流体機械のシール構造体および流体機械
【課題】回転部と静止部との間のシール構造部における漏流によるキャビテーションの発生を抑制することができる流体機械のシール構造体および流体機械を提供する。
【解決手段】水車10のシール構造体30は、複数のランナ羽根13およびこれらのランナ羽根13の一方の端部に周方向に亘って設けられたランナバンド15を備える回転部とランナバンド15を囲うように設けられた固定部との間に、円環状の微小間隙からなるシール部31、およびシール部31の出口32から直角に屈曲して主流が流れる主流路に連通する円環状の間隙部33を構成する。また、シール部31の出口32に対向するシールライナ22の表面22a側には、周方向に亘って環状に溝40が形成されている。
【解決手段】水車10のシール構造体30は、複数のランナ羽根13およびこれらのランナ羽根13の一方の端部に周方向に亘って設けられたランナバンド15を備える回転部とランナバンド15を囲うように設けられた固定部との間に、円環状の微小間隙からなるシール部31、およびシール部31の出口32から直角に屈曲して主流が流れる主流路に連通する円環状の間隙部33を構成する。また、シール部31の出口32に対向するシールライナ22の表面22a側には、周方向に亘って環状に溝40が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械のシール構造体に係り、特に、例えば、フランシス形水車やフランシス形ポンプ水車などの流体機械のシール構造体およびこのシール構造体を備えた流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機械として、例えば、水車やポンプなどの機種が存在する。図16は、従来のフランシス水車300の一部を子午断面で示した図である。図17および図18は、従来のフランシス水車300におけるシール構造体の子午断面を示す図である。
【0003】
上池より鉄管を通って導入される圧力水は、ケーシング310とステーベーン311を通過し、流量調整が行われるガイドベーン312を通過してランナ305へ導かれる。ランナ305は、複数枚のランナ羽根313と、このランナ羽根313の周囲に設けられたランナバンド314と、ランナ羽根313をランナバンド314とともに挟むように設けられたクラウン315を備えている。そして、ランナ305では、導入された圧力水の圧力エネルギが回転エネルギへと変換され、ランナ305は、主軸316を回転軸として回転する。また、この主軸316は、図示しない発電機に連結され、主軸316の回転により発電機を回転させて発電する。そして、ランナ305を通過した水は、吸出し管317を通って下流の下池へと排出される。
【0004】
このような、フランシス水車300のような流体機械では、一般的に、回転部と静止部とを有するため、その間の隙間を作動流体が通り抜ける漏流が発生する。この漏流は、流体機械内で原動機とのエネルギ交換を行わないため、漏流の流量に応じて漏れ損失が生じる。そこで、この漏流を極力少なくするために、流体機械の入口および出口付近に極小隙間からなるシール構造が採用されている(例えば、特許文献1−3参照。)。
【0005】
図16に示した従来のフランシス水車300におけるシール構造として、図17に示すような単段のシール構造320aや、図18に示すような複数段のシール構造320bが採用されている。これらのシール構造320a、320bは、回転するランナバンド314との間に周方向に亘って所定の隙間を形成するように、ディスチャージリング318にシールライナ321を設けることで構成されている。
【0006】
例えば、図17に示す単段のシール構造320aでは、回転軸方向に平行な隙間322と、この隙間322に連通し、隙間322の出口から主流方向に対してほぼ直交する方向に屈曲した隙間323とからなる、断面においてL状の隙間が形成されている。
【0007】
また、図18に示す複数段のシール構造320bでは、図17に示す回転軸方向に平行な隙間322を階段状に構成した隙間324と、この隙間322に連通し、隙間322の出口から主流方向に対してほぼ直交する方向に屈曲した隙間325とからなる隙間が形成されている。
【0008】
上記したシール構造320a、320bを備えることで、漏流の低減を図ることはできるものの、漏流を完全に失くすことは困難である。また、ランナバンド314の下面314aとシールライナ321の上面321aとの隙間323、325を流れる漏流は、水車の入口と出口との間の大きい圧力差により、高速のジェットとなり、吸出し管317の上部に排出される。
【0009】
ここで、図19は、ランナバンド314の下面314aとシールライナ321の上面321aとの隙間323、325を流れる漏流の様子を説明するための模式図である。
【0010】
図19に示すように、回転軸方向に平行な隙間322、324から流出した高速の漏流330は、隙間325を構成するシールライナ321の上面321aに衝突して向きを変え、隙間323、325に沿って吸出し管317の上部に排出される。
【0011】
一方、ランナバンド314は、高速で回転しているため、このランナバンド314との摩擦によって引き起こされた流れ331が遠心力で外周側へ向かって流れる。すなわち、図19に示すように、隙間323、325では、ランナバンド314側の流れ331と、シールライナ321側の流れ330とが、反転した流動状態となる。
【0012】
また、ランナ305の出口付近は、流路全体で最も断面積が小さく、平均的に低圧となる。このランナ305の出口付近に連通する隙間323、325における圧力も低い状態となる。
【0013】
ここで、低圧の雰囲気下で高速流が物体表面を流れる場合、一般的に、表面の段差や傷等を起点にキャビテーションが発生することがある。すなわち、水車の運転状態によっては、漏流330のような高速流が、隙間323、325を構成するシールライナ321の上面の段差や傷332を通過する際に、図19に示すようなキャビテーション333を発生させることがある。
【0014】
発生したキャビテーション333は、そのままシールライナ321の上面321aに沿って流れるため、シールライナ321の下流側の上面321aでは、キャビテーション333による壊食が発生することがある。このようなキャビテーションによる壊食の発生により、機器の点検間隔を短くしたり、シールライナ321の交換時期を早めたりしなければならず、水力発電所の運用に大きな支障をきたす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭56−110567号公報
【特許文献2】特公昭58−40660号公報
【特許文献3】特開2004−308461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記した従来の、例えばフランシス水車におけるシール構造では、シール構造部の下流部において発生するキャビテーションにする効果的な対策はなされていなかった。また、従来のシール構造を採用する場合、キャビテーションによる壊食に対する対応として、シールライナの交換時期の早期化や壊食に対する材料強度の強化などがなされていた。そのため、従来のシール構造では、キャビテーションの発生を抑制するような対策は施されていなかった。
【0017】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、回転部と静止部との間のシール構造部における漏流によるキャビテーションの発生を抑制することができる流体機械のシール構造体および流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、複数の羽根およびこれらの羽根の一方の端部に周方向に亘って設けられた環状部材を備える回転部と前記環状部材を囲うように設けられた固定部との間に、円環状の微小間隙からなるシール部、および当該シール部の出口から屈曲して主流が流れる主流路に連通する円環状の間隙部を構成する、流体機械のシール構造体であって、前記シール部の出口に対向する前記固定部の表面側に、周方向に亘って環状に溝が形成されていることを特徴とする流体機械のシール構造体が提供される。
【0019】
さらに、本発明の一態様によれば、上記した流体機械のシール構造体を備えたことを特徴とする流体機械が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の流体機械のシール構造体および流体機械によれば、回転部と静止部との間のシール構造部における漏流によるキャビテーションの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のシール構造体を備えた水車の一部を子午断面で示した図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態のシール構造体の子午断面を示す図である。
【図3】図2に示したシール構造体における漏流の様子を説明するための、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の、他の形状の溝を備えるシール構造体の子午断面を示す図である。
【図5】図4に示したシール構造体における漏流の様子を説明するための、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図6】図2に示した溝に抵抗体を備えた場合の、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図7】図2に示した溝に板状部材を備えた場合の、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図8】図7のA−A断面を示す図である。
【図9】本発明に係る第2の実施の形態のシール構造体の子午断面を示す図である。
【図10】図9に示したシール構造体における漏流の様子を説明するための、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図11】本発明に係る第2の実施の形態の、他の形状の側壁溝を備えるシール構造体の子午断面を示す図である。
【図12】図11に示したシール構造体における漏流の様子を説明するための、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図13】本発明に係る第3の実施の形態のシール構造体の子午断面を示す図である。
【図14】連通路の構成を説明するための、図13のB−B断面を示す図である。
【図15】溝の底面から抽出した漏水を他の部分に導出する構成を備えた水車の一部を子午断面で示した図である。
【図16】従来のフランシス水車の一部を子午断面で示した図である。
【図17】従来のフランシス水車におけるシール構造体の子午断面を示す図である。
【図18】従来のフランシス水車におけるシール構造体の子午断面を示す図である。
【図19】ランナバンドの下面とシールライナの上面との隙間を流れる漏流の様子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る第1の実施の形態のシール構造体30を備えた水車10の一部を子午断面で示した図である。なお、ここでは、水車10としてフランシス形水車を例示して説明する。
