説明

流体の特性を検出するための流量計

【課題】とりわけ、流体の体積流量および/または質量流量を測定できる幅広い測定領域において流量計を使用することができ、また、高い流速でも使用できる流量計を実現すること。
【解決手段】前記課題は、前記流体の少なくとも1つの第1の流れ特性を検出するための少なくとも1つの超音波センサ(114)と、前記流体の少なくとも1つの第2の流れ特性を検出するための少なくとも1つの有効圧センサ(116)とを有することを特徴とする、流量計によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の特性を検出するための流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの工学分野および自然科学分野では、所定の流速で、ないしは流速を制御して、流体をプロセスに供給したりプロセスから取り出さなければならない。こうするためにとりわけ、流体の体積流量または質量流量を測定するために構成された流量計を使用することができる。測定された流量に応じて、たとえば制御手段を実施することができる。重要な適用領域の1つに、自動車技術における空気量測定技術がある。しかし本発明は、この用途に限定されない。空気量測定では、たとえば内燃機関の吸気系において、燃焼工程に供給された吸入空気量を測定し、場合によっては、たとえばスロットルバルブ等の適切な制御によって吸入空気量を調整することができる。
【0003】
自動車製造業や他の技術分野ではかなり以前から、熱方式の空気質量測定の他に、吸気系内の空気量、とりわけ体積流量および/または質量流量を圧力方式で測定する手段が存在する。Robert Bosch 社の文献である『Sensoren im Kraftfahrzeug』(2001年)第96〜103頁に、とりわけいわゆるオリフィス板等の流量計の例が記載されている。別の流量計の例に、プラントルセンサまたはピトーセンサが存在する。このセンサはたとえば、飛行機の速度を求めるために飛行機において使用される。従来技術から公知である流量計の比較的新しい例に、ドイツのプッフハイム(Puchheim)の Systec Controls 社のいわゆる デルタフロー アニューバ流量計がある。たとえば Robert Bosch 社の文献『Sensoren im Kraftfahrzeug』(2007年)第86〜91頁に、別の空気流量計が記載されている。
【0004】
自動車において空気量を測定するためのセンサの多くが、いわゆるベルヌーイの定理にしたがって動作する。DE102007023163に、このようなセンサの例が記載されている。ベルヌーイの定理にしたがって動作する空気量計は基本的に、流管の流れ断面を局所的に妨害部材によって本来の断面Aからより小さい断面Aにまで絞るという基本的構成に基づいている。空気の体積流量または質量流量を測定するためには、この妨害部材より上流または下流において圧力pないしはpを測定し、この圧力から差圧を求める。こうするためには、絞られていない領域に第1の測定点を設け、絞られた領域に第2の測定点を設ける。測定された差圧Δpから解析または実験結果によって、たとえば以下の数式から、体積流量または質量流量を推定することができる:
Δp=Q・ρ・(1/A−1/A
【0005】
同式では、Qは空気ないしは流体の体積流量を表し、ρは密度を表し(ここでは、この密度は一定であると仮定する)、Aは、絞られた断面の断面積を表し、Aは、絞られていない断面の断面積を表す。体積流量を質量流量に換算したり、その逆に質量流量を体積流量に換算したり、結果の精度を改善するためにさらに、絶対圧または温度を測定し、この測定結果から流体の密度を推定することができる。しかし、とりわけ空気流が小さい場合や空気流量が大きく変動する場合には、ベルヌーイの定理にしたがって動作する装置や他の有効圧測定原理にしたがって動作する装置のダイナミクス誤差は著しく大きくなる。
【0006】
したがって小さい空気流には、所定の流量領域において非常に高い測定精度を保証する超音波測定方式を使用することが多い。この超音波流量計は、流体(気体、液体)の速度を音波によって測定する。このような流量測定装置は、音波送信器の機能も音波受信器の機能も統合した少なくとも1つのセンサから構成される。このような音波流量測定は、他の測定方式に対して複数の利点を有する。使用される流体のたとえば電気伝導度、密度、温度および粘度等である特性に十分に依存せずに、測定を行うことができる。機械的な可動部材が無いことにより、保守にかかる手間が小さくなり、断面の絞りによる圧力損失が発生しない。欠点は、流体の質量流量ないしは体積流量を十分な精度で測定できる領域が限られていることである。大きい流量領域をカバーし、かつ、測定領域全体において高ダイナミクスの流速の変動を検出できるようにするためには、個々の測定方式は、大きな流量領域または小さい流量領域のいずれかにおいて、高い測定精度を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE102007023163
