説明

流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置

【課題】設定圧の切替えに適し、コンパクトで配管が簡素化できる低コストの流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置を提供する。
【解決手段】導入側および排出側の燃料通路37,32hを有するハウジング21内に調圧室23を形成するとともに、導入燃料圧力に応じて両通路37,32hを連通させる調圧部材22を備え、燃料通路37に導入される燃料圧力を設定圧に調整可能な流体圧力調整装置であって、ハウジング21には、調圧室23内で燃料通路37,32hを区画するとともに調圧室23内に他の燃料通路31hを形成する外側および内側環状弁座部31,32が設けられ、調圧部材22が一方の弁座部31に当接するときに他方の弁座部32と調圧部材22との間に微小隙間gが形成されるよう、調圧部材22に対し外側環状弁座部31と内側環状弁座部32とで異なるクリアランスが設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置に関し、特に内燃機関の燃料を燃料ポンプから燃料噴射弁に供給するときにその燃料圧力を調整するのに好適な流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載される内燃機関の燃料供給装置においては、一般に、燃料ポンプからインジェクタ(燃料噴射弁)に燃料を供給するとともに、その燃料供給通路内の燃料圧力を流体圧力調整装置であるプレッシャレギュレータにより調整するようになっている。このような燃料供給装置では、プレッシャレギュレータのハウジング内をダイヤフラムによって調圧室と背圧室とに区画するとともに、調圧室内の燃料圧力による開弁方向の付勢力と背圧室側からの閉弁方向の付勢力とをダイヤフラムに作用させ、ダイヤフラムの変位に応じて調圧室内の燃料の一部を排出させることで、調圧室内の燃料圧力を背圧室側からの付勢力に基づく所定の設定圧に調圧する構成となっている。
【0003】
この種の流体圧力調整装置および燃料供給装置としては、例えばハウジング内を3つの圧力室に区画する第1および第2のダイヤフラムと、ハウジングと第1のダイヤフラムの間の第1の圧力室内で調圧用の排出口を開閉するよう第1のダイヤフラムに装着された弁体と、第1および第2のダイヤフラムの間の第2の圧力室に配された連結杆を介して弁体に連結されるとともに第2ダイヤフラムに固着された受圧体と、ハウジングと第2のダイヤフラムの間の第3の圧力室内に設けられ受圧体を閉弁方向に付勢するスプリングとを具備するものが知られている。この装置では、第2および第3の圧力室内への供給圧力を制御することで、調圧する燃料圧力を複数段階に切り替えることができるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、第1のプレッシャレギュレータの背圧室に第2のプレッシャレギュレータにより助成圧力値に調整された流体を流入させることにより、第1のプレッシャレギュレータの付勢手段の付勢力を助成してその設定圧を高くするようにして、付勢部材あるいはプレッシャレギュレータを交換しないで設定圧力値を高圧化できるようにしたものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
さらに、背圧用の流体を導入する背圧室のリターン配管に遮断弁として機能する電磁バルブを装着し、燃料ベーパが発生可能であると判定したとき、燃料ベーパの発生を抑え得る程度までインジェクタへの燃料供給圧力を高めるようにプレッシャレギュレータの背圧室側の圧力を上昇させ、エンジンの高温再始動時に燃料ベーパの発生に起因してアイドリング回転数が不安定になるのを防止するようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−108684号公報
【特許文献2】特開2002−310025号公報
【特許文献3】特開2007−218222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、背圧室側にプランジャや第2のダイヤフラムを設ける従来の流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置にあっては、プレッシャレギュレータのハウジング内をダイヤフラムの変位方向に互いに隣り合う第1〜第3の圧力室に区画する構成となっていたため、装置のコンパクト化が困難になり、その搭載上の困難さが生じていた。また、第1〜第3の圧力室のそれぞれについて流体の入口と出口がそれぞれ必要になることから、配管が非常に複雑になってしまうという問題があった。
【0008】
また、ハウジング内の背圧室側に流体圧が導入される従来の流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置では、高圧調圧時に調圧室以外にも流体圧が必要となり、そのために余計な燃料が必要になったりシール性能の要求される部位が増えてコスト高を招いたりしてしまうという問題もあった。
【0009】
さらに、燃料ギャラリー通過後の余剰燃料をプレッシャレギュレータから燃料タンクに戻すためのリターン配管に電磁バルブを装着した従来の燃料供給装置にあっては、エンジンの始動時に高圧に昇圧される燃料通路区間が広範囲に及んでしまい、その全範囲に高圧に耐え得るシール性が要求されることから、流体圧力調整装置および燃料供給装置のコスト高を招いてしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上述のような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、設定圧の切替えに適し、かつ、コンパクトで配管が簡素化できる低コストの流体圧力調整装置を提供し、併せて、これを用いたコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る流体圧力調整装置は、上記課題を解決するために、(1)流体が導入される流体導入側の流体通路および該流体が排出される流体排出側の流体通路を有するハウジングと、前記ハウジング内に前記流体導入側の流体通路に連通する調圧室を形成するとともに、前記調圧室内に導入された流体の圧力に応じて前記流体導入側の流体通路と前記流体排出側の流体通路とを連通させる隔壁状の調圧部材と、を備え、前記流体導入側の流体通路に導入される流体の圧力を予め設定された設定圧に調整可能な流体圧力調整装置であって、前記ハウジングには、前記調圧室内で前記流体導入側の流体通路と前記流体排出側の流体通路とを区画するとともに前記調圧室内に前記調圧部材により前記流体導入側の流体通路および前記流体排出側の流体通路に対する連通状態が切り替えられる他の流体通路を形成する第1弁座部および第2弁座部が設けられ、前記調圧部材が前記第1弁座部および前記第2弁座部のうち一方の弁座部に当接するときに前記第1弁座部および前記第2弁座部のうち他方の弁座部と前記調圧部材との間に微小隙間が形成されるよう、前記調圧部材に対し前記第1弁座部と前記第2弁座部とで異なるクリアランスが設定されていることを特徴とする。
【0012】
この構成により、付勢機構から常時閉弁方向の付勢力を受ける調圧部材が、調圧室内で開弁方向に作用する流体の圧力に応じて流体導入側の流体通路と流体排出側の流体通路との連通状態を変化させることで、流体導入側の流体通路に導入される流体の圧力が予め設定された設定圧に調整されることになるが、他の流体通路を流体の導入または/および排出に利用できることから、流体を導入する流体通路を変更したりその流体導入側の流体通路と併せて他の流体通路の内部の流体圧力を変化させたりすることで調圧部材の受圧面積を変化させ、設定圧を高圧側と低圧側に切り替えることが可能になる。しかも、調圧部材の一面側のみで流体の出入りを制御し、複数の設定圧に切り替えることができるので、設定圧の切替えに適し、かつ、コンパクトで配管が簡素化できる低コストの流体圧力調整装置となる。さらに、第1弁座部および第2弁座部を容易に作製可能としながらも、流体導入側の流体通路と流体排出側の流体通路とを区画する一方の弁座部における所要のシール性能を安定確保できるので、安定した流体圧力調整とその調圧値の保持とが可能になる。
【0013】
上記(1)に記載の構成を有する流体圧力調整装置においては、(2)前記第1弁座部が、前記流体導入側の流体通路を形成するとともに該流体導入側の流体通路と前記流体排出側の流体通路とを区画し、前記第2弁座部が、前記流体排出側の流体通路を形成するとともに前記第1弁座部との間に前記他の流体通路を形成し、前記調圧部材が前記第1弁座部に当接するときに前記調圧部材と前記第2弁座部の間に微小隙間が形成されることが好ましい。
【0014】
この構成により、流体導入側の流体通路を流体排出側の流体通路および他の流体通路から仕切る第1弁座部における所要のシール性能を安定確保することができ、安定した流体圧力調整とその調圧値の保持とが可能になる。
【0015】
上記(1)、(2)に記載の構成を有する流体圧力調整装置においては、(3)前記第1弁座部と前記第2弁座部とが、同心に配置されているのがよい。この構成により、第1弁座部および第2弁座部を容易に作製できるとともに、調圧部材の動作を安定させることができる。
【0016】
また、上記(3)に記載の構成を有する流体圧力調整装置においては、(4)前記第1弁座部と前記第2弁座部とが、同軸に配置された外側筒状部材および内側筒状部材の端部によって構成されていることが好ましい。この構成により、外側筒状部材および内側筒状部材の形状によって複数の流体通路の断面積や長さを設定できるとともに、両筒状部材の端部に第1弁座部および第2弁座部を容易に作製できることから、製造の容易な低コストの流体圧力調整装置となる。
【0017】
上記(1)〜(4)に記載の構成を有する流体圧力調整装置においては、(5)前記調圧部材が前記第1弁座部および前記第2弁座部に対向する板状の可動弁体部を有し、前記第1弁座部および前記第2弁座部が、前記可動弁体部の一面側部分に対して互いに平行な弁座面を有していることが好ましい。この構成により、閉弁時における可動弁体部と一方の弁座部の間のシール性を高めるとともに、可動弁体部と他方の弁座部の間のクリアランスを適宜設定することで、他の流体通路の内端部に適当な絞りを形成することができ、その絞りに応じて設定圧の切替え速度を調整することも可能になる。
【0018】
上記(1)〜(4)に記載の構成を有する流体圧力調整装置においては、(6)前記調圧部材が前記第1弁座部および前記第2弁座部に対向する板状の可動弁体部を有し、前記可動弁体部が、前記第1弁座部および前記第2弁座部に対向する一面側部分に環状の段差を有するとともに、前記第1弁座部および前記第2弁座部のうち一方の弁座部に当接する円形または環状の凸部を有していても好ましい。この構成により、閉弁時における可動弁体部と一方の弁座部の間のシール性を高めるとともに、可動弁体部と他方の弁座部の間のクリアランスを適宜設定することで、他の流体通路の内端部に適当な絞りを形成することができ、その絞りに応じた設定圧の切替え速度に調整することも可能になる。
【0019】
上記(1)〜(6)に記載の構成を有する流体圧力調整装置においては、(7)前記他の流体通路内の前記流体の圧力を変化させることで、前記調圧部材の受圧領域の面積が変化するようにしてもよい。この構成により、調圧部材の一面側で調圧部材の受圧面積を容易に変化させることができ、設定圧を容易にかつ確実に切り替えることができる。
【0020】
上記(7)に記載の構成を有する流体圧力調整装置においては、(8)前記他の流体通路内への前記流体の導入または前記他の流体通路内からの前記流体の排出を選択的に制限し、前記他の流体通路内の前記流体の圧力を変化させる設定圧切替弁が設けられていることが好ましい。この構成により、設定圧切替弁を用いた簡素な設定圧切替え機構が実現可能になる。
【0021】
上記(8)に記載の構成を有する流体圧力調整装置においては、(9)前記設定圧切替弁が、前記他の流体通路内への前記流体の導入および前記他の流体通路内からの前記流体の排出を制御し、前記他の流体通路内の前記流体の圧力を変化させる三方弁によって構成されていることが望ましい。
【0022】
この構成により、低圧設定時にパイロット圧燃料の流出を抑えることができ、燃料ポンプの負荷を軽減できる。また、高圧設定時に他の流体通路内の圧力を速やかに解放させることができ、燃料圧力の切替えの応答性を向上させることができる。
【0023】
本発明に係る燃料供給装置は、(10)上記(1)〜(9)に記載のいずれかの構成を有する流体圧力調整装置を備え、燃料ポンプから内燃機関の燃料噴射弁に供給される燃料を前記流体圧力調整装置により調圧することを特徴とするものである。
【0024】
この構成により、流体圧力調整装置の調圧部材の一面側のみで燃料の出入りを制御して複数の設定圧に切り替えることができ、設定圧の切替えに適したコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を構成できるとともに、第1弁座部および第2弁座部を容易に作製可能としながらも、燃料導入側の流体通路と燃料排出側の流体通路とを区画する一方の弁座部における所要のシール性能を安定確保することで、安定した流体圧力調整とその調圧値の保持とが可能な燃料供給装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の流体圧力調整装置によれば、調圧部材の一面側のみで流体の出入りを制御して調圧部材の受圧面積を変化させるとともに、流体導入側の流体通路と流体排出側の流体通路とを区画する一方の弁座部におけるシール性を確保するように調圧部材に対するクリアランスが異なる第1弁座部および第2弁座部をハウジングに設けるようにしているので、安定した流体圧力調整とその調圧値の保持とが可能で、設定圧の切替えにも適したコンパクトで配管の簡素な低コストの流体圧力調整装置を提供することができる。
