説明

流体式多段ジャッキ

【課題】1つの圧力室で多段的に高さを調節可能な流体式多段ジャッキを提供する。
【解決手段】シリンダ10又はピストン20のどちらか一方の摺動面に設けたカム溝50と、他方の摺動面に設けたカム溝50に係合する係合ピン14とを備え、カム溝50は、ジャッキの上昇時にシリンダ10とピストン20とを相対的に伸張及び回転させる上昇カム面60bと、所定高さに上昇後これを停止させるストッパ部60cと、この停止した状態から圧力室40の流体圧を減じたときに、シリンダ10とピストン20とを収縮させ、かつストッパ部60cを超えて相対回転させる下降カム面60dと、所定高さに保持する停止部60eとを備え、これらの上昇カム面60b、ストッパ部60c、下降カム面60d、停止部60eを複数組設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工部材の高さ位置を調節可能な流体式多段ジャッキに関する。
【背景技術】
【0002】
被加工部材を加工する際に、この被加工部材の高さ位置を段階的に調節可能な流体式多段ジャッキが知られている。この多段式流体ジャッキは、例えば、2段階に高さ位置が調節可能なジャッキの場合、2つのピストン部材と、これらのピストン部材の下側に、ピストン部材に流体圧を個々に作用させる2つの圧力室とを備え、これらの圧力室に流体を個々に供給することで、ジャッキの高さを段階的に調節するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭62−37604号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、複数のピストン部材を個々に動作させるためには、それぞれのピストン部材に対応する圧力室、流体供給口、及び摺動案内部が必要となるため、多段式流体ジャッキの内部構造が複雑になる。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、1つの圧力室で多段的に高さを調節することができる流体式多段ジャッキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、シリンダと、前記シリンダに摺動自在に設けたピストンとを備え、前記シリンダと前記ピストンとで形成する圧力室に流体を圧入して前記シリンダと前記ピストンを相対移動させる流体式多段ジャッキにおいて、前記シリンダ又は前記ピストンのどちらか一方の摺動面に設けたカム溝と、他方の摺動面に設けた前記カム溝に係合する係合ピンとを備え、前記カム溝は、ジャッキの上昇時に前記シリンダと前記ピストンとを相対的に伸張及び回転させる上昇カム面と、所定高さに上昇後これを停止させるストッパ部と、この停止した状態から前記圧力室の流体圧を減じたときに、前記シリンダと前記ピストンとを収縮させ、かつ前記ストッパ部を超えて相対回転させる下降カム面と、所定高さに保持する停止部とを備え、前記上昇カム面、ストッパ部、下降カム面、停止部を複数組設けたことを特徴とするとする。
この構成によれば、カム溝の形状に基づいてピストン又はシリンダのいずれかを移動させ、多段階にジャッキの高さを調節することができる。
【0006】
また、前記カム溝は、前記シリンダ又は前記ピストンの摺動面に、同一パターンを複数組設けると共に、前記摺動ピンを各パターン毎に設けることもできる。
この構成によれば、複数のカム溝にピンをそれぞれ係合させて、多段階にジャッキの高さを調節することができる。
【0007】
さらに、前記ピストンに前記カム溝を設けると共に、このピストンを基台上に回転自在に支持し、前記ピストン上に前記シリンダを組み付けて前記シリンダが上昇又は下降するようにしてもよい。
この構成によれば、ピストンを回転させることで、シリンダを回転させずに上昇又は下降させることができ、シリンダ側に荷重支持面を形成することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記シリンダ又は前記ピストンのどちらか一方の摺動面に設けたカム溝と、他方の摺動面に設けた前記カム溝に係合する係合ピンとを備え、前記カム溝は、ジャッキの上昇時に前記シリンダと前記ピストンとを相対的に伸張及び回転させる上昇カム面と、所定高さに上昇後これを停止させるストッパ部と、この停止した状態から前記圧力室の流体圧を減じたときに、前記シリンダと前記ピストンとを収縮させ、かつ前記ストッパ部を超えて相対回転させる下降カム面と、所定高さに保持する停止部とを備え、前記上昇カム面、ストッパ部、下降カム面、停止部を複数組設けているので、カム溝の形状に基づいて多段階にジャッキの高さを調節することができる。そのため、流体は、1つの圧力室にのみ圧入すればよく、圧力室を複数設ける必要がない。また、ピストン、ピストンの摺動案内部、流体供給口も1つだけ設ければよいことになる。その結果、複数の圧力室等を設ける場合と比べて、流体式多段ジャッキの内部構造をより簡単な構造にすることができる。
