説明

流体の移動を制御するための染料組成物

【課題】互いの間のエネルギー移動を可能とするように設計されている複数の染料に基づいて組成比を制御するためのキット及び方法の提供。
【解決手段】第1の親和性基を有する第1の励起光によって励起されて発光を放射し得るか又は第2の染料にエネルギーを移動させ得る第1の染料と、(b)第2の親和性基を有する第2の励起光によって又は該第1の染料からのエネルギー移動によって、励起され得る第2の染料;を含んでいる、組成比を制御するためのキット。該第1の親和性基と該第2の親和性基が、互いに結合する親和性を有しており、該第1の親和性基が該第2の親和性基に結合したときに当該染料の間のエネルギー移動が可能となり、第1の励起光又は該第2の励起光で励起されたときに発光を放射し、該発光は、該第1の染料と該第2の染料の組成比についての尺度である;ように構成されていることを特徴とする、前記キット。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
染料は、数種類の成分をピペットで移す(pipetting)ことが必要とされるアッセイのセットアップに関して、制御手段として既に使用されている。これらの制御の概念は、1種類の成分の中にのみ含まれている染料及び別の成分との混合後にその二次的な色(secondary colour)を検出することに基づいている。
【0002】
特に、リアルタイムPCRシステムでは、信頼性があり且つ比較可能な定量化のためには、全ての反応成分の正確な混合物が必要とされるが、それは、試料物質の量、プライマー/プローブの量及びリアルタイムPCRに必要なマスターミックスの量が当該定量化の結果に特に影響を与えるからである。
【0003】
不活性染料を含んでいるPCRマスターミックスは、ピペット操作ミスを最小限にするために使用され、また、市販されている製品、例えば、Sigma Aldrich社製の「RedTaq」又はThermoScientific社製の「AbsoluteBlue」などを使用することができる(Yanek, M., BIOspektrum 13(5) (2007) 519-520)。あるいは、混合に先立って成分の構成要素(例えば、ポリメラーゼ)を標識することによって、ピペット操作を視覚的に制御することができる。例えば、Sigma Aldrich社製の「RedTaq」は、標識されたポリメラーゼを含んでいる。US 5,861,251には、染料を含んでいる凍結乾燥PCR試薬が開示されている。さらに、プローブ物質に視覚化のための染料を与えることも可能である(WO 2000/014505)。ROX及びROX/FAM FRET対などの蛍光染料は、校正標準として使用される(US 5,736,333)。
【0004】
現在、最新技術において知られている制御システムには、特定のアッセイのために混合される2種類以上の成分を体積制御するものは存在しない。特にリアルタイムPCRシステムに関しては、制御染料はリアルタイムPCRの検出染料が影響を受けないように最適化されなくてはならず、従って、制御染料の吸収は当該PCRをモニターするために使用される検出チャンネルと重複すべきではなく、また、制御染料は分離したチャンネルで検出されるべきである。このことは、2種類以上の制御染料を使用すべき場合、全ての制御染料に関してクロストークを回避するためにPCRをモニタリングするためのスペクトルウィンドウが低減されるので、より困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US 5,861,251
【特許文献2】WO 2000/014505
【特許文献3】US 5,736,333
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Yanek, M., BIOspektrum 13(5) (2007) 519-520
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アッセイのために混合される少なくとも2種類の成分についての体積の誤りを確認するための制御方法を含んでいるアッセイのセットアップのための閉鎖系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
(a) 第1の親和性基を有する第1の染料であって、第1の励起光によって励起されて発光を放射し得るか又は第2の染料にエネルギーを移動させ得る上記染料;
及び、
(b) 第2の親和性基を有する第2の染料であって、第2の励起光によって又は該第1の染料からのエネルギー移動によって、励起され得る上記染料;
を含んでいる、組成比を制御するためのキットであって、ここで、該キットは、該第1の染料と該第2の染料が、
該第1の親和性基と該第2の親和性基が、互いに結合する親和性を有しており、該第1の親和性基が該第2の親和性基に結合したときに当該染料の間のエネルギー移動が可能となる;
及び、
該第1の染料と該第2の染料の混合物が、該第1の励起光又は該第2の励起光で励起されたときに発光を放射し、該発光は、該第1の染料と該第2の染料の組成比についての尺度である;
ように構成されていることを特徴とする。
【0009】
語句「エネルギー移動」は、本発明の全体を通して、当業者には知られている全ての非放射型エネルギー移動を要約するために使用されている。そのようなエネルギー移動のよく知られている実施形態は、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)である。ここで、最初は電子的励起状態にあるドナー発色団が、アクセプター発色団(近接して存在している;典型的には、10nm未満)に、非放射型双極子双極子カップリングを介してエネルギーを移動させることができる。
【0010】
可能な別のエネルギー移動は、光誘起電子移動(PET)である。この過程において、電子は、励起蛍光染料の励起状態から受け取られるか、又は、励起蛍光染料の励起状態に供与される。その結果、ラジカルイオン対が形成され、このラジカルイオン対は、無放射性電荷再結合(radiationless charge recombination)を介して基底状態に戻る。
【0011】
使用される染料のタイプに応じて、該第1の親和性基と該第2の親和性基の結合は、本発明を通して、可逆的であり得るか又は不可逆的であり得る。
【0012】
本発明を通して、励起光で励起されたときに該染料混合物によって放射される発光は、その励起された染料自体の発光であり得るか、又は、当該励起光によって励起されていないが、最初に励起された染料からのエネルギー移動によって間接的に励起された別の染料の発光であり得る。
【0013】
用語「染料」は、全ての種類の光吸収分子を要約するために使用されており、従って、蛍光染料、非蛍光染料及び消光分子を包含する。
【0014】
消光分子は、蛍光によって励起されることが可能で且つエネルギーを例えば熱によって分配するので、蛍光染料の蛍光を消光することができる。非蛍光染料(「ダークドナー分子(dark donor molecules)」とも称される)は、慣習的な蛍光染料とは対照的に蛍光発光を実質的に伴わない染料である。
【0015】
さらに、蛍光発光に対する消光特性を有する芳香族構造又はヘテロ芳香族構造も、本発明に関して使用することができる。これらの分子構造は、蛍光染料からのエネルギーを光誘起電子移動(PET)過程を介して吸収することが可能である。ヘテロ芳香族構造についての例は、例えば、グアニン、デアザグアニン(実施例2を参照されたい)又はイソグアノシンなどの単純な分子構造であり、これらは、親和性基に付け加えられることも可能である。
【0016】
さらにまた、タンパク質中のトリプトファンなどのインドール誘導体又はデオキシリボシド誘導体として組み込まれているニトロインドールも、消光特性を有するよく知られた化合物である。さらに、2,4-ジニトロフェニルアニリン誘導体[これは、オリゴヌクレオチドのための標識化試薬(ホスホルアミデートとして)及びタンパク質標識化試薬(NHSエステルとして)として市販されている]のようなニトロアロメート(Nitroaromate)も、蛍光団を消光することができる。
【0017】
従って、本発明の別の態様は、
(a) 第1の親和性基を有する蛍光染料であって、第1の励起光によって励起されて芳香族構造又はヘテロ芳香族構造にエネルギーを移動させ得る第1の染料;
及び、
(b) 第2の親和性基を有する芳香族構造又はヘテロ芳香族構造であって、該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が該蛍光染料の蛍光発光を阻止するように、第1の染料からのエネルギー移動によって励起され得る上記芳香族構造又はヘテロ芳香族構造;
