説明

流動層装置

【課題】爆発放散扉の放散圧力を正確に設定することができ、放散圧力の経時的な変動が少ない構成を提供する。
【解決手段】爆発放散扉6aは上部壁6に固定具20により開閉自在に装着されている。固定具20は、爆発放散扉6aに装着されたプランジャ21と、上部壁6に、プランジャ21と対向して装着された当接部材22とを備えている。また、上部壁6と爆発放散扉6aとの間は、シール部材23によってシールされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品製造、食品製造、農薬製造等の各種分野において、粉粒体の造粒、コーティング、乾燥を行う流動層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流動層装置は、一般に、流動層容器の底部から導入した気体(流動化気体)によって、流動層容器内で粉粒体を浮遊流動させて流動層を形成しつつ、造粒、コーティング、乾燥を行うものである。この種の流動層装置には、粉粒体粒子の転動、噴流、及び攪拌等を伴うものも含まれ(複合型流動層装置と呼ばれている。)、その代表的なものとして、流動層容器の底部に回転体を配設した転動流動層装置、流動層容器の内部にドラフトチューブ(内塔)を設置したワースター式流動層装置がある。
【0003】
粉粒体の処理に供される流動層装置では、粉塵爆発や溶剤ガスによる爆発等が起こった場合の防護対策として、爆発放散扉を設けることが労働安全衛生規則によって義務付けられている。この爆発放散扉は、爆発の際に流動層容器の一部を意図的に開放して爆発圧力を減少させ、装置を保護するものであり、大別して、破裂板式、離脱パネル式、蝶番ドア式の3種類がある。破裂板式は、流動層容器の開口を覆う金属や樹脂等の薄板が爆発圧力によって破裂して開口を生じる方式である。蝶番ドア式は、蝶番で支持された扉が爆発圧力によって開いて開口を生じる方式である。離脱パネル式は、流動層容器の開口にはめ込まれ又は押付けられたパネルが爆発圧力によって離脱して開口を生じる方式である。
【0004】
例えば、下記の特許文献1〜4には、流動層容器の上部壁に爆発放散扉を設けた構成が開示されている。
【特許文献1】特公平6−16827号公報
【特許文献2】特開2001−817号公報
【特許文献3】特開2002−172320号公報
【特許文献4】特開平7−259999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
離脱パネル式の爆発放散扉は、通常、流動層容器の上部壁の開口部に特殊形状のパッキンによって装着され、爆発放散扉及び上部壁に対するパッキンの接触面圧によって固定されている。そのため、次のような問題がある。
【0006】
パッキンの経年変化によって、爆発放散扉が開く放散圧力が変動する。
【0007】
粉粒体の処理操作時に、パッキンとの接触部分を介して粉粒体粒子が外部にリークすることがあり、また、上記接触部分に粉粒体粒子が残留しやすいので、特に活性値の高い薬物を取り扱う場合、作業の安全性を確保することが難しい。また、運転中に外部からエアーが流入して、粉粒体処理操作の支障になることがある。さらに、洗浄時に、上記接触部分が十分に洗浄されず、コンタミネーションの原因となる。
【0008】
また、特許文献4に記載されているようなトッグル機構を用いた蝶番ドア式の爆発放散扉は、トッグル機構に多くの作動箇所があり(リンク節等)、作動箇所への塵埃の侵入等によって、爆発放散扉の放散圧力が変動することがある。また、作動箇所の摩擦力のばらつき等により、爆発放散扉の放散圧力を正確に設定することが難しい場合がある。
【0009】
本発明の課題は、粉粒体粒子の外部へのリークや外部からのエアー流入、爆発放散扉の装着部分への粉粒体粒子の侵入や滞留が生じ難い構成を提供することである。
【0010】
本発明の他の課題は、爆発放散扉の装着部分の洗浄性に優れた構成を提供することである。
【0011】