【0024】
図1に示すように、水車10の主軸11の下端に、フランシス形のランナ12が連結されている。主軸11の頂部には、図示しない発電機が連結されている。ランナ12は、周方向に所定の間隔をあけて配置された複数のランナ羽根13と、これらのランナ羽根13を一方の側から固定するディスク形状のクラウン14と、ランナ羽根13を他方の側から固定する環状部材として機能するランナバンド15とを備えている。また、クラウン14は、主軸11と連結されている。
【0025】
ランナ12の外周には、ケーシング16が配設されており、このケーシング16の内周部には、複数のステーベーン17が周方向に設けられている。また、これらのステーベーン17とランナ12との間には、周方向に亘って複数のガイドベーン18が配列されている。
【0026】
また、ランナ12の上方にはカバー19が設けられ、ランナ12の下方にはディスチャージリング20が設けられている。さらに、ランナ12の下方には、ディスチャージリング20に接続された吸出し管21が配設されている。
【0027】
ここで、回転部を構成するランナ12のランナバンド15と、このランナバンド15を囲うように設けられたディスチャージリング20などの固定部との間にはシール構造が構成されている。
【0028】
次に、このシール構造を構成するシール構造体30について説明する。
【0029】
図2は、本発明に係る第1の実施の形態のシール構造体30の子午断面を示す図である。
【0030】
図2に示すように、回転部を構成するランナ12のランナバンド15と、このランナバンド15を囲うように、ディスチャージリング20の表面に設けられた、固定部であるシールライナ22との間には、円環状の微小間隙からなるシール部31、およびこのシール部31の出口32から直角に屈曲して主流が流れる主流路35に連通する円環状の間隙部33が構成されている。なお、ここでは、シール部31の出口32から直角に屈曲する円環状の間隙部33を示しているが、本発明では、この屈曲角(図2に示したシールライナ22においてL字状に表面が屈曲する部分の屈曲角)が60〜120度の範囲を含むものとする。ここで、屈曲角をこの範囲とするのは、シールライナ22の表面22aに沿う流れを形成する屈曲角であれば本発明の作用効果は得られるが、例えば、縦軸型のフランシス形水車の場合、分解および組立時にランナ12をシールライナ22の表面22a上に置くことがあり、上記した屈曲角の範囲外では、シールライナ22の表面22a上にランナ12を置き難くなり現実的ではないからである。
【0031】
また、図2に示すように、シール部31の出口32に対向するシールライナ22の表面22a側に、周方向に亘って環状に溝40が形成されている。この溝40は、シールライナ22の、主流路35側に屈曲する屈曲部34から主流路35側に向かって形成されている。
【0032】
この溝40の底面41は、図2に示すように、例えば、シール部31の出口32に対向する位置から主流路35側に向かって、溝40の深さが徐々に浅くなるような傾斜面で構成されることが好ましい。なお、ここでは、図2に示した断面において、溝40の形状が、溝40の最も深くなる部分を1つの頂点とした三角形状となる一例を示しているが、この形状に限られるものではない。例えば、図2に示した断面において、溝40の最も深くなる部分の形状を鋭角とせずに、曲面で形成してもよい。
【0033】
なお、溝40の形状は、間隙部33に噴出された高速の漏水LAの流出方向を、間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない方向に変更できる形状であればよい。そのため、溝40の底面41の少なくとも一部が、溝40の深さが主流路35側に向かって徐々に浅くなる傾斜面を有していればよい。
【0034】
ここで、水車10の中心軸(主軸11の中心軸)からの半径方向の、溝40の幅L1は、水車10の中心軸からの半径方向の、シール部31の出口32の幅L2の5倍以上であることが好ましい。溝40の幅L1が、シール部31の出口32の幅L2の5倍より狭い場合には、シール部31の出口32から流出した漏流が、溝40内に流入しないからである。
【0035】
また、図2に示すように、間隙部33のシールライナ22の表面22aと同一平面に対する溝40の底面41の傾斜角度θ1は、20〜90度であることが好ましい。ここで、傾斜角度θ1が20度よりも小さい場合には、キャビテーションを抑制する効果が小さく、傾斜角度θ1が90度よりも大きい場合には、溝40の開口部の面積が小さくなり、漏水LAの溝40内への導入を妨げるおそれがあるからである。
【0036】
次に、水車10およびシール構造体30における作動流体の動作について説明する。
【0037】
図3は、図2に示したシール構造体30における漏流の様子を説明するための、シール構造体30の子午断面を示す図である。
【0038】
上池より鉄管を通って導入される圧力水は、ケーシング16とステーベーン17を通過し、流量調整が行われるガイドベーン18を通過してランナ12へ導かれる。ランナ12では、導入された圧力水の圧力エネルギが回転エネルギへと変換され、ランナ12は、主軸11を回転軸として回転し、主軸11に連結された、図示しない発電機を回転させて発電する。そして、ランナ12を通過した水は、吸出し管21を通って下流の下池へと排出される。
【0039】
一方、ランナバンド15とディスチャージリング20との間に流入した漏水LAは、シール部31に流入し、シール部31の出口32から間隙部33に高速で噴出される。間隙部33に噴出された漏水LAは、図3に示すように、溝40内に流入し、溝40に沿って流れ、溝40よりも主流路35側の間隙部33に流出する。溝40から間隙部33に流出する漏水LAは、溝40によって流出方向が変更され、例えば、溝40の底面41の傾斜角度θ1を有して間隙部33の中央に流出する。そして、漏水LAは、間隙部33から主流路35に導出される。
【0040】
このように、溝40から間隙部33に流出する漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、例えば、前述した従来の漏水(図19参照)のように、高速の漏水LAが間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない。そのため、段差や傷等を有するシールライナ22の表面22aを高速の漏水LAが流れることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0041】
また、溝40に流入する前から漏水LAにキャビテーションが発生している場合においても、漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に速やかに向けることで、キャビテーションの多くがシールライナ22の表面22aから離れた位置で崩壊する。
【0042】
上記したように、第1の実施の形態のシール構造体30、これを備えた水車10によれば、シールライナ22に形成された溝40において、間隙部33に噴出された高速の漏水LAの流出方向を変更し、例えば、流出方向を間隙部33の中央に向けることで、キャビテーションの発生を抑制することができる。これによって、キャビテーションによる壊食を抑制することができる。
【0043】
ここで、溝40の形状は、上記した形状に限られるものではなく、上記したように、間隙部33に噴出された高速の漏水LAの流出方向を、間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない方向に変更できる形状であればよい。
【0044】
図4は、本発明に係る第1の実施の形態の、他の形状の溝50を備えるシール構造体30の子午断面を示す図である。図5は、図4に示したシール構造体30における漏流の様子を説明するための、シール構造体30の子午断面を示す図である。
【0045】
図4に示すように、溝50の底面51を、例えば、シール部31の出口32に対向する位置から主流路35側に向かって、溝50の深さが一定となるように構成してもよい。ここでは、図4に示す断面において、溝50の形状が長方形となる一例を示している。この溝50の形状が長方形となる場合が、前述した傾斜角度θ1が90度の場合である。
【0046】
なお、溝50の底面の少なくとも一部を、上記したように、溝50の深さが一定となるように構成すればよく、例えば、溝50の主流路35側の側面52が、前述した傾斜角度θ1の範囲(90度を除く)で構成されていてもよい。この場合には、図4に示す断面において、溝50の形状は矩形(台形)となる。
【0047】
ここで、水車10の中心軸(主軸11の中心軸)からの半径方向の、溝50の幅L3は、溝40の幅L1の場合と同様に、水車10の中心軸からの半径方向の、シール部31の出口32の幅L2の5倍以上であることが好ましい。溝50の幅L3が、シール部31の出口32の幅L2の5倍より狭い場合には、シール部31の出口32から流出した漏流が、溝50内に流入しないからである。
【0048】
ここで、図4に示す溝50の形状を有する場合のシール構造体30における漏流の様子を説明する。
【0049】
ランナバンド15とディスチャージリング20との間に流入した漏水LAは、シール部31に流入し、シール部31の出口32から間隙部33に高速で噴出される。間隙部33に噴出された漏水LAは、図5に示すように、溝50内に流入し、溝50に沿って流れ、溝50の主流路35側の側面52側から、間隙部33の中心方向に対してほぼ直交する方向に噴出される。
【0050】
このように、溝50から間隙部33に流出する漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、段差や傷等を有するシールライナ22の表面22aを高速の漏水LAが流れることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0051】
また、溝50に流入する前から漏水LAにキャビテーションが発生している場合においても、漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、キャビテーションの多くがシールライナ22の表面22aから離れた位置で崩壊する。
【0052】
さらに、溝50に流入した漏水LAは、溝50に沿って流れる際、図5に示すように、底面51や主流路35側の側面52と衝突をするため、圧力損失が増加し、漏水LAの流量が減少し、シール効果を向上させることができる。この漏れ損失の低減によって水車効率を向上させることができる。
【0053】
さらに、このシール効果を向上させるために、上記した溝40、50に、抵抗体60や板状部材70を備えてもよい。
【0054】
図6は、図2に示した溝40に抵抗体60を備えた場合の、シール構造体30の子午断面を示す図である。図7は、図2に示した溝40に板状部材70を備えた場合の、シール構造体30の子午断面を示す図である。図8は、図7のA−A断面を示す図である。
【0055】
