説明

流体機械

【課題】シリンダ及びシリンダヘッドを変形させることなく、シリンダの横ずれを防止する。
【解決手段】圧縮機は、駆動軸と、偏心部の外周部に設けられる環状のピストンと、ピストンを収容する環状のシリンダ21と、シリンダ21の軸方向両端部を閉塞する環状のシリンダヘッド22,23とを備える。シリンダ21に固定され、シリンダヘッド22,23の側方に位置する上側突起部42及び下側突起部43と、上側突起部42及び下側突起部43のシリンダヘッド22,23に対する半径方向への移動を規制する第2の規制ボルト46とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体機械に関し、特に、シリンダの位置規制手段に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に示すように、圧縮機構を構成するシリンダを枠体に固定する構造として、ボルトを軸方向に固定する構造が知られている。この構造では、シリンダ内の圧縮流体の圧力が半径方向と軸方向に働く。このうち、半径方向に働く流体圧力によってシリンダが半径方向へずれる(いわゆる、横ずれ)という問題がある。
【0003】
この問題に関しては、図13に示すように、例えば、シリンダ(図示省略)とシリンダヘッド(a)とを固定するためのボルト(b)の本数を増やしたり、ボルト(b)の軸径を太くしてボルトの締結力を大きくして横ずれを防止する対策が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−2482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボルトの締結力を大きくすると、シリンダ及びシリンダヘッドの軸方向への荷重が増大する。このため、シリンダ及びシリンダヘッドの軸方向への変形(歪み)が大きくなり、各部材の隙間(クリアランス)の精度が低下する。この隙間(クリアランス)の精度が低下すると、隙間(クリアランス)が広くなった場合、圧縮流体が漏れることで圧縮効率が低下する一方、隙間(クリアランス)が狭くなった場合、各部材同士が干渉して摩耗、破損、又は噛み込み等が生じてしまう。つまり、シリンダ及びシリンダヘッドを軸方向へ変形させる(歪ませる)ことなく、該シリンダの横ずれを防止することができないという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、シリンダ及びシリンダヘッドを軸方向へ変形させる(歪ませる)ことなく、該シリンダの横ずれを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、軸部(13a)と、該軸部(13a)の回転中心から偏心した偏心部(13b)とで構成される駆動軸(13)と、上記偏心部(13b)の外周部に設けられる環状のピストン(14)と、該ピストン(14)を収容する環状のシリンダ(21)と、該シリンダ(21)の上記駆動軸(13)の軸方向両端部を閉塞する環状のヘッド部材(22,23)とを備えた流体機械であって、上記シリンダ(21)に固定され、少なくとも1つのヘッド部材(22,23)の側方に位置する突起部材(42,43)と、該突起部材(42,43)の上記ヘッド部材(22,23)に対する半径方向の移動を規制する規制部(46,51)とを備えている。
【0008】
上記第1の発明では、環状のピストン(14)は、環状のシリンダ(21)の内部に収容され、シリンダ(21)の内周部とピストン(14)の外周部との間に流体室が形成される。また、環状のヘッド部材(22,23)は、シリンダ(21)の駆動軸(13)の軸方向の両端を閉塞している。駆動軸(13)が回転駆動すると、偏心部(13b)に伴ってピストン(14)が軸部(13a)に対して偏心回転する。これにより、流体室の内部の流体が圧縮、又は膨張する。
【0009】
上記突起部材(42,43)は、上記ヘッド部材(22,23)の外周部に配置されている。そして、突起部材(42,43)はシリンダ(21)と固定されている。そして、規制部(46,51)は、上記突起部材(42,43)を上記ヘッド部材(22,23)に対して固定している。つまり、シリンダ(21)やヘッド部材(22,23)に対して駆動軸(13)の軸方向へ負荷をかけることなく、シリンダ(21)をヘッド部材(22,23)に対して半径方向に固定している。
【0010】
上記流体室の内部の流体が高圧になると、上記シリンダ(21)に半径方向(上記駆動軸(13)の軸方向と直交する方向)への荷重(横ずれ荷重)が発生する。しかしながら、規制部(46,51)によって突起部材(42,43)が上記ヘッド部材(22,23)に対して固定されているため、該突起部材(42,43)に固定されるシリンダ(21)が上記ヘッド部材(22,23)に対して半径方向へずれ難くなる。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記規制部(46)は、上記突起部材(42,43)と上記ヘッド部材(22,23)とを固定する固定部材(46)を備えている。
【0012】
上記第2の発明では、固定部材(46)は、突起部材(42,43)とヘッド部材(22,23)とを固定している。つまり、固定部材(46)は、シリンダ(21)やヘッド部材(22,23)に対して駆動軸(13)の軸方向へ負荷をかけることなく、シリンダ(21)をヘッド部材(22,23)に対して半径方向に固定している。
【0013】