を含んでいる、組成比を制御するためのキットであって、ここで、該キットは、該第1の染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が、
該第1の親和性基と該第2の親和性基が、互いに結合する親和性を有しており、該第1の親和性基が該第2の親和性基に結合したときに当該染料と当該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造の間のエネルギー移動が可能となる;
及び、
該第1の染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造の混合物が、該第1の励起光で励起されたときに発光を放射し、該発光は、該第1の染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造の組成比についての尺度である;
ように構成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明を通して、本発明のキットの染料は、その後の反応のために混合されることが必要な成分に添加されることが可能であり、そして、この場合における組成比の制御は、当該成分の組成を対象とするものである。そのような成分は、例えば、試薬、バッファー、生物学的成分又は試料である。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、
(a) 第1の親和性基を有する第1の染料を含んでいる第1の成分であって、励起光で励起されて発光を放射し得るか又は別の成分にエネルギーを移動させ得る上記成分;
及び、
(b) 第2の親和性基を有する第2の染料を含んでいる第2の成分であって、発光で又は該第1の染料からのエネルギー移動によって、励起され得る上記成分;
を含んでいる、組成比を制御するためのキットであって、ここで、該キットは、該第1の成分と該第2の成分が所定の組成比で組み合わされることを特徴とし、
ここで、該組成比は、励起光によって励起されたときに該染料によって放射される発光を測定することを介して制御可能であり;及び、
ここで、該第1の親和性基及び該第2の親和性基は互いに結合するように設計されており、該第1の親和性基が該第2の親和性基に結合したときに当該染料の間のエネルギー移動が可能となる。
【0020】
本発明によるそのようなキットは、特定の製造プロセス又は分析アッセイを実施する前に混合されることが必要な数種類の成分を有している全ての種類のキットを要約している。従って、そのようなキットは、各々が特定の染料を含んでいる少なくとも2種類の成分を有しておりここで、該成分は、例えば、試薬、バッファー又は生物学的化合物である。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、
(a) 第1の親和性基を有する第1の染料であって、励起光で励起されて発光を放射し得るか又は別の成分にエネルギーを移動させ得る上記染料;
及び、
(b) 第2の親和性基を有する第2の染料であって、発光で又は該第1の染料からのエネルギー移動によって、励起され得る上記染料;
を含んでいる、組成比に依存する光を放射する染料組成物であって、ここで、該染料組成物は、該第1の染料と該第2の染料が、
該第1の親和性基と該第2の親和性基が、互いに結合する親和性を有しており、該第1の親和性基が該第2の親和性基に結合したときに当該染料の間のエネルギー移動が可能となる;
及び、
励起光で励起されたときに該染料組成物によって放射される発光が、該第1の染料と該第2の染料の組成比についての尺度である;
であるように提供されていることを特徴とする。
【0022】
本発明のさらに別の態様は、本発明によるキットを用いて2種類の成分の組成比を確認する方法であって、ここで、該方法は、
(a) 該2種類の成分を混合するステップであって、該第1の成分は、該第1の親和性基を有している該第1の染料を含んでおり、及び、該第2の成分は、該第2の親和性基を有している該第2の染料を含んでいる上記ステップ;
(b) 該第1の染料と該第2の染料が該親和性基を介して互いに結合していないような条件下で励起光で励起されたときの第1の発光測定を実施するステップ;
(c) 該第1の染料と該第2の染料が該親和性基を介して互いに結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第2の発光測定を実施するステップ;
及び、
(d) 該2種類の成分の組成比を確認するためにステップ(b)とステップ(c)の2回の発光測定を比較するステップ;
を含む。
【0023】
上記方法は、2種類の成分の混合に関して概説するものであり、当業者は、該方法をより多くの成分に対しても使用することが可能であるということを理解するであろう。例えば、第3の染料[ここで、該第3の染料は、第1の染料及び第2の染料と比較して異なった発光波長を有していることが必要である]を含んでいる第3の成分を使用することができる。4種類の成分の比率を確認することが求められている場合、第1の染料と第2の染料が互いに結合する親和性を有しているが第3の染料は第4の染料に結合する親和性のみを有しているような本発明による2つのキットを使用することが可能である。
【0024】
本発明による方法のこの実施形態をステップ(a)〜(d)の進行に沿って実施する場合、当該染料は、混合後、結合している状態にあることも必要であるし、同様に、結合していない状態にあることも必要である。従って、2種類のそれぞれの親和性基の結合は、可逆的でなければならない。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、本発明によるキットを用いて2種類の成分の組成比を確認する方法であって、ここで、該方法は、
(a) 2種類の成分を混合するステップであって、該第1の成分は、該第1の親和性基を有している該第1の染料を含んでおり、及び、該第2の成分は、該第2の親和性基を有している該第2の染料を含んでいる上記ステップ;
(b) 該第1の染料と該第2の染料が結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第1の発光測定を実施するステップであって、該第1の蛍光測定は、該第2の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第2の染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
(c) 該第1の染料と該第2の染料が結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第2の発光測定を実施するステップであって、該第2の蛍光測定は、該第1の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第2の染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
及び、
(d) 該2種類の成分の組成比を確認するためにステップ(b)とステップ(c)の2回の発光測定を比較するステップ;
を含む。
【0026】
本発明によるこの方法においては、両方の発光測定は、それらの親和性基を介して互いに結合している染料を用いて実施する。従って、ここでは、2種類のそれぞれの親和性基の結合が不可逆的であり得るということは可能であるが、必須ではない。
【0027】
上記で述べたように、染料の代わりに芳香族構造又はヘテロ芳香族構造も使用することが可能である。従って、本発明の別の態様は、本発明によるキットを用いて2種類の成分の組成比を確認する方法であって、ここで、該方法は、
(a) 2種類の成分を混合するステップであって、該第1の成分は、該第1の親和性基を有している蛍光染料を含んでおり、及び、該第2の成分は、該第2の親和性基を有している該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造を含んでいる上記ステップ;
(b) 該蛍光染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が該親和性基を介して互いに結合していないような条件下で励起光で励起されたときの第1の発光測定を実施するステップであって、該第1の発光測定は、該蛍光染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該蛍光染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
