説明

流体噴射装置

【課題】ヘッドのメンテナンス処理の効率化を図ることができる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル形成面21Aを有する記録ヘッド2と、ノズル形成面21Aを囲うように記録ヘッド2に当接可能に設けられたキャップ部材12と、キャップ部材12に一端が連通すると共に該一端より下流側の分岐位置Dで他端が2つに分岐し、該他端の一方側が廃液タンク13に連通し、該他端の他方側が保湿液Lを貯溜する保湿液タンクに連通する分岐流路40と、分岐位置Dよりも上流側に設けられ、上記一端から上記他端に向けて該流路内を吸引する第1吸引動作と、上記他端から上記一端に向けて該流路内を吸引する第2吸引動作とを実行可能なチューブポンプ50と、上記吸引動作に応じて、上記他端の上記一方側あるいは上記他方側の流路を閉塞状態とすると共にその他方の流路を開放状態とする開閉装置60と、を有するプリンター1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を噴射する流体噴射装置としては、例えば下記特許文献1に記載のインクジェット式プリンターが知られている。
このプリンターにおいては、良好な噴射特性を維持又は回復させるため、当該記録ヘッドのメンテナンス処理を定期的に行っている。その具体的なメンテナンス処理としては、例えば、キャップ部材で記録ヘッドをキャッピングした後に吸引ポンプを駆動させて、各ノズルから粘性が高くなったインクや気泡、付着したゴミ等を強制吸引してメニスカスを調整し、記録ヘッドから正常にインクを噴射させる吸引処理と、印刷処理を行っていない待機状態において、キャップ部材で記録ヘッドを囲うと共に該キャップ部材内に保湿液を供給し、その保湿液を揮発させてノズルを保湿する保湿処理とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来では、吸引処理におけるインク吸引と、保湿処理における保湿液の供給とは、それぞれ専用のポンプを用いて実行していた。このため、ポンプの駆動を個別に制御しており、メンテナンス処理の効率化の面で問題があった。また、吸引処理において、キャップ部材から廃液タンクに繋がる流路の内部にインクが残留する場合があり、そのインクが時間の経過と共に増粘して固着すると、吸引処理に悪影響を与える虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題点に鑑みてなされたもので、ヘッドのメンテナンス処理の効率化を図ることができる流体噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、流体を噴射するノズル形成面を有する流体噴射ヘッドと、上記ノズル形成面を囲うように上記流体噴射ヘッドに当接可能に設けられたキャップ部材と、上記キャップ部材に一端が連通すると共に該一端より下流側の所定位置で他端が2つに分岐し、該他端の一方側が廃液タンクに連通し、該他端の他方側が保湿液を貯溜する保湿液タンクに連通する分岐流路と、上記所定位置よりも上流側に設けられ、上記一端から上記他端に向けて該流路内を吸引する第1吸引動作と、上記他端から上記一端に向けて該流路内を吸引する第2吸引動作とを実行可能な吸引装置と、上記吸引動作に応じて、上記他端の上記一方側あるいは上記他方側の流路を閉塞状態とすると共にその他方の流路を開放状態とする開閉装置と、を有する流体噴射装置を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、吸引処理におけるインク吸引と保湿処理における保湿液の供給とを共通の吸引装置により実施することができる。また、キャップ部材に連通する流路が、吸引処理と保湿処理とで一部共通して用いられることから、吸引処理により流路内に付着した流体を保湿処理により供給する保湿液で洗い流すことが可能となる。
【0007】
また、本発明においては、上記開閉装置は、上記第1吸引動作の時、上記他端の上記一方側の流路を開放状態とすると共に上記他端の上記他方側の流路を閉塞状態とし、上記第2吸引動作の時、上記他端の上記一方側の流路を閉塞状態とすると共に上記他端の上記他方側の流路を開放状態とするという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第1吸引動作時はキャップ部材から吸引されたものが保湿液タンクに混入することなく廃液タンクに廃棄され、第2吸引動作時は廃液タンクからの廃液がキャップ部材に逆流することなく保湿液を保湿液タンクからキャップ部材に供給することができる。
【0008】
