説明

流体用継手

【課題】雄側カプラと雌側カプラとの結合操作が容易な流体用継手を提供することを目的とする。
【解決手段】第1カプラ4は、筒状の第1本体10と、第1本体10の外周側に位置すると共に第1本体10の先端側に突出し、先端部に第1係合部70と第2係合部38aとが設けられた外筒38と、を備え、第2カプラ5は、第1本体10の内周面に沿って挿入される第2本体50を備え、第2本体50には、第1係合部70に係合可能とされた第3係合部52aと、第2係合部38aに係合可能とされた第4係合部51とが設けられ、第1係合部70と第3係合部52aとが係合される過程にて、位相が一致することによって、第2係合部38aと第4係合部51とが係合して外筒38と第2本体50とが結合されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体用継手に関し、特に、LNG(液化天然ガス)、液体窒素、液体酸素、液体水素、液体ヘリウム等の低温流体に用いて好的なものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液化天然ガス(以下、「LNG」という。)供給基地やLNG供給スタンド等の貯蔵タンクから、タンクローリー車やLNG駆動車などにLNG等の低温流体を供給する場合には、貯蔵タンク側に接続された固定側カプラ(以下、「雌側カプラ」という。)と、タンクローリー車やLNG駆動車などの移動体タンクに接続された移動体側カプラ(以下、「雄側カプラ」という。)とを接続する流体用継手が用いられている(例えば、特許文献1または特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2008−286339号公報
【特許文献2】特願2008−286340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1または特許文献2の発明は、雄側カプラの外筒と雌側カプラの外筒との結合操作が困難であるという問題があった。また、雄側カプラと雌側カプラとの継手の位相がずれている場合には、継手の結合が不完全となる問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、雄側カプラと雌側カプラとの結合操作が容易な流体用継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の流体用継手は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係る流体用継手は、流体を貯蔵する貯蔵タンク側に接続された第1カプラと、移動体に設置された移動体タンク側に接続された第2カプラと、を備え、両前記カプラ同士を結合することによって前記貯蔵タンクと前記移動タンクとの間で流体を流通させる流体用継手において、前記第1カプラは、筒状の第1本体と、該第1本体の外周側に位置するとともに該第1本体の先端側に突出し、先端部に第1係合部と第2係合部とが設けられた外筒と、を備え、前記第2カプラは、前記第1本体の内周面に沿って挿入される第2本体を備え、該第2本体には、前記第1係合部に係合可能とされた第3係合部と、前記第2係合部に係合可能とされた第4係合部とが設けられ、前記第1係合部と前記第3係合部とが係合される過程にて、位相が一致することによって、前記第2係合部と前記第4係合部とが係合して前記外筒と前記第2本体とが結合されることを特徴とする。
【0007】
第2係合部と第4係合部との係合は、第1係合部と第3係合部とを係合させる過程にて、第1係合部と第3係合部との位相を一致させることによって行われる。具体的には、第2係合部と第4係合部とが係合されれば、第1係合部と第3係合部とが係合可能となる位置関係とされている。そのため、第1係合部および第3係合部と、第2係合部および第4係合部との各々を別個に係合させることなく外筒と第2本体とを結合することができる。したがって、外筒を有する第1カプラと第2本体を有する第2カプラとの結合作業が容易となる。
【0008】
また、第1カプラと第2カプラとは、第1係合部と第3係合部、かつ、第2係合部と第4係合部との両方において係合される。したがって、第1カプラと第2カプラとの結合を堅固にすることができる。
【0009】
