説明

流体分析装置、当該流体分析装置を含む、流体の特性を決定するための装置、スクリーニング法を実施する方法及び相当するスクリーニング法

プレート(2)と、プレートに作成した少なくとも1つの流れチャンネル(4)、流体を流れチャンネル内に持ち来すための手段(18)と、流体の固有の組成のサンプルを分析するために好適な少なくとも2つの分析手段(28’、28”、361、362、46)と、を含む流体分析装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体分析装置、そうした流体分析装置を含む、流体の特性を決定するための装置、スクリーニング法を実施する方法及び相当するスクリーニング法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は任意の形式の流体、即ち、純粋流体のみならず、配合物、即ち、種々の成分から形成される流体化学系をもプロセス処理することを意図するものである。詳しくは、本発明は、これに限定しないが、可変の様々な成分の、2成分、3成分、または4成分形式の配合物画分のプロセス処理を意図したものである。
【0003】
本発明に従い決定され得る流体の特性には幾つかの形式があり、そうした形式には、これに限定しないが、詳しくは、粘度のような物理化学的特性、または、電導度のような電気的特性や、流体の視覚的外観、特には、錯体または結晶の異相の存在に関わる光学的特性、が含まれ得る。こうした特性は、特には、配合物自体の成分の、または配合物の1つ以上の成分とその他の成分との相互作用及び又は構成により生じるものである。かくして、水その他のようなキャリヤを含む複合流体と称する流体であって、必要であれば外部パラメーターの下に定義された様式、例えば、多少とも複雑な形状のミセル形態、積層相、析出相、物理的及びまたは化学的な架橋ゲルとして構成されるその各成分のある特性の評価が望まれる流体が存在する。そうした特性評価は、特には、新規配合物の創出を意図目的として実施され得る。
【0004】
通常、意図する範囲、つまり、望ましく使用するのに適した配合物成分を得ようとする場合、プロセス処理は系統的なものとなり、各成分を持つ幾つかの流体サンプルを順次調製し、調製した流体サンプル数と同数回の測定を行なう。この方式には欠点、特には、実施に長い時間を要するという意味での欠点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hermes Sciences Publications発行のStephane COLINによる、Microfluidique(EGEM microsystems series)の論文
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実施に長い時間を要しない流体分析装置、当該流体分析装置を含む、流体の特性を決定するための装置、スクリーニング法を実施する方法及び相当するスクリーニング法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的上、本発明は、添付する請求項1に従う流体分析装置をその主要事項とするものである。
また、本願発明の装置の有益な特徴部分は請求項2〜23に記載される。
本発明は、請求項24に従う、流体の特性を決定するための装置をその主要事項とするものでもある。
本発明は、請求項25に従う、上述した流体分析装置による分析を実施するための方法をその主要事項とするものでもある。
本願発明の当該方法の有益な特徴部分は請求項26〜29に記載される。
本発明は、請求項30に従う、幾つかの流体をスクリーニングするための方法をその主要事項とするものでもある。
本願発明の当該方法の有益な特徴部分は請求項31及び請求項32に記載される。
【発明の効果】
【0008】
実施に長い時間を要しない流体分析装置、当該流体分析装置を含む、流体の特性を決定するための装置、スクリーニング法を実施する方法及び相当するスクリーニング法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に従う、流体の特性を決定するための装置に関わる分析装置の正面側から見た略側面図である。
【図2】図2は、図1の分析装置に関わる、各配合物を調製するための手段の、正面側から見た側面図である。
【図3】図3は、図1の分析装置に関わる、プレート内に形成したマイクロチャンネルの断面図である。
【図4】図4は、本発明に従う、特性を決定するための装置を実施する状況を例示する、図1と類似の、しかし拡大して示す、正面側から見た側面図である。
【図5】図5は、本発明に従う、特性を決定するための装置を実施する状況を例示する、図1と類似の、しかし拡大して示す、正面側から見た側面図である。
