説明

流体移送装置及びこれを具えた燃料電池

【課題】従来よりも小型で構造の簡単な流体移送装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る流体移送装置においては、所定の流路に面して振動板2が設置されると共に、該流路中に流路形成板4が介在し、該流路形成板4には少なくとも1つの流路孔41が開設され、振動板2と流路形成板4との間には、振動板2を超音波域で振動させたときに振動板2と流路形成板4の間に静圧が生じるようにギャップを設け、該静圧によって流体を移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動板を超音波域で振動させることによって流体を移送する流体移送装置、並びに該流体移送装置を具えた燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機等の小型電子機器に電源として燃料電池を搭載することが検討されている。
燃料電池は、エネルギー変換効率が高く、然も発電反応によって有害物質を発生しないため、種々の電気機器のエネルギー源として注目されている。燃料電池においては、電解質膜の両側に空気極及び燃料極を配置して膜・電極接合体(MEA)が構成されており、空気や酸素などの酸化性気体をMEAの空気極側に供給すると共に、メタノールなどの燃料を気体又は液体のままMEAの燃料極側に供給することによって、発電が行なわれる。
【0003】
小型電子機器に燃料電池を搭載するためには、燃料電池の空気極や燃料極に空気や燃料を供給する流体移送装置の小型化が必要となる。
従来、小型の流体移送装置としては、表面弾性波を利用して流体の移送を行なうもの(特許文献1参照)、団扇状の部材の振動を利用して流体の移送を行なうもの(特許文献2、特許文献3参照)、ダイヤフラム型圧電振動子を利用して流体の移送を行なうもの(特許文献4参照)、音響流を利用して流体の移送を行なうもの(特許文献5参照)などが提案されている。
【特許文献1】特開2004−14192号公報
【特許文献2】特開2004−214128号公報
【特許文献3】特開2002−184430号公報
【特許文献4】特開昭63−162980号公報
【特許文献5】特開昭63−72295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の何れの流体移送装置においても、小型電子機器に燃料電池と共に搭載し得る程度にまで小型化することが困難であり、実用化に至っていない。本発明の目的は、従来よりも小型で、構造の簡単な流体移送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは上記目的を達成するべく鋭意研究を行なった結果、超音波ポンプに発想を得て、小型の流体移送装置の開発に成功した。
超音波ポンプは、例えば図31に示す様に、液槽(100)中に円筒状ノズル(101)の先端部を浸漬すると共に、該ノズル(101)の基端部を超音波振動装置(103)に連結して構成され、ノズル(101)に垂直方向の超音波振動を与えることによって、液槽(100)中の液体がノズル(101)によって吸い揚げられるものであり、ノズル(101)の先端部に対向してプレート(102)を配置し、ギャップGを設けることにより更に大きな吐出量が得られる(例えば、Japanese Journal of Applied Physics Vol.43 No.5 B,2004 ”An Ultrasonic Suction Pump with No Physically Moving Parts”、Japanese Journal of Applied Physics Vol.44 No.6 B,2005 ”Characteristics of Ultrasonic Suction Pump Without Moving Parts”、Science Direct Ultrasonics 44(2006))。
【0006】
本発明に係る第1の流体移送装置においては、所定の流路に面して振動板が設置されると共に、該流路中に流路形成板が介在し、該流路形成板には少なくとも1つの流路孔が開設され、前記振動板と流路形成板との間には、前記振動板を超音波域で振動させたときに前記振動板と流路形成板の間に静圧が生じるようにギャップを設け、該静圧によって流体を移送する。
【0007】
