説明

流体継手および流体継手において使用されるガスケット保持用リテーナ

【課題】 継手部材の雄型・雌型の区別をなくすとともに、ずれによるシール性の悪化を防止した流体継手および流体継手において使用されるガスケット保持用リテーナを提供する。
【解決手段】 各継手部材5,12の突き合わせ端面にリテーナ収納凹所45,46 が設けられ、各リテーナ収納凹所45,46の底面に環状突起47a,48a付きのガスケット押さえ用環状突出部47,48が設けられている。リテーナ71が、ガスケット41の外周面を保持して一方の継手部材5 の環状突出部47外周に取り付けられるリテーナ本体72と、両継手部材5,12突き合わせ時に他方の継手部材12のリテーナ収納凹所46周面を案内するガイドリング部73とよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体継手に関し、特に、半導体製造用流体制御装置において、マスフローコントローラ、開閉弁およびこれらの間に介在される連結ブロックなどを連結するさいに有用な流体継手、および流体継手において使用されるガスケット保持用リテーナに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造用流体制御装置は、流量を調整するマスフローコントローラや圧力を調整するプレッシャーレギュレータ等の調整器と開閉弁等とが組み合わされて構成されるものであるが、本出願人は、このさいの好ましい構成として、マスフローコントローラと開閉弁とが適切な連結ブロックを介して連結されるようになされているものを提案している(特許文献1参照)。これに開示されている流体継手の構成を図6に示す。
【0003】
図6において、流体継手は、突き合わせ端面にそれぞれガスケット押さえ用環状突起(98)(99)が設けられた雄型および雌型の継手部材(91)(92)と、両継手部材(91)(92)の突合わせ端面に介在させられる円環状ガスケット(93)と、ガスケット(93)の外周面を保持してガスケット(93)を雌型の継手部材(92)に保持させるリテーナ(94)とを備えている。ここで、各継手部材(91)(92)は、連結ブロックであったり、マスフローコントローラ本体であったり、開閉弁に接続されたブロックであったりする。そして、これらの継手部材(91)(92)の突き合わせ端面のいずれか一方が雄型、他方が雌型とされ、雌型の継手部材(92)の突き合わせ端面に設けられた嵌合凹部(96)に、雄型の継手部材(91)の突き合わせ端面に軸方向に突出して設けられた嵌合凸部(95)が嵌め合わされることによって継手部材(91)(92)同士の径方向へのずれが防止されている。そして、雌型の継手部材(92)の突合わせ端面に、リテーナ保持用円筒部(97)が形成され、リテーナ(94)はこのリテーナ保持用円筒部(97)を保持することにより、ガスケット(93)を雌型の継手部材(92)に保持させる。
【0004】
また、継手部材間のずれを防止する装置として、ガスケットを保持したリテーナの一方の半部の内周面で一方の継手部材の端部外周面を、リテーナの他方の半部の内周面で他方の継手部材の端部外周面を保持するものが提案されている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開平8−326943号公報
【特許文献2】特公平6−89865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の流体継手では、継手部材が雄型および雌型の2種類あるので、部材同士を連結するさいには、その接続方向を区別する必要があり、そのため、連結に手間がかかり、しかも、接続方向を逆にするさいに雄・雌が逆になった別途の継手部材が必要になる場合が生じるという問題があった。
【0006】
雄型・雌型の区別をなくすと、嵌め合わせによる径方向へのずれの防止効果がなくなり、リテーナ(94)が保持していないほうの継手部材(91)では、そのガスケット押さえ用環状突起(98)がガスケット(93)に対して径方向にずれやすくなり、この結果、ガスケット(93)の端面からガスケット押さえ用環状突起(98)が外れて、シール性が悪化するという問題が生じる。
【0007】
また、特許文献2のものでは、他方の継手部材が一方の継手部材に対してずれているような場合、継手部材同士を突き合わせるときにリテーナと継手部材とが干渉したり、リテーナの機能に悪影響を与える力を作用する可能性があり、継手部材保持とガイド機能とを両立させることは難しいものとなっている。
