説明

流体処理及び体積決定システム

少なくとも2つの室を有する流体処理システムが開示される。該室のそれぞれは、柔軟な膜により第1及び第2の部分にそれぞれ分離され、第1の部分は、使用時、気体を実質的に含み、該第2の部分は、使用時、非気体流体と、入口手段及び/又は出口手段とを実質的に含む。1つ以上の通路が設けられ、該少なくとも2つの室の第2の部分同士を接続し、当該1つ以上の通路の少なくとも1つは、圧力感応型の一方向バルブを含む。更に、該少なくとも2つの室の少なくとも1つの第1の部分に圧力を印加する手段が設けられ、サンプル液の移送を可能とする。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ科学及び医療科学における流体処理の分野に関する。特には、本発明は、分子診断の分野、具体的には、血液処理及び診断若しくは心臓交換用途における、細菌検出の領域に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用途において、流体処理は非常に重要である。流体が1つの閉じたカートリッジ内で幾つかのステップを通して処理されることができる統合システムは、時間の節約の利点を提供し、ユーザフレンドリであり、人の介入を制限し、それ故に、相互汚染のリスクも制限する。特許文献1は、主室から流出する流体の流れ制御を可能とするシステムを開示する。主室は、膜により2つの領域に分割され、第1の領域は流体が流出及び流入し、第2の領域はガスが充填される。制御の第1のレベルは、流れ測定に基づいて、固定の参照体積の圧力変化と関連したガスの圧力変化をモニタすることによって動作される。ボイルの法則は、第2の領域の体積を算出するために用いられ、また、第1及び第2の領域の合計の体積が一定であるので、第1の領域の体積が知られる。制御の第2のレベルは、略同様の補助分配室を設けることによって達成される。補助分配室は、同様に、膜により2つの領域へと分割され、従って、その第1の領域の容積は、固定の最大の限界値及び最小の限界値の間で変化可能である。補助分配室をその最大容積へと主室から充填し、且つ、その後、当該容積をその最小容積まで時間をかけて低減させることによって、単位時間当たりの分配室の容積変化が算出される。最後に、制御の第3のレベルが開示され、そこでは、分配室内に残る流体の容積は、測定室の圧力の態様で補助室の圧力変化をモニタすることによって算出される。
【特許文献1】米国特許5193990号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
先行技術の流れ制御システムは、そこから出る流体の流れを測定したい室に接続される追加の固定参照容積の存在若しくは小型の補助室の存在を必要とする欠点を有する。これらの要求は、設定を複雑化し、装置の嵩を増加させる。また、先行技術の装置は、上述の流れ制御を作動させるために幾つかのバルブスイッチングステップ及びポンピングステップを必要とする。これらは自動化を困難とし、また、時間を浪費する。
【0004】
それ故に、本分野において、より簡易で、よりユーザフレンドリで、より高速で、よりコンパクトなシステムに対するニーズがある。
【0005】
本発明の目的は、多室装置内で一の室から他の室への非気体流体の処理を可能とする、改善された流体処理システムの提供であり、流体処理システム内で一の室から他の室へと流体が流れる範囲を判断するための改善された測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
広義には、本発明は、圧力感応型の1方向バルブを通るように流体を方向付け、且つ、各流体処理ステップが実行された範囲に関する正確な情報を得る双方のために特有の圧力源を用いることによって、かさばった校正室及び煩雑なバルブシステムを用いることなく、流体が一の室から他の室へと制御された方法で効率的に処理されることができることの知見に基づく。
【0007】
本発明の一実施例は、少なくとも2つの室を含む流体処理システムに関する。これらの室のそれぞれは、柔軟な膜により第1及び第2の部分にそれぞれ分離される。第1の部分には、例えば空気、窒素、アルゴン等のような気体が実質的に存在し、第2の部分には、非気体流体が実質的に存在する。各室には、入口手段及び/又は出口手段が存在する。第2の部分は、1つ以上の通路で接続され、当該1つ以上の通路の少なくとも1つは、圧力感応型の一方向バルブを内蔵する。流体処理システムは、更に、前記少なくとも2つの室のうちの少なくとも1つの前記第1の部分に圧力を印加する手段を含む。
【0008】
この実施例は、流体処理システムの一の室から他の室への流体の処理を最小数のバルブスイッチング及びポンピングステップで可能とし、更に、制御される必要があるバルブの数を低減するので、効果的である。
【0009】