本発明者らは、上記本発明の第1の流体移送装置において振動板を超音波域で振動させると、流路内を振動板に面した流路孔の入口側から振動板とは反対の出口側へ向かって流体が流れる現象を、実験的に確認した。その原理は、図31に示す上述の超音波ポンプと基本的に同一と考えられ、本発明における前記ギャップが、図31に示す超音波ポンプのギャップGに相当する。
即ち、振動板の振動によって前記ギャップが変動し、振動の1周期の内、ギャップが小さくなる半周期では、流体が縮んで弾性係数が大きくなるのに対し、ギャップが大きくなる半周期では、流体が伸びて弾性定数が小さくなるため、ギャップが小さくなる半周期とギャップが大きくなる半周期で、振動に伴う動圧変化の波形に差異が生じ、この結果、時間平均値として有限の静圧が発生して、この静圧によって流体が一方向に移送されるものと考えられる。
【0008】
具体的には、前記流路と平行に或いは前記流路と直交して、前記振動板と流路形成板が設置されている。
【0009】
又、具体的には、前記振動板と流路形成板の間のギャップは、流路形成板を挟んで振動板とは反対側に設置されている流路壁との間のギャップよりも小さく設定されている。
これによって、流路形成板の流路孔を、振動板に面した入口から前記流路壁に面した出口へ向かって流体が流れることになる。
【0010】
又、前記振動板には、前記流路形成板の流路孔に向けて突片が突設されている。
これによって、流路形成板の流路孔の入口から出口へ向かう流体の流れが促進されることになる。
【0011】
他の具体的な構成において、前記流路形成板には複数の流路孔が開設され、該複数の流路孔は、流路の上流側に位置する流路孔の内径よりも流路の下流側に位置する流路孔の内径のほうが大きくなっている。
或いは、前記流路形成板と前記流路形成板を挟んで振動板とは反対側に設置されている流路壁との間のギャップは、流路の上流側から下流側に向かって増大している。
これによって、流路の上流側から下流側に向かう流体の流れが促進されることになる。
【0012】
更に具体的な構成において、前記振動板は、流路の流体の上流側から下流側へ向かって連続的に若しくは段階的に音響インピーダンスが減少する材質から形成されている。これによって、流路の流体の上流側から下流側へ向かって、流路内の流体を通る振動エネルギーと流路壁との反射率が低くなる。
或いは、前記振動板は、その厚さが流路の上流側から下流側へ向かって連続的に若しくは段階的に薄くなる様に形成されている。これによって、流路の上流側から下流側へ向かって振動板の振幅が大きくなる。
或いは、前記流路形成板に開設されている複数の流路孔は、互いの間隔が流路の上流側から下流側へ向かって徐々に大きくなる様に配置されている。
これらの具体的な構成によれば、流路の上流側から下流側に向かう流体の流れが促進されることになる。
【0013】
本発明に係る第2の流体移送装置においては、所定の流路中に振動板が介在し、該振動板には少なくとも1つの流路孔が開設され、該振動板と該振動板が対向する流路壁との間には、該振動板を超音波域で振動させたときに該振動板と前記流路壁の間に静圧が生じるようにギャップを設け、該静圧によって流体を移送する。
【0014】
本発明者らは、上記本発明の第2の流体移送装置において振動板を超音波域で振動させると、流路内を流路孔の入口側から出口側へ向かって流体が流れる現象を、実験的に確認した。その原理は、図31に示す上述の超音波ポンプと基本的に同一と考えられ、本発明における前記ギャップが、図31に示す超音波ポンプのギャップGに相当する。
即ち、振動板の振動によって前記ギャップが変動し、振動の1周期の内、ギャップが小さくなる半周期では、流体が縮んで弾性係数が大きくなるのに対し、ギャップが大きくなる半周期では、流体が伸びて弾性定数が小さくなるため、ギャップが小さくなる半周期とギャップが大きくなる半周期で、振動に伴う動圧変化の波形に差異が生じ、この結果、時間平均値として有限の静圧が発生して、この静圧によって流体が一方向に移送されるものと考えられる。
【0015】
具体的構成において、前記流路と平行に或いは前記流路と垂直に、前記振動板と前記流路壁が設置されている。
【0016】
又、具体的には、前記振動板と前記流路壁との間のギャップは、振動板を挟んで前記流路壁とは反対側に設置されている他方の流路壁との間のギャップよりも小さく設定されている。
これによって、振動板の流路孔を、前記流路壁に面した入口から前記他方の流路壁に面した出口へ向かって流体が流れることになる。
【0017】
又、前記流路壁には、前記振動板の流路孔に向けて突片が突設されている。