本発明に係る流体用継手によれば、前記外筒は、前記第1本体に対して軸方向に回転自由とされたことを特徴とする。
【0010】
外筒は、第1本体に対して軸方向に回転自由であるため、第1本体に対して第2本体を挿入する際に、外筒を第1本体に対して回転させることができる。そのため、第2本体に設けられている第3結合部と第4結合部と、第1本体の外筒に設けられている第1係合部と第2係合部との位相が異なっている場合であっても、容易に第1係合部と第3係合部と、第2係合部と第4係合部との位相を合わせることができる。したがって、第1カプラと第2カプラとの結合作業が容易になる。
【0011】
本発明に係る流体用継手によれば、前記第1係合部は、前記第1本体の前記外筒に設けられ、前記第3係合部は、前記第2本体の外側に設けられることを特徴とする。
【0012】
第1係合部は、第1本体の外筒に、また、第3係合部は、第2本体の外側に設けられる。そのため、第1係合部と第3係合部との係合状態を目視にて確認することができる。また、第2係合部と第4係合部との係合は、第1係合部と第3係合部とを係合させる過程にて、第1係合部と第3係合部との位相を一致させることによって行われる。そのため、第1係合部と第3係合部との係合状態を目視するとともに、第2係合部と第4係合部との係合状態を確認することができる。したがって、第1カプラと第2カプラとの不完全な結合を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、第2係合部と第4係合部との係合は、第1係合部と第3係合部とを係合させる過程にて、第1係合部と第3係合部との位相を一致させることによって行われる。具体的には、第2係合部と第4係合部とが係合されれば、第1係合部と第3係合部とが係合可能となる位置関係とされている。そのため、第1係合部および第3係合部と、第2係合部および第4係合部との各々を別個に係合させる必要がない。したがって、第1カプラと第2カプラとの結合作業が容易となる。
また、第1カプラと第2カプラとは、第1係合部と第3係合部、かつ、第2係合部と第4係合部との両方において係合される。したがって、第1カプラと第2カプラとの結合を堅固にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る流体用継手の斜視図である。
【図2】図1に示した流体用継手の結合前の状態を示す側面図である。
【図3】流体用継手の結合前の状態を示す縦断面概略図である。
【図4】流体用継手の結合状態を示す縦断面概略図である。
【図5】雌側カプラを示し、(A)は、その正面図であり、(B)は、外部結合用ロックの部分拡大図である。
【図6】雄側カプラを示し、(A)は、その正面図であり、(B)は、雄側カプラのC−C部における縦断面外略図である。
【図7】流体用継手の結合状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、LNG用継手(流体用継手)3の斜視図が示されている。
LNG供給基地の貯蔵タンクに設けられている貯蔵タンク側配管(図示せず)と、LNGローリに設けられているローリ側配管(図示せず)との間には、LNG用継手3が設けられている。
【0016】
LNG用継手(以下「継手」という。)3は、雌側カプラ(第1カプラ)4と、雄側カプラ(第2カプラ)5とを備えている。
雌側カプラ4は、雌側カプラ4に設けられているフランジ4aと、貯蔵タンク側配管に設けられているフランジ部(図示せず)とが、図示しないボルトにより締結されて、貯蔵タンク側配管に接続されている。また、雄側カプラ5は、雄側カプラ5に設けられているフランジ5aとローリ側配管に設けられているフランジ部(図示せず)とが、図示しないボルトにより締結されて、LNGローリに接続されている。
【0017】
雌側カプラ4と、雄側カプラ5との結合は、雌側カプラ4に設けられている外部ロック用フック(第1係合部)70と、雄側カプラ5に設けられている突出部52a(第3係合部)とが係合することによって行われる。また、この継手3を介したLNGの供給および停止は、作動レバー45を操作して、後述するポペット弁(図示せず)を開閉することによって行われる。
【0018】
