説明

流体で満たされた装置における及びこれに関する改善

nを整数かつn≧2とする、n個の流体(80,87;220,230;320,332;420,422,430,432)を含む密封されたキャビティを有する装置(100;200;300;400)が、記載されている。各流体は、隣接している各流体と、実質的に不混和である。前記キャビティは、n個の連続的な領域60,170;260,270;360,362,370;460,462,470,472)に分割されている内側表面によって規定されており、前記連続的な領域各々は、各々対応する流体と接触している。各領域の濡れ性は、各々対応する流体が、対応する領域に近接している何れの領域よりも、該対応する領域に、優先的に付着する濡れ性である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体で満たされた装置に関し、詳細には、密封されたキャビティを有する前記装置に関する。本発明は、詳細には、エレクトロウェッティング装置における使用に適している。
【背景技術】
【0002】
流体で満たされた装置とは、少なくとも2つの流体を含む装置(即ち、複数の流体で満たされた装置)であって、典型的には、少なくとも1つの前記流体を変位させる(該体積の位置又は形状を変化させる)ことにより、機能を実施する装置である。
【0003】
流体で満たされた光学装置(optical fluid filled device)は、例えば、レンズ、絞り、回折格子、シャッタ、光スイッチ又はフィルタとして機能することができる。流体で満たされた光学装置の例と、例えばエレクトロウェッティングを使用することにより流体を変位させる種々の可能な方法とは、国際公開第02/069016号公報に記載されている。
【0004】
エレクトロウェッティング装置とは、動作するのにエレクトロウェッティング現象を利用する装置である。エレクトロウェッティングにおいて、三相の接触角が、印加電圧によって変化される。前記三相は、2つの流体と1つの固体とを構成している。流体という語は、液体及び気体の両方を包含している。典型的には、少なくとも第1流体は液体であり、第2流体は、液体、気体又は蒸気であり得る。
【0005】
欧州特許出願公開第1,069,450号公報は、可変密度の光フィルタとして振舞うように、エレクトロウェッティング効果を利用している光学装置を記載している。図1は、前記のような典型的な光学装置90の断面図である。光学装置90は、密封された空間92(即ち、チャンバ又はキャビティ)内に閉じ込められた2つの不混和性流体80、87を有する。不混和という語は、これら2つの流体が混和しないことを意味する。第1流体80は、絶縁体(例えば、シリコーンオイル)であって、第2流体87は、電気伝導体(例えば、水とエチルアルコールとの混合物)である。第1流体80と第2流体87とは、異なる光透過率を有している。
【0006】
電圧源40からの電圧は、流体87と電極42との間に電場を発生するように、2つの電極41、42に印加されることができる(絶縁層50は、第2電極42が導電性の前記第2流体と接触するのを防止している)。
【0007】
第2流体87に印加される前記電圧を変化させることにより、第1流体80と第2流体87との間の界面85の形状が変更され、この結果、光学素子の全体的な透過率を変化させる。類似の構成であるが、2つの流体80、87が異なる屈折率を有する構成を使用して、可変レンズを提供することも知られている。
【0008】
図1における装置90は、第1流体80を位置付けるように、絶縁層50上に、親水剤の環70によって囲まれている直径D1の撥水フィルム60を有する。界面85の形状は、前記装置の動作中、変化する。前記形状の変化により、流体80は、撥水層60から密封された空間の対向面まで延在し得る。第1流体80が、前記対向面に付着(adhere)するのを防止するように、該対向面の一部は、直径D2の親水性フィルム72の層によって覆われている。
【0009】
界面25に対する重力の振る舞いを制限するように、2つの流体80、87は、等しい密度であり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の実施例の目的は、改善されたエレクトロウェッティング装置を提供することにある。本発明の実施例の目的は、特に、加速力(accelerative force)を受けている場合に、改善された安定性を有するエレクトロウェッティング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの見地において、本発明は、nを整数かつn≧2とするn個の流体を含む密封されたキャビティを有する装置であって、各流体は、隣接している(contiguous)各流体と実質的に混和せず、前記キャビティはn個の連続的な領域に分割されている内側表面によって規定されており、前記連続的な領域各々は、各々対応する流体と接触しており、各領域の濡れ性は、各々対応する流体が、対応する領域に近接している何れの領域よりも、該対応する領域に、優先的に(preferentially)付着する濡れ性である装置を提供する。