【0026】
本発明の燃料供給装置によれば、本発明の流体圧力調整装置により安定した燃料圧力調整とその調圧値の保持とが可能で、設定圧の切替えにも適したコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る燃料供給装置の全体構成図である。
【図3】図3(a)は本発明の第1実施形態に係る流体圧力調整装置の調圧部材を示すその一面側の平面図であり、図3(b)はその流体圧力調整装置の調圧部材の近傍の拡大断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る流体圧力調整装置の調圧部材の受圧領域の配置説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図6】図6(a)は本発明の第2実施形態に係る流体圧力調整装置の調圧部材における高圧側の設定圧時の受圧領域の配置説明図であり、図6(b)はその調圧部材における低圧側の設定圧時の受圧領域の配置説明図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図8】図8(a)は本発明の第3実施形態に係る流体圧力調整装置の調圧部材における高圧側の設定圧時の受圧領域の配置説明図であり、図8(b)はその調圧部材における低圧側の設定圧時の受圧領域の配置説明図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図10】図10(a)は本発明の第4実施形態に係る流体圧力調整装置の調圧部材における高圧側の設定圧時の受圧領域の配置説明図であり、図10(b)はその調圧部材における低圧側の設定圧時の受圧領域の配置説明図である。
【図11】本発明の第5実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図12】本発明の第6実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図13】本発明の第7実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図14】本発明の第8実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図15】本発明の第9実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図16】本発明の第10実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図17】本発明の第11実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【図18】本発明の第12実施形態に係る流体圧力調整装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1〜図4は、本発明の第1実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置を示している。
【0030】
本実施形態は、本発明を車両用の内燃機関の燃料の圧力を調整する流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置に適用したものであり、いわゆるインタンク式の燃料供給システムとして構成されている。すなわち、具体的なタンク構造は図示しないが、本実施形態の燃料供給装置は、燃料タンク内のサブタンクに収納されたプレッシャレギュレータを具備しており、エンジンで遂次消費される燃料消費量分の燃料を例えばジェットポンプによりサブタンク内に移送するようになっている。
【0031】
まず、本実施形態の構成について説明する。
【0032】
図1および図2に示すように、本実施形態の燃料供給装置は、内燃機関であるエンジン1(燃料消費部)で消費される燃料、例えばガソリンを貯留する燃料タンク2と、その燃料タンク2内に貯留された燃料をエンジン1に装備される複数のインジェクタ3(燃料噴射弁;図2中に1つのみ図示している)に圧送・供給する燃料圧送回路10と、この燃料圧送回路10からインジェクタ3に供給される燃料を導入して予め設定されたインジェクタ3への燃料供給圧(システム圧)である燃料圧力P1に調圧するとともに、その燃料圧力P1を高圧側の設定圧と低圧側の設定圧とのうち任意の一方に切り替える、すなわち可変制御することができるプレッシャレギュレータ20と、プレッシャレギュレータ20の設定圧を高圧側と低圧側とのうち任意の一方側の設定圧に切替え制御することができる設定圧切替機構40と、を備えている。
【0033】
エンジン1は、例えば多気筒の4サイクルガソリンエンジンであり、このエンジン1の複数の気筒に対応して設けられたインジェクタ3は、例えばその噴孔側端部3aを複数の気筒の吸気ポート(図示せず)内に露出している。また、燃料圧送回路10からの燃料は、デリバリーパイプ4を介して各インジェクタ3に分配されるようになっている。
【0034】
燃料圧送回路10は、燃料タンク2内の燃料を汲み上げるとともに加圧して吐出する燃料ポンプ11と、燃料ポンプ11の吸入口側で異物の吸入を阻止するサクションフィルタ12と、燃料ポンプ11の吐出口側で吐出燃料中の異物を除去する燃料フィルタ13と、燃料フィルタ13より下流側に位置するチェック弁14(逆止弁)と、を含んで構成されている。
【0035】
燃料ポンプ11は、詳細を図示しないが、ポンプ作動用の羽根車を有するポンプ作動部分11pとそのポンプ作動部分を駆動する直流の内蔵モータ11mとを有しており、燃料タンク2内から燃料を図2中に仮想線で示すように汲み上げて加圧し、吐出することができる。この燃料ポンプ11は、内蔵モータの回転速度[rpm]を変化させることで、その単位時間当りの吐出量を可変制御することができるようになっている。また、チェック弁14は、燃料ポンプ11からインジェクタ3側への燃料供給方向に開弁する一方、インジェクタ3側から燃料ポンプ11側への燃料の逆流方向には閉弁し、加圧された供給燃料の逆流を阻止するようになっている。
【0036】
また、燃料ポンプ11は、後述する電子制御ユニット(以下、ECUという)41により内蔵モータ11mへの通電を制御されることで、駆動および停止されるとともに、単位時間当りの燃料吐出量を変化させるようになっている。
【0037】
プレッシャレギュレータ20は、燃料が導入される外側の連通孔21aおよびその燃料が排出される内側の連通孔21cと半径方向でこれらの間に位置する中間の連通孔21bとを有するハウジング21を備えており、このハウジング21は、一対の凹状のハウジング部材18,19をそれらの外周フランジ部18j,19jでかしめ結合したものである。なお、連通孔21a,21bは、それぞれハウジング21の円周方向に等間隔に離間しているが、それぞれハウジング21の円周方向のいずれかの位置に少なくとも1つ形成すればよく、それぞれの開口形状は任意である。また、ハウジング部材18,19は、例えば鋼板やステンレス鋼板を凹状にプレス加工したものであるが、図示する形状に成型したものであってもよい。
【0038】
図1および図2に示すように、ハウジング21の内部には、ハウジング21の内部を2室に区画する隔壁状の調圧部材22が設けられており、調圧部材22は、ハウジング21の内部にあってこのハウジング21との間に外側の連通孔21aに連通する調圧室23を形成している。
【0039】
この調圧部材22は、可撓性の環状膜部材24とその環状膜部材24の内周側に位置する略円板状の板状部材25(板状の可動弁体部)とを一体的に組み付けて構成されており、環状膜部材24はその一面側で外側の連通孔21aから調圧室23内に導入される燃料の圧力を常時受圧するようになっている(詳細は後述する)。また、調圧部材22は、その他面側でハウジング21との間に背圧室26を形成しており、この背圧室26内には、調圧部材22の板状部材25を閉弁方向に付勢する付勢機構としての圧縮コイルばね27(弾性部材)が設けられている。また、調圧部材22と共に背圧室26を形成する一方のハウジング部材19には、少なくとも1つの大気圧導入穴19aが形成されている。そして、調圧部材22は、調圧室23内に導入される燃料圧力に応じ、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力に抗して外側の連通孔21aを内側の連通孔21cに連通させる開弁方向に変位する。
【0040】
調圧部材22の環状膜部材24は、具体的には、例えば基布材料層(例えば、ポリアミド合成繊維等)に燃料に対し劣化し難いゴム層(例えば、水素添加ニトリルゴムやフッ素ゴム等)を一体的に接着した可撓性のダイヤフラムで構成されており、調圧部材22の板状部材25は、環状膜部材24の中央部に支持された例えば金属(例えば、工具鋼、ステンレス鋼等)製の略円板状のプレートで構成されている。
【0041】
また、ハウジング21の内部には、調圧室23の内部で調圧部材22の板状部材25の一面側に対向する大径の外側環状弁座部31(第1弁座部)および小径の内側環状弁座部32(第2弁座部)が略同心に配置されており、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32と板状部材25とは、相対変位により開閉する調圧バルブ機構を構成している。
【0042】
具体的には、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、互いに径が異なりハウジング21の内部に同軸に配置された外側筒状部材35および内側筒状部材36によって構成されており、外側環状弁座部31に対応する外側筒状部材35は、その内周側では内側筒状部材36との間に中間の連通孔21bに連通する中間燃料通路31h(他の流体通路)を形成し、一方、その外周側ではハウジング21および調圧部材22との間に外側の連通孔21aに連通する環状の外側燃料通路37(流体導入側の流体通路)を形成している。また、内側環状弁座部32の内周側には内側燃料通路32h(流体排出側の流体通路)が形成されており、この内側燃料通路32hは、内側の連通孔21cを通して燃料タンク2内に開放されている。なお、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32の内外周縁部には、それぞれ面取りが施されている。
【0043】
外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、調圧室23内で流体導入側の流体通路である外側燃料通路37と流体排出側の流体通路である内側燃料通路32hとを区画するとともに、調圧室23内に、例えば互いの間に調圧部材22により外側燃料通路37および内側燃料通路32hに対する連通状態が切り替えられる中間燃料通路31h(他の流体通路)を形成している。すなわち、外側環状弁座部31は、流体導入側の流体通路である外側燃料通路37を形成するとともにこの中間燃料通路31hと流体排出側の流体通路である内側燃料通路32hとを区画し、内側環状弁座部32が、内側燃料通路32hを形成するとともに外側環状弁座部31との間に他の流体通路である中間燃料通路31hを形成している。
【0044】
また、板状部材25は、外側環状弁座部31に着座するときに外側燃料通路37と中間燃料通路31hとの連通を遮断するバルブ面部25a(一面側部分)を有しており、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、板状部材25のバルブ面部25aに対して互いに平行な弁座面31s,32sを有している。
【0045】
このように、本実施形態では、外側燃料通路37、中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hがそれぞれ調圧部材22の一面側に配置されており、調圧部材22は、ハウジング21の内部で外側燃料通路37に導入される燃料の圧力に基づく、さらには中間燃料通路31hに選択的に導入されるパイロット圧に基づく開弁方向(外側燃料通路37と中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hとを連通させる方向)の付勢力と、圧縮コイルばね27からの閉弁方向(外側燃料通路37と中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hとの連通を遮断する方向)の付勢力とに応じて、外側燃料通路37と中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hとを連通および遮断するようになっている。
【0046】
一方、図1および図3(b)に示すように、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、これらのうち一方の弁座部である外側環状弁座部31が調圧部材22の板状部材25のバルブ面部25aに当接するとき(調圧部材22が外側環状弁座部31に着座するとき)、これらのうち他方の弁座部である内側環状弁座部32と調圧部材22の板状部材25との間に環状の微小隙間gが形成されるよう、調圧部材22に対し外側環状弁座部31と内側環状弁座部32とで異なるクリアランスが設定されている。言い換えれば、外側環状弁座部31の弁座面31sおよび内側環状弁座部32の弁座面32sは、調圧部材22の板状部材25の変位方向である外側筒状部材35および内側筒状部材36の軸線方向に微小隙間gに対応する段差g´をなしている。なお、ここにいうクリアランスは、板状部材25のバルブ面部25aに対し外側環状弁座部31側ではゼロ以上となり、内側環状弁座部32側ではゼロより大きくなる微小な隙間(対向面間の離間距離)の意である。
