説明

流体流からエネルギーを捕捉する装置

【課題】流体流からエネルギーを捕捉する装置を提供する。
【解決手段】流体流に対し定置装着される基部を備える。長手方向軸21を有する部材20が基部に対し可動的に接続されており、長手方向軸21が部材20を通過する流体流の方向に平行な垂直面に略沿った位置に向け基部に対し動くよう構成されている。揚力発生要素26が部材20に接続されており、流体流がその周りを流れる際に揚力発生要素26が生成する揚力方向を変えることができるよう流体流の方向に可動となっている。揚力発生要素26が生成する揚力は、基部に対する揺動動作により部材20を駆動する。部材20にはエネルギー伝達機構が取り付けられ、部材20の揺動により駆動されるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には流体流から、より具体的には潮汐流や海流、または流れの速い河川からエネルギーを捕捉する装置に関する。
【0002】
本発明は、主に水力発電に使用するため開発されてきたものであり、本出願を参照して後述する。しかしながら、本発明は特定の用途に限定されるものでなく、風から発電するのに使用することもできる。また、電気を発生するかわりに、装置には淡水化のための高圧力水源を生成する往復動式ポンプに適用したり、他の外部装置を駆動するようにしてもよい。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、潮汐流や河川の流れからエネルギーを捕捉する装置を開示している。この装置は、海底に固定的に取り付けられる支柱と、この支柱に摺動可能に装着される底部開放浮遊タンクとを含む。幾つかの水中翼が、タンクの側部に水平軸周りにそれぞれ回動可能に蝶番接続される。タンクは、水中翼の傾斜角度を装置を通過する水流の方向に対し変化させることにより、支柱に沿った垂直揺動運動にて駆動される。タンクが揺動する際に、タンク内の空気の圧力が変化する。タンク内には配管が配設されており、タンク内の圧力変化により生成される空気流に応じて電力を発生させる高速タービンが収容されている。
【0004】
特許文献1に開示された装置は、水流の方向変化に対して整列配置し直すことができない点で不利である。他にも特許文献1に開示された装置は、水の抵抗に抗する大型タンクの所要動作のために、水流からエネルギーを十分捕捉できない点で不利である。特許文献1に開示された装置の別の欠点は、複数の中間段階(水から水中翼、水中翼からタンクの動作、タンクの動作から空気の圧縮、空気圧縮からタービンを通過する流れ)を介さねばならず、流体からのエネルギーが間接的な態様にて発電機に伝達されるため、全体的な効率が低減してしまう点にある。他にも、特許文献1に開示された装置は、水中翼が与えられる流体流を最適活用していない点で不利である。さらに特許文献1の装置は、開示された水中翼の形状が、不安定な揺動流内であまり効率的でない点でも不利である。
【0005】
さらに潮汐流と海流の大きさは、一般的な状況と潮汐流の周期内の段階とに応じて変化する。流れはある状況では極めて低速かもしれず、他の状況では極端に高速となるかもしれない。特許文献1に開示された装置は、固定された配置のためその動きを広範に変化する能力がなく、変化する水流の大きさに十分に応答しない点で不利である。特許文献1の装置が唯一調整できる点は、水中翼の角度である。従って、特許文献1の装置を効果的に作動させることのできる条件範囲は極めて制約されている。
【特許文献1】米国特許第6731018号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記欠点の少なくとも1以上を実質的に克服し、または改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、第1の態様にあっては、本発明は流体流からエネルギーを捕捉する装置を提供するものであり、この装置は、
前記流体流に対し定置装着される基部と、
長手方向軸を有し、前記基部に可動接続された部材であって、前記長手方向軸が前記部材を通過する前記流体流の方向に平行な垂直面に略沿った位置に向け前記基部に対し動くよう構成された、部材と、
前記部材に取り付けられ、前記流体流の方向に可動である揚力発生要素であって、前記流体がその周囲を流れる際に前記揚力発生要素により生ずる揚力の方向を変化させ、これにより前記部材を前記基部に対する揺動運動にて駆動する揚力発生要素と、