図2には、継手3の雌側カプラ4と雄側カプラ5とが離間した状態の側面図が示されている。図3には、継手3の結合前の状態を示す縦断面概略図が示されている。図4には、継手3の結合状態を示す縦断面概略図が示されている。図5には、継手3の雌側カプラ4が示され、(A)は、その正面図を示し、(B)は、外部ロック用フック70の部分拡大図を示している。図6には、継手3の雄側カプラ5が示され、(A)は、その正面図を示し、(B)は、(A)に示したC−C部の断面図を示している。図7には、継手3の結合状態を示す斜視図が示されている。
【0019】
雌側カプラ4は、筒状の雌側本体10(第1本体)を備えている。雌側本体10は、先端側(図2および図3において左方)が円筒形状とされており、基端部(図2および図3において右方)11に上述のフランジ4aを備えている。フランジ4aには、周方向に複数(例えば、4箇所)のボルト穴4b(図3参照)が設けられている。
なお、本実施形態において、以下では、基端側とは、カプラ4,5のフランジ4a,5a側を意味し、先端側とは、軸線方向に見た基端側の反対側を意味する。また、軸線方向とは、カプラ4,5が延在する方向(図2および図3において水平方向)を意味する。
【0020】
雌側本体10の内側には、雌側本体10と同一軸線を有する摺動リング体13(図3参照)が収納されている。摺動リング体13は、略リング形状とされており、雌側本体10の内周面に対して軸線方向に摺動し得るようになっている。また、摺動リング体13は、雌側本体10に対して回動し得るようになっている。
【0021】
摺動リング体13の先端側には、摺動リング体13の外周に形成された凹部に嵌挿されたシール用ブロック15が設けられている。シール用ブロック15は、ボルト16によって摺動リング体13に対して固定されている。ボルト16は、周方向に複数設けられており、雌側カプラ4の先端側から螺結されている。シール用ブロック15は、リング形状とされており、内周側にテーパ状に形成されたシール面18にシール部材17が設置されるようになっている。シール部材17としては、−162℃程度の低温であってもシール機能を発揮する材料が用いられ、例えば、3フッ化塩化エチレン樹脂や4フッ化エチレン樹脂が好適である。なお、後述するポペット弁30,40のシール部材31,41についても、同様の材質が用いられる。
【0022】
このように、シール面18に対して、後述する雄側カプラ5の先端は、液密に当接され得るようになっている。なお、シール用ブロック15は、雌側カプラ4の先端側からアクセスしてボルト16を外すことによって摺動リング体13から取り外すことができるようになっている。
【0023】
摺動リング体13の基端側には、摺動リング体13と同一軸線を有する蛇腹形状のベローズ21の一端が固定されている。ベローズ21の他端は、雌側本体10の基端部11に固定された固定ブロック20に固定されている。ベローズ21は、軸線方向に伸縮可能となっている。また、ベローズ21によってLNG流路23の外周限界が形成されている。すなわち、ベローズ21の内周側にLNG流路23が形成され、ベローズ21の外周側は、LNGが流れないようになっている。したがって、LNGは、固定ブロック20、ベローズ21及び摺動リング体13の内側を流れる。
【0024】
ベローズ21の内側には、ベローズ21と同一軸線を有する圧縮バネ25が設置されている。圧縮バネ25は、固定ブロック20の内周側に隣接配置されたバネ押え26と摺動リング体13の基端側の端面との間に配置されており、これにより、摺動リング体13を先端側に付勢し、摺動リング体13に負荷が加わらない図3の状態では閉弁状態を保持している。
【0025】
ベローズ21の内側でかつ圧縮バネ25の内側には、摺動リング体13と同一軸線を有する内筒27が設けられている。内筒27は、摺動リング体13の内周面から軸線方向に基端側に向かって延長された状態で一体的に形成されている。LNGは、一連に形成された内筒27及び摺動リング体13の内周面に沿って流れる。
【0026】
摺動リング体13の内周側には、雌側本体10の軸線上に延在する雌側ポペット弁30が設けられている。雌側ポペット弁30は、軸線上に延在する弁軸33と、弁軸33の先端に設けられた弁体32とを有している。
【0027】
弁体32は、弁軸33に対して拡径された略円錐台形状とされており、摺動リング体13の先端側の最内周に形成された弁座部に対して当接するシール部材31を有している。シール部材31には、上述した3フッ化塩化エチレン樹脂等のシール材が設置されている。