流体室の内部の流体が高圧になると、上記シリンダ(21)に半径方向への荷重(横ずれ荷重)が発生する。しかしながら、突起部材(42,43)をヘッド部材(22,23)の側方に配置し、突起部材(42,43)を介して上記シリンダ(21)とヘッド部材(22,23)とを固定している。このため、上記シリンダ(21)に半径方向への荷重(横ずれ荷重)が発生しても、上記シリンダ(21)が上記ヘッド部材(22,23)に対して半径方向へずれ難くなる。
【0014】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記固定部材(46)は、上記突起部材(42,43)の外方から該突起部材(42,43)と上記ヘッド部材(22,23)とを固定するように構成され、上記規制部(46)は、上記固定部材(46)を複数個備える一方、上記複数の固定部材(46)のうち、少なくとも2つの固定部材(46)が上記駆動軸(13)の直交線上に対向して配置されている。
【0015】
上記第3の発明では、固定部材(46)は複数個設けられ、各固定部材(46)は、突起部材(42,43)の外方から該突起部材(42,43)とヘッド部材(22,23)とを固定している。そして、複数の固定部材(46)のうち、少なくとも2つの固定部材(46,46)は、駆動軸(13)の直交線上に互いが対向するように配置されている。このため、シリンダ(21)がヘッド部材(22,23)に対して対向する2つの固定部材(46)を結ぶ直線方向に、ずれ難くなる。
【0016】
第4の発明は、上記第2の発明において、上記固定部材(46)は、上記突起部材(42,43)の外方から該突起部材(42,43)と上記ヘッド部材(22,23)とを固定するように構成され、上記規制部(46)は、上記固定部材(46)を複数個備える一方、上記複数の固定部材(46,46,46)は、上記突起部材(42,43)の周方向に等間隔を置いて配置されている。
【0017】
上記第4の発明では、固定部材(46)は複数個設けられ、各固定部材(46)は、突起部材(42,43)の外方から該突起部材(42,43)とヘッド部材(22,23)とを固定している。そして、複数の固定部材(46,46,46)は、上記突起部材(42,43)の周方向に等間隔を置いて配置されている。このため、シリンダ(21)がヘッド部材(22,23)に対して半径方向にずれ難くなる。
【0018】
第5の発明は、上記第1の発明において、上記突起部材(42,43)と上記ヘッド部材(22,23)との間には、所定間隔の隙間が形成され、上記規制部(51)は、上記隙間を埋める充填部材(51)を備えている。
【0019】
上記第5の発明では、突起部材(42,43)が、ヘッド部材(22,23)の外周部に所定間隔の隙間を有して配置されている。そして、突起部材(42,43)とヘッド部材(22,23)との間の隙間には、充填部材(51)が設けられている。つまり、充填部材(51)は、シリンダ(21)やヘッド部材(22,23)に対して駆動軸(13)の軸方向へ負荷をかけることなく、シリンダ(21)をヘッド部材(22,23)に対して半径方向に固定している。このため、上記シリンダ(21)に半径方向への荷重(横ずれ荷重)が発生しても、ヘッド部材(22,23)と突起部材(42,43)との間の充填部材(51)は、突起部材(42,43)がヘッド部材(22,23)へ近づくのを阻止する。これにより、シリンダ(21)がヘッド部材(22,23)に対して半径方向へずれ難くなる。
【0020】
第6の発明は、上記第1〜第5の発明の何れか一つにおいて、上記突起部材(42,43)は、上記シリンダ(21)と一体に形成されて構成されている。
【0021】
上記第6の発明では、突起部材(42,43)とシリンダ(21)とが一体形成されている。したがって、突起部材(42,43)とシリンダ(21)とを固定するための固定部材を別途設けることなく、突起部材(42,43)を形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
上記第1の発明によれば、ヘッド部材(22,23)の側方に設けられた突起部(42,43)と規制部(46,51)とを設けたため、突起部(42,43)とヘッド部材(22,23)とを固定することができる。このため、突起部材(42,43)を介してシリンダ(21)とヘッド部材(22,23)とを半径方向に固定することができる。つまり、ボルト等で軸方向に固定することなく、シリンダ(21)とヘッド部材(22,23)とを半径方向に固定することができる。これにより、シリンダ(21)がヘッド部材(22,23)に対して半径方向にずれるのを確実に防止することができる。この結果、シリンダ(21)及びヘッド部材(22,23)を軸方向へ変形させる(歪ませる)ことなく、該シリンダ(21)の横ずれを防止することができる。
【0023】
また、ヘッド部材(22,23)の側方に設けられた突起部(42,43)と規制部(46,51)とを設けたため、突起部(42,43)とヘッド部材(22,23)とを固定することができる。このため、シリンダ(21)とヘッド部材(22,23)との間の摩擦係数を変えることなく、突起部材(42,43)を介してヘッド部材(22,23)とシリンダ(21)とを半径方向に固定することができる。つまり、従来より、シリンダとシリンダヘッドとの接触面の表面粗さを粗く(大きく)し、両部材の摩擦係数を大きくすることで、シリンダ及びシリンダヘッドを軸方向へ変形させる(歪ませる)ことなく、該シリンダの横ずれを防止する対策が示されていた。ところが、表面粗さは、ばらつきが大きく、全ての製品において所望の粗さに管理するのが困難であるという問題があった。一方、表面粗さを粗く(大きく)すれば、シリンダとシリンダヘッドとの接触面のシール性能が低下するという問題がある一方、シール性能のばらつきが大きいという問題もあった。また、表面粗さを粗くすれば、シリンダとシリンダヘッドとの組み付け後の軸方向の寸法がばらつくという問題があった。ところが、第1の発明では、シリンダ(21)とヘッド部材(22,23)との間の接触面の表面粗さを粗くすることなく、シリンダ(21)の横ずれを防止することができる。すなわち、第1の発明によれば、上記表面粗さを粗くするという従来の対策に起因した問題を生じさせることなく、シリンダ(21)の横ずれを確実に防止することができる。
