説明

流体混合物

2個のガス源(1,4)からの気体を可撓性の物理的障壁(12)で二分割したチャンバ(17,16)にそれぞれ送り、チャンバ(16,17)全域で圧力が均一な気体混合装置。各チャンバからそれぞれの気体を同時に混合容器(7)へ開放し、圧力放出による可撓性障壁(12)の圧力平衡効果によって、望ましい気体混合物の混合特性を適宜管理する。この装置を分配器または希釈器と呼称しても構わない。窒素中、例えば1%の低濃度一酸化炭素をさらに窒素と混合して、0.001%濃度に希釈するのに使用しても構わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体混合物の製造に関し、とりわけ、被分析ガス(検体ガス)の濃度が様々なガス混合物の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
標準的なガス混合物は、ガスシリンダ(ガスボンベ)で入手可能である。シリンダは、マトリックスガス(窒素など)中に一定濃度の被分析ガス(一酸化炭素など)を収めている。シリンダ中の被分析ガス濃度は、混合物の製造中に決定され、その後は調整ができない。ガス混合物は一定濃度の基準として保証されている。
【0003】
シリンダ内で加圧下に貯蔵されている低濃度ガス混合物は、シリンダの内面との相互作用により、安定しない可能性がある。低濃度のガス混合物を得る場合には、加圧シリンダで貯蔵しても、より安定な高濃度混合物を希釈する方法が、しばしば採用される。
【0004】
適切な希釈を実行させるのには、被分析ガスのガス流とマトリックスガスのガス流を結合させる。2つのガス流の流量を調整することで、混合ガス流における検体濃度が調整される。こうした機能を果たす現存の様々な技術を利用した各種の装置は、"ガス流希釈器"または"気体分配器"として通常知られる。現在、検体ガス濃度の異なるガス混合物を得る際には、被分析ガス混合物と、マトリックスガスと、ガス流希釈器と、これを一緒に組み合わせる部品が使用されている。
【0005】
DE10060326号は、シリンダ内の多孔質ピストンの動きにより二酸化炭素と窒素の混合具合を調整する装置を開示する。この装置は混合物の濃度を調整できるものの、混合比を精密に調整することはできない。さらに、この装置は100:1を超える希釈率には不向きである。その理由は、ピストンをその移動範囲の一方の端まで近づけなければならないが、そうすると、精密調整が実行不能になるからである。
【0006】
FR2532858号は、1つのガスの流量を測定し、所定濃度のガス混合物を得るために必要な比率に、他のガスの流量を自動的に調整するところの、質量流量の測定と調整を利用した装置を開示する。この装置は複雑で、電気機械部品や電子要素を内蔵する。さらに、較正基準として使用できるほど正確な濃度のガス混合物を生成するには不向きである。
【0007】
US5,544,674号には、混合する2つのガスの流量を制御するための第1及び第2制御バルブを備えるガス混合弁が開示されている。この制御バルブは、混合比を変えずに流量の変化を相殺させることを目論むものである。しかし、この目論みの成否は、バルブの流量調整面の形状に依存し、また、バルブの開き具合の調整に使用する2個のカムの相対的位置と形状に依存する。従って、この装置は機械的に複雑であり、ある程度の較正(キャリブレーション)は可能であるものの、較正基準として使用するほど正確ではない。
【0008】
US2005/0115987号には、それぞれのシリンダからのガス流量を制御する手段を持つ一つのシリンダと、そのシリンダ内に配置された別の一つのシリンダを備えた装置が開示されている。この装置では、気体混合物の濃度に影響を与えずに、ガスの総出力流量を迅速に調整することができない。流量の制御に、圧力計とオリフィスを備えた圧力調整器が使用されるが、流量制御は、正確な較正基準として使用できるほど精密ではない。
【0009】