【0008】
この発明の目的は、継手部材の雄型・雌型の区別をなくすとともに、ずれによるシール性の悪化を防止した流体継手および流体継手において使用されるガスケット保持用リテーナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による流体継手は、互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材と、両継手部材の突き合わせ端面間に介在させられる円環状ガスケットと、ガスケットを保持するリテーナとを備えている流体継手において、各継手部材の突き合わせ端面にリテーナ収納凹所が設けられ、各リテーナ収納凹所の底面に環状突起付きのガスケット押さえ用環状突出部が設けられており、リテーナが、ガスケットの外周面を保持していずれか一方の継手部材の環状突出部外周に取り付けられるリテーナ本体と、両継手部材突き合わせ時に他方の継手部材のリテーナ収納凹所周面を案内するガイドリング部とよりなることを特徴とするものである。
【0010】
リテーナ本体とガイドリング部とは別部材であってもよく、リテーナ本体とガイドリング部とが一体に形成されていてもよい。
【0011】
上記の流体継手において、ガスケットは、ガスケット押さえ用環状突出部の外径より大きい外径を有し、かつ第1継手部材に接する部分に環状突出部の外径に等しい小径部を有しており、リテーナ本体は、ガスケット小径部の外径と同じ内径の小径部を有し、この小径部の連結部側の部分がガスケット小径部に嵌め合わせられ、小径部の残りの部分が第1継手部材の環状突出部外周に嵌め合わせられ、ガイドリング部は、第1継手部材のリテーナ収納凹所の外周面の径にほぼ等しい外径を有し同凹所に嵌め入れられている嵌入部と、第2継手部材のリテーナ収納凹所の外周面の径より若干小さい外径を有し同凹所にゆるく嵌め入れられている案内部とよりなることが好ましい。
【0012】
この発明によるガスケット保持用リテーナは、突き合わせ端面にリテーナ収納凹所が、リテーナ収納凹所の底面に環状突起付きのガスケット押さえ用環状突出部がそれぞれ設けられている第1および第2の継手部材と、両継手部材の環状突出部間に介在させられる円環状ガスケットとを備えている流体継手において使用されるガスケット保持用リテーナであって、ガスケットの外周面を保持していずれか一方の継手部材の環状突出部外周に取り付けられるリテーナ本体と、両継手部材突き合わせ時に他方の継手部材のリテーナ収納凹所外周面を案内するガイドリング部とよりなることを特徴とするものである。
【0013】
上記のガスケット保持用リテーナにおいて、ガスケットは、ガスケット押さえ用環状突出部の外径より大きい外径を有し、かつ第1継手部材に接する部分に環状突出部の外径に等しい小径部を有しており、リテーナ本体は、ガスケット小径部の外径と同じ内径の小径部を有し、この小径部の連結部側の部分がガスケット小径部に嵌め合わせられ、小径部の残りの部分が第1継手部材の環状突出部外周に嵌め合わせられ、ガイドリング部は、第1継手部材のリテーナ収納凹所の外周面の径にほぼ等しい外径を有し同凹所に嵌め入れられている嵌入部と、第2継手部材のリテーナ収納凹所の外周面の径より若干小さい外径を有し同凹所にゆるく嵌め入れられている案内部とよりなることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明の流体継手およびガスケット保持用リテーナによると、リテーナは、第1および第2の継手部材のどちらでも保持できるから、継手部材の突き合わせ端面が雄型か雌型かを区別せずに、継手部材を順次連結していくことができる。また、リテーナが、リテーナが取り付けられていない方の継手部材の凹所周面を両継手部材突き合わせ時に案内するガイドリング部を有しているから、一方の継手部材に対する他方の継手部材の径方向のずれが小さく抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0016】
この明細書において、上下・左右は、図2の上下・左右をいうものとし、前値は、同図表側、後とは、同図裏側をいうものとする。なお、この上下は、便宜的なものであり、上下が逆になったり、横になったりすることもある。
【0017】
