説明

流体フィルタのドレン機構

【課題】樹脂製のドレンボルトを用いた際に起こりがちな過締付け及びその過締付けに起因する破損を防止できる簡易な構造の流体フィルタのドレン機構を提供する。
【解決手段】本ドレン機構7は、ケース2に取り付けられ且つドレン穴15を有するキャップ3と、キャップに対して相対回転により所定の締付けトルクで螺合されドレン穴を閉鎖するドレンボルト20と、を備える流体フィルタのドレン機構であって、ドレンボルトは樹脂からなり、キャップに設けられる第1規制部(突起部31)と、ドレンボルトに設けられ且つキャップ及びドレンボルトの相対回転により第1規制部に当接する第2規制部(窪み部32)と、を有する過締付け規制構造30を備え、第1規制部及び第2規制部は、キャップに対してドレンボルトを締める方向P1に相対回転させる際に、ドレンボルトが所定の締付けトルクで螺合されたときに当接するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体フィルタのドレン機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体フィルタとして、例えば、所定時間の使用により濾材が目詰まり寿命に達した際に、フィルタエレメントを交換するエレメント交換型の流体フィルタが一般的に知られている。
【0003】
このようなエレメント交換型の流体フィルタのドレン機構として、金属製のキャップのドレン穴に、金属製のドレンボルトをネジ止めしてなるものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。これにより、フィルタエレメント交換の際、ケースとキャップとの分離に先立って、ドレンボルトを緩めてドレン穴から取り外してドレン穴を開放し、ハウジング内部の残留オイルを排出することができる。
【0004】
近年、軽量化等のためにドレンボルトを従来の金属製から樹脂製に変更することが提案されている。この場合、上記従来のドレン機構では、樹脂製のドレンボルトをキャップのドレン穴に対してネジ止めのみにより結合させることになるため、作業者によっては締め付けトルクが高くなりすぎ、ドレンボルトが破損(せん断破壊)してしまう恐れがある。
【0005】
そこで、上記問題を解決するため、従来の樹脂製ボルトとして、ボルトの軸方向に縦繊維を配置すると共にボルトの軸方向に垂直な平面に横繊維を配置してなる高強度のものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、この従来の樹脂製ボルトは比較的高価なものであり、この技術を上述の樹脂製のドレンボルトに適用しても、ドレンボルトひいてはドレン機構が高価なものとなってしまう。
【0006】
【特許文献1】特開2005−103502号公報
【特許文献2】特開2003−56536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、樹脂製のドレンボルトを用いた際に起こりがちな過締付け及びその過締付けに起因する破損を高価な高強度繊維を用いることなく防止できる簡易な構造の流体フィルタのドレン機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.ケースに取り付けられ且つドレン穴を有するキャップと、該キャップに対して相対回転により所定の締付けトルクで螺合され該ドレン穴を閉鎖するドレンボルトと、を備える流体フィルタのドレン機構において、
前記ドレンボルトは樹脂からなり、
前記キャップに設けられる第1規制部と、前記ドレンボルトに設けられ且つ該キャップ及び該ドレンボルトの相対回転により該第1規制部に当接する第2規制部と、を有する過締付け規制構造を備え、
前記第1規制部及び前記第2規制部は、前記キャップに対して前記ドレンボルトを締める方向(P1)に相対回転させる際に、該ドレンボルトが所定の締付けトルクで螺合されたときに当接するように配置されていることを特徴とする流体フィルタのドレン機構。
2.前記第1規制部及び前記第2規制部のうちの一方は突起部であり、他方は該突起部が入り込む窪み部であり、
前記突起部は、前記ドレンボルトの軸方向に延びる突起側当接面と、該突起側当接面に連なり且つ前記締める方向(P1)に対して前記ドレンボルトのリード角以上の角度で傾斜する突起側傾斜面と、を有しており、前記窪み部は、前記ドレンボルトの軸方向に延び且つ前記突起側当接面と当接する窪み側当接面と、該窪み側当接面に連なり且つ前記締める方向(P1)に対して前記ドレンボルトのリード角以上の角度で傾斜する窪み側傾斜面と、を有している上記1.記載の流体フィルタのドレン機構。
