流動物散布装置
【課題】流動物の供給遅れを無くして流動物を適切に供給できる流動物散布装置を提供する。
【解決手段】流動物を散布する散布機構46を有する散布装置本体42と、散布装置本体42を往復移動させる移送機構43と、流動物を散布しながら散布装置本体42が移動してストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止するように、散布機構46及び移送機構43を駆動させる制御機構とを備え、ストロークエンドで停止した状態から流動物の散布及び散布装置本体42の移動を開始する際に、流動物の散布を開始したときから所定時間遅らせて散布装置本体42を移動させる遅延手段TSを備える。
【解決手段】流動物を散布する散布機構46を有する散布装置本体42と、散布装置本体42を往復移動させる移送機構43と、流動物を散布しながら散布装置本体42が移動してストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止するように、散布機構46及び移送機構43を駆動させる制御機構とを備え、ストロークエンドで停止した状態から流動物の散布及び散布装置本体42の移動を開始する際に、流動物の散布を開始したときから所定時間遅らせて散布装置本体42を移動させる遅延手段TSを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動物を散布する散布機構を有する散布装置本体と、前記散布装置本体を往復移動させる移送機構と、流動物を散布しながら前記散布装置本体が移動してストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び前記散布装置本体の移動を一時的に停止するように、前記散布機構及び前記移送機構を駆動させる制御機構と、を備えた流動物散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる流動物散布装置として、例えば特許文献1に開示されているように、田植機の苗植付装置に設けられるものがある。散布機構が流動物(薬剤)を散布しながら、移送機構によって散布装置本体を苗載せ台の上方で往復移動させる。散布装置本体がストロークエンドに到達したときには、流動物の散布及び散布装置本体の移動を一時的に停止する。このようにして、苗載せ台に載置されたマット状苗に流動物を散布する。
【0003】
特許文献1の流動物散布装置は、例えば、図17に示すように構成されている。移送機構43が、散布装置本体42を移動させる駆動伝達部(無端チェーン)68と、その駆動伝達部68を駆動する駆動部(電動モータ)Mと、を備えている。散布機構46が、駆動伝達部68により回転駆動されて流動物を散布する繰出部39(ロール駆動スプロケット55及び繰出ロール54)を備え、散布装置本体42に駆動伝達部68に噛合する左右一対のラックギヤ69を設けている。
【0004】
駆動部Mの駆動によって駆動スプロケット66を介して駆動伝達部68を回転駆動し、駆動伝達部68に係合する繰出部39を回転駆動して、流動物を散布する。また、駆動伝達部68を回転駆動して散布装置本体42を移動させる。これにより、散布機構46が流動物を散布しながら、散布装置本体42が移動することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−296344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止した後、再び流動物の散布及び散布装置本体42の移動を開始する一連の動作について、図17に基づいて説明する。
【0007】
図17(a)に示すように、駆動部Mの駆動によって駆動スプロケット66を介して駆動伝達部68を一方側に回転駆動することにより、駆動伝達部68に係合する繰出部39を回転駆動して流動物を繰出口49から散布する。繰出口49から散布された流動物はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する。また、駆動伝達部68を一方側に回転駆動することにより、散布装置本体42が一方側(図17(a)の紙面右方)に移動する。図17(b)に示すように、散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、駆動部Mが停止することにより、駆動伝達部68が停止し、繰出部39および散布装置本体42が停止する。
【0008】
図17(c)に示すように、駆動部Mの駆動によって駆動スプロケット66を介して駆動伝達部68を他方側に回転駆動することにより、駆動伝達部68に係合する繰出部39を回転駆動して流動物を繰出口49から散布する。また、駆動伝達部68を他方側に回転駆動することにより、散布装置本体42が他方側(図17(c)の紙面左方)に移動する。このとき、繰出口49から散布された流動物はノズル50を通過している途中であることがあり、流動物はノズル50の開口50aから落下していないことがある。このような状態になると、図17(d)に示すように、散布装置本体42が他方側に移動を開始してから少し時間が経過した後に、繰出口49から散布された流動物はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下するような状態になることがある。
【0009】
これにより、図17(c)、図17(d)に示すように、散布装置本体が移動すると同時に流動物が落下しないことがある。このため、散布装置本体の始動位置付近に流動物の未散布領域d1が生じることがあるので、この点において改善の余地があった。
【0010】
本発明の目的は、流動物の供給遅れを無くして流動物を適切に供給できる流動物散布装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の流動物散布装置は、流動物を散布する散布機構を有する散布装置本体と、前記散布装置本体を往復移動させる移送機構と、流動物を散布しながら前記散布装置本体が移動してストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び前記散布装置本体の移動を一時的に停止するように、前記散布機構及び前記移送機構を駆動させる制御機構と、を備えたものであって、その第1特徴構成は、前記ストロークエンドで停止した状態から流動物の散布及び散布装置本体の移動を開始する際に、流動物の散布を開始したときから所定時間遅らせて前記散布装置本体を移動させる遅延手段を備えた点にある。
【0012】
本構成によれば、例えば、図16(b)に示すように、散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、駆動部Mが停止することにより、散布機構46および散布装置本体42が停止する。
【0013】
図16(c)に示すように、散布機構46による流動物の散布および散布装置本体42の移動を開始する際に、遅延手段TSによって散布装置本体42の移動を所定時間遅らせる。このため、散布機構46による流動物の散布が開始されても、散布装置本体42は依然として停止している。流動物の散布を開始したときから所定時間経過すると、流動物はマット状苗等の供給対象箇所に到達している(図16(d)を参照)。このとき、散布装置本体42が他方側に移動を開始する。
【0014】
このように、遅延手段によって流動物の散布を開始したときから所定時間遅らせて散布装置本体を移動させるので、散布装置本体を移動させるタイミングと流動物が実際に落下して供給対象箇所に供給されるタイミングとを合わせることができる。その結果、流動物の供給遅れを無くして、散布装置本体の始動位置付近に流動物の未散布領域が生じることを無くす等、流動物を適切に供給できる。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、前記移送機構が、前記散布装置本体を移動させる駆動伝達部と、その駆動伝達部を駆動する駆動部とを備え、
前記散布機構が、前記駆動伝達部により駆動されて流動物を散布する繰出部を備え、
前記遅延手段が、前記散布装置本体と駆動伝達部とに亘って設けられている点にある。
【0016】
本構成によれば、駆動部を駆動すると、駆動伝達部を駆動して散布装置本体を移動させると共に、駆動伝達部により散布機構(繰出部)が駆動されて流動物を散布する。このように、散布装置本体を移動させる構成を繰出部が駆動される構成に兼用して、構成の簡素化を図りながら、散布装置本体と駆動伝達部とに亘って遅延手段を設けることにより、遅延手段の構成のコンパクト化を図ることができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、前記駆動伝達部に設けられた係合部材と、前記散布装置本体に設けられた被係合部材との間に、前記係合部材が所定距離だけ移動すると被係合部材に係合する係合融通をもたせることで、前記遅延手段を構成してある点にある。
【0018】