【0028】
弁軸33は、基端側が雌側本体10の基端部11に固定されている弁軸固定部材35に接続されている。具体的には、雌側本体10の基端部11の中央に弁軸固定部材35が固定されており、この弁軸固定部材35の中心に形成された孔に弁軸33を挿通させ、ナット36によって弁軸33を固定するようになっている。弁軸固定部材35は、周方向に複数設けられたボルト37によって、固定ブロック20及びバネ押え26と共に、雌側本体10に対して固定されている。なお、雌側ポペット弁30は、ナット36を外すことによって、取り外すことができるようになっている。
【0029】
雌側本体10の外周側には、外筒38が設けられている。外筒38は、リング形状とされている。外筒38は、その外周に突出する外筒側凸部(第2係合部)38aが設けられている。外筒側凸部38aは、円周方向に所定長さの間隔をおいて複数設けられている。外筒側凸部38aは、後述する雄側本体50の突出部52aに設けられている雄側本体凹部(第4係合部)51と係合するようになっている。
【0030】
外筒38の円筒壁部には、一つないし複数の孔38bが形成されている。これらの孔38bは、湿分を含んだ空気のパージ用の穴として用いられる。外筒38は、その外周にレバー用支持筒71が設けられている。レバー用支持筒71は、リング形状とされている。外筒38の外周側には、半径方向外側に向かって突出するキー部38c(図5(A)参照)が2箇所設けられている。これにより、レバー用支持筒71が軸線方向の先端側(図2および図3において左側)に移動することを規制している。
【0031】
外筒38には、外部ロック用フック70の外部ロック用基礎部70aが外部ロック用ボルト72によって固定されている。これにより、雌側本体10に対して、外筒38と外部ロック用フック70とを一体として回動させることができる。
レバー用支持筒71は、外筒38の基端部側に設けられているフランジ部11及び外筒38に設けられているキー部38cに挟まれるように設けられている(図1参照)。これにより、レバー用支持筒71が軸線方向の基端部側に移動することを規制している。また、レバー用支持筒71は、外筒38とキー部38cとに挟まれているが、外筒38に固定されていない。そのため、レバー用支持筒71は、外筒38に対して回動自由とされている。
【0032】
外部ロック用フック70は、外部ロック用基礎部70aと、外部ロック用基礎部70aに接続されている外部ロック用ピン部材70bと、外部ロック用ピン部材70bによって外部ロック用基礎部70aに対して回転自在に接続されているフック部70cとを有している。フック部70cは、その外形状が直方体形状を有している(図5(B)参照)。フック部70cは、下方に向かって凹部を有し、軸線方向に直交する断面がコ字形状をしている。フック部70cの凹部の大きさは、雄側カプラ5の基端部52に設けられている突出部52aに係合する大きさとされている。また、フック部70cは、1の外筒側凸部38aと周方向において同じ位相の位置に設けられている。
【0033】
外筒38は、さらに、雌側本体10に対して軸線方向に相対移動が可能とされている。具体的には、作動レバー45を回動することによって、外筒38を軸線方向に移動させる。作動レバー45は、作動レバー接続部材73に回動支点45aが設けられている。作動レバー接続部材73は、作動レバー接続部材用ボルト73aによってレバー用支持筒71の外周に接続されている。
【0034】
また、作動レバー45は、雌側本体10に対して作用点45bにて回転自由に固定されている。これにより、作動レバー45を回動させることによって、雌側本体10と外筒38とを軸線方向に相対移動させることができるようになっている。すなわち、作動レバー45の把持部45cを外筒38の上方に位置する状態から雌側本体10側に引きつけて作動レバー45を倒すことによって、雌側本体10を外筒38に対して先端側に移動させることができる(図7参照)。
【0035】
雄側カプラ5は、筒状の雄側本体50を備えている。雄側本体50は、先端側(図2および図3において右方)が円筒形状とされており、基端部(図2および図3において左方)52に上述のフランジ5aを備えている。この基端部52の外周には、先端側に突出する突出部(第3係合部)52aが形成されている。
