説明

流体噴射装置の調整方法及び流体噴射装置の製造方法

【課題】テストパターンに基づいてヘッドに印加される電圧を適切に調整する。
【解決手段】媒体が搬送される搬送方向の上流側に配置される第1ヘッドが形成したドット列の間に、前記第1ヘッドよりも下流側に配置された第2ヘッドがドット列を形成する流体噴射装置の調整方法であって、第1の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドを駆動して第1テストパターンをn形成し、第2の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとを駆動して第2テストパターンを形成することと、前記第1テストパターンと前記第2テストパターンの濃度を測定し、目標濃度に対応する電圧変化量を求め、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドの相対的な流体の噴射量に基づいて、前記第1ヘッドを駆動する電圧変化量と前記第2ヘッドを駆動する電圧変化量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置の調整方法及び流体噴射装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタに固定された複数のヘッドの下に媒体を搬送させ、ヘッドから流体を噴射することによって印刷を行うラインヘッド型のプリンタが開発されている。
このようなプリンタで用いられるヘッドは、ヘッド毎に最適な駆動波形及び駆動電圧が異なり、これらはヘッド毎に調整する必要がある。ヘッド毎に最適な駆動波形及び駆動電圧の設定方法としては、特許文献1に示すような方法がある。また特許文献2に示すような方法におり、濃度補正処理を行う方法もある。
【0003】
ところが、これらの手法によってもヘッド毎の出力のばらつきが大きい場合には、適切に駆動電圧等を調整しきれない場合があった。このような問題を解決するための一手法として、複数の駆動電圧を印加したときにおけるテストパターンの濃度を求め、これらのテストパターンが基準の濃度となるように駆動電圧を調整することで、複数のヘッドが出力する濃度をほぼ均一にする方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240127号公報
【特許文献2】特会2006−264069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラインヘッド型のプリンタにおいて、印刷可能なドットピッチを高めるために、媒体搬送方向の上流側と下流側にヘッドを配置する。そして、このとき、これら2つのヘッドにおけるノズルが1/2ノズルピッチだけ搬送方向とは交差する方向にずれるようにヘッドを配置することにより、印刷可能なドットピッチを高めることが行われる。
【0006】
しかしながら、上流側のヘッドと下流側のヘッドのうち一方のヘッドのみが形成したテストパターンに基づいてヘッドに印加される電圧を調整しようとした場合、テストパターンの濃度を適切に検出できず、結果としてヘッドに印加する電圧を適切に調整することができないことがある。例えば、上流側のヘッドと下流側のヘッドを用いて720dpiの解像度で印刷可能なプリンタにおいて、上流側のヘッドだけを用いて360dpiの解像度にてテストパターンを印刷した場合、ノズルの飛行曲がり等の影響によるバンディングの影響が強く表れてしまい、安定した濃度値を求めることができないという問題があった。よって、このような状況下においてもテストパターンに基づいてヘッドに印加される電圧を適切に調整することが望ましい。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、テストパターンに基づいてヘッドに印加される電圧を適切に調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、
媒体が搬送される搬送方向の上流側に配置される第1ヘッドが形成したドット列の間に、前記第1ヘッドよりも下流側に配置された第2ヘッドがドット列を形成する流体噴射装置の調整方法であって、
第1の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドを駆動して第1テストパターンを形成し、第2の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとを駆動して第2テストパターンを形成することと、
前記第1テストパターンと前記第2テストパターンの濃度を測定することと、
測定した前記第1テストパターンの濃度と前記第2テストパターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応する前記電圧変化量を求めることと、
前記目標濃度に対応する前記電圧変化量と、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドの相対的な流体の噴射量に基づいて予め求められた割り振り係数と、に基づいて、前記第1ヘッドを駆動する電圧変化量と前記第2ヘッドを駆動する電圧変化量を調整することと、
を含む、流体噴射装置の調整方法である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】用語の説明図である。
【図2】印刷システム100の構成を示すブロック図である。
【図3】プリンタ1の搬送処理とドット形成処理を説明するための斜視図である。
【図4】ヘッドユニット40における複数ヘッドの配列の説明図である。
【図5】ヘッドの構造を説明する図である。
【図6】駆動信号を説明する図である。
【図7】ヘッド配置とドット形成の様子の説明図である。
【図8】本実施形態におけるテストパターンを示す図である。
【図9】本実施形態における駆動電圧設定方法について説明するためのフローチャートである。
【図10】駆動電圧対濃度計測処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】求められた各バンドの各インク色についての駆動電圧毎の平均濃度を示す表である。
【図12】各インク色の基準濃度を示す表である。
【図13】求められた一次式の係数a,bを示す表である。
【図14】各バンドのインク色毎の適正駆動電圧を示す表である。
【図15】各バンドの適正駆動電圧を示す表である。
【図16】ヘッドの割り振り係数を示す表である。
【図17】各ヘッドの適正駆動電圧を示す表である
【図18】複数サイズのドットを形成可能なときの駆動信号の一例を示す図である。
【図19】経過時間と濃度との関係を示すグラフである。
【図20】プリンタドライバによる処理の説明図である。
【図21】図21Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図であり、濃度むらが発生したときの説明図であり、図21Bは、濃度むらが発生したときの説明図であり、図21Cは、濃度むらの発生が抑制された様子を示す図である。
【図22】補正値取得処理の流れを示す図である。
【図23】補正用パターンCPの説明図である。
【図24】指令階調値がSa、Sb、ScのサブパターンCSPについてラスタライン毎の算出濃度を示すグラフである。
【図25】図25Aは、第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図であり、図25Bは、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正知るための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。
【図26】メモリ63に記憶された補正値テーブルを示す図である。
【図27】ユーザ下でプリンタドライバが行う印刷処理のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0012】
媒体が搬送される搬送方向の上流側に配置される第1ヘッドが形成したドット列の間に、前記第1ヘッドよりも下流側に配置された第2ヘッドがドット列を形成する流体噴射装置の調整方法であって、
第1の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドを駆動して第1テストパターンを形成し、第2の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとを駆動して第2テストパターンを形成することと、
前記第1テストパターンと前記第2テストパターンの濃度を測定することと、
測定した前記第1テストパターンの濃度と前記第2テストパターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応する前記電圧変化量を求めることと、
