説明

流体供給異常検知システム及び流体供給異常検知方法

【課題】流体供給異常検知システム及び流体供給異常検知方法において、レセプタクル内のシール部材の正規の設置位置からの外れを検知可能とすることである。
【解決手段】レセプタクル12に設けた接続口28に小径Oリング14を係止する。レセプタクル12に設けたガス供給流路26内の小径Oリング14の正規の係止位置よりもガス下流側に、外周部にフィルタ本体部を有するフィルタ部材18を設ける。フィルタ部材18は、小径Oリング14が正規の係止位置から外れた場合に、ガス供給流路26の内面との間で小径Oリング14を受け止め可能とする。異常検知装置20は、大径ガス供給ノズル22からガス供給流路26への燃料ガスの供給時に、大径ガス供給ノズル22またはガス供給流路26内の圧力を検知し、検知した圧力が予め設定された閾値以上に上昇した場合に異常と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体供給流路を有し、流体供給ノズルと流体貯留部とを接続するためのレセプタクルと、流体供給流路内に係止されたシール部材とを備える流体供給異常検知システムと流体供給異常検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、燃料電池を搭載した燃料電池車を使用することが考えられている。燃料電池は、それぞれが反応ガスである燃料ガスと酸化ガスとを燃料電池スタック供給されることにより、電気化学反応により発電する。燃料ガスは、例えば、水素を含む水素ガスであり、酸化ガスは、例えば空気である。燃料電池車に搭載する燃料タンクである、車載タンクに燃料ガスを充填する場合には、燃料ガス充填所において、ガス供給ノズルの端部を燃料電池車のレセプタクルに接続し、燃料ガス充填タンクから燃料ガスを供給することが考えられている。レセプタクルは、ガス供給ノズルの端部を着脱可能とし、燃料電池車において、車載タンクと配管等を介して接続されている。
【0003】
これに対して、特許文献1には、レセプタクルと、弁体と、ホールICと、脱着検出スイッチと、車載コンピュータとを有するガス充填故障診断システムが記載されている。レセプタクルには、燃料ガスの供給元の先端部の充填ノズルが接続される。弁体は、内部に磁石を備え、レセプタクル内の燃料ガス流路内に配置されている。ホールICは、弁体の開弁状態ならびに閉弁状態を検出し、車載コンピュータに信号を送る。脱着検出スイッチは、充填ノズルがレセプタクルに接続されたか否かを検出し、車載コンピュータに接続される。車載コンピュータは、ホールIC、脱着検出スイッチの信号を読み込み、故障診断の動作を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−177253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から考えられているレセプタクルに流体供給ノズルである、ガス供給ノズルを接続し、流体であるガスをガス供給元から供給する場合、レセプタクルに、レセプタクルのガス供給ノズル接続口とガス供給ノズルとの間をシールするためのOリング等のシール部材を設けることが考えられている。また、ガス供給ノズル接続口には、直径等、種類の異なる複数のガス供給ノズルを別々に接続可能とすることも考えられている。例えば、35MPa等の比較的低い圧力で高圧ガスをレセプタクルに供給する場合に、ガス供給ノズルとして、直径の大きいものを使用し、70MPa等の比較的高い圧力で高圧ガスをレセプタクルに供給する場合に、ガス供給ノズルとして、直径の小さいものを使用することが考えられている。この場合に、ガス供給ノズルとして、例えば、35MPaガス充填用と、70MPaガス充填用との異なる種類のガス供給ノズルを接続可能な接続口を、レセプタクルに設ければ、1つのレセプタクルで、両方の種類のガス供給ノズルを別々に接続することが可能となる。この場合、例えば、接続口には、35MPaガス充填用のガス供給ノズル接続用の大径の接続部がレセプタクルの開口側に設けられ、70MPaガス充填用のガス供給ノズル接続用の小径の接続部がレセプタクルの奥側に設けられる。
【0006】
