説明

流体補償装置及び流体補償システム

流体補償装置は、流体ベースの冷却ループに置換流体を提供しながら、溶存ガス又は気泡内の気体を冷却ループから除去するように構成されている。冷却ループから気体を除去又は削減することによって、ポンプのベーパロックを低減又は防止することができる。取り除かれた気体は、流体補償装置内に維持される。流体補償装置は、流体補償装置の向きにかかわらず、閉じ込められた気体が流体ベースの冷却ループに再び入り込むことを防止するように構成されている。更に、流体補償装置は、流体補償装置の流入ポートと流出ポートとの間の圧力降下を限定的にし又は皆無にしながら、冷却ループから気体を除去し、冷却ループに流体を追加するように構成されている。この結果、ポンプは、このような圧力差を補償するための更なるパワーを必要としない。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条第(e)項に基づき、2006年6月30日に出願された係属中の米国仮特許出願60/817,855、発明の名称「MULTI-STAGE STAGGERED RADIATOR FOR HIGH PERFORMANCE LIQUID COOLING APPLICATIONS」の優先権を主張する。2006年6月30日に出願された係属中の米国仮特許出願60/817,855、発明の名称「MULTI-STAGE STAGGERED RADIATOR FOR HIGH PERFORMANCE LIQUID COOLING APPLICATIONS」は、引用によって本願に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、発熱素子を冷却するための冷却ループに関し、特に、液冷式のアプリケーションに用いられる流体タンクに関する。
【背景技術】
【0003】
電子部品の冷却の分野においては、効率的な放熱によって高性能集積回路を冷却することが重要な課題となっている。ヒートパイプ及びファンが取り付けられたヒートシンクによる従来の冷却法は、次第に消費電力要求が大きくなっているチップの冷却には適さない。
【0004】
パーソナルコンピュータ内で集積回路を冷却する場合に起こる特定の問題は、より多くの処理能力の高い集積回路が、同じサイズ又はより小さいパーソナルコンピュータシャーシ内に配設されるという点である。より多くの処理能力の高い集積回路が開発されており、熱を発生するトランジスタの密度も高くなっており、個々の集積回路から発生する熱も高くなり続けている。更に、例えば、グラフィックプロセッサ、マイクロプロセッサ、マルチチップセット等のより多くの集積回路がパーソナルコンピュータに追加されている。更に、より多くのより処理能力の高い集積回路が、同じサイズ又はより小さいパーソナルコンピュータシャーシに追加され、これらの素子が発生する単位面積あたりの熱も高くなっている。このような従来のパーソナルコンピュータシャーシの構成では、適切な冷却構造を設けることができる空間が限られている。従来より、パーソナルコンピュータ内の集積回路は、ヒートシンク及びヒートシンクに空気を吹きつける大きなファンを用いることによって、又は単に集積回路を備える回路基板に空気を直接吹きつけることによって冷却されている。しかしながら、パーソナルコンピュータシャーシ内の空間は限られているので、集積回路を冷却するために使用できる空気の量、及び、例えばヒートシンク及びファン等の従来の冷却装置のために使用できる空間は、限定的である。
【0005】
従来の冷却法の代替となる手法として、液体循環冷却法がある。循環冷却法は、空冷法より効率的に周囲に熱を放出することができる。循環冷却装置は、熱源から熱が伝導される冷却板と、ファンによって放熱のために冷却されるラジエータと、循環ループに流体を流すためのポンプとを備える。各部品の設計は、複雑であることが多く、特定の用途のための詳細な分析及び最適化を必要とする。従来の冷却ループでは、主に浸透に起因して発生する、時間の経過に伴う流体損失が問題となる。失われた流体を補給するために、冷却ループには、流体タンクが設けられていることが多い。
【0006】
図1は、従来の流体貯蔵タンク2の縦断面図を示している。流体貯蔵タンク2は、流入流体ライン7に接続されている流入ポート5と、流出流体ライン8に接続されている流出ポート6とを備える。流入流体ライン7及び流出流体ライン8は、流体ベースの冷却ループの一部である。流体貯蔵タンク2は、余剰な流体4を貯蔵する。冷却ループを流れる流体は、流入ポート5を介して流体貯蔵タンク2に入り、流出ポート6を介して流体貯蔵タンク2から流出する。このような構成では、流体貯蔵タンク2に入る流体は、流入流体ライン7を流れる流体に対して減速し、流出ポート6を介して流体貯蔵タンク2を出て流出流体ラインに入る流体は、流体貯蔵タンク2内の流体に対して加速されるので、流体貯蔵タンク2の流入ポート5と流出ポート6との間で圧力差が高まるという問題がある。流体貯蔵タンク2の流入ポート5と流出ポート6との間で生じるこの圧力差を補償するために、冷却ループにおいて更なるポンプ圧送パワーが必要となる。
