説明

流体搬送用ホース

【課題】水深の深い海中でもフロートの取り付け作業を容易に行えるようにした流体搬送用ホースを提供する。
【解決手段】少なくともフロートカラー3に対応する領域のバッファ層9を、帯状の発泡材12と、その発泡材12の厚さの0.9〜1.0倍の厚さのリボン状の非発泡材13とを並列にホース軸方向に対してスパイラルに巻回するようにして構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体搬送用ホースに関し、更に詳しくは、マリンホースのような水中で使用される流体荷役用の大口径のホースにおいて、水深の深い場所で使用してもフロートの取り付けを容易に行えるようにした流体搬送用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
マリンホースに代表される流体荷役用の大口径のホースは、海中に沈めた状態で使用されることがあるため、高圧で送り出される流体に対する耐内圧性と共に、海中の水圧に対する耐外圧性とを備えると共に、流体がホース外部へ漏洩しないように厳重に防止する必要がある。そのため、この種の流体搬送用ホースは、流体に対する耐侵食性を有する内面ゴム層の外側に補強層として有機繊維コードからなる複数層のカーカス層を配置して耐圧強度を向上するようにしている。また、これらカーカス層には、外側のカーカス層が破壊したとき、その圧力が内側のカーカス層に及ぶことを緩和するために、カーカス層間に発泡材からなるバッファ層を設けるようにした構造になっている(例えば、特許文献1を参照)。また、図4に示すように、流体搬送用ホースのホース本体1の外周面には、ホース軸方向に所定の間隔をおいて環状に突出する複数のフロートカラー3が形成され、このフロートカラー3に、図5のようにフロート4を取り付けてホース各部の浮力を調整できるようにしている。
【0003】
ところが、このような流体搬送用ホースを水深が深い場所で使用すると、高圧の水圧により発泡材からなるバッファ層が圧縮変形するため、ホース本体1の表面にホース軸方向に延びるシワが発生する。このシワはフロートカラー3を変形させるため、海中でフロートカラー3にフロート4を取り付ける作業が著しく困難になるという問題があった。
【0004】
この対策としては、例えばバッファ層の発泡材の発泡密度を低くして圧縮強度を大きくすることが考えられる。しかし、発泡材の剛性が高くなるため、ホース製造時におけるバッファ層の施工性が悪化するという問題があった。
【特許文献1】特開2004−125125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水深の深い海中でもフロートの取り付け作業を容易に行えるようにした流体搬送用ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の流体搬送用ホースは、内面ゴム層とカバーゴム層との間に複数のカーカス層を配置すると共に、少なくとも2層のカーカス層の層間に発泡材からなるバッファ層を配置し、前記カバーゴム層の外周面にホース軸方向に間欠的に環状のフロートカラーを形成した流体搬送用ホースにおいて、少なくとも前記フロートカラーに対応する領域の前記バッファ層を、帯状の発泡材と、該発泡材の厚さの0.9〜1.0倍の厚さのリボン状の非発泡材とを並列にホース軸方向に対してスパイラルに巻回するように構成したことを特徴とするものである。
【0007】
発泡材としては、天然ゴムのスポンジを用いることが望ましい。
【0008】
また、リボン状の非発泡材の幅は、帯状の発泡材の幅の0.04〜0.25倍とすることが望ましい。
【0009】
本発明の流体搬送用ホースは、特に石油搬送用のマリンホースに好ましく用いられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流体搬送用ホースによれば、少なくとも外周面に形成されたフロートカラーに対応する領域のバッファ層を、帯状の発泡材と、その発泡材の厚さの0.9〜1.0倍の厚さのリボン状の非発泡材とを並列にホース軸方向に対してスパイラルに巻回するように構成したので、水深が深い場所での高水圧に対して、リボン状の非発泡材が帯状の発泡材の圧縮変形を抑制するように支えるため、ホース本体の外周面にシワを発生させずフロートカラーの変形を防止するので、海中でのフロートカラーに対するフロートの取り付け作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本願発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態からなる流体搬送用ホースの例を示す。
【0013】
この流体搬送用ホースは、ホース本体1の両端部にそれぞれ液密に接続金具2が取り付けられていると共に、外周面に軸方向に間欠的に複数のフロートカラー3が設けられている。フロートカラー3は、ホース本体1の外周面の一部を環状に突出するように形成されており、これらフロートカラー3に選択的にフロート4を取り付けることによりホース各部の浮力を調整できるようにしている。
【0014】
図2は、ホース本体1の一部拡大断面の例を示す。
【0015】
ホース本体1は、円筒状の内面ゴム層5の外周に第1内側カーカス層6、スパイラルワイヤ補強層7、第2内側カーカス層8、バッファ層9、外側カーカス層10及びカバーゴム層11を順に積層した構造を有している。
【0016】
内面ゴム層5はホース内を流れる流体への耐侵食性に優れた材質から構成されている。第1内側カーカス層6は、ホース軸方向にバイアスに配列した有機繊維コードからなる複数の層を、層間でコードが互いに交差するように積層することにより構成されており、それらの層の一部がホース本体1の端部でターンバックされて第2内側カーカス層8を形成している。これら内側カーカス層6、8は、ホース本体1に主として軸方向の強度と適度な可撓性を付与する。
