説明

流体圧駆動ユニット及び除雪ユニット

【課題】雪かきブレードの左右角度調整用など、位置保持中の外力に対しても安定的に位置保持機能を発揮することができる流体圧駆動ユニットを提供する。
【解決手段】片ロッド複動シリンダ2のボトム側ポートとオペレートチェック弁4のボトム側とを連結するボトム側管路10aから、片ロッド複動シリンダ2とのロッド側ポートとオペレートチェック弁4のロッド側とを連結するロッド側管路10bへ作動流体を逃がす第1過負荷リリーフ弁6を設け、ロッド側管路10bからタンク3へ作動流体を逃がす第2過負荷リリーフ弁7を設け、ボトム側管路10aにタンク3からの作動流体の流入を許容する負圧防止用チェック弁8を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は独立して被駆動体に流体圧による駆動力を与える流体圧駆動ユニットであって、例えば、除雪ユニットの雪かきブレードの垂直軸回りの角度調整に用いることができるもの、及び、この流体圧駆動ユニットを用いた除雪ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
流体圧駆動ユニットは、電源さえあれば、簡易に流体圧の駆動力を得ることができるので、多方面に利用されるが、例えば、車両の前方に着脱可能に装着される除雪ユニットの雪かきブレードの垂直軸回りの角度調整にも用いることができる。
【0003】
その一例として、特許文献1に記載された除雪ユニットがあり、図3は、本発明の背景技術となる、この除雪ユニットを示す油圧回路図である。
【0004】
この除雪ユニット70は、電動モータMで駆動される油圧ポンプ51、除雪ユニット70の雪かきブレード61の垂直軸回りの角度調整(左右角度調整)を行う一対の単動シリンダ52A、52B、油圧タンク53、油圧ポンプ51からの作動油を単動シリンダ52A、52Bのどちらに供給するか切り換える切換弁54、過負荷の場合のオーバーロードリリーフ弁55、及び、除雪ユニット70の仕様作動圧力を設定するメインリリーフ弁56を備えている。
【0005】
除雪ユニット70は、更に、油圧ポンプ51からの作動油を雪かきブレード61の左右角度調整側、上下調整側のどちらに供給するか切り換える切換弁62、上下調整用の単動シリンダ63、単動シリンダ63の下降時に作動油を油圧タンク53に戻すための戻し弁64、及び、角度調整、上下調整のための操作器65を備えている。
【0006】
このような構成で、この除雪ユニット70は、油圧駆動の利点を生かして、雪かきブレード61の左右角度調整に加えて上下位置調整も行うことができる。
【0007】
しかしながら、この除雪ユニット70では、雪かきブレード61の左右角度調整のために二本の単動シリンダ52A、52Bを用いており、コストダウン、コンパクト化のためには、一本の片ロッド複動シリンダを用いることができると良いが、そのためには、ボトム側とロッド側の作動油量の相違の処理が必要であった。
【0008】
この一本の片ロッド複動シリンダを用いる場合のボトム側とロッド側の作動油量の相違の問題を解決するものとして、特許文献2に記載された油圧駆動ユニット(本出願人の提案によるものである。)を用いることができ、以下、この油圧駆動ユニットの基本構成と基本動作について説明する。
【0009】
図4は、この本発明の背景技術となる流体圧駆動ユニットを示す油圧回路図である。
【0010】
この油圧駆動ユニットOUは、独立して、つまり作動油を閉鎖系で循環させながら、被駆動体Wに油圧による駆動力を与えるため、正逆回転モータMにより作動油を正逆双方向に圧送する油圧ポンプOPと、この作動油により作動し前記駆動力を発生させる油圧アクチュエータOA(ここでは、油圧シリンダ)、閉鎖空間内に作動油を貯留するタンクOT、油圧ポンプOPと油圧アクチュエータOAとの間の作動油の正逆双方向の流れを制御するオペレートチェック弁OC、油圧ポンプOPとタンクOTとの間の正逆双方向の作動油の流れを制御する切換弁OIを基本構成要素として備えている。
【0011】
オペレートチェック弁OCは、基本的に油圧ポンプOPから油圧アクチュエータOAへの作動油の流れのみを許容する一対のチェック弁OCaと、それぞれチェック弁OCaへの作動油圧を他のチェック弁OCaへパイロットする一対のパイロットラインOCbとを備えている。
【0012】
