活性成分の溶出を徐放性に制御する固形製剤
【課題】 イオン強度やpH、成形時圧縮力に影響を受けず、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を0次溶出等に制御できる徐放性固形製剤を提供する。
【解決手段】 1種以上の活性成分と溶出制御基剤とを含有する徐放性固形製剤で、活性成分は水への溶解度が0.0001〜100mg/cm3であり、溶出制御基剤は保水量400%以上でゲル押込み荷重200g以上で水溶性成分量40〜95重量%で目開き75μmの篩いの通過粒子が90重量%以上で目開き32μmの篩いの通過粒子が20重量%以上で平均粒径が20μm以上50μm未満の加工澱粉であり、水への溶解度が20℃で0.1〜5.0g/cm3かつ分子量が1000以下の親水性助剤を含有し、加工澱粉と親水性助剤との配合比率が5:40〜99:1である。
【解決手段】 1種以上の活性成分と溶出制御基剤とを含有する徐放性固形製剤で、活性成分は水への溶解度が0.0001〜100mg/cm3であり、溶出制御基剤は保水量400%以上でゲル押込み荷重200g以上で水溶性成分量40〜95重量%で目開き75μmの篩いの通過粒子が90重量%以上で目開き32μmの篩いの通過粒子が20重量%以上で平均粒径が20μm以上50μm未満の加工澱粉であり、水への溶解度が20℃で0.1〜5.0g/cm3かつ分子量が1000以下の親水性助剤を含有し、加工澱粉と親水性助剤との配合比率が5:40〜99:1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬、肥料、飼料、食品、工業、化粧品等の用途において、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を徐放性に制御する固形製剤に関するものである。より詳細には、イオン強度値やpH等の生体内環境、及び圧縮成形時の圧縮力に影響を受けにくく、胃腸管滞留時間の変動も小さくて、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を徐放性に制御できる徐放性固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬用途における徐放性固形製剤は、活性成分の血中濃度をコントロールすることにより、投与回数が減少し服用性が改善できること、生体内の消失半減期の短い活性成分の持続性が改善できること、血中最小濃度と副作用発現濃度幅の狭い活性成分の副作用を低減できること等から有用性の高い製剤である。
【0003】
活性成分の溶出を徐放性に制御する方法としては、活性成分を溶出制御基剤とともに均一に分散させて圧縮成形する方法が、安定した溶出制御性に加え構造や製造プロセスがシンプルであり開発速度も速いことから実用化の点で多く用いられており(マトリクスシステム)、溶出制御基剤には親水性の溶出制御基剤、親油性の溶出制御基剤、不活性の溶出制御基剤(熱可塑性ポリマー類に属する)等が利用されている。
【0004】
親水性の溶出制御基剤の例としては、特許文献1等に記載されているように、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース誘導体が知られている。これらは、pHの影響を受けることなく活性成分を徐放性に制御できることや、経時安定性に優れる等の特徴を有している。しかし、セルロース誘導体は水和により大きく膨潤する性質を有しているため、溶出溶液中でゲル化が進行するのに伴い固形製剤は圧縮方向に大きく膨潤してしまう。その結果、溶出の後期には活性成分が溶出するための拡散距離が長くなり溶出速度が低下してしまう。そのため、0次溶出などに正確にコントロールするのは難しい欠点を有していた。セルロース誘導体は一般に粘度の異なるグレードが市販されており、高粘度グレードの方が活性成分を徐放する能力に優れる。しかし、一方では高粘度グレードほど圧縮方向への膨潤度が大きくなる傾向があり、0次溶出などに正確にコントロールするのは難しかった。
【0005】
特許文献2、3等には、セルロース誘導体の溶出性を調整する方法として、水溶性の成分を配合する方法が記載されている。特許文献2には、HPMC等のゲル形成ポリマーを溶出制御基剤とする徐放性固形製剤に、放出をより遅くまたはより速く調節するための溶出調節剤としてソルビトールやポリエチレングリコール等の使用が記載されている。しかし、溶出調節剤を使用した実施例はなく、溶出調節剤の効果は具体的には開示されていない。また、当業者の間で知られているように、これらの溶出調節剤は活性成分の溶出速度を全体的に遅くしたり速くしたりする効果は期待されるが、溶出後期に溶出速度が低下してしまう問題を改善できるものではなかった。特許文献3には、HPMC等のセルロースポリマー化合物を溶出制御基剤とし、ブドウ糖シロップを含有する徐放性固形製剤の記載があり、活性成分は直線状に溶出されることが開示されている。しかし、実際に実施例で開示されている溶出試験結果は、溶出後期に溶出速度が低減しており、溶出後期の速度低下を改善するには不十分であった。
【0006】
特許文献4には、セルロース誘導体の膨潤に起因する溶出後期の速度低下を改善する目的で、活性成分を含む膨潤性の層と被侵食性および/または可溶性層からなる多層錠を用いる方法が開示されている。この方法では、溶出後期に被侵食性および/または可溶性層が減少して活性成分を含む膨潤層の表面積を増大させて、溶出後期の溶出速度の低下を防ぐ。しかし、このように、セルロース誘導体の溶出後期の速度低下の問題を改善するには、複雑な製剤設計を取る必要があった。
【0007】
また、セルロース誘導体は、イオン強度値の大きい溶液中ではイオン強度を作る溶質と水和を競合する。そのため、ゲル化が不十分となり、マトリクスの形状を維持できず崩壊してしまう性質を有する。胃腸管でのイオン強度値はその領域のみならず摂取した食物によっても異なり、約0.01〜約0.2の範囲で変動することが知られている。このため、セルロース誘導体は、胃腸管の変動するイオン強度環境では、中程度以上のイオン強度で水和が抑制されマトリクスが崩壊してしまう問題も有していた。マトリクスの崩壊によって残りの活性成分の急激な溶出が生じる、いわゆる用量ダンピングが生じると、血中濃度が急激に上昇する。その結果、血中最小濃度と副作用発現濃度幅の狭い活性成分の効力次第では死に至る可能性もある。医薬品分野における徐放性固形製剤はイオン強度が変動する胃腸管環境の中でも正確な溶出制御を提供する必要がある。そのため、変動するイオン強度の溶液中、特にイオン強度が高い溶液中で安定した溶出制御性を有する徐放性固形製剤が求められている。
【0008】
特許文献5〜9には、HPCやHPMCの溶出制御性の改善方法が開示されている。これら文献には、例えばHPCでは100メッシュ(目開き約150μm)の篩いを通過する粒子が50重量%以上、HPMCでは100メッシュ(目開き約150μm)の篩いを通過する粒子が95重量%以上となるように粒子を微細化する方法が開示されている。これらの方法によれば、HPCやHPMCの粒子を微細化することで水和速度が促進され、ゲル層を迅速に形成させることが可能となり、活性成分の溶出初期に起こる錠剤の崩壊を抑制して過剰な溶出を防止すことができる。しかし、特許文献5〜9による微細粒子の使用は、粒子の膨潤性を改善したものでは無いから、溶出後期の速度低下の問題を解決することはできず、また、イオン強度の大きい溶液中での崩壊性を解決することもできなかった。
【0009】
セルロース誘導体の中でもHPMCは従来最も頻繁に使用されている溶出制御基剤の1つである。しかし、上述した問題に加え、流動性に劣る、多少黄色みのある色をしており白色度に劣る、合成糊特有の刺激臭がある等、粉体物性面でも多くの点で改良が望まれているのが現状である。
【0010】
セルロース誘導体の他の親水性の溶出制御基剤としては、キサンタンガムやイナゴマメガム等の非セルロース多糖類、ポリエチレンオキサイドやアクリル酸ポリマー等の合成高分子が知られている。これらの溶出制御基剤は、一般にセルロース誘導体よりも膨潤性が大きく、圧縮方向のみならず圧縮方向と垂直方向にも大きく膨潤し、時間が経過するにつれて肥大化するする性質を有している。その結果、溶出後期で溶出速度が低減してしまう欠点がある。また、胃腸管内での滞留時間の変動を招く可能性が大きい。そのため、再現性良く正確な溶出が求められる医薬品分野においては必ずしも満足のいく徐放性固形製剤ではなかった。
【0011】
特許文献10〜12には、非セルロース多糖類や合成高分子に水溶性の成分を配合して溶出性を調整する方法が記載されている。特許文献10には、ヘテロ多糖ガムおよび該ヘテロ多糖ガムと架橋することができるホモ多糖ガムを含む徐放性固形製剤に不活性希釈剤として単糖類、二糖類、多価アルコールを含む記載がある。しかし、不活性希釈剤が活性成分の溶出性に及ぼす影響については記載がない。
【0012】
特許文献11には、アルギン酸ナトリウムとキサンタンガムの混合物などの徐放化用担体と、ゲル水和促進剤とを含む徐放性固形製剤が記載されている。ゲル水和促進剤はHPMCとアルギン酸プロピレングリコールエステルの混合物が好ましいとの記載がある。また、速いゲル水和によって非ゲル化コアを形成しないため胃腸管の運動速度による影響のない溶出となることが開示されており、0次溶出との記載もある。しかし、実施例で開示されている徐放製剤は全て活性成分の溶出が試験開始後2時間まで殆ど無いものであり、医薬品用途で一般に求められる0次溶出とは溶出性の異なる特殊なものであった。
【0013】
特許文献12には、ポリエチレンオキサイド(PEO)などのハイドロゲルを形成する高分子と、1gが溶解するのに必要な水の量が5ml以下の溶解性を示す一種もしくは二種以上の製剤内に水を浸入させるための添加剤とを含む徐放性固形製剤の記載がある。固形製剤のゲル化が促進されるため、水分量の少ない消化管下部でも継続して活性成分の徐放が可能となることが開示されている。特許文献12に用いる添加剤は、水への溶解性が一定以上であることを必要としている。しかし、分子量の違い等が徐放性固形製剤のゲル化後の強度や溶出性に及ぼす影響については記載されていない。また、実施例で開示されている溶出試験結果は溶出後期に速度が低下しており、ハイドロゲルを形成する高分子が溶出後期に速度低下する問題を改善できるものではなかった。
【0014】
親油性の溶出制御基剤としては、水素化したヒマシ油や、ステアリン、パルミチンなどのグリセリド類、セチルアルコールなどの高級アルコール類、ステアリン酸等の脂肪酸類、プロピレングリコールモノステアレートなどの脂肪酸エステル類などが従来から多く用いられているが、保存安定性に欠け活性成分の溶出性が大きく変動したり、溶出後期に溶出速度が低下してしまう等、多くの問題を抱えていた。
【0015】
不活性の溶出制御基剤としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、酢酸ビニル/塩化ビニルのコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、シリコーン、エチルセルロース、ポリスチレン等が知られている。不活性の溶出制御基剤を用いた徐放性固形製剤は、水不溶性の粒子が圧縮成形されてできる細孔を活性成分が拡散することで徐放性が発現する。そのため、圧縮成形圧により細孔の大きさが変動すると活性成分の溶出速度も変動してしまうという問題を有していた。また、溶出後半には活性成分の拡散距離が長くなるために溶出速度が遅くなるという欠点も有していた。
【0016】
特許文献13、14等には、不活性の溶出制御基剤に水溶性の成分を配合して溶出性を調整する方法が記載されている。特許文献13等には、溶出制御基剤であるメタアクリル酸コポリマーと、D−ソルビトール、粉末還元麦芽糖水飴、無水リン酸カルシウム等の賦形剤とを含む徐放性固形製剤の記載がある。当該固形製剤の使用により、活性成分の溶出が時間に比例し、しかも圧縮力に依存しないことが開示されている。しかし、実施例に開示されている溶出試験結果は溶出後期に溶出速度が低下しており、メタアクリル酸コポリマーが溶出後期に速度低下する問題を改善するものではなかった。また、圧縮成形圧による溶出速度の変動を抑制するものでもなかった。医薬品添加剤として市販されているメタアクリル酸コポリマーは、静電気が発生しやすく、また化学合成品に特有の不快な臭いが強いものであり、取り扱いの点でも問題があった。
【0017】
特許文献14にはポリ酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの混合物を溶出制御基剤とする徐放性固形製剤に、放出を改変するためのポリエチレングリコール等の水溶性、水溶性高膨潤性または親油性賦形剤を配合し、放出速度を増大させたり遅延させたりする方法が記載されている。これは、ポリ酢酸ビニルが圧縮成形されてできる細孔の水浸透性を制御して活性成分の溶出を全体的にコントロールするものである。しかし、溶出後期の速度低下の問題を改善できるものではなかった。また、錠剤表面にゲルが形成されて初期溶出が抑えられるため溶出が直線的になるとの記載がある。しかし、溶出後期の速度低下の問題は改善できるものではなく、実施例ではポリエチレングリコール等の使用や、直線的な溶出が具体的に開示されていなかった。また、医薬品添加剤として市販されているポリ酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの混合物は強く黄色味を帯びており、また、化学合成品に特有の不快な臭いが強いものであった。
【0018】
特許文献15には、保水量が400%以上、崩壊時間が5時間以上、ゲル押込み荷重が200g以上の加工澱粉、及び該加工澱粉を溶出制御基剤とする徐放性固形製剤について開示されている。該加工澱粉は、従来の天然加工澱粉には見られないα−アミラーゼに対する高い抵抗性を有するために十分な徐放性を示し、且つ、イオン強度による影響を受けない。そのため用量ダンピングの問題を生じることなく、活性成分を比較的安定に徐放することが可能との記載がある。加えて、天然由来の澱粉質原料を物理的な加工のみで製造している。従って、化学物質残留等の問題がなく安心して摂取することができ、また、流動性、白色度ともに良好である。しかしながら、開示された加工澱粉は比較的粒子の膨潤性が大きいものであり、ゲル化した固形製剤の強度が弱くなる欠点や、活性成分の溶出速度が圧縮成形圧により変動してしまう等の欠点を有している。また、活性成分の溶出性が製造工程における圧縮成形圧の変動や処方及び配合量の変化によって大きく変動してしまう。そのため、必ずしも正確に溶出制御できるものではなかった。さらに、活性成分として水への溶解度が小さい活性成分を用いると、特に圧縮成形時の圧縮力が小さい条件では、溶出の途中で非特定な時間帯に固形製剤に亀裂が生じたり、2つ以上に分裂したりしてしまい、溶出速度が一次的に速まる欠点も有していた。このように、特許文献15に記載の加工澱粉は、イオン強度やpH等の生体内環境に依存せず正確な溶出制御が可能であるにもかかわらず、圧縮成形圧に依存して溶出速度が変化したり、活性成分の種類によっては不特定な時間帯に突発的に多量の活性成分が溶出されたりする問題を有していた。
【0019】
溶出制御基剤としての澱粉類の使用については、特許文献16〜22等に記載されている。特許文献16には、低粘度でマルチモードの粒子サイズを有するプレゼラチン化澱粉を含む医薬組成物が、活性成分の溶出速度のバラツキを改善する目的で記載されている。この組成物は、持続放出を含む多くの形態にあることができる記載がある。しかし、実施例では45分で75%以上が溶出する溶出速度の速い製剤しか開示されておらず徐放性を示す具体的な開示がない。また、澱粉自体が徐放性機能を有することの記載もない点で本願発明と異なる。
【0020】
特許文献17には、予めゼラチン化された澱粉をマトリクス基剤とする徐放製剤が記載されている。しかし、好ましい実施形態として可溶性のフラクションが10〜20%の予めゼラチン化されたとうもろこし澱粉の使用が記載されており、本願発明に用いる加工澱粉が水溶性成分量40〜95重量%である点で異なる。活性成分の溶出速度などは具体的に開示されていない。しかし、特許文献17のように冷水可溶性成分が少ない澱粉では徐放性機能が不十分であり、特に水溶性の高い活性成分を徐放性に制御するのは困難である。
特許文献18には、水溶性ポリマーと水溶性のより低いポリマーのどちらか1つ以上含むマトリクス徐放製剤が開示されている。また、特許文献19には、水溶性ポリマーと水溶性のより低いポリマーとの両方を含むマトリクス徐放製剤が開示されている。特許文献18、19には、水溶性ポリマーとしての澱粉の記載がある。しかし、本発明に用いる加工澱粉は、水溶性成分量が40〜95%との範囲内にあり、部分的にしか水に溶解しない点で異なる。
【0021】
特許文献20には、天然ポリサッカライドを含むマトリクス徐放性製剤において、天然ポリサッカライドとして改質コーンスターチの使用が記載されている。しかし、記載されている改質コーンスターチは水溶性のアルファ化澱粉であり、本願発明に用いる加工澱粉が水溶性成分量40〜95%である点で異なる。また、増粘剤、養鰻飼料などとして食品用途で主として用いられているアルファ化澱粉は、非特許文献1に報告されているように、α―アミラーゼの存在下で澱粉が形成するゲルが破壊されて徐放性能が低下してしまうという問題があった。
【0022】
特許文献21には澱粉を5〜95%含む水との混合物を130〜160℃の温度条件でシアをかけて得られる澱粉をマトリクス基剤とする徐放性製剤の記載がある。また、特許文献22には、結晶性澱粉の結晶性を部分的ないし実質的に完全に喪失させた澱粉を使用する徐放性製剤が記載されている。しかし、特許文献21、22は、活性成分の溶出を0次溶出等に制御できるものでもなかった。また、アルファ化澱粉がα−アミラーゼの存在下で澱粉が形成するゲルが破壊されて徐放性能が低下してしまう問題を解決したものでもなかった。
【0023】
また、特許文献23〜25には、アミロースをマトリクス基剤とする徐放製剤の記載があるが、本願発明に用いる加工澱粉はアミロースとアミロペクチンを含む点で異なる。特許文献には26〜28等には、架橋アミロースをマトリクス基剤とする徐放性固形製剤の記載がある。しかし、架橋アミロースは天然原料の澱粉からアミロペクチンを取り除いたアミロースに、更にアルカリ存在下で化学処理を施したものであり煩雑な工程を経て得られるものである。更には溶出制御性を改善するために溶出速度調整剤としてα−アミラーゼを配合したり(特許文献27)、あるいは、腸内環境に存在するα−アミラーゼへの依存性を低下するためにHPMCを使用する(特許文献28)などの必要があった。
【0024】
また、特許文献29は澱粉アセテートをマトリクス基剤とする徐放性製剤、特許文献30はエポキシ基やハロゲン化合物で置換した置換アミロースをマトリクス基剤とする徐放性製剤、特許文31にはカルボン酸や硫酸塩等で修飾した澱粉をマトリクス基剤とする徐放性製剤の記載がある。特許文献29〜31は、澱粉に徐放性機能を付与するために、化学的な処理を必要としており、本願発明に用いる加工澱粉が天然の澱粉を物理的処理のみで加工して得られる点で異なる。
【0025】
以上のように、イオン強度やpH等の生体内環境、及び圧縮成形時の圧縮力に影響を受けず、胃腸管滞留時間の変動も小さい、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を0次溶出等に制御可能な徐放性固形製剤は、従来技術においては見当たらないのが現状であり、このような徐放性固形製剤が望まれていた。
【特許文献1】米国特許6296873号公報
【特許文献2】特表2005−504052号公報
【特許文献3】特表2002−525310号公報
【特許文献4】特開2004−107351号広報
【特許文献5】特公平7−515156号公報
【特許文献6】特公平7−8809号公報
【特許文献7】特公昭62−149632号公報
【特許文献8】特開平6−172161号公報
【特許文献9】特開平6−305982号公報
【特許文献10】特表2003−510265号公報
【特許文献11】特開2004−143175号公報
【特許文献12】特開2001−10951号公報
【特許文献13】特開平11−5739号公報
【特許文献14】特開2002−20319号公報
【特許文献15】WO2005/005484号国際公開公報
【特許文献16】特表2006−514687号公報
【特許文献17】特開平5−262649号公報
【特許文献18】特開昭63−54319号公報
【特許文献19】特開平2−2038号公報
【特許文献20】特開昭63−503225号公報
【特許文献21】WO92/15285号国際公開公報
【特許文献22】特開昭61−5027号公報
【特許文献23】特表2000−517351号公報
【特許文献24】WO99/009066号国際公開公報
【特許文献25】特開2002−363106号公報
【特許文献26】米国特許5456921号公報
【特許文献27】特表平8−502036号公報
【特許文献28】特表2000−507561号公報
【特許文献29】特表平10−502056号公報
【特許文献30】特表2001−502700号公報
【特許文献31】WO2005−74976号国際公開公報
