説明

流動化インクリザーバのハウジング

【課題】流動化インクリザーバにおける熱損失が少ない優れた相変化インク画像発生機を実現する。
【解決手段】画像発生機内にある1個又は複数個のプリントヘッドにインクを供給するインク溜めアセンブリのうち、流動化させた相変化インク等を開口474越しに受け入れて蓄えプリントヘッドに供給する役目を担うインクリザーバ404を、頂部450、底部454及び複数枚の側壁464,468を有するハウジングで全体に亘り又は部分的に覆う。頂部450及び底部454に案内溝480を形成し、その溝480にマイカパネル488,490の縁をはめ込み側壁464,468を形成することで、少なくとも一部の側壁をパネル488,490による二重壁構造にする。側壁リザーバ間空隙484及び内外パネル間空隙494の厚みは溝480等の働きで保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は相変化インクプリンタ、特に流動化させた相変化インクを保持しそのプリンタのプリントヘッド乃至プリントヘッド群に供給するインクリザーバに関する。
【背景技術】
【0002】
相変化インクプリンタ又は固体インクプリンタと呼ばれるプリンタを使用する際には、通常、スティック状又はペレット状の固形相変化インクを装填口越しにそのプリンタのインク装填器に入れる。すると、その相変化インクは付勢機構や重力の働きで搬送路沿いに押送され又は滑降していく。その行き着く先には熔融アセンブリがあり、相変化インクはそのアセンブリ内の熔融板に当接する。熔融板に当接するとその相変化インクはその当接部位から熔融していく。これによって生じた流動性のあるインク、即ち流動化インクは、流動化インクリザーバ(メルトリザーバ)に送られていく。
【0003】
流動化インクリザーバはある分量まで流動化インクを蓄えうるよう構成されている。このリザーバに送られた流動化インクはその内部に暫時貯留され、必要に応じそのリザーバからプリントヘッド乃至プリントヘッド群に送られる。流動化インクリザーバには適宜熱エネルギが供給されているので、その中の相変化インクを、そのインクが固形状に復する固化温度より高いほぼ一定の温度に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7268359号明細書
【特許文献2】米国特許第6199699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、相変化インクプリンタ内の流動化インクリザーバでは熱損失が発生する。そのため、リザーバ内インク温度をその固化温度より高い温度に保つには、そのリザーバに対し熱エネルギを多めに供給する必要があり、その分はそのプリンタの消費エネルギが多くなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに、流動化インクリザーバにおける熱損失を抑圧乃至防止し、より優れた相変化インク画像発生機を実現するため、本発明に係るインク溜めアセンブリは、(1)プリントヘッドを1個又は複数個備える画像発生機に少なくとも1個組み込まれ、流動性のあるインクを受け入れるための開口及びその開口を介し入ってきたインクをある分量を限度に蓄える室を有し、その室内のインクを1個又は複数個のプリントヘッドに供給可能なインクリザーバと、(2)対応する1個又は複数個のインクリザーバの全体又は一部を覆うべく、そのインクリザーバの上方に位置する頂部及び下方に位置する底部並びにそれら頂部底部間に上下に延びる複数枚の側壁を有するハウジングと、を備える。本アセンブリでは、特に、(3)そのハウジングの側壁を、その側壁と直近のインクリザーバとの間に空隙即ち第1の空隙が発生しその厚みが保持されるよう、当該ハウジングの頂部及び底部に形成された案内溝にその縁がはめ込まれたマイカパネルによって形成し、(4)そのハウジングの側壁のうち少なくとも1枚を、更に外側のマイカパネルと内側のマイカパネルとの間にも空隙即ち第2の空隙が発生しその厚みも保持されるよう、当該ハウジングの頂部及び底部に形成された複数本の案内溝にそれぞれその縁がはめ込まれた複数枚のマイカパネルによって形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】相変化インク画像発生機の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した画像発生機で使用される4個のインク源及びその画像発生機の熔融アセンブリ内の4個の熔融板を示す上面図である。
