説明

流動式接触分解方法用のガソリン硫黄減少用触媒

本発明は、石油精製工程で生産される製品、特に流動式接触分解(FCC)工程で生産されるガソリン製品の硫黄種を減少させるに適した組成物である。本組成物は亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した少なくとも1種の元素、イットリウムおよびゼオライトを含有して成り、ここで、前記イットリウムおよび前記元素はカチオンとして存在する。前記イットリウムおよび亜鉛を好適にはゼオライト上で交換されたカチオンとして存在させる。そのようなゼオライトは好適にはゼオライトYである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動式接触分解方法(fluid catalytic cracking
processes)で用いるに適するように改良を受けさせた触媒組成物に向けたものである。本触媒組成物は、前記方法のガソリン溜分流れの一部として通常存在する硫黄化合物を減少させる能力を有する。従って、本発明は、硫黄含有化合物の量が実質的に低下した軽質および重質ガソリン溜分の生成物流れを提供しかつ本発明を前記方法で触媒として用いることで改良を受けさせた接触分解方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
接触分解は商業的に非常に大規模に適用されている石油精製方法である。実際、米国では流動式接触分解(FCC)方法によって多量の精油所ガソリンブレンド用プール(refinery gasoline blending pool)が生産されている。この方法では、重質炭化水素原料に反応を触媒の存在下で高温で受けさせることでそれを軽質生成物に変化させるが、その反応の大部分は気相中で行われる。それによって、その原料をガソリン、留出液および他の液状溜分生成物流ればかりでなく1分子当たりの炭素原子数が4以下の気体状軽質分解生成物に変化させる。接触分解方法の特徴的な3段階には下記が含まれる:重質炭化水素供給流れを軽質生成物に変化させる分解段階、触媒材料に吸着している炭化水素をそれから除去するストリッピング(stripping)段階、そしてコークス生成物を触媒材料から焼失(burn off)させる再生段階。その後、その再生させた触媒を再循環させて分解段階で再び用いる。
【0003】
接触分解を受けさせる原料には一般に有機硫黄化合物、例えばメルカプタン、スルフィド、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンおよび他の硫黄含有種などが含まれている。それに相当して、そのような硫黄化合物のほぼ半分は分解過程中に主にチオフェン以外の硫黄化合物が触媒作用で分解して硫化水素に変化するにも拘らず、その分解過程の生成物は硫黄不純物を含有する傾向がある(非特許文献1を参照)。チオフェン化合物の除去が最も困難であることが分かっている。分解生成物に入っている硫黄の比分布(specific distribution)は供給材料、触媒の種類、存在する添加剤、変換率および他の操作条件を包含する数多くの要因に依存するが、如何なる場合にも、ある比率で硫黄が軽質もしくは重質ガソリン溜分の中に入り込んで製品プールの中に持ち込まれる傾向がある(以下に後で考察する軽質サイクルオイル溜分に由来する硫黄を包含)。
【0004】
石油原料には一般にいろいろな硫黄含有汚染物(contaminants)が入っているが、主な関心の1つは、置換されていないチオフェンおよびヒドロカルビルで置換されているチオフェンそしてそれらの誘導体、例えばチオフェン、メチルチオフェン、エチルチオフェン、プロピルチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ベンゾチオフェンなどがFCC工程の重質および軽質ガソリン溜分製品流れの中に存在する点にある。そのようなチオフェン化合物の沸点は一般に軽質および重質ガソリン溜分の沸点の範囲内であり、従って、製品流れの中に濃縮して来る。石油製品にかけられる環境規制が厳しくなってきており、例えば改質ガソリン(Reformulated Gasoline)(RFG)規制などに伴って、製品の硫黄含有量、特にチオフェン化合物に起因する硫黄含有量を減らす試みが数多く成されてきた。
【0005】
分解を開始する前にFCC供給材料に水素化処理を受けさせることで硫黄を除去する1つの方策が取られた。このような方策は高い効果を示しはしたが装置の投資費用の点ばかりでなく操作的に水素消費量が高いことから高価である傾向がある。分解生成物に水素化
処理を受けさせることで硫黄を除去する別の方策も取られた。再び、そのような解決法も有効ではあるが、高オクタンオレフィン成分(high octane olefinic components)が飽和状態になると製品の価値有るオクタンが失われる可能性があると言った欠点を有する。
【0006】
分解工程自身を行っている時にチオフェン系硫黄の除去を達成することができれば、これは経済性の観点から望ましいことである、と言うのは、それによって追加的処理を行うことなくガソリンブレンド用プールの主成分に脱硫を有効に受けさせることができるからである。FCC工程サイクル中に硫黄を除去する目的でいろいろな触媒材料が開発されてきた。例えば、FCC用触媒にバナジウムを含浸させると生成物の硫黄濃度が低下することが示された(特許文献1を参照)。この文献にはまた亜鉛をアルミナに含浸させることを基にした硫黄減少用添加剤(sulfur reduction additive)も開示されている。
【0007】
製品の硫黄を減少させる別の進展は再生装置の煙道ガス(stack gases)から硫黄を除去することが中心であった。Chevronが進展させた初期の方策では、FCC再生装置に入っている硫黄酸化物を吸着させる目的で分解用触媒のインベントリー(inventory)に添加される添加剤としてアルミナ化合物を用いており、供給材料に入って工程の中に入り込んで吸着された硫黄化合物は、そのサイクルの分解部分中に硫化水素として放出された後、その装置の製品回収セクションの中に入り、その中で除去される(非特許文献2を参照)。再生装置の煙道ガスから硫黄を除去したとしても、液状製品の硫黄濃度はほとんど全く影響を受けない。
【0008】
再生装置の煙道ガスから硫黄酸化物を除去する代替技術は、FCCユニット(FCCU)の中を循環している触媒インベントリーに添加する添加剤としてマグネシウム−アルミニウムスピネルを用いることが基になった技術である。この種類の硫黄除去用添加剤を開示している典型的な特許には特許文献2、3、4、5などが含まれる。しかしながら、再び、液状製品、例えばガソリンなどに入っている硫黄の量はあまり影響を受けない。
【0009】
液状の分解生成物に入っている硫黄の濃度を低くする触媒組成物が特許文献6および7に記述された。これらの特許はアルミナ担持ルイス酸で構成させた添加剤を通常のゼオライト含有分解用触媒に少量添加することを提案している。このような系は分解工程中に硫黄を減少させると言った利点を有するが、一般に、その記述された添加剤をその触媒組成物に入れて用いる量が約10重量パーセントを超えると利点(例えば、他の生成物の選択率を保持しながら硫黄を高度に除去する)がその添加剤の濃度に比例しなくなると考えられている。FCCUの中で流動している粒子の量は固定された量であり得ることを考慮に入れると、添加剤、例えばアルミナに担持されているルイス酸である添加剤(WormsbecherおよびKimの)などを含有させるとFCCUの中に入っている基礎の分解用触媒の量が少なくなり、従って重質原料から所望生成物への変換率が比例して低下する可能性がある。
【0010】
ルイス酸含有アルミナおよびY型ゼオライト含有触媒で構成させたFCC用触媒組成物は動的変換活性が少なくとも2の組成物をもたらすことが特許文献8に開示されている。その生成物は、ある程度ではあるが、上述したルイス酸成分に関連した欠点を取り扱う目的で開発されたものであった。実際、特許文献8に記述されている組成物はFCC工程の軽質および重質ガソリン溜分中の硫黄(例えばチオフェンおよびこれの誘導体)含有量を低下させる(約34%)。
【0011】
ゼオライトをルイス酸含有成分と組み合わせて含有して成るガソリン硫黄減少用分解用触媒組成物が特許文献9に開示されており、その分解用触媒組成物のNaOの含有量は
0.2%以下である。流動式接触分解工程に供給される炭化水素供給材料中の硫黄化合物が上述したルイス酸含有成分を含有させていない同じ組成物を用いた時のそれに比べて少なくとも15%低下し得ることが確認された。
【0012】