【0017】
スパイラルワイヤ補強層7は、金属ワイヤを所定のピッチで第1カーカス層6の外周にスパイラル状に巻回することにより構成され、ホース本体1に主に周方向の強度を付与すると共に、ホース本体1が湾曲したときにキンクが発生するのを防止し、更に外圧によるホース本体1の潰れを防止する。
【0018】
外側カーカス層10は、内側カーカス層6、8と同様に、ホース軸方向にバイアスに配列した有機繊維コードからなる複数の層を、層間でコードが互いに交差するように積層することにより構成されている。
【0019】
バッファ層9は、後述するように発泡材12を主構成材として構成され、内側カーカス層6、8と外側カーカス層10との間に配置されることにより、内側カーカス層6、8が破損した場合でも、発泡材12が圧力を吸収緩和して外側カーカス層10に破損が伝搬しないようにするものである。
【0020】
このような流体搬送用ホースの構成において、本発明のホースは少なくともフロートカラー3に対応する領域のバッファ層9が、図3に示すように、帯状の発泡材12と、その発泡材12の厚さの0.9〜1.0倍の厚さのリボン状の非発泡材13とを並列に配列し、その並列な帯状の発泡材12とリボン状の非発泡材13とがホース軸方向に対してスパイラルに巻回することにより構成されている。好ましくは、ホース本体1の全長にわたって、帯状の発泡材12とリボン状の非発泡材13とのスパイラル構造にするとよい。非発泡材13の厚さが発泡材12の厚さの0.9倍未満だと、発泡材12の圧縮変形を支えることが困難になるため、ホース本体1の外周面にシワが発生してフロートカラー3が変形する。また、非発泡材13の厚さが1.0倍を超えると、ホース本体1の外周面が局所的に突出してシワが発生するため、同じくフロートカラー3が変形する。
【0021】
発泡材12の材質としては、気泡を含む可撓性の材料であれば特に限定されないが、望ましくは天然ゴムのスポンジを用いるのがよい。また、非発泡材13の材質は、可撓性の非発泡材であれば特に限定されないが、加硫ゴムや可撓性の樹脂などを用いることが好ましい。
【0022】
このように、流体搬送用ホースの少なくともフロートカラー3に対応する領域のバッファ層9を、帯状の発泡材12と、その発泡材12の厚さの0.9〜1.0倍の厚さのリボン状の非発泡材13とを並列にホース軸方向に対してスパイラルに巻回するように構成したことにより、水深が深い場所での高水圧に対して、リボン状の非発泡材13が帯状の発泡材12の圧縮変形を抑制するように支えるため、ホース本体1の外周面にシワを発生させずフロートカラー3の変形も防止するので、海中でのフロート4の取り付け作業を容易にすることができる。
【0023】
リボン状の非発泡材13の幅Xは、発泡剤12のバッファ機能を損なわない範囲で極端な圧縮変形を防止するものであればよく、帯状の発泡材12の幅Yの0.04〜0.25倍であることが望ましい。0.04倍未満だと発泡材12の幅方向の中央部が局所的に圧縮変形したり非発泡材13が座屈したりすることがあり、0.25倍を超えると発泡材12の量が少なくなってバッファ層9の機能が妨げられることがある。
【0024】
本発明の流体搬送用ホースは、用途を限定するものではないが、流体荷役用の大口径ホースとして好ましく適用され、特に沖合のタンカーから送られてくる石油を海中で搬送するようなマリンホースに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態からなる流体搬送用ホースの例を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態からなる流体搬送用ホースの一部断面図である。
【図3】バッファ層の構造を説明する説明図である。
【図4】マリンホースの例を示す側面図である。
【図5】フロートカラーへのフロートの取付方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ホース本体
2 接続金具
3 フロートカラー
4 フロート
5 内面ゴム層
6 第1内側カーカス層
7 スパイラルワイヤ補強層
8 第2内側カーカス層
9 バッファ層
10 外側カーカス層
11 カバーゴム層
12 帯状の発泡材
13 リボン状の非発泡材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面ゴム層とカバーゴム層との間に複数のカーカス層を配置すると共に、少なくとも2層のカーカス層の層間に発泡材からなるバッファ層を配置し、前記カバーゴム層の外周面にホース軸方向に間欠的に環状のフロートカラーを形成した流体搬送用ホースにおいて、
少なくとも前記フロートカラーに対応する領域の前記バッファ層を、帯状の発泡材と、該発泡材の厚さの0.9〜1.0倍の厚さのリボン状の非発泡材とを並列にホース軸方向に対してスパイラルに巻回するように構成した流体搬送用ホース。
【請求項2】
前記発泡材が天然ゴムのスポンジからなる請求項1に記載の流体搬送用ホース。
【請求項3】
前記リボン状の非発泡材の幅が、前記帯状の発泡材の幅の0.04〜0.25倍である請求項1又は2に記載の流体搬送用ホース。
【請求項4】
石油搬送用のマリンホースである請求項1〜3のいずれかに記載の流体搬送用ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−121618(P2009−121618A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297155(P2007−297155)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】