この一対のチェック弁OCaは、油圧ポンプOPの一方のポートと油圧アクチュエータOAのボトム側流体室OAaとを連結する管路と、油圧ポンプOPの他方のポートと油圧アクチュエータOAのロッド側流体室OAbとを連結する管路とに、それぞれ設けられている。
【0013】
切換弁OIは、油圧ポンプOPと油圧アクチュエータOAのボトム側流体室OAa、ロッド側流体室OAbとの間のいずれかの管路とタンクOTとの間を切換断接するものである。
【0014】
なお、以下の説明では、左右一対で配置されたチェック弁OCaなどの図上左側のものを、油圧アクチュエータOAのボトム側流体室OAaに入出する作動油に関するものとしてボトム側、右側のものを、ロッド側流体室OAbに入出する作動油に関するものとしてロッド側と称することがある。同様に、油圧ポンプOPのポートも、左側をボトム側、右側をロッド側と称することがある。
【0015】
このような構成で、この油圧駆動ユニットOUによれば、油圧ポンプOPが停止している状態では、オペレートチェック弁OCにより、油圧アクチュエータOAのボトム側流体室OAa、ロッド側流体室OAbのいずれの側からも作動油の流出が阻止され、所定の外力に抗して油圧アクチュエータOAの現状静止状態が維持される。
【0016】
油圧ポンプOPがボトム側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、油圧ポンプOPからボトム側チェック弁OCaを通過してボトム側流体室OAaへ作動油が供給され、同時にボトム側パイロットラインOCbの作動油圧によりロッド側チェック弁OCaが押し開かれ、ロッド側流体室OAbから油圧ポンプOPへの作動油の流出を許容し、油圧ポンプOPと油圧アクチュエータOAとの間を時計回りに循環する作動油の流れが生じ、油圧アクチュエータOAに伸び方向への駆動力が発生する。
【0017】
この際、油圧アクチュエータOAが図示したような油圧シリンダの場合を考えると、この油圧シリンダのピストンの移動量に対して、ボトム側流体室OAaに流入する作動油量に比べ、ロッド側流体室OAbから流出する作動油量が、このピストンのロッドの分だけ少なくなるが、より高い油圧のボトム側の作動油に押されて切換弁OIがロッド側流体室OAbへの管路とタンクOTとの間を接続するように切り換わり、不足分の作動油がタンクOTから供給されるようになっている。
【0018】
一方、油圧ポンプOPがロッド側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、上記と逆の作動油の循環流れが生じて、油圧アクチュエータOAに縮み方向への駆動力が発生し、ボトム側流体室OAaから油圧ポンプOPへ流入する作動油が余分になるが、その余分の作動油は、上記と逆の切換弁OIの作用によりボトム側流体室OAaへの管路とタンクOTとが接続され、タンクOTへ戻されるようになっている。
【0019】
なお、油圧アクチュエータOAである油圧シリンダのピストンの位置により、密閉されたタンクOT内の作動油量が増減し、このタンクOT内に封止された気体圧力が変動するが、この封止気体体積を適当なものとすることで、この気体圧力の変動が、油圧駆動ユニットOUの作動に影響を与えないようにしている。
【0020】
こうして、閉鎖系であって、その作動により作動油の入出量に差がある油圧アクチュエータOAを用いながら、油圧駆動ユニットOUの機能が発揮保持されているのである。
【0021】
この油圧駆動ユニットOUには、既述の基本構成要素以外に以下の付加的要素が備えられている。
【0022】
油圧アクチュエータOAのボトム側流体室OAa、ロッド側流体室OAbとオペレートチェック弁OCのそれぞれのチェック弁OCaとの間の管路には、それぞれの流体室OAa、OAbからチェック弁OCaへの作動油の流れのみを絞るスローリターン弁SRがそれぞれ設けられている。
【0023】
このスローリターン弁SRは、油圧ポンプOPの作動中に被駆動体Wから外力が生じた場合に発生するハンチングを防止するためのものである。
【0024】
前記それぞれのスローリターン弁SRとチェック弁OCaとの間の管路からは、それぞれリリーフ弁RV1を設けた管路がタンクOTへ分岐している。同様に、油圧ポンプOPとボトム側、ロッド側のチェック弁OCaとの間の管路からは、それぞれリリーフ弁RV2を設けた管路がタンクOTへ分岐している。
