説明

流動性内容物収納容器

【課題】成形が容易なガゼットタイプの構造で、スパウトの位置を工夫することにより、ガゼット部の折り込み量を可及的に大きくし、しかもスムースに減容化し得るパウチを備えた流動性内容物収納容器を提供する。
【解決手段】パウチ本体10は、平板状のフィルムFを折り曲げて、前後一対の平面部11,11と、一対の平面部11,11の両側縁間に折り込まれた一対のガゼット部12,12とを成形し、フィルムFの折り曲げ方向両端部をサイドシール部13にて封止して筒状体14とし、筒状体14の両端部をガゼット部12が折り込まれた状態のまま一対の端部シール部15にて封止したガセット袋であり、サイドシール部13を平面部11とガゼット部12の一つの角部位置に設け、サイドシール部13にスパウトを熱溶着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、燃料電池に用いられる液体燃料の収納容器のような流動性内容物を収納する収納容器に関し、特にガゼットタイプのパウチを利用した容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の流動性内容物の収納容器としては、たとえば特許文献1に記載のような燃料電池用の燃料収納容器が知られている。
この特許文献1には、容器本体と、容器本体内に設置された流動性内容物としての燃料を収容する可撓性袋で構成された内容器とを備えた構成で、可撓性袋内に燃料が密閉状態で収納され、燃料が可撓性袋から注出された分だけエアレスで可撓性袋が減容化するようになっている。
しかし、特許文献1には、単に可撓性袋を用いることを開示するのみで、袋の具体的な構成は何ら開示されていない。
【0003】
そこで、特許文献2に記載のように、減容化可能な可撓性袋として、表裏フィルム部の側縁に二つ折りの側面部を設けた内容積の大きいガゼットタイプのパウチを利用することが考えられる。
しかし、従来のガゼットタイプのパウチでは、スパウトをパウチ上端の端部シール部に熱溶着する構成なので、スパウトの取り付け箇所の制約で、側面部の幅をあまり大きくできないため、容積効率を向上させることができないという問題が生じる。
【0004】
一方、特許文献3には、飲料水等を充填するバッグインボックスに用いられる減容化可能の袋体が開示されている。
しかし、この袋体は、注口部が平面部に設けられているので、注口部による容量の制約はなくなるものの、平面部に注口部を設ける構成なので燃料の抜けが悪く残量が多くなるという問題がある。また、平面構成のフィルムに折り込み部材を張り付ける構成となっており、部品点数も多く製造方法も複雑でコスト高となる。
【特許文献1】特開2005−30803号
【特許文献2】実開昭63−34070号
【特許文献3】特許第3292527号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、成形が容易なガゼットタイプの構造で、スパウトの位置を工夫することにより、ガゼット部の折り込み量を可及的に大きくし、しかもスムースに減容化し得るパウチを備えた流動性内容物収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、流動性内容物を収納する可撓性のパウチ本体と、該パウチ本体に取り付けられ流動性内容物の注口部となるスパウトとを備え、
パウチ本体は、平板状のフィルムを折り曲げて、前後一対の平面部と、該一対の平面部の両側縁間に折り込まれた一対のガゼット部とを成形し、フィルムの折り曲げ方向両端部をサイドシール部にて封止して筒状体とし、該筒状体両端部をガゼット部が折り込まれた状態のまま一対の端部シール部にて封止したガセット袋であり、
前記サイドシール部を平面部とガゼット部の一つの角部位置に設け、該サイドシール部にスパウトを熱溶着し、
流動性内容物を充填した際には、充填時の圧力によってガゼット部が開いて直方体形状となり、流動性内容物をスパウトから注出するにつれて、少なくともガゼット部が内側に屈曲して減容化する構成となっていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、パウチ本体は、ロール状フィルムから繰り出されるフィルムの流れ方向を横切って所定間隔をあけて上下の端部シール部を形成すると共に、フィルムの流れ方向に沿ってサイドシール部が形成されることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、パウチ本体が直方体形状に開いた際に両端部シール部側の端面部がほぼ平面となるように、スパウトを上にした状態で、フィルムの平面部には、直方体の前後の側面部と左右の端面部との角部となる位置に山折りの折り癖となる山折り線が設けられ、ガゼット部には直方体の左右の端面部と上面部および底面部との角