【図3】それらの熔融板に加えインク溜めアセンブリを示す正断面図である。
【図4】そのインク溜めアセンブリ内の二連式のインクリザーバを示す側断面図である。
【図5】インク溜めアセンブリ及びそれを覆うハウジングを示す前斜視図である。
【図6】同じく後斜視図である。
【図7】そのインク溜めアセンブリにおけるマイカパネル・インクリザーバ間の第1の空隙及び内外マイカパネル間の第2の空隙を示す縦断面図である。
【図8】その一部を拡大して表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るアセンブリの概要をご理解頂くと共にそのシステム構成の子細をご理解頂くため、別紙図面を参照して説明を行う。図中、同様の部材には一貫して同一の符号を付すこととする。更に、本願では、その目的を問わず印刷出力機能を有する種々の装置を画像発生機乃至プリンタと呼ぶこととする。これに該当する装置の例としては、ディジタルコピー機、製本機、ファクシミリ機、多機能機等がある。
【0009】
図1に、本発明の一実施形態に係る高速相変化インク画像発生機(以下「プリンタ」)10の構成を示す。図示の通り本プリンタ10はフレーム11を備えている。後述の通り、どのサブシステム及び機能部材もそのフレーム11内に直に又は他の部材を介し実装されている。それらのうちイメージング部材12はイメージング面14を担持するドラム状の部材である。この部材12はその面14が方向16に動くように稼働される。このドラム状の部材12に代え、適当なベルト支持材を伴うエンドレスベルト状のイメージング部材も遜色なく使用することができる。いずれにせよ、相変化インクによる像はそのイメージング面上に形成される。
【0010】
本プリンタ10を構成する部材のうち、その相変化インクを供給しているのは相変化インクシステム20である。これには少なくとも1個の固形状相変化インク源を設ける。図示例の場合、シアン(C)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びブラック(K)四色での印刷を行えるよう、CMYK各色の相変化インク源22,24,26,28がシステム20内に設けられている。また、それらのインク源22,24,26,28から供給されるのは固形状の相変化インクであるので、印刷時にはそれを熔融即ち相変化させ、流動性のある液状のインク(流動化インク)にする必要がある。そのため、このシステム20には相変化インク熔融制御アセンブリ100も組み込まれている(図2参照)。このアセンブリ100では、そのペースを制御しながら、固形状の相変化インクから流動化インクを生成して1個又は複数個のプリントヘッドアセンブリに供給する。プリントヘッドアセンブリはプリントヘッドシステム30を構成するアセンブリである。本プリンタ10では、高い印刷速度乃至スループットで多色印刷を行うべくプリントヘッドアセンブリを色毎に分けているので、図示の通りおり都合4個のプリントヘッドアセンブリ32,34,36,38がシステム30内にある。
【0011】
本プリンタ10は更に媒体配給システム40を備えている。これには複数個の媒体供給源を設けることができる。図示例では、4個ある媒体供給源42,44,46,48のうち48が大容量用紙源乃至フィーダであり、例えばカットシート状の画像記録媒体(印刷媒体)を大量に備蓄及び供給できるよう構成されている。また、このシステム40には媒体余熱器52、画像加熱器54、熔着器60等からなる媒体処置システム50が付随している。本プリンタ10には、図示の如く原稿フィーダ70も設けられており、そこには原稿保持トレイ72、何個かの原稿シート供給排出器74、原稿露光走査システム76等が設けられている。
【0012】
本プリンタ10は更に制御用ESS(電子サブシステム)80を備えている。これは、本プリンタ10を構成する種々のサブシステム、部材及び機能を稼働させそれを制御する部材であり、例えば自立動作可能な専用ミニコンピュータとして構成されている。ESS80は、CPU(中央処理ユニット)82、電子記憶装置84、ディスプレイ乃至それに類するUI(ユーザインタフェース)86等を備えるほか、センサ入力制御手段88、画素配置制御手段89等も有している。そのCPU82は、原稿露光走査システム76で読み取った画像のデータやオンライン接続手段90経由でワークステーション等から取得した画像データ等、画像入力源から得られる画像データを加工し、プリントヘッドアセンブリ32,34,36,38に供給し、そしてそのデータ流を管理する。このように、ESS80は、本プリンタ10を構成する種々のサブシステム及び機能を稼働させ、印刷動作を含めた全動作を制御する主マルチタスクプロセッサとして機能している。