本構成によれば、駆動伝達部に係合部材を設け、散布装置本体に被係合部材を設け、係合部材と被係合部材との間に係合融通をもたせるだけで、散布装置本体の移動を所定時間遅らせることができるので、遅延手段を簡単に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】乗用型田植機を示す全体側面図である。
【図2】苗植付装置と流動物散布装置とを示す側面図である。
【図3】苗植付装置を示す概略平面図である。
【図4】流動物散布装置を示す後面図である。
【図5】苗載せ台と散布装置本体とを示す側面図である。
【図6】移送機構を示す後面図である。
【図7】散布装置本体の繰り出し機構配設部での縦断側面図である。
【図8】繰出機構を示す縦断正面図である。
【図9】移送機構のモータ配設部での断面図である。
【図10】位置検出手段を示す正面図である。
【図11】縦送り検出手段を示す正面図である。
【図12】縦送り検出手段を示す側面図である。
【図13】遅延手段を示す部分断面図である。
【図14】遅延手段を示す斜視図である。
【図15】制御部を示すブロック図である。
【図16】本発明の流動物散布装置の各状態を示す図である。
【図17】特許文献1の流動物散布装置の各状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る流動物散布装置を乗用型田植機に適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0021】
〔乗用型田植機の全体構成〕
乗用型田植機は、稲苗を圃場に植付ける田植え作業を行うものであって、図1に示すように、自走車Aと、この自走車Aの後部に昇降可能に連結された苗植付装置Bと、を備えている。この苗植付装置Bに備えられた苗載せ台22には、流動物散布装置Cが装備されている。
【0022】
本実施形態では、流動物が消毒用の薬剤である場合を例示した。しかし、この薬剤は消毒用に限られるものではない。また、流動物は薬剤に限られるものではなく、例えば肥料であってもよい。
【0023】
〔自走車の構成〕
図1に示すように、前記自走車Aは、車体フレーム4と、この車体フレーム4の後部に設けられたミッションケース10と、車体フレーム4の前部の両横側の夫々に設けられ、操向操作及び駆動可能な左右一対の前車輪2と、車体フレーム4の後部の両横側の夫々に設けられ、ミッションケース10に駆動可能に支持された左右一対の後車輪3と、車体フレーム4の後部の中央に設けられ、運転座席8を有する運転部15と、車体フレーム4の前部の中央に設けられ、エンジン7を有する原動部14と、を備えている。この原動部14の側脇には、予備のマット状苗Dを載置する予備苗のせ台9が装備されている。
【0024】
前記自走車Aの車体フレーム4の後部と苗植付装置Bとの間には、ミッションケース10から苗植付装置Bに延出され、エンジン7の出力を苗植付装置Bに伝達する回転軸11と、苗植付装置Bを昇降させるリンク機構5とが設けられている。リンク機構5には、油圧シリンダ12が設けられており、油圧シリンダ12の作動によってリンク機構5が車体フレーム4に対して揺動操作され、苗植付装置Bが昇降する。これにより、苗植付装置Bの下部に機体横方向に並んで位置する3つの接地フロート21が圃場面に接地した下降作業位置と、接地フロート21が圃場面から高く上昇した上昇非作業位置とに、苗植付装置Bが位置変更可能に構成されている。
【0025】
〔苗植付装置の構成〕
図1〜図5に示すように、前記苗植付装置Bは、支持フレーム13と、回転軸11からの動力を支持フレーム13に伝達するフィードケース20と、支持フレーム13に設けられ、苗を植付ける苗植付機構23と、苗載せ台22と、を備えている。
【0026】
前記リンク機構5には、支持フレーム13が支持されている。この支持フレーム13は、機体横方向に沿った鋼管材で成るメインフレーム16と、このメインフレーム16に機体横方向に並べて連結された3つの植付駆動ケース25と、を備えている。それら3つの植付駆動ケース25の後端部の左右側には、夫々1つの苗植付機構23が駆動可能に支持されている。各苗植付機構23は、一対の苗植付爪23aを有している。これにより、各苗植付機構23は、フィードケース20から植付駆動ケース25を介して伝達された駆動力によって駆動され、各苗植付爪23aの先端側が苗載せ台22の苗取出口26と圃場面との間を、回動軌跡を描きながら上下に往復移動する。このとき、一対の苗植付爪23aによって交互に苗載せ台22に載置されたマット状苗Dの下端部から一株分のブロック苗を切断して取り出し、取り出したブロック苗を圃場面に下降搬送して植付ける苗植え運動を行う。
【0027】
(苗載せ台)
図1〜図5に示すように、前記苗載せ台22は、機体横方向に並んで設けられ、マット状苗Dを載置可能な6つの苗載置部22aと、各苗載置部22aの下部に一つずつ設けられ、マット状苗Dを下端側に送る苗縦送り部32と、を備えている。
【0028】
前記6つの苗載置部22aは、下端に苗取出口26を有し、上端側から供給されたマット状苗Dを載置可能にしてある。前記苗縦送り部32は、フィードケース20に駆動可能に設けた苗縦送り軸33と、苗載せ台22に沿って設けられ、苗縦送り軸33の駆動によって回転駆動されるベルト駆動軸31と、苗載せ台22に沿い、ベルト駆動軸31に並んで設けられたベルト遊動軸34と、それらベルト駆動軸31及びベルト遊動軸34に巻回され、各載置部22aに1つずつ設けられた苗縦送りベルト30と、を備えている。苗載せ台22が左右の横移送ストロークエンドに到達する都度、苗縦送り軸33によってベルト駆動軸31が設定ストロークだけ回転駆動され、各苗縦送りベルト30が苗取出量に相当する長さだけ縦送りされる。
【0029】
前記各苗植付機構23の苗植え運動に連動させて、苗載せ台22を機体左右方向に往復移動させる苗横送り部27が設けられている。
【0030】
前記苗横送り部27は、フィードケース20に駆動可能に設けられた苗横送り軸35と、その苗横送り軸35と苗載せ台22とを連結する連結部材36と、苗載せ台22の下端に設けられた被案内部材37を機体左右方向に案内する横送りガイドレール28と、を備えている。苗横送り軸35の駆動及び横送りガイドレール28の案内によって苗載せ台22が機体左右方向に往復移動する。このとき、苗載せ台22の各苗載置部22aのマット状苗Dが苗取出口26に対して機体左右方向に往復移動して、各苗植付機構23が、マット状苗Dの下端部の横一端側から他端側に向けて順次にブロック苗を取出す。尚、図4に示すように、前記苗取出口26は、前記横送りガイドレール28に設けた切り欠き孔によって形成されている。
【0031】
〔流動物散布装置の構成〕
図4〜図8、図15に示すように、前記流動物散布装置Cは、薬剤を散布する散布機構46を有する散布装置本体42と、苗載せ台22に立設された左右一対の支柱40に掛け渡され、散布装置本体42を機体左右方向に案内支持するガイドレール41と、散布装置本体42を機体左右方向に往復移動させる移送機構43と、薬剤を散布しながら散布装置本体42が移動してストロークエンドに到達したときに、薬剤の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止するように、散布機構46及び移送機構43を駆動させる制御部45(制御機構の一例)と、ストロークエンドで停止した状態から薬剤の散布及び散布装置本体42の移動を開始する際に、薬剤の散布を開始したときから所定時間遅らせて散布装置本体42を移動させる遅延手段TSと、を備えている。
【0032】
(散布装置本体)
図7に示すように、前記散布装置本体42は、散布機構46と、この散布機構46の繰出ケース47の上部に底部が連結されたタンク48と、繰出ケース47の下部に連設された円筒形の繰出口49に上端側が接続されたホースで成るノズル50と、を備えている。
散布装置本体42は、繰出ケース47の後部に設けられた取付部51によってガイドレール41に摺動可能に案内支持されている。取付部51には、ガイドレール41の上辺部41aの上向きカイド面で転動する樹脂製のコロ52、ガイドレール41の縦辺部41bの後向きガイド面に摺接する樹脂製のスライド部材53、ガイドレール41の下辺部41cの前向きガイド面に摺接する樹脂製のスライド部材53が設けられている。これらコロ52、スライド部材53の作用によって、散布装置本体42がガイドレール41との摩擦が少ない状態でガイドレール41に沿って機体左右方向に移動する。
【0033】
(散布機構)
図7、図8に示すように、前記散布機構46は、繰出ケース47と、この繰出ケース47の外部に回転可能に設けられ、繰出ロール54を駆動するロール駆動スプロケット55(繰出部の一例)と、この繰出ケース47の内部に回転可能に設けられ、薬剤を散布する繰出ロール54(繰出部の一例)と、を備えている。
前記ロール駆動スプロケット55の回転支軸56の端部に一体回転可能に設けたギヤ57と、繰出ロール54の一端側に一体回転可能に設けた内歯ギヤ58とが噛み合っている。繰出ロール54には、その外周面に並んで薬剤を収容可能な繰出凹部54aが設けられている。これにより、ロール駆動スプロケット55は、回転操作されると、回転支軸56を介して繰出ロール54を駆動する。すると、繰出ロール54は、タンク48の底孔48aから繰出ロール54の上側に流下した粒状の薬剤を、繰出凹部54aによって繰出ロール54の下方に搬送して落下させる。繰出ロール54から落下した薬剤は、繰出口49からノズル50に流入する。