3.前記突起側傾斜面及び前記窪み側傾斜面のそれぞれは、前記締める方向(P1)に対して前記ドレンボルトのリード角と略同じ角度で傾斜している上記2.記載の流体フィルタのドレン機構。
4.前記キャップの底部には、前記ドレンボルトのつば部が圧接するシール部材が設けられており、前記第1規制部は、前記キャップの底部の該シール部材の外周側に設けられており、前記第2規制部は、前記ドレンボルトのつば部の該シール部材に圧接する部位の外周側に設けられている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の流体フィルタのドレン機構。
5.前記キャップの底部には、前記ドレンボルトのつば部が圧接するシール部材が設けられており、前記第1規制部は、前記キャップの底部の該シール部材の内周側に設けられており、前記第2規制部は、前記ドレンボルトのつば部の該シール部材に圧接する部位の内周側に設けられている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の流体フィルタのドレン機構。
6.前記過締付け規制構造は、一対の前記第1規制部及び前記第2規制部の複数組を備え、該複数組のそれぞれは、前記ドレンボルトの円周方向に沿って略等間隔で配置されている上記1.乃至5.のいずれか一項に記載の流体フィルタのドレン機構。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流体フィルタのドレン機構によれば、キャップに対してドレンボルトを締める方向に相対回転させる際に、キャップに対してドレンボルトを所定の締付けトルクで螺合させたときに、第1規制部及び第2規制部が当接してドレンボルトが締める方向へ回転してしまうことが規制される。その結果、樹脂製のドレンボルトを用いた際に起こりがちな過度の締付け及び過締付けに起因する破損を防止できる。また、キャップに第1規制部を一体に設けると共に、樹脂製のドレンボルトに第2規制部を一体に設けているので、部品点数を増やすことなく過締付け規制構造を構成できる。
また、前記第1規制部及び前記第2規制部のうちの一方は突起部であり、他方は該突起部が入り込む窪み部であり、前記突起部が、突起側当接面と、ドレンボルトのリード角以上の角度で傾斜する突起側傾斜面と、を有しており、前記窪み部が、窪み側当接面と、ドレンボルトのリード角以上の角度で傾斜する窪み側傾斜面とを有している場合は、キャップに対してドレンボルトを相対回転させる際に、窪み部に対して突起部が入り込むとき又は脱出するとき窪み部と突起部とが無理に圧接して干渉しないようにできる。その結果、第1及び第2規制部の破損を抑制できると共にドレンボルトを無理なく締付けたり緩めたりできる。また、窪み部の窪み量を比較的小さな値に設定できるため、キャップ又はドレンボルトの窪み部近傍においてドレンボルトの所定の締付けトルクに必要な強度を確保しやすい。
また、前記突起側傾斜面及び前記窪み側傾斜面のそれぞれがドレンボルトのリード角と略同じ角度で傾斜している場合は、窪み部に対して突起部を略嵌合させることができると共に窪み部の窪み量をより小さな値に設定できるため、キャップ又はドレンボルトの窪み部近傍においてドレンボルトの所定の締付けトルクに必要な強度をより確保しやすい。
また、前記キャップの底部には、前記ドレンボルトのつば部が圧接するシール部材が設けられており、前記第1規制部は、前記キャップの底部の該シール部材の外周側に設けられており、前記第2規制部は、前記ドレンボルトのつば部の該シール部材に圧接する部位の外周側に設けられている場合は、流体フィルタの通常使用時に、シール部材によりドレン穴のシール性をより高めることができる。また、また、第1規制部及び第2規制部をシール部材の外周側の比較的広い面域を利用して容易に設定できる。
また、前記キャップの底部には、前記ドレンボルトのつば部が圧接するシール部材が設けられており、前記第1規制部が、前記キャップの底部の該シール部材の内周側に設けられており、前記第2規制部が、前記ドレンボルトのつば部の該シール部材に圧接する部位の内周側に設けられている場合は、流体フィルタの通常使用時に、シール部材によりドレン穴のシール性をより高めることができる。また、シール部材により第1及び第2規制部が外気に晒されることがないため両規制部への塵等の付着による破損等を防止できる。
また、前記過締付け規制構造が、一対の前記第1規制部及び前記第2規制部の複数組を備え、該複数組のそれぞれが、前記ドレンボルトの円周方向に沿って略等間隔で配置されている場合は、ドレンボルトの円周方向に沿って均等に過締付け規制が行われるため、ドレンボルトの過締付けをより確実に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施形態に係る流体フィルタのドレン機構は、以下に述べるキャップ、ドレンボルト及び緩み回り規制構造を備えている。