【図6】図6は、本発明に従う光学的分析手段の他の実施例を例示する断面図である。
【図7】図7は、本発明に従う、特性を決定するための装置を実施する状況を例示する、図1と類似の側面図である。
【図8】図8は、図7の装置に関わる、電導度測定セクションの詳細を例示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1には本発明に従う決定装置の詳細が例示され、分析装置を含んでいる。分析装置はガラス製のプレート2を含み、プレートが、以下に詳しく説明する手順に従って形成した複数のマイクロチャンネルを有している。図1では、プレート2に形成した各マイクロチャンネルは太線で表わされ、各マイクロチャンネルに連結したチューブは細線で表わされる。
【0011】
図示例では、各マイクロチャンネルの特徴的な断面積は代表的には100μm2(例えば10μm×10μm)〜1mm2(例えば1mm×1mm)である。この寸法によれば、これらのマイクロチャンネル内に、レイノルズ数が明らかに100未満である層流が適宜創生される。参考までに、これらのマイクロチャンネルの特性は、Hermes Sciences Publications発行のStephane COLINによる、Microfluidique(EGEM microsystems series)なる論文に説明され得る。
【0012】
しかしながら、本発明は先に言及した値以上の断面積を有する微細な流体流れチャンネルにも適用され得るものである。かくして、そうした微細な流体流れチャンネルの断面積は、例えば25mm2または5mm×5mmのものでもあり得る。
詳しくは、流れマイクロチャンネル4と称する第1のマイクロチャンネルが空洞状にプレート2に形成される。図1では水平方向に伸延する流れマイクロチャンネル4は入口4’及び出口4”を有し、長さLは、例えば5mm及び3mの間、好ましくは1cm及び10cmの間である。
流れマイクロチャンネル4には、その入口4’付近に枝流れマイクロチャンネル6が食刻される。枝流れマイクロチャンネル6は、出口6”と関連する垂直ブランチ61及び水平ブランチ62を有する。
【0013】
本発明に従う決定装置は、図1に略示する、種々の配合物を調製するための、図1に参照記号Mで示し、図2にその詳細を示す調製手段をも含む。調製手段Mは、注射器ポンプ10と関連する、図2では3本の単数あるいは複数の注射器8を含む。これらの注射器と、注射器ポンプとは既知のものであるのでここではその詳細は説明されない。
各注射器8は混合要素14内に開口する相当するチューブ12と相互作用する。チューブ12には、このチューブ12に連結した幾つかの入口16’と、流れマイクロチャンネル4の入口4’の方向に伸延する送給チューブ18と関連する出口16”とが設けられる。チャンバ16が、例えば本来磁性を有する、既知の形式の攪拌要素20を収受する。
【0014】
図1を再度参照するに、流れマイクロチャンネル4及び枝流れマイクロチャンネル6の各出口4”及び6”は、排流収集容器25内に開口する排出チューブ22及び24に連結される。2つのこれら排出チューブ22及び24は、これらの排出チューブ22及び24上に各々位置付けた2つの入口26’及び26”を有する。
既知形式の2つの圧力センサ28’及び28”が流れマイクロチャンネル4の入口4’及び出口4”の夫々に接近して設けられる。これらの圧力センサの上流側及び下流側の各端部の位置は番号30’及び30”で示される。圧力センサの各下流側端部はプロセス処理用コンピューター34に接続される。
【0015】
本発明の装置の、流れマイクロチャンネル4の前記上流側端部30’及び下流側端部30”の間の中間部分には、分析用の導電体が設けられる。導電体は、T字型の枝部分401及び402の形態下に延長するブロック部分381及び382を夫々有する電極361及び362を含む。
枝部分401及び402からはフィンガー部分421及び422が交互態様下に伸延される。換言すると、相当する枝部分に連結した一方のフィンガー部分が、他方の相当する枝部分に連結したフィンガーで包囲される。各電極361及び362は、図示されない様式下においてコンピューター34に接続される。
【0016】
電極361及び362は、例えば、クロム層上に付着させた金、または、厚さ数十ナノメートル、幅10〜500マイクロメートルまたはミクロンのタンタラム層上に付着させたプラチナのような材料から構成される。各電極のブロック部分381及び382は、プロセス処理用コンピューター34に接続した既知形式のインピーダンスメーター44に接続される。
本発明の装置には、粘度分析以外のための分析手段を設ける。