これによって、振動板の流路孔の入口から出口へ向かう流体の流れが促進されることになる。
【0018】
他の具体的な構成において、前記振動板には複数の流路孔が開設され、該複数の流路孔は、流路の上流側に位置する流路孔の内径よりも流路の下流側に位置する流路孔の内径のほうが大きくなっている。
或いは、前記振動板と前記振動板を挟んで前記流路壁とは反対側に設置されている流路壁との間のギャップは、流路の上流側から下流側に向かって増大している。
これによって、流路孔の入口側から出口側への流体の流れが促進されることになる。
【0019】
更に具体的な構成において、前記振動板は、流路の上流側から下流側へ向かって連続的に若しくは段階的に音響インピーダンスが減少する材質によって形成されている。これによって、流路の流体の上流側から下流側へ向かって、流路内の流体との反射率が低くなる。
或いは、前記振動板は、その厚さが流路の上流側から下流側へ向かって連続的に若しくは段階的に薄くなる様に形成されている。これによって、流路の上流側から下流側へ向かって振動板の振幅が大きくなる。
或いは、前記振動板に開設されている複数の流路孔は、互いの間隔が流路の上流側から下流側へ向かって徐々に大きくなる様に配置されている。
これらの具体的な構成によれば、流路の上流側から下流側に向かう流体の流れが促進されることになる。
【0020】
又、本発明に係る燃料電池は、前記の流体移送装置を具え、該流体移送装置に形成されている流路に沿って膜・電極接合体が設置されている。
該燃料電池によれば、流体移送装置によって膜・電極接合体に対して必要な流体が供給される。該燃料電池を電子機器に搭載することにより、電子機器の小型化が実現される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来よりも小型で構造の簡単な流体移送装置及び燃料電池を実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を燃料電池における流体移送装置に実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明に係る第1の流体移送装置は、図1に示す如く膜・電極接合体(1)(以下、MEA(1)という)の表面に対向して、平板状の振動板(2)を平行に設置して、MEA(1)と振動板(2)の間に流路を形成すると共に、該流路中に平板状の流路形成板(4)を平行な姿勢で介在させたものである。
【0023】
振動板(2)の表面には、図4(a)(b)に示す如くピエゾ圧電素子(3)が設置されて、振動板(2)に超音波域の振動が与えられる。これによって、振動板(2)には、図4(a)中に破線で示す様に前記流路と垂直な面内で屈曲波が発生する。
【0024】
流路形成板(4)には、図2に示す如く前記流路との対向面の全域に分散する複数の流路孔(41)が開設されている。又、図1の如く、流路形成板(4)と振動板(2)の対向面間のギャップG1は、流路形成板(4)とMEA(1)の対向面間のギャップG2よりも小さく設定されている。尚、流路孔(41)は、屈曲波の腹の位置に対向させて配置することが好ましい。
これによって、MEA(1)と振動板(2)の間の流路には、図1中に矢印で示す様に、振動板(2)側から流路形成板(4)の流路孔(41)を通過してMEA(1)側へ向かう流体の流れが形成されることになる。
この結果、MEA(1)の表面に沿う流体の流れが形成されることになって、MEA(1)の表面に流体が供給され、MEA(1)が発電する。
【0025】
図3は、図1に示す流体移送装置における振動板(2)の表面に、流路形成板(4)の各流路孔(41)へ向かって突出する複数の突片(7)を設けたものであり、これによって、振動板(2)側から流路形成板(4)の流路孔(41)を通過してMEA(1)側へ向かう流体の流れが促進されることになる。
この結果、MEA(1)の表面に沿う流体の流れが形成されて、MEA(1)の表面に流体が供給され、MEA(1)が発電を行なう。
【0026】
図5に示す流体移送装置においては、流路形成板(4)とMEA(1)の対向面間のギャップG1が、流路形成板(4)と圧電素子(3)の対向面間のギャップG2よりも小さく設定されると共に、流路形成板(4)に開設されている複数の流路孔(42)は、流路の上流側に位置する流路孔(42)の内径より下流側に位置する流路孔(42)の内径のほうが大きくなっている。
