説明

流体製剤を投与する投与装置

【課題】投与量の測定を簡単で且つ設定をコスト効果的な態様にて実行する流体製剤の投与装置を提供する。
【解決手段】投薬量が液圧通路25、26、27、53により制御される、医薬を投与する投与装置が開示されている。液圧流体が流れる液圧通路内に好ましくは膜の形態をした多孔性要素40が存在し、これにより流量を決定し又は衝撃圧力の成分を送り出す。異なる多孔性要素又は多孔性要素の透過性部分の異なる寸法を選ぶことにより、流量を制御することを許容し得るよう選択要素50が提供されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文部分に記載された特徴を備える、流体製剤を投与する投与装置に関する。かかる装置は、液体形態の医薬を注入することにより投与するのに特に適している。
【背景技術】
【0002】
多くの疾患の場合、例えば、インスリン処方剤又はヘパリンのような血液の抗凝固薬のような医薬を手操作にて、患者に対して連続的に液体の形態にて投与することが望ましい。この目的のため、医薬がガラスアンプル内に存在する注入装置が既知である。カテーテルにおいて、アンプルは、カニューレに連結され、該カニューレは、患者の身体組織に例えば、皮下的に排出する。アンプルには可動のストッパがある。医薬は、ストッパを動かすことにより、カテーテル及びカニューレを通して患者に分与される。
【0003】
先行技術において、ストッパが直接、動かされずに、液圧システムによって動かされる、注入装置が提案されている。このように、医薬の投与量の測定は、液圧によって行われる。衝撃圧力が適した態様にて、例えば、圧力ばねによって液圧リザーバに発生される。逃げる液圧流体は、液圧通路の上にてアンプルに到達し、ここで、製剤ストッパを前方に押す。液圧通路を通る一定で低流量の流れを保証し、これにより適した量の医薬を投与することを保証する、液圧通路内の流量を制限する装置がある。
【0004】
かかる装置の一例は、独国特許明細書199 39 023号に記載されている。液圧通路内にて、流量を制限し且つ圧力を降下させる作用を奏する小さい断面積の長い毛管を設けることが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この型式の装置の不利益な点は、製剤の荷重内にて投与量の過大な変化を避けるため、毛管通路は、極めて精密に形成しなければならない点である。このことは、円筒状毛管を通る層状流れの量と毛管の寸法との間の関係を説明する、ハーゲン・ポワズィユの法則を使用することで容易に強調できる。この法則によれば、毛管の直径の4乗が流量の計算値に比例する。この理由のため、毛管の断面積自体の僅かな変化が、流量の大きい変化を引き起こす可能性がある。毛管は、極めて精密な製造を要求するから、この毛管の製造コストは相対的に高くなる。このため、これらの型式の装置は、1回限りの使用にのみ適している。更に、液圧システム内に最小の不純物があっても、毛管は閉塞し、このため、毛管を通る流量が遮断され、更なる医薬は投与されないという危険性がある。その結果、危険であり、しばしば生命を脅かす医薬の供給不足を引き起こす可能性がある。
【0006】
また、1つの毛管通路の場合、毛管通路の長さ及び直径により決定される、単一の所定の一定の量にて医薬を投与することのみが可能である。このため、投与量は何ら制御されない。しかし、実際には、投与量を患者個人の必要性に合うように調整し得るようその投与量を変更することがしばしば必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明の課題は、投与量の測定を簡単で且つコスト効果的な態様にて実行することができる、当初記載の型式の流体製剤の投与装置を具体化することである。
この課題は、請求項1の特徴を備える、投与装置により実現されよう。有利な設計は従属請求項に記載されている。
【0008】
このため、本発明に従った投与装置は、
液圧流体を有する液圧リザーバと、
液圧リザーバにて衝撃圧力を発生させる駆動要素と、
液圧リザーバと流体受容部との間の流体接続部と、
流体受容部に達する液圧流体によって流体製剤が製剤容器外に排出されるような態様にて形成された、流体製剤を有する製剤容器とを備えている。
