説明

流体ジェット切断方法

無機繊維材料物品のような繊維材料のための流体ジェット切断方法を提供する。流体ジェット切断方法に用いるための流体組成物も、提供する。切断流体組成物は、キャリア流体および繊維材料の切断面のためのコーティング組成物を含有する。繊維材料の流体ジェット切断方法を実施するための装置も、提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
流体ジェット切断方法を開示する。より詳細には、繊維材料のための流体ジェット切断方法および流体ジェット切断方法に用いるための流体組成物を開示する。
【背景技術】
【0002】
水ジェット切断あるいは液体ジェット切断としても知られる、流体ジェット切断の方法は、1970年代に開発された。その方法は、流体を、ほぼ約10,000乃至約60,000psi(6.9×107乃至4.1×108Pa)の範囲の圧力に加圧するステップと、加圧流体を流体ジェット装置のノズルから放出して材料を切断するステップと、を含む。
【0003】
研磨ジェット切断の方法が、流体ジェット切断の方法に関連する。流体ジェット切断方法と同様に、流体は非常に高圧に加圧される。研磨粒子が、切断装置のノズルを出る前に、加圧流体中に同伴される。研磨粒子を切断流体に加えることにより、本方法で金属、金属合金、セラミック、およびプラスチックのような、より硬い材料を切り離すことができる。
【0004】
何年にもわたって、無機繊維材料は、断熱、電気的絶縁、および防音用途に利用されてきている。無機繊維材料は、また、自動車の排気ガス処理装置用途に用いられてきている。特定の用途に依存して、無機繊維材料を、ブランケット、板、フェルト、マット、産業織物などのようなあらゆる製品形態に加工することができる。
【0005】
自動車およびディーゼルエンジンの排気ガスを処理するための装置は、一般的に、ハウジングと、排気ガス中の一酸化炭素および炭化水素の酸化および窒素酸化物の還元をもたらすために用いられる触媒を保持するための脆弱触媒支持構造と、を収容する。脆弱触媒支持構造は、取付け材料あるいは支持材料によって、ハウジングの内面と脆弱触媒支持構造の外面との間のギャップあるいは空間内に取付けられる。
【0006】
脆弱触媒支持構造を、自動車あるいはディーゼルエンジンの通常の作動中経験される熱的衝撃および機械的衝撃および他のストレスから保護するために、無機繊維材料の少なくとも1つのプライあるいは層を、脆弱触媒支持構造とハウジングとの間のギャップ内に配置して、脆弱触媒支持構造を保護し、さもなければそれをハウジング内の所定の位置に保持することが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
脆弱触媒支持構造を排気ガス処理装置のハウジング内に取付けるために用いられる繊維材料は、一般的に、ダイカットあるいはスタンピングによって、排気ガス処理装置への組み込みに適したサイズおよび形状に加工される。無機繊維材料、例えば耐火セラミック繊維の比較的脆い性質により、ダイカットあるいはスタンピング加工により、飛散粒子塵を生じることがある。この粒子塵は、皮膚、目および気道を刺激することがあり、マットを製造する労働者および繊維マットを排気ガス処理装置の中に据付ける労働者に心配をもたらす。
【0008】
従って、これらの無機材料のダイカットあるいはスタンピングと伝統的に関連した刺激性の飛散繊維塵の発生を最小にしながら、無機繊維材料の複雑且つ正確な切断を提供することのできる改良された方法の必要が当技術分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
無機繊維材料の切断中、前記無機繊維材料からの塵発生を減じるための方法が提供され、前記方法は、前記無機繊維材料を加圧流体ジェットに接触させるステップと、前記無機繊維材料を前記流体ジェットで切断するステップと、を含む。
【0010】
流体ジェット切断方法が提供され、この方法は、繊維材料を加圧流体ジェットに接触させるステップを含み、前記流体ジェットは、キャリア流体および前記繊維材料のためのコーティング剤を含有し、前記繊維材料を前記流体ジェットで切断するステップを含む。
【0011】
他の実施形態によれば、繊維材料の高圧流体ジェット切断のための流体組成物も、提供され、流体組成物は、キャリア流体および前記繊維材料のためのコーティング剤からなる。
【0012】
更なる実施形態によれば、繊維材料の流体ジェット切断のための装置が提供され、前記装置は、加圧流体ジェットを作るためのポンプと、前記繊維材料のための切断流体を収容するリザーバと、コーティング組成物を選択的に有する前記切断流体と、前記切断流体を受け入れるための入口および前記切断流体を繊維基板上に放出するための出口を有するノズルと、を含む。