図6に示すように、抵抗体60は、例えば溝40の開口面に垂直になるように、溝40の底面41に複数の細い棒状部材61を所定の間隔をあけてブラシ状に立設して構成される。この棒状部材61の先端は、漏水LAが溝40に流入するのを妨げない程度に、溝40の開口面が突出させることができるが、溝40の開口面と同一平面上とすることが好ましい。
【0056】
このように溝40に抵抗体60を備えることで、上記した溝40を備えることで得られる効果に加え、抵抗体60との摩擦損失などで溝40に流入した漏水LAの圧力損失が増加し、漏水LAの流量が減少することにより、シール効果を向上させることができる。この漏れ損失の低減によって水車効率を向上させることができる。
【0057】
なお、抵抗体60の構成は、上記した構成に限られるものではなく、溝40に漏水LAを流入させつつ、圧力損失を増加させる構成であればよい。
【0058】
図7および図8に示すように、溝40に、円周方向に沿って所定の間隔をあけて、溝40の幅方向(水車10の中心軸からの半径に向かう方向)に亘って立設された板状部材70を複数備えてもよい。この板状部材70の先端は、溝40の開口面と同一平面上とすることが好ましい。
【0059】
このように溝40に板状部材70を備えることで、上記した溝40を備えることで得られる効果に加え、溝40に流入した漏水LAが板状部材70と衝突し、乱れて拡散し、圧力損失が増加して、漏水LAの流量が減少することにより、シール効果を向上させることができる。この漏れ損失の低減によって水車効率を向上させることができる。
【0060】
(第2の実施の形態)
図9は、本発明に係る第2の実施の形態のシール構造体80の子午断面を示す図である。なお、第1の実施の形態のシール構造体30と同一の構成部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
【0061】
図9に示すように、第2の実施の形態のシール構造体80において、第1の実施の形態のシール構造体30と同様に、シール部31の出口32に対向するシールライナ22の表面22a側に、周方向に亘って環状に溝40が形成されている。さらに、第2の実施の形態のシール構造体80では、シール部31の出口32よりも下流側のシールライナ22の側壁22bに、周方向に亘って環状に側壁溝81が形成されている。
【0062】
側壁溝81のシール部31の出口32側の端面81aは、シール部31の出口32の開口面と同一平面上に位置している。また、シールライナ22の側壁22bに沿う方向の、側壁溝81の幅M1は、シール部31の出口32から溝40の最大深さ位置までの距離と等しくなるように構成されている。
【0063】
また、側壁溝81の深さM2は、水車10の中心軸(主軸11の中心軸)からの半径方向の、シール部31の出口32の幅L2の1倍以上であることが好ましい。側壁溝81の深さM2が、シール部31の出口32の幅L2の1倍より浅い場合には、シール部31の出口32から流出した漏流を側壁溝81の側面81b側へ広げる効果が小さいからである。
【0064】
また、水車10の中心軸からの半径方向の、溝40の幅L1は、水車10の中心軸からの半径方向の、シール部31の出口32の幅L2の4倍以上であることが好ましい。溝40の幅L1が、シール部31の出口32の幅L2の4倍より短い場合には、シール部31の出口32から流出した漏流が、溝40内に流入し難くなるからである。すなわち、溝40の幅L1と側壁溝81の深さM2を加算した長さは、シール部31の出口32の幅L2の5倍以上となる。
【0065】
次に、シール構造体80における作動流体の動作について説明する。
【0066】
図10は、図9に示したシール構造体80における漏流の様子を説明するための、シール構造体80の子午断面を示す図である。
【0067】
ランナバンド15とディスチャージリング20との間に流入した漏水LAは、シール部31に流入し、シール部31の出口32から間隙部33に高速で噴出される。間隙部33に噴出された漏水LAは、ランナバンド15の摩擦により周方向に加速されるため、図10に示すように、遠心力によって側壁溝81の側面81b側へ広がりながら溝40内に流入する。溝40内に流入した漏水LAは、溝40に沿って流れ、溝40よりも主流路35側の間隙部33に流出する。溝40から間隙部33に流出する漏水LAは、溝40によって流出方向が変えられ、例えば、溝40の底面41の傾斜角度θ1を有して間隙部33の中央に流出する。そして、漏水LAは、間隙部33から主流路35に導出される。なお、傾斜角度θ1は、第1の実施の形態のシール構造体30で説明した角度である。
【0068】
このように、溝40から間隙部33に流出する漏水LAの流出方向を変更し、例えば、流出方向を間隙部33の中央に向けることで、前述した従来の漏水(図19参照)のように、高速の漏水LAが間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない。そのため、段差や傷等を有するシールライナ22の表面22aを高速の漏水LAが流れることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0069】
また、溝40に流入する前から漏水LAにキャビテーションが発生している場合においても、漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に速やかに向けることで、キャビテーションの多くがシールライナ22の表面22aから離れた位置で崩壊する。
【0070】
さらに、シールライナ22の側壁22bに側壁溝81を設けることで、シール部31の出口32から流出した漏流は、流路の急拡大による圧力損失が発生する。そのため、漏水LAの流量が減少し、シール効果を向上させることができる。この漏れ損失の低減によって水車効率を向上させることができる。
【0071】
また、例えば、縦軸型のフランシス形水車の場合、分解および組立時にランナ12をシールライナ22の表面22a上に置くことがある。そのため、溝40が形成されていない部分の、水車10の中心軸からの半径方向の、シールライナ22の表面22aの幅L4が狭すぎると強度不足になる。そこで、シールライナ22の表面22aの幅L4は、所定の幅に規定されている。一方、溝40の幅L1を狭くしすぎると、シール部31の出口32から流出した漏水LAが、溝40内に流入しない。そこで、上記したように、シール部31の出口32よりも下流側のシールライナ22の側壁22bに側壁溝81を設けることで、幅L4の所定の幅を確保しつつ、シール部31の出口32から流出した漏水LAを溝40内に確実に流入させることができる。
【0072】
ここで、シールライナ22の側壁22bに形成される側壁溝81は、上記した構成に限られるものではない。
【0073】
図11は、本発明に係る第2の実施の形態の、他の形状の側壁溝82を備えるシール構造体80の子午断面を示す図である。図12は、図11に示したシール構造体80における漏流の様子を説明するための、シール構造体80の子午断面を示す図である。
【0074】
図11に示すように、側壁溝82は、シール部31の出口32から徐々に外周側に広がる、周方向に亘る環状の傾斜壁で構成されてもよい。
【0075】
この場合には、水車10の中心軸からの半径方向の、側壁溝82の溝40側の端面82aの幅L5は、水車10の中心軸からの半径方向の、シール部31の出口32の幅L2の1倍以上であることが好ましい。側壁溝82の溝40側の端面82aの幅L5が、シール部31の出口32の幅L2の1倍よりも狭い場合には、上記した場合と同様に、幅L4の所定の幅を確保しつつ、シール部31の出口32から流出した漏水LAを溝40内に確実に流入させることが困難となるからである。
【0076】
この側壁溝82を備えるシール構造体80において、図12に示すように、ランナバンド15とディスチャージリング20との間に流入した漏水LAは、シール部31に流入し、シール部31の出口32から間隙部33に高速で噴出される。間隙部33に噴出された漏水LAは、剥離せずに、側壁溝82の傾斜側面82bに沿って流れながら溝40内に流入する。溝40内に流入した漏水LAは、溝40に沿って流れ、溝40よりも主流路35側の間隙部33に流出する。溝40から間隙部33に流出する漏水LAは、溝40によって流出方向が変えられ、間隙部33の中央に流出する。そして、漏水LAは、間隙部33から主流路35に導出される。
【0077】
このように、溝40から間隙部33に流出する漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、高速の漏水LAが間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない。そのため、段差や傷等を有するシールライナ22の表面22aを高速の漏水LAが流れることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0078】
また、溝40に流入する前から漏水LAにキャビテーションが発生している場合においても、漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、キャビテーションの多くがシールライナ22の表面22aから離れた位置で崩壊する。
【0079】
さらに、側壁溝82の側面を傾斜側面82bとすることで、漏水LAは、剥離せずに傾斜側面82bに沿って流れ、減速され、圧力損失が発生する。そのため、漏水LAの流量が減少し、シール効果を向上させることができる。この漏れ損失の低減によって水車効率を向上させることができる。
【0080】
なお、ここでは、溝40を備えたシール構造体80について説明したが、第1の実施の形態のシール構造体30で説明した溝50を備える場合にも、第2の実施の形態の構成を適用することができる。この場合にも、上記した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
さらに、第2の実施の形態のシール構造体80に、第1の実施の形態のシール構造体30で説明した抵抗体60や板状部材70を備えてもよい。この場合においても、抵抗体60や板状部材70を備えた第1の実施の形態のシール構造体30の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0082】
(第3の実施の形態)
図13は、本発明に係る第3の実施の形態のシール構造体90の子午断面を示す図である。図14は、連通路91の構成を説明するための、図13のB−B断面を示す図である。なお、第1の実施の形態のシール構造体30と同一の構成部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
【0083】
図13に示すように、第3の実施の形態のシール構造体90において、第1の実施の形態のシール構造体30と同様に、シール部31の出口32に対向するシールライナ22の表面22a側に、周方向に亘って環状に溝40が形成されている。さらに、第3の実施の形態のシール構造体90では、溝40の底面41と主流路35とを連通させる連通路91が形成されている。なお、連通路91は、周方向に亘って均等に複数設けられている。
【0084】
