説明

流体圧緩衝器

【課題】 この発明は、インナーチューブの軸心部にシリンダを吊設することを特徴とする流体圧緩衝器の改良に関する。
【解決手段】 アウターチューブ1と、インナーチューブ2と、ダンパ3とを備えてなり、ダンパ3がインナーチューブ2の軸心部に吊設されるシリンダ31と、シリンダ31のヘッド部に係合するヘッド部材30と、シリンダ31のボトム部に保持されるベース部材34とを備える流体圧緩衝器において、ヘッド部材30が内周に螺合するストッパ部材50と、ストッパ部材50からインナーチューブ2に向けて貫通する第一ピン51とを備える結合手段5と、シリンダ31が内周に保持されるシリンダ吊設部材60と、シリンダ吊設部材60からインナーチューブ2に向けて貫通する第二ピン61とを備える吊設手段6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体圧緩衝器に関し、特に、インナーチューブの軸心部にシリンダを吊設することを特徴とする流体圧緩衝器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧緩衝器は、これまでに種々の提案がなされており、例えば、二輪車の車輪を懸架しながらその車輪に入力される路面振動を減衰するフロントフォークやリアクッションユニット等の懸架装置として利用される。
【0003】
特許文献1には、従来のフロントフォークの構成が開示されており、このフロントフォークは、アウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿通されるインナーチューブとからなるフォーク本体を備え、倒立型に設定される。
【0004】
上記フォーク本体には、上端開口を封止するキャップ部材と、下端部外周に螺合する筒状のボトム部材とが設けられる。
【0005】
また、上記フォーク本体は、内部に所定の減衰力を発生する正立型のダンパを収容し、このダンパとの間に作動流体を貯留するリザーバ室を形成する。
【0006】
上記ダンパは、上記インナーチューブの軸心部に起立して作動流体を収容するシリンダと、アウターチューブに固定されて上記シリンダ内に出没するロッドと、このロッドの先端に保持されて上記シリンダ内を二つの作用室に区画するピストンとを備える。
【0007】
そして、特許文献1の図3、4に開示されるように、上記シリンダのヘッド部及びボトム部には、ヘッド部材及びベース部材がそれぞれ螺嵌されてなる。
【0008】
上記ベース部材は、シリンダ内とリザーバ室とを連通する環状のベース部材本体と、このベース部材本体をシリンダのボトム部に固定する保持部材とからなる。
【0009】
そして、上記保持部材は、上記ボトム部材の図中下側から挿入されてボトム部材の開口を封止する封止部と、この封止部と同軸に延設されてシリンダのボトム部が外周に螺合する結合部と、この結合部と同軸に延設されて小径のロッド部と、このロッド部の先端に螺合するナットとを備えてなる(特許文献1の図4)。
【0010】
したがって、上記ベース部材本体の軸心部に上記ロッド部を挿通し、上記ナットを螺合することにより、上記ベース部材本体をシリンダのボトム部に固定する。
【0011】
つまり、上記特許文献1のフロントフォークにおいては、シリンダがボトム部材にリジット固定されるため、ボトム部材に曲げ荷重が作用した場合、ベース部材と共にシリンダが傾げてシリンダとロッドとの軸ずれが生じ、ピストンの円滑な摺動が妨げられる虞がある。
【0012】
そこで、出願人は、上記不具合の改善を図るため、以下の流体圧緩衝器たるフロントフォークを創案した。
【0013】
このフロントフォークは、図5に示すように、特許文献1のフロントフォークと基本構造を同一にしてなり、シリンダ31の上下の開口部にそれぞれヘッド部材30とベース部材34が係合する。
【0014】
上記ヘッド部材30は、インナーチューブ2内周に結合する結合手段5Aに固定されてなる。
【0015】
上記結合手段5Aは、上記ヘッド部材30が内周に螺合する環状のストッパ部材50Aと、このストッパ部材50Aからインナーチューブ2に向けて貫通するピン51Aと、このピン51Aをインナーチューブ2側に附勢するスナップリング52Aとからなる。
【0016】
そして、上記ストッパ部材50Aに開穿される挿通孔(符示せず)と、上記インナーチューブ2に開穿される挿通孔(符示せず)とを対向させて、上記スナップリング52Aの附勢力で上記ピン51Aを上記両挿通孔内に挿通し、ストッパ部材50Aをインナーチューブ2に固定する。