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Robert Bosch 社、"Sensoren im Kraftfahrzeug"(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それゆえ、従来技術の欠点を少なくとも十分に回避できる流量計が望まれている。とりわけ、流体の体積流量および/または質量流量を測定できる幅広い測定領域において流量計を使用することができ、また、高い流速でも使用できるようにしなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、前記流体の少なくとも1つの第1の流れ特性を検出するための少なくとも1つの超音波センサと、前記流体の少なくとも1つの第2の流れ特性を検出するための少なくとも1つの有効圧センサとを有することを特徴とする、流量計によって解決される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】流れ主方向に対して平行に切断した、第1の実施例の流量計の断面図である。
【図2】流れ主方向に対して平行に切断した、第2の実施例の流量計の断面図である。
【図3】流れ主方向に対して垂直に切断した、第2の実施例の流量計の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明はとりわけ、流体の特性に依存しない別の測定原理を使用することにより、有効圧方式で動作する装置で生じる上記のダイナミクス誤差を回避するか、または少なくとも低減することができるという認識に基づいている。それゆえ、大きな流量領域を検出するためには、超音波測定方式および有効圧測定方式の少なくとも2つの測定原理が使用される。超音波測定方式はとりわけ、低い流量領域を検出するため、ひいてはとりわけ小さい流量を検出するために使用することができる。それに対して、有効圧方式はとりわけ高い流量領域に使用することができ、ひいては大きな流量に使用することができる。このことにより、たとえば塵埃、粒子、汚水や油分等の異物による汚染の影響を比較的受けにくい2つの測定方式を組み合わせ、熱式流量計だけでは実現できない測定領域を実現することができる。
【0013】
それゆえ本発明では、流管に流れる流体の少なくとも1つの特性を検出するための流量計を開示する。この少なくとも1つの特性はとりわけ、少なくとも1つの流れ特性である。流量計は少なくとも、流体の少なくとも1つの流れ特性を検出するための超音波センサを有する。流量計はさらに、流体の少なくとも1つの流れ特性を検出するための少なくとも1つの有効圧波センサを有する。
【0014】
流体の前記特性は基本的に、流体の任意の物理的特性および/または化学的特性および/または流れを含むことができる。流体の前記特性は、第1の流れ特性および/または第2の流れ特性を使用して求めることができる特性であり、たとえば前記特性は、第1の流れ特性であるか、または第2の流れ特性であるか、または該第1の流れ特性と第2の流れ特性との組み合わせとすることができる。とりわけ流体の特性は、該流体の少なくとも1つの流れ特性を含む。本発明では、流れ特性とは基本的に、流体の流れを何らかの手法で表す任意の特性を指し、たとえば前記流れ特性は、流体の流速、質量流量および体積流量である測定量のうち1つまたは複数を含むことができる。択一的または付加的に、前記流体の前記特性は、該流体のたとえば密度および/または温度等である特性を含むこともできる。上記および/または他の特性を任意に組み合わせることも可能である。前記流体は気体および/または液体であるか、または、両物質状態の混合物とすることができる。流体は、流管に流れるのに適した流体でなければならず、たとえばポンピング過程および/または吸入過程に適した流体でなければならない。
【0015】
流管としては基本的に、流体を外界にコンタクトさせることなく取り込むのに適した任意の空洞を使用することができる。流管は、閉じられた流管とするか、または部分的に開放された流管とすることができる。有利には流管は、少なくとも2つの箇所を相互に接続し、両箇所間に流体を流すように、細長く形成され、流管はすべての形状および/または断面をとることができ、たとえば円形、丸形または多角形の断面をとることができる。流管は直線形とすることができるが、湾曲部を有することもできる。流体が流管内において一箇所から別の箇所へ流れる場合、流体は有利には流れ主方向に移動する。流れ主方向とは、流体の局所的な流れ主方向を指し、たとえば測定箇所における流れ主方向を指す。この流れ主方向は自然に変化することがあり、たとえば流管の適切な湾曲部によって変化することができる。