【0025】
これらのリリーフ弁RV1、RV2は、分岐元の管路に異常圧が生じた場合に過剰な作動油をタンクOTへ逃がすものである。
【0026】
更に、ロッド側、ボトム側のスローリターン弁SRとチェック弁OCaとの間の管路からは、非常用手動弁MVを設けた管路がタンクOTへ分岐しており、油圧ポンプOPが電源が得られず停止した場合などに、この非常用手動弁MVで、油圧アクチュエータOAのボトム側流体室OAa、ロッド側流体室OAbの管路をタンクOTへ解放して、油圧アクチュエータOAを手動操作できるようにしている。
【0027】
このような構成で、この油圧駆動ユニットOUは、その基本機能を良好に達成しながら、異常事態が発生した場合にも、それがユニットOUの破損に繋がらないようにして、安全性、信頼性、事故回避性を確保している。
【0028】
しかしながら、この油圧駆動ユニットOUをそのまま、上述の除雪ユニットの雪かきブレートの左右角度調整に用いようとすると、雪かきブレートの左右角度調整をして角度保持している雪かき状態(この時、油圧ポンプOPは停止している。)で、多量の雪や障害物のために急激で過大な外力Wが作用すると、リリーフ弁RV1は高圧過剰となる一方の油室の作動油をタンクTに戻すことができるが、その際に負圧となる他方の油室の不足する作動油をタンクTから取り入れることはできず、油圧アクチュエータ(シリンダ)OAに負圧が発生して、ピストン位置を保持できない不安定な状態となることがあるので、改善が望まれていた。
【0029】
つまり、雪かきブレードとしては、設定された左右角度保持(ユニットOUは作動していない。)状態で、過大外力Wによって角度が変動しても、不安定にならず、変動後の左右角度保持状態を続けることが要請されるが、そのような要請には、この油圧駆動ユニットOUのままでは対応することができなかった。
【0030】
この問題は、負荷あるいは角度(位置)保持中(油圧ポンプOP、つまり、油圧駆動ユニットOUの停止中)に、油圧駆動ユニットOUに定格仕様以上の外力が作用した後にも、油圧ポンプOPを作動させることなく、安定した位置保持機能を発揮し続けることが要求される用途にも対応可能な油圧駆動ユニットが要請されているという問題であった。
【0031】
また、この問題は、油圧を用いるものに限定されず、広く、流体圧機器に共通するものであった。
【特許文献1】米国特許第3706144号公報(図1、符号76、82、88、図2)
【特許文献2】特開2006−132604号公報(図11、段落[0004]〜[0021])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明は、上記問題を改善しようとするもので、雪かきブレードの左右角度調整用など、位置保持中の過大外力の回避後に対しても安定的に位置保持機能を発揮することができる流体圧駆動ユニット、及び、この流体圧駆動ユニットを用いた除雪ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の流体圧駆動ユニットは、独立して被駆動体に流体圧による駆動力を与える流体圧駆動ユニットであって、前記ユニットで用いられる作動流体を正逆双方向に圧送する流体圧ポンプと、この作動流体により作動する片ロッド複動シリンダと、この作動流体を貯留するタンクと、前記流体圧ポンプと前記片ロッド複動シリンダとの間に介在し該両者間の作動流体の正逆双方向の流れを制御する一対のオペレートチェック弁と、前記流体圧ポンプと前記タンクとの間に介在し該両者間の正逆双方向の作動流体の流れを制御する切換弁とを備え、
前記片ロッド複動シリンダのボトム側ポートと前記一対のオペレートチェック弁の前記ボトム側ポートに対応したボトム側オペレートチェック弁とを連結するボトム側管路から、前記片ロッド複動シリンダのロッド側ポートと前記一対のオペレートチェック弁の前記ロッド側ポートに対応したロッド側オペレートチェック弁とを連結するロッド側管路へ作動流体を逃がす第1過負荷リリーフ弁を設け、前記ロッド側管路から前記タンクへ作動流体を逃がす第2過負荷リリーフ弁を設け、前記ボトム側管路に前記タンクからの作動流体の流入を許容する負圧防止用チェック弁を設けたことを特徴とする。
【0034】