【0013】
本プリンタ10を稼働させる際には、まず、原稿露光走査システム76から、或いはオンライン接続手段90経由でワークステーション等から、印刷すべき画像を表す画像データを制御用ESS80に送る。ESS80はそのデータを処理しプリントヘッドアセンブリ32,34,36,38に供給する。ESS80は、更に、関連するサブシステム及び部材に対する制御内容を、例えばUI86経由で与えられるユーザからの指示等に基づき決定し、決定した内容に従いそれらの制御を実行する。具体的には、まず、適当な色に係る固形状の相変化インクを熔融させ、プリントヘッドアセンブリ32,34,36,38のうち適切なものに供給する。更に、イメージング面14に対する画素配置制御を実行することによって、その画像データに係る画像を面14上の所要位置に形成し且つその位置に揃うようその画像上に印刷媒体を送り込む。その印刷媒体は、媒体供給源42,44,46,48のうち適切なものから、面14上への画像形成タイミングを基準とする相応のタイミングで、その画像に対し位置が揃うよう媒体走査処置システム50によって運ばせる。そして、その画像を転写ニップ92内で面14から印刷媒体上へ転写させ、その画像を熔着器60にてその媒体に熔着させる。
【0014】
図2及び図3に、相変化インク熔融制御アセンブリ100及びインク溜めアセンブリ400からなるプリンタ内インク供給システムの構成を示す。図示例に係るアセンブリ100には4個のインク源22,24,26,28が設けられている。それらのインク源22,24,26,28には互いに異なる色の固形状相変化インクを入れることができる。例えば、インク源22,24,26,28に順にC(122),Y(124),M(126),K(128)各色の固形状相変化インクを入れることで、CYMK四色による印刷を行うことができる。図示例の場合、通例に倣いブロック状のインク122〜128がインク源22,24,26,28に入れられており、それらのハウジングによって互いに仕切られているが、これは一例に過ぎず、アセンブリ100に設けるインク源の個数は何個でもよいし、個々のインク源にどのような色の固形状相変化インクを入れてもよいし、それらのインクはブロック状の他にペレット状、粒状等の形態にすることもできる。
【0015】
相変化インク熔融制御アセンブリ100には更に熔融アセンブリ102が設けられている。これは、インク源から供給される固形状の相変化インクを熔融器例えば熔融板に当接させ、それによってその相変化インクを液状に相変化させるアセンブリである。図示例の場合、アセンブリ102には、4個あるインク源22,24,26,28それぞれに連なる形態で、都合4個の熔融板112,114,116,118が設けられている。図3に示す通り、各熔融板112〜118は、相変化インクが当接する部位130と、そのインク当接部130から下方に延びる部位132とを有している。図示例の場合、後者の部位132はその下端にある点134に向け先細りの形状になっている。即ち、この部位132は、その下端にある滴下点134からインク滴144を滴下させるインク滴下部として設けられている。
【0016】
熔融板112〜118は熱伝導率が高い素材、例えば金属で形成されている。これを(例えば既知方式で)加熱し、そこに当接している固形状の相変化インクを例えば約100〜140℃まで昇温させると、そのインクは熔融する。熔融して液状になった相変化インクはインク溜めアセンブリ400に供給される。即ち、各色相変化インク122〜128を熔融させると、それにより発生する流動化インクがその色に係る熔融板112〜118に付着し、インク当接部130からその下方に位置する滴下点134へと重力の作用で下降し、そこからインク滴144となってしたたり落ちる。このとき、そのインク滴144を重力の作用のみで滴下させてもよいが、それに代え又はそれと共に別の手段を使用して滴下させてもよい。そのインク滴144を受け止めるインク溜めアセンブリ400には、個々のインク源及び熔融板に対応してリザーバ404が設けられている。リザーバ404は、対応する熔融板から滴下してくる流動化インクをある分量を限度として蓄え、必要に応じ図示しない1個又は複数個のプリントヘッドに供給する。そのため、アセンブリ400を構成するどのリザーバ404も、インク滴144を受け入れることができるよう対応する熔融板の下方に設けられた開口402と、対応する熔融板から受け入れた流動化インクをある分量を限度として蓄えうるよう対応する開口402の下方に設けられた室406とを有している。