更なる特徴として、前記少なくとも2つの室の前記第1の部分の少なくとも1つは、圧力トランスデューサに接続される。これは、追加の参照室を必ずしも必要とすることなく、当該室へと若しくは当該室から流体がどの程度まで処理されたかを直接的且つ正確に判断するために当該室内の圧力変化を用いることを可能とするので、効果的である。
【0010】
その他の更なる特徴として、前記圧力を印加する手段は、前記少なくとも2つの室のそれぞれに圧力供給ラインを介して接続される単一の圧力手段である。圧力供給ラインは、少なくとも2つの室のそれぞれに対して、好ましくは3/2バルブである1つのバルブを含み、前記圧力を印加する手段から前記少なくとも2つの室のそれぞれを接続又は非接続することを可能とする。これは、単一の圧力手段の使用が経済的であるにも拘らず、システム内の各室の流体搬送に関する完全な制御を可能とするので、効果的である。
【0011】
その他の更なる特徴として、前記少なくとも2つの室の少なくとも1つは、第2の部分が、前記1つ以上の通路により2つ以上の他の室に直接接続される。前記1つ以上の通路のうちの少なくとも1つは、圧力感応型の一方向バルブを内蔵する。前記少なくとも2つの室の少なくとも1つが、受け入れる室として機能し、それ故に、移送室として機能する、当該2つ以上の他の室の少なくとも2つの下流側に配置される場合、このシステムは、効果的に、受け入れ室内に移送室からの流体を混合するために使用されることができる。その他の利点は、移送室が受け入れ室に対する補充として使用されることができることである。少なくとも2つの室の少なくとも1つが移送室として機能する場合、このシステムは、異なる容積の受け入れ室間を選択することによって例えば流体の搬送量若しくはシステムの流れを制御するために、効果的に使用されることができる。その他の追加の特徴は、それ故に、多位置バルブの使用であり、その位置を選択することによって、受け入れ室の任意から/へと移送室の第2の部分を選択的に接続若しくは非接続することを可能とし、上述の追加の特徴及び実施例の任意と一緒に適用可能な更なる追加の特徴は、サイズの異なる室の使用である。
【0012】
その他の追加の特徴として、単一の排出ラインは、好ましくは圧力供給ラインに存在する3/2バルブを介して、全ての室の第1の部分に接続する。これは、全てのガス回路の開閉を中央化することを可能とし、それ故にそれを簡略化することを可能とするので、効果的である。また、システム内の任意の室の容積を校正するために使用可能となるだろう既知の容積の単一のエアリザーバの包含を可能とする追加的な利点を有する。それ故に、追加の特徴は、本発明の利点の1つは、かかるリザーバを任意的にする点であるが、排出ラインへのエアリザーバの接続である。
【0013】
本発明のその他の実施例は、本発明の追加の特徴及び実施例の任意による流体処理システムにおける、一の室から既知の容積Vの室へと搬送された非気体流体の容積ΔVを算出するための方法である。本方法は、
(i)前記移送の前に、前記受け入れる室の第1の部分の圧力Pを測定するステップと、
(ii)前記移送の後に、前記受け入れる室の第1の部分の圧力P’を測定するステップと、
(iii)ΔV=V(1−P/P’)なる式を解くステップと含む。
【0014】
この実施例は、如何なる追加の参照室を用いることなく、一の室から他の室へと搬送された非気体流体の容積ΔVを正確に算出することを可能とする利点を有する。
【0015】
追加の特徴として、ステップ(iii)は、次のステップにより置換されることができる。即ち、
(i)前記移送の前に、前記受け入れる室の第1の部分の温度Tを測定するステップと、
(ii)前記移送の後に、前記受け入れる室の第1の部分の温度T’を測定するステップと、
(iii)ΔV=V’(P’T/T’P−1)なる式を解くステップ。
【0016】
これは、温度変化が処理中に予測される状況において(例えば新鮮な血を処理するとき)、一の室から他の室へと搬送された非気体流体の容積ΔVをより正確に算出することを可能とする利点を有する。
【0017】
本発明のその他の実施例は、検出対象の1つ以上の検体分子、例えば1つ以上のポリ核酸ターゲット分子、プロテイン、膜片(メンブレンフラグメント)、細胞片若しくは他のバイオ分子等、を含む流体の解析用のバイオセンシング装置に関し、当該バイオセンシング装置は、流体処理システムを含み、該流体処理システムは、
(i)柔軟な膜により第1及び第2の部分にそれぞれ分離された少なくとも2つの室であって、該第1の部分が、気体を実質的に含み、該第2の部分が、非気体流体と、入口手段及び/又は出口手段とを実質的に含む、少なくとも2つの室と、
(ii)前記少なくとも2つの室の前記第2の部分に接続する1つ以上の通路であって、その少なくとも1つが圧力感応型の一方向バルブを含む1つ以上の通路と、
