定性は、組成物の室温保存も可能とすることで、冷蔵保存時の煩雑さの回避および費用の節約につながる。加えて同組成物は経口投与に適しており、また高用量の活性ビタミンD化合物を可溶化可能なために、過増殖疾患および他の障害の治療のための、活性ビタミンD化合物の高用量パルス投与が可能なことがわかっている。
【0068】
前述に加えて、本発明は、本発明の個々の成分を、均質な混合物とする段階、また必要に応じて、得られた組成物を、単位投与剤形に配合する段階、例えば、組成物をゼラチン(例えば硬ゼラチンまたは軟ゼラチン)カプセル、または非ゼラチンカプセルの内部に充填する段階を含む、既に定義した薬学的組成物を作製する過程も提供する。
【0069】
より特定の態様では、本発明は、活性型ビタミンD化合物(例えばカルシトリオール)を、既に定義した親油相成分および界面活性物質を用いて均質な混合物とする段階を含む、薬学的組成物を調製する過程を提供する(親油相成分と界面活性物質の相対的な割合は、エマルジョン前濃縮物が得られるように、使用する活性型ビタミンD化合物の量に対して選択する)。
【0070】
本発明は、エマルジョン前濃縮製剤中の活性型ビタミンD化合物を、処置を必要とする患者に投与する段階を含む、癌や乾癬などの過増殖性疾患の治療法および予防法も提供する。あるいは、活性型ビタミンD化合物は、本発明のエマルジョン前濃縮物を適量の水で希釈時に生成するエマルジョン製剤の状態で投与されうる。あるいは、活性ビタミンD化合物は本明細書に開示される任意の製剤で投与できる。
【0071】
本明細書で用いる「癌」という用語は既知の任意の癌を意味し、また以下の疾患を含む場合があるが、これらに限らない:急性白血病、急性リンパ性白血病などの白血病、骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性などの急性骨髄性白血病、および赤白血病、ならびに骨髄異形成症候群;慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病、および有毛細胞白血病などの慢性白血病;真性多血症;ホジキン病や非ホジキン病などのリンパ腫;くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌型骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞白血病、孤立性形質細胞腫、および骨髄外形質細胞腫などの多発性骨髄腫;ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症;意義不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症;良性単クローン性免疫グロブリン血症;H鎖病;骨の肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨の線維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、神経鞘腫、横紋筋肉腫、ならびに滑膜肉腫などの骨および結合組織の肉腫;神経膠腫、星細胞腫、脳幹神経膠腫、脳室上衣腫、希突起グリオーマ、非グリア性腫瘍、聴神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体細胞腫、松果体芽細胞腫、および原発性脳リンパ腫などの脳腫瘍;腺癌、小葉(小細胞)癌、乳管内癌、髄様乳癌、粘液性乳癌、管状乳癌、乳頭状乳癌、乳房のパジェット病、ならびに炎症性乳癌などの乳癌;褐色細胞腫や副腎皮質癌などの副腎癌;乳頭癌または濾胞癌の甲状腺癌、甲状腺髄様癌、および未分化甲状腺癌などの甲状腺癌;膵島細胞腺腫、ガストリン産生腫瘍、グルカゴノーマ、ヴィポーマ、ソマトスタチン放出腫瘍、およびカルチノイド、または膵島細胞腫瘍などの膵臓癌;プロラクチン産生腫瘍や末端肥大症などの下垂体癌;眼の黒色腫、虹彩の黒色腫、脈絡膜黒色腫、および毛様体の黒色腫、および網膜芽腫などの眼の癌;扁平上皮癌、腺癌、および黒色腫などの膣癌;扁平上皮癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、および性器のパジェット病などの外陰癌;扁平上皮癌や腺癌などの子宮頚部癌;子宮内膜癌や子宮肉腫などの子宮癌;卵巣上皮癌、卵巣上皮の境界型腫瘍、生殖細胞腫瘍、および間質腫瘍などの卵巣癌;扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘膜表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣贅癌、および燕麦細胞(小細胞)癌などの食道癌;腺癌、きのこ状(倍数体)、潰瘍性、表在性拡大型、びまん性の悪性リンパ腫、脂肪肉腫、線維肉腫、および癌肉腫などの胃癌;結腸癌;直腸癌;肝細胞癌や肝芽腫などの肝臓癌;腺癌などの胆嚢癌;乳頭状、管状、およびびまん型などの胆管癌;非小細胞性肺癌、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌、および小細胞性肺癌などの肺癌;胚の腫瘍、精上皮腫、未分化型、従来型(定型)の精母細胞の非精上皮腫、胚性癌、および奇形腫癌、および絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)などの精巣癌;腺癌、平滑筋肉腫、および横紋筋肉腫などの前立腺癌;陰茎癌;扁平細胞癌などの口腔癌;基底癌;腺癌、粘膜表皮癌、および腺様嚢胞癌などの唾液腺癌;扁平細胞癌や疣贅癌などの咽頭癌;基底細胞癌、扁平上皮癌、および黒色腫、表在性拡大型黒色腫、結節性黒色腫、黒子性悪性黒色腫、末端性黒子性黒色腫などの皮膚癌;頭頸部癌;腎細胞癌、腺癌、副腎癌、線維肉腫、移行上皮癌(腎盂および/または輸尿管)などの腎臓癌;ウィルムス腫瘍;ならびに、移行上皮癌、扁平上皮癌、腺癌、および癌肉腫などの膀胱癌。また、本発明の方法および組成物によって治療可能な癌には、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ管血管内皮肉腫、中皮腫、骨膜腫、血管芽腫、上皮癌、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、および乳頭腺癌などがある。これらの障害の総説については、Fishman et al., 1985, Medicine, 2d Ed., J.B. Lippincott Co., Philadelphia, PA and Murphy et al., 1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, New York, NYを参照されたい。
【0072】
活性ビタミンD化合物は好ましくは、約1μg〜約400μg、より好ましくは約15μg〜約300μgの用量で投与される。特定の態様では、有効量の活性ビタミンD化合物は、3μg、4μg、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg、30μg、35μg、40μg、45μg、50μg、55μg、60μg、65μg、70μg、75μg、80μg、85μg、90μg、95μg、100μg、105μg、110μg、115μg、120μg、125μg、130μg、135μg、140μg、145μg、150μg、155μg、160μg、165μg、170μg、175μg、180μg、185μg、190μg、195μg、200μg、205μg、210μg、215μg、220μg、225μg、230μg、235μg、240μg、245μg、250μg、255μg、260μg、265μg、270μg、275μg、280μg、285μg、290μg、295μg、300μg、305μg、310μg、315μg、320μg、325μg、330μg、335μg、340μg、345μg、350μg、355μg、360μg、365μg、370μg、375μg、380μg、385μg、390μg、395μg、もしくは400μg、またはこれ以上である。ある態様では、有効量の活性ビタミンD化合物は、約1μg〜約270μgであり、より好ましくは約15μg〜約225μgであり、より好ましくは約15μg〜約180μgであり、より好ましくは約15μg〜約135μgであり、より好ましくは約20μg〜約90μgであり、より好ましくは約30μg〜約60μgであり、またさらにより好ましくは約45μgである。ある態様では、本発明の方法は、活性ビタミンD化合物を、約0.12 μg/kg体重〜約3 μg/kg体重の用量で投与する段階を含む。このような化合物は、経口、筋肉内、静脈内、腸管外、直腸内、鼻内、局所的、または経皮的な経路を含む任意の経路で投与することができる。
【0073】
仮に化合物が毎日投与される場合は、高カルシウム血症の誘導を避けるか、または抑えるために、用量は低く(例えば約0.5μg〜約5μgに)維持することができる。仮に、活性ビタミンD化合物が、低い高カルシウム血作用を有する場合は、高カルシウム血症を発症させることなく、高い1日量(例えば約10μg〜約20μgまたはこれ以上;最大約50μg〜約100μg)を投与することができる。
【0074】
本発明の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物はパルス投与法で投与されることで、高用量の活性ビタミンD化合物を、高カルシウム血症を誘導することなく投与することができる。パルス投与とは、活性ビタミンD化合物を、連続的な間欠的投与スケジュールか、または非連続的な間欠的投与スケジュールのいずれかによって間欠的に投与することを意味する。高用量の活性ビタミンD化合物は、上記セクションで述べたように、約3μgを上回る用量を含む。したがって、本発明のある態様では、癌の治療または改善の方法は、高用量の活性ビタミンD化合物を間欠的に投与する段階を含む。パルス投与による投与の頻度は、化合物または剤形の薬物動態学的パラメータ、および動物に対する活性ビタミンD化合物の薬力学的作用を含むがこれらに限定されない諸因子によって制限される場合がある。例えば、腎機能が損なわれた癌を有する動物はカルシウム排出能力が低いために、それほど高頻度ではない活性ビタミンD化合物の投与が必要となる場合がある。
【0075】
以下の記述は例示的に示すだけであり、「パルス投与」という用語が、当業者によって指定される任意の不連続投与法を含む場合があることを説明するに過ぎない。
【0076】
1つの例では、活性ビタミンD化合物は、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、10日間、2週間毎、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、またはこれ以上の期間に1回まで投与することができる。投与は、1週間、2週間、3週間、もしくは4週間、または1か月間、2か月間、もしくは3か月間、もしくはこれ以上の期間、継続することができる。任意選択で、安静期間を設けた後に、活性ビタミンD化合物を、同じか、または異なるスケジュールで投与することができる。安静期間は、動物における活性ビタミンD化合物の薬力学的作用に従って、1週間、2週間、3週間、または4週間、またはこれ以上の期間とすることができる。
【0077】
別の例では、活性ビタミンD化合物を週に1回、3か月間にわたって投与することができる。
【0078】
好ましい態様では、活性ビタミンD化合物を週に1回、4週間のサイクルの3週間にわたって投与することができる。1週間の安静期間後に、活性ビタミンD化合物を、同じか、または異なるスケジュールで投与することができる。
【0079】
別の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物を3週間に1回投与することができる。
【0080】
本発明の方法に使用可能な投与スケジュールの他の例は、全体が参照により組み入れられる米国特許第6,521,608号に記載されている。
【0081】
上記の投与スケジュールは、説明目的でのみ提供されるものであり、制限する意図はないと解釈されるべきである。当業者であれば、あらゆる活性ビタミンD化合物が本発明の範囲内にあること、また活性ビタミンD化合物の正確な用量および投与スケジュールが多くの因子によって変動する場合があることを容易に理解すると思われる。
【0082】
疾患または障害の急性疾患または慢性疾患としての管理における治療的有効量の薬物量は、治療対象の疾患または障害、薬剤の種類、および投与経路を含むがこれらに限定されない諸因子に依存して異なる場合がある。本発明の方法では、有効量の活性ビタミンD化合物は、癌または他の過増殖疾患の治療もしくは改善に有効な任意の用量の化合物である。高用量の活性ビタミンD化合物の用量は、約3μg〜約400μgである場合があるほか、上述した範囲内の任意の用量の場合がある。用量、投与頻度、期間、またはこれらの任意の組み合わせも、動物の年齢、体重、反応、および病歴、ならびに薬剤の投与経路、薬物動態、および薬力学的作用によって変化する場合がある。これらの因子は、当業者によってルーチンに考慮される。