【非特許文献1】Chem.Pharm.Bull.,35(10),4346−4350(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、こうした実情の下に、イオン強度やpH等の生体内環境、圧縮成形時の圧縮力に影響を受けず、胃腸管滞留時間の変動も小さい、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を0次溶出等に正確に制御できる徐放性固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明者らは、水への溶解性が小さい活性成分を含む徐放性固形製剤の溶液中でのゲル形成機構及び活性成分溶出機構について鋭意検討を重ねた。その結果、特定の加工澱粉を溶出制御基剤として用い、かつ水への溶解度が0.1〜5.0g/cm3の水溶性助剤を併用することで、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を0次溶出等に正確に制御できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0028】
(1)1種以上の活性成分と溶出制御基剤とを含有する徐放性固形製剤であって、前記の活性成分は、水への溶解度が0.0001〜100mg/cm3のものであり、前記の溶出制御基剤は、保水量が400%以上で、ゲル押込み荷重が200g以上で、水溶性成分量が40〜95重量%で、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上で、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上で、平均粒径が20μm以上50μm未満の加工澱粉であり、さらに、水への溶解度が20℃において0.1〜5.0g/cm3かつ分子量が1000以下の親水性助剤を含有すると共に、前記の加工澱粉と前記の親水性助剤との重量配合比率が、50:50〜99:1の範囲内にあることを特徴とする固形製剤。(2)前記加工澱粉が、目開き75μmの篩いを通過する粒子が98重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が40重量%以上のものである、(1)に記載の固形製剤。(3)前記加工澱粉の膨潤度が6cm3/g以上10cm3/g以下である、(1)又は(2)に記載の固形製剤。(4)前記加工澱粉が、安息角45°以下であり、かつ見かけ比重が1.4cm3/g以上3.6cm3/g以下のものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤。
(5)前記親水性助剤が、糖アルコール類、糖類、界面活性剤、塩類、有機酸、アミノ酸類、アミノ糖類からなる群から選択された少なくとも1種である、(1)〜(4)のいずれかに記載の固形製剤。(6)前記親水性助剤がソルビトール及び/又はスクロースである、(5)に記載の固形製剤。(7)前記溶出制御基剤が、さらに、20℃における水への溶解度が0.1g/cm3以上5.0g/cm3以下で、融点が50℃以上で、平均分子量が5000以上の合成または天然のポリマー類である親水性高分子助剤を含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の固形製剤。(8)前記親水性高分子助剤がポリエチレングリコールである、(7)に記載の固形製剤。(9)前記の1種以上の活性成分が医薬品薬効成分である、(1)〜(8)のいずれかに記載の固形製剤。(10)さらに、コーティング顆粒を含有する、(1)〜(9)のいずれかに記載の固形製剤。(11)さらに、ショ糖脂肪酸エステル、タルク及び軽質無水ケイ酸から選択される1種以上と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを滑沢剤として含有する、(1)〜(10)のいずれかに記載の固形製剤。(12)重量が0.2gより大きい、(1)〜(11)のいずれかに記載の固形製剤。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、水への溶解性が小さい活性成分を用いた場合でも、投与後のイオン強度やpH等の生体内環境、または製造時の圧縮成形時の圧縮力に影響を受けることなく、0次溶出等の正確な徐放性を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の徐放性固形製剤は、1種以上の活性成分を含有し、その中には、水への溶解度が0.0001〜100mg/cm3の難溶性の活性成分を含む。そのような活性成分の水への溶解度が0.0001mg/cm3以上で、固形製剤からの活性成分の溶出速度が確保されて、固形製剤が胃腸管に滞留している時間帯に活性成分のほぼ全量を溶出することが可能となり、バイオアビリティも確保されるので好ましい。活性成分の水への溶解度が100g/cm3以下であれば、溶出制御基剤が活性成分より先に水和して固形製剤表面にゲル層を形成するため、活性成分が固形製剤外部に溶出してしまう現象が生じにくく、活性成分を徐放性に溶出制御しやすいので好ましい。活性成分の水への溶解度は、好ましくは0.0001〜30mg/cm3であり、より好ましくは0.0001〜10mg/cm3である。
【0031】
水への溶解度が、0.0001〜100mg/cm3である活性成分としては、例えば医薬品分野においては第14改正日本薬局方に記載されている、水にやや溶けやすい医薬品(溶質1gを溶かすに要する溶媒量が10〜30cm3)、水にやや溶けにくい医薬品(溶質1gを溶かすに要する溶媒量が30〜100cm3)、水に溶けにくい医薬品(溶質1gを溶かすに要する溶媒量が100〜1000cm3)、水に極めて溶けにくい医薬品(溶質1gを溶かすに要する溶媒量が1000〜1000cm3)、水にほとんど溶けない医薬品(溶質1gを溶かすに要する溶媒量が10000cm3以上)等を挙げることができる。
【0032】
次に、固形製剤は、水への溶解度が、20℃において0.1〜5.0g/cm3かつ分子量が1000以下の親水性助剤を含む必要がある。前記加工澱粉と親水性助剤との重量配合比率は50:50〜99:1の範囲内にある必要がある。該親水性助剤が含まれると、固形製剤内部へ水を浸入させ、後述の特定の加工澱粉の水和を促進し、緻密なゲル層を形成させることができる。親水性助剤の水への溶解度は、好ましくは0.2〜5.0g/cm3、より好ましくは0.4〜5.0mg/cm3である。
【0033】
親水性助剤の水への溶解度が0.1g/cm3以上で、マトリクス中に均一に分散している水への溶解性が小さい活性成分の作用にも係わらず、固形製剤内部への水の浸入が可能となり、緻密なゲル層が形成されて、固形製剤自体の膨潤力による亀裂や分割が生じ難くなるため好ましい。また、親水性助剤の水への溶解度が5.0g/cm3以下で、吸水量が適度な範囲に留まって過剰吸水とならずにゲル密度が密の範囲に留まる。そのため、固形製剤の強度が確保され、胃腸管の機械的運動による負荷に耐えうるため、固形製剤の過度な浸食が生じにくく溶出速度が安定に保たれやすく好ましい。
【0034】
水への溶解度が0.1〜5.0g/cm3で分子量が1000以下の親水性助剤としては、ソルビトールやマンニトール等の糖アルコール類、白糖や無水マルトース、スクロース、フルクトース、デキストラン、ブトウ糖などの糖類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油やポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル等の界面活性剤、塩化ナトリウムや塩化マグネシウム等の塩類、クエン酸や酒石酸等の有機酸、グリシンやアラニン等のアミノ酸類、メグルミン等のアミノ糖類から選択される1種以上を用いることができる。親水性助剤として特に好ましいものとして、ソルビトールやスクロース等が挙げられる。
【0035】
また、固形製剤は、上述の親水性助剤に加え、水への溶解度が20℃において0.1g/cm3以上5.0g/cm3以下、融点が50℃以上、平均分子量5000以上の合成または天然のポリマー類である親水性高分子助剤を含むこと好ましい。その場合、該親水性高分子助剤の配合量は0.1〜40重量%の範囲であることが好ましい。該親水性高分子が含まれると、固形製剤表面に分散している溶出制御基剤のゲル化を促進するため、固形製剤表面に分散している活性成分が溶解して溶出するよりも速く固形製剤表面にゲル層を形成させることができ、活性成分の溶出初期の多量溶出を抑制して0次溶出へと制御しやすいため好ましい。親水性高分子の水への溶解度の下限は、好ましくは0.2g/cm3、より好ましくは0.4g/cm3である。親水性高分子の水への溶解度の上限は、好ましくは4.5g/cm3、より好ましくは4.0g/cm3である。
【0036】
水への溶解度が0.1〜5.0g/cm3である親水性高分子としては、親水性で比較的高分子量の合成または天然のポリマー類とするのがよく、具体的には、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン等を挙げることができ、特に好ましいものとしてポリエチレングリコールが挙げられる。
【0037】
次に、固形製剤は、溶出制御基剤として、保水量が400%以上で、ゲル押込み荷重が200g以上で、水溶性成分量が40〜95重量%で、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上で、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%で、平均粒径が20μm以上50μm未満の特定の加工澱粉を含有する必要がある。この特定の加工澱粉は、活性成分の徐放性を担保するための溶出制御基剤として機能する。ここで、本発明でいう加工澱粉とは、天然の澱粉原料を用いて物理的処理のみで物性の改良を行った澱粉である。
【0038】
このような特定の加工澱粉の固形製剤における含有量は、5.0〜99.9重量%である必要がある。該加工澱粉の含有量が5重量%以上で活性成分の溶出を徐放性に制御しやすくなる。該加工澱粉の含有量は、活性成分の種類や量によって適宜最適な量を選択することができるが、加工澱粉の含有量を99.9重量%以上とすると活性成分の含有量が少なくなり十分な薬効を付与しにくくなるため上限はせいぜい99.9重量%とするのがよい。より好ましくは10〜99.9重量%であり、特に好ましくは20〜99.9重量%である。
【0039】
このような特定の加工澱粉は、保水量が400%以上である必要がある。より好ましくは500%以上、特に好ましくは700%以上である。ここで保水量とは、乾燥した加工澱粉1gを20℃±5℃の純水に分散し遠心分離(2000G、10分)した後に澱粉が保持する純水量で定義する。保水量が400%以上で加工澱粉が水和してゲルを形成するため固形製剤が崩壊しにくくなり、かつ活性成分の拡散速度が保たれて十分な徐放性を発現しやすくなる。保水量が高いほどゲル形成能が高くなり、高いイオン強度下でもゲルが破壊されないので好ましいが、最大値は澱粉原料の特性に依存しせいぜい3000%までである。
【0040】
また、特定の加工澱粉は、ゲル押込み荷重値が200g以上である必要がある。ゲル押込み荷重値とは、加工澱粉0.5gを50MPaで圧縮して得られる直径1.13cmの円柱状成形体を20℃±5℃の純水中に4時間浸漬しゲル化させた後、0.1mm/secの速度で3mm直径の円柱状アダプターを押込んだ時の最大荷重で定義する。ここで、最大荷重とはゲル層の破断がある場合は破断時の荷重値、破断がない場合はアダプターがゲル化した円柱状成形体に5mm進入するまでに示した最大の荷重値とする。ゲル押込み荷重値が200g以上で、加工澱粉が形成するゲル層内での活性成分の拡散が速くなりすぎず十分な徐放性を発現しやすくなる。ゲル押込み荷重値が高いほど徐放能が高くなり好ましいが、せいぜい3000g程度である。
【0041】
また、特定の加工澱粉は、水溶性成分量が40〜95重量%の範囲にある必要がある。水溶性成分量は、以下の計算によって得られる値として定義される。すなわち、加工澱粉1gに20℃±5℃の純水99gを加えてマグネチックスターラーで2時間攪拌して分散させ、得られた分散液の40cm3を50cm3の遠沈管に移し、5000Gで15分間遠心分離し、この上澄液30cm3を秤量瓶に入れ、110℃で一定重量になるまで乾燥して水溶性成分の乾燥重量(g)を求める。また、加工澱粉1gを110℃で一定重量になるまで乾燥して加工澱粉の絶乾重量(g)を求める。これらの値と下式(1)により求めた値で定義する。
水溶性成分量(重量%)=(乾燥重量(g)×100÷30)÷澱粉1gの絶乾重量(g)×100・・・(1)
【0042】
水溶性成分量は、加工澱粉が糊化し水溶性となった糊成分の量を表す値である。水溶性成分量が40重量%以上で、水和速度が確保されて遅くなりすぎることがなく、徐放性固形製剤が溶媒と接した後直ぐに多量の活性成分が溶出してしまうような現象が生じにくい。水溶性成分量が95重量%以下で、固形製剤の強度が確保され、十分な徐放性が得られやすくなる。また、胃腸管の機械的運動による負荷に耐えうるため過度に侵食されることなく溶出速度が一定範囲に確保される。
【0043】
また、特定の加工澱粉は、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上、且つ、平均粒径が20μm以上50μm未満である必要がある。好ましくは、目開き75μmの篩いを通過する粒子が95重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が30重量%以上であり、特に好ましくは、目開き75μmの篩いを通過する粒子が98重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が40重量%以上である。特定の加工澱粉は、粒子が小さい方が膨潤性が小さく、ゲル強度も強い。そのため、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上、且つ、平均粒径が50μm未満であれば、澱粉粒子、及び該澱粉粒子からなる固形製剤の膨潤性が比較的小さい範囲に留まる。そのため、固形製剤からの活性成分の溶出が圧縮成形圧により変動しにくくなる。
【0044】
特定の加工澱粉は、膨潤度が6cm3/g以上10cm3/g以下であることが好ましい。加工澱粉の膨潤度は、加工澱粉1.0gを20±5℃の純水に分散させて100cm3の沈降管に移し、全量を100cm3とし、16時間放置した後、上下に分かれた下層の容積V(cm3)と加工澱粉1.0gの乾燥重量(g)とを測定し、下式(2)より求めた値と定義する。
加工澱粉の膨潤度(cm3/g)=V(cm3)/加工澱粉の乾燥重量(g)・・・(2)
【0045】
加工澱粉の膨潤度が6cm3/g以上で、水和してゲルを形成するため活性成分の溶出を徐放性に制御しやすくなる。一方で、加工澱粉の膨潤度が10cm3/gより大きいと、該加工澱粉の膨潤に起因して固形製剤が大きく膨潤する。その結果、活性成分の溶出速度が遅延したり、或いは膨潤力に耐えられず固形製剤が崩壊してドーズダンピングを起こしてしまうので好ましくない。加工澱粉の膨潤度が6cm3/g以上10cm3/g以下の範囲で、活性成分が安定に徐放されやすくなるので好ましい。
【0046】
この特定の加工澱粉は、安息角が45°以下であることが好ましい。好ましくは安息角が43°以下である。また、特定の加工澱粉は見かけ比重が1.4cm3/g以上3.6cm3/g以下であることが好ましい。安息角が45°以下で、かつ見かけ比重が1.4〜3.6cm3/gの範囲にある加工澱粉は、活性成分との混合性・分散性に優れるため、均一なゲルマトリクスを形成することができ、安定な徐放性としやすいので好ましい。
ところで、保水量が400%以上、ゲル押込み荷重値が200g以上、水溶性成分量が40〜95重量%である加工澱粉の製造方法は特許文献15に開示されている。本発明者らは、特許文献15に記載の方法で得られる該加工澱粉について詳細に調べた。その結果、本発明者らは、粒度によって特異的に膨潤性およびゲル押込み荷重値が異なること、及び、該加工澱粉の粒度と膨潤性を適正範囲に制御することによって、初めて圧縮成形圧に依存しない徐放性固形製剤が得られることを見出した。その検討プロセスを次に説明する。
【0047】
本発明者等は、まず、特許文献15の方法に準拠した方法、具体的には後述の比較製造例1に記載したようにして従来の加工澱粉Cを製造した。得られた加工澱粉Cを0〜32、32〜75、75〜150、150〜500μmの粒度毎に分画して基礎物性を比較した。表1に得られた加工澱粉Cの粒度分布、加工澱粉の膨潤度、加温保存条件下のゲル押込み荷重値を、図3〜6に加工澱粉Cが膨潤した後の粒子の光学顕微鏡写真を示した。
【0048】
ここで、表1に示す加温保存条件下のゲル押込み荷重値は、加工澱粉0.5gを50MPaで圧縮して得られる直径1.13cmの円柱状成形体を37℃±0.5℃の純水中に4時間浸漬しゲル化させた後、0.1mm/secの速度で3mm直径で円柱状のアダプターを押込んだ時に最初にピークを与えた値として求めた値である。また、表1に示す加工澱粉の膨潤度は、上記したものと同じ方法によって求められた値である。
【0049】
表1の加工澱粉Cのデータ及び、図3〜6の膨潤粒子の写真より、0〜32μm分画の加工澱粉粒子は膨潤度が約14、膨潤粒子の大きさが100μm程度と膨潤性が小さく、ゲル押込み荷重値は約300と大きいことがわかる。一方で、32〜75、75〜150、150〜500μmの粒度分画の加工澱粉粒子は、一様にして、膨潤度が20〜30、膨潤粒子の大きさが200〜300μmと膨潤性が大きく、ゲル押込み荷重値は約200と小さいことがわかる。また、32〜75μm分画と75〜150μm、150〜500μm分画の膨潤粒子とが同じ大きさであること、および、該加工澱粉粒子の膨潤性は膨潤前の粒子の大きさと相関していることから、75〜500μmの範囲の加工澱粉粒子に含まれる外殻構造を有する膨潤性の澱粉粒子は32〜75μm分画の外殻構造を有する膨潤性の澱粉粒子とは構成成分が同じであり、該澱粉粒子が水溶性の糊成分(膨潤・溶解して輪郭が消失するため光学顕微鏡では観察されない)で造粒されて75〜500μmの大きな加工澱粉粒子となっていることが分かる。
【0050】
これらの事実から、特許文献15に記載の方法で得られる加工澱粉は、澱粉粒子の外殻構造を有し膨潤性が小さくゲル押込み荷重値の大きい0〜32μm分画の澱粉粒子群と、外殻構造を有し膨潤性が大きくゲル押込み荷重値の小さい32〜75μmの澱粉粒子群と、水溶性の糊成分の3成分により構成されること、及び、これらの3成分が造粒されて0〜約500μmに粒度分布を有する加工澱粉が形成されていることが明らかとなった。なお、何れの粒子も水溶性成分により表面が覆われているため、加工澱粉の外見のみではこれらの事実は判別できない。
【0051】
更に、膨潤性が小さくゲル押込み荷重値の大きい0〜32μm分画と、膨潤性が大きくゲル押込み荷重値が小さい32〜500μm分画に分けて、それぞれの分画を用いて徐放性固形製剤を製造した。すると、0〜32μm分画から得られた固形製剤は、圧縮力に依存しない正確で安定な溶出性を示した。一方、32〜500μm分画から得られた固形製剤は、圧縮力が小さいほど圧縮方向への大きな膨潤が起こり、これに伴い活性成分の溶出速度が速くなり、ゲル化した固形製剤の強度も弱くなることが明らかとなった。すなわち、粒径が32μmを境にして、得られる固形製剤の特性が大きく変化することが判明した。圧縮成形圧に依存しない徐放性固形製剤とするには、該0〜32μm分画粒子のように、膨潤性が小さく、かつゲル強度が強い粒子を用いることが好ましいことが確認された。加工澱粉粒子の膨潤性が小さいことで、固形製剤内部からの崩壊力を抑制できるものと考えられる。
【0052】
本発明者らは、上述した事実に顧みて、32〜500μmの粒子中に存在する32〜75μmの外殻構造を有する澱粉粒子を破砕することで、該加工澱粉の膨潤性を小さく抑えることができ、その結果、圧縮力に依存しない徐放性固形製剤が得られるのではないかと考えた。様々な粉砕条件について検討を重ねた結果、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上、かつ平均粒径が20μm以上50μm満となるように粒度分布を管理することによって、膨潤性が一様に小さくゲル押込み荷重値の大きな加工澱粉が得られることを見出した。このように、加工澱粉の粒度を制御することによって、圧縮成形圧による変動のない徐放性固形製剤が得られるに至った。
【0053】
ここで、実施例1により得られた、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上、かつ平均粒径が20μm以上50μm満となる加工澱粉Aを、0〜32、32〜75μmの粒度毎に分画した場合の各分画粒子の基礎物性を比較した。表1に加工澱粉A全体及び各分画粒子の粒度分布、膨潤度、加温保存条件下のゲル押込み荷重値を示した。また、図1、2に各分画粒子が膨潤した後の膨潤粒子の光学顕微鏡写真を示した。加工澱粉の外殻構造を有する一次粒子が破壊されていることは、膨潤粒子の光学顕微鏡画像から確認できる。また、0〜32μm、32〜75μmのいずれの分画粒子も、膨潤性が小さく、かつ、ゲル押込み加重値が大きくなっていることが確認された。
【0054】
次に、上述の特定の加工澱粉の製法について説明する。特定の加工澱粉は、例えば澱粉質原料を水存在下60℃以上100℃未満で加熱し、澱粉質原料の澱粉粒子を膨潤させる工程、次いで該膨潤させた澱粉粒子を乾燥させ、澱粉粒子と該澱粉粒子の外部に存在するアミロースとアミロペクチンとを含有する混合物の粉末を得る工程、及び得られた乾燥粉末を粉砕して粒度を調整する工程等により製造される。或いは、減圧下、100〜130℃で加熱処理された澱粉質原料を、さらに水存在下60〜150℃で加熱し、澱粉質原料の澱粉粒子を膨潤させる工程、次いで膨潤させた粒子を乾燥させ、澱粉粒子と該澱粉粒子の外部に存在するアミロースとアミロペクチンとを含有する混合物の粉末を得る工程、及び得られた乾燥粉末を粉砕して粒度を調整する工程等により製造される。なお、澱粉粒子の外部に存在するアミロース、アミロペクチンとは、加熱処理による膨潤により外殻構造が崩壊した澱粉に由来する、澱粉粒子の外部に溶出されたアミロースとアミロペクチンである。また、澱粉質原料についての水存在下とは、澱粉質原料と水とが存在した状態であって、水分が40重量%以上である状態をいう。