ただし、このように異なる種類の接続部を接続口に設ける場合、接続口に2個のガス供給ノズルに対するシールを図るための、2個のシール部材を設ける必要がある。このため、例えば、35MPaガス充填用の大径の接続部にガス供給ノズルを接続して、ガスをレセプタクルに供給する場合に、70MPaガス充填用の小径の接続部に設けられた小径接続部用シール部材がシールのために使用されることがなく、ガス供給ノズルにより抑えられることがない。そして、この状態で、ガスが供給される場合に、小径接続部用シール部材が正規の設置位置から外れてガス下流側に流れてしまう可能性がないとはいえない。このように小径接続部用シール部材が外れた場合、後で、70MPaガス充填用の小径の接続部にガス供給ノズルを接続して、ガスをレセプタクルに供給しようとした場合に、ガス供給ノズルと小径の接続部との間が十分にシールされない可能性がある。
【0007】
これに対して、特許文献1に記載されたガス充填故障診断システムの場合には、このようなシール部材の外れを検知することを考慮していないだけでなく、ガス供給ノズルと接続口との間をシール部材によりシールすることさえ考慮されていない。
【0008】
また、流体がガスである場合の他、流体がガソリン等の液体である場合でも、上記と同様の不都合が生じる可能性がないとはいえない。
【0009】
本発明の目的は、流体供給異常検知システム及び流体供給異常検知方法において、レセプタクル内のシール部材の正規の設置位置からの外れを検知可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る流体供給異常検知システムは、内部に流体供給流路と、流体供給流路に通じる接続口とを、それぞれ有し、接続口に接続された流体供給ノズルと流体貯留部とを接続するためのレセプタクルと、接続口に設置されたシール部材と、流体供給流路内のシール部材の正規の設置位置よりも流体下流側に設けられ、その外周部と流体供給流路の内周部との間の隙間が、流体供給流路の流体の流れ方向中間部の流路を構成し、シール部材が正規の設置位置から外れた場合に、流体供給流路の内面との間でシール部材を受け止め可能とするシール部材受け止め部材と、流体供給流路への流体の供給時に、流体供給ノズルまたは流体供給流路内の圧力を検知し、検知した圧力が予め設定された閾値以上に上昇した場合に異常と判定し、異常検知信号を出力する異常検知装置と、を備えることを特徴とする流体供給異常検知システムである。
【0011】
また、本発明に係る流体供給異常検知システムにおいて、好ましくは、流体は、ガスである。
【0012】
また、本発明に係る流体供給異常検知システムにおいて、好ましくは、異常検知装置は、流体供給ノズルまたは流体供給流路内の圧力を検知する圧力検知手段と、流体供給ノズルまたは流体供給流路内の圧力が予め設定された閾値以上に上昇した場合に、シール部材が正規の設置位置から外れた異常であることを判定する異常判定手段と、異常判定手段により異常と判定された場合に、流体供給ノズルによる流体供給作動を停止するように、流体供給元と流体供給ノズルとの間に設けられた流体供給弁を閉弁させる流体供給作動停止制御手段とを備える。
【0013】
また、本発明に係る流体供給異常検知システムにおいて、好ましくは、接続口は、流体供給ノズルを接続する接続部よりも流体下流側に設けられて、流体供給ノズルの直径よりも小さな直径を有する小径流体供給ノズルの端部を接続可能とする小径接続部を備え、シール部材は、小径接続部に小径流体供給ノズルが接続された場合に、小径流体供給ノズルの端部と接続口との間をシールするOリングである。
【0014】
また、本発明に係る流体供給異常検知システムにおいて、好ましくは、シール部材受け止め部材は、外周部に流路形成筒状部材本体部が設けられた筒部と、筒部の流体の上流側端部に設けられた蓋部と、を備える流路形成筒状部材であり、流体供給流路の流体上流側に供給された流体は、筒部の外周側から流路形成筒状部材本体部を通じて筒部内に流れることを可能とする。
【0015】
また、より好ましくは、シール部材は、Oリングであり、流路形成筒状部材を構成する蓋部は、外径が流体上流側から下流側に向かうにしたがって大きくなるように傾斜したテーパ面を有する。
【0016】