(iii)前記少なくとも2つの室のうちの少なくとも1つの前記第1の部分に圧力を印加する手段とを含み、
(a)前記少なくとも2つの室の1つは、PCR増幅室(25)、例えばターゲットポリ核酸分子のような、1つ以上の検体分子を特別にバインドすることができる1つ以上のプローブを含むバイオセンシング固体基板(30)を含む、検出室(27)、細胞融解室、浄化室、洗浄室、培養室、熱サイクリング室、例えばDNA抽出用の、細胞片抽出室の任意であり、若しくは、
(b)前記少なくとも2つの室の少なくとも1つの入口手段及び/又は出口手段は、PCR増幅室(25)、例えばターゲットポリ核酸分子のような、1つ以上の検体分子を特別にバインドすることができる1つ以上のプローブを含むバイオセンシング固体基板(30)を含む、検出室(27)、細胞融解室、浄化室、培養室、熱サイクリング室、例えばDNA抽出用の、細胞片抽出室の任意に連通可能である。
【0018】
任意的には、検出器は、検出対象の1つ以上の検体分子の存在を判断するために前記バイオセンシング固体基板にサンプル流体が接触した後にバイオセンシング基板を解析するために室の1つに設けられてよい。検出器は、光検出器であってよく、室の壁は、かかる光検出が可能となるように透明にされてもよい。
【0019】
この実施例は、バイオセンシング装置の各流体処理ステップの測定及び制御を可能とする利点を有する。
【0020】
本発明は、また、例えば1つ以上の検体分子を含む流体の解析用の、サンプル流体処理方法を提供し、当該方法は、少なくとも2つの室を用いてサンプル流体を処理することを含み、該室のそれぞれは、柔軟な膜により第1及び第2の部分にそれぞれ分離され、該第1の部分が、気体を実質的に含み、該第2の部分が、非気体流体と、入口手段及び/又は出口手段とを実質的に含み、1つ以上の通路が前記少なくとも2つの室の前記第2の部分に接続し、
前記1つ以上の通路の少なくとも1つは、圧力感応型の一方向バルブを含み、
当該方法は、更に、サンプル流体を移送するために前記少なくとも2つの室の少なくとも1つの前記第1の部分上に圧力を印加することを含む。本方法の少なくとも1つのステップは、PCR増幅、検出、熱サイクリング、細胞融解、細胞片抽出、洗浄、浄化、培養の任意を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
これより、本発明は、添付の図面を参照して説明される。
【0022】
本発明は、ある図面を参照して特定の実施例に関して説明されるが、本発明は、これらに限定されず、請求項によってのみ限定される。原文の請求項において、カッコ内の参照符号は、請求項を限定するのに解釈されるべきでない。記載された図面は、概略的だけであり、非限定的なものである。図面において、ある要素のサイズが誇張されており、図示の目的のために寸法通りに描かれていない。用語“comprising(含む)”が請求項及び/又は本説明において使用されるとき、それは、他の要素やステップの存在を除外するものでない。
【0023】
例えば、“a”,“an”や“the”のような単数名詞を参照するときに不定冠詞が使用されるとき、これは、特に言及されない限り、当該名詞の複数を含む。
【0024】
更に、請求項及び/又は本説明における第1、第2、第3及びその類という用語は、同様の要素間の識別のために用いられており、必ずしも順番ないし時系列順序を表すためのものでない。理解されるべきこととして、そのように使用される用語は適切な状況下で互換性があり、ここで説明される本発明の実施例は、ここで説明若しくは図示される以外の順序で動作することができる。
【0025】
一実施例では、本発明は、流体処理システムに関する。流体という用語は、流体が、例えば本システムから搬送されるといったような、本システムで処理されるべきものに関する限り、非気体流体として理解されることができる。この流体処理システムは、少なくとも2つの室からなり、当該少なくとも2つの室へと若しくは当該少なくとも2つの室から流体が処理される。各室は、好ましくは、システムの動作中に印加される圧力変化が室の容積を相当に変化させないような厚さの材料から作成される。室の壁は、それ故に、剛性が高く、柔軟でなく、硬質な材料から作成される。システムの各室は、膜により第1及び第2の部分に分離される。第1の部分では、ガスが実質的に存在し、第2の部分では非気体流体が実質的に存在する。第2の部分は、処理されるべき非気体流体の導入のための若しくはその他の室から来る処理された非気体流体の受け入れのための入口手段を有する。第2の部分には、処理された非気体流体を他の室に移送するための若しくはその目的地へと流体を解放するための出口手段が含まれる。少なくとも2つの室の第2の部分間の接続は、1つ以上の通路により提供され、一の室から他の室への流体の処理及び/又は一の室からその目的地までの流体の処理はバルブにより調整される。これらのバルブは、圧力感応型バルブであってよい。特に、第1及び第2の室間には、一方向バルブが設けられてよい。一の室から他の室への非気体流体の処理を導く動作は、移送室の第1の部分に圧力を印加する手段により作動される。移送室から受け入れ室まで移送されるべき非気体流体のための必要な条件は、次のとおりである。即ち、ガス及びそれ故に非気体流体、ひいてはこの流体に接触する圧力感応型一方向バルブ上に圧力手段により印加される圧力が、一方向バルブの閾値圧及び受け入れ室の対応するガスが充填された第1の部分の圧力より大きくあるべきである。