【0012】
前記のような構造を有する密封されたキャビティを設けることにより、流体が、前記キャビティの内側表面の不適切な部分に付着する可能性は、大幅に減少される。従って、加速力を受けている場合の前記装置の安定性が、改善される。更に、他の流体内に溶解している、ある少量の1つの流体が、不適切な面上に凝縮することは、防止される。
【0013】
他の見地において、本発明は、光記録担体の情報層を走査する光走査装置であって、放射ビームを発生する放射源と、該放射ビームを情報層上に集束させる対物系とを有する光走査装置において、前記光走査装置は、nを整数かつn≧2とするn個の流体を含む密封されたキャビティを有し、各流体は、隣接している各流体と実質的に混和せず、前記キャビティはn個の連続的な領域に分割されている内側表面によって規定されており、前記連続的な領域各々は、各々対応する流体と接触しており、各領域の濡れ性は、各々対応する流体が、対応する領域に近接している何れの領域よりも、該対応する領域に、優先的に付着する濡れ性である装置を提供する。
【0014】
更なる見地において、本発明は、nを整数かつn≧2とするn個の連続的な領域に分割されている内側表面を有するキャビティを設けるステップと;各流体は、前記連続的な領域各々が、各々対応する流体と接触するように、隣接している各流体と実質的に不混和であるn個の流体によって、前記キャビティを満たすステップと;各領域の濡れ性は、各々対応する流体が、対応する領域に近接している何れの領域よりも、該対応する領域に、優先的に付着する濡れ性である前記キャビティを、密封するステップと;を有する、装置を製造する方法を提供する。
【0015】
他の見地において、本発明は、放射ビームを発生する放射源を設けるステップと;nを整数かつn≧2とするn個の流体を含む密封されたキャビティであって、各流体は、隣接している各流体と実質的に不混和であって、前記キャビティは、n個の連続的な領域に分割されている内側表面によって規定されており、前記連続的な領域各々は、各々対応する流体と接触しており、各領域の濡れ性は、各々対応する流体が、対応する領域に近接している何れの領域よりも、該対応する領域に、優先的に付着する濡れ性であるキャビティを有する装置を設けるステップと;を有する、光記録担体の情報層を走査する光走査装置を製造する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の更なる理解のために、以下で、例として、添付図面を参照して、同様の複数の実施例がどのように実行されることができるかが示される。
【0017】
本発明者らは、図1に示されている装置90が乱され、この結果、両方の流体が所望の位置に完全に留まらないことが起こり得ることを、認識した。例えば、流体80の一部81が、図2に示されているように当該装置の角に留まり得る。この状況は、2つの流体が完全に不混和でない場合に、生じ得る。例えば、流体80内の、流体の小さい(サブマイクロメートルサイズの)滴81が、装置90の内側表面の一部に、くっ付き、蓄積し得る。代替的には、前記状況は、例えば、該装置90が揺らされた又は落下された場合のような、装置90が加速力を受けている場合に、生じ得る。
【0018】
所望の位置からの、前記流体の一部(又は、それどころか、流体全体)の変位は、当該装置の動作に影響を与え得るので、望ましくない。2つの流体80、87間の界面85の形状は、第1流体80の体積に、部分的に依存する。従って、第1流体80の体積が減少された場合、印加される電圧の関数である界面85の形状は、影響を受ける。このことは、装置90の性能を変化させ、可変フィルタとして(又はレンズとして(流体80、87の特性に依存する))の前記装置の機能を害する。
【0019】
本発明者らは、前記のような2つの流体のシステムに関して、全ての前記内側表面を、2つの分離された領域に分割し、前記領域各々は、各々前記2つの流体の一方に対応しており、好ましくは、それを引きつけることによって、この問題が克服されることができることを実現した。このことは、各流体が対応する領域に引きつけられるように、各流体に対し異なる濡れ性を有する当該装置の領域を設けることによって、達成される。濡れ性とは、固体が、流体によって濡らされる(覆われる)程度をいう。「〜に分割する」という語は、複数の、表面の前記領域が、近接している又は隣接しており(即ち、実質的に中間領域を有さない)、かつ、連続的である(即ち、前記領域各々は、他の流体を引きつける実質的な介在領域を含まない)ことを意味する。前記中間又は介在領域の最大幅は、前記流体内に形成され得る滴の直径よりも小さい。好ましくは、前記領域の最大幅は、100μmよりも小さく、より好ましくは、10μmよりも小さい。従って、前記のような滴が、前記のような中間領域に接触した場合、該中間領域は、前記滴に十分な接触域を与えないので、該滴は、付着しない。
