説明

流体ポンプ

【課題】効率の高い流体ポンプを提供する。
【解決手段】本発明の流体ポンプ10では、ロータマグネット48の外周部に、樹脂部54が設けられており、この樹脂部54の外周面54Aには、ロータ20の周方向及び軸方向に沿って広がる網目状の第一凹凸面58が形成されている。従って、この第一凹凸面58に気泡62が残留することにより、ロータ20の回転に伴う抵抗を低減することができる。しかも、この第一凹凸面58は、ロータ20の周方向及び軸方向に沿って広がる網目状に形成されているので、この第一凹凸面58から気泡62が一気に抜けてしまうことを抑制することができる。この結果、流体ポンプ10の効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、羽根車を備えたターボ型ポンプが知られている。また、このターボ型ポンプのなかには、羽根車に後面シュラウドが設けられると共に、この後面シュラウドに羽根車の回転軸を中心に放射状に延びる複数の細溝が形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−254695号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のポンプでは、ロータの外周面と、このロータを収容するモータ室の内周面とがいずれも平滑面によって形成されていた。このため、ロータの回転に伴う抵抗が大きかった。また、従来のように、インペラの回転に伴う抵抗を低減するために、複数の細溝に気泡を留めるようにしても、この細溝の長手方向に気泡が延びるため、この細溝から気泡が一気に抜けてしまうことがあった。このため、細溝から気泡が一気に抜けてしまうことで、インペラの回転に伴う抵抗が増加することがあった。従って、効率の高いポンプを提供するためには、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、効率の高い流体ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の流体ポンプは、吸入口及び排出口と、前記吸入口及び前記排出口の各々と連通するポンプ室とを有するポンプハウジングと、前記ポンプ室に回転可能に収容されたインペラと、前記インペラと同軸上に配置されて前記インペラと一体回転可能とされたロータマグネットと、前記ロータマグネットの外周部に設けられた樹脂部とを有するロータと、前記ロータに対して回転磁界を形成するステータと、前記ポンプ室と連通し前記ロータを回転可能に収容するモータ室を有すると共に、前記ステータを保持するモータハウジングと、前記樹脂部の外周面、及び、前記モータ室の内周面の少なくとも一方に形成されると共に、前記ロータの周方向及び軸方向に沿って広がる網目状の凹凸面と、を備えている。
【0007】
この流体ポンプによれば、ロータマグネットの外周部に設けられた樹脂部の外周面、及び、ロータを回転可能に収容するモータ室の内周面の少なくとも一方には、ロータの周方向及び軸方向に沿って広がる網目状の凹凸面が形成されている。従って、この凹凸面に気泡が残留することにより、ロータの回転に伴う抵抗を低減することができる。しかも、この凹凸面は、ロータの周方向及び軸方向に沿って広がる網目状に形成されているので、この凹凸面から気泡が一気に抜けてしまうことを抑制することができる。この結果、流体ポンプの効率を高めることができる。
【0008】
請求項2に記載の流体ポンプは、請求項1に記載の流体ポンプにおいて、前記樹脂部の外周面、及び、前記モータ室の内周面の少なくとも一方に、前記凹凸面としての第一凹凸面が形成され、前記モータハウジングに、前記インペラの軸方向端面と対向する対向面が形成され、前記軸方向端面及び前記対向面の少なくとも一方に、前記インペラの径方向及び周方向に沿って広がる網目状の第二凹凸面が形成された構成とされている。
【0009】
この流体ポンプによれば、樹脂部の外周面、及び、モータ室の内周面の少なくとも一方に形成された第一凹凸面に加え、インペラの軸方向端面、及び、モータハウジングの対向面の少なくとも一方にも、インペラの径方向及び周方向に沿って広がる網目状の第二凹凸面が形成されている。従って、この第二凹凸面においても気泡が残留することにより、ロータの回転に伴う抵抗をより一層低減することができるので、流体ポンプの効率をさらに高めることができる。
【0010】
請求項3に記載の流体ポンプは、請求項1又は請求項2に記載の流体ポンプにおいて、前記凹凸面が、前記樹脂部の外周面に形成され、前記ロータマグネットが、前記樹脂部を一体に有するボンド磁石とされた構成とされている。
【0011】
この流体ポンプによれば、ロータマグネットは、樹脂部を一体に有するボンド磁石とされているので、例えば、樹脂成形やショットブラスト等により、樹脂部の外周面に凹凸面を容易に形成することができる。これにより、コストアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る流体ポンプの側面断面図である。
【図2】図1に示される流体ポンプの要部拡大図である。
【図3】図1に示される第一凹凸面の要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