また、本発明に係る流体供給異常検知システムは、本発明に係る上記の流体供給異常検知システムを使用する流体供給異常検知方法であって、異常検知装置により、流体供給流路への流体の供給時に、流体供給ノズルまたは流体供給流路内の圧力を検知し、検知した圧力が予め設定された閾値以上に上昇した場合に異常と判定し、異常検知信号を出力することを特徴とする流体供給異常検知方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る流体供給異常検知システム及び流体供給異常検知方法によれば、レセプタクルに設けられた接続口からシール部材が外れて、シール部材受け止め部材と流体供給流路の内面との間で受け止められた場合に、シール部材受け止め部材の外周部と流体供給流路の内周部との間の隙間により構成される、流体供給流路の流体の流れ方向中間部の流路の少なくとも一部が塞がれる。このため、流体供給ノズルから流体供給流路への流体の供給時に、流体供給ノズルまたは流体供給流路内の圧力が上昇する。したがって、異常検知装置により、流体供給ノズルまたは流体供給流路内の検知圧力が閾値以上に上昇した場合に異常と判定し、異常検知信号を出力することにより、レセプタクル内のシール部材の正規の設置位置からの外れを検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態の流体供給異常検知システムである、ガス供給異常検知システムの略構成図である。
【図2】レセプタクルに大径ガス供給ノズルを接続した状態を、図1よりも詳しく示す部分拡大断面図である。
【図3】レセプタクルに小径ガス供給ノズルを接続した状態を、図1よりも詳しく示す部分拡大断面図である。
【図4】フィルタ部材の一部を示す斜視図である。
【図5】図1のレセプタクルの全体構造を詳しく示す半部断面図である。
【図6】図1において、小径Oリングが正規の設置位置から外れて、ガス下流側のガス供給流路の内面とフィルタ部材との間に受け止められた状態を示す略構成図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の流体供給異常検知システムである、ガス供給異常検知システムを構成するOリング受け止め部材を示す略斜視図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態の流体供給異常検知システムである、ガス供給異常検知システムにおいて、図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の発明の実施の形態]
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図6は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1は、本実施の形態の流体供給異常検知システムである、ガス供給異常検知システムの略構成図である。図2は、レセプタクルに大径ガス供給ノズルを接続した状態を、図1よりも詳しく示す部分拡大断面図である。図3は、レセプタクルに小径ガス供給ノズルを接続した状態を、図1よりも詳しく示す部分拡大断面図である。図4は、フィルタ部材の一部を示す斜視図である。図5は、図1のレセプタクルの全体構造を詳しく示す半部断面図である。図6は、図1において、小径Oリングが正規の設置位置から外れて、ガス下流側のガス供給流路の内面とフィルタ部材との間に受け止められた状態を示す略構成図である。
【0020】
本実施の形態の流体供給異常検知システムである、ガス供給異常検知システム10は、高圧流体であり、高圧ガスである、水素ガス等の燃料ガスを燃料とする燃料電池車等の車両に燃料ガスを供給する場合において、異常を検知するために使用する。このために、ガス供給異常検知システム10は、レセプタクル12と、シール部材である小径Oリング14及び大径Oリング16と、シール部材受け止め部材であり、流路形成筒状部材であるフィルタ部材18と、異常検知装置20とを備える。
【0021】
レセプタクル12は、図示しない車両に設けられるガス充填口として機能するもので、燃料ガスのガス供給元である、燃料ガス供給源(図示せず)に接続された大径ガス供給ノズル22または小径ガス供給ノズル24(図3)から、燃料ガスの供給を受ける。図1、図2に示すような大径ガス供給ノズル22は、例えば、35MPa等の比較的低い圧力で燃料ガスをレセプタクル12に供給する場合に使用するもので、直径が比較的大きくなっている。また、図3に示すような小径ガス供給ノズル24は、例えば、70MPa等の比較的高い圧力で燃料ガスをレセプタクル12に供給する場合に使用するもので、直径が比較的小さくなっている。このように供給ガスの圧力の違いにより直径の異なるノズルを使用することで、比較的低い圧力と比較的高い圧力との一方の圧力のみでしかガスを受け入れることができない別のレセプタクル(図示せず)にノズル22(または24)を接続する場合でも、大径ガス供給ノズル22または小径ガス供給ノズル24が誤って異なる圧力用の別のレセプタクルに接続されることを有効に防止できる。