【0017】
シリンダ31の図5中下側開口に係合するベース部材34は、ヘッド部材30を上記ストッパ部材50Aに螺合することにより、シリンダ31を介して有底筒状に形成されるボトム部材20の底部20aに押し付けられて固定される。
【0018】
つまり、上記フロントフォークにおいて、シリンダ31の下端は、ヘッド部材30によってベース部材34を介してボトム部材20に押し付けられてなる。
【0019】
したがって、ボトム部材20に曲げ荷重が作用した場合、ベース部材34が底部20a上を移動してシリンダ31が多少横方向にずれることを許容し、ロッド32に対してシリンダ31が傾げることを抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2008−69830号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記従来の流体圧緩衝器たるフロントフォークにおいて、シリンダがロッドに対して傾げることを抑制することにより、特許文献1の流体圧緩衝器と比較してピストンの円滑な摺動性を保持することが可能となる。
【0022】
しかしながら、上記従来のフロントフォークは、シリンダ31の図5中下端がヘッド部材30によりボトム部材20に押し付けられているため、ボトム部材20に作用する曲げ荷重を受け、シリンダ31がロッド32に対して傾げることを抑制する効果を充分に得ることができない。
【0023】
また、シリンダ31がボトム部材20からの曲げ加重を受けることを防止するため、従来のストッパ部材50Aをシリンダ31外周に装着し、インナーチューブ2内にシリンダ31を吊設した場合においては、ピン52Aが挿通孔内でガタつき、ピストン33の円滑な摺動の妨げとなる。
【0024】
そこで、本発明の目的は、シリンダがボトム部材に作用する曲げ荷重を受けることがなく、且つ、ピストンの円滑な摺動を保つことが可能な流体圧緩衝器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するための手段は、アウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなる緩衝器本体と、この緩衝器本体内に収容されて所定の減衰力を発生するダンパと、上記緩衝器本体と上記ダンパとの間に形成されて作動流体を収容するリザーバ室とを備えてなり、上記ダンパが上記インナーチューブの軸心部に吊設されて内部に作動流体を収容するシリンダと、このシリンダのヘッド部に係合するヘッド部材と、上記シリンダのボトム部に保持されて上記シリンダ内と上記リザーバ室とを連通するベース部材とを備える流体圧緩衝器において、上記ヘッド部材が内周に螺合する環状のストッパ部材と、このストッパ部材から上記インナーチューブに向けて貫通する第一ピンとを備える結合手段と、上記シリンダが内周に保持される環状のシリンダ吊設部材と、このシリンダ吊設部材から上記インナーチューブに向けて貫通する第二ピンとを備える吊設手段とを有することである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、シリンダをインナーチューブ内に吊設手段を介して吊るした状態でストッパ部材内にヘッド部材を螺合してシリンダに係合することにより、第一ピンと第二ピンとの間に反力が生じるため、上記第一ピン及び第二ピンのガタツキを防ぎ、ピストンの円滑な摺動を保つことが可能となる。
【0027】
また、シリンダがインナーチューブの軸心部に吊設されるため、ボトム部材に曲げ荷重が作用したとしてもその作用がシリンダに及ばず、シリンダがロッドに対して傾げることを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態に係る流体圧緩衝器たるフロントフォークの左側を切り欠いて示す側面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る流体圧緩衝器たるフロントフォークの一部を拡大して示す半断面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る流体圧緩衝器たるフロントフォークの左側を切り欠いて示す側面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る流体圧緩衝器たるフロントフォークの一部を拡大して示す半断面図である。