(c) 該蛍光染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が該親和性基を介して互いに結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第2の発光測定を実施するステップであって、該第2の発光測定は、該蛍光染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該蛍光染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
及び、
(d) 該2種類の成分の組成比を確認するためにステップ(b)とステップ(c)の2回の発光測定を比較するステップ;
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)非結合状態と結合状態での測定及び(b)両方とも結合状態での測定に基づいた本発明の種々の実施形態を示す図である。
【図2】2種類の成分の種々の組成に対する増幅曲線を示す図である。
【図3】2種類の成分の種々の組成に対する2種類の制御に基づいた実験性能を示す図である。
【図4】種々の消光分子の比較を示す図である。
【図5】非蛍光染料と蛍光染料を使用する実施形態における非蛍光染料の量の変動を示す図である。
【図6】非蛍光染料と蛍光染料を使用する実施形態における蛍光染料の量の変動を示す図である。
【図7】非蛍光染料と蛍光染料の親和性基としてDIG/抗-DIGを使用する本発明の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の一態様は、
(a) 第1の親和性基を有する第1の染料であって、第1の励起光によって励起されて発光を放射し得るか又は第2の染料にエネルギーを移動させ得る上記染料;
及び、
(b) 第2の親和性基を有する第2の染料であって、第2の励起光によって又は該第1の染料からのエネルギー移動によって、励起され得る上記染料;
を含んでいる、組成比を制御するためのキットであって、ここで、該キットは、該第1の染料と該第2の染料が、
該第1の親和性基と該第2の親和性基が、互いに結合する親和性を有しており、該第1の親和性基が該第2の親和性基に結合したときに当該染料の間のエネルギー移動が可能となる;
及び、
該第1の染料と該第2の染料の混合物が、該第1の励起光又は該第2の励起光で励起されたときに発光を放射し、該発光は、該第1の染料と該第2の染料の組成比についての尺度である;
ように構成されていることを特徴とする。
【0030】
以下において、本発明によるキットに適した多くの好ましい親和性基について記載する。図1に例示されているように、親和性基を有している染料は、全て、該染料が互いに該親和性基を介して直接結合するように設計されている。従って、本出願全体を通して、互いに対する親和性基の結合は、互いに対する直接的な又は特異的な結合として理解されなくてはならず、従って、第3の分子を介した親和性基の間接的な結合は、本発明には含まれない。
【0031】
本発明による好ましいキットは、該第1の親和性基がビオチン基であり且つ該第2の親和性基がストレプトアビジン基であるキットである。
【0032】
本発明による好ましい別のキットは、該第1の親和性基がジゴキシゲニン基であり且つ該第2の親和性基が抗ジゴキシゲニン抗体であるキットである。
【0033】
本発明によるさらに別の好ましいキットは、該第1の親和性基がレクチンであり且つ該第2の親和性基が糖であるキットである。
【0034】
本発明による別の好ましいキットは、該第1の親和性基が抗体であり且つ該第2の親和性基がハプテンであるキットである。
【0035】
本発明によるさらに別の好ましいキットは、該第1の親和性基が第1のオリゴヌクレオチドであり且つ該第2の親和性基が該第1のオリゴヌクレオチドに対して相補的な第2のオリゴヌクレオチドであるキットである。
【0036】
親和性基としてオリゴヌクレオチドを使用するのが好ましい。それは、当該溶液の温度をそれぞれのハイブリッドの融解温度よりも高く調節するか又は低く調節することによって、それら分子の結合状態と非結合状態を容易に切り替えることができるからである。
【0037】
本発明を通して、用語「オリゴヌクレオチド」は、DNA及びRNAを包含するように使用され、及び、さらにオリゴヌクレオチド類似体も包含するように使用されるが、その際、唯一の前提条件は、その類似体がお互いとの安定な二重鎖を形成することができるということである。そのようなオリゴヌクレオチド類似体は、種々の変更を含むことができる。
【0038】
1つの種類の類似体は、核酸塩基上に置換基を有している、天然ヌクレオチド[dA、dG、dC、dT、dU]の誘導体である。その例は、以下のものである:
5-置換ピリミジン類、例えば、5-メチル-dC、5-アミノアリル-dU若しくは-dC、5-(アミノエチル-3-アクリルイミド)-dU、5-プロピニル-dU若しくは-dC、5-ハロゲン化-dU及び-dC;
N4-置換シチジン類、例えば、N4-エチル-dC;
N-置換プリン類、例えば、N6-エチル-dA、N2-エチル-dG;
8-置換プリン類、例えば、8-[6-アミノ)-ヘキシ-1-イル]-8-アミノ-dG若しくは-dA、8-ハロゲノ-dA若しくは-dG、8-アルキル-dG若しくは-dA;又は、
2-置換-dA、例えば、2-アミノ-dA。
【0039】
1つの種類の類似体は、d-リボース部分上に置換基を有している、天然ヌクレオチド[dA、dG、dC、dT、dU]の誘導体である。その例は、以下のものである:
2'-メトキシ-、2'-フルオロ-、2'-メチルセレノ-dU、2'-アリルオキシ-、4'-メチル-dU、-dT;-dU、-dA、-dG。
【0040】
別の種類は、標準的な塩基[A、G、C、T、U]以外の核酸塩基(非標準)がデオキシリボース糖部分に結合している類似体、又は、標準的な塩基が糖類似体に結合している類似体、又は、それらの両方を組み合わせた類似体であり、ここで、標準的な塩基以外の核酸塩基は糖類似体に結合している。
【0041】
dリボースに結合している非標準塩基の例は、以下のものである:5-ニトロインドール-drib、3-ニトロピロール-drib、7-デアザ-dG及び-dA、-dI、-dX、7-デアザ-8-アザ-dG及び-dA、-dI、-dX、8-アザ-dA、-dG、-dI,-dX、dフォルマイシン、疑似-dU。疑似-イソ-dC、4-チオ-dT、6-チオ-dG、2-チオ-dT、イソ-dG、5-メチル-イソ-dC、5,6-ジヒドロ-5-アザ-dC、エテノ-dA、ピロロ-dC。
【0042】
糖類似体は、以下のものから選択される:キシロース、2',4'-架橋リボース、例えば、2'-O,4'-C メチレン(「LNA」として知られているオリゴマー)又は2'-O,4'-C エチレン(「ENA」として知られているオリゴマー)、L-2 デオキシリボース、ヘキシトール(「HNA」として知られているオリゴマー)、シクロヘキセン(「CeNA」として知られているオリゴマー)、アルトリトール(「ANA」として知られているオリゴマー)、C3'原子とC5'原子がシクロプロパン環に縮合しているエチレン架橋で連結されている三環式リボース類似体(「トリシクロDNA」として知られているオリゴマー)、グリセリン(「GNA」として知られているオリゴマー)、グルコピラノース(「Homo DNA」として知られているオリゴマー)、カルバリボース(carbaribose)(テトラヒドロフランサブユニットの代わりにシクロペンタンを有している)、及び、モルホリン(「モルホリノDNA」として知られているオリゴマー)。
【0043】
上記ヌクレオチド類似体は、さらに誘導体化することができる[例えば、7-プロパルギル-7-デアザ G、又は、5-アミノアリル-ヘキシトール-U、2'-フルオロ-d(L)-リボース]。
【0044】
さらなる種類の類似体は、ヌクレオシド間のリン酸架橋がホスホルチオエート-、メチルホスホネート-又はホスホルアミデートオリゴヌクレオチドにおけるように修飾されているオリゴヌクレオチドである。
【0045】
別の種類のオリゴヌクレオチドは、ペプチド結合を有する骨格を含んでいる。よく知られている例は、PNAである。PNAの骨格は、ペプチド結合で連結されたN-(2-アミノエチル)-グリシン繰り返し単位からなる。
【0046】
その後のPCR増幅のための成分の比率を確認するために本発明による染料混合物の比率に依存する光放射を使用する場合、親和性基としてL-ヌクレオチドを使用するのが特に好ましい。天然のヌクレオチドのD-立体配座の代わりに糖のL-立体配座を有しているL-ヌクレオチドも、それらのハイブリッド形成特性を提供するが、当該ポリメラーゼは、これらの分子をもはや認識しない。従って、そのようなL-ヌクレオチドも、PCR反応に対して潜在的に影響を及ぼすことなく親和性基として使用することができる。
【0047】