上述したガソリン硫黄用製品(gasoline sulfur product)はゼオライト以外の担体に担持されているルイス酸に関する。しかしながら、また、ルイス酸が基になったガソリン硫黄減少用製品の調製をルイス酸をゼオライト、特に希土類による交換を受けさせておいたゼオライトと結合させることで実施することができることも記述されている。ここに、そのような触媒が示すガソリン硫黄減少(GSR)活性はルイス酸、例えば亜鉛が基になった化合物などおよび存在するいずれかの希土類の充填量に応じて熱水による失活後に劇的に低下する可能性があることを見いだし、これは、脱アルミニウムがひどく起こるか或はゼオライト表面積が劇的に小さくなることで有効ゼオライト交換部位の量が低下したことによるものである。ルイス酸およびいずれかの希土類の量を前記触媒の水熱安定性が最大限になるように注意深く最適にした場合でさえ、触媒、例えばZnによる交換を受けさせたRE−USY触媒などが示す硫黄減少活性は水熱(固有の酸化還元サイクルを有する)で失活した後に実質的に低下し得る。FCC用触媒はFCC工程における水熱条件下で絶えず還元と酸化が交互に存在するサイクルを経験し、従って、そのようなサイクルを回避するのは通常不可能である。前記種類の触媒の使用はそのような欠点によって制限されていた。
【0013】
また、上述した低ソーダ態様は特定種の硫黄化合物を減少させるのみであることも確認されており、より幅広く多様な硫黄含有種、例えばLCO硫黄などを減少させる能力を有する触媒を見つけだすことができれば、これは望ましいことである。
【0014】
U.S.Environmental Protection Agencyがガソリンの硫黄含有量に関して新しい基準を設定しかつ平均値を2006年までに現在の基準である350ppmの硫黄から約30ppmにまで低下させようとしていることで明らかなように、硫黄の基準は益々厳しくなってきている。従って、FCC工程で用いるに適していて原料から所望生成物への変換を実質的に維持しながら特許文献10に記述されている添加剤を用いた時に達成可能な硫黄濃度よりも硫黄濃度を更に有意に低下、特に軽質および重質ガソリン溜分に入っているチオフェンおよびこれらの誘導体のレベルを低下させる、例えば全体的分解活性および生成物選択性を実質的に維持しながらFCC工程機能の一部としてチオフェンおよびこれの誘導体のレベルを実質的に低下させる能力を有する触媒組成物が得られたならば、これは望ましいことである。また、添加剤が示す硫黄減少能力が相対的に短い時間で実質的に悪化しない、即ち添加剤が示す硫黄減少能力がより長い時間に渡って維持されるようにすることができれば、これも望ましいことである。
【特許文献1】米国特許第6,482,315号
【特許文献2】米国特許第4,963,520号
【特許文献3】米国特許第4,957,892号
【特許文献4】米国特許第4,957,718号
【特許文献5】米国特許第4,790,982号
【特許文献6】WormsbecherおよびKimの米国特許第5,376,608号
【特許文献7】WormsbecherおよびKimの米国特許第5,525,210号
【特許文献8】米国特許第6,635,168号
【特許文献9】2004年3月16日付けで出願した係属中の米国特許出願10/801,424
【特許文献10】WO 02/08300
【非特許文献1】Wormsbecher他、National Petroleum Refiners Meeting、New Orleans、paper AM−92−15(1992)
【非特許文献2】Krishna他、Additives Improved FCC Process,Hydrocarbon Processing、1991年11月、59−66頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の要約
本発明は、ゼオライト、イットリウムならびに亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した少なくとも1種の元素を含有して成っていて前記イットリウムおよび前記元素がカチオンとして存在する、改良を受けさせた分解用触媒組成物である。本触媒組成物は好適には亜鉛を上述した元素として約0.1%から約14%の量で含有して成る。本触媒はまた好適にはイットリウムも約0.1から約12重量%含有して成る。前記元素およびイットリウムを本組成物に一般にゼオライト上で交換されたカチオンとして存在させる。前記ゼオライトは好適にはゼオライトYである。本発明に更に希土類も含有、例えば希土類による交換を受けさせておいたYゼオライトを用いる時などに含有させてもよい。本組成物は特に流動式接触分解工程(FCC)で用いるに適する。従って、本発明の好適な態様は、平均粒径が約20から約100ミクロンの範囲内の流動性粒子を含んでおり、それに更にマトリクスを含有させかつ場合により結合剤、例えば粘土およびアルミナなどを含有させてもよい。
【0016】
本発明は、また、接触分解を受けた石油溜分の硫黄含有量を低下させる新規な方法も提供し、この方法は、有機硫黄化合物を含有する石油供給材料部分に接触分解をゼオライト、イットリウムならびに亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した少なくとも1種の元素を含有して成っていて前記イットリウムおよび前記元素がカチオンとして存在する分解用触媒を存在させて高められた温度(elevated temperature)で受けさせることを含んで成る。
【0017】
本発明は、更に、(i)接触分解条件下で稼働している接触分解ゾーン内で供給材料(feed)を再生分解用触媒源と接触させて前記供給材料に接触分解を受けさせることで分解生成物ならびにコークスおよびストリッピング可能炭化水素を含む使用済み触媒を含有する分解ゾーン流出物を生じさせ、(ii)前記流出混合物を取り出した後、分解生成物が豊富な気相と使用済み触媒を含有する固体が豊富な相に分離させ、(iii)前記気相を生成物として取り出した後、その気相に分別を受けさせることでガソリンを包含する液状の分解生成物を生じさせ、(iv)前記固体が豊富な使用済み触媒相にストリッピングを受けさせることで前記触媒に吸蔵されている炭化水素をそれから除去し、(v)ストリッピングを受けさせた触媒をストリッパーから触媒再生装置に移送し、(vi)ストリッピングを受けさせた触媒を酸素含有気体と接触させてそれに再生を受けさせることで再生された触媒を生じさせ、そして(vii)前記再生触媒を分解ゾーンに再循環させてさらなる量の重質炭化水素供給材料と接触させることを含んで成る循環式触媒再循環分解方法であって、有機硫黄化合物を含有する炭化水素供給材料を大きさが約20から約100ミクロンの範囲の粒子からなる循環している流動性接触分解用触媒インベントリーと接触させて、それに接触分解を受けさせることで、より軽質な生成物を生じさせる流動式接触分解方法において、その改良が、前記供給材料溜分(fraction)に接触分解を、イットリウム、ゼオライトならびに亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した少なくとも1種の元素を含有して成っていて前記イットリウムおよび前記元素がカチオンとして存在する生成物硫黄減少用触媒(product sulfur reduction catalyst)を存在させて高められた温度で受けさせることで前記液状分解生成物のガソリン部分の硫黄含有量を低下させることを含んで成る新規な方法を包含する。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の形態は、好適には、FCCユニット内に維持され得る形態である。FCC触媒は、典型的に、ケイ素とアルミニウムの酸化物で構成されている微細な多孔質粉末材料であるゼオライトを含有する。そのゼオライトを典型的にはマトリクスおよび/または結合剤の中に合体させた後に粒子状にするか、或は微小球を生じさせた後、粘土が基になった粒子に「ゼオライト化」を受けさせてもよい。「Commercial Preparation and Characterization of FCC Catalysts」、Fluid Catalytic Cracking:Science and
Technology、Studies in Surface Science and Catalysis、76巻、120頁(1993)を参照。上述したゼオライト粒子のいずれかの態様に気体曝気を受けさせた時、その粒子状の触媒材料は流体の如き状態を維持していて、その材料は液体のように挙動する。触媒にそのような特性を持たせると、それとFCC装置に供給される炭化水素原料供給材料の接触が向上しかつFCC反応槽とFCC工程全体の他のユニット(例えば再生装置)の間の循環が可能になる。従って、本産業では、そのような材料を記述する目的で用語「流体」が採用されている。FCC用触媒の平均粒径は典型的に約20から約100ミクロンの範囲内である。本発明の組成物は特にFCCで用いるに適することが分かったが、本組成物を低硫黄生成物を生じさせるのが望ましい他の接触炭化水素変換方法で用いることも可能であると考えている。
【0019】
ゼオライト