【0024】
上記第2の発明によれば、突起部材(42,43)とヘッド部材(22,23)を固定する固定部材(46)を設けたため、突起部材(42,43)を介して上記シリンダ(21)とヘッド部材(22,23)とを半径方向に固定することができる。これにより、横ずれ荷重が発生しても、シリンダ(21)がヘッド部材(22,23)に対して半径方向にずれるのを確実に防止することができる。この結果、ボルトの締結力を大きくすることなく、シリンダ(21)の横ずれを防止することができる。
【0025】
上記第3の発明によれば、少なくとも2つの固定部材(46,46)を駆動軸(13)の直交線上で互いが対向するように配置したため、シリンダ(21)がヘッド部材(22,23)に対して、2つの固定部材(46)を結ぶ直線方向に移動し難くすることができる。これにより、上記直線方向の横ずれ荷重に対してシリンダ(21)の横ずれを確実に防止することができる。この結果、ボルトの締結力を大きくすることなく、シリンダ(21)の横ずれを防止することができる。
【0026】
上記第4の発明によれば、複数の固定部材(46,46,46)を突起部材(42,43)の周方向に等間隔で配置したため、シリンダ(21)がヘッド部材(22,23)に対して移動し難くすることができる。これにより、上記直線方向の横ずれ荷重に対してシリンダ(21)の横ずれを確実に防止することができる。この結果、ボルトの締結力を大きくすることなく、シリンダ(21)の横ずれを防止することができる。
【0027】
上記第5の発明によれば、突起部材(42,43)とヘッド部材(22,23)との間の隙間に充填部材(51)を充填したため、横ずれ荷重が発生しても、突起部材(42,43)がヘッド部材(22,23)に近づくのを防止することができる。これにより、シリンダ(21)がヘッド部材(22,23)に対して駆動軸(13)の軸方向と直交する方向へずれるのを確実に防止することができる。この結果、ボルトの締結力を大きくすることなく、シリンダ(21)の横ずれを防止することができる。
【0028】
上記第6の発明によれば、上記突起部材(42,43)と上記シリンダ(21)と一体に形成したため、別途規制板や固定部材を設けることなく、突起部材(42,43)を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態1に係る圧縮機を示す概略の縦断面図である。
【図2】実施形態1に係るシリンダ部を示す断面図である。
【図3】実施形態1に係るシリンダ部を側方から視た概略の模式図である。
【図4】実施形態1に係るシリンダ部を上方(又は下方)から視た概略の断面図である。
【図5】実施形態1の変形例に係るシリンダ部を側方から視た概略の模式図である。
【図6】実施形態1の変形例に係るシリンダ部を上方(又は下方)から視た概略の断面図である。
【図7】従来例に係るシリンダ部を側方から視た概略の模式図である。
【図8】実施形態2に係るシリンダ部を側方から視た概略の模式図である。
【図9】実施形態2に係るシリンダ部を上方(又は下方)から視た概略の断面図である。
【図10】実施形態2の変形例に係るシリンダ部を側方から視た概略の模式図である。
【図11】実施形態2の変形例に係るシリンダ部を上方(又は下方)から視た概略の断面図である。
【図12】その他の形態に係るシリンダ部を上方(又は下方)から視た概略の断面図である。
【図13】従来例に係る圧縮機を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
〈発明の実施形態1〉
本発明の実施形態1は、図1に示すように、高圧ドーム型ロータリ圧縮機(10)である。この圧縮機(10)は、本発明に係る流体機械を構成している。
【0032】
上記高圧ドーム型ロータリ圧縮機(10)(以下、圧縮機(10))は、円筒形状の密閉の容器であるケーシング(11)内に電動機構(図示せず)と、圧縮機構(12)とを備えている。電動機構と圧縮機構(12)とは、クランク軸(13)を介して接続されている。電動機構は、回転型電動機(図示せず)を備え、該電動機構の下部に配置される圧縮機構(12)に回転駆動力を付与するように構成されている。圧縮機構(12)は、作動流体としての冷媒を圧縮するためのものである。尚、本実施形態では、冷媒として二酸化炭素が使用されている。
【0033】
上記圧縮機構(12)は、ケーシング(11)の内部に配置されるシリンダ部(20)を備えている。
【0034】
上記シリンダ部(20)は、図1〜図3に示すように、円環状のシリンダ(21)と、該シリンダ(21)の上端面(21a)に取り付けられる肉厚円盤状のフロントヘッド(22)と、該シリンダ(21)の下端面(21b)に取り付けられる肉厚円盤状のリアヘッド(23)と、規制板(41)と、規制ボルト(44)とにより構成されている。フロントヘッド(22)とリアヘッド(23)とは、シリンダヘッド(22,23)を構成している。また、フロントヘッド(22)とリアヘッド(23)とは、それぞれが本発明に係るヘッド部材を構成している。フロントヘッド(22)とシリンダ(21)とは、軸方向ボルト(15)により螺合されて固定されている。リアヘッド(23)とシリンダ(21)とは、軸方向ボルト(16)により螺合されて固定されている。つまり、シリンダ(21)は、シリンダヘッド(22,23)によって両端面が閉塞されている。