この連通路91の中心軸に垂直な断面形状は、例えば、円形、楕円形または長円形とすることができる。また、特に、円形の円の直径と、楕円形の短径または長円の円の直径とが等しい場合において、連通路91の流路断面積を増加する観点から、連通路91の断面形状を楕円形または長円形とすることが好ましい。連通路91の断面形状を楕円形または長円形とすることで、連通路91の流路断面積が増加し、連通路91を介して主流路35側に導出される漏水LAの流量を増加させることができる。
【0085】
また、連通路91の入口開口91aは、溝40の底面41のいずれの位置に形成されてもよいが、特に、連通路91を介して主流路35側に導出される漏水LAの流量を増加させる観点から、シール部31の出口32に対向する位置に形成されることが好ましい。このように、連通路91の入口開口91aをシール部31の出口32に対向する位置に形成した場合、シール部31の出口32から噴出された漏水Lは、連通路91の入口開口91aおよびその近傍の底面41に衝突するため、連通路91の入口開口91aにおいて静圧が高まる。そのため、連通路91の入口開口91aと出口開口91bとの間の圧力差を大きくすることができ、連通路91を介して主流路35側に導出される漏水LAの流量を増加させることができる。
【0086】
また、連通路91は、図14に示すように、回転部の回転方向(図14の矢印方向)に沿うように傾けて形成されることが好ましい。具体的には、連通路91が主流路35に連通する出口開口91bにおける連通路91の中心軸Oと、出口開口91bにおける主流路35の内周壁面に対する接線Pとを、主軸11の回転軸に垂直な平面に投影した際の、中心軸Oと接線Pとのなす角θ2を90度未満とすることが好ましい。このように、中心軸Oと接線Pとのなす角θ2を90度未満とすることで、ランナ12から流出する主流の主流路35の壁面近傍の流れに、回転部の回転方向の旋回流れを付与することができる。この旋回成分によってもたらされる遠心力によって、主流路35の壁面からの流れの剥離を抑制することができる。そのため、吸出し管21の壁面における流れの剥離を抑制することができるので、水力効率を向上させることができる。
【0087】
この連通路91を備えるシール構造体90において、ランナバンド15とディスチャージリング20との間に流入した漏水LAは、シール部31に流入し、シール部31の出口32から間隙部33に高速で噴出される。間隙部33に噴出された漏水LAの一部は、溝40内に流入し、溝40に沿って流れ、溝40よりも主流路35側の間隙部33に流出する。溝40から間隙部33に流出する漏水LAは、溝40によって流出方向が変えられ、間隙部33の中央に流出する。そして、漏水LAの一部は、間隙部33から主流路35に導出される。
【0088】
一方、間隙部33に噴出された漏水LAの残りは、連通路91を介して主流路35に、回転部の回転方向に旋回する方向に導出される。
【0089】
このように、溝40から間隙部33に流出する漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、高速の漏水LAが間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない。そのため、段差や傷等を有するシールライナ22の表面22aを高速の漏水LAが流れることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0090】
また、溝40に流入する前から漏水LAにキャビテーションが発生している場合においても、漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、キャビテーションの多くがシールライナ22の表面22aから離れた位置で崩壊する。
【0091】
さらに、連通路91を備えることで、キャビテーションの発生源となる漏水LAの一部を連通路91を介して主流路35に導出することができるので、キャビテーションの発生を抑制することができる。
【0092】
また、漏水LAの一部を連通路91を介して主流路35に、回転部の回転方向に旋回する方向に導出することができるので、主流路35の壁面からの流れの剥離を抑制することができ、水力効率を向上させることができる。
【0093】
ここで、溝40の底面41から抽出した漏水LAを上記した以外の部分に導出することもできる。図15は、溝40の底面41から抽出した漏水LAを他の部分に導出する構成を備えた水車10の一部を子午断面で示した図である。
【0094】
図15に示すように、溝40の底面41と、主流路35が屈曲する吸出し管21のエルボ21aの内径側の出口とを連通させる連通配管100を備えてもよい。この構成において、溝40の底面41から抽出した漏水LAは、連通配管100を介して、吸出し管21のエルボ21aの内径側の出口位置における主流路35に導出される。なお、連通配管100は、周方向に亘って溝40の底面41に複数設けられることが好ましい。
【0095】
このように連通配管100を備えることで、キャビテーションの発生源となる漏水LAの一部を連通配管100を介して主流路35に導出することができるので、キャビテーションの発生を抑制することができる。
【0096】
また、漏水LAを間隙部33から主流路35に導出する際、漏水LAが、主流路35の壁面付近の主流の流れを乱して、吸出し管21における流れの剥離を助長することがある。しかしながら、連通配管100を備えることで、漏水LAの一部が、連通配管100を介して吸出し管21のエルボ21aで構成される位置の主流路35に導出されるので、間隙部33からの漏水LAの噴出速度が低下する。そのため、間隙部33から噴出される漏水LAによって生じる主流の乱れを抑制することができる。
【0097】
また、曲がり流路であるエルボ21aの内径側の出口位置における主流路35では、流れの剥離が生じ、低圧状態になるため、溝40からエルボ21aの内径側の出口位置における主流路35に効率よく漏水LAを導くことができる。
【0098】
なお、ここでは、溝40を備えたシール構造体90について説明したが、第1の実施の形態のシール構造体30で説明した溝50を備える場合にも、第3の実施の形態の構成を適用することができる。この場合にも、上記した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0099】
また、第3の実施の形態のシール構造体90に、第1の実施の形態のシール構造体30で説明した抵抗体60や板状部材70を備えてもよい。この場合においても、抵抗体60や板状部材70を備えた第1の実施の形態のシール構造体30の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0100】
さらに、第3の実施の形態のシール構造体90に、第2の実施の形態のシール構造体80で説明した側壁溝81、82の構成を備えてもよい。この場合においても、側壁溝81、82を備えた第2の実施の形態のシール構造体80の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0101】
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0102】
10…水車、11…主軸、12…ランナ、13…ランナ羽根、14…クラウン、15…ランナバンド、16…ケーシング、17…ステーベーン、18…ガイドベーン、19…カバー、20…ディスチャージリング、21…吸出し管、21a…エルボ、22…シールライナ、22a…表面、22b…側壁、30,80,90…シール構造体、31…シール部、32…出口、33…間隙部、34…屈曲部、35…主流路、40,50…溝、41,51…底面、52,81b…側面、60…抵抗体、61…棒状部材、70…板状部材、81,82…側壁溝、81a,82a…端面、82b…傾斜側面、91…連通路、91a…入口開口、91b…出口開口、100…連通配管。
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械のシール構造体に係り、特に、例えば、フランシス形水車やフランシス形ポンプ水車などの流体機械のシール構造体およびこのシール構造体を備えた流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
流体機械として、例えば、水車やポンプなどの機種が存在する。図16は、従来のフランシス水車300の一部を子午断面で示した図である。図17および図18は、従来のフランシス水車300におけるシール構造体の子午断面を示す図である。
【0003】
上池より鉄管を通って導入される圧力水は、ケーシング310とステーベーン311を通過し、流量調整が行われるガイドベーン312を通過してランナ305へ導かれる。ランナ305は、複数枚のランナ羽根313と、このランナ羽根313の周囲に設けられたランナバンド314と、ランナ羽根313をランナバンド314とともに挟むように設けられたクラウン315を備えている。そして、ランナ305では、導入された圧力水の圧力エネルギが回転エネルギへと変換され、ランナ305は、主軸316を回転軸として回転する。また、この主軸316は、図示しない発電機に連結され、主軸316の回転により発電機を回転させて発電する。そして、ランナ305を通過した水は、吸出し管317を通って下流の下池へと排出される。
【0004】
このような、フランシス水車300のような流体機械では、一般的に、回転部と静止部とを有するため、その間の隙間を作動流体が通り抜ける漏流が発生する。この漏流は、流体機械内で原動機とのエネルギ交換を行わないため、漏流の流量に応じて漏れ損失が生じる。そこで、この漏流を極力少なくするために、流体機械の入口および出口付近に極小隙間からなるシール構造が採用されている(例えば、特許文献1−3参照。)。
【0005】
図16に示した従来のフランシス水車300におけるシール構造として、図17に示すような単段のシール構造320aや、図18に示すような複数段のシール構造320bが採用されている。これらのシール構造320a、320bは、回転するランナバンド314との間に周方向に亘って所定の隙間を形成するように、ディスチャージリング318にシールライナ321を設けることで構成されている。
【0006】
例えば、図17に示す単段のシール構造320aでは、回転軸方向に平行な隙間322と、この隙間322に連通し、隙間322の出口から主流方向に対してほぼ直交する方向に屈曲した隙間323とからなる、断面においてL状の隙間が形成されている。
【0007】
また、図18に示す複数段のシール構造320bでは、図17に示す回転軸方向に平行な隙間322を階段状に構成した隙間324と、この隙間322に連通し、隙間322の出口から主流方向に対してほぼ直交する方向に屈曲した隙間325とからなる隙間が形成されている。
【0008】
上記したシール構造320a、320bを備えることで、漏流の低減を図ることはできるものの、漏流を完全に失くすことは困難である。また、ランナバンド314の下面314aとシールライナ321の上面321aとの隙間323、325を流れる漏流は、水車の入口と出口との間の大きい圧力差により、高速のジェットとなり、吸出し管317の上部に排出される。