【0083】
ビタミンD化合物の吸収およびクリアランスの速度は、当業者に既知のさまざまな因子の影響を受ける。上述したように、活性ビタミンD化合物の薬物動態学的特性は、高カルシウム血症の発症を誘導することなく、血液中に取り込まれうるビタミンD化合物のピーク濃度を制限する。活性ビタミンD化合物の組織における吸収、分布、結合、または局在の速度および規模、生物学的変換、ならびに排出はいずれも、薬剤を投与可能な頻度に影響する可能性がある。ある態様では、活性ビタミンD化合物は、癌を治療したり改善したりする方法として、上述の投与スケジュールに従ってパルス投与法によって高用量が投与される。
【0084】
本発明のある態様では、活性ビタミンD化合物は、約0.1 nM〜約20 nMの活性ビタミンD化合物の最高血漿濃度を十分達成する用量で投与される。ある態様では、本発明の方法は、活性ビタミンD化合物を0.1 nM、0.2 nM、0.3 nM、0.4 nM、0.5 nM、0.6 nM、0.7 nM、0.8 nM、0.9 nM、1 nM、2 nM、3 nM、4 nM、5 nM、6 nM、7 nM、8 nM、9 nM、10 nM、12 .5nM、15 nM、17.5 nM、もしくは20 nM、またはこれらの任意の範囲の濃度の最高血漿濃度を達成する用量で投与する段階を含む。他の態様では、活性ビタミンD化合物は、約0.5 nMを超える、好ましくは約0.5 nM〜約20 nM、より好ましくは約1 nM〜約10 nM、より好ましくは約1 nM〜約7 nM、またさらにより好ましくは約3 nM〜約5 nMの活性ビタミンD化合物の最高血漿濃度を達成する用量で投与される。
【0085】
別の好ましい態様では、活性ビタミンD化合物は、少なくとも約0.12μg/kg体重の用量で、より好ましくは少なくとも約0.5μg/kg体重の用量で投与される。
【0086】
当業者であれば、このような標準的な用量が、約70 kgの平均サイズの成体に対するものであること、また上述のようにルーチンに考慮される因子に鑑みて調節可能なことを理解すると思われる。
【0087】
ある態様では、本発明の方法は、最高血漿濃度に速やかに(例えば4時間以内に)達する用量の活性ビタミンD化合物を投与する段階をさらに含む。別の態様では、本発明の方法は、迅速に除去される用量(例えば、除去半減期が12時間未満)の活性ビタミンD化合物を投与する段階を含む。
【0088】
高濃度の活性ビタミンD化合物が得られることが有益な一方で、臨床上の安全性(例えば高カルシウム血症)とのバランスをとらなければならない。したがって、本発明の1つの局面では、本発明の方法は、高用量の活性ビタミンD化合物を、癌または他の過増殖疾患を有する被験対象に間欠的に投与する段階、および高カルシウム血症関連症状に関して被験対象をモニタリングする段階を含む。このような症状には、軟部組織(例えば心臓組織)の石灰化、骨密度の上昇、および高カルシウム血漿性腎症などがある。さらに別の態様では、本発明の方法は、高用量の活性ビタミンD化合物を、癌または他の過増殖疾患を有する被験対象に間欠的に投与する段階、および血漿カルシウム濃度を約10.2 mg/dL未満に確実に抑えるために、被験対象の血漿カルシウム濃度をモニタリングする段階を含む。
【0089】
ある態様では、高血中レベルのビタミンD化合物を、血液へのカルシウム輸送を減じながら安全に得ることができる。ある態様では、高濃度の活性ビタミンD化合物を、低カルシウム食とともに投与時に、高カルシウム血症を発症させることなく安全に得ることができる。1つの例では、カルシウムは、小腸を介して血液中に輸送されない吸着剤、吸収剤、リガンド、キレート、または他の結合部分に捕捉される場合がある。別の例では、溶骨細胞の活性化の速度は、ビスホスホネート(例えばゾレドロン酸、パミドロン酸、もしくはアレンドロン酸など)、またはグルココルチコイド(例えば、プレドニゾンもしくはデキサメタゾンなど)を活性ビタミンD化合物と併用投与することで抑えられる場合がある。
【0090】
ある態様では、高血中レベルの活性ビタミンD化合物は、カルシウムのクリアランス速度を最大化するとともに安全に得られる。1つの例では、カルシウムの排出は、適切な水分補給および塩分摂取を確実に行うことで高めることができる。別の例では、利尿療法でカルシウムの排出を高めることができる。
【0091】
本発明のある態様では、癌や乾癬などの過増殖疾患の治療法および予防法は、化学療法剤もしくは放射線治療薬、または活性ビタミンD化合物を用いた治療をさらに含む。
【0092】
本明細書で用いる「化学療法剤」という用語は、癌の治療または改善に有効なことが当業者に既知の任意の化学療法剤を意味する。化学療法剤は、小分子;合成薬剤;ペプチド;ポリペプチド;タンパク質;核酸(例えば、アンチセンスヌクレオチド配列、3重らせん、および生物学的活性のあるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むがこれらに限定されないDNAおよびRNAのポリヌクレオチド);抗体;合成または天然の無機分子;模倣剤;ならびに合成または天然の有機分子を含むがこれらに限定されない。有用なことが知られている任意の薬剤、または癌の治療または改善のために使用されてきた任意の薬剤、または現在使用されている任意の薬剤を、本明細書に記載された本発明の活性ビタミンD化合物と併用して使用することができる。癌の治療または改善のために使用されてきた治療用薬剤、または現在使用されている治療用薬剤に関する情報については例えば、Hardman et al., eds., 1996, Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis Of Therapeutics 9th Ed, Mc-Graw-Hill, New York, NYを参照されたい。
【0093】
本発明の方法および組成物に有用な化学療法剤には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗有糸分裂剤、エピポドフィロトキシン、抗生物質、ホルモンおよびホルモン拮抗剤、酵素、白金配位錯体、アントラセンジオン、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、イミダゾテトラジン誘導体、細胞保護剤、DNAトポイソメラーゼ阻害剤、生物学的反応修飾物質、レチノイド、治療用抗体、分化剤、免疫調節剤、ならびに血管形成阻害剤などがある。
【0094】
使用可能な他の化学療法剤には、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミフォスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG live、ベバセイズマブ(bevaceizumab)、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン(calusterone)、カンプトセシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロランブシル、シネカルセット、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシン、デニロイキン・ジフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エリオットB溶液、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロキシウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲムシタビン、ゲムツズマブ・オゾガミシン、ゲフィチニブ、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イブリツマブ・ティウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ-2a、インターフェロンアルファ-2b、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン(meclorethamine)、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、メトキサレン、メチルプレドニゾロン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ(nofetumomab)、オブリメルセン、オプレレベキン(oprelvekin)、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、ペガデマーゼ(pegademase)、ペグアスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン(polifeprosan)、ポルフィルマー、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ(rasburicase)、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タルク、タモキシフェン、タルセバ、テモゾロマイド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシル・マスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ならびにゾレドロン酸などがある。
【0095】
化学療法剤は、当業者によって膵臓癌治療に有効であると認識される用量で投与することができる。ある態様では、化学療法剤は、活性ビタミンD化合物の相加的または相乗的な効果のために、当技術分野で使用される用量より低い用量で投与することができる。
【0096】
本明細書で用いる、「放射線療法用薬剤」という用語は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意の放射線療法用薬剤を意味するがこれらに限定されない。例えば放射線療法用薬剤は、近接照射療法または放射線核種療法で使用される薬剤などの薬剤の場合がある。
【0097】
近接照射療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。一般に近接照射療法は、好ましくは健常組織の被曝を最小限に抑えながら、腫瘍が放射線源に最大限曝露されるように、癌の治療対象となる被験対象の身体への、好ましくは腫瘍そのものの内部への放射線源の挿入を含む。近接照射療法に使用可能な代表的な放射性同位元素には、リン32、コバルト60、パラジウム103、ルテニウム106、ヨウ素125、セシウム137、イリジウム192、キセノン133、ラジウム226、カリホルニウム252、または金198などがあるがこれらに限定されない。近接照射療法に有用な投与法ならびに装置および組成物は、Mazeron et al., Sem. Rad. Onc. 12: 95-108 (2002)、および米国特許第6,319,189号、第6,179,766号、第6,168,777号、第6,149,889号、および第5,611,767号に記載されている。
【0098】
放射線核種療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。一般に放射線核種療法は、癌細胞内に選択的に蓄積するか、または癌細胞の表面に結合する放射性同位元素の全身投与を含む。放射線核種の選択的な蓄積には、増殖速度の速い細胞中への放射線核種の取り込み、特別の標的化のない癌組織による放射線核種の蓄積の種類、または新生物に特異的な生体分子と放射線核種の結合を含むがこれらに限定されない、いくつかの機構が介在する。
【0099】
放射線核種療法に使用可能な代表的な放射性同位元素には、リン32、イットリウム90、ジスプロシウム165、インジウム111、ストロンチウム89、サマリウム153、レニウム186、ヨウ素131、ヨウ素125、ルテチウム177、ならびにビスマス213などがあるがこれらに限定されない。これらの放射性同位元素はいずれも、生体分子と結合して標的化の特異性をもたらす一方で、このような結合なしに、ヨウ素131、インジウム111、リン32、サマリウム153、およびレニウム186を全身投与することができる。当業者であれば、対象となる新生物表面に存在する細胞表面分子を元に、放射線核種療法における特定の新生物への標的化に使用可能な特定の生体分子を選択することができる。特定の細胞に対する特異性をもたらす生体分子の例は、参照により全体が本明細書に組み入れられる、Thomas, Cancer Biother. Radiopharm. 17: 71-82 (2002)の総説に記載されている。また、放射線核種療法に有用な投与法および組成物は、米国特許第6,426,400号、第6,358,194号、第5,766,571号に記載されている。