そうした分析手段は、例えば、蛍光X線分光法、分散型X線分光法、UV分光法、赤外線分光法、ラマン分光法、を使用する分光分析手段であり得る。
【0017】
本発明に従う装置には、例えば、カロリーメーター形式の熱分析手段を設け得る。
本発明に従う装置には、特には、伝導性分析手段を設け得る。
本発明に従う装置には、特には、光学的分析手段を設け得る。そうした光学的分析手段は、特には、光の拡散、光の動的拡散、複屈折、または濁度、の測定手段であり得る。熱分析、例えばカロリーメーター形式での熱分析をも実施可能である。
光学的分析手段には、既知形式の2つの偏光プリズムを持つ、略示した顕微鏡46が含まれる。2つの偏光プリズムは、以下に詳しく説明するように、本発明の装置の作動の都合上、枝流れマイクロチャンネル6の水平方向ブランチ62の各側に各位置付けられる。顕微鏡46の観察領域は記号Zで示される。顕微鏡それ自体は、やはり図示されないプロセス処理用コンピューター34に接続した撮影装置と関連付けされる。
【0018】
図3には、同じく流れマイクロチャンネル4を構成するプレート2と、一方の電極361との側面図が例示される。
プレート2は、電極361を嵌装する第1のガラスプレート21から構成され、この目的上、クロム、金、NOA81樹脂、の各層を先ず嵌装させる。次いで、積層させたこれら3つの各層の一部を任意の適宜の方法を使用して除去し、第1のガラスプレート21の表面上に電極361だけを残すようにする。
次に、既知のサンドブラスト法を使用して、第1のガラスプレート21に、番号41及び42で表わす2つのみを示す種々のアクセス孔を形成する。これらの各アクセス孔は切頭円錐形状を有し、プレートの、電極を挿通する側部から中空状に孔開けされる。
【0019】
次いで、下方に位置する第1のガラスプレート21からある距離離れた上方に、2つの横断方向スペーサーを介して第2のガラスプレート22を嵌装させる。横断方向スペーサーは各チャンネルの高さを決定するものである。2枚のこれらプレートの中間スペースにNOA81樹脂を充填し、次いで、チャンネルネットワーク模様を含む透明なフォトリソグラフマスクを導入する。
次いで、NOA81樹脂に前記チャンネルネットワーク模様を転写させつつこのNOA81樹脂を重合させた後、各スペーサー(図示せず)を取り外し、重合した樹脂の部分31及び32が流れマイクロチャンネル4の横断方向壁を構成するようにする。
【0020】
上述した本発明に従う装置の使用状況を、幾つかの成分から成る配合物としての流体を処理するものと仮定して以下に説明する。
従って、初期状態では本装置はそうした配合物を先ず生成し、次いで、生成した配合物を流れマイクロチャンネル4の入口4’に送る。
この目的上、各成分は注射器8により混合要素14のチャンバ16に向けて送られる。通常、所定成分の流量が増大する程、最終配合物中の当該成分濃度は高くなる。攪拌器20が各成分を均質化を助勢し、チャンバ16の下流側のチューブ18が、良好に混合された配合物を流れマイクロチャンネル4中に送給する。
【0021】
配合物は流れマイクロチャンネル4内を1μl/時及び10ml/分の間、特には、10μl/時及び1ml/分の間の流量下に流動する。この流動相の開始時点では出口弁26の入口26’が開放され、他方、入口26”は閉鎖され、かくして流体は流れマイクロチャンネル4内のみに流入し、枝流れマイクロチャンネル6には流入しない。同時に、粘度及び電導度の測定を実施する。
粘度分析は、圧電抵抗性材料に印加される圧力に応じた電圧を既知の様式下に発生する2つのセンサ28’及び28”を使用して行なう。測定された電圧値はコンピューター34に送られ、このコンピューターが当該電圧値をやはり既知の様式下に差圧に変換する。コンピューターは、センサからに送られた電圧値に各センサ固有の所定の係数を乗じて各センサの圧力を算出し、最後に、1つの圧力値をその他の圧力値から減算して2つのセンサ間の差圧を求める。
【0022】
次いで、コンピューターは流れマイクロチャンネル4を流動する流体の粘度を数学的に算出する。粘度算出には、前決定したものか、またはリアルタイムに決定した種々のパラメーターが関与される。粘度は、特には、流れマイクロチャンネル4の断面積特性に依存する。
従って、流れマイクロチャンネル4の断面が矩形形状である場合は、粘度ηは以下の式、
η=H3wΔP/12Q
に等しい。ここで、Hはマイクロチャンネルの断面積の高さに等しく、wはマイクロチャンネルの幅であり、ΔPは、上述したようにコンピューター34により決定した差圧であり、Qは流れマイクロチャンネル4内の流体の流量に等しく、は上流側端部30’及び下流側端部30”の間の距離に等しい。
【0023】
断面が円形である流れマイクロチャンネル4では、粘度ηは以下の式で与えられる。
η=ΔP*π*R4/8Q