【0055】
製造に用いることができる澱粉質原料は、コメ、モチゴメ、トウモロコシ、モチトウモロコシ、アミロトウモロコシ、モロコシ、コムギ、オオムギ、サトイモ、リョクトウ、バレイショ、ユリ、カタクリ、チューリップ、カンナ、エンドウ、シワエンドウ、クリ、クズ、ヤマノイモ、カンショ、ソラマメ、インゲンマメ、サゴ、タピオカ(キャッサバ)、ワラビ、ハス、ヒシ等の天然澱粉、老化澱粉、架橋澱粉等が例示され、澱粉質物質を含有するものであれば特に制限されないが、粒子の膨潤性が高く保水量を高く制御しやすいという観点からバレイショが好ましい。澱粉質原料は、上記のうち1種を使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用することも自由である。また澱粉質原料の粒子の大きさは膨潤しやすさの観点から大きいほどよい。
【0056】
澱粉質原料は、糊化開始温度が高くなり、粒子の膨潤性が高まるという観点から、例えば特開平4−130102号公報や特開平7−25902号公報に記載されているように、澱粉質原料に減圧下100℃〜130℃で加熱処理する等の、湿熱処理を施したものであればさらに良い。
【0057】
例えば、特開平4−130102号公報には、(1)減圧ラインと加圧蒸気ラインとの両方を付設し、内圧、外圧共に耐圧性の密閉できる容器に澱粉を入れ、減圧とした後、蒸気導入による加圧加熱を行い、あるいはこの操作を繰り返すことにより、澱粉を所定時間加熱した後冷却する湿熱処理方法、(2)(1)の方法に加えて、缶内温度を少なくとも120℃以上とすることで、水懸濁液を加熱した時、澱粉粒子の膨潤が認められるが実質的に粘度を示さず、α−アミラーゼ吸着能が著しく高い澱粉を製造する湿熱処理方法、(3)(1)または(2)の方法に加えて、加熱後減圧にして冷却する湿熱処理方法、が開示されているが、これらの湿熱処理方法のいずれでも良い。
【0058】
また、特開平7−25902号公報には、(4)澱粉質系穀粒を湿熱処理して得られる湿熱処理澱粉質系穀粒の製造方法において、耐圧容器内に充填した澱粉質系穀粒を減圧する第1工程と、減圧後、蒸気を導入して加熱、加圧する第2工程を、少なくとも1回繰り返す湿熱処理澱粉質系穀粒の製造方法、(5)(4)の製造方法の第2工程において、加熱を80℃以上で、かつ5分〜5時間行う製造方法、が開示されている。これらの方法のいずれでも良い。
【0059】
これらの方法により、澱粉質原料を減圧下で湿熱処理された澱粉は、高温加熱により、粒子の内部が中空状で、粒子の外殻部の結晶性が増したものである。このような澱粉は、光学顕微鏡の偏光像に見られる偏光十字模様が、生澱粉よりも弱く、非複屈折性粒子が減少しているという特徴を有する。また中空部はアミロースやアミロペクチンの結晶状態がほぐれた構造になっていると思われ、α―アミラーゼによる消化性が生澱粉よりも増しているという特徴を有する。そのため、特定の澱粉質原料として用いるのに適している。
【0060】
また、澱粉質原料を湿熱処理するに際し、澱粉乳液を50〜95℃へ加温していく過程における澱粉乳液の粘度が、5%濃度に調整した場合に400ブラベンダーユニット(BU)以下の値であり、かつ95℃で30分間保持した時の最大粘度が1000BU以下であることは好ましい。加熱処理により澱粉粒子を膨潤させる程度を調整しやすくするためである。
【0061】
澱粉質原料の加熱の方法は、公知の方法であれば特に制限しないが、例えば水存在下の澱粉質原料を、ジャケット付リアクターに入れてジャケットに蒸気を導入して加熱する方法、水存在下の澱粉質原料に蒸気を混合する方法、ドラム乾燥機の液溜め部で加熱する方法、噴霧乾燥時に蒸気を澱粉スラリーに供給しながら糊化と噴霧とを同時に行う方法等が挙げられる。澱粉粒子の加熱時間の観点から水存在下の澱粉質原料に蒸気を混合する方法が好ましい。加熱温度は、上記の種々の方法で澱粉を糊化した後の液温度が、90〜150℃であればよく、好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは95〜130℃である。
【0062】
乾燥方法は特に制限はないが、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、棚段乾燥、気流乾燥、真空乾燥及び溶剤置換による乾燥などが挙げられる。工業的には噴霧乾燥、ドラム乾燥が好ましい。また、乾燥時の液固形分は0.5重量%〜60重量%程度とするのが好ましい。0.5重量%以上で生産性が良くなり、60重量%以下で粘度が高くなりすぎず、収率が確保されて好ましい。さらには、1〜30重量%がより好ましく、1〜20重量%がさらに好ましい。
【0063】
粉砕方法は特に制限はないが、例えば、コーンクラッシャー、ダブルロールクラッシャー、ハンマーミル、ボールミル、ロッドミル、ピン型ミル、ジェット型ミルなどが挙げられるが、粉砕不足や過粉砕を避ける目的で、上記粉砕機と分級機を兼ねそろえた閉回路粉砕方式を取るのが好ましい。
【0064】
目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上、且つ平均粒径が20μm以上50μm未満となるように粒度調整された、保水量が400%以上、ゲル押込み荷重が200g以上、水溶性成分量が40〜95重量%の加工澱粉は、粒度未調整のものに比べて膨潤度が小さく、ゲル押込み荷重値が高いのが特徴である。また、加工澱粉は、見かけ比重が1.4〜3.6cm3/gの範囲にあることが好ましいが、該加工澱粉の見かけ比重は、乾燥工程における液濃度の大小にも影響され、また、スプレードライ乾燥工程においてアトマイザーの回転数にも影響される。そのため、見かけ比重を上記の好ましい範囲とするには、これらを適宜調整すればよい。
【0065】
本発明の固形製剤に用いる溶出制御基剤は、上記の特定の加工澱粉の効果を損ねない限りにおいて、必要に応じて他の溶出制御基剤を併用してもよい。他の溶出制御基剤としては、親水性の溶出制御基剤(例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、キサンタンガムやイナゴマメガム等の非セルロース多糖類、ポリエチレンオキサイドやアクリル酸ポリマー等の合成高分子等)、親油性の溶出制御基剤(例えば水素化したヒマシ油やステアリン、パルミチンなどのグリセリド類、セチルアルコールなどの高級アルコール類、ステアリン酸等の脂肪酸類、プロピレングリコールモノステアレートなどの脂肪酸エステル類等)、不活性の溶出制御基剤(例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、酢酸ビニル/塩化ビニルのコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、シリコーン、エチルセルロース、ポリスチレン等)等を挙げることができる。
【0066】
このような特定の加工澱粉を溶出制御基剤に用いた固形製剤は、体内のイオン強度や圧縮成形圧に影響されにくく、また、固形製剤の膨潤性が一定範囲内に小さく抑えられる。そのため、このような加工澱粉を用いた場合、活性成分を0次溶出等に正確に制御しやすく好ましい。
【0067】
ここで徐放性とは、活性成分が、時間に関係ない一定の溶出速度で、徐々に固形製剤から溶出され、かつ活性成分の90%以上を溶出するのに要する時間が少なくとも3時間以上である特性をいうものとする。活性成分の90%以上を溶出するのに要する時間は、活性成分の種類と目的により、例えば、投与から8時間、12時間、24時間と適時選択することができるが、固形製剤の胃腸管滞留時間に限度があるため上限はせいぜい72時間である。例えば8時間で活性成分を90%以上溶出させる場合には、第14改正日本薬局方に記載の溶出試験法第1法(回転バスケット法)に準じて測定される活性成分の1時間後の溶出率が10〜30%、4時間後の溶出率が40〜60%、6時間後の溶出率が70%以上のように制御することが好ましい。また、例えば24時間で活性成分の90%以上を溶出させる場合には、1時間後の溶出率が10〜30%、10時間後の溶出率が40〜60%、18時間後の溶出率が70%以上のように制御することが好ましい。活性成分を溶出させる時間により、適時時間の間隔を変更して制御することが可能である。
【0068】
本発明の固形製剤は、上記成分に加え、さらにコーティング顆粒を含有していることが好ましい。ここにいうコーティング顆粒とは、一種以上の活性成分を含有する顆粒にフィルムコーティングを施したものをいう。コーティング顆粒を含むことにより、必要に応じてより複雑で的確な活性成分の放出パターンを得ることができる。
【0069】
コーティング顆粒のコーティング剤としては、徐放性コーティング剤、腸溶性コーティング剤等がある。具体的には、セルロース系コーティング剤(例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート等)、アクリルポリマー系コーティング剤(例えばオイドラギットRS、オイドラギットL、オイドラギットNE等)、あるいはシェラック、シリコン樹脂等から選択される1種以上を用いることができる。
【0070】
コーティング剤には、溶出速度調節のための水溶性物質、可塑剤等を必要に応じて加えても良い。水溶性物質としてはヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性高分子類やマンニトール等の糖アルコール類、白糖や無水マルトース等の糖類、ショ糖脂肪酸エステルやポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤類等から選択される1種以上を用いることができる。可塑剤としてはアセチル化モノグリセリド、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、アジピン酸ジブチル、オレイン酸、オレイノール等から選択される1種以上を用いることができる。
【0071】
これらのごときコーティング剤は、有機溶媒に溶解させたあと顆粒にコーティングしても良いし、水に懸濁させたあと顆粒にコーティングしても良い。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アセトン、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ベンゼン等から選択される1種以上を用いることもできるし、更に水を含有させて用いることもできる。
【0072】
また、上記の活性成分を含有する顆粒とは、活性成分の粉粒体や、活性成分に結合剤等を加えて得られる造粒物でも良く、或いは薬効成分を含まない素顆粒に薬効成分を積層して得られる顆粒でも良い。結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等から選択される1種以上を用いることができる。活性成分を含有する顆粒として好ましくは、コーティング顆粒の強度が強くなり、圧縮成形によるコーティング皮膜の損傷を抑制できる点で、機械的強度の強い素顆粒に薬効成分を積層して得られる顆粒を用いるのが良い。商業的に入手可能である機械的強度の強い素顆粒としては、結晶セルロースを構成成分とする核粒子「セルフィア(登録商標)」SCP−100、CP−203、CP−305、CP−507(旭化成ケミカルズ株式会社製)等が利用できる。
【0073】
本発明の固形製剤は、1製剤あたりの重量が0.20g以上であることが好ましい。これにより、溶出後期の溶出速度を減少させることなく溶出時間を簡単に延長することが可能となる。これは、固形製剤の圧縮方向の膨潤度、及び、膨潤度比が一定範囲にある場合には、固形製剤の形状を大きくしても活性成分の溶出性には影響を及ぼさないことによる。ちなみに、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース等の溶出制御基剤を用いて、圧縮方向の膨潤度又は膨潤度比が上記の好ましい範囲にない例では、固形製剤の重量が大きくなると溶出後期の溶出速度が減少してしまうので好ましくない。固形製剤の圧縮方向の膨潤度、及び、膨潤度比が一定範囲にある場合には、活性成分の溶出性を維持したまま、単純に固形製剤の重量を大きくすることで活性成分の溶出時間を延長ことが可能となる。
【0074】
次に、活性成分とは、固形製剤が投与された体内等の周辺環境に対して、化学的または生物学的に望ましい影響を与える成分を言い、例えば、医薬品薬効成分、農薬成分、肥料成分、飼料成分、食品成分、化粧品成分、色素、香料、金属、セラミックス、触媒、界面活性剤等をいう。活性成分は、粉体状、結晶状、油状、液状、半固形状等のいずれの性状でも良いし、粉末、細粒、顆粒等のいずれの形態でも良い。活性成分は、それ単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。活性成分としては、徐放性に対する要求性能が厳しい医薬品薬効成分とするのが最も好ましい。
【0075】
医薬品薬効成分としては、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、鎮暈薬、小児鎮痛薬、健胃薬、制酸薬、消化薬、強心薬、不整脈用薬、降圧薬、血管拡張薬、利尿薬、抗潰瘍薬、整腸薬、骨粗症治療薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬、抗菌剤、頻尿改善剤、滋養強壮剤、ビタミン剤など、経口で投与されるものが対象となる。薬効成分は、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0076】
本発明の固形製剤は、(a)4〜8時間以下のオーダーの短い半減期を持ち、通例の調製物中で投与される時に1日に数回に分けた用量で摂取しなければならないか、または(b)狭い治療指数を持つか、または(c)全胃腸管にわたり十分に吸収される必要があるか、または(d)治療に効果的な用量が比較的少量である等の、何れか1つ又は2つ以上の特徴を有する1種以上の医薬品薬効成分を製剤化するために特に有用である。
【0077】
本発明における固形製剤には、活性成分の他に、必要に応じて崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤等の他の成分を含有しても構わない。また他の成分は希釈剤として使用しても良い。
【0078】
結合剤としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、トレハロース等の糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、グルコナンナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、結晶セルロース(例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製、「セオラス(登録商標、以下同じ)」PH−101、PH−101D、PH−101L、PH−102、PH−301、PH−301Z、PH−302、PH−F20、PH−M06、M15、M25、KG−801、KG−802等)、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機化合物類等が挙げられことができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0079】
結合剤として使用できる結晶セルロースとしては、圧縮成形性に優れるものが好ましい。圧縮成形性に優れる結晶セルロースを使用することにより、低打圧で打錠できるため打圧で失活する活性成分の活性維持が可能であり、顆粒含有錠にすることができ、少量添加で硬度を付与できる。そのため、嵩高い活性成分の錠剤化や多種類の活性成分を含む薬剤の錠剤化が可能である。従って、場合によっては小型化でき、液状成分の担持性に優れ、打錠障害を抑制できる等の利点がある。商業的に入手可能である圧縮成形性に優れる結晶セルロースとしては、「セオラス」KG−801、KG−802(旭化成ケミカルズ株式会社製)等が利用できる。
【0080】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、結晶セルロース、粉末セルロース等のセルロース類、クロスポビドン、クロスポビドンコポリマー等の合成高分子等が挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0081】
流動化剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物類を挙げることができる。それを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0082】
滑沢剤としては、溶出性への影響が少なく、打錠粉末の臼杵への付着を防止できる点で、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上を用いるのが好ましい。また、溶出性への影響が少なく、打錠粉末の流動性確保、および圧縮成形物の破断荷重を増強できる点で、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上を用いるのが好ましい。なかでも、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、軽質無水ケイ酸から選択される1種以上と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとの組み合わせを用いると、打錠粉末の臼杵への付着防止、打錠粉末の流動性確保、圧縮成形物の破断荷重の増強を同時に満たすことができるので好ましい。
【0083】
矯味剤としては、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、1−メントール等を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0084】
香料としては、オレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、ウイキョウ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油等の油類、緑茶末等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0085】
着色剤としては、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン、リボフラビンなどを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0086】
甘味剤としては、アスパルテーム、サッカリン、ギリチルリチン酸二カリウム、ステビア、マルトース、マルチトール、水飴、アマチャ末等を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0087】
本発明の固形製剤は、医薬品分野で通常行われる固形製剤の圧縮成形による製造法の何れを用いても製造することができる。例えば、活性成分と溶出制御基剤と、必要により結合剤、崩壊剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤等の成分を均一に混合した後に打錠する直接粉末圧縮法を用いることができる。他の例では、活性成分と必要により溶出制御製剤や結合剤、崩壊剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤等の成分とを湿式造粒、或いは乾式造粒し、得られた顆粒に必要により溶出制御基剤や結合剤、崩壊剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤等の成分を加えて打錠する湿式造粒打錠法や乾式造粒打錠法により製造することができる。
【0088】
固形製剤の製造法の他の例として、活性成分と、常温で固体であるが40℃以上で液体となる、例えばカルナウバロウ、硬化ヒマシ油、ポリグリセリンなどの脂溶性の物質や、ポリエチレングリコール6000等の親水性高分子とを40℃以上の温度条件で均一となるように混合し、次いで、冷却して固体とし、必要により粉砕処理等を施して粒度を調整した後に圧縮成形する方法も用いることができる。更には、活性成分と溶出制御基剤とがともに溶解する溶媒を用いて溶液とし、或いは適当な溶媒を用いて均一な分散液とし、該溶液或いは分散液を常法により乾燥させ、得られた活性成分と溶出制御基剤との均一な分散体を圧縮成形する方法によっても製造することができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アセトン、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ベンゼン等の有機溶媒類と水から選択される1種以上を用いることができる。
【0089】
固形製剤とするための圧縮成形機としては、例えば、静圧プレス機、シングルパンチ打錠機、ロータリー打錠機、多層錠剤成形機、有核打錠等の圧縮機を使用でき、特に制限されない。
【0090】