部となる位置に山折りの折り癖となる山折り線が設けられ、さらにガゼット部には山折り線の両端からガゼット部の中心線と端部シール部との交点を結ぶ斜線に沿って谷折りの折り癖となる谷折り線が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る発明は、直方体を形成する山折り部には縦リブが設けられていることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、端部シール部の両側縁には谷折りの折り癖となる谷折り線が設けられ、減容化する際には、ガゼット部と共に端面についても端部シール部に沿って内側に折り込まれる構成となっていることを特徴とする。
【0009】
請求項6に係る発明は、ガゼット部には、直方体形状の左右の端面部と上面部および下面部との間の山折り線を底辺とし上面部側および下面部側に延びて頂点がガゼット部の中心線上に位置する三角形状の谷折り線が形成され、折り畳み時に、山折り線と谷折り線で囲まれる三角領域が端面部の谷折り折曲部に折り重なる構成となっていることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、ガゼット部に設けた山折り線の中央部は両端部よりも三角領域側に所定寸法だけ突出するようにずれていることを特徴とする。
【0010】
請求項8に係る発明は、スパウトには、パウチ本体内に延びる板状部が設けられていることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、板状部には凹凸が設けられていることを特徴とする。
請求項10に係る発明は、流動性内容物はメタノールであり、かつ、パウチ本体を構成するフィルムは、少なくとも1層のアルコールバリア性を有するプラスチックフィルムと、ヒートシール性のある内層樹脂層よりなることを特徴とする。
また、パウチ本体を構成するフィルムは、アルコールバリア性を有しヒートシール可能な単一樹脂層とすることもできる。
請求項11に係る発明は、パウチ本体が剛性のあるケースに収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、パウチ本体を一枚のフィルムから成形されるガセット袋によって構成したので、成形が容易であり、しかもサイドシール部を平面部とガゼット部の一つの角部位置に設け、このサイドシール部にスパウトを熱溶着したので、ガゼット部の折り込み量を可及的に大きくでき、容量を大きくできる。また、サイドシール部を平面部とガゼット部の角部位置に設けているので、減容化する際に剛性の大きいシール部が障害とならず、スムースに減容化する。
請求項2に係る発明によれば、フィルムの流れ方向に沿ってサイドシール部が形成される構成となっているので、パウチ本体の製造が容易にできるし、スパウトの取り付けも容易にできる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、直方体形状となるように、平面部およびガゼット部の直方体の角となる部位に山折りの折り癖となる山折り線が設けられているので、流動性内容物充填時にスムースに直方体形状に広がる。
請求項4に係る発明によれば、直方体を形成する山折り部には縦リブを設けることにより、直方体形状の保形性がよくなる。
請求項5に係る発明によれば、端部シール部の両側縁には谷折りの折り癖となる谷折り線が設けられ、減容化する際には、ガゼット部と共に端面についても端部シール部に沿って内側に折り込まれる構成となっているので、直方体の前後の側面の大きさに折り畳むことができる。
【0013】
請求項6に係る発明によれば、ガゼット部の山折り線に対して上面部側および下面部側に三角形状の谷折り線を設けたので、折り畳み時に山折り線と谷折り線で囲まれた三角領域が端面部の折曲部に折り重ねられ、スムースに折り畳むことができる。したがって、流動性内容物を吸引する場合に、吸引圧力が低圧でもスムースに吸引することができる。
請求項7に係る発明によれば、ガゼット部に設けた山折り線の中央部を両端よりも三角領域側にずらしているので、山折り線中央部が折り畳みの基点となり、この基点よりパウチが内側に折り畳まれていくので、折り畳み動作が確実となる。
【0014】
請求項8に係る発明によれば、スパウトにパウチ本体内に延びる板状部が設けられているので、流動性内容物吸引時にフィルムが密着してスパウトの口を閉塞することを防止することができる。
請求項9に係る発明によれば、板状部には凹凸を設けているので、板状部との接触部で流動性内容物の流れが遮断されることもない。
請求項10に係る発明によれば、パウチ本体を構成するフィルムは、少なくとも1層のアルコールバリア性を有するプラスチックフィルムと、ヒートシール性のある内層樹脂層より形成され、もしくはアルコールバリア性を有しヒートシール可能な単一樹脂層より形成され、揮発性のメタノールに対して保管中の減量を抑制することができる。