図1および図2は、この発明の流体継手が使用される流体制御装置の一部を示している。流体制御装置(1)は、基板(11)に取り付けられた複数のブロック継手(5)(6)(7)(8)(9)(10)と、これらのブロック継手(5)(6)(7)(8)(9)(10)に取り付けられた複数種類の流体制御器(2)(3)(4)により構成されている。
【0018】
流体制御器(2)(3)(4)は、左から順に、第1ブロック弁(2)、マスフローコントローラ(調整器)(3)および第2ブロック弁(4)であり、ブロック継手(5)(6)(7)(8)(9)(10)は、左から順に、それぞれ上向きの左部開口および右部開口を有する第1V字状通路(5a)付きブロック継手(5)、上向きの開口および後向きの開口を有する第1L字状通路(6a)付きブロック継手(6)、それぞれ上向きの左部開口および右部開口を有する第2V字状通路(7a)付きブロック継手(7)、それぞれ上向きの左部開口および右部開口を有する第3V字状通路(8a)付きブロック継手(8)、上向きの開口および後向きの開口を有する第2L字状通路(9a)付きブロック継手(9)並びに上向きの開口および右向きの開口を有する第3L字状通路(10a)付きブロック継手(10)である。
【0019】
各ブロック継手(5)(6)(7)(8)(9)(10)の所定箇所には、貫通孔(25)およびねじ孔(26)が設けられており、貫通孔(25)に通されたボルト(図示略)が基板(11)のねじ孔(図示略)にねじ込まれることにより基板(11)に固定されている。各流体制御器(2)(3)(4)は、上方より通されたボルト(27)がブロック継手(5)(6)(7)(8)(9)(10)のねじ孔(26)にねじ込まれることにより対応するブロック継手(5)(6)(7)(8)(9)(10)に固定されている。
【0020】
第1ブロック弁(2)は、左右に長い直方体ブロック状本体(12)と、本体(12)上面に取り付けられた第1アクチュエータ(13)および第2アクチュエータ(14)と、本体(12)右側面に取り付けられた逆L字状通路(15a)付き右ブロック(15)と、本体後側面に取り付けられた逆L字状通路(図示略)付き後ブロック(16)とよりなり、本体(12)左端部が第1V字状通路(5a)付きブロック継手(5)の右半部に、右ブロック(15)が第2V字状通路(7a)付きブロック継手(7)の左半部に、後ブロック(16)が第1L字状通路(6a)付きブロック継手(6)にそれぞれ取り付けられている。
【0021】
第1ブロック弁(2)の本体(12)には、左端部において下向きに開口し第1V字状通路(5a)付きブロック継手(5)の右部開口に通じている第1流入路(31)と、第1流入路(31)と第1アクチュエータ(13)を介して連なるとともに右ブロック(15)の逆L字状通路(15a)の右向き通路に通じる流出路(32)と、流出路(32)と第2アクチュエータ(14)を介して連なるとともに第1L字状通路(6a)付きブロック継手(6)の上向き開口に通じる下向きの第2流入路(33)とが設けられている。右ブロック(15)の逆L字状通路(15a)の下向き通路が第2V字状通路(7a)付きブロック継手(7)の左部開口に通じている。
【0022】
調整器(3)の左側面の下端部には、調整器(3)の流入路(図示略)に連通する逆L字状通路(17a)を有する左ブロック(17)が左方に張り出して設けられており、調整器(3)の右側面の下端部には、調整器の流出路(図示略)に連通する逆L字状通路(18a)を有する右ブロック(18)が右方に張り出して設けられている。そして、左通路ブロック(17)が第2V字状通路付きブロック継手(7)の右半部に取り付けられることにより、左ブロック(17)の逆L字状通路(17a)と第1ブロック弁(2)の右ブロック(15)の逆L字状通路(15a)とが、第2V字状通路(7a)付きブロック継手(7)を介して連通させられている。調整器(3)の右ブロック(18)は、第3V字状通路(8a)付きブロック継手(8)の左半部に取り付けられている。
【0023】