【0007】
また、このような流体貯蔵タンクの向きが適切でない場合にも問題が生じる。冷却ループ内で流体損失が発生し、流体タンクが冷却ループに流体を追加すると、図1のガスポケット3等のガスポケットとして、流体貯蔵タンクに気体が蓄積し始める。流体貯蔵タンクの向きが不適切であると、流出ポート側にガスポケットが生じ、この結果、冷却ループに気体が入り込むことがある。これにより、遠心ポンプを用いるシステムに危険が生じることとなる。すなわち、システム内で大きな気泡が体積を増加させ、自由に動き回ると、ポンプに「ベーパロック」、すなわち、本質的には、ポンプ内に気体が入り込み、ポンプで流体を圧送できなくなる現象が生じる虞がある。向きを正しくした場合であっても、流体貯蔵タンク内に気体が抽出されず、冷却ループ内において気体が蓄積された場合にはポンプ障害が発生する虞がある。
【0008】
これまで、この問題を解決するために、2つの主な手法があった。第1の手法では、流体貯蔵タンクを、流入口及び流出口を有する断面積が大きく設けられたタンクとして構成する。この構成の問題は、上述のように、流体貯蔵タンクに入る流体の速度が大幅に減少し、流体貯蔵タンクから出る流体の速度が大幅に増加するために生じる圧力降下である。ポンプは、貯蔵タンクの流出口において、流体の運動量を取り戻すために、より強く動作しなくてはならない。第2の手法では、流体貯蔵タンクに圧力を加える。この構成では、冷却ループ内の流体ラインを加圧することによって気体が最小化され、この結果、流体貯蔵タンクからループへの気体移動が防止される。この構成の問題は、複雑性が高まるという点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、冷却ループに流体を追加するためのより効率的な手法及び装置を提供することである。また、本発明の目的は、冷却ループから気泡を除去する効率的な手法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
流体補償装置は、流体ベースの冷却ループに置換流体を提供、すなわち容積補償しながら、溶存ガス又は気泡内の気体を冷却ループから除去するように構成されている。冷却ループから気体を除去又は削減することによって、ポンプのベーパロックを低減又は防止することができる。取り除かれた気体は、流体補償装置内に維持される。幾つかの実施の形態では、流体補償装置は、流体補償装置の向きにかかわらず、閉じ込められた気体が流体ベースの冷却ループに再び入り込むことを防止するように構成されている。
【0011】
更に、流体補償装置は、流体補償装置の流入ポートと流出ポートとの間の圧力降下を限定的にし又は皆無にするとともに、冷却ループから気体を除去し、冷却ループに流体を追加するように構成されている。この結果、ポンプは、このような圧力差を補償するための更なるパワーを必要としない。
【0012】
一側面においては、流体補償装置は、流入ポート及び流出ポートを有し、流体を収容するように構成されている流体貯蔵タンクと、流入ポートに接続され、流入ポートに流体を流入させる流入流体ラインと、流出ポートに接続され、流出ポートから流体を流出させる流出流体ラインと、流入ポートと流出ポートとを接続するブリッジング流体ラインとを備え、ブリッジング流体ラインは、流入ポートから流入する流体を流出ポートに渡し、更に、1つ以上の交換通気口を備えることにより、ブリッジング流体ライン内の流体を流体貯蔵タンク内の流体に露出させ、1つ以上の交換通気口のそれぞれは、ブリッジング流体ライン内に存在する気体を流体貯蔵タンクに送り、流体貯蔵タンク内の流体をブリッジング流体ラインに送る。1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及びブリッジング流体ライン内の流体の流量は、ブリッジング流体ライン内の流体が、1つ以上の交換通気口を通過することを実質的に防止するように構成してもよい。1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及びブリッジング流体ライン内の流体の流量は、ブリッジング流体ライン内に存在する気体が、1つ以上の交換通気口を通過し、流体貯蔵タンクに入るように構成してもよい。1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及びブリッジング流体ライン内の流体の流量は、流体貯蔵タンク内に溜まった気体が、1つ以上の交換通気口を通過し、ブリッジング流体ラインに入ることを実質的に防止するように構成してもよい。流体貯蔵タンクは、流体貯蔵タンク内に溜まった気体がブリッジング流体ラインに露出されないように構成してもよい。流体貯蔵タンクは、向きが自在であってもよい。流体貯蔵タンクは、向きを指定してもよい。1つ以上の交換通気口のそれぞれは、孔、スリット又は穿孔であってもよい。1つ以上の交換通気口のそれぞれは、メッシュ状の通気口であってもよい。ブリッジング流体ライン内に存在する気体は、気泡又は可溶性の気体であってもよい。流体貯蔵タンクは、密閉されていてもよい。流体貯蔵タンクは、開放されていてもよい。流体補償装置は、流入ポートを介して流体補償装置に流体を流入するとともに、流出ポートを介して流体補償装置からの流体が流出する流体ベースの冷却ループに接続してもよい。