【0013】
流体ジェット切断装置は、加圧流体ジェットを作るためのポンプと、前記切断流体および前記コーティング組成物を別々に収容するためのリザーバと、前記切断流体の加圧流体ジェットを受け入れるための第1の入口と、前記コーティング組成物を受け入れるための第2の入口と、前記切断流体およびコーティング組成物を合流させるための容積と、を有するノズルと、前記流体ジェットおよびコーティング組成物を放出する出口と、を含むのがよい。
【0014】
更なる実施形態によれば、流体ジェット切断方法は、繊維材料を加圧流体ジェットに接触させるステップを含み、前記流体ジェットは、キャリア流体および前記繊維材料のための所望の薬品を含有し、前記繊維材料を前記流体ジェットで切断するステップと、前記繊維材料の少なくとも一部分上に前記所望の薬品を付着させるステップと、を含む。
【0015】
排気ガス処理装置のための流体ジェット切断繊維取付けマットも、提供され、前記取付けマットは、流体ジェット切断縁面の少なくとも一部分に付着したコーティングを含む。
【0016】
排気ガス処理装置は、ハウジングと、前記ハウジング内に弾性的に取付けられた脆弱触媒支持構造と、前記ハウジングと前記脆弱触媒支持構造との間のギャップに配置された流体ジェット切断無機繊維取付けマットと、を含み、前記取付けマットは、流体ジェット切断縁面の少なくとも一部分に付着したコーティングを更に含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
流体ジェット切断方法は、繊維材料を切断するために利用される。流体ジェット切断方法は、繊維材料の表面を高圧流体ジェット流に接触させ、あるいはさもなければ曝すことと、繊維材料を所定の切断経路に沿って加圧流体ジェットで切断することと、を含む。流体ジェットは、繊維材料を所定の切断経路に沿って切り離すので、所望の薬品が流体ジェット切断方法によって露出された繊維材料の縁面の少なくとも一部分に同時に付着する。
【0018】
例示的実施形態によれば、流体ジェット切断方法は、繊維材料の表面を高圧流体ジェット流に接触させ、あるいはさもなければ曝すことと、繊維材料を所定の切断経路に沿って加圧流体ジェットで切断することを含む。流体ジェットは、繊維材料を所定の切断経路に沿って切り離すので、コーティング剤が流体ジェット切断方法によって露出された繊維材料の縁面の少なくとも一部分に付着する。
【0019】
繊維材料の縁面は、ウィッキング工程によってコーティング剤を吸収する。繊維材料を流体ジェット方法によって切断した後、繊維材料の切断ピースを、流体ジェット切断装置から取り出し、乾燥させて切断工程中吸収したいかなる余分な水分をも取り除く。切断繊維材料は、空気乾燥およびオーブンでの加熱乾燥のような、いかなる在来の乾燥処理によって乾燥することができる。一旦、切断繊維材料が乾燥したら、コーティング剤が繊維材料の露出した縁にシールを形成する。
【0020】
流体ジェット切断装置のポンプによって作られた流体ジェット流の、繊維基板を切断するために必要とされる最小圧力はない。ポンプによって作られ、且つ流体ジェット切断装置の出力ノズルから放出されたジェット流は、1枚の繊維基板あるいは、所望の用途耐性に適合するための所定の厚さを有するスタックあるいは複数の繊維基板を切断するのに十分な圧力まで簡単に加圧される。当業者は、流体ジェット切断装置で切断されることが望まれる繊維基板の厚さに基づいて適当な圧力を容易に選択することができる。
【0021】
限定されないある実施形態によれば、ポンプによって作られた、且つ流体ジェット切断装置のノズルから放出された流体ジェット流は、5,000psi(3.4×107Pa)以上の圧力まで加圧される。他の実施形態によれば、ポンプによって作られた、且つ流体ジェット切断装置のノズルの出力から放出された流体ジェット流は、少なくとも10,000psi(6.9×107Pa)の圧力まで加圧される。更なる実施形態によれば、流体ジェット流は、少なくとも60,000psi(4.1×108Pa)の圧力まで加圧されるのがよい。加圧流体ジェット流を用いることによって、繊維材料物品の全体の厚さを通して正確な切断をすることができる。
【0022】
特定の用途に依存して、繊維材料は、広範な製品形態に切断することができる。従って、流体ジェット切断方法は、限定ではなく、繊維ブランケット、板、フェルト、マット、産業織物などのいかなる数の無機繊維材料製品形態を切断するのに適している。
【0023】