【0020】
図3は、本発明の第1実施例による装置100の断面図を示している。装置100は、概ね、図1及び2に示されている装置90に対応しており、同一の符号は、類似のフィーチャを示している。装置100は、非導電性かつ非極性(non−polar)である第1流体80を引きつける直径D1の疎水面の領域60を有する。内側表面の残部は、親水被膜170によって覆われており、親水被膜170は、導電性かつ極性の流体87によって、優先的に濡らされる(即ち、親水被膜170が引きつける)。このことは、図2に示されている状況であって、液体80の一部が、望まれない態様で内側キャビティの一部に付着する状況を、防止する。代わりに、望まれない滴が形成される場合、該滴は、前記内側表面の望まれない部分に付着せず、液体と合体し滑り落ちるまで、動き続け、これによって、前記流体の所望の配置に戻る。
【0021】
この特定の実施例において、電極41は、導電性かつ極性の流体87と電気的に接触しており、(前記密封されたキャビティの内側表面の一部を形成する)前記電極の表面は、親水性である。前記電極の表面は、元々、親水性であることができる。代替的には、導電性かつ親水性の被膜が、全ての表面領域170に又は前記電極(若しくは該電極の、前記キャビティの内側表面の一部を形成する部分)のみに塗布されても良い。
【0022】
他の実施例において、電極41を覆う前記被膜は導電的でなく、即ち、これは絶縁体である。例えば、親水性の絶縁体であるシリコン酸化物が、使用されることができる。エレクトロウェッティングは、いくらか高い電圧においてであるが、静電結合によっても生じる。絶縁被膜が、対向電極42を覆う絶縁層と比較して薄い場合、必要とされる電圧の増加は、最小限になる。
【0023】
図4は、本発明の更なる実施例による装置200を示している。装置200は、再び、光学装置であって(即ち、これは、前記装置への入射光の特性を変更する)、この例において、装置200は、可変焦点レンズとして働く。
【0024】
装置200は、第1流体220及び第2流体230を有しており、これら2つの流体は、不混和である。第1流体220は、非導電性かつ非極性の流体であって、例えば、シリコーンオイル又はアルカンである。第2流体230は、導電性又は極性の液体であって、例えば、塩溶液を含有する水(又は、水とエチレングリコールとの混合物)である。
【0025】
2つの流体220、230は、好ましくは、レンズが向きと独立に機能するように、前記2つの流体間の重力作用を最小化するために、等しい密度を有する。2つの流体220、230は、該2つの流体間の界面225が、レンズとして働くように、異なる屈折率を有する。
【0026】
界面225の形状が変化されると、前記レンズの焦点距離が変化される。界面225の形状は、前記流体と装置200の壁との接触角を変更するように、電極260と電極242との間に電圧を印加することにより、エレクトロウェッティング現象によって、調整される。
【0027】
前記装置を介する光の透過を可能にするように、少なくとも前記装置の対向している面(当該図に示されている向きにおいて、上面及び下面)は、透明である。この特定の実施例において、当該装置は、円筒体210の形態をとっており、光は、該円筒体の透明な端部212、214を介して入射及び出射する。流体220、230は、円筒体210によって規定されている密封された空間内に封入されている。円筒体210の内側表面の一方の端部260は、極性流体230を引きつけるように親水性である。円筒体210の残部(即ち、反対側の端部及び内側の側面壁)は、疎水性被膜270によって覆われている。
【0028】
親水性領域260は、親水性材料(例えば、ガラス)によって、全体的に形成されることができ、又は、代替的には、親水層(例えば、シリコン二酸化物)によって覆われることができる。
【0029】
この特定の実施例において、内側表面の親水領域260は、電極を形成するように、透明な親水性の導体(例えば、酸化インジウムスズ)によって完全に覆われている。
【0030】
三相線の近傍の装置200の周りに延在している環状電極242と透明電極260とにより極性液体230に印加される電圧は、可変電圧源240から印加される。電極242は、極性流体230と導電的に接触していない。
【0031】
前記円筒体の内側表面の一つの領域を親水性に、該内側表面の残部を疎水性に配することにより、この2つの流体のシステムにおいて、当該装置の安定性が大幅に向上されることが、理解されるであろう。前記極性流体は、前記内側表面の非極性流体のみを有することが望まれている部分には付着せず、前記非極性流体も、前記内側表面の極性流体のみを有することが望まれている部分には付着しない。
【0032】
この条件は、極性流体230が、疎水性被膜270の一部と接触するのを防止していないことに留意されたい。前記親水層の目的は、前記極性流体を位置させる、即ち、前記極性流体を所望の位置に保持する(該位置は、しばしば、少なくとも部分的に形状を規定する)ことにある。従って、比較的小さい親水性領域が、この目的に適切であり得る。例えば、装置の内側表面の全体は、(複数の)前記極性流体を特定の形状又は位置に保持することが必要である領域を別として、疎水性であり得る。