【0036】
基端部52のフランジ部5aには、ボルト穴5b(図6参照)が設けられている。これらのボルト穴5bは、周方向に複数(例えば、4箇所)設けられている。さらに、基端部52には、これらのボルト穴5bの各間に周方向に所定長さの間隔をおいて突出部52aが複数設けられている。
【0037】
基端部52の内周側には、突出部52aによって差し込み凹部52bが形成される。この差し込み凹部52b内には、上述した外筒38の先端が挿入されるようになっている。これにより、両カプラ4,5の軸心合わせが容易に行われるようになっている。差し込み凹部52bには、挿入される外筒38の先端との間をシールするシール部材52cが設けられている。
【0038】
突出部52aの内周面には、雄側本体凹部51が設けられている。雄側本体凹部51は、周方向に所定長さの間隔をおいて複数設けられている。雄側本体凹部51は、雌側カプラ4に設けられた外筒側凸部38aと係合するように径方向の外側に向かって凹となっている。雄側本体凹部51と、突出部52aとは、周方向において同じ位相の位置に設けられている。雌側カプラ4に設けられている外筒側凸部38aとフック部7cとは、周方向において同じ位相の位置に設けられているので、突出部52aと、雌側カプラ4に設けられているフック部7cとの周方向の位相を合わせることによって、雄側本体凹部51と、雌側カプラ4に設けられている外筒側凸部38aとの周方向における位相の位置を同じとすることができる。
【0039】
雄側本体50の先端には、先端筒部54が設けられている。先端筒部54は、先端面の内周側が、前述した摺動リング体13の先端に設けられたシール面18に当接するシール面55となっている。また、先端筒部54の基端側壁部56は、円錐状のテーパ面となっており、雄側ポペット弁40のシール部材41が当接する弁座となっている。
【0040】
雄側本体50内には、雄側ポペット弁40が設けられている。
雄側ポペット弁40は、軸線上に延在する弁軸43と、弁軸43の先端に設けられた弁体42とを有している。
【0041】
弁体42は、弁軸43に対して拡径された形状とされており、先端筒部54の基端側壁部56に形成された弁座部に対して当接するシール部材41を有している。シール部材41には、上述した3フッ化塩化エチレン樹脂等のシール材が設置されている。
【0042】
両ポペット弁30,40が結合された際には、雄側ポペット弁40の平坦面42と雌側ポペット弁30の平坦面32とが対応する(図4参照)。したがって、カプラ4,5同士を接続する際にポペット弁30,40の先端面同士を対向させた場合に、ポペット弁30,40の先端部周りには空隙がほとんど形成されない形状となっている。
平坦面42は、上述した先端筒部54の先端から僅かに基端側に退避した位置に設置されている。
【0043】
雄側本体50の基端側の内周には、バネ押え60が設けられている。バネ押え60は、外周の複数位置に設置されるボルト61によって雄側本体50に固定されている。バネ押え60の中心には、孔部が形成されており、雄側ポペット弁40の弁軸43の基端側が挿通されるようになっている。弁軸43は、バネ押え60に対して軸線方向に移動自在とされている。したがって、雄側ポペット弁40は、ボルト61を外すことによってバネ押え60とともに取り外すことができるようになっている。
【0044】
バネ押え60と弁体40の基端側面との間には、弁体40と同一軸線を有する圧縮バネ63が配置されている。この圧縮バネ63によって、雄側ポペット弁40は先端側に付勢され、雄側ポペット弁40の先端面に対して基端側に向けた負荷が加わらない図3の状態では閉弁状態を保持している。
【0045】
次に、上記構成の継手3の雌側カプラ4と、雄側カプラ5との結合手順について説明する。
まず、LNGローリのローリ側配管に接続されている雄側カプラ5を貯蔵タンク側配管に接続されている雌側カプラ4に対して接近させる。そして、雌側カプラ4の外筒38の内周側に雄側カプラ5の雄側本体50の先端筒部54が収納されるように差し込む。この際に、外筒38の先端部は、雄側本体50に形成された差し込み凹部52bにガイドされる。
【0046】