【0009】
流量を測定することができ、また、液圧流体に対して透過性である、多孔性要素が流体接続部内に収容されている。
このため、投与量は、液圧通路内にて制御される。液圧流体が流れる液圧通路内に多孔性要素がある。このようにして、多孔性要素は、流量を決定し、これにより、投与量も同様に決定する。多孔性要素は、流量に対して規定された断面積を有する機械的に形成した毛管通路のような複雑な機械的要素を必要とせずに所定の流量にて液圧流体が制御された状態にて通るのを容易に許容する。原則として、液圧流体が通るのを可能にする多数の細い通路が多孔性要素内に多数、存在し、また、事実上、これらの通路は、別個の個別の通路とし、又は広く分枝回路網としてもよい。多孔性要素の透過度は、製造に関する限り、狭い許容公差範囲内にて容易に設定することができる。最後に、多孔性要素を通る流量は、個別の通路の特徴の変化程度が釣り合わされる、極めて多数の通路の平均的特徴によって決定される。
【0010】
色々な種類の多孔性要素が既知である。例えば、多孔性要素は、流体接続部内に導入される多孔性セラミックブロックにて又はスポンジからさえも製造することができる。しかし、好ましくは、多孔性要素は少なくとも膜を保持するものとする。膜は、薄い、多孔性の要素、すなわち、その他の2つの方向よりも1つの特定の方向に遥かに小さい測定寸法を有する多孔性要素を意味するものと理解すべきである。膜は、通常、1mm以下、しばしば200μm以下の厚さである。2nm以下の孔サイズを有するほぼマイクロ多孔性材料又は50nm以上の孔サイズを有するマクロ多孔性材料のような、異なる多孔度を有する多岐に亙る多孔性材料が既知である。多孔性材料の選択は、流体医薬の所望の投与量、このため、投与装置における流体接続部を通る所望の流体量に従って為される。
【0011】
流量を制御するため、多孔性要素は、部分的に被覆し、液圧流体が多孔性要素の選んだ部分のみを通って流れるようにしてもよい。これと同時に、透過性部分は、流れを完全に遮断し得るように流量を変化させるべくその寸法が調節可能である。例えば、可調節型開口は、膜上に配置し、次に、可撓性部分の寸法を選ぶ選択要素として作用することができる。多孔性要素上に配置された一定のサイズの開口部を選んだ網であることが好ましく、この網は、規定された選んだ位置まで動かすことができる。選んだ位置に依存して、網における開口部は、多孔性要素の可変の透過性部分、特に、異なる寸法の部分を非ブロック状態にする。これと代替的に、網は、流れを完全に遮断し得るよう多孔性要素を完全に被覆する位置となるような配置とすることも可能である。この態様にて、多孔性要素は、網が多孔性要素に対して調節可能である間、投与装置のケーシング内にて静止状態に保持することができ、又は、多孔性要素は、網に取り付け又は該網と共に可動であり、網の各位置において、多孔性要素の別の領域が透過するようにすることができる。また、異なる多孔性要素を網上の個別の開口部上に取り付け、網の各位置において、別の多孔性要素が透過性であるようにすることができる。この場合、液圧通路を通る流量は、幾つかの異なる多孔性要素の1つを選び、これにより多孔性部分の領域の寸法が一定のままであるようにすることにより、調節することができる。
【0012】
流量、すなわち多孔性要素又は一定の多孔性要素の透過性部分の領域の寸法の選択は、投与前又は投与する間でさえ、手操作にて調節することができる。しかし、投与量を時間と共に、自動的に変化させることのできる1組の自動制御装置を選択要素に取り付けることも可能である。かかる制御装置は、使用する間、又は例えば、1日の間にて、医薬の量を変更する必要性に対応することができる。
【0013】
網は、簡単で且つ小型の設計のものであり、基本的に、管状である、すなわち該網は、その内部に開口部が配置される、円形の円筒状面を有する少なくとも1つの領域を示す。次に、円筒体の軸線を回転させることにより、網は多数の位置に動かすことができる。この場合、多孔性要素は、網に対し相補的な案内要素、すなわち少なくとも部分的に円筒状の案内要素の壁付近にて固定状態に配置され且つ、円筒体の軸線に対し平行に伸びる細長いストリップの形状を示すことが好ましい。好ましくは、網に面するストリップの表面は、円筒体の軸線の回りにてその半径に対して湾曲しているものとする。しかし、この面は、曲率の方向に対して接線方向のストリップの寸法が過大でない限り、平坦な形状とすることが可能である。
