説明

流動床式ガス化溶融設備の集塵装置

【課題】 構造が簡単であり、費用が少なくて済む流動床式ガス化溶融設備の集塵装置を提供すること。
【解決手段】 固体可燃物bをガス化する流動床式ガス化炉13と、このガス化炉13にて生成する生成物を溶融燃焼する溶融炉16と、この溶融炉16の後流側に設けられる二次燃焼室17と、流動床式ガス化炉13内から流動媒体14を抜き出し、そしてこの流動床式ガス化炉13に戻して循環させる抜出循環ライン15とを備える流動床式ガス化溶融設備の集塵装置11において、抜出循環ライン15と二次燃焼室17とを互いに接続する第1及び第2ガスダクト29、30を備え、二次燃焼室17の負圧を利用して、抜出循環ライン15内のガス及び灰分等を第1及び第2ガスダクト29、30に通して二次燃焼室17内に吸引する構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ、産業廃棄物等の固体可燃物を処理する流動床式ガス化溶融設備において、流動床式ガス化炉内から流動媒体を抜き出して循環させる抜出循環ライン内のガス及び灰分が大気中に散逸することを抑制又は防止することができる流動床式ガス化溶融設備の集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガス化溶融システムの一例を、図3を参照して説明する(例えば、特許文献1参照。)。同図に示すガス化溶融システム1は、廃棄物aをガス化する流動床式ガス化炉2と、ガス化炉2にて生成する生成物を溶融燃焼する溶融炉3とを備え、更に、ガス化炉2の炉底から廃棄物aに含まれる不燃物を流動媒体と共に排出する不燃物排出手段4と、ガス化炉2から不燃物排出手段4を通じて漏洩するガスを空気と共に吸引して混合ガスとする混合ガス吸引手段5と、燃焼用空気及び混合ガスをガス化炉2又は溶融炉3の少なくともいずれか一方に供給する燃焼用空気供給手段6、7と、燃焼用空気供給手段6、7へ混合ガスを搬送する混合ガス搬送手段8とを備えている。
【0003】
この図3に示すガス化溶融システム1によると、混合ガス吸引手段(送風機)5によって、ガス化炉2から不燃物排出手段4を通じて漏洩するガスを空気と共に吸引し、この吸引して得られた混合ガスを、混合ガス搬送手段8、及び燃焼用空気供給手段6、7を介してガス化炉2又は溶融炉3の少なくともいずれか一方に供給しているので、当該不燃物排出手段4を通じて漏洩するガスが大気中に散逸することを抑制又は防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−263886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図3に示す従来のガス化溶融システム1では、不燃物排出手段4を通じて漏洩するガスを、混合ガス吸引手段(送風機)5によって吸引しているので、この混合ガス吸引手段(送風機)5のコストが増加する。
【0006】
そして、混合ガス吸引手段(送風機)5を使用すると、その送風羽根に混合ガスに含まれる灰分が付着して、送風羽根の劣化を招き、送風効率も低下する。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、構造が簡単であり、費用が少なくて済む流動床式ガス化溶融設備の集塵装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置は、固体可燃物をガス化する流動床式ガス化炉と、このガス化炉にて生成する生成物を溶融燃焼する溶融炉と、この溶融炉の後流側に設けられる二次燃焼室と、前記流動床式ガス化炉内から流動媒体を抜き出して前記流動床式ガス化炉に戻して循環させる抜出循環ラインとを備える流動床式ガス化溶融設備の集塵装置において、前記抜出循環ラインと前記二次燃焼室とを互いに接続するためのガスダクトを備え、前記二次燃焼室の負圧を利用して、前記抜出循環ライン内のガス及び灰分を前記ガスダクトに通して前記二次燃焼室側に吸引することを特徴とするものである。
【0009】
この発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置によると、新たに通風機等の吸引装置を設けることなく、この流動床式ガス化溶融設備が備えている二次燃焼室の負圧を利用して、抜出循環ライン内の流動媒体に伴ってガス化炉から抜き出されるガス及び灰分を吸引して、二次燃焼室内に吸い込ませることができる。そして、二次燃焼室では、このガスを燃焼させることができるし、灰分を回収することができる。
【0010】
この発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置において、前記抜出循環ラインと前記ガスダクトとの接続部の圧力が−1〜0kPaであるものとしてもよい。
【0011】