【0011】
上記「キャップ」は、ケースに取り付けられ且つドレン穴を有する限り、その構造、形状、材質等は特に問わない。このキャップ及びケースの材質としては、例えば、鉄、アルミニウム、樹脂等を挙げることができる。
【0012】
上記キャップは、例えば、樹脂製であるキャップ本体に、その内周に雌ネジが形成されたドレン穴を有する金属製のインサート部材をインサートしてなることができる。なお、インサート部材の上端部は、通常、ドレン穴のメタルシールとして利用される。
上記キャップの底部には、例えば、ドレンボルトのつば部が圧接するシール部材を設けることができる。これにより、ドレン穴のシール性を更に高めることができる。
【0013】
上記「ドレンボルト」は、上記キャップに対して相対回転により所定の締付けトルクで螺合されドレン穴を閉鎖する限り、その構造、形状等は特に問わない。このドレンボルトは樹脂からなる。この樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PCV)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリスチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)(ナイロン等)等を挙げることができる。
【0014】
上記ドレンボルトは、例えば、上記ドレン穴の内周側に形成された雌ネジ部に螺合される雄ネジ部と、この雄ネジ部に連なり且つキャップの底部に当接するつば部と、を有していることができる。このつば部の外周側には、例えば、作業者が把持して手締めするための把持部を設けることができる。
【0015】
上記過締付け規制構造は、以下に述べる第1規制部及び第2規制部を備えている。
【0016】
上記「第1規制部」は、上記キャップに設けられている限り、その形状、個数、配設形態等は特に問わない。この第1規制部は、通常、キャップに一体に設けられている。また、この第1規制部は、例えば、上記ドレンボルトのつば部が圧接するキャップの底部(上述のインサート部材も含む。)に設けられていることができる。これにより、ドレン穴からドレンボルトを抜き取った際にキャップの底部で露出する第1規制部の状態を容易に確認できる。
【0017】
上記「第2規制部」は、上記ドレンボルトに設けられ且つキャップ及びドレンボルトの相対回転により第1規制部に当接する限り、その形状、大きさ、個数等は特に問わない。この第2規制部は、通常、ドレンボルトに一体に設けられている。また、この第2規制部は、例えば、上記キャップの底部に圧接するドレンボルトのつば部の表面側に設けられていることができる。これにより、ドレンボルトひいては過締付け規制構造の大型化を防止できる。
【0018】
上記第1規制部及び第2規制部は、キャップに対してドレンボルトを締める方向P1に相対回転させる際に、ドレンボルトが所定の締付けトルクで螺合されたときに当接するように配置されている。
【0019】
ここで、上記第1規制部及び第2規制部の形状の組み合わせとしては、例えば、(1)第1規制部が突起部であり、第2規制部が突起部が入り込む窪み部である形態(図5参照)、(2)第1規制部が窪み部であり、第2規制部が窪み部に入り込む突起部である形態(図8参照)、(3)第1及び第2規制部のそれぞれが突起部である形態(図12参照)等を挙げることができる。これらのうち、ドレンボルトひいては過締付け規制構造を小型化できるといった観点から、上記(1)(2)形態であることが好ましい。
【0020】
上記(1)(2)形態において、上記突起部は、例えば、ドレンボルトの軸方向に延びる突起側当接面と、この突起側当接面に連なり且つ締める方向P1に対してドレンボルトのリード角以上の角度で傾斜する突起側傾斜面とを有することができる。この突起側傾斜面はドレンボルトのリード角と略同じ角度で傾斜していることが好ましい。
【0021】
上記(1)(2)形態において、上記窪み部は、例えば、ドレンボルトの軸方向に延び且つ突起側当接面と当接する窪み側当接面と、この窪み側当接面に連なり且つ締める方向P1に対してドレンボルトのリード角以上の角度で傾斜する窪み側傾斜面とを有することができる。この窪み側傾斜面はドレンボルトのリード角と略同じ角度で傾斜していることが好ましい。また、この窪み側傾斜面は、例えば、窪み側当接面と直接的に連なっていてもよいし、締める方向に延びる連絡面を介して窪み側当接面と間接的に連なっていてもよい。
上記窪み部の締める方向P1の長さLは、例えば、図6に示すように、上記突起部の締める方向P1の長さL1と、ドレンボルトのつば部がキャップの底部に当接してから所定の締付けトルクを得られるまでの窪み部に対する突起部の移動長さL2との和に設定されていることができる。