前記目標濃度に対応する前記電圧変化量と、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドの相対的な流体の噴射量に基づいて予め求められた割り振り係数と、に基づいて、前記第1ヘッドを駆動する電圧変化量と前記第2ヘッドを駆動する電圧変化量を調整することと、
を含む、流体噴射装置の調整方法。
このようにすることで、テストパターンに基づいてヘッドに印加される電圧を適切に調整することができる。
【0013】
かかる流体噴射装置の調整方法であって、前記割り振り係数は、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドが噴射した前記流体の重量に基づいて求められることが望ましい。また、前記割り振り係数は、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドが形成した罫線の幅に基づいて求められることとしてもよい。また、前記電圧変化量は、ヘッドを駆動する駆動信号に含まれる駆動パルスの振幅であることが望ましい。また、前記電圧変化量は、ヘッドを駆動する駆動信号に含まれる駆動パルスの最大振幅であってもよい。
【0014】
また、前記第1テストパターン及び前記第2テストパターンは、所定の領域において全ての画素にドットが形成されるテストパターンであることが望ましい。また、前記搬送方向に並ぶ画素からなる画素列毎の濃度補正を行うための補正用パターンを前記媒体に形成することと、前記補正用パターンに基づいて、前記画素列毎の濃度を補正するための濃度補正値を求めることと、を、さらに含み、前記濃度補正値は、形成された前記補正用パターンの濃度が前記画素列毎に測定され、測定された前記画素列毎の濃度に基づいて求められることが望ましい。
このようにすることで、テストパターンに基づいてヘッドに印加される電圧を適切に調整することができる。
【0015】
媒体が搬送される搬送方向の上流側に配置される第1ヘッドが形成したドット列の間に、前記第1ヘッドよりも下流側に配置された第2ヘッドがドット列を形成する流体噴射装置の調整方法であって、
第1の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドを駆動して第1テストパターンを形成し、第2の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとを駆動して第2テストパターンを形成することと、
前記第1テストパターンと前記第2テストパターンの濃度を測定することと、
測定した前記第1テストパターンの濃度と前記第2テストパターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応する前記電圧変化量を求めることと、
前記目標濃度に対応する前記電圧変化量と、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドの相対的な流体の噴射量に基づいて予め求められた割り振り係数と、に基づいて、前記第1ヘッドを駆動する電圧変化量と前記第2ヘッドを駆動する電圧変化量を調整することと、
を含む、流体噴射装置の製造方法。
このようにすることで、テストパターンに基づいてヘッドに印加される電圧を適切に調整することができる。
【0016】
===実施形態===
<用語の説明>
まず、本実施形態を説明する際に用いられる用語の意味を説明する。
図1は、用語の説明図である。
【0017】
「印刷画像」とは、用紙上に印刷された画像である。インクジェットプリンタの印刷画像は、用紙上に形成された無数のドットから構成されている。
「ドットライン」とは、ヘッドと用紙とが相対移動する方向(移動方向)に並ぶドットの列である。後述の実施形態のようなラインプリンタの場合、「ドットライン」は、用紙の搬送方向に並ぶドットの列を意味する。一方、キャリッジに搭載されたヘッドによって印刷するシリアルプリンタの場合、「ドットライン」は、キャリッジの移動方向に並ぶドットの列を意味する。移動方向と垂直な方向に多数のドットラインが並ぶことによって、印刷画像が構成されることになる。図に示すように、n番目の位置にあるドットラインのことを「第nドットライン」と呼ぶ。
【0018】
「画像データ」とは、2次元画像を示すデータである。後述する実施形態では、256階調の画像データや、2階調の画像データや、4階調の画像データなどがある。また、画像データは、後述する印刷解像度へ変換前の画像データを指すことも、変換後の画像データを指すこともある。
「印刷画像データ」とは、画像を用紙に印刷するときに用いられる画像データである。プリンタが2階調でドットの形成を制御する場合、2階調の印刷画像データは、各画素におけるドットの有無を示すことになる。また、プリンタが4階調でドットの形成(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を制御する場合、4階調の印刷画像データは、印刷画像を構成するドットの形成状態を示すことになる。
「読取画像データ」とは、スキャナによって読み取られた画像データである。
【0019】
「画素」とは、画像を構成する最小単位である。この画素が2次元的に配置されることによって画像が構成される。
「画素列」とは、画像データ上において所定方向に並ぶ画素の列である。図に示すように、n番目の画素列のことを「第n画素列」と呼ぶ。
「画素データ」とは、画素の階調値を示すデータである。後述する実施形態において、ハーフトーン処理前であれば256階調などの多階調のデータを示す。また、ハーフトーン処理後の2階調の印刷画像データの場合、各画素データは、1ビットデータになり、ある画素のドットの有無を示すことになる。また、ハーフトーン処理後の4階調の印刷画像データの場合、各画素データは、2ビットデータになり、ある画素のドット形成状態(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を示すことになる。
「画素領域」とは、画像データ上の画素に対応した用紙上の領域である。例えば、印刷画像データの解像度が720×720dpiの場合、「画素領域」は、1辺が1/720インチの正方形状の領域になり、用紙上の画素である。
【0020】
「列領域」とは、画素列に対応した用紙上の領域であり、用紙上の画素列である。例えば、印刷画像データの解像度が720×720dpiの場合、列領域は、1/720インチ幅の細長い領域になる。「列領域」は、印刷画像データ上の画素列に対応した用紙上の領域を意味する場合もあるし、読取画像データ上の画素列に対応した用紙上の領域を意味する場合もある。図中の右下には、前者の場合の列領域が示されている。前者の場合の「列領域」は、ドットラインの形成目標位置でもある。正確に列領域にドットラインが形成される場合、そのドットラインはラスタラインに相当する。後者の場合の「列領域」は、読取画像データ上の画素列が読み取られた用紙上の測定位置(測定範囲)でもあり、言い換えると、画素列の示す画像(画像片)が存在する用紙上の位置でもある。図に示すように、n番目の位置にある列領域のことを「第n列領域」と呼ぶ。第n列領域は第nドットラインの形成目標位置になる。
【0021】
「画像片」とは、画像の一部分を意味する。画像データ上において、ある画素列の示す画像は、画像データの示す画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、あるラスタラインによって表される画像は、印刷画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、ある列領域での発色によって表される画像も、印刷画像の「画像片」に該当する。
【0022】
ところで、図1の右下には、画素領域とドットとの位置関係が示されている。ヘッドの製造誤差の影響によって第2ドットラインが第2列領域からズレた結果、第2列領域の濃度が淡くなる。また、第4列領域では、ヘッドの製造誤差の影響によってドットが小さくなった結果、第4列領域の濃度が淡くなる。このような濃度むらや濃度むら補正方法を説明する必要があるため、本実施形態では、「ドットライン」、「画素列」、「列領域」等の意味や関係を上記の内容に沿って説明している。
但し、「画像データ」や「画素」等の一般的な用語の意味は、上記の説明だけでなく、通常の技術常識に沿って適宜解釈して良い。
【0023】
また、以下の説明において、階調値が高いときに濃度が高く、階調値が低いときに濃度が低いものとして説明を行う。また、説明中、濃度が高い場合は明度が低い場合に対応する。
【0024】
<印刷システムについて>
図2は、印刷システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態の印刷システム100は、図2に示すように、プリンタ1と、コンピュータ110と、スキャナ120とを有するシステムである。