【0009】
また、前記カム溝は、前記シリンダ又は前記ピストンの摺動面に、同一パターンを複数組設けると共に、前記摺動ピンを各パターン毎に設けているので、複数カム溝にピンをそれぞれ係合させることにより、停止部において複数のピンで被加工部材の重量を均等に受けることができると共に、積載可能重量も大きくすることができる。また、ピストン又はシリンダの移動時においても、複数のピンで被加工部材の重量を受けることができる。
【0010】
さらに、前記ピストンに前記カム溝を設けると共に、このピストンを基台上に回転自在に支持し、前記ピストン上に前記シリンダを組み付けて前記シリンダが上昇又は下降するようにしているので、ピストンを回転させることで、シリンダを回転させずに上昇又は下降させることができ、シリンダ側に荷重支持面を形成することができる。また、ピンをシリンダ側に設けることになるため、ピンの着脱作業が容易になる。さらに、カム溝をピストン側に形成することになるので、カム溝をシリンダの内周面に形成する場合と比べて、カム溝の加工が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る流体式多段ジャッキについて、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る流体式多段ジャッキ1を正面側から見た断面図である。なお、以下の説明で使用する上下(高さ)方向は、図1を基準として見たときの方向とする。
【0012】
流体式多段ジャッキ1は、図1に示すように、上下に延びる中心軸線Xを中心軸として略円筒形状に形成されたシリンダ10と、このシリンダ10の内部に中心軸線Xの延在方向に沿って摺動自在に組み付けられた略円柱形状のピストン20と、このピストン20の下側に位置する台座部30とを備えている。この流体式多段ジャッキ1では、ピストン20に対してシリンダ10が伸張寸法Lだけ高さ方向に段階的に相対移動(図1に2点鎖線で示す)するようになっている。
【0013】
シリンダ10は、その上端部を構成する天井部11と、側部を形成する円筒状の外周壁部12とを備えている。また、シリンダ10の下側には、開口部17が形成されており、この開口部17からピストン20が挿入されるようになっている。
天井部11の上側には、略水平な平坦面11aが形成されており、この平坦面11aに図示しない被加工物が載置されるようになっている。また、天井部11の下側には、外周壁部12の内壁面12bの上端から略水平方向に延びる内側面11bを有している。
【0014】
外周壁部12には、天井部11の下側に形成された流体ポート13が形成されている。また、この外周壁部12には、ねじによって取り付けられる係合ピン14とを備えている。
流体ポート13は、外周壁部12の外壁面12aから内壁面12bまで貫通する貫通孔である。また、この流体ポート13には、外壁面12a側に接続コネクタ15(図1において2点差線で示す)が取り付けられており、この接続コネクタ15によって圧力流体を供給するための圧力源が流量調整弁等を介して接続されている。
【0015】
係合ピン14は、基端部にねじ加工がなされており、外周壁部12の雌ねじ部と螺合するようになっている。また、係合ピン14の先端部14aは、略円柱状に形成されており、この先端部14aが内壁面12bよりも内側に突出する態様で取り付けられる。また、外周壁部12には、この外周壁部12に被加工物等を固定可能なボルト16が取り付けられている。なお、このボルト16は、複数設けてあってもかまわない。
【0016】
ピストン20は、上面20aと、この上面の周縁部から下側に延びる外周面20bと、この外周面20bの下側にピストン20の直径よりも小さな直径に縮径された断付き軸部20cとを備えている。この断付き軸部20cは、台座部30の上側に形成された凹部30aの内部に、複数のベアリング31を介して取り付けられている。この複数のベアリング31は、断付き軸部20cの水平面に円周方向に連続して形成されたV溝20dと、凹部30aの底面に、V溝20dと同様に円周方向に連続して形成されたV溝30dとに挟持される態様で取り付けられている。これにより、台座部30に対してピストン20が回転自在に支持されている。
【0017】