図1に示されるように、本発明の一実施形態に係る流体ポンプ10は、ポンプハウジング12と、モータハウジング14と、エンドハウジング16と、インペラ18と、ロータ20と、ステータ22と、モータシャフト24と、駆動回路26とを備えている。
【0015】
ポンプハウジング12は、後述するモータハウジング14側に開口する凹状のポンプ室28を有している。このポンプ室28は、ポンプハウジング12に形成された吸入口30及び排出口32の各々と連通されている。このポンプ室28における吸入口30側には、傾斜部34が形成されている。この傾斜部34は、ポンプ室28の径方向内側に向かうに従って吸入口30側に向かうように、ポンプ室28の径方向に対して傾斜して形成されている。
【0016】
モータハウジング14は、上述のポンプハウジング12と流体ポンプ10の軸方向に並んで設けられており、ポンプハウジング12と固定されている。このモータハウジング14は、流体ポンプ10の軸方向に沿って延びるモータ室36を有している。モータ室36は、ポンプハウジング12側に開口し、ポンプ室28と連通されている。
【0017】
また、このモータ室36の底部には、モータ室36の開口側に向けて突出する筒状のシャフト支持部38が形成されており、このシャフト支持部38には、モータシャフト24が例えば圧入等により支持されている。一方、モータ室36のポンプ室28側には、モータ室36よりも拡径された拡径部40が形成されている。
【0018】
エンドハウジング16は、モータハウジング14を挟んだポンプハウジング12と反対側に配置されており、モータハウジング14に固定されている。このエンドハウジング16は、モータハウジング14との間に収容空間42を形成しており、この収容空間42には、駆動回路26が収容されている。駆動回路26は、後述するステータ22に電流を供給する構成とされている。
【0019】
インペラ18は、上述のポンプ室28に回転可能に収容されている。このインペラ18は、放射状に延びる複数の羽根44を有している。このインペラ18は、回転に伴って、吸入口30から流体を吸入してポンプ室28に搬送すると共に、ポンプ室28に搬送された流体を排出口32から排出する構成とされている。
【0020】
ロータ20は、環状に形成されたホルダ部材46と、このホルダ部材46に保持されインペラ18と同軸上に配置されたロータマグネット48とを有している。ロータマグネット48の軸方向両側の端部と、外周部とには、樹脂部50,52,54がそれぞれ形成されている。このホルダ部材46及びロータマグネット48を含むロータ20の全体は、インペラ18と一体回転可能とされており、上述のモータ室36に回転可能に収容されている。また、このロータ20は、軸受56を介してモータシャフト24に回転可能に支持されている。
【0021】
ステータ22は、モータ室36の径方向外側に設けられており、モータハウジング14に保持されている。このステータ22は、上述のロータ20と共にブラシレスモータを構成しており、駆動回路26から電流が供給された場合にロータ20に対して回転磁界を形成する。
【0022】
また、図2に示されるように、上述の樹脂部54の外周面54Aは、モータ室36の内周面36Aと径方向に対向されており、拡径部40には、インペラ18におけるモータ室36側の軸方向端面18Aと軸方向に対向する対向面40Aが形成されている。さらに、傾斜部34には、インペラ18におけるモータ室36と反対側の端面18Bと対向する傾斜面34Aが形成されている。これらの各面の間の隙間は、例えば、1.0mm以下の微小隙間とされている。
【0023】
そして、これらの面のうち外周面54Aには、ロータ20の周方向及び軸方向に沿って広がる網目状の第一凹凸面58(図3参照)が形成されている。同様に、軸方向端面18Aにも、インペラ18の径方向及び周方向に沿って広がる網目状の第二凹凸面60(図3参照)が形成されている。
【0024】
なお、第一凹凸面58は、本発明における凹凸面に相当する。また、上述の網目状とは、縦横方向に広がる多数の凹凸(高さ、ピッチ共に、略同程度の数値の組み合わせであって、5μm〜100μm程度の凹凸、つまり、例えば、高さ約50μmの場合は、ピッチも約50μmとなる)を有する態様であり、梨地状とも捉えることが可能である。また、この網目状の凹凸は、例えば、樹脂成形や、ショットブラスト等により形成することが可能である。
【0025】
そして、この流体ポンプ10では、駆動回路26からステータ22に電流が供給されると、ステータ22によって回転磁界が形成され、これにより、ロータ20と共にインペラ18が回転する。また、インペラ18が回転すると、吸入口30から流体が吸入されてポンプ室28に搬送され、ポンプ室28に搬送された流体は排出口32から排出される。
【0026】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0027】