L-ヌクレオチドに関して上記したのと同じ直交効果(orthogonal effect)は、GNAs、ホモDNA及び直交する塩基対(orthogonal base pairs)を含んでいるオリゴヌクレオチド(例えば、イソdG及びイソdC)を用いて達成することができる。
【0048】
本発明によるさらに好ましいキットは、該オリゴヌクレオチドがL-ヌクレオチドで構成されているキットである。
【0049】
本発明を通して、染料の数種類の組合せを使用することが可能である。以下において、本発明の範囲を限定することなく、幾つかの適切な組合せについて記載する。該第1の染料(I)と該第2の染料(II)の種々の組合せが図1に例示されており、ここで、図1aは、非結合状態(左)及び結合状態(右)において該染料を必要とする実施形態を含んでおり、図1bは、結合状態においてのみ該染料を必要とする実施形態を含んでいる。
【0050】
本発明による好ましいキットは、該第1の染料が蛍光染料であり且つ該第2の染料が消光分子である[ここで、該消光分子は、該消光分子が該蛍光染料の蛍光発光を阻止するように、該親和性基が結合したときに該蛍光染料からのエネルギー移動によって励起され得る]キットである。
【0051】
この消光実施形態の特別な場合は、いわゆる、自己-消光のセットアップであり、該蛍光染料と該消光分子は同一の分子であって、一方の蛍光染料がもう一方によって消光される。この自己-消光は、例えば染料の濃度を特定の限界を超えて上昇させることにより、当該染料分子を極めて接近させることによって誘発される染料-染料相互作用を介して起こる。該蛍光染料の大部分[特に、ローダミン類、ボラジアザインデセン類「Bodipy-染料」として知られている)、シアニン類、フルオレセイン類又はオキサジン類]は、この自己-消光特性を提供する。
【0052】
従って、本発明による別の好ましいキットは、該蛍光染料と該消光分子が同一の分子であるキットである。
【0053】
本発明のこの実施形態では、該蛍光染料は適切な波長(Ex λI)を有する励起光で励起され、及び、該蛍光染料の蛍光発光(Em λI)をモニターする(図1a/ii)。該蛍光染料と該消光分子が互いに結合していない場合、蛍光発光(Em λI)が検出され、該発光の強度が蛍光染料の量についての尺度である。該蛍光染料と該消光分子が互いに結合している場合、該蛍光発光は該消光分子によって消光される。従って、該蛍光発光(Em λI)は低減され、その強度の低減が消光分子の量についての尺度である。
【0054】
本発明による別の好ましいキットは、該第1の染料が第1の蛍光染料であり且つ該第2の染料が第2の蛍光染料である[ここで、該第2の蛍光染料は該第1の蛍光染料よりも長い最大励起波長を有し、及び、該第2の蛍光染料は、該第2の蛍光染料が該第1の蛍光染料の波長とは異なる波長を有する蛍光を放射するように、当該親和性基が結合したときに該第1の蛍光染料からのエネルギー移動によって励起され得る]キットである。
【0055】
この実施形態では、異なった励起波長を有する2種類の蛍光染料が使用される。結合した親和性基の場合、第1の蛍光染料の特異的な励起波長を使用して(Ex λI、第2の蛍光染料の直接的な励起は殆どない)、第2の蛍光染料の特異的な蛍光発光(Em λII)が検出可能となるように第2の蛍光染料へのエネルギー移動が起こる(図1a/i)。他方、該第2の蛍光染料に特異的な蛍光発光(Em λII)は、親和性基が非結合状態では、Ex λIで励起されたときに検出可能とならないが、Em λIIのみは、励起波長としてEx λIIを使用して検出可能となる。従って、該蛍光発光は、第1の蛍光染料と第2の蛍光染料の比率についての尺度である。
【0056】
本発明によるさらに別の好ましいキットは、該第1の染料が非蛍光染料であり且つ該第2の染料が蛍光染料である[ここで、該蛍光染料は、該蛍光染料が蛍光を放射するように、当該親和性基が結合したときに該非蛍光染料からのエネルギー移動によって励起され得る]キットである。
【0057】
この実施形態は、先に記載した2種類の蛍光染料を用いた実施形態に類似しているが、ここでは、該非蛍光染料はその特異的な励起波長(Ex λI)で励起されたときにそれ自体は特異的な蛍光発光を実質的に放射しない。用語「非蛍光染料」は、本発明を通して、US 2007/0077588における記載と同様に使用される。即ち、非蛍光染料は、エネルギーの大部分を蛍光によって放射する慣習的な蛍光染料とは対照的に実質的に蛍光発光しない染料である。親和性基が結合している場合にのみ、該第1の非蛍光染料がその特異的な励起波長(Ex λI、該第2の蛍光染料は直接的には殆ど励起されない)を使用して特異的に励起されたときに該第2の蛍光染料へのエネルギー移動が起こって第2の蛍光染料の特異的な蛍光発光(Em λII、図1a/iii)を放射すれば、該第2の蛍光染料の特異的な蛍光発光(Em λII)を検出することが可能である。親和性基が結合していない場合、Ex λIで励起されたときに該第2の蛍光染料に特異的な蛍光発光は検出可能とならないが、Em λIIのみは、励起波長としてEx λIIを使用して検出可能となる。従って、該蛍光発光は、非蛍光染料と蛍光染料の比率についての尺度である。そのような非蛍光染料も、ダークドナー分子として特定され得る。
【0058】
先に述べたように、本発明のキットの染料は、その後の反応のために混合されることが必要な成分に添加されることが可能であり、そして、この場合における組成比の制御は、当該反応成分の組成を対象とする。従って、該反応成分は、本発明によるキットの一部分であり得る。
【0059】
本発明による好ましいキットは、さらに第1の反応成分を含んでいる。
【0060】
該反応成分と当該キットの一部分ではない試料の組成比を制御するために当該キットの染料を使用するためには、1種類の染料を該試料に添加することが必要であり、もう一方の染料は該反応成分内に存在していることが必要である。本発明を通して、染料を含んでいる反応成分は、少なくとも2種類の異なった方法で提供することができる。
【0061】
本発明によるさらに好ましいキットでは、該第1の反応成分は該第1の染料を含んでいる。
【0062】
本発明による別のさらに好ましいキットでは、該第1の染料は、該第1の反応成分を使用する前に該第1の反応成分に添加することができる。
【0063】
本発明による別の好ましいキットは、第2の反応成分もさらに含んでおり、その第2の反応成分は、場合により該第2の染料を含んでいてもよい。
【0064】
当業者は、染料と反応成分を含んでいる多くの異なったキットが本発明の範囲内にあることを理解するであろう。以下では、それらのキットのうちの幾つかについて、例として概説する。
【0065】
本発明による好ましいキットは、PCRキット[ここで、該第1の反応成分は該第1の染料を含んでいるマスターミックスであり、該第2の反応成分は試料に添加される該第2の染料を含んでいるバッファー溶液であり、該試料は増幅すべき対象を含んでいる]である。あるいは、該第1の反応成分又は第2の反応成分は、該PCRに必要な検出ミックスであることができる。
【0066】
本発明による好ましい別のキットは、試料調製キット[ここで、該第1の反応成分は該第1の染料を含んでいる溶解/結合バッファーであり、該第2の反応成分は該第2の染料を含んでいる磁気ビーズ溶液である]である。あるいは、該第1の反応成分又は第2の反応成分は、試料溶液に添加される該第2の染料を含んでいるバッファー溶液である。
【0067】
本発明による別の好ましいキットは、イムノアッセイキット[ここで、該第1の反応成分は該第1の染料を含んでいる特異的抗体であり、該第2の反応成分は該第2の染料を含んでいる検出用の抗体コンジュゲートである]である。あるいは、該第1の反応成分又は第2の反応成分は、試料溶液に添加される該第2の染料を含んでいるバッファー溶液である。
【0068】
先に述べたように、特定の分子構造(例えば、芳香族構造又はヘテロ芳香族構造)も、それらが蛍光発光に対する消光特性を有している限り、本発明のための消光化合物として使用することができる(実施例2を参照されたい)。
【0069】
従って、本発明の別の実施形態は、
(a) 第1の親和性基を有する蛍光染料であって、第1の励起光によって励起されて芳香族構造又はヘテロ芳香族構造にエネルギーを移動させ得る第1の染料;
及び、
(b) 第2の親和性基を有する芳香族構造又はヘテロ芳香族構造であって、該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が該蛍光染料の蛍光発光を阻止するように、該第1の染料からのエネルギー移動によって励起され得る上記芳香族構造又はヘテロ芳香族構造;