外筒38を図2に示した矢印A方向に回すことによって、外筒38と外部ロック用フック70とは、軸線周りに回動される。外筒38を軸線周りに回動させて、外部ロック用フック70と、雄側本体50に設けられている突出部52aとを同じ位相に合わせる。外部ロック用フック70と突出部52aとを同じ位相の位置に合わせることにより、外筒38の外筒側凸部38aと雄側本体凹部51とを係合することができる。外部ロック用フック70のフック部70cの先端を外部ロック用基礎部70aに対して先端側に回動させる。これにより、フック部70cは、雄側本体50に設けられている突出部52aと係合する。また、フック部70cと突出部52aとが係合することによって、外筒側凸部38aと雄側本体凹部51との係合が保証される。外部ロック用フック70と突出部52aとが係合し、かつ、外筒側凸部38aと雄側本体凹部51とが係合することによって、外筒38と雄側本体50とが結合される。外筒38と雄側本体50とが結合されるので、これにより、雌側カプラ4と雄側カプラ5との結合手順が終了する。
【0047】
この状態では、両カプラ4,5のポペット弁30,40はいずれも閉とされている。雄側カプラ5の先端筒部54を雌側本体10に挿入した閉弁前の状態では、ポペット弁30の平坦面32と、ポペット弁40の平坦面42とは、僅かな隙間により隔てられた状態となっている。
【0048】
次に、両ポペット弁30,40を開弁状態にする手順について説明する。
作動レバー45の把持部45cを図7に示すように、外筒38の上方に位置する状態から雌側本体10側に引きつけて作動レバー45を倒すことによって、外筒38に対して雌側本体10を軸線方向に沿って先端側へと移動させる。この動作により、ポペット弁30の平坦面32とポペット弁40の平坦面42とが、互いに接触する。両ポペット弁30,40の先端は、先端面形状が略一致しているためほとんど空隙が形成されていない。さらに、摺動リング体13のシール面18と先端筒部54のシール面55とが押圧されて確実に接触する。そして、摺動リング体13が雌側ポペット弁30に対して基端側に移動し、雌側ポペット弁30のシール部材31が摺動リング体13から離間させられることによって雌側ポペット弁30が開弁される。この摺動リング体13の移動に伴って、ベローズ21は圧縮されて縮む。
【0049】
一方、雌側ポペット弁30は、雄側本体50内へと移動し、雄側ポペット弁40の先端面に当接して軸線方向に押圧し、雄側ポペット弁40を軸線方向に沿って基端側へと移動させる。これにより、雄側ポペット弁40のシール部材41が基端側壁部56から離間して開弁する。雄側ポペット弁40の移動に伴い、雄側ポペット弁40の弁軸43の基端側は、ローリ側配管内へと入り込む。
【0050】
このようにして、雌側ポペット弁30および雄側ポペット弁40が開弁され、図4の矢印で示す方向にLNGが流れる。なお、同図に示したLNGの流れ方向は、貯蔵タンク側からローリ側へとなっているが、もちろん、逆の流れ(すなわちローリ側から貯蔵タンク側)が行われる場合もある。
【0051】
LNGの供給を停止する場合には、上述の逆の手順を行う。
すなわち、雌側本体10側に引きつけられている作動レバー45の把持部45cを外筒38の上方に位置するように回動させることによって、外筒38に対して雌側本体10を軸線方向に沿って図4において右側に離間させる。これによって、ポペット弁30,40を閉弁させる。そして、外部ロック用フック70のフック部70cの先端を雌側本体10の基端部側に回動させて、外部ロック用フック70と突出部52aとの係合を解除する。
【0052】
外部ロック用フック70と突出部52aとの係合を解除した後に、外筒38を軸線周りに回動させる。これにより、外筒側凸部38aと、雄側本体凹部51との係合が解除される。外筒側凸部38aと、雄側本体凹部51との係合を解除した後に、雄側カプラ5を雌側カプラ4から離間させる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態にかかる継手3によれば、以下の作用効果を奏する。
外筒側凸部(第2係合部)38aと雄側本体凹部(第4係合部)51との係合は、外部ロック用フック(第1係合部)70と突出部(第3係合部)52aとを係合させることによって行われる。具体的には、外筒側凸部38aと雄側本体凹部51とが係合されれば、外部ロック用フック70と、突出部52aとが係合可能となる位置関係とされている。そのため、外部ロック用フック70および突出部52aと、外筒側凸部38aおよび雄側本体凹部51との各々を別個に係合させることなく外筒38と雄側本体50とを結合することができる。このように、外筒38と雄側本体(第2本体)50とを結合することができるので、外筒38を有する雌側カプラ(第1カプラ)4と雄側本体50を有する雄側カプラ(第2カプラ)5との結合作業が容易となる。