【0017】
図4に、そのインク溜めアセンブリ400の一例構成単位たる二連リザーバシステムの概略側断面を示す。二連リザーバシステムは一次リザーバ408及びそれに続く二次リザーバ410からなるシステムであり、図示例の場合、アセンブリ400を構成する個々のリザーバ404が個別に、即ち相変化インク熔融制御アセンブリ100内のインク源・熔融板対毎に、二連リザーバシステムを形成している。この図にはリザーバ408,410を一対しか示していないが、ご理解頂ける通り、アセンブリ400を構成するどのリザーバ404も同様の二連リザーバシステムとして構成することができる。その二連リザーバシステムを構成するリザーバのうち一次リザーバ408は、相変化インク熔融制御アセンブリ100内の対応する熔融板(図示例では112)からインクを受け取れるように、またその底部若しくはその近傍に設けられている開口414を介し対応する二次リザーバ410に流動化インクを供給できるように構成されている。特に、図示例の一次リザーバ408は、重力即ちインク液面の高低差を利用し開口414越しに二次リザーバ410に流動化インクを送るLPR(低圧リザーバ)として構成されている。更に、一次リザーバ408の開口414にはワンウェイチェックバルブ418が設けられている。このバルブ418は、二次リザーバ410から一次リザーバ408へのインク逆流を阻止しつつ、重力による一次リザーバ408から二次リザーバ410へのインク流を許容する。
【0018】
そのインク流を受け取る二次リザーバ410には排出口420が1個又は複数個設けられている。これは、流動化インクを図示しないインク分配アセンブリに送るための開口であり、インク分配アセンブリに送られた流動化インクはプリントヘッドアセンブリ内にある図示しないプリントヘッドのうち1個又は複数個に送られることとなる。複数個のプリントヘッドに対し直に流動化インクを供給できるよう、個別の二次リザーバ410に複数個の排出口420を設けるようにしてもよい。例えば一色当たり4個のプリントヘッドが設けられているシステムであれば、二次リザーバ410にも4個の排出口420を設け、個々の排出口420から別々のプリントヘッドにインクを供給することができる。また、図示例の二次リザーバ410は、その中のインクを加圧してプリントヘッドに送るHPR(高圧リザーバ)として構成されている。その加圧手段としては、エアポンプ424がドージングバルブ428越しに二次リザーバ410に連結されている。二次リザーバ410に設けられている1個又は複数個の排出口420を介しその二次リザーバ410内のインクを吐出させることができればよいので、これ以外の加圧手段も使用することができる。更に、その排出口420を介した流動化インクの逆流を阻止する手段としてはチェックバルブ430が設けられている。二次リザーバ410内のインクが加圧されたときに開きその二次リザーバ410から対応するプリントヘッドに至るインク流を発生させることと、それ以外のときに閉じその排出口420越しに二次リザーバ410内に向かうインク逆流を阻止することとができるものであれば、これ以外の逆流阻止手段も使用することができる。加えて、開口414にワンウェイチェックバルブ418が組み込まれているため、二次リザーバ410内のインクを加圧しても、二次リザーバ410から一次リザーバ408に向かうインク逆流が発生することはない。
【0019】
また、この二連リザーバシステムからプリントヘッドアセンブリ内の1個又は複数個のプリントヘッドにインクを送るには、一次リザーバ408内及び二次リザーバ410内の相変化インクをその固化温度より高いほぼ一定の温度に保つこと、即ちその相変化インクを液状に熔融している状態に保つことが求められる。そのため、このインク溜めアセンブリ400では、第1に、リザーバ408,410をその熱伝導率が高いアルミニウムで形成している。マグネシウム等、その熱伝導率が高い別種の素材を用いることもできる。第2に、リザーバ408,410内の相変化インクに対し何らかの手段で熱エネルギを供給し、そのインクの温度をそのインクの固化温度より高い温度に保つようにしている。具体的には、図示しない発熱素子例えばシリコンヒータを1個又は複数個、一次リザーバ408、二次リザーバ410又はその双方に面するように、またその素子によってリザーバ408,410内の相変化インクが加熱されその相変化インクの固化温度より高い温度を保つように配置及び構成してある。