【0026】
本発明のその他の実施例では、少なくとも2つの室の第1の部分の少なくとも1つは、圧力感応型のトランスデューサに接続される。好ましくは、圧力トランスデューサは、受け入れ室に接続される。このようにして、受け入れ室内のガスの圧力を監視することができる。この目的のため、トランスデューサは、監視電子機器に接続されることができる。
【0027】
本発明のその他の実施例では、受け入れ室の圧力の監視は、この受け入れ室に搬送された非気体流体の容積を導出するために使用される。この実施例は図1に図示される。
【0028】
図の左側には、2つの室が描かれている。上の室は、全体容積Vを有する移送室1である。下の室は、全体容積Vを有する受け入れ室2である。各室は、柔軟な膜7により分離された、第1の部分5、8及び第2の部分6,9を含む。第1の部分5,8は、主にガスが充填され、移送室1の第2の部分6は、非気体流体を主に含み、受け入れ室の第2の部分は、実質的に空である。室の第1の部分5,8は、明瞭化のためにこのスキームでは描かれていない手段により外部から加圧されることができる。第2の部分6,9は、通路3により接続される。この通路3には、バルブが設けられ、このバルブは、好ましくは、ある最小圧力で開となる圧力感応型一方向バルブ4である。矢印は、圧力感応型一方向バルブにより許容される流れ方向を示す。接続する通路の容積は、室の容積に対して無視できるものと考えられる。
【0029】
圧力感応型一方向バルブの使用は、制御されるべきバルブ及びポンピングステップ、バルブスイッチングステップの数を低減することを可能とするが、これらのバルブを開閉するために必要な圧力は、例えば経時劣化に起因して、時間と共に変化しうる。流速を測定するために用いられる容積が圧力に依存するとき、これは、流速の測定及び/又は制御において不正確さを生む。本発明によるシステムは、バルブの開閉圧力に依存しない流速及び/又は搬送される流体の容積の制御及び/又は測定を行うことによって、この問題を回避する。この測定及び/又は制御の方法が以下に説明される。
【0030】
処理されるべき流体を導入する前の前ステップとして、全ての室の第2の部分のエア含有量を最小化することが有用である。この前ステップは、全ての室にガスを完全に充填させるために全ての室を加圧し、膜7を完全に伸ばすことによって実行されることができる。このようにして、流体用の室部分(第2の部分6,9)のエア含有量が最小化される。室6,9の第2の部分に関する過剰なエアは、明瞭化のために図示されていない排出ラインを介して環境へと排出される。
【0031】
その後、流体は、移送室1の第2の部分6内に導入され、次の式が成り立つ。
=V+V
=V+V
=0
ここで、Vは、室若しくは部分nの容積である。
【0032】
図1の右側に図示された次のステップでは、室1内に存在する非気体流体は、室1を加圧することによって室2へと汲み上げられる。膜7は、全ての流体が室1から汲み出されるまで伸びる。これは、印加される圧力が、圧力感応型一方向バルブ4の閾値圧及び室2の対応する第1の部分8’の圧力より大きい限り、成り立つ。
【0033】
室2内の圧力の増加は、流体の流れが停止すると直ぐに停止するだろう。この時点で、流体は室1に残存せず、V6’=0である。9’へと汲み上げられた流体の量は、ΔVである。次の式が導出されることができる。
’=0=V−ΔV
それ故にΔV=V
’=V+ΔV=ΔV
また、V2は変化しないままであるので、
=V+V=V’+V
’=V−V=V−ΔV
ボイルシャルルの法則は、流体の移動前後の、室2内のガスの固定量に対して有効である。
【0034】
温度が一定であるとみなすと、P=P’V’(ここでPは部分nの圧力である)であり、それ故に、
ΔV=V(1−P/P’)
また、移動した流体の量ΔVは、2つの圧力P、P’と同様、容積Vが既知であるときに導出されることができる。
【0035】
改善は、圧力トランスデューサに加えて、温度センサ(図1には図示せず)に受け入れ室を接続することである。これは、流体処理中の温度変化を考慮することを可能とする。
【0036】
温度が考慮される場合、
ΔV=V’(P’T/T’P−1)
