説明

流動層ボイラの燃料供給装置および燃料供給方法

【課題】 ある燃料ノズルからの燃料供給が停止した場合に、流動層ボイラ内の温度分布を迅速に均一化することが可能な流動層ボイラの燃料供給装置を提供する。
【解決手段】 複数の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を制御する制御装置15を備え、この制御装置15は、ある燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止した場合に、加圧流動層ボイラ2内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を制御すべき制御量を記憶した制御表153を有し、ある燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止した場合に、制御表153に基づいて他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の燃料ノズルから流動層ボイラに燃料を供給する流動層ボイラの燃料供給装置および燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流動層(流動床)ボイラは、下側から空気を吹き付けて燃料と流動媒体(ベッドマテリアル)とを浮遊(流動)させ、浮遊状態の燃料を燃やすボイラである。このような流動層ボイラを用いた加圧流動層複合発電(PFBC:Pressurized Fluidized Bed Combustion)などでは、石炭と石灰石と水の混合体(CWP:Coal Water Paste)などが燃料として使用される。この燃料は、燃料ポンプによって、流動層ボイラ内に配設された複数の燃料ノズルに送られ、燃料ノズルから噴射されて流動層ボイラ内で燃焼される(例えば、特許文献1参照。)。また、複数の燃料ノズルは、流動層ボイラ内の燃焼温度が均一になるように配設されている。
【特許文献1】特開平05−288334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ある燃料ポンプがトリップ(緊急停止)などした場合、その燃料ポンプの燃料ノズルからの燃料供給(燃料噴射)が停止し、流動阻害などが生じる。つまり、供給停止した燃料ノズルの周辺の温度が下がり、流動層ボイラ内に温度偏差が生じる。さらに、当該燃料ノズルからの燃料供給が停止するため、流動層ボイラ内に供給される燃料の量が下がってしまう。このため、流動層ボイラ内の温度分布を監視するモニタ上で温度分布を確認しながら、流動層ボイラ内の温度分布が均一となり、かつ、供給停止した燃料ノズルからの供給量を補うように、供給停止した燃料ノズル以外の燃料ノズルからの燃料供給量(バイアス補正量)を調整する必要がある。しかしながら、供給停止した燃料ノズルの配設位置によって流動層ボイラ内の温度偏差が異なる。このため、供給停止した燃料ノズルの配設位置や温度偏差などに応じてその都度複数の燃料ノズルの燃料供給量を調整しなければならない。この結果、温度分布を均一にするのに、多くの時間と労力とを要していた。
【0004】
そこでこの発明は、ある燃料ノズルからの燃料供給が停止した場合に、流動層ボイラ内の温度分布を迅速に均一化することが可能な流動層ボイラの燃料供給装置および燃料供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、複数の燃料ノズルから流動層ボイラに燃料を供給する流動層ボイラの燃料供給装置であって、前記燃料ノズルからの燃料供給量を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、ある燃料ノズルからの燃料供給が停止した場合に、前記流動層ボイラ内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御すべき制御量を記憶した制御表を有し、ある燃料ノズルからの燃料供給が停止した場合に、前記制御表に基づいて他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御することを特徴とする。
(作用)
ある燃料ノズルからの燃料供給が停止すると、制御手段によって、制御表に基づいて他の燃料ノズルからの燃料供給量が制御され、流動層ボイラ内の温度分布が均一化されるようになる(温度偏差が小さくなる)。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料供給装置において、前記制御表には、過去にある燃料ノズルからの燃料供給が停止した際に、前記流動層ボイラ内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御した制御量が記憶されていることを特徴とする。
(作用)
ある燃料ノズルからの燃料供給が停止すると、制御手段によって、過去の制御量が記憶された制御表に基づいて他の燃料ノズルからの燃料供給量が制御され、流動層ボイラ内の温度分布が均一化されるようになる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2のいずれか1項に記載の燃料供給装置において、前記制御手段による制御量を前記制御表にフィードバックすることを特徴とする。
(作用)
ある燃料ノズルからの燃料供給が停止して、制御手段による制御が行われると、その制御量が制御表にフィードバックされる。そして、次回の制御時(燃料供給停止時)においては、フィードバックされた制御表に基づいて、他の燃料ノズルからの燃料供給量が制御される。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料供給装置において、前記制御手段は、前記供給停止した燃料ノズルからの燃料供給量を補うように前記他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御することを特徴とする。