【0020】
インク温度を所望温度に保つことは画像発生機内インク処理における難題の一つである。例えば上述のプリンタ10では、リザーバ404内の相変化インクをその固化温度より高い温度に保たないと液状に保てずプリントヘッドに供給することができないが、そのインクを固化温度より高い温度に保つとなるとその熱損失が問題になる。即ち、一次リザーバ408及び二次リザーバ410にて熱損失が発生するので、その分多めに熱エネルギを供給しないと、リザーバ408,410内の相変化インクを固化温度より高い温度に保つことができない。多めに熱エネルギを供給するとプリンタ10におけるエネルギ消費量が増すので、不都合なことに昨今の二酸化炭素排出量抑制志向に反することとなり、しかもEnergyStar(登録商標)等の動作条件規格を満たすことができなくなる。また、その画像発生機で使用するインクの種類によっては、そのインクに対する温度制御も難題となりうる。例えば水性インクを使用する画像発生機では、インクの温度を室温即ち約18〜25℃に保つことが望ましいが、実際にその画像発生機を使用する際には、その周囲に存する発熱乃至吸熱部材や、その画像発生機内の発熱部材の影響で、画像発生機内インク温度が影響を受けるものである。
【0021】
ここに、インク溜めアセンブリ400における熱損失乃至熱利得を低減するには、そのアセンブリ400を熱絶縁性ハウジングでくるめばよい。即ち、そのアセンブリ400における熱損失乃至熱利得が低減されるよう、そのアセンブリ400の一次リザーバ408及び二次リザーバ410を熱絶縁性ハウジングで少なくとも部分的に覆えばよい。図5及び図6に、インク溜めアセンブリ400及びその熱絶縁性ハウジングの前方斜視外観及び後方斜視外観を示す。図示の通り、このハウジングはその頂部450と底部454の間に複数枚のパネル乃至側壁458,460,464,468を立設した構成である。それらで形成される囲いの中には、そのアセンブリ400のリザーバ408,410(図5及び図6では見えず)が収まっている。また、頂部450には両図の通りインク収集器470が設けられている。これは、個々の熔融板から滴下してくる流動化インクを収集し対応する一次リザーバ408に送る部材であり、例えばプラスチック等の絶縁性素材によって形成されている。具体的には、個々の一次リザーバ408の上方に位置するよう漏斗状の開口474が設けられており、その開口474にはフィルタ478が設けられている。従って、各熔融板から落ちてくるインク滴144は、収集器470上の対応する開口474によって収集され、その開口474のフィルタ478に集まって濾過された後、その開口474に対応する一次リザーバ408に入っていく。他方、このハウジングの底部454は、アセンブリ400を構成する諸リザーバ404の下方に位置しており、同じくその側壁458,460,464,468は、リザーバ404の側面に沿ってほぼ鉛直方向に、頂部450・底部454間に亘り延びている。なお、図示例では側壁458,460が端部側壁、側壁464,468が長手側壁となっているが、側壁次第で様々な形状のハウジングを形成することができる。
【0022】
これら、リザーバ404のハウジングを形成する頂部450、底部454及び側壁458,460,464,468は、例えばガラス入りプラスチックでも形成することができる。そうしたプラスチックには、成型によって所望形状の部品を割合容易に得ることができ、また相互取付用凹凸等を随意に形成しうるという長所がある反面、その絶縁性を十分高めるにはコストがかかるという短所もある。従って、インク溜めアセンブリ400の熱絶縁性ハウジングを形成する素材としては、そうしたプラスチックよりはマイカ(雲母)パネルを用いた方がよい。アセンブリ400の熱絶縁性ハウジングをマイカパネルで形成することにより、熱損失だけでなくコストも抑えることができる。図示例では、少なくともそのハウジングの側壁458,460,464,468を、マスコバイト(白雲母)等といったマイカのシートで形成している。ハウジング形成に使用するマイカパネルの厚みは適切な範囲内で随意に決めればよいが、図示例ではその厚みが約0.030インチのマイカパネルを使用している(1インチ=約0.025m)。