【0013】
他の側面として、流体補償装置は、アクセス用開口を有し、流体を収容するように構成されている流体貯蔵タンクと、アクセス用開口に接続されている延出部と、延出部に接続され、内部に流体を流すように構成されているブリッジング流体ラインを備え、該ブリッジング流体ラインは、延出部に接続され、延出部を介して流体貯蔵タンクの流体に露出され、ブリッジング流体ライン内に存在する気体が流体貯蔵タンクに入り、流体貯蔵タンク内の流体が、ブリッジング流体ラインに入るように構成されている1つ以上の交換通気口を備える。1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及びブリッジング流体ライン内の流体の流量は、ブリッジング流体ライン内の流体が、1つ以上の交換通気口を通過することを実質的に防止するように構成してもよい。1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及びブリッジング流体ライン内の流体の流量は、ブリッジング流体ライン内に存在する気体が、1つ以上の交換通気口を通過し、流体貯蔵タンクに入るように構成してもよい。1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及びブリッジング流体ライン内の流体の流量は、流体貯蔵タンク内に溜まった気体が、1つ以上の交換通気口を通過し、ブリッジング流体ラインに入ることを実質的に防止するように構成してもよい。流体貯蔵タンクは、流体貯蔵タンク内に溜まった気体がブリッジング流体ラインに露出されないように構成してもよい。1つ以上の交換通気口のそれぞれは、孔、スリット又は穿孔であってもよい。1つ以上の交換通気口のそれぞれは、メッシュ状の通気口であってもよい。ブリッジング流体ライン内の気体は、気泡又は可溶性の気体であってもよい。流体貯蔵タンクは、密閉されていてもよい。流体貯蔵タンクは、開放されていてもよい。流体貯蔵タンクは、アクセス用開口を2つ以上備え、流体貯蔵タンクとブリッジング流体ラインとを接続する延出部を1つ以上備えていてもよい。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、以下に詳細に説明する実施の形態の記述によって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の流体貯蔵タンクの縦断面図である。
【図2】例示的な流体ベースの冷却ループのブロック図である。
【図3】図2の流体タンクの例示的な構成の縦断面図である。
【図4】ブリッジング流体ラインの相対上面に沿って長手方向に形成されている複数の通気口を示す図である。
【図5】ブリッジング流体ラインの径方向に形成されている複数の通気口を示す図である。
【図6】ブリッジング流体ラインの長手方向に沿って及びブリッジング流体ラインの周囲に放射状に形成され、長手方向に整列されている複数の通気口を示す図である。
【図7】ブリッジング流体ラインの長手方向に沿って及びブリッジング流体ラインの周囲に放射状に形成され、長手方向に互い違いに配置されている複数の通気口を示す図である。
【図8】メッシュを有するブリッジング流体ラインの例示的な構成を示す図である。
【図9】向き自在である流体貯蔵タンク及びブリッジング流体ラインの例示的な構成を示す図である。
【図10】外部のブリッジング流体ラインに接続されている他の実施の形態として示す流体貯蔵タンクの構成の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、幾つかの図面を参照して本発明を説明する。同じ要素が複数の図面に示されている場合にのみ、これらの同じ要素に同じ参照符号を付している。
【0017】