【0025】
プリンタ1は、流体としてのインクを媒体に噴射して該媒体に画像を形成(印刷)する流体噴射装置であり、本実施形態ではカラーインクジェットプリンタである。プリンタ1は、用紙、布、フィルムシート等の複数種の媒体に画像を印刷することが可能である。なおプリンタ1の構成については後述する。
【0026】
コンピュータ110は、インターフェース111と、CPU112と、メモリ113を有する。インターフェース111は、プリンタ1及びスキャナ120との間でデータの受け渡しを行う。CPU112は、コンピュータ110の全体的な制御を行うものであり、当該コンピュータ110にインストールされた各種プログラムを実行する。メモリ113は、各種のプログラムや各種のデータを記憶する。コンピュータ110にインストールされたプログラムの中には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプリンタドライバや、スキャナ120を制御するためのスキャナドライバがある。そしてコンピュータ110は、プリンタドライバによって生成された印刷データをプリンタ1に出力する。
【0027】
スキャナ120は、スキャナコントローラ125と、読取キャリッジ121とを有する。スキャナコントローラ125は、インターフェース122、CPU123、及びメモリ124を有する。インターフェース122は、コンピュータ110との間で通信を行う。CPU123は、スキャナ120の全体的な制御を行う。例えば読取キャリッジ121を制御する。メモリ124は、コンピュータプログラム等を記憶する。読取キャリッジ121は、例えばR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に対応する不図示の3つのセンサ(CCDなど)を有する。
【0028】
以上の構成により、スキャナ120は、不図示の原稿台に置かれた原稿に光を照射し、その反射光を読取キャリッジ121の各センサにより検出し、前記原稿の画像を読み取って、当該画像の色情報を取得する。そして、インターフェース122を介してコンピュータ110のスキャナドライバに向けて画像の色情報を示すデータ(読取データ)を送信する。
【0029】
<プリンタの構成>
図3は、プリンタ1の搬送処理とドット形成処理を説明するための斜視図である。ここでは、図2のブロック図も参照しつつプリンタの構成について説明する。
【0030】
プリンタ1は、搬送ユニット20、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。コントローラ60は、コンピュータ110と接続するためのインターフェース61、演算装置であるCPU62、記憶部に相当するメモリ63、及び、各ユニットを制御するためのユニット制御回路64を含む。
【0031】
外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、用紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
【0032】
搬送ユニット20は、媒体(例えば、用紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、上流側ローラ22A及び下流側ローラ22Bと、ベルト24とを有する。不図示の搬送モータが回転すると、上流側ローラ22A及び下流側ローラ22Bが回転し、ベルト24が回転する。給紙された用紙Sは、ベルト24によって、印刷可能な領域(ヘッドと対向する領域)まで搬送される。ベルト24が用紙Sを搬送することによって、用紙Sがヘッドユニット40に対して搬送方向に移動する。印刷可能な領域を通過した用紙Sは、ベルト24によって外部へ排紙される。なお、搬送中の用紙Sは、ベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている。
【0033】
ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、搬送中の用紙Sに対してインクを吐出することによって、用紙Sにドットを形成し、画像を用紙Sに印刷する。本実施形態のプリンタ1はラインプリンタであり、ヘッドユニット40は紙幅分のドットを一度に形成することができる。
【0034】
駆動信号生成回路70は、ピエゾ素子PZTに印加するための駆動信号を生成する。本実施形態では、第1ヘッド41A〜第12ヘッド41Lの12個のヘッドが用いられ、各ヘッドにはそれぞれ別の駆動信号が供給される。そして、1つの駆動信号は供給されるヘッドの全てのノズル列で共通の駆動信号として用いられる。
駆動信号生成回路70は、6つの駆動信号COM1〜COM12を生成して出力する。また、各駆動信号の駆動パルスはそれぞれ振幅などのパラメータの設定ができるようになっている。
【0035】
図4は、ヘッドユニット40における複数のヘッドの配列の説明図である。図に示すように、12個のヘッド41が並んでいる。尚、ここでは、下面からしか見ることができないノズル列を説明の容易のために上部から観察可能に図示している。本実施形態では、上流側のヘッドと下流側のヘッドの2個のヘッドが1組となり、紙幅方向について720dpiの解像度で印刷が行えるようになっている。そのため、上流側のヘッドと下流側のヘッドは、紙幅方向に関してお互いに1/2ノズルピッチ分ずれるようにして配置されている。上流側のヘッドと下流側のヘッドとの関係は、後に図7を用いて説明する。
【0036】
各ヘッドには、ブラックインクノズル列NK、シアンインクノズル列NC、マゼンタインクノズル列NM、及び、イエローインクノズル列NYが形成されている。各ノズル列は、インクを吐出するノズルを複数個(ここでは、360個)備えている。各ノズル列の複数のノズルは、紙幅方向に沿って、一定のノズルピッチ(ここでは、360dpi)で並んでいる。また、各ヘッド間におけるノズル列同士は、端部のノズル列同士が搬送方向について重なるように並んでいる。
【0037】
図5は、ヘッドの構造を説明する図である。本実施形態では、第1ヘッド41A〜第12ヘッド41Lが設けられている。これらの構造は、全てほぼ共通であるので、ここでは、第1ヘッド41Aの構造について説明する。図には、ノズルNz、ピエゾ素子PZT、インク供給路402、ノズル連通路404、及び、弾性板406が示されている。
【0038】
インク供給路402には、不図示のインクタンクからインク滴が供給される。そして、これらのインク滴等は、ノズル連通路404に供給される。ピエゾ素子PZTには、後述する駆動信号の駆動パルスが印加される。駆動パルスが印加されると、駆動パルスの信号に従ってピエゾ素子PZTが伸縮し、弾性板406を振動させる。そして、駆動パルスの振幅に対応する量のインク滴がノズルNzから吐出されるようになっている。
【0039】
図6は、駆動信号を説明する図である。本実施形態では、ヘッドが12個設けられているため、駆動信号も第1駆動信号COM1〜第12駆動信号COM12が出力される。尚、後述する駆動電圧設定処理において、第1駆動信号COM1〜第12駆動信号COM12における第2駆動パルスPS2の振幅がお互いに若干異なることになるものの、形状はほぼ同じであるので、ここでは第1駆動信号COM1を例に駆動信号の説明を行う。
【0040】
第1駆動信号COM1は、繰り返し周期Tごとに繰り返し生成される。繰り返し周期である期間Tは、用紙Sが1画素領域分搬送される間の期間に対応する。例えば、搬送方向の印刷解像度が720dpiの場合、期間Tは、用紙Sが1/720インチ搬送されるための期間に相当する。そして、印刷データに含まれる画素データに基づいて、期間Tに含まれる各区間の駆動パルスPS1又はPS2がピエゾ素子PZTに印加されることによって、1つの画素領域内にドットが形成されたり、ドットが形成されないようにすることができる。
【0041】
第1駆動信号COM1は、繰り返し周期における区間T1で生成される第1駆動パルスPS1と、第2駆動パルスPS2を有する。第1駆動パルスPS1は、微振動パルスであり、ノズルのインク面(インクメニスカス)を微振動させるための駆動パルスである。このパルスが印加される場合には、ノズルからインクは噴射されない。一方、第2駆動パルスPS2は、インク噴射用のパルスであり、ノズルからインクを噴射させるための駆動パルスである。このパルスが印加される場合には、ノズルからインクが噴射される。
【0042】
図には、第2駆動パルスPS2の振幅としてVhが示されている。この振幅を大きくすると、大きなサイズのインク滴が噴射されることになり、振幅を小さくすると小さなサイズのインク滴が噴射されることになる。よって、後述する手法により、この振幅を補正して設定することにより、所望のサイズのインク滴を噴射することができる。そして、所望の濃度の印刷を行うことができるようになっている。尚、以下の説明において、このようにインクを噴射するための駆動パルスの振幅Vhは「電圧変化量」に相当し、ここでは説明の容易のために駆動電圧Vhと呼ぶ。