【0100】
本明細書で用いる「放射線療法」という用語は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意の放射線療法を意味するがこれらに限定されない。例えば放射線療法は、体外照射による放射線療法、温度療法、放射線手術、荷電粒子放射線療法、中性子放射線療法、または光力学療法の場合がある。
【0101】
体外照射による放射線療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。一般に外部照射による放射線療法は、被験対象の体内の一定体積に高エネルギービームを照射することで、対象体積内において細胞死を引き起こす段階を含む。照射体積は好ましくは、治療対象となる癌全体を含み、また好ましくは可能な限りわずかな健康な組織を含む。体外照射による放射線療法に有用な投与法ならびに装置および組成物は、米国特許第6,449,336号、第6,398,710号、第6,393,096号、第6,335,961号、第6,307,914号、第6,256,591号、第6,245,005号、第6,038,283号、第6,001,054号、第5,802,136号、第5,596,619号、ならびに第5,528,652号に記載されている。
【0102】
温度療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、用量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。ある態様では、温度療法は、凍結切除術(cryoablation)の場合がある。他の態様では、温度療法は温熱療法の場合がある。さらに他の態様では、温度療法は、腫瘍の温度を、温熱療法の場合より高く上昇させる療法の場合がある。
【0103】
凍結切除術は、新生物腫瘤を凍結して、細胞内および細胞外における氷晶の蓄積;細胞膜、タンパク質、および細胞小器官の破壊;ならびに高浸透圧環境の誘導に至らせることで細胞死を引き起こす段階を含む。凍結切除術に有用な方法および装置は、Murphy et al., Sem. Urol. Oncol. 19: 133-140 (2001)、ならびに米国特許第6,383,181号、第6,383,180号、第5,993,444号、第5,654,279号、第5,437,673号、および第5,147,355号に記載されている。
【0104】
温熱療法は典型的に、新生物腫瘤の温度を約42℃〜約44℃の範囲に上昇させる段階を含む。癌の温度は、この範囲以上にさらに上昇させることができるが、このような温度は、治療対象となる腫瘍内の細胞死の増加を引き起こさない一方で、周囲の健常組織の損傷度を高める恐れがある。腫瘍は、当業者に既知の任意の手段で温熱療法で加熱することができるが、これらに限定されない。例えば腫瘍は、マイクロ波、高強度集束超音波、強磁性熱源、局所電場、赤外線照射、ウェット型またはドライ型のラジオ波焼灼療法、レーザー光凝固術、レーザー組織内温度療法、および電気焼灼器によって加熱することができるが、これらの方法に限定されない。マイクロ波および電波は、導波管形アプリケータ、ホーン、スパイラル、カレントシート(current sheet)、およびコンパクトアプリケータによって発生させることができる。
【0105】
腫瘍の温度を上げるための他の方法、ならびに装置および組成物は、Wust et al., Lancet Oncol. 3: 487-97 (2002)の総説に記載されており、また米国特許第6,470,217号、第6,379,347号、第6,165,440号、第6,163,726号、第6,099,554号、第6,009,351号、第5,776,175号、第5,707,401号、第5,658,234号、第5,620,479号、第5,549,639号、ならびに第5,523,058号に記載されている。
【0106】
放射線手術は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。一般に放射線手術は、被験対象の体内の一定体積を、マニュアルで位置決めした放射線源に曝露させることで、対象体積内において細胞死を引き起こす段階を含む。照射体積は好ましくは、治療対象となる癌全体を含み、また好ましくは可能な限りわずかな健常組織を含む。典型的には、治療対象となる組織は最初に、従来の外科的手法で露出され、次に放射線源が対象体積に、外科医によってマニュアルで位置決めされる。あるいは放射線源は、例えば腹腔鏡を使用して照射対象組織の近傍に配置することができる。放射線手術に有用な方法および装置は、Valentini et al., Eur. J. Surg. Oncol. 28: 180-185 (2002)、ならびに米国特許第6,421,416号、第6,248,056号、および第5,547,454号に詳しく記載されている。
【0107】
荷電粒子放射線療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。ある態様では、荷電粒子放射線療法は、陽子ビーム放射線療法の場合がある。他の態様では、荷電粒子放射線療法は、ヘリウムイオン放射線療法の場合がある。一般に荷電粒子放射線療法は、被験対象の体内の一定体積に荷電粒子ビームを照射することで、対象体積内において細胞死を引き起こす段階を含む。照射体積は好ましくは、治療対象となる癌全体を含み、また好ましくは可能な限りわずかな健常組織を含む。荷電粒子放射線療法は、米国特許第5,668,371号に記載されている。
【0108】
中性子放射線療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施できるがこれらに限定されない。ある態様では、中性子放射線療法は、中性子捕捉療法の場合がある。このような態様では、中性子照射時に放射線を発し、また新生物腫瘤に選択的に蓄積する化合物が被験対象に投与される。次に、低エネルギーの中性子ビームを腫瘍に照射して化合物を活性化し、癌細胞を死滅させる崩壊生成物を放出させる。活性化される化合物の標的組織への選択的な蓄積は、上述した放射性核種の標的化に有用な任意の方法で、またはLaramore, Semin. Oncol. 24: 672-685 (1997)、および米国特許第6,400,796号、第5,877,165号、第5,872,107号、ならびに第5,653,957号に記載された方法で引き起こすことができる。
【0109】
他の態様では、中性子放射線療法は、高速中性子放射線療法の場合がある。一般に高速中性子放射線療法は、被験対象の体内の一定体積に中性子ビームを照射することで、対象体積内における細胞死を引き起こす段階を含む。
【0110】
光力学療法は、癌の治療または改善に有効な、当業者に既知の任意のスケジュール、線量、または方法で実施することができるがこれらに限定されない。一般に光力学療法は、新生物腫瘤に選択的に蓄積して、新生物を光に対して感作させ、次に腫瘍を適切な波長の光に曝露させる光感受性物質を投与する段階を含む。このような曝露によって、光感受性物質は、例えば癌細胞を死滅させる、一重項酸素などの細胞毒性物質の産生を触媒する。光力学療法に有用な投与法ならびに装置および組成物は、Hopper, Cancel Oncol. 1: 212-219 (2000)、および米国特許第6,283,957号、第6,071,908号、第6,011,563号、第5,855,595号、第5,716,595号、ならびに第5,707,401号に記載されている。
【0111】
作用の任意の特定の理論に束縛することを意図しないが、活性ビタミンD化合物は、放射線療法に対する癌細胞の感受性を高めることが可能であり、また、このような感受性の亢進は、アポトーシスおよび/または細胞周期を調節する細胞機構の変化に起因すると考えられている。活性ビタミンD化合物の投与は、現行の放射線療法には反応しないであろう癌の治療または改善における放射線療法の応用性を高めるだけでなく、同応用性を拡大する可能性もある。さらに、細胞を治療に感受性とすることで、放射線療法に関連する副作用を抑える、低線量の放射線療法の使用が可能となる。
【0112】
腫瘍細胞を破壊する放射線療法は、外科手術の前または後、化学療法の前または後に、また時には化学療法中に行うことができる。放射線療法は、癌の症状を緩和するために、例えば疼痛を和らげるために、予防的な理由でも実施することができる。放射線療法で治療可能な腫瘍のなかには、完全には切除不可能な局所的な腫瘍や転移巣、および完全な切除が、受け入れられない機能上または美容上の損傷を引き起こすか、または受け入れられない外科的リスクに関連する腫瘍がある。
【0113】
癌の治療に使用される特定の放射線量、および投与法はいずれも、さまざまな因子に依存することを理解されたい。したがって、本発明の方法で使用可能な放射線量は、各状況の特定の要件によって決定される。線量は、腫瘍の大きさ、腫瘍の部位、患者の年齢および性別、照射頻度、他の腫瘍の存在、転移の有無などの因子に依存する。放射線療法の当業者であれば、Hall, E. J., Radiobiology for the Radiobiologist, 5th edition, Lippincott Williams & Wilkins Publishers, Philadelphia, PA, 2000; Gunderson, L. L. and Tepper J. E., eds., Clinical Radiation Oncology, Churchill Livingstone, London, England, 2000;およびGrosch, D. S., Biological Effects of Radiation, 2nd edition, Academic Press, San Francisco, CA, 1980を参照することで、任意の特定の腫瘍に対する線量および実施方法を容易に確認することができる。ある態様では、活性ビタミンD化合物の相加的または相乗的な効果のために、放射線治療薬および放射線療法を、当技術分野で周知の用量・線量より低い用量・線量で投与および実施することができる。
【0114】
本明細書に記載される他の治療用薬剤の投与量および投与頻度は、「治療的に有効である」という用語に含まれる。こうした薬剤の投与量および頻度はさらに典型的には、使用される治療用薬剤の種類、膵臓癌の重症度および種類、投与経路、ならびに患者の年齢、体重、反応、および病歴に依存して、各患者に特異的な因子に従って変動する。当業者であれば、このような因子を考慮することにより、また例えば、文献に報告されている投与量、またPhysician's Desk Reference (第56版、2002)に推奨されている投与量に従うことにより、適切な実施法を選択することができる。
【0115】
切除可能な癌を有する動物の場合、活性ビタミンD化合物を、手術前および/または手術後に投与することができる。同様に、化学療法剤および放射線治療薬または放射線治療法を、手術前および/または手術後に投与または実施することができる。
【0116】
化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療の投与または実施前、投与・実施中、投与・実施後における、活性ビタミンD化合物を用いる任意の治療期間を本発明では使用することができる。活性ビタミンD化合物を用いる際の正確な治療期間は、使用される活性ビタミンD化合物、膵臓癌の型、患者、および他の関連因子に応じて変動する。活性ビタミンD化合物は、化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療の投与または実施の前後に、12時間の短期、また3か月間の長期にわたって投与することができる。活性ビタミンDは、化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療の投与または実施の少なくとも1日前または後に、3か月間の長期にわたって、化学療法剤または放射線治療薬もしくは放射線治療の投与もしくは実施の前または後に投与することができる。ある態様では、本発明の方法は、活性ビタミンD化合物を、化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療の投与または実施の前または後に、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、7日毎、8日毎、9日毎、または10日毎に1回、3日〜60日の期間にわたって投与する段階を含む。
【0117】