ここで、Rはマイクロチャンネルの半径であり、ΔP、Q、、は先と同じである。
電導度は、プロセス処理用コンピューター34に関わる電極361及び362を使用して求める。各電極は、回路を並列式に考慮して、シーメンスでの流体のインピーダンスを測定するインピーダンスメーターに接続される。更に、実際の電導度を得るべく、各電極からの反応が較正される。インピーダンスメーターが流体の抵抗値Rを測定し、次いでコンピューターがこの抵抗値の逆算値1/R、即ち電導度値を算出する。
【0024】
粘度及び電導度測定とは別に、装置内を流動する流体サンプルの光学的測定を実施する。先に挙げた各測定値、即ち、粘度、電導度、そして光学的特性の測定は任意の順で行ない得る。
光学的測定を実施するに際し、先ず、図4及び図5に例示するようにソレノイド弁26の入口26’及び26”の状態を変更させる。この状況下に於て、図4に示すように入口26’を閉鎖し、入口26”を開放させて枝流れマイクロチャンネル6に調査対象の流体サンプルを充填できるようにし、他方、流れマイクロチャンネル4への流入を停止させる。従って、流体は今後は観察領域Zの、図で右側に示す領域に現われるようになる。
【0025】
次に、図5に示すように、入口26’及び26”の各状況を再度切替えて、入口26’を再開放させ、入口26”を再閉鎖させる。かくして、枝流れマイクロチャンネル6内の流体は例えば、1秒〜60秒の間の長さに相当する安定期間の観察中において安定化され得る。
この安定期間後、流体は実質的に静止し、かくして高精度下での光学的測定が保証される。先に説明した各操作時における流体の動きは矢印f1及びf2で示される。流れマイクロチャンネルを個別態様下に充填することで、少量の被プロセス処理流体を使用可能となる。
【0026】
顕微鏡に連結した撮影装置が、既知の様式下に領域Zの流体サンプルの目視を保証する。光学的測定を実施するに際して使用する2つの偏光プリズムが、各相に視覚的相違を生じさせ得る。偏光プリズムは光フィルターとして作用して、1つの光成分のみを明確な方向に差し向ける。
【0027】
結局、偏光プリズムを枝流れマイクロチャンネル6の各側に交差態様下に配置することで、流体が均質性のものである場合は全ての光が遮られることになる。逆に、流体が非均質性、特には、層状及び又は小球状のものである場合は、顕微鏡を使用して照度の変化を観察できる。
上述した各ステップを終えると、調査対象とする流体の3つの特性、即ち、粘度、電導度、外観、を決定することが出来る。
【0028】
次いで、上述した一連の各ステップを再開し、他方、同じであるがその比率の異なる初期成分を持つ配合物の分析を実施する。この目的上、これらの各成分の混合チャンバ16へのチューブ12を介しての流量を変更させる。
これらの一連の各ステップを配合物の基本成分の比率の全範囲に関して反復し、最後にスクリーニング法を実施することにより、意図するところの用途に依存する、配合物の少なくとも1つの成分を識別することが出来る。
【0029】
図6には、特に光学的分析に対する関連度の高い別の実施例が例示される。
図6では部分的に示すプレート2は、枝流れマイクロチャンネル6の水平ブランチ62のセクションに沿って配置されている。プレート2には、任意の適宜の手段、特にはインターロッキング装置を介して支持体55が更に設けられる。支持体55は、プレート2の縁部と重なる2本のアーム551及び552を含むU字形を有する。
【0030】
一方のアーム551は、例えばLED(発光ダイオード)又はレーザー光源である光源561を支持し、他方のアーム552は輝度検出装置562、例えばフォトダイオードを支持する。光源561及び輝度検出装置562は水平ブランチ62の何れかの側で相対して位置付けられる。
また、プレートと、支持体55のアーム551及び552との間には偏光プリズム581及び582を交差状態に配置する。各偏光プリズムは適宜の手段により、例えば、支持体に連結する。輝度検出装置562は図示しないコンピューターに接続され、かくして、輝度検出装置562からコンピューターに送られた信号は復元され、コンピューター処理され得る。
【0031】
図6に示す実施例によれば、枝流れマイクロチャンネル6を流動する流体の複屈折値が既知の様式下に入手され得る。図示されない変更例では偏光プリズム581及び582を省略可能であり、この場合は流体の濁度値を入手可能である。
図6の実施例の場合、光源561及び輝度検出装置562を設けた支持体55がプレートに固定され得る(特には着脱自在状態下に固定され得る)という特定の利益、つまり、機械的構造が簡単であるという利益がある。また、光源を輝度検出装置との関連において使用することで、信号を連続的に入手可能となる。
【0032】