【0009】
ここで、図19は、ランナバンド314の下面314aとシールライナ321の上面321aとの隙間323、325を流れる漏流の様子を説明するための模式図である。
【0010】
図19に示すように、回転軸方向に平行な隙間322、324から流出した高速の漏流330は、隙間325を構成するシールライナ321の上面321aに衝突して向きを変え、隙間323、325に沿って吸出し管317の上部に排出される。
【0011】
一方、ランナバンド314は、高速で回転しているため、このランナバンド314との摩擦によって引き起こされた流れ331が遠心力で外周側へ向かって流れる。すなわち、図19に示すように、隙間323、325では、ランナバンド314側の流れ331と、シールライナ321側の流れ330とが、反転した流動状態となる。
【0012】
また、ランナ305の出口付近は、流路全体で最も断面積が小さく、平均的に低圧となる。このランナ305の出口付近に連通する隙間323、325における圧力も低い状態となる。
【0013】
ここで、低圧の雰囲気下で高速流が物体表面を流れる場合、一般的に、表面の段差や傷等を起点にキャビテーションが発生することがある。すなわち、水車の運転状態によっては、漏流330のような高速流が、隙間323、325を構成するシールライナ321の上面の段差や傷332を通過する際に、図19に示すようなキャビテーション333を発生させることがある。
【0014】
発生したキャビテーション333は、そのままシールライナ321の上面321aに沿って流れるため、シールライナ321の下流側の上面321aでは、キャビテーション333による壊食が発生することがある。このようなキャビテーションによる壊食の発生により、機器の点検間隔を短くしたり、シールライナ321の交換時期を早めたりしなければならず、水力発電所の運用に大きな支障をきたす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開昭56−110567号公報
【特許文献2】特公昭58−40660号公報
【特許文献3】特開2004−308461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記した従来の、例えばフランシス水車におけるシール構造では、シール構造部の下流部において発生するキャビテーションにする効果的な対策はなされていなかった。また、従来のシール構造を採用する場合、キャビテーションによる壊食に対する対応として、シールライナの交換時期の早期化や壊食に対する材料強度の強化などがなされていた。そのため、従来のシール構造では、キャビテーションの発生を抑制するような対策は施されていなかった。
【0017】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、回転部と静止部との間のシール構造部における漏流によるキャビテーションの発生を抑制することができる流体機械のシール構造体および流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、複数の羽根およびこれらの羽根の一方の端部に周方向に亘って設けられた環状部材を備える回転部と前記環状部材を囲うように設けられた固定部との間に、円環状の微小間隙からなるシール部、および当該シール部の出口から屈曲して主流が流れる主流路に連通する円環状の間隙部を構成する、流体機械のシール構造体であって、前記シール部の出口に対向する前記固定部の表面側に、周方向に亘って環状に溝が形成されていることを特徴とする流体機械のシール構造体が提供される。
【0019】
さらに、本発明の一態様によれば、上記した流体機械のシール構造体を備えたことを特徴とする流体機械が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の流体機械のシール構造体および流体機械によれば、回転部と静止部との間のシール構造部における漏流によるキャビテーションの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のシール構造体を備えた水車の一部を子午断面で示した図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態のシール構造体の子午断面を示す図である。
【図3】図2に示したシール構造体における漏流の様子を説明するための、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の、他の形状の溝を備えるシール構造体の子午断面を示す図である。
【図5】図4に示したシール構造体における漏流の様子を説明するための、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図6】図2に示した溝に抵抗体を備えた場合の、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図7】図2に示した溝に板状部材を備えた場合の、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図8】図7のA−A断面を示す図である。
【図9】本発明に係る第2の実施の形態のシール構造体の子午断面を示す図である。
【図10】図9に示したシール構造体における漏流の様子を説明するための、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図11】本発明に係る第2の実施の形態の、他の形状の側壁溝を備えるシール構造体の子午断面を示す図である。
【図12】図11に示したシール構造体における漏流の様子を説明するための、シール構造体の子午断面を示す図である。
【図13】本発明に係る第3の実施の形態のシール構造体の子午断面を示す図である。
【図14】連通路の構成を説明するための、図13のB−B断面を示す図である。
【図15】溝の底面から抽出した漏水を他の部分に導出する構成を備えた水車の一部を子午断面で示した図である。
【図16】従来のフランシス水車の一部を子午断面で示した図である。
【図17】従来のフランシス水車におけるシール構造体の子午断面を示す図である。
【図18】従来のフランシス水車におけるシール構造体の子午断面を示す図である。
【図19】ランナバンドの下面とシールライナの上面との隙間を流れる漏流の様子を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明に係る第1の実施の形態のシール構造体30を備えた水車10の一部を子午断面で示した図である。なお、ここでは、水車10としてフランシス形水車を例示して説明する。
【0024】
図1に示すように、水車10の主軸11の下端に、フランシス形のランナ12が連結されている。主軸11の頂部には、図示しない発電機が連結されている。ランナ12は、周方向に所定の間隔をあけて配置された複数のランナ羽根13と、これらのランナ羽根13を一方の側から固定するディスク形状のクラウン14と、ランナ羽根13を他方の側から固定する環状部材として機能するランナバンド15とを備えている。また、クラウン14は、主軸11と連結されている。
【0025】
ランナ12の外周には、ケーシング16が配設されており、このケーシング16の内周部には、複数のステーベーン17が周方向に設けられている。また、これらのステーベーン17とランナ12との間には、周方向に亘って複数のガイドベーン18が配列されている。
【0026】
また、ランナ12の上方にはカバー19が設けられ、ランナ12の下方にはディスチャージリング20が設けられている。さらに、ランナ12の下方には、ディスチャージリング20に接続された吸出し管21が配設されている。
【0027】
ここで、回転部を構成するランナ12のランナバンド15と、このランナバンド15を囲うように設けられたディスチャージリング20などの固定部との間にはシール構造が構成されている。
【0028】
次に、このシール構造を構成するシール構造体30について説明する。
【0029】
図2は、本発明に係る第1の実施の形態のシール構造体30の子午断面を示す図である。
【0030】
図2に示すように、回転部を構成するランナ12のランナバンド15と、このランナバンド15を囲うように、ディスチャージリング20の表面に設けられた、固定部であるシールライナ22との間には、円環状の微小間隙からなるシール部31、およびこのシール部31の出口32から直角に屈曲して主流が流れる主流路35に連通する円環状の間隙部33が構成されている。なお、ここでは、シール部31の出口32から直角に屈曲する円環状の間隙部33を示しているが、本発明では、この屈曲角(図2に示したシールライナ22においてL字状に表面が屈曲する部分の屈曲角)が60〜120度の範囲を含むものとする。ここで、屈曲角をこの範囲とするのは、シールライナ22の表面22aに沿う流れを形成する屈曲角であれば本発明の作用効果は得られるが、例えば、縦軸型のフランシス形水車の場合、分解および組立時にランナ12をシールライナ22の表面22a上に置くことがあり、上記した屈曲角の範囲外では、シールライナ22の表面22a上にランナ12を置き難くなり現実的ではないからである。
【0031】
また、図2に示すように、シール部31の出口32に対向するシールライナ22の表面22a側に、周方向に亘って環状に溝40が形成されている。この溝40は、シールライナ22の、主流路35側に屈曲する屈曲部34から主流路35側に向かって形成されている。
【0032】
この溝40の底面41は、図2に示すように、例えば、シール部31の出口32に対向する位置から主流路35側に向かって、溝40の深さが徐々に浅くなるような傾斜面で構成されることが好ましい。なお、ここでは、図2に示した断面において、溝40の形状が、溝40の最も深くなる部分を1つの頂点とした三角形状となる一例を示しているが、この形状に限られるものではない。例えば、図2に示した断面において、溝40の最も深くなる部分の形状を鋭角とせずに、曲面で形成してもよい。
【0033】
なお、溝40の形状は、間隙部33に噴出された高速の漏水LAの流出方向を、間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない方向に変更できる形状であればよい。そのため、溝40の底面41の少なくとも一部が、溝40の深さが主流路35側に向かって徐々に浅くなる傾斜面を有していればよい。
【0034】
ここで、水車10の中心軸(主軸11の中心軸)からの半径方向の、溝40の幅L1は、水車10の中心軸からの半径方向の、シール部31の出口32の幅L2の5倍以上であることが好ましい。溝40の幅L1が、シール部31の出口32の幅L2の5倍より狭い場合には、シール部31の出口32から流出した漏流が、溝40内に流入しないからである。
【0035】
また、図2に示すように、間隙部33のシールライナ22の表面22aと同一平面に対する溝40の底面41の傾斜角度θ1は、20〜90度であることが好ましい。ここで、傾斜角度θ1が20度よりも小さい場合には、キャビテーションを抑制する効果が小さく、傾斜角度θ1が90度よりも大きい場合には、溝40の開口部の面積が小さくなり、漏水LAの溝40内への導入を妨げるおそれがあるからである。