請求項11に係る発明によれば、パウチ本体が剛性のあるケースに収納されているので、パウチ本体に過大な内圧が加わった場合、ケースによって圧力が支持され、パウチ本体に過大な応力が作用することを防止することができる。なお、この場合のパウチの大きさは、パウチ自体に過大な圧力をかけずにケース自体の耐圧性を利用するために、ケースのない容積と同等かもしくは若干大きくすることが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
図4は本発明の実施の形態に係る流動性内容物収納容器として、燃料電池に用いられる燃料収納容器の全体構成を示している。
この燃料収納容器1は、流動性内容物としてメタノール等の液体燃料を収納するもので、燃料を収納するパウチ2と、このパウチ2を収容する剛性のあるケース3と、を備えた構成となっており、ケース3内に収納された状態でパウチ2が減容化される。
このパウチ2は、可撓性のパウチ本体10と、パウチ本体10に取り付けられ燃料の注口部となるスパウト20とを備えた構成となっている。
【0016】
次に、上記パウチについて、図1乃至図3を参照して説明する。
パウチ本体10は、図3(A)に示すような平板状のフィルムFを折り曲げて、図3(B)に示すように、前後一対の平面部11,11と、一対の平面部11,11の両側縁間に折り込まれた一対のガゼット部12,12とを成形し、フィルムFの折り曲げ方向両端部をサイドシール部13にて封止して筒状体14とし、筒状体14両端部をガゼット部12,12が折り込まれた状態のまま一対の端部シール部15,15にて封止したガセット袋によって構成されている。平面部11,11とガゼット部12,12間の境目には、従来と同様に適宜折り線が設けられる。サイドシール部13は、平面部11,11とガゼット部12,12の一つの角部稜線に沿って設けられ、サイドシール部13にスパウト20が熱溶着されるようになっている。
【0017】
パウチ本体10は、不図示のロール状フィルムから繰り出されるフィルムFの流れ方向Yを横切って上下の端部シール部15を形成すると共に、フィルムFの流れ方向に沿ってサイドシール部13が形成される。
フィルムFには、ヒートシール性を有するプラスチック材料が使用される。このようなプラスチック材料としては、例えばヒートシール性を有する熱可塑性樹脂からなる単層のフィルム、シート類や、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を他の熱可塑性樹脂と積層した多層フィルム等が挙げられる。
このようなヒートシール性を有するプラスチック材料としては、例えば公知の低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン系不飽和カルボン酸乃至その無水物でグラフト変性されたオレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂、比較的低融点乃至低軟化点のポリアミド乃至コポリアミド樹脂、ポリエステル乃至コポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂等が使用される。
またヒートシール性を有するプラスチック材料と積層する他のプラスチック材料としては、ヒートシール性を有し又は有さない熱可塑性樹脂からなるフィルムや各種バリアフィルム等を使用することができる。たとえば、燃料として揮発性のメタノールを用いる場合、少なくとも1層のアルコールバリア性を有するプラスチックフィルムと、ヒートシール性のある内層樹脂層を備えた積層フィルムを用いるか、場合によっては、アルコールバリア性を有しヒートシール可能な単一樹脂層のフィルムを用いる。
熱可塑性樹脂としては、例えば結晶性ポリプロピレン、結晶性プロピレン−エチレン共重合体、結晶性ポリブテン−1、結晶性ポリ4−メチルペンテン−1、低−中〜、或いは高密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、EVAケン化物、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)などのポリオレフィン類;ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の芳香族ビニル共重合体;ポリアクリル系樹脂;アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体の如きニトリル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート等のポリエステル類;各種ポリカーボネイト;フッ素系樹脂;ポリオキシメチレン等のポリアセタール類等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は単独で又は二種以上をブレンドして使用することができ、また、各種の添加剤を配合して使用しても良い。