活性ビタミンD化合物の投与は、化学療法剤もしくは放射線治療薬の投与または放射線治療と同時に継続することができる。加えて、活性ビタミンD化合物の投与は、化学療法剤もしくは放射線治療薬の投与または放射線治療後にも継続することができる。
【0118】
本発明のある態様では、活性ビタミンD化合物を単独で、または化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療と併用して投与または実施する方法を少なくとも1回繰返して実施することができる。この方法は、治療の反応を達成または維持するために、必要に応じて数回(例えば1回〜約10回)繰返すことができる。方法の各反復に関して、活性ビタミンD化合物および化学療法剤もしくは放射線治療薬または放射線治療は、過去の回で使用された場合と同じか、または異なる場合がある。また投与される活性ビタミンD化合物の投与期間および投与様式は、反復毎に変動する場合がある。
【0119】
好ましい態様では、癌は、米国特許第6,087,350号および第6,559,139号に記載されている手順で併用化学療法によって治療される。この態様では、活性ビタミンD化合物は、過増殖疾患の治療用の他の薬剤(特に細胞毒性薬)と併用して投与される。好ましくは、活性ビタミンD化合物による過増殖細胞の前投与の後に細胞毒性薬による治療を行うことで、細胞毒性薬の有効性が高められる。例えば、活性ビタミンD化合物は、化学療法薬の1日前に投与することができる。
【0120】
本発明による治療対象となる可能性のある動物には、本発明の製剤の投与によって利益を得る可能性のある、あらゆる動物が含まれる。このような動物は、ヒト、ペット(イヌやネコなど)、ならびに家畜(ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)が含まれる。
【0121】
以下の実施例は説明目的であり、当業者に周知の本発明の方法および組成物を制限しない。通常、臨床療法の過程で遭遇する、当業者に明らかなさまざまな条件およびパラメータの他の適切な修正および変更は、本発明の趣旨および範囲内にある。
【0122】
実施例1
選択された成分に対するカルシトリオールの相対的な化学的適合性
この実施例では、いくつかの親油性成分、親水性成分、および界面活性物質成分に対するカルシトリオールの相対的な化学的適合性を、40℃および60℃の保存後における完全な状態で維持されたカルシトリオールの回収率(%)を測定することで評価した。カルシトリオール回収率は、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)による解析を元に決定した。得られた結果を表1に示す。
【0123】
(表1)特定の成分で製剤化されたカルシトリオールの回収率(%)
【0124】
この回収率のデータから、極めて適合性の高い成分は、親油性成分グループではMiglyol 812(BHTおよびBHAを含む場合または含まない場合)、Labrafac CC、およびCaptex 200であり、親水性グループではプロピレングリコールであり、界面活性物質グループでは、ビタミンE TPGSおよびGELUCIRE 44/14であることがわかる。
【0125】
実施例2
液体状および半固体状のカルシトリオール製剤の安定性
I.序論
この実施例では、活性型ビタミンD化合物カルシトリオールの安定性を、9種類の異なる製剤(4種類の液体状製剤、および5種類の半固体状製剤)を対象に測定した。
【0126】
II.カルシトリオール製剤の調製
A.液体状製剤
表2に記載された内容物を含む4種類の液体状カルシトリオール製剤(L1〜L4)を調製した。最終製剤は、液体状製剤1 gあたり0.208 mgのカルシトリオールを含む。
【0127】
(表2)液体状カルシトリオール製剤の組成
量はグラムで表記。
【0128】
B.半固体状製剤
表3に記載された内容物を含む5種類の半固体状カルシトリオール製剤(SS1〜SS5)を調製した。最終製剤は、半固体状製剤1 gあたり0.208 mgのカルシトリオールを含む。
【0129】
(表3)半固体状カルシトリオール製剤の組成
量はグラムで表記。
【0130】
C.液体状および半固体状のカルシトリオール製剤の作製法
1.溶媒の調製
表2と表3にそれぞれ記載された、100グラムの4種類の液体状カルシトリオール製剤(L1〜L4)、および5種類の半固体状カルシトリオール製剤(SS1〜SS5)量を以下の手順で調製した。
【0131】
記載された内容物(カルシトリオールを除く)を、適切なガラス容器内で混合し、均一になるまで混ぜた。ビタミンE TPGSおよびGELUCIRE 44/14を60℃で加熱してホモジナイズした後に、秤量して製剤に添加した。
【0132】
2.活性製剤の調製
半固体状溶媒を60℃以下で加熱してホモジナイズした。弱い光の下で、12±1 mgのカルシトリオールの重量を、スクリューキャップ付きの別のガラスボトル内で、各製剤について1本のボトルに入れて測定した(カルシトリオールは光感受性なので、カルシトリオール/カルシトリオール製剤を扱う際は、弱い光/赤色光を使用すべきである。正確な重量を0.1 mg単位まで測定した。カルシトリオールがボトル内に収まったら、直ちにボトルのキャップを締めた。次に、0.208 mg/gの濃度にするために必要な各溶媒の量を以下の公式から算出した:
Cw/0.208=溶媒の必要重量
上式で、Cw=カルシトリオールの重量(mg)、ならびに
0.208=カルシトリオールの最終濃度(mg/g)。
【0133】
最後に適量の各溶媒を、カルシトリオールを含む各ボトルに添加した。この製剤を、カルシトリオールを溶解させるために混合しながら加熱した(≦60℃)。
【0134】
III.カルシトリオール製剤の安定性
9種類のカルシトリオール製剤(L1〜L4およびSS1〜SS5)を、カルシトリオール成分の安定性に関して3通りの温度で解析した。この9種類の製剤の試料をそれぞれ25℃、40℃、および60℃の温度においた。全9種類の製剤について全3通りの温度に対応させた試料を、1週間後、2週間後、および3週間後にHPLCで解析した。また、60℃で行った実験に由来する試料を、9週後にHPLCで解析した。各時点で残存した当初カルシトリオール濃度のパーセントを、各試料について決定した。得られた結果を、表4(液体状製剤)および表5(半固体状製剤)に各試料について示す。
【0135】
(表4)液体状製剤の安定性
*時間ゼロにおける濃度に対する割合(%)
【0136】
(表5)半固体状製剤の安定性
*時間ゼロにおける濃度に対する割合(%)
【0137】
表4および表5に示すように、カルシトリオールは、解析した全製剤(液体および半固体)について分解がほとんどない、比較的安定な状態を維持していた。
【0138】
実施例3
カルシトリオール製剤の外観試験および紫外光/可視光吸収試験
カルシトリオール製剤L1およびSS3を調製後に試験を行い、室温で遮光保存した。表6に、製剤の調製に使用した内容物の量を示す。
【0139】
(表6)吸光度解析に使用したカルシトリオール製剤の組成
量はグラムで表記。
【0140】
これらの製剤は55℃に加温してから使用した。両製剤(液体#1と半固体状製剤#3)をボルテックスミキサーで十分混合時には、外観は透明な液体であった。各カルシトリオール製剤(約250 μL)を25 mL容のメスフラスコに添加した。正確な添加量は、液体#1が249.8 mgで、半固体状製剤#3が252.6 mgであった。ガラスと接触すると、半固体状製剤#3製剤は固化した。次に脱イオン水を、25 mLの印まで添加し、この溶液を均一になるまでボルテックスミキサーで混合した。この時点で外観を観察し、結果として得られた混合物の400 nmにおける吸光度を紫外/可視光分光法で決定した。脱イオン水をブランクとして用いて、400 nmにおける測定値を得た。各試料の測定を10分間かけて10回行った。得られた結果を表7にまとめる。いずれの製剤とも白色で不透明であった。
【0141】
(表7)各製剤の吸収値(400 nm)の読み値
【0142】
実施例4
液体状製剤および半固体状製剤の溶媒(カルシトリオールを含まない)から生成したエマルジョン液滴の径
この実施例では、エマルジョン液滴の平均径を、液体状(L1〜L4)および半固体状(SS1〜SS5)のエマルジョン前濃縮溶媒(カルシトリオールを含まない)を、酵素を含まない模擬胃液(SGF)で希釈した後に測定した。液滴の平均径は光散乱測定で決定した。前濃縮物および結果として得られたエマルジョンの外観を目視検査で判定して併せて記録した。得られた結果を表8にまとめる。
【0143】
(表8)エマルジョン前濃縮溶媒(カルシトリオールを含まない)から生成したエマルジョン液滴の径
*(Z平均をナノメートルで示す)
【0144】
以上の結果から、エマルジョン前濃縮製剤から生成した液滴(粒子)が、外観が不透明にもかかわらず、サブミクロンサイズの液滴であると結論される。
【0145】
実施例5
液体状および半固体状のカルシトリオール製剤から生成したエマルジョン液滴の径
この実施例では、液体#1(L1)および半固体状製剤#3(SS3)のエマルジョン前濃縮物を、酵素を含まない模擬胃液(SGF)で希釈した後に、エマルジョン液滴の平均径を測定した。この実施例は、カルシトリオールを、製剤1 gあたり0.2 mgのカルシトリオールを含む製剤を使用した。液滴の径は、光散乱測定で決定した。結果として得られたエマルジョンの外観を目視検査で判定して併せて記録した。得られた結果を表9にまとめる。
【0146】
(表9)カルシトリオールを含むエマルジョン前濃縮製剤から生成したエマルジョン液滴の径
*(Z平均をナノメートルで示す)
【0147】
実施例6
エマルジョン前濃縮物に由来するカルシトリオールのインビトロにおける分散
この実施例では、ゼラチンカプセル中のさまざまな製剤におけるカルシトリオールの分散の程度を決定した。サイズ2のゼラチンカプセル(各カプセルは0.2 mg カルシトリオール/g製剤を含む)中に250 mgのカルシトリオール製剤を含む1個のカプセルを、200 mLの、酵素を含まない模擬胃液(SGF)に37℃で添加し、パドルを用いて200 RPMで混合した。次に試料を5 μmのフィルターで濾過し、カルシトリオール濃度をHPLCで30分、60分、90分、および120分の時点で解析した。得られた結果を表10に示す。
【0148】
(表10)SGF中への分散と、5 μmのフィルターによる濾過後に濾液中に得られたカルシトリオールのパーセント
#比較用製剤は、Miglyol 812中に溶解した0.2 mg/gのカルシトリオールを、0.05% BHAおよび0.05% BHTとともに含むものとした。この製剤は、Roche Laboratories社から入手可能なROCALTROL製剤と同等である。
【0149】
この実施例からわかるように、模擬胃液中における、L1製剤またはSS3製剤のいずれかを含むカプセルからのカルシトリオールの分散は、比較用製剤(Roche Laboratories社から入手可能なROCALTROL製剤の同等品)を含むカプセルについて観察される結果と比較して、かなり規模が大きかった。
【0150】
実施例7
イヌにおけるカルシトリオールの血漿濃度および薬物動態
イヌを対象とした薬物動態試験で、ROCALTROL、液体状製剤(液体#1)、および半固体状製剤(半固体状製剤#3)の3種類の異なる製剤を用いた1.0 μg/kgの投与後の血漿カルシトリオール濃度を比較した。4頭のイヌに1.0 μg/kgのROCALTROL、半固体状製剤、または液体状製剤を経口投与した。複数種の製剤をイヌに使用する場合は、各製剤の投与間に最短7日間のウォッシュアウト期間を設けた。
【0151】
カルシトリオール濃度の解析を目的として、血液試料を、投与前と、投与の0.5時間後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、24時間後、36時間後、および48時間に採取した。臨床化学試験用の血液試料を、ROCALTROL群に関して、投与前と、投与の24時間後と48時間後に得た。また試料を、半固体状製剤および液体状製剤に関して、投与前と、投与の4時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、および120時間後に得た。カルシトリオールに関して、試料をラジオイムノアッセイ法で解析し、薬物動態解析を行った。
【0152】
3種類の製剤について、血漿カルシトリオール濃度の経時的変化を図1に図示した。
【0153】
1.0 μg/kgの共通用量における、3種類の異なる製剤の1種類としてのカルシトリオールの薬物動態を表11〜14にまとめた。
【0154】
(表11)イヌにおけるカルシトリオール関連パラメータの要約
aメジアンおよび範囲で表記。
bジャックナイフ分散に基づく調和平均および擬似SDで表記。
【0155】
(表12)ROCALTROL(1 μg/kg)の単回投与後のイヌにおけるカルシトリオールの血漿濃度(pg/mL)および薬物動態パラメータ
aメジアンおよび範囲で表記。