既存のガス流希釈器は複雑である。大多数のものは、カムやその他の機械部品、電気機械部品及び電子部品にプリセット調整を利用しているので、出力されるガスの濃度は、総出力流量とは無関係になる。2つのガス流を別々に調整しなければならない既存の希釈器では、気体混合物の最終濃度が不正確になる可能性が高い。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、改善された流体混合物の生成を目的とする。
【0011】
本発明の第1態様によれば、請求項1に記載されているような装置が提供される。
【0012】
実質的に等圧で第1流体と第2流体が流量調整器に供給されると、流量調整器を通る第1流体と第2流体の流量は、絶対流動値に係わり無く、同じ比率に保たれる。第1流体の圧力は、第2流体の圧力で調整されるので、第2流体の圧力を変えると、第1流体の圧力も自動的に変わる。従って、流量調整器による第1及び第2流体の出力比率を有意に変えなくても、第2流体の圧力(すなわち、流量)を調整するだけで、全体的な流量の調整が可能である。
【0013】
好ましい態様では、本発明の均圧手段は、容量可変な容器である保持チャンバを含み、その容量可変な容器は、その容量が第2流体の圧力によって変化できるように配置される。この容量可変な容器は、第2流体の圧力が第1流体の圧力に直接影響を及ぼす好適な手段となる。いくつかの事例では、第1流体の量によって容量可変な容器の容量を決まる。
【0014】
好ましくは、容量可変な容器は、第2流体圧力に応答する可撓性の隔膜を備え、この隔膜の動きが容量可変な容器の容量を変化させる。可撓性隔膜は、第2流体の圧力変化に効率的に応答し、その圧力変化を第1流体の圧力変化に実質的に即座に反映させる。
【0015】
本発明の第1流量調整器は、好ましくは、保持チャンバの排気口に設けられ、第2流量調整器は、好ましくは、第2流体用チャンバの排気口に設けられる。
【0016】
上記の流量調整器は、好ましくは、臨界オリフィスである。適当な操作条件の下では、臨界オリフィスを経由するガスの質量流量は、オリフィス出口でのガス圧には関係なく、オリフィス入口にかかるガスの絶対圧に比例するので、ここでの臨界オリフィスの使用は特に好都合である。
【0017】
好ましくは、複数の流量調整器が、第1流体の出口下流及び/又は第2流体の出口下流に配置される。これら複数の流量調整器のいくつかを選択的に稼働させることで、流体混合物中の第1流体の濃度を変化させることができる。
【0018】
本発明の装置は、第1及び第2流体の温度を実質的に等しい温度に保つための温度調整手段(均温化手段)を好ましくは備えている。均温化は、第1流量調整器と第2流量調整器とが互いに及び/又は第1及び第2流体と熱的に密に接触するように配置することで、実現可能である。第1流体と第2流体を実質的に同一温度で流量調整器に供給すると、絶対温度に関係なく、第1流体と第2流体の流量は、同じ比率に保たれる。
【0019】
好ましい態様では、本発明の保持チャンバには、開閉可能で、第1流体の供給源に接続可能で閉鎖可能な入口が設けられる。これにより、本発明の装置には、予め決められた量の第1流体を貯留しておくことができ、また、保持チャンバに第1流体を補充することもできる。
【0020】
本発明の装置は、第1流体と第2流体を混合して混合物を形成する混合チャンバを備えることができる。
【0021】
本発明の第2態様によれば、請求項11に記載したような流体混合物を生成するための方法が提供される。
【0022】
前記の方法は、第1流体と第2流体を混合チャンバに供給する工程を含むことができる。
【0023】
好ましくは、保持チャンバは容量可変な容器であり、第1流体及び第2流体のそれぞれの圧力は、容量可変な容器の容量を減少させ、第1流体圧力を上昇させるために、第2流体を用いて選択された圧力に均圧化される。
【0024】
選択される圧力は、予め設定しておくことができる(プリセット)。
【0025】
本発明の方法では、保持チャンバに第1流体を充填する。これは、保持チャンバ内の第1流体が使い尽くされても、本発明の装置は再使用できることを意味する。
【0026】
好ましい具体例では、容量可変な容器に所望量の第1流体が注入されたら、均圧化するまで、容量可変な容器への第1流体の流入を停止する。これにより、所定量の第1流体が本発明の装置に蓄えられる。第1流体を一定流量に保持する必要はない。