を含んでいる、組成比を制御するためのキットであって、ここで、該キットは、該第1の染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が、
該第1の親和性基と該第2の親和性基が、互いに結合する親和性を有しており、該第1の親和性基が該第2の親和性基に結合したときに当該染料と当該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造の間のエネルギー移動が可能となる;
及び、
該第1の染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造の混合物が、該第1の励起光で励起されたときに発光を放射し、該発光は、該第1の染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造の組成比についての尺度である;
ように構成されていることを特徴とする。
【0070】
本発明による好ましいキットは、該第1の親和性基が第1のオリゴヌクレオチドであり且つ該第2の親和性基が該第1のオリゴヌクレオチドに対して相補的な第2のオリゴヌクレオチドであるキットである。
【0071】
本発明による別の好ましいキットは、該オリゴヌクレオチドがL-ヌクレオチドで構成されているキットである。
【0072】
本発明によるさらに別の好ましいキットは、該ヘテロ芳香族構造がグアニン、デアザグアニン、イソグアニン又は7-デアザイソグアニンを含んでいる構造であるキットである。本発明によるさらに好ましいキットは、該ヘテロ芳香族構造が核酸塩基としてグアニン又は7-デアザグアニンを有しているヌクレオチドであるキットである。本発明によるさらに好ましいキットは、2つ以上のヌクレオチドが合してホモオリゴマーオリゴヌクレオチド[例えば、(dG)3(オリゴヌクレオチド配列に関連して、「GGG」としても記載されている)又は(7-デアザ dG)3]になっているキットである。あるいは、ニトロインドールデオキシリボシド(よく知られている普遍的な塩基)又はそのホモオリゴマーを消光化合物として使用することができる。
【0073】
本発明のさらに別の態様は、本発明によるキットを用いて2種類の成分の組成比を確認する方法であって、ここで、該方法は、
(a) 該2種類の成分を混合するステップであって、該第1の成分は、該第1の親和性基を有している該第1の染料を含んでおり、及び、該第2の成分は、該第2の親和性基を有している該第2の染料を含んでいる上記ステップ;
(b) 該第1の染料と該第2の染料が該親和性基を介して互いに結合していないような条件下で励起光で励起されたときの第1の発光測定を実施するステップ;
(c) 該第1の染料と該第2の染料が該親和性基を介して互いに結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第2の発光測定を実施するステップ;
及び、
(d) 該2種類の成分の組成比を確認するためにステップ(b)とステップ(c)の2回の発光測定を比較するステップ;
を含む。
【0074】
本発明による2種類の成分の組成比を確認する方法の上記実施形態を実施するためには、結合している状態及び結合していない状態において、2種類の染料を用いて発光を測定することが必要である。該方法のステップを上記ステップ(a)〜(d)の進行に沿って実施する場合、当該2種類の親和性基の結合が可逆的であるということが必要である。使用される親和性基に応じて、当業者は、当該結合を許容する手順又は阻止する手順を理解するであろう。
【0075】
本発明のキットについての実施形態に関連して先に述べたように、該親和性基は、全て、該染料がそれらの親和性基の特異的な結合を介して互いに直接的に結合するように設計されている(図1を参照されたい)。さらに、当業者は、本発明の方法を実施するためには該親和性基の互いに対するこの特異的な結合が必要であるということを理解するであろう。それは、該親和性基の互いに対する該特異的な結合が無ければ、該染料の特定の部分が、組成比の制御のための測定にもはや利用できないように、当該成分の別の構成要素に結合可能であり、これによって、間違った結果が生まれるからである。従って、本発明の親和性基は、当該成分の別の構成要素に介入することなく、互いに対する特異的な結合のみが生じるように設計されている。従って、当業者は、正しい条件が満たされる場合には該第1の染料と該第2の染料が該親和性基を介して互いに特異的に結合しなければならないということ理解するであろう。本発明による別の好ましい方法では、ステップ(b)の該第1の発光測定は、該第1の親和性基と該第2の親和性基の間の結合が阻止されるような構成パラメータで実施する。
【0076】
本発明を通して、調整可能な構成パラメータは、例えば、温度、pH又は組成物のモル濃度である。親和性基としてオリゴヌクレオチドを使用する好ましい実施形態では、当該結合は、それぞれのハイブリッドの融解温度よりも高く又は低くなるように該組成物の温度を調節することによって誘発することができる。
【0077】
あるいは、上記ステップ(a)〜(d)の進行は、両方の成分を混合する前に第1の発光測定が実施されるように、変更することができる。この実施形態は、不可逆的な結合を有する親和性基も使用することが可能であるという利点を有する。
【0078】
本発明による好ましい方法では、ステップ(b)の該第1の発光測定は、ステップ(a)における当該2種類の成分の混合に先立って、該第1の成分を用いて実施する。
【0079】
本発明に関して使用される染料に応じて、励起波長及び発光波長の数種類の異なった組合せを使用することが可能である。
【0080】
本発明によるさらに別の好ましい方法では、ステップ(b)の該第1の発光測定は、該第1の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第1の染料の発光強度を測定して実施する。
【0081】
この第1の発光測定は、第1の染料のみを存在させて実施することが可能であるか、又は、両方の染料を結合していない状態で存在させて実施することが可能である。非蛍光染料を使用する実施形態に関しては、励起されたときに検出可能な発光強度は存在しない。
【0082】
本発明によるさらに好ましい方法では、該第1の染料が非蛍光染料である場合、該第1の染料の発光強度は測定不可能である。
【0083】
あるいは、該第1の発光測定は、両方の染料が結合していない状態で存在している場合、該第2の染料に対して特異的な励起波長及び発光波長を用いて実施することが可能である。
【0084】
本発明による好ましい方法は、ステップ(b)の該第1の発光測定が、該第2の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第2の染料の発光強度を測定して実施されるような方法である。
【0085】
さらに、両方の染料が結合していない状態で存在している場合、該第1の発光測定は、該第1の染料に対して特異的な励起波長と該第2の染料に対して特異的な発光波長を用いて実施することも可能である。
【0086】
該第1の発光測定に応じて、該第2の発光測定は、好ましくは、両方の測定において同じ発光波長が測定されるように適合させる。
【0087】
本発明による別の好ましい方法は、ステップ(c)の該第2の発光測定が、該第1の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第2の染料の発光強度を測定して実施されるような方法である。
【0088】
本発明によるさらに別の好ましい方法は、ステップ(c)の該第2の発光測定が、該第2の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第2の染料の発光強度を測定して実施されるような方法である。
【0089】
従って、該第2の発光測定が該第2の染料に対して特異的な波長に基づく場合、該第1の発光測定も該第2の染料に対して特異的な同じ波長に基づくことが好ましい。この実施形態における染料の組合せは、例えば、染料/染料の組合せ(図1a/iを参照されたい)又は非蛍光染料/染料の組合せ(図1a/iiiを参照されたい)である。
【0090】
本発明によるさらに別の好ましい方法は、ステップ(c)の該第2の発光測定が、該第1の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第1の染料の発光強度を測定して実施されるような方法である。
【0091】
従って、該第1の発光測定が該第1の染料に対して特異的な励起波長に基づく場合、該第2の発光測定も該第1の染料に対して特異的な同じ励起波長に基づくことが好ましい。この実施形態における染料の組合せは、例えば、染料/消光剤の組合せ(図1a/iiを参照されたい)である。
【0092】