本発明の更なる課題は、爆発放散扉の放散圧力を正確に設定することができ、かつ、放散圧力の経時的な変動が少ない構成を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、流動層容器内で粉粒体を気体により浮遊流動させながら造粒、コーティング、及び乾燥のうち少なくとも一の処理を行う流動層装置において、流動層容器の壁部に爆発放散扉が固定具により開閉自在に装着されており、壁部と爆発放散扉との間をシールするシール部材がシール装着部に配設され、シール部材は弾性材からなり、シール装着部は、一部に開口を有すると共に、該開口に向かって相互間の距離が漸次小さくなる方向に傾斜した一対のテーパ状内面を有し、シール部材が、少なくとも一対のテーパ状内面と、前記開口と対向するシール装着部の内面とに密着する構成を提供する。
【0013】
上記構成において、固定具は、壁部及び爆発放散扉のうち一方に設けられたプランジャと、壁部及び爆発放散扉のうち他方に、プランジャと対向して設けられた当接部材とを備え、プランジャは当接部材に圧接するプランジャピンを有し、当接部材は、プランジャピンが圧接しかつ流動層容器の外部側に向かってプランジャの側に傾斜した滑り面を有する構成としても良い。この場合、当接部材の滑り面は記爆発放散扉が閉じている状態で、プランジャピンが圧接する当接部材の当接部から流動層容器の外部側に連続して設けるようにしても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、爆発放散扉の装着部分の気密性が高く、粉粒体粒子の外部へのリークや外部からのエアー流入、爆発放散扉の装着部分への粉粒体粒子の滞留を抑制することができる。
【0015】
また、本発明によれば、爆発放散扉の装着部分を容易かつ十分に洗浄することができるので、コンタミネーションの問題が起こり難い。
【0016】
また、本発明によれば、爆発放散扉の放散圧力を正確に設定することができると共に、放散圧力の経時的な変動を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。
【0018】
図1は、この実施形態に係る流動層装置の一構成例を模式的に示している。
【0019】
流動層容器1は、粉粒体Mの処理、例えば粉粒体Mの造粒又はコーティングを行う処理室2と、処理室2の上方に位置し、固気分離用のフィルター部3が配されるフィルター室と4、フィルター室4の上方に位置する上部室5と、フィルター室4と上部室5とを仕切る上部壁6と、フィルター部3の上部に設けられた排気室7とを備えている。
【0020】
処理室2の底部には、パンチングメタル等の多孔板(又は金網)で構成された気体分散板2aが配設されている。給気ダクト8から給気チャンバ9に供給された熱風等の気体Aは、気体分散板2aを介して流動層容器1内に導入される。また、処理室2の上部にはスプレー液(膜剤液、結合剤液等)を噴霧するスプレーノズル10が設置されている。
【0021】
この実施形態において、フィルター部3は、複数のカートリッジ式フィルター3aと、複数のカートリッジ式フィルター3aを支持する支持部材3bとを備えている。カートリッジ式フィルター3aは、例えば、プリーツ加工を施した通気性樹脂シート等を円筒状にした濾材と、濾材を外挿したリテーナと、リテーナの上部に固定された排気口と、リテーナの下部に着脱自在に装着されたエンドキャップとで構成される。各カートリッジ式フィルター3aは、それぞれ、支持部材3bに設けられた装着穴に挿通され、排気口の基部に設けられたフランジを支持部材3bにネジで固定される。また、フランジと支持部材との間はシール部材によってシールされる。
【0022】
フィルター部3はドーム状の排気室部材7aによって上方から覆われ、排気室部材7aの内部に排気室7が形成される。排気室部材7aは、上部壁6に溶接等の適宜の手段で固定され、あるいは、上部壁6と一体形成され、その一部に排気ダクト13が接続される。また、フィルター部3と排気室部材7a(及び上部壁6)との間は、膨張シールによってシールされる。
【0023】
粉粒体Mの処理時は、フィルター部3と排気室部材7a(及び上部壁6)との間が膨張シールによって常時シールされる。カートリッジ式フィルター3aの濾材によって固気分離された気体Aは、濾材の内部を通って排気口から排気室7に流入する。
【0024】