この流体ポンプ10によれば、ロータマグネット48の外周部に設けられた樹脂部54の外周面54Aには、ロータ20の周方向及び軸方向に沿って広がる網目状の第一凹凸面58(図3参照)が形成されている。従って、この第一凹凸面58に気泡62が残留することにより、ロータ20の回転に伴う抵抗を低減することができる。しかも、この第一凹凸面58は、ロータ20の周方向及び軸方向に沿って広がる網目状に形成されているので、この第一凹凸面58から気泡62が一気に抜けてしまうことを抑制することができる。この結果、流体ポンプ10の効率を高めることができる。
【0028】
しかも、この流体ポンプ10によれば、上述の第一凹凸面58に加え、インペラ18の軸方向端面18Aにも、インペラ18の径方向及び周方向に沿って広がる網目状の第二凹凸面60(図3参照)が形成されている。従って、この第二凹凸面60においても気泡62が残留することにより、ロータ20の回転に伴う抵抗をより一層低減することができるので、流体ポンプ10の効率をさらに高めることができる。
【0029】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0030】
本実施形態では、樹脂部54の外周面54Aにのみ第一凹凸面58が形成されていたが、モータ室36の内周面36Aにも第一凹凸面58が形成されても良い。また、樹脂部54の外周面54Aに第一凹凸面58が形成されずに、モータ室36の内周面36Aにのみ第一凹凸面58が形成されても良い。
【0031】
また、本実施形態では、インペラ18の軸方向端面18Aにのみ第二凹凸面60が形成されていたが、モータハウジング14に形成された対向面40Aにも第二凹凸面60が形成されても良い。また、軸方向端面18Aに第二凹凸面60が形成されずに、対向面40Aにのみ第二凹凸面60が形成されても良い。
【0032】
なお、モータ室36の内周面36Aに第一凹凸面58が形成される場合、及び、対向面40Aに第二凹凸面60が形成される場合には、これら凹凸面の形成に、樹脂成形や、ショットブラスト等が用いられても良い。また、樹脂成形する場合には、必要に応じて各部材が適宜分割されても良い。
【0033】
また、本実施形態では、樹脂部54の外周面54Aに第一凹凸面58が形成され、インペラ18の軸方向端面18Aに第二凹凸面60が形成されていたが、インペラ18の軸方向端面18Aに第二凹凸面60が形成されずに、樹脂部54の外周面54Aにのみ第一凹凸面58が形成されても良い。
【0034】
また、本実施形態において、ロータマグネット48は、樹脂部54を一体に有するボンド磁石とされていても良い。このように構成されていると、例えば、樹脂成形やショットブラスト等により、樹脂部54の外周面54Aに凹凸面を容易に形成することができる。これにより、コストアップを抑制することができる。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0036】
10・・・流体ポンプ、12・・・ポンプハウジング、14・・・モータハウジング、16・・・エンドハウジング、18・・・インペラ、18A・・・軸方向端面、20・・・ロータ、22・・・ステータ、24・・・モータシャフト、26・・・駆動回路、28・・・ポンプ室、30・・・吸入口、32・・・排出口、34・・・傾斜部、34A・・・傾斜面、36・・・モータ室、36A・・・内周面、38・・・シャフト支持部、40・・・拡径部、40A・・・対向面、42・・・収容空間、44・・・羽根、46・・・ホルダ部材、48・・・ロータマグネット、54・・・樹脂部、54A・・・外周面、56・・・軸受、58・・・第一凹凸面(凹凸面)、60・・・第二凹凸面、62・・・気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入口及び排出口と、前記吸入口及び前記排出口の各々と連通するポンプ室とを有するポンプハウジングと、
前記ポンプ室に回転可能に収容されたインペラと、
前記インペラと同軸上に配置されて前記インペラと一体回転可能とされたロータマグネットと、前記ロータマグネットの外周部に設けられた樹脂部とを有するロータと、
前記ロータに対して回転磁界を形成するステータと、
前記ポンプ室と連通し前記ロータを回転可能に収容するモータ室を有すると共に、前記ステータを保持するモータハウジングと、
前記樹脂部の外周面、及び、前記モータ室の内周面の少なくとも一方に形成されると共に、前記ロータの周方向及び軸方向に沿って広がる網目状の凹凸面と、
を備えた流体ポンプ。
【請求項2】
前記樹脂部の外周面、及び、前記モータ室の内周面の少なくとも一方には、前記凹凸面としての第一凹凸面が形成され、
前記モータハウジングには、前記インペラの軸方向端面と対向する対向面が形成され、
前記軸方向端面及び前記対向面の少なくとも一方には、前記インペラの径方向及び周方向に沿って広がる網目状の第二凹凸面が形成されている、
請求項1に記載の流体ポンプ。
【請求項3】
前記凹凸面は、前記樹脂部の外周面に形成され、
前記ロータマグネットは、前記樹脂部を一体に有するボンド磁石とされている、
請求項1又は請求項2に記載の流体ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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