高圧流体ジェット切断方法のための流体組成物は、キャリア流体および繊維材料のためのコーティング剤を含む。殆どの場合、流体ジェット切断組成物のキャリア流体は、水である、なぜならば水はコスト効率が良く、環境に優しく、流体ジェット切断装置の構成部品および繊維マットと化学的に不活性だからである。しかしながら、流体ジェット装置および切断されるべき繊維材料と化学的に不活性であるいかなる他のキャリア流体を利用することができることに留意すべきである。
【0024】
流体ジェット切断組成物は、また、本方法によって切断されるべき繊維材料のためのコーティング組成物を含有する。限定でなく、流体ジェット切断組成物に含まれるコーティング組成物は、キャリア流体と適合し、流体ジェット装置および切断されるべき繊維材料に化学的に不活性であり、且つ無機繊維材料の表面をコーティングするために伝統的に利用される、いかなるコーティング組成物からなってもよい。限定でなく、適当なコーティング組成物は、ポリマーコーティング材料溶液あるいは懸濁液を含む。限定でなく、流体ジェット切断組成物に含まれるのがよい適当なポリマーコーティング材料は、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリビニルアルコール、スターチポリマー、ウレタンポリマー、酢酸ビニルポリマー、およびラテックスの溶液あるいは懸濁液を含む。限定でなく、流体ジェット切断方法のコーティング組成物として利用することができる適当なラテックスは、アクリルラテックスである。ある実施形態によれば、流体ジェット切断組成物は、キャリア流体として水と、繊維材料のためのコーティング材料としてアクリルラテックスと、を含有する。
【0025】
流体ジェット切断組成物は、研磨材料を含んでもよいし、含まなくてもよい。流体ジェット切断組成物が研磨材料を含有しないある実施形態によれば、そのような流体組成物を利用する切断方法は、非研磨流体ジェット切断方法と考えられる。流体ジェットに研磨材料を含ませることにより、この工程は、より厚い繊維材料を切断することができ、同時に、コーティング剤の層を繊維材料マットの露出した縁に沿って依然として付着させることができる。
【0026】
他の実施形態によれば、繊維材料の流体ジェット切断のための装置を提供する。流体ジェット切断装置は、高圧流体ジェットを作るためのポンプを含む。流体ジェット切断装置によって切断されるべき繊維材料のためのコーティング剤を貯蔵し且つ放出するためのリザーバが設けられる。第1の入口を有するノズルが、高圧流体ジェットを作るためのポンプと流通して設けられる。ノズルは、コーティング組成物を貯蔵するためのリザーバと流通する第2の入口を含む。ノズルの第1の入口は、ポンプから加圧流体ジェットを受け入れ、加圧流体ジェットは、ポンプとノズルとの間を流通する高圧配管あるいは導管を通して送出される。ノズルの第2の入口は、コーティング組成物のための保持リザーバから送出されたコーティング組成物を受け入れるためである。保持リザーバの出口は、適当な配管あるいは導管によってノズルの第2の入口に連結される。装置のノズル内で、流体ジェットおよびコーティング組成物が合流される。合流のキャリア流体、コーティング組成物、および選択的な研磨材料を含有する流体ジェットが、ノズルの出口を通して放出され、切断されるべき繊維材料物品の表面に向けられる。
【0027】
流体ジェット切断装置は、また、繊維材料に対してノズルの移動を制御するためのコントローラを含む。いかなる特定の実施形態に限定されることなく、流体ジェット切断装置のコントローラは、所定の切断経路に沿った、繊維材料に対する、装置の切断ノズルの移動を制御するための適当なソフトウェアあるいはファームウェアがインストールされたコンピュータあるいはプロセッサであるのがよい。
【0028】
流体ジェット切断装置は、更に、流体ジェット切断方法によって切断されるべき繊維基板材料の厚さを切断流体が通るときに、切断流体を収集するのに適した容積を有する容器あるいは「キャッチタンク」を含むのがよい。容器は、切断方法で発生した切断流体の体積を収集することができ、同時に、容器に面する切断繊維材料の表面上への切断流体の跳ね返りを防止することができる。
【0029】
より高圧のジェット流圧力を利用することができる更なる実施形態によれば、流体ジェット切断装置のキャッチタンクは、更に、流体ジェットが繊維材料切断部を切り離した後、流体ジェットのエネルギーを消散させるように機能する。殆どの場合、キャッチタンク内に収容されるのは、高圧流体ジェットからのエネルギーを消散させるのに十分な量の水である。高圧流体ジェットが繊維材料を切り離すとき、ジェットは、キャッチタンク中に差し向けられ続け、流体ジェットのエネルギーは、タンク内に収容された水によって吸収される。キャッチタンク内に収容された水の体積は、切断繊維材料の表面上へのキャッチタンクからの切断流体あるいは水の跳ね返りを避けながら、エネルギー消散を最大にするように最適化されるべきである。