【0047】
したがって、中間燃料通路31hについて、調圧部材22により内側燃料通路32hおよび外側燃料通路37に対する連通状態が切り替えられるとは、本実施形態では、中間燃料通路31hが調圧部材22により外側燃料通路37に対して連通する状態と遮断される状態とに切り替えられ、かつ、中間燃料通路31hが調圧部材22により内側燃料通路32hに対して連通する状態と連通が微小隙間gに対応する絞り程度に制限された状態とに切り替えられることを意味する。すなわち、本発明にいう他の流体通路の連通状態の切替えとは、流体導入側および流体排出側の流体通路への連通と両流体通路からの遮断との切替えのみならず、両流体通路への連通に対する制限の有無、あるいは、両流体通路への制限された連通状態における連通路断面積の大小(制限の強弱)切替えを含む。
【0048】
また、図3(a)に示すように、調圧部材22は、外側燃料通路37に導入される流体の圧力を受ける外側環状面部22aと、中間燃料通路31hに選択的に導入される流体の圧力を受ける中間環状面部22bと、内側燃料通路32hの内端部に対向する円形中央面部22cと、を有している。
【0049】
調圧部材22の外側環状面部22aは、板状部材25の外周部に液密(気密的)に結合するとともにハウジング21に支持された環状膜部材24によって、板状部材25の周囲に形成されており、環状の外側燃料通路37の内部の燃料の圧力を常時受けるようになっている。また、調圧部材22の中間環状面部22bは、調圧室23に面する板状部材25の一面側のバルブ面部25aによって形成され、中間燃料通路31hの内部の燃料圧力を受けるようになっている。円形中央面部22cは、内側燃料通路32h内で燃料タンク2の内圧(例えば大気圧)相当の圧力を受け、実質的に加圧されないようになっている。また、調圧部材22の外側環状面部22aと中間環状面部22bは、外側環状弁座部31に対向する境界部分(符号無し)を挟んで半径方向に隣り合っており、中間環状面部22bと円形中央面部22cとは、内側環状弁座部32に対向する境界部分(符号無し)を挟んで半径方向に隣り合っている。
【0050】
そして、調圧部材22の外側環状面部22aに対し燃料ポンプ11からの加圧燃料の圧力が作用するとき、調圧部材22は、外側燃料通路37と中間燃料通路31hとを連通および遮断することで、外側燃料通路37内に導入される供給側の燃料の圧力を設定圧に調整する。
【0051】
また、調圧部材22の中間環状面部22bには、燃料ポンプ11からの加圧燃料の圧力が選択的にパイロット圧として作用するようになっており、調圧部材22は、その中間環状面部22bに作用する中間燃料通路31h内の燃料の圧力(パイロット圧)に応じて設定圧を切り替えるようになっている。ここで、外側環状面部22aの受圧面積A1と内側の中間環状面部22bの受圧面積A2とは、予め設定された面積比A1/A2になるように設定されている。
【0052】
図2および図3(b)に示すように、ハウジング21の他の一方のハウジング部材18は、径方向内方側ほど深くなるよう複数段の段付凹状に形成されており、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を構成する外側筒状部材35および内側筒状部材36は、そのハウジング部材18に異なる半径位置で固定されている。また、ハウジング21のハウジング部材18は、より具体的には、外側筒状部材35に対し径方向の外側に離間する第1環状壁部18aと、外側筒状部材35を支持する第2環状壁部18bと、内側筒状部材36を支持する第3環状壁部18cとを有し、さらに、第1環状壁部18aおよび第2環状壁部18bを連結する第1段付壁部18dと、第2環状壁部18bおよび第3環状壁部18cを連結する第2段付壁部18eと、第3環状壁部18cの外端部に連結された第3段付壁部18fとを有している。
【0053】
ハウジング21に形成される外側の連通孔21aは、外側筒状部材35の外周面側(径方向外側)でハウジング部材18の第1段付壁部18dに開口しており、ハウジング21に形成されるパイロット圧燃料導入用の中間の連通孔21bは、外側筒状部材35の内周面側(径方向内側)で第2段付壁部18eに開口している。
【0054】
外側燃料通路37は、ハウジング部材18、調圧部材22の環状膜部材24および外側筒状部材35によって形成され、外側の連通孔21aから燃料を導入するとともに外側環状面部22aにその燃料圧力を受圧させるようになっている。また、中間燃料通路31hは、外側筒状部材35と内側筒状部材36の間に略円筒状に形成されるとともに、ハウジング21の中間の連通孔21bに連通している。さらに、内側燃料通路32hは、内側筒状部材36の内方に略円柱状に形成されており、ハウジング部材18の第3段付壁部18fには、内側燃料通路32hに連通する内側の連通孔21cが形成されている。
【0055】
図2に示すように、外側の連通孔21aは、燃料圧送回路10のチェック弁14より下流側の回路部分である燃料通路15の分岐通路15a(供給側分岐通路)に接続されており、中間の連通孔21bは、燃料圧送回路10のチェック弁14より上流側の回路部分である分岐通路15fに接続されている。ここで、燃料通路15の分岐通路15aは、デリバリーパイプ4とチェック弁14の間の燃料配管路部分を構成するとともに、例えばサクションフィルタ12および燃料フィルタ13のフィルタエレメント(図示せず)を燃料ポンプ11と共に収納するフィルタケースの一部17(図2に一部のみ図示)に形成された分岐部分15bと、このフィルタケースの一部17とハウジング21との間に形成された環状通路部分15cとを有している。また、分岐通路15fは、燃料ポンプ11から圧送された燃料をチェック弁14より上流側の一端側から導入する燃料配管路であり、この分岐通路15fの他端側が、中間の連通孔21bを通して中間燃料通路31hに連通している。
【0056】
また、燃料通路15の上流側の回路部分である分岐通路15fには、電磁弁45(設定圧切替弁)が設けられている。
【0057】
この電磁弁45は、燃料通路15の分岐通路15fのうち上流側部分に接続されて加圧燃料を導入する第1ポート45aと、燃料通路15の分岐通路15aのうち下流部分に接続され、第1ポート45aに連通するときに加圧燃料を中間燃料通路31hに導入させる第2ポート45bと、これら2つのポート45a,45bの間の連通状態を切替え操作する電磁操作部45cと、を有している。
【0058】
また、電磁操作部45cは、ECU41側から励磁駆動電流が供給される操作信号ON状態になるか否かに応じて、そのON状態では第2ポート45bを第1ポート45aから遮断し、ECU41側から励磁駆動電流が供給されない操作信号OFF状態では第2ポート45bを第1ポート45aに連通させるようになっている。
【0059】
この電磁弁45は、中間燃料通路31hへのパイロット圧燃料の流入(導入)を選択的に規制することで、調圧部材22の中間環状面部22bに作用する中間燃料通路31h内の燃料の圧力を変化させ、調圧部材22に加圧燃料の圧力の作用する領域を、受圧面積A1の外側環状面部22aのみにするか、あるいは、受圧面積A1の外側環状面部22aおよび受圧面積A2の中間環状面部22bの双方にするかを切り替えるようになっている。すなわち、電磁弁45は、調圧部材22の実質的な受圧面積を変化させることで、プレッシャレギュレータ20の設定圧(調圧すべき燃料圧力の設定値)を高圧側の設定圧および低圧側の設定圧のうちいずれかに切り替えるようになっている。
【0060】
ここで、プレッシャレギュレータ20の高圧側の設定圧および低圧側の設定圧は、調圧部材22の受圧領域が外側環状面部22aのみとなるときの受圧面積比A1と、受圧面積A1の外側環状面部22aおよび受圧面積A2の中間環状面部22bの双方になるときの受圧面積(A1+A2)との面積比に応じた圧力比を持っており、低圧側の設定圧と高圧側の設定圧の比は、外側環状面部22aの受圧面積A1と両受圧面部22a,22bの受圧面積の和(A1+A2)との比(A1/(A1+A2))に相当するものとなる。
【0061】
また、プレッシャレギュレータ20は、例えばエンジン1の通常運転時の燃料供給圧に相当する低圧側の設定圧と、この低圧側の設定圧より高圧で、エンジン1の停止中、例えばアイドリングストップ時に後述する残圧保持区間内に保持される燃料圧力に相当する高圧側の設定圧とに切り替わるように構成されている。
【0062】
ここにいう残圧保持区間とは、燃料ポンプ11が停止するときに、燃料通路15のうちインジェクタ3の上流側であってチェック弁14より下流側に形成され、外側燃料通路37に連通しつつ調圧部材22を介した圧縮コイルばね27からの付勢力によって燃料圧力を保持する通路区間である。また、高圧側の設定圧は、調圧部材22に燃料圧力の作用する領域が外側燃料通路37に対応する外側環状面部22aのみとなるときの設定圧であり、本実施形態ではエンジン1および燃料ポンプ11の停止中にチェック弁14からインジェクタ3までの下流側通路区間内の燃料圧力を外側環状面部22aに受圧させるときの設定圧であり、さらに、エンジン1の始動のために燃料ポンプ11からインジェクタ3への燃料供給が開始されるときや高負荷運転時に残圧保持区間内に高圧を生じさせるときの設定圧である。
【0063】
なお、高圧側の設定圧は、例えば400[kPa](ゲージ圧;以下、同様)であり、エンジン停止直後等にデリバリーパイプ4内の燃料温度が高温になっても、燃料ベーパが生じ難い燃料圧力(通常、324kPa以上)の設定値となっている。また、低圧側の設定圧は、例えば240[kPa]であり、走行中にデリバリーパイプ4内の燃料温度が比較的低温になっても、燃料ベーパが生じ難い燃料圧力設定値となっている。
【0064】
ECU41は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリからなるバックアップメモリに加えて、入力インターフェース回路および出力インターフェース回路等を含んで構成されており、このECU41には車両のイグニッションスイッチのON/OFF信号が取り込まれるとともに、バッテリからの電源供給がなされるようになっている。さらに、ECU41の入力インターフェース回路には、各種センサ群が接続されており、これらセンサ群からのセンサ情報がA/D変換器等を含む入力インターフェース回路を通してECU41に取り込まれるようになっている。ECU41の出力インターフェース回路には、インジェクタ3、燃料ポンプ11および電磁弁45等のアクチュエータ類を制御するため、リレースイッチやスイッチング素子、駆動回路等が設けられている。
【0065】
また、ECU41は、ROM内に格納された制御プログラムを実行することで、各種センサ群からのセンサ情報およびROMやバックアップメモリに予め格納された設定値やマップ情報に基づいて、エンジン1の始動のために燃料供給を開始する直前やエンジン1の停止直前に電磁弁45をON状態(閉弁状態)に切り替え、燃料ポンプ11からの燃料を調圧室23内で高圧側の設定圧に調圧させるようになっている。また、ECU41は、エンジン1の運転中にその負荷状態を繰返し判定し、始動後の運転状態の大半を占める部分負荷の運転、すなわち始動後であって高負荷運転でない通常運転の領域においては、電磁弁45をOFF状態に切り替え、燃料ポンプ11からインジェクタ3への供給燃料圧を調圧室23内で低圧側の設定圧に調圧させるようになっている。そのため、ECU41のROMおよびバックアップメモリに格納される設定値には、燃料圧力の高圧側の設定値および低圧側の設定値がそれぞれ含まれ、ROMやバックアップメモリに格納されるマップ情報には、運転負荷の判定とその判定結果に応じた燃料圧力の切替え制御のための運転領域判定マップ等が含まれている。
【0066】
ここにいう始動時とは、具体的には、例えばイグニッションキーがスタート位置に操作されてイグニッションONの要求が発生するとき、公知のアイドリングストップを実行する車両でエンジン1を一時停止させた後に再始動させるとき、あるいは、ハイブリッド方式のパワーユニットを搭載する車両でそのパワーユニットの効率を高めるためにエンジン1を一時停止させた後に再始動するとき等に、その始動のためのイグニッションON要求が発生したときである。
【0067】
次に、本実施形態の燃料供給装置における燃料圧力の制御方法について説明する。
【0068】
上述のように構成された本実施形態のプレッシャレギュレータ20およびこれを用いた燃料供給装置では、エンジン1が長時間停止している停止中においては、燃料圧送回路10の燃料ポンプ11は燃料供給停止状態で、調圧対象であるその吐出側燃料圧力は0[kPa(gauge)]であり、電磁弁45は電磁操作部45cに通電されないOFF状態にある。
【0069】
このとき、電磁弁45は、第1ポート45aおよび第2ポート45bを連通させる燃料導入位置にあるが、燃料ポンプ11が燃料供給停止状態であるから、プレッシャレギュレータ20の中間燃料通路31hには加圧燃料が供給されない。したがって、調圧部材22が開弁方向に加圧燃料の圧力を受ける実質的な受圧領域は、環状の外側燃料通路37内の燃料圧力を受ける外側環状面部22aのみとなるから、インジェクタ3への燃料供給圧であるチェック弁14からインジェクタ3までの残圧保持区間の燃料圧力P1は、外側燃料通路37内の燃料圧力に等しい。
【0070】