【0043】
図7は、ヘッド配置とドット形成の様子の説明図である。ここでは、説明の簡略化のため、ヘッドユニット40における2個のヘッド(第1ヘッド41A、第2ヘッド41B)のみが示されている。また、説明の簡略化のため、各ヘッドにはブラックインクノズル列NKだけが設けられているものとする。以下の説明において、搬送方向のことを「x方向」と呼び、紙幅方向のことを「y方向」と呼ぶことがある。
【0044】
各ヘッドのブラックインクノズル列は、1/360インチ間隔で紙幅方向(y方向)に並ぶノズルから構成されている。本図では、ドットピッチPとして示されている。
【0045】
第1ヘッド41Aにおけるノズルと第2ヘッド41Bにおけるノズルは、紙幅方向に関してP/2だけずれて配置されている。また、不図示ではあるが、第2ヘッド41Bの端部のノズル列と第3ヘッド41Cのノズル列とで重複する領域においても、両者のノズル列のノズルはP/2だけずれるように配置されている。
【0046】
搬送中の用紙Sに対してこれらのような各ヘッドのノズルから断続的にインク滴が吐出されることによって、用紙に複数のドットラインを形成する。各ドットラインは、搬送方向(x方向)に沿って形成される。本図において、第1ヘッド41Aのノズルには左下がりの斜線が付されており、また、第1ヘッド41Aのノズルによって形成されたドットにも左下がりの斜線が付されている。また、第2ヘッド41Bのノズルには右下がりの斜線が付されており、第2ヘッド41Bによって形成されたドットにも右下がりの斜線が付されている。
【0047】
このような配置にすることによって、各ノズル列のノズルピッチは360dpiであるが、紙幅方向についてのドットピッチは720dpiとすることができる。第1ヘッド41Aから第12ヘッド41Lまでにかけて、図7に示されるように紙幅方向に関して720dpiのピッチでドットが形成されるように、各ヘッドは配置される。
尚、ここで示されたドットのサイズは、駆動電圧を変化させることによって変化することになる。
【0048】
図8は、本実施形態におけるテストパターンを示す図である。図には、第1ヘッド41A〜第12ヘッド41Lが示されている。ここでも、ノズル列の位置が分かるように、本来上部からは視認できないノズル列を視認できるように示している。また、図には、用紙Sが2枚示され、一方の用紙Sには、第1駆動信号COM1〜第12駆動信号COM12の第2駆動パルスPS2の駆動電圧Vhに共通の駆動電圧がV1が設定されていたときのテストパターンを形成したことを示すように、駆動電圧V1が示され、他方の用紙Sには、駆動電圧V2が設定されていたときのテストパターンを形成したことを示すように、駆動電圧V2が示されている。
【0049】
また、図には、各ヘッドがインク色毎に形成するテストパターンが示され、またテストパターンにおいて測色される矩形領域として、K1〜K6、C1〜C6、M1〜M6、Y1〜Y6が示されている。符号のアルファベットが矩形領域のインク色を示すものである。また、アルファベットの後に示された数字は、対応する「バンド」の番号を示している。
【0050】
第1バンドは、第1ヘッド41A及び第2ヘッド41Bによって形成される。第2バンドは、第3ヘッド41C及び第4ヘッド41Dによって形成される。第3バンドは、第5ヘッド41E及び第6ヘッド41Fによって形成される。第4バンドは、第7ヘッド41G及び第8ヘッド41Hによって形成される。第5バンドは、第9ヘッド41I及び第10ヘッド41Jによって形成される。第6バンドは、第11ヘッド41K及び第12ヘッド41Lによって形成される。
【0051】
例えば、第1ヘッド41A及び第2ヘッド41Bが形成したブラックのテストパターンの矩形領域には、K1の符号が付されている。
テストパターンは、用紙Sが搬送方向に搬送させられつつ、最初にイエローインクノズル列NYからインクが噴射されることによりY1〜Y6を含むテストパターンが形成される。次に、マゼンタインクノズル列NMからインクが噴射されることによりM1〜M6を含むテストパターンが形成される。次に、シアンインクノズル列NCからインクが噴射されることによりC1〜C6を含むテストパターンが形成される。次に、ブラックインクノズル列NKからインクが噴射されることによりK1〜K6を含むテストパターンが形成される。
【0052】
テストパターンを形成するときにおいて、媒体における仮想的な画素領域には必ず1つのドットが形成されるようにされる。つまり、図7に示すように、搬送方向に並ぶドットにより形成されるドットラインが、紙幅方向に720dpiで並ぶように形成される。
【0053】
尚、図には、全ての駆動信号COM1〜COM12に共通の駆動電圧Vhを設定したにもかかわらず、形成されるテストパターンの濃度が異なっていることが示されている。これは、各ヘッドの個体差などにより、同じ駆動電圧を印加した場合であっても、異なるサイズのドットが形成され、結果として異なる濃度のテストパターンが形成されていることによる。
【0054】
図9は、本実施形態における駆動電圧設定方法について説明するためのフローチャートである。前述のように、ここでは第1ヘッド41A〜第12ヘッド41Lが用いられているが、説明の容易のために、第1ヘッド41A〜第6ヘッド41Fの6つにヘッドの数を減らし、バンド数も第1バンドから第3バンドの3つにして説明を進める。
【0055】
まず、駆動電圧設定処理(S102)が行われる。
図10は、駆動電圧設定処理を説明するためのフローチャートである。まず、駆動電圧設定処理において、駆動電圧をVh1、Vh2に設定したときのそれぞれのテストパターンが形成される(S202)。印刷されるテストパターンは、前述の図8に示すテストパターンと同様であるが、駆動電圧をVh1(ここでは、22V)に設定したときにおけるテストパターンが1枚の用紙に印刷され、さらに、駆動電圧をVh2(ここでは25V)に設定したときにおけるテストパターンがもう一枚の用紙に印刷される。
【0056】
次に、印刷されたテストパターンのスキャナによる読み取りが行われる(S204)。読み取りは、駆動電圧をVh1にしたときのテストパターンと、駆動電圧をVh2にしたときのテストパターンの2枚について行われる。そして、各矩形領域について、ヘッド毎及びインク色毎にRGB値が取得される。
【0057】
次に、駆動電圧毎、及び、インク色毎の平均濃度が求められる(S206)。
前述のように、スキャナ120がテストパターンを読み取ることによって、RGB値を得ることができていた。ここでは、YMCK色空間の濃度を取得する必要があるため、RGBからYMCKへの色変換処理を行うことになる。変換式は、以下に示すような一般的な変換式が用いられる。

Y=(1−B/255−Kf)/(1−Kf)*255
M=(1−G/255−Kf)/(1−Kf)*255
C=(1−R/255−Kf)/(1−Kf)*255
K=Kf*255
但し、Kf=Min(1−R/255,1−G/255,1−B/255)
Minは、括弧内の最小値を返す関数

このようにすることで、各画素領域における256階調の濃度値を得ることができる。尚、これ以外の変換式が用いられることとしてもよい。
【0058】
このようにすることで、濃度として各画素領域におけるY値、M値、C値、K値が求められることになるが、各インク色の矩形領域については対応するインク色の濃度のみが参照されることになる。例えば、矩形領域K1では上式で求められたブラックKの濃度のみが参照され、イエローY、マゼンタM、及び、シアンMの濃度値は無視される。
【0059】
各画素領域における濃度が得られると、駆動電圧毎、及び、インク色毎の平均濃度が求められる。ここで平均濃度は、図8における破線で囲われた各矩形領域における平均の濃度である。本実施形態では、測色にスキャナ120を用いているため、画素領域単位での輝度値を得ることができているが、ここでは破線の矩形で囲われた矩形領域の平均値を求めることによって、得られる濃度値の信頼性を高めている。
【0060】
具体的には、例えば、駆動電圧Vhが22Vのときにおける矩形領域K1(ブラックKの第1バンド)の平均濃度が求められる。平均濃度は、K1内の全ての画素領域のブラックKの濃度の平均を求めることにより行われる。
【0061】
このような平均濃度の算出が、K1〜K3、C1〜C3、M1〜M3、Y1〜Y3のそれぞれについて、駆動電圧が22Vのときと25Vのときに関して行われる。
【0062】
図11は、求められた各バンドの各インク色についての駆動電圧毎の平均濃度を示す表である。図には、駆動電圧Vh1、Vh2に対する各バンドのインク色毎の平均濃度が示されている。ここでは、前述の通り、説明の容易のために第1バンド〜第3バンドについて求められている。表を参照すると、駆動電圧が低いとき(Vh1)では駆動電圧が高いとき(Vh2)よりも濃度値が低くなっていることが示されている。