【0035】
上記各ヘッド(22,23)の中央部には、上下方向に貫通するようにクランク軸(13)の外径に対応した径の貫通孔(25,26)が形成されている。クランク軸(13)は、この貫通孔(25,26)を貫通し、シリンダヘッド(22,23)により回転自在に支持されている。
【0036】
上記クランク軸(13)は、本発明に係る軸部を構成する軸本体(13a)と、該軸本体(13a)の回転中心に対して偏心する偏心部(13b)とを備え、本発明に係る駆動軸を構成している。また、クランク軸(13)は、下端部に油ポンプ(27)が設けられ、クランク軸(13)内に形成される給油路(28)を通して、ケーシング(11)内の底部に貯められている冷凍機油を圧縮機構(12)に供給するように構成されている。
【0037】
上記シリンダ(21)には、該シリンダ(21)の半径方向に延びる吸入路(29)が形成されている。吸入路(29)は、縦断面が円形であり、シリンダ(21)の外周面(30)と内周面(31)とを貫通するように形成されている。吸入路(29)には、ケーシング(11)に固定される吸入管(32)が嵌入されている。吸入管(32)は、吸入側の冷媒配管(図示なし)に接続されている。
【0038】
上記シリンダ(21)は、図2に示すように、中央の空洞部(33)に円環状のピストン(14)が配置されている。ピストン(14)は、該ピストン(14)の半径方向に延びるブレード(34)が接続されている。ピストン(14)とブレード(34)とは、一体に形成されている。ピストン(14)は、外周面の一部がシリンダ(21)の内周面(31)に微小な隙間を保つように配置されている。ピストン(14)の中央部には、クランク軸(13)に一体に形成される偏心部(13b)が嵌入されている。ピストン(14)は、偏心部(13b)に摺動自在に支持され、クランク軸(13)の回転により、偏心部(13b)を介して公転するように構成されている。
【0039】
上記シリンダ部(20)には、フロントヘッド(22)の下端面とリアヘッド(23)の上端面とシリンダ(21)の内周面(31)とにより、作動室(36)が形成されている。作動室(36)は、ピストン(14)の1回転中の所定位置において、ピストン(14)とブレード(34)とにより、低圧側(37)と高圧側(38)に区画されている。作動室(36)の低圧側(37)は、上記吸入路(29)の内周面側の端部が開口し、該吸入路(29)によって吸入管(32)と連通し、冷媒が吸入される。作動室(36)は、ピストン(14)の公転に伴って、冷媒を圧縮するように構成されている。
【0040】
上記シリンダ(21)における吸入路(29)付近には、シリンダ(21)の内周面(31)が開口するように、ブレード(34)を挿入するためのブレード孔(39)が形成されている。ブレード孔(39)内には、断面が略半円形状の一対の揺動ブッシュ(図示せず)が揺動自在に配置されている。ブレード(34)の先端が、両揺動ブッシュ間に挿入されている。つまり、この両揺動ブッシュは、ブレード(34)を挟んだ状態に配置されると共に、ブレード(34)がブレード孔(39)内を進退移動するのを許容し、且つブレード(34)と一体的にブレード孔(39)内で揺動するように構成されている。
【0041】
上記フロントヘッド(22)は、図示はしないが、上下に貫通する吐出路が設けられている。吐出路は、ブレード孔(39)付近に形成され、下端部が作動室(36)の高圧側(38)に開口し、圧縮された高温冷媒をケーシング(11)内に吐出するように構成されている。吐出路には、図示しないリード弁が設けられている。リード弁は、シリンダ部(20)の外部の冷媒圧力により閉じた状態にあるが、作動室(36)内の圧力が冷媒の圧縮により上昇し、シリンダ部(20)の外部の圧力より大きな圧力になると、作動して作動室(36)とシリンダ部(20)の外部とを連通させるように構成されている。
【0042】
上記リアヘッド(23)は、フロントヘッド(22)に吐出路が設けられている点を除いて、フロントヘッド(22)とほぼ同様に構成されている。
【0043】
尚、図示はしないが、ケーシング(11)の上部には、ケーシング(11)内と吐出側の冷媒配管とを連通させる吐出管が設けられている。
【0044】
図3及び図4に示すように、上記規制板(41)、及び規制ボルト(44)は、上記シリンダ(21)がフロントヘッド(22)及びリアヘッド(23)に対して移動するのを規制するものである。上記規制ボルト(44)は、部材を締結するボルトであって、第1の規制ボルト(45)と第2の規制ボルト(46)とで構成されている。
【0045】
上記規制板(41)は、シリンダ(21)の外周部を覆うように配置される環状の板部材である。この規制板(41)は、その周方向に等間隔で、且つシリンダ(21)の外周面(30)と重なる位置に4箇所のボルト孔が形成され、半径方向(クランク軸(13)と直交方向)から第1の規制ボルト(45)が挿通されている。規制板(41)は第1の規制ボルト(45)によってシリンダ(21)に固定されている。また、規制板(41)は、環状の上側突起部(42)と環状の下側突起部(43)とを備えている。
【0046】