【図5】従来の流体圧緩衝器たるフロントフォークを部分的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の一実施の形態を示す流体圧緩衝器について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品かまたはそれに対応する部品を示す。
【0030】
本実施の形態に係る流体圧緩衝器は、自動二輪車の前輪を懸架して、路面の凹凸により前輪に入力される路面振動を減衰するフロントフォークである。
【0031】
図示しないが、上記フロントフォークは、上端部をブリッジ機構で連結される左右一対のフォーク部材からなり、各フォーク部材の下端部を前輪の車軸に連結して前輪を挟むようにして懸架する。
【0032】
また、上記ブリッジ機構は、同じく図示しないが、ハンドルに連結されるステアリングシャフトを有し、当該構成を備えることによりハンドル操作により前輪を転舵することが可能となる。
【0033】
上記フォーク部材は、図1に示すように、アウターチューブ1と、このアウターチューブ1内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ2とからなる緩衝器本体たるフォーク本体を備える。
【0034】
そして、フォーク部材は、上記フォーク本体内に収容されて所定の減衰力を発生するダンパ3と、上記フォーク本体と上記ダンパ3との間に形成されて作動流体を収容するリザーバ室Rとを備えてなる。
【0035】
上記ダンパ3は、上記インナーチューブ2の軸心部に吊設されて内部に作動流体を収容するシリンダ31と、このシリンダ31のヘッド部(図中上部)に係合するヘッド部材30と、上記シリンダ31のボトム部(図中下部)に保持されて上記シリンダ31内と上記リザーバ室Rとを連通するベース部材34とを備える。
【0036】
また、フォーク部材は、上記ヘッド部材30が内周に螺合する環状のストッパ部材50と、このストッパ部材50から上記インナーチューブ2に向けて貫通する第一ピン51とを備える結合手段5を有する。
【0037】
更に、フォーク部材は、上記シリンダ31が内周に保持される環状のシリンダ吊設部材60と、このシリンダ吊設部材60から上記インナーチューブ2に向けて貫通する第二ピン61とを備える吊設手段6を有する。
【0038】
以下に、上記フロントフォークの各構成部品について詳細に説明する。
【0039】
アウターチューブ1とインナーチューブ2とからなるフォーク本体は、アウターチューブ1が車体側に、インナーチューブ2が車輪側に配置されて倒立型のフロントフォークを構成する。
【0040】
そして、上記フォーク本体は、その上下端をキャップ部材10とボトム部材20とでそれぞれ封止されてなり、上記ボトム部材20は、有底筒状に形成されて内周にインナーチューブ2のボトム部(図1中下部)が螺合する。
【0041】
また、上記フォーク本体は、内部に路面振動を吸収する懸架ばねSと、所定の減衰力を発生するダンパ3とを収容する。
【0042】
当該構成を備えることにより、フロントフォークは、懸架ばねSによる路面振動の吸収に伴うフォーク本体の伸縮運動を上記ダンパ3で減衰することが可能となり、二輪車の乗り心地を良好にすることが可能となる。
【0043】
上記フォーク本体と上記ダンパ3との間には、リザーバ室Rが形成されてなり、作動流体が貯留されると共に作動流体の液面Oを介して上方に気体が封入されて気室Gが形成される。
【0044】
上記液面Oは、液面Oが最も低下するフォーク本体の最伸張時においても、シリンダ31の図中上端開口を塞ぐヘッド部材30がリザーバ室R内に貯留される作動流体内に浸るよう設定される。
【0045】
また、上記気室Gは、フォーク本体の伸縮に伴い膨縮して所定のばね反力を生じ、エアスプリングとして機能する。
【0046】
尚、図示しないが、上記気室Gの内圧は、キャップ部材10に設けられるエアバルブによって高低調整されることが可能である。
【0047】
上記フォーク本体内に収容されるダンパ3は、インナーチューブ2の軸心部に起立して作動流体を収容するシリンダ31と、アウターチューブ1にキャップ部材10を介して固定されて上記シリンダ31内に出没するロッド32と、このロッド32の出没に伴い所定の減衰力を発生する減衰力発生手段とを備えてなる。
【0048】
上記シリンダ31は、インナーチューブ2の軸心部に吊設手段6を介して吊設されてなり、ボトム部(図1中下部)内周にベース部材34を螺合して保持する。