【0054】
また、雌側カプラ4と雄側カプラ5とは、外部ロック用フック70と突出部52a、かつ、外筒側凸部38aと雄側本体凹部51との両方において係合される。したがって、雌側カプラ4と雄側カプラ5との結合を堅固にすることができる。
【0055】
外筒38は、雌側本体(第1本体)10に対して軸線方向に回転自由であるため、雌側本体10に対して雄側本体(第2本体)50を挿入する際に、外筒38を雌側本体10に対して回動させることができる。そのため、雄側本体50に設けられている突出部52aおよび雄側本体凹部51と、雌側本体10の外筒38に設けられている外部ロック用フック70および外筒側凸部38aとの位相が異なっている場合であっても、容易に外部ロック用フック70と突出部52aと、および、外筒側凸部38aと雄側本体凹部51との位相を合わせることができる。したがって、雌側カプラ4と雄側カプラ5との結合作業が容易になる。
【0056】
外部ロック用フック70は、雌側本体10の外筒38に、また、突出部52aは、雄側本体50の外側に設けられる。そのため、外部ロック用フック70と突出部52aとの係合状態を目視にて確認することができる。また、外筒側凸部38aと雄側本体凹部51との係合は、外部ロック用フック70と突出部52aの位相を一致させることによって行われる。そのため、外部ロック用フック70と突出部52aとの係合状態を目視するとともに、外筒側凸部38aと雄側本体凹部51との係合状態を確認することができる。したがって、雌側カプラ4と雄側カプラ5との不完全な結合を防止することができる。
【0057】
なお、上述した実施形態では、低温流体の一例としてLNGを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、液体窒素、液体水素、液体酸素、液体ヘリウム等に対して適用することもできる。
【符号の説明】
【0058】
3 LNG用継手(流体用継手)
4 雌側カプラ(第1カプラ)
5 雄側カプラ(第2カプラ)
10 雌側本体(第1本体)
38 外筒
38a 外筒側凸部(第2係合部)
50 雄側本体(第2本体)
51 雄側本体凹部(第4係合部)
52a 突出部(第3係合部)
70 外部ロック用フック(第1係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を貯蔵する貯蔵タンク側に接続された第1カプラと、
移動体に設置された移動体タンク側に接続された第2カプラと、を備え、
両前記カプラ同士を結合することによって前記貯蔵タンクと前記移動タンクとの間で流体を流通させる流体用継手において、
前記第1カプラは、筒状の第1本体と、該第1本体の外周側に位置するとともに該第1本体の先端側に突出し、先端部に第1係合部と第2係合部とが設けられた外筒と、を備え、
前記第2カプラは、前記第1本体の内周面に沿って挿入される第2本体を備え、
該第2本体には、前記第1係合部に係合可能とされた第3係合部と、前記第2係合部に係合可能とされた第4係合部とが設けられ、
前記第1係合部と前記第3係合部とが係合される過程にて、位相が一致することによって、前記第2係合部と前記第4係合部とが係合して前記外筒と前記第2本体とが結合される流体用継手。
【請求項2】
前記外筒は、前記第1本体に対して軸方向に回転自由とされた請求項1に記載の流体用継手。
【請求項3】
前記第1係合部は、前記第1本体の前記外筒に設けられ、前記第3係合部は、前記第2本体の外側に設けられる請求項1または請求項2に記載の流体用継手。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169406(P2011−169406A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33896(P2010−33896)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】