【0016】
ここでは超音波センサとは、少なくとも1つの超音波変換器を有するセンサ素子を指し、有利には少なくとも2つの超音波変換器を有するセンサ素子を指す。さらに、超音波センサは別のエレメントを含むことができ、たとえば、超音波を反射させるための少なくとも1つの反射面を含むことができる。超音波変換器とは、超音波の送信および/または検出を行うように構成された音響電気変換素子を指す。超音波変換器の一例に、圧電変換素子がある。圧電変換素子を有する超音波センサの基本的構成自体は、従来技術から公知である。流量計はたとえば、流体の流れ主方向に対して平行な少なくとも1つの速度成分を有する超音波が超音波変換器相互間で送信されるように、相互に該流れ主方向に対して横方向に配置された超音波変換器を有することができ、たとえば超音波変換器は、流れ主方向に、または流れ主方向と逆方向に、超音波を流管内に斜めに放射および/または検出することができる。超音波は流体を通過し、たとえば少なくとも1つの反射面に当たることができる。この反射面は、流管内に取り付けることができる。択一的または付加的に、流管内側を超音波の反射面として使用することにより、超音波センサの少なくとも1つの反射面を流管自体とすることができる。超音波を用いて行われる流速測定の一例に、伝搬時間差測定がある。この測定方式では、流体は可能な限り均質でなければならず、流体に含まれる固体の割合を僅かにしなければならない。このことは、純粋な気体、純粋な液体および気体‐液体混合物に当てはまる。たとえば、少なくとも2つのセンサを流れ主方向に、異なる箇所に配置することができ、その際には、これらのセンサが流管の同じ側に配置されるか、または異なる側に配置されるかは重要ではない。というのも、超音波信号の音波はいかなる方向にも伝播できるからである。このことは、流れ主方向で伝播する1つの超音波変換器の信号が別の超音波変換器に到達するのは、下流に存在する超音波変換器の信号より速いことを意味する。というのも、この下流に存在する超音波変換器の超音波は、流れ主方向と逆方向に、より低速で伝播するからである。超音波は、流体が流れる方向と逆方向に伝搬するよりも、流体が流れる方向に伝搬する方が速い。伝搬時間は、連続的または断続的に測定することができる。それゆえ両超音波の伝搬時間差は、たとえば流体の平均流速に比例する。時間単位あたりの体積流量はたとえば、平均流速と流管の管断面積とを乗算して得られた積である。このことにより、超音波の伝搬時間測定によって直接、たとえば被測定物質を同定することもできる。たとえば水中の音波伝搬時間は、燃油中の音波伝搬時間より短い。この伝搬時間方式では、流速の計算は以下の数式を用いて行われる:
υ=((T−T)/T(L/2cosα)
同式では、
υは、流体の平均流速を表し、
は、流れと同じ方向に伝搬した超音波信号の伝搬時間を表し、
は、流れと逆方向に伝搬した超音波信号の伝搬時間を表し、
Lは、超音波経路の長さを表し、
αは、超音波信号と流れとの間の角度を表す。
【0017】
固体の割合がより高い流体にはたとえば、超音波測定をドップラー方式で行うことができる。このドップラー方式では、流体中の粒子の流速に起因する送信信号の周波数シフトを検出する。従来技術では上述のように、別の方式や、管システム内における超音波センサの別の配置も長い間知られている。
【0018】
流量計はさらに、少なくとも1つの有効圧センサも有する。この有効圧センサはたとえば、流管表面および/または流管内部に取り付けることができ、かつ/または、有効圧センサの全体または一部を流管に組み込むことができる。有効圧センサも、少なくとも1つの流れ特性を検出するように構成されている。この流れ特性を、以下では第2の流れ特性と称する。有効圧センサの基本的構成自体も従来技術から公知であり、たとえば上述の先行技術から公知である。本発明では有効圧センサとは、少なくとも1つの圧力を測定して流体の少なくとも1つの特性を検出するためのセンサ素子、および/または、流体の圧力を検出するように構成された少なくとも1つの圧力センサを使用して流体の少なくとも1つの特性を検出するためのセンサ素子を指す。有効圧センサは、静的および/または動的な測定方式で構成することができ、とりわけ有効圧センサは、流れ主方向および/または流れ主方向に対して横方向に相互にずらして配置された少なくとも2つの測定箇所において流体の静圧および/または動圧を検出するように構成することができ、たとえば、前記少なくとも2つの測定箇所における少なくとも2つの圧力を検出し、および/または、該少なくとも2つの測定箇所間の差圧を検出するように、少なくとも2つの圧力センサおよび/または少なくとも1つの差圧センサを設けることができる。