(作用)
ある燃料ノズルからの燃料供給が停止すると、制御手段によって、制御表に基づいて他の燃料ノズルからの燃料供給量が制御され、流動層ボイラ内の温度分布が均一化されるようになるとともに、供給停止した燃料ノズルからの燃料供給量が補われ、全体の燃料供給量が維持される。
【0009】
請求項5に記載の発明は、複数の燃料ノズルから流動層ボイラに燃料を供給する流動層ボイラの燃料供給方法であって、ある燃料ノズルからの燃料供給が停止した場合に、前記流動層ボイラ内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御すべき制御量を予め制御表として記憶し、ある燃料ノズルからの燃料供給が停止した場合に、前記制御表に基づいて他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御することを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の燃料供給方法において、前記制御表に、過去にある燃料ノズルからの燃料供給が停止した際に、前記流動層ボイラ内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御した制御量を記憶することを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項5または6のいずれか1項に記載の燃料供給方法において、前記制御表に基づいて行った制御量を前記制御表にフィードバックすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1および5に記載の発明によれば、流動層ボイラ内の温度分布が均一になるように制御すべき制御量が記憶された制御表に基づいて、他の燃料ノズルからの燃料供給量が制御される。このため、供給停止した燃料ノズルの配設位置に応じてその都度複数の他の燃料ノズルの燃料供給量を制御(調整)する場合に比べて、流動層ボイラ内の温度分布を迅速、容易かつ適正に均一化することが可能となる。
【0013】
請求項2および6に記載の発明によれば、過去に制御した制御量が記憶された制御表に基づいて他の燃料ノズルからの燃料供給量が制御される。つまり、流動層ボイラ内の温度分布が均一になるように実際に制御した制御量に基づいて制御されるため、流動層ボイラ内の温度分布をより迅速、容易かつ適正に均一化することが可能となる。
【0014】
請求項3および7に記載の発明によれば、実際の制御量がフィードバックされた制御表に基づいて、他の燃料ノズルからの燃料供給量が制御されるため、より適正な制御表に基づいて、流動層ボイラ内の温度分布をより迅速、容易かつ適正に均一化することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、供給停止した燃料ノズルからの燃料供給量が補われ、全体の燃料供給量が維持されるため、ある燃料ノズルからの燃料供給が停止しても、流動層ボイラ内の燃焼量を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この実施の形態に係る流動層ボイラの燃料供給装置(以下、適宜単に「燃料供給装置」という)1を備えた加圧流動層複合発電設備を示す模式図である。図中符号2は、加圧流動層ボイラ(流動層ボイラ)であり、下側から燃焼空気を供給して燃料と流動媒体とを浮遊させ、浮遊状態の燃料を加圧下で燃やすボイラであり、この実施の形態では、後述するように、石炭M1と石灰石M2と水M3の混合体が燃料Mとして供給される。この加圧流動層ボイラ2内には伝熱管21が配設され、この伝熱管21に水が供給されて蒸気が発生し、この蒸気が蒸気タービン3に送られて蒸気タービン3が駆動する。一方、加圧流動層ボイラ2から排出された燃焼ガスは、集塵機(サイクロン)4によって灰が集塵され、脱灰(脱塵)された燃焼ガスがガスタービン5に送られてガスタービン5が駆動する。そして、蒸気タービン3とガスタービン5の回転駆動によって、それぞれの発電機6が発電するものである。
【0018】
燃料供給装置1は、上記のような加圧流動層ボイラ2に燃料Mを供給する装置であり、図2に示すように、燃料ノズル群11と、燃料ポンプ群12と、温度計群13と、モニタ14と、制御装置(制御手段)15とを備えている。
【0019】
燃料ノズル群11は、この実施の形態では10本の燃料ノズル111〜11aから構成され、図3に示すように、先端部(噴射側)が加圧流動層ボイラ2内の下側に位置し、基端部(燃料ポンプ群12側)が加圧流動層ボイラ2外に位置するように配設されている。さらに、加圧流動層ボイラ2の軸線面(中心軸と平行でかつ中心軸上の面)を対照に、左右各5本の燃料ノズル111〜11aが同一水平面上に配設されている。
【0020】
燃料ポンプ群12は、燃料ノズル群11に燃料Mを供給するためのポンプ群であり、各燃料ノズル111〜11aに対応した10機の燃料ポンプ121〜12aで構成されている。また、燃料ポンプ121〜12aの吸い込み口側は、燃料タンク7に接続され、燃料タンク7には、混練機8から燃料Mが投入されるようになっている。そして、混練機8に石炭M1と石灰石M2と水M3とが投入されると、混練機8によってCWPである燃料Mが生成される。続いて、生成された燃料Mが燃料タンク7に投入され、各燃料ポンプ121〜12aで吸い込まれた燃料Mが、各燃料ノズル111〜11aから加圧流動層ボイラ2内に噴射されるものである。
【0021】