図7には本発明の他の実施例(第2実施例)が例示される。図7の実施例では、送給チューブ18が、その内容積が流れチャンネル104を構成するところの管状流れ要素102内に開口する。管状の流れ要素102の前記内容積は、プレート2に形成した流れチャンネル4のそれと類似の寸法形状を有する。
本発明において、そうした管状流れ要素は断面の閉じた細長い流れ要素であり、横断方向における輪郭は任意形式の形状、特には、楕円又は正方形形状を有し得る。従って、第1実施例とは対称的に、そうした要素は嵩高い胴部には形成されない。かくして、被分析用の流体の流れチャンネルは管状流れ要素の内容積部分によって形成される。
【0033】
管状流れ要素102は異なる形式での分析を可能とする異なるセクションを有する。第1セクション1021は第2セクション1022に連結したコネクター1051内に開口し、かくして、図8にもっと詳しく例示する電導度測定を可能とする。前記セクションは同中心の2つの電極から構成され、内側電極1361は例えばステンレス鋼製の針であり、外側電極1362は第2セクション1022の外壁を構成し、やはりステンレス鋼製である。これら2つの電極1361及び1362は、コネクター1051及びT字型ジョイント1052を使用して相対保持される。
【0034】
内側電極1361及び外側電極1362は図示されないプロセス処理用コンピューターに接続される。第1実施例を参照して先に説明したように、これらの2つの電極付近の流体流れにより、電導度値を決定可能となる。
T字型ジョイント1052の開放端は、第1実施例のセンサ28’及び28”と類似の圧力センサ128に連結される。第2実施例は、やはり大気圧下に使用される圧力センサ数が一つである点で、図1を参照して説明した実施例とは異なるものである。
【0035】
従って、管状の流れ要素102が円形断面を有すると仮定すると、粘度ηは、先にも示した下の式によって求められる。
η=ΔP*π*R4/8Q
ここで、Rは管状流れ要素102の半径であり、ΔPはセンサ128で測定した圧力P1と大気圧との差圧であり、Qは管状流れ要素102内の流体の流量に等しく、はセンサ128の導入位置と管状要素102の出口102”との間の距離に等しい。
【0036】
管状流れ要素102は、T字型ジョイントの下流側に、X線透過性のプラスチック製のチューブ1023の形態とした第3セクションを含む。第3セクション、即ちチューブ1023は、例えばカプトンから作製され、X線ビーム1461を使用する高額分析装置と関連づけられる。これにより、チューブ1023を通過する流体サンプルが可視化され得る。
本発明の先に説明及び図示される実施例に限定されるものではない。
【0037】
先に図面を参照して説明した1つ又はその他の装置を使用して粘度分析のみを実施することが出来る。この場合、本発明の装置は、プレート内に形成され及び又は管状要素の内容積によって形成される少なくとも1つの流れチャンネルと、この流体を、流体の粘度分析手段に沿ってチャンネル内に送るための手段と、を含むものとなる。
図1に示すように、プレートに流れチャンネルの第1部分を設け、流れチャンネルの他の部分を図7及び図8に示すようにチューブの内容積部分から形成することも可能である。そうすることにより、例えば、プレート内で粘度及び電導度を分析し、チューブ内で光学的分析を実施することが可能となる。
【0038】
本発明に従う決定装置に加熱手段を設けることも可能である。加熱装置は、例えば従来型のものであり、プレート又はチューブと関連付けされ及び又は混合手段と関連付けされる。
図示されない別の実施例では、電導度分析により、異なる相の存在を識別可能である。この場合、電導度値が不安定化する状況が観察されたときは、異なる相、特には、液滴又は気泡のような“栓(plug)”があると結論し得る。
【0039】
本発明によれば、粘度、特には、配合物の組成の関数としての、及び又は、配合物に付加される剪断力の関数としての、及びまたは、温度の関数としての、及び又は、エージングの関数としての、粘度を入手するための粘度分析を実施し得る。
また、本発明によれば、その他の分析、例えば、分光分析、光学分析、カロリーメーター分析、及び又は、電導度分析、を実施できる。
【0040】
上述した各操作は、コンピューター形式のデータプロセス処理手段によって制御され得る。この場合、コンピューターを使用して種々の配合をプログラムし、この配合シーケンスの自動化が保証されるように制御する。
また、圧力センサによって得た測定値が自動取得され、取得した測定値により、各配合物に関する粘度が算出される。画像及び電導度の自動取得も使用される。こうして入手した全情報は結果ファイル内に保存する。
本発明によれば、先に説明した目的が達成され得る。
【0041】