また、本発明の効果を損なわない限り、固形製剤それ自体に、活性成分の溶出性の制御や味のマスキングや防湿等の目的でコーティングが施されていても良い。コーティング剤としては、例えばセルロース系コーティング剤(エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート等)、アクリルポリマー系コーティング剤(オイドラギットRS、オイドラギットL、オイドラギットNE等)、シェラック、シリコン樹脂等から選択される1種以上を用いることができる。これらのコーティング剤の使用方法は公知の方法を用いることができる。コーティング剤は有機溶媒に溶解しても、水に懸濁させて用いてもよい。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、実施例、比較例における各試験法、及び物性の測定方法は以下の通りである。
(1)溶出試験
【0092】
第14改正日本薬局方に記載の溶出試験法の第一法(回転バスケット法)に準拠する方法で、試験液に日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)、或いは、Mcilvaine液(pH7.2、イオン強度0.40、組成:リン酸水素二ナトリウム173.9mM、クエン酸13.0mM、以下、「第2液」と略すことがある)を用い、試験液900cm3、バスケット回転数100rpm、試験液温度37±0.5℃の条件で行う。なお、各試験液にはα−アミラーゼ製剤(組成:α−アミラーゼ/炭酸カルシウム/コーンスターチ=5/5/90、AD「アマノ」1、アマノエンザイム株式会社)を90mg加え、α−アミラーゼ含有量を5μg/cm3とする。
(2)粒度分布 32μmより小さい粒子数
【0093】
JIS篩の目開き32μmを利用し、測定試料5gを5分間エアージェットシーブで篩分した時、篩を通過した測定試料の重量百分率より求める。
(3)粒度分布 75μmより小さい粒子数
【0094】
JIS篩の目開き75μmを利用し、測定試料10gを5分間エアージェットシーブで篩分した時、篩を通過する測定試料の重量百分率より求める。
(4)粒度分布 平均粒径(μm)
【0095】
JIS篩目開き500μm、300μm、250μm、212μm、150μm篩を用い、測定試料20gを15分間ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)で篩分する。次に、150μm篩を篩過した測定試料5gを、JIS篩目開き75μmを用い、5分間エアージェットシーブで篩分する。更に、150μm篩を篩過した測定試料5gを、JIS篩目開き32μmを用い、5分間エアージェットシーブで篩分する。各篩の篩上重量百分率[%]を求め、累積重量百分率が50%の時の粒子径として求める。
(5)安息角(°)
【0096】
杉原式安息角測定器(薬剤学27、p.260、1965年)を使用して求める。
(6)見かけ比重(g/cm3)
【0097】
スコットボリュームメーター(筒井理化学機器株式会社)を用いて測定する。粉体試料を定量フィーダーを用いて2−3分かけて測定容器内に粉体があふれるまで流下させる。次いで容器の上部に堆積した過剰量の粉体をすり落とし、また、容器の側面に付着した試料を除去する。その後、容器に疎充填された粉体重量を量る。測定容器の容積を容器に疎充填された粉体重量で除した値を見かけ比重とする。
(4)保水量
【0098】
乾燥した加工澱粉W0(g)(約1g)を、約15cm3の20℃±5℃の純水が入った50cm3遠沈管へ少しずつ入れ、かき混ぜながら透明〜半透明になるまで純水に分散させる。50cm3沈降管の7割程度になるよう20℃±5℃の純水を追加して遠心分離(2000G、10分)する。遠心分離終了後すぐに分離した上層を切り捨てた後、下層に残る重量W(g)(澱粉+澱粉が保持する純水量)から下式(3)により保水量を求める。
保水量(%)=100×(W−W0)/W0・・・・・(3)
(5)崩壊時間(hr)
【0099】
処方粉末0.2gを静圧プレス(MODEL−1321DW CREEP/アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて50MPaの圧縮力で成形して得られる直径0.8cmの円柱状成形体の試験液中での崩壊時間で定義される。試験液は第14改正日本薬局方に記載の第2液(pH6.8)であり、崩壊試験は第14改正日本薬局方の崩壊試験法に準じ、補助盤を使用して行う。
(6)ゲル押込み荷重(g)
【0100】
処方粉末0.5gを静圧プレス(MODEL−1321DW CREEP/アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて50MPaの圧縮力で成形して得られる直径1.13cmの円柱状成形体を20℃±5℃の純水中に4時間浸漬しゲル化させた後、レオメーター(RHEONER、RE−33005、YAMADEN製)を使用し、0.1mm/secの速度で3mm円柱状のアダプターを押込んだ時の最大荷重と定義する。最大荷重とはゲル層の破断があれば破断時の、破断がなければアダプターがゲル化した円柱状成形体に5mm侵入するまでに示した最大の荷重値とする。5個の平均値で算出する。
(7)加工澱粉の水溶性成分量(%)
【0101】
加工澱粉1gに20℃±5℃の純水99gを加えてマグネチックスターラーで2時間攪拌して分散させ、得られた分散液の40cm3を50cm3の遠沈管に移し、5000Gで15分間遠心分離し、この上澄液30cm3を秤量瓶に入れ、110℃で一定重量になるまで乾燥して乾燥重量(g)を測定する。また、澱粉1gを110℃で一定重量になるまで乾燥して絶乾重量(g)を測定する。これらの測定値及び下式(4)により求めた値を水溶性成分量と定義する。
水溶性成分(%)=(乾燥重量×100÷30)÷絶乾重量×100・・・・(4)
(8)加工澱粉の膨潤度(cm3/g)
【0102】
加工澱粉1.0gを20±5℃の純水に分散させて100cm3の沈降管に移し、全量を100cm3とし、16時間放置した後、上下に分かれた下層の容積V(cm3)と加工澱粉1.0gの乾燥重量(g)を測定し、下式(5)より算出する。
加工澱粉の膨潤度(cm3/g)=V/加工澱粉の乾燥重量・・・・・(5)
(9)加温保存条件下のゲル押込み荷重(g)
【0103】
加工澱粉0.5gを静圧プレス(MODEL−1321DW CREEP/アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて50MPaの圧縮力で成形して得られる直径1.13cmの円柱状成形体を37℃±0.5℃の純水中に4時間浸漬しゲル化させた後、レオメーター(RHEONER、RE−33005、YAMADEN製)を使用し、0.1mm/secの速度で3mm直径で円柱状のアダプターを押込んだ時に最初にピークを与える値と定義して求める。5個の平均値で算出する。
[比較製造例1]
【0104】
バレイショ澱粉をステンレスバット(50cm×25cm)中に層厚5cmで充填して耐圧容器内で5分減圧(600mmHg)後、加圧蒸気(120℃)にて20分処理したものを原料とし、固形分濃度7.5%の澱粉乳液を調製した。この澱粉乳液を20L/hrでジェットクッカーで加熱、糊化(出口温度100℃)させ、3L容器の滞留管(100℃)を連続的に通過した後噴霧乾燥して加工澱粉Cを得た。加工澱粉Cの基礎物性を表2に示した(特許文献2の実施例6に相当)。
【0105】
また、加工澱粉Cを150〜500μm、75〜150μm、32〜75μm、0−32μmの粒度毎に分画し、それぞれ加工澱粉の膨潤度、加温保存条件下のゲル押込み荷重値を測定した結果を表1に示した。また加工澱粉の膨潤度測定条件において、16時間経過した後の加工澱粉の膨潤状態を、上下に分かれた層を均一に再分散した後に光学顕微鏡で観察し、図3〜6に示した。
[実施例1]
【0106】
バレイショ澱粉をステンレスバット(50cm×25cm)中に層厚5cmで充填して耐圧容器内で5分減圧(600mmHg)後、加圧蒸気(120℃)にて20分湿熱処理したものを原料とし、固形分濃度7.5%の澱粉乳液を調製した。この澱粉乳液を20L/hrでジェットクッカーで加熱、糊化(出口温度100℃)し、噴霧乾燥した後、分級機を内蔵したピン型ミルを用いて粉砕・分級処理を行い加工澱粉Aを得た。加工澱粉Aの基礎物性を表2に示した。また、加工澱粉Aを150〜500μm、75〜150μm、32〜75μm、0−32μmの粒度毎に分画し、それぞれ加工澱粉の膨潤度、加温保存条件下のゲル押込み荷重値を測定した結果を表1に示した。また加工澱粉の膨潤度測定条件において、16時間経過した後の加工澱粉の膨潤状態を、上下に分かれた層を均一に再分散した後に光学顕微鏡で観察し、図1〜2に示した。
【0107】
溶出制御基剤である加工澱粉Aと、結合剤である結晶セルロース(「セオラス」KG−802、旭化成ケミカルズ株式会社製)と、親水性助剤であるソルビトール(和光純薬工業株式会社製)と、親水性高分子助剤であるポリエチレングリコール(マクロゴール6000、三洋化成工業株式会社製)と、難溶性活性成分としてのエテンザミド(エトキシベンツアミドP、エーピーアイコーポレーション社製)とを60/10/10/10/10の重量比になるように均一に混合し、静圧プレス(MODEL−1321DW CREEP/アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて120MPa、及び300MPaの圧力で圧縮し、直径0.8cm、重量0.18gの固形製剤を得た。
【0108】
120MPaの圧縮成形圧で得られた固形製剤と、日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)にα−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加した試験液とを用いて、エテンザミドの溶出パターンを測定した。また、試験液を日本薬局方記載の第2液からMcilvaine液(pH7.2、イオン強度0.40)に変更した以外は同様にしてエテンザミドの溶出パターンを測定した。さらに、300MPaの圧縮成形圧で得られた錠剤を、日本薬局方記載の第2液を用い、α−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加して、エテンザミドの溶出パターンを測定した。
【0109】
溶出試験の結果を比較例1の溶出試験の結果と合わせて図7に示した。溶出制御基剤に加工澱粉A、水溶性助剤にソルビトール、水溶性高分子にポリエチレングリコールを用いたエテンザミドの徐放性固形製剤は、イオン強度や圧縮成形圧による溶出速度の変動もなく、安定した0次溶出を示した。
[比較例1]
【0110】
実施例1で得られた加工澱粉Aと結晶セルロース(「セオラス」KG−802、旭化成ケミカルズ株式会社製)とポリエチレングリコール(マクロゴール6000、三洋化成工業株式会社製)とエテンザミド(エトキシベンツアミドP、エーピーアイコーポレーション社製)とを60/20/10/10の重量比になるように均一に混合し、静圧プレス(MODEL−1321DW CREEP/アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて120MPaの圧力で圧縮し、直径0.8cm、重量0.18gの錠剤を得た(実施例1と比較してソルビトールを含まない処方)。
【0111】
得られた錠剤を、日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)を用い、α−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加して溶出試験を行った。結果を実施例1の結果と合わせて図7に示した。
【0112】
加工澱粉Aを溶出制御基剤とするが、水溶性助剤を含まない比較例1のエテンザミドの徐放性錠剤は、溶出試験開始後5時間辺りで錠剤の分裂が生じてしまい、エテンザミドの溶出量が一時的に増加してしまった。
[比較例2]
【0113】
バレイショ澱粉をステンレスバット(50cm×25cm)中に層厚5cmで充填して耐圧容器内で5分減圧(600mmHg)後、加圧蒸気(120℃)にて20分処理したものを原料とし、固形分濃度7.5%の澱粉乳液を調製した。この澱粉乳液を20L/hrでジェットクッカーで加熱、糊化(出口温度115℃)させた後噴霧乾燥して加工澱粉Bを得た(特許文献2の実施例5に相当)。加工澱粉Bの基礎物性を表2に示した。
【0114】
加工澱粉Aの代わりに加工澱粉Bを用いる以外は実施例1と同様の方法で、120MPa、及び300MPaで圧縮成形した直径0.8cm、重量0.12gの錠剤を得た。得られた錠剤を、日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)を用い、α−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加して溶出試験を行い、結果を図8に示した。
【0115】
加工澱粉Bを溶出制御基剤に用いた錠剤は、300MPaと高い圧縮力では安定した0次溶出を示したが、120MPaの圧縮力では溶出試験開始後6時間辺りで錠剤の分裂が生じてしまい、エテンザミドの溶出量が一時的に増加してしまった。
[実施例2]
【0116】
実施例1のソルビトールの代わりにマンニトール(和光純薬工業株式会社製)を用い、加工澱粉Aと結晶セルロースとマンニトールとポリエチレングリコールとエテンザミドとの組成比を45/5/35/5/10とする以外は実施例1と同様の方法で行い、120MPの圧力で圧縮し、直径0.8cm、重量0.18gの錠剤を得た。
【0117】
得られた錠剤を、日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)を用い、α−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加して溶出試験を行い、結果を実施例1及び3の同じ条件での溶出試験の結果と合わせて図9に示した。溶出制御基剤に加工澱粉A、水溶性助剤にマンニトール、水溶性高分子にポリエチレングリコールを用いたエテンザミドの徐放性錠剤は、安定した0次溶出を示した。
[実施例3]
【0118】
実施例1のポリエチレングリコールの代わりにポリビニルピロリドンK30を用い、加工澱粉Aと結晶セルロースとソルビトールとポリビニルピロリドンK30とエテンザミドとの組成比を60/15/5/10/10とする以外は実施例1と同様の方法で行い、120MPの圧力で圧縮し、直径0.8cm、重量0.18gの錠剤を得た。
【0119】
得られた錠剤を、日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)を用い、α−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加して溶出試験を行い、結果を実施例1及び2の同じ条件での溶出試験の結果と合わせて図9に示した。溶出制御基剤に加工澱粉A、水溶性助剤にソルビトール、水溶性高分子にポリビニルピロリドンを用いたエテンザミドの徐放性錠剤は、安定した0次溶出を示した。
[比較例3]
【0120】
実施例1の加工澱粉Aの代わりにヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ90SH−100SR、信越化学工業株式会社製)を用いる以外は実施例1と同様の方法で錠剤を作製と溶出試験を行い、溶出試験の結果を図10に示した。
【0121】
溶出制御基剤にヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いるエテンザミドの徐放性錠剤は、イオン強度0.14の2液では安定な溶出性を示したが、イオン強度が0.40と高いMcilvaine液では、溶出試験開始後直ぐに錠剤が崩壊しエテンザミドの全量が溶出してしまった。
[比較例4]
【0122】
実施例1の加工澱粉Aの代わりにオイドラギットRSPO(デグサ社製)を用いる以外は実施例1と同様の方法で錠剤の作製と溶出試験とを行い、溶出試験の結果を図11に示した。
【0123】
溶出制御基剤にオイドラギットRSPOを用いるエテンザミドの徐放性錠剤は、圧縮成形圧により溶出速度が大きく変動した。
[実施例4]
【0124】
実施例1で得られた加工澱粉Aと結晶セルロース(「セオラス」KG−802、旭化成ケミカルズ株式会社製)とソルビトール(日研化学株式会社製)とポリエチレングリコール(マクロゴール6000(商品名)、三洋化成工業株式会社製)とエテンザミド(エーピーアイコーポレーション社製)とタルク(タルカンハヤシ、株式会社林化成製)とノイシリン(富士化学工業株式会社製)とを46.5/9.5/9.5/0.5/30/3/1の重量比になるように均一に混合した。この混合物を、ロータリー打錠機(クリーンプレスコレクト12HUK/株式会社菊水製作所製)を用いて、150MPaの圧力で圧縮し、直径8.0mm、重量0.2gの錠剤を得た。
【0125】
日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)にα−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加した試験液を用いて得られた錠剤の溶出試験を行い、エテンザミドの溶出パターンを測定した。溶出試験結果を図12に示した。
溶出制御基剤に加工澱粉A、水溶性高分子助剤にポリエチレングリコール、水溶性助剤にソルビトールを用い、滑沢剤にタルクとノイシリンを用いて作製したエテンザミドの徐放錠剤は、安定な0次溶出性を示した。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】加工澱粉A(0−32μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図2】加工澱粉A(32−75μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図3】澱粉粉末C(0−32μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図4】加工澱粉C(32−75μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図5】加工澱粉C(75−150μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図6】加工澱粉C(150μm−500μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図7】実施例1及び比較例1の溶出試験結果を示したグラフである。
【図8】比較例2の溶出試験結果を示したグラフである。
【図9】実施例1〜3の溶出試験結果を示したグラフである。
【図10】比較例3の溶出試験結果を示したグラフである。
【図11】比較例4の溶出試験結果を示したグラフである。
【図12】実施例4の溶出試験結果を示したグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬、肥料、飼料、食品、工業、化粧品等の用途において、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を徐放性に制御する固形製剤に関するものである。より詳細には、イオン強度値やpH等の生体内環境、及び圧縮成形時の圧縮力に影響を受けにくく、胃腸管滞留時間の変動も小さくて、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を徐放性に制御できる徐放性固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬用途における徐放性固形製剤は、活性成分の血中濃度をコントロールすることにより、投与回数が減少し服用性が改善できること、生体内の消失半減期の短い活性成分の持続性が改善できること、血中最小濃度と副作用発現濃度幅の狭い活性成分の副作用を低減できること等から有用性の高い製剤である。
【0003】
活性成分の溶出を徐放性に制御する方法としては、活性成分を溶出制御基剤とともに均一に分散させて圧縮成形する方法が、安定した溶出制御性に加え構造や製造プロセスがシンプルであり開発速度も速いことから実用化の点で多く用いられており(マトリクスシステム)、溶出制御基剤には親水性の溶出制御基剤、親油性の溶出制御基剤、不活性の溶出制御基剤(熱可塑性ポリマー類に属する)等が利用されている。
【0004】
親水性の溶出制御基剤の例としては、特許文献1等に記載されているように、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロース誘導体が知られている。これらは、pHの影響を受けることなく活性成分を徐放性に制御できることや、経時安定性に優れる等の特徴を有している。しかし、セルロース誘導体は水和により大きく膨潤する性質を有しているため、溶出溶液中でゲル化が進行するのに伴い固形製剤は圧縮方向に大きく膨潤してしまう。その結果、溶出の後期には活性成分が溶出するための拡散距離が長くなり溶出速度が低下してしまう。そのため、0次溶出などに正確にコントロールするのは難しい欠点を有していた。セルロース誘導体は一般に粘度の異なるグレードが市販されており、高粘度グレードの方が活性成分を徐放する能力に優れる。しかし、一方では高粘度グレードほど圧縮方向への膨潤度が大きくなる傾向があり、0次溶出などに正確にコントロールするのは難しかった。
【0005】
