説明

流体の圧力及び/又は流量を制御する方法及び装置

本発明は、流体の圧力及び/又は流量を制御する方法に関する。この方法のため、パイプライン(15)を流れる流体から流れエネルギーが引き出される。このエネルギーは、そのうちの少なくとも一部が電気エネルギーに変換され、流体の流量及び/又は圧力の電気制御(65)に使用される。パイプライン(20)における流体の流量及び/又は圧力を制御する装置は、流れる流体から流れエネルギーを引き出し、このエネルギーのうちの少なくとも一部を電気エネルギーに変換するように構成された、少なくとも1つの発電機(35)を備える。本装置は、パイプライン(20)における流体の流量及び/又は圧力を、発電機(35)によって給電される電気駆動機構をもって制御する手段(65)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力及び流量のうちの少なくとも一方(以下「圧力及び/又は流量」と表記する。)を制御する方法、並びに、導管における流量及び/又は圧力を制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流量及び/又は圧力を制御することは、特に航空機において通常生じる作業である。例えば、航空機における緊急酸素供給システムでは、酸素を計量する方法及び装置が必要となる。
【0003】
基本的には、流体の流量及び/又は圧力を制御するのにとり得る多くの方法が存在する。これらの方法は、基本的に2つに類別される。制御に要するエネルギーが電気的形態で供給されるものであり、例えば、電気的に制御可能な比例バルブとして実現される。或いは、減圧器におけるような、空気式又は油圧式など純粋な機械的形態での制御機能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これら2つの方法には、次のような欠点がある。機械式制御ユニットは、その動作の正確性に欠けることが知られている。更に一般的に極めて重量が大きいという点に不利がある。これに対し、電気的要素を備えた制御ユニットは、より正確に動作するものの、エネルギー源を常に要するという点に不利がある。
【0005】
このような背景に対し、本発明の目的は、装置技術に関して軽量な構造的形態で具現することができ、広範囲に亘って簡単な形態で且つ高い精度をもって適用することのできる流体の流量又は圧力の制御方法を提供する点にある。更に本発明の目的は、流体の流量及び/又は圧力の制御が、記載の利点を伴って達成される装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的が請求項1に記載の特徴を有する方法によって達成されるうえ、請求項4に記載の特徴を有する装置によっても達成される。好ましい実施形態は、各従属請求項、以下の説明及び図面から導き出される。
【0007】
本発明によれば、流体の圧力及び/又は流量を制御する方法において、導管を流れる流体から流れエネルギーが取り出され、そのうちの少なくとも一部が電気エネルギーに変換される。流れエネルギーから得られた電気エネルギーのうちの少なくとも一部が流体の流量及び/又は圧力の制御に用いられる。このように、制御に電気エネルギーが用いられるので、非常に正確な制御を達成することができる。更なる利点は、外部エネルギー源を用いることなく実施することができるうえ、流量及び/又は圧力の純粋な機械的制御がなされることを必要としないので、装置技術に関してコンパクトな形態で且つ非常に小さな重量で本方法を実現できる点にある。同時に、エネルギーに関して他の供給システムから独立して実行できることから、外部エネルギー源を用いずとも極めてフェールセーフな方法が達成される。
【0008】
導管を流れる流体からの流れエネルギーの取出は、要求に応じて異なる方法で設計することもできる。従って、流れエネルギーの取出は、例えば、流体導管、特に流体の流量及び/又は圧力が制御されるのと同一の流体導管においてなされてもよい。これにより、導管系の1つの箇所に限られた空間内で本方法を達成することができる。しかし、例えば、多数のシステムについて電気エネルギーの発生を集中させるため、流れエネルギーの取出と制御とを1つ以上の流体導管系の異なる導管において達成することも便利である。
【0009】
好ましくは、本方法は、流量及び/又は圧力が閉ループによって制御され、流れエネルギーから得られる電気エネルギーのうちの少なくとも一部がこの閉ループ制御に使用されるように設計される。これを目的として、流量及び/又は圧力が制御される流体に関する測定信号がフィードバックによって閉ループ制御に入力される。しかし、外部取得測定情報、即ち流体導管系の外部において得られた測定情報(例えば、温度情報又は外部圧力情報)をこのような閉ループ制御に導入してもよい。