また、本発明においては、上記吸引装置は、正転時に上記第1吸引動作を実行し、逆転時に上記第2吸引動作を実行するチューブポンプであるという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、チューブポンプの正転逆転駆動を制御することで、第1吸引動作と第2吸引動作とを切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における記録ヘッドに設けられたノズルの配列を示す図である。
【図3】本発明の実施形態における記録ヘッドの内部構成を示す部分断面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるキャッピング機構を示す構成図である。
【図5】本発明の実施形態における吸引処理を実行する時の流体の流れを示す図である。
【図6】本発明の実施形態における保湿処理を実行する時の流体の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る流体噴射装置の各実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る流体噴射装置として、インクジェット式プリンター(以下、プリンターと称する)を例示する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。
同図に示すように、プリンター1は、流体噴射ヘッドの一種である記録ヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、記録ヘッド2の下方に配設され記録紙6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録紙6を紙送り方向に搬送する紙送り機構8とを有する構成となっている。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御装置CONTを有している。なお、上記紙幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記紙送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
【0012】
インクカートリッジ3としては、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものには限らず、プリンター1の筐体側に装着してインク供給チューブを介して記録ヘッド2に供給するタイプのものを採用してもよい。本実施形態のインクカートリッジ3には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の異なる色の水性インクが収容されている。
【0013】
ガイドロッド9は、主走査方向に架設された支持部材である。キャリッジ4は、このガイドロッド9に支持された状態で取り付けられている。このキャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するようになっている。リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上の位置を検出する。この検出信号は、位置情報として制御装置CONTに送信されるようになっている。制御装置CONTは、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいて記録ヘッド2の走査位置を認識し、記録ヘッド2による記録動作(吐出動作)等を制御するようになっている。
【0014】
図2は、本発明の実施形態における記録ヘッド2に設けられたノズル17の配列を示す図である。
同図に示すように、記録ヘッド2は、インクを噴射する複数のノズル17が設けられたノズル形成面21Aを有する。ノズル形成面21Aには、複数のノズル17ごとにノズル列16が形成されている。各ノズル列16においては、例えば異なる色のインクを吐出可能になっている。本実施形態ではインクの色に対応して4列(16(Bk),16(M),16(C),16(Y))設けられている。1つのノズル列16は、例えば、180個のノズル17によって構成されている。
【0015】
図3は、本発明の実施形態における記録ヘッド2の内部構成を示す部分断面図である。
同図に示すように、記録ヘッド2は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22とを備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21とを備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31とを形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33とを備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28とが形成される。