本発明の実施の形態は、流体ベースの冷却ループに流体を追加し冷却ループから気泡を除去する流体補償装置を提供する。冷却ループは、冷却装置内に含まれ、冷却装置は、パーソナルコンピュータ等の電子システム内で、1つ以上の発熱素子から発生した熱を除去する。発熱素子には、以下に限定されるものではないが、マザーボード、ドータカード及び/又はPC拡張カードに取り付けられた1つ以上の中央演算処理装置(central processing unit:CPU)、1つ以上のCPUの入出力を管理するために使用されるチップセット、1つ以上のグラフィック処理装置(graphics processing unit:GPU)及び/又は1つ以上の物理演算処理装置(physics processing unit:PPU)等が含まれる。また、冷却装置は、例えば、冷却が必要なMOSFET、スイッチ及び他の大電力電子部品等の電子部品を冷却するために用いることもできる。本明細書に開示する冷却装置は、包括的には、冷却する発熱素子を有する如何なる電子サブシステムにも適用できる。冷却装置は、好ましくは、パーソナルコンピュータシャーシ内に構成される。これに代えて、冷却装置は、冷却される発熱素子を含む電子機器の一部として構成してもよい。冷却ループは、流体貯蔵タンク、ポンプ、除熱器、及び1つ以上の熱交換器を備える。冷却ループの部品は、フレキシブルな流体ラインを介して連結されている。
【0018】
流体補償装置は、流体貯蔵タンク及びブリッジング流体ラインを備える。流体貯蔵タンクは、流入ポート及び流出ポートを備える。ブリッジング流体ラインは、流体貯蔵タンクの流入ポートと流出ポートとを連通する。ブリッジング流体ラインには、1つ以上の交換通気口が設けられている。この1つ以上の交換通気口は、流体貯蔵タンクと、流体貯蔵タンクが配設される冷却ループの流体との間で気体と流体の交換を実現する。
【0019】
図2は、流体ライン22、24、26、28を介して接続されている熱交換器16、除熱器12、ポンプ14及び流体貯蔵タンク20を備える例示的な流体ベースの冷却ループ10のブロック図を示している。熱交換器16は、発熱素子18に熱接触されている。ポンプ14は、冷却ループ10内で流体を圧送及び循環させる。発熱素子18から発生した熱は、熱交換器16内を流れる流体に伝導される。
【0020】
流体補償装置は、流体貯蔵タンクによる圧力降下を最小にとどめながら、流体貯蔵タンク内の気体を収集する。この設計の更なる利点は、通気された気体が捕らえられ、気体が冷却ループに再び入り込むことを防止できる点である。幾つかの実施の形態では、流体貯蔵タンク及びその内部部品の向きにかかわらず、気体が冷却ループに入り込むことが防止される。
【0021】
冷却ループ中の気泡は、ブリッジング流体ラインの交換通気口を介して、浮力によって流体貯蔵タンクに移動し、その際移動した気体と更なる作動流体とが置換される。この結果、ポンプのベーパロックの原因となるような装置内での気体の蓄積を防止することができる。気体と流体とを交換する交換通気口は、単一の通気口又は複数の通気口の何れであってもよい。気体の交換を実現するためには、流体貯蔵タンク内の動作圧力、ブリッジング流体ラインを介する流体速度及び流体の表面張力に応じて、好適な通気口サイズがある。一般的には、流体内の気泡は、あるサイズを有する。このサイズは、特定の流体の特性によって定まる。通気口のサイズは、気泡のサイズ及びブリッジング流体ラインを介する流体の最大流速に基づいて、最適化される。流体の最大流速は、気泡のサイズ及び通気口のサイズに対して、気泡が通気口から出ることなく通気口を通過してしまう程に速いものであってはならない。また、通気口の形状も、上述の要素に基づいて決定できる。
【0022】
幾つかの実施の形態では、ブリッジング流体ライン内の流体が通気口から出ることを防ぐように動作パラメータを最適化する。このような構成は、流体貯蔵タンクが適切な向きに配置されない場合、及びブリッジング流体ラインが流体貯蔵タンク内のガスポケットに露出される場合に特に有用である。このような場合には、流体の表面張力、通気口のサイズ及び流体速度は、ブリッジング流体ラインの外部にある流体貯蔵タンク内の気体がブリッジング流体ラインに入らず、流体が通気口から出ることなくブリッジング流体ラインを流れるように構成される。この場合、気体が流体ラインに再び入り込むことを防止するために、通気口のサイズは、十分小さくなければならず、流体の表面張力は、十分大きくなければならない。ブリッジング流体ラインを流れる流体の線速度も、この判定における検討要素となる。
【0023】
図3は、図2の流体タンクの例示的な構成の縦断面図である。流体貯蔵タンク20は、流入流体ライン24に接続されている流入ポート38と、流出流体ライン22に接続されている流出ポート40とを備える。ブリッジング流体ライン34は、流体貯蔵タンク20内に設けられ、流入ポート38と流出ポート40とを連通する。流体貯蔵タンク20は、余剰な流体30を貯蔵する。冷却ループを流れる流体は、流入ポート38を介して流体貯蔵タンク20内のブリッジング流体ライン34内に入り、ブリッジング流体ライン34を介して流体貯蔵タンク20内を流れ、流出ポート40を介して、流体貯蔵タンク20から流出する。流体がブリッジング流体ライン34を流れると、流体内の気体は、1つ以上の通気口36を介して、ブリッジング流体ライン34から流出する。ブリッジング流体ライン34の断面積は、流入流体ライン24の断面積及び流出流体ライン22の断面積と同じ又は略同じであることが好ましい。