図2は、本発明のその他の実施例を例示し、ここでは、明瞭化のために2つの室1,2のみが示されている。これらの2つの室の第2の部分は、一方向バルブ4を含む通路3によりリンクされる。受け入れ室2の第1の部分は、圧力トランスデューサ19を含み、その第2の部分は、出口手段22を含む。第1の室1の第2の部分は、入口手段21を含む。この実施例では、圧力を印加する手段は、2つの室1,2のそれぞれに圧力供給ライン11を介して接続される単一の圧力手段10である。圧力供給ライン11は、圧力を印加する手段10から各室の接続若しくは非接続を個別に可能とするために、室毎に1つのバルブ12を含む。本発明のその他の実施例は、図3に例示され、ここでは、3つの室が表される。室1a,1bは、移送室として機能し、室1a,1bに対して下流に配置される室2は、受け入れ室として機能する。室2は、その第2の部分9が、通路3により2つの他の室1a,1bの第2の部分6a,6bに直接的に接続される。この例では、示された2つの通路は、共に、圧力感応型一方向バルブ4を備える。
【0037】
本発明のその他の実施例は、図4に示され、ここでは、3つの室が表される。室1は、移送室として機能し、室2a,2bに対して上流に配置される。バルブ16は、2つの他の室の任意から/へと室1の第2の部分を選択的に接続若しくは非接続することを可能とする。より小型の室2bは、本発明の実施例の任意で使用される種々の室のサイズが必ずしも互いに等しくないことを図示している。
【0038】
図5は、本発明の一実施例を示し、ここでは、全ての室1,2の第1の部分5,8は、3/2バルブを介して排出ライン13に接続される。3/2バルブは、3つの接続及び2つの位置を有するバルブ、好ましくは、空気式バルブである。ここで、第1の接続は、圧力供給ライン11に導き、第2の接続は、室1若しくは2に導き、第3の接続は排出ラインに導く。室1若しくは2は、それ故に、供給ライン若しくは排出ラインに接続されることができる。排出ライン13は、ターミナルバルブ14の位置に依存して環境18に対して開閉される。任意的なエアリザーバ15は、排出ライン13に接続して示されている。この任意的なエアリザーバ15は、既知の容積を有し、それに接続される室1若しくは2の任意を、米国特許第5193990号に記載されるような方法で、校正するのに有用であることができる。
【0039】
図6は、本発明の一実施例を示す特別な例を示す。この例では、4つの室1が相互接続される。流体通路の供給及び排出は、明瞭化のために図示されていない。3/2バルブ12のスイッチングは、各室1を加圧することができる。空気供給源20は、各3/2バルブ12に圧力でエアを供給する1つの共有圧力供給ライン11に接続され、電子圧力レギュレータ17により制御される。図6では、各3/2バルブ12は、閉じられ、全ての室1は、共通の排出ライン13に接続されている。排出ライン13は、エアリザーバ15を含む。排出ライン13での環境18に向かう流れは、排出バルブ14により阻害される。排出ライン13は、このバルブ14が開であるときだけ、解放する。排出ライン13が閉のとき、接続される室1、エアリザーバ15及び排出ライン13内のエアの容積は固定される。このようにして、上述の測定方法は、任意の室1へと流れる流体の量を算出するために使用されることができる。これは、この室1がそのときに加圧されず且つ排出バルブ14が閉である場合に成り立つ。関連する圧力トランスデューサ19による圧力測定の解釈は、室1の元の容積だけでなく排出ライン13、エアリザーバ15及びリンクされた室の容積1をも含む、測定容積に依存する。
【0040】
図7は、バイオセンシング装置への本発明の適用例を示し、バイオセンシング装置は、例えば、サンプル液内の検体の存在を量的に若しくは質的に検出するためのものである。検体は、DNA,RNA,プロテイン、酵素、炭水化物、細胞、細胞片、膜片、可溶性若しくは結合リセプタ、例えば腫瘍マーカーや抗体等といった、循環する血マーカーのような、分子診断で有用な任意の検体分子であってよい。例えば、バイオセンサは、サンプル液内に存在するターゲットポリ核酸分子を解析するために使用されてもよい。このバイオセンシング装置は、2つ以上の室からなる。室の1つは、PCR増幅(アンプリフィケーション)室25(例えば、熱サイクラー29内に収容される)、例えば検出器28に結合されバイオセンシング基板30を含む、検出室27、熱サイクリング室、細胞融解室、例えばDNAや細胞膜や細胞レセプタ抽出室のような、細胞片抽出室、洗浄室、浄化室、培養室等の任意であってよい。更なる室は、本発明の範囲内で含められる。室は、任意の適切な流体的に接続可能な順序で配置されてもよい。例えば、融解室23及び/又は核酸抽出室24は、PCR増幅室25の上流側に付加されることができ、浄化室26は、PCR増幅室25と検出室27の間に付加されることができる。全ての他の室の上流側に位置する室は、解析されるべき流体を受け入れる入口手段21を有する。全ての室は、任意的に、必要な反応物及び/又は酵素及び/又は溶媒及び/又は緩衝体を受け入れるための入口手段21、圧力トランスデューサ19及び温度センサ31を有する。