【0019】
とりわけ有効圧センサは、プラントルセンサ、ピトーセンサ、オリフィス板、ベンチュリ有効圧センサ、差圧センサから成る群から選択された少なくとも1つのセンサを含むことができる。とりわけ、有効圧センサは少なくとも1つの流れ絞り部材、すなわち、流体が流れる流管の断面を狭くするために設けられた少なくとも1つの部材を含むことができる。その際には、有効圧センサはたとえば、流管の流れ断面積がそれぞれ異なる、流管の複数の箇所における流体の少なくとも2つの圧力を検出することができる。流れ絞り部材はとりわけ、流管の流れ断面を狭くするために設けられた少なくとも1つの遮蔽部を含むことができ、たとえば円形または円環形である。前記遮蔽部はたとえば、少なくとも1つのオリフィス板を含むことができる。圧力測定のためのこのオリフィス板の基本的構成自体は、従来技術から公知である。
【0020】
1つの有利な実施形態の流量計では、超音波センサと有効圧センサとが流管内部または流管表面において、流れ主方向に関して実質的に同位置に配置される。超音波センサないしは有効圧センサが配置される位置の差は、流れ主方向での各センサの算術的な平均配置位置に対する差である。実質的に同位置とは有利には、有効圧センサが流れ主方向で、超音波センサから20nmを超えて離れていないことを意味する。たとえば、2つの超音波変換器の算術的な平均を、超音波センサの位置とすることができる。有効圧センサに関してはたとえば、少なくとも2つの圧力センサの配置位置の算術的な平均、少なくとも2つの圧力測定箇所の位置の算術的な平均、および/または、1つまたは複数の絶対圧計の位置と1つまたは複数の差圧計の位置との算術的な平均として、有効圧センサの位置を表すことができる。有利には、有効圧センサと超音波センサとの間の距離は、流体が流管内を伝搬する最小伝搬時間を基準として2msを上回らないようにして、両センサの測定値間の偏差が過度に大きくなるのを回避しなければならない。このことにより、前記超音波センサと前記有効圧センサとは流管方向に、完全または部分的にオーバーラップすることもできる。たとえば、超音波センサの1つの超音波変換器を有効圧センサより上流に配置し、かつ、該超音波センサの別の超音波変換器を該有効圧センサより下流に配置することができる。このことにより、両測定信号が流管内の同位置から到来し、センサの配置位置が異なることに起因して両測定信号間に不正確さが生じることがなくなる。このようにして、前記2種類のセンサの両信号を相互に相関付け、たとえば、有効圧センサによって求められた圧力値と超音波センサの伝搬時間測定値とを併用し、たとえば流体の密度および/または温度を求めることができる。
【0021】
本発明の流量計の一例に、流れ主方向に関して異なる位置に配置された少なくとも2つの超音波変換器を有する流量計がある。両超音波変換器は、前記有効圧センサに直接隣接して配置することができ、また、上述のように有効圧センサとオーバーラップするように配置することもできる。
【0022】
流量計は少なくとも2つのセンサの組み合わせによって、すなわち、少なくとも1つの超音波センサと少なくとも1つの有効圧センサとの組み合わせによって構成される。有効圧センサと超音波センサとを完全に別体とすることができ、また有利には、両センサは少なくとも1つの共用の構成要素を有することもできる。この構成要素はたとえばホルダであり、このホルダはたとえば、有効圧センサの1つまたは複数の機能エレメントと、超音波センサの1つまたは複数の機能エレメントとの双方を包含および/または支持する。上述の機能エレメントは有効圧センサでは、たとえば絶対圧測定のための開口である。さらにこのホルダは、有効圧センサの複数の部品を相互に結合し、かつ/または付加的に、超音波センサの機能エレメントを包含または支持することができる。択一的または付加的に、前記共用の構成要素はたとえば、超音波センサの超音波を反射するための反射面であるか、または該反射面を含むことができる。超音波センサではとりわけ、質量流量を求めるのに流体の絶対圧の検出結果を使用することができる。とりわけ、少なくとも1つの絶対圧センサを超音波センサの制御評価電子回路に直接組み込むか、または、超音波センサの制御評価電子回路に接続することができる。このことにより、2つの異なる測定方式に基づくセンサを省スペースで実現することができる。
【0023】
本発明の別の側面として、とりわけ先行の請求項のうちいずれか1項に記載の流量計を用いて、流管に流れる流体の少なくとも1つの特性を検出するための方法を開示する。この方法では、少なくとも1つの超音波センサによって流体の少なくとも1つの第1の流れ特性を検出し、少なくとも1つの有効圧センサによって該流体の少なくとも1つの第2の流れ特性を検出する。