本発明の調製で用いるに適したゼオライトは、炭化水素変換工程で触媒活性を示すゼオライトのいずれかであり得る。そのゼオライトは本発明を生じさせるに必要なイットリウムおよび他のカチオンによる交換を受け得るゼオライトであるべきである。そのようなゼオライトは一般に孔径が大きいゼオライトであってもよく、これは、開口部が少なくとも0.7nmの孔構造を有しかつ約0.56nmより大から0.7nmより小の孔径を有する中程度(medium)もしくは中間的(intermediate)孔径のゼオライトであることで特徴づけられる。孔が大きい適切なゼオライトを以下に更に記述する。孔径が中程度の適切なゼオライトには、ペンタシルゼオライト、例えばZSM−5、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−50、ZSM−57、MCM−22、MCM−49、MCM−56(これらは全部公知材料である)などが含まれる。また使用可能な他のゼオライトには、アルミニウム以外の骨組み(framework)金属元素、例えばホウ素、ガリウム、鉄、クロムなどを有するゼオライトが含まれる。
【0020】
孔が大きい適切なゼオライトには、結晶性アルミノ−シリケートゼオライト、例えば合成ファウジャサイト、即ちY型ゼオライト、X型ゼオライトおよびゼオライトベータなどばかりでなく熱処理(焼成(calcined))を受けそして/または希土類による交換を受けたそれらの誘導体などが含まれる。特に適したゼオライトには、焼成かつ希土類による交換を受けたY型ゼオライト(CREY)[これの調製は米国特許第3,402,996号に開示されている]、超安定性Y型ゼオライト(USY)[米国特許第3,293,192号に開示されている如き]ばかりでなく交換をある程度受けたいろいろなY型ゼオライト[米国特許第3,607,043号および3,676,368号に開示されている如き]が含まれる。孔が大きい他の適切なゼオライトには、MgUSY、ZnUSY、MnUSY、HY、REY、CREUSY、REUSYゼオライトおよびこれらの混合物が含まれる。以下により詳細に考察するように、イットリウムによる交換を受けさせたYゼオライトが特に好適である。また、本発明のゼオライトをモレキュラーシーブ、例えばSAPOおよびALPO(米国特許第4,764,269号に開示されている如き)などと混合することも可能である。
【0021】
標準的Y型ゼオライトの商業的製造はケイ酸ナトリウムとアルミン酸ナトリウムの結晶化で実施される。そのようなゼオライトに脱アルミニウムを受けさせることでUSY型に変化させることができるが、そのような脱アルミニウムによって、標準的親Yゼオライト構造物のケイ素/アルミニウム原子比が高くなる。脱アルミニウムは蒸気による焼成または化学的処理で達成可能である。粘土微小球に「ゼオライト化」をインシトゥで受けさせてゼオライトYを生じさせる態様では、焼成を受けさせておいた粘土微小球を180度F(82℃)の苛性溶液に接触させることで前記微小球からゼオライトYを生じさせる。Studies in Surface Science and Catalysis(上記)を参照。
【0022】
本発明で用いる希土類による交換を受けたゼオライトの調製をイオン交換で実施するが、この調製中、前記ゼオライトの構造の中に存在するナトリウム原子が他のカチオンと通常は希土類金属塩の混合物、例えばセリウム、ランタン、ネオジム、天然に存在する希土類およびこれらの混合物などの塩として置き換わることでそれぞれREYおよびREUSYグレードがもたらされる。そのようなゼオライトに更に焼成による処理を受けさせることで上述したCREYおよびCREUSY型の材料を生じさせることができる。REUSYを生じさせる目的で用いた前記希土類金属塩の代わりにマグネシウム、亜鉛またはマンガンの塩を用いる以外はREUSY生成に関して上述した様式と同じ様式でMn、Zn、Mnまたはこれらの混合物の金属塩を用いることでMgUSY、ZnUSYおよびMnUSYゼオライトを生じさせることができる。
【0023】
好適な新鮮Y−ゼオライトの単位格子サイズは約24.45から24.7Åである。ゼオライトの単位格子サイズ(UCS)の測定はASTM D3942の手順を用いたX線分析で実施可能である。通常は、ゼオライトに存在するケイ素とアルミニウム原子の相対量とそれの単位格子サイズの間に直接的関係が存在する。そのような関係はD.W.Breck著、Zeolite Molecular Sieves,Structural
Chemistry and Use(1974)、94頁(これの教示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に詳述されている。流動式接触分解用触媒の本質的にゼオライトおよびマトリクスの両方ともが一般にシリカとアルミナの両方を含有するが、触媒マトリクスのSiO/Al比とゼオライトのそれを混同すべきではない。平衡触媒にx線分析を受けさせた時に測定されるUCSはそれに含まれている結晶性ゼオライトのUCSのみである。
【0024】
また、ゼオライトがFCC再生装置の環境にさらされることで平衡状態に到達した時にもアルミニウム原子がその結晶構造から取り除かれることでそれの単位格子サイズ値が低下する。従って、FCCインベントリーの中にゼオライトを用いると、それの骨組みのSi/Al原子比が約3:1から約30:1にまで高くなる。相当して、アルミニウム原子が格子構造から取り除かれることによって引き起こされる収縮によって単位格子サイズが小さくなる。好適な平衡Yゼオライトの単位格子サイズは少なくとも24.22Å、好適には24.28から24.50Å、より好適には24.28から24.38Åである。
【0025】
イットリウムおよび元素(Zn、MgおよびMn)
イットリウムを本組成物に本組成物の約0.1から約12重量%の範囲の量で存在させてもよい。亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した元素を本組成物に本組成物の約0.1から約14重量%の範囲の量で存在させてもよい。
【0026】
イットリウムおよび上述した元素を特定の態様で用いる具体的量は数多くの要因に依存し、そのような要因には、これらに限定するものでないが、存在させるゼオライトの量、選択したゼオライトが示すイオン交換能力、および上述した元素に関して、どの元素を選択するかが含まれる。例えば、亜鉛を上述した元素として選択する場合には、亜鉛の量を一般に0.1から約14重量%の範囲内にする一方、マグネシウムの量を一般に約0.1から約5%の範囲内にし、そしてマンガンの量を約0.1から約12%にする。その選択したゼオライトが示す特定のイオン交換能力が決まっているならば、特定量のイットリウムを選択する場合、上述した元素の最大量はイットリウムで選択した特定量に依存する。特定量の上述した元素を選択する場合、その逆が当てはまる。イットリウムと亜鉛を含める態様では、典型的に、本触媒のイットリウム含有量を約0.5から約5重量%にしかつ亜鉛の含有量を約1.5から約5重量%にする。
【0027】
別法として、上述した元素およびイットリウムの量を酸化物として測定することも可能であり、その場合には、それを触媒表面積1平方メートル当たりのグラムとして測定した量で表す。例えば、上述した元素およびイットリウムの各々を触媒総表面積1m当たり少なくとも約1x10−5グラムの量で存在させてもよい。より典型的には、亜鉛を少なくとも約1.6x10−4グラム/mの量、マグネシウムを少なくとも約5x10−5グラム/mの量、マンガンを少なくとも約1.3x10−4グラム/mの量およびイットリウムを少なくとも約7x10−4グラム/mの量で存在させてもよい。その重量および表面積の測定をそれぞれICPおよびBET表面積方法で実施する。
【0028】
前記イットリウムおよび上述した元素1種または2種以上を一般にゼオライト上で交換させたカチオンとして存在させるが、用いる方法に応じて、そのイットリウムおよび元素の一部は触媒マトリクスの孔の中に存在する可能性がある。そのような場合、前記イットリウムおよび/または元素は一般に当該マトリクスと一緒に固溶体の一部であり、そしてそのような形態で本組成物に存在するイットリウムおよび/または元素は約25%以下であり得る。しかしながら、FCC工程用として考案した触媒を生じさせる時には、そのような形態のイットリウムおよび/または元素がFCC工程で与える副次的悪影響が最小限になるように、それの量を最小限にするのが一般に望ましい。
【0029】
任意成分
本触媒にまた追加的成分を含有させることも可能であり、そのような成分には、これらに限定するものでないが、マトリクスおよび/または結合剤が含まれる。適切なマトリクス材料には、これらに限定するものでないが、活性マトリクス、例えばアルミナ、シリカ、多孔質アルミナ−シリカおよびカオリン粘土などが含まれる。本発明のいくつかの態様ではアルミナが好適であり、それが本触媒の活性マトリクス成分の全部または一部を構成するようにしてもよい。「活性」は、当該材料が典型的なFCC工程で炭化水素に変換および/または分解を受けさせる点で活性を有することを意味する。
【0030】
適切な結合剤には、当該マトリクスとゼオライトを結合させて粒子にする能力を有する材料が含まれる。適切な具体的結合剤には、これらに限定するものでないが、アルミナゾル、シリカゾル、アルミナおよびシリカアルミナが含まれる。
