説明

流体加熱装置

【課題】 流体加熱装置の最適設計をすることができ、これにより高効率化、サイズダウン、コストダウンを図る。
【解決手段】 燃料を燃焼させて熱エネルギーを発生させる燃焼装置と、この燃焼装置からの熱エネルギーで流体を加熱する加熱器からなる流体加熱装置において、この加熱器1が間隙を保ってプレートを積層したプレート部からなり、これらのプレート間の間隙を熱エネルギーを有する流体と被加熱流体が交互に流れ、被加熱流体が加熱されるように加熱部と被加熱部とを構成し、前記加熱器のプレート部が燃焼火炎5中に置かれ、このプレート部の下流上側に燃焼後の燃焼ガスが流入する複数の煙管7が配置されて、燃焼火炎は燃焼火炎中に置かれるプレート部を水平に流れた後、上方に屈曲して煙管内部を上方に向かって流れ、被加熱流体はプレート部を上方に流れた後、煙管の間に下部から入って煙管の外側を上方に流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて燃焼ガスにより液体等の流体を加熱する装置、詳しくはプレートを積層して熱エネルギーを有する流体と被加熱流体とを交互に流し、燃焼火炎を水平に流した後、上方に屈曲させて流すようにし、プレート型加熱器と煙管とをほぼL字型に配置した流体加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料の燃焼部に収熱部と呼ばれる円管や異形管などの伝熱管群を配置し、その後流に熱回収部の伝熱管群を配置した構成が知られている。
伝熱管群を用いる場合、形状の制約、および管ピッチが溶接しろの制約を受けるなど、最適設計ができないという欠点があった。また製作の複雑なことによるコストアップ、最適形状が得られないことによるサイズアップの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2948180号公報
【特許文献2】特開2004−324911号公報
【特許文献3】特開2001−153302号公報
【特許文献4】特開2003−185293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、流体加熱装置を設計するに際し、形状が嵩張ってコンパクトな最適形状に設計できない点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、流体加熱装置の最適設計を行うために、燃焼による熱エネルギーで流体を加熱する加熱器を、間隔を保ってプレートを積層したプレート部(プレート積層体)とし、燃焼火炎を水平に流した後、上方に屈曲させて流すようにし、加熱器と煙管とをほぼL字型に配置することを最も主要な特徴としている。
【0006】
本発明の流体加熱装置は、燃料を燃焼させて熱エネルギーを発生させる燃焼装置と、この燃焼装置からの熱エネルギーで流体を加熱する加熱器からなる流体加熱装置において、この加熱器が間隙を保ってプレートを積層したプレート部からなり、これらのプレート間の間隙を熱エネルギーを有する流体と被加熱流体が交互に流れ、被加熱流体が加熱されるように加熱部と被加熱部とを構成し、前記加熱器のプレート部が燃焼火炎中に置かれ、このプレート部の下流上側に燃焼後の燃焼ガスが流入する複数の煙管が配置されて、燃焼火炎は燃焼火炎中に置かれるプレート部を水平に流れた後、上方に屈曲して煙管内部を上方に向かって流れ、被加熱流体はプレート部を上方に流れた後、煙管の間に下部から入って煙管の外側を上方に流れるようにしたことを特徴としている。
【0007】
この装置において、プレート間の間隙が加熱部と被加熱部で異なるように構成することがある。また、各加熱部におけるプレート間の間隙が燃焼ガス流速及び燃焼ガス圧力損失の少なくともいずれかを均一に近づけるように決められているように構成することが望ましい。
【0008】
これらの装置において、加熱部のプレート間の間隙が被加熱部のプレート間の間隙より大きくなっているように構成することがある。
【0009】
また、加熱部のプレート間の間隙が下流方向に行くにつれて狭まり、被加熱部が下流方向に行くにつれて広くなっているように構成する場合がある。燃料を燃焼させて熱エネルギーを発生させる燃焼装置として、多孔プレートを用いた面燃焼バーナや、耐熱金属繊維を用いた面燃焼バーナ等が用いられる。
【0010】
また、本発明の装置は、熱エネルギーで流体を加熱する加熱器及び煙管を囲んで外箱が設置され、この加熱器及び煙管と外箱の間に被加熱流体が充填されているとともに、被加熱流体のプレート間の間隙が外箱と連通しているように構成される。
【0011】
また、この装置において、被加熱流体は流体加熱装置の外部より、外箱の上部及び下部のいずれかに設けられた被加熱流体供給管を経て外箱に流入し、外箱の上部より流出するように構成される。
【0012】
また、本発明の装置は、加熱器及び煙管を囲む外箱の上側部に、被加熱流体に連通する気液分離器を備えた気液分離室が設けられ、この気液分離室の上部及び上側部のいずれかに蒸気出口が設けられて、被加熱流体は加熱され沸騰して蒸気を発生し、気液分離器で蒸気が液流体と分離されて蒸気が外部へ流出し、液流体は気液分離室の下部より流出するように構成される。
【0013】