また、各種バリアフィルムとしては、シリカ蒸着ポリエステルフィルム、アルミナ蒸着ポリエステルフィルム、シリカ蒸着ナイロンフィルム、アルミナ蒸着ナイロンフィルム、アルミナ蒸着ポリプロピレンフィルム、炭素膜蒸着ポリエステルフィルム、炭素膜蒸着ナイロンフィルム、さらにアルミナ及びシリカをポリエステルフィルムやナイロンフィルム等のベースフィルムに同時蒸着した二元蒸着フィルム、またナイロン6/メタキシリレンジアミンナイロン6共押出しフィルム、ポリプロピレン/エチレン−ビニルアルコール共重合体共押出しフィルム、またポリアクリル酸系樹脂コートポリエステルフィルム、ポリアクリル酸系樹脂コートナイロンフィルム、ポリアクリル酸系樹脂コートポリプロピレンフィルム等の有機樹脂コートフィルム、さらに有機樹脂材料及び無機材料からなるハイブリッドコート剤をポリエステルフィルムやナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のベースフィルムにコーティングしたもの等を挙げることができる。これらのバリアフィルムは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。このうち、アルコールバリア性を有するフィルムとしては、シリカ蒸着ポリエステルフィルムやアルミナ蒸着ポリエステルフィルムが好適に用いられる。
【0018】
燃料を充填した際には、充填時の圧力によってガゼット部12,12が開き、図1及び図2に示すような直方体形状となり、燃料をスパウト20から注出するにつれて、少なくともガゼット部12,12が内側に屈曲して減容化する構成となっている。
直方体に開いた際の形状は、スパウト20を上に向けた状態で、前後一対の側面部A,Aと、左右一対の端面部B,Bと、上面部Cと、底面部Dの6面体で、側面部A,A及び端面部B、Bは、パウチ本体10を構成する平面部11,11を折曲することによって構成され、上面部Cと底面部Dはガゼット部12,12によって構成される。
端部シール部15は端面部B,Bの中央に上下方向に延び、サイドシール部13は、一方の側面部Aの上縁に沿って左右両端まで延び、さらに端面部B,Bの上縁に回りこんで端面部B,Bの上縁中央部に位置する端部シール部15まで延びている。
【0019】
端部シール部15,15が位置する端面部B,Bがほぼ平面となるように、図3に示すように、フィルムFの平面部11,11には直方体の前後の側面部A,Aと端面部B,Bとの角部となる位置に山折りの折り癖となる山折り線M1が設けられ、ガゼット部12,12には、直方体の上面部Cおよび下面部Dと、左右の端面部B,Bとの角部となる位置に山折りの折り癖となる山折り線M2,M2が設けられ、さらにガゼット部12,12の山折り線M2,M2の両端からガゼット部12の中心線Nの端部シール部15,15との交点を結ぶ斜線に沿って谷折りの折り癖となる谷折り線V2,V2が設けられている。
山折り部M1には縦リブを設けておいてもよい。縦リブを設けることにより、直方体形状を保持することができる。
【0020】
減容化する際には、ガゼット部12,12と共に端面部Bについても端部シール部15,15に沿って内側に折り込まれる構成で、端部シール部15,15の両側縁には谷折りの折り癖となる谷折り線V3が設けられている。
一方、ガゼット部12,12には、直方体形状の左右の端面部B,Bとの角部に、山折り線M2を底辺とし上面部C側および下面部D側に延びて頂点がガゼット部12の中心線N上に位置する三角形状の谷折り線Vが形成され、図5(B)に示すように、折り畳み時に、山折り線M2と谷折り線Vで囲まれる三角領域Uが端面部Bの谷折り屈曲部B1に折り重なる構成となっている。
また、ガゼット部12の中心線N上の、左右両側の谷折り線Vの頂点Va間は谷折り線V4、三角領域Uの山折り部M2の中央部maと頂点Vaは山折り線M3、山折り部M2の中央部maから端部シール部12間は谷折り線V5となっている。
【0021】
一方、三角領域Uの底辺を構成する山折り線M2の中央部maが、図3(A)に示すように、両端部よりも角部隣接領域U側に所定寸法Sだけずれている。
この山折り線M2の中央部maのずれSが無い場合には、三角領域Uの折り返し部FUが図5(D)に示すように、端面部Bに密着して余裕が無く折り畳みにくくなるが、山折り線M2の中央部maのずれSを設けることにより、図5(C)に示すように、三角領域Uの折り返し部FUと端面部Bの谷折り部B1の稜線間に所定角度の隙間ができスムースに折り畳むことができる。