このように、抜出循環ラインとガスダクトとの接続部の圧力を−1〜0kPaとすることによって、抜出循環ライン内を通る流動媒体を吸引してしまうことがなく、ガス及び灰分を選択して吸引することができる。ここで、当該接続部の圧力を−1〜0kPaに設定することが可能であるのは、二次燃焼室内の圧力が約−1.5kPaであり、この二次燃焼室の負圧を利用して吸引しているからである。そして、二次燃焼室内の圧力が約−1.5kPaであるのは、ガス化炉の空塔部圧力を負圧(例えば約−0.5kPa)に維持する必要があること、及び溶融炉の圧力損失が例えば0.5〜1.0kPaであるからである。
【0012】
この発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置において、前記ガスダクトにサイクロン集塵機又はバグフィルタ集塵機を設けたものとしてもよい。
【0013】
このようにすると、ガスダクト内の灰分をサイクロン集塵機又はバグフィルタ集塵機によって集塵することができるので、例えば灰分にダイオキシン類等の有害物質が含まれていても、その灰分がそのまま二次燃焼室を通ってこの流動床式ガス化溶融設備の系外に排出されることを防止できる。
【0014】
この発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置において、前記サイクロン集塵機又はバグフィルタ集塵機で集塵した灰分を前記溶融炉に供給する物としてもよい。
【0015】
このように、サイクロン集塵機又はバグフィルタ集塵機で集塵した灰分を溶融炉に供給すると、灰分を溶融させた後に固化して(無害な)水砕スラグとして回収することができる。
【0016】
この発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置において、前記抜出循環ラインと前記ガスダクトとの接続部内の圧力を調整するための大気吸込み口部を、前記ガスダクトに設けたものとしてもよい。
【0017】
このようにすると、大気吸込み口部から大気を吸い込むことによって、抜出循環ラインとガスダクトとの接続部内の圧力が適切な圧力となるように調整することが可能となる。
【0018】
この発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置において、前記大気吸込み口部に、大気吸込み量を調整するためのダンパを設けたものとしてもよい。
【0019】
このようにすると、ダンパを操作することによって、抜出循環ラインとガスダクトとの接続部内の圧力が適切な圧力となるように調整することができる。
【0020】
この発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置において、前記ガスダクトに灰分が堆積することを抑制するための灰堆積抑制装置を設けたものとしてもよい。
【0021】
このようにすると、この灰堆積抑制装置を使用して、ガスダクト内に灰分が堆積することを抑制することができ、これによって、抜出循環ライン内のガス及び灰分を、ガスダクトに通して確実に二次燃焼室側に吸引することができる。
【0022】
この発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置において、前記抜出循環ラインが、前記流動床式ガス化炉内から流動媒体を抜き出すための排出装置と、この抜き出した流動媒体を前記流動床式ガス化炉に戻して循環させるための循環エレベータとを有し、前記ガスダクトが、前記排出装置と接続する第1ガスダクトと、前記循環エレベータと接続する第2ガスダクトとを有し、前記第1及び第2ガスダクトのそれぞれの後流側端部が合流部で合流し、この合流部と前記二次燃焼室とが共通ガスダクトによって互いに接続しているものとしてもよい。
【0023】
このようにすると、排出装置内及び循環エレベータ内のガス及び灰分を吸引して抜き出すことができ、この抜き出したガス及び灰分を第1及び第2ガスダクトに通して合流部で合流させ、そして、共通ガスダクトに通して二次燃焼室側に吸引することができる。
【0024】
本発明に係る流動床式ガス化溶融設備は、この発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置を備えることを特徴とするものである。
【0025】
本発明に係る流動床式ガス化溶融設備は、この発明の流動床式ガス化溶融設備の集塵装置を備えており、この集塵装置は、上記と同様に作用する。
【発明の効果】
【0026】
この発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置、及び流動床式ガス化溶融設備によると、抜出循環ラインを通るガス及び灰分が、この抜出循環ラインから漏洩して大気中に散逸することを抑制又は防止することができる。その結果、このガス化炉が設置されている炉室環境の改善を図ることができる。そして、新たに通風機等の吸引装置を設ける必要がないので、構造が簡単であり、費用が少なくて済む当該集塵装置、及び流動床式ガス化溶融設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の第1実施形態に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置を示す正面図である。