温度計群13は、加圧流動層ボイラ2内の温度とその分布(偏差)を測定するものであり、この実施の形態では、11体の熱電対131〜13bで構成されている。これらの熱電対131〜13bは、加圧流動層ボイラ2内の温度分布が適正に測定できるように、図4に示すように配設されている。すなわち、燃料ノズル111〜11a側で隣接する燃料ノズル111〜11a間に8体の熱電対131〜138が配設され、さらに、加圧流動層ボイラ2内の中央部に、燃料ノズル111〜115と平行して3体の熱電対139〜13bが等間隔に配設されている。また、これらの熱電対131〜13bによる測定結果(熱起電力)は制御装置15に送られ、後述するようにして、加圧流動層ボイラ2内の温度分布がモニタ14に表示されるようになっている。このようにこの実施の形態では、制御装置15を介して温度分布がモニタ14に表示されるようになっているが、制御装置15を介さずに、温度計群13による測定結果を直接モニタ14に表示するようにしてもよい。
【0022】
モニタ14は、温度計群13による測定結果を表示する表示装置である。すなわち、各熱電対131〜13bによる測定結果が制御装置15に送られると、制御装置15において温度に変換され、変換された各温度がモニタ14に送られる。そして、モニタ14において、図5に示すように、各熱電対131〜13bの測定エリアの温度をディスプレイに表示することで、加圧流動層ボイラ2内の温度分布を表示するものである。
【0023】
制御装置15は、各燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量(燃料噴射量)を制御する装置、つまり、各燃料ポンプ121〜12aからの吐き出し量を制御する装置である。この制御装置15は、図6に示すように、手動制御部151と自動制御部152とを備えている。
【0024】
手動制御部151は、作業者などが手動で燃料供給量を制御するものであり、各燃料ノズル111〜11aに対応して調整ハンドルを備えている。そして、この調整ハンドルの操作方向と操作量とに基づいて、各燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量、つまり各燃料ポンプ121〜12aからの吐き出し量を調整するものである。また、後述するようにして自動制御部152が起動した後に、手動制御部151による調整、制御が行われると、その制御量(調整量)が後述する制御表153にフィードバックされるようになっている。つまり、手動制御部151による制御量に基づいて、制御表153中の各制御量が加減され、制御表153が更新されるようになっている。
【0025】
自動制御部152は、ある燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止し場合に、他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を自動的に制御するものである。すなわち、ある燃料ポンプ121〜12aがトリップした信号を、燃料ポンプ121〜12aから、または各燃料ポンプ121〜12aの停止を検知する検知器などから受信すると起動される。そして、制御表153に基づいて、トリップしていない他の燃料ポンプ121〜12aからの吐き出し量を制御する。
【0026】
具体的には、まず、供給停止した燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を補うように、他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を制御する。例えば、10本の燃料ノズル111〜11aからの全燃料供給量が45トン/時とすると、ある燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止した場合には、4.5トン/時の燃料供給量が失われることになる。このため、他の9本の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を、0.5トン/時(=4.5/9本)増加させる。これにより、燃料ノズル群11からの全燃料供給量が変動しないものである。
【0027】
また、制御表153に基づいて、加圧流動層ボイラ2内の温度分布が均一になるように制御する。すなわち、ある燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止した場合に、加圧流動層ボイラ2内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を制御すべき制御量が制御表153に記憶されている。具体的には、過去にある燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止した際に、加圧流動層ボイラ2内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を制御した制御量の平均値が記憶されている。つまり、過去の制御実績が制御表153に記憶されている。
【0028】
ここで、上記のように燃料ノズル111〜11aからの全燃料供給量が45トン/時の場合を例にして説明する。例えば、第1のノズル111からの燃料供給が停止した場合として、他の燃料ノズル112〜11aからの燃料供給量を制御すべき制御量(偏差量)が、図7(a)に示すように記憶されている。そして、この制御表153中の各制御量に上記の増加分0.5トン/時を加算した値が、他の燃料ノズル112〜11aからの燃料供給量の変動量となる。例えば、第2のノズル112の制御量が+1.9トン/時であるため、第2のノズル112からの燃料供給量の変動量は、+2.4トン/時となる。そして、第2のノズル112からの燃料供給量が2.4トン/時増加するように、第2の燃料ポンプ122からの吐き出し量を制御するものである。
【0029】