bジャックナイフ分散に基づく調和平均および擬似SDで表記。
太字は、λの計算に使用。
【0156】
(表13)半固体状製剤#3(1 μg/kg)の単回投与後のイヌにおけるカルシトリオールの血漿濃度(pg/mL)および薬物動態パラメータ
aメジアンおよび範囲で表記。
bジャックナイフ分散に基づく調和平均および擬似SDで表記。
太字は、λの計算に使用。
【0157】
(表14)液体#1製剤(1 μg/kg)の単回投与後のイヌにおけるカルシトリオールの血漿濃度(pg/mL)および薬物動態パラメータ
aメジアンおよび範囲で表記。
bジャックナイフ分散に基づく調和平均および擬似SDで表記。
太字は、λの計算に使用。
【0158】
この試験の結果から、これらの本発明の特定の製剤とROCALTROLとの間の薬物動態に、以下に示すように、ある程度の差および類似性があることがわかる:
・Cmaxは、ROCALTROL製剤の場合と比較して、液体状および半固体状の製剤で約3倍高かった。
・Cmaxには、ROCALTROL製剤の場合(2〜4時間)と比較して、液体状および半固体状の製剤では、短時間(1〜2時間)で達した。
・全体的な全身曝露(AUC0-4)は3種類の製剤で同等であったが、最初の24〜48時間における全身曝露は、ROCALTROLの場合と比較して、液体状および半固体状の製剤では大きかった。
【0159】
前述の結果から、液体状製剤#1が最高のCmaxと最大のAUCカルシトリオール値を示し、すぐ次に半固体状製剤#3が続くことがわかる。ROCALTROL製剤はCmaxおよびAUC値が最も低かった。液体状製剤#1および半固体状製剤#3は、最初の12時間では、かなり速く吸収され、高い血漿濃度がより高く、またより速やかな消失速度を示すようである。
【0160】
実施例8
用量増加時における半固体状製剤#3の薬物動態
この試験では、経口投与量を増加した時の半固体状製剤の薬物動態をイヌを対象に調べた。3頭の雄と3頭の雌のビーグル犬に、0.5 g/kg(全6頭)、0.1 μg/kg(雄1頭と雌1頭)、5.0 μg/kg(雄2頭と雌2頭)、ならびに10.0 μg/kg(全てのイヌ)を単回経口投与した。10.0 μg/kgの投与後に、雄と雌の各2頭を安楽死させた。残りの雄と雌の個体については試験を継続し、30.0 μg/kgおよび100.0 μg/kgを投与した。各投与後に、対象個体には6日間の回復期間を設けた。
【0161】
血液試料(約1 mL)を各個体から、投与前と、投与の0時間後、2時間後(0.5 μg/kgの投与を除くすべて)、4時間後、8時間後、24時間後、48時間後、および96時間後に採取した。試料を対象に、カルシトリオールの解析をラジオイムノアッセイ法で行い、また薬物動態解析を行った。カルシトリオールの血漿濃度を、雄と雌について図2Aと図2Bに図示する。
【0162】
半固体状製剤#3の投与時には、最高血漿濃度は通常、2時間後の採取時で認められた。0.1 μg/kg以上の投与時の血漿濃度は、24〜96時間の期間と比較して、最初の8時間に、より速やかに低下する傾向が認められた。
【0163】
0.1 μg/kgの最低用量において、カルシトリオールの血漿濃度は、24時間後に定量限界未満に低下した。0.5 μg/kg、またはそれ以上の場合、測定可能な濃度のカルシトリオールが、96時間後の採取時に維持されていた。雄および雌の個体間に何ら顕著な差はみられないようであった。
【0164】
0.1〜100.0 μg/kgの投与時における半固体状製剤#3の薬物動態パラメータを表15にまとめる。
【0165】
(表15)カルシトリオール(半固体状製剤#3)の用量増量時におけるカルシトリオールの薬物動態
【0166】
以上の薬物動態の結果から以下の事項が明らかとなった:
・カルシトリオールの全身曝露は、0.1〜100.0 μg/kgの試験用量の全体を通して、かなりの直線性を示すようであった。吸収の飽和は認められなかった
・カルシトリオールの半減期は用量依存性を示すようであった。半減期が24時間を超える製剤は、高用量のパルス投与にはそれほど適していない。
・半固体状製剤#3の週1回の投与(5.0 μg/kg以上)では、血漿中にある程度の蓄積が認められた。蓄積は、0.1 μg/kgおよび0.5 μg/kgの低用量では一貫していなかった。
【0167】
実施例9
イヌを対象とした半固体状製剤#3の28日間にわたる経口毒性試験
この試験では、半固体状製剤#3の28日間にわたる反復投与毒性試験をイヌを対象に実施し、週に1回の経口カプセル投与後におけるカルシトリオールの薬物動態の評価を行った。半固体状製剤#3、または対照製カプセル剤を、試験日0日目、7日目、14日目、21日目、および28日目に投与した。12頭のイヌ(雄6頭、雌6頭)に溶媒対照(第1群)を投与し、8頭のイヌ(雄4頭、雌4頭)に0.1 μg/kgの半固体状製剤#3(第2群)を投与し、また8頭のイヌ(雄4頭、雌4頭)に1.0 μg/kgの半固体状製剤#3(第3群)を投与した。12頭のイヌ(雄6頭、雌6頭)に30.0 μg/kgの半固体状製剤#3を0日目に投与した(第4群)。0日目における最初の30 μg/kgの投与後に観察された臨床反応が重度であったため、この群における用量レベルを10 μg/kg(雄を対象に7日目、14日目、21日目、および28日目)、または5 μg/kg(雌を対象に7日目、14日目、21日目、および28日目)に減じた。血液試料を各個体から、投与前と、試験日0日目(最初の投与)および21日目(週1回の投与の4回目)の投与の1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、24時間後、および48時間後に採取した。全個体を、試験開始から29日目に屠殺した。
【0168】
第2〜第4群における血漿中のカルシトリオールの薬物動態の結果を表16にまとめる。
【0169】
(表16)イヌを対象とした半固体状製剤#3の週1回の投与後におけるカルシトリオールの平均毒物動態パラメータ
aTmaxの値はこのパラメータについてはメジアン値である。他のすべてのパラメータは平均値を示す。
b半固体状製剤#3の用量を、試験開始後の7日目から減少させた。
溶媒対照を投与したイヌ(第1群)で得られたデータについては、薬物動態解析を行わなかった。
【0170】
図3Aおよび図3Bは、雄(図3A)および雌(図3B)のビーグル犬を対象とした、半固体状製剤#3の経口カプセル投与後の試験日0日目および21日目における、カルシトリオールに関する、補正後の血漿濃度・時間曲線を示す。0日目の0時間の時点におけるカルシトリオール値を、すべての時点の値から差し引くことで、内因性(ベースライン)の血漿カルシトリオールを補正した。
【0171】
試験の結果から、以下の事項が明らかとなった:
・半固体状製剤#3の経口カプセル投与後に、カルシトリオールの血漿濃度は、かなり迅速に上昇し、2時間以内に最高血漿濃度に達した。
・カルシトリオールの血漿濃度は、後半(24〜48時間)と比較して、投与直後の8時間で、より速やかな速度で低下した。これは、カルシトリオールが血管外空間に再分布後に、カルシトリオールが緩やかに血管内空間へ再放出したことを示していると考えられる。この結果は、低用量レベルより高用量レベルで明瞭であった。
・投与の24時間後の時点で、カルシトリオールの血漿濃度は、0.1 μg/kgの低用量においてベースライン近くの値に低下していた。しかし、高用量のカルシトリオールでは、用量関連性のカルシトリオール残存濃度が、最終採取時点(48時間)では依然として明らかであったが、すべての値は、投与前(ベースライン)の値に、投与から1週間以内に戻った。
・CmaxおよびAUCの値は、検討用量(0.1〜30.0 μg/kg)の全体を通して、用量に対してかなり比例した。
・有害作用が認められなかった濃度である低用量(0.1 μg/kg)におけるAUC0-24の値は1840.6〜3283.0 pg・hr/mLであった。
・最大耐量であった中用量(1.0 μg/kg)におけるAUC0〜24の値は12,947.3〜23,259.7 pg・hr/mLであった。
・体重減少と中程度の毒性徴候に関連した用量におけるAUC0-24の値は46,878.1 pg・hr/mL(5.0 μg/kg;雌)〜173,597.2 pg・hr/mL(10.0 μg/kg;雄)であった。
・死亡例に関連した用量(30.0 μg/kg)におけるAUC0-24の値は323,573.1〜496,044.6 pg・hr/mLであった。
・どの薬物動態パラメータでも、一貫した性差は認められなかった。
【0172】
全体的に個体は、CmaxおよびAUCの値が1.0 μg/kgの雌への投与(雄では明らかでない)において21日目より0日目が高値であるなどの数例の例外を除いて、最初の投与と週1回の反復投与後にカルシトリオールを同様に処理するようであった。
【0173】
実施例10
3種類の異なる製剤の急性毒性試験
実施例7に記載された試験では、臨床化学パラメータを含む複数の生存中パラメータを追跡して、カルシトリオール製剤の毒性の評価が行われた。血液試料の解析を、カルシウム、リン、血液尿素窒素(BUN)、グルコース、アルブミン、ビリルビン(総)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ(AP)、およびクレアチニンに関して行った。
【0174】
臨床毒性は、3種類の製剤のいずれかを投与したどの個体でも認められなかった。
【0175】
高カルシウム血症が、全3種類の製剤の1.0 μg/kgの投与後に認められた。3種類の異なる製剤による血清カルシウム値の群の平均および個々の範囲を表17に示す。
【0176】
(表17)血清カルシウム濃度の群平均(mg/dL)
a既存範囲(historical range)
b既存平均(historical mean)
*既存範囲から外れた平均
NA=データなし(血清試料を非採取)
【0177】
カルシウム値の上昇に加えて、ALT、AST、BUN、およびクレアチニン値の上昇がすべての群で認められた。
【0178】
要約すると、この試験の結果から、以下の事項が明らかとなった:
・投与に関連した臨床徴候は、投与された薬剤の種類(ROCALTROL、液体状または半固体状)を問わず、どの個体でも明らかではなかった。
・1.0 μg/kg PO投与時の高カルシウム血症は、3種類すべての製剤投与時に認められた。
・高カルシウム血症の経時的変化は、全3種類の製剤について48時間後まで同等であり、ROCALTROL群の採取は48時間以降は延長しなかった。
・高カルシウム血症の重症度は、3種類の製剤で同等であり、最も高い血清カルシウム(17.0 mg/dL)は、液体状製剤を投与した個体で24時間後の時点で認められた。
・ALT、AST、BUN、およびクレアチニンの平均値が、全投与群において1つまたは複数の時点において既存範囲(historical range)外で認められた。
・BUNおよびクレアチニンの上昇は、液体状製剤投与群または半固体状製剤投与群で大きかった。対応する対照群が存在しないため、この結果の有意性は不明である。
【0179】
実施例11
急性最大耐量試験
実施例8に記載された試験では、半固体状製剤#3による急性毒性および高カルシウム血症の作用の評価も行い、最大耐量を推定し、また将来の試験のための用量選択用のデータを得た。
【0180】
カルシウム値は、雄(図4A)および雌(図4B)の全用量レベルにおいて用量相関的に上昇した。0.001 μg/kgおよび1.0 μg/kgの用量の血清カルシウムのデータを、実施例10に記載された試験で雄の個体で得て、データを完全なものとするために、ここで組み入れた。
【0181】
要約すると、0.1 μg/kg、0.5 μg/kg、5.0 μg/kg、10.0 μg/kg、30.0 μg/kg、および100.0 μg/kgの量の半固体状製剤#3を、カプセル剤として雄および雌のビーグル犬に経口投与した結果、以下の事項が明らかとなった:
・用量依存性の高カルシウム血症が、最も一般的な臨床検査異常であった。
・クレアチニン、尿素窒素、コレステロール、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、および好中球の増加、ならびにリンパ球の減少が、5.0 μg/kg、またはそれ以上の用量で認められた。
・体重および摂食量は、30.0 μg/kgおよび100.0 μg/kgの用量の投与後に顕著に減少した。100.0 μg/kgの投与後には、顕著に痩せた外見と、活動度の明らかな低下が個体に認められた。
【0182】
以上の結果に基づき、イヌにおける半固体状製剤#3の最大耐量は5.0 μg/kgと推定された。
【0183】
実施例12
28日間の反復投与毒性試験
実施例9に記載された試験では、イヌへの7日毎の28日間にわたる経口(カプセル)投与時における半固体状製剤#3製剤による潜在的な毒性に関する個体の評価も行った。試験には、全個体を対象とした、臨床徴候、体重、摂食、薬物動態、臨床病理(生化学、血液病学的検査、凝固、および尿検査を含む)の評価、眼、心臓、全体的な死体解剖、臓器重量、および全項目の病理組織像の評価を含めた。試験デザインを表18にまとめる。