第2ブロック弁(4)は、左右に長い直方体ブロック状本体(19)と、本体(19)上面に取り付けられた第3アクチュエータ(20)および第4アクチュエータ(21)と、本体(19)右側面に取り付けられた逆L字状通路(22a)付き右ブロック(22)と、本体後側面に取り付けられた逆L字状通路付き後ブロック(23)とよりなり、本体(19)左端部が第3V字状通路(8a)付きブロック継手(8)の右半部に、右ブロック(22)が第3L字状通路(10a)付きブロック継手(10)に、後ブロック(23)が第2L字状通路(9a)付きブロック継手(9)にそれぞれ取り付けられている。第3L字状通路(10a)付きブロック継手(10)の右向き開口には流体流出部(24)が設けられている。
【0024】
第2ブロック弁(4)の本体(19)には、左端部において下向きに開口し第3V字状通路(8a)付きブロック継手(8)の右部開口に通じている流入路(34)と、流入路(34)と第3アクチュエータ(20)を介して連なるとともに右ブロック(22)の逆L字状通路(22a)の右向き通路に通じる第1流出路(35)と、第1流出路(35)と第4アクチュエータ(21)を介して連なるとともに第2L字状通路(9a)付きブロック継手(9)の上向き開口に通じる下向きの第2流出路(36)とが設けられている。そして、第2ブロック弁(4)の逆L字状通路(22a)付き右ブロック(22)と第3L字状通路(10a)付きブロック継手(10)とが連通させられている。
【0025】
各部材(5)(2)(6)(15)(7)(17)(18)(8)(4)(9)(22)(10)同士の連結部には、それぞれこの発明の流体継手(30)が設けられている。
【0026】
図3を参照して、第1V字状通路(5a)付きブロック継手(5)(以下、第1継手部材と称す)と第1ブロック弁(2)の本体(12)(以下、第2継手部材と称す)との間に設けられたこの発明による流体継手の第1の実施形態について説明する。
【0027】
流体継手は、第1の流路(5a)を有する第1継手部材(5)と第1の流路(5a)に通じる第2の流路(31)を有する第2継手部材(12)とを流体密に連結するための構成であって、両継手部材(5)(12)と、両継手部材(5)(12)の突合わせ端面間に介在させられている円環状ガスケット(41)と、ガスケット(41)を保持してガスケットを図示した例では第1の継手部材(5)に保持させているリテーナ本体(43)およびリテーナ本体(43)の外側に取り付けられたガイドリング(44)よりなるリテーナ(42)と、両継手部材(5)(12)を連結するねじ手段とよりなる。
【0028】
第1継手部材(5)および第2継手部材(12)の各突き合わせ端面には、流体通路(5a)(31)開口を囲む環状のリテーナ収納凹所(45)(46)が設けられ、リテーナ収納凹所(45)(46)の底面に、環状突起(47a)(48a)付きのガスケット押さえ用環状突出部(47)(48)が設けられている。リテーナ収納凹所(45)(46)、環状突起(47a)(48a)および環状突出部(47)(48)は、互いに同心とされている。環状突出部(47)(48)の先端面は、突き合わせ端面よりガスケット(41)の厚みの半分より若干浅く凹まされており、環状突起(47a)(48a)は、環状突出部(47)(48)の先端面の径方向ほぼ中央に設けられている。これらのリテーナ収納凹所(45)(46)およびガスケット押さえ用環状突出部(47)(48)は、第1継手部材(5)と第2継手部材(12)とで同一形状となるように形成されている。
【0029】
ガスケット(41)は、ステンレス鋼製で、両継手部材(5)(12)の流路径に等しい内径を有し、ガスケット押さえ用環状突出部(47)(48)の外径より若干大きい外を有している。ガスケット(41)の第1継手部材(5)に接する部分には、ガスケット押さえ用環状突出部(47)(48)の外径に等しい小径部(41a)が設けられている。
【0030】
リテーナ本体(43)は、ステンレス鋼板で一体的に形成されたもので、ガスケット小径部(41a)の外径と同じ内径を有する小径部(43a)と、これより大径の大径部(43b)と、小径部(43a)の一端部と大径部(43b)の他端部とを連結する連結部(43c)とよりなる。ステンレス鋼板は薄板であり、小径部(43a)および大径部(43b)は、いずれも径方向の弾性を若干有している。そして、小径部(43a)の連結部側の部分がガスケット小径部(41a)に嵌め合わせられ、小径部(43a)の残りの部分が第1継手部材(5)の環状突出部(47)外周に嵌め合わせられている。大径部(43b)は、これとガスケット(41)の外周およびリテーナ収納凹所(45)(46)外周面との間にそれぞれ間隙ができるような寸法に形成されている。