【0014】
網における開口部の間には、ストリップ状の密封要素が配置されることが好ましく、該密封要素は、網の面上にて円筒体の軸線に対して平行に跨ぎ、好ましくは、網の面から外に突き出し且つ、多孔性要素の両側部にて案内要素内に圧密に嵌められるようにする。この態様にて、液圧流体が網と案内要素との間にて接線方向へ漏洩するのを防止することができる。
【0015】
案内要素に対する網の一定の位置を実現するため、少なくとも1つのキャビティを案内要素に穿孔することができ、密封要素の少なくとも1つがこのキャビティと係合する。好ましくは、密封要素の各々に対して配置された細長い溝の形態をした相補的なキャビティが存在するものとする。
【0016】
しかし、シール及びキャビティの役割は逆にしてもよい、すなわち、密封要素は、網の上ではなくて、案内要素上に配置することができ、また、例えば、円筒体の軸線に対して平行な細長い溝のようなキャビティを網に穿孔することができ、案内要素の密封要素が該キャビティと係合するようにする。このことは、密封要素が網に沿って摺動し、これにより、網が捩られる間、密封要素が損傷するのを防止することになる。
【0017】
網のような選択要素の位置、又は多孔性要素の選択を表示する目盛りが投与装置上に存在することが好ましい。これにより、目盛りにおける専用の表示要素、又は目盛り自体が選択要素又は網と緊密に連結されることが好ましい。
【0018】
網は、所定の距離にて製剤容器を取り囲み、網と製剤容器との間に環状の空間が現われるようにすることが好ましい。この空間は、この場合、流体容器の部分を形成する。
色々な型式の製剤容器を装置内に取り付けることができる。製剤容器は、商業的に入手可能なアンプル、すなわち、円筒状の側壁と、該側壁に押し付けることのできる製剤ストッパとを有するアンプルであることが好ましい。次に、アンプルは、多孔性要素を通って流れて流体受容部に到達する液圧流体が製剤ストッパを製剤容器の出口に向けた方向に動かし、流体製剤が投与されるような態様にて配置される。これに代えて、製剤容器は、変形可能な外壁を有する可撓性のパウチ又は別の保存部分とし、製剤容器は、多孔性要素を通って来る液圧流体にて圧縮されるようにする。その一例は、ベローズ状壁、すなわち、多岐に亙る曲げ線を有する壁を備える容器であり、その容器の長さに沿って隣接する側壁領域が互いに折り重なるようにしたものである。
【0019】
また、液圧リザーバは、可動のストッパにより限界を画し、又は該液圧リザーバは、その全体が圧縮されるようにすることができる。
装置は、各種の方法にて作動させることができる。簡単で極めて信頼性が高く且つ、コスト効果的な変形例において、駆動要素は、液圧リザーバに力を発生させるコイルばねから成っている。しかし、従来のマルチフェーズモータのようなモータも適した駆動体である。
【0020】
更に、ある型式の膜又は隔膜のような、例えば、選択的に透過性又は半透過性の多孔性要素を使用することにより、流体医薬を投与装置から投与するための駆動体として浸透圧効果の力を利用することができる。溶媒の濃度が異なる流体が膜の一側部にて導入されるならば、駆動体の結果、溶媒が膜の一側部から選択的に多孔性の要素を通じて反対側部まで拡散することで駆動力が生じる。例えば、流体は、溶媒の1つの濃度にて液圧リザーバ内に提供し、第二の濃度にて流体受容部内に提供することができ、この場合、液圧リザーバは、選択的に多孔性の要素により流体受容部から分離されている。ばね及び浸透圧効果を利用した圧力発生装置のような、従来の装置の組合わせ体とすることも考えられる。
【0021】
本発明に従った装置は、抗生物質、インスリン処方剤、血液の抗凝固薬、成長ホルモンのような、医薬を投与するのに特に適している。
本発明の好ましい実施の形態について、概略図を参照しつつ、以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明に従った装置の一例としての実施の形態は、色々な図面の内、図1ないし図5に示されている。
