説明

流動媒体管理方法及び装置

【課題】乾式比重選別法等における分離精度の低下を防止し、比重選別装置等の長時間の停止を回避する。
【解決手段】流動層FLから流動媒体Fと異物Cとの混合物Mを抜き出すロータリーバルブ8と、抜き出した混合物Mから異物を除去するとともに、異物を除去した後の流動媒体を流動層に戻す選別装置9と、流動媒体を流動層に供給する流動媒体供給装置10と、混合物Mの抜出量と、流動媒体供給装置による流動媒体の供給量とを制御する制御装置12とを備える流動媒体管理装置等。流動層から流動媒体と異物との混合物を抜き出しながら、抜き出した混合物と同量の流動媒体を流動層に供給し、抜き出した混合物から異物を除去し、異物を除去した後の流動媒体を流動層に供給する流動媒体として使用する。抜き出した混合物から異物を除去しながら、異物を除去した後の流動媒体を流動層に戻し、除去した異物と同量の流動媒体を流動層に供給してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動媒体管理方法及び装置に関し、特に、鉱石等の物体を固気流動層中に浮遊又は沈降させて乾式比重選別する際に用いられる流動媒体等を管理する方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山より発掘された鉱石中には有用鉱物以外の不要鉱物が多く含まれるため、そのままでは利用できず、選鉱作業によって有用鉱物の品位を高める必要がある。また、ドロマイトや珪石等の鉱物については、主要成分の含有率等によって用途が異なり、適切に選別することで選別後の鉱石の利用価値が高まる。従来、これらの選別には、手選、比重選別、磁力選別、浮遊選別等の方法が用いられていた。
【0003】
また、近年、環境保全や資源の有効利用の観点から、廃棄物に含まれる金属類やプラスチック類の再利用が注目されている。金属の例としては、自動車シュレッダーダストに含まれる鉄やアルミニウムがあり、プラスチックの例としては、産業廃棄物及び家庭用廃棄物に含まれるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などがあるが、これらの再利用には、物体の比重差により選別を行う乾式比重選別法等が用いられている。
【0004】
この乾式比重選別法は、単純な装置で種々の材料を選別することを特徴とし、特許文献1には、送風によって粉体を流動化させた固気流動層にプラスチック類を投入し、固気流動層との比重差を利用してプラスチック類を成分毎に分離する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−311214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1等に記載の乾式比重選別法では、分離する物体の付着物が固気流動層内に混入すると、固気流動層の見掛け比重が小さくなり、選別目標の比重差にずれが生じて流動媒体の性状維持が困難になり、分離精度が低下するという問題があった。
【0007】
さらに、比重差にずれが生じた場合、ずれの原因となる異物を除去するためには、比重選別装置の運転を停止し、流動媒体を系外に排出し、流動層内に混入した異物を除去した後、流動媒体を再び系内に戻さなければならず、装置を長時間停止する必要が生じるのに加え、異物除去の度に流動媒体の性状が変化する虞もあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、乾式比重選別法等における分離精度の低下を防止し、比重選別装置等の長時間の停止を回避することなどが可能な流動媒体管理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、流動媒体管理方法であって、流動層から流動媒体と異物との混合物を抜き出しながら、該抜き出した混合物と同量の流動媒体を前記流動層に供給し、前記抜き出した混合物から異物を除去し、異物を除去した後の流動媒体を前記流動層に供給する流動媒体として使用することを特徴とする。これにより、流動媒体の性状を安定した状態に維持しながら、連続して流動層を形成することができる。
【0010】
また、本発明は、流動媒体管理方法であって、流動層から流動媒体と異物との混合物を抜き出し、該抜き出した混合物から異物を除去しながら、異物を除去した後の流動媒体を前記流動層に戻すとともに、除去した異物と同量の流動媒体を前記流動層に供給することを特徴とする。本発明によれば、上記発明と同様に、流動媒体の性状を安定した状態に維持しながら、連続して流動層を形成することができる。