【0022】
図1に戻り、レセプタクル12は、内部にガス供給流路26と接続口28とを、それぞれ有する。接続口28は、ガス供給流路26のガス上流側に設けられ、ガス供給流路26に通じる。レセプタクル12は、接続口28に接続された大径ガス供給ノズル22または小径ガス供給ノズル24(図3)と、ガス貯留部である車載タンク30とを接続するために使用する。なお、燃料ガス供給源は、例えば、燃料ガス充填所(図示せず)に設置される。
【0023】
レセプタクル12に燃料ガスを供給する場合には、接続口28に大径ガス供給ノズル22または小径ガス供給ノズル24(図3)の端部を接続する。この状態で、燃料ガスは、接続口28からガス供給流路26に送られ、例えば、図1に矢印αで示す方向に流れて、配管32を介してレセプタクル12に接続された車載タンク30に送られる。
【0024】
また、小径Oリング14及び大径Oリング16は、それぞれ接続口28の内周部に設置され、すなわち係止されている。図3に示すように、小径Oリング14は、小径ガス供給ノズル24の端部外周面と、接続口28内周面との間をシールするために使用する。また、図2に示すように、大径Oリング16は、大径ガス供給ノズル22の端部外周面と、接続口28内周面との間をシールするために使用する。大径Oリング16は、接続口28の開口側に設けられた大径接続部34の内周面に形成された大径係止溝36に係止されている。また、小径Oリング14は、接続口28のうち、大径接続部34よりもガス下流側に設けられた小径接続部38に形成された小径係止溝40に係止されている。小径係止溝40は、大径係止溝36よりも小径である。また、小径係止溝40の、小径Oリング14を挟む位置には、それぞれ樹脂製の一対のバックアップリング42が設けられている。小径Oリング14の自由状態での直径は、大径Oリング16の自由状態での直径よりも小さい。このように接続口28は、大径ガス供給ノズル22の端部を接続可能とする大径接続部34と、小径ガス供給ノズル24の端部を接続可能とする小径接続部38とを備える。また、図3に示すように、小径Oリング14は、小径接続部38に小径ガス供給ノズル24が接続された場合に、小径ガス供給ノズル24の端部と接続口28との間をシールする。
【0025】
また、図2、図3に示すように、流路形成筒状部材であるフィルタ部材18は、レセプタクル12の内部に設けられたガス供給流路26のガスの流れ方向中間部に設けられて、フィルタ部材18を通過する燃料ガス中の異物を除去する機能を有する。フィルタ部材18は、ガス供給流路26内の小径Oリング14の正規の係止位置よりもガス下流側に設けられ、フィルタ部材18の外周部とガス供給流路26の内周面との間の隙間44が、ガス供給流路26のガスの流れ方向中間部の流路を構成する。このために、図4に示すように、フィルタ部材18は、外周部に流路形成筒状部材本体部である、フィルタ本体部46が設けられた円筒状の筒部48と、筒部48のガスの上流側端部(図4の右端部)に設けられた蓋部50とを備える。蓋部50は、略円錐台状に形成されている。フィルタ本体部46は、蓋部50の大径側端部に結合され、複数の小孔を有する。また、フィルタ本体部46の外径は、フィルタ部材18を設置するガス供給流路26(図2、図3)の内径よりも小さくなっている。このため、フィルタ部材18をガス供給流路26に設置した状態で、フィルタ部材18の外周縁部とガス供給流路26の内周面との間に隙間44が形成され、隙間44が流路を構成する。また、フィルタ部材18を構成する蓋部50は、外径がガス上流側から下流側に向かうにしたがって大きくなるように傾斜したテーパ面52を有する。
【0026】