この山折り線M2のずれSを設けた分だけ、折り畳んだ際の角部の角度が変化するので、谷折り線Vの頂点Vaの位置は、基準となる直角二等辺三角形の頂点に対して一定寸法だけ山折り線M2と反対側にずらしておくことが好ましい。
【0022】
スパウト20は、断面形状が舟形あるいは紡錘形状の紡錘形状の舟形状の溶着部21と、この溶着部21の上端に設けられるフランジ部22と、フランジ部22から突出する円筒状の口部23と、溶着部21の下端から下方に延びる板状部24とを備えている。
この板状部24によってフィルム密着して注出口を閉塞することを防止している。また、板状部24には凹凸25が設けられ、燃料の流路を確保している。
【0023】
ケース3は、パウチ本体10の直方体形状に倣って、上部が開口する箱形状となっている。パウチ本体10に過大な内圧が加わった場合、ケース3によって圧力が支持され、パウチ本体10に過大な応力が作用することを防止することができる。
【0024】
次に、この実施の形態の燃料電池用燃料収納容器の作用について説明する。
すなわち、パウチ本体10にはスパウト20を通じてアルコール等の燃料が充填され、ケース3内で直方体形状に膨らんだ形態で保持されている。
内部の燃料がパウチ本体10から吸い出されると、吸い出された分だけパウチ本体10が収縮して減容化される。この減容化する際には、ガゼット部12によって構成される上面部Cおよび底面部Dの中央部が窪むと同時に、端面部B,Bが端部シール部15の谷折り線V3に沿って内向きに屈曲する。
【0025】
端面部B,Bと上面部Cおよび底面部Dとの角部の山折り線M2の中央部maが三角領域U側に若干ずれているので、図5(A)に示すように、直方体形状となった時点で既に三角領域U側に食い込んでおり、減容化開始時点では三角領域Uは、内向きに屈曲する上面部C,Dに対して外向きに屈曲する。すなわち、図5(B)に示すように、山折り線M2に沿って屈曲し(図中、FS)、谷折り誘導パターンVが谷折れ形状に折れ曲がり(図中FV)、この谷折れ部FVの形状に倣って上面部Cおよび下面部Dが内折れ形状に折り込まれ、最終的には、前後の側面部A,Aの間で平板状に折り畳まれ、燃料の残量を大幅に低減することができる。
【0026】
なお、上記実施の形態では、図3(A)に示したように、端部シール部15は四角形状のフィルムFの横辺に沿って、所定幅で直線的に設けているが、ガゼット部12の4隅の三角形状の隅角部12aと平面部11が重なる部分は、パウチに成形した際に、図1(A)に示すように三角形状の袋状の耳部分16となる。この耳部分16はパウチとしてはデッドスペースなので、耳部分16全体を溶着してもよいし、耳部分16を除去してもよい。この耳部分16があると、剛性のある端部シール15によって折り畳み開始点となる端面部Bと上面部Cおよび底面部D間の山折り線M2の中央部を押すことになり、スムースに折り畳むことができる利点がある。
また、ケース3は必ずしも不要で、パウチ単独の一般用途の容器として利用することができる。この場合、ケース3による制約が無くなるので、端面部B,Bの少なくとも一方を外折り構成とすることも可能であるし、上面部Cと底面部Dの少なくとも一方を外折り構成とすることも可能である。外折り構成とする場合には、隣接する面は内折り構成となる。もっとも、端面部B,Bを内折り構成としておけば、店頭に陳列した際に、パウチ同士が左右にぶつかり合うことがないし、上面部C,底面部Dについても内折り構成としておけば、上下に安定して積載することも可能で、整然と陳列可能である。
さらに、上記実施の形態では燃料電池用の燃料を収納する場合を例にとって説明したが、本発明の収納容器は燃料収納用に限定されるものではなく、果汁飲料やアルコール飲料等の各種飲料,ゼリーやペースト等の半液体状の内容物等、流動性を有する内容物の収納に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係る燃料収納容器に用いられるパウチを示すもので、同図(A)は概略斜視図、同図(B)は減容化途中の状態の概略斜視図である。
【図2】図2は図1(A)の状態の燃料収納容器のパウチを示すもので、同図(A)は正面図、同図(B)は平面図、同図(C)は側面図である。
【図3】図3(A)は図1のパウチを展開図、同図(B)は同図(A)のフィルムから成形される筒状体の正面図である。
【図4】図4は図1のパウチをケース内に収納した状態を示すもので、同図(A)はケースを断面にして示す正面図、同図(B)は平面図、同図(C)はケースを断面にして示す右側面図である。
【図5】図5は図1のパウチの上面部と端面部の角部の折り畳み状態を説明するもので、同図(A)は折り畳み開始時点の部分斜視図、同図(B)は折り畳み進行状態の部分斜視図、同図(C),(D)は山折り線中央部をずらした場合とずらさない場合の折り畳み状態を比較して示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 燃料収納容器 (流動性内容物収納容器)