上記上側突起部(42)は、上記規制板(41)の上部に形成された環状の凸部材であって、本発明に係る突起部材を構成している。この上側突起部(42)は、フロントヘッド(22)の上端位置まで延びて該フロントヘッド(22)の外周部と所定間隔の隙間をもって囲むように配置されている。また、図4に示すように、上側突起部(42)には、その周方向に等間隔で4箇所のボルト孔が形成され、半径方向(クランク軸(13)と直交方向)外方から第2の規制ボルト(46)が挿通されている。そして、第2の規制ボルト(46)によって、上記上側突起部(42)とフロントヘッド(22)とが固定されている。つまり、フロントヘッド(22)とシリンダ(21)とは、上側突起部(42)及び規制板(41)を介して互いに半径方向に固定されている。4本の第2の規制ボルト(46,46)は、少なくとも2本が互いにクランク軸(13)の直交線上に対向するように配置されている。
【0047】
上記下側突起部(43)は、上記規制板(41)の下部に形成された環状の凸部材であって、本発明に係る突起部材を構成している。この下側突起部(43)は、リアヘッド(23)の下端位置まで延びて該リアヘッド(23)の外周部と所定間隔の隙間をもって囲むように配置されている。また、下側突起部(43)には、その周方向に等間隔で4箇所のボルト孔が形成され、半径方向(クランク軸(13)と直交方向)外方から第2の規制ボルト(46)が挿通されている。そして、第2の規制ボルト(46)によって、上記下側突起部(43)とリアヘッド(23)とが固定されている。つまり、リアヘッド(23)とシリンダ(21)とは下側突起部(43)及び規制板(41)を介して互いに固定されている。4本の第2の規制ボルト(46,46)は、少なくとも2本が互いにクランク軸(13)の直交線上に対向するように配置されている。
【0048】
−運転動作−
次に、高圧ドーム型ロータリ圧縮機(10)の運転動作について説明する。回転型電動機が駆動すると、クランク軸(13)が回転し、クランク軸(13)の偏心部(13b)を介して、ピストン(14)がシリンダ(21)内を公転する。ピストン(14)の公転により、吸入路(29)と作動室(36)とが連通すると、吸入路(29)内の吸入冷媒が作動室(36)の低圧側(37)に吸入される。そして、ピストン(14)の公転により、吸入路(29)がピストン(14)により閉鎖されると共に、作動室(36)内の冷媒が圧縮される。
【0049】
そして、作動室(36)内の圧力がケーシング(11)内の圧力より大きな圧力になると、リード弁が作動して作動室(36)とシリンダ部(20)の外部とが連通し、作動室(36)内の冷媒が吐出路から吐出され、ケーシング(11)内に貯留される。ケーシング(11)内に貯留された高圧の冷媒は、吐出管から吐出側の冷媒配管に吐出され、冷媒回路を循環し、吸入側の冷媒配管に流れる。吸入側の冷媒配管を流れてきた冷媒は、吸入管を流れて吸入路に流入し、この動作が繰り返される。
【0050】
ここで、上記ピストン(14)の公転によって作動室(36)内の冷媒が圧縮されると、ピストン(14)を収容するシリンダ(21)に対し、圧縮荷重に起因した半径方向(クランク軸(13)と直交する方向)への横ずれ荷重が加わることになる。
【0051】
しかしながら、シリンダ(21)は、規制板(41)と上側突起部(42)及び下側突起部(43)と規制ボルト(44)とによって移動が規制されている。具体的には、シリンダ(21)に対して、圧縮荷重に起因した半径方向への横ずれ荷重が加わると、シリンダ(21)は半径方向へ移動しようとする。
【0052】
ところが、シリンダ(21)は、第1の規制ボルト(45)によって規制板(41)と固定されている。また、規制板(41)の上側突起部(42)は、第2の規制ボルト(46)によってフロントヘッド(22)に固定され、下側突起部(43)は、第2の規制ボルト(46)によってリアヘッド(23)に固定されている。すなわち、シリンダ(21)とシリンダヘッド(22,23)とは、規制板(41)を介して半径方向に固定されているため、シリンダ(21)はシリンダヘッド(22,23)に対して半径方向へ移動することができない。
【0053】
また、第2の規制ボルト(46)は、シリンダ(21)やシリンダヘッド(22,23)に対してクランク軸(13)の軸方向へ負荷をかけることなく、シリンダ(21)をシリンダヘッド(22,23)に対して半径方向に固定している。このため、シリンダ(21)やシリンダヘッド(22,23)がクランク軸(13)の軸方向へ変形することはない。
【0054】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1によれば、上側突起部(42)及び下側突起部(43)と、第1及び第2規制ボルト(45,46)とを設けたため、両突起部(42,43)をフロントヘッド(22)及びリアヘッド(23)に対して固定することができる。このため、両突起部(42,43)を介してシリンダ(21)とフロントヘッド(22)及びリアヘッド(23)とを半径方向に固定することができる。つまり、図7に示すように、従来は、シリンダ(p)とフロントヘッド(q)、及びリアヘッド(r)とを駆動軸の軸方向のボルト(s)で締結することで半径方向も固定していたため、横ずれ荷重によってシリンダ(p)がフロントヘッド(q)又はリアヘッド(r)に対して半径方向に、ずれ易くなっていた。しかしながら、本実施形態1によれば、半径方向(クランク軸(13)に直交する方向)から規制ボルト(44)で固定するため、半径方向への横ずれ荷重が発生しても、シリンダ(21)がフロントヘッド(22)又はリアヘッド(23)に対して半径方向へずれるのを確実に防止することができる。
【0055】