【0024】
有利には、少なくとも1つの第1の値領域では、前記流体の特性を求めるために第1の流れ特性を使用し、少なくとも1つの第2の値領域では、前記流体の特性を求めるために第2の流れ特性を使用する。前記値領域はたとえば、第1の流れ特性の測定値の量または領域および/または第2の流れ特性の測定値の量または領域および/または両流れ特性から導出された値である。前記両値領域は相互に別個とすることができるが、少なくとも1つの移行領域において相互にオーバーラップすることもでき、たとえば、第1の値領域において前記移行領域外では第1の流れ特性のみを使用し、第2の値領域において該移行領域外では第2の流れ特性のみを使用し、該移行領域内では、該第1の流れ特性と該第2の流れ特性とを組み合わせた特性を使用することができる。たとえば、前記移行領域内では超音波センサの特性曲線と有効圧センサの特性曲線とを適合することもできる。このことはたとえば、1つまたは複数の較正値を適合することによって行うことができ、たとえば移行領域において、1つまたは複数の較正値を選択することにより、たとえばオフセットを適切に選択することにより、有効圧センサの特性曲線を超音波センサの特性曲線に適合するか、または逆に、超音波センサの特性曲線を有効圧センサの特性曲線に適合することができる。
【0025】
異なる検出メカニズムに基づく両センサを組み合わせることにより、流速のダイナミクスが大きい流体において、小さい流量領域でも大きい流量領域でも、流速を高精度で測定することができるようになる。たとえば、超音波センサを使用すると1m/s〜30m/sの領域において測定を行うことができ、有効圧センサを使用すると、たとえば20m/s〜60m/sの領域において測定を行うことができる。さらに、両センサの振舞いを表す特性曲線を求めることにより、異なる流速領域においてセンサの誤動作を識別できるようにすることもできる。
【実施例】
【0026】
以下の有利な実施例の説明から、本発明の他の詳細な構成および特徴を理解することができる。この有利な実施例は、図面に概略的に示されている。
【0027】
図1は、本発明の第1の実施例の流量計110を流体の流れ主方向112に対して平行に切断した断面図である。流量計110は、少なくとも1つの超音波センサ114と少なくとも1つの有効圧センサ116との組合せを含む。図中の実施例では、前記超音波センサ114は一例として2つの超音波変換器118を含み、これらの超音波変換器118はたとえばV字形構成で、流体が流れ主方向112に流れる流管122の壁に配置することができる。有効圧センサ116はたとえばベンチュリセンサ124とすることができ、この有効圧センサ116も流管122内に配置することができる。有効圧センサ116は、このベンチュリセンサ124の他に択一的または付加的に、別の種類の有効圧センサを含むことができ、たとえばオリフィス板を含むことができる。
【0028】
図1の実施例では、超音波変換器118,120をたとえば流れ主方向112に相互にずらして、すなわち第1の超音波変換器118を第2の超音波変換器120より上流に配置することができる。超音波変換器118,120は、超音波の送信および受信の双方を行えるように構成することができ、図1の構成では、同図において一例として超音波経路126によって示されているように、流れ主方向112の方向に超音波を発信することも、逆方向すなわち流れ主方向112と逆方向に超音波を発信することもできる。この流れ主方向112と逆方向の超音波経路は、図1では示されていない。超音波は反射面128に当たり、該反射面128で反射される。図中の実施例では一例として、流管122の管内壁130が反射面128としても設けられている。また、別の構成も可能であり、たとえば、流管122の相互に対向する側にそれぞれ超音波変換器118,120を配置し、超音波が反射しなくても一方の超音波変換器118,120から他方の超音波変換器に直接到達できるようにすることができる。さらに、反射面122と管内壁130とを別個にすることもできる。一般的には、少なくとも1つの反射面128を有する構成が有利であり、たとえば、超音波変換器118,120が流管122の同一の側に配置される構成が有利である。というのも、このような構成では通常、距離が長くなるため、流速をより高精度で検出できるからである。
【0029】
有効圧センサ116は有利には、超音波センサ114の直近に配置される。両センサの測定すなわち超音波センサ114の測定条件と有効圧センサ116の測定条件とが、確実に、可能な限り同等になるようにするために有利なのは、両センサ114および116の相互間の距離を可能な限り小さく抑えることである。
【0030】