【0034】
前記散布機構46は、繰出ケース47に回転操作可能に支持された調節ダイヤル59をさらに備えている。この調節ダイヤル59の端部59aが、繰出ロール54を回転可能に支持するよう繰出ケース47に固定された支軸60のネジ軸部60aに螺合し、かつ、繰出ロール54の一対のうち一方の構成体54bに係合している。これにより、調節ダイヤル59は、回転操作されることにより、支軸60に沿って移動して構成体54bを移動操作し、各繰出凹部54aの容量を増減調節して、繰出ロール54による繰出量を増減調節する。
【0035】
図5、図6に示すように、前記ノズル50は、繰出口49からノズル内に延出された板金製の芯材62によって所定のノズル形状に保形されている。繰出口49から流入した薬剤をノズル下端の開口50aからマット状苗Dの供給対象箇所に落下させる。この供給対象箇所は、具体的には、マット状苗Dの苗植付機構23による取り出し苗が位置する下端部よりも苗載せ台上端側で、かつ苗押え杆61による苗葉押さえによって苗葉間に形成された隙間の位置である。
【0036】
以上の構成より、ロール駆動スプロケット55が回転駆動すると、繰出ロール54が回転し、繰出ロール54の繰出凹部54aに入り込む量を一回の繰出量として、タンク48に貯留されている薬剤をノズル50に繰り出し、このノズル50によって苗載せ台22のマット状苗Dの床土部に落下させて供給する。
【0037】
(移送機構)
図6、図7に示すように、前記移送機構43は、ガイドレール41の一端部に設けられた電動モータM(駆動部の一例)と、ガイドレール41の一端部に設けられ、この電動モータMの出力軸65に連動連結する駆動スプロケット66と、ガイドレール41の他端部に遊転可能に設けられた遊動スプロケット67と、駆動スプロケット66及び遊動スプロケット67に巻回された無端チェーン68(駆動伝達部の一例)と、を備えている。
電動モータMの駆動によって駆動スプロケット66を介して無端チェーン68が回転駆動することにより、無端チェーン68に係合するロール駆動スプロケット55が回転駆動して、繰出ロール54によって薬剤を繰出口49から散布する。繰出口49から散布された薬剤はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する。また、無端チェーン68を回転駆動することにより、散布装置本体42をガイドレール41に沿って移動させる。このように、移送機構43は、散布装置本体42を移送操作すると同時に、散布装置本体42を散布作動するよう駆動操作する。
【0038】
(遅延手段)
図6、図7、図13、図14に示すように、遅延手段TSは、無端チェーン68に設けられた突出ピン91(係合部材の一例)と、散布装置本体42の取付部51に設けられた一対の当接部材69(被係合部材の一例)と、を備えている。
【0039】
本実施形態では、無端チェーン68における外リンクと内リンクとを連結するピンをそれらリンクから両側に突出させて突出ピン91を形成している。しかし、これに限られるものではなく、それらリンクのリンクプレートの両側に突出ピン91を固定してもよい。
【0040】
前記一対の当接部材69は、突出ピン91を挟んで左右方向に間隔を隔てて設けられている。当接部材69は、一側部が取付部51に固定され、上部に下に凹入した切欠69aを有する矩形板状の当接部69bと、その当接部69bの中央部から一対の当接部材69の内方側に突出する三角板状のチェーン支持部69cと、当接部69bの他側部に形成された矩形板状の折曲部69dと、を備えている。
【0041】
図13に示すように、無端チェーン68が、切欠69aを通って一方側に回転駆動されると、無端チェーン68に設けられた突出ピン91が、一方の当接部材69の当接部69bにおける切欠69aの左右側箇所に当接して、散布装置本体42を一方側に移動させる(図13(a)を参照)。無端チェーン68が、切欠69aを通って他方側に回転駆動されると、無端チェーン68に設けられた突出ピン91が、他方の当接部材69の当接部69bにおける切欠69aの左右側箇所に当接して、散布装置本体42を他方側に移動させる(図13(b)を参照)。このように、突出ピン91と一対の当接部材69との間に、突出ピン91が一対の当接部材69の間隔d2だけ移動すると一対の当接部材69のうちいずれかに係合する係合融通をもたせてある。
【0042】
図6、図13に示すように、前記無端チェーン68は、駆動スプロケット66及び遊動スプロケット67に巻回されている。この無端チェーン68の左右方向の幅は、ガイドレール41とほぼ同じ幅であるため、上側の無端チェーン68が自重により垂下してロール駆動スプロケット55に干渉する虞がある。このため、上側の無端チェーン68を支持するチェーン支持部69cを設けて、上側の無端チェーン68がロール駆動スプロケット55に干渉することを防止している。チェーン支持部69cの上側(チェーン側)面の基端側部分69eが、内方側に向かうほど上に上がるようになっている。これにより、上側の無端チェーン68がロール駆動スプロケット55に干渉することを一層防止している。また、チェーン支持部69cの上側(チェーン側)面の先端側部分69fが、内方側に向かうほど下に下がるようになっている。これにより、チェーン支持部69cの先端が上側の無端チェーン68に当たることを防止している。
【0043】
下方に向かうほど一対の当接部材69の幅が狭くなるように、当接部69bは上下方向から少し傾斜している。一対の当接部材69の間の無端チェーン68はチェーン支持部69cに支持されて上向き凸になっている。このため、当接部69bを少し傾斜させて突出ピン91が当接部69bに対して垂直方向に当接するようにして、当接の際に、無端チェーン68が上下方向に動くことを防止している。
【0044】
以下、流動物散布装置の制御部の構成及び各検出手段の構成について説明する。
【0045】
〔制御部の構成〕
図15に示すように、制御部45は、縦送り検出手段44と、左端検出手段70と、右端検出手段72と、位置検出手段75と、それら検出手段44、70、72、75の検出情報に基づいて各種制御を行う制御手段79と、を備えている。制御手段79は、縦送り検出手段44の一対の縦送り検出スイッチ44aと位置検出手段75の近接センサ76と左端検出手段70の左端検出スイッチ71と右端検出手段72の右端検出スイッチ73とに連係され、電動モータMの駆動部に連係されている。
【0046】
〔縦送り検出手段の構成〕
図11、図12に示すように、縦送り検出手段44は、一対の縦送り検出スイッチ44aを備える他、一つのスイッチ操作体80を備えて構成してある。
【0047】
前記一対の縦送り検出スイッチ44aは、苗載せ台22の横端部に設けたブラケット81に苗載せ台左右方向に並べて支持されている。スイッチ操作体80は、ベルト駆動軸31の端部に一体回転可能に支持されており、苗載せ台22が左右の横送りストロークエンドに到達して苗縦送りベルト30が駆動されるに伴ってベルト駆動軸31によって回転駆動される。すると、スイッチ操作体80にこれの回転方向に分散配置して、かつスイッチ操作体80の回転軸芯方向に位置ずれさせて設けてある一対の操作部80aの一方が一対の縦送り検出スイッチ44aの一方の切り換え部に押圧作用してこの縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わるか、一対の操作部80aの他方が一対の縦送り検出スイッチ44aの他方の切り換え部に押圧作用してこの縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わる。つまり、苗載せ台22が左側の横送りスロトークエンドに到達して苗縦送りベルト30が駆動されると、一方の縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わり、苗載せ台22が右側の横送りストロークエンドに到達して苗縦送りベルト30が駆動されると、他方の縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わる。
【0048】
これにより、縦送り検出手段44は、一対の縦送り検出スイッチ44aのいずれか一方がオンに切り換わることにより、苗載せ台22での苗縦送りが行われたと検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0049】
〔左端検出手段の構成〕
図9に示すように、左端検出手段70は、左端検出スイッチ71を備える他、無端チェーン68に支持させた検出対象片74aを備えて構成してある。左端検出スイッチ71は、ガイドレール41に電動モータMを支持するよう設けたモータ支持体82に固定されている。ノズル50が左側のストロークエンドに位置すると、検出対象片74aが左端検出スイッチ71の切り換え部に接触し、左端検出スイッチ71がオンに切り換わる。