【0049】
尚、上記ベース部材34の保持方法は、螺合に限らず、溶接等の他の方法を採用するとしても良い。
【0050】
また、上記シリンダ31は、ヘッド部(図1中上部)にヘッド部材30の下端部30aが係合し、この下端部30a外周とシリンダ31内周との間はシール部材30bを介してシールされるがこの限りではなく、シール部材30bを必ずしも設ける必要はない。
【0051】
また、上記シリンダ31は、上記ヘッド部材30と上記ベース部材34との間に形成されるシリンダ31内部に、ピストン33で区画される二つの作用室、即ち、ロッド側に位置する伸側作用室P1及びピストン側に位置する圧側作用室P2を形成する。
【0052】
上記ヘッド部材30は、インナーチューブ2内周に固定される結合手段5に結合し、図示しないが、環状に形成されて内周に環状のブッシュを備え、上記ロッド32の外周に摺接してロッド32が円滑にシリンダ31内に出没することを助ける。
【0053】
上記ダンパ3における所定の減衰力を発生する上記減衰力発生手段は、図示しないが、フォーク本体の伸張時に所定の減衰力を発生する伸側リーフバルブと、フォーク本体の収縮時に所定の減衰力を発生する圧側リーフバルブとからなる。
【0054】
そして、本実施の形態において、上記伸側リーフバルブは、上記ロッド32の先端に保持されるピストン33に、上記圧側リーフバルブは、上記シリンダ31のボトム部に螺嵌するベース部材34に装着される。
【0055】
上記ピストン33には、図示しないが、上記二つの作用室P1、P2を連通する伸側流路と圧側流路とが形成されてなり、上記伸側流路の出口側たる圧側作用室P2側に上記伸側リーフバルブが開閉可能に装着される。
【0056】
一方、上記圧側流路には、出口側たる伸側作用室P1側に圧側作用室P2から伸側作用室P1への作動流体の移動のみを許容する圧側チェック弁C1が開閉自在に装着される。
【0057】
また、上記ベース部材34には、上記圧側作用室P2とリザーバ室Rとを連通する伸側流路と圧側流路とが形成されてなり、この圧側流路の出口側たるリザーバ室R側に上記圧側リーフバルブが開閉可能に装着される。
【0058】
一方、上記ベース部材34の伸側流路には、出口側たる圧側作用室P2側にリザーバ室Rから圧側作用室P2への作動流体の移動のみを許容する伸側チェック弁C2が開閉自在に装着される。
【0059】
上記構成を備えることにより、作動流体が上記各リーフバルブを押し開いて移動する際に抵抗を生じるため、フロントフォークは、フォーク本体の伸縮運動を減衰して流体圧緩衝器として機能することが可能となる。
【0060】
そして、フォーク本体の伸縮の際に、ベース部材34を介してロッド32の出没分シリンダ31内で過不足する作動流体をリザーバ室Rで補償することが可能となる。
【0061】
尚、上記減衰力発生手段の構成は、図示するところの限りではなく、適宜周知の構成を採用することが可能である。
【0062】
ところで、シリンダ31をインナーチューブ2の軸心部に吊設する吊設手段6は、図2に示すように、シリンダ31の外周に形成される環状溝(符示せず)に嵌合するスナップリング64を介してシリンダ31を内周に保持する環状のシリンダ吊設部材60を備える。
【0063】
また、吊設手段6は、上記シリンダ吊設部材60からインナーチューブ2に向けて貫通する第二ピン61と、この第二ピン61をインナーチューブ2に向けて附勢するスナップリングからなる第二附勢手段62とを備える。
【0064】
上記構成を備えることにより、インナーチューブ2に開穿される挿通孔B1とシリンダ吊設部材60に開穿される挿通孔B2とを対向させたとき、第二ピン61の先端が第二附勢手段62の附勢力により挿通孔B2から挿通孔B1に向けて押し出される。
【0065】
したがって、第二ピン61がインナーチューブ2とシリンダ吊設部材60とを貫通してシリンダ吊設部材60がインナーチューブ2に固定される。そして、上記シリンダ吊設部材60内にシリンダ31を挿通したとき、シリンダ31の環状溝に嵌合するスナップリング64が上記シリンダ吊設部材60の内周部に引っ掛かる。これにより、シリンダ31がスナップリング64で抜け止めされながらシリンダ吊設部材60に保持されて、インナーチューブ2の軸心部に吊設される。
【0066】
尚、本実施の形態において、第二附勢手段62をスナップリングとしたがこの限りではなく、第二ピン61をインナーチューブ2に向けて附勢し得る限りにおいて適宜構成を選択することが可能である。
【0067】