これによって、流路の上流側から下流側への流体の流れが促進され、流量が増大することになる。
又、MEA(1)側での排出方向への流体の流れも制御できるので、効率的に流体の流れを形成することが出来る。
【0027】
又、図6に示す流体移送装置においては、振動板(2)及び流路形成板(4)が斜めの姿勢に取り付けられて、流路形成板(4)とMEA(1)の対向面間における上流側のギャップG3よりも下流側のギャップG4が大きく、且つこれらのギャップG3及びG4が、流路形成板(4)と振動板(2)の対向面間のギャップG1よりも大きく設定されている。
これによって、流路の上流側から下流側への流体の流れが促進され、流量が増大することになる。
又、MEA(1)側での排出方向への流体の流れも制御できるので、効率的に流体の流れを形成することが出来る。
【0028】
図7(a)(b)は、円形の振動板(21)の表面にリング状の圧電素子(31)を設置して、図中の破線で示す様に振動板(21)に屈曲振動を与える流体移送装置を示している。該流体移送装置によれば、例えば図中の実線矢印で示す様に、振動板(21)の外側から内側へ向かう流体の流れを発生させることが出来る。
【0029】
又、図8は、振動板(2)の側面に圧電素子(3)を設置して、振動板(2)に対して垂直方向の疎密波を発生させる構成を示しており、これによっても同様に流路内に一方向の流れを発生させることが出来る。
【0030】
図9に示す流体移送装置においては、MEA(1)の表面を覆って筐体(5)が設置され、MEA(1)と筐体(5)の対向面間に流路を形成し、該流路の端部に、該流路と直交して振動板(22)を設置すると共に、該流路中に、該流路と直交して流路形成板(43)を設置したものである。振動板(22)の背面には圧電素子(32)が取り付けられている。
図10に示す如く、流路形成板(43)には、前記振動板(22)との対向面の全域に、複数の流路孔(44)が開設されている。
【0031】
上記流体移送装置においては、図11に示す如く振動板(22)に屈曲振動を与えることにより、筐体(5)の振動板(22)側の端部に設けられた流入口(図示省略)から流路形成板(43)の流路孔(44)を通過して筐体(5)の他方の端部に設けられた流出口へ向かって流体が移送される。
【0032】
上記流体移送装置においては、振動板(22)に1次振動モードを発生させる構成に限らず、図12(a)に示す如く振動板(22)の端部に圧電素子(33)を設置して、図中に破線で示す様に振動板(22)に高次の振動モードを発生させることも可能である。ここで、振動板(22)に発生する振動の腹の位置が流路形成板(43)の各流路孔(44)に対応するように構成すれば、効果的に流体を移送することが出来る。
又、図12(b)の如く、複数の振動板(23)を配列して、各振動板(23)に圧電素子(33)を設置することにより、高次の振動モードを発生させることも可能である。ここで、各振動板(23)を流路形成板(43)の各流路孔(44)に対向させて配置することにより、効果的に流体を移送することが出来る。
更に、図12(c)の如く、振動板(22)の側面に圧電素子(33)を設置して、振動板(22)に対して、前記流路と直交する面内で疎密波を発生させる構成を採用することも可能である。
【0033】
図13は、筐体(5)に流入口(51)を開設した例を示しており、該流入口(51)は、流路形成板(43)と振動板(22)の間の流路上流部に向けて開口している。
図14は、筐体(52)によって形成される流路の下流側に、振動板(24)を設置すると共に、筐体(52)には、該振動板(24)に対向させて流路孔(53)を開設した例を示しており、この様に流路の下流側に流体移送装置の要部を配置することも可能である。
【0034】
本発明に係る第2の流体移送装置は、図15に示す如くMEA(1)の表面に対向して、筐体(54)を設置して、MEA(1)と筐体(54)の間に流路を形成すると共に、該流路中に平行な姿勢で平板状の振動板(8)を介在させたものである。
【0035】
振動板(8)の表面には、図18(a)(b)に示す如くピエゾ圧電素子(3)が設置されて、振動板(8)に超音波域の振動が与えられる。これによって、振動板(8)には、図18(a)中に破線で示す様に前記流路と平行な面内で屈曲波が発生する。
【0036】
振動板(8)には、図16に示す如く前記流路との対向面の全域に分散する複数の流路孔(81)が開設されている。又、図15の如く、MEA(1)と振動板(8)の対向面間のギャップG1は、流振動板(8)と筐体(54)の対向面間のギャップG2よりも小さく設定されている。