【0050】
これにより、左端検出手段70は、左端検出スイッチ71がオンになることにより、ノズル50が左側のストロークエンドに位置していると検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0051】
〔右端検出手段の構成〕
図9に示すように、右端検出手段72は、右端検出スイッチ73を備える他、無端チェーン68に支持させた検出対象片74bを備えて構成してある。右端検出スイッチ73は、モータ支持体82に固定されている。ノズル50が右側のストロークエンドに位置すると、検出対象片74bが右端検出スイッチ73の切り換え部に接触し、右端検出スイッチ73がオンに切り換わる。
【0052】
これにより、右端検出手段72は、右端検出スイッチ73がオンになることにより、ノズル50が右側のストロークエンドに位置していると検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0053】
〔位置検出手段の構成〕
図9、図10に示すように、位置検出手段75は、近接センサ76を備える他、周縁部に突部77aが回転方向に並んでいる回転体77を備えて構成してある。
【0054】
回転体77は、駆動スプロケット66に一体回転可能に支持されている。近接センサ76は、回転体77の周縁部に対向した配置でモータ支持体82に固定されている。駆動スプロケット66が駆動されて無端チェーン68を回動操作するに伴って回転体77が駆動スプロケット66と共に回転し、近接センサ76は、回転体77の回転に伴い、この回転体77の突部77aを間欠的に検出することによってパルス信号を発生する。
【0055】
これにより、位置検出手段75は、近接センサ76と回転体77とによって駆動スプロケット66の回転数を検出してこの検出回転数を制御手段79に出力し、制御手段79に、検出回転数と、左端検出手段70による検出結果と、右端検出手段73による検出結果とを基に、ノズル50が左側のストロークエンドから右側のストロークエンドに向けて移送された際の位置と、ノズル50が右側のストロークエンドから左側のストロークエンドに向けて移送された際の位置とを検出させる。
【0056】
〔薬剤を散布する制御〕
制御手段79は、マイクロコンピュータを利用して構成してある。図15に示すように、制御手段79は、各検出手段44,75,70,72による検出情報を基に電動モータMを操作する。
【0057】
すなわち、制御手段79は、縦送り検出手段44による検出情報を基に苗縦送りが行われたか否かを判断し、苗縦送りが行われたと判断すると、左端検出手段70が検出状態にあるか、あるいは右端検出手段72が検出状態にあるかを判断する。制御手段79は、苗縦送りが行われたと判断し、かつ左端検出手段70が検出状態にあると判断した場合、右端検出手段72が検出状態になるまで薬剤を散布しながら散布装置本体42を右に移動させるように、電動モータMを駆動させる右向き散布制御を行う。制御手段79は、苗縦送りが行われたと判断し、かつ右端検出手段72が検出状態にあると判断した場合、左端検出手段70が検出状態になるまで薬剤を散布しながら散布装置本体42を左に移動させるように、電動モータMを駆動させる左向き散布制御を行う。
【0058】
散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、薬剤の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止した後、再び薬剤の散布及び散布装置本体42の移動を開始する一連の動作について説明する。
【0059】
図16(a)に示すように、電動モータMの駆動によって駆動スプロケット66を介して無端チェーン68を一方側に回転駆動することにより、無端チェーン68に係合するロール駆動スプロケット55を回転駆動して、繰出ロール54によって薬剤を繰出口49から散布する。繰出口49から散布された薬剤はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する。また、無端チェーン68に設けられた突出ピン91が一方の当接部材69に当接しているので、無端チェーン68を一方側に回転駆動することにより、散布装置本体42が一方側(図16(a)の紙面右方)に移動する。図16(b)に示すように、散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、右端検出手段72の検出により電動モータMが一時的に停止することにより、無端チェーン68が一時的に停止し、ロール駆動スプロケット55および繰出ロール54が一時的に停止する。また、散布装置本体42が一時的に停止する。このとき、突出ピン91は一方の当接部材69に当接する状態を維持している。
【0060】
図16(c)に示すように、電動モータMの駆動によって駆動スプロケット66を介して無端チェーン68を他方側に回転駆動することにより、無端チェーン68に係合するロール駆動スプロケット55を回転駆動して、繰出ロール54によって薬剤を繰出口49から散布する。このとき、突出ピン91は一方の当接部材69から離れて他方の当接部材69の側に移動している途中であり、散布装置本体42の移動は依然として停止している。薬剤の散布を開始したときから所定時間経過すると、繰出口49から散布された薬剤はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する。このとき、無端チェーン68に設けられた突出ピン91が他方の当接部材69に当接することにより、散布装置本体42が他方側に移動を開始する(図16(d)を参照)。
【0061】
このように、突出ピン91が一方の当接部材69から他方の当接部材69に移動する移動時間と、繰出口49から散布された薬剤がノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する時間とを合わせることにより、薬剤の供給遅れを無くして、散布装置本体42の始動位置付近に流動物の未散布領域d1が生じることを無くすことができる。
【0062】
フィードケース20の動力が苗植付機構23に伝達するのを遮断する各条クラッチ(図示せず)を遮断状態に切換え、ベルト駆動軸31を停止させて、苗植付機構23および苗縦送りベルト30を停止させた場合、苗載せ台22のうち残りの苗載置部22aに対応する箇所だけ散布装置本体42を往復移動させるように、位置検出手段75に基づいて電動モータMを駆動させる部分散布制御を行う場合がある。しかし、突出ピン91と一対の当接部材69との間に係合融通をもたせてあるため、例えば、図4に示すように、左の2つの苗載置部22aに対応する苗植付機構23および苗縦送りベルト30を停止させた場合、電動モータMを駆動して無端チェーン68がL2の距離を移動したとしても、散布装置本体42を紙面左から2つめの苗載置部22aに対応する位置に到達しない。そこで、制御手段79は、無端チェーン68がL1の距離にd2の間隔を加えた量を移動するように制御を行う。このように、散布装置本体42の位置をd2だけ補正することにより、散布装置本体42を紙面左から2つめの苗載置部22aに対応する位置に適切に位置させることができる。
【0063】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、繰出部が駆動伝達部により駆動される構成を例示したが、このような構成に代えて、繰出部を駆動させる駆動部を、駆動伝達部を駆動させる駆動部とは別に設けてもよい。つまり、散布装置本体42の移送と、散布装置本体42の散布を、それぞれ別の駆動部で行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、上記した実施例の流動物散布装置Cに替え、肥料をマット状苗Dに供給する構成を備えた流動物散布装置にも、肥料や種子を圃場に直接に供給する構成を備えた流動物散布装置にも本発明は適用できる。従って、粉粒状や液状の薬剤、粉粒状や液状の肥料、種子などを総称して供給対象物の流動物と呼称し、マット状苗D、圃場などを総称して供給対象箇所と呼称する。
【符号の説明】
【0065】
39 繰出部
42 散布装置本体
43 移送機構
45 制御機構
46 散布機構
68 駆動伝達部
69 被係合部材
91 係合部材
TS 遅延手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動物を散布する散布機構を有する散布装置本体と、前記散布装置本体を往復移動させる移送機構と、流動物を散布しながら前記散布装置本体が移動してストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び前記散布装置本体の移動を一時的に停止するように、前記散布機構及び前記移送機構を駆動させる制御機構と、を備えた流動物散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる流動物散布装置として、例えば特許文献1に開示されているように、田植機の苗植付装置に設けられるものがある。散布機構が流動物(薬剤)を散布しながら、移送機構によって散布装置本体を苗載せ台の上方で往復移動させる。散布装置本体がストロークエンドに到達したときには、流動物の散布及び散布装置本体の移動を一時的に停止する。このようにして、苗載せ台に載置されたマット状苗に流動物を散布する。