図1及び図5にて特に、理解されるように、該装置は、接続壁13の上方の円筒状側壁の領域内にて互いに接続された、平行で中空の2つの円筒状ケーシングの構成要素11、12を有するケーシング10から成っている。図5にて見ることのできる共通のケーシング底部14と、図4に示した共通のケーシング頂部15とにより追加的な安定性がケーシングに付与される。
【0023】
液圧リザーバ20と、コイルばね32を有する駆動体とが図1、図4及び図5の右側に示したように、第一のケーシング構成要素11内にて円筒状の中空の空間17内に配置されている。医薬アンプル60の形態をした製剤容器は、図1、図4及び図5の左側に示したように、第二のケーシング構成要素12内にてこのアンプルに対して平行に伸びる中空空間18内に配置されている。
【0024】
第一のケーシング構成要素11の中空の空間内の円筒状の液圧リザーバ20は、側方向に向けて周方向に円筒状側壁21により且つ、下方にて底部22により限界が画されている。上方にて、液圧リザーバは、円筒体の軸線の方向に向けて可動であり且つ、密封リング31により側壁21に対して密封される液圧ストッパ30により限界が画されている。
【0025】
液圧ストッパ30の上方に配置されたコイルばねの形態をした圧力ばねとして機能する主ばね32が存在する。この主ばねは、医薬を投与する駆動体として機能する。このばねは、液圧ストッパ30と、液圧リザーバ20の取り囲む側壁21にねじ込まれる頂部カバー33との間にて圧縮され、このため、該ばねは、液圧ストッパにて下方に作用する駆動力を発生させ、その結果、液圧リザーバ20内の圧力が上昇することになる。液圧流体への動力の伝達を遮断するばね駆動体に対するリテーナを更に提供することが可能である。リテーナを解放することにより、流体医薬に対する動力の流れを開始することができる。例えば、インターロックをリテーナとして提供することができる。
【0026】
シール23が液圧リザーバ20の底部22に配置されている。中空針24がこのシール内に挿入される。中空針24の下端は、ケーシング10と液圧リザーバ20の底部22との間の内部空間26内に達する流体通路25にて終わる。流体室27が内部空間26と接続され、その長さに沿って接続壁13内に配置され且つ、第二のケーシング構成要素12の円筒体の軸線16に対して平行に伸びている。この細長い連続的な流体室27は、図5にても特に認識することができる。このため、液圧リザーバ20と流体室27との間の流体接続部がある。この流体接続部の断面は、流体接続部が液圧流体の流れを基本的に妨害しないよう、全体として十分に大きい。換言すれば、液圧リザーバ20内の衝撃圧力は、圧力が僅かに降下し又は全く降下しない状態にて、流体接続部を亙って流体室27に伝達される。
【0027】
流体室27は、膜40により第二の(左側)ケーシング構成要素12から分離されており、このことは、液圧流体が第二のケーシング構成要素の12の方向に向けて制御された状態でゆっくりと動くのを許容することになる。
【0028】
この膜40は、側壁52及び底部51を有する円筒状の被覆物の形態をした網50により出口側にて部分的に又は全体的に被覆されている。網50は、左側ケーシング構成要素12内で細長い円筒状の中空の空間18内に座している。網50は、ケーシング10を図示しない図3にて認識し得るように、医薬アンプル60を取り囲む。医薬アンプル60は、底部に対し開放した周囲側壁61と、該側壁内に押し込むことのできる製剤ストッパ62とを特徴とする。これらの型式の医薬アンプルは、市場にて広く普及しており、各種の寸法にて入手可能である。普及した形態において、アンプルは、例えば、3ミリリットルの容積の流体医薬を保持している。
【0029】
図面の面における網50の真の長さの形態は、図2に概略図的に示されている。円筒体の軸線16に対して平行に伸びる各種寸法の幾つか(この場合、8つ)の細長い薄板状開口部(領域)53、53´、53´´等が網50の側壁52に形成されている。網50の相応する平坦な溝内に固定されたストリップ状の細長いシール54が開口部の間にて且つそれらの長さに対して平行に延伸している。シールは、例えば、エラストマーのようなものにて出来ている。図5から理解し得るように、丸味を付けた領域を有するシール54の各々は、側壁の外側部と僅かに重なり合う。第二のケーシング構成要素の側壁12の内側部に配置された相応するナットがあり、該ナット内にシール54が係合することができる。網50は、シール54が溝内に座する多岐に亙る位置の間にて円筒体の軸線16の回りにて回転させることができる。このため、溝を残し且つケーシングの内側部に沿って摺動することのできるようシールを大きく変形させるには、特定の力に打勝たなければならない。これと逆に、シールが再度、溝に係合する位置は、それら自体、感得することができる。このようにして、網50は、該網を円筒体の軸線16の回りにて回転させることにより、正確に配置することができる。