【0022】
上記第1及び第2規制部の配設形態としては、例えば、(A)第1規制部がキャップの底部においてシール部材の外周側に設けられ、第2規制部がドレンボルトのつば部においてシール部材に圧接する部位の外周側に設けられている形態、(B)第1規制部がキャップの底部においてシール部材の内周側に設けられ、第2規制部がドレンボルトのつば部においてシール部材に圧接する部位の内周側に設けられている形態等を挙げることができる。
【0023】
上記過締付け規制構造は、例えば、一対の第1規制部及び第2規制部の複数組を備え、複数組のそれぞれは、ドレンボルトの円周方向に沿って略等間隔で配置されていることができる。この複数組の個数は特に問わないが、上記(1)(2)形態において、突起側及び窪み側当接面の当接面域を大きな値に設定できるといった観点から、2〜6組(特に、2〜4組)であることが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、エレメント交換型フィルタとして、内燃機関のシリンダブロック(図示せず)に装着されるオイルフィルタを例示する。
【0025】
(実施例1)
(1)オイルフィルタの構成
本実施例に係るオイルフィルタ1は、図1に示すように、互いに係脱可能な樹脂製のケース2及びキャップ3からなるハウジング4と、このハウジング4内に収容されるフィルタエレメント5及びドレン機構7とを備えて構成されている。
【0026】
このキャップ3の外周面には、雄ネジ部8が形成されていると共に、Oリング9が装着されている。また、ケース2の内周面には雌ネジ部10が形成されている。これら雄ネジ部8と雌ネジ部10とを螺合させて、Oリング9を介してケース2とキャップ3とを係合させると、ハウジング4の内部が液密に保持されるようシールされる。このハウジング4内部では、バネ11の付勢力によってプレート12及びケース2に設けたケース突起部6にて、各シール材13,14を介してフィルタエレメント5の上下端部がシールされ、このフィルタエレメント5によりオイルの濾過が行われる。
【0027】
また、キャップ3の底部3aの中央には、その内周に雌ネジ15aが形成されたドレン穴15を有する金属製のインサート部材16がインサート成形されている。このインサート部材16の上端部には、環状のキャップ突起部18が設けられている。また、キャップ3の底部3aの下端部にはドレン穴15を囲んでOリング17(本発明に係る「シール部材」として例示する。)が装着されている。
【0028】
次に、ドレン機構7について説明する。このドレン機構7は、図2に示すように、樹脂製のドレンボルト20、金属製のバルブ部材21及びバネ11を備えて構成されている。このドレンボルト20は、雄ネジ22aが形成された雄ネジ部22と、この雄ネジ部22の下部に連なるつば部23とを有している(図3及び4参照)。このつば部23の外周側には、作業者が手締めする際に把持する把持部24が設けられている。そして、このドレンボルト20の雄ネジ22aとドレン穴15の雌ネジ15aとを螺合させて、ドレン穴15にドレンボルト20をネジ止めすると、ドレンボルト20のつば部23がOリング17に圧接してドレン穴15がシールされる。
【0029】
上記バルブ部材21は、全体として受け皿状に形成され、上記キャップ突起部18の外周面に当接する当接部25を有している。この当接部25は、バネ11の付勢力によって、通常、キャップ突起部18に当接され、ドレン穴15がメタルシールされる。従って、ドレン穴15からドレンボルト20を取り外した状態であっても、このドレン穴15からハウジング4内部の微量な残留オイルしか外部へ流出されない。
【0030】
図2に示すように、上記キャップ3とドレンボルト20との間には過締付け規制構造30が設けられている。この過締付け規制構造30は、以下に述べる突起部31(本発明に係る「第1規制部」として例示する。)と、窪み部32(本発明に係る「第2規制部」として例示する。)と、を備えて構成されている。
【0031】
上記突起部31は、ドレンボルト20のつば部23が当接するキャップ3の底部3aに一体成形されている(図5参照)。この突起部31は、図6に示すように、ドレンボルト20の軸方向に延びる突起側当接面31aと、この突起側当接面31aに連なる突起側傾斜面31bと、を有している。この突起側傾斜面31bは、ドレンボルト20の締める方向P1に対してドレンボルト20のリード角と略同じ角度Aで傾斜している。
【0032】