【0063】
次に、各バンドのインク色毎の適正駆動電圧が求められる(S208)。適正駆動電圧は、各バンドの各インク色について、基準となる濃度を出力するために必要な駆動電圧を示すものである。このような適正駆動電圧を求めるために、各インク色の基準濃度が予め求められている。基準濃度は、カラー印刷を行うに際し、各インク色の発色が考慮されバランスのよいカラー印刷を行うために要求される仕様に応じて予め決められるものである。
【0064】
図12は、各インク色の基準濃度を示す表である。このように、使用されるインク色毎に適切な基準濃度の値が決められている。プリンタ1では、このような基準濃度となる印刷を適切に行うことができることにより、所望のカラー印刷が実現できるような仕様になっている。
【0065】
基準濃度となるような駆動電圧を求めることによって適正駆動電圧を求めることができるが、ここでは、既に得られた2つの駆動電圧Vh1とVh2における濃度を線形補間し、この線形補間した濃度値から適正駆動電圧を求める。
【0066】
線形補間した線分の式は、一次式(y=ax+b)によって得られる。一次式の係数a、及び、bは、各駆動電圧Vh1、Vh2をxとしたときの各濃度をyとして代入したときの2つの1次方程式を連立させることにより求めることができる。
【0067】
図13は、求められた一次式の係数a、bを示す表である。表には、各インク色の各ヘッドの係数a及びbが示されている。この表によると、例えば、第1バンドのインク色がブラックKについての一次式は、y=3.30x+1.90ということになる。
【0068】
次に、求められた一次式から、各バンドのインク色毎の適正駆動電圧が求められる。適正駆動電圧は、一次式のyに基準濃度値を代入してx値を求めることで得ることができる。たとえば、前述のように、インク色がブラックKのときの第1バンドの一次式は、y=3.30x+1.90であったので、yにブラックKの基準濃度80.39を代入してx値を求めると、適正駆動電圧23.78が得られる。同様にして、各インク色の各バンドの適正駆動電圧を求めることができる。
【0069】
図14は、各バンドのインク色毎の適正駆動電圧を示す表である。各ヘッドは個体差によって、同じ駆動電圧を印加したとしても異なる濃度を出力するため、このようにバンド毎の適正駆動電圧も若干異なることとなる。
【0070】
次に、バンド毎の適正駆動電圧の平均値を求める。例えば第1バンドの場合、第1バンドのブラックKの適正駆動電圧23.78、シアンの適正駆動電圧23.52、マゼンタの適正駆動電圧23.18、及び、イエローの適正駆動電圧23.58の平均値を求めることになる。
図15は、各バンドの適正駆動電圧を示す表である。
【0071】
次に、バンド毎の適正駆動電圧に基づいて、ヘッド毎の適正駆動電圧を求める。
図16は、ヘッドの割り振り係数を示す表である。図17は、各ヘッドの適正駆動電圧を示す表である。本実施形態では、各バンドの適正駆動電圧値にこのヘッドの割り振り係数を乗じた値が各ヘッドの適正駆動電圧となる。例えば、第1ヘッド41Aは第1バンドに対応するので、第1バンドの適正駆動電圧23.52に第1ヘッドの割り振り係数1.0を乗じたものとなる。すなわち、第1ヘッド41Aの適正駆動電圧は、23.52となる。
【0072】
割り振り係数は、特に工夫をしない場合には、全て1.0としてもよい。また、ヘッドの検査工程における検査インクでの適正駆動電圧値が求まっている場合には、その値の比から適正駆動電圧値が高いほど割り振り係数を大きくすることとしてもよい。
また、各ヘッドが所定のテストパターンを形成するときに噴射したインク重量に基づいて、そのインク重量の比に基づいて割り振り係数を求めることとしてもよい。また、各ヘッドに罫線を印刷させ、その罫線幅の比に基づいて割り振り係数を求めることとしてもよい。
【0073】
ところで、ここでは、形成されるドットのサイズは1つであったが、複数サイズのドットを形成できる場合には、各サイズのドット毎にテストパターンを用意して、各サイズのドットを形成するための駆動パルスの駆動電圧を設定することとしてもよい。
【0074】
図18は、複数のサイズのドットを形成可能なときの駆動信号の一例を示す図である。ここでも、第1駆動信号COM1’〜第12駆動信号COM12’が出力され、各駆動信号は対応するヘッドに供給されるものとする。前述と同様に、駆動パルスの振幅は駆動信号間で若干異なるものの、各駆動信号の形状はほぼ同様であるので、第1駆動信号COM1’について説明を行う。
【0075】
第1駆動信号COM1’は、中ドットを形成するための第1駆動パルスPS1’と、インクメニスカスを微振動させるための第2駆動信号PS2’と、大ドットを形成するための第3駆動パルスPS3’と、小ドットを形成するための第4駆動パルスPS4’を含んでいる。そして、ノズルからインクを噴射させないときには、第2駆動パルスPS2’のみがピエゾ素子PZTに印加される。また、ノズルから小ドットを形成するためのインクを噴射するときには、第4駆動パルスPS4’のみがピエゾ素子PZTに印加される。また、ノズルから中ドットを形成するためのインクを噴射するときには、第1駆動パルスPS1’のみがピエゾ素子PZTに印加される。また、ノズルから大ドットを形成するためのインクを噴射するときには、第3駆動パルスPS3’がピエゾ素子PZTに印加される。
【0076】
図には、第1駆動パルスPS1’の駆動電圧Vhmと、第3駆動パルスPS3’の駆動電圧Vhlと、第4駆動パルスPS4’の駆動電圧Vhsとが示されているが、これらの大小関係は、Vhl>Vhm>Vhsとなっている。つまり、駆動電圧が大きいほど大きなドットを形成可能となっている。
【0077】
このようにして、小ドット、中ドット、及び、大ドットを形成可能な場合、図12に示されるような基準濃度が、小ドット用、中ドット用、大ドット用の3つについて用意される。そして、上述と同様の方法が各基準濃度について適用される。つまり、小ドット用の基準濃度になるようにVhsが調整され、中ドット用の基準濃度になるようにVhmが調整され、大ドット用の基準濃度になるようにVhlが調整される。
このようにすることで、複数のサイズのドットを形成可能なプリンタにおいて、ヘッド間の濃度差を減らすことができる。
【0078】
図19は、経過時間と濃度との関係を示すグラフである。本来、濃度を測色する際にはインクを十分に乾燥させた後に測色を行う必要がある。しかしながら、図に示すように、使用されるインクによっては、媒体にドットが形成されてから時間の経過と共に濃度が上昇する場合がある。インクを十分に乾燥させてから濃度の測色を行うこととしてもよいが、このようにすると、測色までに待ち時間を要することになる。
【0079】
よって、このような場合には、図に示されるような経過時間と濃度との関係を予め取得しておくこととしてもよい。そして、テストパターンが印刷されてから濃度が計測されるまでの時間と、計測された濃度と、に基づいて、本来計測されるべき濃度を取得することとしてもよい。
【0080】
このようにすることで、バンド間の濃度差を減らし、結果としてヘッド間の濃度差を減らすことができるが、上述のようにバンド毎の全インク色の適正駆動電圧の平均値をそのバンドの適正駆動電圧として設定しているため、極めて少ない量ではあるが、濃度差が生じる場合が起こりうる。このような濃度差はバンド単位で生ずることから、搬送方向に並ぶ画素領域からなる列領域単位での濃度補正が行われれば、さらにバンド間の濃度差を減らすことができる。以下に、搬送方向に並ぶ画素領域からなる列領域単位で濃度補正を行う方法について説明する。
【0081】
<プリンタドライバによる処理>
図20は、プリンタドライバによる処理の説明図である。以下、プリンタドライバによる処理について、図を参照しながら説明する。
【0082】
印刷画像データは、図に示すように、プリンタドライバによって解像度変換処理(S302)、色変換処理(S304)、ハーフトーン処理(S306)、及び、ラスタライズ処理(S308)が実行されることにより生成される。
【0083】
先ず、解像度変換処理では、アプリケーションプログラムの実行により得られたRGB画像データの解像度が、指定された画質に対応する印刷解像度に変換される。次に、色変換処理では、解像度が変換されたRGB画像データがCMYK画像データに変換される。ここで、CMYK画像データとは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び、ブラック(K)の色別の画像データを意味する。そして、CMYK画像データを構成する複数の画素データは、それぞれ256段階の階調値で表される。この階調値は、RGB画像データに基づいて定められるものであり、以下、指令階調値ともいう。