また、調圧部材22は圧縮コイルばね27により板状部材25を外側環状弁座部31に着座させるとともに内側環状弁座部32に近接させているから、外側燃料通路37内の燃料圧力Pは、外側燃料通路37側から調圧部材22に作用する開弁方向の付勢力P1×外側環状面部22aの受圧面積A1に相当する開弁方向の付勢力が、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力と釣り合うかそれより小さい付勢力となっている(P1≦H)。ただし、後述するように、エンジン1の停止に際して燃料ポンプ11の停止直前に高圧側の設定圧Hに切り替えられることから、エンジン1の運転停止中の燃料圧力P1は、低圧側の設定圧Lより高く、高圧側の設定圧H以下の値となる(L≦P1≦H)。なお、エンジン1を停止させるときおよびその停止直後の動作については、後述する。
【0071】
エンジン1が始動されるときには、その始動に先立って、ECU41により、最初に電磁弁45への通電がなされる。すなわち、燃料ポンプ11による燃料供給が開始されてその吐出圧が立ち上がるより前に、電磁弁45が一旦ON状態に切り替えられる。
【0072】
この時点では、電磁弁45は、第2ポート45bを第1ポート45aから遮断させる閉弁状態に切り替わる。一方、燃料ポンプ11は未だ燃料供給停止状態である。
【0073】
また、このとき、チェック弁14からインジェクタ3までの残圧保持区間の燃料圧力P1は、それまでと略同様に、低圧側の設定圧L以上で高圧側の設定圧H以下となる燃料圧力に保持される(L≦P1≦H)。
【0074】
次いで、燃料ポンプ11が起動されると、残圧保持区間内に燃料ポンプ11からの燃料が供給され、このとき、電磁弁45は閉弁状態であるから、外側燃料通路37内の燃料圧力が即座に高圧側の設定圧Hに達する。
【0075】
すなわち、外側燃料通路37側から調圧部材22に作用する開弁方向の付勢力が、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力である高圧側の設定圧H×外側環状面部の面積A1に相当する付勢力に達するまで、外側燃料通路37の内部の燃料圧力が即座に上昇し、余剰の加圧燃料は中間燃料通路31hに排出される。なお、板状部材25のバルブ面部25aと内側環状弁座部32の間の微小隙間gは、調圧部材22の板状部材25が外側環状弁座部31に着座するかそれに近い状態かでは、余剰燃料を抵抗無く内側燃料通路32h側に通過させ得る大きさである。
【0076】
次いで、エンジン1が始動される。このとき、インジェクタ3には、高圧側の設定圧Hまで昇圧された高圧燃料が供給されることから、インジェクタ3からエンジン1の燃焼室内に噴射される燃料の霧化が助長される。なお、エンジン1の再始動においても上述と同様な始動時の制御が実施可能であることはいうまでもない。
【0077】
エンジン1の始動後の運転状態は、高燃料圧力が要求される特定の運転状態、例えば高負荷運転の要求時を除いて、通常は、専ら部分負荷運転状態となり、その通常運転時にはエンジン1の燃費や燃料ポンプ11の信頼性の面から、低圧側の設定圧が要求される。
【0078】
この通常運転時においては、ECU41から電磁弁45への通電が停止されるとともに、燃料ポンプ11の運転が継続される。したがって、エンジン1が始動後、通常運転に移行するときには、電磁弁45がOFF状態(開弁状態)に切り替えられる。
【0079】
このとき、外側燃料通路37および中間燃料通路31hの双方に燃料ポンプ11からの燃料が供給されることで、調圧部材22の加圧燃料の受圧領域が、受圧面積A1の外側環状面部22aおよび受圧面積A2の中間環状面部22bの双方になる。
【0080】
したがって、調圧部材22は圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A1を受ける一方、外側燃料通路37内の燃料圧力P(=P1)が作用する外側環状面部22aにおける開弁方向の付勢力P1×A1と、中間燃料通路31h内の燃料圧力P2(=P1)が作用する中間環状面部22bにおける開弁方向の付勢力P1×A2とを受け、これらの付勢力P1(A1+A2)が釣り合うように調圧がなされる。
【0081】
よって、このときの燃料圧力P1は、P1=H×A1/(A1+A2)=低圧側の設定圧Lとなる。したがって、高圧側の設定圧Hが400[kPa]で、外側環状面部22aと中間環状面部22bとの面積比A1/A2=1とすると、このときの燃料圧力P1は、200[kPa]の低圧側の設定圧Lとなる。
【0082】
エンジン1の運転中、ECU41は、各種センサ情報から得られるエンジン1の回転速度や車両の車速等の運転状態、運転者のアクセルペダル操作量等に基づいて、エンジン1に要求される運転状態が予めマップ情報として保持している運転領域のどれに該当するかを判定し、要求される運転状態に適した燃料圧力になるように、電磁弁45への通電を制御するとともに燃料ポンプ11への通電を制御する。
【0083】
エンジン1の通常運転時には、プレッシャレギュレータ20の外側燃料通路37および中間燃料通路31hの双方に燃料ポンプ11からの加圧燃料が供給され、低圧側の設定圧Lとなる。
【0084】
車両を運転するドライバからの操作入力や車両の走行環境の変化によってエンジン1に要求される運転状態が高負荷運転領域に入るときには、ECU41により、電磁弁45がON状態に切り替えられるとともに、燃料ポンプ11の運転が継続される。
【0085】
この切替え直後に、上述のエンジン1の始動時と同様に、電磁弁45の閉弁により中間燃料通路31hへの加圧燃料の導入が停止され、中間燃料通路31h内の燃料圧力が低下する。
【0086】
一方、燃料ポンプ11の運転は継続されるので、プレッシャレギュレータ20の外側燃料通路37には加圧燃料が供給され続け、システム圧である燃料圧力P1は即座に高圧側の設定圧Hに上昇する。したがって、高負荷要求に応え得る十分な燃料噴射量が確保できることになる。
【0087】
エンジン1を停止させるときには、ECU41は、エンジン1を停止させるのに先立って電磁弁45をON状態(閉弁状態)にする。例えばドライバによりイグニッションキーがイグニッションOFF側に操作され、エンジン1を停止させるイグニッションOFFの要求が発生すると、まず、電磁弁45への通電がなされて電磁弁45がON状態になり、プレッシャレギュレータ20内の調圧部材22がON状態の姿勢で安定するのに十分な時間が経過したとき、エンジン1を停止させるのに必要な処理が実行される。
【0088】
エンジン1の停止直後には、冷却水や冷却風によるエンジン1の冷却が停止されることで、燃料供給経路中のチェック弁14からインジェクタ3までの残圧保持区間における燃料の温度が高くなる。このとき、この残圧保持区間の燃料圧力P1はプレッシャレギュレータ20の外側燃料通路37内の燃料圧力Pに等しく、その外側燃料通路37内の燃料圧力Pは、高圧側の設定圧Hに到達するまで上昇し得るよう外側環状面部22aで調圧部材22の可撓性の環状膜部材24により弾力的に加圧される状態にある。したがって、チェック弁14からインジェクタ3までの残圧保持区間における燃料の温度が高くなるとき、その温度上昇に伴って残圧保持区間内の燃料の蒸気圧が高くなるとともに、気液平衡を保つように燃料圧力P1が上昇する。したがって、エンジン停止直後等にデリバリーパイプ4内の燃料温度が高温になっても、燃料ベーパが生じ難い残圧が有効に確保され、良好な高温再始動等が可能になる。
【0089】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0090】
上述のような燃料圧力調整装置としてのプレッシャレギュレータ20およびこれを用いた燃料供給装置においては、圧縮コイルばね27から常時閉弁方向の付勢力を受ける調圧部材22が、調圧室23内で開弁方向に作用する流体圧力に応じて外側燃料通路37と内側燃料通路32hとの連通状態を変化させることで、外側燃料通路37に導入される燃料の圧力が予め設定された設定圧に調整されることになるが、中間燃料通路31hは燃料の導入にあるいは排出に利用できることから、燃料を導入する燃料通路を内外の異なる位置に変更したり、その流体導入側の燃料通路と併せて中間燃料通路31hの内部の燃料圧力を変化させたりすることができ、調圧部材22の受圧面積(加圧面積)を変化させることで、プレッシャレギュレータ20の設定圧を高圧側と低圧側に切り替えることが可能になる。
【0091】
しかも、プレッシャレギュレータ20は、その調圧部材22の一面側のみで流体の出入りを制御し、高圧および低圧の複数の設定圧に切り替えることができるので、設定圧の切替えに適し、かつ、コンパクトで配管が簡素化できる低コストのものとなる。
【0092】
さらに、外側環状弁座部31が、外側燃料通路37を形成するとともにその外側燃料通路37と内側燃料通路32hとを区画し、内側環状弁座部32が、内側燃料通路32hを形成するとともに外側環状弁座部31との間に他の流体通路31hを形成し、調圧部材22が外側環状弁座部31に当接するときに調圧部材22と内側環状弁座部32の間に微小隙間gが形成されるので、外側燃料通路37と内側燃料通路32hとを区画する外側環状弁座部31における所要のシール性能を安定確保することができるとともに、より安定した流体圧力調整とその調圧値の保持とが可能になる。
【0093】
また、内側環状弁座部32にはシール性が要求されないので、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を共に板状部材25のバルブ面部25aに当接させる場合に比べて、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を有するハウジング21が容易に作製可能となる。
【0094】
加えて、外側環状弁座部31と内側環状弁座部32とが、同心に配置されているので、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32をさらに容易に作製できるとともに、調圧部材22の動作を安定させることができる。また、外側環状弁座部31と内側環状弁座部32とが、同軸に配置された外側筒状部材35および内側筒状部材36の端部によって構成されているので、外側筒状部材35および内側筒状部材36の形状によって複数の燃料通路37,31h,32hの断面積や長さを適宜設定することができるとともに、両筒状部材35,36の端部に外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を容易に作製できることから、製造の容易な低コストのプレッシャレギュレータ20となる。
【0095】
また、調圧部材22が外側環状弁座部31および内側環状弁座部32に対向する板状の可動弁体部としての板状部材25を有し、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32が、この板状部材25のバルブ面部25aに対して互いに平行な弁座面31s,32sを有しているので、閉弁時における板状部材25と外側環状弁座部31の間のシール性を高めることができるとともに、板状部材25と内側環状弁座部32の間の微小隙間g(クリアランス)を適宜設定することで、中間燃料通路31hの内端部に適当な絞りを形成することができ、その絞りに応じて設定圧の切替え速度を調整することも可能になる。
【0096】
さらに、中間燃料通路31h内の流体の圧力を変化させることで、調圧部材22の受圧領域の面積を変化させるようにしているので、調圧部材22の一面側で調圧部材22の受圧面積を容易に変化させることができ、設定圧を容易にかつ確実に切り替えることができる。しかも、中間燃料通路31hへの加圧燃料の導入を選択的に制限し、中間燃料通路31h内の燃料圧力を変化させる電磁弁45が設けられているので、電磁弁45を用いた簡素な設定圧切替え機構が実現可能になる。
【0097】
以上のように、本実施形態においては、上述のようなプレッシャレギュレータ20を用いて、燃料ポンプ11からエンジン1のインジェクタ3に供給される燃料を調圧することにより、調圧部材22の一面側のみで燃料の出入りを制御して高・低複数の設定圧に切り替えるようにしているので、背圧室26側への流体配管の必要性や複数のプレッシャレギュレータを用いる必要性を無くし、設定圧の切替えに適したコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を提供することができる。しかも、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を容易に作製可能としながらも、燃料導入側の外側燃料通路37と燃料排出側の内側燃料通路32hとを区画する外側環状弁座部31における所要のシール性能を安定確保することで、安定した流体圧力調整とその調圧値の保持とが可能な燃料供給装置を提供することができる。
【0098】
(第2実施形態)
図5および図6は、本発明の第2実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置を示している。
【0099】
なお、以下に説明する各実施形態は、上述の第1実施形態と類似する構成を有し、プレッシャレギュレータ以外の燃料供給装置の構成要素は上述の第1実施形態と略同一であるので、その要部のみを図示し、上述の第1実施形態と同一または類似の構成要素については図1〜図4に示した対応する構成要素と同一の符号を用いながら、上述の第1実施形態との相違点について以下に説明する。
【0100】