【0027】
本発明の方法によれば、好ましくは、第1流体用に複数の流量調整器が用意され、それらの一つまたはそれ以上を選択して稼働させることにより、得られる流体混合物の濃度を変化させることができる。
【0028】
一具体例において、第2流体についても複数の流量調整器が用意され、それらの一つまたはそれ以上を選択して稼働させることにより、得られる流体混合物の濃度と総流量を変化させることができる。これにより、出力される流体混合物の濃度調整が付加的に可能になるばかりでなく、全流量の調整も可能になる。この濃度調整と流量調整は、相互依存性であって差し支えない。
【0029】
第1流体と第2流体は、実質的に等しい温度で、好ましくは、第1流量調整器及び第2流量調整器に供給される。これは、第1及び第2流体の流量が、絶対温度に関係なく、同じ比率に維持されていることを意味する。2つの流量調整器の温度も、好ましくは、第1流体及び第2流体のそれに等しい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1は本発明の好ましい実施例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図面を参照しながら本発明の好ましい実施例を例示の形で、以下に説明する。図1は本発明の好ましい実施例の略図である。
【0032】
純粋な検体ガスの所定量または標準濃度にある希釈された検体ガス(例えば、一酸化炭素濃度1%の窒素/一酸化炭素混合物)は、その所定量が、外部供給源から入口4およびタップ13経由で検体ガスチャンバ(保持チャンバ)16に導入される。次いでタップ13を閉じ、検体ガスチャンバ16内の検体ガスの圧力を圧力計18に表示させる。検体ガスチャンバ16は、ブロック11'(断面で表示)と可撓性隔膜12との間に形成され、可撓性隔膜12は、ブロックの周辺を密閉する。
【0033】
検体ガスチャンバ16の一つまたは複数の出口は、臨界オリフィス6,6'で構成されている。臨界オリフィスは、気体が音速で通過するオリフィスである。これは、入口でのガス圧が、出口でのガス圧の少なくとも2倍であるときに起こる。臨界オリフィスは、"音速ノズル"または"ソニック・ベンチュリ"としても知られている。臨界オリフィスから噴出する質量流量は、オリフィスの大きさと、上流側の絶対圧および絶対温度との関数である。
【0034】
マトリックスガス(例えば窒素)を収めたシリンダ1は、圧力調整器3に接続され、マトリックスガスは、ここを介して調圧された圧力でマトリックスガスチャンバ17に供給される。マトリックスガスチャンバ17は、ブロック11(断面で表示)と可撓性隔膜12との間に形成され、可撓性隔膜12は、ブロックの周辺を密閉する。マトリックスガスチャンバ17の出口は、臨界オリフィス5で構成される。
【0035】
臨界オリフィス5,6,6'が封じられると、ブロック11,11'内に密閉された調整内腔ができ、ここで、検体ガスとマトリックスガスとの良好な熱的接触が実現され、また、臨界オリフィス5,6,6'と、検体ガス及びマトリックスガスとが、実質的に等しい温度に維持される。ブロック11,11'は、好ましくは、金属製である。
【0036】
好ましい実施例では、ブロック11,11'が一緒に、可撓性ダイヤフラム12で分割される容量を取り囲んでいるのが分かる。可撓性ダイヤフラム12は被分析ガス16をマトリックスガスチャンバ17から隔て、それぞれの容量を変化させることを可能とする。
【0037】
臨界オリフィス5,6,6'は、それぞれの入口でのガス圧に比例する制御されたガス流を提供する。このガス流は、出力圧が入力圧のほぼ半分より小さければ、出口圧には依存しない。タップ14,15,15'は臨界オリフィス5,6,6'の下流側に設けられている。これらのタップが開放されると、臨界オリフィス5,6,6'は制御ガス流を混合チャンバ7に供給する。この実施例では、混合チャンバ7は、3つの入口と、生成された気体混合物用の1つの入口を備えている。
【0038】
上に説明した装置は、使用する気体種類に適した材料で組み立てられている。