【0010】
好ましくは、特に酸素ガスが本方法における流体を形成する。これに関し、本発明の一つの有利な適用による方法は、有人航空機における緊急酸素供給に用いられる。本方法は費用を抑え、単純且つ重さを抑えた形態で適用できることから、航空機における使用が特に有利である。また、最先端のエネルギー源を何ら必要としないが、このことは本方法を緊急システムとしての自給式形態及び包括的形態で適用可能とする理由である。更に、流体の流量及び/又は圧力の制御は、本方法において実行される流れエネルギーの一部の電気エネルギーへの変換のために必要な精度でなされてよい。これに関し、本方法は、閉ループ制御が乗客への供給、特に酸素マスクに導入される酸素の要求に関する測定情報を取得し、そして、更に供給システムをそれぞれの飛行高度及び温度に適合させるなどのために圧力情報及び/又は温度情報を処理するように設計されると便利である。
【0011】
導管における流体の流量及び/又は圧力の制御のための、上記の方法を実行するのに特に適した本発明による装置は、流体の流れから流れエネルギーを取り出し、そのうちの少なくとも一部を電気エネルギーに変換するように構成された、少なくとも1つの発電機を含んで構成される。また、本装置は、導管における流体の流量及び/又は圧力の制御のための制御手段を含んで構成される。これに関し、制御手段には、発電機によって給電される電気駆動部が設けられる。電気駆動式制御手段の使用により、流量及び/又は圧力を極めて正確に制御することができる。更に、追加のエネルギー源が本装置に組み込まれることを必要としない。このように、本装置は、エネルギーに関する自給式形態で動作させることが可能である。結果として、本装置の動作において高いフェールセーフ性が実現される。更に、本装置は、重量の大きな機械的要素も追加のエネルギー源も組み込む必要がないので、重さを抑えた構成とすることができる。特に、本装置の実施において、減圧器を不要とすることができる。これにより、発電機を単段又は複段の形態で構成することができる。
【0012】
本装置は、適用の目的に応じて異なる形態で構成することができ、好ましい実施形態では、少なくとも1つの発電機と少なくとも1つの制御手段とが本装置の同一の導管においてシリアルに配置される。そのような装置は、導管の一つの箇所において一つの部分として取り付けられるように、便利に設計することができる。他の好ましい実施形態において、少なくとも1つの発電機及び少なくとも1つの制御手段は、異なる導管に、好ましくは導管系における並列な枝管に配置される。従って、そのような装置により、制御に要する電気エネルギーは、導管系のうちのこれに適する箇所で取得し、当該制御に供給することができる。更に、幾つかの異なる流体導管系における複数の制御手段に対する中央発電機を設けることも可能である。
【0013】
更に好ましくは、本発明のよる装置は、導管を流体の流れのもとに置くための、発電機による流れエネルギーの取出が想定された手動開始制御をも含んで構成される。本発明による装置は、このようにして手動で始動させることができ、流れエネルギーの取出を目的として発電機を設けた導管が流体の流れにさらされる。これにより、当該制御の更なる動作が自動でなされるように、開始制御の手動による動作の後、運転開始のための制御手段にエネルギーが供給される。これに加えるか又はこれに代えて、本発明による有利な装置の導管に、手動による動作が可能な遮断バルブが設けられる。同時に、少なくとも1つの制御手段、好ましくはアイドル位置で開口するバルブは、導管における流体の通過流れの開始に際して、少なくとも発電機が制御手段の動作にとって充分に大きな電力を供給するほどの流量の流体が導管を流れるように構成される。この形態ではまた、発電機が制御手段を自動で駆動し得るように、初めの手動動作によって充分に高速な流体の流れを生じさせることが可能である。
【0014】
好ましくは、本装置には、発電機の電気エネルギーのうちの少なくとも一部によって給電される閉ループ制御が設けられる。従って、流体の流量及び/又は圧力の制御は、フィードバックを設けることもできるし、更なる外部測定信号、即ち温度又は大気圧力などの流体導管系外の周囲環境に関する情報と比較することもできる。そのような閉ループ制御の好ましい実施形態において、フィードバックは、流体の流量及び/又は圧力の測定用に設計されたセンサによってなされ、その出力信号が閉ループ制御に導入される。このようにして、閉ループ制御は、センサの取得測定信号を用いて閉ループによって制御手段の動作を制御する。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明による装置の発電機は、回転式ベーンモータによって駆動される。