【0030】
その各位置にあるとき、網50は、膜40に対して上方に配置し、シールを形成する。開口部53、53´、53´´等は、各場合にて、異なる自由寸法の膜の領域を残す。これに反して、特定の開口部の各々の外側にて、網50の側壁52は、開口部のため、非被覆状態にあるその膜領域40のみを通って液圧流体が流れるような態様にて膜40を被覆する。このようにして、液圧流体が膜を通って流れるときの量(単位時間当たりの容積)を、設定することができる。この測定値は、図2の下側目盛りにて示される(随意的な単位にて)。別の位置(図2の下方目盛りにて、これは、位置「0」である)において、網は膜を完全に被覆する。
【0031】
網50と医薬アンプル60との間には、アンプルの上端にて大きくなる狭小な環状空間55がある。膜40及び網50を通って流れる液圧流体は、この環状空間に入る。頂部にて、環状空間55は、網50内にねじ込まれる締結具70によって限界が画されている。このため、アンプル60は、ケーシング10内に配置された網50と共に回転させることができる。更に、締結具70内にて、中空針71が保持されており、該中空針の下端は、アンプル蓋63の隔膜64を通して導かれ、これにより、アンプルに一例としての開口部を形成する。中空針71の上端は、カテーテル72と更に接続されている。カテーテル72の最遠端には、原則として、患者の身体内に注入するためのカニューレ(図示せず)が固定されている。締結具の回転位置を示し、及びこれと共に、網50の位置を示す目盛り73が締結具70の上側部にて利用可能である。これにより、現在設定されている投与量の測定値が目盛りに表示される。
【0032】
装置を始動させる前、すなわち装置が患者に届けられたとき、中空針71は、未だ、隔膜64を通して完全に押されていない、すなわち医薬の外方への流れはブロックされている。更に、網は、位置「0」にある。主ばね32は、当初の位置にて圧縮される。液圧リザーバ20、流体室27及びこれらの間に配置された流体接続部並びに環状空間55は、完全に液圧流体にて充填されており、これに相応して膜40は、両側部にて液圧流体内に浸漬されている。次に、装置は、例えば、中空針71を隔膜64に完全に突き刺す、すなわち医薬がカテーテル72内に流れ出るのを可能にすることにより、作動状態とされる。これにより、当初、アンプル60内にて優勢であった余剰な圧力の結果、少量の医薬が中空針71及びカテーテル72を通して押し出され、そこに存在する空気を除くことができるようにすることが好ましい。次に、装置の作動中、主ばね32は、液圧ストッパ30を下方に押す。液圧リザーバ20からの液圧流体は、相応する圧力が等しく優勢である、流体室27内に押し込まれる。この圧力のため、液圧流体は、その上方に配置された網50の開口部53、53´、53´´等により非被覆状態のままとされた膜40の領域を通して加圧される。このことは、相対的に低流量のときに生じ、そのとき、この量は、網50の開口部の寸法により設定することができる。網を通って来る液圧流体は、環状空間55に到達する。この液圧流体は、製剤ストッパ62に力を加え、この力により、医薬は中空針71及びカテーテル72を通じてアンプル60から押し出される。これにより、医薬の投与量は、膜を通る液圧流体の流量に相応する。
【0033】