前記部材に取り付けられ、前記部材の振動により駆動されるエネルギー伝達機構と、を備えるものである。
【0008】
前記部材は前記流体流に応じて前記長手方向軸が前記垂直面に略沿った前記位置へと動くよう構成されることが好ましい。部材は、第1の枢支軸周りに前記基部に揺動可能に装着することが好ましい。好適な形態にあっては、前記部材は前記第1の枢支軸周りに少なくとも180度、より好ましくは360度揺動可能である。前記第1の枢支軸は略垂直であることが好ましい。前記部材の長手方向軸は略水平であることが好ましい。好適な形態にあっては、部材は流線形である。
【0009】
前記流体は水であり、前記揚力発生要素は水中翼であることが好ましい。水中翼は、前記部材に対し第2の揺動軸周りに枢支接続されることが好ましい。第2の揺動軸が略垂直であり、前記水中翼が略水平方向の揚力を生成するようにすることが好ましい。水中翼の前縁と後縁との間を延びる面が略三日月形であるとより好ましい。水中翼は複合材から形成されることが好ましい。中翼の少なくとも一部は、水力に応じて撓むようになっていることが好ましい。撓むようになっている部分は水中翼の上部分及び/又は下部分であることがより好ましい。
【0010】
または前記流体は空気であり、前記揚力発生要素は空中翼である。空中翼は、前記部材に対し第2の揺動軸周りに枢支接続されることが好ましい。第2の揺動軸はほぼ垂直である、前記空中翼はほぼ水平方向の揚力を生成するようにすることが好ましい。その前縁と後縁との間を延びる前記空中翼の面が略三日月形であるとより好ましい。空中翼は、複合材から形成されると好ましい。空中翼の少なくとも一部は、流体の力に応じて撓むようにすることが好ましい。撓むようになっている部分は空中翼の上部分及び/又は下部分であると好ましい。
【0011】
アクチュエータが部材と揚力発生要素との間を延び、流体流の方向に対し揚力発生要素を動かすことが好ましい。アクチュエータはトルクモータにより駆動されることが好ましい。少なくとも一つの流体流パラメータを計測するセンサを配設していると、より好ましい。コントローラが、前記センサの出力に基づき前記揚力発生要素の動きを制御することが好ましい。コントローラは、前記揚力発生要素の動きをリアルタイムで制御すると好ましい。
【0012】
コントローラは、センサが検出する値が装置を損壊させかねない流体の力を示す場合、前記垂直面に対し平行に近い位置に揚力発生要素の動きを制御するようにすることが好ましい。センサが指示する値に応じ、揚力発生要素を前記垂直面にほぼ平行な流線形の構成に移行させて保持する。
【0013】
コントローラはまた、好ましくはセンサが検出する値が前記装置を損壊させかねない流体の力を示さない場合、流体流の方向に対と揚力発生要素の動きを制御し、部材による揺動エネルギーの生成を増大させるようにする。
【0014】
基部は略垂直な支柱を含むことが好ましい。好適な形態では支柱は略筒状である。基部は、支柱に固定的に接続されて複数の係留具により地盤に取り付けられる円形の装着フランジを含んでいると好ましい。
【0015】
機械は前記エネルギー伝達機構に接続され駆動されることが好ましい。機械は、モータと発電機の両方として機能するようにできることが好ましい。前記機械には同期式永久磁石モータ/発電機を組み込まれていると好ましい。好適な形態では、モータ/発電機の固定子はモータ/発電機の下側で前記基部に固定的に接続される。前記モータ/発電機の回転子は、モータ/発電機の下側に装着された軸受により前記固定子に対し同軸的に保持されると好ましい。モータ/発電機が完全に封止され、被加圧不活性ガスを充填して内部腐食や漏洩を防止することが好ましい。一部実施形態では、基部に対し部材を駆動したり流体の力の働きに抗して部材を固定位置に保持するように、モータ/発電機に外部電力を供給することができる。または、前記機械はエネルギー伝達機構の揺動動作により駆動するポンプである。
【0016】
第2の態様において、本発明は流体流からエネルギーを捕捉する装置を提供し、この装置は、
前記流体流に対し定置装着される基部と、
長手方向軸を有し、前記基部に可動接続された部材と、
前記部材に接続され、前縁と後縁とそれらの間を延びる略三日月形の面を有する揚力発生要素であって、前記流体流に対し可動であり、前記流体がその周囲を流れる際に前記揚力発生要素により生ずる揚力の方向を変化させ、これにより前記部材を前記基部に対する揺動運動にて駆動する、揚力発生要素と、