【0084】
次に、ハーフトーン処理では、画像データを構成する画素データが示す多段階の階調値が、プリンタ1で表現可能な少段階のドット階調値に変換される。ここでは、画素データが示す256段階の階調値が、2段階のドット階調値に変換される。具体的には、ドット階調値[00]に対応するドットなし、ドット階調値[01]に対応するドットありの2段階に変換される。
【0085】
尚、複数のサイズのドットを形成可能な場合には、例えば、ドット階調値[00]に対応するドットなし、ドット階調値[01]に対応する小ドットの形成、ドット階調値[10]に対応する中ドットの形成、及び、ドット階調値[11]に対応する大ドットの形成の4段階に変換されることとしてもよい。
【0086】
その後、各ドットのサイズについてドット生成率が決められた上で、ディザ法等を利用して、プリンタ1がドットを分散して形成するように画素データが作成される。
【0087】
次に、ラスタライズ処理では、ハーフトーン処理で得られた画像データに関し、各ドットのデータが、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更される。そして、ラスタライズ処理されたデータは、印刷データの一部として送信される。
【0088】
<濃度むらについて>
図21Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図である。理想的にドットが形成されるとは、画素領域の中心位置にインク滴が着弾し、そのインク滴が用紙S上に広がって、画素領域にドットが形成されることである。各ドットが各画素領域に正確に形成されると、ドットライン(搬送方向にドットが並んだドット列)が列領域に正確に形成される。
【0089】
図21Bは、濃度むらが発生したときの説明図である。2番目の列領域に形成されたドットラインは、ノズルから吐出されたインク滴の飛行方向のばらつきにより、3番目の列領域側に寄って形成されている。その結果、2番目の列領域は淡くなり、3列目の列領域は濃くなる。また、5番目の列領域に吐出されたインク滴のインク量は規定のインク量よりも少なく、5番目の列領域に形成されるドットが小さくなっている。その結果、5列目の列領域は淡くなる。
【0090】
このように濃淡の違うラスタラインからなる印刷画像を巨視的に見ると、搬送方向に沿う縞状の濃度むらが視認される。この濃度むらは、印刷画像の画質を低下させる原因となる。
【0091】
以上のような濃度むらを抑制するための方策としては、画像データの階調値(指令階調値)を補正することが考えられる。つまり、濃く(淡く)視認され易い列領域に対しては、淡く(濃く)形成されるように、その列領域を構成する単位領域に対応する画素の階調値を補正すればよい。このため、ラスタライン毎に画像データの階調値を補正する濃度補正値Hを算出することになる。この濃度補正値Hは、プリンタ1の濃度むら特性を反映した値である。
【0092】
図21Cは、濃度むらの発生が抑制された様子を示す図である。ラスタライン毎の濃度補正値Hが算出されていれば、ハーフトーン処理の実行に際してプリンタドライバによって、その濃度補正値Hに基づいてラスタライン毎に画素データの階調値を補正する処理が行われる。この補正処理により補正された階調値で各ドットラインが形成されると、対応するラスタラインの濃度が補正される結果、図20Cに示すように、印刷画像における濃度むらの発生が抑制されることになる。
【0093】
例えば、図21C中では、淡く視認される2番目と5番目の列領域のドット生成率が高くなり、濃く視認される3番目の列領域のドット生成率が低くなるように、各列領域に対応する画素の画素データの階調値が補正される。このように、各列領域のラスタラインのドット生成率が変更され、列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像全体の濃度むらが抑制される。
【0094】
<濃度補正値Hの算出について>
次に、ラスタライン毎の濃度補正値Hを算出する処理(以下、補正値取得処理ともいう)について概説する。補正値取得処理は、例えば、プリンタ1の製造工場の検査ラインにおいて、補正値算出システムの下で行われる。補正値算出システムとは、プリンタ1の濃度むら特性に応じた濃度補正値Hを算出するためのシステムであり、上記の印刷システム100と同様の構成である。つまり、補正値算出システムは、プリンタ1、コンピュータ110、及び、スキャナ120(便宜上、印刷システム100の場合と同一の符号にて表記する)を有する。
【0095】
プリンタ1は、補正値取得処理の対象機器であり、該プリンタ1を用いて濃度むらがない画像を印刷するためには、前記補正値取得処理において該プリンタ1用の濃度補正値Hを算出することになる。検査ラインに置かれたコンピュータ110には、該コンピュータ110が補正値取得処理を実行するための補正値算出プログラムがインストールされている。
【0096】
<補正値取得処理(S104)について>
図22は、補正値取得処理の流れを示す図である。多色印刷が可能なプリンタ1を対象とする場合、各インク色についての補正値取得処理は同様の手順により実施される。以下の説明では、一のインク色(例えば、ブラック)についての補正値取得処理について説明する。
【0097】
先ず、コンピュータ110が印刷データをプリンタ1に送信し、既述の印刷動作と同様の手順により、プリンタ1が補正用パターンCPを用紙Sに形成する(S402)。
【0098】
図23は補正用パターンCPの説明図である。この補正用パターンCPは、図23に示すように、5種類の濃度のサブパターンCSPで形成される。
【0099】
各サブパターンCSPは、帯状パターンであり、搬送方向に沿うラスタラインが紙幅方向に複数並ぶことにより構成される。また、各サブパターンCSPは、それぞれ一定の階調値(指令階調値)の画像データから生成されたものであり、図23に示すように、左のサブパターンCSPから順に濃度が濃くなっている。具体的には、左から15%、30%、45%、60%。85%の濃度のサブパターンとなっている。以下、濃度15%のサブパターンCSPの指令階調値をSa、濃度30%のサブパターンCSPの指令階調値をSb、濃度45%のサブパターンCSPの指令階調値をSc、濃度60のサブパターンCSPの指令階調値をSd、そして、濃度85%のサブパターンCSPの指令階調値をSeと表記する。そして、例えば、指令階調値Saにて形成されたサブパターンCSPを、図23に示すように、CSP(1)と表記する。同様に、指令階調値Sb、Sc、Sd、Seにて形成されたサブパターンCSPを、それぞれCSP(2)、CSP(3)、CSP(4)、CSP(5)と表記する。
【0100】
次に、検査者は補正用パターンCPが形成された用紙Sをスキャナ120にセットする。そして、コンピュータ110は、スキャナ120に補正用パターンCPを読み取らせ、その結果を取得する(S404)。スキャナ120は、前述したようにR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に対応する3つのセンサを有しており、補正用パターンCPに光を照射し、その反射光を各センサによって検出する。なお、コンピュータ110は、補正用パターンを読み取った画像データ上において、搬送方向に相当する方向に画素が並んだ画素列数と、補正用パターンを構成するラスタライン数(列領域数)が、同数になるように調整する。つまり、スキャナ120にて読み取った画素列と列領域を一対一で対応させる。そして、ある列領域と対応する画素列の各画素が示す読取階調値の平均値を、その列領域の読取階調値とする。
【0101】
次に、コンピュータ110は、スキャナ120によって取得された読取階調値に基づいて、各サブパターンCSPのラスタライン毎(換言すると列領域毎)の濃度を算出する(S406)。以下、読取階調値に基づいて算出された濃度のことを算出濃度ともいう。
【0102】
図24は、指令階調値がSa、Sb、ScのサブパターンCSPについてラスタライン毎の算出濃度を示すグラフである。図24の横軸は、ラスタラインの位置を示し、縦軸は、算出濃度の大きさを示している。図24に示すように、各サブパターンCSPは、それぞれ同一の指令階調値で形成されたにも関わらずラスタライン毎に濃淡が生じている。このラスタラインの濃淡差が、印刷画像の濃度むらの原因である。
【0103】