本発明の除雪ユニットは、車両の前方に着脱可能に装着される除雪ユニットであって、上記流体圧駆動ユニットの片ロッド復動シリンダを、前記除雪ユニットの雪かきブレードの垂直軸回りの角度調整に用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明の流体圧駆動ユニットによれば、前記片ロッド複動シリンダのボトム側ポートと前記一対のオペレートチェック弁の前記ボトム側ポートに対応したボトム側オペレートチェック弁とを連結するボトム側管路から、前記片ロッド複動シリンダのロッド側ポートと前記一対のオペレートチェック弁の前記ロッド側ポートに対応したロッド側オペレートチェック弁とを連結するロッド側管路へ作動流体を逃がす第1過負荷リリーフ弁を設け、前記ロッド側管路から前記タンクへ作動流体を逃がす第2過負荷リリーフ弁を設け、前記ボトム側管路に前記タンクからの作動流体の流入を許容する負圧防止用チェック弁を設けたので、位置保持中の過大外力の回避後に対しても安定的に位置保持機能を発揮することができる。
【0036】
つまり、本ユニットによれば、位置保持中(ユニット停止中)の縮み側の過大外力に対しては、ボトム側流体室の過剰作動流体のみが、第1過負荷リリーフ弁、第2過負荷リリーフ弁を介してタンクに戻される。
【0037】
一方、伸び側の過大外力に対しては、ロッド側流体室の過剰作動流体は、第2過負荷リリーフ弁を介してタンクに戻され、その際、ボトム側流体室に必要な作動流体は負圧防止用チェック弁を介してタンクから供給される。
【0038】
したがって、片ロッド複動シリンダのボトム側流体室、ロッド側流体室のいずれも、外力によってピストン位置が変動した後も、負圧になることなく作動流体が充填され、安定した位置保持機能を発揮し続けることができる。
【0039】
本発明の除雪ユニットは、車両の前方に着脱可能に装着される除雪ユニットであって、上記流体圧駆動ユニットの片ロッド復動シリンダを、前記除雪ユニットの雪かきブレードの垂直軸回りの角度調整に用いたので、上記流体圧駆動ユニットの効果が除雪ユニットとして発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、本発明の実施の形態(実施例)について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0041】
図1は、本発明の流体圧駆動ユニットの一例を示す流体圧回路図である。
【0042】
この流体圧駆動ユニット10は、車両の前方に着脱可能に装着される除雪ユニットの除雪ユニットの雪かきブレードの垂直軸回りの角度調整(左右角度調整)など、位置(角度)保持中に大きな衝撃的外力(過大外力)が作用する場合に用いることができるものである。
【0043】
この流体圧駆動ユニット10は、独立して、つまり作動油を閉鎖系で循環させながら、被駆動体W(雪かきブレード)に流体圧による駆動力を与えるため、正逆回転モータMにより作動流体を正逆双方向に圧送する流体圧ポンプ1と、この作動流体により作動し前記駆動力を発生させる片ロッド複動型シリンダ2、閉鎖空間内に作動流体を貯留するタンク3、流体圧ポンプ1と片ロッド複動型シリンダ2との間の作動流体の正逆双方向の流れを制御するオペレートチェック弁4、及び、流体圧ポンプ1とタンク3との間の正逆双方向の作動流体の流れを制御する切換弁5を基本構成要素として備えている。
【0044】
これらの油圧ポンプ1、油圧シリンダ2、タンク3、オペレートチェック弁4、切換弁5の基本的な機能、相互関係は、図4で説明した背景技術の油圧駆動ユニットOUを構成する油圧ポンプOP、油圧アクチュエータOA、タンクOT、オペレートチェック弁OC、切換弁OIと同じであるので、重複説明を省略する。
【0045】
なお、油圧シリンダ2の符号2aはボトム側流体室、符号2bはロッド側流体室である。また、この図では、背景技術の油圧駆動ユニットOUに設けられていたスローリターン弁SR、非常用手動弁MV及びリリーフ弁RV2が現れていないが、これらは必要に応じて設置されるものとする。
【0046】
また、ボトム側、ロッド側の用語については、背景技術の油圧駆動ユニットOUの場合と同様な使い方をする。
【0047】