前記部材に取り付けられ、前記部材の揺動により駆動されるエネルギー伝達機構と、を備えるものである。
【0017】
前記部材は、前記長手方向軸が前記垂直面に略沿った前記位置へと前記流体流に応じて動くようにすることが好ましい。また、前記部材は前記長手方向軸が前記垂直面に略沿った前記位置に向け前記流体流に応じて動くよう構成されることが好ましい。前記部材は、前記第1の枢支軸周りに枢着されることが好ましい。好適な形態では、前記部材は前記第1の枢支軸周りに少なくとも180度、より好ましくは360度揺動可能である。第1の枢支軸は略垂直であることが好ましい。前記部材の長手方向軸は略水平であることが好ましい。好適な形態にあっては、部材は流線形である。
【0018】
前記流体は水であり、前記揚力発生要素は水中翼であることが好ましい。水中翼は、前記部材に対し第2の揺動軸周りに枢支接続されると好ましい。前記第2の揺動軸が略垂直であり、水中翼が略水平方向の揚力を生成するようにするとより好ましい。水中翼は、複合材から形成することが好ましい。水中翼の少なくとも一部は、水力に応じて撓むようになっていることが好ましい。撓むようになっている部分が水中翼の上部分及び/又は下部分であると、より好ましい。
【0019】
前記流体は空気であり、前記揚力発生要素は空中翼であることが好ましい。空中翼は、前記部材に対し第2の揺動軸周りに枢支接続されることが好ましい。前記第2の揺動軸は略垂直であり、空中翼は略水平方向の揚力を発生するようにすると、より好ましい。空中翼は複合材から形成されると好ましい。空中翼の少なくとも一部は、空気の力に応じて撓むようになっていることが好ましい。撓むようになっている部分が空中翼の上部分及び/又は下部分であると、より好ましい。
【0020】
アクチュエータが前記部材と前記揚力発生要素との間を延び、流体流の方向に対し揚力発生要素を動かすことが好ましい。このアクチュエータはトルクモータにより駆動されることが好ましい。少なくとも一つの流体流パラメータを計測するセンサを備えると、より好ましい。コントローラはセンサに応答し、前記センサの出力に基づき前記揚力発生要素の動きを制御することが好ましい。コントローラは、揚力発生要素の動きをリアルタイムで制御することが好ましい。
【0021】
コントローラは、センサが検出する値が装置を損傷させる可能性があるような流体の力を示す場合、部材を通過する流体の方向に平行な垂直面に対し平行に近い位置に揚力発生要素の動きを制御するようにすることが好ましい。センサが指示する値に応じ、揚力発生要素は前記面に略平行な流線形の構成に移行させて保持することができる。
【0022】
コントローラはまた、センサが検出する値が装置を損傷させる可能性があるような流体の力を示さない場合、流体流の方向に対する揚力発生要素の動きを制御し、部材による揺動エネルギーの生成を増大させることが好ましい。
【0023】
基部は略垂直な支柱を含むことが好ましい。好適な形態にあっては支柱は略筒状である。基部は、前記支柱に固定的に接続されて複数の係留具により地盤に取り付けられる円形の装着フランジを含むことが好ましい。
【0024】
機械は、前記エネルギー伝達機構に接続され駆動されることが好ましい。前記機械はモータと発電機の両方として機能するようにすることが好ましい。前記機械は同期式永久磁石モータ/発電機を組み込んでいるとより好ましい。好適な形態にあっては、モータ/発電機の固定子は前記モータ/発電機の下側で前記基部に固定的に接続される。前記モータ/発電機の回転子は、前記モータ/発電機の下側に装着された軸受により前記固定子に対し同軸的に保持されることが好ましい。モータ/発電機は完全に封止され、被加圧不活性ガスを充填されて内部腐食や漏洩を防止することが好ましい。一部実施形態では、基部に対し部材を駆動したり流体の力の働きに抗して部材を固定位置に保持するように、モータ/発電機に外部電力を供給することができる。
【0025】
または、前記機械はエネルギー伝達機構の揺動動作により駆動するポンプとする。
【0026】
第3の態様において、本発明は流体流からエネルギーを捕捉する装置を提供し、この装置は、
前記流体流に対し定置装着される基部と、
長手方向軸を有し、前記基部に対し可動接続された部材と、
前記部材に接続された揚力発生要素であって、前記流体流の方向に対し可動であり、前記流体がその周囲を流れる際に前記揚力発生要素により生ずる揚力の方向を変化させ、これにより前記部材を前記基部に対する揺動運動にて駆動する、揚力発生要素と、