図5に示すように、レセプタクル12に設けられたガス供給流路26の内部で、ガスの流れ方向に関してフィルタ部材18よりも下流側に、逆止弁54を設けている。逆止弁54は、弁体56と、弁体56の端部を押し付ける弁座58と、弾力付与手段であるばね60とを備える。ばね60は、レセプタクル12の壁面と、弁体56との間に設けられ、弁体56に弁座58に向かう方向の弾力を付与している。弁体56がばね60の弾力に抗して弁座58から離れる、すなわち開弁すると、ガス供給流路26内のガス上流側から送られた燃料ガスは、弁体56と弁座58との間部分、弁体56に外周面と内周面とを通じさせるように形成された孔部62を通じて、レセプタクル12内から外部の配管32(図1)へ送ることができる。すなわち、この場合には、図5において、大径ガス供給ノズル22から、燃料ガスが矢印β方向に流れてレセプタクル12内を通じて外部の配管32側(図5の右側)に流れる。なお、図5では、小径Oリング14を2個所に設けたような図示をしているが、これは小径Oリング14が正規の係止位置に係止されている場合と、正規の係止位置から外れてガス下流側に流れた場合との2例を同時に表すもので、実際にはガス供給流路26内のいずれか1個所に1個の小径Oリング14が位置する。なお、レセプタクル12のガス下流側端部に、配管32(図1等)の端部を接続するためのプラグ82を設けている。
【0027】
また、図1に示すように、異常検知装置20は、CPU、メモリ等を有するマイクロコンピュータであるECU(Electronic Control Unit)64と、圧力検知手段である圧力センサ66とを備える。異常検知装置20は、ガス供給流路26へのガスの供給時に、大径ガス供給ノズル22またはガス供給流路26内の圧力を検知し、検知した圧力が予め設定された閾値以上に上昇した場合に異常と判定し、異常検知信号を出力する。また、圧力センサ66は、大径ガス供給ノズル22またはガス供給流路26内の圧力を検知する。また、ECU64は、異常判定手段67と、ガス供給作動停止制御手段68とを有する。異常判定手段67は、大径ガス供給ノズル22またはガス供給流路26内の圧力検出値が予め設定された閾値以上に上昇した場合に、小径Oリング14が正規の係止位置から外れた異常であることを判定し、その出力信号である異常検知信号をガス供給作動停止制御手段68に出力する。また、ガス供給作動停止制御手段68は、異常判定手段67により異常と判定され、異常判定手段67から異常検知信号が入力された場合に、ガス供給元である燃料ガス供給源(図示せず)と大径ガス供給ノズル22との間に設けられたガス供給弁70を閉弁させる。ガス供給弁70の閉弁により、大径ガス供給ノズル22によるガス供給作動が停止される。
【0028】
また、図6に示すように、フィルタ部材18は、レセプタクル12への燃料ガスの供給時に、小径Oリング14が正規の係止位置である、小径係止溝40から外れた場合に、ガス供給流路26の内面とフィルタ部材18の外周部との間で小径Oリング14を受け止め可能とする。このために、フィルタ部材18の外周とガス供給流路26の内周との間に形成される円環状の隙間44の径方向の厚さは、小径Oリング14の自由状態の径方向厚さよりも小さくなっている。このため、図2、図3に示すように、小径係止溝40から外れた小径Oリング14は、フィルタ部材18のテーパ面52とガス供給流路26の内周面との間で挟まれた状態で保持され、この保持位置よりもガス下流側(図2、図3の右側)へは流れない。
また、本実施の形態の流体供給異常検知方法である、ガス供給異常検知方法は、図1に示すように、上記のガス供給異常検知システム10を使用して、異常検知装置20により、ガス供給流路26への燃料ガスの供給時に、大径ガス供給ノズル22またはガス供給流路26内の圧力を圧力センサ66により検知し、検知した圧力が予め設定された閾値以上に上昇した場合に異常と判定し、異常検知信号を出力して、異常検知信号を入力されたガス供給作動停止制御手段68により、燃料ガス供給源と大径ガス供給ノズル22との間に設けたガス供給弁70を閉弁させ、大径ガス供給ノズル22によるガスの供給を停止させる。
【0029】
このようなガス供給異常検知システム及びガス供給異常検知方法によれば、図6に示すように、レセプタクル12に設けられた接続口28に大径ガス供給ノズル22を接続した状態で、大径ガス供給ノズル22から燃料ガスを、レセプタクル12を通じて車載タンク30に供給する場合に、接続口28から小径Oリング14が外れて、ガス下流側に流れ、フィルタ部材18とガス供給流路26の内面との間で受け止められた場合に、フィルタ部材18外周側の、ガス供給流路26のガスの流れ方向中間部の流路の少なくとも一部が塞がれる。このため、大径ガス供給ノズル22からガス供給流路26への燃料ガスの供給時に、大径ガス供給ノズル22またはガス供給流路26内の圧力が上昇する。したがって、異常検知装置20により、大径ガス供給ノズル22またはガス供給流路26内の検知圧力が閾値以上に上昇した場合に異常と判定し、異常検知信号を出力することにより、レセプタクル12内の小径Oリング14の正規の係止位置からの外れを検知することが可能となる。