図1に示された有効圧センサ116は、いわゆるベンチュリの原理に基づいているため、流れ断面が異なる流管122の領域において、少なくとも2つの取り出し箇所または圧力測定箇所132,134を有する。たとえば、流管122内に少なくとも1つの流れ絞り部材135を設けることができる。各圧力測定箇所132,134はたとえば、各管136,138が流管122に合流する各合流部に配置することができる。管136,138はたとえば流管122に対して横方向に配置することができ、該流管122に連通し、かつ/または相互間で連通することができる。圧力測定箇所132,134は個別に、少なくとも1つの絶対圧測定および/または少なくとも1つの差圧測定に使用するか、または双方ともに絶対圧測定および/または差圧測定に使用することができる。図1には一例として、絶対圧計140によって絶対圧測定を行うための取り出し管として管136が使用される構成を示す。図中の実施例では、択一的または付加的に、有効圧センサ116は少なくとも1つの差圧計142を有する。この差圧計142はたとえば、流れ断面が広い圧力測定箇所132と、上流に設けられ流れ断面がより小さい圧力測定箇所134との間の差圧測定を行うことができる。
【0031】
図2および図3に、第2の実施例の流量計110を流れ主方向112に対して平行に切断した断面(図2)と、流れ主方向112に対して垂直に切断した断面(図3)とを示す。図2に示された流量計110も、2つの超音波変換器118,120を含む超音波センサ114を有し、これらの超音波変換器118,120は流れ主方向112に相互にずれて、流管122の同一の側に配置されている。ここでは、超音波経路126は反射面128に当たる。この反射面128は、この実施例では有利には、流管122の管内壁130表面に配置されているのではなく、有利にはホルダ144の一部とされている。このホルダ144は有効圧センサ116の構成要素でもあり、かつ/または、有効圧センサ116の構成要素を支持することができる。有利には反射面128は、超音波変換器118,120から適切な距離で離れて、流管122内に設けられている。ホルダ144は反射面128と、有利には有効圧センサ116の構成部品とを結合する。
【0032】
たとえばこの実施例または別の実施例では、有効圧センサ116をプラントルセンサ146とし、および/またはプラントルセンサ146を含むことができる。そのためには、有効圧センサ116はたとえばこの実施例でも、少なくとも2つの圧力測定箇所132,134を有することができ、第1の圧力測定箇所134としてはたとえば、流れ主方向112と逆方向に開放された第1の管136をホルダ144に設けることができる。この第1の管136は、たとえば拡幅部分を有することができる。それゆえ、第1の圧力測定箇所132はたとえば、淀み圧測定箇所とすることができる。第2の圧力測定箇所134としては、第1の圧力測定箇所132より下流においてホルダ144の側部に設けられた別の開口を使用することができる。この別の開口はたとえば、ホルダ144の壁に設けられた第2の管138に合流する合流部とすることができる。ここでも、有効圧センサ116はたとえば少なくとも1つの絶対圧計140、および/または、管136および138の相互間の差圧を測定するための少なくとも1つの差圧計142を有することができる。前記絶対圧計140は、たとえば第2の管138に接続することができる。
【0033】
図1に示された実施例、図2および3に示された実施例、または本発明の別の実施例では、測定領域全体にわたって常に測定信号が得られるようにするために、前記少なくとも1つの超音波センサ114の測定領域と前記少なくとも1つの有効圧センサ116の測定領域とを組み合わせることができる。その際には上述のように、有効圧センサ116で発生する測定誤差は、通常は主に、差圧計142のゼロ点のドリフトに起因することを利用する。測定領域を組み合わせて値領域を決定することは、たとえば以下のように行うことができる。一例として流体として空気に基づいて、このことを以下で説明する。
【0034】
まず、たとえば空気質量を超音波センサ114(超音波流量計、UDMとも称する)によって求める:
(UDM)=D(UDM)ρ
上記式では、
m:空気質量
D:超音波流量計の流量測定値(較正済み)
ρ:流体の密度
密度ρはさらに、
ρ=pabs/R/T
によって定義される。
上記式において、
abs:絶対圧
R:気体定数
T:絶対温度
【0035】
この温度はたとえば、超音波の伝搬時間および/または付加的な温度センサを用いて求めることができる。
【0036】
有効圧センサ(WDS)116の場合には、流体質量はたとえば以下の式によって求められる:
(WDS)=C√((p+poffρ)
上記式において
C:較正定数
p:有効圧
off:オフセット
ρ:流体の密度
【0037】