これによって、MEA(1)と筐体(54)の間の流路には、図15中に矢印で示す様に、MEA(1)側から振動板(8)の流路孔(81)を通過して筐体(54)側へ向かう流体の流れが形成されることになる。
この結果、MEA(1)の表面に沿う流体の流れが形成されることになって、MEA(1)の表面に流体が供給され、MEA(1)が発電を行なう。
【0037】
図17は、図15に示す流体移送装置におけるMEA(1)の表面に、振動板(8)の各流路孔(81)へ向かって突出する複数の突片(7)を設けたものであり、これによって、MEA(1)側から振動板(8)の流路孔(81)を通過して筐体(54)側へ向かう流体の流れが促進されることになる。
この結果、MEA(1)の表面に沿う流体の流れが形成されて、MEA(1)の表面に流体が供給され、MEA(1)が発電を行なう。
【0038】
図19に示す流体移送装置においては、MEA(1)と振動板(8)の対向面間のギャップG1が、振動板(8)と筐体(54)の対向面間のギャップG2よりも小さく設定されると共に、振動板(8)に開設されている複数の流路孔(82)が、流路の上流側に位置する流路孔(82)の内径より下流側に位置する流路孔(82)の内径のほうが大きくなっている。
これによって、流路の上流側から下流側への流体の流れが促進され、流量が増大することになる。
又、MEA(1)側での排出方向への流体の流れも制御できるので、効率的に流体の流れを形成することが出来る。
【0039】
又、図20に示す流体移送装置においては、筐体(54)が斜めの姿勢に取り付けられて、振動板(8)と筐体(54)の対向面間のギャップは、MEA(1)と振動板(8)の対向面間のギャップG1よりも大きく、且つ流路の上流側におけるギャップG3よりも下流側のギャップG4が大きく設定されている。
これによって、流路の上流側から下流側への流体の流れが促進され、流量が増大することになる。
又、MEA(1)側での排出方向への流体の流れも制御できるので、効率的に流体の流れを形成することが出来る。
【0040】
図21(a)(b)は、複数の流路孔(84)を有する円形の振動板(83)の表面にリング状の圧電素子(31)を設置して、図中の破線で示す様に振動板(83)に屈曲振動を与える流体移送装置を示している。該流体移送装置によれば、例えば振動板(83)の外周側から内周側へ向かう流体の流れを発生させることが出来る。
【0041】
又、図22は、振動板(8)の側面に圧電素子(3)を設置して、振動板(8)に対して垂直の方向の疎密波を発生させる構成を示しており、これによっても同様に流路内に一方向の流れを発生させることが出来る。
【0042】
図23に示す流体移送装置においては、MEA(1)の表面を覆って筐体(55)が設置され、MEA(1)と筐体(55)の対向面間に流路を形成し、該流路の端部に、該流路と直交してプレート(9)を設置すると共に、該流路中に、該流路と直交して振動板(85)を設置したものである。振動板(85)の背面には圧電素子(33)が取り付けられている。
図24に示す如く、振動板(85)には前記プレート(9)との対向面の全域に、複数の流路孔(86)が開設されている。
【0043】
上記流体移送装置においては、振動板(22)に屈曲振動を与えることにより、筐体(55)のプレート(9)側の端部に設けられた流入口(図示省略)から振動板(85)の流路孔(86)を通過して筐体(55)の他方の端部に設けられた流出口へ向かって流体が移送される。尚、流路孔(86)は、屈曲波の腹の位置に対向させて配置することが好ましい。
【0044】
図26及び図27に示す如く、プレート(9)に、振動板(85)の各流路孔(86)へ向けて突出する突片(91)を設けた構成によれば、振動板(85)とプレート(9)の対向面間のギャップの大小に拘わらず、プレート(9)側から振動板(85)の流路孔(86)を通過する流体の流れを形成することが出来る。
【0045】
上記流体移送装置においては、図28(a)に示す様に振動板(85)に円形の流路孔(86)を開設する構成に限らず、同図(b)の如く矩形の流路孔(87)を開設する構成によっても同等の効果を得ることが出来る。
【0046】
又、図29(a)(b)に示す如く振動板(85)の流路孔(86)に腹が生ずるたわみ振動であれば、振動板(85)に発生させる振動は1次モードであっても高次モードであってもよい。