【0184】
(表18)イヌを対象とした28日間にわたる反復投与試験の試験デザイン
*試験薬剤(カルシトリオール、半固体状製剤#3)は、1 gあたり0.1 mgのカルシトリオールを含む製剤である。
**第2週に用量を雄では10 μg/kgに、雌では5 μg/kgに減じた。生存している全個体を29日目に安楽死させた。
【0185】
第4群の4頭(雄1頭と雌3頭)は、試験開始から3日以内に死亡したか、または安楽死させた。7日目における用量レベルの減少後に死亡例はなかった。また第1群、第2群、または第3群に死亡例はなかった。
【0186】
死亡した第4群の個体のうち、死亡に先立つ最も注目に値する臨床的異常には主に、赤色の吐瀉物(red vomitus)、排便の減少/喪失、血色の軟便、赤色の鼻汁、浅く速い呼吸、活動低下、および横臥位などがあった。
【0187】
用量関連性の体重減少、体重増加の減少、および摂食量の減少が、第3群と第4群の個体で認められた。具体的には、第3群の個体は対照群より約11〜12%低く、第4群の個体は対照群より17〜24%低かった。体重増加または摂食に対する作用は、第2群の個体では明瞭には認められなかった。
【0188】
第4群の個体で29日目に複数のRBCおよびWBCのパラメータが上昇する傾向が認められた。また、毒物学的に有意な血液学的異常は、第2群および第3群の個体では明瞭には認められなかった。
【0189】
用量依存性の高カルシウム血症が第3群と第4群の個体に認められた。カルシウム値は、投与後6時間まで上昇し、投与後24時間までに最大となり、投与後の48時間および96時間の時点で次第に低下した。第3群と第4群の個体に認められた他の臨床化学的異常には、血清タンパク質やコレステロール量の増加、および腎機能パラメータの上昇、また電解質および尿比重の低下などがあった。毒物学的に有意な臨床化学的異常、または血清カルシウムの顕著な増加は、第2群の個体では認められなかった。
【0190】
投与に関連した変化は、眼組織で試験日22/23には認められず、また投与に関連した変化は、この試験で得られたECGおよび血圧のデータで認められなかった。
【0191】
死亡した、または安楽死させた第4群の個体、ならびに消化器系および関連臓器に病変のある同群の個体でみられた、全体的な死体解剖時の最も著明な異常は以下の通りであった:暗赤色の網、赤色〜暗赤色の粘膜、小腸および胃における赤色の体液、食道および大腸における赤色〜暗赤色の粘膜、胆嚢の着色および肥厚化、心臓の血栓、肺における暗赤色およびまだらの領域、赤色〜暗赤色の膵臓、暗赤色の甲状腺、膀胱の肥厚化、および青白色の脾臓。全体的な異常は第3群の個体で、それほど重度ではなかった。第2群の個体では、顕著な全体的な異常は認められなかった。
【0192】
主な組織病理学的異常は、用量関連性の慢性間質性腎炎であった。これは、第3群の個体では軽度〜中等度であり、第4群の個体では中等度〜重度であった。これらの個体に認められた他の顕微鏡的所見は、慢性間質性腎炎に起因するものと考えられ、さまざまな臓器/組織の石灰化などが含まれた。第2群の個体では、顕微鏡的病変は認められなかった。
【0193】
血清カルシウムの最高値は通常、投与後の24時間以内に認められ、次回の投与前採取までの間にベースライン値に戻った。血漿カルシトリオールと比較した、血清カルシウムに関するデータの一部(21日目の雄)を図5A〜5Cに示す。これらのデータから、カルシトリオールの最高血漿濃度が通常、カルシウムが最大血清濃度に達する十分前にみられることがわかる。
【0194】
要約すると、半固体状製剤#3をイヌに、雄および雌のビーグル犬に、30.0 μg/kgの最初の投与後、7日毎に0 μg/kg、1.0 μg/kg、および5.0 μg/kg(雌)、または10.0 μg/kg(雄)の用量で経口投与したこの試験では、以下の事項が明らかとなった:
・有害作用が観察されなかったレベルは0.1 μg/kgであった。最大耐量は1.0 μg/kgであった。30 μg/kgで死亡例が認められた。
・消化器系および関連臓器における用量関連病変、体重増加の減少、および摂食量の減少が、第3群および第4群で認められた。
・用量関連性の慢性間質性腎炎が、第3群および第4群で認められた。
【0195】
実施例13
ヒトを対象とした薬物動態試験
ヒトを対象とした半固体状製剤#3の薬物動態を臨床試験で評価した。この試験では、最大90 μgのカルシトリオールの用量で、半固体状製剤#3を患者に投与した。薬物動態試験の中間結果を以下に述べる。
【0196】
血液試料を、投与前と、半固体状製剤#3の最初の投与後の0.5時間、1.0時間、1.5時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間、24時間、48時間、および72時間の時点で採取した。カルシトリオール値は、市販のラジオイムノアッセイ法で解析した(希釈の完全性については検証は限定的)。
【0197】
平均血漿濃度・時間曲線を各群についてプロットした(図6)。非区画(non-compartmental)薬物動態パラメータを各被験者について計算した後に平均化した(表19)。ベースラインのカルシトリオール値を投与後の値から差し引き、内因性カルシトリオールについて補正を行った。
【0198】
(表19)用量群別の半固体状製剤#3の薬物動態パラメータ
*ジャックナイフ分散に基づく調和平均;**n=1;***n=2
【0199】
以上のデータから、半固体状製剤#3の薬物動態が直線的で推定可能なことがわかる。吸収が飽和することを示す証拠は得られなかった。
【0200】
実施例14
半固体状製剤#3の安全性試験の結果
ヒトにおける半固体状製剤#3の安全性を臨床試験で評価した。2002年5月8日の時点で12人の患者が、この試験で半固体状製剤#3の投与を受けた。内訳は、第1群(15 μg)が3人、第2群(30 μg)が3人、また第3群(60 μg)が6人であった。最初の9人の患者で得られた薬物動態の中間結果について以下に説明する。
【0201】
死亡例はなかった。34件の有害事象が9人中8人の患者で認められた。34件の有害事象のうち20件が、半固体状製剤#3との関連性がある可能性があると考えられた。1件の重篤な有害事象が第3群で認められ、これは無関係であると治験担当医によって考えられた。この患者は、一過性のグレード1の発熱を1日目に示し、入院期間が延長された。試験薬に関連すると考えられたグレード2またはグレード3の有害事象を表20に挙げる。
【0202】
(表20)試験薬に関連すると考えられたグレード2またはグレード3の有害事象
【0203】
半固体状製剤#3を用いた第1相試験の中間結果から、以下の事項が明らかとなった:
・半固体状製剤#3の最大耐量は第1相試験では決定されなかった。第3群(60 μg)の別の患者の評価が進行中である。
・半固体状製剤#3の薬物動態は、当初の3つの用量群全体で直線的で推定可能であるようであった。
【0204】
実施例15
追加的な組成物
経口投与用の硬ゼラチンカプセル中への半固体#3の調製時に、カプセルから内容物の漏れが認められた。さまざまな親油相成分および界面活性物質、ならびにさまざまなパーセンテージの各成分を含む新しい組成物を検討して、この問題の解決につながると思われる組成物を同定した。このような組成物を表21に挙げる。
【0205】
(表21)追加的な検討対象組成物
【0206】
親油相成分以外の複数の界面活性物質を含む他の組成物も検討した。組成物は、ビタミンE TPGSと、Gelucire 44/14またはGelucire 50/13のいずれかを1:1の組み合わせとした。
【0207】
漏れに耐性を示す組成物が同定された。
【0208】
実施例16
安定な単位剤形
カルシトリオールの剤形を調製して得られた組成物を表22に示す。ビタミンE TPGSを約50℃に加熱し、MIGLYOL 812と適切な比で混合した。BHAおよびBHTを各剤形に添加し、最終調製物中における割合をそれぞれ0.35%(w/w)とした。
【0209】
(表22)カルシトリオールの剤形
【0210】
製剤の調製後に、製剤2〜4を約50℃に加熱し、カルシトリオールと混合して、0.1μgカルシトリオール/mg全製剤を得た。次に、カルシトリオールを含む製剤を25 mL容のメスフラスコに添加し(約250μL)、脱イオン水を25 mLの目盛りまで加えた。次に同溶液をボルテックスミキサーで攪拌し、混合直後と、混合後の最長10分間まで、400 nmにおける各剤形の吸光度(初期)を測定した。表23に示すように、全3種類の剤形について、水の混合時に乳白色の溶液が得られた。剤形4については、10分後の時点において400 nmにおける吸光度に観察可能な変化が見られず、安定な懸濁物を生成したように見受けられた。
【0211】
(表23)水に懸濁した製剤の吸光度
【0212】
カルシトリオールの製剤をさらに評価するために、溶解性試験を実施して、各製剤に溶解するカルシトリオールの量を評価した。0.1〜0.6μgカルシトリオール/mg製剤のカルシトリオール濃度を、製剤を50℃に加熱後に適切な重量のカルシトリオールを添加することで調製した。次に同製剤を室温まで冷却し、不溶性のカルシトリオールの存在を光学顕微鏡で確認した(必要に応じて偏光を使用)。各製剤について、カルシトリオールは、検討した最高濃度(0.6μgカルシトリオール/mg製剤)において可溶性であった。
【0213】
進行中の第2相ヒト臨床試験では、45μgのカルシトリオール用量が使用されている。この投与量のカプセルを作製するために、0.2μgカルシトリオール/mg製剤と、各0.35%(w/w)のBHAおよびBHTの各製剤を調製した。バルクの製剤混合物をサイズ3の硬ゼラチンカプセルに225 mgの重量(カルシトリオールとして45μg)となるように充填した。次に同カプセルの5℃、25℃/60%相対湿度(RH)、30℃/65% RH、および40℃/75% RHにおける安定性を解析した。適切な時点で、安定性試料を対象に、完全なカルシトリオールの含量およびカプセルの溶解を解析した。カプセルのカルシトリオール含量を、3個の開いたカプセルを5 mLのメタノールに溶解し、解析まで5℃で維持することで決定した。次に、溶解した試料を逆相HPLCで解析した。Phemonex Hypersil BDS C18カラム(30℃)を、アセトニトリル勾配(55%アセトニトリル〜95%アセトニトリル;溶媒は水)で使用した(溶出時の流速は1.0 mL/分)。ピークが265 nmで検出され、25μLの試料を各実験用に注入した。試料のピーク面積を標準と比較することで、カルシトリオール量を算出した(表24)。1個のカプセルを、0.5%ドデシル硫酸ナトリウムを含む50 mLの脱イオン水を入れた6つの低容量溶解試験用容器のそれぞれに収容して溶解試験を行った。試料を75 rpmで37℃で混合した30分後、60分後、および90分後に採取した。100μLの試料を、30℃で1 mL/分で操作したBetasil C18カラム(移動相は50:40:10のアセトニトリル:水:テトラヒドロフラン)に注入することで、試料のカルシトリオール含量を決定した(ピーク検出波長265 nm)。6個のカプセルを対象とした90分の溶解試験の結果の平均値を得た(表25)。
【0214】
(表24)硬ゼラチンカプセル中におけるカルシトリオール製剤の化学的安定性(1カプセル当たりの総重量225 mg、カルシトリオールは45μg)
a.アッセイ法の結果は、1カプセル当たり45μgの含量に基づく期待値に対するカルシトリオールの割合(%)を示す。値は、カルシトリオールの活性異性体であるプレカルシトリオールを含む。
【0215】
(表25)硬ゼラチンカプセル中におけるカルシトリオール製剤の物理的安定性(1カプセル当たりの総重量225 mg、カルシトリオールは45μg)
a.記載の手順でカプセルの溶解を行い、カルシトリオールの割合(%)を、1カプセル当たり45μgのカルシトリオールの標準量および予想含量を元に算出する。活性異性体であるプレカルシトリオールは、溶解したカルシトリオールの割合(%)の計算に含まれない。報告値は90分時点の試料についての値。
【0216】
化学的安定性試験の結果から、表24に示すように、MIGLYOL 812含量の減少と、これに伴うビタミンE TPGS含量の増加が、完全なカルシトリオールの回収率の促進につながることがわかった。剤形4(50:50 MIGLYOL 812/ビタミンE TPGS)が、化学的に最も安定な剤形であり、25℃/60% RHで3か月後の時点における完全なカルシトリオールの回収率は、わずかに低下しただけであり、室温での保存が可能となる。
【0217】