また、ボルト等で軸方向に固定することなく、シリンダ(21)とシリンダヘッド(22,23)とを半径方向に固定することができる。これにより、シリンダ(21)がシリンダヘッド(22,23)に対して半径方向にずれるのを確実に防止することができる。これらの結果、シリンダ(21)及びシリンダヘッド(22,23)を軸方向へ変形させる(歪ませる)ことなく、該シリンダ(21)の横ずれを防止することができる。
【0056】
さらに、シリンダ(22,23)の側方に設けられた両突起部(42,43)と規制ボルト(45,46)とを設けたため、両突起部(42,43)とシリンダヘッド(22,23)とを固定することができる。このため、シリンダ(21)とシリンダヘッド(22,23)との間の摩擦係数を変えることなく、両突起部(42,43)を介してシリンダヘッド(22,23)とシリンダ(21)とを半径方向に固定することができる。つまり、従来より、シリンダとシリンダヘッドとの接触面の表面粗さを大きし、両部材の摩擦係数を大きくすることで、シリンダ及びシリンダヘッドを軸方向へ変形させる(歪ませる)ことなく、該シリンダの横ずれを防止する対策が示されていたが、表面粗さは、ばらつきが大きく、全ての製品において所望の粗さに管理するのが困難であった。ところが、本実施形態1では、シリンダ(21)とシリンダヘッド(22,23)との間の接触面の表面粗さを粗くすることなく、シリンダ(21)の横ずれを防止することができる。これにより、上記従来技術よりもシリンダ(21)の横ずれを確実に防止することができる。
【0057】
また、第2の規制ボルト(46,46)をクランク軸(13)の直交線上に対向して配置したため、シリンダ(21)がシリンダヘッド(22,23)に対してクランク軸(13)の直交方向(半径方向)にずれ難くなる。これにより、上記半径方向(直交方向)の横ずれ荷重によって、シリンダ(21)が横ずれするのを確実に防止することができる。この結果、ボルトの締結力を大きくすることなく、シリンダ(21)の横ずれを防止することができる。
【0058】
さらに、本実施形態1では、高圧ドーム型のロータリ圧縮機(10)に構成されている。このため、圧縮した高圧冷媒の圧力によってシリンダヘッド(22,23)をシリンダ(21)に対して押し付けることができる。つまり、圧縮冷媒の圧力がクランク軸(13)の軸方向へ加わるため、従来ほどの軸方向のボルト締結力を要すことなく、シリンダヘッド(22,23)とシリンダ(21)とを軸方向に固定することができる。これにより、従来よりも軸方向のボルトの本数を減らすことができる。
【0059】
−実施形態1の変形例−
次に、上記実施形態1の変形例について説明する。本変形例は、上記実施形態1に係るシリンダ部(20)の構成が異なっている。このため、本変形例では、シリンダ部(20)の構成について説明する。
【0060】
具体的には、図5及び図6に示すように、本変形例に係るシリンダ部(20)は、実施形態1に係るシリンダ部(20)がシリンダ(21)の外周面(30)を覆う規制板(41)を備えていたのに代えて、シリンダ(21)に上側突起部(42)と下側突起部(43)とを形成するようにしている。また、本変形例に係るシリンダ部(20)は、実施形態1に係るシリンダ部(20)が規制板(41)とシリンダ(21)とを固定する第1の規制ボルト(45)を備えていたのに代えて、シリンダ(21)と規制板(41)とを一体形成したものである。
【0061】
上記上側突起部(42)は、シリンダ(21)の外周の上部に形成された環状の凸部材であって、本発明に係る突起部材を構成している。この上側突起部(42)は、フロントヘッド(22)の外周の上端位置まで延びて該フロントヘッド(22)の外周部と所定間隔の隙間をもって囲むように配置されている。また、図6に示すように、上側突起部(42)には、その周方向に等間隔で4箇所のボルト孔が形成され、半径方向(クランク軸(13)と直交方向)外方から第2の規制ボルト(46)が挿通されている。そして、第2の規制ボルト(46)によって、上記上側突起部(42)とフロントヘッド(22)とが固定されている。つまり、フロントヘッド(22)とシリンダ(21)とは、上側突起部(42)を介して互いに半径方向に固定されている。4本の第2の規制ボルト(46,46)は、少なくとも2本が互いにクランク軸(13)の直交線上に対向するように配置されている。
【0062】
上記下側突起部(43)は、シリンダ(21)の外周の下部に形成された環状の凸部材であって、本発明に係る突起部材を構成している。この下側突起部(43)は、リアヘッド(23)の外周の下端位置まで延びて該リアヘッド(23)の外周部と所定間隔の隙間をもって囲むように配置されている。また、下側突起部(43)には、その周方向に等間隔で4箇所のボルト孔が形成され、半径方向(クランク軸(13)と直交方向)外方から第2の規制ボルト(46)が挿通されている。そして、第2の規制ボルト(46)によって、上記下側突起部(43)とリアヘッド(23)とが固定されている。つまり、リアヘッド(23)とシリンダ(21)とは下側突起部(43)を介して互いに半径方向に固定されている。4本の第2の規制ボルト(46,46)は、少なくとも2本が互いにクランク軸(13)の直交線上に対向するように配置されている。
【0063】
本変形例によれば、上側突起部(42)、及び下側突起部(43)は上記シリンダ(21)と一体に形成したため、実施形態1に係る上側突起部(42)、及び下側突起部(43)のように規制板(41)とシリンダ(21)とを固定する第1の規制ボルト(45)を設けることなく、シリンダ(21)とシリンダヘッド(22,23)とを半径方向に固定することができる。これにより、圧縮機(10)の製造コストを低減することができる。その他の構成、作用・効果は実施形態1と同様である。