【0023】
また、そのハウジングの頂部450及び底部454は、他の素材でも形成できるが、この例ではその耐熱性が良好なプラスチック素材で形成されている。プラスチック素材であれば、側壁取付兼位置決め用の凹凸、例えばリザーバ404・側壁形成用マイカパネル間及び側壁形成用マイカパネル相互間の位置決めに役立つスロット状の案内溝を、比較的容易に設けることができる。図7に、インク溜めアセンブリ400並びにそのハウジングの頂部450、底部454及び長手側壁464,468の縦断面を示す。図示の通り、このハウジングの頂部450には及び底部454にはスロット状の案内溝480が複数本形成されており、その溝480は側壁464,468の上縁(頂部450側)又は下縁(底部454側)がはまるように形成されている。図示していないが、この頂部450及び底部454には更に端部側壁458,460の上縁又は下縁がはまるように溝480が形成されている。組立時には、まずそのハウジングの頂部450及び底部454になる部品をその溝480の位置が揃うよう配置し、側壁458,460,464,468となるマイカパネルをその溝480にはめる。側壁458,460,464,468と頂部450及び底部454の継ぎ目乃至重ね目や、側壁458,460,464,468を構成するマイカパネル同士の継ぎ目乃至重ね目は、テープ、熱硬化性接着剤等の封止材によって固定及び封止すればよい(実施形態によってはこれは不要)。そのマイカパネルは、相応厚のマイカシートを単に打ち抜くだけで形成することができる。例えば、溝480の幅に相応する厚みを有するシート状のマイカ素材を、形成したいマイカパネルの輪郭に相応する輪郭の打ち抜き型で打ち抜くことで、そのマイカパネルを形成することができる。
【0024】
更に、このインク溜めアセンブリ400における熱損失乃至熱利得は、そのハウジングに空気を孕ませその熱絶縁性を高めることで、更に低減することができる。即ち、空気の熱絶縁性は既知の通り固体に比べ遙かに高いので、図示例では、優れた熱絶縁体たる空気をアセンブリ400のハウジングに孕ませるようにしている。具体的には、側壁458,460,464,468(又はその一部)を、加熱されているリザーバ404の側面から離れた場所にある案内溝480にはめて固定することで、リザーバ側面・ハウジング側壁間に空隙484を形成しその厚みを保つようにしている。図示しないが、ハウジングの頂部450、底部454又はその双方とリザーバ404との間に位置決め乃至間隔保持部材を設けること、例えば何個所かに分けて支持柱を設けることで、加熱されているリザーバ404の頂面乃至底面と、ハウジングの頂部450乃至底部454との間にも、空隙を形成することができる。そのようにすれば、リザーバ外面・ハウジング内面間の位置関係を、頂部450、底部454及び側壁458,460,464,468のいずれについても精密に整え、またそれらのいずれについても空隙を形成することができる。なお、リザーバ外面・ハウジング側壁間に存する空隙484の厚みは適宜設定することができるが、図示例の場合約0.080インチとしてある。
【0025】
また、このハウジングの側壁のうち少なくとも1枚は、複数枚のマイカパネルからなる多重壁構造にすることができる。更に、その多重壁構造の側壁を構成するマイカパネル間に、上記同様空気を孕ませることで、その側壁の熱伝導率を更に下げることができる。例えば図示例のハウジングでは、その側壁464,468をそれぞれ2枚のマイカパネル488,490で形成し、更にその間に空隙494が生じるように形成されている案内溝480にそれらのパネル488,490の縁をはめてある。即ち、側壁464を例にして図8に示す通り、側壁464,468のいずれも二重壁構造であり、内側のパネル488の外側に、ある空隙494を隔てて別のパネル488が配置されている。この二重壁構造を構成するハウジング側壁用パネル488・490間の内法距離、即ち空隙494の厚みは、適宜設定することができるが、図示例の場合約0.080インチとしてある。
【0026】
そして、以上説明したインク溜めアセンブリ400では、そのハウジングの側壁のうち1枚又は複数枚を2枚のマイカパネル488,490で形成しているが、側壁のうち1枚又は複数枚を3枚以上のマイカパネルで形成し、それらのマイカパネル間にやはり空気を孕ませることで、そのハウジングの熱損失抑圧性能を更に高めることができる。また、図示しないが、ハウジングの頂部450や底部454とリザーバ404との間に1枚又は複数枚のマイカパネルを入れること、例えばプラスチック製のハウジングの底部454とリザーバ404の底面との間に挟まれるようマイカパネルを底部454に併置することもできる。加えて、ハウジングの頂部450や底部454をプラスチック以外の素材で形成することや、そのハウジングの熱損失抑圧性能を向上させる作用のある何らかのフィラーを頂部450や底部454に入れることもできる。