同様に、第2〜5のノズル112〜115からの燃料供給が停止した場合には、図7(b)〜(e)に示すような制御表153に基づいて他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を制御する。また、第6のノズル116からの燃料供給が停止した場合には、第6のノズル116と対称関係にある第5のノズル115からの燃料供給が停止した場合の制御表153(図7(e))を180°回転させた制御表153に基づいて制御する。同様に、第7〜10のノズル117〜11aからの燃料供給が停止した場合には、次の制御表153に基づいて制御する。
【0030】
第7のノズル117:図7(d)の制御表153を180°回転させた制御表
第8のノズル118:図7(c)の制御表153を180°回転させた制御表
第9のノズル119:図7(b)の制御表153を180°回転させた制御表
第10のノズル11a:図7(a)の制御表153を180°回転させた制御表
ここで、制御表153中の各制御量は、次のような観点に基づいている。すなわち、停止した燃料ノズル111〜11aの周辺には燃料Mが供給されなくなるため、当該周辺の温度は下がる。このため、停止した燃料ノズル111〜11aの周辺の他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を多くし、停止した燃料ノズル111〜11aから遠い位置にある他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を少なくする。これにより、加圧流動層ボイラ2内の温度分布を均一にする(温度偏差を小さくする)、というものである。また、制御表153中の各制御量は、すべてを加算してゼロになるように設定されている。つまり、制御量である偏差量の合計がゼロになることで、全体の燃料供給量が維持されるようになっている。
【0031】
さらに、上記のように、手動制御部151によって燃料供給量が制御されると、その制御量に基づいて、制御表153中の各制御量が増減される。つまり、自動制御部152による制御のみでは加圧流動層ボイラ2内の温度分布が均一にならない場合があり、このような場合に手動制御部151によって燃料供給量が制御(微調整)される。そして、手動制御部151による制御量を制御表153中の各制御量にフィードバックすることで、制御表153の精度が高められるものである。
【0032】
次に、このような構成の燃料供給装置1の作動および、燃料供給装置1による燃料供給方法について説明する。
【0033】
まず、ある燃料ポンプ121〜12aがトリップして、該当する燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止すると、上記のようにして自動制御部152が起動される。そして、供給停止した燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量を補うように、他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量の増加分が算出される。次に、上記のように、該当する制御表153中の各制御量に上記増加分が加算され、他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量の変動量が算出される。そして、この変動量だけ他の燃料ポンプ121〜12aからの吐き出し量が増減するように、他の燃料ポンプ121〜12aからの吐き出し量(作動量)が制御される。続いて、このような自動制御の後に、加圧流動層ボイラ2内の温度分布をより均一にするために手動制御部151による制御(微調整)が行われると、上記のようにしてその制御量が制御表153にフィードバックされ、制御表153が更新される。そして、再び同じ燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止した場合には、更新された制御表153に基づいて自動制御が行われるものである。
【0034】
以上のように、この燃料供給装置1および燃料供給方法によれば、加圧流動層ボイラ2内の温度分布が均一になるように制御すべき制御量が記憶された制御表153に基づいて、供給停止していない他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量が自動制御される。このため、供給停止した燃料ノズル111〜11aの配設位置などに応じてその都度複数の他の燃料ノズル111〜11aの燃料供給量を手動調整する場合に比べて、加圧流動層ボイラ2内の温度分布を迅速、容易かつ適正に均一化することが可能となる。
【0035】
しかも、過去に制御した制御量が記憶された制御表153に基づいて他の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給量が制御される。つまり、加圧流動層ボイラ2内の温度分布が均一になるように実際に制御した制御量に基づいて制御される。さらには、手動で微調整した制御量がフィードバックされた制御表153に基づいて燃料供給量が制御される。このため、より適正な制御表153に基づいて、加圧流動層ボイラ2内の温度分布をより迅速、容易かつ精度高く均一化することが可能となる。また、上記のようにして全体の燃料供給量が維持されるため、ある燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止しても、加圧流動層ボイラ2内の燃焼量を維持することができる。つまり、発電量を維持することができる。