【0064】
〈発明の実施形態2〉
次に、本発明の実施形態2について説明する。実施形態2の圧縮機(10)は、上記実施形態1に係るシリンダ部(20)の構成が異なっている。このため、実施形態2では、シリンダ部(20)の構成について説明する。
【0065】
具体的には、図8及び図9に示すように、本実施形態2に係るシリンダ部(20)は、上記実施形態1に係るシリンダ部(20)が規制板(41)とシリンダヘッド(22,23)とを固定する第2の規制ボルト(46)を備えていたのに代えて、充填材(51)を備えるようにしたものである。
【0066】
具体的には、上記規制板(41)は、シリンダ(21)の外周面(30)を覆うように配置される環状の板部材である。この規制板(41)は、その周方向に等間隔で、且つシリンダ(21)の外周面(30)と重なる位置に4箇所のボルト孔が形成され、半径方向(クランク軸(13)と直交方向)外方から第1の規制ボルト(45)が挿通されている。規制板(41)は第1の規制ボルト(45)によってシリンダ(21)に固定されている。また、規制板(41)は、環状の上側突起部(42)と環状の下側突起部(43)とを備えている。尚、上記充填材(51)は、本発明に係る充填部材を構成している。
【0067】
上記上側突起部(42)は、上記規制板(41)の上部に形成された環状の凸部材であって、本発明に係る突起部材を構成している。この上側突起部(42)は、フロントヘッド(22)の上端位置まで延びて該フロントヘッド(22)の外周部と所定間隔の隙間をもって囲むように配置されている。また、図9に示すように、上側突起部(42)とフロントヘッド(22)との間の環状の隙間には、その周方向に亘って充填材(51)が充填されている。この充填材(51)によってシリンダ(21)の半径方向への移動が規制されている。
【0068】
上記下側突起部(43)は、上記規制板(41)の下部に形成された環状の凸部材であって、本発明に係る突起部材を構成している。この下側突起部(43)は、リアヘッド(23)の下端位置まで延びて該リアヘッド(23)の外周部と所定間隔の隙間をもって囲むように配置されている。また、下側突起部(43)とリアヘッド(23)との間の環状の隙間には、その周方向に亘って充填材(51)が充填されている。この充填材(51)によってシリンダ(21)の半径方向への移動が規制されている。
【0069】
−運転動作−
ここで、上記ピストン(14)の公転によって作動室(36)内の冷媒が圧縮されると、ピストン(14)を収容するシリンダ(21)に対し、圧縮荷重に起因した半径方向(クランク軸(13)と直交する方向)への横ずれ荷重が加わることになる。
【0070】
しかしながら、シリンダ(21)は、規制板(41)と上側突起部(42)と充填材(51)とによって移動が規制されている。具体的には、シリンダ(21)に対して高圧に起因する半径方向への横ずれ荷重が加わると、シリンダ(21)はクランク軸(13)と半径方向に移動しようとする。ところが、上側突起部(42)とフロントヘッド(22)との間(下側突起部(43)とリアヘッド(23)との間)には、充填材(51)が充填されているため、シリンダ(21)はシリンダヘッド(22,23)に対して半径方向に移動することができない。
【0071】
また、充填材(51)は、シリンダ(21)やシリンダヘッド(22,23)に対してクランク軸(13)の軸方向へ負荷をかけることなく、シリンダ(21)をシリンダヘッド(22,23)に対して半径方向に固定している。このため、シリンダ(21)やシリンダヘッド(22,23)がクランク軸(13)の軸方向へ変形することはない。
【0072】
−実施形態2の効果−
本実施形態2によれば、上側突起部(42)とシリンダヘッド(22,23)との間に充填材(51)を設けたため、横ずれ荷重が発生しても、上側突起部(42)及び下側突起部(43)が、シリンダヘッド(22,23)に近づくのを防止することができる。これにより、シリンダ(21)がシリンダヘッド(22,23)に対して半径方向へずれるのを確実に防止することができる。この結果、ボルトの締結力を大きくすることなく、シリンダ(21)の横ずれを防止することができる。その他の構成、作用・効果は実施形態1と同様である。
【0073】
−実施形態2の変形例−
次に、上記実施形態2の変形例について説明する。本変形例は、上記実施形態2に係るシリンダ部(20)の構成が異なっている。このため、本変形例では、シリンダ部(20)の構成について説明する。
【0074】
具体的には、図10及び図11に示すように、本変形例に係るシリンダ部(20)は、実施形態2に係るシリンダ部(20)がシリンダ(21)の外周面(30)を覆う規制板(41)を備えていたのに代えて、シリンダ(21)に上側突起部(42)と下側突起部(43)とを形成するようにしている。また、本変形例に係るシリンダ部(20)は、実施形態1に係るシリンダ部(20)が規制板(41)とシリンダ(21)とを固定する第1の規制ボルト(45)を備えていたのに代えて、シリンダ(21)と規制板(41)とを一体形成したものである。
【0075】
上記上側突起部(42)は、シリンダ(21)の外周の上部に形成された環状の凸部材であって、本発明に係る突起部材を構成している。この上側突起部(42)は、フロントヘッド(22)の上端位置まで延びて該フロントヘッド(22)の外周部と所定間隔の隙間をもって囲むように配置されている。また、図11に示すように、上記上側突起部(42)とフロントヘッド(22)との間の環状の隙間には、その周方向に亘って充填材(51)が充填されている。この充填材(51)によってシリンダ(21)の半径方向への移動が規制されている。