少なくとも一つの流体流パラメータを示す値を検出するセンサと、
前記センサが検出する値に基づき、流体流の方向に対する揚力発生要素の動きを制御するコントローラと、
前記部材に取り付けられ、前記部材の揺動により駆動されるエネルギー伝達機構と、を備えるものである。
【0027】
コントローラは、センサが検出する値が装置を損傷させる可能性があるような流体の力を示す場合、揚力発生要素の動きを部材を通過する流体流の方向に平行な垂直面に対し平行に近い位置へ制御することが好ましい。センサが示す値に応答して、揚力発生要素を前記面に略平行な流線形構成に移行させて保持する。
【0028】
コントローラはまた、流体流の方向に対し揚力発生要素の動きを制御し、センサが示す値が装置を損傷させる可能性があるような流体の力を示さない場合、部材による揺動エネルギーの生成を増大させることが好ましい。
【0029】
アクチュエータが部材と揚力発生要素との間を延びて流体流の方向に対し揚力発生要素を動かすことが好ましい。このアクチュエータは、コントローラが制御するトルクモータにより駆動されることが好ましい。
【0030】
前記部材は前記長手方向軸が部材を通過する流体流の方向に平行な垂直面に略沿った位置に向け前記基部に対し動くよう構成されることが好ましい。前記部材は前記長手方向軸が前記垂直面に略沿った前記位置に向け流体流に応じて動くようにすることが好ましい。部材は第1の枢支軸周りに揺動可能であることが好ましい。好適な形態にあっては、前記部材は前記第1の枢支軸周りに少なくとも180度、より好ましくは360度揺動可能である。第1の揺動軸は略垂直であることが好ましい。部材の長手方向軸は略水平であることが好ましい。好適な形態にあっては部材は流線形である。
【0031】
前記流体が水であり、前記揚力発生要素が水中翼であることが好ましい。水中翼は、好ましくは前記部材に対し第2の揺動軸周りに枢支接続する。第2の揺動軸が略垂直であり、水中翼が略水平方向の揚力を生成するようにすると好ましい。水中翼の前縁と後縁との間を延びる面が略三日月形であるとより好ましい。水中翼は複合材から形成されることが好ましい。水中翼の少なくとも一部は水力に応じて撓むよう構成されることが好ましい。撓むよう構成される部分は水中翼の上部分及び/又は下部分であるとより好ましい。
【0032】
前記流体は空気であり、前記揚力発生要素が空中翼であることが好ましい。空中翼は、前記部材に対し第2の揺動軸周りに枢支接続されることが好ましい。第2の揺動軸は略垂直であり、空中翼は略水平方向の揚力を生成するようにすると好ましい。水中翼の前縁と後縁との間を延びる面は略三日月形であるとより好ましい。空中翼は複合材から形成されると好ましい。空中翼の少なくとも一部は、空気の力に応じて撓むようにすると好ましい。撓むようにする部分は空中翼の上部分及び/又は下部分であるとより好ましい。
【0033】
基部は略垂直な支柱を含むことが好ましい。好適な形態にあっては支柱は略筒状である。基部は、前記支柱に固定的に接続されて複数の係留具により地盤に取り付けられる円形の装着フランジを含むと好ましい。
【0034】
機械は前記エネルギー伝達機構に接続されて駆動されることが好ましい。機械はモータと発電機の両方として機能するようにできると好ましい。前記機械が同期式永久磁石モータ/発電機を組み込んでいると、より好ましい。好適な形態にあっては、前記モータ/発電機の固定子は前記モータ/発電機の下側で前記基部に固定的に接続される。前記モータ/発電機の回転子は、前記モータ/発電機の下側に装着された軸受により前記固定子に対し同軸的に保持されると好ましい。モータ/発電機は完全に封止されており、被加圧不活性ガスを充填されて内部腐食や漏洩を防止すると好ましい。一部実施形態では、基部に対し部材を駆動したり流体の力の働きに抗して部材を固定位置に保持するように、モータ/発電機に外部電力を供給することができる。
【0035】
または、前記機械はエネルギー伝達機構の揺動動作により駆動されるポンプである。
【0036】
第4の態様において、本発明は流体流からエネルギーを捕捉する装置を提供し、この装置は、
前記流体流に対し定置装着される基部と、
長手方向軸を有し、前記基部に可動接続された部材であって、前記長手方向軸が前記部材を通過する前記流体流の方向に平行な垂直面に略沿った位置に向け前記基部に対し動くようにした、部材と、