特許文献2、3等には、セルロース誘導体の溶出性を調整する方法として、水溶性の成分を配合する方法が記載されている。特許文献2には、HPMC等のゲル形成ポリマーを溶出制御基剤とする徐放性固形製剤に、放出をより遅くまたはより速く調節するための溶出調節剤としてソルビトールやポリエチレングリコール等の使用が記載されている。しかし、溶出調節剤を使用した実施例はなく、溶出調節剤の効果は具体的には開示されていない。また、当業者の間で知られているように、これらの溶出調節剤は活性成分の溶出速度を全体的に遅くしたり速くしたりする効果は期待されるが、溶出後期に溶出速度が低下してしまう問題を改善できるものではなかった。特許文献3には、HPMC等のセルロースポリマー化合物を溶出制御基剤とし、ブドウ糖シロップを含有する徐放性固形製剤の記載があり、活性成分は直線状に溶出されることが開示されている。しかし、実際に実施例で開示されている溶出試験結果は、溶出後期に溶出速度が低減しており、溶出後期の速度低下を改善するには不十分であった。
【0006】
特許文献4には、セルロース誘導体の膨潤に起因する溶出後期の速度低下を改善する目的で、活性成分を含む膨潤性の層と被侵食性および/または可溶性層からなる多層錠を用いる方法が開示されている。この方法では、溶出後期に被侵食性および/または可溶性層が減少して活性成分を含む膨潤層の表面積を増大させて、溶出後期の溶出速度の低下を防ぐ。しかし、このように、セルロース誘導体の溶出後期の速度低下の問題を改善するには、複雑な製剤設計を取る必要があった。
【0007】
また、セルロース誘導体は、イオン強度値の大きい溶液中ではイオン強度を作る溶質と水和を競合する。そのため、ゲル化が不十分となり、マトリクスの形状を維持できず崩壊してしまう性質を有する。胃腸管でのイオン強度値はその領域のみならず摂取した食物によっても異なり、約0.01〜約0.2の範囲で変動することが知られている。このため、セルロース誘導体は、胃腸管の変動するイオン強度環境では、中程度以上のイオン強度で水和が抑制されマトリクスが崩壊してしまう問題も有していた。マトリクスの崩壊によって残りの活性成分の急激な溶出が生じる、いわゆる用量ダンピングが生じると、血中濃度が急激に上昇する。その結果、血中最小濃度と副作用発現濃度幅の狭い活性成分の効力次第では死に至る可能性もある。医薬品分野における徐放性固形製剤はイオン強度が変動する胃腸管環境の中でも正確な溶出制御を提供する必要がある。そのため、変動するイオン強度の溶液中、特にイオン強度が高い溶液中で安定した溶出制御性を有する徐放性固形製剤が求められている。
【0008】
特許文献5〜9には、HPCやHPMCの溶出制御性の改善方法が開示されている。これら文献には、例えばHPCでは100メッシュ(目開き約150μm)の篩いを通過する粒子が50重量%以上、HPMCでは100メッシュ(目開き約150μm)の篩いを通過する粒子が95重量%以上となるように粒子を微細化する方法が開示されている。これらの方法によれば、HPCやHPMCの粒子を微細化することで水和速度が促進され、ゲル層を迅速に形成させることが可能となり、活性成分の溶出初期に起こる錠剤の崩壊を抑制して過剰な溶出を防止すことができる。しかし、特許文献5〜9による微細粒子の使用は、粒子の膨潤性を改善したものでは無いから、溶出後期の速度低下の問題を解決することはできず、また、イオン強度の大きい溶液中での崩壊性を解決することもできなかった。
【0009】
セルロース誘導体の中でもHPMCは従来最も頻繁に使用されている溶出制御基剤の1つである。しかし、上述した問題に加え、流動性に劣る、多少黄色みのある色をしており白色度に劣る、合成糊特有の刺激臭がある等、粉体物性面でも多くの点で改良が望まれているのが現状である。
【0010】
セルロース誘導体の他の親水性の溶出制御基剤としては、キサンタンガムやイナゴマメガム等の非セルロース多糖類、ポリエチレンオキサイドやアクリル酸ポリマー等の合成高分子が知られている。これらの溶出制御基剤は、一般にセルロース誘導体よりも膨潤性が大きく、圧縮方向のみならず圧縮方向と垂直方向にも大きく膨潤し、時間が経過するにつれて肥大化するする性質を有している。その結果、溶出後期で溶出速度が低減してしまう欠点がある。また、胃腸管内での滞留時間の変動を招く可能性が大きい。そのため、再現性良く正確な溶出が求められる医薬品分野においては必ずしも満足のいく徐放性固形製剤ではなかった。
【0011】
特許文献10〜12には、非セルロース多糖類や合成高分子に水溶性の成分を配合して溶出性を調整する方法が記載されている。特許文献10には、ヘテロ多糖ガムおよび該ヘテロ多糖ガムと架橋することができるホモ多糖ガムを含む徐放性固形製剤に不活性希釈剤として単糖類、二糖類、多価アルコールを含む記載がある。しかし、不活性希釈剤が活性成分の溶出性に及ぼす影響については記載がない。
【0012】
特許文献11には、アルギン酸ナトリウムとキサンタンガムの混合物などの徐放化用担体と、ゲル水和促進剤とを含む徐放性固形製剤が記載されている。ゲル水和促進剤はHPMCとアルギン酸プロピレングリコールエステルの混合物が好ましいとの記載がある。また、速いゲル水和によって非ゲル化コアを形成しないため胃腸管の運動速度による影響のない溶出となることが開示されており、0次溶出との記載もある。しかし、実施例で開示されている徐放製剤は全て活性成分の溶出が試験開始後2時間まで殆ど無いものであり、医薬品用途で一般に求められる0次溶出とは溶出性の異なる特殊なものであった。
【0013】
特許文献12には、ポリエチレンオキサイド(PEO)などのハイドロゲルを形成する高分子と、1gが溶解するのに必要な水の量が5ml以下の溶解性を示す一種もしくは二種以上の製剤内に水を浸入させるための添加剤とを含む徐放性固形製剤の記載がある。固形製剤のゲル化が促進されるため、水分量の少ない消化管下部でも継続して活性成分の徐放が可能となることが開示されている。特許文献12に用いる添加剤は、水への溶解性が一定以上であることを必要としている。しかし、分子量の違い等が徐放性固形製剤のゲル化後の強度や溶出性に及ぼす影響については記載されていない。また、実施例で開示されている溶出試験結果は溶出後期に速度が低下しており、ハイドロゲルを形成する高分子が溶出後期に速度低下する問題を改善できるものではなかった。
【0014】
親油性の溶出制御基剤としては、水素化したヒマシ油や、ステアリン、パルミチンなどのグリセリド類、セチルアルコールなどの高級アルコール類、ステアリン酸等の脂肪酸類、プロピレングリコールモノステアレートなどの脂肪酸エステル類などが従来から多く用いられているが、保存安定性に欠け活性成分の溶出性が大きく変動したり、溶出後期に溶出速度が低下してしまう等、多くの問題を抱えていた。
【0015】
不活性の溶出制御基剤としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、酢酸ビニル/塩化ビニルのコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、シリコーン、エチルセルロース、ポリスチレン等が知られている。不活性の溶出制御基剤を用いた徐放性固形製剤は、水不溶性の粒子が圧縮成形されてできる細孔を活性成分が拡散することで徐放性が発現する。そのため、圧縮成形圧により細孔の大きさが変動すると活性成分の溶出速度も変動してしまうという問題を有していた。また、溶出後半には活性成分の拡散距離が長くなるために溶出速度が遅くなるという欠点も有していた。
【0016】
特許文献13、14等には、不活性の溶出制御基剤に水溶性の成分を配合して溶出性を調整する方法が記載されている。特許文献13等には、溶出制御基剤であるメタアクリル酸コポリマーと、D−ソルビトール、粉末還元麦芽糖水飴、無水リン酸カルシウム等の賦形剤とを含む徐放性固形製剤の記載がある。当該固形製剤の使用により、活性成分の溶出が時間に比例し、しかも圧縮力に依存しないことが開示されている。しかし、実施例に開示されている溶出試験結果は溶出後期に溶出速度が低下しており、メタアクリル酸コポリマーが溶出後期に速度低下する問題を改善するものではなかった。また、圧縮成形圧による溶出速度の変動を抑制するものでもなかった。医薬品添加剤として市販されているメタアクリル酸コポリマーは、静電気が発生しやすく、また化学合成品に特有の不快な臭いが強いものであり、取り扱いの点でも問題があった。
【0017】
特許文献14にはポリ酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの混合物を溶出制御基剤とする徐放性固形製剤に、放出を改変するためのポリエチレングリコール等の水溶性、水溶性高膨潤性または親油性賦形剤を配合し、放出速度を増大させたり遅延させたりする方法が記載されている。これは、ポリ酢酸ビニルが圧縮成形されてできる細孔の水浸透性を制御して活性成分の溶出を全体的にコントロールするものである。しかし、溶出後期の速度低下の問題を改善できるものではなかった。また、錠剤表面にゲルが形成されて初期溶出が抑えられるため溶出が直線的になるとの記載がある。しかし、溶出後期の速度低下の問題は改善できるものではなく、実施例ではポリエチレングリコール等の使用や、直線的な溶出が具体的に開示されていなかった。また、医薬品添加剤として市販されているポリ酢酸ビニルとポリビニルピロリドンの混合物は強く黄色味を帯びており、また、化学合成品に特有の不快な臭いが強いものであった。
【0018】
特許文献15には、保水量が400%以上、崩壊時間が5時間以上、ゲル押込み荷重が200g以上の加工澱粉、及び該加工澱粉を溶出制御基剤とする徐放性固形製剤について開示されている。該加工澱粉は、従来の天然加工澱粉には見られないα−アミラーゼに対する高い抵抗性を有するために十分な徐放性を示し、且つ、イオン強度による影響を受けない。そのため用量ダンピングの問題を生じることなく、活性成分を比較的安定に徐放することが可能との記載がある。加えて、天然由来の澱粉質原料を物理的な加工のみで製造している。従って、化学物質残留等の問題がなく安心して摂取することができ、また、流動性、白色度ともに良好である。しかしながら、開示された加工澱粉は比較的粒子の膨潤性が大きいものであり、ゲル化した固形製剤の強度が弱くなる欠点や、活性成分の溶出速度が圧縮成形圧により変動してしまう等の欠点を有している。また、活性成分の溶出性が製造工程における圧縮成形圧の変動や処方及び配合量の変化によって大きく変動してしまう。そのため、必ずしも正確に溶出制御できるものではなかった。さらに、活性成分として水への溶解度が小さい活性成分を用いると、特に圧縮成形時の圧縮力が小さい条件では、溶出の途中で非特定な時間帯に固形製剤に亀裂が生じたり、2つ以上に分裂したりしてしまい、溶出速度が一次的に速まる欠点も有していた。このように、特許文献15に記載の加工澱粉は、イオン強度やpH等の生体内環境に依存せず正確な溶出制御が可能であるにもかかわらず、圧縮成形圧に依存して溶出速度が変化したり、活性成分の種類によっては不特定な時間帯に突発的に多量の活性成分が溶出されたりする問題を有していた。
【0019】
溶出制御基剤としての澱粉類の使用については、特許文献16〜22等に記載されている。特許文献16には、低粘度でマルチモードの粒子サイズを有するプレゼラチン化澱粉を含む医薬組成物が、活性成分の溶出速度のバラツキを改善する目的で記載されている。この組成物は、持続放出を含む多くの形態にあることができる記載がある。しかし、実施例では45分で75%以上が溶出する溶出速度の速い製剤しか開示されておらず徐放性を示す具体的な開示がない。また、澱粉自体が徐放性機能を有することの記載もない点で本願発明と異なる。
【0020】
特許文献17には、予めゼラチン化された澱粉をマトリクス基剤とする徐放製剤が記載されている。しかし、好ましい実施形態として可溶性のフラクションが10〜20%の予めゼラチン化されたとうもろこし澱粉の使用が記載されており、本願発明に用いる加工澱粉が水溶性成分量40〜95重量%である点で異なる。活性成分の溶出速度などは具体的に開示されていない。しかし、特許文献17のように冷水可溶性成分が少ない澱粉では徐放性機能が不十分であり、特に水溶性の高い活性成分を徐放性に制御するのは困難である。
特許文献18には、水溶性ポリマーと水溶性のより低いポリマーのどちらか1つ以上含むマトリクス徐放製剤が開示されている。また、特許文献19には、水溶性ポリマーと水溶性のより低いポリマーとの両方を含むマトリクス徐放製剤が開示されている。特許文献18、19には、水溶性ポリマーとしての澱粉の記載がある。しかし、本発明に用いる加工澱粉は、水溶性成分量が40〜95%との範囲内にあり、部分的にしか水に溶解しない点で異なる。
【0021】
特許文献20には、天然ポリサッカライドを含むマトリクス徐放性製剤において、天然ポリサッカライドとして改質コーンスターチの使用が記載されている。しかし、記載されている改質コーンスターチは水溶性のアルファ化澱粉であり、本願発明に用いる加工澱粉が水溶性成分量40〜95%である点で異なる。また、増粘剤、養鰻飼料などとして食品用途で主として用いられているアルファ化澱粉は、非特許文献1に報告されているように、α―アミラーゼの存在下で澱粉が形成するゲルが破壊されて徐放性能が低下してしまうという問題があった。
【0022】
特許文献21には澱粉を5〜95%含む水との混合物を130〜160℃の温度条件でシアをかけて得られる澱粉をマトリクス基剤とする徐放性製剤の記載がある。また、特許文献22には、結晶性澱粉の結晶性を部分的ないし実質的に完全に喪失させた澱粉を使用する徐放性製剤が記載されている。しかし、特許文献21、22は、活性成分の溶出を0次溶出等に制御できるものでもなかった。また、アルファ化澱粉がα−アミラーゼの存在下で澱粉が形成するゲルが破壊されて徐放性能が低下してしまう問題を解決したものでもなかった。
【0023】
また、特許文献23〜25には、アミロースをマトリクス基剤とする徐放製剤の記載があるが、本願発明に用いる加工澱粉はアミロースとアミロペクチンを含む点で異なる。特許文献には26〜28等には、架橋アミロースをマトリクス基剤とする徐放性固形製剤の記載がある。しかし、架橋アミロースは天然原料の澱粉からアミロペクチンを取り除いたアミロースに、更にアルカリ存在下で化学処理を施したものであり煩雑な工程を経て得られるものである。更には溶出制御性を改善するために溶出速度調整剤としてα−アミラーゼを配合したり(特許文献27)、あるいは、腸内環境に存在するα−アミラーゼへの依存性を低下するためにHPMCを使用する(特許文献28)などの必要があった。
【0024】
また、特許文献29は澱粉アセテートをマトリクス基剤とする徐放性製剤、特許文献30はエポキシ基やハロゲン化合物で置換した置換アミロースをマトリクス基剤とする徐放性製剤、特許文31にはカルボン酸や硫酸塩等で修飾した澱粉をマトリクス基剤とする徐放性製剤の記載がある。特許文献29〜31は、澱粉に徐放性機能を付与するために、化学的な処理を必要としており、本願発明に用いる加工澱粉が天然の澱粉を物理的処理のみで加工して得られる点で異なる。
【0025】
以上のように、イオン強度やpH等の生体内環境、及び圧縮成形時の圧縮力に影響を受けず、胃腸管滞留時間の変動も小さい、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を0次溶出等に制御可能な徐放性固形製剤は、従来技術においては見当たらないのが現状であり、このような徐放性固形製剤が望まれていた。
【特許文献1】米国特許6296873号公報
【特許文献2】特表2005−504052号公報
【特許文献3】特表2002−525310号公報
【特許文献4】特開2004−107351号広報
【特許文献5】特公平7−515156号公報
【特許文献6】特公平7−8809号公報
【特許文献7】特公昭62−149632号公報
【特許文献8】特開平6−172161号公報
【特許文献9】特開平6−305982号公報
【特許文献10】特表2003−510265号公報
【特許文献11】特開2004−143175号公報
【特許文献12】特開2001−10951号公報
【特許文献13】特開平11−5739号公報
【特許文献14】特開2002−20319号公報
【特許文献15】WO2005/005484号国際公開公報
【特許文献16】特表2006−514687号公報
【特許文献17】特開平5−262649号公報
【特許文献18】特開昭63−54319号公報
【特許文献19】特開平2−2038号公報
【特許文献20】特開昭63−503225号公報
【特許文献21】WO92/15285号国際公開公報
【特許文献22】特開昭61−5027号公報
【特許文献23】特表2000−517351号公報
【特許文献24】WO99/009066号国際公開公報
【特許文献25】特開2002−363106号公報
【特許文献26】米国特許5456921号公報
【特許文献27】特表平8−502036号公報
【特許文献28】特表2000−507561号公報
【特許文献29】特表平10−502056号公報
【特許文献30】特表2001−502700号公報
【特許文献31】WO2005−74976号国際公開公報
【非特許文献1】Chem.Pharm.Bull.,35(10),4346−4350(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、こうした実情の下に、イオン強度やpH等の生体内環境、圧縮成形時の圧縮力に影響を受けず、胃腸管滞留時間の変動も小さい、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を0次溶出等に正確に制御できる徐放性固形製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明者らは、水への溶解性が小さい活性成分を含む徐放性固形製剤の溶液中でのゲル形成機構及び活性成分溶出機構について鋭意検討を重ねた。その結果、特定の加工澱粉を溶出制御基剤として用い、かつ水への溶解度が0.1〜5.0g/cm3の水溶性助剤を併用することで、水への溶解性が小さい活性成分の溶出を0次溶出等に正確に制御できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の通りである。
【0028】
(1)1種以上の活性成分と溶出制御基剤とを含有する徐放性固形製剤であって、前記の活性成分は、水への溶解度が0.0001〜100mg/cm3のものであり、前記の溶出制御基剤は、保水量が400%以上で、ゲル押込み荷重が200g以上で、水溶性成分量が40〜95重量%で、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上で、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上で、平均粒径が20μm以上50μm未満の加工澱粉であり、さらに、水への溶解度が20℃において0.1〜5.0g/cm3かつ分子量が1000以下の親水性助剤を含有すると共に、前記の加工澱粉と前記の親水性助剤との重量配合比率が、50:50〜99:1の範囲内にあることを特徴とする固形製剤。(2)前記加工澱粉が、目開き75μmの篩いを通過する粒子が98重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が40重量%以上のものである、(1)に記載の固形製剤。(3)前記加工澱粉の膨潤度が6cm3/g以上10cm3/g以下である、(1)又は(2)に記載の固形製剤。(4)前記加工澱粉が、安息角45°以下であり、かつ見かけ比重が1.4cm3/g以上3.6cm3/g以下のものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤。
(5)前記親水性助剤が、糖アルコール類、糖類、界面活性剤、塩類、有機酸、アミノ酸類、アミノ糖類からなる群から選択された少なくとも1種である、(1)〜(4)のいずれかに記載の固形製剤。(6)前記親水性助剤がソルビトール及び/又はスクロースである、(5)に記載の固形製剤。(7)前記溶出制御基剤が、さらに、20℃における水への溶解度が0.1g/cm3以上5.0g/cm3以下で、融点が50℃以上で、平均分子量が5000以上の合成または天然のポリマー類である親水性高分子助剤を含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の固形製剤。(8)前記親水性高分子助剤がポリエチレングリコールである、(7)に記載の固形製剤。(9)前記の1種以上の活性成分が医薬品薬効成分である、(1)〜(8)のいずれかに記載の固形製剤。(10)さらに、コーティング顆粒を含有する、(1)〜(9)のいずれかに記載の固形製剤。(11)さらに、ショ糖脂肪酸エステル、タルク及び軽質無水ケイ酸から選択される1種以上と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを滑沢剤として含有する、(1)〜(10)のいずれかに記載の固形製剤。(12)重量が0.2gより大きい、(1)〜(11)のいずれかに記載の固形製剤。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、水への溶解性が小さい活性成分を用いた場合でも、投与後のイオン強度やpH等の生体内環境、または製造時の圧縮成形時の圧縮力に影響を受けることなく、0次溶出等の正確な徐放性を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の徐放性固形製剤は、1種以上の活性成分を含有し、その中には、水への溶解度が0.0001〜100mg/cm3の難溶性の活性成分を含む。そのような活性成分の水への溶解度が0.0001mg/cm3以上で、固形製剤からの活性成分の溶出速度が確保されて、固形製剤が胃腸管に滞留している時間帯に活性成分のほぼ全量を溶出することが可能となり、バイオアビリティも確保されるので好ましい。活性成分の水への溶解度が100g/cm3以下であれば、溶出制御基剤が活性成分より先に水和して固形製剤表面にゲル層を形成するため、活性成分が固形製剤外部に溶出してしまう現象が生じにくく、活性成分を徐放性に溶出制御しやすいので好ましい。活性成分の水への溶解度は、好ましくは0.0001〜30mg/cm3であり、より好ましくは0.0001〜10mg/cm3である。