装置の使用に際しては、最初に、所定量の検体ガスが、タップ13を介して検体ガスチャンバ16に充填される。検体ガスの充填前に、チャンバ16とこれに関連する配管内に残留する気体が、外部ポンプ(図示省略)を使って排気、除去される。これは、検体ガスチャンバ16が過去に保持していた気体によって、検体ガスが汚染されるのを最小限に抑えるためである。この工程は情況によって省略できる場合があり、例えば、同一の検体ガスをガスチャンバ16に再充填するときがその例である。検体ガスを充填したら、タップ13を閉める。
【0039】
マトリックスガスの流量は、圧力調整器3を調整して設定(例えば、圧力5バール(0.5MPa)のガスを毎分1標準リットルの如く)される。この流量が、マトリックスガスチャンバ17にかかるマトリックスガスの圧力を決める。マトリックスガスの圧力は、隔膜12がブロック11,11'の内壁間を自在に移動できる範囲内に設定すべきであり、このことは当業者であれば理解されよう。タップ14,15,15'を開けると、隔膜の位置が自動的に調整され、検体ガスチャンバ16内の検体ガス圧とマトリックスガスチャンバ17内のマトリックスガス圧とが等しくなる。
【0040】
隔膜12は極めて可撓性に富み、好ましくは、気体を通さない。隔膜はステンレス鋼などの薄い金属箔から作ることができ、また、ブロック11,11'の内面の形状にぴったりフィットするように作られている。この隔膜は、好ましくは、伸長でなく、屈曲及び折り曲げにより動く。従って、全ての臨界オリフィス5,6,6'は、実質的に同じガス入口圧を受け、これは圧力調整器3の出口圧に等しい。また、臨界オリフィス5,6,6'は、実質的に同じ温度にある。
【0041】
マトリックスガスに添加する検体ガスの量(従って、ガス混合物の濃度)は、タップ15,15'を選択的に閉じることで変更することできる。
【0042】
例えば、典型的なマトリックスガス圧である5バールで操作する場合、臨界オリフィス5を介して、混合チャンバ7に流れるマトリックスガスの流量は、1標準リットル/分である。タップ15が開いていると、臨界オリフィス6は、1分当たり1標準ミリリットルの検体ガスを混合チャンバ7に送る。タップ15'が開いていると、臨界オリフィス6'は、1分当たり2標準ミリリットルの検体ガスを混合チャンバ7に送る。タップ15と15'が両方開いていると、混合チャンバ7に送られる検体ガスの量は、1分当たり3標準ミリリットルである。
【0043】
検体ガスチャンバ16が1000ユニット濃度の検体ガスで充填されている場合、表1に示す濃度のガス混合物を得ることができる。
【0044】
【表1】

【0045】
上記の構成には多様な利点がある。
【0046】
構造がシンプルで、組み立て中に調整が要らず、操作に電源を必要としない。
【0047】
検体ガスは装置内に収容され、操作中、別個の検体ガスシリンダを装着しておく必要がない。先行技術による調整器は、最小限の一定流量の検体ガスが必要で、ガスの消費量を増やし、常に検体ガスシリンダを装着させておく必要がある。これとは対照的に、本発明では、検体ガスが検体ガスチャンバ16に収容されている。本発明の装置は、ごく少量の検体ガスが必要な高度の希釈に特に適している。
【0048】
検体ガスは、制御された一定割合で、外部供給源からのマトリックスガスの調整可能なガス流に加えられる。この際の割合は、周辺温度やマトリックスガスの圧力や、或る限定条件での出口圧力などに実質的に依存しない。
【0049】
可撓性の隔膜12を使用することで、マトリックスガスおよび検体ガスのチャンバ16,17の容量が可変になり、そのためにマトリックスガスと検体ガスの圧力を実質的に均等にできる。圧力が等しければ、臨界オリフィス5,6,6'を通過するマトリックスガスと被分析ガスの流量は、絶対流動値に関係なく、実質的に同じ割合に保たれる。総出口流量を増やすためには、圧力だけを、従って、マトリックスガスの流量だけを調整すれば足りる。マトリックスガスチャンバ17内のマトリックスガスの圧力が変化すると、検体ガスチャンバ16内のガス圧も自動的に変化する。2つの気体流量を別々に調整する従来技術によるシステムでは、流量の割合に微妙な変化を生じ、生成する気体混合物の最終濃度が不正確になる原因となる。別の従来技術によるシステムでは、検体ガスとマトリックスガスの圧力を均一にするのに差圧調整器を利用する。この類の調整器は、構造が相対的に複雑で、操作に伴う圧力差が不可避であり、正確に、均一圧力を実現することはできない。
