説明

流体を混合及び交換するための装置及び方法

本発明は、第一のチャンバ(2)及び第一のチャンバに接する第二のチャンバ(4)を有する、流体を混合及び交換するための装置であって、その際、該第一のチャンバ(2)は、少なくとも一つの第一の流体(F)及び第二の流体(G)が、混合流体の流れ方向で貫流できる、静的混合要素(6)を有する混合チャンバであり、そして、該第二のチャンバ(4)は、該第二の流体(G)が貫流できる流体供給チャンバ又は流体排出チャンバであり、その際、前記第一のチャンバ(2)の容積部と前記第二のチャンバ(4)の容積部との間の境界領域の少なくとも一部に、前記第一の流体(F)の分子又は分子塊は透過させるが、前記第二の流体(G)の分子又は分子塊は透過させる半透膜(7)が配置されている装置であって、前記膜(7)が、前記流体(F)の二つの内の少なくとも一方である分子又は分子塊に対し、低い親和力を有する材料からなる、又は該材料でコーティングされていることを特徴とし、及び/又は前記半透膜(7)が、多数の穴を有する支持壁(6)上にぴんと張られた弾性膜であることを特徴とすると装置及び方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を混合及び交換するための、特に液体にガス処理または液体から脱気するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体のガス処理または脱気のために数多くの装置が知られている。これらの装置ではたいてい、できるだけ短時間で大量の気体を液体中にまたは液体から輸送できるように、作用部分である液相と気相の界面が大きい。
【0003】
液体のガス処理または脱気ならびにろ過のための装置も知られており、これらの装置では気相と液相の間に、気体は透過させるが、液体は透過させない膜が配置されている。
【0004】
このような装置は、例えば欧州特許第0226788B1号明細書(特許文献1)に開示されている。この装置は、気体流と液体流との間の内壁に半透膜を含んでいる。特に、液体に気泡のないガス処理するための半透膜にも言及しており、このために半透膜は、混入させるべき気体媒体に対して透過性である。しかしながらこの場合、膜表面では液体中に境界層が形成されるので、半透膜を通って液体中に侵入する気体は、きわめて非効率的にしか液体によって運び去られないという問題が生じる。この境界層は、事実上、膜表面で停滞している。液体による膜または膜孔の濡れ及び浸透により、このような停滞した境界層の形成が助長される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0226788B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、第一の流体と第二の流体との間の半透膜における物質交換を向上させることに基づく。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は第一の態様に基づき、第一のチャンバ(2)及び第一のチャンバに接する第二のチャンバ(4)を有する、流体を混合及び交換するための装置であって、その際、該第一のチャンバ(2)は、少なくとも一つの第一の流体(F)及び第二の流体(G)が、混合流体の流れ方向で貫流できる、静的混合要素(6)を有する混合チャンバであり、そして、該第二のチャンバ(4)は、該第二の流体(G)が貫流できる流体供給チャンバ又は流体排出チャンバであり、その際、前記第一のチャンバ(2)の容積部と前記第二のチャンバ(4)の容積部との間の境界領域の少なくとも一部に、前記第一の流体(F)の分子又は分子塊は透過させないが、前記第二の流体(G)の分子又は分子塊は透過させる半透膜(7)が配置されている装置であって、前記膜(7)が、前記流体(F)の二つの内の少なくとも一方である分子又は分子塊に対し、低い親和力を有する材料からなる、又は該材料でコーティングされることを特徴とする装置を提供する。
【0008】