【0011】
上記流動媒体管理方法において、前記流動層から流動媒体と異物との混合物を採取し、該混合物の粒度分布、比重又は容積重量を測定し、該測定値に基づいて前記混合物の抜出量を調整することができる。流動層中の混合物の粒度分布等を測定することで、異物を除去すべき混合物の抜出量を適切に把握し、効率よく、流動層の性状を安定した状態に維持することができる。
【0012】
また、本発明は、流動媒体管理装置であって、流動層から流動媒体と異物との混合物を抜き出す抜出装置と、該抜き出した混合物から異物を除去する異物除去装置と、流動媒体を前記流動層に供給する流動媒体供給装置と、前記抜出装置による混合物の抜出量と、前記流動媒体供給装置による前記流動媒体の供給量を制御する制御装置とを備えることを特徴とする。本発明によれば、抜出装置によって抜き出した混合物と同量の流動媒体を、流動媒体供給装置及び制御装置によって流動層に供給することができるため、流動媒体の性状を安定した状態に維持しながら、連続して流動層を形成することができる。また、異物除去装置で異物を除去した後の流動媒体を利用することもできる。
【0013】
さらに、本発明は、流動媒体管理装置であって、流動層から流動媒体と異物との混合物を抜き出す抜出装置と、該抜き出した混合物から異物を除去するとともに、該異物を除去した後の流動媒体を前記流動層に戻す循環式異物除去装置と、流動媒体を前記流動層に供給する流動媒体供給装置と、前記抜出装置による混合物の抜出量と、前記流動媒体供給装置による前記流動媒体の供給量とを制御する制御装置とを備えることを特徴とする。本発明によれば、循環式異物除去装置によって、抜き出した混合物から異物を除去しながら、異物を除去した流動媒体を前記流動層に戻すことができ、効率よく、流動層の性状を安定した状態に維持することができる。
【0014】
さらに、上記流動媒体管理装置において、前記流動層から流動媒体と異物との混合物を採取し、該混合物の粒度分布、比重又は容積重量を測定する測定装置を備え、該測定装置による測定値に基づいて、前記抜出装置による前記混合物の抜出量を調整することができ、異物除去に必要な流動媒体の抜出量を適切に把握し、効率よく、流動媒体の性状を安定した状態に維持することができる。
【0015】
また、前記異物除去装置又は循環式異物除去装置は、篩、エアセパレータ、磁石、溶解槽、静電分離装置、浮選装置及び比重選別装置からなる群から選択される一以上を備えることができる。これにより、粒径や磁性等の性状によって異物を分離除去することが可能となる。
【0016】
さらに、本発明は、乾式比重選別装置であって、投入した物体の比重に基づいて、該物体を浮遊又は沈降させて選別する乾式流動層と、上記いずれかの流動媒体管理装置とを備え、該流動媒体管理装置は、前記乾式流動層を形成する流動媒体を管理することを特徴とする。この乾式比重選別装置は、上記流動媒体管理装置を有するため、乾式比重選別の分離精度の低下及び長時間の停止を回避することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、乾式比重選別法等における分離精度の低下を防止し、比重選別装置等の長時間の停止を回避することなどが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかる流動媒体管理装置の一実施の形態を適用した乾式比重選別装置を示す全体構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明においては、2種類のプラスチック類を比重選別する乾式比重選別装置に用いられる流動媒体の管理に本発明を適用した場合について説明する。尚、選別対象となるプラスチック類のうち、低比重品をL、高比重品をHとする。
【0020】
図1は、本発明にかかる流動媒体管理装置の一実施の形態を示し、この流動媒体管理装置1は、大別して、プラスチック類の比重選別を行う乾式比重選別装置2内の乾式流動層(以下「流動層」という)FLの表面レベルを管理するためのレベル計3と、流動層FLを構成する流動媒体Fと、異物Cとの混合物Mの粒度分布を測定する粒度分布測定装置5と、乾式比重選別装置2内に混入した異物Cを分離除去する選別装置(循環式異物除去装置)9と、乾式比重選別装置2に流動媒体Fを供給する流動媒体供給装置10と、乾式比重選別装置2からの混合物Mの抜出量や、流動媒体供給装置10から乾式比重選別装置2への流動媒体Fの供給量等を制御する制御装置12等を備える。