【0030】
本方法、装置、およびマットを、図を参照してより詳細に記載する。しかしながら、開示された装置および切断方法は、図に示した例示的実施形態に限定されないことに留意すべきである。
【0031】
図1Aは、流体ジェット切断装置10の1つの例示的実施形態を示す。流体ジェット切断装置10は、高圧流体ジェットを作るためのポンプ12を含む。流体ジェット切断装置10によって切断されるべき繊維材料のためのコーティング組成物Cを貯蔵および放出するためのリザーバあるいは保持タンク14が、設けられる。第1の入口18および第2の入口20を有するノズル16が、高圧流体ジェットを作るためのポンプ12およびコーティング組成物Cを貯蔵するためのリザーバ14と流通する。ノズル16の第1の入口18は、ポンプ12から加圧流体ジェットJを受け入れる。加圧流体ジェットJは、ポンプ12とノズル16との間を流通する高圧配管あるいは導管22を通して送出される。
【0032】
ノズル16の第2の入口24は、流体ジェット切断装置10のコーティング組成物保持リザーバ14からコーティング組成物Cを受け入れる。保持リザーバ14は、配管あるいは導管28によってノズル16の第2の入口24に連結された出口26を有する。装置10のノズル16内で、流体ジェットJおよびコーティング組成物Cは、合流して、ノズル16の出口30を通して繊維材料の表面の方向に放出される。
【0033】
流体ジェット切断装置は、また、装置10によって切断されるべき繊維材料FMに対するノズル16の移動を制御するためのコントローラ32を含む。
【0034】
キャッチタンク34は、切断されるべき繊維材料FMの下方に配置される。流体ジェットが、繊維材料FMを切り離すとき、ジェットは、切断流体が収集されるタンク34中に流れ続け、選択的に流体のエネルギーがタンクの中の水Wによって吸収される。
【0035】
図1Bは、流体ジェット切断装置60の他の例示的実施形態を示す。流体ジェット切断装置60は、高圧流体ジェットを作るためのポンプ62を含む。図1Bの例示的実施形態によれば、コーティング組成物は、切断流体中にあらかじめ入れられるのがよい。従って、流体ジェット切断装置60によって切断されるべき繊維材料のためのコーティング組成物Cを貯蔵し且つ放出するための別々のリザーバあるいは保持タンクが必要とされない。入口66および出口68を有するノズル64は、高圧流体ジェットを作るためのポンプ62と流通する。ノズル64の入口66は、ポンプ62から加圧流体ジェットJを受け入れる。加圧流体ジェットJは、ポンプ62とノズル64との間を流通する高圧配管あるいは導管70を通して送出される。合流の切断流体およびコーティング組成物を含有する流体ジェットJが、ノズル64の出口68を通して繊維材料の表面の方向に放出される。
【0036】
流体ジェット切断装置は、また、装置60によって切断されるべき繊維材料FMに対してノズル64の移動を制御するためのコントローラ72を含む。キャッチタンク74は、切断されるべき繊維材料FMの下方に配置される。流体ジェットが、繊維材料FMを切り離すとき、ジェットは、切断流体が収集されるタンク75中に流れ続ける。ある実施形態では、流体ジェットのエネルギーは、タンクの中の水Wによって吸収される。
【0037】
図2Aは、流体ジェットJがノズルの出口から放出される前の流体ジェット切断装置のノズル40の下方に配置された繊維材料マットMを示す。図2Bは、流体ジェット流Jがノズル40の出口42から放出され、切断経路Pに沿って繊維材料マットMに接触しているときの、図2Aの繊維材料マットMを示す。図2Cは、ノズル40から放出された流体ジェット流Jによって、全体の厚さを通して切断され、それによって2つの別々の繊維材料マットFM1、FM2を形成する、繊維材料マットMを示す。
【0038】
流体ジェット流Jが切断経路Pに沿って繊維材料マットMを切り離すとき、コーティング組成物、すなわちポリマーコーティング材料が、FM1の面50およびFM2の面52の少なくとも一部分上に同時に付着する。ある実施形態によれば、コーティング組成物Cのほぼ均一なコーティングは、繊維マットFM1の面50、FM2の面52のそれぞれ全領域に沿って付着する。繊維材料マットFMが2つの別々のマットFM1、FM2に分離された後、2つのマットは、無機繊維材料マットを乾燥する在来の方法によって乾燥される。マット乾燥工程中、面50、52上に付着したコーティング組成物Cは、マットFM1、FM2の露出された縁面にシールを提供する。切断マットの面50、52上の密封コーティングの形成により、通常、無機繊維材料のダイカットあるいはスタンピングと関連する、飛散粒子塵の可能性を実質的に除去する。