【0031】
本発明の調製
本発明の調製方法には、必ずしも限定するものでないが、下記の一般的方法が含まれる。
(1)選択したゼオライトに最初にイットリウムならびに亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した元素によるイオン交換を受けさせた後、そのイオン交換を受けさせたゼオライトをこの上に記述した任意成分の中に取り込ませそしてそれから触媒を生じさせる方法。
(2)ゼオライトとイットリウムと上述した元素をゼオライトおよび任意成分と同時に一緒にした後、所望の触媒を生じさせる方法。
(3)ゼオライト含有触媒を通常様式で製造、例えばゼオライトとこの上に記述した任意成分を含有して成るゼオライト触媒を生じさせた後、その生じさせた触媒粒子にイオン交換を受けさせることでイットリウムならびに上述した亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した元素を含有させる方法。
(4)触媒粒子にイットリウムおよび上述した元素を含浸、例えば初期の湿り(incipient wetness)開始などで含浸させることを除いて(3)に記述したようにして通常の触媒を調製する方法。
(5)前記の2つ以上の組み合わせ、例えば最初にゼオライトにイットリウムを用いたイオン交換を受けさせることでゼオライトを製造した後、そのイオン交換を受けさせたゼオライトを任意の成分と一緒にする時に、また、上述した亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した元素の塩も含める方法。
【0032】
FCC用触媒を製造する時、上述した方法のいずれかを用いて触媒を生じさせようとする時に使用可能な1つの方法は噴霧乾燥方法である。例えば、(1)の交換を受けさせたゼオライトと任意の成分を水中で一緒にした後、その結果として生じたスラリーに噴霧乾燥を受けさせることで平均粒径が約20から約100ミクロンの範囲内の粒子を生じさせてもよく、そしてその結果として得た触媒粒子に処理を通常条件下で受けさせる。
【0033】
前記方法のいずれかで用いるイットリウム源の形態は、一般に、イットリウム塩であり、それには、これらに限定するものでないが、イットリウムのハロゲン化物、例えば塩化物、フッ化物、臭化物およびヨウ化物などが含まれる。また、イットリウムの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩および酢酸塩も適切な源である。そのようなイットリウム源は一般に水が基になっており、そしてイットリウムを約1から約30%の濃度で存在させてもよい。通常は、交換をゼオライト上に存在する交換部位の少なくとも15%から約75%がイットリウムカチオンによる交換を受けるように実施するのが好適である。
【0034】
また、亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した元素の源も一般に塩であり、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩などが適切である。そのような元素の源も一般にまた水が基になっており、前記元素を約1%から約40%の濃度で存在させてもよい。
【0035】
任意成分の1つが希土類の場合、そのような希土類の源もまた一般に塩であり、それの対アニオンは、イットリウムおよび上述した元素に関して上述したアニオンの中の1つである。希土類をイットリウムおよび/または前記元素の取り込みに関して上述した方法のいずれかを用いて本組成物の中に取り込ませてもよい。希土類を含める典型的な態様では、希土類を当該ゼオライトに前以て交換を受けさせておいたカチオンとして導入した後、そのゼオライトを本発明でマトリクスおよび他の成分と一緒にする。そのような修飾を受けさせた触媒製造方法を用いる場合の出発ゼオライトはREY、REUSYおよびCREYの如きゼオライトであってもよい。
【0036】
マトリクスおよび結合剤を含める場合には、そのような材料を分散体、固体および/または溶液として前記混合物に添加する。適切な粘土マトリクスにはカオリンが含まれる。適切な結合剤用材料には、無機酸化物、例えばアルミナ、シリカ、シリカアルミナ、燐酸アルミニウムばかりでなく本技術分野で公知の他の金属が基になった燐酸塩などが含まれ
る。適切な分散性ゾルには、本技術分野で公知のアルミナゾルおよびシリカゾルが含まれる。適切なアルミナゾルは、アルミナに解膠を強酸を用いて受けさせることで生じさせたアルミナゾルであり、そして特に適したシリカゾルには、W.R.Grace & Co.−Conn.から入手可能なLudox(商標)コロイド状シリカが含まれる。特定の結合剤、例えば結合剤前駆体、例えばアルミニウムクロロヒドロール(chlorohydrol)を用いて生じさせる結合剤などは、前記結合剤前駆体の溶液を混合装置の中に導入した後、噴霧乾燥および/またはさらなる処理、例えば焼成などで結合剤を生じさせることで生じさせた結合剤である。
【0037】
上述した方法の(4)に関して、本発明を生じさせる1つの方法は、ゼオライトYと希土類と粘土とアルミナゾルのスラリーに噴霧乾燥を受けさせた後、その結果として得た粒子に洗浄および焼成を受けさせることを包含する。次に、その焼成を受けさせた粒子をイットリウムおよび上述した元素が入っている「後含浸」用溶液と接触させる。別法として、噴霧乾燥で得た粒子に前記成分の各々を逐次的に含浸、例えば触媒粒子に最初にイットリウムを含浸させた後にそのイットリウムを含浸させた触媒を亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した少なくとも1種の元素が入っている浴と接触させることなどで本触媒を生じさせる。その後含浸用溶液の濃度は、用いる初期の湿り工程に依存するが、一般に、イットリウムおよび上述した元素の濃度の方が一般に当該ゼオライトに直接的交換を受けさせる時に用いる溶液の濃度より高くなるようにする。別法として、上述した(3)に従い、通常のイオン交換条件を用いて、ゼオライトにイットリウムおよび前記元素による後交換を受けさせる。実際、ゼオライトYをインシトゥで生じさせる時には、ゼオライトYを含めずかつ粘土が任意選択ではない以外は上述した方法を用いる。次に、その粘土微少球に処理を高められた温度の苛性中で受けさせることでゼオライトを生じさせた後、それに含浸および/またはイオン交換を受けさせる。
【0038】
本触媒を一般に接触分解工程[これは典型的に流動式接触分解(FCC)方法である]で循環している触媒インベントリーの触媒成分として用いる。便利さの目的でFCC工程を言及することで本発明を説明するが、本触媒を移動床型(TCC)の分解工程で用いることも可能であり、この場合には、粒径を当該工程の要求に適するように適切に調整する。本触媒を触媒インベントリーに添加しかつ以下に考察するように生成物回収セクションをいくらか変える可能性がある以外、FCC工程の稼働様式は実質的に変わらないであろう。
【0039】
簡単に述べると、本発明は、有機硫黄化合物を含有する重質炭化水素供給材料を循環式触媒再循環分解工程で大きさが約20から約100ミクロンの範囲の粒子で構成されている循環している流動性接触分解用触媒インベントリーと接触させて前記供給材料に分解を受けさせることでより軽質の生成物を生じさせる流動式接触分解方法で用いるに適する。この循環式方法における重要な段階は下記である:(i)供給材料を接触分解ゾーン、通常は接触分解条件下で稼働しているライザー(riser)分解ゾーン内で熱い再生分解用触媒源と接触させて前記供給材料に接触分解を受けさせることで分解生成物とコークスとストリッピング可能炭化水素を含有する使用済み触媒を含む流出物を生じさせ、(ii)前記流出物を取り出した後、それに分離を通常は1個以上のサイクロン内で受けさせることで、分解生成物が豊富な気相と、使用済み触媒を含有する固体が豊富な相を生じさせ、(iii)前記気相を生成物として取り出した後、その気相に分別をFCCの主カラムおよびそれに関連したサイドカラム内で受けさせることで液状の分解生成物(ガソリンを包含)を生じさせ、(iv)前記使用済み触媒にストリッピングを通常は蒸気を用いて受けさせることで前記触媒に吸蔵されている炭化水素をそれから除去した後、前記ストリッピングを受けさせた触媒に酸化による再生を受けさせることで熱い再生触媒を生じさせ、それを次に分解ゾーンに再循環させることで、さらなる量の供給材料に分解を受けさせる。本方法では、そのような接触分解を生成物硫黄減少用触媒として用いる本発明の存在下で実施し、それによって、そのような液状分解生成物のガソリン部分の硫黄含有量を有効により低く、より受け入れられるレベルにする。本発明の触媒はガソリン範囲の硫黄を減少させるばかりでなくまたLCOの硫黄も減少させることを見いだした。LCOの硫黄は、FCC装置の後方で実施する蒸留工程の結果として比較的奇麗な溜分がもたらされる場合には特にあまり大きな問題にはならない。しかしながら、そのような蒸留の結果としてそのような奇麗な溜分がもたらされることは一般的ではない、即ちガソリン溜分には頻繁にまたLCO溜分も入っている。従って、FCC装置で用いる硫黄減少用触媒がLCOの硫黄を減少させる能力を有することは、ある範囲の種に存在する硫黄、特に蒸留塔から出て来るガソリン溜分の中に持ち込まれるLCOの硫黄を減少させる必要がある場合に有利である。