本発明のさらに別の態様は、本発明によるキットを用いて2種類の成分の組成比を確認する方法であって、ここで、該方法は、
(a) 該2種類の成分を混合するステップであって、該第1の成分は、該第1の親和性基を有している該第1の染料を含んでおり、及び、該第2の成分は、該第2の親和性基を有している該第2の染料を含んでいる上記ステップ;
(b) 該第1の染料と該第2の染料が結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第1の発光測定を実施するステップであって、該第1の蛍光測定は、該第2の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第2の染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
(c) 該第1の染料と該第2の染料が結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第2の発光測定を実施するステップであって、該第2の蛍光測定は、該第1の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第2の染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
及び、
(d) 該2種類の成分の組成比を確認するためにステップ(b)とステップ(c)の2回の発光測定を比較するステップ;
を含む。
【0093】
本発明によるキットを用いて2種類の成分の組成比を確認する方法のこの実施形態では、両方の発光測定は、親和性基が結合した状態で実施する(図1bを参照されたい)。該エネルギー移動は一方向においてのみ起こるので、結合している状態においてさえ、該染料の一方を残りのものから独立して測定することが可能である。
【0094】
本発明による好ましい方法では、該第1の親和性基を有している該第1の染料と該第2の親和性基を有している該第2の染料の間の該結合は、不可逆的である。
【0095】
該染料は両方の発光測定について結合している状態にあるので、当該2種類の親和性基の間の結合が不可逆的であることは、可能であるが、必須ではない。
【0096】
本発明のさらに別の態様は、本発明によるキットを用いて2種類の成分の組成比を確認する方法であって、ここで、該方法は、
(a) 該2種類の成分を混合するステップであって、該第1の成分は、該第1の親和性基を有している該蛍光染料を含んでおり、及び、該第2の成分は、該第2の親和性基を有している該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造を含んでいる上記ステップ;
(b) 該蛍光染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が該親和性基を介して互いに結合していないような条件下で励起光で励起されたときの第1の発光測定を実施するステップであって、該第1の発光測定は、該蛍光染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該蛍光染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
(c) 該蛍光染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が該親和性基を介して互いに結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第2の発光測定を実施するステップであって、該第2の発光測定は、該蛍光染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該蛍光染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
及び、
(d) 該2種類の成分の組成比を確認するためにステップ(b)とステップ(c)の2回の発光測定を比較するステップ;
を含む。
【0097】
本発明による好ましい方法は、ステップ(b)の該第1の発光測定がステップ(a)における該2種類の成分の混合に先立って該第1の成分を用いて実施されるような方法である。
【0098】
本発明による別の好ましい方法は、ステップ(b)の該第1の発光測定が該第1の親和性基と該第2の親和性基の間の結合が阻止されるような構成パラメータで実施されるような方法である。
【実施例】
【0099】
実施例1
2種類の制御成分を含んでいる2成分溶液を用いたPCRセットアップ
成分混合物
(A) 以下のものからなる2倍濃縮マスターミックス
・ 「RealTime ready DNA Master, Probes」[リアルタイムPCR用の試薬混合物(Roche Applied Science, cat no. 05502381001);これは、4μMの5'-末端が長波長蛍光染料(JA286, Roche Applied Science;最大励起波長 686nm, 最大発光波長 703nm)で末端標識されている配列番号3で示されるオリゴヌクレオチドを含んでいる];
【化1】

【0100】
・ 1ng/μLのヒトcDNA(qPCR Human Reference cDNA, Clontech, cat. no. 639654)。
【0101】
(B) 以下の成分を含んでいるヒトcDNA由来GAPDH遺伝子に対して特異的な2倍濃縮検出ミックス
・ 各1μMの配列番号1及び配列番号2で示されるヒトGAPDHプライマー;
・ 0.8μMのヒトGAPDH UPLプローブ(Universal Probe Library, Probe #60, Roche Applied Science, cat. no. 04688589001);
・ 4μMの3'-末端が非蛍光消光剤「Dabsyl」(Roche Applied Science, WO 2007/059816, 市販されているDabsyl CPGを用いて合成したもの)で末端標識されている配列番号4で示されるオリゴヌクレオチド。
【0102】
配列番号3と配列番号4で示される2種類のオリゴヌクレオチドは、相補的である。
【0103】
マルチウェルPCRプレートのセットアップ
制御測定(control measurement)において反応混合物の2成分溶液の種々の比率の効果を実証するために、マスターミックスAと検出ミックスBの種々の組合せを、Nanodrop Express液体ハンドリングロボット[Innovadyne, Part No.12043(Fluidics Module)及びPart No.11245(Stage Module)]を使用して、1536-ウェルPCRプレート(Roche Applied Science, cat. no.05358639001)の中に分配した。
【表1】

【0104】
各組合せは、1536ウェルプレートの96の位置に分配した(これは技術的反復である)。
【0105】
PCRプロトコル及び制御測定
LightCycler 1536装置上で、提供されている解析ソフトウェア(Roche Applied Science)を用いて、リアルタイム増幅及びピペット操作制御測定(pipetting control measurement)を実施した。
【0106】
リアルタイムPCR
フィルター組合せ「465(励起)/510(発光)」を用いて、増幅を実施した。
【表2】

【0107】
制御測定
フィルター組合せ「618(励起)/660(発光)」を用いて、2回の単一獲得を行った。
【表3】

【0108】
反応プレートの各ウェルに対して、高温獲得と低温獲得の比率を計算した。
【0109】
結果
2成分溶液のうちの一方の50%を減らした部分を用いても、増幅曲線はまだ評価可能であったが、そのPCR性能は低下し始めた(図2を参照されたい)。除外された成分を用いた場合、結果はネガティブであった。
【0110】
制御測定の比率は、成分が不足していることを明瞭に示した。2成分溶液のうちの1つの成分を減らすにつれて、計算される比率は減少した(図3を参照されたい)。該比率についてカットオフ(この実験に関しては、例えば、「2」という値)を設定することによって、無効な結果をもたらす模擬ピペット操作ミスを施した全てのウェルは、該カットオフよりも低い比率を示すであろう。そして、それら全てのウェルは、結果表中に印を付けることができる。当該成分の反応容積は減じられているが割り当ては正しい場合、PCRの結果及び制御比は、いずれも影響を受けなかった。
【0111】
実施例2
第2の制御成分としての種々の消光分子の使用
さまざまな染料又は消光分子を使用する上記制御概念の性能を実証するために、種々の利用可能な消光剤について、蛍光シグナルにおける温度依存性変化を示した。
【0112】
以下のものからなる反応混合物