更に好ましくは、電気制御式調圧バルブが上記少なくとも1つの制御手段を構成する。特に好ましくは、本装置は、酸素ガスを導く流体導管に適合設計され、無人航空機における緊急酸素供給の一部である。重さを抑えた構成、流体の流量又は圧力のより正確な制御、及びエネルギーに関する自給式変換が可能である点が特に有利であると判明したことは、本発明による装置のこのような適用についても該当する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】導管における流体の流量制御のための、本発明の一実施形態による装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例及び例示の図面によって本発明を説明する。
添付のブロック図は、導管における流体の流量制御のための、本発明による装置の構成を示している。導管における流体の流量及び/又は圧力の制御のための図示の装置は、流体の流量及び/又は圧力の制御方法を実施する役割を果たす。本実施形態では、酸素ガスが流体を形成し、本装置は有人航空機において緊急酸素供給を実行するように設計される。
【0018】
圧縮ガスボトル5内の酸素ガスは、有人航空機に機上搭載されており、乗客は、これを緊急時において酸素マスク10を介して吸入することができる。このための酸素は、酸素導管として構成された流体導管15,20及び供給用フレキシブルチューブとして構成された導管25を介して酸素マスク10に到達する。圧縮ガスボトル5内の圧力を数百バールにまで上昇させることができるので、酸素圧力は、導管15に導入される前に、減圧バルブ30によって減圧される。導管15内を流れる酸素の流れエネルギーは、発電機35によってこの流れから部分的に取り出される。発電機35は、そのために、流れエネルギーをシャフトの回転エネルギーに変換する回転式ベーンモータ40を備えている。続いて、回転中のシャフトは、給電リード50に電気エネルギーを供給する電流発生器45を駆動する。給電リード50は、電子式閉ループ制御55に給電する。電子式閉ループ制御55は、取得された電気エネルギーを起動ユニット60に供給し、そして、この起動ユニットは、電気エネルギーのうちの一部を、電気制御式バルブとして構成された制御手段65に伝送する。バルブ65は、これにより、導管15及び20を流れる酸素が発電機35を通過した後の酸素導管20における流量を制御する。このように、供給用フレキシブルチューブ25を介して酸素マスク10に到達する酸素の流量は、バルブ65によって制御することができる。
【0019】
導管20における流量を閉ループによって制御するため、スループットセンサ70によってこれを測定する。スループットセンサ70の測定信号は、フィードバックのために閉ループ制御55に送信される。閉ループ制御55は、更に外部測定センサ、即ち流体導管系外で測定を実行するセンサを備えている。このように、閉ループ制御は、乗客に対する酸素の緊急供給に必要な、酸素導管15,20及び25を介するスループット流れを判定することができるように、温度センサ75及び高度計80を備えている。起動ユニット60は、この関連する制御変数の判定のために制御ユニット85に組み込まれ、この制御ユニットは、センサ70,75及び80の信号線に対する入力部を備えている。制御ユニット85における測定信号は、アナログ−デジタル変換器90によってデジタル信号に変換され、起動ユニット60は、これらの信号をバルブ65の動作のために更に処理することができる。
【0020】
以上で述べた実施形態において回転式ベーンモータ40及び電気発生器45の2部分からなる発電機35は、1つの部分として構成されたシンプル且つロバストな発電機100に置き換えることができる。酸素供給管105及び酸素排出管110が、これに関して環状酸素ガイド115に接続される。磁石120は、この酸素ガイド115に組み込まれ、環状酸素ガイドを流れてこのガイド内を環状経路に沿って間断なく移動する酸素によって動かされる。磁石120がその循環経路において高い周波数で通過するコイル125は、環状酸素ガイド115の円形断面の周りに巻き付けられている。誘導電圧は、コイル125を介する磁石のこの動きによってコイル125の端子130及び135において取り出すことができる。誘導電圧は、以上で述べたように、電気線50を介して閉ループ制御55に給電するのに使用することができる。
【0021】