【0076】
上記下側突起部(43)は、シリンダ(21)の外周の下部に形成された環状の凸部材であって、本発明に係る突起部材を構成している。この下側突起部(43)は、リアヘッド(23)の下端位置まで延びて該リアヘッド(23)の外周部に所定間隔の隙間をもって囲むように配置されている。また、下側突起部(43)とリアヘッド(23)との間の環状の隙間には、その周方向に亘って充填材(51)が充填されている。そして、この充填材(51)によってシリンダ(21)の半径方向への移動が規制されている。
【0077】
本変形例によれば、上側突起部(42)、及び下側突起部(43)と上記シリンダ(21)と一体に形成したため、実施形態2のように規制板(41)と第1の規制ボルト(45)を設けることなく、上記上側突起部(42)、及び下側突起部(43)を形成することができる。これにより、圧縮機(10)の製造コストを低減することができる。その他の構成、作用・効果は実施形態2と同様である。
【0078】
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態1及び2(各変形例も含む)について、以下のような構成としてもよい。
【0079】
本実施形態1及び2では、圧縮機(10)に一つの圧縮機構(12)を有する、いわゆる単段圧縮機に本発明を適用したが、本発明は、単段圧縮機に限られず、複数の圧縮機構を有する圧縮機(例えば二段圧縮機)についても適用することができる。
【0080】
また、本実施形態1及び2では、本発明をロータリ型の圧縮機に対して適用したが、本発明は、膨張機やスクロール型の圧縮機についても適用することができる。
【0081】
また、本実施形態1では、上側突起部(42)、又は下側突起部(43)の周方向に等間隔で4箇所のボルト孔が形成され、水平方向(クランク軸(13)と直交方向)外方から第2の規制ボルト(46)が挿通されていたが、本発明は、図12に示すように、上側突起部(42)、又は下側突起部(43)の周方向に等間隔で3箇所のボルト孔を形成し、水平方向(クランク軸(13)と直交方向)外方から第2の規制ボルト(46)を挿通するようにしてもよい。尚、ボルト孔、及び第2の規制ボルト(46)の数は例示であり、これに限られない。
【0082】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明は、圧縮機構を有する圧縮機について有用である。
【符号の説明】
【0084】
13 クランク軸
13a 軸本体
14 ピストン
21 シリンダ
22 フロントヘッド
23 リアヘッド
35 偏心部
42 上側突起部
43 下側突起部
51 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部(13a)と、該軸部(13a)の回転中心から偏心した偏心部(13b)とで構成される駆動軸(13)と、上記偏心部(13b)の外周部に設けられる環状のピストン(14)と、該ピストン(14)を収容する環状のシリンダ(21)と、該シリンダ(21)の上記駆動軸(13)の軸方向両端部を閉塞する環状のヘッド部材(22,23)とを備えた流体機械であって、
上記シリンダ(21)に固定され、少なくとも1つのヘッド部材(22,23)の側方に位置する突起部材(42,43)と、該突起部材(42,43)の上記ヘッド部材(22,23)に対する半径方向への移動を規制する規制部(46,51)とを備えている
ことを特徴とする流体機械。
【請求項2】
請求項1において、
上記規制部(46)は、上記突起部材(42,43)と上記ヘッド部材(22,23)とを固定する固定部材(46)を備えている
ことを特徴とする流体機械。
【請求項3】
請求項2において、
上記固定部材(46)は、上記突起部材(42,43)の外方から該突起部材(42,43)と上記ヘッド部材(22,23)とを固定するよう構成され、
上記規制部(46)は、上記固定部材(46)を複数個備える一方、上記複数の固定部材(46)のうち、少なくとも2つの固定部材(46)が上記駆動軸(13)の直交線上に対向して配置されている
ことを特徴とする流体機械。
【請求項4】
請求項2において、
上記固定部材(46)は、上記突起部材(42,43)の外方から該突起部材(42,43)と上記ヘッド部材(22,23)とを固定するよう構成され、
上記規制部(46)は、上記固定部材(46)を複数個備える一方、上記複数の固定部材(46,46,46)は、上記突起部材(42,43)の周方向に等間隔を置いて配置されている
ことを特徴とする流体機械。
【請求項5】
請求項1において、
上記突起部材(42,43)と上記ヘッド部材(22,23)との間には、所定間隔の隙間が形成され、
上記規制部(51)は、上記隙間を埋める充填部材(51)を備えている
ことを特徴とする流体機械。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一つにおいて、
上記突起部材(42,43)は、上記シリンダ(21)と一体に形成されて構成されている
ことを特徴とする流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−132385(P2012−132385A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286132(P2010−286132)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】