【0030】
また、その異常検知信号を入力されたガス供給作動停止制御手段68(図1)が、ガス供給弁70を閉弁させることにより、大径ガス供給ノズル22内の燃料ガスの過度の圧力上昇を有効に防止できるとともに、小径Oリング14の正規の係止位置からの外れをユーザーにより認識させることができる。
【0031】
また、フィルタ部材18は、外周部にフィルタ本体部46が設けられた筒部48と、筒部48のガスの上流側端部に設けられた蓋部50と、を備え、ガス供給流路26のガス上流側に供給されたガスは、筒部48の外周側からフィルタ本体部46を通じて筒部48内に流れ、フィルタ部材18を構成する蓋部50は、外径がガス上流側から下流側に向かうにしたがって大きくなるように傾斜したテーパ面52を有する。このため、正規の係止位置から外れた小径Oリング14をより有効にフィルタ部材18の外周部とガス供給流路26の内周部との間に導きやすくできるため、レセプタクル12内の小径Oリング14の正規の係止位置からの外れをより有効に検知できる。
【0032】
[第2の発明の実施の形態]
図7は、本発明の第2の実施の形態の流体供給異常検知システムである、ガス供給異常検知システムを構成するOリング受け止め部材を示す略斜視図である。本実施の形態の場合、フィルタ部材18(図1等参照)の代わりにOリング受け止め部材72を使用する。Oリング受け止め部材72は、大径筒部74と大径筒部74の一端(図7の左端)に結合された小径筒部76とを有する。小径筒部76の一端(図7の左端)は蓋部78により塞がれている。小径筒部76の外周部は、軸方向の孔部を有する格子部80が、孔部を周方向に間隔をあけて配置するように設けられている。ガス供給流路26(図1等参照)内で、図7に矢印方向に流れた燃料ガスは、小径筒部76の格子部80の孔部を通じて外径側から内側に送られ、大径筒部74の内側を通じて大径筒部74の他端側(図7の右端側)へ送られるようにしている。大径ガス供給ノズル22(図1等参照)からレセプタクル12への燃料ガスの供給時に、正規の係止位置から外れた小径Oリング14(図1等参照)は、小径筒部76の一端部とガス供給流路26の内周面との間で受け止められる。
【0033】
このように、Oリング受け止め部材72は、上記の第1の実施の形態で使用するフィルタ部材18とする場合に限定するものではなく、格子部80を有する部材としてもよい。その他の構成及び作用については、上記の第1の実施の形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
なお、Oリング受け止め部材は、外周部の1個所または複数個所にガス流路である孔部を形成した筒部を有するものとしてもよい。また、筒部の外周部を網状とすることもできる。
【0034】
[第3の発明の実施の形態]
図8は、本発明の第3の実施の形態の流体供給異常検知システムである、ガス供給異常検知システムにおいて、図2に対応する図である。本実施の形態では、フィルタ部材18aを構成する蓋部50aを円錐状に形成し、蓋部50aの端部にフィルタ本体部46を結合している。このような本実施の形態の場合には、正規の係止位置から外れた小径Oリング14をより有効に、フィルタ部材18aの外周部とガス供給流路26の内周面との間に導きやすくなる。その他の構成及び作用については、上記の図1から図6に示した第1の実施の形態と同様であるため、同等部分には同一符号を付して重複する図示及び説明は省略する。
【0035】
なお、上記の各実施の形態においては、レセプタクルに供給する流体をガスとするガス供給異常検知システム及びガス供給異常検知方法について説明したが、本発明は、流体をガソリン等の液体とする、液体供給異常検知システム及び液体供給異常検知方法でも実施できる。
【符号の説明】
【0036】