図5に示すように、本実施形態の燃料供給装置は、プレッシャレギュレータ50を備えている。このプレッシャレギュレータ50は、燃料ポンプ11の作動中に常時この燃料ポンプ11からの加圧燃料が導入される内側の連通孔21cと、調圧室23内に導入された燃料が排出される外側の連通孔21aと、電磁弁45を介して燃料ポンプ11からの加圧燃料がパイロット圧として選択的に導入される中間の連通孔21bとを有するハウジング21を備えており、上述の第1実施形態と同様に、このハウジング21と隔壁状の調圧部材22とによって調圧室23が形成されている。
【0101】
また、調圧室23の内部には、調圧部材22の板状部材25の一面側に対向する大径の外側環状弁座部51および小径の内側環状弁座部52が略同心に配置されており、外側環状弁座部51および内側環状弁座部52と調圧部材22とは、相対変位により開閉する調圧バルブ機構を構成している。
【0102】
外側環状弁座部51および内側環状弁座部52は、調圧室23内で流体導入側の流体通路である内側燃料通路52hと流体排出側の流体通路である外側燃料通路57とを区画するとともに、調圧室23内に、例えば互いの間に調圧部材22により内側燃料通路52hおよび外側燃料通路57に対する連通状態が切り替えられる中間燃料通路51h(他の流体通路)を形成している。すなわち、外側環状弁座部51(第2弁座部)は、ハウジング21との間に流体排出側の流体通路である外側燃料通路57を形成するとともに、内側環状弁座部52(第1弁座部)との間に中間燃料通路51hを形成しており、内側環状弁座部52(第1弁座部)は、流体導入側の流体通路である内側燃料通路52hを形成するとともに、この内側燃料通路52hと外側環状弁座部51および中間燃料通路51hとを区画している。
【0103】
具体的には、外側環状弁座部51および内側環状弁座部52は、互いに径が異なりハウジング21の内部に同軸に配置された外側筒状部材55および内側筒状部材56によって構成されており、外側環状弁座部51に対応する外側筒状部材55は、その内周側では内側筒状部材56との間に中間の連通孔21bに連通する中間燃料通路51hを形成し、一方、その外周側ではハウジング21および調圧部材22との間に燃料排出側の連通孔21aに連通する環状の外側燃料通路57を形成している。また、内側環状弁座部52の内周側には内側燃料通路52hが形成されており、この内側燃料通路52hは燃料圧送回路10のチェック弁14より下流側の回路部分である燃料通路15の分岐通路15a(供給側分岐通路)に接続されている。さらに、外側燃料通路57は、外側の連通孔21aを通して燃料タンク2内に開放されており、中間燃料通路51hは、中間の連通孔21bを通して電磁弁45の第2ポート45bに接続されている。
【0104】
図6(a)および図6(b)に示すように、調圧部材22は、その外側環状面部22aでは外側燃料通路57内に導入される燃料タンク2の内圧(大気圧)を受けることで実質的に加圧されず、その中間環状面部22bでは中間燃料通路51h内の燃料の圧力を受け、その円形中央面部22cでは燃料ポンプ11の作動中に加圧燃料が導入される内側燃料通路52h内の燃料圧力を常時受圧するようになっている。また、中間燃料通路51h内の燃料の圧力は、電磁弁45がOFF状態であるかON状態であるかによって、すなわち燃料ポンプ11からの加圧燃料の圧力がパイロット圧として導入されるか否かによって変化するようになっている。
【0105】
電磁弁45は、中間燃料通路51hへのパイロット圧燃料の流入を選択的に規制することで、調圧部材22の中間環状面部22bに作用する中間燃料通路51h内の燃料の圧力を変化させ、調圧部材22に加圧燃料の圧力の作用する領域を、受圧面積A3の円形中央面部22cのみにするか、あるいは、受圧面積A3の円形中央面部22cおよび受圧面積A2の中間環状面部22bの双方にするかを切り替えるようになっている。そして、調圧部材22は、その中間環状面部22bに作用する中間燃料通路51h内の燃料の圧力(パイロット圧)に応じて調圧部材22の実質的な受圧面積を変化させることで、プレッシャレギュレータ50の設定圧を切り替えることができるようになっている。ここで、内側燃料通路52hの受圧面積A3と内側の中間環状面部22bの受圧面積A2とは、予め設定された面積比A3/A2になるように設定されている。
【0106】
板状部材25(可動弁体部)は、そのバルブ面部25a(一面側部分)を内側環状弁座部52に着座させるとき、内側燃料通路52hと中間燃料通路51hおよび外側燃料通路57との連通を遮断するようになっており、外側環状弁座部51および内側環状弁座部52は、板状部材25のバルブ面部25aに対して互いに平行な弁座面51s,52sを有している。そして、調圧部材22の円形中央面部22cおよび中間環状面部22bのうち少なくとも円形中央面部22cに対して燃料ポンプ11からの加圧燃料の圧力が作用するとき、調圧部材22が内側燃料通路52hと中間燃料通路51hおよび外側燃料通路57とを連通および遮断することで、プレッシャレギュレータ50は内側燃料通路52h内に導入される供給側の燃料の圧力を設定圧に調整することができる。
【0107】
このように、本実施形態では、外側燃料通路57、中間燃料通路51hおよび内側燃料通路52hがそれぞれ調圧部材22の一面側に配置されており、調圧部材22は、ハウジング21の内部で内側燃料通路52hに導入される燃料の圧力に基づく、さらには中間燃料通路51hに選択的に導入されるパイロット圧に基づく開弁方向(内側燃料通路52hと中間燃料通路51hおよび外側燃料通路57とを連通させる方向)の付勢力と、圧縮コイルばね27からの閉弁方向(内側燃料通路52hと中間燃料通路51hおよび外側燃料通路57との連通を遮断する方向)の付勢力とに応じて、内側燃料通路52hと中間燃料通路51hおよび外側燃料通路57とを連通および遮断するようになっている。
【0108】
一方、外側環状弁座部51および内側環状弁座部52は、これらのうち一方の弁座部である内側環状弁座部52が調圧部材22の板状部材25のバルブ面部25aに当接するとき(調圧部材22が内側環状弁座部52に着座するとき)、これらのうち他方の弁座部である外側環状弁座部51と調圧部材22の板状部材25との間に環状の微小隙間gが形成されるよう、調圧部材22に対し外側環状弁座部51と内側環状弁座部52とで異なるクリアランスが設定されている。すなわち、外側環状弁座部51の弁座面51sおよび内側環状弁座部52の弁座面52sは、調圧部材22の板状部材25の変位方向である外側筒状部材55および内側筒状部材56の軸線方向に微小隙間gに対応する段差g´を形成している。
【0109】
上述のように構成された本実施形態の燃料供給装置においては、電磁弁45がON状態(閉弁状態)であるときには、図6(a)に示すように、内側燃料通路52hおよび中間燃料通路51hのうち内側燃料通路52hにのみ燃料ポンプ11からの燃料が供給されることで、調圧部材22の加圧燃料の受圧領域が、受圧面積A3の円形中央面部22cのみとなる。したがって、高圧側の設定圧をH[kPa]とすると、調圧部材22は圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A3を受ける一方、内側燃料通路32h内の燃料圧力P1が作用する円形中央面部22cにおける開弁方向の付勢力P1×A3を受け、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A3と調圧室23内の燃料圧力に基づく開弁方向の付勢力P1×A3とが釣り合うように調圧がなされる。よって、このときの燃料圧力P1は、高圧側の設定圧Hとなる。
【0110】
一方、電磁弁45がOFF状態(開弁状態)であるときには、図6(b)に示すように、内側燃料通路52hおよび中間燃料通路51hの双方に燃料ポンプ11からの燃料が供給されることで、調圧部材22の加圧燃料の受圧領域が、受圧面積A3の円形中央面部22cおよび受圧面積A2の中間環状面部22bの双方になる。したがって、高圧側の設定圧をH[kPa]とするとき、調圧部材22は圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A3を受ける一方、内側燃料通路32h内の燃料圧力P1が作用する円形中央面部22cにおける開弁方向の付勢力P1×A3と、中間燃料通路51hの内の燃料圧力P2(=P1)が作用する中間環状面部22bにおける開弁方向の付勢力P1×A2とを受け、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A3と調圧室23内の燃料圧力に基づく開弁方向の付勢力P1(A3+A2)とが釣り合うように調圧がなされる。よって、このときの燃料圧力P1は、P1=H×A3/(A3+A2)=低圧側の設定圧Lとなる。
【0111】
したがって、高圧側の設定圧Hが400[kPa]で、円形中央面部22cと中間環状面部22bとの面積比A3/A2=1とすると、電磁弁45がOFF状態であるときの燃料圧力P1は、200[kPa]の低圧側の設定圧Lとなる。
【0112】
上述のように構成された本実施形態の燃料供給装置においては、圧縮コイルばね27から常時閉弁方向の付勢力を受ける調圧部材22が、調圧室23内で開弁方向に作用する流体の圧力に応じて流体導入側の内側燃料通路52hと流体排出側の外側燃料通路57との連通状態を変化させることで、流体導入側の内側燃料通路52hに導入される燃料の圧力が予め設定された設定圧に調整されることになるが、中間燃料通路51hはパイロット圧燃料の導入あるいは燃料の排出に利用できることから、内側燃料通路52hと併せて中間燃料通路51hの内部にパイロット圧としての燃料圧力を導入することで、調圧部材22の受圧面積を変化させることができ、プレッシャレギュレータ50の設定圧を高圧側と低圧側に切り替えることができる。
【0113】
また、外側環状弁座部51にはシール性が要求されないので、外側環状弁座部51および内側環状弁座部52を共に板状部材25のバルブ面部25aに当接させる場合に比べて、外側環状弁座部51および内側環状弁座部52を有するハウジング21が容易に作製可能となる。
【0114】
さらに、本実施形態においては、上述のようなプレッシャレギュレータ50を用いて、燃料ポンプ11からエンジン1のインジェクタ3に供給される燃料を調圧することにより、調圧部材22の一面側のみで燃料の出入りを制御して高・低複数の設定圧に切り替えるようにしているので、背圧室26側への流体配管の必要性や複数のプレッシャレギュレータを用いる必要性を無くし、設定圧の切替えに適したコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を提供することができる。しかも、外側環状弁座部51および内側環状弁座部52を容易に作製可能としながらも、燃料導入側の内側燃料通路32hと燃料排出側の外側燃料通路57とを区画する内側環状弁座部52における所要のシール性能を安定確保することで、安定した流体圧力調整とその調圧値の保持とが可能な燃料供給装置を提供することができる。よって、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0115】
(第3実施形態)
図7および図8は、本発明の第3実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置を示している。
【0116】
図7に示すように、本実施形態の燃料供給装置は、プレッシャレギュレータ60を備えている。このプレッシャレギュレータ60は、燃料ポンプ11の作動中に常時この燃料ポンプ11からの加圧燃料が導入される外側の連通孔21aと、調圧室23内に導入された燃料が排出される内側の連通孔21cと、電磁弁45を介して燃料ポンプ11からの加圧燃料が選択的に導入される中間の連通孔21bとを有するハウジング21を備えており、上述の第1実施形態と同様に、このハウジング21と隔壁状の調圧部材62とによって調圧室23が形成されている。
【0117】
また、調圧部材62は、可撓性の環状膜部材24とその環状膜部材24の内周側に位置する略円板状の板状部材65(板状の可動弁体部)とを一体的に組み付けて構成されており、環状膜部材24はその一面側で外側の連通孔21aから外側燃料通路37内に導入される燃料の圧力を常時受圧するようになっている。
【0118】
ここで、板状部材65は、外側環状弁座部31および内側環状弁座部52に対向するバルブ面部65a(一面側部分)に環状の段差gを有するとともに、外側環状弁座部51および内側環状弁座部52のうち一方の弁座部である外側環状弁座部51に当接する環状の凸部65pと、環状の段差gによって形成された略円板形の円形凹部65bとを有している。
【0119】
また、調圧部材62は、図8(a)および図8(b)に示すように、外側燃料通路37に導入される流体の圧力を受ける外側環状面部62aと、中間燃料通路31hに選択的に導入されるパイロット圧燃料の圧力を受ける中間環状面部62bと、内側燃料通路32hの内端部に対向する円形中央面部62cと、を有している。
【0120】
一方、調圧室23の内部には、調圧部材62の板状部材65の一面側に対向する大径の外側環状弁座部31および小径の内側環状弁座部32が略同心に配置されており、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32と調圧部材62とは、相対変位により開閉する調圧バルブ機構を構成している。
【0121】
板状部材65(可動弁体部)は、そのバルブ面部65a(一面側部分)を外側環状弁座部31に着座させるとき、外側燃料通路37と中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hとの連通を遮断するようになっている。そして、調圧部材62の外側環状面部62aおよび中間環状面部62bのうち少なくとも外側環状面部62aに対して燃料ポンプ11からの加圧燃料の圧力が作用するとき、調圧部材62が外側燃料通路37と中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hとを連通および遮断することで、プレッシャレギュレータ50は外側燃料通路37内に導入される供給側の燃料の圧力を設定圧に調整することができる。