【図2】同発明の第2実施形態に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置を示す正面図である。
【図3】従来のガス化溶融システムの一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置(以下、単に「集塵装置」と言うこともある。)、及びそれを備える流動床式ガス化溶融設備の第1実施形態を、図1を参照して説明する。この集塵装置11は、都市ごみ、産業廃棄物等の固体可燃物bを処理する流動床式ガス化溶融設備12において、流動床式ガス化炉13内の流動媒体14を抜き出して循環させる抜出循環ライン15内のガス及び灰分が大気中に散逸することを抑制又は防止することができるものである。
【0029】
この集塵装置11が設けられている流動床式ガス化溶融設備12は、図1に示すように、流動床式ガス化炉13、旋回溶融炉16、二次燃焼室17、及び抜出循環ライン15を備えている。
【0030】
図1に示す流動床式ガス化炉13は、炉下部の空気供給口(図示せず)から供給される燃焼用空気により流動床が形成され、流動床内に供給された固体可燃物b(例えば都市ごみ、産業廃棄物等)を低空気比で部分燃焼させ、この燃焼熱により所定の温度に維持される流動床内で固体可燃物bを熱分解する装置である。
【0031】
ガス化炉13における部分燃焼の結果、固体可燃物bに混入した不燃物(鉄、アルミニウムなどの金属を主として含有する物質)は、炉底に設けた下側排出口から排出装置18によって排出される。そして、ガス化炉13で生成される熱分解ガス(CO、CH4等)、未燃チャー(未燃炭素)、灰分及び燃焼生成ガス(H2O、CO2、N2等)は、炉頂部に設けた上側排出口13aから排出され、接続ダクト19を経て旋回溶融炉16の予燃焼部20に導入される。
【0032】
旋回溶融炉16は、予燃焼部20と、略円筒形の入口側主燃焼部21と出口側主燃焼部22とを備えている。以下、旋回溶融炉16に導入されるこれら熱分解ガス、未燃チャー、灰分、及び燃焼生成ガスを総称して未燃ガスと呼ぶ。
【0033】
予燃焼部20においては、未燃ガス中の熱分解ガス、未燃チャー、及び必要に応じて補助バーナから供給される燃料が、空気供給口(図示せず)から供給される燃焼用空気によって燃焼して高温となり、予燃焼部20の出口で灰分が溶融し、スラグとなる。予燃焼部20において燃焼した未燃ガスは、溶融状態の灰分(スラグ)と共に、入口側主燃焼部21に導入される。入口側主燃焼部21でスラグ23は、燃焼ガス24と分離する。
【0034】
この入口側主燃焼部21と出口側主燃焼部22内の温度は熱分解ガスと未燃チャーが燃焼することにより約1300〜1500℃に維持されているので、未燃ガス中の灰分は溶融スラグ状態を維持し、基本的には炉底の出滓口25から排出される。旋回溶融炉16から排出された溶融スラグ23は、図示しない水封槽内の水封水に落下して急冷されて水砕スラグとなり、コンベヤ等の搬送手段によって取り出される。取り出された水砕スラグは路盤材等に有効利用することができる。
【0035】
そして、旋回溶融炉16へ導入された未燃ガスは、予燃焼部20、入口側主燃焼部21、及び出口側主燃焼部22において燃焼した後、出口側主燃焼部22から二次燃焼室17に送り込まれる。二次燃焼室17では、空気供給口(図示せず)から供給される燃焼用空気によりトータルの空気比が1.2〜1.5となるように設定されており、燃焼ガスに含まれる未燃分はここで完全に燃焼される。この二次燃焼室17から排出される排ガスの保有する顕熱は図示しないボイラーの熱源等として有効利用されている。
【0036】
抜出循環ライン15は、図1に示すように、排出装置18、振動篩26、搬送装置27、及び循環エレベータ28を備えている。
【0037】
排出装置18は、ガス化炉13内の固体可燃物b(廃棄物等)に混入した不燃物(鉄、アルミニウムなどの金属を主として含有する物質)と共に、砂等の流動媒体14を、炉底に設けた下側排出口から排出して、振動篩26に供給するものである。
【0038】
振動篩26は、粒径の大きい不燃物と、粒径の小さい砂等の流動媒体14とに振り分けるものである。粒径の大きい不燃物のうち、鉄、アルミニウムなどの金属等の有価物は、有価物回収装置によって分離回収され、残りは、埋め立て等によって処分される。一方、粒径の小さい流動媒体14は、搬送装置27によって搬送され、しかる後に循環エレベータ28によって上方に搬送されてガス化炉13内に戻され、流動媒体14として再使用される。