2 パウチ
3 ケース
10 パウチ本体
11 平面部、12 ガゼット部、13 サイドシール部
14 筒状体、15 端部シール部
20 スパウト
21 溶着部、22 フランジ部、23 口部、24 板状部
25 凹凸
F フィルム
Y フィルムの流れ方向
A 側面部
B 端面部
C 上面部
D 底面部
M1 山折り線(側面部Aと端面部B間の角部)
M2 山折り線(上面部Cと端面部B間の角部,下面部Dと端面部B間の角部)
ma 山折り線中央部
V2,V3 谷折り線
V 谷折り線
U 三角領域
S 山折り線中央部maのずれ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性内容物を収納する可撓性のパウチ本体と、該パウチ本体に取り付けられ流動性内容物の注口部となるスパウトとを備え、
パウチ本体は、平板状のフィルムを折り曲げて、前後一対の平面部と、該一対の平面部の両側縁間に折り込まれた一対のガゼット部とを成形し、フィルムの折り曲げ方向両端部をサイドシール部にて封止して筒状体とし、該筒状体両端部をガゼット部が折り込まれた状態のまま一対の端部シール部にて封止したガセット袋であり、
前記サイドシール部を平面部とガゼット部の一つの角部位置に設け、該サイドシール部にスパウトを熱溶着し、
流動性内容物を充填した際には、充填時の圧力によってガゼット部が開いて直方体形状となり、流動性内容物をスパウトから注出するにつれて、少なくともガゼット部が内側に屈曲して減容化する構成となっていることを特徴とする流動性内容物収納容器。
【請求項2】
パウチ本体は、ロール状フィルムから繰り出されるフィルムの流れ方向を横切って所定間隔をあけて上下の端部シール部を形成すると共に、フィルムの流れ方向に沿ってサイドシール部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の流動性内容物収納容器。
【請求項3】
パウチ本体が直方体形状に開いた際に両端部シール部側の端面部がほぼ平面となるように、スパウトを上にした状態で、フィルムの平面部には、直方体の前後の側面部と左右の端面部との角部となる位置に山折りの折り癖となる山折り線が設けられ、ガゼット部には直方体の左右の端面部と上面部および底面部との角部となる位置に山折りの折り癖となる山折り線が設けられ、さらにガゼット部には山折り線の両端からガゼット部の中心線と端部シール部との交点を結ぶ斜線に沿って谷折りの折り癖となる谷折り線が設けられている請求項1または2に記載の流動性内容物収納容器。
【請求項4】
直方体を形成する山折り部には縦リブが設けられている請求項3に記載の流動性内容物収納容器。
【請求項5】
端部シール部の両側縁には谷折りの折り癖となる谷折り線が設けられ、減容化する際には、ガゼット部と共に端面についても端部シール部に沿って内側に折り込まれる構成となっている請求項1乃至4のいずれかの項に記載の流動性内容物収納容器。
【請求項6】
ガゼット部には、直方体形状の左右の端面部と上面部および下面部との間の山折り線を底辺とし上面部側および下面部側に延びて頂点がガゼット部の中心線上に位置する三角形状の谷折り線が形成され、折り畳み時に、山折り線と谷折り線で囲まれる三角領域が端面部の谷折り折曲部に折り重なる構成となっている請求項5に記載の流動性内容物収納容器。
【請求項7】
ガゼット部に設けた山折り線の中央部は両端部よりも三角領域側に所定寸法だけ突出するようにずれている請求項6に記載の流動性内容物収納容器。
【請求項8】
スパウトには、パウチ本体内に延びる板状部が設けられている請求項1乃至7のいずれかの項に記載の流動性内容物収納容器。
【請求項9】
板状部には凹凸が設けられている請求項8に記載の流動性内容物収納容器。
【請求項10】
流動性内容物はメタノールであり、かつ、パウチ本体を構成するフィルムは、少なくとも1層のアルコールバリア性を有するプラスチックフィルムと、ヒートシール性のある内層樹脂層よりなることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかの項に記載の流動性内容物収納容器。
【請求項11】
パウチ本体が剛性のあるケースに収納されている請求項1乃至10のいずれかの項に記載の流動性内容物収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−56326(P2008−56326A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238046(P2006−238046)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】