【0031】
ガイドリング(44)は、ステンレス鋼製で、第1継手部材(5)のリテーナ収納凹所(45)の外周面の径にほぼ等しい外径を有し同凹所(45)に嵌め入れられている嵌入部(51)と、第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(46)の外周面の径より若干小さい外径を有し同凹所にゆるく嵌め入れられている案内部(52)とよりなる。案内部(52)の内径は、リテーナ本体(43)の大径部(43b)の外径にほぼ等しくされている。嵌入部(51)の内周面上部は、案内部(52)の内周面に面一であり、同下部には、リテーナ本体(43)の連結部(43c)の径方向外側部分に下から当接する環状内方突出部(53)が設けられている。また、案内部(52)の上端部には、リテーナ本体(43)の大径部(43b)上端に上から当接する環状小突起(54)が設けられている。リテーナ本体(43)およびガイドリング(44)の上下方向の全幅は、第1継手部材(5)のリテーナ収納凹所(45)の深さと第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(46)の深さとを合わせた値より若干小さくなされている。
【0032】
この実施形態では、リテーナ本体(43)とガイドリング(44)とは、別々に形成されており、ガイドリング(44)にリテーナ本体(43)が上から嵌め入れられることにより、両者(43)(44)が結合されてリテーナ(42)が形成されている。そして、さらに、リテーナ(42)のリテーナ本体(43)にガスケット(41)が嵌め合わされた状態でリテーナ(42)およびガスケット(41)が第1継手部材(5)に保持され、ガスケット(41)の位置決めが行われている。第2継手部材(12)は、リテーナ(42)およびガスケット(41)を保持した第1継手部材(5)に突き合わされ、このとき、第2継手部材(12)は、ガイドリング(44)の案内部(52)に案内される。
【0033】
図3の(a)は、第2継手部材(12)が第1継手部材(5)に正常に突き合われた状態を示している。この状態で、ガイドリング(44)の案内部(52)の外周面と第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(46)の外周面との間には、どの位置でも0.15mmの間隙(G)が形成されるようになされている。第1継手部材(5)のリテーナ収納凹所(45)内では、ガイドリング(44)の嵌入部(51)が同凹所(45)外周面に嵌め合わせられ、リテーナ本体(43)の小径部(43a)が環状突出部(47)外周に嵌め合わせられており、リテーナ(42)およびガスケット(41)は径方向へ移動することはない。図3の(b)は、第2継手部材(12)の第1継手部材(5)に対する突き合わせが径方向に最もずれた状態を示している。すなわち、ガイドリング(44)の案内部(52)の外周面と第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(46)の外周面との間には、ある位置で0.3mmの間隙(G1)が形成され、この位置と180°離れた位置での両者の間隙(G2)がゼロとなっている。しかしながら、ガスケット(41)を強く押圧する環状突起(48a)が環状突出部(48)の先端面の径方向ほぼ中央に設けられているので、この程度のずれでは、環状突起(48a)がガスケット(41)から外れることはなく、シール性が低下するなどの問題は全く生じない。なお、最もずれた状態での環状突起(48a)の内周とガスケット(41)の内周との距離は、たとえば、一方で0.56mm、他方で0.26mmとなされる。
【0034】
上記流体継手によると、リテーナ(42)は、第1および第2の継手部材(5)(12)のどちらでも保持できるから、図1および図2に示す流体制御装置(1)を組立てるさいに、各構成部材(2)(4)(5)(6)(7)(8)(9)(10)(15)(17)(18)(22)の突き合わせ端面が雄型か雌型かを区別せずに、これらを順次連結していくことができる。そして、第2継手部材(12)が、ガイドリング(44)の案内部(52)に案内されて第1継手部材(5)に突き合わされるので、組立てが容易に行え、しかも、第2継手部材(12)の第1継手部材(5)に対する径方向への移動量は、極めて小さい値に抑えられる。また、ガスケット(41)は、環状突起(47a)(48a)に接する位置で最も変形が大きくなるが、この位置は、ガスケット(41)端面の内縁ではなくて、内縁より外寄りであるから、ガスケット(41)の最も変形する部分は内縁部よりも外側にずれる。したがって、ガスケット(41)の内周部にしわが生じることがないので、ごみが溜まるという心配はない。