【0033】
エレクトロウェッティングは、極性又は導電性の流体の、表面に対する濡れ性を増加させるのに使用されることができる。この濡れ性が、最初、小さい場合(極性流体の場合であり、これは、通常、疎水面と呼ばれ、例えば、テフロン(登録商標)のような面である)、電圧は、該濡れ性を大きくするように使用されることができる。前記濡れ性が、最初、大きい場合(極性流体の場合であって、これは、通常、親水面と呼ばれ、例えば、シリコン二酸化物である)、印加電圧は、比較的、あまり効果を有さない。従って、エレクトロウェッティング装置において、前記三相線は、最初、疎水層と接触しているのが好ましい。
【0034】
本発明は、図5及び6の例によって示されているように、3つ以上の流体を有するエレクトロウェッティング装置に適用されることができることも、理解されたい。本発明は、n個の流体を有するいかなる装置にも適用されることができ、ここで、n≧2であり、nは、前記装置の設計により意図されている流体の数である。
【0035】
図5は、非極性流体320によって分離されている2つの極性流体330、332を有する、エレクトロウェッティング装置300を示している。極性流体330、332は、同一である又は代替的には異なる流体であることができる。好ましくは、各流体は、近接している流体と不混和であって、これらと界面325a、325bを形成する。更に好ましくは、前記流体の全ては、互いに不混和である。好ましくは、各流体は、ほぼ同じ密度を有する。
【0036】
装置300の内側表面は、3つの別個の領域360、370、362に分割されており、各領域は、各々流体330、320、332に対応している。各連続的な領域360、370、362の特性は、各領域が、前記対応する流体を、近接しており接続している流体よりも、優先的に引きつける特性である。例えば、領域360、362は親水性であるのに対し、領域370は疎水性である。
【0037】
内側表面のこの配置は、前記流体の不適切な位置決めを完全には防止しておらず、例えば、流体330の一部は、装置300が激しく揺らされている場合、結局、親水層362に付着し得ることを理解されたい。しかしながら、前記内側表面の配置により、極性流体330の何らかの一部が領域362に接触するためには、先ず、領域370によって囲まれている流体320を横切る必要がある。従って、流体330が、装置300の前記内側表面の望まれていない部分に付着する可能性は、大幅に減少されており、この結果、比較的安定な装置を提供する。
【0038】
図6は、4つの分離された流体420、430、422、432を含むエレクトロウェッティング装置400の例を示している。各流体は、近接している流体と不混和である。更に、前記流体各々は、自身が(対応する領域に近接している何れの領域よりも)優先的に付着する該対応する領域と、接触している。例えば、流体432は、何れの近接している領域477、470よりも、環状の内部表面領域462に、優先的に付着する。同様に、流体430は、近接している領域470よりも、領域460に、優先的に付着する(近接している領域470は、流体420に対応している)。
【0039】
便宜上、図5に示されているエレクトロウェッティング装置300、又は図6に示されているエレクトロウェッティング装置400の何れに関しても、電極は示されていない。
【0040】
上述の実施例は、単に、例として与えられたものであることが理解されるであろう。
【0041】
異なる濡れ性の領域は、疎水性又は親水性材料から、全体的に形成されることができることが理解されるであろう。代替的には、前記領域は、例えば、ディップコーティング又は化学蒸着法によって、疎水性又は親水性物質で他の材料を覆うことにより、形成されることもできる。
【0042】
当該装置は、あらゆる、複数の流体で満たされた装置であり得て、動作するためにエレクトロウェッティング現象を利用する装置に限定されるものではない。
【0043】
当該装置は、何らかの所望の形状を有することができる。例えば、本発明によるエレクトロウェッティング装置は、国際公開第00/58763号公報に記載されている形状であることもできる。
【0044】
当該装置は、光学装置であることができ、光学装置の一部を形成すること、又は、むしろいかなる他の種類の装置であることもできる。
【0045】
図7は、光記録担体2を走査する装置1であって、本発明の実施例に従う可変焦点レンズを有する対物レンズ系のレンズ18を含んでいる装置1を示している。この特定の実施例において、可変焦点レンズ18は、図4に示されているエレクトロウェッティング装置200に対応している。しかしながら、他の実施例は、何らかの所望の光学機能を実行するように他の流体で満たされた装置を使用し得ることを、理解されたい。例えば、適切な装置が、走査装置における、調整可能な強度を有する何らかのレンズとして、調整可能な絞りとして、又は波面補正部品(例えば、該部品を通過する放射ビームに、調整可能な量の球面収差を導入する)として、使用されることができる。