ピストン20がシリンダ10内に取り付けられた状態では、ピストン20の上面20a、天井部11の内側面11b、シリンダ10の内壁面12bとで圧力室40が形成される。また、シリンダ10の外周壁部12に形成された流体ポート13は、図1に示すように、ピストン20をシリンダ10内に挿入し、この流体式多段ジャッキ1が最も収縮している状態(図1の実線で示す状態。L=0)で、ピストン20の上面20aの位置よりも上側に位置するように形成されている。
【0018】
外周面20bは、ピストン20がシリンダ10内に取り付けられた状態で、シリンダ10の内壁面12bと所定の隙間をあけて対向しており、シリンダ10とピストン20とが、中心軸線Xの延在方向に沿って相対的に移動可能になっている。
また、この外周面20bには、外周面20bからピストン20の中心に向かって凹ませたカム溝50が形成されている。このカム溝50は、外周面20bの周方向に上下に幾重にも屈曲しながら延在しており(カム溝50の詳細な形は後述する)、カム溝50の始端と終端とが繋げられた無端状に形成されている。このカム溝50の溝幅寸法は、シリンダ10に取り付けた係合ピン14の先端部14aの直径よりも若干大きく形成されており、このカム溝50の内部に係合ピン14の先端部14aが挿入されることになる。
【0019】
上述の構造によれば、流体ポート13から圧力室40に圧力流体を供給すると、圧力室40の圧力が増加し、シリンダ10の天井部11の内側面11bを上側に押圧してシリンダ10が上方へ移動するようになる。その際、係合ピン14がカム溝50に沿って案内されることにより、このカム溝50に沿ってシリンダ10が上昇することになる。また、ピストン20はベアリング31で支持されて回転自在であるため、係合ピン14がカム溝50に沿って案内される際に、係合ピン14に外周面20bの周方向へ移動させようとする力が作用しても、ピストン20が回転することによってこの力を吸収するようになり、係合ピン14は上下方向にのみ移動するようになる。
【0020】
図2は、ピストン20の外周面20bに形成された3段階に調整可能なカム溝50のパターンを示す概要図である。また、図3は、図2に示すカム溝を外周面20bの周方向に2つ設けた状態を示す概要図である。なお、図2及び図3に示すカム溝50は、外周面20bの曲面上に形成されたものであるが、図2及び図3では、この曲面を平面に展開したものとして示してある。
【0021】
カム溝50は、図2に示すように、第1調整部60、第2調整部70、第3調整部80及び下降部90を有している。また、このカム溝50は、図3に示すように、外周面20bの周方向に180度づつに2つ並べて配置されている。この図3において、0度に位置するカム溝50と360度に位置するカム溝50とは連続するものである。
【0022】
これらの第1調整部60、第2調整部70、第3調整部80及び下降部90は、それぞれ同じ溝形状を有しているので、以下、第1調整部60について説明する。
第1調整部60は、図2に示すように、上側案内部60aと、上昇カム面60bと、ストッパ部60cと、下降カム面60dと、停止部60eとを備えている。
【0023】
上側案内部60aは、係合ピン14を鉛直上側に案内するためのものである。圧力室40に圧力流体を供給しない状態(初期状態)では、係合ピン14は初期位置S(図2及び図3参照)に位置している。この状態から圧力流体を供給すると、係合ピン14が上側案内部60aによって案内されることにより、シリンダ10がピストン20に対して相対的に鉛直上側に上昇することになる。
【0024】
上昇カム面60bは、図2に示すように、上側案内部60aの上端から右斜め上側に向けて傾斜する傾斜面である。係合ピン14が上側案内部60aの上部まで案内された状態から、さらに圧力室40に圧力流体を供給すると、係合ピン14は上昇カム面60bと摺動するようになる。このとき、係合ピン14(シリンダ10)は、上昇カム面60bの傾斜面の長さを鉛直方向長さと水平方向長さに分けたときに、この鉛直方向長さ分だけピストン20に対して相対的に鉛直上側に上昇することになる。また、ピストン20は、水平方向長さ分だけシリンダ10に対して相対的に右方向に回転することになる。
【0025】
ストッパ部60cは、図2に示すように、上昇カム面60bの右上側端部に位置し、シリンダ10が所定の高さまで上昇した後に、係合ピン14がストッパ部60cに突き当たり、シリンダ10の上昇及びピストン20の回転を停止させるようになっている。この状態で、流体式多段ジャッキ1の作業者は、圧力流体の供給を停止させる。
【0026】