これらの基本構成に加え、この流体圧駆動ユニット10は、上述の使用目的に適応するため、一対のオペレートチェック弁4のボトム側と片ロッド複動シリンダ2のボトム側流体室2a(ボトム側ポート)とを連結するボトム側管路10aから、一対のオペレートチェック弁4のロッド側とシリンダ2のロッド側流体室2bとを連結するロッド側管路10bへ作動流体を逃がす第1過負荷リリーフ弁6を設け、ロッド側管路10bからタンク3へ作動流体を逃がす第2過負荷リリーフ弁7を設けたことを特徴とする。
【0048】
また、この流体圧駆動ユニット10は、ボトム側管路10aにタンク3からの作動流体の流入を許容する負圧防止用チェック弁8を設けたことを特徴とする。これらの特徴点について、以下説明する。
【0049】
第1過負荷リリーフ弁6は、所定の圧力差が生じた場合、ボトム側管路10aからロッド側管路10bへの方向のみに作動流体を逃がすものである。
【0050】
したがって、片ロッド複動シリンダ2に縮み方向に過大外力(F1とする。)が作用した場合に、ボトム側管路10aの圧力がロッド側管路10bの圧力より大きくなるが、その差圧が所定の設定圧より大きくなった場合、作動流体は、この第1過負荷リリーフ弁6によりロッド側管路10bへ逃がされる。
【0051】
第2過負荷リリーフ弁7はロッド側管路10bからタンク3へ作動流体を逃がすものである。そこで、上記縮み方向の過大外力により第1過負荷リリーフ弁6からロッド側管路10bに流入した作動流体は、同じピストンの動きに対してボトム側流体室2aがロッド側流体室2bに比べロッドの分だけ断面積が大きいため過剰となり、そのため圧力が設定圧より大きくなれば、その過剰作動流体はリリーフ弁7によりタンク3へ逃がされる。
【0052】
この間、ボトム側管路10aは負圧となることがないので、負圧防止用チェック弁8を介して、タンク3から、ボトム側管路10aに作動流体が流入することはない。
【0053】
一方、片ロッド複動シリンダ2に伸び方向に過大外力(F2とする。)が作用した場合、ロッド側流体室2bから流出する作動流体は、設定圧より大きくなれば、第2過負荷リリーフ弁7を介して、タンク3へ逃がされる。
【0054】
この際、ボトム側流体室2aには、オペレートチェック弁4からも、第1過負荷リリーフ弁6からも作動流体は供給されないので、負圧になるが、その際には、負圧防止用チェック弁8を介して、タンク3から、ボトム側管路10aに作動流体が流入する。
【0055】
この際、ボトム側流体室2aがロッドの断面積分だけ断面積が大きい分ボトム側管路10aに過剰の作動流体が必要であるが、その過剰分も含めて、負圧防止用チェック弁8を介してタンク3からボトム側管路10aに作動流体が流入する。
【0056】
こうして、この第1過負荷リリーフ弁6、第2過負荷リリーフ弁7、及び、負圧防止用チェック弁8を設けた、この流体圧駆動ユニットによれば、雪かきブレードの左右角度調整用など位置保持中に過大外力を受ける場合も、片ロッド複動シリンダのボトム側流体室、ロッド側流体室のいずれも、外力によってピストン位置が変動した後も、負圧になることなく作動流体が充填され、安定した位置保持機能を発揮し続けることができる。
【0057】
また、リリーフ弁6をボトム側管路10aからロッド側管路10bへの作動流体を逃がすように設けたので、ロッド側管路10bは構造的に負圧になることがなく、負圧防止用チェック弁8は、ボトム側管路10aに一か所だけ設ければ足りるようになり、その点でコストダウンを図ることができる。
【0058】
また、この流体圧駆動ユニット10は、第1過負荷リリーフ弁6を第2過負荷リリーフ弁7に比べてより設定圧の大きいのものとしていることを特徴とする。
【0059】
このようにすると、片ロッド複動シリンダ2のボトム側流体室10aがロッド側流体室10bに比べロッドの断面積分だけ断面積が大きいという、このユニット10で用いる流体圧アクチュエータの特性に合わせて負荷保持力を分担させることができる。
【0060】
具体的には、例えば、ボトム側流体室2aの断面積(A1とする。):ロッド側流体室2bの断面積(A2とする。)=1.3:1の場合に、第1過負荷リリーフ弁6の設定圧(P1とする。):第2過負荷リリーフ弁7の設定圧(P2とする。)=1.5:1としている。
【0061】
このような関係としておくと、縮み方向の外力、伸び方向の外力のいずれに対しても好適に過負荷リリーフ機能が発揮される。
【0062】
ここで、より一般的には、F1:縮み方向の最大負荷保持荷重(外力)、F2=伸び方向の最大負荷保持荷重(外力)とすると、以下の関係式が成立する。