【0046】
図7は、対物レンズ18を含む、光記録担体2を走査する装置1を示している。前記光記録担体は、透明層3を有しており、該透明層3の一方の側に、情報層4が配されている。情報層の前記透明層から見て反対の側は、保護層5によって、環境の影響から保護されている。前記透明層の当該装置に面している側は、入射面6と呼ばれる。透明層3は、前記情報層に対する機械的支持を提供することにより、記録担体に対する基板として働く。
【0047】
代替的には、前記透明層は、前記情報層を保護する機能のみを有し得る一方で、前記機械的支持は、前記情報層の他方の側における層によって(例えば、保護層5によって、又は情報層4に接続されている透明層及び更なる情報層によって)、提供される。
【0048】
情報は、ほぼ平行な、同心又はらせん状のトラック(図示略)内に配される光学的に検出可能なマークの形態で、記録担体の情報層4に記憶されることができる。前記マークは、何らかの光学的に読み出し可能な形態のものであることができ、該形態とは、例えば、ピットの形態、反射係数若しくは自身の周囲とは異なる磁化の方向を有する領域、又はこれらの形態の組み合わせである。
【0049】
走査装置1は、放射ビーム12を発することができる放射源11を有する。前記放射源は、半導体レーザであり得る。ビームスプリッタ13は、発散している放射ビーム12を、コリメータレンズ14に向かって反射し、該コリメータレンズ14は、発散しているビーム12を、コリメートされたビーム15に変換する。コリメートされたビーム15は、対物系18に入射する。
【0050】
前記対物系は、1つ以上のレンズ及び/又は回折格子を有し得る。対物系18は、光軸19を有する。対物系18は、ビーム17を、記録担体2の入射面6に入射する集束ビーム20に変化させる。前記対物系は、透明層3の厚さを介する前記放射ビームの通過に適応化された球面収差補正を有する。集束ビーム20は、情報層4上にスポット21を形成する。情報層4によって反射された放射は、発散しているビーム22を形成し、これは、対物系18によってほぼコリメートされたビーム23に変形され、コリメータレンズ14によって集束ビーム24に変形される。ビームスプリッタ13は、集束ビーム24の少なくとも一部を、検出システム25に向かって透過させることによって、順方向のビームと反射されたビームとを分離する。前記検出システムは、前記放射を捕捉し、これを、電気的な出力信号26に変換する。信号プロセッサ27は、これらの出力信号を、様々な他の信号に変換する。
【0051】
前記信号の1つは、情報信号28であり、この値は、情報層4から読み出された情報を表している。前記情報信号は、エラー訂正用の情報処理ユニット29によって処理される。信号情報プロセッサ27からの他の信号は、フォーカスエラー信号及び半径誤差信号30である。フォーカスエラー信号は、スポット21と情報層4との間の高さの軸方向の差を表している。半径誤差信号は、スポット21と、該スポットによって追従されるべき情報層内のトラックの中心との間の、情報層4の平面内の距離を表している。フォーカスエラー信号と半径誤差信号とは、サーボ回路31に供給され、該サーボ回路31は、これらの信号を、それぞれフォーカスアクチュエータ及び半径アクチュエータを制御するサーボ制御信号32に変換する。これらのアクチュエータは、図に示されていない。フォーカスアクチェータは、対物系18の位置を、フォーカス方向33に制御し、これにより、スポット21の実際の位置が情報層4の面とほぼ一致するように、スポット21の実際の位置を制御する。半径アクチュエータは、対物レンズ18の位置を半径方向34に制御し、これによって、スポット21の半径位置が情報層4内の追従されるべきトラックの中心線とほぼ一致するように、スポット21の半径位置を制御する。この図におけるトラックは、該図の平面に対して垂直な方向に走っている。
【0052】
この特定の実施例における図7の装置は、記録担体2よりも厚い透明層を有する第2の種類の記録担体も走査する。当該装置は、放射ビーム12、又は前記第2の種類の記録担体を走査するための異なる波長を有する放射ビームを使用することができる。この放射ビームのNAは、記録担体の種類に適応化されることができる。前記対物系の球面収差補正は、これに応じて適応化されなければならない。
【0053】
上述のような内側表面を有する装置を設けることによって、前記流体が、当該装置の前記内側表面の不適切な部分に付着する見込みは、大幅に減少される。従って、当該装置の安定性が、改善される。このことは、当該装置が、携帯可能なCD(コンパクトディスク)又はDVD(デジタル多用途ディスク)プレーヤのような携帯可能なユニットにおいて使用される場合、特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】既知のエレクトロウェッティング装置の断面図を示している。