前記部材に接続され、前縁と後縁とそれらの間を延びる略三日月形の面を有する揚力発生要素であって、前記流体流の方向に対し可動であり、前記流体がその周囲を流れる際に前記揚力発生要素により生ずる揚力の方向を変化させ、これにより前記部材を前記基部に対する揺動運動にて駆動する、揚力発生要素と、
前記部材に取り付けられ、前記部材の揺動により駆動されるエネルギー伝達機構と、を備えるものである。
【0037】
第5の態様において、本発明は流体流からのエネルギーを捕捉する装置を提供し、この装置は、
前記流体流に対し定置装着される基部と、
長手方向軸を有し、前記基部に可動接続された部材であって、前記長手方向軸が前記部材を通過する前記流体流の方向に平行な垂直面に略沿った位置に向け前記基部に対し動くよう構成された、部材と、
前記部材に接続した揚力発生要素であって、前記流体流の方向に対し可動であり、前記流体がその周囲を流れる際に前記揚力発生要素により生ずる揚力の方向を変化させ、これにより前記部材を前記基部に対する揺動運動にて駆動する、揚力発生要素と、
少なくとも一つの流体流パラメータを示す値を検出するセンサと、
前記センサが検出する値に基づき、前記流体流の方向に対する前記揚力発生要素の動きを制御するコントローラと、
前記部材に取り付けられ、前記部材の揺動により駆動されるエネルギー伝達機構と、を備えるものである。
【0038】
第6の態様において、本発明は流体流からのエネルギーを捕捉する装置を提供し、この装置は、
前記流体流に対し定置装着される基部と、
長手方向軸を有し、前記基部に可動接続された部材と、
前記部材に接続された揚力発生要素であって、前縁と後縁とそれらの間を延びる略三日月形の面を有し、前記流体流の方向に対し可動であり、前記流体がその周囲を流れる際に前記揚力発生要素により生ずる揚力の方向を変化させ、これにより前記部材を前記基部に対する揺動運動にて駆動する、揚力発生要素と、
少なくとも一つの流体流パラメータを示す値を検出するセンサと、
前記センサが検出する値に基づき、前記流体流の方向に対し前記揚力発生要素の動きを制御するコントローラと、
前記部材に取り付けられ、前記部材の揺動により駆動されるエネルギー伝達機構と、を備えるものである。
【0039】
第7の態様において、本発明は流体流からのエネルギーを捕捉する装置を提供し、この装置は、
前記流体流に対し定置装着された基部と、
長手方向軸を有し、前記基部に可動接続された部材であって、前記長手方向軸が前記部材を通過する前記流体流の方向に平行な垂直面に略沿った位置に向け前記基部に対し動くよう構成された、部材と、
前記部材に接続した揚力発生要素であって、前縁と後縁とそれらの間を延びる略三日月形の面を有し、前記流体流の方向に対し可動であり、前記流体がその周囲を流れる際に前記揚力発生要素により生ずる揚力の方向を変化させ、これにより前記部材を前記基部に対する揺動運動にて駆動する、揚力発生要素と、
少なくとも一つの流体流パラメータを示す値を検出するセンサと、
前記センサが検出する値に基づき、前記流体流の方向に対する前記揚力発生要素の動きを制御するコントローラと、
前記部材に取り付けられ、前記部材の揺動により駆動されるエネルギー伝達機構と、を備えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
ここで本発明の好適な実施形態を、例示のみにより添付図面を参照し、説明する。
【0041】
図1に、潮汐流や海流、または流れの早い河川等の水流からエネルギーを捕捉する装置10の一実施形態を示す。装置10は、ほぼ円形の装着フランジ14とこのフランジ14に固定的に接続されてほぼ垂直に延びる筒状支柱16とを含む、基部12を備える。装着フランジ14は、複数の基礎ボルト18により水流に対し定置装着されるようになっている。
【0042】
基部12は、水流に対し装置10を係留する係留装置の一部を形成している。係留装置は、本出願人の先のオーストラリア仮特許出願第2006904030号と、これに基づき優先権を主張する同時係属国際特許出願とに詳しく開示されており、それらの開示は本願明細書に参照により取り込まれるものとする。
【0043】
図1と図2に示すように、長手方向軸21を有する流線形の揺動可能部材20は、端部20aで、ほぼ垂直な枢支軸22周りで円柱16に枢支接続されている。部材20は、水流に応じ、長手方向軸21が流体流の方向に平行で部材20を通過する垂直面にほぼ沿う位置に向けて、基部12に対し動くよう構成されている。部材20は、水流の方向に応じて基部12の周りを360度自由に揺動することができる。出力軸(図示せず)の形態のエネルギー伝達機構が部材20に接続され、その揺動により駆動されるよう構成されている。