詳しくは、本発明に従う装置の備える種々の分析手段によれば、同じ組成を持つ流体サンプル(配合物)の幾つかの測定値を素早く入手できる。また、調査対象とする流体組成を簡単且つ素早く改変させ得る。
従って、本発明を、配合物の成分として使用したい新規な生成物の設計コンテキストにおいて使用できる。また、本発明を、組み合わせ成分(又は新規量の組み合わせ成分)を含む新規な配合物の設計コンテキストにおいて使用できる。
【0042】
これらの場合、本発明に従い実施され得るスクリーニング法は、実施速度が著しく改善される点において、従来のそれよりも明らかに有益なものである。そうしたスクリーニング法の実施速度は従来のそれの2〜10倍であり得る。
本発明では限定量の流体が使用されるが、この点は、経済的な意味のみならず、環境やユーザーの安全性の点からの有益である。
本発明は他の用途において、工業製品の検査コンテキストにおいて使用され得る。
【0043】
本装置は、以下の分野、即ち、
コーティング用配合物、例えばペンキ、
油及び又はガス抽出用の流体配合物、
建築や土木工学で使用する配合物、
化粧配合物、特には、構成相、特には、構成界面活性液(SSL)を含む化粧配合物、
家族ケア用の洗剤配合物、特には、構成相を含む洗剤配合物、
植物衛生配合物、
活性化合物、特には、薬品及び又は動物ケアの分野における活性化合物をカプセル化及び又は保護及び又は釈放する製品、
の各分野で使用する化合物及び又は配合物を識別及び又は設計する上で特に有益である。
【0044】
本発明は、界面活性剤、高分子、及び又は、しばしば水性配合物であるところの、1つ以上の界面活性剤及び又は1つ以上の高分子、を含む配合物、また、必要に応じての、塩のようなその他の添加物を研究する上で特に有益である。本発明は、特には、粘度、電導度、光学、の分析、特には偏光プリズム光を使用する複屈折分析において、幾つかの界面活性剤の組み合わせを含む構成配合物を研究及び又は設計する上で非常に役立ち得るものであって、
消費者に認められる滑らかなレオロジー、
固体、液体又は気体の各粒子、及び又は、水性配合物、恐らくは特定の油内の液体内でストライプ又はその他の幾何学的形態を成す液相、を懸濁及び又は安定化させ得る能力、を持つ界面活性剤及び又は高分子に基づいて系を識別可能である。
【0045】
また本発明は、構造体界面活性剤(structured surfactants)の水系、恐らくは、塩を含み、組織構造割合(例えば、構造体層の容積の少なくとも40%、好ましくは少なくとも75%、更に好ましくは少なくとも95%)を有し、好適なレオロジーと、好適な懸濁力(レオロジー閾値)とを備える構造体界面活性剤を識別可能とするものである。そうした構造化は、任意の仮説に関連させずとも、球顆状、及び又は、積層相構造(光学手段により観察できる)が形成されることでレオロジーや電導度が変化する(多少の塩及び又は水を構造体に加入する及び又はその可動性を変化させることで)ことによるものと考え得る。本発明によれば、そうした系を簡単且つ素早く識別できるようになり、また、そうした系を入手するために実施対象となる配合物の変化を示唆し得る情報を入手可能である。
【0046】
以下に、本発明の実施状況を説明する。
粘度が200cPであるシリコーン油と、水及び界面活性剤とから三成分配合物を生成させる。これらの各配合物を、プレート内の、断面が1mm×1mm、長さが43mmの流れチャンネルに流入させる。次いで、プレート内で、交差配置した偏光顕微鏡による測定と電導度測定とを実施する。
プレートの流れチャンネルは、X線測定用の半径1.2mm、長さ10cmのカプトン製のチューブと連結される。こうした測定の全てを実行する間の各配合物の流量は2000μl/時である。
【0047】
更には、恐らくは加熱用のマイクロミキサーを、PMMAと、ステンレス鋼製の構造体プレートとから作製してPMMAよりも上流側に配置する。ヴァイトン(商標名)製のジョイントにより、マイクロミキサーの各部材をシールする。また、チャンバー内で、長さ8mm、直径1mmの磁気バーを毎分50回転の回転速度で旋回させる。
表1には、三成分ダイヤグラム内に配置したμS(ミクロジーメンス)での電導度値が示される。また、表2には、同じ三成分ダイヤグラム内におけるcPでの粘度値が示される。カプトン製のチューブ内でのX線回折測定をも実施する。測定結果は、従来からの測定コンテキストにおいて予測されたそれと一致するものであった。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【符号の説明】
【0050】
2 プレート
4 流れマイクロチャンネル
4’ 入口
4” 出口
6 枝流れマイクロチャンネル
8 注射器
10 注射器ポンプ
12 チューブ
14 混合要素
14 混合要素
16” 出口