【0039】
流体ジェット切断方法によって切断された繊維取付けマットによってハウジング内に取付けられた脆弱触媒支持構造を有する排気ガス処理装置をも、開示する。取付けマットは、ディーゼル粒子トラップなどのような、いかなる脆弱構造をも取付けあるいは支持するために用いることができる。ディーゼル粒子トラップは、耐熱材料によってハウジング内に取付けられた1つ以上の多孔性の管状あるいは蜂の巣状構造(しかしながら、一端で閉じたチャネルを有する)を含む。粒子は、高温バーンアウト処理によって再生されるまで、排気ガスから多孔性構造中に収集される。用語「脆弱触媒支持構造」は、本質的に脆くあるいは壊れやすく、且つここに記載するような支持要素から利益を得るであろう、金属あるいはセラミックモノリスなどのような構造を意味し、且つ含むことを意図する。排気ガスを処理するための装置の1つの例示的形態は、触媒変換器である。触媒変換器は、一般的に管状ハウジングを含む。ハウジングは、一端に入口を、反対側の端に出口を含む。入口および出口は、一端および反対側の端の外側端に適当に形成され、内燃エンジンの排気システムの中の導管に固定されるのがよい。装置は、取付けマットによってハウジング内に支持され且つ制限される脆弱触媒支持構造を収容する。触媒支持体は、一端のその入口端面から反対側の端のその出口端面まで軸線方向に延びる複数のガス浸透通路を含む。触媒支持体は、既知の方法および形態で、適当な耐火金属あるいはセラミック材料から構成されるのがよい。
【0040】
触媒支持体は、距離あるいはギャップによってハウジングから間隔を隔てられ、距離あるいはギャップは、例えば、触媒変換器あるいはディーゼル粒子トラップなど利用する装置のタイプおよび設計により変化する。このギャップには、触媒支持体に弾性支持体を提供するために取付けマットが充填される。マットは、外部環境に断熱と、触媒支持構造に機械的支持の両方を提供し、脆弱構造を機械的衝撃から保護する。
【実施例】
【0041】
以下の例示的実施例は、流体ジェット装置および流体ジェット切断方法を更に説明するために記載される。流体ジェット装置および切断方法は、いかなる方法でも例示的実施例に限定されるべきではないことに留意すべきである。
【0042】
(実施例1)
CC−MAX8HPの名称でユニフラックス社によって販売されている繊維材料マットのサンプルを流体ジェット装置および方法を用いて切断した。CC−MAX8HP繊維マットは、ガラス質のアルミノシリケート繊維の非膨張マットである。この繊維マットは、ニードルパンチされ、いかなるバインダー材料をも含有しない。CC−MAX8HP繊維マットは、セラミックおよび金属触媒支持基板を自動車の排気ガス処理装置の中に取付けるために用いられる。CC−MAX8HPは、自動車の排気ガス処理装置ハウジングと触媒支持基板との間の空間中に配置されて、触媒支持基板に熱的および機械的衝撃抵抗を提供する。
【0043】
繊維マットの12×12インチサンプルを、流体ジェット切断装置の切断領域内に配置した。入口の水を60,000psi(4.1×108Pa)の圧力まで加圧して高圧水ジェットを作った。流体ジェットのノズルを、切断されるべき繊維マットの上方に位置決めした。アクリルラテックスを収容するコーティング組成物保持リザーバを、装置のノズルと流通させて配置した。アクリルラテックスを、導管によって装置のノズルに送出し、加圧水と合流させた。一旦、ノズルを繊維マットの上方に適当に位置決めしたならば、水およびラテックス材料を含有する流体ジェットを装置のノズルから放出し、且つ繊維マットの表面上に差し向けた。流体ジェットの移動を、所定の切断経路に沿って導いて、切断繊維マットの実質的に正方形ピースを作った。
【0044】
切断繊維マットピースを、流体ジェット切断装置から取り出し、乾燥させて、切断工程で吸収された水を除去した。繊維マットの切断および乾燥したサンプルを、流体ジェット切断工程による、露出された縁面上のコーティングの付着を分析した。切断工程によって露出された繊維面上に付着したコーティング組成物の量を分析するために、乾燥マットサンプルの重量を最初に得た。次いで、乾燥マットサンプルを約700℃の温度まで約2時間加熱した。マットサンプル上に付着した有機コーティング組成物を、マットの加熱中、焼き払った。マットサンプルの加熱に続いて、マットサンプルを再計量した。流体ジェット切断工程中、マットサンプルの露出した縁面上に付着したコーティングの量を、サンプルを700℃で2時間加熱する前後でのマットサンプルの重量間の差として計算した。
【0045】
(実施例2〜4)