【0044】
図1と図2を再度参照すると、ほぼ水平な揚力を生成するために水中翼26の形態である揚力発生要素が、略垂直な枢支軸27周りに、部材20に対し他端部20bにおいて枢支接続されている。水中翼26は水流の方向に対し枢支軸27周りに揺動的に可動であり、その周りを水が流れる際に水中翼26が生成する揚力方向を切り換え、これにより、枢支軸22周りに前記基部12に対する揺動運動にて部材20を駆動する。水中翼26は、その前縁30と後縁32との間を延びる略三日月形の面28を有する。
【0045】
図3と図4に示すように、水中翼26の水平断面は略両凸形状である。水中翼26は複合材から形成され、水力に応じて撓むよう構成された上部分及び下部分33を有する。これらの可撓性のある部分は、ゴム等の弾性材から形成される。
【0046】
部材20と水中翼26との間を延びる電子−空気圧式アクチュエータ(図示せず)は、トルクモータ(図示せず)により駆動されて水中翼26を部材20に対し水流Fの方向に対し動かす。水中翼26が図3に示す位置にある状態では、水中翼26周りを流れる水が生成する揚力Tが部材20を枢支軸22周りに反時計方向に動かす。水中翼26が図4に示す位置にある状態では、水中翼周りを流れる水が生成する揚力Tが部材を枢支軸22周りに時計方向に動かす。
【0047】
速度と水流Fの方向を含む水流パラメータを計測するために、センサ(図示せず)が配設されている。コントローラ(図示せず)はセンサに応答し、センサの出力に基づき水中翼26の動きをリアルタイムで制御する。コントローラは、トルクモータ(図示せず)を介するアクチュエータ(図示せず)への外部電力の印加を制御し、センサ出力が装置10を損傷させる可能性があるような水力を示していない場合には、水流Fの方向に対し水中翼26を連続的に配向し直し、部材20による揺動エネルギーの生成を最大化する。
【0048】
しかしながら、センサが検出する値が、装置10を損傷させる可能性があるような水力を示す場合には、コントローラがトルクモータを介してアクチュエータ(図示せず)への外部電力の印加を制御し、水流Fの方向に平行であり部材20を通過する垂直面に対し平行に近い位置へ水中翼26を移動させ、装置10に対する水力を低減することができる。センサが示す値に応答して、水中翼26は垂直面にほぼ平行な流線形構成へ移行し、維持されることができる。
【0049】
図1を参照すると、同期式永久磁石モータ/発電機34の形をとるエネルギー抽出機が部材20により駆動される出力軸(図示せず)の揺動動作により駆動される。モータ/発電機34は、支柱16頂部において出力軸に装着されている。モータ/発電機34の固定子は、モータ/発電機34下側の支柱16に固定的に接続される。モータ/発電機34は、モータ/発電機34の上面に装着された軸受(図示せず)により固定子に同軸的に保持される。モータ/発電機34は、内部腐食や漏洩を防止するため完全に封止され、加圧された不活性ガスが充填されている。必要に応じ、コントローラの制御下でモータ/発電機34に外部電力を供給し、水力の動きに抗して部材20を固定位置に保持してもよい。
【0050】
使用時、部材20と出力軸(図示せず)の揺動動作がモータ/発電機34を駆動し、配電網(図示せず)に供給される水力電気を生成する。
【0051】
部材20は、水流の方向変化に都合よいように配置可能であることが理解されるだろう。また、センサとコントローラとモータの配設が水中翼26を連続的に配向し直すと有利であり、最適なエネルギー捕捉効率を提供するとともに、装置10への損傷を防止できるようになる。略三日月形の水中翼26によりさらに、高速流内と同様、流体流の方向に対する大きな水中翼角度での流れ分離の発生と揚力発生力の付随損失とを低減することによってより高い性能が提供される。また、細長い部材20の端部に水中翼26を装着することによって水中翼26が生成する慣性モーメントが増大し、これに対応して出力軸(図示せず)に与えられる揺動エネルギーが増大する。
【0052】
特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、他の多くの形態でも実施可能であることは理解されるだろう。例えば、
・水中翼26を略水平な軸周りに部材20に枢支接続してもよく、部材20を略水平軸周りに揺動運動にて駆動してもよい。