【0003】
特許文献1の流動物散布装置は、例えば、図17に示すように構成されている。移送機構43が、散布装置本体42を移動させる駆動伝達部(無端チェーン)68と、その駆動伝達部68を駆動する駆動部(電動モータ)Mと、を備えている。散布機構46が、駆動伝達部68により回転駆動されて流動物を散布する繰出部39(ロール駆動スプロケット55及び繰出ロール54)を備え、散布装置本体42に駆動伝達部68に噛合する左右一対のラックギヤ69を設けている。
【0004】
駆動部Mの駆動によって駆動スプロケット66を介して駆動伝達部68を回転駆動し、駆動伝達部68に係合する繰出部39を回転駆動して、流動物を散布する。また、駆動伝達部68を回転駆動して散布装置本体42を移動させる。これにより、散布機構46が流動物を散布しながら、散布装置本体42が移動することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−296344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止した後、再び流動物の散布及び散布装置本体42の移動を開始する一連の動作について、図17に基づいて説明する。
【0007】
図17(a)に示すように、駆動部Mの駆動によって駆動スプロケット66を介して駆動伝達部68を一方側に回転駆動することにより、駆動伝達部68に係合する繰出部39を回転駆動して流動物を繰出口49から散布する。繰出口49から散布された流動物はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する。また、駆動伝達部68を一方側に回転駆動することにより、散布装置本体42が一方側(図17(a)の紙面右方)に移動する。図17(b)に示すように、散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、駆動部Mが停止することにより、駆動伝達部68が停止し、繰出部39および散布装置本体42が停止する。
【0008】
図17(c)に示すように、駆動部Mの駆動によって駆動スプロケット66を介して駆動伝達部68を他方側に回転駆動することにより、駆動伝達部68に係合する繰出部39を回転駆動して流動物を繰出口49から散布する。また、駆動伝達部68を他方側に回転駆動することにより、散布装置本体42が他方側(図17(c)の紙面左方)に移動する。このとき、繰出口49から散布された流動物はノズル50を通過している途中であることがあり、流動物はノズル50の開口50aから落下していないことがある。このような状態になると、図17(d)に示すように、散布装置本体42が他方側に移動を開始してから少し時間が経過した後に、繰出口49から散布された流動物はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下するような状態になることがある。
【0009】
これにより、図17(c)、図17(d)に示すように、散布装置本体が移動すると同時に流動物が落下しないことがある。このため、散布装置本体の始動位置付近に流動物の未散布領域d1が生じることがあるので、この点において改善の余地があった。
【0010】
本発明の目的は、流動物の供給遅れを無くして流動物を適切に供給できる流動物散布装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の流動物散布装置は、流動物を散布する散布機構を有する散布装置本体と、前記散布装置本体を往復移動させる移送機構と、流動物を散布しながら前記散布装置本体が移動してストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び前記散布装置本体の移動を一時的に停止するように、前記散布機構及び前記移送機構を駆動させる制御機構と、を備えたものであって、その第1特徴構成は、前記ストロークエンドで停止した状態から流動物の散布及び散布装置本体の移動を開始する際に、流動物の散布を開始したときから所定時間遅らせて前記散布装置本体を移動させる遅延手段を備えた点にある。
【0012】
本構成によれば、例えば、図16(b)に示すように、散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、駆動部Mが停止することにより、散布機構46および散布装置本体42が停止する。
【0013】
図16(c)に示すように、散布機構46による流動物の散布および散布装置本体42の移動を開始する際に、遅延手段TSによって散布装置本体42の移動を所定時間遅らせる。このため、散布機構46による流動物の散布が開始されても、散布装置本体42は依然として停止している。流動物の散布を開始したときから所定時間経過すると、流動物はマット状苗等の供給対象箇所に到達している(図16(d)を参照)。このとき、散布装置本体42が他方側に移動を開始する。
【0014】
このように、遅延手段によって流動物の散布を開始したときから所定時間遅らせて散布装置本体を移動させるので、散布装置本体を移動させるタイミングと流動物が実際に落下して供給対象箇所に供給されるタイミングとを合わせることができる。その結果、流動物の供給遅れを無くして、散布装置本体の始動位置付近に流動物の未散布領域が生じることを無くす等、流動物を適切に供給できる。
【0015】
本発明の第2特徴構成は、前記移送機構が、前記散布装置本体を移動させる駆動伝達部と、その駆動伝達部を駆動する駆動部とを備え、
前記散布機構が、前記駆動伝達部により駆動されて流動物を散布する繰出部を備え、
前記遅延手段が、前記散布装置本体と駆動伝達部とに亘って設けられている点にある。
【0016】
本構成によれば、駆動部を駆動すると、駆動伝達部を駆動して散布装置本体を移動させると共に、駆動伝達部により散布機構(繰出部)が駆動されて流動物を散布する。このように、散布装置本体を移動させる構成を繰出部が駆動される構成に兼用して、構成の簡素化を図りながら、散布装置本体と駆動伝達部とに亘って遅延手段を設けることにより、遅延手段の構成のコンパクト化を図ることができる。
【0017】
本発明の第3特徴構成は、前記駆動伝達部に設けられた係合部材と、前記散布装置本体に設けられた被係合部材との間に、前記係合部材が所定距離だけ移動すると被係合部材に係合する係合融通をもたせることで、前記遅延手段を構成してある点にある。
【0018】
本構成によれば、駆動伝達部に係合部材を設け、散布装置本体に被係合部材を設け、係合部材と被係合部材との間に係合融通をもたせるだけで、散布装置本体の移動を所定時間遅らせることができるので、遅延手段を簡単に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】乗用型田植機を示す全体側面図である。
【図2】苗植付装置と流動物散布装置とを示す側面図である。
【図3】苗植付装置を示す概略平面図である。
【図4】流動物散布装置を示す後面図である。
【図5】苗載せ台と散布装置本体とを示す側面図である。
【図6】移送機構を示す後面図である。
【図7】散布装置本体の繰り出し機構配設部での縦断側面図である。
【図8】繰出機構を示す縦断正面図である。
【図9】移送機構のモータ配設部での断面図である。
【図10】位置検出手段を示す正面図である。
【図11】縦送り検出手段を示す正面図である。
【図12】縦送り検出手段を示す側面図である。
【図13】遅延手段を示す部分断面図である。
【図14】遅延手段を示す斜視図である。
【図15】制御部を示すブロック図である。
【図16】本発明の流動物散布装置の各状態を示す図である。
【図17】特許文献1の流動物散布装置の各状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る流動物散布装置を乗用型田植機に適用した場合について図面に基づいて説明する。
【0021】
〔乗用型田植機の全体構成〕
乗用型田植機は、稲苗を圃場に植付ける田植え作業を行うものであって、図1に示すように、自走車Aと、この自走車Aの後部に昇降可能に連結された苗植付装置Bと、を備えている。この苗植付装置Bに備えられた苗載せ台22には、流動物散布装置Cが装備されている。
【0022】
本実施形態では、流動物が消毒用の薬剤である場合を例示した。しかし、この薬剤は消毒用に限られるものではない。また、流動物は薬剤に限られるものではなく、例えば肥料であってもよい。
【0023】
〔自走車の構成〕