【0040】
分解工程中にコークスおよび水素が過剰に生じる懸念があることから、本触媒の中に取り込ませた形態の亜鉛およびイットリウムが脱水素活性を顕著な度合で示さないのが好適である。
【0041】
本発明の分解用触媒に加えて他の触媒活性成分を循環している触媒材料インベントリーに存在させることも可能であり、そして/またはそれも本発明をFCC装置に添加するならば本発明に含まれ得る。そのような他の材料の例には、ゼオライトZSM−5が基になったオクタン向上用触媒、担持型貴金属、例えば白金などが基になったCO燃焼促進剤、煙道ガス脱硫用添加剤、例えばDESOX(商標)(マグネシウムアルミニウムスピネル)、バナジウムトラップ、釜残分解用添加剤、例えばKrishna、Sadeghbeigi、op citおよびSherzer、「Octane Enhancing Zeolitic FCC Catalysts」、Marcel Dekker、N.Y.、1990、ISBN 0−8247−8399−9、165−178頁に記述されている添加剤など、および他のガソリン硫黄減少用製品、例えば米国特許第6,635,169号などに記述されている製品が含まれる。そのような他の成分を通常の量で用いてもよい。
【0042】
本触媒の効果は、液状の分解生成物、特に軽質および重質ガソリン溜分の硫黄含有量を低下させる効果であるが、また、軽質サイクルオイルの硫黄含有量を低下させることも注目され、それによって、ディーゼルもしくは家庭用の加熱用オイルブレンド成分として用いるにより適するようになる。如何なる特別な理論でも範囲を限定するものでないが、本触媒を用いて取り除いた硫黄は無機形態に変化した後、硫化水素として放出され、それをFCCUの生成物回収セクションで分解工程中に通常放出される硫化水素を回収する様式と同じ様式の通常様式で回収することができると考えている。そのように硫化水素の負荷が高まると追加的酸性ガス/水処理要求が課せられる可能性はあるが、ガソリン硫黄の有意な減少が達成されることから、それが制限になる可能性はない。
【0043】
本触媒を用いるとガソリン硫黄の非常に有意な減少を達成することができ、ある場合には、この上に記述した好適な形態の触媒を用いると、変換率を一定にした時、ミクロ活性(microactivity)試験を基にして、通常の分解用触媒を用いた規範事例に比べて約70%に及ぶ減少を達成することができる。以下の実施例に示すように、本発明に従う添加剤の多くは、30%のガソリン硫黄減少率を容易に達成し得る。そのような硫黄減少度は、分解用供給材料の元々の有機硫黄含有量およびFCC工程の条件に依存し得る。
【0044】
硫黄の減少は製品品質の向上に有効なばかりでなくまた精油所が分解で生じさせるガソリンの終点が重質ガソリン溜分の硫黄含有量で制限される場合に製品の収率を向上させるにも有効であり得、そのように重質ガソリン溜分の硫黄含有量を低下させるに有効な経済的方法が得られたならば、高価な水素化処理に頼る必要なくガソリンの終点を拡張するこ
とが可能になり、その結果として、精油所の経済性にとって好ましい効果がもたらされる。また、次の水素化処理を意図する場合にも、あまり苛酷ではない条件下の水素化処理で除去することができないいろいろなチオフェン誘導体の除去は、これも望ましいことである。
【0045】
ガソリン硫黄減少用添加剤を用いた時の利点はまた下記であるとも認識することができる。例えば、FCCUにおけるガソリンの硫黄を触媒作用で低下させることができれば、精油業者は、硫黄量がより多い原料を処理することが可能になる。そのような酸性(sour)原料は典型的に安価であり、従って、精油業者に好ましい経済的利益を与える。また、FCCUにおけるガソリン硫黄減少は下流のナフサ水素化処理装置の操作にも肯定的な影響を与え得る。必要な硫黄減少の大部分をFCCU内で達成することができれば、ナフサ水素化処理装置の操作をあまり苛酷でない様式で実施することが可能になることで、オレフィンの飽和によるオクタン損失が最小限になりかつ水素の消費も最小限になる。また、オレフィンが飽和されることによるオクタン損失が最小限になりかつ水素消費量が最小限になれば精油業者に好ましい経済的影響を与えることになるであろう。
【0046】
この上で行った記述は説明の目的で与えたものであり、本発明を限定するとして解釈されるべきでない。本発明を好適な態様または好適な方法を言及することで説明してきたが、本明細書で用いた用語は限定する用語ではなくむしろ記述および説明の用語であると理解する。その上、本明細書では本発明を特別な構造、方法および態様を言及することで記述してきたが、本発明を本明細書に開示した詳細に限定することを意図するものでない、と言うのは、本発明は添付請求項の範囲内に入るあらゆる構造物、方法および使用に及ぶからである。関連技術分野の技術者は、本明細書の教示の利点を得た後、本明細書に記述する如き本発明に対していろいろな修飾を行うことができかつ添付請求項で定義する如き本発明の範囲および精神から逸脱しない限り変更を行うことは可能である。
【0047】
本明細書および/または以下に示す実施例の目的で、特に明記しない限り、以下の用語に以下に示す定義を持たせる。
【0048】
「新鮮な」流動式分解用触媒は、FCC装置に添加する前の製造したままの触媒組成物である。
【0049】
「平衡」流動式分解用触媒、「使用済み触媒」または「再生触媒」は、FCC装置の中を循環している触媒組成物のインベントリーがFCCU環境の中で定常状態に一度到達した後のインベントリーである。
【0050】
「模擬平衡」は、FCCUの平衡分解用触媒を模擬するように実験室で蒸気処理を受けさせておいた流動式分解用触媒を指す。そのような模擬平衡状態を達成する1つの実験室手順は、新鮮な触媒を蒸気で処理、例えば1気圧の蒸気を用いて1500度F(816℃)で4時間または1420度F(771℃)で16時間処理する手順である。そのような処理は、FCC装置内の平衡触媒がFCCUの囲いの中で一度定常状態に到達した後にそれが起こす失活と実質的に同じであると考えている触媒の失活を模擬するものである。
【0051】
「CPS」は、蒸気処理による失活効果に加えてREDOX工程を模擬するようにプロピレンと空気を用いる別の失活手順である[American Chemical Society Symposium Series、No.634、171−183頁(1996)を参照]。
【0052】
標準的なY型ゼオライトの商業的製造をケイ酸アルミニウムとアルミン酸ナトリウムの結晶化で実施した。そのゼオライトを脱アルミニウムでUSY型に変化させることができ
るが、それによって、標準的親Yゼオライト構造のケイ素/アルミニウム原子比が高くなる。脱アルミニウムを蒸気による焼成で達成する。
【0053】
本発明で用いる希土類(RE)交換ゼオライトの調製をイオン交換で実施するが、この交換中、当該ゼオライト構造に存在するナトリウムおよびアンモニウムの原子が他のカチオンと通常は希土類金属塩の混合物、例えばセリウム、ランタン、ネオジム、天然に存在する希土類およびこれらの混合物の塩などとして置き換わることでそれぞれREYおよびREUSYグレードがもたらされる。
【0054】
表面積の測定をNBET方法で実施し、そして化学的分析をNIST標準に対して標準化しておいたイオン結合プラズマ分析で実施した。
【0055】
省略形の定義
REは、希土類を指す。
【0056】
SAは、全表面積(m/g)を指す。
【0057】
ZSAは、ゼオライトまたは20オングストローム未満のミクロ間隙(micrporosity)による表面積(m/g)を指す。
【0058】
MSAは、マトリクスまたは20オングストローム以上のメソ間隙(mesoporosity)による表面積(m/g)を指す。
【0059】
APSは、平均粒径(ミクロン)を指す。
【0060】
UCSは、単位格子サイズ(オングストローム)を指す。
【0061】
ppmは、parts per millionを指す。
【0062】
GSRは、ガソリン硫黄減少を指す。
【0063】
LCOは、軽質サイクルオイルを指し、これの沸点は典型的に約220℃から約372℃の範囲内である。
【実施例1】
【0064】
触媒1A:
REが8.2%でNaOが0.15%のRE−USY[4203グラム(無水ベースで1350g)]と亜鉛含有量が29.6%のZnCl溶液(547g)を10分間混合した。次に、この上で生じさせたスラリーにアルミニウムクロロヒドロールを1761g(無水ベースで405g)および粘土を2991g(無水ベースで2542g)加えた後、約10分間混合した。その混合物をDraisミルで粉砕して粒径を小さくした後、Bowen噴霧乾燥器で噴霧乾燥させた。その噴霧乾燥粒子に焼成を1100度F(593℃)で1時間受けさせた。その新鮮な完成触媒の物理的および化学的特性を表1に示す。