さらに、本発明の装置は、気液分離室の下部の内側及び外側のいずれかに、液流体出口を備えた液溜りを設け、この液溜りに液面検知器を設けて液面検知部を構成し、外箱の下部の被加熱流体供給管の液流体入口に流量制御弁を設け、この弁と前記液面検知器とを接続して、液溜りの液面を検知し、この液面が一定になるように外箱に流入する液流体流量を調節するように構成される。
【0014】
これらの装置において、被加熱流体が吸収液であり、流体加熱装置が吸収式冷凍機の再生器であるように構成する場合がある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の流体加熱装置は、従来の水管部をプレート式にし、その下流上側に煙管をほぼL字状に配置することにより、自由に燃焼ガス流路を設定でき、かつ、プレート部をセットするだけであるので、構造が簡単になり、製作容易でコストダウン及び高効率化を図ることができる。また、最適設計することができ、これにより、無駄なスペースがなくサイズダウンを図ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の流体加熱装置の要部である加熱器を示す斜視説明図である。
【図2】図2は図1における加熱器及び煙管の一例を示す説明図である。
【図3】図3は加熱部と被加熱部の一例を示す説明図である。
【図4】図4は加熱部と被加熱部の他の例を示す説明図である。
【図5】図5は加熱部と被加熱部のさらに他の例を示す説明図である。
【図6】図6は燃焼装置の一例を示す説明図である。
【図7】図7は本発明の流体加熱装置の一例を示す説明図である。
【図8】図8は図7に示す流体加熱装置の断面説明図である。
【図9】図9は本発明の流体加熱装置の他の例を示す説明図である。
【図10】図10は本発明の流体加熱装置のさらに他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
流体加熱装置をコンパクトかつ安価に設計するという目的を、流体を加熱する加熱器をプレート積層体とし、その下流上側に煙管をほぼL字型に配置することにより実現した。
【0018】
以下、本発明の実施例について図1〜図10に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではなく、適宜変更して実施できるものである。
図1は、本発明の流体加熱装置の要部を示している。1は加熱器で、加熱部2と被加熱部3とからなっている。この加熱器1の横方向に隣接して燃焼装置(図示せず)が配置されている。
【0019】
加熱器1は、間隔を保ってプレート4を積層したプレート部からなり、これらのプレート4間の間隙を熱エネルギーを有するガス体等の流体と、被加熱流体が交互に流れて、被加熱流体が加熱されるように構成されている。図1は、燃焼装置(図示せず)において燃料が水平方向に燃焼し、発生した燃焼ガスがプレート部に水平に入り、被加熱流体が下方から入って上方に流れるように構成されている。すなわち、燃焼ガスの流れと被加熱流体の流れが直交している。
【0020】
さらに、図2に示すように、加熱器1のプレート部が燃焼火炎5中に置かれ、このプレート部の下流上側に燃焼後の燃焼ガスが流入する複数の煙管7が配置されて、燃焼火炎は燃焼火炎中に置かれるプレート部を水平に流れた後、上方に屈曲して煙管7内部を上方に向かって流れ、被加熱流体はプレート部を上方に流れた後、煙管7の間に下部から入って煙管7の外側を上方に流れるように構成されている。
【0021】
図3及び図4は、プレート間の間隙が加熱部2と被加熱部3で異なるようにした場合、例えば加熱部2の間隙を被加熱部3の間隙より広くした場合を示している。
また、各加熱部2におけるプレート間の間隙は、燃焼ガス流速及び燃焼ガス圧力損失の少なくともいずれかを均一に近づけるように決められる。
【0022】
図5は、加熱部2のプレート間の間隙が、下流方向に行くにつれて狭まり、被加熱部3のプレート間の間隙が下流方向に行くにつれて広くなるように構成した場合を示している。
【0023】
燃料を燃焼させて熱エネルギー(燃焼ガス)を発生させる燃焼装置としては、図6に示すような、多孔プレート13を用いた面燃焼バーナ14や、耐熱金属繊維を用いた面燃焼バーナ(図示せず)等が用いられる。
【0024】
図7及び図8は、加熱器及び煙管を外箱で囲む場合を示している。すなわち、熱エネルギーで流体を加熱する加熱器1及び煙管7を囲んで外箱15が設置され、この加熱器1及び煙管7と外箱15の間に被加熱流体が充填されているとともに、被加熱流体のプレート間の間隙が外箱15と連通しているように構成される。この場合、被加熱流体は流体加熱装置の外部より、外箱15の上部及び下部のいずれかに設けられた被加熱流体供給管16、17を経て外箱15に流入し、外箱15の上部より流出するように構成することが望ましい。
【0025】
図9は、気液分離室を備えた装置の一例を示している。すなわち、加熱器1及び煙管7を囲む外箱15の上側部に、被加熱流体に連通する気液分離器20を備えた気液分離室21が設けられ、この気液分離室21の上部及び上側部のいずれかに蒸気出口22が設けられて、被加熱流体は加熱され沸騰して蒸気を発生し、気液分離器20で蒸気が液流体と分離されて蒸気が外部へ流出し、液流体は気液分離室21の下部から流出するように構成されている。30は液流体出口である。
【0026】