【0050】
可撓性隔膜12は、曲げと屈曲(伸縮ではない)によって動くため、圧力の均一化に、隔膜12の表面間の圧力差を特に必要としない。
【0051】
臨界オリフィス5,6,6'の使用は、気体の質量流量が、上流側の絶対圧に比例して下流側の圧力とは無関係であるという理由で好都合である。従って、生成するガスの濃度は、マトリックスガスの圧力にだけ依存することになる。マトリックスガスの流量と検体ガスの流量は、どちらもマトリックスガスの圧力に比例するので、装置から出る気体の総流量は、両ガスの混合割合を自動的に同じ割合に維持しながら、マトリックスガスの圧力を調整することで変動させることができる。
【0052】
本発明の装置は、1個のシリンダしか使用しない場合(すなわち、ガス濃度が一律の場合)は、割高であるが、ガス濃度が多岐に亘る場合は、費用効率が順次改善される。その理由は、濃度の異なるガス混合物は、濃度が異なる毎に個別のガス供給源を用いなくても、2つのガス供給源を用いるだけで生成させることができるためである。
【0053】
本発明の装置は、一つだけで、ガス種及びその濃度が単一である気体混合物を生成できるほか、ガス種が複数で濃度も様々な気体混合物を生成することができる。
【0054】
装置が適正に較正されれば、検体ガスが添加される予定の気体混合物を、マトリックスガスと置き換えることができる。
【0055】
圧力計18は、正確な量の検体ガスが検体ガスチャンバ16に充填されたことを、プリセットした圧力を表示することで示し、また、全ての検体ガスが排出されたことを、圧力ゼロを表示することで示す。
【0056】
本発明の装置は、シリンダで安定して保存できる濃度より低濃度の気体混合物を製造できる。
【0057】
上記の実施例に様々な修正を加えることができる。
【0058】
本発明の装置は、一部または全ての構成要素を収容するためのハウジングを備えても構わない。例えば、マトリックスガスシリンダ1を除く全ての構成要素を、ハウジングに収めることができる。この場合のハウジングは、マトリックスガスシリンダ1に取付けでこれに支持させるのに好適なボックス型とすることができる。
【0059】
臨界オリフィス5,6,6'の代わりに、毛細管を使ってガスの流量を制御することもできる。しかし、気体の流量は、上流側の圧力だけでなく下流側の圧力にも依存するので、毛細管の使用はあまり好ましくない。その他の流量制限器を使用することもできる。
【0060】
非臨界オリフィスも使用できる。これらは音速以下の速度で操作する。
【0061】
検体ガスチャンバ16の下流に臨界オリフィスとタップを付加的に設けて、気体混合物の濃度調整範囲を広げることができる。一連の臨界オリフィスを使用する場合、好ましくは、各々のオリフィスは、隣接オリフィスの2倍の流量を通過させる。どの対応タップを開くかを選択することで、より広い範囲で異なる濃度の検体ガスを入手することができる。
【0062】
マトリックスガスチャンバ17の下流に臨界オリフィスとタップを付加的に設けて、気体混合物の濃度と総排出量の調整範囲を広げることができる。
【0063】
上記の可撓性隔膜12は、検体ガスチャンバ16の容量を変動させるための好ましい手段であるが、その他の構成も使用できる。
【0064】
真空ポンプを使わずに検体ガスチャンバ16を充填する方法では、タップ13を大気に開き、マトリックスガスの圧力で隔膜12を検体ガスチャンバ16内に完全に偏向させる。これにより、検体ガスチャンバの容量が最小となり、当該チャンバに先に収容されていた気体の大部分が排出される。これに続いて、タップ15,15'を開き、検体ガスをタップ13に接続させ、外部供給源から検体ガスチャンバ16に検体ガスを流入させ、検体ガスチャンバ16内に残留するガスがそっくり排出されるまで、臨界オリフィス6,6'に検体ガスを通過させる。次に、検体ガス及びマトリックスガスの流通を停止して、タップ14を開き、マトリックスガスチャンバ17内の圧力を大気圧まで下げる。次に、タップ15,15'を閉じ、検体ガスを所望圧力に達するまでタップ13を介してチャンバ16に送る。圧力計18が所望圧力への到達を表示したら、タップ13を閉じ、検体ガス供給源との接続を断つ。これで、装置の使用準備が整う。