【0016】
上記構成の記録ヘッド2によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19がキャビティに接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル17から、インクが噴射される。
【0017】
図1に戻り、記録ヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、記録ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、記録ヘッド2の良好な噴射特性を維持又は回復させるメンテナンス処理(吸引処理、保湿処理)を実施するキャッピング機構11が設けられている。
【0018】
次に、図4を参照して、本実施形態におけるキャッピング機構11の特徴的な構成について説明する。
図4は、本発明の実施形態におけるキャッピング機構11を示す構成図である。
キャッピング機構11は、キャップ部材12と、廃液タンク13と、保湿液タンク14と、分岐流路40と、チューブポンプ(吸引装置)50と、開閉装置60と、を備える。
【0019】
キャップ部材12は、記録ヘッド2に対向する側が開口する略枡形状を有する。キャップ部材12の開口縁部は、ゴム部材等の弾性部材から形成され、ノズル形成面21Aを囲うように記録ヘッド2と当接することで、密閉空間を形成可能な構成となっている。キャップ部材12の内部には、液体を吸収し保持する吸収材12aが設けられている。キャップ部材12は、不図示の昇降装置により、上下方向に移動可能な構成となっている。昇降装置としては、例えばモーターとスクリューネジとを組み合わせた機構や、カム機構、ラック・ピニオン機構等の公知の昇降手段を用いることができる。
【0020】
廃液タンク13は、キャップ部材12内から吸引除去された液体を貯溜するものであり、その内部には、廃液を吸収し保持する吸収材13aが設けられている。
保湿液タンク14は、保湿処理に用いられる揮発性を有する保湿液Lを貯溜するものである。保湿液タンク14は、記録ヘッド2が噴射するインクの溶媒と同成分の液体を保湿液Lとして貯溜する構成となっている。本実施形態の保湿液タンク14は、水性インクに対応して、純水に防腐剤を添加した保湿液Lを貯溜する構成となっている。
【0021】
分岐流路40は、可撓性を有するチューブ体から構成され、一端がキャップ部材12に連通すると共に該一端より下流側の所定位置(以下、分岐位置Dと称する)で他端が2つに分岐し、該他端の一方側が廃液タンク13に連通し、該他端の他方側が保湿液タンク14に連通する構成となっている。なお、分岐流路40において、キャップ部材12から分岐位置Dまでの流路を共通流路41と、分岐位置Dから廃液タンク13までの他端一方側の流路を第1分岐流路42Aと、分岐位置Dから保湿液タンク14までの他端他方側の流路を第2分岐流路42Bと称して、以下説明する場合がある。
【0022】
チューブポンプ50は、分岐位置Dよりも上流側の共通流路41に設けられている。チューブポンプ50は、共通流路41の一部を円環状に湾曲させる略円筒状のポンプケース51と、ポンプケース51内部に設けられ、その軸心を回転中心とするポンプホイル52と、ポンプホイル52の外縁部に回転自在に軸支されるローラー部材53と、制御装置CONTの下、ポンプホイル52を正転(図4において反時計回り)及び逆転(図4において時計回り)させるモーター54とを有する。
【0023】
チューブポンプ50は、ポンプホイル52の正転時、ローラー部材53が円環状の共通流路41内径側を押圧、変形させつつ一端から他端に向かう公転駆動をすることで、一端から他端に向けて分岐流路40内を吸引する第1吸引駆動を実行する。
一方、チューブポンプ50は、ポンプホイル52の逆転時、ローラー部材53が円環状の共通流路41内径側を押圧、変形させつつ他端から一端に向かう公転駆動することで、他端から一端に向けて分岐流路40内を吸引する第2吸引駆動を実行する。
なお、チューブポンプ50は、ローラー部材53による共通流路41の押圧変形量が不十分になるリークポイントXを有する。チューブポンプ50は、ポンプレリースの際に、リークポイントXにローラー部材53を位置させる構成となっている。
【0024】
開閉装置60は、制御装置CONTの下、第1分岐流路42Aを閉塞状態/開放状態とさせる開閉弁61Aと、第2分岐流路42Bを閉塞状態/開放状態とさせる開閉弁61Bとを有する。