【0039】
ところで、図1に示すガス化炉13の空塔部13b内は、−0.5kPa程度の負圧に保たれているが、流動媒体14を流動化すると流動層の上下方向に圧力損失を生じるため、炉底は、10kPa程度の正圧で運転される。このためガス化炉13内の熱分解ガスを含むガス及び灰分等が大気中に漏洩するのを防止する手段として、炉下シュート13c及び排出装置18のそれぞれの内部に、流動媒体14及び不燃物の混合物を充満させて、いわゆるマテリアルシールを行っている。しかしながら、マテリアルシールによる完全なシールは不可能であり、少量の熱分解ガスを含むガス及び灰分等が大気中に漏洩することがある。そして、循環エレベータ28も、密封カバーで被覆されているが、少量のガス及び灰分等が大気中に漏洩することがある。
【0040】
次に、これら大気中に漏洩する可能性のある熱分解ガスを含むガス及び灰分等を集塵することができる集塵装置11を説明する。
【0041】
この集塵装置11は、図1に示すように、抜出循環ライン15と二次燃焼室17とを互いに接続するための第1及び第2ガスダクト29、30を備え、二次燃焼室17の負圧を利用して、抜出循環ライン15内のガス及び灰分等を第1及び第2ガスダクト29、30に通して二次燃焼室17内に吸引することができるものである。
【0042】
第1ガスダクト29は、排出装置18の出口側端部の内部と、二次燃焼室17の下部とを互いに接続するためのものである。そして、第2ガスダクト30は、循環エレベータ28の上端部と、二次燃焼室17の下部とを互いに接続するためのものである。そして、この実施形態の第1及び第2ガスダクト29、30は、図1に示すように、それぞれの上流側部が排出装置18及び循環エレベータ28と接続し、それぞれの下流側部が合流部40で合流し、この合流部40と二次燃焼室17とが共通ガスダクト41で接続されている。
【0043】
また、第1ガスダクト29において、排出装置18の出口側端部との第1接続部29aには、第1圧力計31が設けられ、第2ガスダクト30において、循環エレベータ28の上端部との第2接続部30aには、第2圧力計32が設けられている。これら第1及び第2圧力計31、32は、第1及び第2接続部29a、30aの圧力を監視できるようにするためのものであり、この第1及び第2接続部29a、30aの圧力は、二次燃焼室17の吸込み圧力の変動が原因して変動するものである。
【0044】
次に、第1及び第2接続部29a、30aの圧力について説明する。これら第1及び第2接続部29a、30aの圧力は、例えば−1〜0kPaとなるように調整される。
【0045】
このように、第1及び第2接続部29a、30aの圧力を−1〜0kPaとすることによって、抜出循環ライン15内を通る流動媒体14を吸引してしまうことがなく、ガス及び灰分等を選択して吸引することができる。ここで、第1及び第2接続部29a、30aの圧力を−1〜0kPaに設定することが可能であるのは、二次燃焼室17内の圧力が約−1.5kPaであり、この二次燃焼室17の負圧を利用して吸引しているからである。
【0046】
そして、二次燃焼室17内の圧力が約−1.5kPaとなっているのは、ガス化炉13の空塔部13bの圧力を負圧(例えば約−0.5kPa)に維持する必要があること、及び溶融炉16の圧力損失が例えば0.5〜1.0kPaであるからである。また、二次燃焼室17内の圧力を約−1.5kPaとすることができるのは、この二次燃焼室17内の燃焼排ガスが、通風機(図示せず)によって所定の吸引力で吸引されているからである。この通風機は、元々、この流動床式ガス化溶融設備12の機能を達成するために設けられているものである。
【0047】
また、第1及び第2接続部29a、30aでの吸込み圧力が、所定の圧力(例えば−1〜0kPa)となるように、第1及び第2ガスダクト29、30の途中、又は共通ガスダクト41にオリフィス(図示せず)を設けることができる。
【0048】
更に、この実施形態では、第1及び第2接続部29a、30a内の圧力を調整するための大気吸込み口部33を、例えば第2ガスダクト30の途中に設けてある。そして、この大気吸込み口部33には、大気吸込み量を調整するためのダンパ34を設けてある。このダンパ34は、作業者が手動で直接に又は遠隔操作で操作するものとしてもよいし、第1及び第2圧力計31、32が測定した圧力に基づいて、第1及び第2接続部29a、30a内の圧力が予め設定された圧力となるように、自動的に操作されるようにしてもよい。
【0049】
このように大気吸込み口部33を設けると、大気吸込み口部33から大気を吸い込むことによって、第1及び第2接続部29a、30a内の圧力が適切な圧力となるように調整することが可能となる。そして、大気吸込み口部33にダンパ34を設けて、このダンパ34を操作することによって、第1及び第2接続部29a、30a内の圧力が適切な圧力となるように調整することができる。
【0050】