【0065】
別の実施例では、所定の圧力および量で検体ガスが収納されているシリンダが、入口4に装着される。この例ではタップ13を省略することができ、これに代えてシリンダが使用される。検体ガスシリンダを接続する前に、マトリックスガスの圧力で隔膜12をブロック11'の内面に押し付け、残留ガスの大部分を排出させる。
【0066】
ユーザが自分で検体ガスチャンバ16を充填しても差し支えないが(すなわち、装置の最充填/再使用が可能であるが)、装置は検体ガスで予め充填させられる。予め充填する場合には、ユーザが使用する検体ガスの入口を設けても差し支えない。
【0067】
マトリックス圧力調整器3は、装置から独立させても構わない。
【0068】
好ましくは、被分析ガス源は、標準濃度である。
【0069】
上記した本発明の装置によれば、装置を流れる第2流体に、所定割合の第1流体を添加することで、いろいろな濃度の流体混合物を得ることができる。流体混合物の濃度は、検体ガスの濃度及び流量調整器の特性に正確に合致する。既存の技術では、外部シリンダからの検体ガスを連続的に流す必要があり、ガス流を個別に調整しなければならないので、最終濃度が不正確になる恐れがある。
【0070】
本願の優先権主張の基礎となる英国特許出願GB0702273.4号の記載内容ならびにこの出願の要約の内容を、本明細書に援用する。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体と第2流体の混合物を生成するための装置であって、
第1流体用の保持チャンバ(16)と、この保持チャンバから混合チャンバ(7)に流れる第1流体の流量を制御する第1流量調整器(6,6')と、
第2流体用の入口と、混合チャンバ(7)への第2流体の流量を制御する第2流量調整器(5)と、
第2流体の圧力によって保持チャンバ内の第1流体の圧力を調整し、第1流量調整器と第2流量調整器にかかる第1流体の圧力と第2流体の圧力が実質的に等しくなるようにする均圧手段(11',12,16)と、
を備えた前記の流体混合物生成装置。
【請求項2】
前記の均圧手段が、容量可変な容器である保持チャンバ(16)を備え、容量可変な容器の容量が、第2流体の圧力によって変化できるように、当該容器が配置されている請求項1に記載の装置。
【請求項3】
容量可変な容器(16)が、第2流体の圧力に応答する可撓性隔膜(12)を含み、当該隔膜の動きが、容量可変な容器の容量を変化させる請求項2に記載の装置。
【請求項4】
第1流量調整器(6,6')が保持チャンバの出口に設けられ、第2流量調整器(5)が第2流体用のチャンバ(17)の出口に設けられる請求項1、2、3の何れかに記載の装置。
【請求項5】
流量調整器(5,6,6')が臨界オリフィスである前記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項6】
複数の流量調整器(5,6,6')が、第1流体用出口及び/又は第2流体用出口の下流に配置される前請求項の何れかに記載の装置。
【請求項7】
第1及び第2流体の温度を実質的に等しい温度に保つ温度調整手段を含む前記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項8】
第1流量調整器と第2流量調整器とが、互いに密に熱的接触するか、あるいは第1流体及び第2流体と密に熱的接触するように配置されている請求項7に記載の装置。
【請求項9】
保持チャンバ(16)が、封鎖可能で、第1流体の供給源と接続可能な入口(4)を備える前記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項10】