【0021】
乾式比重選別装置2は、流動媒体Fとしてのガラスビーズ等の粉体と空気とで構成される固気混合層を内包する箱状の流動層容器(以下「容器」という)2aと、容器2aの下方に、上記固気混合層を流動化させるための空気Aを吹き込むための空気吹込口2b等を備える。
【0022】
レベル計3は、乾式比重選別装置2の容器2a内における流動層FLの表面レベルを管理するため、容器2aの側面に設けられる。このレベル計3には、山本電機工業株式会社製静電容量式レベル計LB/DB等を用いることができる。
【0023】
粒度分布測定装置5は、混合物Mに含まれる異物Cの混入の程度を把握し、異物Cの分離除去を行うか否かの判断を行ったり、該測定値に基づいて流動媒体抜出口7からの流動媒体Fの抜出量を調整するために備えられ、混合物Mが循環する測定用流路4上に配置される。この粒度分布測定装置5には、ホソカワミクロン(株)製のオンライン粒度分布測定機INSITEC等を用いることができる。
【0024】
選別装置9は、乾式比重選別装置2内に混入した異物Cを分離除去するために備えられ、流動媒体Fと異物Cの粒径の差によって混合物Mから異物Cを分離除去するための篩を備える。容器2aの側面には、混合物Mを抜き出して選別装置9に供給するための流動媒体抜出口7と、ロータリーバルブ(抜出装置)8とが設けられる。また、選別装置9で異物Cが除去された流動媒体Fを乾式比重選別装置2に戻すための流動媒体戻し路6が備えられる。
【0025】
制御装置12は、ロータリーバルブ8の回転数を制御して容器2aからの混合物Mの抜出量を制御したり、流動媒体供給装置10から容器2aの流動媒体Fの供給量等を制御してレベル計3で測定される流動層FLの表面レベルが一定になるように制御する。
【0026】
次に、上記構成を有する流動媒体管理装置1の動作について、図1を参照しながら説明する。
【0027】
乾式比重選別装置2の容器2a内で、流動媒体Fとしてのガラスビーズ等の粉体と空気からなる固気混合層を、空気吹込口2bから吹き込んだ空気Aによって流動化させて流動層FLを形成する。この流動層FLに、2種類のプラスチックからなる低比重品Lと、高比重品Hとを投入すると、流動層FLの見掛け比重より比重の小さい低比重品Lは浮上し、流動層FLの見掛け比重より比重の大きい高比重品Hは沈降する。選別された低比重品Lと高比重品Hは、図示しない排出口から各々別々に回収される。
【0028】
乾式比重選別装置2の運転を継続すると、低比重品Lと高比重品Hに付着した砂等の異物Cは、流動媒体Fの流動等によって、低比重品Lや高比重品Hの表面から剥がれ落ちて流動層FL内に混入して拡散する。そして、流動層FL内への異物Cの混入量が増加すると、流動層FLの見掛け比重や流動性に変化が生じて比重選別の精度が低下する。
【0029】
そこで、異物Cの混入量を把握するため、容器2a内の混合物Mの一部を測定用流路4から採取し、測定用流路4に設置された粒度分布測定装置5によって混合物Mの粒度分布を測定し、その測定結果によって流動媒体Fに混入した異物Cを除去するか否かを判定する。
【0030】
上記測定結果により、混入した異物Cの除去が必要な場合には、容器2aの側面に位置するロータリーバルブ8の回転数を制御装置12によって制御し、流動媒体抜出口7から異物Cを含む混合物Mを抜き出す。
【0031】
流動媒体抜出口7から抜き出された混合物Mは、選別装置9によって異物Cを分離除去される。異物Cを除去した流動媒体Fは、流動媒体戻し路6を介して容器2a内に戻される。流動媒体Fの戻し量は、異物Cを除去した分だけロータリーバルブ8からの混合物Mの抜出量より少ないため、その分を制御装置12によって流動媒体供給装置10から流動媒体供給路11を介して新たに流動媒体Fを容器2aに供給し、レベル計3による流動層FLの表面レベルの測定値を一定に維持する。
【0032】
尚、上記実施の形態においては、粒度分布測定装置5によって混合物Mの粒度分布を測定し、その測定結果によって流動媒体Fに混入した異物Cを除去するか否かを判定したり、流動媒体抜出口7からの混合物Mの抜出量を調整したが、混合物Mの比重又は容積重量を測定して異物Cを除去するか否かなどの判定を行うこともできる。
【0033】
また、異物Cを分離除去するにあたって、篩を有する選別装置9を例示したが、異物Cの磁性等の性状によって磁石、エアセパレータ、溶解槽、静電分離装置、浮選装置及び比重選別装置等備えた選別装置9を用いることもできる。