上記窪み部32は、図3〜5に示すように、ドレンボルト20のつば部23においてキャップ3の底部3aに当接する表面側に一体成形されている。この窪み部32は、図6に示すように、ドレンボルト20の軸方向に延びる窪み側当接面32aと、この窪み側当接面32aとその一端が連なり締める方向P1に延びる連絡面32bと、この連絡面32bの他端に連なる窪み側傾斜面32cと、を有している。この窪み側傾斜面32cは、ドレンボルト20のリード角と略同じ角度Bで傾斜している。また、窪み部32の締める方向P1に沿う長さLは、突起部31の締める方向P1に沿う長さL1と、ドレンボルト20のつば部23がキャップ3の底部3aに当接してから所定の締付けトルクを得られるまでの長さL2との和に設定されている。
なお、本実施例では、窪み部32を、窪み側当接面32a、連絡面32b及び窪み側傾斜面32cからなるようにしたが、これに限定されず、例えば、図6中に仮想線で示すように、窪み部32を、窪み側当接面32aと、この窪み側当接面32aに連なる窪み側傾斜面32cとからなるようにしてもよい。
【0033】
上記突起部31及び窪み部32は、キャップ3に対してドレンボルト20を締める方向P1に相対回転させる際に、ドレンボルト20が所定の締付けトルクで螺合されたときに突起側当接面31a及び窪み側当接面32aが当接するように配置されている。なお、上記突起部31及び窪み部32はOリング17の外周側に配置されている(図2参照)。
【0034】
(2)オイルフィルタの作用
次に、上記オイルフィルタ1の作用について説明する。
このオイルフィルタ1の通常使用時には、図1に示すように、キャップ3のドレン穴15にOリング17を介してドレンボルト20がネジ止めされてドレン穴15がシールされている。また、バルブ部材21及びキャップ突起部18の当接によりドレン穴15はメタルシールされている。一方、フィルタエレメント5等の交換作業時には、先ず、ドレン穴15からドレンボルト20を取り外す。次に、パイプ状のドレン用冶具(図示せず)をドレン穴15に挿入してバルブ部材21を押上げてメタルシールを解除する。すると、ハウジング4内部の残留オイルがドレン用冶具を介して外部へ排出される。次いで、その残留オイルが完全に排出されたら、ドレン用冶具30をキャップ3から引き抜いて、ケース2からキャップ3を分離してフィルタエレメント5等の交換作業が行われる。
【0035】
上述の交換作業後には、キャップ3に対してドレンボルト20を締める方向P1に回転させてネジ止めすることとなる。このネジ止めの最終段階には、図7(a)に示すように、キャップ3の突起部31に対してドレンボルト20の窪み部32が入り込み始め、窪み部32が突起側傾斜面31bに沿って移動する。そして、図7(b)に示すように、キャップ3の底部3aにドレンボルト20のつば部23が当接した状態で突起部31が窪み部32内に完全に入り込まれる。その後、図7(c)に示すように、ドレンボルト20が所定の締付けトルクとなったとき、突起側当接面31aに窪み側当接面32aが当接してキャップ3に対するドレンボルト20の締める方向P1への回転が規制される。
なお、キャップ3からドレンボルト20を取り外す際には、上述の締付けと逆の作用が実施される。
【0036】
(3)実施例の効果
以上のように本実施例では、キャップ3に対してドレンボルト20を締める方向P1に相対回転させる際に、キャップ3に対してドレンボルト20を所定の締付けトルクで螺合させたときに、突起側当接面31a及び窪み側当接面32aを当接させるようにしたので、比較的安価な樹脂製のドレンボルト20を用いても、ドレンボルト20の過度の締付けを防止してドレンボルト20の破損を防止できる。
【0037】
また、本実施例では、キャップ3に突起部31を一体に設けると共に、樹脂製のドレンボルト20に窪み部32を一体に設けているので、部品点数を増やすことなく過締付け規制構造30を構成できる。
【0038】
また、本実施例では、キャップ3の突起部31を、突起側当接面31aと突起側傾斜面31bとを備えて構成すると共に、ドレンボルト20の窪み部32を、窪み側当接面32aと窪み側傾斜面32cとを備えて構成すると共に、突起側傾斜面31b及び窪み側傾斜面32cをドレンボルト20のリード角と略同じ角度で傾斜させたので、キャップ3に対してドレンボルト20を相対回転させる際に、窪み部32に対して突起部31が入り込むとき又は脱出するとき窪み部32と突起部31とが無理に圧接して干渉しないようにできる。その結果、突起部31及び窪み部32の破損を抑制できると共にドレンボルト20を無理なく締付けたり緩めたりできる。また、窪み部32に対して突起部31を略嵌合させ得ると共に窪み部32の窪み量を小さな値に設定できるため、ドレンボルト20の窪み部32の近傍においてドレンボルト20の所定の締付けトルクに必要な強度をより確保しやすい。
【0039】