【0024】
各通気口36は、例えば、ブリッジング流体ライン34に開設された孔、スリット又は穿孔等の開口であり、冷却ループと流体貯蔵タンクとの間で気体と流体の交換を実現する。ブリッジング流体ライン34には、幾つの通気口36を設けてもよい。例えば、図3は、ブリッジング流体ライン34の上面に形成されている単一の通気口36を有するブリッジング流体ライン34を示している。これに代えて、ブリッジング流体ライン34上の如何なる位置に単一の通気を設けるようにしてもよい。図4は、上面に沿って長手方向に形成されている複数の通気口36を示している。図5は、ブリッジング流体ライン34の周囲に放射状に形成されている複数の通気口36を示している。図6は、ブリッジング流体ライン34の長手方向に沿って及びブリッジング流体ライン34の周囲に放射状に形成され、長手方向に整列されている複数の通気口36を示している。図7は、ブリッジング流体ライン34の長手方向に沿って及びブリッジング流体ライン34の周囲に放射状に形成され、長手方向に互い違いに配置されている複数の通気口36を示している。また、他の通気口構成も想定される。ブリッジング流体ライン34の通気口36を放射状に形成することによって、ブリッジング流体ライン34内の気体が通気口36を出て流体貯蔵タンク20に入るために、流体貯蔵タンク20を適切な向きに向ける必要性がなくなる。このため、通気口36をブリッジング流体ライン34の周りに放射状に配置することによって、流体貯蔵タンク20を向き自在にすることができる。
【0025】
幾つかの実施の形態では、通気口36は、1つ以上のメッシュ部分が形成されてなる。図8は、メッシュ42を備えるブリッジング流体ライン34の例示的な構成を示している。各メッシュ部分は、図8のようにブリッジング流体ライン34を完全に包囲していてもよく、部分的に包囲していてもよい。包括的に言えば、ブリッジング流体ライン34は、1つ以上の開口を有するように構成され、ブリッジング流体ライン34内の気泡は、1つ以上の開口を介して流体貯蔵タンク20に出ることができ、流体貯蔵タンク20内の流体は、ブリッジング流体ライン34に入ることができる。
【0026】
冷却ループのアプリケーションによっては、流体貯蔵タンク20は、1つ以上の特定の向きに構成でき、又は流体貯蔵タンク20は、向き自在になるように構成できる。例えば、デスクトップコンピュータは、通常、所定の位置に固定され、特に動作中に動かされることは殆どない。このアプリケーションにおける流体貯蔵タンク20は、図1の流体貯蔵タンクと同様に構成でき、この場合、ガスポケット32は、流体貯蔵タンク20の上部に蓄積し、ブリッジング流体ライン34は、流体貯蔵タンク20の下部の近傍に配置される。このアプリケーションでは、例えば、デスクトップコンピュータが逆さの向きで動作する等、流体貯蔵タンク20が逆さになることは予期されず、したがって、ブリッジング流体ライン34の交換通気口36がガスポケットに露出される状況は、回避される。他の具体例として、ラップトップコンピュータは、多数の異なる位置のうちの任意の位置で使用されている。このアプリケーションにおける流体貯蔵タンク20は、向き自在に構成でき、すなわち、ブリッジング流体ライン34内の交換通気口36は、流体貯蔵タンク20の向きにかかわらず、ガスポケットに露出されない。他のアプリケーションでは、流体貯蔵タンク20、流体貯蔵タンク20内のブリッジング流体ライン34の位置及びブリッジング流体ライン34の交換通気口36の位置は、完全に向き自在ではないが、複数の向き、例えば、2つ以上の向きに対応するように構成できる。
【0027】
図9は、向き自在である流体貯蔵タンク及びブリッジング流体ラインの例示的な構成を示す図である。この例示的な構成では、ブリッジング流体ライン56は、実質的に流体貯蔵タンク50の中心軸に沿って配設されている。流体貯蔵タンク50は、流入流体ライン24に接続されている流入ポート52と、流出流体ライン22に接続されている流出ポート54とを備える。ブリッジング流体ライン56は、1つ以上の交換通気口58を備える。向き自在の構成では、ブリッジング流体ライン56は、流体貯蔵タンク50内に配設され、交換通気口58は、ブリッジング流体ライン56に設けられ、交換通気口58は、流体貯蔵タンク50の向きにかかわらず流体貯蔵タンク50内に形成されているガスポケットに露出されないように構成されている。換言すれば、交換通気口58は、常に、流体貯蔵タンク50内の流体に露出されている。
【0028】