【0122】
このように、本実施形態では、外側燃料通路37、中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hがそれぞれ調圧部材62の一面側に配置されており、調圧部材62は、ハウジング21の内部で外側燃料通路37に導入される燃料の圧力に基づく、さらには中間燃料通路31hに選択的に導入されるパイロット圧に基づく開弁方向(外側燃料通路37と中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hとを連通させる方向)の付勢力と、圧縮コイルばね27からの閉弁方向(外側燃料通路37と中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hとの連通を遮断する方向)の付勢力とに応じて、外側燃料通路37と中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hとを連通および遮断するようになっている。
【0123】
一方、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、これらのうち一方の弁座部である外側環状弁座部31が調圧部材62の板状部材65のバルブ面部65aに当接するとき(調圧部材62が外側環状弁座部31に着座するとき)、これらのうち他方の弁座部である内側環状弁座部32と調圧部材62の板状部材65との間に環状の微小隙間gが形成されるよう、調圧部材62に対し外側環状弁座部31と内側環状弁座部32とで異なるクリアランスが設定されている。
【0124】
すなわち、本実施形態では、板状部材65の一面側に、外側環状弁座部51に当接する環状の凸部65pと、環状の凸部65pに対し凹んだ円形凹部65bとを形成することで、外側環状弁座部31の弁座面31sに当接するバルブ面部65aと内側環状弁座部32の弁座面32sに対向する円形凹部65bの内底面とが、調圧部材62の板状部材65の変位方向である外側筒状部材55および内側筒状部材56の軸線方向に微小隙間gに対応する段差g´を形成している。
【0125】
上述のように構成された本実施形態の燃料供給装置においては、電磁弁45がON状態(閉弁状態)であるときには、図8(a)に示すように、外側燃料通路37および中間燃料通路31hのうち外側燃料通路37にのみ燃料ポンプ11からの燃料が供給されることで、調圧部材62の加圧燃料の受圧領域が、受圧面積A1の外側環状面部22aのみとなる。したがって、高圧側の設定圧をH[kPa]とすると、調圧部材62は圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A1を受ける一方、外側燃料通路37内の燃料圧力P1が作用する外側環状面部62aにおける開弁方向の付勢力P1×A1を受け、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A1と調圧室23内の燃料圧力に基づく開弁方向の付勢力P1×A1とが釣り合うように調圧がなされる。よって、このときの燃料圧力P1は、高圧側の設定圧Hとなる。
【0126】
一方、電磁弁45がOFF状態(開弁状態)であるときには、図8(b)に示すように、外側燃料通路37および中間燃料通路31hの双方に燃料ポンプ11からの燃料が供給されることで、調圧部材62の加圧燃料の受圧領域が、受圧面積A1の外側環状面部62aおよび受圧面積A2の中間環状面部62bの双方になる。したがって、高圧側の設定圧をH[kPa]とするとき、調圧部材62は圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A1を受ける一方、外側燃料通路37内の燃料圧力P1が作用する外側環状面部62aにおける開弁方向の付勢力P1×A1と、中間燃料通路31hの内の燃料圧力P2(=P1)が作用する中間環状面部62bにおける開弁方向の付勢力P1×A2とを受け、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A3と調圧室23内の燃料圧力に基づく開弁方向の付勢力P1(A1+A2)とが釣り合うように調圧がなされる。よって、このときの燃料圧力P1は、P1=H×A1/(A1+A2)=低圧側の設定圧Lとなる。
【0127】
上述のように構成された本実施形態の燃料供給装置においては、圧縮コイルばね27から常時閉弁方向の付勢力を受ける調圧部材62が、調圧室23内で開弁方向に作用する流体の圧力に応じて流体導入側の外側燃料通路37と流体排出側の内側燃料通路32hとの連通状態を変化させることで、流体導入側の内側燃料通路32hに導入される燃料の圧力が予め設定された設定圧に調整されることになるが、中間燃料通路31hはパイロット圧燃料の導入に利用できることから、外側燃料通路37と併せて中間燃料通路31hの内部にパイロット圧としての燃料圧力を導入することで、調圧部材62の受圧面積を変化させることができ、プレッシャレギュレータ60の設定圧を高圧側と低圧側に切り替えることができる。
【0128】
また、内側環状弁座部32にはシール性が要求されないので、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を共に板状部材65のバルブ面部65aに当接させる場合に比べて、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を有するハウジング21が容易に作製可能となる。
【0129】
さらに、本実施形態においては、上述のようなプレッシャレギュレータ60を用いて、燃料ポンプ11からエンジン1のインジェクタ3に供給される燃料を調圧することにより、調圧部材62の一面側のみで燃料の出入りを制御して高・低複数の設定圧に切り替えるようにしているので、背圧室26側への流体配管の必要性や複数のプレッシャレギュレータを用いる必要性を無くし、設定圧の切替えに適したコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を提供することができる。しかも、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を容易に作製可能としながらも、燃料導入側の外側燃料通路37と燃料排出側の内側燃料通路32hとを区画する外側環状弁座部31における所要のシール性能を安定確保することで、安定した流体圧力調整とその調圧値の保持とが可能な燃料供給装置を提供することができる。よって、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0130】
(第4実施形態)
図9および図10は、本発明の第4実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置を示している。
【0131】
図9に示すように、本実施形態の燃料供給装置は、プレッシャレギュレータ70を備えている。このプレッシャレギュレータ70は、燃料ポンプ11の作動中に常時この燃料ポンプ11からの加圧燃料が導入される内側の連通孔21cと、調圧室23内に導入された燃料が排出される外側の連通孔21aと、電磁弁45を介して燃料ポンプ11からの加圧燃料が選択的に導入される中間の連通孔21bとを有するハウジング21を備えており、上述の第1実施形態と同様に、このハウジング21と隔壁状の調圧部材72とによって調圧室23が形成されている。
【0132】
また、調圧室23の内部には、調圧部材72の板状部材75のバルブ面部75aに対向する大径の外側環状弁座部31および小径の内側環状弁座部32が略同心に配置されており、これら外側環状弁座部31および内側環状弁座部32と調圧部材72とは、相対変位により開閉する調圧バルブ機構を構成している。
【0133】
外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、調圧室23内で流体導入側の流体通路である内側燃料通路32hと流体排出側の流体通路である外側燃料通路37とを区画するとともに、調圧室23内に、例えば互いの間に調圧部材72により内側燃料通路32hおよび外側燃料通路37に対する連通状態が切り替えられる中間燃料通路31h(他の流体通路)を形成している。すなわち、外側環状弁座部31(第2弁座部)は、ハウジング21との間に流体排出側の流体通路である外側燃料通路37を形成するとともに、内側環状弁座部32(第1弁座部)との間に中間燃料通路31hを形成しており、内側環状弁座部32(第1弁座部)は、その内部に流体導入側の流体通路である内側燃料通路32hを形成するとともに、この内側燃料通路32hと外側環状弁座部31および中間燃料通路31hとを区画している。
【0134】
そして、内側燃料通路32hは、燃料圧送回路10のチェック弁14より下流側の回路部分である燃料通路15の分岐通路15a(供給側分岐通路)に接続され、外側燃料通路37は、中間の連通孔21bを通して燃料タンク2内に開放されている。また、中間燃料通路31hは、中間の連通孔21bを通して電磁弁45の第2ポート45bに接続されている。
【0135】
図10(a)および図10(b)に示すように、調圧部材72は、その外側環状面部72aでは外側燃料通路37内に導入される燃料タンク2の内圧(大気圧)を受けることで実質的に加圧されず、その中間環状面部72bでは中間燃料通路31h内の燃料の圧力を受け、その円形中央面部72cでは燃料ポンプ11の作動中に加圧燃料が導入される内側燃料通路32h内の燃料圧力を常時受圧するようになっている。また、中間燃料通路31h内の燃料の圧力は、電磁弁45がOFF状態であるかON状態であるかによって、すなわち燃料ポンプ11からの加圧燃料の圧力がパイロット圧として導入されるか否かによって変化するようになっている。
【0136】
電磁弁45は、中間燃料通路31hへのパイロット圧燃料の流入を選択的に規制することで、調圧部材72の中間環状面部72bに作用する中間燃料通路31h内の燃料の圧力を変化させ、調圧部材72に加圧燃料の圧力の作用する領域を、受圧面積A3の円形中央面部72cのみにするか、あるいは、受圧面積A3の円形中央面部72cおよび受圧面積A2の中間環状面部72bの双方にするかを切り替えるようになっている。そして、調圧部材72は、その中間環状面部72bに作用する中間燃料通路31h内の燃料の圧力(パイロット圧)に応じて調圧部材72の実質的な受圧面積を変化させることで、プレッシャレギュレータ50の設定圧を切り替えることができるようになっている。ここで、内側燃料通路32hの受圧面積A3と内側の中間環状面部72bの受圧面積A2とは、予め設定された面積比A3/A2になるように設定されている。
【0137】
板状部材75(可動弁体部)は、そのバルブ面部75a(一面側部分)を内側環状弁座部32に着座させるとき、内側燃料通路32hと中間燃料通路31hおよび外側燃料通路37との連通を遮断するようになっており、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、板状部材75のバルブ面部75aに対して互いに平行な弁座面31s、32sを有している。そして、調圧部材72の円形中央面部72cおよび中間環状面部72bのうち少なくとも円形中央面部72cに対して燃料ポンプ11からの加圧燃料の圧力が作用するとき、調圧部材72が内側燃料通路32hと中間燃料通路31hおよび外側燃料通路37とを連通および遮断することで、プレッシャレギュレータ50は内側燃料通路32h内に導入される供給側の燃料の圧力を設定圧に調整することができる。
【0138】
このように、本実施形態では、外側燃料通路37、中間燃料通路31hおよび内側燃料通路32hがそれぞれ調圧部材72の一面側に配置されており、調圧部材72は、ハウジング21の内部で内側燃料通路32hに導入される燃料の圧力に基づく、さらには中間燃料通路31hに選択的に導入されるパイロット圧に基づく開弁方向(内側燃料通路32hと中間燃料通路31hおよび外側燃料通路37とを連通させる方向)の付勢力と、圧縮コイルばね27からの閉弁方向(内側燃料通路32hと中間燃料通路31hおよび外側燃料通路37との連通を遮断する方向)の付勢力とに応じて、内側燃料通路32hと中間燃料通路31hおよび外側燃料通路37とを連通および遮断するようになっている。
【0139】
一方、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、これらのうち一方の弁座部である内側環状弁座部32が調圧部材72の板状部材75のバルブ面部75aに当接するとき(調圧部材72が内側環状弁座部32に着座するとき)、これらのうち他方の弁座部である外側環状弁座部31と調圧部材72の板状部材75との間に環状の微小隙間gが形成されるよう、調圧部材72に対し外側環状弁座部31と内側環状弁座部32とで異なるクリアランスが設定されている。
【0140】
すなわち、本実施形態では、板状部材75が、中央部の一面側に円形の凸形状をなすように形成されることで、外側環状弁座部31に対向する外側環状バルブ面部75bと、内側環状弁座部32に対向する中央円形バルブ面部75a(円形の凸部)を有しており、これら中央円形バルブ面部75aおよび外側環状バルブ面部75bの間に環状の段差g´を形成している。そして、板状部材75が、内側環状弁座部32(一方の弁座部)にのみ当接する形状をなしていることによって、外側環状弁座部31の弁座面31sは、調圧部材72の板状部材75の外側環状バルブ面部75bに対して、調圧部材72の板状部材75の変位方向である外側環状弁座部31および内側環状弁座部32の軸線方向に微小隙間gを形成している。
