説明

流体ポンプ

【課題】メンテナンスが容易な流体ポンプを提供する。
【解決手段】流体ポンプ10であって、荷電物を含む流体を流すための流路を形成する管100と、前記管の直径方向に磁界を印加する磁界印加部300と、前記管の直径方向であって、前記磁界の方向と直交する方向に電圧を印加する電圧印加部200と、を備える流体ポンプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ポンプに関し、特に医療用にも利用可能なポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療用ポンプとしては、下記の特許文献1や、非特許文献1に記載のポンプが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3655759号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.bme.gr.jp/Research_info/New_BP.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の医療用ポンプは、機械的機構を有しているため、たとえばフィン(非特許文献1)などの機械的機構に血液が凝固する場合があり、メンテナンスが大変であった。
【0006】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、メンテナンスが容易な流体ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
流体ポンプであって、荷電物質を含む流体を流すための流路を形成する管と、前記管の直径方向に磁界を印加する磁界印加部と、前記管の直径方向であって、前記磁界の方向と直交する方向に電圧を印加する電圧印加部と、を備える流体ポンプ。
この適用例によれば、流体ポンプは、機械的機構を有さないので、メンテナンスが容易である。
【0009】
[適用例2]
適用例1に記載の流体ポンプにおいて、前記管は、主管と、前記主管から分岐する分岐管と、を有し、前記磁界印加部と前記電圧印加部とが、前記分岐管と、前記主管の前記分岐管との分岐部よりも下流側と、にそれぞれ配置されている、流体ポンプ。
この適用例によれば、流体を主管と分岐管に分離できる。
【0010】
[適用例3]
適用例2に記載の流体ポンプにおいて、さらに、前記磁界印加部と前記電圧印加部とを制御する制御部と、前記主管に前記分岐部よりも上流側に、異物検出部を備え、前記制御部は、前記異物検出部の検出結果に基づいて前記磁界印加部と前記電圧印加部とを制御して、前記異物を前記分岐管に流す、流体ポンプ。
この適用例によれば、異物を分岐管に流して回収することが可能である。
【0011】
[適用例4]
適用例2または適用例3に記載の流体ポンプにおいて、前記分岐部に、前記分岐管から前記主管への逆流を抑制する逆流防止弁を備える、流体ポンプ。
この適用例によれば、分岐管から主管への逆流を抑制することができる。
【0012】
[適用例5]
適用例1から適用例4のいずれか一項に記載の流体ポンプにおいて、前記磁界印加部と前記電圧印加部との組み合わせを複数組備え、前記磁界印加部と前記電圧印加部の組み合わせを、前記管内の流路に沿って上流側から下流側に順番に活性化する、流体ポンプ。
この適用例によれば、前記磁界印加部と前記電圧印加部の組み合わせが、前記管内の流路に沿って上流側から下流側に順番に活性化されるので、脈動を生成しやすい。
【0013】
本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、流体ポンプの他、流体中の異物除去装置、流体中の異物除去方法等、様々な形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例の流体ポンプの動作原理を説明する説明図である。
【図2】流体ポンプの構成を示す説明図である。
【図3】電磁コイルを用いて流体ポンプの磁界印加部を構成した例を示す。
【図4】3組の電極を直列に繋いだ例を示している。
【図5】3組の電極を独立に3つ連ねた例を示している。
【図6】第5の実施例を示す説明図である。
【図7】第6の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の実施例:
図1は、本実施例の流体ポンプの動作原理を説明する説明図である。図1(A)は、流体の流れ方向と平行な面で切った断面を示す説明図である。図1(B)は、流体の流れ方向と垂直な面で切った断面を示す説明図である。流体ポンプ10は、管100と、1組の電極200と、電圧印加部250と、図示しない磁界印加部とを備える。管100は、流体800を流すための流路となる。流体800は、荷電した物質802(以下「荷電物質802」と呼ぶ。)を含んでいる。電極200は、管100の直径方向の対向する位置に配置されている。電圧印加部250は、電極200に接続しており、電極200を介して管100の直径方向に電圧を印加する。磁界印加部は、管100の直径方向であって、電圧の印加方向と直交する方向に磁界を印可する。すなわち、磁界の方向と電界の方向は、いずれも直径方向であって、互いに直交している。
【0016】
1組の電極200間に電圧が印加されると、荷電物質802は、電極200間の電界により、プラスの荷電を持っていればマイナス側の電極200(−)方向に移動し、マイナスの電荷を持っていればプラス側の電極200(+)方向に移動する。これより、プラス側の電極200(+)からマイナス側の電極200(−)へ電流が流れる。ここで、管100には、磁界も印加されている。磁界の存在下、荷電物質802は、電流(プラスの荷電物質の移動方向と同じ)と、磁界と、の外積の方向にローレンツ力を受ける。よって、荷電物質802は、電流と磁界の外積方向、すなわち、管の直径と直交する方向に移動する。なお、荷電物質802がプラス、マイナス、いずれの電荷を有していても移動方向は同じである。図1(A)、(B)では、電流の向き(I)、磁界(磁束)の向き(Bt)、及び荷電粒子が受ける力の向き(F)を矢印、矢尻、矢羽の記号で表している。