ここまで、流体貯蔵タンク内に配設されたブリッジング流体ラインに関連して流体貯蔵タンク及びブリッジング流体ラインについて説明した。代替の構成では、ブリッジング流体ラインは、流体貯蔵タンクの外部にあり、ブリッジング流体ラインの1つ以上の交換通気口が、流体貯蔵タンクのアクセス用開口又はアクセスポートを介して、流体貯蔵タンク内の流体に露出される。図10は、外部のブリッジング流体ライン80に接続されている流体貯蔵タンク60の例示的な構成の縦断面図である。この例示的な代替の構成では、流体貯蔵タンク60は、流体貯蔵タンク60内に収容されている流体へのアクセスを提供する開口62を備える。延出部70は、開口62とブリッジング流体ライン80とを接続し、これにより、ブリッジング流体ライン80の交換通気口82は、延出部70を介して、流体貯蔵タンク60の流体に露出される。延出部70は、流入流体ライン24に接続されている流入口72と、流出流体ライン22に接続されている流出口74とを備える。幾つかの実施の形態では、延出部70は、流体貯蔵タンク60から独立した部品であり、延出部70は、流体貯蔵タンク60に密封される。他の実施の形態では、延出部70は、流体貯蔵タンク60の一部として統合されている。図10には、単一の開口62を示しているが、流体貯蔵タンク60は、2つ以上の開口62を有し、この開口62のそれぞれが、1つ以上の延出部と連通され、この1つ以上の延出部を介してブリッジング流体ライン80と接続されるようにしてもよい。
【0029】
図3、図9及び図10に示す流体貯蔵タンクは、長方形の形状を有しているが、流体貯蔵タンクは、望まれる如何なる形状に形成してもよい。これは、空間が限られたアプリケーションにおいて、既存の部品間又は既存の部品内で使用可能な空間が不規則な寸法を有している場合に特に有用である。
【0030】
幾つかの実施の形態では、流体貯蔵タンクは、例えば、無汚染の固定ライフシステム(contamination-free fixed life system)で用いることができる密封された循環システム内で使用される。他の実施の形態では、拡張可能なシステムを介して、流体貯蔵タンクに流体の補給を行うことができるように、流体貯蔵タンクは、開かれ又はアクセスポートを備えるように構成される。
【0031】
以上では、流体ベースの冷却装置で使用する流体補償装置について説明したが、流体補償装置は、作動流体内の可溶性の気体又は気泡に影響を受けやすく、又はこのような気体又は気泡を除去する必要がある加圧されていない如何なる流体ループにも使用できる。
【0032】
また、本発明に基づく冷却装置は、図2に示す部品に限定されず、他の部品及び素子を備えていてもよいことは当業者にとって明らかである。例えば、図2には示していないが、冷却装置は、除熱器に気流を向けるためのファン等の1つ以上のエアムーバを備えていてもよい。
【0033】
本発明の構成及び動作原理を明瞭に説明するために、様々な詳細を含む特定の実施の形態を用いて本発明を説明した。このような特定の実施の形態の説明及びその詳細は、特許請求の範囲を制限するものではない。本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、例示的に選択された実施の形態を変更できることは、当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.流入ポート及び流出ポートを有し、流体を収容するように構成されている流体貯蔵タンクと、
b.上記流入ポートに接続され、該流入ポートに流体を流入させる流入流体ラインと、
c.上記流出ポートに接続され、該流出ポートから流体を流出させる流出流体ラインと、
d.上記流入ポートと流出ポートとを接続するブリッジング流体ラインとを備え、該ブリッジング流体ラインは、該流入ポートから流入する流体を該流出ポートに渡し、更に、1つ以上の交換通気口を備えることにより、該ブリッジング流体ライン内の流体を上記流体貯蔵タンク内の流体に露出させ、該1つ以上の交換通気口のそれぞれは、該ブリッジング流体ライン内に存在する気体を該流体貯蔵タンクに送り、該流体貯蔵タンク内の流体を該ブリッジング流体ラインに送る流体補償装置。
【請求項2】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、上記ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及び該ブリッジング流体ライン内の流体の流量は、該ブリッジング流体ライン内の流体が、上記1つ以上の交換通気口を通過することを実質的に防止するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の流体補償装置。
【請求項3】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、上記ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及び該ブリッジング流体ライン内の流体の流量は、該ブリッジング流体ライン内に存在する気体が、該1つ以上の交換通気口を通過し、上記流体貯蔵タンクに入るように構成されていることを特徴とする請求項1記載の流体補償装置。