【0036】
次に、水車10およびシール構造体30における作動流体の動作について説明する。
【0037】
図3は、図2に示したシール構造体30における漏流の様子を説明するための、シール構造体30の子午断面を示す図である。
【0038】
上池より鉄管を通って導入される圧力水は、ケーシング16とステーベーン17を通過し、流量調整が行われるガイドベーン18を通過してランナ12へ導かれる。ランナ12では、導入された圧力水の圧力エネルギが回転エネルギへと変換され、ランナ12は、主軸11を回転軸として回転し、主軸11に連結された、図示しない発電機を回転させて発電する。そして、ランナ12を通過した水は、吸出し管21を通って下流の下池へと排出される。
【0039】
一方、ランナバンド15とディスチャージリング20との間に流入した漏水LAは、シール部31に流入し、シール部31の出口32から間隙部33に高速で噴出される。間隙部33に噴出された漏水LAは、図3に示すように、溝40内に流入し、溝40に沿って流れ、溝40よりも主流路35側の間隙部33に流出する。溝40から間隙部33に流出する漏水LAは、溝40によって流出方向が変更され、例えば、溝40の底面41の傾斜角度θ1を有して間隙部33の中央に流出する。そして、漏水LAは、間隙部33から主流路35に導出される。
【0040】
このように、溝40から間隙部33に流出する漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、例えば、前述した従来の漏水(図19参照)のように、高速の漏水LAが間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない。そのため、段差や傷等を有するシールライナ22の表面22aを高速の漏水LAが流れることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0041】
また、溝40に流入する前から漏水LAにキャビテーションが発生している場合においても、漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に速やかに向けることで、キャビテーションの多くがシールライナ22の表面22aから離れた位置で崩壊する。
【0042】
上記したように、第1の実施の形態のシール構造体30、これを備えた水車10によれば、シールライナ22に形成された溝40において、間隙部33に噴出された高速の漏水LAの流出方向を変更し、例えば、流出方向を間隙部33の中央に向けることで、キャビテーションの発生を抑制することができる。これによって、キャビテーションによる壊食を抑制することができる。
【0043】
ここで、溝40の形状は、上記した形状に限られるものではなく、上記したように、間隙部33に噴出された高速の漏水LAの流出方向を、間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない方向に変更できる形状であればよい。
【0044】
図4は、本発明に係る第1の実施の形態の、他の形状の溝50を備えるシール構造体30の子午断面を示す図である。図5は、図4に示したシール構造体30における漏流の様子を説明するための、シール構造体30の子午断面を示す図である。
【0045】
図4に示すように、溝50の底面51を、例えば、シール部31の出口32に対向する位置から主流路35側に向かって、溝50の深さが一定となるように構成してもよい。ここでは、図4に示す断面において、溝50の形状が長方形となる一例を示している。この溝50の形状が長方形となる場合が、前述した傾斜角度θ1が90度の場合である。
【0046】
なお、溝50の底面の少なくとも一部を、上記したように、溝50の深さが一定となるように構成すればよく、例えば、溝50の主流路35側の側面52が、前述した傾斜角度θ1の範囲(90度を除く)で構成されていてもよい。この場合には、図4に示す断面において、溝50の形状は矩形(台形)となる。
【0047】
ここで、水車10の中心軸(主軸11の中心軸)からの半径方向の、溝50の幅L3は、溝40の幅L1の場合と同様に、水車10の中心軸からの半径方向の、シール部31の出口32の幅L2の5倍以上であることが好ましい。溝50の幅L3が、シール部31の出口32の幅L2の5倍より狭い場合には、シール部31の出口32から流出した漏流が、溝50内に流入しないからである。
【0048】
ここで、図4に示す溝50の形状を有する場合のシール構造体30における漏流の様子を説明する。
【0049】
ランナバンド15とディスチャージリング20との間に流入した漏水LAは、シール部31に流入し、シール部31の出口32から間隙部33に高速で噴出される。間隙部33に噴出された漏水LAは、図5に示すように、溝50内に流入し、溝50に沿って流れ、溝50の主流路35側の側面52側から、間隙部33の中心方向に対してほぼ直交する方向に噴出される。
【0050】
このように、溝50から間隙部33に流出する漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、段差や傷等を有するシールライナ22の表面22aを高速の漏水LAが流れることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0051】
また、溝50に流入する前から漏水LAにキャビテーションが発生している場合においても、漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、キャビテーションの多くがシールライナ22の表面22aから離れた位置で崩壊する。
【0052】
さらに、溝50に流入した漏水LAは、溝50に沿って流れる際、図5に示すように、底面51や主流路35側の側面52と衝突をするため、圧力損失が増加し、漏水LAの流量が減少し、シール効果を向上させることができる。この漏れ損失の低減によって水車効率を向上させることができる。
【0053】
さらに、このシール効果を向上させるために、上記した溝40、50に、抵抗体60や板状部材70を備えてもよい。
【0054】
図6は、図2に示した溝40に抵抗体60を備えた場合の、シール構造体30の子午断面を示す図である。図7は、図2に示した溝40に板状部材70を備えた場合の、シール構造体30の子午断面を示す図である。図8は、図7のA−A断面を示す図である。
【0055】
図6に示すように、抵抗体60は、例えば溝40の開口面に垂直になるように、溝40の底面41に複数の細い棒状部材61を所定の間隔をあけてブラシ状に立設して構成される。この棒状部材61の先端は、漏水LAが溝40に流入するのを妨げない程度に、溝40の開口面が突出させることができるが、溝40の開口面と同一平面上とすることが好ましい。
【0056】
このように溝40に抵抗体60を備えることで、上記した溝40を備えることで得られる効果に加え、抵抗体60との摩擦損失などで溝40に流入した漏水LAの圧力損失が増加し、漏水LAの流量が減少することにより、シール効果を向上させることができる。この漏れ損失の低減によって水車効率を向上させることができる。
【0057】
なお、抵抗体60の構成は、上記した構成に限られるものではなく、溝40に漏水LAを流入させつつ、圧力損失を増加させる構成であればよい。
【0058】
図7および図8に示すように、溝40に、円周方向に沿って所定の間隔をあけて、溝40の幅方向(水車10の中心軸からの半径に向かう方向)に亘って立設された板状部材70を複数備えてもよい。この板状部材70の先端は、溝40の開口面と同一平面上とすることが好ましい。
【0059】
このように溝40に板状部材70を備えることで、上記した溝40を備えることで得られる効果に加え、溝40に流入した漏水LAが板状部材70と衝突し、乱れて拡散し、圧力損失が増加して、漏水LAの流量が減少することにより、シール効果を向上させることができる。この漏れ損失の低減によって水車効率を向上させることができる。
【0060】
(第2の実施の形態)
図9は、本発明に係る第2の実施の形態のシール構造体80の子午断面を示す図である。なお、第1の実施の形態のシール構造体30と同一の構成部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
【0061】
図9に示すように、第2の実施の形態のシール構造体80において、第1の実施の形態のシール構造体30と同様に、シール部31の出口32に対向するシールライナ22の表面22a側に、周方向に亘って環状に溝40が形成されている。さらに、第2の実施の形態のシール構造体80では、シール部31の出口32よりも下流側のシールライナ22の側壁22bに、周方向に亘って環状に側壁溝81が形成されている。
【0062】
側壁溝81のシール部31の出口32側の端面81aは、シール部31の出口32の開口面と同一平面上に位置している。また、シールライナ22の側壁22bに沿う方向の、側壁溝81の幅M1は、シール部31の出口32から溝40の最大深さ位置までの距離と等しくなるように構成されている。
【0063】
また、側壁溝81の深さM2は、水車10の中心軸(主軸11の中心軸)からの半径方向の、シール部31の出口32の幅L2の1倍以上であることが好ましい。側壁溝81の深さM2が、シール部31の出口32の幅L2の1倍より浅い場合には、シール部31の出口32から流出した漏流を側壁溝81の側面81b側へ広げる効果が小さいからである。
【0064】
また、水車10の中心軸からの半径方向の、溝40の幅L1は、水車10の中心軸からの半径方向の、シール部31の出口32の幅L2の4倍以上であることが好ましい。溝40の幅L1が、シール部31の出口32の幅L2の4倍より短い場合には、シール部31の出口32から流出した漏流が、溝40内に流入し難くなるからである。すなわち、溝40の幅L1と側壁溝81の深さM2を加算した長さは、シール部31の出口32の幅L2の5倍以上となる。
【0065】
次に、シール構造体80における作動流体の動作について説明する。
【0066】
図10は、図9に示したシール構造体80における漏流の様子を説明するための、シール構造体80の子午断面を示す図である。
【0067】
ランナバンド15とディスチャージリング20との間に流入した漏水LAは、シール部31に流入し、シール部31の出口32から間隙部33に高速で噴出される。間隙部33に噴出された漏水LAは、ランナバンド15の摩擦により周方向に加速されるため、図10に示すように、遠心力によって側壁溝81の側面81b側へ広がりながら溝40内に流入する。溝40内に流入した漏水LAは、溝40に沿って流れ、溝40よりも主流路35側の間隙部33に流出する。溝40から間隙部33に流出する漏水LAは、溝40によって流出方向が変えられ、例えば、溝40の底面41の傾斜角度θ1を有して間隙部33の中央に流出する。そして、漏水LAは、間隙部33から主流路35に導出される。なお、傾斜角度θ1は、第1の実施の形態のシール構造体30で説明した角度である。