次に、コンピュータ110は、ラスタライン毎の濃度補正値Hを算出する(S408)。なお、濃度補正値Hは、指令階調毎に算出される。以下、指令階調Sa、Sb、Sc、Sd、Seについて算出された濃度補正値HのことをそれぞれHa、Hb、Hc、Hd、Heとする。濃度補正値Hの算出手順を説明するために、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)のラスタライン毎の算出濃度が一定になるように指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順を例に挙げて説明する。当該手順では、例えば、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における全ラスタラインの算出濃度の平均値Dbtを、指令階調値Sbの目標濃度として定める。図24において、この目標濃度Dbtよりも算出濃度が淡い第iラスタラインでは、指令階調値Sbを濃くする方へ補正すれば良い。一方、目標濃度Dbtよりも算出濃度が濃い第jラスタラインでは、指令階調値Sbを淡くする方へ補正すればよい。
【0104】
図25Aは第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。また図25Bは、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。図25A及び図25Bの横軸は指令階調値の大きさを示し、縦軸は算出濃度を示している。
【0105】
第iラスタラインの指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbは、図25Aに示す指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における第iラスタラインの算出濃度Db、及び、指令階調値ScのサブパターンCSP(3)における第iラスタラインの算出濃度Dc、に基づいて算出される。より具体的には、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)では、第iラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtよりも小さくなっている。換言すると、第iラスタラインの濃度は平均濃度よりも淡くなっている。仮に、第iラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtと等しくなるように該第iラスタラインを形成したいのであれば、該第iラスタラインに対応する画素データの階調値、すなわち、指令階調値Sbを、図25Aに示すように、第iラスタラインにおける指令階調値及び算出濃度の対応関係(Sb,Db)、(Sc,Dc)から直線近似を用いて、下記式(1)により算出される目標指令階調値Sbtまで補正すればよい。

Sbt=Sb+(Sc−Sb)×{(Dbt−Db)/(Dc−Db)} (1)
【0106】
そして、指令階調値Sbと目標指令階調値Sbtから、下記式(2)により、第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hが求められる。

Hb=ΔS/Sb=(Sbt−Sb)/Sb (2)
【0107】
一方、第jラスタラインの指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbは、図25Bに示す指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における第jラスタラインの算出濃度Db、及び、指令階調値SaのサブパターンCSP(1)における第jラスタラインの算出濃度Da、に基づいて算出される。具体的には、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)では、第jラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtよりも大きくなっている。仮に、第jラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtと等しくなるように該第jラスタラインを形成したいのであれば、該第jラスタラインの指令階調値Sbを、図25Bに示すように、第jラスタラインにおける指令階調値及び算出濃度の対応関係(Sa,Da)、(Sb,Db)から直線近似を用いて、下記式(3)により算出される目標指令階調値Sbtまで補正すればよい。

Sbt=Sb+(Sb−Sa)×{(Dbt−Db)/(Db−Da)} (3)

そして、上記式(2)により、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbが求められる。
【0108】
以上のようにして、コンピュータ110は、ラスタライン毎に、指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbを算出する。同様に、指令階調値Sa、Sc、Sd、Seに対する濃度補正値Ha、Hc、Hd、Heを、それぞれラスタライン毎に算出する。また、他のインク色についても、ラスタライン毎に、指令階調値Sa〜Seの各々に対する濃度補正値Ha〜Heを算出する。
【0109】
その後、コンピュータ110は、濃度補正値Hのデータをプリンタ1に送信し、プリンタ1のメモリ63に記憶させる(S410)。
【0110】
図26は、メモリ63に記憶された補正値テーブルを示す図である。この結果、プリンタ1のメモリ63には、図26に図示された、ラスタライン毎に5つの指令階調値Sa〜Seの各々に対する濃度補正値Ha〜Heをまとめた補正値テーブルが作成される。
【0111】
また、図26に示すように、補正値テーブルはインク色別に作成される。この結果、CMYK4色分の補正値テーブルが形成される。この補正値テーブルは、プリンタ1を用いて画像を印刷する際に、当該画像の画像データを構成する各ラスタラインの階調値を補正するためにプリンタドライバによって参照される。
【0112】
本実施形態では、用紙上の画素列に対応するラスタラインごとに濃度を測定し、測定した濃度に基づいて階調値を補正するための補正値を求めている。このようにすることで、ラスタライン毎に濃度補正を行うことができる。そして、用紙上の色むらの発生を抑制することができる。
【0113】
<印刷処理>
図27は、ユーザ下でプリンタドライバが行う印刷処理のフロー図である。プリンタ1を購入したユーザは、プリンタ1に同梱されているCD−ROMに記憶されたプリンタドライバ(若しくは、プリンタ製造会社のホームページからダウンロードしたプリンタドライバ)を、コンピュータにインストールする。このプリンタドライバには、図中の各処理をコンピュータに実行させるためのコードを備えている。また、ユーザは、コンピュータにプリンタ1を接続する。
【0114】
まず、プリンタドライバは、プリンタ1のメモリに記憶されている補正値テーブル(図26参照)を、プリンタ1から取得する(S502)。
【0115】
ユーザがアプリケーションプログラム上から印刷を指示したとき、プリンタドライバが呼び出され、印刷対象となる画像データ(印刷画像データ)をアプリケーションプログラムから受け取り、その印刷画像データに対して解像度変換処理を行う(S504)。解像度変換処理とは、画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、用紙に印刷する際の解像度(印刷解像度)に変換する処理である。ここでは、印刷解像度は360×360dpiであり、解像度変換処理後の各画素データは、RGB色空間により表される256階調のデータである。
【0116】
次に、プリンタドライバは、色変換処理を行う(S506)。色変換処理とは、プリンタ1のインク色の色空間に合わせて画像データを変換する処理である。ここでは、RGB色空間の画像データ(256階調)が、CMYK色空間の画像データ(256階調)に変換される。
【0117】
これにより、256階調のCMYK色空間の画像データが得られる。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、CMYK色空間の画像データのうちの、ブラック平面の画像データについて説明する。
【0118】
次に、プリンタドライバは、濃度むら補正処理を行う(S508)。濃度むら補正処理は、用紙上の画素列(ラスタラインに対応)ごとの補正値に基づいて、各画素列に属する画素データの階調値をそれぞれ補正する処理である。
【0119】
例えば、ユーザのコンピュータ110のプリンタドライバは、各画素データの階調値(以下、補正前の階調値をSinとする)を、その画素データが対応するラスタラインの濃度補正値Hに基づいて補正する(以下、補正後の階調値をSoutとする)。
【0120】
具体的には、あるラスタラインの階調値Sinが指令階調値Sa、Sb、Sc、Sd、Seの何れかと同じであれば、コンピュータ110のメモリに記憶されている濃度補正値Hをそのまま用いることができる。例えば画素データの階調値Sin=Sbであれば、補正後の階調値Soutは次式によって求められる。

Sout=Sb×(1+Hb)
【0121】