第一の態様によれば、両方の流体の一方によって膜表面で停滞する境界層の形成が妨げられる。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、第二の態様に従い、第一のチャンバ及び第一のチャンバに接する第二のチャンバを有する、流体を混合及び交換するための装置であって、該第一のチャンバは、少なくとも一つの第一の流体及び第二の流体が、混合流体の流れ方向で貫流できる、静的混合要素を有する混合チャンバであり、そして該第二のチャンバは、第二の流体が貫流できる流体供給チャンバ又は流体排出チャンバであり、そして前記第一のチャンバの容積部と第二のチャンバの容積部との間の境界領域の少なくとも一部に、前記第一の流体の分子又は分子塊は透過させないが、前記第二の流体の分子又は分子塊は透過させる半透膜が配置されている装置であって、前記半透膜が、多数の穴を設けられた支持壁上にぴんと張られた弾性膜であることを特徴とする装置を提供する。
【0010】
第二の態様によれば、両方の流体の一方を脈動的に加圧することで膜の両側の間で脈動的に変動する圧力差を生み出すことにより、両方の流体の一方により膜表面で停滞する境界層の形成を同様に妨げることができる。
【0011】
好ましくは、第一の態様と第二の態様による処置が組み合わされる、つまり膜が、流体の二つのうちの少なくとも一方である分子又は分子塊に対し、低い親和力を有する材料からなるか、又はその材料でコーティングされており、かつ半透膜は、多数の穴を有する支持壁上にぴんと張られた弾性膜である。
【0012】
半透膜は、疎水性(耐水性)の膜であることができる。この場合、例えば水のような極性の液体による膜の濡れまたは浸透は妨げられる。
【0013】
半透膜は、疎油性(耐油性)の膜でもあり得る。この場合、例えば油のような非極性の液体による膜の濡れまたは浸透が妨げられる。
【0014】
半透膜は、疎油性かつ疎水性(耐油性かつ耐水性)の膜であることが好ましい。この場合、例えば油のような非極性の液体及び水による膜の濡れまたは浸透が妨げられる。
【0015】
本発明による装置の気体透過膜は、気体分子、例えばO、N、COを透過させるポリマー膜であることが好ましく、このポリマー膜は、多孔質の支持材料上に塗布されており、かつ支持材料と結合していることが好ましい。その際、気体透過膜の効果的な孔サイズは0.1nm〜10nmの範囲内にあることが好ましく、これに対し支持材料の効果的な孔サイズははるかに大きくてよい。
【0016】
気体透過膜用の材料として、好ましくは以下のポリマーの1種が使用される。すなわちセルロースアセテート(CA)、セルロースナイトレート(CN)、セルロースエステル(CE)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)である。
【0017】
気体透過膜の厚さは、約1μm〜300μm、好ましくは10μm〜200μmである。
【0018】
気体透過膜を安定化させるための支持材料は、例えばポリエステルから成る不織布材料もしくはテキスタイル材料、または別の多孔質材料であることが可能で、この支持材料の効果的な孔サイズは、気体透過膜の効果的な孔サイズより何倍も大きい。
【0019】
支持壁は、円形の穴及び/又はスリット状の穴を備えることができる。一方では穴径もしくはスリット幅を利用して、及びぴんと張りわたされた弾性半透膜の張力を利用して、前述の脈動により、穴開口部を覆ってぴんと張りわたされた膜領域のフラッタリングを達成することができる。これにより、膜での物質輸送量を上昇させることができ、そして膜の堆積物を膜から取り除くことができる。これに関し、低周波の脈動(Pulsieren)を、高周波の振動(超音波)により補助することができる。
【0020】
第一のチャンバは、装置内で、連続的な(非断続的な)混合チャンバ容積部を画定し、そして、前記第二のチャンバが前記装置内で、前記流体供給チャンバ又は流体排出チャンバの部分容積部をそれぞれ有する別々の(互いに分離された)部分チャンバによって形成されており、その際、該部分チャンバが、前記装置の上流側で流体供給収集管中へ通じており、該装置の下流側で流体排出収集管中へ通じている。
【0021】
好ましくは、第二のチャンバの部分チャンバ自体が、前記第一のチャンバの混合流体の流れ方向に対して横向きに延びる横断流路であり、該横断流路の流路壁が、多数の穴が設けられた支持壁、並びに該支持壁上にぴんと張られた半透膜としての弾性膜を有する。これらの横断流路は、静的混合チャンバの障害物/難所でもあり、第二の流体を供給(例えばガス処理)または第二の流体を排出(例えば脱気)するための第二の流体用の分配器でもある。
【0022】
相互に離隔している横断流路には円形または多角形の流路断面が設けられていることが好ましく、その際、これら横断流路は好ましくは互いに平行に延びている。
【0023】