適した膜は、先行技術にて既知である。膜40は、色々な判断基準、特に、所望の医薬の投与量、使用される液圧流体及び衝撃圧力に関して選ばれることが好ましい。脱イオン水又は蒸留水が液圧流体として使用されることが好ましく、また、必要とされるとき、僅かな濃度にて適した染料と組み合わせ、液圧リザーバの充填レベルを視覚的に点検するため使用に供することができる。水は、その生理学的無害性のため、また、水用の極めて多数の膜が開発されているため、特に適している。これらの型式の膜は、通常、例えば、脱塩装置(逆浸透圧)、透析(血液ろ過)、バッテリ及び燃料、搾乳、化学的分離技術及び分析等に対応し得るようにされている。既知の有機質及び無機質材料は、例えば、セルロースアセテート、織り合わせたガラス繊維糸、セラミック(例えば、ATZ=アルミナ、チタニア、ジルコニアで出来たもの)、混合ニトロセルロースエステル(MCE)、ポリアミド/ナイロン、ポリカーボネート(PCTE)、ポリエステルスルホン(PES)、ポリエステル(PETE)、ポリイミド、ポリプロピレン又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。また、膜を適した(原則として、多孔性)支持体上に重ね合わせることも可能である。多層の膜も可能である。この型式の膜複合材は、同一又は異なる材料にて出来た幾つかの薄い膜を保持することができる。例えば、いわゆる複合薄膜(TCM又はTMF)は、水処理の分野にて既知であり、例えば、多孔性ポリスルフォン支持体上にてポリイミド膜から成っている。
【0034】
適した膜と組み合わせて、適した液圧流体を選ぶことにより、数秒の期間にてアンプルの中身の全部を急速に投与する程度から一日の期間又は数週間に亙ってさえ、極めてゆっくりと投与する程度の範囲とすることができる極めて広範囲の流量を設定することができる。
【0035】
一例は、孔密度6x108cm-2にて平均孔寸法0.03マイクロメートルの典型的なポリカーボネート膜であろうし、該膜を亙って0.7バールの圧力差は、約0.2mlmin-1cm-2の流量を示すであろう。2cmx2mm=0.4cm2のアクティブな(網によって被覆されていない)膜の面積にて、毎分0.08mlの流量となる、すなわち僅か40分以下の時間間隔にて3.0mlのアンプルが相対的に急速に投与されよう。別の材料にて出来ており、別の厚さ及び別の密度及び(又は)孔寸法等を有する膜のような、かかる膜の幾つかの複合材を使用することにより、更なる労力無しにてより多量又はより少量の流量を実現することができる。インスリン又は血液の抗凝固薬のような医薬を投与する場合、量は、単に、1日当たり0.1ないし10ミリリットルとすることができる。
【0036】
本発明は、好ましい一例としての実施の形態に関して説明したが、本発明は、この実施例にのみ限定されず、多岐に亙るその他の実施例が可能である。
コイルばねに代えて、例えば、スパイラルばね又は例えば、機械的に作動される時計装置から既知であるような駆動体を使用してもよい。駆動体は、ばねによって作用させる必要はなく、例えば、電動にて作用させてもよい。駆動体の効果は、浸透圧効果により更に、強化し又は弱化させることができる。従って、流体空間27内にて、環状空間55におけるように膜を透過し得ない溶融した物質の高粘度が優勢であり、このため、浸透圧は、駆動力により発生された流体圧力に抗して作用し又はその逆となる。
【0037】
特に、医薬アンプルに対する液圧リザーバの選択随意的な相対的な調節及び整合を行うことを含む、多岐に亙る形態が本発明に属する装置に対して可能である。従って、液圧リザーバは、例えば、円筒体の軸線16の長さに沿って医薬アンプルの下方に配置することができる。液圧リザーバは、例えば、独国特許明細書199 39 023号に示されたように、環状空間の構造とすることもできる。この場合、環状の液圧リザーバは、医薬アンプル、網及び膜を取り巻くものであることが好ましい。
【0038】
文字通りの意味において、膜に代えて、適した形態の異なる多孔性要素も使用可能であり、例えば、適した多孔性セラミック又はゼオライトを保持する相応する要素で出来たロッド形状要素を使用することができる。
【0039】
医薬容器は、選択随意的な寸法にて入手可能である。医薬アンプルに代えて、例えば、ベローズ状壁を有する可撓性及び(又は)弾性的医薬パウチ又は容器のような異なる型式の医薬容器を採用することもできる。
【0040】