【0035】
図4は、この発明による流体継手の第2の実施形態を示している。この流体継手は、第1実施形態のものに比べて、リテーナのガイドリングの構成と第2継手部材のリテーナ収納凹所の構成とが異なっている。これらを除く第2実施形態の構成は、第1実施形態のものと同じであり、同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
第2実施形態のリテーナ(61)のガイドリング(62)は、ステンレス鋼製で、第1継手部材(5)のリテーナ収納凹所(45)の外周面の径にほぼ等しい外径を有し同凹所(45)に嵌め入れられている嵌入部(63)と、第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(67)の外周面の径より若干小さい外径を有し同凹所(67)にゆるく嵌め入れられている案内部(64)とよりなる。
【0037】
第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(67)は、同図に示すように、第1継手部材(5)のリテーナ収納凹所(45)よりも径が大きく、かつその深さも深くなされている。
【0038】
案内部(64)の内径は、リテーナ本体(43)の大径部(43b)の外径にほぼ等しくされており、その外径は、嵌入部(63)の外径よりも大きくなされている。嵌入部(63)の内周面上部は、案内部(64)の内周面に面一であり、同下部には、リテーナ本体(43)の連結部(43c)の径方向外側部分に下から当接する環状内方突出部(65)が設けられている。また、案内部(64)の上端部には、リテーナ本体(43)の大径部(43b)上端に上から当接する環状内方突出部(66)が設けられている。案内部(64)上端の環状内方突出部(66)の高さは、ガイドリング(62)へのリテーナ本体(43)の嵌め入れを妨げないように低いものとされている。ガイドリング(62)の上下方向の全幅は、第1継手部材(5)のリテーナ収納凹所(45)の深さと第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(67)の深さとを合わせた値より若干小さくなされている。
【0039】
図4の(a)は、第2継手部材(12)が第1継手部材(5)に正常に突き合われた状態を示している。この状態で、ガイドリング(62)の案内部(64)の外周面と第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(67)の外周面との間には、どの位置でも0.25mmの間隙(G)が形成されるようになされている。第1継手部材(5)のリテーナ収納凹所(45)内では、ガイドリング(62)の嵌入部(63)が同凹所(45)外周面に嵌め合わせられ、リテーナ本体(43)の小径部(43a)が環状突出部(47)外周に嵌め合わせられており、リテーナ(61)およびガスケット(41)は径方向へ移動することはない。図4の(b)は、第2継手部材(12)の第1継手部材(5)に対する突き合わせが径方向に最もずれた状態を示している。すなわち、ガイドリング(62)の案内部(64)の外周面と第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(67)の外周面との間には、ある位置で0.5mmの間隙(G1)が形成され、この位置と180°離れた位置での両者の間隙(G2)がゼロとなっている。しかしながら、ガスケット(41)を強く押圧する環状突起(48a)が環状突出部(48)の先端面の径方向ほぼ中央に設けられているので、この程度のずれでは、環状突起(48a)がガスケット(41)から外れることはなく、シール性が低下するなどの問題は全く生じない。なお、最もずれた状態での環状突起(48a)の内周とガスケット(41)の内周との距離は、たとえば、一方で0.65mm、他方で0.15mmとなされる。
【0040】