横断流路の収納密度を最適化するためには、第一の多数の横断流路に第一の流路断面積を設けること、及び第二の多数の横断流路に第二の流路断面積を設けることが好ましく、その際、第一の多数の横断流路と第二の多数の横断流路の横断流路は、第一のチャンバ内に均一に分散して配置されていることが好ましい。この場合、1/10〜5/10の範囲内の第二の流路断面積と第一の流路断面積の比率を使用することが有利である。
【0024】
特に有利な一実施形態では、可変の圧力を生成し得る圧力源が、第一のチャンバもしくは第二のチャンバと、流体的に連結されている。この圧力源は律動的な変動(Pulsationen)を可能にし、これは、ぴんと張りわたされた弾性膜で覆われた穴の領域での弾性膜の“フラッタリング”を生じさせ、これにより、第一の流体中へ第二の流体を供給(例えばガス処理)または第一の流体から第二の流体を排出(例えば脱気)するための、第二の流体の膜の通り抜けが容易になる。
【0025】
横断流路が、それぞれの第一の端部の領域内で第一の支持体(例えば第一の壁板)に固定されており、かつこの支持体を通り抜けて延びており、第一の支持体と横断流路が共に装置の第一のアセンブリを構成していることが有用である。さらに、第一のアセンブリの横断流路が、それぞれの第二の端部の領域内で第二の支持体(例えば第二の壁板)内の開口部を通り抜けて延びており、第二の支持体が第一のチャンバのさらなる壁と共に装置の第二のアセンブリを構成している場合が有用である。これにより、保守(洗浄、膜交換)のための装置の解体及び組立てを迅速に行うことができる。
【0026】
横断流路が第一のチャンバの静的混合要素であることが好ましく、つまりこの装置は静的混合機であり、この静的混合機の偏向要素は、中空であり、かつ本発明による(半透)膜を介して混合チャンバと(部分的に)連通している。
【0027】
本発明は、上述の装置を使用した、流体を混合及び交換するための方法も提供しており、その際、第一の流体及び第二の流体は第一のチャンバ(混合チャンバ)を通って搬送され、第二の流体は第二のチャンバを通って搬送される。
【0028】
本方法は、液体にガス処理するために使用することが可能であり、その際、第一のチャンバを通して液体−気体混合物が導かれ、第二のチャンバを通して気体が導かれ、この気体の圧力は、第一のチャンバ内の液体−気体混合物の圧力よりも大きい。
【0029】
本方法は、液体を脱気するために使用することも可能であり、その際、第一のチャンバを通して液体−気体混合物が導かれ、第二のチャンバを通して気体が導かれ、この気体の圧力は、第一のチャンバ内の液体−気体混合物の圧力よりも小さい。
【0030】
ガス処理または脱気の最中に、第一のチャンバ内の圧力または第二のチャンバ内の圧力を律動的に変動させることが好ましい。その際、本質的には二種類の運転モードがあり、その運転モードによって穴の開いた支持壁上にぴんと張りわたされた弾性半透膜をパルス(Pulsen)によりそらせる、またはフラッタリングさせる。
【0031】
ガス処理の第一の変形形態によれば、膜は、支持壁の穴の領域内でのみ、支持壁に対して垂直にそらされる。膜の「局所的な」フラッタリング/振動であるこのモードは、高い膜張力及び第一のチャンバを完全に満たしている液体の高い粘度によって促進される。
【0032】
ガス処理の第二の変形形態によれば、膜は、支持壁のうちの穴を含む領域全体にわたって、支持壁に対して垂直にそらされる。膜の“大域的な”フラッタリング/振動であるこのモードは、低い膜張力、液体の低い粘度によって、また第一のチャンバが部分的にしか満たされていない場合に促進される。
【0033】
穴の開いた補強面に対して垂直で、脈動的な膜運動により、第一のチャンバ内の液体のガス処理または脱気が促進されるだけでなく、さらに第一のチャンバ内を流れる液体に衝撃が伝達される。気体を案内する第二のチャンバは区分することもでき、つまり部分チャンバもしくは横断流路の第一の部分が相互に連通しており、部分チャンバもしくは横断流路の第一の部分から気密に分離されたもう1つの部分が相互に連通している。第二のチャンバは、複数のこのような部分に区分することができる。この場合、第二のチャンバのそれぞれの部分を、互いに時間をずらして律動的に変動(gepulst)させることができ、これにより第一のチャンバ内の液体の流動挙動に影響を及ぼすことができる。
【0034】
本方法では、疎水性の膜を備えた装置の使用が特に有利であり、この場合の液体は、水中に溶解された、水中に乳化された、または水中に懸濁された物質を含んでいる。これにより例えば、水中に溶解された糖分子を含む水性甘味材料をマイクロエアレーションすることができる。ここでは特に、砂糖衣のマイクロエアレーションを挙げられる。