更に、図29(c)の如く振動板(85)の各流路孔(86)にリング状の圧電素子(34)を取り付けて、振動板(85)に高次の振動を与える構成も採用可能である。
更に又、図29(d)の如く振動板(85)の端面に圧電素子(33)を設置して、振動板(85)に対して、前記流路と直交する面内で疎密波を発生させる構成を採用することも可能である。
【0047】
図30(a)(b)は、筐体(52)によって形成される流路の下流側に、プレート(92)を設置すると共に、筐体(52)には、該プレート(92)に対向させて、リング状の振動板(25)を取り付けると共に、該振動板(25)にはリング状の圧電素子(34)を取り付けた例を示しており、この様に流路の下流側に流体移送装置の要部を配置することも可能である。
【0048】
上記本発明の流体移送装置によれば、流路に面して振動板を設定すると共に流路中に流路孔を形成し、該流路孔の入口側と出口側のギャップを調整するだけの簡易な構成で、流体を一方向に流すことが出来るので、従来の流体移送装置よりも少ない部品点数により簡易な構成の流体移送装置を実現することが出来、これによって流体移送装置の小型化、薄型化が可能となる。従って、燃料電池を搭載した小型電子機器において本発明の流体移送装置を採用することにより、機器全体の小型化、薄型化を図ることが出来る。
【0049】
然も、本発明の流体移送装置においては、エネルギー損失が少なく、消費電力の節減が可能であり、然も振動板は非可聴帯の振動数で振動するので、騒音が低く、極めて静粛な小型電子機器を実現することが出来る。
【0050】
尚、上記した各実施形態並びに各構成例は、全ての点において例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態並びに構成例示説明ではなく請求の範囲によって規定され、更に請求の範囲と均等の意味及び範囲内における全ての変更が含まれる。
例えば、図1に示す流体移送装置において、振動板(2)の材質を、流路の上流側から下流側へ向かって連続的に若しくは段階的に音響インピーダンスが減少する様に構成すれば、より効果的に流体を移送することが出来る。図15に示す流体移送装置においても同様に、振動板(8)の材質を、流路の上流側から下流側へ向かって連続的に若しくは段階的に音響インピーダンスが減少する様に構成すれば、より効果的に流体を移送することが出来る。
【0051】
又、図1に示す流体移送装置において、図1に示す流体移送装置において、振動板(2)の厚さが流路の上流側から下流側へ向かって連続的に若しくは段階的に薄くなる様に構成すれば、より効果的に流体を移送することが出来る。図15に示す流体移送装置においても同様に、振動板(8)の厚さが流路の上流側から下流側へ向かって連続的に若しくは段階的に薄くなる様に構成すれば、より効果的に流体を移送することが出来る。
【0052】
又、図1に示す流体移送装置において、流路形成板(4)の複数の流路孔(41)の間隔が流路の上流側から下流側へ向かって徐々に大きくなる様に構成すれば、より効果的に流体を移送することが出来る。図15に示す流体移送装置においても同様に、振動板(8)の複数の流路孔(81)の間隔が流路の上流側から下流側へ向かって徐々に大きくなる様に構成すれば、より効果的に流体を移送することが出来る。
【0053】
更に、本発明に係る燃料電池は、携帯電話機、携帯電話機等を充電するための充電器、ビデオカメラ等のAV機器、携帯用ゲーム機、ナビゲーション装置、ハンディクリーナ、家庭用発電器、業務用発電器、自動車、ロボット等、あらゆる電子機器の電源として用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る第1の流体移送装置の断面図である。
【図2】第1の流体移送装置における流路形成板の水平断面図である。
【図3】突片を設けた例の断面図である。
【図4】振動板に発生させる振動モードを説明する図である。
【図5】流路孔の内径を変化させた例を示す断面図である。
【図6】出口側のギャップを下流に向かって増大させた例を示す断面図である。
【図7】円形の振動板に発生させる振動モードを説明する図である。
【図8】振動板に疎密波を発生させる例を示す断面図である。
【図9】流路形成板を流路に垂直に設けた構成例を示す垂直縦断面図である。
【図10】該構成例の垂直横断面図である。
【図11】該構成例の水平断面図である。
【図12】振動板及び圧電素子に関する他の構成例を示す水平断面図である。