【0065】
触媒1B:
REが8.2%でNaOが0.15%のRE−USY[3663グラム(無水ベースで1200g)]と亜鉛含有量が29.6%のZnCl溶液(486g)と希土類含有量が19.6%のRECl溶液(667g)を10分間混合した。次に、この上で生じさせたスラリーにアルミニウムクロロヒドロールを1565g(無水ベースで360g)および粘土を2447g(無水ベースで2080g)加えた後、約10分間混合した。その混合物をDraisミルで粉砕して粒径を小さくした後、Bowen噴霧乾燥器で噴霧乾燥させた。その噴霧乾燥粒子に焼成を1100度F(593℃)で1時間受けさせた。その新鮮な完成触媒の物理的および化学的特性もまた表1に示す。
【0066】
触媒1C(本発明):
REが8.2%でNaOが0.15%のRE−USY[3663グラム(無水ベースで1319g)]と亜鉛含有量が29.6%のZnCl溶液(486g)とイットリウム含有量が15.7%のYCl溶液(600g)を10分間混合した。次に、この上で生じさせたスラリーにアルミニウムクロロヒドロールを1565g(無水ベースで360g)および粘土を2447g(無水ベースで2080g)加えた後、約10分間混合した。その混合物をDraisミルで粉砕して粒径を小さくした後、Bowen噴霧乾燥器で噴霧乾燥させた。その噴霧乾燥粒子に焼成を1100度F(593℃)で1時間受けさせた。その新鮮な完成触媒の物理的および化学的特性を表1に示す。
【0067】
3種類の触媒全部に失活を反応槽内で以下に示すプロトコル1−4を用いてAmerican Chemical Society Symposium Series、No.634、171−183頁(1996)に記述されているようにして受けさせた。加うるに、触媒1Aおよび1Cにはまた修飾CPS失活プロトコル(プロトコル4)(このプロトコルではSOが触媒に対していくらか示す有意な影響を排除する目的でSOを酸化サイクルで用いなかった)を用いた失活も受けさせた。
プロトコル1. 還元で終わるCPS 1450度F(788℃)
プロトコル2. 酸化で終わるCPS 1450度F(788℃)[還元で終わるCPS
1450度F(788℃)後に焼成を1450度F(788℃)の空気中で1時間]
プロトコル3. 100%蒸気を用いて1500度F(816℃)で4時間
プロトコル4. 酸化サイクル中にSOを用いないで還元で終わるCPS 1450度F(788℃)
【0068】
また、この上に示したプロトコル下で失活させた後の表面積および単位格子サイズも表1に示す。触媒1Bが1番目のプロトコルで示した表面積保持は触媒1Aおよび触媒1Cが示したそれよりも劣り(56および57%に対して46%)かつそれがプロトコル3で示した表面積保持は更に悪かった(42および45%に対して26%)ことが分かる。
【0069】
【表1】

【0070】
各失活後にミクロ活性試験(MAT)をASTM D3907に従って実施して、それを平衡ゼオライト含有触媒(E−cat 1D)[単位格子サイズが24.30Å、全表面積が174m/g、ゼオライトの表面積が134m/g、そしてマトリクスの表面積が40m/g]と対比させた。そのE−cat 1Dの組成はNaOが0.27%でREが2.58%でYが0.005%でZnOが0.2%である。前記MAT試験で用いた供給材料の特性を以下の表2の縦列2に示す。表2の縦列1に典型的なFCC供給材料に見られる特定の特性値の範囲を示す。
【0071】
【表2】

【0072】
プロトコル1−3に従って失活させた触媒を用いた場合の変換率が70%(プロトコル3では65%)の時の分解を受けた供給材料の生成物、ガソリン中の硫黄含有量および硫黄減少結果を表3−5および図1−3に示す。
【0073】
失活プロトコル4の変換率が70%の時の分解を受けた供給材料の生成物、ガソリン中の硫黄含有量および硫黄減少結果を表6および図4に示す。
【0074】
この上に報告したガソリン硫黄濃度は、Albro他、「Quantitative Determination of Sulfur Compounds in FCC
Gasolines By AED−A study of the Effect of Catalyst Type and Catalytic Conditions on Sulfur Distribution」、Jouranl of High Resolution Chromatography、16巻、1993年1月に記述されている技術と同様な技術を用いて原子発光検出器G2350Aが備わっているAgilient 6890ガスクロ(硫黄GC−AED)で分析した濃度であった。ガソリンの蒸留カット点の変動に伴う硫黄濃度の実験誤差を軽減する目的で、合成原油中のチオフェンからC4−チオフェンに至る範囲の硫黄種(ベンゾチオフェンおよびこれより高い沸点のS種を除く)を量化して、その合計を「カットガソリン硫黄(cut gasolin sulfur)」と定義した。同様に、チオフェンからC2−チオフェンに至る範囲の硫黄種を「軽質カットガソリン硫黄」と定義し、そしてC3−チオフェンからC4
−チオフェンに至る範囲の硫黄種を「重質カットガソリン硫黄」と定義した。ベンゾチオフェンを硫黄の報告に含める時には、それは「全ガソリン硫黄」を指す。
【0075】
表3および6の硫黄減少セクションに報告する負の値は、図1から4に示す如きデータから補間した値であった。負の値は、理論的に、変換率を70%にした時に硫黄含有量が示す量だけ増えたことを示している。しかしながら、そのデータが実際にいやしくも硫黄が実際増加したことを示していたとしても硫黄が有意に増加したことを示すものでないと考えている。
【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
【表5】

【0079】
【表6】

【0080】
前記結果から下記であると結論付けることができる:
a. 触媒1Aが示すガソリン硫黄減少活性は失活プロトコルの影響を劇的に受けた。
b. 触媒1Bが示したガソリン硫黄減少活性の方が触媒1Aのそれよりも向上していた。しかしながら、プロトコル3における表面積保持率が劣ることから硫黄減少は達成されなかった。
c. 4種類の失活プロトコルの全部に関して前記3種類の触媒の中で触媒1Cが示したガソリン硫黄減少活性が好適である。
【実施例2】
【0081】
5000gのNa−Yゼオライトに硫酸アンモニウムを用いた交換を受けさせることでNaO含有量を低くして〜4%にした。次に、そのNa−Yゼオライトを洗浄し、そのゼオライトを1部およびイットリウムが0.051部入っているYCl溶液を10部用いてpH5で20分かけてスラリーを生じさせた後、濾過しそして30部の脱イオン水で濯ぐことで、それを4.62%のイットリウムと交換させた。その交換を受けさせたゼオライトに乾燥を120℃で一晩受けさせた後、焼成を1150度F(621℃)で2時間受けさせた。その焼成を受けさせたゼオライトに硫酸アンモニウムを用いた交換を再び受
けさせることでNaO含有量を低くして〜0.69%にした。
【0082】
この上でイットリウムによる交換を受けさせたゼオライトを3767グラム(無水ベースで1500g)用いて、これを400gの脱イオン水、2391g(無水ベースで550g)のアルミニウムクロロヒドロールおよび3471g(無水ベースで2950g)の粘土と一緒にして約10分間混合することで、出発基礎触媒を生じさせた。その混合物をDraisミルで粉砕して粒径を小さくした後、Bowen噴霧乾燥器で噴霧乾燥させた。その完成触媒に焼成そして硫酸アンモニウムを用いた交換を受けさせることでNaO含有量を低くした。この出発基礎触媒の物理的および化学的特性を表7に示す。
【0083】
この上に示した出発基礎触媒を用いてそれにZnCl溶液およびYCl溶液を用いた湿り開始含浸を受けさせることで5種類の触媒を生じさせた。
触媒2A:100gの前記出発基礎触媒にZnを1.84%の濃度で含浸させた後、焼成を1100度F(593℃)で1時間実施した。
触媒2B:100gの前記出発基礎触媒にZnを2.90%の濃度で含浸させた後、焼成を1100度F(593℃)で1時間実施した。
触媒2C:100gの前記出発基礎触媒にZnを2.73%の濃度および追加的にイットリウムを0.91%の濃度で含浸させた後、焼成を1100度F(593℃)で1時間実施した。
触媒2D:100gの前記出発基礎触媒にZnを2.77%の濃度および追加的にイットリウムを1.88%の濃度で含浸させた後、焼成を1100度F(593℃)で1時間実施した。
触媒2E:100gの前記出発基礎触媒にZnを2.46%の濃度および追加的にイットリウムを3.9%の濃度で含浸させた後、焼成を1100度F(593℃)で1時間実施した。
【0084】
5種類の触媒全部に失活をCPS1450度F(788℃)に従って受けさせた。失活を受けさせた後の前記5種類の触媒および新鮮な出発基礎触媒が示した物理的および化学的特性を表7に示す。
【0085】
【表7】

【0086】
イットリウム充填率を高くすると単位格子サイズが大きくなると同時に表面積保持率は