・モータ/発電機34を部材の揺動動作により駆動されるポンプで置き換え、淡水化用または他の外部装置を駆動する高圧水源を生成してもよい。
・部材20を、複数の水中翼に接続してもよい。
・部材20を、軸22周りに180度だけ揺動させてもよい。
・揚力発生要素26がそこから電気を発生する空中翼となるように、装置10を空気流内に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】水流からエネルギーを捕捉する装置の一実施形態の概略斜視図である。
【図2】図1の部材と水中翼の概略斜視図である。
【図3】部材の反時計方向の動きに対応する位置にある水中翼を図示した図1の装置の概略平面図である。
【図4】部材の時計方向の動きに対応する位置にある水中翼を図示した図1の装置の概略平面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 装置
14 装着フランジ
16 支柱
18 基礎ボルト
20 流線形揺動可能部材
20a 端部
20b 他端部
21 長手方向軸
22 枢支軸
26 水中翼
27 枢支軸
28 面
30 前縁
32 後縁
33 上部分及び下部分
34 同期式永久磁石モータ/発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流に対し定置装着される基部と、
前記基部に可動接続され長手方向軸を有する部材であって、前記長手方向軸が前記部材を通過する前記流体流の方向に平行な垂直面に略沿った位置に向け前記基部に対し動くよう構成された、部材と、
前記部材に取り付けられ前記流体流の方向に可動である揚力発生要素であって、前記流体がその周囲を流れる際に該揚力発生要素により生ずる揚力の方向を変化させ、これにより前記部材を前記基部に対する揺動運動にて駆動する、揚力発生要素と、
前記部材に取り付けられ、前記部材の振動により駆動されるエネルギー伝達機構と、を備える、流体流からエネルギーを捕捉する装置。
【請求項2】
前記部材が、前記長手方向軸が前記垂直面に略沿った前記位置へと前記流体流に応じて動くよう構成された、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記部材が第1の枢支軸周りに揺動可能に前記基部に装着された、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記部材が前記第1の枢支軸周りに360度揺動可能である、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記第1の揺動軸が略垂直である、請求項3又は4に記載の装置。
【請求項6】
前記部材の長手方向軸が略水平である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記部材が流線形である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記流体が水であり、前記揚力発生要素が水中翼である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記水中翼が第2の揺動軸周りに前記部材に枢支接続された、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記第2の揺動軸が略垂直であり、前記水中翼が略水平方向の揚力を生成する、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記水中翼の前縁と後縁との間を延びる面が略三日月形である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記水中翼が複合材から形成された、請求項8〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記水中翼の少なくとも一部分が、好ましくは水力に応じて撓むよう構成された、請求項8〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記撓むよう構成された部分が、前記水中翼の上部分及び/又は下部分である、請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記流体が空気であり、前記揚力発生要素が空中翼である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記空中翼が第2の揺動軸周りに前記部材に枢支接続された、請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記第2の揺動軸が略垂直であり、前記空中翼が略水平方向の揚力を生成する、請求項16記載の装置。