図1に示すように、前記自走車Aは、車体フレーム4と、この車体フレーム4の後部に設けられたミッションケース10と、車体フレーム4の前部の両横側の夫々に設けられ、操向操作及び駆動可能な左右一対の前車輪2と、車体フレーム4の後部の両横側の夫々に設けられ、ミッションケース10に駆動可能に支持された左右一対の後車輪3と、車体フレーム4の後部の中央に設けられ、運転座席8を有する運転部15と、車体フレーム4の前部の中央に設けられ、エンジン7を有する原動部14と、を備えている。この原動部14の側脇には、予備のマット状苗Dを載置する予備苗のせ台9が装備されている。
【0024】
前記自走車Aの車体フレーム4の後部と苗植付装置Bとの間には、ミッションケース10から苗植付装置Bに延出され、エンジン7の出力を苗植付装置Bに伝達する回転軸11と、苗植付装置Bを昇降させるリンク機構5とが設けられている。リンク機構5には、油圧シリンダ12が設けられており、油圧シリンダ12の作動によってリンク機構5が車体フレーム4に対して揺動操作され、苗植付装置Bが昇降する。これにより、苗植付装置Bの下部に機体横方向に並んで位置する3つの接地フロート21が圃場面に接地した下降作業位置と、接地フロート21が圃場面から高く上昇した上昇非作業位置とに、苗植付装置Bが位置変更可能に構成されている。
【0025】
〔苗植付装置の構成〕
図1〜図5に示すように、前記苗植付装置Bは、支持フレーム13と、回転軸11からの動力を支持フレーム13に伝達するフィードケース20と、支持フレーム13に設けられ、苗を植付ける苗植付機構23と、苗載せ台22と、を備えている。
【0026】
前記リンク機構5には、支持フレーム13が支持されている。この支持フレーム13は、機体横方向に沿った鋼管材で成るメインフレーム16と、このメインフレーム16に機体横方向に並べて連結された3つの植付駆動ケース25と、を備えている。それら3つの植付駆動ケース25の後端部の左右側には、夫々1つの苗植付機構23が駆動可能に支持されている。各苗植付機構23は、一対の苗植付爪23aを有している。これにより、各苗植付機構23は、フィードケース20から植付駆動ケース25を介して伝達された駆動力によって駆動され、各苗植付爪23aの先端側が苗載せ台22の苗取出口26と圃場面との間を、回動軌跡を描きながら上下に往復移動する。このとき、一対の苗植付爪23aによって交互に苗載せ台22に載置されたマット状苗Dの下端部から一株分のブロック苗を切断して取り出し、取り出したブロック苗を圃場面に下降搬送して植付ける苗植え運動を行う。
【0027】
(苗載せ台)
図1〜図5に示すように、前記苗載せ台22は、機体横方向に並んで設けられ、マット状苗Dを載置可能な6つの苗載置部22aと、各苗載置部22aの下部に一つずつ設けられ、マット状苗Dを下端側に送る苗縦送り部32と、を備えている。
【0028】
前記6つの苗載置部22aは、下端に苗取出口26を有し、上端側から供給されたマット状苗Dを載置可能にしてある。前記苗縦送り部32は、フィードケース20に駆動可能に設けた苗縦送り軸33と、苗載せ台22に沿って設けられ、苗縦送り軸33の駆動によって回転駆動されるベルト駆動軸31と、苗載せ台22に沿い、ベルト駆動軸31に並んで設けられたベルト遊動軸34と、それらベルト駆動軸31及びベルト遊動軸34に巻回され、各載置部22aに1つずつ設けられた苗縦送りベルト30と、を備えている。苗載せ台22が左右の横移送ストロークエンドに到達する都度、苗縦送り軸33によってベルト駆動軸31が設定ストロークだけ回転駆動され、各苗縦送りベルト30が苗取出量に相当する長さだけ縦送りされる。
【0029】
前記各苗植付機構23の苗植え運動に連動させて、苗載せ台22を機体左右方向に往復移動させる苗横送り部27が設けられている。
【0030】
前記苗横送り部27は、フィードケース20に駆動可能に設けられた苗横送り軸35と、その苗横送り軸35と苗載せ台22とを連結する連結部材36と、苗載せ台22の下端に設けられた被案内部材37を機体左右方向に案内する横送りガイドレール28と、を備えている。苗横送り軸35の駆動及び横送りガイドレール28の案内によって苗載せ台22が機体左右方向に往復移動する。このとき、苗載せ台22の各苗載置部22aのマット状苗Dが苗取出口26に対して機体左右方向に往復移動して、各苗植付機構23が、マット状苗Dの下端部の横一端側から他端側に向けて順次にブロック苗を取出す。尚、図4に示すように、前記苗取出口26は、前記横送りガイドレール28に設けた切り欠き孔によって形成されている。
【0031】
〔流動物散布装置の構成〕
図4〜図8、図15に示すように、前記流動物散布装置Cは、薬剤を散布する散布機構46を有する散布装置本体42と、苗載せ台22に立設された左右一対の支柱40に掛け渡され、散布装置本体42を機体左右方向に案内支持するガイドレール41と、散布装置本体42を機体左右方向に往復移動させる移送機構43と、薬剤を散布しながら散布装置本体42が移動してストロークエンドに到達したときに、薬剤の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止するように、散布機構46及び移送機構43を駆動させる制御部45(制御機構の一例)と、ストロークエンドで停止した状態から薬剤の散布及び散布装置本体42の移動を開始する際に、薬剤の散布を開始したときから所定時間遅らせて散布装置本体42を移動させる遅延手段TSと、を備えている。
【0032】
(散布装置本体)
図7に示すように、前記散布装置本体42は、散布機構46と、この散布機構46の繰出ケース47の上部に底部が連結されたタンク48と、繰出ケース47の下部に連設された円筒形の繰出口49に上端側が接続されたホースで成るノズル50と、を備えている。
散布装置本体42は、繰出ケース47の後部に設けられた取付部51によってガイドレール41に摺動可能に案内支持されている。取付部51には、ガイドレール41の上辺部41aの上向きカイド面で転動する樹脂製のコロ52、ガイドレール41の縦辺部41bの後向きガイド面に摺接する樹脂製のスライド部材53、ガイドレール41の下辺部41cの前向きガイド面に摺接する樹脂製のスライド部材53が設けられている。これらコロ52、スライド部材53の作用によって、散布装置本体42がガイドレール41との摩擦が少ない状態でガイドレール41に沿って機体左右方向に移動する。
【0033】
(散布機構)
図7、図8に示すように、前記散布機構46は、繰出ケース47と、この繰出ケース47の外部に回転可能に設けられ、繰出ロール54を駆動するロール駆動スプロケット55(繰出部の一例)と、この繰出ケース47の内部に回転可能に設けられ、薬剤を散布する繰出ロール54(繰出部の一例)と、を備えている。
前記ロール駆動スプロケット55の回転支軸56の端部に一体回転可能に設けたギヤ57と、繰出ロール54の一端側に一体回転可能に設けた内歯ギヤ58とが噛み合っている。繰出ロール54には、その外周面に並んで薬剤を収容可能な繰出凹部54aが設けられている。これにより、ロール駆動スプロケット55は、回転操作されると、回転支軸56を介して繰出ロール54を駆動する。すると、繰出ロール54は、タンク48の底孔48aから繰出ロール54の上側に流下した粒状の薬剤を、繰出凹部54aによって繰出ロール54の下方に搬送して落下させる。繰出ロール54から落下した薬剤は、繰出口49からノズル50に流入する。
【0034】
前記散布機構46は、繰出ケース47に回転操作可能に支持された調節ダイヤル59をさらに備えている。この調節ダイヤル59の端部59aが、繰出ロール54を回転可能に支持するよう繰出ケース47に固定された支軸60のネジ軸部60aに螺合し、かつ、繰出ロール54の一対のうち一方の構成体54bに係合している。これにより、調節ダイヤル59は、回転操作されることにより、支軸60に沿って移動して構成体54bを移動操作し、各繰出凹部54aの容量を増減調節して、繰出ロール54による繰出量を増減調節する。
【0035】
図5、図6に示すように、前記ノズル50は、繰出口49からノズル内に延出された板金製の芯材62によって所定のノズル形状に保形されている。繰出口49から流入した薬剤をノズル下端の開口50aからマット状苗Dの供給対象箇所に落下させる。この供給対象箇所は、具体的には、マット状苗Dの苗植付機構23による取り出し苗が位置する下端部よりも苗載せ台上端側で、かつ苗押え杆61による苗葉押さえによって苗葉間に形成された隙間の位置である。
【0036】
以上の構成より、ロール駆動スプロケット55が回転駆動すると、繰出ロール54が回転し、繰出ロール54の繰出凹部54aに入り込む量を一回の繰出量として、タンク48に貯留されている薬剤をノズル50に繰り出し、このノズル50によって苗載せ台22のマット状苗Dの床土部に落下させて供給する。
【0037】
(移送機構)
図6、図7に示すように、前記移送機構43は、ガイドレール41の一端部に設けられた電動モータM(駆動部の一例)と、ガイドレール41の一端部に設けられ、この電動モータMの出力軸65に連動連結する駆動スプロケット66と、ガイドレール41の他端部に遊転可能に設けられた遊動スプロケット67と、駆動スプロケット66及び遊動スプロケット67に巻回された無端チェーン68(駆動伝達部の一例)と、を備えている。