図2に示すように、上部壁6の開口部には爆発放散扉6aが設けられている。この実施形態において、爆発放散扉6aは上部壁6の円周方向に沿って複数箇所に設けられており、各爆発放散扉6aはそれぞれ円弧形状をなしている。
【0025】
図3に模式的に示すように、各爆発放散扉6aは、上部壁6に固定具20により開閉自在に装着されている。固定具20は、爆発放散扉6aに装着されたプランジャ21と、上部壁6に、プランジャ21と対向して装着された当接部材22とを備えている。また、上部壁6と爆発放散扉6aとの間は、シール部材23によってシールされている。尚、図3には2つの固定具20が示されているが、各爆発放散扉6aを固定する固定具20の配置数は、固定具20の固定力と爆発放散扉6aの放散圧力(爆発放散扉6aが開く圧力)に応じて適宜設定すれば良い。
【0026】
図4に拡大して示すように、プランジャ21は、バネ等の弾性手段(図示省略)で進退自在に支持されたプランジャピン21aを有している。この実施形態において、プランジャピン21aの先端部は凸球状に形成されている。また、当接部材22は、爆発放散扉6aが閉じている状態で、プランジャピン21aが圧接する当接部22aと、当接部22aから上方に連続し、かつ、プランジャ21の側に傾斜した滑り面22bとを有している。この実施形態において、当接部22aは、プランジャピン21aの先端と垂直面22a1で当接すると共に、プランジャピン21aの先端部上側部分と傾斜面22a2で当接する。鉛直線に対する傾斜角度は、傾斜面22a2の方が滑り面22bよりも大きい。プランジャピン21aは、弾性手段の弾性力を受けて、当接部22aに所定力で圧接する。
【0027】
この実施形態において、シール部材23は、ゴム又は樹脂等の弾性材からなる中空状のもので(中実のものでも良い。)、シール装着部24に装着されている。図5に拡大して示すように、シール装着部24は、下部に開口24aを有すると共に、開口24aに向かって相互間の距離が漸次小さくなる方向に傾斜した一対のテーパ状内面24bを有している。シール部材23はシール装着部24に装着された状態で、一対のテーパ状内面24bと、開口24aと対向する内面24cとに密着する。また、シール部材23の下部は、開口24aから下方に突出し、開口24aの入口部分を封止している。このシール部材23により、上部壁6と爆発放散扉6aとの間が高い密封性(気密性)でシールされる。そのため、シール部材23の接触部分を介して粉粒体粒子が外部にリークにくく、特に活性値の高い薬物を取り扱う場合でも作業の安全性を確保することができる。また、シール部材23の接触部分に粉粒体粒子が残留しにくく、洗浄作業が容易で、コンタミネーションの問題も起こらない。
【0028】
図1において、流動層容器1の処理室2に収容された粉粒体Mは、気体分散板2aを介して流動層容器1内に導入される気体Aによって浮遊流動される。そして、この粉粒体Mの流動層に向けてスプレーノズル10からスプレー液(膜剤液、結合剤液等)が噴霧される。スプレーノズル10から噴霧されるスプレー液、例えば膜剤液のミストによって粉粒体粒子Mが湿潤を受けると同時に、膜剤液中に含まれる固形成分が粉粒体粒子Mの表面に付着し、乾燥固化されて、粉粒体粒子Mの表面に被覆層が形成される(コーティング)。あるいは、スプレーノズル10から噴霧されるスプレー液、例えば結合剤液のミストによって粉粒体粒子Mが湿潤を受けて付着凝集し、乾燥されて、所定径の粒子に成長する(造粒)。
【0029】
粉粒体Mを浮遊流動させた気体Aは、処理室2を上昇してフィルター室4に入り、フィルター部3の各カートリッジ式フィルター3aによって固気分離されて排気室7に流入する。そして、排気室7に接続された排気ダクト13を通って流動層容器1の外部に排気される。
【0030】
何らかの理由により流動層容器1内で爆発が起こり、流動層容器1内の圧力Pが放散圧力の設定値に達すると、固定具20が外れて爆発放散扉6aが開かれる(図6参照)。すなわち、爆発放散扉6aに所定の圧力Pが作用すると、プランジャ21のプランジャピン21aの先端部が当接部材22の滑り面22bを滑って当接部材22から外れ、固定具20による爆発放散扉6aの固定状態が解除される。これにより、流動層容器1内の爆発圧力が上部壁6の開口部を介して上部室5に放散される。また、爆発放散扉6aや固定具20は、放散時に破損しないので、再設置することもできる。