【0063】
P1=(F1+F2)/A1 P2=F2/A2
【実施例2】
【0064】
図2(a)は、図1の流体圧駆動ユニットを用いた除雪ユニットの一例を概念的に示す流体圧回路図、(b)は、図2(a)に比べ、上下位置調整用切換弁が上下位置調整用ポジションにある状態を示す要部図である。
【0065】
この除雪ユニット20は、車両WHの前方に着脱可能に装着されるようになっており、その雪かきブレード11の垂直軸回りの角度調整(左右角度調整)に図1の流体圧駆動ユニット10、より具体的には、この流体圧駆動ユニット10の片ロッド複動シリンダ2を用いたものである。
【0066】
加えて、この除雪ユニット20では、雪かきブレード11の上下位置調整も、流体圧駆動ユニット10で行うべく、そのボトム側管路10aの第1過負荷リリーフ弁6を設置した部分より片ロッド複動シリンダ2側に上下位置調整用切換弁12を設け、その一方の出力ポート12bを雪かきブレード11の上下位置調整に利用可能とした点を特徴とする。
【0067】
つまり、この除雪ユニット20は、切換弁12の入力ポート12cをボトム側管路10aの第1過負荷リリーフ弁6側に接続し、一方の出力ポート12aを雪かきブレード11の上下位置調整の昇降用片ロッド単動シリンダ13に接続し、他方の出力ポート12bをボトム側管路10aの片ロッド複動シリンダ2側に接続したものである。
【0068】
ここで、切換弁12を左右角度調整用ポジション(図2(a)の状態)とした場合、入力ポート12cと他方の出力ポート12bとが連通され、一方の出力ポート12aは切断される。切換弁を上下位置調整用ポジション(図2(b)の状態)とした場合、入力ポート12cと一方の出力ポート12aとが連通され、他方の出力ポート12bは切断される。
【0069】
また、この除雪ユニット20は、切換弁12の一方の出力ポート12aと雪かきブレード11の上下位置調整の昇降用片ロッド単動シリンダ13とを接続する管路に、戻り方向の流量だけを絞る絞り弁14を設けたものである。
【0070】
このような構成の除雪ユニット20によれば、切換弁12を左右角度調整の片ロッド複動シリンダ2側(左右角度調整用ポジション)にしておけば、上下位置調整側は作動流体の移動は停止されるので、雪かきブレード11の上下位置は保持されたままで、ポンプ1を正転あるいは逆転させることで、雪かきブレード11の左右角度調整を行うことができる。
【0071】
この状態で、雪かきブレード11の上下方向に過大外力が作用した場合、チェーン11aを介在させた上下位置調整用の昇降用片ロッド単動シリンダ13の支持リンク機構11bにより、この過大外力が逃がされ、シリンダ13への悪影響が回避される。
【0072】
一方、切換弁12を上下位置調整用の昇降用片ロッド単動シリンダ13側(上下位置調整用ポジション)にした状態では、左右角度調整側は作動流体の移動は停止されるので、雪かきブレード11の左右角度は保持されたままで、ポンプ1をボトム側管路10aに作動流体を供給するように正転させれば、雪かきブレード11を上昇させることができる。
【0073】
雪かきブレード11を下降させる場合には、ポンプ1をロッド側管路10bに作動流体を供給するように逆転させて、ボトム側のオペレートチェック弁4のパイロット圧を立てれば、雪かきブレード11の自重で作動流体は絞り弁14で絞られてタンク3にもどされ、雪かきブレード11は、所定速度で下降する。
【0074】
こうして、この除雪ユニット20において、切換弁12が左右角度調整の片ロッド複動シリンダ2側(左右角度調整用ポジション)となっている場合、流体圧駆動ユニット10側の第1過負荷リリーフ弁6、第2過負荷リリーフ弁7、及び、負圧防止用チェック弁8は、その機能を発揮するので、流体圧駆動ユニット10の上述の効果が、除雪ユニット20としても発揮され、雪かきブレード11の左右方向への過大外力の回避後に対しても、安定的な位置保持機能が発揮され、維持される。
【0075】
なお、上下位置調整用の切換弁12と絞り弁14とを、図2で説明したように、バルブハウジング内に積層構造として一体化することも可能であり、その場合には、これら切換弁12と絞り弁14を含んだものを流体圧駆動ユニット10Aと称してもよい。
【0076】
この場合、流体圧駆動ユニット10Aは、元の流体圧駆動ユニット10の作用効果に加え、切換弁12と絞り弁14とを加えたことによる作用効果を発揮する。