一方、画素データの階調値が指令階調値Sa、Sb、Sc、Sd、Seと異なる場合、その周囲の指令階調値の濃度補正値を用いた補間に基づいて補正値を算出する。例えば指令階調値Sinが指令階調値Sbと指令階調値Scとの間の場合、指令階調値Sbの濃度補正値Hb、及び指令階調値Scの濃度補正値Hcを用いた線形補間により求めた補正値をH´とすると、指令階調値Sinの補正後の階調値Soutは次式によって求められる。

Sout=Sin×(1+H´)

このようにして、濃度補正処理が行なわれる。
【0122】
濃度むら補正処理の後、プリンタドライバは、ハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、高階調数のデータを、低階調数のデータに変換する処理である。ここでは、256階調の印刷画像データが、プリンタ1の表現可能な2階調の印刷画像データに変換される。ハーフトーン処理方法としてディザ法などが知られており、本実施形態もこのようなハーフトーン処理を行う。
【0123】
本実施形態において、プリンタドライバは、濃度むら補正処理された画素データに対して、ハーフトーン処理を行うことになる。この結果、濃く視認されやすい部分の画素データの階調値は低くなるように補正されているので、その部分のドット生成率は低くなる。逆に、淡く視認されやすい部分ではドット生成率が高くなる。
【0124】
次に、プリンタドライバは、ラスタライズ処理を行う(S512)。ラスタライズ処理は、印刷画像データ上の画素データの並び順を、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。その後、プリンタドライバは、プリンタ1を制御するための制御データを画素データに付加することによって印刷データを生成し(S514)、その印刷データをプリンタ1に送信する(S516)。
【0125】
プリンタ1は、受信した印刷データに従って、印刷動作を行う。具体的には、プリンタ1のコントローラ60は、受信した印刷データの制御データに従って搬送ユニット20などを制御し、印刷データの画素データに従ってヘッドユニット40を制御して各ノズルからインクを吐出する。このようにして生成された印刷データに基づいてプリンタ1が印刷処理を行えば、各ラスタラインのドット生成率が変更され、用紙上の列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像の濃度むらが抑制される。
【0126】
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、流体噴射装置としてプリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0127】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0128】
<ヘッドについて>
前述の実施形態のようにインクを噴射させる方法としては、圧電素子を用いてインクを噴射することとすることができる。しかし、液体を噴射する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0129】
1 プリンタ、
20 搬送ユニット、22A 上流側ローラ、22B 下流側ローラ、24 ベルト、
40ヘッドユニット、
41A 第1ヘッド、41B 第2ヘッド、41C 第3ヘッド、
41D 第4ヘッド、41E 第5ヘッド、41F 第6ヘッド、
41G 第7ヘッド、41H 第8ヘッド、41I 第9ヘッド、
41J 第10ヘッド、41K 第11ヘッド、41L 第12ヘッド、
50 検出器群、60 コントローラ、61 インターフェース、
62 CPU、63 メモリ、64 ユニット制御回路、
70 駆動信号生成回路、
110 コンピュータ、111 インターフェース、
112 CPU、113 メモリ、
120 スキャナ、121 読取キャリッジ、122 インターフェース、
123 CPU、124 メモリ、125 スキャナコントローラ、
CP 補正用パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が搬送される搬送方向の上流側に配置される第1ヘッドが形成したドット列の間に、前記第1ヘッドよりも下流側に配置された第2ヘッドがドット列を形成する流体噴射装置の調整方法であって、
第1の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドを駆動して第1テストパターンを形成し、第2の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとを駆動して第2テストパターンを形成することと、
前記第1テストパターンと前記第2テストパターンの濃度を測定することと、
測定した前記第1テストパターンの濃度と前記第2テストパターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応する前記電圧変化量を求めることと、
前記目標濃度に対応する前記電圧変化量と、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドの相対的な流体の噴射量に基づいて予め求められた割り振り係数と、に基づいて、前記第1ヘッドを駆動する電圧変化量と前記第2ヘッドを駆動する電圧変化量を調整することと、
を含む、流体噴射装置の調整方法。
【請求項2】
前記割り振り係数は、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドが噴射した前記流体の重量に基づいて求められる、請求項1に記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項3】
前記割り振り係数は、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドが形成した罫線の幅に基づいて求められる、請求項1に記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項4】
前記電圧変化量は、ヘッドを駆動する駆動信号に含まれる駆動パルスの振幅である、請求項1〜3のいずれかに記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項5】
前記電圧変化量は、ヘッドを駆動する駆動信号に含まれる駆動パルスの最大振幅である、請求項1〜3のいずれかに記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項6】
前記第1テストパターン及び前記第2テストパターンは、所定の領域において全ての画素にドットが形成されるテストパターンである、請求項1〜5のいずれかに記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項7】
前記搬送方向に並ぶ画素からなる画素列毎の濃度補正を行うための補正用パターンを前記媒体に形成することと、
前記補正用パターンに基づいて、前記画素列毎の濃度を補正するための濃度補正値を求めることと、
を、さらに含み、前記濃度補正値は、形成された前記補正用パターンの濃度が前記画素列毎に測定され、測定された前記画素列毎の濃度に基づいて求められる、請求項6に記載の流体噴射装置の調整方法。
【請求項8】
媒体が搬送される搬送方向の上流側に配置される第1ヘッドが形成したドット列の間に、前記第1ヘッドよりも下流側に配置された第2ヘッドがドット列を形成する流体噴射装置の調整方法であって、
第1の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドを駆動して第1テストパターンを形成し、第2の電圧変化量で前記第1ヘッドと前記第2ヘッドとを駆動して第2テストパターンを形成することと、
前記第1テストパターンと前記第2テストパターンの濃度を測定することと、
測定した前記第1テストパターンの濃度と前記第2テストパターンの濃度とに基づいて、目標濃度に対応する前記電圧変化量を求めることと、
前記目標濃度に対応する前記電圧変化量と、前記第1ヘッドと前記第2ヘッドの相対的な流体の噴射量に基づいて予め求められた割り振り係数と、に基づいて、前記第1ヘッドを駆動する電圧変化量と前記第2ヘッドを駆動する電圧変化量を調整することと、
を含む、流体噴射装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図8】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−235472(P2011−235472A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107004(P2010−107004)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】