剤形の物理的安定性は、各安定性条件での保存後におけるカプセルの溶解性によって評価した。化学的安定性に関しては、MIGLYOL 812含量の減少とビタミンE TPGS含量の増加は、製剤の溶解性を改善した(表25)。剤形4(50:50 MIGLYOL 812/ビタミンE TPGS)が、室温保存で適切な安定性を示し、最良の溶解性を示した。
【0218】
実施例17
剤形4の薬物動態
実施例16における剤形4(#4)の薬物動態学的特性を、半固体#3(SS3)と比較する実験を行った。カルシトリオールを#4剤形およびSS3剤形中に調製し、1カプセル当たり4.5μgのカルシトリオールを含むカプセルとして製剤化した。1個のカプセルを20頭の雄のビーグル犬に経口投与した(用量は約0.5μg/kg体重)。イヌの半数には1日目に#4カプセルを、7日目にSS3カプセルを与えた。残る10頭には、1日目にSS3カプセルを、7日目に#4カプセルを与えた。各投与の60分前、40分前、および20分前に、また各投与の0.5時間後、1時間後、1.5時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、10時間後、12時間後、24時間後、36時間後、48時間後、および96時間後に血液を採取した。血液試料中のカルシトリオールレベルの薬物動態学的解析を行った。結果を表26に示す。
【0219】
(表26)SS3剤形および#4剤形中のカルシトリオールの薬物動態の比較
【0220】
データからわかるように、#4剤形およびSS3剤形は極めて似た薬物動態を示すので、生物学的に同等である。
【0221】
本発明について十分説明したが、本発明が、広範囲かつ等価な条件、製剤、および他のパラメータの範囲で、本発明の範囲または本発明の任意の態様に影響することなく実施可能なことが当業者には理解される。本明細書に引用された、すべての特許、特許出願、および刊行物は、全体が参照として本明細書に完全に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】イヌにおける、カルシトリオール(1 μg/kg)の3種類の異なる製剤の投与後の時間に対するカルシトリオールの平均血漿濃度を示すグラフ図である。
【図2】図2Aおよび2Bは、雄(図2A)および雌(図2B)のイヌへの半固体状製剤#3の用量増加時におけるカルシトリオールの平均血漿濃度・時間曲線を示すグラフ図である。
【図3】図3Aおよび3Bは、半固体状製剤#3投与後における、雄(図3A)および雌(図3B)のイヌにおけるカルシトリオールの血漿濃度・時間曲線を示すグラフ図である。
【図4】図4Aおよび4Bは、雄(図4A)および雄(図4B)のイヌへの半固体状製剤#3の用量増加時における平均血清カルシウムを示すグラフ図である。
【図5】図5A〜5Cは、雄イヌへの半固体状製剤#3の投与後における血漿カルシトリオールおよび血清カルシウムのデータを示すグラフ図である。
【図6】半固体状製剤#3の投与後におけるヒト用量群別のカルシトリオールの平均血漿濃度を示すグラフ図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)親油相成分、
(b)1種類もしくは複数の界面活性物質、および
(c)活性ビタミンD化合物;
を含む薬学的組成物であって、親油相成分と1種類もしくは複数の界面活性物質との以下の組み合わせの1つを含み、ここで各成分のパーセンテージは、活性ビタミンD化合物を除く組成物の総重量に基づく重量パーセントで示す、組成物:
a. Gelucire 44/14 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
b. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約40%;
c. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約30%;
d. Gelucire 44/14 約40%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約30%;
e. Gelucire 44/14 約40%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約40%;
f. Gelucire 44/14 約30%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約40%;
g. Gelucire 44/14 約20%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約50%;
h. ビタミンE TPGS 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
i. Gelucire 44/14 約60%
ビタミンE TPGS 約25%
MIGLYOL 812 約15%;
j. Gelucire 50/13 約30%
ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約65%;
k. Gelucire 50/13 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
l. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約40%;
m. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約30%;
n. Gelucire 50/13 約40%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約30%;
o. Gelucire 50/13 約40%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約40%;
p. Gelucire 50/13 約30%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約40%;
q. Gelucire 50/13 約20%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約50%;
r. Gelucire 50/13 約60%
ビタミンE TPGS 約25%
MIGLYOL 812 約15%;
s. Gelucire 44/14 約50%
PEG 4000 約50%;
t. Gelucire 50/13 約50%
PEG 4000 約50%;
u. ビタミンE TPGS 約50%
PEG 4000 約40%;
v. Gelucire 44/14 約33.3%
ビタミンE TPGS 約33.3%
PEG 4000 約33.%3
w. Gelucire 50/13 約33.3%
ビタミンE TPGS 約33.3%
PEG 4000 約33.3%;
x. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約50%;
y. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約50%;
z. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約95%;
aa. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約65%
PEG 4000 約30%;
ab. ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約90%;
ac. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約85%
PEG 4000 約10%;および
ad. ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約80%
PEG 4000 約10%。
【請求項2】
活性ビタミンD化合物、約50%のMIGLYOL 812、約50%のビタミンE TPGS、約0.35%のブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、および約0.35%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む薬学的組成物。
【請求項3】
活性ビタミンD化合物がカルシトリオールである、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
抗酸化剤、緩衝剤、消泡剤、デタッキファー(detackifer)、保存剤、キレート剤、粘性調整剤(viscomodulator)、等張剤(tonicifier)、香味剤(flavorant)、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁剤、結合剤、充填剤、可塑剤、濃化剤、および潤滑剤からなる群より選択される少なくとも1種類の添加剤をさらに含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項5】
添加物の1つが抗酸化剤である、請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項6】
抗酸化剤が、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、BHA、BHT、メタ重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびトコフェロールからなる群より選択される、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
経口投与に適合させた、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項8】
単位剤形である、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
単位用量当たり1〜400μgの活性ビタミンD化合物を含む、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
単位用量当たり45μgの活性ビタミンD化合物を含む、請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項11】
活性ビタミンD化合物がカルシトリオールである、請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項12】
単位剤形がカプセルである、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項13】
カプセルがゼラチンカプセルである、請求項12記載の薬学的組成物。
【請求項14】
ゼラチンカプセル中に存在する内容物の総容量が10〜1000μLである、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項15】
ゼラチンカプセル中に存在する内容物の総重量が10〜1500 mgである、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項16】
請求項1または2記載の薬学的組成物をそれを必要とする患者に投与する段階を含む、過増殖疾患の治療法または予防法。
【請求項17】
過増殖疾患が癌である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
過増殖疾患が乾癬である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
薬学的組成物がパルス投与によって投与され、パルス投与が3日間に1回以内の組成物の患者への投与を含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
投与が1週間に1回以内で行われる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
投与が3週間に1回以内で行われる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療を投与/実施する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項23】
活性ビタミンD化合物が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施の少なくとも12時間前に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
活性ビタミンD化合物が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施の1日〜約3か月前に投与される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