電動モータMの駆動によって駆動スプロケット66を介して無端チェーン68が回転駆動することにより、無端チェーン68に係合するロール駆動スプロケット55が回転駆動して、繰出ロール54によって薬剤を繰出口49から散布する。繰出口49から散布された薬剤はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する。また、無端チェーン68を回転駆動することにより、散布装置本体42をガイドレール41に沿って移動させる。このように、移送機構43は、散布装置本体42を移送操作すると同時に、散布装置本体42を散布作動するよう駆動操作する。
【0038】
(遅延手段)
図6、図7、図13、図14に示すように、遅延手段TSは、無端チェーン68に設けられた突出ピン91(係合部材の一例)と、散布装置本体42の取付部51に設けられた一対の当接部材69(被係合部材の一例)と、を備えている。
【0039】
本実施形態では、無端チェーン68における外リンクと内リンクとを連結するピンをそれらリンクから両側に突出させて突出ピン91を形成している。しかし、これに限られるものではなく、それらリンクのリンクプレートの両側に突出ピン91を固定してもよい。
【0040】
前記一対の当接部材69は、突出ピン91を挟んで左右方向に間隔を隔てて設けられている。当接部材69は、一側部が取付部51に固定され、上部に下に凹入した切欠69aを有する矩形板状の当接部69bと、その当接部69bの中央部から一対の当接部材69の内方側に突出する三角板状のチェーン支持部69cと、当接部69bの他側部に形成された矩形板状の折曲部69dと、を備えている。
【0041】
図13に示すように、無端チェーン68が、切欠69aを通って一方側に回転駆動されると、無端チェーン68に設けられた突出ピン91が、一方の当接部材69の当接部69bにおける切欠69aの左右側箇所に当接して、散布装置本体42を一方側に移動させる(図13(a)を参照)。無端チェーン68が、切欠69aを通って他方側に回転駆動されると、無端チェーン68に設けられた突出ピン91が、他方の当接部材69の当接部69bにおける切欠69aの左右側箇所に当接して、散布装置本体42を他方側に移動させる(図13(b)を参照)。このように、突出ピン91と一対の当接部材69との間に、突出ピン91が一対の当接部材69の間隔d2だけ移動すると一対の当接部材69のうちいずれかに係合する係合融通をもたせてある。
【0042】
図6、図13に示すように、前記無端チェーン68は、駆動スプロケット66及び遊動スプロケット67に巻回されている。この無端チェーン68の左右方向の幅は、ガイドレール41とほぼ同じ幅であるため、上側の無端チェーン68が自重により垂下してロール駆動スプロケット55に干渉する虞がある。このため、上側の無端チェーン68を支持するチェーン支持部69cを設けて、上側の無端チェーン68がロール駆動スプロケット55に干渉することを防止している。チェーン支持部69cの上側(チェーン側)面の基端側部分69eが、内方側に向かうほど上に上がるようになっている。これにより、上側の無端チェーン68がロール駆動スプロケット55に干渉することを一層防止している。また、チェーン支持部69cの上側(チェーン側)面の先端側部分69fが、内方側に向かうほど下に下がるようになっている。これにより、チェーン支持部69cの先端が上側の無端チェーン68に当たることを防止している。
【0043】
下方に向かうほど一対の当接部材69の幅が狭くなるように、当接部69bは上下方向から少し傾斜している。一対の当接部材69の間の無端チェーン68はチェーン支持部69cに支持されて上向き凸になっている。このため、当接部69bを少し傾斜させて突出ピン91が当接部69bに対して垂直方向に当接するようにして、当接の際に、無端チェーン68が上下方向に動くことを防止している。
【0044】
以下、流動物散布装置の制御部の構成及び各検出手段の構成について説明する。
【0045】
〔制御部の構成〕
図15に示すように、制御部45は、縦送り検出手段44と、左端検出手段70と、右端検出手段72と、位置検出手段75と、それら検出手段44、70、72、75の検出情報に基づいて各種制御を行う制御手段79と、を備えている。制御手段79は、縦送り検出手段44の一対の縦送り検出スイッチ44aと位置検出手段75の近接センサ76と左端検出手段70の左端検出スイッチ71と右端検出手段72の右端検出スイッチ73とに連係され、電動モータMの駆動部に連係されている。
【0046】
〔縦送り検出手段の構成〕
図11、図12に示すように、縦送り検出手段44は、一対の縦送り検出スイッチ44aを備える他、一つのスイッチ操作体80を備えて構成してある。
【0047】
前記一対の縦送り検出スイッチ44aは、苗載せ台22の横端部に設けたブラケット81に苗載せ台左右方向に並べて支持されている。スイッチ操作体80は、ベルト駆動軸31の端部に一体回転可能に支持されており、苗載せ台22が左右の横送りストロークエンドに到達して苗縦送りベルト30が駆動されるに伴ってベルト駆動軸31によって回転駆動される。すると、スイッチ操作体80にこれの回転方向に分散配置して、かつスイッチ操作体80の回転軸芯方向に位置ずれさせて設けてある一対の操作部80aの一方が一対の縦送り検出スイッチ44aの一方の切り換え部に押圧作用してこの縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わるか、一対の操作部80aの他方が一対の縦送り検出スイッチ44aの他方の切り換え部に押圧作用してこの縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わる。つまり、苗載せ台22が左側の横送りスロトークエンドに到達して苗縦送りベルト30が駆動されると、一方の縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わり、苗載せ台22が右側の横送りストロークエンドに到達して苗縦送りベルト30が駆動されると、他方の縦送り検出スイッチ44aがオンに切り換わる。
【0048】
これにより、縦送り検出手段44は、一対の縦送り検出スイッチ44aのいずれか一方がオンに切り換わることにより、苗載せ台22での苗縦送りが行われたと検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0049】
〔左端検出手段の構成〕
図9に示すように、左端検出手段70は、左端検出スイッチ71を備える他、無端チェーン68に支持させた検出対象片74aを備えて構成してある。左端検出スイッチ71は、ガイドレール41に電動モータMを支持するよう設けたモータ支持体82に固定されている。ノズル50が左側のストロークエンドに位置すると、検出対象片74aが左端検出スイッチ71の切り換え部に接触し、左端検出スイッチ71がオンに切り換わる。
【0050】
これにより、左端検出手段70は、左端検出スイッチ71がオンになることにより、ノズル50が左側のストロークエンドに位置していると検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0051】
〔右端検出手段の構成〕
図9に示すように、右端検出手段72は、右端検出スイッチ73を備える他、無端チェーン68に支持させた検出対象片74bを備えて構成してある。右端検出スイッチ73は、モータ支持体82に固定されている。ノズル50が右側のストロークエンドに位置すると、検出対象片74bが右端検出スイッチ73の切り換え部に接触し、右端検出スイッチ73がオンに切り換わる。
【0052】
これにより、右端検出手段72は、右端検出スイッチ73がオンになることにより、ノズル50が右側のストロークエンドに位置していると検出し、この検出結果を制御手段79に出力する。
【0053】
〔位置検出手段の構成〕
図9、図10に示すように、位置検出手段75は、近接センサ76を備える他、周縁部に突部77aが回転方向に並んでいる回転体77を備えて構成してある。
【0054】
回転体77は、駆動スプロケット66に一体回転可能に支持されている。近接センサ76は、回転体77の周縁部に対向した配置でモータ支持体82に固定されている。駆動スプロケット66が駆動されて無端チェーン68を回動操作するに伴って回転体77が駆動スプロケット66と共に回転し、近接センサ76は、回転体77の回転に伴い、この回転体77の突部77aを間欠的に検出することによってパルス信号を発生する。
【0055】
これにより、位置検出手段75は、近接センサ76と回転体77とによって駆動スプロケット66の回転数を検出してこの検出回転数を制御手段79に出力し、制御手段79に、検出回転数と、左端検出手段70による検出結果と、右端検出手段73による検出結果とを基に、ノズル50が左側のストロークエンドから右側のストロークエンドに向けて移送された際の位置と、ノズル50が右側のストロークエンドから左側のストロークエンドに向けて移送された際の位置とを検出させる。
【0056】