【0041】
上述の本発明の流体処理の実施例は、種々の方法で図7に示す一連の室を用いて使用されてもよい。先ず、本発明による流体処理装置の少なくとも2つの室の少なくとも1つの入口及び/又は出口は、例えば選択可能で制御可能なバルブを介して、上述の1つ以上の処理室、即ちPCR増幅室25(例えば、熱サイクラー29内に収容される)、例えば検出器28に結合されバイオセンシング基板30を含む、検出室27、熱サイクリング室、細胞融解室、例えばDNAや細胞膜や細胞レセプタ抽出室のような、細胞片抽出室、洗浄室、浄化室、培養室等に、連通されてよく若しくは連通可能であってよい。本発明の流体処理装置は、これらの室の任意へと、定量化された態様で、試薬液、洗浄溶媒のような溶媒、サンプル液等を搬送するために、若しくは、これらの室の任意から、定量化された態様で、試薬液、洗浄溶媒のような溶媒、サンプル液等を取り除くために使用されることができる本発明による2つの室の流体処理装置も、例えば選択可能で制御可能なバルブを介して、試薬液、洗浄溶媒のような溶媒、サンプル液等のような流体の源に、これらが処理室の任意へと制御された態様で定量供給されるように、接続されてもよい。
【0042】
本発明のその他の実施例では、本発明の少なくとも2つの室の流体処理装置は、上述の種類の処理室と一体化されてもよい。図7を参照するに、任意的な融解室23では、流体内に存在する細胞は、(例えば、浸透手段、機械手段若しくは酵素手段により)融解される。融解が実行されると、流体は、室23の第1の部分に圧力を印加することによって次の室へと処理される。図7では、次の室は、任意的な抽出室24である。任意的な抽出室24では、ポリ核酸(例えばDNAやRNA)は、非核材料から(例えば、化学物質、溶媒抽出、析出若しくは遠心手段を用いて)分離される。この分離が実行されると、流体は、室24の第1の部分に圧力を印加することによって次の室へと処理される。次の室は、PCR増幅室25である。PCR増幅室25では、関心のポリ核酸片は、選択された標識プライマにより認識され、当業者によく知られた標準的なPCR熱処理により増幅される。熱処理は、熱サイクラー29により実行される。図7では、次の室は、任意的な浄化室26である。任意的な浄化室26では、フリープライマ及びPCR後に残る他の反応不純物を(例えばシリカによる相互作用を介して)除去することができる。この浄化が実行されると、流体は、室26の第1の部分に圧力を印加することによって次の室へと処理される。次の最後の室は、検出室27である。検出室27では、増幅された(及び任意的に浄化された)ポリ核酸片は、バイオセンシング固体基板30上に存在する1つ以上の特別なプローブ上で混成される。混成が実行されると、混成されていないポリ核酸片は、室27の第1の部分に圧力を印加することによって、出口22にて吐出される。最後のステップでは、検出器により(例えば光検出器28により)混成されたポリ核酸片は、その標識プライマ(例えば、これに限定されないが、蛍光マーカーのようなマーカーにより標識されるプライマ)を介して検出される。
【0043】
プローブという用語は、バイオセンシング固体基板上に及び/又は基板内へと固定化される作用因子であって、ターゲットポリ核酸の存在化で入れられたとき若しくはターゲットポリ核酸と反応されたときに、サンプルの一部であるターゲットポリ核酸とある特別な反応ができる作用因子を指し、ターゲットポリ核酸の存在を検出するために使用される。プローブは、これに限定されないが、核酸及び関連する物質(例えば、DNAs、RNAs、オリゴヌクレオチド若しくはその類、PCR産物、ゲノムDNA、細菌人工染色体、プラスミド等)のような分子化合物を含む。
【0044】
マーカーという用語は、これに限定されないが、発光分子(例えば、蛍光剤、リン光剤、化学発光剤、バイオ発光剤等)、着色分子、反応時に色を生成する分子、酵素、磁気ビード、ラジオアイソトープ、特別にバインド可能なリガンド、超音波共振により検出可能なマイクロバブル等のような、その物理的な分布及び/又は搬送される信号の強度の検出を可能とするように適切な手段により用意に検出可能な作用因子を指す。
【0045】
ここで用いられるように、特に言及しない限り、標識(タグ)という用語は、プローブの存在下でラベルをもたらす動作、若しくは、プローブにラベルをリンク付け若しくは相互作用(例えば反応)する動作を指す。
【0046】