【0036】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止する原因として、燃料ポンプ121〜12aがトリップした場合について説明しているが、その他の原因、例えば燃料ノズル111〜11aの目詰まりなどを検知して、自動制御するようにしてもよい。さらには、加圧流動層ボイラ2内の温度分布が大きく変動した場合に、ある燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止したことを割り出し、割り出した燃料ノズル111〜11aに基づいて自動制御するようにしてもよい。
【0037】
また、上記の実施の形態では、過去の実績に基づく制御量が制御表153に記憶さているが、実験結果やシミュレーション結果などに基づく制御量を制御表153に記憶して、制御するようにしてもよい。さらに、複数の燃料ノズル111〜11aからの燃料供給が停止した場合にも、当該場合に応じた制御表153を作成することで、加圧流動層ボイラ2内の温度分布を迅速かつ適正に均一化することが可能となる。また、加圧流動層複合発電における加圧流動層ボイラ2の燃料供給装置および燃料供給方法について説明したが、その他の流動層ボイラにも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の実施の形態に係る流動層ボイラの燃料供給装置を備えた加圧流動層複合発電設備を示す模式図である。
【図2】図1の燃料供給装置の概略構成を示す図である。
【図3】図2の燃料供給装置の各燃料ノズルと加圧流動層ボイラとの位置関係を示す斜視図である。
【図4】図2の燃料供給装置の各燃料ノズルと各熱電対と加圧流動層ボイラとの位置関係を示す平面図である。
【図5】図2の燃料供給装置のモニタに表示される加圧流動層ボイラ内の温度分布の一例を示す図である。
【図6】図2の燃料供給装置の制御装置の概略構成ブロック図である。
【図7】図6の制御装置の制御表の一例を示す図であり、(a)は第1のノズルがトリップした場合の制御表、(b)は第2のノズルがトリップした場合の制御表、(c)は第3のノズルがトリップした場合の制御表、(d)は第4のノズルがトリップした場合の制御表、(e)は第5のノズルがトリップした場合の制御表である。
【符号の説明】
【0039】
1 流動層ボイラの燃料供給装置
11 燃料ノズル群
111〜11a 燃料ノズル
12 燃料ポンプ群
121〜12a 燃料ポンプ
13 温度計群
131〜13b 熱電対
14 モニタ
15 制御装置(制御手段)
151 手動制御部
152 自動制御部
153 制御表
2 加圧流動層ボイラ(流動層ボイラ)
3 蒸気タービン
4 集塵機
5 ガスタービン
6 発電機
7 燃料タンク
8 混練機
M 燃料
M1 石炭
M2 石灰石
M3 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料ノズルから流動層ボイラに燃料を供給する流動層ボイラの燃料供給装置であって、
前記燃料ノズルからの燃料供給量を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、
ある燃料ノズルからの燃料供給が停止した場合に、前記流動層ボイラ内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御すべき制御量を記憶した制御表を有し、
ある燃料ノズルからの燃料供給が停止した場合に、前記制御表に基づいて他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御することを特徴とする流動層ボイラの燃料供給装置。
【請求項2】
前記制御表には、過去にある燃料ノズルからの燃料供給が停止した際に、前記流動層ボイラ内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御した制御量が記憶されていることを特徴とする請求項1に記載の流動層ボイラの燃料供給装置。
【請求項3】
前記制御手段による制御量を前記制御表にフィードバックすることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の流動層ボイラの燃料供給装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記供給停止した燃料ノズルからの燃料供給量を補うように前記他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の流動層ボイラの燃料供給装置。
【請求項5】
複数の燃料ノズルから流動層ボイラに燃料を供給する流動層ボイラの燃料供給方法であって、
ある燃料ノズルからの燃料供給が停止した場合に、前記流動層ボイラ内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御すべき制御量を予め制御表として記憶し、
ある燃料ノズルからの燃料供給が停止した場合に、前記制御表に基づいて他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御することを特徴とする流動層ボイラの燃料供給方法。
【請求項6】
前記制御表に、過去にある燃料ノズルからの燃料供給が停止した際に、前記流動層ボイラ内の温度分布が均一になるように他の燃料ノズルからの燃料供給量を制御した制御量を記憶することを特徴とする請求項5に記載の流動層ボイラの燃料供給方法。
【請求項7】
前記制御表に基づいて行った制御量を前記制御表にフィードバックすることを特徴とする請求項5または6のいずれか1項に記載の流動層ボイラの燃料供給方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−261524(P2008−261524A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103173(P2007−103173)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】