繊維基板の縁面上の有機コーティング組成物の付着の効果を分析した。
【0046】
実施例2〜4の各々は、CC−MAX8HPの名称でユニフラックス社によって販売されている繊維材料マットを含んだ。CC−MAX8HP繊維マットは、ガラス質のアルミノシリケート繊維の非膨張マットである。この繊維マットは、ニードルパンチされ、いかなる有機バインダー材料も含有しない。
【0047】
比較例2をダイカット工程によって切断し、切断縁面に有機物コーティング組成物は付着しなかった。比較例3も、また、ダイカット工程によって切断した。付加的なおよび別々のステップで、実施例C3の繊維マットの切断縁面を有機コーティング組成物でスプレーコーティングした。実施例4を、流体ジェット切断方法によって切断し、それによって加圧流体流が繊維マットを切断し、同時に有機コーティング組成物が切断縁面に付着した。各切断繊維サンプルの強さを評価した。各繊維マットは、強さの程度に応じて、1乃至5の数字を割り当て、5が最強を示す。結果を以下の表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
比較例2は、あまり強くなかった。繊維マットの切断縁面上に有機コーティングをスプレーコーティングした比較例3は、最初の強さから増大を示した。しかしながら、スプレーされた有機コーティングは、切断縁面から容易に剥がれたことに留意しなければならない。実施例4は、3つの試験繊維サンプルの最高の強さを示した。
【0050】
(実施例5−8)
飛散繊維の発生時、繊維基板の縁面上に有機コーティング組成物を付着させることの影響を分析した。触媒支持基板に繊維マットを巻くことによって飛散繊維の発生を評価した。基板を包囲環境内で巻き、発生した飛散繊維を標準空気監視フィルタ媒体上に収集した。飛散繊維を収集したフィルタ媒体を、NIOSH分析法マニュアルに記載された7400(b)計上方法に従って、測定した。
【0051】
実施例C5および6は、CC−MAX8HPの名称でユニフラックス社によって販売されている繊維材料マットを含んだ。CC−MAX8HP繊維マットは、ガラス質のアルミノシリケート繊維の非膨張マットである。この繊維マットは、ニードルパンチされ、いかなる有機バインダー材料も含有しない。
【0052】
実施例C7および8は、CC−MAX4HPの名称でユニフラックス社によって販売されている繊維材料マットを含んだ。CC−MAX4HP繊維マットは、ガラス質のアルミノシリケート繊維の非膨張マットである。この繊維マットをバインダーで処理した。実施例C7および8の繊維マットは、ほぼ等しい量のバインダーを含有する。CC−MAX4HP繊維マットは、また、マット構造の取り扱いやすさを増すための支持層を備える。
【0053】
比較例C5およびC7を、ダイカット工程によって切断し、切断縁面に有機コーティング組成物は付着しなかった。実施例6および8を流体ジェット切断方法によって切断し、それによって加圧流体流が繊維マットを切断し、同時に有機コーティング組成物が切断縁面上に付着した。切断工程中の飛散繊維の発生を評価した。結果を以下の表2に示す。
【0054】
【表2】

【0055】
表2が示すように、従来のダイカット技術での切断繊維基板(比較例C5およびC7)は、大量の飛散繊維の発生をもたらす。一方、コーティングが切断縁面に同時に付着する流体ジェット切断方法によって切断した実施例6の繊維マットは、飛散繊維の発生を、ダイカットの比較例C5によって発生した繊維の25%未満に減じる。
【0056】
実施例C7および8は、繊維を所定の位置に保持するためにバインダーで処理された繊維マットであるので、放出繊維は予期されないであろう。しかしながら、実施例8の繊維マットを流体ジェット切断することにより、飛散繊維の発生を、実施例C7の繊維マットをダイカットすることによって発生した飛散繊維の33%に減少させる。実施例C7および8の飛散繊維発生試験の結果は、さもなければ繊維の放出を予期できないであろうバインダー含有マット上にコーティングの縁処理を付着させることの利点を示す。
【0057】
流体ジェット切断方法の精度を、切断繊維マットサンプルを分析することによって評価した。CC−MAX8HPの名称でユニフラックス社によって販売されているマットからなる100個の繊維マットサンプルを流体ジェット切断装置および方法を用いて切断した。取付けマットを、噛み合いタブおよびスロット配置を有するマットを提供する方法で、切断した。各切断繊維マット上のタブおよびスロットの幅を測定した。切断繊維マットの測定は、タブの幅とスロットの幅との間の変化が、0.5mm以下であったことを示す。これらの結果は、流体ジェット切断方法が、少なくとも繊維マットの従来のダイカットによって達成できる精度と同じ精度である、正確な、きれいな切断部を有する繊維マット構造を提供することを示す。従って、減じられた飛散繊維の発生の利点が加えられて、流体ジェット切断方法を用いて、正確な切断を達成して、所定の用途の公差に適合させることができる。