【0035】
本方法では、疎油性の膜を備えた装置の使用も特に有利であり、この場合の液体は、脂中もしくは油中に溶解された、脂中もしくは油中に乳化された、または脂中もしくは油中に懸濁された物質を含んでいる。これにより例えば、脂中もしくは油中に懸濁された砂糖粒子及び例えばカカオ粒子を含む脂ベース/油ベースの甘味材料をマイクロエアレーション及びマイクロデエアレーションすることができる。ここでは特に、チョコレートのマイクロエアレーションまたはマイクロデエアレーションを挙げておく。
【0036】
本発明のさらなる利点、特徴、及び適用可能性は、これに限定されるわけではない例示的実施形態の、図面に基づく以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明による装置の第一の例示的実施形態を示す、装置の一部の断面図である。
【図2】本発明による装置の第一の例示的実施形態を示す、装置の断面図である。
【図3】本発明による装置の第二の例示的実施形態を示す、装置の断面図である。
【図4】図3の細部Cの拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1では、本発明による装置の第一の例示的実施形態が、装置の一部の断面図として示されている。図1は、流体を混合及び交換するための、特に液体Fに気体Gによってガス処理または脱気するための装置の部分図を示している。断面平面(図平面)は、第一のチャンバ2内の液体Fの主要もしくは優勢な流れ方向に平行に延びている。この流れ方向は、矢印P1を付した曲がりくねった太線により示されている。装置の一部分だけが示されている。第一のチャンバ2を横断して延びている部分チャンバもしくは横断流路4は、(図示されていない)穴を備えた管状の壁6により画定されている。穴の開いた管状の壁6を覆って、気体Gを透過させ、液体Fは透過させない弾性膜7がぴんと張りわたされている。液体Fにガス処理する場合の気体Gの流れ方向が、穴の開いた各々の管6にそれぞれ12本の矢印P2で示されている。ここで示した装置は脱気にも使用することができる。脱気の場合は、矢印P2の方向が逆になる。
【0039】
実際には、流れ方向P1に沿って、図示した部分の上流及び下流で、ならびに流れ方向P1を横切って、図示した部分の左側及び右側に、さらなる部分チャンバもしくは横断流路2を配置することができる。
【0040】
第一のチャンバ2のハウジング及び横断流路4の管は、金属、特に特殊鋼もしくは陽極酸化処理されたアルミニウムから、またはポリマー、特にポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、もしくはポリカーボネートからなるものであることができる。
【0041】
気体透過膜(別個に図示してはいない)は、気体分子、例えばO、N、COを透過させるポリマー膜であり、このポリマー膜は、多孔質の支持材料(別個に図示してはいない)上に塗布されており、かつ支持材料と結合されている。気体透過膜の効果的な孔サイズは0.1nm〜10nmの範囲内にあり、これに対し支持材料の効果的な孔サイズははるかに大きい。支持材料の“孔”のサイズは、膜の効果的な孔サイズの何倍もの大きさであることが有用であり、好ましくは0.1μm〜10μmの範囲内にある。これにより、大きな分子、例えば食品材料の脂分子もしくは糖分子、または塊状集積(クラスター形成)しやすい水分子は膜を通過できず、その一方で小さく、塊状集積しない気体分子は膜7を容易に通過できることが保証される。
【0042】
気体透過膜用の材料としては、以下のポリマーの一種を使用することができる。すなわちセルロースアセテート(CA)、セルロースナイトレート(CN)、セルロースエステル(CE)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)である。気体透過膜材料として特に好ましいのは、PS(可撥性の表面)及びPU(高い拡張性)である。気体透過膜の厚さは約100μmである。
【0043】
気体透過膜を安定化させるための支持材料としては、例えばポリエステルから成る不織布材料もしくはテキスタイル材料、または別の多孔質の、ただし弾性伸長可能な材料を使用することが可能であり、この支持材料の効果的な孔サイズは、気体だけを透過させる膜の効果的な孔サイズよりはるかに大きい。