【0141】
上述のように構成された本実施形態の燃料供給装置においては、電磁弁45がON状態(閉弁状態)であるときには、図10(a)に示すように、内側燃料通路32hおよび中間燃料通路31hのうち内側燃料通路32hにのみ燃料ポンプ11からの燃料が供給されることで、調圧部材72の加圧燃料の受圧領域が、受圧面積A3の円形中央面部72cのみとなる。したがって、高圧側の設定圧をH[kPa]とすると、調圧部材72は圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A3を受ける一方、内側燃料通路32h内の燃料圧力P1が作用する円形中央面部72cにおける開弁方向の付勢力P1×A3を受け、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A3と調圧室23内の燃料圧力に基づく開弁方向の付勢力P1×A3とが釣り合うように調圧がなされる。よって、このときの燃料圧力P1は、高圧側の設定圧Hとなる。
【0142】
一方、電磁弁45がOFF状態(開弁状態)であるときには、図10(b)に示すように、内側燃料通路32hおよび中間燃料通路31hの双方に燃料ポンプ11からの燃料が供給されることで、調圧部材72の加圧燃料の受圧領域が、受圧面積A3の円形中央面部72cおよび受圧面積A2の中間環状面部72bの双方になる。したがって、高圧側の設定圧をH[kPa]とするとき、調圧部材72は圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A3を受ける一方、内側燃料通路32h内の燃料圧力P1が作用する円形中央面部72cにおける開弁方向の付勢力P1×A3と、中間燃料通路31hの内の燃料圧力P2(=P1)が作用する中間環状面部72bにおける開弁方向の付勢力P1×A2とを受け、圧縮コイルばね27からの閉弁方向の付勢力H×A3と調圧室23内の燃料圧力に基づく開弁方向の付勢力P1(A3+A2)とが釣り合うように調圧がなされる。よって、このときの燃料圧力P1は、P1=H×A3/(A3+A2)=低圧側の設定圧Lとなる。
【0143】
上述のように構成された本実施形態の燃料供給装置においては、圧縮コイルばね27から常時閉弁方向の付勢力を受ける調圧部材72が、調圧室23内で開弁方向に作用する流体の圧力に応じて流体導入側の内側燃料通路32hと流体排出側の外側燃料通路37との連通状態を変化させることで、流体導入側の内側燃料通路32hに導入される燃料の圧力が予め設定された設定圧に調整されることになるが、中間燃料通路31hはパイロット圧燃料の導入あるいは燃料の排出に利用できることから、内側燃料通路32hと併せて中間燃料通路31hの内部にパイロット圧としての燃料圧力を導入することで、調圧部材72の受圧面積を変化させることができ、プレッシャレギュレータ70の設定圧を高圧側と低圧側に切り替えることができる。
【0144】
また、外側環状弁座部31にはシール性が要求されないので、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を共に板状部材75のバルブ面部75aに当接させる場合に比べて、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を有するハウジング21が容易に作製可能となる。
【0145】
さらに、本実施形態においては、上述のようなプレッシャレギュレータ70を用いて、燃料ポンプ11からエンジン1のインジェクタ3に供給される燃料を調圧することにより、調圧部材72の一面側のみで燃料の出入りを制御して高・低複数の設定圧に切り替えるようにしているので、背圧室26側への流体配管の必要性や複数のプレッシャレギュレータを用いる必要性を無くし、設定圧の切替えに適したコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を提供することができる。しかも、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32を容易に作製可能としながらも、燃料導入側の内側燃料通路32hと燃料排出側の外側燃料通路37とを区画する内側環状弁座部32における所要のシール性能を安定確保することで、安定した流体圧力調整とその調圧値の保持とが可能な燃料供給装置を提供することができる。
【0146】
加えて、本実施形態では、板状部材75が、外側環状弁座部31に対向する外側環状バルブ面部75bと内側環状弁座部32に対向する中央円形バルブ面部75a(円形の凸部)の間に環状の段差g´を有するとともに、内側環状弁座部32(一方の弁座部)にのみ当接する形状をなしているので、閉弁時における板状部材75と内側環状弁座部32の間のシール性を高めるとともに、板状部材75と外側環状弁座部32の間の微小隙間g(クリアランス)を適宜設定することで、中間燃料通路31hの内端部に適当な絞りを形成することができ、その絞りに応じた設定圧の切替え速度に調整することも可能になる。
【0147】
よって、本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0148】
なお、上述の各実施形態においては、電磁弁45によって調圧室23内へのパイロット圧燃料の導入を選択的に制限することで、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32の間の中間燃料通路31h、51h等の流体通路内の流体の圧力を変化させる設定圧切替弁を構成していたが、本発明においては、調圧室23内の任意の燃料通路(流体通路)へのパイロット圧燃料の導入を選択的に制限する設定圧切替弁とすることができる。また、調圧室23内の任意の流体通路へのパイロット圧燃料の導入を選択的に制限するのではなく、パイロット圧燃料が導入される調圧室23内の任意の流体通路からの燃料(流体)の排出を選択的に制限する設定圧切替弁とすることもできる。さらに、調圧室23内の任意の流体通路へのパイロット圧燃料の導入を選択的に制限する導入切替弁と、その任意の流体通路からの燃料(流体)の排出を選択的に制限する排出切替弁とを併設したり、両切替弁の機能を併有する三方弁を用いたりすることができる。
【0149】
具体的には、例えば図11〜図18に示す第5実施形態ないし第12実施形態のような構成とすることができる。
【0150】
(第5〜第8実施形態)
図11に示すように、第5実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置は、図1〜図4に示した第1実施形態に対し調圧室23内の複数の流体通路の配置を相違させたものであり、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32の間の中間燃料通路31hが余剰燃料を排出するリターン通路となっている。また、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、調圧室23内で流体導入側の流体通路である外側燃料通路37と流体排出側の流体通路である中間燃料通路31hとを区画するとともに、調圧室23内であって内側環状弁座部32の内方側に、調圧部材22により外側燃料通路37および中間燃料通路31hに対する連通状態が切り替えられる内側燃料通路32h(他の流体通路)を形成している。そして、電磁弁45により内側環状弁座部32の内方側に位置する内側燃料通路32hへのパイロット圧燃料の導入が選択的に制限されることで、調圧部材22に加圧燃料の圧力の作用する領域を、受圧面積A1の外側環状面部22aのみにするか、この受圧面積A1の外側環状面部22aおよび受圧面積A3の円形中央面部22cの双方にするかが切り替えられ、それによってプレッシャレギュレータ20の設定圧が切り替えられる。
【0151】
図12に示すように、第6実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置は、図5および図6に示した第2実施形態に対し調圧室23内の複数の流体通路の配置を相違させたものであり、外側環状弁座部51および内側環状弁座部52の間の中間燃料通路51hが余剰燃料を排出するリターン通路となっている。また、外側環状弁座部51および内側環状弁座部52は、調圧室23内で流体導入側の流体通路である内側燃料通路52hと流体排出側の流体通路である中間燃料通路51hとを区画するとともに、調圧室23内であって外側環状弁座部51の外方側に、調圧部材22により内側燃料通路52hおよび中間燃料通路51hに対する連通状態が切り替えられる外側燃料通路57(他の流体通路)を形成している。そして、電磁弁45により外側環状弁座部51の外方側に位置する外側燃料通路57へのパイロット圧燃料の導入が選択的に制限されることで、調圧部材22に加圧燃料の圧力の作用する領域を、受圧面積A3の円形中央面部22cのみにするか、この受圧面積A3の円形中央面部22cおよび受圧面積A1の外側環状面部22aの双方にするかが切り替えられ、それによってプレッシャレギュレータ50の設定圧が切り替えられる。
【0152】
図13に示すように、第7実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置は、図7および図8に示した第3実施形態に対し調圧室23内の複数の流体通路の配置を相違させたもので、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32の間の中間燃料通路31hが余剰燃料を排出するリターン通路となっている。また、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、調圧室23内で流体導入側の流体通路である外側燃料通路37と流体排出側の流体通路である中間燃料通路31hとを区画するとともに、調圧室23内であって内側環状弁座部32の内方側に、調圧部材62により外側燃料通路37および中間燃料通路31hに対する連通状態が切り替えられる内側燃料通路32h(他の流体通路)を形成している。そして、電磁弁45により内側環状弁座部32の内方側に位置する内側燃料通路32hへのパイロット圧燃料の導入が選択的に制限されることで、調圧部材62に加圧燃料の圧力の作用する領域を、受圧面積A1の外側環状面部62a(図8参照)のみにするか、この受圧面積A1の外側環状面部62aおよび受圧面積A3の円形中央面部62cの双方にするかが切り替えられ、それによってプレッシャレギュレータ60の設定圧が切り替えられる。
【0153】
図14に示すように、第8実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置は、図9および図10に示した第4実施形態に対し調圧室23内の複数の流体通路の配置を相違させたものであり、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32の間の中間燃料通路31hが余剰燃料を排出するリターン通路となっている。また、外側環状弁座部31および内側環状弁座部32は、調圧室23内で流体導入側の流体通路である内側燃料通路32hと流体排出側の流体通路である中間燃料通路31hとを区画するとともに、調圧室23内であって外側環状弁座部31の外方側に、調圧部材72により内側燃料通路32hおよび中間燃料通路31hに対する連通状態が切り替えられる外側燃料通路37(他の流体通路)を形成している。そして、電磁弁45により外側環状弁座部31の外方側に位置する外側燃料通路37へのパイロット圧燃料の導入が選択的に制限されることで、調圧部材72に加圧燃料の圧力の作用する領域を、受圧面積A3の円形中央面部72cのみにするか、この受圧面積A3の円形中央面部72cおよび受圧面積A1の外側環状面部72aの双方にするかが切り替えられ、それによってプレッシャレギュレータ70の設定圧が切り替えられる。
【0154】
図15に示すように、第9実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置は、図1〜図4に示した第1実施形態に対して電磁弁45に代わる三方電磁弁85を用いるものであり、この三方電磁弁85は、中間燃料通路31hの上流側で中間燃料通路31hへの加圧燃料(パイロット圧に加圧された燃料)の導入を選択的に規制することができる導入切替弁としての機能と、この導入切替弁が中間燃料通路31hへの燃料の導入を規制するよう閉弁するときに、その導入切替弁よりも中間燃料通路31h側の燃料の排出およびそれに伴う中間燃料通路31h内の圧力の解放を選択的に制限する排出切替弁の機能と、を併有している。そして、この三方電磁弁85の開閉状態に応じて中間燃料通路31hへの加圧燃料の流入が選択的に規制されることで、調圧部材22に加圧燃料の圧力の作用する領域が、受圧面積A1の外側環状面部22aのみになるか、あるいは、受圧面積A1の外側環状面部22aおよび受圧面積A2の中間環状面部22bの双方になるかが切り替えられるようになっている。
【0155】
また、三方電磁弁85は、燃料通路15の第2の分岐通路15fのうち上流側部分に接続された第1ポート85aと、燃料通路15の第2の分岐通路15fのうち下流部分に接続された第2ポート85bと、燃料タンク2の内部空間に開放された第3ポート85cと、これら3つのポート85a〜85cの間の連通状態を切替え操作する電磁操作部85dとを有している。
【0156】