【請求項4】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、上記ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及び該ブリッジング流体ライン内の流体の流量は、上記流体貯蔵タンク内に溜まった気体が、該1つ以上の交換通気口を通過し、該ブリッジング流体ラインに入ることを実質的に防止するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の流体補償装置。
【請求項5】
上記流体貯蔵タンクは、該流体貯蔵タンク内に溜まった気体が上記ブリッジング流体ラインに露出されないように構成されていることを特徴とする請求項1記載の流体補償装置。
【請求項6】
上記流体貯蔵タンクは、向きが自在であることを特徴とする請求項5記載の流体補償装置。
【請求項7】
上記流体貯蔵タンクは、向きを指定することを特徴とする請求項5記載の流体補償装置。
【請求項8】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれは、孔、スリット又は穿孔であることを特徴とする請求項1記載の流体補償装置。
【請求項9】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれは、メッシュ状の通気口であることを特徴とする請求項1記載の流体補償装置。
【請求項10】
上記ブリッジング流体ライン内に存在する気体は、気泡又は可溶性の気体を含むことを特徴とする請求項1記載の流体補償装置。
【請求項11】
上記流体貯蔵タンクは、密閉されていることを特徴とする請求項1記載の流体補償装置。
【請求項12】
上記流体貯蔵タンクは、開放されていることを特徴とする請求項1記載の流体補償装置。
【請求項13】
a.流体貯蔵タンク及びブリッジング流体ラインを備え、該流体貯蔵タンクは、流入ポート及び流出ポートを有し、流体を収容するように構成され、該ブリッジング流体ラインは、該流入ポートと該流出ポートと接続するように構成され、該流入ポートから流入する流体を該流出ポートに渡し、1つ以上の交換通気口を備えることにより、該ブリッジング流体ライン内の流体を該流体貯蔵タンク内の流体に露出させ、該1つ以上の交換通気口のそれぞれは、該ブリッジング流体ライン内に存在する気体を該流体貯蔵タンクに送り、該流体貯蔵タンク内の流体を該ブリッジング流体ラインに送る流体補償装置と、
b.上記流体補償装置の流入ポート及び流出ポートに接続され、該流入ポートを介して該流体補償装置に流体を流入するとともに、該流出ポートを介して該流体補償装置からの流体が流出する流体ベースの冷却ループとを備える流体補償システム。
【請求項14】
上記冷却ループは、1つ以上の熱交換器及びポンプを備えることを特徴とする請求項13記載の流体補償システム。
【請求項15】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、上記ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及び該ブリッジング流体ライン内の流体の流量は、該ブリッジング流体ライン内の流体が、上記1つ以上の交換通気口を通過することを実質的に防止するように構成されていることを特徴とする請求項13記載の流体補償システム。
【請求項16】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、上記ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及び該ブリッジング流体ライン内の流体の流量は、該ブリッジング流体ライン内に存在する気体が、該1つ以上の交換通気口を通過し、上記流体貯蔵タンクに入るように構成されていることを特徴とする請求項13記載の流体補償システム。
【請求項17】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、上記ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及び該ブリッジング流体ライン内の流体の流量は、上記流体貯蔵タンク内に溜まった気体が、該1つ以上の交換通気口を通過し、該ブリッジング流体ラインに入ることを実質的に防止するように構成されていることを特徴とする請求項13記載の流体補償システム。
【請求項18】
上記流体貯蔵タンクは、該流体貯蔵タンク内に溜まった気体が上記ブリッジング流体ラインに露出されないように構成されていることを特徴とする請求項13記載の流体補償システム。
【請求項19】
上記流体貯蔵タンクは、向きが自在であることを特徴とする請求項18記載の流体補償システム。
【請求項20】
上記流体貯蔵タンクは、向きを指定することを特徴とする請求項18記載の流体補償システム。