・ 「RealTime ready DNA Master, Probes」[Roche Applied Science, cat no. 05502381001;これは、2μMの5'-末端が長波長蛍光染料(JA286, Roche Applied Science;最大励起波長 686nm, 最大発光波長 703nm)で末端標識されている配列番号3で示されるオリゴヌクレオチドを含んでいる;実施例1を参照されたい];
・ 2μMの3'-末端が以下の代替的な消光剤のうちの1種類で末端標識されている配列番号4で示されるオリゴヌクレオチド:
・ Dabsyl
・ Dabcyl
・ BHQ-2
・ 3×付加的なdG
・ 3×デアザdG
・ JA286 (自己消光用染料)
・ 無消光剤対照。
【0113】
プロトコル
7種類の混合物のそれぞれの10μLを384-ウェルPCRプレート(Roche Applied Science, cat. no.04729749001)の中にピペットで移し、LightCycler 480装置(Roche Applied Science, cat. no.05015243001)内で上昇する温度勾配を用いて蛍光を測定した。
【0114】
フィルター組合せ 618(励起)/660(発光)。
【表4】

【0115】
結果
試験した全ての消光剤で、オリゴヌクレオチドの融解温度を超え、第1の染料成分が第2の消光剤成分に結合しなくなったとき、蛍光の実質的な増大が観察された(図4を参照されたい)。かくして、これらの消光剤は全て、結合状態及び非結合状態において種々の温度で2回の測定を行う制御概念に適していると思われる。
【0116】
実施例3
第2の制御成分としての非蛍光染料の使用
この方法においては、制御測定は、一定の温度で同じ蛍光検出波長で、しかし、2種類の異なった励起波長を用いて行う。第1の成分中の染料は、直接的な励起で測定することが可能である。第2の成分の非蛍光染料(US 2007/0077588を参照されたい)が当該親和性基を介して第1の染料に結合している場合、この組合せは、第1の染料は直接的に励起されることのない短い波長で該非蛍光染料を励起させて測定する。しかしながら、励起された非蛍光染料から近接している第1の染料へのエネルギー移動に起因して、第1の染料の蛍光発光が生じる。
【0117】
成分混合物
(A) 以下のものからなる2倍濃縮成分A
・ 「RealTime ready DNA Master, Probes」[リアルタイムPCR用の試薬混合物(Roche Applied Science, cat no. 05502381001);これは、4μMの5'-末端が長波長蛍光染料(JA286, Roche Applied Science;最大励起波長 686nm, 最大発光波長 703nm)で末端標識されている配列番号3で示されるオリゴヌクレオチドを含んでいる;実施例1を参照されたい]。
【0118】
(B) 以下のものを含んでいる2倍濃縮成分B
・ 4μMの3'-末端が非蛍光染料(4',5'-ジメトキシ-5-カルボキシフルオレセイン(5-DmF))で末端標識されている配列番号4で示されるオリゴヌクレオチド。
【0119】
配列番号3と配列番号4で示される2種類のオリゴヌクレオチドは、相補的である。
【0120】
マルチウェルPCRプレートのセットアップ
制御測定において反応混合物の2成分溶液の種々の量の効果を実証するために、種々の量の成分A及び成分Bを384-ウェルPCRプレート(Roche Applied Science, cat. no.04729749001)のウェルの中にピペットで移した。
【表5】

【0121】
各組合せは、1536ウェルプレートの96の位置に分配した(これは技術的反復である)。
【0122】
プロトコル
一定温度で、LightCycler 480装置(Roche Applied Science, cat. no.05015243001)中で、蛍光を測定した。
【0123】
フィルター組合せ 618(励起)/660(発光)、及び、498/660。
【表6】

【0124】
結果
第1の染料(618/660)の直接的な励起からのシグナルは種々の量の成分Aとの相関関係を示しており、非蛍光染料(498/660)を介した励起からのシグナルは一定量の成分Aの存在下における成分Bの部分との相関関係を示している(図5及び図6を参照されたい)。
【0125】
実施例4
2種類の成分について親和性基としての「dig/抗-dig」の使用
さまざまな親和性基を使用する上記制御概念の性能を実証するために、染料JA286及び非蛍光染料(実施例3を参照されたい)についての親和性基としてジゴキシゲニン(DIG)及び抗-ジゴキシゲニン抗体(抗-DIG)を使用した。測定するために、該溶液を非蛍光染料の吸収波長で励起させ、アクセプタ染料の発光波長で検出した。
【0126】
成分混合物
(A) 以下のものを含んでいる2倍濃縮成分A
・ 10mM Tris(pH8.3)と3mM MgCl2の中の4μMのDIG[これは、長波長蛍光染料JA286(Roche Applied Science;最大励起波長 686nm, 最大発光波長 703 nm;実施例1を参照されたい)で標識されている]。
【0127】
(B) 以下のものを含んでいる2倍濃縮成分B
・ 10mM Tris(pH8.3)と3mM MgCl2の中の4μMの抗-DIG抗体(Roche Applied Science)[これは、非蛍光染料(Roche Applied Science)で標識されている]。
【0128】
マルチウェルPCRプレートのセットアップ
制御測定において2成分溶液のうちの一方が不足している効果を実証するために、種々の量の成分A及び成分Bを384-ウェルPCRプレート(Roche Applied Science, cat. no.04729749001)のウェルの中にピペットで移した。
【表7】

【0129】
各組合せは、384ウェルプレートの10の位置に分配した(これは技術的反復である)。
【0130】
プロトコル
一定温度で、LightCycler 480装置(Roche Applied Science, cat. no.05015243001)中で、蛍光を測定した。
【0131】
フィルター組合せ 498(励起)/660(発光)。
【表8】

【0132】
結果
該混合物中に2種類の成分が存在している場合、励起されたドナーからアクセプタ染料までのエネルギー移動に起因して、蛍光シグナルを測定することができる。この蛍光シグナルは、当該2種類の成分のうちの一方が除外されている場合に測定され得るバックグラウンドシグナルよりも有意に高い(図7を参照されたい)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 第1の親和性基を有する第1の染料であって、第1の励起光によって励起されて発光を放射し得るか又は第2の染料にエネルギーを移動させ得る上記染料;
及び、
(b) 第2の親和性基を有する第2の染料であって、第2の励起光によって又は該第1の染料からのエネルギー移動によって、励起され得る上記染料;
を含んでいる、組成比を制御するためのキットであって、
該第1の染料と該第2の染料が、
該第1の親和性基と該第2の親和性基が、互いに結合する親和性を有しており、該第1の親和性基が該第2の親和性基に結合したときに当該染料の間のエネルギー移動が可能となる;
及び、
該第1の染料と該第2の染料の混合物が、該第1の励起光又は該第2の励起光で励起されたときに発光を放射し、該発光は、該第1の染料と該第2の染料の組成比についての尺度である;
ように構成されていることを特徴とする、前記キット。
【請求項2】
前記第1の親和性基が第1のオリゴヌクレオチドであり且つ前記第2の親和性基が該第1のオリゴヌクレオチドに対して相補的な第2のオリゴヌクレオチドである、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記第1の染料が蛍光染料であり且つ前記第2の染料が消光分子であり、ここで、該消光分子は、該消光分子が該蛍光染料の蛍光発光を阻止するように、該親和性基が結合したときに該蛍光染料からのエネルギー移動によって励起され得る、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
前記蛍光染料と前記消光分子が同一の分子である、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記第1の染料が第1の蛍光染料であり且つ前記第2の染料が第2の蛍光染料であり、ここで、該第2の蛍光染料は該第1の蛍光染料よりも長い最大励起波長を有し、及び、該第2の蛍光染料は、該第2の蛍光染料が該第1の蛍光染料の波長とは異なる波長を有する蛍光を放射するように、当該親和性基が結合したときに該第1の蛍光染料からのエネルギー移動によって励起され得る、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項6】