【0068】
このように、溝40から間隙部33に流出する漏水LAの流出方向を変更し、例えば、流出方向を間隙部33の中央に向けることで、前述した従来の漏水(図19参照)のように、高速の漏水LAが間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない。そのため、段差や傷等を有するシールライナ22の表面22aを高速の漏水LAが流れることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0069】
また、溝40に流入する前から漏水LAにキャビテーションが発生している場合においても、漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に速やかに向けることで、キャビテーションの多くがシールライナ22の表面22aから離れた位置で崩壊する。
【0070】
さらに、シールライナ22の側壁22bに側壁溝81を設けることで、シール部31の出口32から流出した漏流は、流路の急拡大による圧力損失が発生する。そのため、漏水LAの流量が減少し、シール効果を向上させることができる。この漏れ損失の低減によって水車効率を向上させることができる。
【0071】
また、例えば、縦軸型のフランシス形水車の場合、分解および組立時にランナ12をシールライナ22の表面22a上に置くことがある。そのため、溝40が形成されていない部分の、水車10の中心軸からの半径方向の、シールライナ22の表面22aの幅L4が狭すぎると強度不足になる。そこで、シールライナ22の表面22aの幅L4は、所定の幅に規定されている。一方、溝40の幅L1を狭くしすぎると、シール部31の出口32から流出した漏水LAが、溝40内に流入しない。そこで、上記したように、シール部31の出口32よりも下流側のシールライナ22の側壁22bに側壁溝81を設けることで、幅L4の所定の幅を確保しつつ、シール部31の出口32から流出した漏水LAを溝40内に確実に流入させることができる。
【0072】
ここで、シールライナ22の側壁22bに形成される側壁溝81は、上記した構成に限られるものではない。
【0073】
図11は、本発明に係る第2の実施の形態の、他の形状の側壁溝82を備えるシール構造体80の子午断面を示す図である。図12は、図11に示したシール構造体80における漏流の様子を説明するための、シール構造体80の子午断面を示す図である。
【0074】
図11に示すように、側壁溝82は、シール部31の出口32から徐々に外周側に広がる、周方向に亘る環状の傾斜壁で構成されてもよい。
【0075】
この場合には、水車10の中心軸からの半径方向の、側壁溝82の溝40側の端面82aの幅L5は、水車10の中心軸からの半径方向の、シール部31の出口32の幅L2の1倍以上であることが好ましい。側壁溝82の溝40側の端面82aの幅L5が、シール部31の出口32の幅L2の1倍よりも狭い場合には、上記した場合と同様に、幅L4の所定の幅を確保しつつ、シール部31の出口32から流出した漏水LAを溝40内に確実に流入させることが困難となるからである。
【0076】
この側壁溝82を備えるシール構造体80において、図12に示すように、ランナバンド15とディスチャージリング20との間に流入した漏水LAは、シール部31に流入し、シール部31の出口32から間隙部33に高速で噴出される。間隙部33に噴出された漏水LAは、剥離せずに、側壁溝82の傾斜側面82bに沿って流れながら溝40内に流入する。溝40内に流入した漏水LAは、溝40に沿って流れ、溝40よりも主流路35側の間隙部33に流出する。溝40から間隙部33に流出する漏水LAは、溝40によって流出方向が変えられ、間隙部33の中央に流出する。そして、漏水LAは、間隙部33から主流路35に導出される。
【0077】
このように、溝40から間隙部33に流出する漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、高速の漏水LAが間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない。そのため、段差や傷等を有するシールライナ22の表面22aを高速の漏水LAが流れることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0078】
また、溝40に流入する前から漏水LAにキャビテーションが発生している場合においても、漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、キャビテーションの多くがシールライナ22の表面22aから離れた位置で崩壊する。
【0079】
さらに、側壁溝82の側面を傾斜側面82bとすることで、漏水LAは、剥離せずに傾斜側面82bに沿って流れ、減速され、圧力損失が発生する。そのため、漏水LAの流量が減少し、シール効果を向上させることができる。この漏れ損失の低減によって水車効率を向上させることができる。
【0080】
なお、ここでは、溝40を備えたシール構造体80について説明したが、第1の実施の形態のシール構造体30で説明した溝50を備える場合にも、第2の実施の形態の構成を適用することができる。この場合にも、上記した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
さらに、第2の実施の形態のシール構造体80に、第1の実施の形態のシール構造体30で説明した抵抗体60や板状部材70を備えてもよい。この場合においても、抵抗体60や板状部材70を備えた第1の実施の形態のシール構造体30の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0082】
(第3の実施の形態)
図13は、本発明に係る第3の実施の形態のシール構造体90の子午断面を示す図である。図14は、連通路91の構成を説明するための、図13のB−B断面を示す図である。なお、第1の実施の形態のシール構造体30と同一の構成部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
【0083】
図13に示すように、第3の実施の形態のシール構造体90において、第1の実施の形態のシール構造体30と同様に、シール部31の出口32に対向するシールライナ22の表面22a側に、周方向に亘って環状に溝40が形成されている。さらに、第3の実施の形態のシール構造体90では、溝40の底面41と主流路35とを連通させる連通路91が形成されている。なお、連通路91は、周方向に亘って均等に複数設けられている。
【0084】
この連通路91の中心軸に垂直な断面形状は、例えば、円形、楕円形または長円形とすることができる。また、特に、円形の円の直径と、楕円形の短径または長円の円の直径とが等しい場合において、連通路91の流路断面積を増加する観点から、連通路91の断面形状を楕円形または長円形とすることが好ましい。連通路91の断面形状を楕円形または長円形とすることで、連通路91の流路断面積が増加し、連通路91を介して主流路35側に導出される漏水LAの流量を増加させることができる。
【0085】
また、連通路91の入口開口91aは、溝40の底面41のいずれの位置に形成されてもよいが、特に、連通路91を介して主流路35側に導出される漏水LAの流量を増加させる観点から、シール部31の出口32に対向する位置に形成されることが好ましい。このように、連通路91の入口開口91aをシール部31の出口32に対向する位置に形成した場合、シール部31の出口32から噴出された漏水Lは、連通路91の入口開口91aおよびその近傍の底面41に衝突するため、連通路91の入口開口91aにおいて静圧が高まる。そのため、連通路91の入口開口91aと出口開口91bとの間の圧力差を大きくすることができ、連通路91を介して主流路35側に導出される漏水LAの流量を増加させることができる。
【0086】
また、連通路91は、図14に示すように、回転部の回転方向(図14の矢印方向)に沿うように傾けて形成されることが好ましい。具体的には、連通路91が主流路35に連通する出口開口91bにおける連通路91の中心軸Oと、出口開口91bにおける主流路35の内周壁面に対する接線Pとを、主軸11の回転軸に垂直な平面に投影した際の、中心軸Oと接線Pとのなす角θ2を90度未満とすることが好ましい。このように、中心軸Oと接線Pとのなす角θ2を90度未満とすることで、ランナ12から流出する主流の主流路35の壁面近傍の流れに、回転部の回転方向の旋回流れを付与することができる。この旋回成分によってもたらされる遠心力によって、主流路35の壁面からの流れの剥離を抑制することができる。そのため、吸出し管21の壁面における流れの剥離を抑制することができるので、水力効率を向上させることができる。
【0087】
この連通路91を備えるシール構造体90において、ランナバンド15とディスチャージリング20との間に流入した漏水LAは、シール部31に流入し、シール部31の出口32から間隙部33に高速で噴出される。間隙部33に噴出された漏水LAの一部は、溝40内に流入し、溝40に沿って流れ、溝40よりも主流路35側の間隙部33に流出する。溝40から間隙部33に流出する漏水LAは、溝40によって流出方向が変えられ、間隙部33の中央に流出する。そして、漏水LAの一部は、間隙部33から主流路35に導出される。
【0088】
一方、間隙部33に噴出された漏水LAの残りは、連通路91を介して主流路35に、回転部の回転方向に旋回する方向に導出される。
【0089】
このように、溝40から間隙部33に流出する漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、高速の漏水LAが間隙部33を構成するシールライナ22の表面22aに沿って流れない。そのため、段差や傷等を有するシールライナ22の表面22aを高速の漏水LAが流れることによって発生するキャビテーションを抑制することができる。
【0090】
また、溝40に流入する前から漏水LAにキャビテーションが発生している場合においても、漏水LAの流出方向を間隙部33の中央に向けることで、キャビテーションの多くがシールライナ22の表面22aから離れた位置で崩壊する。
【0091】
さらに、連通路91を備えることで、キャビテーションの発生源となる漏水LAの一部を連通路91を介して主流路35に導出することができるので、キャビテーションの発生を抑制することができる。
【0092】
また、漏水LAの一部を連通路91を介して主流路35に、回転部の回転方向に旋回する方向に導出することができるので、主流路35の壁面からの流れの剥離を抑制することができ、水力効率を向上させることができる。
【0093】
ここで、溝40の底面41から抽出した漏水LAを上記した以外の部分に導出することもできる。図15は、溝40の底面41から抽出した漏水LAを他の部分に導出する構成を備えた水車10の一部を子午断面で示した図である。
【0094】