16 チャンバ
18 送給チューブ
18 チューブ
20 攪拌要素
20 攪拌器
1 第1のガラスプレート
22、24 排出チューブ
25 排流収集容器
26’、26” 入口
28’、28” 圧力センサ
28’、28” センサ
34 プロセス処理用コンピューター
44 インピーダンスメーター
55 支持体
1 垂直ブランチ
2 水平ブランチ
102 管状の流れ要素
102” 出口
104 流れチャンネル
128 圧力センサ
361、362 電極
381、382 ブロック部分
401、402 枝部分
421、422 フィンガー部分
551、552 アーム
561 光源
562 輝度検出装置
581、582 偏光プリズム
1021 第1セクション
1022 第2セクション
1023 チューブ
1051 コネクター
1052 T字型ジョイント
1361 内側電極
1362 外側電極
1461 X線ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体分析装置であって、
被分析流体用の少なくとも1つの流れチャンネル(4)と、
該流れチャンネル内に流体を送るための手段(12、14、18)と、
前記流体の第1サンプルの粘度を分析するようになっている第1分析手段(28’、28”)と、
粘度分析用の第1分析手段とは異なる少なくとも1つの他の分析手段(361、362、46、561、562)にして、前記流体の第1サンプルまたは該第1サンプルと同じ組成の他のサンプルを分析するようになっている分析手段と、
を含む流体分析装置。
【請求項2】
流れチャンネル(4)の断面積が100μm2及び25mm2の間である請求項1の流体分析装置。
【請求項3】
流れチャンネルが、断面積が100μm2及び1mm2の間のマイクロチャンネル(40)である請求項2の流体分析装置。
【請求項4】
流れチャンネル(4)は長さ(L)が5mm及び3mの間、好ましくは1cm及び10cmの間である請求項1〜3の何れかの流体分析装置。
【請求項5】
粘度分析手段が、流れチャンネル(104)のある位置に配置した単一の圧力センサ(128)を含む請求項1〜4の何れかの流体分析装置。
【請求項6】
粘度分析手段が、流れチャンネル(4)からある距離の2つの位置(30、30”)に配置した2つの圧力センサ(28’、28”)を含む請求項1〜4の何れかの流体分析装置。
【請求項7】
少なくとも2つの別の分析手段を設けた請求項1〜6の何れかの流体分析装置。
【請求項8】
少なくとも2つの別の分析手段が、電導度分析手段(361、362)と、光学分析手段(46;561、562)から選択したものである請求項1〜7の何れかの流体分析装置。
【請求項9】
電導度分析手段が、被分析流体と接触するようになっている少なくとも2つの電極(361、362)を含む請求項7または8の流体分析装置。
【請求項10】
電極(361、362)が、圧力センサ(28’、28”)を配置する2つの位置(30’、30”)の間の中間部分に配置される請求項6〜9の何れかの流体分析装置。
【請求項11】
光学分析手段が、被分析流体を観察するべく観察領域(z)を向いて配置した少なくとも1つの偏光プリズム(481、482)を含む顕微鏡(46)を含む請求項8〜10の何れかの流体分析装置。
【請求項12】
光学分析手段が、光源(561)と、被分析流体を観察するべく観察領域(z)の何れかの側に位置決めした輝度検出装置(562)と、を含む請求項8〜10の何れかの流体分析装置。
【請求項13】
観察領域(z)の何れかの側に位置決めした2つの偏光プリズム(481、482;581、582)を設けた請求項11または12の流体分析装置。
【請求項14】
観察領域(z)が、流れチャンネル(4)に連結した枝流れチャンネル(6)内に位置付けられる請求項11〜13の何れかの流体分析装置。
【請求項15】
光源(561)と、輝度検出装置(562)とが、プレート(2)に固定、特には取り外し自在の様式下に固定するようになっている支持体(55)に取り付けられる請求項12〜14の何れかの流体分析装置。
【請求項16】
光学分析手段が、流れチャンネルの一部を越える、X線透過製のセクション(1023)を向いて位置付けたX線ビーム(1461)を含む請求項7〜10の何れかの流体分析装置。
【請求項17】
被分析流体が混合物であり、装置が、当該混合物を形成するための、流れチャンネル(4)よりも上流側に設けた手段(14)を更に含む請求項1〜16の何れかの流体分析装置。
【請求項18】
混合物を形成するための手段(14)が、混合物の各成分を受けるための手段(8、12)と相互作用する幾つかの入口(16’)と、攪拌要素(20)、特には、チャンバ内に収受される磁性の攪拌要素と、流れチャンネル(4)の方向の、混合物のための出口(16”)と、を含む請求項17の流体分析装置。