62%から68%の範囲であることが分かる。失活させた5種類の触媒全部にMAT試験を受けさせ、それを商業的平衡触媒1Dと対比させた。変換率を70%にした時の分解を受けた供給材料の生成物、ガソリン中の硫黄含有量および硫黄減少結果を表8、図5および図6に示す。
【0087】
イットリウム充填率をほぼ同じにしてZn充填率を低くした場合、触媒2Aが示した硫黄減少活性の方が触媒2Bが示したそれよりも低い(カットガソリン硫黄減少率が41%に対して33%)。Zn充填率がほぼ同じである場合、イットリウムの初期量を〜1.14%から2.1%にまで多くすると(触媒2Cに対して触媒2B)、カットガソリン硫黄減少率が〜41%から54%にまで向上する。イットリウムを更に多くして〜2.1%から3.07%にしてもカットガソリン硫黄減少率は向上せず、かつイットリウム充填率を更に5.12%にまで高くするとガソリン硫黄減少活性が低下すると思われる。
【0088】
【表8】

【0089】
【表9】

【実施例3】
【0090】
実施例2に示した出発基礎触媒と同じ基礎触媒にYCl溶液を用いた湿り開始含浸をイットリウムが1.23%になるように受けさせた後、焼成を1100度F(593℃)で1時間実施した。その完成触媒を触媒3Aと呼ぶ。ZnCl溶液を用いて触媒3Aに湿り開始含浸を受けさせることで追加的3種類の触媒を生じさせた。
触媒3B:110gの触媒3AにZnを2.39%の濃度で含浸させた後、焼成を1100度F(593℃)で1時間実施した。
触媒3C:110gの触媒3AにZnを3.16%の濃度で含浸させた後、焼成を1100度F(593℃)で1時間実施した。
触媒3D:110gの触媒3AにZnを3.97%の濃度で含浸させた後、焼成を1100度F(593℃)で1時間実施した。
【0091】
4種類の触媒全部に失活を100%蒸気を用いて1420度F(771℃)で16時間受けさせた。失活を受けさせた後の前記4種類の触媒の物理的および化学的特性を表9に示す。
【0092】
4種類の触媒全部にMAT試験を受けさせ、それを商業的平衡触媒1Dと対比させた。変換率を75%にした時の分解を受けた供給材料の生成物、ガソリン中の硫黄含有量および硫黄減少結果を表10、図7および図8に示す。亜鉛を含有させていない触媒3Aはガソリン硫黄減少活性をほとんど全く示さなかったことが分かる。Zn充填率を2.39%から3.97%にまで高くするとカットガソリン硫黄減少率が向上する。
【0093】
【表10】

【0094】
【表11】

【0095】
【表12】

【実施例4】
【0096】
4種類の触媒を下記の如く製造した。
【0097】
触媒4A:
REが8.2%でNaOが〜1%のRE−USY[7520グラム(無水ベースで2400g)]と亜鉛含有量が29.6%のZnCl溶液(973g)を10分間混合した。次に、この上で生じさせたスラリーにアルミニウムクロロヒドロールを3130g(無水ベースで720g)および粘土を5318g(無水ベースで4520g)加えた後、約10分間混合した。その混合物をDraisミルで粉砕して粒径を小さくした後、Bowen噴霧乾燥器で噴霧乾燥させた。その噴霧乾燥粒子に焼成を750度F(399℃)で40分間受けさせた後、硫酸アンモニウムによる交換を受けさせることでNaOの量を低くした。その完成触媒の物理的および化学的特性を表11に示す。
【0098】
触媒4B:
REが8.2%でNaOが〜1%の同じRE−USY[5641グラム(無水ベースで1800g)]と亜鉛含有量が29.6%のZnCl溶液(730g)と希土類含有量が23%のRECl溶液(389g)を10分間混合した。次に、この上で生じさせたスラリーにアルミニウムクロロヒドロールを2348g(無水ベースで540g)および粘土を3865g(無水ベースで3285g)加えた後、約10分間混合した。その混合物をDraisミルで粉砕して粒径を小さくした後、Bowen噴霧乾燥器で噴霧乾燥させた。その噴霧乾燥粒子に焼成を750度F(399℃)で40分間受けさせた後、硫酸アンモニウムによる交換を受けさせることでNaOの量を低くした。その完成触媒の物理的および化学的特性を表11に示す。
【0099】
触媒4C(本発明):
REが8.2%でNaOが〜1%の同じRE−USY[4700グラム(無水ベースで1500g)]と亜鉛含有量が29.6%のZnCl溶液(608g)とイットリウム含有量が9.44%のYCl溶液(729g)を10分間混合した。次に、この上で生じさせたスラリーにアルミニウムクロロヒドロールを1957g(無水ベースで450g)および粘土を3221g(無水ベースで2738g)加えた後、約10分間混合した。その混合物をDraisミルで粉砕して粒径を小さくした後、Bowen噴霧乾燥器で噴霧乾燥させた。その噴霧乾燥粒子に焼成を750度F(399℃)で40分間受けさせた後、硫酸アンモニウムによる交換を受けさせることでNaOの量を低くした。その完成触媒の物理的および化学的特性を表11に示す。
【0100】
触媒4D(本発明):
実施例3に記述したイットリウム−USY[1806グラム(無水ベースで1560g)]と脱イオンHO(2660g)と亜鉛含有量が29.6%のZnCl溶液(632g)とイットリウム含有量が9.44%のYCl溶液(758g)を10分間混合した。次に、この上で生じさせたスラリーにアルミニウムクロロヒドロールを2035g(無水ベースで468g)および粘土を3349g(無水ベースで2847g)加えた後、約10分間混合した。その混合物をDraisミルで粉砕して粒径を小さくした後、Bowen噴霧乾燥器で噴霧乾燥させた。その噴霧乾燥粒子に焼成を750度F(399℃)で40分間受けさせた後、硫酸アンモニウムによる交換を受けさせることでNaOの量を低くした。その完成触媒の物理的および化学的特性を表11に示す。
【0101】
4種類の触媒全部に蒸気による失活を100%蒸気を用いて1420度F(771℃)で16時間受けさせた。失活を受けさせた後の前記4種類の触媒の表面積および単位格子サイズを表11に示す。
【0102】
【表13】

【0103】
亜鉛とイットリウムを含有させた触媒が示した表面保持率の方が一般に亜鉛と希土類を含有させた触媒が示したそれよりも良好であることが分かる。失活を受けさせた後の4種類の触媒全部にMAT試験を受けさせ、それを商業的平衡触媒1Dと対比させた。変換率を75%にした時の分解を受けた供給材料の生成物、ガソリン中の硫黄含有量および硫黄減少結果を表12、図9および図10に示す。
【0104】
これらの結果は、希土類およびイットリウムを追加的に用いると両方ともZn触媒が示すガソリン硫黄減少活性を向上させたがイットリウムの方が希土類よりもずっと有効であることを明らかに示している。触媒4Aを用いた時のカットガソリン硫黄減少率は〜31%であり、触媒4Bの場合には37%であり、触媒4Cの場合には56%でありそして触媒4Dの場合には71%であった。
【0105】
【表14】

【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】図1に、この上に記述した失活プロトコル1[還元で終わるCPS1450度F(788℃)]を用いた時に本発明(実施例1の触媒1C)が示した炭化水素変換率(重量%)およびカットガソリン硫黄減少性能を平衡基礎触媒(E−cat 1D)および他の触媒(触媒1Aおよび1B)と対比させて示す。
【図2】図2に、この上に記述した失活プロトコル2[酸化で終わるCPS1450度F(788℃)]を用いた時に本発明(実施例1の触媒1C)が示した炭化水素変換率(重量%)およびカットガソリン硫黄減少性能を平衡基礎触媒(E−cat 1D)および他の触媒(触媒1Aおよび1B)と対比させて示す。
【図3】図3に、この上に記述した失活プロトコル3[1500度F(816℃)の100%蒸気で4時間]を用いた時に本発明(実施例1の触媒1C)が示した炭化水素変換率(重量%)およびカットガソリン硫黄減少性能を平衡基礎触媒(E−cat 1D)および他の触媒(触媒1Aおよび1B)と対比させて示す。
【図4】図4に、この上に記述した失活プロトコル1[SOを用いないで還元で終わるCPS1450度F(788℃)]を用いた時に本発明(実施例1の触媒1C)が示した炭化水素変換率(重量%)およびカットガソリン硫黄減少性能を平衡基礎触媒(E−cat 1D)および他の触媒(触媒1A)と対比させて示す。
【図5】図5に、実施例2に詳述した如くカットガソリン硫黄減少に関して亜鉛の濃度およびイットリウムの濃度が本発明に対して示した効果を示す。
【図6】図6に、実施例2に詳述した如くLCO硫黄減少に関して亜鉛の濃度およびイットリウムの濃度が本発明に対して示した効果を示す。
【図7】図7に、実施例3に詳述した如くカットガソリン硫黄減少に対して本発明が示した効果を両方、例えば亜鉛とイットリウムの両方を含有させていない触媒と対比させて示す。
【図8】図8に、実施例3に詳述した如くLCO硫黄減少に対して本発明が示した効果を両方、例えば亜鉛とイットリウムの両方を含有させていない触媒と対比させて示す。