上述した一例としての実施の形態において、医薬容器60は、網50により取り巻かれ且つ該網と共に回転させることができる。これに代えて、医薬容器は、ケーシング10内にしっかりと保持し、また、網は、医薬容器に対して動かすことができる。膜は、例えば、開口部の領域においてのみ又は内部及び(又は)外側の全てに亙って網に固定する等により網に直接、取り付けることもできる。この場合、流体空間27は、網に対して開放させ又は余剰な膜によって限界を画することができる。膜が網に取り付けられる場合、網における各開口部は、異なる型式の膜に割り当てられるものとする。このようにして、この場合、網の全ての開口部が同一寸法であっても、異なる流量を実現することが可能である。
【0041】
上述した一例としての実施の形態において、膜の正確に1つの透過性領域のみが網の各位置にて非被覆状態とされるが、互いに分離した開口部を幾つか設けることもでき、これらの開口部は、共に、透過性領域を非被覆状態にするようにすることも可能である。このようにして、網の安定性を向上させることができる。このことは、また、膜が網に直接、取り付けられる場合に特に有益である。
【0042】
形態に依存して、選択要素に対する他の配置とすることも考えられる。従って、選択要素は、例えば、可動であるよう膜の上方に配置された、平板として製造することができる。この型式の摺動制御装置によれば、流れるため選ばれた多孔性要素の部分は、有益に連続的に変化させることもできる。このため、摺動制御装置は、膜の表面の長さに沿って押され且つ密封した部分を部分的に被覆する。選択要素に対する幾つかのその他の形態とすることも考えられる。
【0043】
簡略化した構造において、網は、全て廃止し、単に、単一の所定の流量のみが可能であるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に従った装置の断面図である。
【図2】網の真の長さの概略図である。
【図3】これらの網の1つのアンプルを取り巻く、アンプルの断面図である。
【図4】図1の装置の平面図である。
【図5】面V−Vにおける図1の装置の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 ケーシング
11 第一のケーシング構成要素
12 第二のケーシング構成要素
13 接続壁
14 ケーシング底部
15 ケーシング頂部
16 円筒体の軸線
17 中空の空間
18 中空の空間
20 液圧リザーバ
21 側壁
22 底部
23 シール
24 中空針
25 流体通路
26 内部空間
27 流体室
30 液圧ストッパ
31 シール
32 主ばね
33 頂部カバー
40 膜
50 網
51 底部
52 側壁
53、53´、53´´ 開口部
54 シール
55 環状空間
60 医薬アンプル
61 側壁
62 製剤ストッパ
63 蓋
64 隔膜
70 締結具
71 中空針
72 カニューレ
73 目盛り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧流体を有する液圧リザーバ(20)と、
液圧リザーバ(20)にて衝撃圧力を発生させる駆動要素と、
液圧リザーバ(20)と流体受容部(55)との間の流体接続部(25、26、27、53)と、
流体受容部(55)に達する液圧流体によって流体要素が流体製剤を製剤容器(60)外に排出するような態様にて設定された、流体製剤を有する製剤容器(60)とを備える、流体製剤を投与する投与装置において、
液圧流体に対して透過性である多孔性要素(40)が、流体接続部(25、26、27、53)を通る流量を測定するため、流体接続部(25、26、27、53)内に配置されることを特徴とする、投与装置。
【請求項2】
請求項1に記載の投与装置において、多孔性要素(40)は膜である、投与装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の投与装置において、多孔性要素(40)は、多孔性要素(40)の選んだ部分のみが液圧流体に対して透過性であるような態様にて被覆される、投与装置。
【請求項4】
請求項3に記載の投与装置において、透過性部分は、流量を変化させ得るように選択要素によってその寸法を変更することができる、投与装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の投与装置において、多数の開口部(53、53´、53´´)を有する網(50)の形態をした選択要素は、多孔性要素(40)の上方に配置され、これにより、網(50)の選んだ開口部(53、53´、53´´)は、位置に依存して、多孔性要素の異なる寸法の透過性部分を非被覆状態にするような態様にて網(50)は、多数の位置に動かすことができる、投与装置。