電磁操作部85dは、ECU41側から励磁駆動電流が供給される操作信号ON状態になるか否かに応じて、そのON状態では第2ポート85bを第1ポート85aから遮断しつつ第3ポート85cに連通させ、ECU41側から励磁駆動電流が供給されない操作信号OFF状態では第2ポート85bを第3ポート85cから遮断しつつ第1ポート85aに連通させるようになっている。したがって、三方電磁弁85の第1ポート85aおよび第2ポート85bは、前述の導入切替弁の入口ポートおよび出口ポートに相当し、三方電磁弁85の第2ポート85bおよび第3ポート85cは、前述の排出切替弁の入口ポートおよび出口ポートに相当する。また、三方電磁弁85の操作信号ON状態で、前記導入切替弁としては閉弁状態となり、前記排出切替弁としては開弁状態となる。この三方電磁弁85は、ECU41と共に、プレッシャレギュレータ20の設定圧の切替え制御を実行する設定圧切替機構40を構成している。
【0157】
本実施形態においては、第1実施形態の効果に加えて、中間燃料通路31h内へのパイロット圧燃料の導入および中間燃料通路31h内からの燃料の排出の双方をそれぞれ選択的に制限して中間燃料通路31h内の燃料の圧力を変化させる三方電磁弁85(設定圧切替弁、三方弁)が設けられているので、三方電磁弁85を用いた簡素な設定圧切替え機構が実現できる。しかも、パイロット圧の導入制限のみを行う場合に比べて、調圧部材22と外側環状弁座部31および内側環状弁座部32との間に設定されるクリアランスを小さくすることが可能になり、プレッシャレギュレータ20の低圧設定時に、中間燃料通路31hからのパイロット圧燃料の流出量を抑えることができ、燃料ポンプ11の負荷を軽減できる。また、プレッシャレギュレータ20の高圧設定時に、中間燃料通路31h内の燃料の排出および圧力の解放が速やかに実行でき、燃料圧力の切替えの応答性を向上させることができる。
【0158】
図16に示すように、第10実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置は、図5および図6に示した第2実施形態に対して電磁弁45に代わる三方電磁弁85を用いるものであり、本実施形態においては、第2実施形態の効果に加えて、第9実施形態と同様に、プレッシャレギュレータ50の低圧設定時にパイロット圧燃料の流出量を抑えることで燃料ポンプ11の負荷を軽減でき、プレッシャレギュレータ50の高圧設定時に中間燃料通路31h内の燃料の排出およびパイロット圧力の解放が速やかに実行でき、燃料圧力の切替えの応答性を向上させることができる。
【0159】
図17に示すように、第11実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置は、図7および図8に示した第3実施形態に対して電磁弁45に代わる三方電磁弁85を用いるものであり、本実施形態においては、第3実施形態の効果に加えて、第9実施形態と同様に、プレッシャレギュレータ60の低圧設定時にパイロット圧燃料の流出量を抑えることで燃料ポンプ11の負荷を軽減でき、プレッシャレギュレータ60の高圧設定時に中間燃料通路31h内の燃料の排出およびパイロット圧力の解放が速やかに実行でき、燃料圧力の切替えの応答性を向上させることができる。
【0160】
図18に示すように、第12実施形態に係る流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置は、図9および図10に示した第4実施形態に対して電磁弁45に代わる三方電磁弁85を用いるものであり、本実施形態においては、第4実施形態の効果に加えて、第9実施形態と同様に、プレッシャレギュレータ70の低圧設定時にパイロット圧燃料の流出量を抑えることで燃料ポンプ11の負荷を軽減でき、プレッシャレギュレータ70の高圧設定時に中間燃料通路31h内の燃料の排出およびパイロット圧力の解放が速やかに実行でき、燃料圧力の切替えの応答性を向上させることができる。
【0161】
なお、上述した各実施形態以外に、調圧室23内の複数の燃料通路のうち、パイロット圧燃料が導入される燃料通路からのパイロット圧燃料の排出のみを排出切替弁によって選択的に制限するようなもの考えられるが、低圧設定時のリターン燃料量を抑えるためには、第9ないし第12実施形態のように三方弁を用いることが好ましい。
【0162】
また、第1実施形態では、複数の弁座部である第1および第2環状弁座部31,32により調圧室23を3つの燃料通路(流体通路)に区画したが、本発明においては、多数の弁座部により3つ以上の燃料通路を設けるとともに、それらに対応する3つ以上の受圧面部を調圧部材に設けるようにすることも考えられる。すなわち、本発明においては、第1弁座部および第2弁座部は複数の弁座部のうち異なるクリアランスが設定される2つの弁座部を意味しており、第3弁座を含む多数の弁座を含む構成も採用することができるものであり、燃料導入側および燃料排出側の流体通路に対応する調圧部材22の受圧面部のうち一方または双方が複数に分割されてもよい。
【0163】
また、上述の第1実施形態における調圧部材22は、可撓性の環状膜部材24と板状部材25とを有する構成としたが、環状膜部材24はハウジング21内に摺動可能に保持されたピストン状のもので、板状部材25の背面を支持するようなものであってもよい。
【0164】
さらに、上述の第1実施形態においては、インタンク式の流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置としていたが、デリバリーパイプの近傍に配置されるものであってもよいことはいうまでもない。また、外側筒状部材35および内側筒状部材36は、ハウジング21と別体に作製されてハウジング21に固定されたものとしていたが、これら外側筒状部材35および内側筒状部材36をハウジング21と一体に成型してもよいことはいうまでもない。
【0165】
また、上述の第1実施形態では、背圧室26側を燃料タンク2内に開放されたものとしたが、ハウジング21内の調圧部材22の他面側に閉じた背圧室を形成し、その閉じた背圧室に他の負圧または正圧の圧縮性流体(例えば空気)を封入したり、専用の背圧供給回路によって背圧付与のための流体をその閉じた背圧室に供給・排出させたりすることも勿論可能である。
【0166】
さらに、上述の第1実施形態においては、燃料消費部がガソリンを消費する車両用のガソリンエンジンであったが、他の燃料を用いるエンジンにも使用できることは勿論であり、車両用以外のエンジンにも適用可能である。また、燃料を消費して何らかの出力をなす各種の燃料消費部において、燃料圧力の高圧/低圧切替えがなされる場合にも、本発明を適用することができる。
【0167】
以上説明したように、本発明は、調圧部材の一面側のみで流体の出入りを制御して調圧部材の受圧面積を変化させるとともに、流体導入側の流体通路と流体排出側の流体通路とを区画する一方の弁座部におけるシール性を確保するように調圧部材に対するクリアランスが異なる第1弁座部および第2弁座部をハウジングに設けるようにしているので、安定した流体圧力調整とその調圧値の保持とが可能で、設定圧の切替えにも適したコンパクトで配管の簡素な低コストの流体圧力調整装置を提供することができ、その流体圧力調整装置により安定した燃料圧力調整とその調圧値の保持とが可能で、設定圧の切替えにも適したコンパクトで配管の簡素な低コストの燃料供給装置を提供することができるという効果を奏するものであり、内燃機関の燃料を燃料ポンプから燃料噴射弁に供給するときにその燃料圧力を調整するのに好適な流体圧力調整装置およびこれを用いた燃料供給装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0168】
1 エンジン(内燃機関;燃料消費部)
2 燃料タンク
3 インジェクタ(燃料噴射弁)
10 燃料圧送回路
11 燃料ポンプ
15 燃料通路(流体供給通路)
15a 分岐通路
20;50;60;70 プレッシャレギュレータ
21 ハウジング
21a,21b,21c 連通孔
22;62;72 調圧部材
22a;62a;72a 外側環状面部
22b;62b;72b 中間環状面部
22c;62c;72c 円形中央面部
23 調圧室
25;65;75 板状部材(可動弁体部)
25a;65a バルブ面部(一面側部分)
31;51 外側環状弁座部(第1弁座部;第2弁座部)
31h;51h 中間燃料通路(他の流体通路;流体排出側の流体通路)
31s,32s;51s,52s 弁座面
32;52 内側環状弁座部(第2弁座部;第1弁座部)
32h;52h 内側燃料通路(流体排出側の流体通路;流体導入側の流体通路;他の流体通路)
35;55 外側筒状部材
36;56 内側筒状部材
37;57 外側燃料通路(流体導入側の流体通路;流体排出側の流体通路;他の流体通路)
45 電磁弁(設定圧切替弁,導入切替弁)
65b 円形凹部(一面側部分)
65p 環状の凸部
75a 中央円形バルブ面部(円形の凸部,一面側部分)
75b 外側環状バルブ面部(一面側部分)
85 三方電磁弁(三方弁,導入切替弁,排出切替弁)
g 微小隙間(クリアランス)
g´ 段差
P1 燃料圧力(システム圧,流体圧力)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が導入される流体導入側の流体通路および該流体が排出される流体排出側の流体通路を有するハウジングと、前記ハウジング内に前記流体導入側の流体通路に連通する調圧室を形成するとともに、前記調圧室内に導入された流体の圧力に応じて前記流体導入側の流体通路と前記流体排出側の流体通路とを連通させる隔壁状の調圧部材と、を備え、前記流体導入側の流体通路に導入される流体の圧力を予め設定された設定圧に調整可能な流体圧力調整装置であって、
前記ハウジングには、前記調圧室内で前記流体導入側の流体通路と前記流体排出側の流体通路とを区画するとともに前記調圧室内に前記調圧部材により前記流体導入側の流体通路および前記流体排出側の流体通路に対する連通状態が切り替えられる他の流体通路を形成する第1弁座部および第2弁座部が設けられ、
前記調圧部材が前記第1弁座部および前記第2弁座部のうち一方の弁座部に当接するときに前記第1弁座部および前記第2弁座部のうち他方の弁座部と前記調圧部材との間に微小隙間が形成されるよう、前記調圧部材に対し前記第1弁座部と前記第2弁座部とで異なるクリアランスが設定されていることを特徴とする流体圧力調整装置。
【請求項2】
前記第1弁座部が、前記流体導入側の流体通路を形成するとともに該流体導入側の流体通路と前記流体排出側の流体通路とを区画し、
前記第2弁座部が、前記流体排出側の流体通路を形成するとともに前記第1弁座部との間に前記他の流体通路を形成し、
前記調圧部材が前記第1弁座部に当接するときに前記調圧部材と前記第2弁座部の間に微小隙間が形成されることを特徴とする請求項1に記載の流体圧力調整装置。
【請求項3】
前記第1弁座部と前記第2弁座部とが、同心に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体圧力調整装置。
【請求項4】
前記第1弁座部と前記第2弁座部とが、同軸に配置された外側筒状部材および内側筒状部材の端部によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の流体圧力調整装置。
【請求項5】
前記調圧部材が前記第1弁座部および前記第2弁座部に対向する板状の可動弁体部を有し、
前記第1弁座部および前記第2弁座部が、前記可動弁体部の一面側部分に対して互いに平行な弁座面を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1の請求項に記載の流体圧力調整装置。
【請求項6】
前記調圧部材が前記第1弁座部および前記第2弁座部に対向する板状の可動弁体部を有し、
前記可動弁体部が、前記第1弁座部および前記第2弁座部に対向する一面側部分に環状の段差を有するとともに、前記第1弁座部および前記第2弁座部のうち一方の弁座部に当接する円形または環状の凸部を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1の請求項に記載の流体圧力調整装置。
【請求項7】
前記他の流体通路内の前記流体の圧力を変化させることで、前記調圧部材の受圧領域の面積が変化することを特徴とする請求項1ないし請求項6のうちいずれか1の請求項に記載の流体圧力調整装置。
【請求項8】
前記他の流体通路内への前記流体の導入または前記他の流体通路内からの前記流体の排出を選択的に制限し、前記他の流体通路内の前記流体の圧力を変化させる設定圧切替弁が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の流体圧力調整装置。
【請求項9】
前記設定圧切替弁が、前記他の流体通路内への前記流体の導入および前記他の流体通路内からの前記流体の排出を制御し、前記他の流体通路内の前記流体の圧力を変化させる三方弁によって構成されていることを特徴とする請求項8に記載の流体圧力調整装置。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のうちいずれか1の請求項に記載された流体圧力調整装置を備え、燃料ポンプから内燃機関の燃料噴射弁に供給される燃料を前記流体圧力調整装置により調圧することを特徴とする燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−252545(P2011−252545A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126966(P2010−126966)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】