圧縮ガスボトル5から導管15,20及び25を介して酸素マスク10に至る酸素の流れを要求に応じて遮断する手動遮断バルブは、図示されていない。これは、遮断バルブとして機能する耐タンパー閉塞器によって実現され、圧縮ガスボトル5に取り付けられ、緊急時に酸素供給のために開くように設定される。この耐タンパー閉塞器は、集中的に起動されて発電機よるエネルギー供給を必要とせず、導管15,20及び25を介する酸素流れの開始に際してエネルギーを供給することによってのみ始動する。
【符号の説明】
【0022】
5…酸素源としての圧縮酸素ボトル、10…酸素マスク、15…酸素導管、20…酸素導管、25…供給用フレキシブルチューブ、30…減圧バルブ、35…発電機、40…回転式ベーンモータ、45…電気発生器、50…電気線、55…電子閉ループ制御、60…起動ユニット、65…バルブ、70…スループットセンサ、75…温度センサ、80…高度計、85…制御ユニット、90…アナログ−デジタル変換器、100…発電機、105…酸素供給管、110…酸素排出管、115…環状酸素ガイド、120…磁石、125…コイル、130…コイル端子、135…コイル端子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れから流れエネルギーを取り出し、そのうちの少なくとも一部を電気エネルギーに変換するように構成された少なくとも1つの発電機(35)を含んで構成された、導管(20)における流体の流量及び/又は圧力を制御する装置であって、
前記発電機は、磁石(120)が組み込まれた環状酸素ガイド(115)を含んで構成され、
前記磁石(120)は、前記酸素ガイドを流れる酸素によって動かし、前記環状ガイド内で環状経路を移動させることができ、
前記発電機(35)は、前記酸素ガイドの円形断面の周りに巻き付けられたコイル(125)を含んで構成され、
導管(20)における流体の流量及び/又は圧力を制御する少なくとも1つの制御手段(65)を備え、
前記制御手段(65)は、前記発電機(35)によって給電される電気駆動部を含んで構成されたことを特徴とする、
酸素を導く流体導管(20)用に設計され、有人航空機における緊急酸素供給の一部である装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの発電機(35)及び前記少なくとも1つの制御手段(65)が同一の導管(20)においてシリアルに配置されたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの発電機(35)及び前記少なくとも1つの制御手段(65)が異なる導管、好ましくは導管系における並列な枝管に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記発電機(35)による前記流れエネルギーの取出のために提供された、前記導管(15)に関する前記流体の流れのための手動による開始制御を含んで構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
前記導管に少なくとも1つの手動による起動が可能な遮断バルブが設けられ、少なくとも1つの制御手段(65)が、前記導管(15)における流体の通過流れの開始に際して、少なくとも前記発電機(35)が前記制御手段(65)の動作にとって充分に大きな電力を供給するほどの流量の流体が前記導管(15)を流れるように構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記発電機(35)の前記電気エネルギーのうちの少なくとも一部による給電に適合された、前記少なくとも1つの制御手段(65)に対する閉ループ制御(55)によって特徴付けられる請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
前記流体の流量及び/又は圧力を測定する少なくとも1つのセンサ(70)を含んで構成され、その出力信号が前記閉ループ制御(55)に導入されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの制御手段(65)が電気制御式調圧バルブによって形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2011−530122(P2011−530122A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521465(P2011−521465)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005528
【国際公開番号】WO2010/015360
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(504197639)ベー/エー エアロスペース システムズ ゲー.エム.ベー.ハー. (3)
【Fターム(参考)】