非気体流体の特性は、本発明にとって本質的でなく、任意の非気体流体を考慮することができる。本発明のシステムで処理されることができる流体の特別な例は、バイオ流体(即ち、これらに限定されないが、血、痰、精液、唾液、尿、汗、乳汁、胆汁、脳脊髄液、ブリスター液、血清、若しくは包嚢液等のような、生物学的特性の流体)である。本発明は、生物学及び医学用とでの使用に特に好適であるが、これらの領域に限定されず、とりわけ、分析若しくは有機化学のような領域で使用されることができる。これらの用途で使用される流体は、それ故に、本発明で使用されることができるその他のクラスの流体を形成する。室の形状は、本発明の本質部分でなく、任意の形状、非常に複雑な形状を考慮することができる。室に関する重要な特徴は、それらの容積が固定であるべきであること、即ち室が剛性の高いものであることである。本発明で使用される膜は、気体及び非気体流体に対して密でなければならない。それは、使用されるガス及び非気体流体に向けて挿入されるために選択されなければならない。膜の要求は、当該幕が柔軟であり弾性があり、従って、室の最大容積若しくはその近傍に到達するように双方の室の部分の容積を可逆的に拡大することができることである。それ故に、好ましくは、弾性がある。適切な膜成分は、これに限定されないが、熱可塑性ポリマー(例えば、これに限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等)、エラストマ(例えば、これに限定されないが、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレンプロピレンゴム、シリコン等)、熱可塑性エラストマ(例えば、これに限定されないが、ポリスチレン−ブタジエン−スチレン)を含む。
【0047】
使用されるガスは、仮想的には、膜と化学的に互換性のある任意のガスであってよい。有用なガスは、安全で、容易に入手可能で安価のものである。例は、これに限定されないが、空気、窒素、アルゴン等である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施例による測定方法を図示する概略図。
【図2】本発明の一実施例による流体処理システムの概略図。
【図3】本発明の一実施例による流体処理システムの概略図。
【図4】本発明の一実施例による流体処理システムの概略図。
【図5】本発明の一実施例による流体処理システムの概略図。
【図6】本発明による流体処理システムの特定の例の概略図。
【図7】本発明の更なる実施例、即ち、例えばサンプル流体に存在するターゲットポリ核酸分子を解析するための、本発明の流れ制御装置のバイオセンシング装置への適用を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体処理システムであって、
柔軟な膜により第1及び第2の部分にそれぞれ分離された少なくとも2つの室であって、該第1の部分が、気体を実質的に含み、該第2の部分が、非気体流体と、入口手段及び/又は出口手段とを実質的に含む、少なくとも2つの室と、
前記少なくとも2つの室の前記第2の部分に接続する1つ以上の通路であって、その少なくとも1つが圧力感応型の一方向バルブを含む1つ以上の通路と、
前記少なくとも2つの室のうちの少なくとも1つの前記第1の部分に圧力を印加する手段とを含む、流体処理システム。
【請求項2】
前記少なくとも2つの室の前記第1の部分の少なくとも1つは、圧力トランスデューサに接続される、請求項1に記載の流体処理システム。
【請求項3】
前記少なくとも2つの室の前記第1の部分の少なくとも1つは、温度センサに接続される、請求項1又は2に記載の流体処理システム。
【請求項4】
前記圧力を印加する手段は、前記少なくとも2つの室のそれぞれに圧力供給ラインを介して接続される単一の圧力手段であり、該圧力供給ラインは、該少なくとも2つの室のそれぞれに対して1つのバルブと少なくとも2つの室を含み、前記圧力を印加する手段に対して前記少なくとも2つの室のそれぞれを接続又は非接続することを許容する、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の流体処理システム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの室のそれぞれに対する前記1つのバルブは、3/2バルブである、請求項4に記載の流体処理システム。
【請求項6】
前記少なくとも2つの室の少なくとも1つは、前記1つ以上の通路により2つ以上の室に直接接続される第2の部分を有し、前記1つ以上の通路のうちの少なくとも1つは、圧力感応型の一方向バルブを内蔵する、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の流体処理システム。
【請求項7】
前記少なくとも2つの室の少なくとも1つは、該2つ以上の室の少なくとも2つの下流に配置される、請求項6に記載の流体処理システム。
【請求項8】