【0058】
上述の実施例によれば、流体ジェット切断方法を用いて、アルミノシリケート繊維からなる繊維材料物品を切断した。しかしながら、流体ジェット切断方法を用いて、限定でなく、アルミナ繊維、アルミナ−シリカ−マグネシア繊維、カルシア−マグネシア−シリカ繊維、マグネシア−シリカ繊維、カルシア−アルミナ繊維、Eガラス繊維、Sガラス繊維、ミネラルウール繊維、これらの組み合わせなどを含む無機繊維のいかなるタイプをも含有する繊維材料物品を切断することができることに留意すべきである。
【0059】
本方法は、また、繊維材料物品を切断し、同時に密封コーティング以外の所望の薬品あるいは材料を、流体ジェット流によって切断されるべき繊維材料物品の少なくとも一部分上に付着させるために利用することができる。例示として、および限定でなく、着色料あるいは染料のような材料を、流体ジェット流に含まれ、物品が流体ジェット流によって切断されるとき、繊維材料物品の一部分上に同時に付着させてもよい。他の実施形態によれば、流体ジェット切断方法によって接着剤を切断縁面に付着させてもよい。着色料あるいは染料の混和により、繊維材料物品のその後の識別が可能になる。
【0060】
流体ジェット切断方法を、ある例示的実施形態に関連して上述してきたが、他の同様の実施形態を用いてもよいし、あるいは記載された実施形態から逸脱することなしに本方法の同じ機能を果たすために、変形および追加を記載された実施形態に行ってもよい。更に、様々な実施形態を結合して、所望の特性を提供することができるので、開示された全ての実施形態は必ずしも選択的ではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなしに、当業者によって変形をなすことができる。従って、本方法は、いかなる単一の実施形態に限定されるべきでなく、添付した特許請求の範囲の記載による外延および範囲内に解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1A】流体ジェット切断装置の1つの例示的実施形態を示す。
【図1B】流体ジェット切断装置の他の例示的実施形態を示す。
【図2A】流体ジェット切断方法の1つの例示的実施形態を示す。
【図2B】流体ジェット切断方法の1つの例示的実施形態を示す。
【図2C】流体ジェット切断方法の1つの例示的実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維材料を加圧流体ジェットに接触させるステップを含み、
前記流体ジェットは、キャリア流体および前記繊維材料上に付着させるための所望の薬品を含有し、
前記繊維材料を前記流体ジェットで切断するステップを含む、
ことを特徴とする流体ジェット切断方法。
【請求項2】
前記所望の薬品を前記繊維材料の少なくとも一部分上に付着させるステップを更に含む、請求項1に記載の流体ジェット切断方法。
【請求項3】
前記所望の薬品は、コーティング、着色料、染料、接着剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項2に記載の流体ジェット切断方法。
【請求項4】
繊維材料を加圧流体ジェットに接触させるステップを含み、
前記流体ジェットは、キャリア流体および前記繊維材料のためのコーティング組成物を含有し、
前記繊維材料を前記流体ジェットで切断するステップと、
前記コーティング組成物を前記繊維材料の少なくとも一部分上に付着させるステップと、を含む、
請求項3に記載の流体ジェット切断方法。
【請求項5】
前記繊維材料を切断し、同時に前記コーティング組成物を前記繊維材料の露出された縁面の少なくとも一部分に付着させるステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記キャリア流体は水である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティング組成物は、有機ポリマー材料を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング組成物は、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリビニルアルコール、デンプンポリマー、ウレタンポリマー、酢酸ビニルポリマー、およびラテックス材料からなる群より選択されたポリマー材料からなる