また、本実施例では、突起部31及び窪み部32をOリング17の外周側に設けるようにしたので、窪み部32をドレンボルト20のつば部23の外周寄り側に設けることができ、ドレンボルト20のつば部23において雄ネジ部22の近傍を厚肉化できドレンボルト20の所定の締付けトルクに必要な強度をさらに確保しやすい。
【0040】
さらに、本実施例では、突起部31をキャップ3の底部3aに設けたので、ドレン穴15からドレンボルト20を抜き取った際にキャップ3の底部3aで露出する突起部31の状態を容易に確認できる。また、ドレンボルト20のつば部23の表面側に窪み部32を設けたので、ドレンボルト20ひいては過締付け規制構造30の大型化を防止できる。
【0041】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、キャップ3に突起部31を設けると共に、ドレンボルト20に窪み部32を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、キャップ3に窪み部32を設けると共に、ドレンボルトに突起部31を設けるようにしてもよい。この場合でも、上記実施例と略同様の作用・効果を発揮することに加えて、ドレンボルト20のつば部23を厚肉化できドレンボルト20の所定の締付けトルクに必要な強度を確保しやすい。
【0042】
また、上記実施例では、一対の突起部31及び窪み部32の1組を備えて過締付け規制構造30を構成したが、これに限定されず、例えば、図8に示すように、一対の突起部31及び窪み部32の複数組(図中2組)を備え、各組をドレンボルト20の円周方向に沿って略等間隔(図中180度間隔)で配置するようにしてもよい。これにより、ドレンボルト20の円周方向に沿って均等に過締付け規制が行われるため、ドレンボルト20の過締付けをより確実に防止できる。
【0043】
また、上記実施例では、ドレンボルト20のリード角と略同じ角度で傾斜する突起側傾斜面31aを例示したが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、ドレンボルト20のリード角Cより大きな角度Aで傾斜する突起側傾斜面31bとしてもよい。この場合でも、上記実施例と略同様にして、窪み部32に対して突起部31が入り込むとき又は脱出するとき窪み部32と突起部31とが無理に圧接して干渉しないようにできる。
【0044】
また、上記実施例では、ドレンボルト20のリード角と略同じ角度で傾斜する窪み側傾斜面32cを例示したが、これに限定されず、例えば、図10に示すように、ドレンボルト20のリード角Cより大きな角度Bで傾斜する窪み側傾斜面32cとしてもよい。また、窪み側傾斜面32cを止めて、図10中に仮想線で示すように、断面矩形状の窪み部32としてもよい。これらの場合でも、上記実施例と略同様にして、窪み部32に対して突起部31が入り込むとき又は脱出するとき窪み部32と突起部31とが無理に圧接して干渉しないようにできる。
【0045】
また、上記実施例では、Oリング17の外周側に突起部31及び窪み部32を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、図11に示すように、Oリング17の内周側のキャップ3の底部3a、即ちインサート部材16に突起部31(又は窪み部32)を設けると共に、ドレンボルト20のつば部23の内周寄り側に窪み部32(又は突起部31)を設けるようにしてもよい。この場合、Oリング17により突起部31及び窪み部32が外気に晒されることが無いため突起部31及び窪み部32への塵等の付着による破損等を防止できる。
【0046】
また、上記実施例では、突起部31及び窪み部32からなる過締付け規制構造30を例示したが、これに限定されず、例えば、図12に示すように、キャップ3に設けられた突起部41と、ドレンボルト20のつば部23の外側面から横方に突出して設けられた突起部42とからなる過締付け規制構造40としてもよい。
【0047】
また、上記実施例では、ドレンボルト20のつば部23とキャップ3の底部3aとの間に過締付け規制構造30を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、ドレンボルト20の雄ネジ部22とインサート部材16の上端部との間に過締付け規制構造30を設けるようにしてもよい。
【0048】
さらに、上記実施例では、金属製のインサート部材16をインサート成形してなる樹脂製のキャップ3を例示したが、これに限定されず、例えば、インサート部材16を止めて全て樹脂からなるキャップとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