本実施形態の開閉装置60は、チューブポンプ50が第1吸引駆動をする時、開閉弁61Aを駆動させて第1分岐流路42Aを開放状態とさせる共に、開閉弁61Bを駆動させて第2分岐流路42Bを閉塞状態とさせ構成となっている。
一方、開閉装置60は、チューブポンプ50が第2吸引駆動をする時、開閉弁61Aを駆動させて第1分岐流路42Aを閉塞状態とさせる共に、開閉弁61Bを駆動させて第2分岐流路42Bを開放状態とさせる構成となっている。
【0025】
続いて、図5及び図6を参照して、上記構成のプリンター1の吸引処理及び保湿処理の動作について説明する。
図5は、本発明の実施形態における吸引処理を実行する時の流体の流れを示す図である。図6は、本発明の実施形態における保湿処理を実行する時の流体の流れを示す図である。
【0026】
図5に示す吸引処理時においては、先ず、制御装置CONTは、ノズル形成面21Aを囲うように記録ヘッド2にキャップ部材12を当接させ、密閉空間を形成させる。
次に、制御装置CONTは、開閉装置60に第1吸引動作に係る制御信号を送り、開閉弁61Aを駆動させて第1分岐流路42Aを開放状態とさせる共に、開閉弁61Bを駆動させて第2分岐流路42Bを閉塞状態とさせる。
そして、制御装置CONTは、チューブポンプ50に第1吸引動作に係る制御信号を送り、モーター54でポンプホイル52を正転駆動させる。
【0027】
ポンプホイル52が、正転駆動すると、ローラー部材53が円環状の共通流路41内径側を押圧、変形させつつ一端から他端に向かう公転駆動をすることで、一端から他端に向けて分岐流路40内が吸引される。共通流路41はキャップ部材12に連通しているので、この吸引動作により内部が負圧状態になると、密閉空間を負圧状態とさせることができる。密閉空間が負圧状態になると、ノズル形成面21Aに形成された各ノズル17から、粘性が高くなったインクや気泡、付着したゴミ等が強制的に吸引される。
吸引されたインク等は、共通流路41内を流通し、分岐位置Dに至る。分岐位置Dにおいては、第2分岐流路42Bが開閉弁61Bにより閉塞されているので、吸引されたインク等は、保湿液タンク14に向かうことなく、開放状態の第1分岐流路42A内を流通し、廃液タンク13に導入されることとなる。
【0028】
図6に示す保湿処理時においては、先ず、制御装置CONTは、開閉装置60に第2吸引動作に係る制御信号を送り、開閉弁61Aを駆動させて第1分岐流路42Aを閉塞状態とさせる共に、開閉弁61Bを駆動させて第2分岐流路42Bを開放状態とさせる。
そして、制御装置CONTは、チューブポンプ50に第2吸引動作に係る制御信号を送り、モーター54でポンプホイル52を逆転駆動させる。
【0029】
ポンプホイル52が、逆転駆動すると、ローラー部材53が円環状の共通流路41内径側を押圧、変形させつつ他端から一端に向かう公転駆動をすることで、他端から一端に向けて分岐流路40内が吸引される。分岐位置Dにおいては、第1分岐流路42Aが開閉弁61Aにより閉塞されているので、第2分岐流路42Bのみに負圧が発生する。第2分岐流路42Bが負圧状態になると、連通する保湿液タンク14から保湿液Lが吸引され、保湿液Lが第2分岐流路42B、共通流路41を介してキャップ部材12に供給される。
【0030】
ここで、共通流路41は、吸引処理と保湿処理とで共通して用いられることから、吸引処理により内部に付着したインクがある場合は、そのインクが保湿液Lの供給により洗い流される。本実施形態のインクは、水性インクであり、保湿液Lはその溶媒と同成分の水であるため、顔料等を凝集等させることなく洗浄することができ、共通流路41内部にインクが固着して流路を閉塞する等の不具合を予防することができる。
【0031】
キャップ部材12の吸収材12aに保湿液Lが染み込んだら、制御装置CONTは、チューブポンプ50の第2吸引動作を停止させ、ノズル形成面21Aを囲うように記録ヘッド2とキャップ部材12とを当接させ、密閉空間を形成させる。そして、保湿液Lが揮発し、密閉空間が飽和状態となると、印刷処理を行っていない待機状態におけるインクの増粘が抑制されることとなる。
【0032】
したがって、上述した本実施形態によれば、インクを噴射するノズル形成面21Aを有する記録ヘッド2と、ノズル形成面21Aを囲うように記録ヘッド2に当接可能に設けられたキャップ部材12と、キャップ部材12に一端が連通すると共に該一端より下流側の分岐位置Dで他端が2つに分岐し、該他端の一方側が廃液タンク13に連通し、該他端の他方側が保湿液Lを貯溜する保湿液タンクに連通する分岐流路40と、分岐位置Dよりも上流側に設けられ、上記一端から上記他端に向けて該流路内を吸引する第1吸引動作と、上記他端から上記一端に向けて該流路内を吸引する第2吸引動作とを実行可能なチューブポンプ50と、上記吸引動作に応じて、上記他端の上記一方側あるいは上記他方側の流路を閉塞状態とすると共にその他方の流路を開放状態とする開閉装置60と、を有するプリンター1を採用することによって、吸引処理におけるインク吸引と保湿処理における保湿液Lの供給とを共通のポンプにより実施することができる。また、キャップ部材12に連通する共通流路41が、吸引処理と保湿処理とで一部共通して用いられることから、吸引処理により流路内に付着したインクを保湿処理により供給する保湿液Lで洗い流すことが可能となる。