〔薬剤を散布する制御〕
制御手段79は、マイクロコンピュータを利用して構成してある。図15に示すように、制御手段79は、各検出手段44,75,70,72による検出情報を基に電動モータMを操作する。
【0057】
すなわち、制御手段79は、縦送り検出手段44による検出情報を基に苗縦送りが行われたか否かを判断し、苗縦送りが行われたと判断すると、左端検出手段70が検出状態にあるか、あるいは右端検出手段72が検出状態にあるかを判断する。制御手段79は、苗縦送りが行われたと判断し、かつ左端検出手段70が検出状態にあると判断した場合、右端検出手段72が検出状態になるまで薬剤を散布しながら散布装置本体42を右に移動させるように、電動モータMを駆動させる右向き散布制御を行う。制御手段79は、苗縦送りが行われたと判断し、かつ右端検出手段72が検出状態にあると判断した場合、左端検出手段70が検出状態になるまで薬剤を散布しながら散布装置本体42を左に移動させるように、電動モータMを駆動させる左向き散布制御を行う。
【0058】
散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、薬剤の散布及び散布装置本体42の移動を一時的に停止した後、再び薬剤の散布及び散布装置本体42の移動を開始する一連の動作について説明する。
【0059】
図16(a)に示すように、電動モータMの駆動によって駆動スプロケット66を介して無端チェーン68を一方側に回転駆動することにより、無端チェーン68に係合するロール駆動スプロケット55を回転駆動して、繰出ロール54によって薬剤を繰出口49から散布する。繰出口49から散布された薬剤はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する。また、無端チェーン68に設けられた突出ピン91が一方の当接部材69に当接しているので、無端チェーン68を一方側に回転駆動することにより、散布装置本体42が一方側(図16(a)の紙面右方)に移動する。図16(b)に示すように、散布装置本体42がストロークエンドに到達したときに、右端検出手段72の検出により電動モータMが一時的に停止することにより、無端チェーン68が一時的に停止し、ロール駆動スプロケット55および繰出ロール54が一時的に停止する。また、散布装置本体42が一時的に停止する。このとき、突出ピン91は一方の当接部材69に当接する状態を維持している。
【0060】
図16(c)に示すように、電動モータMの駆動によって駆動スプロケット66を介して無端チェーン68を他方側に回転駆動することにより、無端チェーン68に係合するロール駆動スプロケット55を回転駆動して、繰出ロール54によって薬剤を繰出口49から散布する。このとき、突出ピン91は一方の当接部材69から離れて他方の当接部材69の側に移動している途中であり、散布装置本体42の移動は依然として停止している。薬剤の散布を開始したときから所定時間経過すると、繰出口49から散布された薬剤はノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する。このとき、無端チェーン68に設けられた突出ピン91が他方の当接部材69に当接することにより、散布装置本体42が他方側に移動を開始する(図16(d)を参照)。
【0061】
このように、突出ピン91が一方の当接部材69から他方の当接部材69に移動する移動時間と、繰出口49から散布された薬剤がノズル50を通過してノズル50の開口50aから落下する時間とを合わせることにより、薬剤の供給遅れを無くして、散布装置本体42の始動位置付近に流動物の未散布領域d1が生じることを無くすことができる。
【0062】
フィードケース20の動力が苗植付機構23に伝達するのを遮断する各条クラッチ(図示せず)を遮断状態に切換え、ベルト駆動軸31を停止させて、苗植付機構23および苗縦送りベルト30を停止させた場合、苗載せ台22のうち残りの苗載置部22aに対応する箇所だけ散布装置本体42を往復移動させるように、位置検出手段75に基づいて電動モータMを駆動させる部分散布制御を行う場合がある。しかし、突出ピン91と一対の当接部材69との間に係合融通をもたせてあるため、例えば、図4に示すように、左の2つの苗載置部22aに対応する苗植付機構23および苗縦送りベルト30を停止させた場合、電動モータMを駆動して無端チェーン68がL2の距離を移動したとしても、散布装置本体42を紙面左から2つめの苗載置部22aに対応する位置に到達しない。そこで、制御手段79は、無端チェーン68がL1の距離にd2の間隔を加えた量を移動するように制御を行う。このように、散布装置本体42の位置をd2だけ補正することにより、散布装置本体42を紙面左から2つめの苗載置部22aに対応する位置に適切に位置させることができる。
【0063】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、繰出部が駆動伝達部により駆動される構成を例示したが、このような構成に代えて、繰出部を駆動させる駆動部を、駆動伝達部を駆動させる駆動部とは別に設けてもよい。つまり、散布装置本体42の移送と、散布装置本体42の散布を、それぞれ別の駆動部で行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、上記した実施例の流動物散布装置Cに替え、肥料をマット状苗Dに供給する構成を備えた流動物散布装置にも、肥料や種子を圃場に直接に供給する構成を備えた流動物散布装置にも本発明は適用できる。従って、粉粒状や液状の薬剤、粉粒状や液状の肥料、種子などを総称して供給対象物の流動物と呼称し、マット状苗D、圃場などを総称して供給対象箇所と呼称する。
【符号の説明】
【0065】
39 繰出部
42 散布装置本体
43 移送機構
45 制御機構
46 散布機構
68 駆動伝達部
69 被係合部材
91 係合部材
TS 遅延手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動物を散布する散布機構を有する散布装置本体と、
前記散布装置本体を往復移動させる移送機構と、
流動物を散布しながら前記散布装置本体が移動してストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び前記散布装置本体の移動を一時的に停止するように、前記散布機構及び前記移送機構を駆動させる制御機構と、を備えた流動物散布装置であって、
前記ストロークエンドで停止した状態から流動物の散布及び散布装置本体の移動を開始する際に、流動物の散布を開始したときから所定時間遅らせて前記散布装置本体を移動させる遅延手段を備えた流動物散布装置。
【請求項2】
前記移送機構が、前記散布装置本体を移動させる駆動伝達部と、その駆動伝達部を駆動する駆動部とを備え、
前記散布機構が、前記駆動伝達部により駆動されて流動物を散布する繰出部を備え、
前記遅延手段が、前記散布装置本体と駆動伝達部とに亘って設けられている請求項1に記載の流動物散布装置。
【請求項3】
前記駆動伝達部に設けられた係合部材と、前記散布装置本体に設けられた被係合部材との間に、前記係合部材が所定距離だけ移動すると被係合部材に係合する係合融通をもたせることで、前記遅延手段を構成してある請求項2に記載の流動物散布装置。
【請求項1】
流動物を散布する散布機構を有する散布装置本体と、
前記散布装置本体を往復移動させる移送機構と、
流動物を散布しながら前記散布装置本体が移動してストロークエンドに到達したときに、流動物の散布及び前記散布装置本体の移動を一時的に停止するように、前記散布機構及び前記移送機構を駆動させる制御機構と、を備えた流動物散布装置であって、
前記ストロークエンドで停止した状態から流動物の散布及び散布装置本体の移動を開始する際に、流動物の散布を開始したときから所定時間遅らせて前記散布装置本体を移動させる遅延手段を備えた流動物散布装置。
【請求項2】
前記移送機構が、前記散布装置本体を移動させる駆動伝達部と、その駆動伝達部を駆動する駆動部とを備え、
前記散布機構が、前記駆動伝達部により駆動されて流動物を散布する繰出部を備え、
前記遅延手段が、前記散布装置本体と駆動伝達部とに亘って設けられている請求項1に記載の流動物散布装置。
【請求項3】
前記駆動伝達部に設けられた係合部材と、前記散布装置本体に設けられた被係合部材との間に、前記係合部材が所定距離だけ移動すると被係合部材に係合する係合融通をもたせることで、前記遅延手段を構成してある請求項2に記載の流動物散布装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−178636(P2010−178636A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22857(P2009−22857)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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