第2実施形態の継手は、第1実施形態のものと比べて、リテーナ(61)が第1継手部材(5)しか保持できない点と、ガイドリング(62)が径方向および軸方向の両方向に拡大されている点とで異なっており、ガイドリング(62)の剛性がアップしているという利点を有している。
【0041】
図5は、この発明による流体継手の第3の実施形態を示している。この流体継手は、第1実施形態のものに比べて、リテーナの構成だけが異なっている。これらを除く第3実施形態の構成は、第1実施形態のものと同じであり、同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
第3実施形態のリテーナ(71)は、リテーナ本体部(72)とガイドリング部(73)とがステンレス鋼で一体に形成されたものである。
【0043】
リテーナ本体部(72)は、ガスケット小径部(41a)の外径と同じ内径を有しガスケット小径部(41a)の外周面を保持して第1継手部材(5)の環状突出部(47)外周に取り付けられる部分であり、ガイドリング部(73)は、リテーナ本体部(72)の外周に連なりかつ第1継手部材(5)のリテーナ収納凹所(45)の周面の径にほぼ等しい外径を有し同凹所(45)に嵌め入れられている嵌入部(74)および第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(46)の周面の径より若干小さい外径を有し同凹所(46)にゆるく嵌め入れられている案内部(75)よりなる。
【0044】
案内部(75)の内径は、ガスケット(41)の外径より大きくなされている。また、ガイドリング部(73)の上下方向の全幅は、第1継手部材(5) のリテーナ収納凹所(45)の深さと第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(67)の深さとを合わせた値より若干小さくなされている。
【0045】
図5の(a)は、第2継手部材(12)が第1継手部材(5)に正常に突き合われた状態を示している。この状態で、ガイドリング部(73)の案内部(75)の外周面と第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(67)の周面との間には、どの位置でも0.25mmの間隙(G)が形成されるようになされている。第1継手部材(5)のリテーナ収納凹所(45)内では、ガイドリング部(73)の嵌入部(74)が同凹所(45)周面に嵌め合わせられ、リテーナ本体(43)の小径部(43a)が環状突出部(47)外周に嵌め合わせられており、リテーナ(71)およびガスケット(41)は径方向へ移動することはない。図5の(b)は、第2継手部材(12)の第1継手部材(5)に対する突き合わせが最もずれた状態を示している。すなわち、ガイドリング部(73)の案内部(75)の外周面と第2継手部材(12)のリテーナ収納凹所(46)の周面との間には、ある位置で0.3mmの間隙(G1)が形成され、この位置と180°離れた位置での両者の間隙(G2)がゼロとなっている。しかしながら、ガスケット(41)を強く押圧する環状突起(48a)が環状突出部(48)の先端面の径方向ほぼ中央に設けられているので、この程度のずれでは、環状突起(48a)がガスケット(41)から外れることはなく、シール性が低下するなどの問題は全く生じない。なお、最もずれた状態での環状突起(48a)の内周とガスケット(41)との内周との距離は、たとえば、一方で0.56mm、他方で0.26mmとなされる。
【0046】
第3実施形態の継手は、第1実施形態のものと比べて、リテーナ本体部(72)とガイドリング部(73)とが一体である点で異なっており、流体継手を構成する部品数を減少でき、ガイドリングにリテーナ本体を嵌め入れる作業を無くすことができるという利点を有している。これに対して、第1実施形態のものは、ガイドリング(44)を強度重視の材料に、リテーナ本体(43)を弾性重視の材料にというような仕様の微調整ができるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明による流体継手を使用する流体制御装置の分解斜視図である。
【図2】図1に示された制御装置の縦断面図である。
【図3】流体継手の第1実施形態を示す拡大断面図である。
【図4】流体継手の第2実施形態を示す拡大断面図である。
【図5】流体継手の第3実施形態を示す拡大断面図である。
【図6】従来の流体継手の断面図である。
【符号の説明】