【0031】
水への溶解度が、0.0001〜100mg/cm3である活性成分としては、例えば医薬品分野においては第14改正日本薬局方に記載されている、水にやや溶けやすい医薬品(溶質1gを溶かすに要する溶媒量が10〜30cm3)、水にやや溶けにくい医薬品(溶質1gを溶かすに要する溶媒量が30〜100cm3)、水に溶けにくい医薬品(溶質1gを溶かすに要する溶媒量が100〜1000cm3)、水に極めて溶けにくい医薬品(溶質1gを溶かすに要する溶媒量が1000〜1000cm3)、水にほとんど溶けない医薬品(溶質1gを溶かすに要する溶媒量が10000cm3以上)等を挙げることができる。
【0032】
次に、固形製剤は、水への溶解度が、20℃において0.1〜5.0g/cm3かつ分子量が1000以下の親水性助剤を含む必要がある。前記加工澱粉と親水性助剤との重量配合比率は50:50〜99:1の範囲内にある必要がある。該親水性助剤が含まれると、固形製剤内部へ水を浸入させ、後述の特定の加工澱粉の水和を促進し、緻密なゲル層を形成させることができる。親水性助剤の水への溶解度は、好ましくは0.2〜5.0g/cm3、より好ましくは0.4〜5.0mg/cm3である。
【0033】
親水性助剤の水への溶解度が0.1g/cm3以上で、マトリクス中に均一に分散している水への溶解性が小さい活性成分の作用にも係わらず、固形製剤内部への水の浸入が可能となり、緻密なゲル層が形成されて、固形製剤自体の膨潤力による亀裂や分割が生じ難くなるため好ましい。また、親水性助剤の水への溶解度が5.0g/cm3以下で、吸水量が適度な範囲に留まって過剰吸水とならずにゲル密度が密の範囲に留まる。そのため、固形製剤の強度が確保され、胃腸管の機械的運動による負荷に耐えうるため、固形製剤の過度な浸食が生じにくく溶出速度が安定に保たれやすく好ましい。
【0034】
水への溶解度が0.1〜5.0g/cm3で分子量が1000以下の親水性助剤としては、ソルビトールやマンニトール等の糖アルコール類、白糖や無水マルトース、スクロース、フルクトース、デキストラン、ブトウ糖などの糖類、ポリオキシエチレン硬化ひまし油やポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル等の界面活性剤、塩化ナトリウムや塩化マグネシウム等の塩類、クエン酸や酒石酸等の有機酸、グリシンやアラニン等のアミノ酸類、メグルミン等のアミノ糖類から選択される1種以上を用いることができる。親水性助剤として特に好ましいものとして、ソルビトールやスクロース等が挙げられる。
【0035】
また、固形製剤は、上述の親水性助剤に加え、水への溶解度が20℃において0.1g/cm3以上5.0g/cm3以下、融点が50℃以上、平均分子量5000以上の合成または天然のポリマー類である親水性高分子助剤を含むこと好ましい。その場合、該親水性高分子助剤の配合量は0.1〜40重量%の範囲であることが好ましい。該親水性高分子が含まれると、固形製剤表面に分散している溶出制御基剤のゲル化を促進するため、固形製剤表面に分散している活性成分が溶解して溶出するよりも速く固形製剤表面にゲル層を形成させることができ、活性成分の溶出初期の多量溶出を抑制して0次溶出へと制御しやすいため好ましい。親水性高分子の水への溶解度の下限は、好ましくは0.2g/cm3、より好ましくは0.4g/cm3である。親水性高分子の水への溶解度の上限は、好ましくは4.5g/cm3、より好ましくは4.0g/cm3である。
【0036】
水への溶解度が0.1〜5.0g/cm3である親水性高分子としては、親水性で比較的高分子量の合成または天然のポリマー類とするのがよく、具体的には、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン等を挙げることができ、特に好ましいものとしてポリエチレングリコールが挙げられる。
【0037】
次に、固形製剤は、溶出制御基剤として、保水量が400%以上で、ゲル押込み荷重が200g以上で、水溶性成分量が40〜95重量%で、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上で、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%で、平均粒径が20μm以上50μm未満の特定の加工澱粉を含有する必要がある。この特定の加工澱粉は、活性成分の徐放性を担保するための溶出制御基剤として機能する。ここで、本発明でいう加工澱粉とは、天然の澱粉原料を用いて物理的処理のみで物性の改良を行った澱粉である。
【0038】
このような特定の加工澱粉の固形製剤における含有量は、5.0〜99.9重量%である必要がある。該加工澱粉の含有量が5重量%以上で活性成分の溶出を徐放性に制御しやすくなる。該加工澱粉の含有量は、活性成分の種類や量によって適宜最適な量を選択することができるが、加工澱粉の含有量を99.9重量%以上とすると活性成分の含有量が少なくなり十分な薬効を付与しにくくなるため上限はせいぜい99.9重量%とするのがよい。より好ましくは10〜99.9重量%であり、特に好ましくは20〜99.9重量%である。
【0039】
このような特定の加工澱粉は、保水量が400%以上である必要がある。より好ましくは500%以上、特に好ましくは700%以上である。ここで保水量とは、乾燥した加工澱粉1gを20℃±5℃の純水に分散し遠心分離(2000G、10分)した後に澱粉が保持する純水量で定義する。保水量が400%以上で加工澱粉が水和してゲルを形成するため固形製剤が崩壊しにくくなり、かつ活性成分の拡散速度が保たれて十分な徐放性を発現しやすくなる。保水量が高いほどゲル形成能が高くなり、高いイオン強度下でもゲルが破壊されないので好ましいが、最大値は澱粉原料の特性に依存しせいぜい3000%までである。
【0040】
また、特定の加工澱粉は、ゲル押込み荷重値が200g以上である必要がある。ゲル押込み荷重値とは、加工澱粉0.5gを50MPaで圧縮して得られる直径1.13cmの円柱状成形体を20℃±5℃の純水中に4時間浸漬しゲル化させた後、0.1mm/secの速度で3mm直径の円柱状アダプターを押込んだ時の最大荷重で定義する。ここで、最大荷重とはゲル層の破断がある場合は破断時の荷重値、破断がない場合はアダプターがゲル化した円柱状成形体に5mm進入するまでに示した最大の荷重値とする。ゲル押込み荷重値が200g以上で、加工澱粉が形成するゲル層内での活性成分の拡散が速くなりすぎず十分な徐放性を発現しやすくなる。ゲル押込み荷重値が高いほど徐放能が高くなり好ましいが、せいぜい3000g程度である。
【0041】
また、特定の加工澱粉は、水溶性成分量が40〜95重量%の範囲にある必要がある。水溶性成分量は、以下の計算によって得られる値として定義される。すなわち、加工澱粉1gに20℃±5℃の純水99gを加えてマグネチックスターラーで2時間攪拌して分散させ、得られた分散液の40cm3を50cm3の遠沈管に移し、5000Gで15分間遠心分離し、この上澄液30cm3を秤量瓶に入れ、110℃で一定重量になるまで乾燥して水溶性成分の乾燥重量(g)を求める。また、加工澱粉1gを110℃で一定重量になるまで乾燥して加工澱粉の絶乾重量(g)を求める。これらの値と下式(1)により求めた値で定義する。
水溶性成分量(重量%)=(乾燥重量(g)×100÷30)÷澱粉1gの絶乾重量(g)×100・・・(1)
【0042】
水溶性成分量は、加工澱粉が糊化し水溶性となった糊成分の量を表す値である。水溶性成分量が40重量%以上で、水和速度が確保されて遅くなりすぎることがなく、徐放性固形製剤が溶媒と接した後直ぐに多量の活性成分が溶出してしまうような現象が生じにくい。水溶性成分量が95重量%以下で、固形製剤の強度が確保され、十分な徐放性が得られやすくなる。また、胃腸管の機械的運動による負荷に耐えうるため過度に侵食されることなく溶出速度が一定範囲に確保される。
【0043】
また、特定の加工澱粉は、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上、且つ、平均粒径が20μm以上50μm未満である必要がある。好ましくは、目開き75μmの篩いを通過する粒子が95重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が30重量%以上であり、特に好ましくは、目開き75μmの篩いを通過する粒子が98重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が40重量%以上である。特定の加工澱粉は、粒子が小さい方が膨潤性が小さく、ゲル強度も強い。そのため、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上、且つ、平均粒径が50μm未満であれば、澱粉粒子、及び該澱粉粒子からなる固形製剤の膨潤性が比較的小さい範囲に留まる。そのため、固形製剤からの活性成分の溶出が圧縮成形圧により変動しにくくなる。
【0044】
特定の加工澱粉は、膨潤度が6cm3/g以上10cm3/g以下であることが好ましい。加工澱粉の膨潤度は、加工澱粉1.0gを20±5℃の純水に分散させて100cm3の沈降管に移し、全量を100cm3とし、16時間放置した後、上下に分かれた下層の容積V(cm3)と加工澱粉1.0gの乾燥重量(g)とを測定し、下式(2)より求めた値と定義する。
加工澱粉の膨潤度(cm3/g)=V(cm3)/加工澱粉の乾燥重量(g)・・・(2)
【0045】
加工澱粉の膨潤度が6cm3/g以上で、水和してゲルを形成するため活性成分の溶出を徐放性に制御しやすくなる。一方で、加工澱粉の膨潤度が10cm3/gより大きいと、該加工澱粉の膨潤に起因して固形製剤が大きく膨潤する。その結果、活性成分の溶出速度が遅延したり、或いは膨潤力に耐えられず固形製剤が崩壊してドーズダンピングを起こしてしまうので好ましくない。加工澱粉の膨潤度が6cm3/g以上10cm3/g以下の範囲で、活性成分が安定に徐放されやすくなるので好ましい。
【0046】
この特定の加工澱粉は、安息角が45°以下であることが好ましい。好ましくは安息角が43°以下である。また、特定の加工澱粉は見かけ比重が1.4cm3/g以上3.6cm3/g以下であることが好ましい。安息角が45°以下で、かつ見かけ比重が1.4〜3.6cm3/gの範囲にある加工澱粉は、活性成分との混合性・分散性に優れるため、均一なゲルマトリクスを形成することができ、安定な徐放性としやすいので好ましい。
ところで、保水量が400%以上、ゲル押込み荷重値が200g以上、水溶性成分量が40〜95重量%である加工澱粉の製造方法は特許文献15に開示されている。本発明者らは、特許文献15に記載の方法で得られる該加工澱粉について詳細に調べた。その結果、本発明者らは、粒度によって特異的に膨潤性およびゲル押込み荷重値が異なること、及び、該加工澱粉の粒度と膨潤性を適正範囲に制御することによって、初めて圧縮成形圧に依存しない徐放性固形製剤が得られることを見出した。その検討プロセスを次に説明する。
【0047】
本発明者等は、まず、特許文献15の方法に準拠した方法、具体的には後述の比較製造例1に記載したようにして従来の加工澱粉Cを製造した。得られた加工澱粉Cを0〜32、32〜75、75〜150、150〜500μmの粒度毎に分画して基礎物性を比較した。表1に得られた加工澱粉Cの粒度分布、加工澱粉の膨潤度、加温保存条件下のゲル押込み荷重値を、図3〜6に加工澱粉Cが膨潤した後の粒子の光学顕微鏡写真を示した。
【0048】
ここで、表1に示す加温保存条件下のゲル押込み荷重値は、加工澱粉0.5gを50MPaで圧縮して得られる直径1.13cmの円柱状成形体を37℃±0.5℃の純水中に4時間浸漬しゲル化させた後、0.1mm/secの速度で3mm直径で円柱状のアダプターを押込んだ時に最初にピークを与えた値として求めた値である。また、表1に示す加工澱粉の膨潤度は、上記したものと同じ方法によって求められた値である。
【0049】
表1の加工澱粉Cのデータ及び、図3〜6の膨潤粒子の写真より、0〜32μm分画の加工澱粉粒子は膨潤度が約14、膨潤粒子の大きさが100μm程度と膨潤性が小さく、ゲル押込み荷重値は約300と大きいことがわかる。一方で、32〜75、75〜150、150〜500μmの粒度分画の加工澱粉粒子は、一様にして、膨潤度が20〜30、膨潤粒子の大きさが200〜300μmと膨潤性が大きく、ゲル押込み荷重値は約200と小さいことがわかる。また、32〜75μm分画と75〜150μm、150〜500μm分画の膨潤粒子とが同じ大きさであること、および、該加工澱粉粒子の膨潤性は膨潤前の粒子の大きさと相関していることから、75〜500μmの範囲の加工澱粉粒子に含まれる外殻構造を有する膨潤性の澱粉粒子は32〜75μm分画の外殻構造を有する膨潤性の澱粉粒子とは構成成分が同じであり、該澱粉粒子が水溶性の糊成分(膨潤・溶解して輪郭が消失するため光学顕微鏡では観察されない)で造粒されて75〜500μmの大きな加工澱粉粒子となっていることが分かる。
【0050】
これらの事実から、特許文献15に記載の方法で得られる加工澱粉は、澱粉粒子の外殻構造を有し膨潤性が小さくゲル押込み荷重値の大きい0〜32μm分画の澱粉粒子群と、外殻構造を有し膨潤性が大きくゲル押込み荷重値の小さい32〜75μmの澱粉粒子群と、水溶性の糊成分の3成分により構成されること、及び、これらの3成分が造粒されて0〜約500μmに粒度分布を有する加工澱粉が形成されていることが明らかとなった。なお、何れの粒子も水溶性成分により表面が覆われているため、加工澱粉の外見のみではこれらの事実は判別できない。
【0051】
更に、膨潤性が小さくゲル押込み荷重値の大きい0〜32μm分画と、膨潤性が大きくゲル押込み荷重値が小さい32〜500μm分画に分けて、それぞれの分画を用いて徐放性固形製剤を製造した。すると、0〜32μm分画から得られた固形製剤は、圧縮力に依存しない正確で安定な溶出性を示した。一方、32〜500μm分画から得られた固形製剤は、圧縮力が小さいほど圧縮方向への大きな膨潤が起こり、これに伴い活性成分の溶出速度が速くなり、ゲル化した固形製剤の強度も弱くなることが明らかとなった。すなわち、粒径が32μmを境にして、得られる固形製剤の特性が大きく変化することが判明した。圧縮成形圧に依存しない徐放性固形製剤とするには、該0〜32μm分画粒子のように、膨潤性が小さく、かつゲル強度が強い粒子を用いることが好ましいことが確認された。加工澱粉粒子の膨潤性が小さいことで、固形製剤内部からの崩壊力を抑制できるものと考えられる。
【0052】
本発明者らは、上述した事実に顧みて、32〜500μmの粒子中に存在する32〜75μmの外殻構造を有する澱粉粒子を破砕することで、該加工澱粉の膨潤性を小さく抑えることができ、その結果、圧縮力に依存しない徐放性固形製剤が得られるのではないかと考えた。様々な粉砕条件について検討を重ねた結果、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上、かつ平均粒径が20μm以上50μm満となるように粒度分布を管理することによって、膨潤性が一様に小さくゲル押込み荷重値の大きな加工澱粉が得られることを見出した。このように、加工澱粉の粒度を制御することによって、圧縮成形圧による変動のない徐放性固形製剤が得られるに至った。
【0053】
ここで、実施例1により得られた、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上、かつ平均粒径が20μm以上50μm満となる加工澱粉Aを、0〜32、32〜75μmの粒度毎に分画した場合の各分画粒子の基礎物性を比較した。表1に加工澱粉A全体及び各分画粒子の粒度分布、膨潤度、加温保存条件下のゲル押込み荷重値を示した。また、図1、2に各分画粒子が膨潤した後の膨潤粒子の光学顕微鏡写真を示した。加工澱粉の外殻構造を有する一次粒子が破壊されていることは、膨潤粒子の光学顕微鏡画像から確認できる。また、0〜32μm、32〜75μmのいずれの分画粒子も、膨潤性が小さく、かつ、ゲル押込み加重値が大きくなっていることが確認された。
【0054】
次に、上述の特定の加工澱粉の製法について説明する。特定の加工澱粉は、例えば澱粉質原料を水存在下60℃以上100℃未満で加熱し、澱粉質原料の澱粉粒子を膨潤させる工程、次いで該膨潤させた澱粉粒子を乾燥させ、澱粉粒子と該澱粉粒子の外部に存在するアミロースとアミロペクチンとを含有する混合物の粉末を得る工程、及び得られた乾燥粉末を粉砕して粒度を調整する工程等により製造される。或いは、減圧下、100〜130℃で加熱処理された澱粉質原料を、さらに水存在下60〜150℃で加熱し、澱粉質原料の澱粉粒子を膨潤させる工程、次いで膨潤させた粒子を乾燥させ、澱粉粒子と該澱粉粒子の外部に存在するアミロースとアミロペクチンとを含有する混合物の粉末を得る工程、及び得られた乾燥粉末を粉砕して粒度を調整する工程等により製造される。なお、澱粉粒子の外部に存在するアミロース、アミロペクチンとは、加熱処理による膨潤により外殻構造が崩壊した澱粉に由来する、澱粉粒子の外部に溶出されたアミロースとアミロペクチンである。また、澱粉質原料についての水存在下とは、澱粉質原料と水とが存在した状態であって、水分が40重量%以上である状態をいう。
【0055】
製造に用いることができる澱粉質原料は、コメ、モチゴメ、トウモロコシ、モチトウモロコシ、アミロトウモロコシ、モロコシ、コムギ、オオムギ、サトイモ、リョクトウ、バレイショ、ユリ、カタクリ、チューリップ、カンナ、エンドウ、シワエンドウ、クリ、クズ、ヤマノイモ、カンショ、ソラマメ、インゲンマメ、サゴ、タピオカ(キャッサバ)、ワラビ、ハス、ヒシ等の天然澱粉、老化澱粉、架橋澱粉等が例示され、澱粉質物質を含有するものであれば特に制限されないが、粒子の膨潤性が高く保水量を高く制御しやすいという観点からバレイショが好ましい。澱粉質原料は、上記のうち1種を使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用することも自由である。また澱粉質原料の粒子の大きさは膨潤しやすさの観点から大きいほどよい。
【0056】
澱粉質原料は、糊化開始温度が高くなり、粒子の膨潤性が高まるという観点から、例えば特開平4−130102号公報や特開平7−25902号公報に記載されているように、澱粉質原料に減圧下100℃〜130℃で加熱処理する等の、湿熱処理を施したものであればさらに良い。
【0057】
例えば、特開平4−130102号公報には、(1)減圧ラインと加圧蒸気ラインとの両方を付設し、内圧、外圧共に耐圧性の密閉できる容器に澱粉を入れ、減圧とした後、蒸気導入による加圧加熱を行い、あるいはこの操作を繰り返すことにより、澱粉を所定時間加熱した後冷却する湿熱処理方法、(2)(1)の方法に加えて、缶内温度を少なくとも120℃以上とすることで、水懸濁液を加熱した時、澱粉粒子の膨潤が認められるが実質的に粘度を示さず、α−アミラーゼ吸着能が著しく高い澱粉を製造する湿熱処理方法、(3)(1)または(2)の方法に加えて、加熱後減圧にして冷却する湿熱処理方法、が開示されているが、これらの湿熱処理方法のいずれでも良い。
【0058】
また、特開平7−25902号公報には、(4)澱粉質系穀粒を湿熱処理して得られる湿熱処理澱粉質系穀粒の製造方法において、耐圧容器内に充填した澱粉質系穀粒を減圧する第1工程と、減圧後、蒸気を導入して加熱、加圧する第2工程を、少なくとも1回繰り返す湿熱処理澱粉質系穀粒の製造方法、(5)(4)の製造方法の第2工程において、加熱を80℃以上で、かつ5分〜5時間行う製造方法、が開示されている。これらの方法のいずれでも良い。
【0059】
これらの方法により、澱粉質原料を減圧下で湿熱処理された澱粉は、高温加熱により、粒子の内部が中空状で、粒子の外殻部の結晶性が増したものである。このような澱粉は、光学顕微鏡の偏光像に見られる偏光十字模様が、生澱粉よりも弱く、非複屈折性粒子が減少しているという特徴を有する。また中空部はアミロースやアミロペクチンの結晶状態がほぐれた構造になっていると思われ、α―アミラーゼによる消化性が生澱粉よりも増しているという特徴を有する。そのため、特定の澱粉質原料として用いるのに適している。
【0060】
また、澱粉質原料を湿熱処理するに際し、澱粉乳液を50〜95℃へ加温していく過程における澱粉乳液の粘度が、5%濃度に調整した場合に400ブラベンダーユニット(BU)以下の値であり、かつ95℃で30分間保持した時の最大粘度が1000BU以下であることは好ましい。加熱処理により澱粉粒子を膨潤させる程度を調整しやすくするためである。
【0061】
澱粉質原料の加熱の方法は、公知の方法であれば特に制限しないが、例えば水存在下の澱粉質原料を、ジャケット付リアクターに入れてジャケットに蒸気を導入して加熱する方法、水存在下の澱粉質原料に蒸気を混合する方法、ドラム乾燥機の液溜め部で加熱する方法、噴霧乾燥時に蒸気を澱粉スラリーに供給しながら糊化と噴霧とを同時に行う方法等が挙げられる。澱粉粒子の加熱時間の観点から水存在下の澱粉質原料に蒸気を混合する方法が好ましい。加熱温度は、上記の種々の方法で澱粉を糊化した後の液温度が、90〜150℃であればよく、好ましくは90〜130℃、さらに好ましくは95〜130℃である。
【0062】
乾燥方法は特に制限はないが、例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、ドラム乾燥、棚段乾燥、気流乾燥、真空乾燥及び溶剤置換による乾燥などが挙げられる。工業的には噴霧乾燥、ドラム乾燥が好ましい。また、乾燥時の液固形分は0.5重量%〜60重量%程度とするのが好ましい。0.5重量%以上で生産性が良くなり、60重量%以下で粘度が高くなりすぎず、収率が確保されて好ましい。さらには、1〜30重量%がより好ましく、1〜20重量%がさらに好ましい。