【請求項6】
請求項5に記載の投与装置において、網(50)は、開口部(53、53´、53´´)が配置される円形の円筒状面を特徴とし、これにより、網(50)は、該網を円筒体の軸線(16)の回りにて回転させることにより多数の位置に動かすことができる、投与装置。
【請求項7】
請求項6に記載の投与装置において、多孔性要素(40)は、少なくとも部分的に円筒状の案内要素(10)の壁(13)の領域内に固定された状態にて配置され且つ、円筒体の軸線(16)に対して平行に伸びる細長いストリップの形態を示す、投与装置。
【請求項8】
請求項5ないし7の何れか1つの項に記載の投与装置において、網(50)は、製剤容器(60)を少なくとも部分的に取り囲み、これにより、流体受容部(55)は、網(50)と製剤容器(60)との間に環状の空間を備えることを特徴とする、投与装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか1つの項に記載の投与装置において、製剤容器(60)は、円筒状側壁(61)と、前記側壁内に押し込むことのできる製剤ストッパ(62)とを有するアンプルであり、前記製剤容器は、流体受容部(55)に入る液圧流体が製剤ストッパ(62)を押して流体製剤を投与するような態様にて配置される、投与装置。
【請求項10】
請求項1に記載の投与装置において、選択要素にて、異なる多孔度の少なくとも2つの多孔性要素(40)が設けられ、前記2つの多孔性要素は、選択要素の動きによって流体接続部(25、26、27、53)内に選択随意的に動かすことができる、投与装置。
【請求項11】
請求項10に記載の投与装置において、選択要素は、最小限2つの多孔性要素(0)が配置される円形の円筒状面を特徴とし、これにより、選択要素は、前記要素を円筒体の軸線(16)の回りにて回転させることにより、最小限2つの多孔性要素(40)の1つのみが同時に流体接続部(25、26、27、53)内に配置される位置である位置に動かすことができる、投与装置。
【請求項12】
請求項4に記載の投与装置において、選択要素は、多孔性要素の表面の上を可動であるように設けられる、投与装置。
【請求項13】
請求項1ないし12の何れか1つの項に記載の投与装置おいて、選択要素の位置を表示し得るように配置された目盛り(73)が存在する、投与装置。
【請求項14】
液圧流体を有する液圧リザーバ(20)と、
液圧リザーバ(20)にて衝撃圧力を発生させる駆動要素と、
液圧リザーバ(20)と流体受容部(55)との間の流体接続部(25、26、27、53)と、
流体受容部(55)に達する液圧流体によって流体要素が流体製剤を製剤容器(60)外に排出するような態様にて設定された、流体製剤を有する製剤容器(60)とを備える、流体製剤を投与する投与装置において、
駆動体は、浸透圧力により発生された少なくとも1つのパワーモジュールを備えることを特徴とする、投与装置。
【請求項15】
請求項14に記載の投与装置において、流体接続部(25、26、27、53)内にて浸透圧力を発生させるため選択的に多孔性要素(40)が設けられ、溶剤の異なる濃度の流体が要素(40)の両側部に存在する、投与装置。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の投与装置において、駆動体は、更なる駆動要素に基づいて、浸透圧パワーモジュールに加えて、更なるパワーモジュールを備え、これにより、浸透圧パワーモジュールは更なるパワーモジュールを支持し又は前記更なるパワーモジュールに抗して作用する、投与装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−55168(P2008−55168A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−222085(P2007−222085)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(503459785)テクファーマ・ライセンシング・アクチェンゲゼルシャフト (100)
【Fターム(参考)】