前記少なくとも2つの室の少なくとも1つは、該2つ以上の室の少なくとも2つの上流に配置される、請求項6又は7に記載の流体処理システム。
【請求項9】
前記3/2バルブを介して全ての室の第1の部分に接続する排出ラインを更に含む、請求項5〜8のうちのいずれか1項に記載の流体処理システム。
【請求項10】
前記排出ラインは、エアリザーバを含まない、請求項9に記載の流体処理システム。
【請求項11】
前記排出ラインに接続されるエアリザーバを更に含む、請求項9に記載の流体処理システム。
【請求項12】
前記少なくとも2つの室の少なくとも1つは、その第2の部分を、多位置バルブの位置を選択することによって前記2つの以上の室の任意に対して接続若しくは非接続することができる、請求項6〜11のうちのいずれか1項に記載の流体処理システム。
【請求項13】
前記少なくとも2つの室の2つ以上は、サイズが異なる、請求項1〜12のうちのいずれか1項に記載の流体処理システム。
【請求項14】
請求項1〜13のうちのいずれか1項に記載の流体処理システムにおける既知の容積Vの他の室への1つの室から移送された非気体流体の体積ΔVを算出する方法であって、
前記移送の前に、前記受け入れる室の第1の部分の圧力Pを測定するステップと、
前記移送の後に、前記受け入れる室の第1の部分の圧力P’を測定するステップと、
ΔV=V(1−P/P’)なる式を解くステップと含む方法。
【請求項15】
前記解くステップに代えて、
前記移送の前に、前記受け入れる室の第1の部分の温度Tを測定するステップと、
前記移送の後に、前記受け入れる室の第1の部分の温度T’を測定するステップと、
ΔV=V’(P’T/T’P−1)なる式を解くステップと含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
検出対象の1つ以上の検体分子を含む流体の解析用のバイオセンシング装置であって、
流体処理システムを含み、該流体処理システムは、
柔軟な膜により第1及び第2の部分にそれぞれ分離された少なくとも2つの室であって、該第1の部分が、気体を実質的に含み、該第2の部分が、非気体流体と、入口手段及び/又は出口手段とを実質的に含む、少なくとも2つの室と、
前記少なくとも2つの室の前記第2の部分に接続する1つ以上の通路であって、その少なくとも1つが圧力感応型の一方向バルブを含む1つ以上の通路と、
前記少なくとも2つの室のうちの少なくとも1つの前記第1の部分に圧力を印加する手段とを含み、
前記少なくとも2つの室の1つは、PCR増幅室、検出室、細胞融解室、浄化室、洗浄室、培養室、熱サイクリング室、細胞片抽出室の任意であり、
前記少なくとも2つの室の少なくとも1つの入口手段及び/又は出口手段は、PCR増幅室、検出室、細胞融解室、浄化室、培養室、熱サイクリング室、細胞片抽出室の任意に連通可能である、バイオセンシング装置。
【請求項17】
前記検出室は、前記1つ以上の検体分子を特に結合することができる1つ以上のプローブを含むバイオセンシング固体基板を含む、請求項16記載のバイオセンシング装置。
【請求項18】
前記1つ以上の検体分子の存在を判断するために前記バイオセンシング固体基板にサンプル流体が接触した後にバイオセンシング基板を解析する検出器を更に含む、請求項17記載のバイオセンシング装置。
【請求項19】
サンプル流体処理方法であって、
少なくとも2つの室を用いてサンプル流体を処理することを含み、該室のそれぞれは、柔軟な膜により第1及び第2の部分にそれぞれ分離され、該第1の部分が、気体を実質的に含み、該第2の部分が、非気体流体と、入口手段及び/又は出口手段とを実質的に含み、1つ以上の通路が前記少なくとも2つの室の前記第2の部分に接続し、
前記1つ以上の通路の少なくとも1つは、圧力感応型の一方向バルブを含み、
当該方法は、更に、サンプル流体を移送するために前記少なくとも2つの室の少なくとも1つの前記第1の部分上に圧力を印加することを含む、方法。
【請求項20】
当該方法は、1つ以上の検体分子を含むサンプル液体の解析用であり、当該方法の少なくとも1つのステップは、PCR増幅、検出、熱サイクリング、細胞融解、細胞片抽出、洗浄、浄化、培養の任意である、請求項19記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2009−531118(P2009−531118A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−502291(P2009−502291)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051029
【国際公開番号】WO2007/110825
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】