下降カム面60dは、図2に示すように、ストッパ部60cの下側に位置し、ストッパ部60cの鉛直下側の部分を含んで右斜め下側に傾斜する傾斜面である。圧力室40に圧力流体の供給を停止させた状態では、圧力室40内の圧力が低下し、シリンダ10が鉛直下側に下降することになる。そのとき、係合ピン14は、下降カム面60dの左上側の面と当接し、さらに下降カム面60dの面に沿って右斜め下側に向けて案内されることになる。この場合、係合ピン14(シリンダ10)は、下降カム面60dの傾斜面の長さを鉛直方向長さと水平方向長さに分けたときに、この鉛直方向長さ分だけピストン20に対して相対的に鉛直下側に下降することになる。また、ピストン20は、水平方向長さ分だけシリンダ10に対して相対的に右方向に回転することになる。
【0027】
停止部60eは、下降カム面60dの下側端部に位置し、シリンダ10が所定高さまで下降した後に、係合ピン14が停止部60eに突き当たり、シリンダ10の下降及びピストン20の回転を停止させるようになっている。この停止部60eの位置に係合ピン14が保持された状態では、圧力室40に圧力は作用しておらず、かつシリンダ10の平坦面11aに載置された被加工物の重量を、この停止部60eで支持していることになる。すなわち、被加工物を、図2に示す調整寸法L1だけ上側に上昇させたことになる。
【0028】
第2調整部70は、図2に示すように、第1調整部60と同様に、上側案内部70a、上昇カム面70b、ストッパ部70c、下降カム面70d、停止部70eを備えている。さらに、第3調整部80についても、図2に示すように、第1調整部60及び第2調整部70と同様に、上側案内部80a、上昇カム面80b、ストッパ部80c、下降カム面80d、停止部80eを備えている。
そして、流体式多段ジャッキ1の作業者が、第1調整部60によって流体式多段ジャッキ1の高さを調整したときと同じように圧力流体を供給することにより、第2調整部70によって被加工物をさらにもう1段(調整寸法L2。図2参照)分上げることができる。さらに、第3調整部80によって、被加工物をさらにもう1段(調整寸法L3。図2参照)分上げることもできる。
【0029】
下降部90は、第3調整部80の停止部80eの位置から、隣り合うカム溝50の第1調整部60の始点まで、係合ピン14を戻すためのものである。この下降部90によって流体式多段ジャッキ1を停止部90eの位置から初期位置Sに戻し、再度同じように高さを調整できるようになっている。
【0030】
本発明の実施の形態に係る流体式多段ジャッキによれば、カム溝50の形状に基づいて、シリンダ10を上下に昇降し、所定の高さ位置に段階的に保持することができるので、シリンダ10、ピストン20がそれぞれ1つだけでよい。また、シリンダ10とピストン20とで構成する圧力室40が1つだけでよい。そのため、流体式多段ジャッキ1の内部構造を簡単なものにすることができる。
【0031】
また、カム溝50は、流体式多段ジャッキ1の上昇時にシリンダ10とピストン20とを相対的に伸張及び回転させる上昇カム面60bと、所定高さに上昇後これを停止させるストッパ部60cと、この停止した状態から圧力室40の流体圧を減じたときに、シリンダ10とピストン20とを収縮させ、かつ、ストッパ部60cを超えて相対回転させる下降カム面60dと、所定高さに保持する停止部60eとで構成される一方、ピストン20がシリンダ10に対して相対的に回転するように構成されているので、シリンダ10を回転させずに上昇又は下降させることができ、シリンダ10側に平坦面11a(荷重支持面)を形成することができる。
【0032】
さらに、カム溝50に係合する係合ピン14をシリンダ10の外周壁部12に着脱自在に取り付けるようにしているので、作業者はシリンダ10の外部から係合ピン14を着脱することができるので、係合ピン14の着脱作業が容易になる。さらに、カム溝50をピストン20側に形成することになるので、カム溝50をシリンダ10の内周面12bに形成する場合と比べて、カム溝50の加工が容易になる。
【0033】
以上、本発明を実施するための最良の形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
本実施の形態では、流体式多段ジャッキ1の調整段数を3段としているが、第1〜第4調整部を設けることで調整段数を4段にすることもできる。同様に、2段、または5段以上にすることもできる。これにより、用途に合わせて調整段数を増やすことができる。この場合でも、圧力室40及びピストン20はそれぞれ1つだけでよく、流体式多段ジャッキ1の内部構造を複雑にすることがない。
【0034】