【請求項18】
前記空中翼の前縁と後縁との間を延びる面が略三日月形である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記空中翼が複合材から形成された、請求項15〜18のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記空中翼の少なくとも一部分が空気の力に応じて撓むよう構成された、請求項15〜19のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記撓むよう構成された部分が、前記空中翼の上部分及び/又は下部分である、請求項20記載の装置。
【請求項22】
前記部材と前記揚力発生要素との間を延び、前記揚力発生要素を前記流体流の方向に対し動かすアクチュエータを備える、請求項1〜21のいずれか1項に記載の装置。
【請求項23】
少なくとも一つの流体流パラメータを計測するセンサをさらに備える、請求項1〜22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記センサが、前記装置に作用する流体流の力を示す流体流パラメータを計測する、請求項23記載の装置。
【請求項25】
前記センサに応答して、前記センサの出力に基づき前記揚力発生要素の動きを制御するコントローラをさらに備える、請求項24記載の装置。
【請求項26】
前記コントローラが前記揚力発生要素の動きをリアルタイムで制御する、請求項25記載の装置。
【請求項27】
前記センサが検出する値が前記装置を損傷させる可能性があるような流体の力を示す場合、前記コントローラが前記垂直面に対し平行に近い位置に前記揚力発生要素の動きを制御する、請求項25又は26記載の装置。
【請求項28】
前記センサが示す前記流体流の力が所定の大きさを上回る場合、前記コントローラが前記揚力発生要素の動きを前記垂直面に略平行な流線形の構成に制御する、請求項25〜27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
前記センサが検出する値が前記装置を損傷させる可能性があるような流体の力を示さない場合、前記コントローラが前記流体流の方向に対する前記揚力発生要素の動きを制御し、前記部材による揺動エネルギーの生成を増大させる、請求項25〜28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
前記基部が略垂直な支柱を備える、請求項1〜29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記支柱が略筒状である、請求項30記載の装置。
【請求項32】
前記基部が、前記支柱に固定的に接続されて複数の係留具により定置体に取り付けられる円形の装着フランジを含む、請求項30又は31記載の装置。
【請求項33】
前記エネルギー伝達機構に接続されて駆動される機械をさらに備える、請求項1〜32のいずれか1項に記載の装置。
【請求項34】
前記機械がモータと発電機の両方として機能するよう構成された、請求項33記載の装置。
【請求項35】
前記機械が、前記エネルギー伝達機構の揺動動作により駆動されるポンプである、請求項33記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−261341(P2008−261341A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−148016(P2008−148016)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【分割の表示】特願2008−525339(P2008−525339)の分割
【原出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(508041769)バイオパワー システムズ プロプライエタリー リミテッド (4)
【Fターム(参考)】