【0017】
図2は、流体ポンプの構成を示す説明図である。流体ポンプ10は、磁界印加部として、永久磁石300を用いている。図2(A)に示す例では、永久磁石300は、U字の軟磁性体310の両端部にそれぞれ設けられている。一方の永久磁石300のN極から出た磁束Btは、管100を横断し、他方の永久磁石300のS極に入る。また、軟磁性体310は、磁束を通しやすい。したがって、永久磁石300の管100と反対側のN極から出た磁束は、隣接する軟磁性体310を通り、永久磁石300の管100と反対側のS極に入る。図2(B)に示す例では、各永久磁石300の管100との反対側に軟磁性体310を備えているが、軟磁性体310は、U字型になっていない。軟磁性体がこのような形状であっても、磁束を集めることは可能である。すなわち、軟磁性体310は、U字型でなくてもよい。
【0018】
以上、第1の実施例によれば、流体ポンプ10は、磁界の存在下、荷電物質802に電界を印加することにより、荷電物質802を、電界(電流の方向)と磁界との外積方向に移動する事が出来る。ここで、流体ポンプ10は、機械的機構を有していない。そのため、たとえば、流体ポンプ10を血液の循環用ポンプとして用いても、機械的機構に血液が凝固することが起こりにくい。そのため、流体ポンプ10のメンテナンスが容易となる。
【0019】
第2の実施例:
図3は、電磁コイルを用いて流体ポンプの磁界印加部を構成した例を示す。流体ポンプ10は、電磁コイル320と、電源350と、軟磁性体310を備える、電磁コイル320は、電極200の間に生成する電界の方向と直交する方向に配置されている。電磁コイル320のコイル面の法線方向は、管100の直径方向と平行である。電磁コイル320は、電源350と接続されている。電磁コイル320に、電源が印加されると、磁界を生成する。生成する磁界の方向(磁束の方向)は、管100の直径方向であって電極200間に生成する電界の方向と直交する方向である。軟磁性体310は、電磁コイル320のコアとして機能する。軟磁性体310は、電磁コイル320が生成する磁束を集中し、管100を貫く磁束の磁束密度を増大させる。なお、軟磁性体310はなくてもよい。本実施例のように電磁コイル320を用いて流体ポンプの磁界印加部を構成する場合には、管100に印加される磁束密度の大きさを容易に変更することが可能である。
【0020】
第3の実施例:
図4は、3組の電極を直列に繋いだ例を示している。本実施例の流体ポンプ10は、3組の電極200〜202を備える。電極200〜202は、直列に接続している。ここで、磁界印加部は、各組の電極200〜202にそれぞれに対応して3個あってもよく、また、全部の電極200〜202に対応する1個であってもよい。この例では、3組の電極200〜202は、同じ電界を発生させる。その結果、管100の長さ方向の一定の範囲内にある荷電物質802(図1)を移動させることが可能である。すなわち、1組の電極200よりも3組の電極200〜202がある方が、より広範囲の荷電物質802の移動が可能である。なお、3組の電極200〜202は並列接続であってもよい。また、接続数は2以上であれば、何個であってもよい。
【0021】
第4の実施例:
図5は、3組の電極を独立に3つ連ねた例を示している。本実施例の流体ポンプ10は、3組の電極200u〜200wを備える。3組の電極200u〜200wは、互いに接続していない。3組の電極200u〜200wは、この順番に管100の上流側から下流側に向けて並んでいる。この例では、3組の電極200u〜200wの電極間に印可する電圧を独立に制御することが可能である。図5(B)は、3組の電極200u〜200wに印可する各電圧の波形を示す。ここで、曲線に付したu〜wの符合は、それぞれ、電極200u〜200wに印可する電圧を示す曲線であることを意味している。曲線u、v、wは、位相がπ/3ずつずれている。したがって、3組の電極200u〜200wを管100の上流側から下流側に向かって順番に活性化することができる。すなわち、この実施例によれば、3組の電極200u〜200wを順番に活性化することにより、流体の流れに脈動を作ることが可能となる。なお、電界の向き及び3組の電極200u〜200wの活性化の順番を逆にすることにより、荷電物質802を下流側から上流側に順送りに移動することが可能である。なお、電極200の数は2以上であればよく、n個(nは2以上の整数)の場合には、位相をπ/nずつずらせばよい。
【0022】
第5の実施例:
図6は、第5の実施例を示す説明図である。第5の実施例の流体ポンプ10は、主管100Aと、分岐管100Bと、を有している。流体ポンプ10は、分岐管100Bは、電極200Bを有し、主管100Aは、分岐管100Bが分岐する分岐部よりも下流側に、電極200Aを備える。各電極200A、200Bは、本実施例では3組であるが、1組あるいは、複数組であってもよい。また、主管100Aは、分岐管100Bが分岐する分岐部よりも上流側に、電極を備えてもよい。
【0023】
図6(A)は、流体を主管100Aから分岐管100Bに流す場合を示す説明図である。この場合、電極200Bに高電圧(電界強度EH)を印加し、電極200Aには、低電圧(電界強度EL)を印可する。ここで、EH>ELである。EL=0であってもよい。分岐管100Bの荷電物質802には強いローレンツ力が働き、主管100Aの分岐管100Bが分岐する分岐部よりも下流側の荷電物質802には、分岐管100Bの荷電物質にかかるよりも弱いローレンツ力が働く。その結果、流体ポンプ10を流れる荷電物質は、分岐管100Bに流れ易い。