【0063】
粉砕方法は特に制限はないが、例えば、コーンクラッシャー、ダブルロールクラッシャー、ハンマーミル、ボールミル、ロッドミル、ピン型ミル、ジェット型ミルなどが挙げられるが、粉砕不足や過粉砕を避ける目的で、上記粉砕機と分級機を兼ねそろえた閉回路粉砕方式を取るのが好ましい。
【0064】
目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上、且つ平均粒径が20μm以上50μm未満となるように粒度調整された、保水量が400%以上、ゲル押込み荷重が200g以上、水溶性成分量が40〜95重量%の加工澱粉は、粒度未調整のものに比べて膨潤度が小さく、ゲル押込み荷重値が高いのが特徴である。また、加工澱粉は、見かけ比重が1.4〜3.6cm3/gの範囲にあることが好ましいが、該加工澱粉の見かけ比重は、乾燥工程における液濃度の大小にも影響され、また、スプレードライ乾燥工程においてアトマイザーの回転数にも影響される。そのため、見かけ比重を上記の好ましい範囲とするには、これらを適宜調整すればよい。
【0065】
本発明の固形製剤に用いる溶出制御基剤は、上記の特定の加工澱粉の効果を損ねない限りにおいて、必要に応じて他の溶出制御基剤を併用してもよい。他の溶出制御基剤としては、親水性の溶出制御基剤(例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、キサンタンガムやイナゴマメガム等の非セルロース多糖類、ポリエチレンオキサイドやアクリル酸ポリマー等の合成高分子等)、親油性の溶出制御基剤(例えば水素化したヒマシ油やステアリン、パルミチンなどのグリセリド類、セチルアルコールなどの高級アルコール類、ステアリン酸等の脂肪酸類、プロピレングリコールモノステアレートなどの脂肪酸エステル類等)、不活性の溶出制御基剤(例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、酢酸ビニル/塩化ビニルのコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、シリコーン、エチルセルロース、ポリスチレン等)等を挙げることができる。
【0066】
このような特定の加工澱粉を溶出制御基剤に用いた固形製剤は、体内のイオン強度や圧縮成形圧に影響されにくく、また、固形製剤の膨潤性が一定範囲内に小さく抑えられる。そのため、このような加工澱粉を用いた場合、活性成分を0次溶出等に正確に制御しやすく好ましい。
【0067】
ここで徐放性とは、活性成分が、時間に関係ない一定の溶出速度で、徐々に固形製剤から溶出され、かつ活性成分の90%以上を溶出するのに要する時間が少なくとも3時間以上である特性をいうものとする。活性成分の90%以上を溶出するのに要する時間は、活性成分の種類と目的により、例えば、投与から8時間、12時間、24時間と適時選択することができるが、固形製剤の胃腸管滞留時間に限度があるため上限はせいぜい72時間である。例えば8時間で活性成分を90%以上溶出させる場合には、第14改正日本薬局方に記載の溶出試験法第1法(回転バスケット法)に準じて測定される活性成分の1時間後の溶出率が10〜30%、4時間後の溶出率が40〜60%、6時間後の溶出率が70%以上のように制御することが好ましい。また、例えば24時間で活性成分の90%以上を溶出させる場合には、1時間後の溶出率が10〜30%、10時間後の溶出率が40〜60%、18時間後の溶出率が70%以上のように制御することが好ましい。活性成分を溶出させる時間により、適時時間の間隔を変更して制御することが可能である。
【0068】
本発明の固形製剤は、上記成分に加え、さらにコーティング顆粒を含有していることが好ましい。ここにいうコーティング顆粒とは、一種以上の活性成分を含有する顆粒にフィルムコーティングを施したものをいう。コーティング顆粒を含むことにより、必要に応じてより複雑で的確な活性成分の放出パターンを得ることができる。
【0069】
コーティング顆粒のコーティング剤としては、徐放性コーティング剤、腸溶性コーティング剤等がある。具体的には、セルロース系コーティング剤(例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート等)、アクリルポリマー系コーティング剤(例えばオイドラギットRS、オイドラギットL、オイドラギットNE等)、あるいはシェラック、シリコン樹脂等から選択される1種以上を用いることができる。
【0070】
コーティング剤には、溶出速度調節のための水溶性物質、可塑剤等を必要に応じて加えても良い。水溶性物質としてはヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性高分子類やマンニトール等の糖アルコール類、白糖や無水マルトース等の糖類、ショ糖脂肪酸エステルやポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤類等から選択される1種以上を用いることができる。可塑剤としてはアセチル化モノグリセリド、クエン酸トリエチル、トリアセチン、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジメチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、アジピン酸ジブチル、オレイン酸、オレイノール等から選択される1種以上を用いることができる。
【0071】
これらのごときコーティング剤は、有機溶媒に溶解させたあと顆粒にコーティングしても良いし、水に懸濁させたあと顆粒にコーティングしても良い。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アセトン、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ベンゼン等から選択される1種以上を用いることもできるし、更に水を含有させて用いることもできる。
【0072】
また、上記の活性成分を含有する顆粒とは、活性成分の粉粒体や、活性成分に結合剤等を加えて得られる造粒物でも良く、或いは薬効成分を含まない素顆粒に薬効成分を積層して得られる顆粒でも良い。結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等から選択される1種以上を用いることができる。活性成分を含有する顆粒として好ましくは、コーティング顆粒の強度が強くなり、圧縮成形によるコーティング皮膜の損傷を抑制できる点で、機械的強度の強い素顆粒に薬効成分を積層して得られる顆粒を用いるのが良い。商業的に入手可能である機械的強度の強い素顆粒としては、結晶セルロースを構成成分とする核粒子「セルフィア(登録商標)」SCP−100、CP−203、CP−305、CP−507(旭化成ケミカルズ株式会社製)等が利用できる。
【0073】
本発明の固形製剤は、1製剤あたりの重量が0.20g以上であることが好ましい。これにより、溶出後期の溶出速度を減少させることなく溶出時間を簡単に延長することが可能となる。これは、固形製剤の圧縮方向の膨潤度、及び、膨潤度比が一定範囲にある場合には、固形製剤の形状を大きくしても活性成分の溶出性には影響を及ぼさないことによる。ちなみに、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース等の溶出制御基剤を用いて、圧縮方向の膨潤度又は膨潤度比が上記の好ましい範囲にない例では、固形製剤の重量が大きくなると溶出後期の溶出速度が減少してしまうので好ましくない。固形製剤の圧縮方向の膨潤度、及び、膨潤度比が一定範囲にある場合には、活性成分の溶出性を維持したまま、単純に固形製剤の重量を大きくすることで活性成分の溶出時間を延長ことが可能となる。
【0074】
次に、活性成分とは、固形製剤が投与された体内等の周辺環境に対して、化学的または生物学的に望ましい影響を与える成分を言い、例えば、医薬品薬効成分、農薬成分、肥料成分、飼料成分、食品成分、化粧品成分、色素、香料、金属、セラミックス、触媒、界面活性剤等をいう。活性成分は、粉体状、結晶状、油状、液状、半固形状等のいずれの性状でも良いし、粉末、細粒、顆粒等のいずれの形態でも良い。活性成分は、それ単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。活性成分としては、徐放性に対する要求性能が厳しい医薬品薬効成分とするのが最も好ましい。
【0075】
医薬品薬効成分としては、解熱鎮痛消炎薬、催眠鎮静薬、眠気防止薬、鎮暈薬、小児鎮痛薬、健胃薬、制酸薬、消化薬、強心薬、不整脈用薬、降圧薬、血管拡張薬、利尿薬、抗潰瘍薬、整腸薬、骨粗症治療薬、鎮咳去痰薬、抗喘息薬、抗菌剤、頻尿改善剤、滋養強壮剤、ビタミン剤など、経口で投与されるものが対象となる。薬効成分は、それを単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0076】
本発明の固形製剤は、(a)4〜8時間以下のオーダーの短い半減期を持ち、通例の調製物中で投与される時に1日に数回に分けた用量で摂取しなければならないか、または(b)狭い治療指数を持つか、または(c)全胃腸管にわたり十分に吸収される必要があるか、または(d)治療に効果的な用量が比較的少量である等の、何れか1つ又は2つ以上の特徴を有する1種以上の医薬品薬効成分を製剤化するために特に有用である。
【0077】
本発明における固形製剤には、活性成分の他に、必要に応じて崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤等の他の成分を含有しても構わない。また他の成分は希釈剤として使用しても良い。
【0078】
結合剤としては、白糖、ブドウ糖、乳糖、果糖、トレハロース等の糖類、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビトール等の糖アルコール類、ゼラチン、プルラン、カラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、グルコナンナン、キサンタンガム、タマリンドガム、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム等の水溶性多糖類、結晶セルロース(例えば、旭化成ケミカルズ株式会社製、「セオラス(登録商標、以下同じ)」PH−101、PH−101D、PH−101L、PH−102、PH−301、PH−301Z、PH−302、PH−F20、PH−M06、M15、M25、KG−801、KG−802等)、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類、アルファー化デンプン、デンプン糊等のデンプン類、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等の合成高分子類、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、合成ヒドロタルサイト、ケイ酸アルミン酸マグネシウム等の無機化合物類等が挙げられことができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用することも自由である。
【0079】
結合剤として使用できる結晶セルロースとしては、圧縮成形性に優れるものが好ましい。圧縮成形性に優れる結晶セルロースを使用することにより、低打圧で打錠できるため打圧で失活する活性成分の活性維持が可能であり、顆粒含有錠にすることができ、少量添加で硬度を付与できる。そのため、嵩高い活性成分の錠剤化や多種類の活性成分を含む薬剤の錠剤化が可能である。従って、場合によっては小型化でき、液状成分の担持性に優れ、打錠障害を抑制できる等の利点がある。商業的に入手可能である圧縮成形性に優れる結晶セルロースとしては、「セオラス」KG−801、KG−802(旭化成ケミカルズ株式会社製)等が利用できる。
【0080】
崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、カルボキシメチルスターチナトリウム、ヒドロキシプロピルスターチ、コメデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン等のデンプン類、結晶セルロース、粉末セルロース等のセルロース類、クロスポビドン、クロスポビドンコポリマー等の合成高分子等が挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0081】
流動化剤としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸等のケイ素化合物類を挙げることができる。それを単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0082】
滑沢剤としては、溶出性への影響が少なく、打錠粉末の臼杵への付着を防止できる点で、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上を用いるのが好ましい。また、溶出性への影響が少なく、打錠粉末の流動性確保、および圧縮成形物の破断荷重を増強できる点で、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸から選ばれる1種以上を用いるのが好ましい。なかでも、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、軽質無水ケイ酸から選択される1種以上と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとの組み合わせを用いると、打錠粉末の臼杵への付着防止、打錠粉末の流動性確保、圧縮成形物の破断荷重の増強を同時に満たすことができるので好ましい。
【0083】
矯味剤としては、グルタミン酸、フマル酸、コハク酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、1−メントール等を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0084】
香料としては、オレンジ、バニラ、ストロベリー、ヨーグルト、メントール、ウイキョウ油、ケイヒ油、トウヒ油、ハッカ油等の油類、緑茶末等を挙げることができ、上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0085】
着色剤としては、食用赤色3号、食用黄色5号、食用青色1号等の食用色素、銅クロロフィンナトリウム、酸化チタン、リボフラビンなどを挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0086】
甘味剤としては、アスパルテーム、サッカリン、ギリチルリチン酸二カリウム、ステビア、マルトース、マルチトール、水飴、アマチャ末等を挙げることができる。上記から選ばれる1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0087】
本発明の固形製剤は、医薬品分野で通常行われる固形製剤の圧縮成形による製造法の何れを用いても製造することができる。例えば、活性成分と溶出制御基剤と、必要により結合剤、崩壊剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤等の成分を均一に混合した後に打錠する直接粉末圧縮法を用いることができる。他の例では、活性成分と必要により溶出制御製剤や結合剤、崩壊剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤等の成分とを湿式造粒、或いは乾式造粒し、得られた顆粒に必要により溶出制御基剤や結合剤、崩壊剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色料、甘味剤等の成分を加えて打錠する湿式造粒打錠法や乾式造粒打錠法により製造することができる。
【0088】
固形製剤の製造法の他の例として、活性成分と、常温で固体であるが40℃以上で液体となる、例えばカルナウバロウ、硬化ヒマシ油、ポリグリセリンなどの脂溶性の物質や、ポリエチレングリコール6000等の親水性高分子とを40℃以上の温度条件で均一となるように混合し、次いで、冷却して固体とし、必要により粉砕処理等を施して粒度を調整した後に圧縮成形する方法も用いることができる。更には、活性成分と溶出制御基剤とがともに溶解する溶媒を用いて溶液とし、或いは適当な溶媒を用いて均一な分散液とし、該溶液或いは分散液を常法により乾燥させ、得られた活性成分と溶出制御基剤との均一な分散体を圧縮成形する方法によっても製造することができる。溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アセトン、ジオキサン、トルエン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、ベンゼン等の有機溶媒類と水から選択される1種以上を用いることができる。
【0089】
固形製剤とするための圧縮成形機としては、例えば、静圧プレス機、シングルパンチ打錠機、ロータリー打錠機、多層錠剤成形機、有核打錠等の圧縮機を使用でき、特に制限されない。
【0090】
また、本発明の効果を損なわない限り、固形製剤それ自体に、活性成分の溶出性の制御や味のマスキングや防湿等の目的でコーティングが施されていても良い。コーティング剤としては、例えばセルロース系コーティング剤(エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート等)、アクリルポリマー系コーティング剤(オイドラギットRS、オイドラギットL、オイドラギットNE等)、シェラック、シリコン樹脂等から選択される1種以上を用いることができる。これらのコーティング剤の使用方法は公知の方法を用いることができる。コーティング剤は有機溶媒に溶解しても、水に懸濁させて用いてもよい。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。なお、実施例、比較例における各試験法、及び物性の測定方法は以下の通りである。
(1)溶出試験
【0092】
第14改正日本薬局方に記載の溶出試験法の第一法(回転バスケット法)に準拠する方法で、試験液に日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)、或いは、Mcilvaine液(pH7.2、イオン強度0.40、組成:リン酸水素二ナトリウム173.9mM、クエン酸13.0mM、以下、「第2液」と略すことがある)を用い、試験液900cm3、バスケット回転数100rpm、試験液温度37±0.5℃の条件で行う。なお、各試験液にはα−アミラーゼ製剤(組成:α−アミラーゼ/炭酸カルシウム/コーンスターチ=5/5/90、AD「アマノ」1、アマノエンザイム株式会社)を90mg加え、α−アミラーゼ含有量を5μg/cm3とする。
(2)粒度分布 32μmより小さい粒子数
【0093】
JIS篩の目開き32μmを利用し、測定試料5gを5分間エアージェットシーブで篩分した時、篩を通過した測定試料の重量百分率より求める。
(3)粒度分布 75μmより小さい粒子数
【0094】
JIS篩の目開き75μmを利用し、測定試料10gを5分間エアージェットシーブで篩分した時、篩を通過する測定試料の重量百分率より求める。
(4)粒度分布 平均粒径(μm)
【0095】
JIS篩目開き500μm、300μm、250μm、212μm、150μm篩を用い、測定試料20gを15分間ロータップ式篩振盪機(平工作所製シーブシェーカーA型)で篩分する。次に、150μm篩を篩過した測定試料5gを、JIS篩目開き75μmを用い、5分間エアージェットシーブで篩分する。更に、150μm篩を篩過した測定試料5gを、JIS篩目開き32μmを用い、5分間エアージェットシーブで篩分する。各篩の篩上重量百分率[%]を求め、累積重量百分率が50%の時の粒子径として求める。
(5)安息角(°)
【0096】
杉原式安息角測定器(薬剤学27、p.260、1965年)を使用して求める。
(6)見かけ比重(g/cm3)
【0097】
スコットボリュームメーター(筒井理化学機器株式会社)を用いて測定する。粉体試料を定量フィーダーを用いて2−3分かけて測定容器内に粉体があふれるまで流下させる。次いで容器の上部に堆積した過剰量の粉体をすり落とし、また、容器の側面に付着した試料を除去する。その後、容器に疎充填された粉体重量を量る。測定容器の容積を容器に疎充填された粉体重量で除した値を見かけ比重とする。
(4)保水量
【0098】
乾燥した加工澱粉W0(g)(約1g)を、約15cm3の20℃±5℃の純水が入った50cm3遠沈管へ少しずつ入れ、かき混ぜながら透明〜半透明になるまで純水に分散させる。50cm3沈降管の7割程度になるよう20℃±5℃の純水を追加して遠心分離(2000G、10分)する。遠心分離終了後すぐに分離した上層を切り捨てた後、下層に残る重量W(g)(澱粉+澱粉が保持する純水量)から下式(3)により保水量を求める。
保水量(%)=100×(W−W0)/W0・・・・・(3)
(5)崩壊時間(hr)
【0099】
処方粉末0.2gを静圧プレス(MODEL−1321DW CREEP/アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて50MPaの圧縮力で成形して得られる直径0.8cmの円柱状成形体の試験液中での崩壊時間で定義される。試験液は第14改正日本薬局方に記載の第2液(pH6.8)であり、崩壊試験は第14改正日本薬局方の崩壊試験法に準じ、補助盤を使用して行う。