個々の信号が異なって使用される複数の領域を定義することができる。以下のパラメータを使用することができる:
min:少なくとも1つの超音波センサ114によって検出可能な流体最小質量流量
:移行領域の開始点
:移行領域の終了点
max:少なくとも1つの超音波センサ114によって検出可能な流体最大質量流量
【0038】
両センサ方式を使用できるということは、mmin〜mの領域において超音波信号を使用できるということである。m〜mminの領域では有効圧センサ信号を使用することができ、m〜mの領域では、m(UDM)とm(WDS)とを同等に扱うことによってpoffを求めることができる。
【0039】
off値を求め、m〜mの領域に再び達するまで、m〜mmaxの領域内において使用することができる。このことにより、流量計110の連続的な特性曲線を求めることができる。poff値の妥当性検査を行うことにより、少なくとも1つの超音波センサ114ないしは少なくとも1つの有効圧センサ116の不具合状態を検出することができる。
【符号の説明】
【0040】
110 流量計
112 流体の流れ主方向
114 超音波センサ
116 有効圧センサ
118,120 超音波変換器
122 流管
124 ベンチュリセンサ
126 超音波経路
128 反射面
130 管内壁
132,134 圧力測定箇所
135 流れ絞り部材
136 絶対圧測定を行うための取り出し管
140 絶対圧計
142 差圧計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流管(122)に流れる流体の少なくとも1つの特性を検出するための流量計(110)であって、
前記流量計(110)は、前記流体の少なくとも1つの第1の流れ特性を検出するための少なくとも1つの超音波センサ(114)を有し、
前記流量計(110)はさらに、前記流体の少なくとも1つの第2の流れ特性を検出するための少なくとも1つの有効圧センサ(116)を有することを特徴とする、流量計。
【請求項2】
前記特性は、前記流体の流速、質量流量、体積流量、温度、密度から選択された特性である、請求項1記載の流量計。
【請求項3】
前記有効圧センサ(116)は、プラントルセンサ(146)、ピトーセンサ、オリフィス板、ベンチュリセンサ(124)、差圧センサ(142)から成る群から選択される、請求項1または2記載の流量計。
【請求項4】
前記有効圧センサ(116)は少なくとも1つの流れ絞り部材(135)を含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の流量計。
【請求項5】
前記超音波センサ(114)と前記有効圧センサ(116)とは、前記流体の流れ主方向(112)に関して、前記流管(122)内部または表面において実質的に同位置に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の流量計。
【請求項6】
前記流量計(110)は、前記流体の流れ主方向(112)に関して異なる位置に配置された少なくとも2つの超音波変換器(118,120)を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の流量計。
【請求項7】
前記有効圧センサ(116)と前記超音波センサ(114)とは、少なくとも1つの共用の構成要素を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の流量計。
【請求項8】
前記共用の構成要素は、前記超音波センサ(114)の超音波を反射するための反射面(128)を有する、請求項1から7までのいずれか1項記載の流量計。
【請求項9】
とりわけ請求項1から8までのいずれか1項に記載の流量計(110)を用いて、流管(122)に流れる流体の少なくとも1つの特性を検出するための方法であって、
少なくとも1つの超音波センサ(114)によって前記流体の少なくとも1つの第1の流れ特性を検出し、
少なくとも1つの有効圧センサ(116)によって該流体の少なくとも1つの第2の流れ特性を検出することを特徴とする方法。
【請求項10】
少なくとも1つの第1の値領域では、前記流体の特性を求めるために第1の流れ特性を使用し、少なくとも1つの第2の値領域では、前記流体の特性を求めるために第2の流れ特性を使用する、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−58237(P2012−58237A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193457(P2011−193457)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】