【0044】
弾性膜7はチューブ状の形成物であり、伸長させた状態で、横断流路4の管状の壁6上にぴんと張りわたすことができる。
【0045】
液体Fに気体Gによってガス処理及び脱気するための本質的な運転パラメータは、膜7の効果的な孔サイズ、液体を案内する第一のチャンバ2と気体を案内する第二のチャンバ4との圧力差、液体Fの流速、液体Fの温度/粘度、横断流路4の断面形状(例えば円形、レンズ形、多角形、特に三角形もしくは六角形)、圧力差の振幅、ならびに気体Gおよび/もしくは液体Fのパルスの周波数である。
【0046】
水中に溶解された、水中に乳化された、または水中に懸濁された粒子を含む液体、あるいは脂中もしくは油中に溶解された、脂中もしくは油中に乳化された、または脂中もしくは油中に懸濁された粒子を含む液体としての液体のガス処理または脱気では、運転温度は約10℃〜約100℃になる。この温度では、前述のポリマー材料は安定しており、したがってこのような液体中でのガス処理及び/又は脱気に適している。
【0047】
図2では、本発明による装置の第一の例示的実施形態が、装置の断面図として示されている。図2は、流体を混合及び交換するための、特に液体Fに気体Gによってガス処理または脱気するための装置の、液体Fの優勢な流れ方向に平行に走る断面を示している。断面平面(図平面)は、第一のチャンバ2内の液体Fの主要もしくは優勢な流れ方向に平行に走っている。
【0048】
装置は、上流側の端部に、第一のチャンバ2内に通じる入口11を有している。装置は、下流側の端部に、第一のチャンバ2から外へ通じる出口12を有している。この流れ方向は、矢印P1を付した曲がりくねった太線により示されている。第一のチャンバ2を横断し、液体Fの流れ方向を横切って延びている部分チャンバもしくは横断流路4は、管状の壁6により画定されている。この壁6は、交互する明領域と暗領域により概略的に図示されており、この明領域が、暗く図示した壁の比較的大きな穴を示している。穴の開いた管状の壁6を覆って、気体Gを透過させ、液体Fは透過させない弾性膜7が張り渡されている。横断流路4の内部を流れる気体Gは、壁6及びそれを覆ってぴんと張りわたされた膜7を通り抜けて、チャンバ2内を流れている液体F中に達する。
【0049】
図3では、本発明による装置の第二の例示的実施形態が、装置の断面図として示されている。図3は、流体を混合及び交換するための、特に液体Fに気体Gによってガス処理または脱気するための装置の、液体Fの優勢な流れ方向に平行に走る断面を示している。図2の要素に対応するか図2の要素と同一の図3の要素には、図2と同じ符号を付けているが、ダッシュが付いている。断面平面(図平面)は、第一のチャンバ2’内の液体Fの主要もしくは優勢な流れ方向に平行に走っている。
【0050】
装置は、上流側の端部に、第一のチャンバ2’内に通じる入口11’を有している。装置は、下流側の端部に、第一のチャンバ2’から外へ通じる出口12’を有している。装置は、上流側の端部に、横断チャンバもしくはサブチャンバ4’内に通じる第一の分配器13を有している。装置は、下流側の端部に、横断チャンバ4’から外へ通じる第二の分配器14を有している。液体Fの流れ方向は、矢印P1’により示唆されている。第一のチャンバ2’を横断し、液体Fの流れ方向を横切って延びている部分チャンバもしくは横断流路4’は、ジグザグ状に走る壁6’により画定されている。この壁6’は、交互する明領域と暗領域により概略的に図示されており、この明領域が、暗く図示した壁の比較的大きな穴を示している。穴の開いたジグザグ状の壁6’を覆って、気体Gを透過させ、液体Fは透過させない弾性膜7’が張り渡されているか、または壁6’の散在する場所で固定されている。横断流路4’の内部を流れる気体Gは、壁6’及びそれを覆って配置された膜7’を通り抜けて、チャンバ2’内を流れている液体F中に達する。内部に液体が流れているチャンバ2’も、内部に気体が流れている横断チャンバ4’も、ジグザグ状の幾何形状を有している。
【0051】
図3に示した第二の例示的実施形態は、第一のチャンバ2’内の液体Fの所与の流れ方向に対し、気体Gによる向流ガス処理または並流ガス処理を可能にする。もちろんここでも、第一の分配器13及び第二の分配器14を、チャンバ2’の左側と右側に(つまり、図3では断面平面/図平面の上側と下側に)配置すれば、第一の例示的実施形態の場合のような横断ガス処理が可能である。
【0052】