また、本実施の形態において第二ピン61は、図2中上方に配置される側面に、シリンダ吊設部材60の挿通孔B2の縁が係合する係合溝61aが形成されてなり、当該構成を備えることにより、第二ピン61を抜け止めすることが可能となる。
【0068】
上記吊設手段6の図中上方に設けられる結合手段5は、環状に形成されてヘッド部材30が内周に螺合するストッパ部材50を有する。
【0069】
また、上記結合手段5は、上記ストッパ部材50からインナーチューブ2に向けて貫通する第一ピン51と、この第一ピン51をインナーチューブ2側に附勢するスナップリングからなる第一附勢手段52とを備える。
【0070】
上記構成を備えることにより、インナーチューブ2に開穿される挿通孔A1とストッパ部材50に開穿される挿通孔A2とを対向させたとき、第一ピン51の先端が第一附勢手段52の附勢力により挿通孔A2から挿通孔A1に向けて押し出される。
【0071】
したがって、第一ピン51がインナーチューブ2とストッパ部材50とを貫通してストッパ部材50がインナーチューブ2に固定され、上記ストッパ部材50にヘッド部材30を螺合することにより、ヘッド部材30をインナーチューブ2内周に固定することが可能となる。
【0072】
尚、本実施の形態において、第一附勢手段52をスナップリングとしたがこの限りではなく、第一ピン51をインナーチューブ2に向けて附勢し得る限りにおいて適宜構成を選択することが可能である。
【0073】
本実施の形態に係るフロントフォークにおけるシリンダ31の組み付け手順は、以下の通りである。
【0074】
ボトム部材20内周にボトム部を結合したインナーチューブ2内に、吊設手段6を外周に装着すると共にベース部材34をボトム部に保持したシリンダ31を挿入し、インナーチューブ2内にシリンダ31吊設する。
【0075】
次いで、インナーチューブ2内に結合手段5を挿入して、インナーチューブ2内周に結合手段5を固定する。
【0076】
次いで、結合手段5のストッパ部材50内周にヘッド部材30を螺合し、ヘッド部材30の図中下端部30aをシリンダ34のヘッド部内に係合する。
【0077】
したがって、ストッパ部材50にヘッド部材30を螺合して、ヘッド部材30の図中下端部30aをシリンダ31のヘッド部に係合したとき、ヘッド部材30の軸力が第一ピン51及び第二ピン61に作用する。
【0078】
つまり、ヘッド部材30を螺合することにより、第一ピン51が図中上方に、第二ピン61が図中下方に押圧されて、第一ピン51と第二ピン61との間に反力が生じ、両ピン52、62が挿通孔A1、A2、B1、B2内でガタツクことを防止することが可能となる。
【0079】
また、シリンダ31がベース部材34を保持しながらインナーチューブ2内に吊設されることから、ボトム部材20に作用する荷重がシリンダ34に伝達されることがない。
【0080】
したがって、シリンダ34がロッド32に対して傾げたり、ガタツキが生じたりすることを防止して、ピストン33の摺動性を良好に保つことが可能となる。
【0081】
また、シリンダ吊設部材60に開穿される挿通孔B2の縁が係合溝61aに係合する(図2)ことにより、第二附勢手段62の附勢力に抗する力が第二ピン61に作用したとしても第二ピン61が抜けることを防止することが可能となる。
【0082】
つまり、上記係合溝61aは、シリンダ31外周に予め吊設手段6を装着するために、シリンダ31外周と第二ピン61の基端との間に隙間を必要とする場合において有用である。
【0083】
また、本実施の形態において、結合手段5をインナーチューブ2内周に結合し、次いで、ヘッド部材30をストッパ部材50に螺合することから、第一ピン51の基端とヘッド部材30外周との間に隙間を設ける必要がない。
【0084】
したがって、第一ピン51は、ストッパ部材50の外周面で抜け止めされるため、第二ピン61のように係合溝61aを設ける必要がない。
【0085】
尚、上記係合溝61aは、必ずしも設ける必要はなく、また、図示しないが、第一ピン51に係合溝を設けても良いことは勿論である。
【0086】
また、上記シリンダ31の組み付け手順についても上記の限りではなく、例えば、先ずシリンダ吊設部材60をインナーチューブ2内周に固定し、次いでベース部材34を保持したシリンダ31を上記シリンダ吊設部材60内に挿入しても良く、組み付け手順を適宜変更することが可能である。