【図9】図9に、本発明(実施例4の触媒4Cおよび4D)が示した炭化水素変換率(重量%)およびカットガソリン硫黄減少性能を平衡基礎触媒(E−cat 1D)および他の触媒(触媒4Aおよび4B)と対比させて示す。
【図10】図10に、本発明(実施例4の触媒4Cおよび4D)が示した炭化水素変換率(重量%)およびLCO硫黄減少性能を平衡基礎触媒(E−cat 1D)および他の触媒(触媒4Aおよび4B)と対比させて示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト、イットリウムならびに亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択される少なくとも1種の元素を含有して成っていて、前記イットリウムおよび前記元素がカチオンとして存在する触媒組成物。
【請求項2】
前記元素を約0.1から約14重量%含有して成る請求項1記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記元素が亜鉛である請求項2記載の触媒。
【請求項4】
前記元素がマグネシウム、マンガンまたはこれらの組み合わせである請求項2記載の触媒。
【請求項5】
イットリウムを約0.1から約12重量%含有して成る請求項1記載の触媒組成物。
【請求項6】
亜鉛を約1.5から約5重量%およびイットリウムを約0.5から約5重量%含有して成る請求項1記載の触媒組成物。
【請求項7】
更に希土類を含有して成る請求項1記載の触媒組成物。
【請求項8】
更に希土類を含有して成る請求項3記載の触媒組成物。
【請求項9】
更にランタナ、セリアまたはこれらの混合物を含有して成る請求項1記載の触媒組成物。
【請求項10】
更にランタナ、セリアまたはこれらの混合物を含有して成る請求項3記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記ゼオライトがゼオライトYである請求項1記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記ゼオライトYが希土類Yゼオライト、超安定性Yゼオライトおよび焼成希土類Yゼオライトから成る群から選択される一員である請求項11記載の触媒組成物。
【請求項13】
流動性粒子を構成している請求項1記載の触媒組成物。
【請求項14】
該組成物の平均粒径が約20から約100ミクロンの範囲内である請求項13記載の触媒組成物。
【請求項15】
更にマトリクスおよび場合により結合剤も含有して成る請求項14記載の触媒組成物。
【請求項16】
粘土およびアルミナを含有して成る請求項14記載の触媒組成物。
【請求項17】
前記亜鉛が前記ゼオライト上で交換されたカチオンとして存在する請求項3記載の触媒組成物。
【請求項18】
前記イットリウムが前記ゼオライト上で交換されたカチオンとして存在する請求項5記載の触媒組成物。
【請求項19】
前記亜鉛およびイットリウムが前記ゼオライト上で交換されたカチオンとして存在する請求項6記載の触媒組成物。
【請求項20】
流動性粒子を構成している請求項19記載の触媒組成物。
【請求項21】
前記流動性粒子の平均粒径が約20から約100ミクロンの範囲内である請求項20記載の触媒組成物。
【請求項22】
更にマトリクスおよび場合により結合剤を含有して成る請求項21記載の触媒組成物。
【請求項23】
粘土およびアルミナを含有して成る請求項22記載の触媒組成物。
【請求項24】
接触分解を受けた石油溜分の硫黄含有量を低下させる方法であって、有機硫黄化合物を含有する石油供給材料溜分に接触分解をゼオライト、イットリウムならびに亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した少なくとも1種の元素を含有して成っていて、前記イットリウムおよび前記元素がカチオンとして存在する分解用触媒を存在させて高められた温度で受けさせることを含んで成る方法。
【請求項25】
前記触媒が前記元素を約0.1から約14重量%含有して成る請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記触媒がイットリウムを約0.1から約12重量%含有して成る請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記触媒が亜鉛を約1.5から約5重量%およびイットリウムを約0.5から約5重量%含有して成る請求項24記載の方法。
【請求項28】
前記触媒が更に希土類を含有して成る請求項24記載の方法。
【請求項29】
前記触媒が更に希土類を含有して成る請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記触媒が更にランタナ、セリアまたはこれらの混合物を含有して成る請求項24記載の方法。
【請求項31】
前記触媒がゼオライトYを含有して成る請求項24記載の方法。
【請求項32】
前記触媒が希土類Yゼオライト、超安定性Yゼオライトおよび焼成希土類Yゼオライトから成る群から選択した一員であるゼオライトYを含有して成る請求項27記載の方法。
【請求項33】
(i)接触分解条件下で稼働している接触分解ゾーン内で供給材料を再生分解用触媒源と接触させて前記供給材料に接触分解を受けさせることで分解生成物ならびにコークスおよびストリッピング可能炭化水素を含む使用済み触媒を含有する分解ゾーン流出物を生じさせ、(ii)前記流出混合物を取り出した後、分解生成物が豊富な気相と使用済み触媒を含有する固体が豊富な相に分離させ、(iii)前記気相を生成物として取り出した後、その気相に分別を受けさせることでガソリンを包含する液状の分解生成物を生じさせ、(iv)前記固体が豊富な使用済み触媒相にストリッピングを受けさせることで前記触媒に吸蔵されている炭化水素をそれから除去し、(v)ストリッピングを受けさせた触媒をストリッパーから触媒再生装置に移送し、(vi)ストリッピングを受けさせた触媒を酸素含有気体と接触させてそれに再生を受けさせることで再生触媒を生じさせ、そして(vii)前記再生触媒を分解ゾーンに再循環させてさらなる量の炭化水素供給材料と接触させることを含んで成る循環式触媒再循環分解方法であって、有機硫黄化合物を含有する炭化水素供給材料を大きさが約20から約100ミクロンの範囲の粒子からなる循環している流動性接触分解用触媒インベントリーと接触させてそれに接触分解を受けさせることで、より軽質な生成物を生じさせる流動式接触分解方法における、前記供給材料溜分に接触分解を、ゼオライト、イットリウムならびに亜鉛、マグネシウムおよびマンガンから成る群から選択した少なくとも1種の元素を含有して成っていて前記イットリウムおよび前記元素がカチオンとして存在する生成物硫黄減少用触媒を存在させて高められた温度で受けさせることで前記液状分解生成物のガソリン部分の硫黄含有量を低下させることを含んで成る改良。
【請求項34】
前記生成物硫黄減少用触媒が亜鉛を約0.1から約14重量%含有して成る請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記生成物硫黄減少用触媒がイットリウムを約0.1から約12重量%含有して成る請求項33記載の方法。
【請求項36】
前記生成物硫黄減少用触媒が亜鉛を約1.5から約5重量%およびイットリウムを約0.5から約5重量%含有して成る請求項33記載の方法。
【請求項37】
前記生成物硫黄減少用触媒が更に希土類を含有して成る請求項33記載の方法。
【請求項38】
前記生成物硫黄減少用触媒が更に希土類を含有して成る請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記生成物硫黄減少用触媒が更にランタナ、セリアまたはこれらの混合物を含有して成る請求項33記載の方法。
【請求項40】
前記生成物硫黄減少用触媒がゼオライトYを含有して成る請求項33記載の方法。
【請求項41】
前記生成物硫黄減少用触媒が希土類Yゼオライト、超安定性Yゼオライトおよび焼成希土類Yゼオライトから成る群から選択した一員であるゼオライトYを含有して成る請求項36記載の方法。
【請求項42】
前記生成物硫黄減少用触媒が更にマトリクスおよび場合により結合剤を含有して成る請求項33記載の方法。
【請求項43】
前記生成物硫黄減少用触媒が粘土およびアルミナを含有して成る請求項39記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2008−531263(P2008−531263A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−557219(P2007−557219)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/006795
【国際公開番号】WO2006/091926
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(399016927)ダブリュー・アール・グレイス・アンド・カンパニー−コネチカット (63)
【Fターム(参考)】