【請求項19】
混合物の各成分を受けるための手段(8、12)は、それら各成分の流量を調節して異なる組成の幾つかの混合物を生成するための手段(10)と関連付けされる請求項18の流体分析装置。
【請求項20】
流れチャンネル(4)またはその少なくとも一部がプレート(2)内に形成される請求項1〜19の何れかの流体分析装置。
【請求項21】
2つの電極(361、362)が、流れチャンネル(4)を境界付けるプレート(2)の壁上に位置決めされる請求項9及び20の何れかの流体分析装置。
【請求項22】
流れチャンネル(104)または少なくともその一部が管状流れ要素(102)の内容積部分を形成する請求項1〜19の何れかの流体分析装置。
【請求項23】
2つの電極の一方(1361)が管状流れ要素(102)のセクション(1022)の内容積部分、特には中央の部分内に位置付けられ、他方の電極(1362)が該管状流れ要素のセクションの壁を形成する請求項9及び22の何れかの流体分析装置。
【請求項24】
流体の特性を決定するための装置であって、請求項1〜23の任意の流体分析装置の少なくとも1つを含み且つ、各分析手段(28’、28”、361、362、46)に連結したプロセス処理用手段(34)を含み、各プロセス処理手段が、各分析手段からのデータをプロセス処理して流体の粘度のみならず、少なくとも1つのその他の特性を決定するために好適なものである装置。
【請求項25】
請求項1〜23の何れかに記載の流体分析装置を実施する方法であって、
流体を流れチャンネルに流入させること、
流体を随意的に枝流れチャンネル(6)に流入させること、
各チャンネルに流入させた流体を分析手段(28’、28”、361、362、46)を使用して分析すること、
を含む方法。
【請求項26】
流体が流れチャンネル(4)に流入せしめられ、随意的に枝流れチャンネル(6)に流入せしめられ、各チャンネルに流入する流体の流量が1μl/時〜10ml/分の間であり、好ましくは10μl/時〜1ml/分の間である請求項25の方法。
【請求項27】
流れチャンネル(4)内への流体流れを止め、該流体を枝流れチャンネル(6)に流入させ、該枝流れチャンネル内に流入した流体を静止状態とし、静止状態とした当該流体の光学的分析を枝流れチャンネル内で実施する請求項12〜21の何れかに記載の流体分析装置を実施する請求項25または26の方法。
【請求項28】
請求項19〜21の何れかに記載の方法に従い流体を分析し、分析手段により、流体の粘度及び少なくとも1つの他の特性を決定する請求項25の方法。
【請求項29】
請求項5または6の流体分析装置を含み、2つのセンサ(28’、28”)により測定した圧力間の、または単一の圧力センサ(128)により測定した圧力と周囲圧力との間の、差圧(ΔP)を決定し、決定した差圧から、流れチャンネルの幾何学的特徴、特には、その高さ及び又は幅及び又は半径、流れチャンネルを流動する流体の流量(Q)、2つの圧力センサ間の距離または単一の圧力センサ(102”)と流れチャンネルとの間の距離、の少なくとも1つの値を使用して流体の粘度を決定する、請求項24に記載の装置を実施するための請求項19〜28の何れかの方法。
【請求項30】
幾つかの流体をスクリーニングするための方法であって、
幾つかの流体を調製し、
請求項25〜29の何れかに記載の方法に従い各流体の特性を決定し、
前記幾つかの流体の中から、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つの一組の好ましい特性を持つ少なくとも1つの流体を識別すること、
を含む方法。
【請求項31】
幾つかの流体が、比率の異なる同じ成分を有する請求項30の方法。
【請求項32】
幾つかの流体の調製が、コンピューター形式のデータプロセス手段によってプログラム化され、各流体に関する特性が、前記データプロセス手段によって認証される請求項30または31の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−506186(P2010−506186A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531879(P2009−531879)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/FR2007/001669
【国際公開番号】WO2008/046990
【国際公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【出願人】(506256242)ユニヴェルシテ ドゥ ボルドー アン (6)
【Fターム(参考)】