【図13】流入口の位置を示す断面図である。
【図14】流路の下流側に流体移送装置の要部を配置した例の断面図である。
【図15】本発明に係る第2の流体移送装置の断面図である。
【図16】第2の流体移送装置における振動板の平面図である。
【図17】突片を設けた例の断面図である。
【図18】振動板に発生させる振動モードを説明する図である。
【図19】流路孔の内径を変化させた例を示す断面図である。
【図20】出口側のギャップを下流に向かって増大させた例を示す断面図である。
【図21】円形の振動板に発生させる振動モードを説明する図である。
【図22】振動板に疎密波を発生させる例を示す断面図である。
【図23】振動板を流路に垂直に設けた構成例を示す垂直縦断面図である。
【図24】該構成例の垂直横断面図である。
【図25】該構成例の水平断面図である。
【図26】突片を設けた構成例の垂直縦断面図である。
【図27】該構成例の水平断面図である。
【図28】流路孔の形状を示す断面図である。
【図29】振動板及び圧電素子に関する他の構成例を示す水平断面図である。
【図30】流路の下流側に流体移送装置の要部を配置した例の断面図である。
【図31】従来の超音波ポンプの断面図である。
【符号の説明】
【0055】
(1) MEA
(2) 振動板
(3) 圧電素子
(4) 流路形成板
(41) 流路孔
(5) 筐体
(7) 突片
(8) 振動板
(9) プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の流路に面して振動板が設置されると共に、該流路中に流路形成板が介在し、該流路形成板には少なくとも1つの流路孔が開設され、前記振動板と流路形成板との間には、前記振動板を超音波域で振動させたときに前記振動板と流路形成板の間に静圧が生じるようにギャップを設け、該静圧によって流体を移送する流体移送装置。
【請求項2】
前記流路と平行に前記振動板と流路形成板が設置されている請求項1に記載の流体移送装置。
【請求項3】
前記振動板と流路形成板の間のギャップは、流路形成板を挟んで振動板とは反対側に設置されている流路壁との間のギャップよりも小さく設定されている請求項2に記載の流体移送装置。
【請求項4】
前記振動板には、前記流路形成板の流路孔に向けて突片が突設されている請求項2又は請求項3に記載の流体移送装置。
【請求項5】
前記流路形成板には複数の流路孔が開設され、該複数の流路孔は、流路の上流側に位置する流路孔の内径よりも流路の下流側に位置する流路孔の内径のほうが大きくなっている請求項2乃至請求項4の何れかに記載の流体移送装置。
【請求項6】
前記流路と直交して前記振動板と流路形成板が設置されている請求項1に記載の流体移送装置。
【請求項7】
所定の流路中に振動板が介在し、該振動板には少なくとも1つの流路孔が開設され、該振動板と該振動板が対向する流路壁との間には、該振動板を超音波域で振動させたときに該振動板と前記流路壁の間に静圧が生じるようにギャップを設け、該静圧によって流体を移送する流体移送装置。
【請求項8】
前記流路と平行に前記振動板と前記流路壁が設置され、前記振動板と前記流路壁との間のギャップは、振動板を挟んで前記流路壁とは反対側に設置されている流路壁との間のギャップと異なるよう設定されている請求項7に記載の流体移送装置。
【請求項9】
前記振動板の両側に設置されている2つの流路壁の内、前記振動板とのギャップが小さい方の流路壁には、前記振動板の流路孔に向けて突片が突設されている請求項8に記載の流体移送装置。
【請求項10】
前記振動板には複数の流路孔が開設され、該複数の流路孔は、流路の上流側に位置する流路孔の内径よりも流路の下流側に位置する流路孔の内径のほうが大きくなっている請求項8に記載の流体移送装置。
【請求項11】
前記流路と直交して前記振動板と前記流路壁が設置されている請求項7に記載の流体移送装置。
【請求項12】
前記請求項1乃至請求項11の何れかに記載の流体移送装置を具え、該流体移送装置に形成されている流路に沿って膜・電極接合体が設置されていることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−274929(P2008−274929A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54197(P2008−54197)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】