【0077】
なお、本発明の流体圧駆動ユニット及び除雪ユニットの技術的範囲は、上記の実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施例の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0078】
また、流体圧とは、油圧及び水圧など、流体を駆動力を媒介する媒体として用いるもの全般をさす意味である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の流体圧駆動ユニットは、雪かきブレードの左右角度調整用など過大の外力を受ける場合にも対応できることが要請される産業分野に、本発明の除雪ユニットは、電源を供給するだけで簡易に流体圧駆動力で除雪ユニットを作動させることが要請される産業分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の流体圧駆動ユニットの一例を示す流体圧回路図
【図2】(a)は、図1の流体圧駆動ユニットを用いた除雪ユニットの一例を概念的に示す流体圧回路図、(b)は、図2(a)に比べ、上下位置調整用切換弁が上下位置調整用ポジションにある状態を示す要部図
【図3】本発明の背景技術となる除雪ユニットの一例を示す油圧回路図
【図4】本発明の背景技術となる流体圧駆動ユニットの一例を示す油圧回路図
【符号の説明】
【0081】
1 流体圧ポンプ
2 片ロッド複動型シリンダ
3 タンク
4 オペレートチェック弁
5 切換弁
6 第1過負荷リリーフ弁
7 第2過負荷リリーフ弁
8 負圧防止用チェック弁
10、10A 流体圧駆動ユニット
10a 一方側管路
10b 他方側管路
11 雪かきブレード
12 上下位置調整用切換弁
12a 出力ポート
13 昇降用片ロッド単動シリンダ
20 除雪ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立して被駆動体に流体圧による駆動力を与える流体圧駆動ユニットであって、
前記ユニットで用いられる作動流体を正逆双方向に圧送する流体圧ポンプと、この作動流体により作動する片ロッド複動シリンダと、この作動流体を貯留するタンクと、前記流体圧ポンプと前記片ロッド複動シリンダとの間に介在し該両者間の作動流体の正逆双方向の流れを制御する一対のオペレートチェック弁と、前記流体圧ポンプと前記タンクとの間に介在し該両者間の正逆双方向の作動流体の流れを制御する切換弁とを備え、
前記片ロッド複動シリンダのボトム側ポートと前記一対のオペレートチェック弁の前記ボトム側ポートに対応したボトム側オペレートチェック弁とを連結するボトム側管路から、前記片ロッド複動シリンダのロッド側ポートと前記一対のオペレートチェック弁の前記ロッド側ポートに対応したロッド側オペレートチェック弁とを連結するロッド側管路へ作動流体を逃がす第1過負荷リリーフ弁を設け、前記ロッド側管路から前記タンクへ作動流体を逃がす第2過負荷リリーフ弁を設け、
前記ボトム側管路に前記タンクからの作動流体の流入を許容する負圧防止用チェック弁を設けたことを特徴とする流体圧駆動ユニット。
【請求項2】
第1過負荷リリーフ弁を第2過負荷リリーフ弁に比べてより設定圧の大きいものとしたことを特徴とする請求項1記載の流体圧駆動ユニット。
【請求項3】
車両の前方に着脱可能に装着される除雪ユニットであって、
請求項1または2記載の流体圧駆動ユニットの流体圧アクチュエータを、前記除雪ユニットの雪かきブレードの垂直軸回りの角度調整に用いたことを特徴とする除雪ユニット。
【請求項4】
ボトム側管路の第1過負荷リリーフ弁と片ロッド複動シリンダとの間に上下位置調整用切換弁を設け、この上下位置調整用切換弁の一方の出力ポートを雪かきブレードの上下位置調整に利用可能としたことを特徴とする請求項3記載の除雪ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−267575(P2008−267575A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114960(P2007−114960)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】