そして、図1に示すように、第2ガスダクト30の途中には、灰堆積抑制装置35を設けてある。この灰堆積抑制装置35は、例えば高圧空気を第2ガスダクト30内に噴射して、第2ガスダクト30内に灰分が堆積することを抑制するためのものであり、ノズル(図示せず)と、このノズルの開口部を開閉するための弁装置を備えている。この灰堆積抑制装置35には、高圧空気の供給部が接続されている。また、高圧空気の噴射方向は、この第2ガスダクト30内のガス及び灰分等が二次燃焼室17に流れる方向としている。
【0051】
このようにすると、この灰堆積抑制装置35を使用して、第2ガスダクト30内に灰分が堆積することを抑制することができ、これによって、第2ガスダクト30内のガス及び灰分等を、この第2ガスダクト30に通して確実に二次燃焼室17内に吸引することができる。
【0052】
ただし、この実施形態では、図1に示すように、大気吸込み口部33、ダンパ34、及び灰堆積抑制装置35をそれぞれ第2ガスダクト30に設けたが、これに代えて、第1ガスダクト29に設けてもよいし、第1及び第2ガスダクト29、30の両方に設けてもよい。
【0053】
次に、上記のように構成された流動床式ガス化溶融設備の集塵装置11の作用を説明する。この集塵装置11によると、新たに通風機等の吸引装置を設けることなく、この流動床式ガス化溶融設備12が備えている二次燃焼室17の負圧を利用して、抜出循環ライン15内の流動媒体14に伴って通るガス及び灰分等を吸引して、二次燃焼室17内に吸い込ませることができる。そして、二次燃焼室17では、このガスを燃焼させることができるし、灰分を排出装置36によって排出して回収することができる。
【0054】
これによって、この抜出循環ライン15を通るガス及び灰分等が、この抜出循環ライン15から漏洩して大気中に散逸することを抑制又は防止することができる。その結果、このガス化炉13が設置されている炉室環境の改善を図ることができる。そして、新たに通風機等の吸引装置を設ける必要がないので、構造が簡単であり、費用が少なくて済む集塵装置11を提供することができる。
【0055】
次に、本発明の第2実施形態に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置39(以下、単に「集塵装置」と言うこともある。)を、図2を参照して説明する。この図2に示す第2実施形態の集塵装置39と、図1に示す第1実施形態の集塵装置11とが相違するところは、図1に示す第1実施形態では、抜出循環ライン15からガス及び灰分等を吸引して、この吸引したガス及び灰分等を直接に二次燃焼室17内に吸い込ませる構成としたのに対して、図2に示す第2実施形態では、抜出循環ライン15からガス及び灰分等を吸引して、この吸引したガス及び灰分等をサイクロン集塵機42又はバグフィルタ集塵機に通した後で二次燃焼室17内に吸い込ませる構成としたところである。
【0056】
このサイクロン集塵機42又はバグフィルタ集塵機は、従来公知のものであり、図2に示すように、第1及び第2ガスダクト29、30の合流部40と二次燃焼室17とを接続する共通ガスダクト41の途中に設けられている。
【0057】
この第2実施形態の集塵装置39によると、共通ガスダクト41内を通る灰分をサイクロン集塵機42又はバグフィルタ集塵機によって集塵(捕集)することができるので、例えば灰分にダイオキシン類等が含まれていても、この灰分がそのまま二次燃焼室17を通ってこの流動床式ガス化溶融設備12の系外に排出されることを防止できる。
【0058】
そして、この図2に示す集塵装置39は、サイクロン集塵機42又はバグフィルタ集塵機で集塵した灰分を溶融炉16に供給することができる構成となっている。
【0059】
このように、サイクロン集塵機42又はバグフィルタ集塵機で集塵した灰分を溶融炉16に供給すると、灰分を溶融させた後に固化して無害な水砕スラグとして回収することができる。
【0060】
これ以外は、第1実施形態と同等であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。
【0061】
ただし、上記実施形態の集塵装置11、39では、図1及び図2に示すように、第1ガスダクト29によって、排出装置18の出口側端部の内部と、二次燃焼室17の下部とを互いに接続し、かつ、第2ガスダクト30によって、循環エレベータ28の上端部と、二次燃焼室17の下部とを互いに接続したが、これ以外の構成としてもよい。例えば第3ガスダクトによって、振動篩26又は搬送装置27と、二次燃焼室17とを互いに接続してもよい。
【0062】
要は、抜出循環ライン15と二次燃焼室17とを互いに接続するガスダクトを備え、二次燃焼室17の負圧を利用して、抜出循環ライン15内のガス及び灰分等をガスダクトに通して二次燃焼室17側に吸引することができるものであればよい。
【0063】