【0087】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、特許請求の範囲から逸脱することなく改造、変形及び変更を行うことができることは理解すべきである。
【0088】
例えば、上記実施の形態においては、フロントフォークに本発明を具現化するとしたがこの限りではなく、例えば、リアクッションユニットなど他の流体圧緩衝器に具現化するとしても良いことは勿論である。
【0089】
また、図3、4に示すように、シリンダ31をシリンダ吊設部材60A内周に螺合することにより、シリンダ31をシリンダ吊設部材60A内周に保持させるとしても良い。
【0090】
この場合においては、シリンダ吊設部材60Aと直列にシリンダ31外周に螺合するナット部材63を供え、当該構成を備えることによりダブルナット構造としてシリンダ吊設部材60Aの緩み止めをすることが好ましい。
【0091】
尚、図3、4に示す本発明の他の実施の形態において、シリンダ31を組み付ける際には、シリンダ31にベース部材34及び吊設手段6を装着した状態で、シリンダ31をインナーチューブ2内に挿入するとすれば良い。
【符号の説明】
【0092】
A1、A2、B1、B2 挿通孔
C1、C2 チェック弁
G 気室
P1 伸側作用室
P2 圧側作用室
R リザーバ室
S 懸架ばね
1 アウターチューブ
2 インナーチューブ
3 ダンパ
5 結合手段
6 吊設手段
10 キャップ部材
11 ばね受けケース
20 ボトム部材
20a 底部
30 ヘッド部材
31 シリンダ
32 ロッド
33 ピストン
34 ベース部材
50 ストッパ部材
51 第一ピン
52 第一附勢手段
60、60A シリンダ吊設部材
61 第二ピン
62 第二附勢手段
63 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターチューブと、このアウターチューブ内に摺動自在に挿入されるインナーチューブとからなる緩衝器本体と、この緩衝器本体内に収容されて所定の減衰力を発生するダンパと、上記緩衝器本体と上記ダンパとの間に形成されて作動流体を収容するリザーバ室とを備えてなり、
上記ダンパが上記インナーチューブの軸心部に吊設されて内部に作動流体を収容するシリンダと、このシリンダのヘッド部に係合するヘッド部材と、上記シリンダのボトム部に保持されて上記シリンダ内と上記リザーバ室とを連通するベース部材とを備える流体圧緩衝器において、
上記ヘッド部材が内周に螺合する環状のストッパ部材と、このストッパ部材から上記インナーチューブに向けて貫通する第一ピンとを備える結合手段と、
上記シリンダが内周に保持される環状のシリンダ吊設部材と、このシリンダ吊設部材から上記インナーチューブに向けて貫通する第二ピンとを備える吊設手段とを有することを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項2】
上記第一ピン及び、または上記第二ピンを附勢する附勢手段を備えることを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項3】
上記第二ピンの側面に係合溝が形成されてなり、上記インナーチューブに開穿される挿通孔と上記シリンダ吊設部材に開穿される挿通孔とを対向させたとき、上記第二ピンの先端が上記インナーチューブの挿通孔内に押し出され、上記シリンダ吊設部材の挿通孔の縁に上記係合溝が係合することを特徴とする請求項2に記載の流体圧緩衝器。
【請求項4】
上記シリンダは、外周に環状溝を備えてなり、この環状溝に係合するスナップリングを介して上記シリンダ吊設部材に保持されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の流体圧緩衝器。
【請求項5】
上記シリンダが上記シリンダ吊設部材内周に螺合されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の流体圧緩衝器。
【請求項6】
上記シリンダ吊設部材と直列に上記シリンダ外周に螺合するナット部材を設けたことを特徴とする請求項5に記載の流体圧緩衝器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−72812(P2012−72812A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216930(P2010−216930)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】