図15に示すように、溝40の底面41と、主流路35が屈曲する吸出し管21のエルボ21aの内径側の出口とを連通させる連通配管100を備えてもよい。この構成において、溝40の底面41から抽出した漏水LAは、連通配管100を介して、吸出し管21のエルボ21aの内径側の出口位置における主流路35に導出される。なお、連通配管100は、周方向に亘って溝40の底面41に複数設けられることが好ましい。
【0095】
このように連通配管100を備えることで、キャビテーションの発生源となる漏水LAの一部を連通配管100を介して主流路35に導出することができるので、キャビテーションの発生を抑制することができる。
【0096】
また、漏水LAを間隙部33から主流路35に導出する際、漏水LAが、主流路35の壁面付近の主流の流れを乱して、吸出し管21における流れの剥離を助長することがある。しかしながら、連通配管100を備えることで、漏水LAの一部が、連通配管100を介して吸出し管21のエルボ21aで構成される位置の主流路35に導出されるので、間隙部33からの漏水LAの噴出速度が低下する。そのため、間隙部33から噴出される漏水LAによって生じる主流の乱れを抑制することができる。
【0097】
また、曲がり流路であるエルボ21aの内径側の出口位置における主流路35では、流れの剥離が生じ、低圧状態になるため、溝40からエルボ21aの内径側の出口位置における主流路35に効率よく漏水LAを導くことができる。
【0098】
なお、ここでは、溝40を備えたシール構造体90について説明したが、第1の実施の形態のシール構造体30で説明した溝50を備える場合にも、第3の実施の形態の構成を適用することができる。この場合にも、上記した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0099】
また、第3の実施の形態のシール構造体90に、第1の実施の形態のシール構造体30で説明した抵抗体60や板状部材70を備えてもよい。この場合においても、抵抗体60や板状部材70を備えた第1の実施の形態のシール構造体30の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0100】
さらに、第3の実施の形態のシール構造体90に、第2の実施の形態のシール構造体80で説明した側壁溝81、82の構成を備えてもよい。この場合においても、側壁溝81、82を備えた第2の実施の形態のシール構造体80の作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0101】
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0102】
10…水車、11…主軸、12…ランナ、13…ランナ羽根、14…クラウン、15…ランナバンド、16…ケーシング、17…ステーベーン、18…ガイドベーン、19…カバー、20…ディスチャージリング、21…吸出し管、21a…エルボ、22…シールライナ、22a…表面、22b…側壁、30,80,90…シール構造体、31…シール部、32…出口、33…間隙部、34…屈曲部、35…主流路、40,50…溝、41,51…底面、52,81b…側面、60…抵抗体、61…棒状部材、70…板状部材、81,82…側壁溝、81a,82a…端面、82b…傾斜側面、91…連通路、91a…入口開口、91b…出口開口、100…連通配管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の羽根およびこれらの羽根の一方の端部に周方向に亘って設けられた環状部材を備える回転部と前記環状部材を囲うように設けられた固定部との間に、円環状の微小間隙からなるシール部、および当該シール部の出口から屈曲して主流が流れる主流路に連通する円環状の間隙部を構成する、流体機械のシール構造体であって、
前記シール部の出口に対向する前記固定部の表面側に、周方向に亘って環状に溝が形成されていることを特徴とする流体機械のシール構造体。
【請求項2】
前記溝が、前記固定部の前記主流路側に屈曲する屈曲部から前記主流路側に向かって形成されていることを特徴とする請求項1記載の流体機械のシール構造体。
【請求項3】
前記溝の底面の少なくとも一部が、前記溝の深さが前記主流路側に向かって徐々に浅くなる傾斜面で構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の流体機械のシール構造体。
【請求項4】
前記溝の底面の少なくとも一部が、前記溝の深さが前記主流路側に向かって一定となるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の流体機械のシール構造体。
【請求項5】
前記溝に抵抗体を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項6】
前記溝に、円周方向に沿って所定の間隔をあけて、前記溝の幅方向に亘って立設された板状部材を複数備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項7】
前記シール部の出口よりも下流側の前記固定部の側壁に、周方向に亘って環状に側壁溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項8】
前記側壁溝の側壁が、前記シール部の出口から徐々に外周側に広がる傾斜壁で構成されていることを特徴とする請求項7記載の流体機械のシール構造体。
【請求項9】
前記固定部に、前記溝の底部と前記主流路とを連通させる連通路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項10】
前記溝の底部に形成される前記連通路の開口が、前記シール部の出口に対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項9記載の流体機械のシール構造体。
【請求項11】
前記連通路の中心軸に垂直な断面形状が、楕円形または長円形であることを特徴とする請求項9または10記載の流体機械のシール構造体。
【請求項12】
前記連通路が前記回転部の回転方向に沿うように傾けて形成され、前記連通路が前記主流路に連通する連通部における前記連通路の中心軸と、前記連通部における前記主流路の内周壁面に対する接線とを前記回転部の回転軸に垂直な平面に投影した際の、前記中心軸と前記接線とのなす角が90度未満であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項13】
前記溝の底部と、前記主流路が屈曲するエルボ部の内径側の出口とを連通させる連通配管を備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項14】
前記溝の底部に連通する前記連通配管の連通口が、前記シール部の出口に対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項13記載の流体機械のシール構造体。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体を備えたことを特徴とする流体機械。
【請求項1】
複数の羽根およびこれらの羽根の一方の端部に周方向に亘って設けられた環状部材を備える回転部と前記環状部材を囲うように設けられた固定部との間に、円環状の微小間隙からなるシール部、および当該シール部の出口から屈曲して主流が流れる主流路に連通する円環状の間隙部を構成する、流体機械のシール構造体であって、
前記シール部の出口に対向する前記固定部の表面側に、周方向に亘って環状に溝が形成されていることを特徴とする流体機械のシール構造体。
【請求項2】
前記溝が、前記固定部の前記主流路側に屈曲する屈曲部から前記主流路側に向かって形成されていることを特徴とする請求項1記載の流体機械のシール構造体。
【請求項3】
前記溝の底面の少なくとも一部が、前記溝の深さが前記主流路側に向かって徐々に浅くなる傾斜面で構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の流体機械のシール構造体。
【請求項4】
前記溝の底面の少なくとも一部が、前記溝の深さが前記主流路側に向かって一定となるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の流体機械のシール構造体。
【請求項5】
前記溝に抵抗体を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項6】
前記溝に、円周方向に沿って所定の間隔をあけて、前記溝の幅方向に亘って立設された板状部材を複数備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項7】
前記シール部の出口よりも下流側の前記固定部の側壁に、周方向に亘って環状に側壁溝が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項8】
前記側壁溝の側壁が、前記シール部の出口から徐々に外周側に広がる傾斜壁で構成されていることを特徴とする請求項7記載の流体機械のシール構造体。
【請求項9】
前記固定部に、前記溝の底部と前記主流路とを連通させる連通路が形成されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項10】
前記溝の底部に形成される前記連通路の開口が、前記シール部の出口に対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項9記載の流体機械のシール構造体。
【請求項11】
前記連通路の中心軸に垂直な断面形状が、楕円形または長円形であることを特徴とする請求項9または10記載の流体機械のシール構造体。
【請求項12】
前記連通路が前記回転部の回転方向に沿うように傾けて形成され、前記連通路が前記主流路に連通する連通部における前記連通路の中心軸と、前記連通部における前記主流路の内周壁面に対する接線とを前記回転部の回転軸に垂直な平面に投影した際の、前記中心軸と前記接線とのなす角が90度未満であることを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項13】
前記溝の底部と、前記主流路が屈曲するエルボ部の内径側の出口とを連通させる連通配管を備えていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体。
【請求項14】
前記溝の底部に連通する前記連通配管の連通口が、前記シール部の出口に対向する位置に形成されていることを特徴とする請求項13記載の流体機械のシール構造体。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項記載の流体機械のシール構造体を備えたことを特徴とする流体機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−122472(P2011−122472A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278674(P2009−278674)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]