そして、上記実施形態では、燃焼ガス24が入口側主燃焼部21及び出口側主燃焼部22で旋回し、予燃焼部20で旋回しない構成としたが、これに代えて、燃焼ガス24が、予燃焼部20、入口側主燃焼部21、及び出口側主燃焼部22で旋回する構成としてもよい。また、燃焼ガス24が、予燃焼部20で旋回し、入口側主燃焼部21及び出口側主燃焼部22で旋回しない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る流動床式ガス化溶融設備の集塵装置は、構造が簡単であり、費用が少なくて済むという優れた効果を有し、このような流動床式ガス化溶融設備の集塵装置に適用するのに適している。
【符号の説明】
【0065】
11 流動床式ガス化溶融設備の集塵装置
12 流動床式ガス化溶融設備
13 流動床式ガス化炉
13a 上側排出口
13b 空塔部
13c 炉下シュート
14 流動媒体
15 抜出循環ライン
16 旋回溶融炉
17 二次燃焼室
18 排出装置
19 接続ダクト
20 予燃焼部
21 入口側主燃焼部
22 出口側主燃焼部
23 スラグ
24 燃焼ガス
25 出滓口
26 振動篩
27 搬送装置
28 循環エレベータ
29 第1ガスダクト
29a 第1接続部
30 第2ガスダクト
30a 第2接続部
31 第1圧力計
32 第2圧力計
33 大気吸込み口
34 ダンパ
35 灰堆積抑制装置
36 排出装置
39 流動床式ガス化溶融設備の集塵装置
40 合流部
41 共通ガスダクト
42 集塵機
b 固体可燃物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体可燃物をガス化する流動床式ガス化炉と、このガス化炉にて生成する生成物を溶融燃焼する溶融炉と、この溶融炉の後流側に設けられる二次燃焼室と、前記流動床式ガス化炉内から流動媒体を抜き出して前記流動床式ガス化炉に戻して循環させる抜出循環ラインとを備える流動床式ガス化溶融設備の集塵装置において、
前記抜出循環ラインと前記二次燃焼室とを互いに接続するためのガスダクトを備え、前記二次燃焼室の負圧を利用して、前記抜出循環ライン内のガス及び灰分を前記ガスダクトに通して前記二次燃焼室側に吸引することを特徴とする流動床式ガス化溶融設備の集塵装置。
【請求項2】
前記抜出循環ラインと前記ガスダクトとの接続部の圧力が−1〜0kPaであることを特徴とする請求項1記載の流動床式ガス化溶融設備の集塵装置。
【請求項3】
前記ガスダクトにサイクロン集塵機又はバグフィルタ集塵機を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の流動床式ガス化溶融設備の集塵装置。
【請求項4】
前記サイクロン集塵機又はバグフィルタ集塵機で集塵した灰分を前記溶融炉に供給することを特徴とする請求項3記載の流動床式ガス化溶融設備の集塵装置。
【請求項5】
前記抜出循環ラインと前記ガスダクトとの接続部内の圧力を調整するための大気吸込み口部を、前記ガスダクトに設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の流動床式ガス化溶融設備の集塵装置。
【請求項6】
前記大気吸込み口部に、大気吸込み量を調整するためのダンパを設けたことを特徴とする請求項5記載の流動床式ガス化溶融設備の集塵装置。
【請求項7】
前記ガスダクトに灰分が堆積することを抑制するための灰堆積抑制装置を設けたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の流動床式ガス化溶融設備の集塵装置。
【請求項8】
前記抜出循環ラインは、前記流動床式ガス化炉内から流動媒体を抜き出すための排出装置と、この抜き出した流動媒体を前記流動床式ガス化炉に戻して循環させるための循環エレベータとを有し、
前記ガスダクトは、前記排出装置と接続する第1ガスダクトと、前記循環エレベータと接続する第2ガスダクトとを有し、前記第1及び第2ガスダクトのそれぞれの後流側端部が合流部で合流し、この合流部と前記二次燃焼室とが共通ガスダクトによって互いに接続していることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の流動床式ガス化溶融設備の集塵装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の流動床式ガス化溶融設備の集塵装置を備えることを特徴とする流動床式ガス化溶融設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−11429(P2013−11429A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145904(P2011−145904)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】