さらに、図10に示すように、気液分離室21の下部の内側及び外側のいずれかに、液流体出口23を備えた液溜り24を設け、この液溜り24に液面検知器25を設けて液面検知部26を構成し、外箱15の下部の被加熱流体供給管17の液流体入口27に流量制御弁28を設け、この弁28と前記液面検知器25とを接続して、液溜り24の液面を検知し、この液面が一定になるように外箱15に流入する液流体流量を調節するように構成する場合もある。31は制御器である。
【0027】
上記の構成において、被加熱流体が吸収式冷凍機(冷温水機を含む)の吸収液であり、流体加熱装置が吸収式冷凍機(冷温水機を含む)の再生器であるように構成することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
加熱流体として、燃料をバーナで燃焼させた燃焼ガスを用い、被加熱流体として吸収液を用いることにより、吸収式冷凍機または吸収式冷温水機(単に吸収式冷凍機と記している場合もある)の再生器として用いることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 加熱器
2 加熱部
3 被加熱部
4 プレート
5 燃焼火炎
7 煙管
13 多孔プレート
14 面燃焼バーナ
15 外箱
16、17 被加熱流体供給管
20 気液分離器
21 気液分離室
22 蒸気出口
23、30 液流体出口
24 液溜り
25 液面検知器
26 液面検知部
27 液流体入口
28 流量制御弁
31 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼させて熱エネルギーを発生させる燃焼装置と、この燃焼装置からの熱エネルギーで流体を加熱する加熱器からなる流体加熱装置において、この加熱器が間隙を保ってプレートを積層したプレート部からなり、これらのプレート間の間隙を熱エネルギーを有する流体と被加熱流体が交互に流れ、被加熱流体が加熱されるように加熱部と被加熱部とを構成し、前記加熱器のプレート部が燃焼火炎中に置かれ、このプレート部の下流上側に燃焼後の燃焼ガスが流入する複数の煙管が配置されて、燃焼火炎は燃焼火炎中に置かれるプレート部を水平に流れた後、上方に屈曲して煙管内部を上方に向かって流れ、被加熱流体はプレート部を上方に流れた後、煙管の間に下部から入って煙管の外側を上方に流れるようにしたことを特徴とする流体加熱装置。
【請求項2】
プレート間の間隙が加熱部と被加熱部で異なるようにした請求項1記載の流体加熱装置。
【請求項3】
各加熱部におけるプレート間の間隙が燃焼ガス流速及び燃焼ガス圧力損失の少なくともいずれかを均一に近づけるように決められている請求項2記載の流体加熱装置。
【請求項4】
加熱部のプレート間の間隙が被加熱部のプレート間の間隙より大きくなっている請求項2又は3記載の流体加熱装置。
【請求項5】
加熱部のプレート間の間隙が下流方向に行くにつれて狭まり、被加熱部が下流方向に行くにつれて広くなっている請求項1記載の流体加熱装置。
【請求項6】
燃料を燃焼させて熱エネルギーを発生させる燃焼装置が、多孔プレートを用いた面燃焼バーナである請求項1〜5のいずれかに記載の流体加熱装置。
【請求項7】
燃料を燃焼させて熱エネルギーを発生させる燃焼装置が、耐熱金属繊維を用いた面燃焼バーナである請求項1〜5のいずれかに記載の流体加熱装置。
【請求項8】
熱エネルギーで流体を加熱する加熱器及び煙管を囲んで外箱が設置され、この加熱器及び煙管と外箱の間に被加熱流体が充填されているとともに、被加熱流体のプレート間の間隙が外箱と連通している請求項1〜7のいずれかに記載の流体加熱装置。
【請求項9】
被加熱流体は流体加熱装置の外部より、外箱の上部及び下部のいずれかに設けられた被加熱流体供給管を経て外箱に流入し、外箱の上部より流出するようにした請求項8記載の流体加熱装置。
【請求項10】
加熱器及び煙管を囲む外箱の上側部に、被加熱流体に連通する気液分離器を備えた気液分離室が設けられ、この気液分離室の上部及び上側部のいずれかに蒸気出口が設けられて、被加熱流体は加熱され沸騰して蒸気を発生し、気液分離器で蒸気が液流体と分離されて蒸気が外部へ流出し、液流体は気液分離室の下部より流出するようにした請求項8又は9記載の流体加熱装置。
【請求項11】
気液分離室の下部の内側及び外側のいずれかに、液流体出口を備えた液溜りを設け、この液溜りに液面検知器を設けて液面検知部を構成し、外箱の下部の被加熱流体供給管の液流体入口に流量制御弁を設け、この弁と前記液面検知器とを接続して、液溜りの液面を検知し、この液面が一定になるように外箱に流入する液流体流量を調節するようにした請求項10記載の流体加熱装置。
【請求項12】
被加熱流体が吸収液であり、流体加熱装置が吸収式冷凍機の再生器である請求項1〜11のいずれかに記載の流体加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−226681(P2011−226681A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95207(P2010−95207)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000199887)川重冷熱工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】