【0034】
さらに、上記実施の形態においては、循環式の選別装置9を用い、混合物Mから異物Cを除去しながら、異物Cを除去した流動媒体Fを流動媒体戻し路6を介して容器2a内に戻したが、循環式の選別装置9を用いずに、制御装置12によって、ロータリーバルブ8からの混合物Mの抜出量と同量の流動媒体Fを流動媒体供給装置10から流動媒体供給路11を介して供給するように制御し、選別装置9によって異物Cを除去した流動媒体Fを流動媒体供給装置10に供給するように構成することもできる。
【0035】
以上のように、本発明によれば、乾式比重選別装置2によって比重選別を行いながら流動層FL中の異物Cを除去することにより、流動層FLの見掛け比重等の性状を常に安定した状態に維持することができるため、乾式比重選別法等における分離精度の低下を防止し、乾式比重選別装置2等の長時間の停止を回避することなどが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 流動媒体管理装置
2 乾式比重選別装置
2a 流動層容器
2b 空気吹込口
3 レベル計
4 測定用流路
5 粒度分布測定装置
6 流動媒体戻し路
7 流動媒体抜出口
8 ロータリーバルブ
9 選別装置
10 流動媒体供給装置
11 流動媒体供給路
12 制御装置
A 空気
C 異物
F 流動媒体
H 高比重品
L 低比重品
M 混合物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層から流動媒体と異物との混合物を抜き出しながら、該抜き出した混合物と同量の流動媒体を前記流動層に供給し、
前記抜き出した混合物から異物を除去し、異物を除去した後の流動媒体を前記流動層に供給する流動媒体として使用することを特徴とする流動媒体管理方法。
【請求項2】
流動層から流動媒体と異物との混合物を抜き出し、
該抜き出した混合物から異物を除去しながら、異物を除去した後の流動媒体を前記流動層に戻すとともに、除去した異物と同量の流動媒体を前記流動層に供給することを特徴とする流動媒体管理方法。
【請求項3】
前記流動層から流動媒体と異物との混合物を採取し、該混合物の粒度分布、比重又は容積重量を測定し、
該測定値に基づいて前記混合物の抜出量を調整することを特徴とする請求項1又は2に記載の流動媒体管理方法。
【請求項4】
流動層から流動媒体と異物との混合物を抜き出す抜出装置と、
該抜き出した混合物から異物を除去する異物除去装置と、
流動媒体を前記流動層に供給する流動媒体供給装置と、
前記抜出装置による混合物の抜出量と、前記流動媒体供給装置による前記流動媒体の供給量を制御する制御装置とを備えることを特徴とする流動媒体管理装置。
【請求項5】
流動層から流動媒体と異物との混合物を抜き出す抜出装置と、
該抜き出した混合物から異物を除去するとともに、該異物を除去した後の流動媒体を前記流動層に戻す循環式異物除去装置と、
流動媒体を前記流動層に供給する流動媒体供給装置と、
前記抜出装置による混合物の抜出量と、前記流動媒体供給装置による前記流動媒体の供給量とを制御する制御装置とを備えることを特徴とする流動媒体管理装置。
【請求項6】
さらに、前記流動層から流動媒体と異物との混合物を採取し、該混合物の粒度分布、比重又は容積重量を測定する測定装置を備え、該測定装置による測定値に基づいて、前記抜出装置による前記混合物の抜出量を調整することを特徴とする請求項4又は5に記載の流動媒体管理装置。
【請求項7】
前記異物除去装置又は前記循環式異物除去装置は、篩、エアセパレータ、磁石、溶解槽、静電分離装置、浮選装置及び比重選別装置からなる群から選択される一以上を備えることを特徴とする請求項4、5又は6に記載の流動媒体管理装置。
【請求項8】
投入した物体の比重に基づいて、該物体を浮遊又は沈降させて選別する乾式流動層と、
請求項4乃至7のいずれかに記載の流動媒体管理装置とを備え、
該流動媒体管理装置は、前記乾式流動層を形成する流動媒体を管理することを特徴とする乾式比重選別装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−167653(P2011−167653A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35520(P2010−35520)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】