図4では、図3の細部Cの拡大部分図が示されている。ここでは特に、サブチャンバ4’と連通している分配器13がはっきり認識できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のチャンバ(2)及び第一のチャンバに接する第二のチャンバ(4)を有する、流体を混合及び交換するための装置であって、その際、該第一のチャンバ(2)は、少なくとも一つの第一の流体(F)及び第二の流体(G)が、混合流体の流れ方向で貫流できる、静的混合要素(6)を有する混合チャンバであり、そして、該第二のチャンバ(4)は、該第二の流体(G)が貫流できる流体供給チャンバ又は流体排出チャンバであり、その際、前記第一のチャンバ(2)の容積部と前記第二のチャンバ(4)の容積部との間の境界領域の少なくとも一部に、前記第一の流体(F)の分子又は分子塊は透過させないが、前記第二の流体(G)の分子又は分子塊は透過させる半透膜(7)が配置されている装置であって、前記膜(7)が、前記流体(F)の二つの内の少なくとも一方である分子又は分子塊に対し、低い親和力を有する材料からなる、又は該材料でコーティングされていることを特徴とする、上記の装置。
【請求項2】
第一のチャンバ(2)及び第一のチャンバに接する第二のチャンバ(4)を有する、流体を混合及び交換するための装置であって、該第一のチャンバは、少なくとも一つの第一の流体(F)及び第二の流体(G)が、混合流体の流れ方向で貫流できる、静的混合要素(6)を有する混合チャンバであり、該第二のチャンバ(4)は、第二の流体(G)が貫流できる流体供給チャンバ又は流体排出チャンバであり、前記第一のチャンバ(2)の容積部と第二のチャンバ(4)の容積部との間の境界領域の少なくとも一部に、前記第一の流体(F)の分子又は分子塊は透過させないが、前記第二の流体(G)の分子又は分子塊は透過させる半透膜(7)が配置されている装置であって、前記半透膜(7)が、多数の穴を設けられた支持壁(6)上にぴんと張られた弾性膜であることを特徴とする、特に請求項1に記載の、流体を混合及び交換するための装置。
【請求項3】
前記半透膜が疎水性(耐水性)の膜であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記半透膜が疎油性(耐油性)の膜であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記支持壁が円形の穴を有することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
前記支持壁がスリット形状の穴を有することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
前記第一のチャンバが前記装置内で、連続的な(非断続的な)混合チャンバ容積部を画定し、そして、前記第二のチャンバが前記装置内で、前記流体供給チャンバ又は流体排出チャンバの部分容積部をそれぞれ有する別々の(互いに分離された)部分チャンバによって形成されており、その際、該部分チャンバが、前記装置の上流側で流体供給収集管中へ通じており、該装置の下流側で流体排出収集管中へ通じていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
前記第二のチャンバの部分チャンバ自体が、前記第一のチャンバの混合流体の流れ方向に対して横向きに延びる横断流路であり、該横断流路の流路壁が、多数の穴が設けられた支持壁、並びに該支持壁上にぴんと張られた半透膜としての弾性膜を有することを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
円形の流路断面を有する、相互に離隔された横断流路を有することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
多角形の流路断面を有する、相互に離隔された横断流路を有することを特徴とする、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記横断流路が互いに平行に延びていることを特徴とする、請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
第一の流路断面積を有する第一の多数の横断流路有し、そして第二の流路断面積を有する第二の多数の横断流路を有することを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