【0031】
爆発放散扉6aは、図7に示すような円形状にしても良いし、その他の形状にしても良い。また、爆発放散扉6aは、流動層容器1の上部壁6に代えて、側壁(特に背面壁)に設けても良い。
【0032】
図8は、固定具20’の他の例を示している。この例では、当接部材21’の滑り面22b’を上方に向かってプランジャ21’の側に傾斜した傾斜面とすると共に、プランジャ21’の先端を滑り面22b’に適合する傾斜面にしている。流動層容器1内の圧力Pが放散圧力の設定値に達したときに、プランジャ21’のプランジャピン21a’の先端部が当接部材22’の滑り面22b’を滑って当接部材22’から外れ、あるいは、プランジャピン21a’の先端部が当接部材22’の滑り面22b’と僅かに係合した状態となり、固定具20による爆発放散扉6aの固定状態が解除される。その他の事項は、前述した固定具20に準じるので、説明を省略する。
【0033】
尚、本発明は、上述したような流動層装置に限らず、転動流動層装置やワースター式流動層装置等の複合型流動層装置にも同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態に係る流動層装置の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】上部壁の周辺部を上方から見た図である。
【図3】爆発放散扉を示す断面図である。
【図4】固定具の周辺部を示す一部断面図である。
【図5】シール部材の周辺部を示す断面図である。
【図6】爆発放散扉が開く態様を示す図である。
【図7】他の実施形態に係る上部壁の周辺部を上方から見た図である。
【図8】固定具の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 流動層容器
6 上部壁
6a 爆発放散扉
20、20’ 固定具
21、21’ プランジャ
21a、21a’ プランジャピン
22、22’ 当接部材
22a、22a’ 当接部
22b、22b’ 滑り面
23 シール部材
24 シール装着部
24a 開口
24b テーパ状内面
A 気体
M 粉粒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層容器内で粉粒体を気体により浮遊流動させながら造粒、コーティング、及び乾燥のうち少なくとも一の処理を行う流動層装置において、
前記流動層容器の壁部に爆発放散扉が固定具により開閉自在に装着されており、
前記壁部と前記爆発放散扉との間をシールするシール部材がシール装着部に配設されており、
前記シール部材は弾性材からなり、
前記シール装着部は、一部に開口を有すると共に、該開口に向かって相互間の距離が漸次小さくなる方向に傾斜した一対のテーパ状内面を有し、
前記シール部材が、少なくとも前記一対のテーパ状内面と、前記開口と対向する前記シール装着部の内面とに密着することを特徴とする流動層装置。
【請求項2】
前記固定具は、前記壁部及び爆発放散扉のうち一方に設けられたプランジャと、前記壁部及び爆発放散扉のうち他方に、前記プランジャと対向して設けられた当接部材とを備え、
前記プランジャは前記当接部材に圧接するプランジャピンを有し、
前記当接部材は、前記プランジャピンが圧接しかつ前記流動層容器の外部側に向かって前記プランジャの側に傾斜した滑り面を有することを特徴とする請求項1に記載の流動層装置。
【請求項3】
前記当接部材の滑り面は、前記爆発放散扉が閉じている状態で、前記プランジャピンが圧接する前記当接部材の当接部から前記流動層容器の外部側に連続して設けられていることを特徴とする請求項2に記載の流動層装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−155176(P2010−155176A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333273(P2008−333273)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(591011384)株式会社パウレック (44)
【Fターム(参考)】