したがって、本実施形態では、記録ヘッド2のメンテナンス処理の効率化を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態においては、開閉装置60は、第1吸引動作の時、第1分岐流路42Aを開放状態とすると共に第2分岐流路42Bを閉塞状態とし、第2吸引動作の時、第1分岐流路42Aを閉塞状態とすると共に第2分岐流路42Bを開放状態とするという構成を採用することによって、第1吸引動作時はキャップ部材12から吸引されたインク等が保湿液タンク14に混入することなく廃液タンク13に廃棄され、第2吸引動作時は廃液タンク13からの廃液がキャップ部材12に逆流することなく保湿液Lを保湿液タンク14からキャップ部材12に供給することができる。
また、本実施形態においては、正転時に第1吸引動作を実行し、逆転時に第2吸引動作を実行するチューブポンプ50を採用することによって、正転逆転駆動制御により、第1吸引動作と第2吸引動作とを容易に切り替えることができる。
【0034】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0035】
例えば、上述の実施形態においては、流体噴射装置が、インク等の流体(液状体)を噴射する流体噴射装置である場合を例にして説明したが、本発明の流体噴射装置は、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に適用することができる。流体噴射装置が噴射可能な流体は、流体、機能材料の粒子が分散又は溶解されている液状体、ジェル状の流状体を含む。
【0036】
また、流体噴射装置としては、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置であってもよい。
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…プリンター(流体噴射装置)、2…記録ヘッド(流体噴射ヘッド)、12…キャップ部材、13…廃液タンク、14…保湿液タンク、21A…ノズル形成面、40…分岐流路、50…チューブポンプ(吸引装置)、60…開閉装置、L…保湿液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射するノズル形成面を有する流体噴射ヘッドと、
前記ノズル形成面を囲うように前記流体噴射ヘッドに当接可能に設けられたキャップ部材と、
前記キャップ部材に一端が連通すると共に該一端より下流側の所定位置で他端が2つに分岐し、該他端の一方側が廃液タンクに連通し、該他端の他方側が保湿液を貯溜する保湿液タンクに連通する分岐流路と、
前記所定位置よりも上流側に設けられ、前記一端から前記他端に向けて該流路内を吸引する第1吸引動作と、前記他端から前記一端に向けて該流路内を吸引する第2吸引動作とを実行可能な吸引装置と、
前記吸引動作に応じて、前記他端の前記一方側あるいは前記他方側の流路を閉塞状態とすると共にその他方の流路を開放状態とする開閉装置と、を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記開閉装置は、
前記第1吸引動作の時、前記他端の前記一方側の流路を開放状態とすると共に前記他端の前記他方側の流路を閉塞状態とし、
前記第2吸引動作の時、前記他端の前記一方側の流路を閉塞状態とすると共に前記他端の前記他方側の流路を開放状態とすることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記吸引装置は、正転時に前記第1吸引動作を実行し、逆転時に前記第2吸引動作を実行するチューブポンプであることを特徴とする請求項1または2に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−177960(P2011−177960A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42461(P2010−42461)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】