前記第1の染料が非蛍光染料であり且つ前記第2の染料が蛍光染料であり、ここで、該蛍光染料は、該蛍光染料が蛍光を放射するように、当該親和性基が結合したときに該非蛍光染料からのエネルギー移動によって励起され得る、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項7】
さらに第1の反応成分を含んでいる、請求項1〜6に記載のキット。
【請求項8】
(a) 第1の親和性基を有する蛍光染料であって、第1の励起光によって励起されて芳香族構造又はヘテロ芳香族構造にエネルギーを移動させ得る第1の染料;
及び、
(b) 第2の親和性基を有する芳香族構造又はヘテロ芳香族構造であって、該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が該蛍光染料の蛍光発光を阻止するように、該第1の染料からのエネルギー移動によって励起され得る上記芳香族構造又はヘテロ芳香族構造;
を含んでいる、組成比を制御するためのキットであって、
該第1の染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が、
該第1の親和性基と該第2の親和性基が、互いに結合する親和性を有しており、該第1の親和性基が該第2の親和性基に結合したときに当該染料と当該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造の間のエネルギー移動が可能となる;
及び、
該第1の染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造の混合物が、該第1の励起光で励起されたときに発光を放射し、該発光は、該第1の染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造の組成比についての尺度である;
ように構成されていることを特徴とする、前記キット。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のキットを用いて2種類の成分の組成比を確認する方法であって、ここで、該方法が、
(a) 該2種類の成分を混合するステップであって、該第1の成分は、該第1の親和性基を有している該第1の染料を含んでおり、及び、該第2の成分は、該第2の親和性基を有している該第2の染料を含んでいる上記ステップ;
(b) 該第1の染料と該第2の染料が該親和性基を介して互いに結合していないような条件下で励起光で励起されたときの第1の発光測定を実施するステップ;
(c) 該第1の染料と該第2の染料が該親和性基を介して互いに結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第2の発光測定を実施するステップ;
及び、
(d) 該2種類の成分の組成比を確認するためにステップ(b)とステップ(c)の2回の発光測定を比較するステップ;
を含んでいる、前記方法。
【請求項10】
ステップ(b)の前記第1の発光測定を、ステップ(a)における前記2種類の成分の混合に先立って、前記第1の成分を用いて実施する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(b)の前記第1の発光測定を、前記第1の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第1の染料の発光強度を測定して実施する、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(b)の前記第1の発光測定を、前記第2の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第2の染料の発光強度を測定して実施する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(c)の前記第2の発光測定を、前記第1の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ前記第2の染料の発光強度を測定して実施する、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(c)の前記第2の発光測定を、前記第1の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第1の染料の発光強度を測定して実施する、請求項9〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
請求項5〜7のいずれか1項に記載のキットを用いて2種類の成分の組成比を確認する方法であって、ここで、該方法が、
(a) 該2種類の成分を混合するステップであって、該第1の成分は、該第1の親和性基を有している該第1の染料を含んでおり、及び、該第2の成分は、該第2の親和性基を有している該第2の染料を含んでいる上記ステップ;
(b) 該第1の染料と該第2の染料が結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第1の発光測定を実施するステップであって、該第1の蛍光測定は、該第2の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第2の染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
(c) 該第1の染料と該第2の染料が結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第2の発光測定を実施するステップであって、該第2の蛍光測定は、該第1の染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該第2の染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;及び、
(d) 該2種類の成分の組成比を確認するためにステップ(b)とステップ(c)の2回の発光測定を比較するステップ;
を含んでいる、前記方法。
【請求項16】
前記第1の親和性基を有している前記第1の染料と前記第2の親和性基を有している前記第2の染料の間の前記結合が不可逆的である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項8に記載のキットを用いて2種類の成分の組成比を確認する方法であって、ここで、該方法が、
(a) 該2種類の成分を混合するステップであって、該第1の成分は、該第1の親和性基を有している該蛍光染料を含んでおり、及び、該第2の成分は、該第2の親和性基を有している該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造を含んでいる上記ステップ;
(b) 該蛍光染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が該親和性基を介して互いに結合していないような条件下で励起光で励起されたときの第1の発光測定を実施するステップであって、該第1の発光測定は、該蛍光染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該蛍光染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
(c) 該蛍光染料と該芳香族構造又はヘテロ芳香族構造が該親和性基を介して互いに結合しているような条件下で励起光で励起されたときの第2の発光測定を実施するステップであって、該第2の発光測定は、該蛍光染料に対して特異的な励起波長を適用し且つ該蛍光染料の発光強度を測定して実施する上記ステップ;
及び、
(d) 該2種類の成分の組成比を確認するためにステップ(b)とステップ(c)の2回の発光測定を比較するステップ;
を含んでいる、前記方法。
【請求項18】
ステップ(b)の前記第1の発光測定を、ステップ(a)における前記2種類の成分の混合に先立って、前記第1の成分を用いて実施する、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−252790(P2010−252790A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−89441(P2010−89441)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】