【符号の説明】
【0027】
10 高速相変化インク画像発生機(プリンタ)、11 フレーム、12 イメージング部材、14 イメージング面、16 イメージング面可動方向、20 相変化インクシステム、22,24,26,28 インク源、30 プリントヘッドシステム、32,34,36,38 プリントヘッドアセンブリ、40 媒体配給システム、42,44,46,48 媒体供給源、50 媒体処置システム、52 媒体余熱器、54 画像加熱器、60 熔着器、70 原稿フィーダ、72 原稿保持トレイ、74 原稿シート供給排出器、76 原稿露光走査システム、80 制御用ESS(電子サブシステム)、82 CPU(中央処理ユニット)、84 電子記憶装置、86 ディスプレイ等のUI(ユーザインタフェース)、88 センサ入力制御手段、89 画素配置制御手段、90 オンライン接続手段、92 転写ニップ、100 相変化インク熔融制御アセンブリ、102 熔融アセンブリ、112〜118 熔融板、122〜128 固形状相変化インク、130 インク当接部、132 インク滴下部、134 滴下点、144 インク滴、400 インク溜めアセンブリ、402 リザーバ開口、404 リザーバ、406 室、408 一次リザーバ、410 二次リザーバ、414 一次リザーバ開口、418 ワンウェイチェックバルブ、420 二次リザーバ排出口、424 エアポンプ、428 ドージングバルブ、430 チェックバルブ、450 ハウジング頂部、454 ハウジング底部、458〜468 ハウジング側壁、470 インク収集器、474 ハウジング開口、478 フィルタ、480 案内溝、484,494 空隙、488,490 マイカパネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントヘッドを1個又は複数個備える画像発生機に少なくとも1個組み込まれ、流動性のあるインクを受け入れるための開口及びその開口を介し入ってきたインクをある分量を限度に蓄える室を有し、その室内のインクを1個又は複数個のプリントヘッドに供給可能なインクリザーバと、
対応する1個又は複数個のインクリザーバの全体又は一部を覆うべく、そのインクリザーバの上方に位置する頂部及び下方に位置する底部並びにそれら頂部底部間に上下に延びる複数枚の側壁を有するハウジングと、
を備え、
そのハウジングの側壁が、その側壁と直近のインクリザーバとの間に空隙が発生しその厚みが保持されるよう、当該ハウジングの頂部及び底部に形成された案内溝にその縁がはめ込まれたマイカパネルによって形成されており、
そのハウジングの側壁のうち少なくとも1枚が、更に外側のマイカパネルと内側のマイカパネルとの間にも空隙が発生しその空隙の厚みも保持されるよう、当該ハウジングの頂部及び底部に形成された複数本の案内溝にそれぞれその縁がはめ込まれた複数枚のマイカパネルによって形成されているインク溜めアセンブリ。
【請求項2】
請求項1記載のインク溜めアセンブリであって、そのインクリザーバが、相変化インクを熔融させて得られる流動化インクを受け入れ画像発生機内の相変化インクプリントヘッドに供給するよう構成されたインク溜めアセンブリ。
【請求項3】
請求項2記載のインク溜めアセンブリであって、そのインクリザーバが、その室内に蓄えている流動化インクを加熱しその温度を固化温度以上に保つ加熱器を有するインク溜めアセンブリ。
【請求項4】
請求項3記載のインク溜めアセンブリであって、インクリザーバが4個あり、各インクリザーバが、互いに別の種類の流動化インクを自インクリザーバの開口越しに受け入れ自インクリザーバの室内に保持するインク溜めアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−83146(P2010−83146A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218615(P2009−218615)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】