前記第一の多数の横断流路及び前記第二の多数の横断流路の横断流路が、前記第一のチャンバ内に均等に分布して配置されていることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第二の流路断面積と第一の流路断面積との比が1/10〜5/10の範囲内にあることを特徴とする、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
可変の圧力を生成できる圧力源が、前記第一のチャンバ又は前記第二のチャンバと、流体的に連結されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一つに記載の装置。
【請求項16】
前記横断流路が、それぞれの第一の端部の領域内で第一の支持体(例えば、第一の壁板)に固定されており、かつ、該支持体を貫通して延びており、その際、該第一の支持体及び該横断流路が一緒に前記装置の第一のアセンブリを形成することを特徴とする、請求項7〜15のいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
前記第一のアセンブリの横断流路が、それぞれの第二の端部の領域内で第二の支持体(例えば第二の壁板)中の開口部を貫通して延びており、該第二の支持体が該第一のチャンバのさらなる壁と一緒に前記装置の第二のアセンブリを形成することを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
横断流路が第一のチャンバの静的混合要素であることを特徴とする、請求項8〜17のいずれか一つに記載の装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一つに記載の装置の使用下で、流体を混合及び交換する方法であって、その際、第一の流体及び第二の流体が、前記第一のチャンバ(混合チャンバ)を通り抜けて送られ、第二の流体が第二のチャンバを通り抜けて送られる方法。
【請求項20】
前記第一のチャンバを介して液体−気体混合物が誘導され、前記第二のチャンバを介して気体が誘導され、該気体の圧力が、前記第一のチャンバ内の液体−気体混合物の圧力よりも大きいことを特徴とする、液体をガス処理するための請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第一のチャンバを介して液体−気体混合物が誘導され、前記第二のチャンバを介して気体が誘導され、該気体の圧力が、前記第一のチャンバ内の液体−気体混合物の圧力よりも小さいことを特徴とする、液体を脱気するための請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ガス処理又は脱気の間に、前記第一のチャンバ内の圧力又は第二のチャンバ内の圧力が律動的に変動される(gepulst)ことを特徴とする、請求項19〜21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
前記液体が、水中に溶解された、水中に乳化された、又は水中に懸濁された物質を有することを特徴とする、請求項3に記載の装置の使用下での請求項19〜22のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
前記液体が、脂中又は油中に溶解された、脂中又は油中に乳化された、又は脂中又は油中に懸濁された物質を有することを特徴とする、請求項4に記載の装置の使用下での請求項19〜22のいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−500845(P2013−500845A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522274(P2012−522274)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001904
【国際公開番号】WO2011/012995
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(507058214)フランツ・ハース・ヴァッフェル−ウント・ケークスアンラーゲン−インドゥストリー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (4)
【Fターム(参考)】