また、本実施の形態では、流体式多段ジャッキ1に使用する係合ピン14を1つで構成しているが、図3に示すように、隣り合うカム溝50を有している場合には、それぞれのカム溝50に挿入される係合ピン14を設けることもできる。この場合、係合ピン14が2つのカム溝50内で同じ位相となるように係合ピン14をそれぞれ挿入すればよい。これにより、重量の大きな被加工物をシリンダ10の平坦面11aに載置しても、停止部60e(70e,80e)で被加工物を支持する支持点が増加するので、流体式多段ジャッキ1の積載可能重量を大きくすることができる。
【0035】
さらに、本実施の形態では、カム溝50を周方向に2つ並べて配置したが、図4に示すように、上下方向に並べて配置することもできる。この場合にも、係合ピン14が2つのカム溝50内で同じ位相となるように係合ピン14をそれぞれ挿入すればよい。さらには、同じ形状のカム溝50であれば、上下又は左右に並べて配置されていなくても、斜めに位置していてもよい。これにより、さらに被加工物を支持する支持点を増やすことができるので、流体式多段ジャッキ1の積載可能重量を大きくすることができる。
【0036】
他方、本実施の形態では、カム溝50をピストン20に設け、係合ピン14をシリンダ10に設けているが、それぞれを逆に設けていてもよい。この構成であっても、ピストン20がシリンダ10に対して相対的に回転し、シリンダ10を回転させずに上昇又は下降させることができ、シリンダ10側に平坦面11a(荷重支持面)を形成することができる。また、シリンダ10、ピストン20がそれぞれ1つだけでよく、かつ、シリンダ10とピストン20とで構成する圧力室40が1つだけでよい。そのため、流体式多段ジャッキ1の内部構造を簡単なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る流体式多段ジャッキを正面から見た断面図である。
【図2】ピストンの外周面に形成されたカム溝のパターンを示す概要図である。
【図3】ピストンの周方向に形成されたカム溝を示す概要図である。
【図4】本発明の変形例であって、カム溝の組み合わせを示す概要図である。
【符号の説明】
【0038】
1 流体式多段ジャッキ
10 シリンダ
11 天井部
11a 平坦面
11b 内側面
12 外周壁部
12a 外壁面
12b 内壁面
13 流体ポート
14 係合ピン
14a 先端部
15 接続コネクタ
16 ボルト
17 開口部
20 ピストン
20a 上面
20b 外周面
20c 軸部
20d、30d V溝
30 台座部
30a 凹部
31 ベアリング
40 圧力室
50 カム溝
60 第1調整部
60a、70a、80a 上側案内部
60b、70b、80b 上昇カム面
60c、70c、80c ストッパ部
60d、70d、80d 下降カム面
60e、70e、80e 停止部
70 第2調整部
80 第3調整部
90 下降部
L 伸張寸法
L1、L2、L3 調整寸法
X 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、前記シリンダに摺動自在に設けたピストンとを備え、前記シリンダと前記ピストンとで形成する圧力室に流体を圧入して前記シリンダと前記ピストンを相対移動させる流体式多段ジャッキにおいて、
前記シリンダ又は前記ピストンのどちらか一方の摺動面に設けたカム溝と、他方の摺動面に設けた前記カム溝に係合する係合ピンとを備え、
前記カム溝は、ジャッキの上昇時に前記シリンダと前記ピストンとを相対的に伸張及び回転させる上昇カム面と、所定高さに上昇後これを停止させるストッパ部と、この停止した状態から前記圧力室の流体圧を減じたときに、前記シリンダと前記ピストンとを収縮させ、かつ前記ストッパ部を超えて相対回転させる下降カム面と、所定高さに保持する停止部とを備え、
前記上昇カム面、ストッパ部、下降カム面、停止部を複数組設けたことを特徴とする流体式多段ジャッキ。
【請求項2】
前記カム溝は、前記シリンダ又は前記ピストンの摺動面に、同一パターンを複数組設けると共に、前記摺動ピンを各パターン毎に設けたことを特徴とする請求項1に記載の流体式多段ジャッキ。
【請求項3】
前記ピストンに前記カム溝を設けると共に、このピストンを基台上に回転自在に支持し、前記ピストン上に前記シリンダを組み付けて前記シリンダが上昇又は下降するようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体式多段ジャッキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−232213(P2008−232213A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70461(P2007−70461)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】