活性ビタミンD化合物が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施と同時に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項26】
活性ビタミンD化合物の投与が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施以降も継続される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
活性ビタミンD化合物が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施後に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項28】
活性ビタミンD化合物が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施の1日前に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項29】
活性ビタミンD化合物、および1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療が3週間に1回以内で投与/実施される、請求項22記載の方法。
【請求項1】
(a)親油相成分、
(b)1種類もしくは複数の界面活性物質、および
(c)活性ビタミンD化合物;
を含む薬学的組成物であって、親油相成分と1種類もしくは複数の界面活性物質との以下の組み合わせの1つを含み、ここで各成分のパーセンテージは、活性ビタミンD化合物を除く組成物の総重量に基づく重量パーセントで示す、組成物:
a. Gelucire 44/14 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
b. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約40%;
c. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約30%;
d. Gelucire 44/14 約40%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約30%;
e. Gelucire 44/14 約40%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約40%;
f. Gelucire 44/14 約30%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約40%;
g. Gelucire 44/14 約20%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約50%;
h. ビタミンE TPGS 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
i. Gelucire 44/14 約60%
ビタミンE TPGS 約25%
MIGLYOL 812 約15%;
j. Gelucire 50/13 約30%
ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約65%;
k. Gelucire 50/13 約50%
MIGLYOL 812 約50%;
l. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約40%;
m. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約30%;
n. Gelucire 50/13 約40%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約30%;
o. Gelucire 50/13 約40%
ビタミンE TPGS 約20%
MIGLYOL 812 約40%;
p. Gelucire 50/13 約30%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約40%;
q. Gelucire 50/13 約20%
ビタミンE TPGS 約30%
MIGLYOL 812 約50%;
r. Gelucire 50/13 約60%
ビタミンE TPGS 約25%
MIGLYOL 812 約15%;
s. Gelucire 44/14 約50%
PEG 4000 約50%;
t. Gelucire 50/13 約50%
PEG 4000 約50%;
u. ビタミンE TPGS 約50%
PEG 4000 約40%;
v. Gelucire 44/14 約33.3%
ビタミンE TPGS 約33.3%
PEG 4000 約33.%3
w. Gelucire 50/13 約33.3%
ビタミンE TPGS 約33.3%
PEG 4000 約33.3%;
x. Gelucire 44/14 約50%
ビタミンE TPGS 約50%;
y. Gelucire 50/13 約50%
ビタミンE TPGS 約50%;
z. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約95%;
aa. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約65%
PEG 4000 約30%;
ab. ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約90%;
ac. ビタミンE TPGS 約5%
MIGLYOL 812 約85%
PEG 4000 約10%;および
ad. ビタミンE TPGS 約10%
MIGLYOL 812 約80%
PEG 4000 約10%。
【請求項2】
活性ビタミンD化合物、約50%のMIGLYOL 812、約50%のビタミンE TPGS、約0.35%のブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、および約0.35%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む薬学的組成物。
【請求項3】
活性ビタミンD化合物がカルシトリオールである、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項4】
抗酸化剤、緩衝剤、消泡剤、デタッキファー(detackifer)、保存剤、キレート剤、粘性調整剤(viscomodulator)、等張剤(tonicifier)、香味剤(flavorant)、着色剤、着臭剤、乳白剤、懸濁剤、結合剤、充填剤、可塑剤、濃化剤、および潤滑剤からなる群より選択される少なくとも1種類の添加剤をさらに含む、請求項1記載の薬学的組成物。
【請求項5】
添加物の1つが抗酸化剤である、請求項4記載の薬学的組成物。
【請求項6】
抗酸化剤が、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、BHA、BHT、メタ重亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、およびトコフェロールからなる群より選択される、請求項5記載の薬学的組成物。
【請求項7】
経口投与に適合させた、請求項1または2記載の薬学的組成物。
【請求項8】
単位剤形である、請求項7記載の薬学的組成物。
【請求項9】
単位用量当たり1〜400μgの活性ビタミンD化合物を含む、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項10】
単位用量当たり45μgの活性ビタミンD化合物を含む、請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項11】
活性ビタミンD化合物がカルシトリオールである、請求項9記載の薬学的組成物。
【請求項12】
単位剤形がカプセルである、請求項8記載の薬学的組成物。
【請求項13】
カプセルがゼラチンカプセルである、請求項12記載の薬学的組成物。
【請求項14】
ゼラチンカプセル中に存在する内容物の総容量が10〜1000μLである、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項15】
ゼラチンカプセル中に存在する内容物の総重量が10〜1500 mgである、請求項13記載の薬学的組成物。
【請求項16】
請求項1または2記載の薬学的組成物をそれを必要とする患者に投与する段階を含む、過増殖疾患の治療法または予防法。
【請求項17】
過増殖疾患が癌である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
過増殖疾患が乾癬である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
薬学的組成物がパルス投与によって投与され、パルス投与が3日間に1回以内の組成物の患者への投与を含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
投与が1週間に1回以内で行われる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
投与が3週間に1回以内で行われる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療を投与/実施する段階をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項23】
活性ビタミンD化合物が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施の少なくとも12時間前に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
活性ビタミンD化合物が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施の1日〜約3か月前に投与される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
活性ビタミンD化合物が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施と同時に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項26】
活性ビタミンD化合物の投与が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施以降も継続される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
活性ビタミンD化合物が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施後に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項28】
活性ビタミンD化合物が、1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療の投与/実施の1日前に投与される、請求項22記載の方法。
【請求項29】
活性ビタミンD化合物、および1種類もしくは複数の化学療法剤または放射線治療薬/放射線治療が3週間に1回以内で投与/実施される、請求項22記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6】
【公表番号】特表2007−500247(P2007−500247A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533675(P2006−533675)
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018440
【国際公開番号】WO2004/110381
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505458234)ノバセア インコーポレイティッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/018440
【国際公開番号】WO2004/110381
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505458234)ノバセア インコーポレイティッド (7)
【Fターム(参考)】
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