10 ガス供給異常検知システム、12 レセプタクル、14 小径Oリング、16 大径Oリング、18,18a フィルタ部材、20 異常検知装置、22 大径ガス供給ノズル、24 小径ガス供給ノズル、26 ガス供給流路、28 接続口、30 車載タンク、32 配管、34 大径接続部、36 大径係止溝、38 小径接続部、40 小径係止溝、42 バックアップリング、44 隙間、46 フィルタ本体部、48 筒部、50,50a 蓋部、52 テーパ面、54 逆止弁、56 弁体、58 弁座、60 ばね、62 孔部、64 ECU、66 圧力センサ、67 異常判定手段、68 ガス供給作動停止制御手段、70 ガス供給弁、72 Oリング受け止め部材、74 大径筒部、76 小径筒部、78 蓋部、80 格子部、82 プラグ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体供給流路と、流体供給流路に通じる接続口とを、それぞれ有し、接続口に接続された流体供給ノズルと流体貯留部とを接続するためのレセプタクルと、
接続口に設置されたシール部材と、
流体供給流路内のシール部材の正規の設置位置よりも流体下流側に設けられ、その外周部と流体供給流路の内周部との間の隙間が、流体供給流路の流体の流れ方向中間部の流路を構成し、シール部材が正規の設置位置から外れた場合に、流体供給流路の内面との間でシール部材を受け止め可能とするシール部材受け止め部材と、
流体供給流路への流体の供給時に、流体供給ノズルまたは流体供給流路内の圧力を検知し、検知した圧力が予め設定された閾値以上に上昇した場合に異常と判定し、異常検知信号を出力する異常検知装置と、を備えることを特徴とする流体供給異常検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の流体供給異常検知システムにおいて、
流体は、ガスであることを特徴とする流体供給異常検知システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流体供給異常検知システムにおいて、
異常検知装置は、
流体供給ノズルまたは流体供給流路内の圧力を検知する圧力検知手段と、
流体供給ノズルまたは流体供給流路内の圧力が予め設定された閾値以上に上昇した場合に、シール部材が正規の設置位置から外れた異常であることを判定する異常判定手段と、
異常判定手段により異常と判定された場合に、流体供給ノズルによる流体供給作動を停止するように、流体供給元と流体供給ノズルとの間に設けられた流体供給弁を閉弁させる流体供給作動停止制御手段とを備えることを特徴とする流体供給異常検知システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1に記載の流体供給異常検知システムにおいて、
接続口は、
流体供給ノズルを接続する接続部よりも流体下流側に設けられて、流体供給ノズルの直径よりも小さな直径を有する小径流体供給ノズルの端部を接続可能とする小径接続部を備え、
シール部材は、小径接続部に小径流体供給ノズルが接続された場合に、小径流体供給ノズルの端部と接続口との間をシールするOリングであることを特徴とする流体供給異常検知システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1に記載の流体供給異常検知システムにおいて、
シール部材受け止め部材は、
外周部に流路形成筒状部材本体部が設けられた筒部と、
筒部の流体の上流側端部に設けられた蓋部と、を備える流路形成筒状部材であり、
流体供給流路の流体上流側に供給された流体は、筒部の外周側から流路形成筒状部材本体部を通じて筒部内に流れることを可能とすることを特徴とする流体供給異常検知システム。
【請求項6】
請求項5に記載の流体供給異常検知システムにおいて、
シール部材は、Oリングであり、
流路形成筒状部材を構成する蓋部は、外径が流体上流側から下流側に向かうにしたがって大きくなるように傾斜したテーパ面を有することを特徴とする流体供給異常検知システム。
【請求項7】
請求項1に記載の流体供給異常検知システムを使用する流体供給異常検知方法であって、
異常検知装置により、流体供給流路への流体の供給時に、流体供給ノズルまたは流体供給流路内の圧力を検知し、検知した圧力が予め設定された閾値以上に上昇した場合に異常と判定し、異常検知信号を出力することを特徴とする流体供給異常検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−69468(P2011−69468A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222750(P2009−222750)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000227386)日東工器株式会社 (158)
【Fターム(参考)】