【0024】
図6(B)は、流体を分岐管100Bから主管100Aに戻す場合を示す説明図である。この場合、電極200Bには、図6(A)に示したのとは反対側の電界が分岐管100B掛かるように電圧を印加する。また、電極200Aには、図6(A)に示したときよりも強い電界が主管100Aに掛かるように電圧を印可する。なお、主管100Aに掛かる電界の向きは、図6(A)に示す場合と同じである。この場合、分岐管100B内の荷電物質802に掛かるローレンツ力の向きは、分岐部に向かう方向である。一方、主管100A内の荷電物質802に掛かるローレンツ力の向きは、分岐部から下流に向かう方向である。したがって、分岐管100Bから主管100Aの分岐部よりも下流側に荷電物質802を移動することが可能である。
【0025】
図6(C)は、第5の実施例の応用例を示す。流体ポンプ10の主管100Aは、生体の血管500に接続されている。分岐管100Bは、接続管600を介して、処理部650と接続されている。この実施例によれば、図6(A)に示すように電極200A、200Bに電圧を印可することにより、生体の血液の一部を分岐管100Bから、処理部650に送ることができる。処理部650は、血液中の異物や不純物の除去などの処理を行う。その後、図6(B)に示すように電極200A、200Bに電圧を印可することにより、流体ポンプ10を介して処理後の血液を血管500に戻すことが可能である。この実施例によれば、血液中の異物や、不純物を除去することができる。
【0026】
第6の実施例:
図7は、第6の実施例を示す説明図である。この実施例は、図6に示す流体ポンプ10の構成に加えて、CPUシステム700と、非血液検出部710と、逆止弁105とを備える。本実施例では、主管100Aの分岐部よりも下流側に電極を備えていないが、備える構成であってもよい。非血液検出部710は、主管100Aの分岐部よりも上流側に配置されており、主管100Aを流れる異物804を検知する。検知手段としては、例えば、赤外線を用い、赤外線の陰を用いて異物を検出することが可能である。なお、赤外線のほか、X線を用いる等、様々な検知手段を採用することができる。CPUシステム700は、非血液検出部710の異物検知結果に基づいて、異物804が分岐管100Bに流れるように、電極200Bの活性化・非活性化を制御する。すなわち、異物804が分岐部近傍に来たときに電極200Bを活性化すれば、異物804を分岐管100Bに流すことができる。逆止弁105は、主管100Aと分岐管100Bとの分岐部に設けられている。逆止弁105は、分岐管100Bに流れ込んだ異物が主管100Aに逆流しないように、分岐部における流体の流れを、主管100Aから分岐管100Bへの一方向に制限する。
【0027】
本実施例によれば、異物804を検知し、分岐管100Bに移動することができる。また、本実施例では、異物804が分岐部近傍に来たときに電極200Bを活性化するので、分岐管100Bに流す流体の量を少なくすることができる。例えば、この流体ポンプを医療用に用いた場合、生体から失われる血液の量を最小限に抑えることが出来るので、生体の負担を軽減できる。
【0028】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0029】
10…流体ポンプ
100…管
100A…主管
100B…分岐管
105…逆止弁
200、200A、200B…電極
250…電圧印加部
300…永久磁石
310…軟磁性体
320…電磁コイル
350…電源
500…血管
600…接続管
650…処理部
700…CPUシステム
710…非血液検出部
800…流体
802…荷電物質
804…異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ポンプであって、
荷電物を含む流体を流すための流路を形成する管と、
前記管の直径方向に磁界を印加する磁界印加部と、
前記管の直径方向であって、前記磁界の方向と直交する方向に電圧を印加する電圧印加部と、
を備える流体ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の流体ポンプにおいて、
前記管は
主管と、
前記主管から分岐する分岐管と、
を有し、
前記磁界印加部と前記電圧印加部とが、前記分岐管と、前記主管の前記分岐管との分岐部よりも下流側と、にそれぞれ配置されている、流体ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の流体ポンプにおいて、さらに
前記磁界印加部と前記電圧印加部とを制御する制御部と、
前記主管に前記分岐部よりも上流側に、異物検出部を備え、
前記制御部は、前記異物検出部の検出結果に基づいて前記磁界印加部と前記電圧印加部とを制御して、前記異物を前記分岐管に流す、流体ポンプ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の流体ポンプにおいて、
前記分岐部に、前記分岐管から前記主管への逆流を抑制する逆流防止弁を備える、流体ポンプ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の流体ポンプにおいて、
前記磁界印加部と前記電圧印加部との組み合わせを複数組備え、
前記磁界印加部と前記電圧印加部の組み合わせを、前記管内の流路に沿って上流側から下流側に順番に活性化する、流体ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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