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記キャリア流体は水であり、前記コーティング組成物はアクリルラテックスである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記流体ジェットは、少なくとも5,000psiまで加圧される、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング組成物のほぼ均一な層が、流体ジェット切断方法によって露出された繊維材料表面の少なくとも一部分上に付着される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記切断繊維材料を乾燥するステップと、コーティング組成物を選択的に硬化させるステップと、を更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
無機繊維材料の切断中、前記無機繊維材料からの塵発生を減じるための方法であって、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法により前記繊維材料を流体ジェット切断するステップを含む、ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法による無機繊維材料の流体ジェット切断のための流体組成物であって、前記流体組成物は、キャリア流体および前記繊維材料のためのコーティング組成物からなる、ことを特徴とする流体組成物。
【請求項15】
排気ガス処理装置のための無機繊維取付けマットであって、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の流体ジェット切断方法によって切断された繊維基板を含む、ことを特徴とする無機繊維取付けマット。
【請求項16】
ハウジングと、
前記ハウジング内に弾性的に取付けられた脆弱触媒支持構造と、
請求項15に記載の流体ジェット切断無機繊維取付けマットと、を含み、
前記取付けマットは、前記脆弱触媒支持構造を前記ハウジング内に弾性的に保持するために、前記ハウジングと前記脆弱触媒支持構造との間のギャップの中に配置され、
前記取付けマットは、流体ジェット切断縁面の少なくとも一部分に付着したコーティングを含む、
ことを特徴とする排気ガス処理装置。
【請求項17】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の流体ジェット切断方法に用いるための装置であって、
加圧流体ジェットを作るためのポンプと、
前記繊維材料のための切断流体を収容するリザーバと、を含み、
前記切断流体は、コーティング組成物を選択的に有し、
前記切断流体を受け入れるための入口および前記切断流体を繊維基板上に放出するための出口を有するノズルと、を含む、
ことを特徴とする装置。
【請求項18】
前記ポンプおよび前記ノズルと流通した高圧流体導管を更に含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記流体ジェットの切断経路を制御するためのコントローラを更に含む、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記流体ジェットのエネルギーを消散させるための手段を更に含む、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記切断流体および前記コーティング組成物を別々に収容するためのリザーバと、
前記切断流体の加圧流体ジェットを受け入れるための第1の入口と、前記コーティング組成物を受け入れるための第2の入口と、前記切断流体およびコーティング組成物を合流させるための容積と、を有するノズルと、
前記流体ジェットおよびコーティング組成物を放出する出口と、を含む、
請求項20に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2008−546918(P2008−546918A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517015(P2008−517015)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/022981
【国際公開番号】WO2006/138307
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(507410124)ユニフラックス I リミテッド ライアビリティ カンパニー (6)
【Fターム(参考)】