【図2】図1に示されている装置の断面図であって、前記装置がどのように乱され得るかを示している。
【図3】本発明の第1実施例による装置の断面図を示している。
【図4】本発明の更なる実施例による装置の断面図を示している。
【図5】本発明の他の実施例による装置の断面図を示している。
【図6】本発明の更なる実施例による装置の断面図を示している。
【図7】本発明の実施例によるエレクトロウェッティング装置を含む、光記録担体を走査する装置を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
nを整数かつn≧2とする、n個の流体を含む密封されたキャビティを有する装置であって、各流体は、隣接している各流体と実質的に不混和であって、前記キャビティは、n個の連続的な領域に分割されている内側表面によって規定されており、前記連続的な領域各々は、各々対応する流体と接触しており、各領域の濡れ性は、各々対応する流体が、対応する領域に近接している何れの領域よりも、該対応する領域に、優先的に付着する濡れ性である装置。
【請求項2】
前記連続的な領域の少なくとも1つの領域が、電気的絶縁層によって覆われている電極を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記連続的な領域の少なくとも1つの領域が、電極の表面を含む、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
n=2である、請求項1ないし3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記流体のそれぞれが液体である、請求項1ないし4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記流体の少なくとも1つが、気体又は蒸気である、請求項1ないし4の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
各流体が、ほぼ同じ密度を有している、請求項1ないし6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
光記録担体の情報層を走査する光走査装置であって、放射ビームを発生する放射源と前記放射ビームを前記情報層上に集束させる対物系とを有する光走査装置において、nを整数かつn≧2とする、n個の流体を含む密封されたキャビティを有し、各流体は、隣接している各流体と実質的に不混和であり、前記キャビティは、n個の連続的な領域に分割されている内側表面によって規定されており、前記連続的な領域各々は、各々対応する流体と接触しており、各領域の濡れ性は、各々対応する流体が、対応する領域に近接している何れの領域よりも、該対応する領域に、優先的に付着する濡れ性である装置を有する、光走査装置。
【請求項9】
前記対物系が、エレクトロウェッティング装置を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
― nを整数かつn≧2とする、n個の連続的な領域に分割されている内側表面を有するキャビティを設けるステップと、
― 各流体は、前記連続的な領域各々が、各々対応する流体と接触するように、隣接している各流体と実質的に不混和であるn個の流体によって、前記キャビティを満たすステップと、
― 各領域の濡れ性は、各々対応する流体が、対応する領域に近接している何れの領域よりも、該対応する領域に、優先的に付着する濡れ性である、前記キャビティを密封するステップと、
を有する装置を製造する方法。
【請求項11】
― 放射ビームを発生する放射源を設けるステップと、
― nを整数かつn≧2とする、n個の流体を含む密封されたキャビティであって、各流体は、隣接している各流体と実質的に不混和であって、該キャビティは、n個の連続的な領域に分割されている内側表面によって規定されており、前記連続的な領域各々は、各々対応する流体と接触しており、各領域の濡れ性は、各々対応する流体が、対応する領域に近接している何れの領域よりも、該対応する領域に、優先的に付着する濡れ性である、密封されたキャビティを有する装置を設けるステップと、
を有する、光記録担体の情報層を走査する光走査装置を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−528008(P2007−528008A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502605(P2006−502605)
【出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050133
【国際公開番号】WO2004/077125
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】