(6)ゲル押込み荷重(g)
【0100】
処方粉末0.5gを静圧プレス(MODEL−1321DW CREEP/アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて50MPaの圧縮力で成形して得られる直径1.13cmの円柱状成形体を20℃±5℃の純水中に4時間浸漬しゲル化させた後、レオメーター(RHEONER、RE−33005、YAMADEN製)を使用し、0.1mm/secの速度で3mm円柱状のアダプターを押込んだ時の最大荷重と定義する。最大荷重とはゲル層の破断があれば破断時の、破断がなければアダプターがゲル化した円柱状成形体に5mm侵入するまでに示した最大の荷重値とする。5個の平均値で算出する。
(7)加工澱粉の水溶性成分量(%)
【0101】
加工澱粉1gに20℃±5℃の純水99gを加えてマグネチックスターラーで2時間攪拌して分散させ、得られた分散液の40cm3を50cm3の遠沈管に移し、5000Gで15分間遠心分離し、この上澄液30cm3を秤量瓶に入れ、110℃で一定重量になるまで乾燥して乾燥重量(g)を測定する。また、澱粉1gを110℃で一定重量になるまで乾燥して絶乾重量(g)を測定する。これらの測定値及び下式(4)により求めた値を水溶性成分量と定義する。
水溶性成分(%)=(乾燥重量×100÷30)÷絶乾重量×100・・・・(4)
(8)加工澱粉の膨潤度(cm3/g)
【0102】
加工澱粉1.0gを20±5℃の純水に分散させて100cm3の沈降管に移し、全量を100cm3とし、16時間放置した後、上下に分かれた下層の容積V(cm3)と加工澱粉1.0gの乾燥重量(g)を測定し、下式(5)より算出する。
加工澱粉の膨潤度(cm3/g)=V/加工澱粉の乾燥重量・・・・・(5)
(9)加温保存条件下のゲル押込み荷重(g)
【0103】
加工澱粉0.5gを静圧プレス(MODEL−1321DW CREEP/アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて50MPaの圧縮力で成形して得られる直径1.13cmの円柱状成形体を37℃±0.5℃の純水中に4時間浸漬しゲル化させた後、レオメーター(RHEONER、RE−33005、YAMADEN製)を使用し、0.1mm/secの速度で3mm直径で円柱状のアダプターを押込んだ時に最初にピークを与える値と定義して求める。5個の平均値で算出する。
[比較製造例1]
【0104】
バレイショ澱粉をステンレスバット(50cm×25cm)中に層厚5cmで充填して耐圧容器内で5分減圧(600mmHg)後、加圧蒸気(120℃)にて20分処理したものを原料とし、固形分濃度7.5%の澱粉乳液を調製した。この澱粉乳液を20L/hrでジェットクッカーで加熱、糊化(出口温度100℃)させ、3L容器の滞留管(100℃)を連続的に通過した後噴霧乾燥して加工澱粉Cを得た。加工澱粉Cの基礎物性を表2に示した(特許文献2の実施例6に相当)。
【0105】
また、加工澱粉Cを150〜500μm、75〜150μm、32〜75μm、0−32μmの粒度毎に分画し、それぞれ加工澱粉の膨潤度、加温保存条件下のゲル押込み荷重値を測定した結果を表1に示した。また加工澱粉の膨潤度測定条件において、16時間経過した後の加工澱粉の膨潤状態を、上下に分かれた層を均一に再分散した後に光学顕微鏡で観察し、図3〜6に示した。
[実施例1]
【0106】
バレイショ澱粉をステンレスバット(50cm×25cm)中に層厚5cmで充填して耐圧容器内で5分減圧(600mmHg)後、加圧蒸気(120℃)にて20分湿熱処理したものを原料とし、固形分濃度7.5%の澱粉乳液を調製した。この澱粉乳液を20L/hrでジェットクッカーで加熱、糊化(出口温度100℃)し、噴霧乾燥した後、分級機を内蔵したピン型ミルを用いて粉砕・分級処理を行い加工澱粉Aを得た。加工澱粉Aの基礎物性を表2に示した。また、加工澱粉Aを150〜500μm、75〜150μm、32〜75μm、0−32μmの粒度毎に分画し、それぞれ加工澱粉の膨潤度、加温保存条件下のゲル押込み荷重値を測定した結果を表1に示した。また加工澱粉の膨潤度測定条件において、16時間経過した後の加工澱粉の膨潤状態を、上下に分かれた層を均一に再分散した後に光学顕微鏡で観察し、図1〜2に示した。
【0107】
溶出制御基剤である加工澱粉Aと、結合剤である結晶セルロース(「セオラス」KG−802、旭化成ケミカルズ株式会社製)と、親水性助剤であるソルビトール(和光純薬工業株式会社製)と、親水性高分子助剤であるポリエチレングリコール(マクロゴール6000、三洋化成工業株式会社製)と、難溶性活性成分としてのエテンザミド(エトキシベンツアミドP、エーピーアイコーポレーション社製)とを60/10/10/10/10の重量比になるように均一に混合し、静圧プレス(MODEL−1321DW CREEP/アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて120MPa、及び300MPaの圧力で圧縮し、直径0.8cm、重量0.18gの固形製剤を得た。
【0108】
120MPaの圧縮成形圧で得られた固形製剤と、日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)にα−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加した試験液とを用いて、エテンザミドの溶出パターンを測定した。また、試験液を日本薬局方記載の第2液からMcilvaine液(pH7.2、イオン強度0.40)に変更した以外は同様にしてエテンザミドの溶出パターンを測定した。さらに、300MPaの圧縮成形圧で得られた錠剤を、日本薬局方記載の第2液を用い、α−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加して、エテンザミドの溶出パターンを測定した。
【0109】
溶出試験の結果を比較例1の溶出試験の結果と合わせて図7に示した。溶出制御基剤に加工澱粉A、水溶性助剤にソルビトール、水溶性高分子にポリエチレングリコールを用いたエテンザミドの徐放性固形製剤は、イオン強度や圧縮成形圧による溶出速度の変動もなく、安定した0次溶出を示した。
[比較例1]
【0110】
実施例1で得られた加工澱粉Aと結晶セルロース(「セオラス」KG−802、旭化成ケミカルズ株式会社製)とポリエチレングリコール(マクロゴール6000、三洋化成工業株式会社製)とエテンザミド(エトキシベンツアミドP、エーピーアイコーポレーション社製)とを60/20/10/10の重量比になるように均一に混合し、静圧プレス(MODEL−1321DW CREEP/アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて120MPaの圧力で圧縮し、直径0.8cm、重量0.18gの錠剤を得た(実施例1と比較してソルビトールを含まない処方)。
【0111】
得られた錠剤を、日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)を用い、α−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加して溶出試験を行った。結果を実施例1の結果と合わせて図7に示した。
【0112】
加工澱粉Aを溶出制御基剤とするが、水溶性助剤を含まない比較例1のエテンザミドの徐放性錠剤は、溶出試験開始後5時間辺りで錠剤の分裂が生じてしまい、エテンザミドの溶出量が一時的に増加してしまった。
[比較例2]
【0113】
バレイショ澱粉をステンレスバット(50cm×25cm)中に層厚5cmで充填して耐圧容器内で5分減圧(600mmHg)後、加圧蒸気(120℃)にて20分処理したものを原料とし、固形分濃度7.5%の澱粉乳液を調製した。この澱粉乳液を20L/hrでジェットクッカーで加熱、糊化(出口温度115℃)させた後噴霧乾燥して加工澱粉Bを得た(特許文献2の実施例5に相当)。加工澱粉Bの基礎物性を表2に示した。
【0114】
加工澱粉Aの代わりに加工澱粉Bを用いる以外は実施例1と同様の方法で、120MPa、及び300MPaで圧縮成形した直径0.8cm、重量0.12gの錠剤を得た。得られた錠剤を、日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)を用い、α−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加して溶出試験を行い、結果を図8に示した。
【0115】
加工澱粉Bを溶出制御基剤に用いた錠剤は、300MPaと高い圧縮力では安定した0次溶出を示したが、120MPaの圧縮力では溶出試験開始後6時間辺りで錠剤の分裂が生じてしまい、エテンザミドの溶出量が一時的に増加してしまった。
[実施例2]
【0116】
実施例1のソルビトールの代わりにマンニトール(和光純薬工業株式会社製)を用い、加工澱粉Aと結晶セルロースとマンニトールとポリエチレングリコールとエテンザミドとの組成比を45/5/35/5/10とする以外は実施例1と同様の方法で行い、120MPの圧力で圧縮し、直径0.8cm、重量0.18gの錠剤を得た。
【0117】
得られた錠剤を、日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)を用い、α−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加して溶出試験を行い、結果を実施例1及び3の同じ条件での溶出試験の結果と合わせて図9に示した。溶出制御基剤に加工澱粉A、水溶性助剤にマンニトール、水溶性高分子にポリエチレングリコールを用いたエテンザミドの徐放性錠剤は、安定した0次溶出を示した。
[実施例3]
【0118】
実施例1のポリエチレングリコールの代わりにポリビニルピロリドンK30を用い、加工澱粉Aと結晶セルロースとソルビトールとポリビニルピロリドンK30とエテンザミドとの組成比を60/15/5/10/10とする以外は実施例1と同様の方法で行い、120MPの圧力で圧縮し、直径0.8cm、重量0.18gの錠剤を得た。
【0119】
得られた錠剤を、日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)を用い、α−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加して溶出試験を行い、結果を実施例1及び2の同じ条件での溶出試験の結果と合わせて図9に示した。溶出制御基剤に加工澱粉A、水溶性助剤にソルビトール、水溶性高分子にポリビニルピロリドンを用いたエテンザミドの徐放性錠剤は、安定した0次溶出を示した。
[比較例3]
【0120】
実施例1の加工澱粉Aの代わりにヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトローズ90SH−100SR、信越化学工業株式会社製)を用いる以外は実施例1と同様の方法で錠剤を作製と溶出試験を行い、溶出試験の結果を図10に示した。
【0121】
溶出制御基剤にヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いるエテンザミドの徐放性錠剤は、イオン強度0.14の2液では安定な溶出性を示したが、イオン強度が0.40と高いMcilvaine液では、溶出試験開始後直ぐに錠剤が崩壊しエテンザミドの全量が溶出してしまった。
[比較例4]
【0122】
実施例1の加工澱粉Aの代わりにオイドラギットRSPO(デグサ社製)を用いる以外は実施例1と同様の方法で錠剤の作製と溶出試験とを行い、溶出試験の結果を図11に示した。
【0123】
溶出制御基剤にオイドラギットRSPOを用いるエテンザミドの徐放性錠剤は、圧縮成形圧により溶出速度が大きく変動した。
[実施例4]
【0124】
実施例1で得られた加工澱粉Aと結晶セルロース(「セオラス」KG−802、旭化成ケミカルズ株式会社製)とソルビトール(日研化学株式会社製)とポリエチレングリコール(マクロゴール6000(商品名)、三洋化成工業株式会社製)とエテンザミド(エーピーアイコーポレーション社製)とタルク(タルカンハヤシ、株式会社林化成製)とノイシリン(富士化学工業株式会社製)とを46.5/9.5/9.5/0.5/30/3/1の重量比になるように均一に混合した。この混合物を、ロータリー打錠機(クリーンプレスコレクト12HUK/株式会社菊水製作所製)を用いて、150MPaの圧力で圧縮し、直径8.0mm、重量0.2gの錠剤を得た。
【0125】
日本薬局方記載の第2液(pH6.8、イオン強度0.14)にα−アミラーゼを5μg/cm3となるように添加した試験液を用いて得られた錠剤の溶出試験を行い、エテンザミドの溶出パターンを測定した。溶出試験結果を図12に示した。
溶出制御基剤に加工澱粉A、水溶性高分子助剤にポリエチレングリコール、水溶性助剤にソルビトールを用い、滑沢剤にタルクとノイシリンを用いて作製したエテンザミドの徐放錠剤は、安定な0次溶出性を示した。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】加工澱粉A(0−32μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図2】加工澱粉A(32−75μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図3】澱粉粉末C(0−32μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図4】加工澱粉C(32−75μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図5】加工澱粉C(75−150μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図6】加工澱粉C(150μm−500μm分画)の膨潤粒子の光学顕微鏡写真(100倍)である。
【図7】実施例1及び比較例1の溶出試験結果を示したグラフである。
【図8】比較例2の溶出試験結果を示したグラフである。
【図9】実施例1〜3の溶出試験結果を示したグラフである。
【図10】比較例3の溶出試験結果を示したグラフである。
【図11】比較例4の溶出試験結果を示したグラフである。
【図12】実施例4の溶出試験結果を示したグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の活性成分と溶出制御基剤とを含有する徐放性固形製剤であって、前記の活性成分は、水への溶解度が0.0001〜100mg/cm3のものであり、前記の溶出制御基剤は、保水量が400%以上で、ゲル押込み荷重が200g以上で、水溶性成分量が40〜95重量%で、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上で、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上で、平均粒径が20μm以上50μm未満の加工澱粉であり、さらに、水への溶解度が20℃において0.1〜5.0g/cm3かつ分子量が1000以下の親水性助剤を含有すると共に、前記の加工澱粉と前記の親水性助剤との重量配合比率が、50:50〜99:1の範囲内にあることを特徴とする固形製剤。
【請求項2】
前記加工澱粉が、目開き75μmの篩いを通過する粒子が98重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が40重量%以上のものである、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
前記加工澱粉の膨潤度が6cm3/g以上10cm3/g以下である、請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
前記加工澱粉が、安息角45°以下であり、かつ見かけ比重が1.4cm3/g以上3.6cm3/g以下のものである、請求項1〜3のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項5】
前記親水性助剤が、糖アルコール類、糖類、界面活性剤、塩類、有機酸、アミノ酸類、アミノ糖類からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項6】
前記親水性助剤がソルビトール及び/又はスクロースである、請求項5に記載の固形製剤。
【請求項7】
前記溶出制御基剤が、さらに、20℃における水への溶解度が0.1g/cm3以上5.0g/cm3以下で、融点が50℃以上で、平均分子量が5000以上の合成または天然のポリマー類である親水性高分子助剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項8】
前記親水性高分子助剤がポリエチレングリコールである、請求項7に記載の固形製剤。
【請求項9】
前記の1種以上の活性成分が医薬品薬効成分である、請求項1〜8のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項10】
さらに、コーティング顆粒を含有する、請求項1〜9のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項11】
さらに、ショ糖脂肪酸エステル、タルク及び軽質無水ケイ酸から選択される1種以上と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを滑沢剤として含有する、請求項1〜10のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項12】
重量が0.2gより大きい、請求項1〜11のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項1】
1種以上の活性成分と溶出制御基剤とを含有する徐放性固形製剤であって、前記の活性成分は、水への溶解度が0.0001〜100mg/cm3のものであり、前記の溶出制御基剤は、保水量が400%以上で、ゲル押込み荷重が200g以上で、水溶性成分量が40〜95重量%で、目開き75μmの篩いを通過する粒子が90重量%以上で、目開き32μmの篩いを通過する粒子が20重量%以上で、平均粒径が20μm以上50μm未満の加工澱粉であり、さらに、水への溶解度が20℃において0.1〜5.0g/cm3かつ分子量が1000以下の親水性助剤を含有すると共に、前記の加工澱粉と前記の親水性助剤との重量配合比率が、50:50〜99:1の範囲内にあることを特徴とする固形製剤。
【請求項2】
前記加工澱粉が、目開き75μmの篩いを通過する粒子が98重量%以上、目開き32μmの篩いを通過する粒子が40重量%以上のものである、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
前記加工澱粉の膨潤度が6cm3/g以上10cm3/g以下である、請求項1又は2に記載の固形製剤。
【請求項4】
前記加工澱粉が、安息角45°以下であり、かつ見かけ比重が1.4cm3/g以上3.6cm3/g以下のものである、請求項1〜3のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項5】
前記親水性助剤が、糖アルコール類、糖類、界面活性剤、塩類、有機酸、アミノ酸類、アミノ糖類からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項6】
前記親水性助剤がソルビトール及び/又はスクロースである、請求項5に記載の固形製剤。
【請求項7】
前記溶出制御基剤が、さらに、20℃における水への溶解度が0.1g/cm3以上5.0g/cm3以下で、融点が50℃以上で、平均分子量が5000以上の合成または天然のポリマー類である親水性高分子助剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項8】
前記親水性高分子助剤がポリエチレングリコールである、請求項7に記載の固形製剤。
【請求項9】
前記の1種以上の活性成分が医薬品薬効成分である、請求項1〜8のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項10】
さらに、コーティング顆粒を含有する、請求項1〜9のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項11】
さらに、ショ糖脂肪酸エステル、タルク及び軽質無水ケイ酸から選択される1種以上と、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムとを滑沢剤として含有する、請求項1〜10のいずれかに記載の固形製剤。
【請求項12】
重量が0.2gより大きい、請求項1〜11のいずれかに記載の固形製剤。
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−153882(P2007−153882A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307190(P2006−307190)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】
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