内部で第1流体と第2流体が混合して混合物を形成する混合チャンバ(7)を備える前記請求項の何れかに記載の装置。
【請求項11】
第1及び第2流体の混合物を生成するための方法であって、
第1流体を収容する保持チャンバ(16)を用意し、保持チャンバ内の第1流体の圧力を第2流体圧力によって調整して第1流体及び第2流体の圧力を実質的に均一化し、実質的に等しい圧力で第1流体及び第2流体をそれぞれ第1流量調整器(6,6')及び第2流量調整器(5)に供給することで、それぞれの流量調整器から出る第1流体と第2流体の比率を実質的に一定に保つことを包含する前記の混合物生成法。
【請求項12】
第1流体と第2流体を混合チャンバ(7)への供給することを包含する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
保持チャンバ(16)が容量可変な容器であり、第2流体を使って第1流体及び第2流体の圧力を選択された圧力に均一化して、容量可変な容器の容量を減少させ、これにより、第1流体圧力を選択された圧力まで上昇させる請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
選択された圧力が予め設定されている請求項11、12、13の何れかに記載の方法。
【請求項15】
第1流体で保持チャンバ(16)を満たす請求項11〜14の何れかに記載の方法。
【請求項16】
所望量の第1流体が注入されたら、容量可変な容器(16)への第1流体の流入を停止し、均圧の間は、容量可変な容器には第1流体を流入させない請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第1流体用に複数の流量調整器(6,6')を設け、稼働させる流量調整器を選択することで、生成する流体混合物の濃度を加減する請求項11〜16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
第2流体用に複数の流量調整器(5)を設け、稼働させる流量調整器を選択することで、生成する流体混合物の全流量と濃度を加減する請求項11〜17の何れかに記載の方法。
【請求項19】
第1流体と第2流体を、実質的に等しい温度で第1流量調整器(6,6')と第2流量調整器(5)に供給する請求項11〜18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
流体混合物を生成するための装置であって、
第1流体用の保持チャンバ(16)と、この保持チャンバから混合チャンバへの第1流体の流量を制御する第1流量調整器(6,6')と、
第2流体用の出口と、混合チャンバへの第2流体の流量を制御する第2流量調整器(5)と、
第2流体の圧力によって保持チャンバ内の第1流体の圧力を調整し、第1及び第2流量調整器にかかる第1流体及び第2流体の圧力が、実質的に等しくなるようにする均圧手段(11',12,16)と、
を備えた流体混合物生成装置。
【請求項21】
流体混合物を生成するための方法であって、第1流体を収容する保持チャンバ(16)を用意し、第2流体の圧力によって保持チャンバ内の第1流体の圧力を調整することで、第1流体と第2流体の圧力を実質的に均一化し、第1流体及び第2流体を実質的に等しい圧力でそれぞれ第1流量調整器(6,6')及び第2流量調整器(5)に供給することで、
それぞれの流量調整器から出る第1流体/第2流体の比率を実質的に一定に保つことを包含する前記の流体混合物生成方法。

【公表番号】特表2010−517744(P2010−517744A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547746(P2009−547746)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004894
【国際公開番号】WO2008/096101
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(509220220)ザ セクレタリー オブ ステート フォー トレード アンド インダストリー (1)
【Fターム(参考)】