【0048】
(5) 第1継手部材
(5a) 流体通路
(12) 第2継手部材
(31) 流体通路
(41) ガスケット
(41a) 小径部
(42) リテーナ
(43) リテーナ本体
(43a) 小径部
(43b) 大径部
(44) ガイドリング部
(45) リテーナ収納凹所
(46) リテーナ収納凹所
(47) 環状突出部
(47a) 環状突起
(48) 環状突出部
(48a) 環状突起
(51) 嵌入部
(52) 案内部
(61) リテーナ
(62) ガイドリング部
(63) 嵌入部
(64) 案内部
(67) リテーナ収納凹所
(71) リテーナ
(72) リテーナ本体
(73) ガイドリング部
(73) 嵌入部
(74) 案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通する流体通路を有している第1および第2の継手部材と、両継手部材の突き合わせ端面間に介在させられる円環状ガスケットと、ガスケットを保持するリテーナとを備えている流体継手において、各継手部材の突き合わせ端面にリテーナ収納凹所が設けられ、各リテーナ収納凹所の底面に環状突起付きのガスケット押さえ用環状突出部が設けられており、リテーナが、ガスケットの外周面を保持していずれか一方の継手部材の環状突出部外周に取り付けられるリテーナ本体と、両継手部材突き合わせ時に他方の継手部材のリテーナ収納凹所外周面を案内するガイドリング部とよりなることを特徴とする流体継手。
【請求項2】
リテーナ本体とガイドリング部とが、一体に形成されている請求項1の流体継手。
【請求項3】
ガスケットは、ガスケット押さえ用環状突出部の外径より大きい外径を有し、かつ第1継手部材に接する部分に環状突出部の外径に等しい小径部を有しており、リテーナ本体は、ガスケット小径部の外径と同じ内径の小径部を有し、この小径部の連結部側の部分がガスケット小径部に嵌め合わせられ、小径部の残りの部分が第1継手部材の環状突出部外周に嵌め合わせられ、ガイドリング部は、第1継手部材のリテーナ収納凹所の外周面の径にほぼ等しい外径を有し同凹所に嵌め入れられている嵌入部と、第2継手部材のリテーナ収納凹所の外周面の径より若干小さい外径を有し同凹所にゆるく嵌め入れられている案内部とよりなることを特徴とする請求項1または2の流体継手。
【請求項4】
突き合わせ端面にリテーナ収納凹所が、リテーナ収納凹所の底面に環状突起付きのガスケット押さえ用環状突出部がそれぞれ設けられている第1および第2の継手部材と、両継手部材の環状突出部間に介在させられる円環状ガスケットとを備えている流体継手において使用されるガスケット保持用リテーナであって、ガスケットの外周面を保持していずれか一方の継手部材の環状突出部外周に取り付けられるリテーナ本体と、両継手部材突き合わせ時に他方の継手部材のリテーナ収納凹所外周面を案内するガイドリング部とよりなることを特徴とする流体継手において使用されるガスケット保持用リテーナ。
【請求項5】
ガスケットは、ガスケット押さえ用環状突出部の外径より大きい外径を有し、かつ第1継手部材に接する部分に環状突出部の外径に等しい小径部を有しており、リテーナ本体は、ガスケット小径部の外径と同じ内径の小径部を有し、この小径部の連結部側の部分がガスケット小径部に嵌め合わせられ、小径部の残りの部分が第1継手部材の環状突出部外周に嵌め合わせられ、ガイドリング部は、第1継手部材のリテーナ収納凹所の外周面の径にほぼ等しい外径を有し同凹所に嵌め入れられている嵌入部と、第2継手部材のリテーナ収納凹所の外周面の径より若干小さい外径を有し同凹所にゆるく嵌め入れられている案内部とよりなることを特徴とする請求項4の流体継手において使用されるガスケット保持用リテーナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−147084(P2007−147084A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37523(P2007−37523)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【分割の表示】特願平10−85807の分割
【原出願日】平成10年3月31日(1998.3.31)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】