【請求項21】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれは、孔、スリット又は穿孔であることを特徴とする請求項13記載の流体補償システム。
【請求項22】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれは、メッシュ状の通気口であることを特徴とする請求項13記載の流体補償システム。
【請求項23】
上記ブリッジング流体ライン内に存在する気体は、気泡又は可溶性の気体を含むことを特徴とする請求項13記載の流体補償システム。
【請求項24】
上記流体貯蔵タンクは、密閉されていることを特徴とする請求項13記載の流体補償システム。
【請求項25】
上記流体貯蔵タンクは、開放されていることを特徴とする請求項13記載の流体補償システム。
【請求項26】
a.アクセス用開口を有し、流体を収容するように構成されている流体貯蔵タンクと、
b.上記アクセス用開口に接続されている延出部と、
c.上記延出部に接続され、内部に流体を流すように構成されているブリッジング流体ラインを備え、該ブリッジング流体ラインは、該延出部に接続され、該延出部を介して上記流体貯蔵タンクの流体に露出され、該ブリッジング流体ライン内に存在する気体が該流体貯蔵タンクに入り、該流体貯蔵タンク内の流体が、該ブリッジング流体ラインに入るように構成されている1つ以上の交換通気口を備える流体補償装置。
【請求項27】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、上記ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及び該ブリッジング流体ライン内の流体の流量は、該ブリッジング流体ライン内の流体が、上記1つ以上の交換通気口を通過することを実質的に防止するように構成されていることを特徴とする請求項26記載の流体補償装置。
【請求項28】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、上記ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及び該ブリッジング流体ライン内の流体の流量は、該ブリッジング流体ライン内に存在する気体が、該1つ以上の交換通気口を通過し、上記流体貯蔵タンクに入るように構成されていることを特徴とする請求項26記載の流体補償装置。
【請求項29】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれのサイズ、上記ブリッジング流体ライン内の流体の表面張力及び該ブリッジング流体ライン内の流体の流量は、上記流体貯蔵タンク内に溜まった気体が、該1つ以上の交換通気口を通過し、該ブリッジング流体ラインに入ることを実質的に防止するように構成されていることを特徴とする請求項26記載の流体補償装置。
【請求項30】
上記流体貯蔵タンクは、該流体貯蔵タンク内に溜まった気体が上記ブリッジング流体ラインに露出されないように構成されていることを特徴とする請求項26記載の流体補償装置。
【請求項31】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれは、孔、スリット又は穿孔であることを特徴とする請求項26記載の流体補償装置。
【請求項32】
上記1つ以上の交換通気口のそれぞれは、メッシュ状の通気口であることを特徴とする請求項26記載の流体補償装置。
【請求項33】
上記ブリッジング流体ライン内に存在する気体は、気泡又は可溶性の気体を含むことを特徴とする請求項26記載の流体補償装置。
【請求項34】
上記流体貯蔵タンクは、密閉されていることを特徴とする請求項26記載の流体補償装置。
【請求項35】
上記流体貯蔵タンクは、開放されていることを特徴とする請求項26記載の流体補償装置。
【請求項36】
上記流体貯蔵タンクは、上記アクセス用開口を2つ以上備え、該流体貯蔵タンクと上記ブリッジング流体ラインとを接続する上記延出部を1つ以上備えることを特徴とする請求項26記載の流体補償装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−514145(P2010−514145A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518317(P2009−518317)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/015250
【国際公開番号】WO2008/005392
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(505163741)クーリギー インコーポレイテッド (32)
【Fターム(参考)】