内燃機関を潤滑するオイルに混入する異物、摩耗粉、カーボン等を濾過するオイルフィルタ、燃料フィルタ及びこれに関連する分野に広く利用される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例に係るオイルフィルタを示す縦断面図である。
【図2】実施例に係るドレン機構を示す縦断面図である。
【図3】ドレンボルトを示す正面図である。
【図4】図3のIV矢視図である。
【図5】実施例に係る過締付け規制構造を示す斜視図である。
【図6】突起部及び窪み部を説明するための説明図である。
【図7】実施例に係る過締付け規制構造の作用を説明するための説明図であり、(a)は突起部が窪み部に入り始めた状態を示し、(b)はドレンボルトのつば部がキャップの底部に圧接した状態を示し、(c)ドレンボルトが所定の締付けトルクで螺合された状態を示す。
【図8】その他の形態の過締付け規制構造を示す斜視図である。
【図9】その他の形態の突起部を説明するための説明図である。
【図10】その他の形態の窪み部を説明するための説明図である。
【図11】その他の形態の過締付け規制構造を説明するための説明図である。
【図12】更にその他の形態の過締付け規制構造を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1;オイルフィルタ、3;キャップ、3a;底部、7,7A;ドレン機構、15;ドレン穴、17;Oリング、20;ドレンボルト、23;つば部、30;過締付け規制構造、31;突起部、32;窪み部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに取り付けられ且つドレン穴を有するキャップと、該キャップに対して相対回転により所定の締付けトルクで螺合され該ドレン穴を閉鎖するドレンボルトと、を備える流体フィルタのドレン機構において、
前記ドレンボルトは樹脂からなり、
前記キャップに設けられる第1規制部と、前記ドレンボルトに設けられ且つ該キャップ及び該ドレンボルトの相対回転により該第1規制部に当接する第2規制部と、を有する過締付け規制構造を備え、
前記第1規制部及び前記第2規制部は、前記キャップに対して前記ドレンボルトを締める方向(P1)に相対回転させる際に、該ドレンボルトが所定の締付けトルクで螺合されたときに当接するように配置されていることを特徴とする流体フィルタのドレン機構。
【請求項2】
前記第1規制部及び前記第2規制部のうちの一方は突起部であり、他方は該突起部が入り込む窪み部であり、
前記突起部は、前記ドレンボルトの軸方向に延びる突起側当接面と、該突起側当接面に連なり且つ前記締める方向(P1)に対して前記ドレンボルトのリード角以上の角度で傾斜する突起側傾斜面と、を有しており、前記窪み部は、前記ドレンボルトの軸方向に延び且つ前記突起側当接面と当接する窪み側当接面と、該窪み側当接面に連なり且つ前記締める方向(P1)に対して前記ドレンボルトのリード角以上の角度で傾斜する窪み側傾斜面と、を有している請求項1記載の流体フィルタのドレン機構。
【請求項3】
前記突起側傾斜面及び前記窪み側傾斜面のそれぞれは、前記締める方向(P1)に対して前記ドレンボルトのリード角と略同じ角度で傾斜している請求項2記載の流体フィルタのドレン機構。
【請求項4】
前記キャップの底部には、前記ドレンボルトのつば部が圧接するシール部材が設けられており、前記第1規制部は、前記キャップの底部の該シール部材の外周側に設けられており、前記第2規制部は、前記ドレンボルトのつば部の該シール部材に圧接する部位の外周側に設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の流体フィルタのドレン機構。
【請求項5】
前記キャップの底部には、前記ドレンボルトのつば部が圧接するシール部材が設けられており、前記第1規制部は、前記キャップの底部の該シール部材の内周側に設けられており、前記第2規制部は、前記ドレンボルトのつば部の該シール部材に圧接する部位の内周側に設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の流体フィルタのドレン機構。
【請求項6】
前記過締付け規制構造は、一対の前記第1規制部及び前記第2規制部の複数組を備え、該複数組のそれぞれは、前記ドレンボルトの円周方向に沿って略等間隔で配置されている請求項1乃至5のいずれか一項に記載の流体フィルタのドレン機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−119390(P2009−119390A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297147(P2007−297147)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】